説明

磁性素子

【課題】コイル端末同士が交差する状態であっても、コイル端末同士のショートを生じさせない磁性素子を提供すること。
【解決手段】本発明の磁性素子10は、コア20と、絶縁性の被膜によって覆われている導線31が巻回された状態でコアに配置されている第1及び第2のコイル30と、コア20を保持すると共に、複数の端子を有する端子台部43を備えるケース40と、を具備し、第1及び第2のコイル30の巻回部32から延びる第1及び第2のコイル端末33が互いに交差するように配置され、コイル端末33Aが端子台部43の表側を通って端子50Bに絡げられ、コイル端末33Bが端子台部43の裏側を通って端子50Aに絡げられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の電子機器に用いられる磁性素子に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、コイル(22)の表面下に形成された溝(14)内に層間絶縁膜(24)が埋設されていて、この層間絶縁膜(24)により、超電導薄膜クロス接続配線部(25)がコイル(22)と交差する構成が実現されている。また、特許文献2には、リード14,15を回路パターン22a〜23bへ接続させることにより、プリント基板21に形成されている回路パターン24に対して、回路パターン22a〜23bが交差している構成が実現されている。さらに、特許文献3には、コイルリード5(11)がコイル4(10)から引き出されると共に、このコイルリード5(11)が交差している構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−139376号公報(要約等参照)
【特許文献2】特開昭62−98609号公報(第3頁右上欄、第3図等参照)
【特許文献3】特開平3−218610号公報(各図参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、磁性素子の中には、上述の特許文献3に開示されているように、複数の端子が並んで配置されているものが存在する。このような磁性素子において、たとえば実装される基板(実装基板)の回路パターン等によっては、特許文献3の第1図等に示されるように、コイルリード(コイル端末)同士が端子に絡げられるまでの間の部分に、互いに重ねられて交差する部位が存在することがある。
【0005】
このようなコイル端末同士の交差部分においては、その交差部分で何等かの要因によりコイル端末を覆う被膜が剥離して、コイル端末同士がショートすることがある。その要因としては、たとえば半田付けの際に交差部分に熱が伝わり被膜が溶ける場合があり、またその他の要因としては、被膜の損傷、被膜の劣化等によりコイル端末同士がショートする場合もある。また、半田付け以外の熱的な要因(たとえば磁性素子の製造時・使用時の過加熱等)により、コイル端末の被膜が溶けて、コイル端末同士のショートを引き起こす場合もある。
【0006】
このような課題に対して、特許文献1に開示の内容を適用しても、当該特許文献1は、半導体製造技術を用いて作成されるコイルに関するものであり、コイル端末の被膜が溶ける等の問題が生じなく、よって上述のコイル端末同士のショートを解決することはできない。また、特許文献2に開示の内容は、コイル端末同士が互いに接触する等の状態が存在しないため、この構成を適用しても上述のコイル端末同士のショートを解決することはできない。さらに、特許文献3には、コイル端末同士が互いに交差する部分は存在するものの、その部分においてコイル端末同士のショートを無くする点については、何等開示されていない。
【0007】
本発明は上記の事情にもとづきなされたもので、その目的とするところは、コイル端末同士が交差する状態であっても、コイル端末同士のショートを生じさせない磁性素子を提供しよう、とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の磁性素子の第1の側面は、コアと、絶縁性の被膜によって覆われている導線が巻回された状態でコアに配置されている第1及び第2のコイルと、コアを保持すると共に、複数の端子を有する端子台部を備えるケースと、を具備し、第1及び第2のコイルの巻回部から延びる第1及び第2のコイル端末が互いに交差するように配置され、第1及び第2のコイル端末のうちいずれか一方が端子台部の表側を通っていずれか一の端子に絡げられ、第1及び第2のコイル端末のうちいずれか他方が端子台部の裏側を通っていずれか他の端子に絡げられるものである。
【0009】
このように構成する場合には、第1及び第2のコイル端末が互いに交差するものの、第1及び第2のコイル端末のうちいずれか一方は端子台部の表側を通り、いずれか他方は端子台部の裏側を通って、それぞれ異なる端子に至る。そのため、第1のコイル端末と第2のコイル端末とは、互いに接触せず(重ねられず)に離れた状態とすることができる。それにより、第1のコイル端末と第2のコイル端末との間でショートが生じるのを防止することが可能となる。
【0010】
また、本発明の磁性素子の他の側面は、上述の発明において、ケースの内部には、端子台部よりも当該ケースの内方に向かって突出すると共に端子台部に向かうコアの移動を規制する突出部が設けられていることが好ましい。
【0011】
このように構成する場合、ケースの内部におけるコアの移動が突出部によって規制される。そのため、第1及び第2のコイル端末がコアと端子台部との間に挟まれて、断線等する不具合を防止可能となる。
【0012】
さらに、本発明の磁性素子の他の側面は、上述の発明において、ケースの内部には、端子台部とは異なる少なくとも2つの内壁面から突出する少なくとも3つ以上のリブが設けられていると共に、リブは、突出の先端に向かうにつれて尖形状に設けられていて、この尖形状のリブを先端側から押し潰すことにより、コアがケースの内部に保持されることが好ましい。
【0013】
このように構成する場合、リブの突出の先端側がコアによって押し潰されることにより、当該リブによってコアがケースに保持される。このため、ケースは、接着剤等を用いることなく、コアを保持可能となる。また、コアによりリブの突出の先端側が押し潰されるので、リブとコアとの間には所定の押し付け力が作用する。そのため、ケースの内部でコアが移動するのを防止する摩擦力を良好に与えることが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、コイル端末同士が交差する状態であっても、コイル端末同士のショートが生じるのを防止可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る磁性素子の構成を示す斜視図である。
【図2】図1の磁性素子の構成を示す側面図である。
【図3】図1の磁性素子のうち、ケースとメガネ型コアとの位置関係を示す底面図である。
【図4】図1の磁性素子において、磁性素子のX軸方向の中心においてYZ平面で切断した状態を示す側断面図である。
【図5】図1の磁性素子のメガネ型コアの構成を示す側面図である。
【図6】図1の磁性素子のケースの構成を示す斜視図である。
【図7】図1の磁性素子において、コイル端末の導出の様子を拡大して示す側面図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態に係る磁性素子の構成を示す斜視図である。
【図9】本発明の第2の実施の形態に係る磁性素子のケースの構成を示す正面断面図である。
【図10】本発明の第2の実施の形態において用いられるフープ材の構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1の実施の形態)
以下、本発明の第1の実施の形態に係る、磁性素子10について、図1から図7に基づいて説明する。
【0017】
なお、以下の説明においては、図1に示される、X1,X2,Y1,Y2,Z1,Z2を用いて説明するが、必要に応じて、X1側を左側、X2側を右側、Y1を奥側、Y2を手前側、Z1を上側、Z2を下側として説明する。
【0018】
図1等に示すように、本実施の形態の磁性素子10は、トランスであり、メガネ型コア20と、コイル30と、ケース40とを備えている。これらのうち、メガネ型コア20は、コアに対応している。このメガネ型コア20は、図2、図4および図5等に示すように、X2からX1に向かうように見ると、円形状をY軸に沿って引き伸ばした外形を有していて、その引き伸ばしに対応する部分は矩形を為している。そして、矩形の引き伸ばしに対応する部分の端部に、半円形状が位置する外観を呈している。
【0019】
また、メガネ型コア20は、X軸を中心とする2つの貫通孔21を有している。それぞれの貫通孔21の中心は、上述の半円形状の径方向中心と一致している。また、2つの貫通孔21の直径は、互いに同じか、または略同じとなっている。また、2つの貫通孔21は、所定の間隔だけ離間している。このメガネ型コア20は、その正面形状および平面形状が、それぞれ矩形状を呈している。
【0020】
なお、メガネ型コア20は、その材質を磁性材としているが、磁性材としては、例えば、ニッケル系のフェライトまたはマンガン系のフェライト等の種々のフェライト、パーマロイ、センダスト等を用いることが可能である。
【0021】
このメガネ型コア20には、導線31を巻回することにより、コイル30が配置される。コイル30は、本実施の形態では、2つ(一次側のコイルと二次側のコイル等)配置されている。2つのコイル30は、メガネ型コア20のうち、2つの貫通孔21(以後、2つの貫通孔21を区別する必要がある場合、手前側(Y2側)に位置する貫通孔21を貫通孔21Aとし、奥側(Y1側)に位置する貫通孔21を貫通孔21Bとする。)の間に存在する部分(以後、この部分を中間部22とする。)に巻回される。そして、この巻回によって、コイル30の巻回部32が構成されている。また、それぞれのコイル30には、巻回部32から延伸している一対のコイル端末33(すなわち、本実施の形態では、コイル端末33は合計4つ)が存在する。また、2つのコイル30は、Z軸方向に沿って、隣り合うように配置される。
【0022】
なお、2つのコイル30は、メガネ型コア20のうち、それぞれの貫通孔21からメガネ型コア20のY軸方向の端部に掛けての部分(以後、この部分を端部23(図5参照)とする。)に巻回されるようにしても良い。また、コイル30の個数は、2つに限られるものではなく、3つ以上としても良い。
【0023】
また、上述のメガネ型コア20は、ケース40に取り付けられる。ケース40は、たとえば樹脂のような絶縁性を有すると共に非磁性の材質から形成されている。このケース40は、図1、図6等に示すように、上面部41と、端面部42と、端子台部43と、を主要な部分としている。これらのうち、上面部41は、ケース40のうち上側(Z1側)に位置する平板状の部分であり、メガネ型コア20を上側(Z1側)から受け止めて、当該メガネ型コア20の上側(Z1側)へ向かう移動を規制する部分である。
【0024】
また、端面部42は、ケース40のうち奥側(Y1側)と手前側(Y2側)にそれぞれ位置する平板状の部分である。この端面部42は、本実施の形態では、上面部41よりもX軸方向の幅寸法が若干大きく設けられていて、当該上面部41よりも左側(X1側)および右側(X2)側にそれぞれ突出している。この端面部42の下側(Z2側)の端部(下端部)は、Z軸方向において、端子台部43の下側(Z2側)の端部(下端部)と同程度の位置に位置している。
【0025】
ケース40には、一対の端面部42を連結するように、一対の端子台部43が設けられている。この端子台部43においては、その高さ寸法(Z軸方向に沿う寸法)が、端面部42の高さ寸法の略半分程度となっている。また、一対の端子台部43のうち、左側(X1側)の部位の高さ寸法は当該端子台部43の中で最も高く設けられている。そして、端子台部43の左側(X1側)の部位から右側(X2側)に向かうと、所定だけXY平面に対して平行な部分が存在し、その平行な部分から更に右側(X2側)に向かうと、下側(Z2側)に向かって進行するテーパ部となっている。
【0026】
また、端子台部43には、複数(図1等においては、X軸方向の片側にそれぞれ6つずつ)の端子50が設けられている。端子台部43を形成する場合、たとえばインサート成型を行うことにより、端子台部43に対して複数の端子50の一方側が埋め込まれた状態で形成される。ここで、端子50は、端子台部43から右側(X2側)に向かって所定だけXY平面に対して平行を維持する平行部が存在するものの、その平行な部分を過ぎると、右側(X2側)に向かって進むにつれて下側(Z2側)に向かって進行するテーパ部となっている。また、テーパ部を過ぎて更に右側(X2側)に向かうと、再びXY平面に対して平行な実装部となる。この実装部は、実装基板の実装部位に、たとえばディッピングによる半田付け等にて接続される部分である。なお、実装部の下面のZ軸方向における位置は、端子台部43および端面部42のZ軸方向における位置よりも、下側(Z2側)に位置していることが好ましい。
【0027】
また、図2等に示すように、端子台部43のうち、下側(Z2側)の部位には、溝部43aが設けられている。溝部43aは、端子台部43の下側(Z2側)の部位から上側(Z1側)に向かって所定だけ窪んでいる部分である。この溝部43aの窪み寸法は、たとえば導線の直径よりも若干大きく設けられているものの、端子50の平行部よりも下側(Z2側)に位置している。また、溝部43aの設けられている部位は、端子台部43のY方向において、隣り合う端子50の間の部分となっている。それにより、端子台部43のうち端子50が存在する部分は、下側(Z2側)に向かう柱状となっている。
【0028】
上述のような端子台部43と、上面部41と、端面部42とで囲まれた部位は、ケース40の肉部が存在しない開口部分となっている(以後、この部分を側面開口部44とする。)。一方、ケース40の下側(Z2側)の部位であって、一対の端面部42と一対の端子台部43とで囲まれる部位も、ケース40の肉部が存在しない開口部分となっている(以後、この部分を下面開口部45とする。)。
【0029】
図4から明らかなように、側面開口部44のZ軸方向における寸法は、メガネ型コア20のZ軸方向における寸法よりも小さく設けられていて、当該メガネ型コア20がX軸方向に沿って、ケース40から外部に飛び出すのを防止する程度の大きさに設けられている。また、下面開口部45は、メガネ型コア20のXY方向における大きさよりも大きく設けられていて、当該下面開口部45からメガネ型コア20をケース40の内部空間に入り込ませることが可能となっている。
【0030】
ここで、図3、図6等に示すように、ケース40には、突出部46とリブ47とが設けられていて、これらは共にケース40の内部空間に向かって突出している。突出部46は、図6に示すように、底面形状が矩形状に設けられていて、Z方向を長手としている。すなわち、突出部46は、柱状に設けられている。また、突出部46は、ケース40の内部空間の四隅に設けられている。この突出部46のZ軸方向における寸法H1は、内部空間のZ軸方向における寸法H2の略半分程度となっていて、そのような寸法H1とすることにより、コイル端末33を側面開口部44に向けて引き出す際に、その引き出しが容易なものとなる。しかしながら、かかる寸法H1は、コイル端末33の引き出し性が損なわれないものであれば、寸法H2の略半分程度に限られるものではなく、適宜変更可能である。
【0031】
また、ケース40の内部空間に突出部46が存在することにより、図3に示すように、メガネ型コア20がX軸方向に沿って移動した場合でも、当該メガネ型コア20と端子台部43との間に、一定の隙間Sが確保される。このため、コイル端末33がメガネ型コア20と端子台部43との間に挟まれて、断線等する不具合を防止可能となっている。図3では、メガネ型コア20が内部空間において移動し、いずれかの突出部46に接触している状態が二点鎖線で示されている。このように、メガネ型コア20が、X軸方向のいずれかに片寄った場合でも、それぞれの端面部42に存在する2つのリブ47は、メガネ型コア20に対する接触状態を維持するように配置されている。
【0032】
また、リブ47は、端面部42の内壁に設けられていると共に、その底面形状を三角形状としていて、突出の先端に向かうにつれて尖形に形成されている。また、リブ47は、図3、図6等においては、それぞれの端面部42に2つずつ(合計4つ)設けられていて、それぞれの端面部42においては、X軸方向の中心を境として対称となるように配置されている。このリブ47は、メガネ型コア20を保持するものであるが、一方の端面部42に存在するリブ47と他方の端面部42に存在するリブ47との間の寸法P(図3においてY軸に沿う寸法)は、メガネ型コア20のY軸に沿う寸法Qよりも小さく設けられている。そのため、リブ47の先端側は、メガネ型コア20によって押し潰される状態となって、当該メガネ型コア20を保持する。
【0033】
なお、本実施の形態では、リブ47は合計4つ設けられている。しかしながら、リブ47の個数は4つに限られるものではなく、リブ47が少なくとも3つ以上存在していれば、メガネ型コア20を安定的に保持可能となっている。
【0034】
<コイル端末の導出に関して>
続いて、以上のような構成を有する磁性素子10において、コイル端末33をコイル30の巻回部32から引き出して端子50に絡げるまでの、コイル端末33の導出について述べる。
【0035】
図7に示すように、巻回部32から延伸しているコイル端末33のうち、一方は、貫通孔21Aの縁部E1を始点として導出される(第1のコイル端末に対応;以後、このコイル端末33をコイル端末33Aとする。)。このコイル端末33Aは、図7におけるZ軸に平行な中心線Lzを挟んで、他方のコイル端末33(第2のコイル端末に対応;以後、このコイル端末33をコイル端末33Bとする。)が絡げられる端子50(以後、この端子50を端子50Aとする。)よりも奥側(Y1側)に位置する端子50(以後、この端子50を端子50Bとする。)に絡げられる。
【0036】
このとき、コイル端末33Aは、端子台部43の表側を通って端子50Bに到達し、所定ターンだけ巻回され、その後半田付け等の手法によりコイル端末33Aと端子50Bとが電気的に導通可能な状態で固定される。この場合、手前側(Y2側)から奥側(Y1側)に向かうように見ると、図1から分かるように、コイル端末33Aは端子台部43に対して時計回りに巻回される状態となる。
【0037】
また、巻回部32から延伸しているコイル端末33のうち、他方のコイル端末33Bは、貫通孔21Bの縁部E2を始点として導出される。このコイル端末33Bは、図7における中心線Lzを挟んで、コイル端末33Aが絡げられる端子50Bよりも手前側(Y2側)に位置する端子50Aに絡げられる。このとき、コイル端末33Bは、端子台部43の裏側を通って端子50に到達し、所定ターンだけ巻回され、その後半田付け等の手法によりコイル端末33Bと端子50Aとが電気的に導通可能な状態で固定される。この場合、手前側(Y2側)から奥側(Y1側)に向かうように見ると、図1から分かるように、コイル端末33Bは端子台部43に対して反時計回りに巻回される状態となる。
【0038】
これを換言すると、コイル端末33Aは端子台部43の表側を通って端子50Bに絡げられる。また、コイル端末33Bは端子台部43の裏側を通って端子50Aに絡げられる。このとき、2つのコイル端末33A,33Bは、互いに交差するように配置されている状態となっている。図7においては、ある投影面(図7においては、この投影面はYZ平面に平行な投影面となっている)上で、このように2つのコイル端末33A,33Bが交差する様子が示されている。
【0039】
また、別の表現を用いると、コイル端末33Aは、縁部E1を始点とし、側面開口部44を通過して端子50Bに至り、その端子50Bに絡げられている。また、コイル端末33Bは、縁部E2を始点とし、下面開口部45を通過して端子50Aに至り、その端子50Aに絡げられている。そのため、コイル端末33Aのうち端子台部43に差し掛かる部位は、コイル端末33Bのうち端子台部43に差し掛かる部位よりも手前側(Y2側;一方側)に位置する。しかしながら、コイル端末33Aのうち端子50Bに絡げられる部位は、コイル端末33Bのうち端子50Aに絡げられる部位よりも奥側(Y1側;他方側)に位置している。
【0040】
<本実施の形態における効果>
以上のような構成の磁性素子10によれば、コイル端末33A,33Bが互いに交差するものの、コイル端末33Aは端子台部43の表側を通って端子50Bに至り、コイル端末33Bは端子台部43の裏側を通って端子50Aに至る。そのため、コイル端末33Aとコイル端末33Bとは、互いに接触せず(重ねられず)に離れた状態とすることができる。それにより、コイル端末33Aとコイル端末33Bとの間でショートが生じるのを防止することが可能となる。
【0041】
また、本実施の形態では、ケース40の内部には、突出部46が設けられている。そのため、ケース40の内部におけるメガネ型コア20の移動が突出部46によって規制される。それにより、コイル端末33A,33Bが、メガネ型コア20と端子台部43との間に挟まれて、断線等する不具合を防止可能となる。
【0042】
さらに、本実施の形態では、ケース40の内部には、リブ47が設けられている。そして、リブ47の突出の先端側が、メガネ型コア20によって押し潰されている。このため、リブ47によってメガネ型コア20がケース40に保持される。それによって、ケース40は、接着剤等を用いることなく、メガネ型コア20を保持可能となる。ここで、接着剤を用いてケース40にメガネ型コア20を固定する場合には、製造における工数が増えると共に、接着剤の使用によって磁性素子10の特性が変わる虞がある。しかしながら、本実施の形態では、ケース40にリブ47が存在することにより、接着剤を用いることなく、メガネ型コア20がケース40に保持されるので、製造における工数を減らすことが可能となり、また、接着剤を使用しないため磁性素子10の特性が変わるのを防ぐことができる。
【0043】
また、メガネ型コア20によりリブ47の突出の先端側が押し潰されるので、リブ47とメガネ型コア20との間には、所定の押し付け力が作用する。そのため、ケース40の内部でメガネ型コア20が移動するのを防止する摩擦力を良好に与えることが可能となる。
【0044】
(第2の実施の形態)
以下、本発明の第2の実施の形態に係る磁性素子10Aについて、図8から図10に基づいて説明する。なお、本実施の形態では、上述の第1の実施の形態と同一の部材については、同一の符号を用いて説明する。
【0045】
図8に示すように、磁性素子10Aの端子台部43には、鉤状凹部48が設けられている。鉤状凹部48は、端子台部43の端子50Aの上部側を、X軸方向に向かって略L字形状に切り欠くことにより構成されている。すなわち、鉤状凹部48は、端子台部43の上面から下方に向かって所定の深さだけ進行する垂直凹部48aと、その垂直凹部48aの下端側から奥側(Y1側)に向かって所定長さだけ進行する水平凹部48bとが存在している。
【0046】
また、図8に示すように、水平凹部48bの上部には、端子台部43が差し掛かっている。以後、この部分を、係止部48cと称呼する。
【0047】
また、図8に示すように、端子台部43の奥側(Y1側)の端部には、端子台部43を略矩形状に切り欠いた窪み部49が設けられている。図8から明らかなように、窪み部49の底部49aは、突出部46の下端よりも十分に下側に位置している。それにより、メガネ型コア20からコイル端末33を引き出し、最も奥側(Y1側)寄りに位置している端子50にコイル端末33を絡げる際、この窪み部49にコイル端末33を通過させることができるため、コイル端末33と突出部46とが干渉することがなくなる。
【0048】
また、図8、図9に示すように、本実施の形態では、端子50のうち一部(本実施の形態では合計4つの端子50)には、上部端子51が連続している。すなわち、図9に示すように、端子台部43には、端子50と上部端子51とが連続した、連続端子体52が取り付けられていて、この連続端子体52の一部が端子台部43に埋め込まれている状態となっている。そして、連続端子体52の端子台部43への埋め込み部分から、端子50と上部端子51とが突出している構成となっている。
【0049】
ここで、本実施の形態では、図10に示すようなフープ材60を、たとえば上型と下型とが付き合わされるタイプの金型の内部に設置する。このフープ材60は、井形状を為す外枠61を有していて、この外枠61で囲まれる部分の内方に向かうように端子用突出部62も設けられている。
【0050】
連続端子体52および端子50を形成する場合、溶融樹脂を金型内部のキャビティに流し込んで、端子用突出部62の一部が埋め込まれた状態でケース40を形成する。その後、図10における切断線C1と切断線C2に沿って右側(X2側)に位置する端子用突出部62を切断すると、図8および図9に示すような、連続端子体52が形成される。なお、端子用突出部62のうち、左側(X1側)に位置するものは、ケース40が形成された後に、切断線C3に沿って端子用突出部62を切断すると、図8および図9に示すような、端子50が形成される。
【0051】
なお、本実施の形態では、図8から明らかなように、端子台部43に鉤状凹部48が設けられている部位には連続端子体52(上部端子51)が存在しなく、同じく端子台部43に窪み部49が設けられている部位には連続端子体52(上部端子51)が存在しない。また、本実施の形態では、鉤状凹部48、窪み部49および連続端子体52は、ケース40のうち右側(X2側)に位置する端子台部43に設けられている。しかしながら、鉤状凹部48、窪み部49および連続端子体52のうち少なくとも1つは、ケース40のうち左側(X1側)に位置する端子台部43に設けるようにしても良い。
【0052】
<コイル端末の導出に関して>
続いて、以上のような構成を有する磁性素子10Aの、コイル端末33をコイル30の巻回部32から端子50に絡げるまでの導出について述べる。
【0053】
本実施の形態においては、コイル端末33Aについては、上述の第1の実施の形態のように、縁部E1を始点とし、端子台部43の表側を通って端子50Bに到達し、所定ターンだけ巻回され、その後半田付け等の手法によりコイル端末33Aと端子50Bとが電気的に導通可能な状態で固定される。
【0054】
しかしながら、コイル端末33Bは、始点である縁部E2から下側(Z2側)に向かって進行すると、端子台部43の裏側を通り、その後鉤状凹部48(特に水平凹部48b)に入り込んでいる。このとき、コイル端末33Bとコイル端末33Aとの間には、係止部48cが存在している。すなわち、係止部48cがコイル端末33Bを上部から押さえ付けているため(図8参照)、コイル端末33Aとコイル端末33Bとは直接接触せず、離れた状態を維持できる。
【0055】
そして、この鉤状凹部48(特に水平凹部48b)を通過すると、端子台部43の表側に回り込んで、その後端子50Aに到達する。そして、所定ターンだけ巻回され、その後半田付け等の手法によりコイル端末33Bと端子50Aとが電気的に導通可能な状態で固定される。
【0056】
<本実施の形態における効果>
以上のような構成の磁性素子10Aによれば、コイル端末33Bが端子台部43の裏側から鉤状凹部48を通過し、端子台部43の表側に回り込むことにより、コイル端末33Aとコイル端末33Bとは、互いに接触せず(重ねられず)に離れた状態とすることができる。それにより、コイル端末33Aとコイル端末33Bとの間でショートが生じるのを防止することが可能となる。
【0057】
また、本実施の形態では、端子台部43に窪み部49が設けられている。そのため、最も奥側(Y1側)寄りに位置している端子50にコイル端末33を絡げる際、この窪み部49にコイル端末33を通過させることができ、コイル端末33と突出部46とが干渉するのを防止可能となる。
【0058】
さらに、本実施の形態では、連続端子体52が設けられている。そのため、コイル端末33を端子50のみならず、上部端子51に対しても絡げることが可能となり、コイル端末33を絡げる際の選択の幅を広げることが可能となる。また、一方のコイル端末33を端子50に絡げ、その隣に位置する連続端子体52の上部端子51に他方のコイル端末33を絡げるようにすれば、絡げる位置で隣り合うコイル端末33の間の間隔を広げることが可能となり、それらの間でショートが生じるのを一層良好に防止可能となる。
【0059】
<変形例>
以上、本発明の一実施の形態に係る磁性素子10,10Aについて説明したが、本発明はこれ以外にも種々変形可能となっている。以下、それについて述べる。
【0060】
上述の各実施の形態においては、コアとしてメガネ型コア20を用いる場合について説明している。しかしながら、コアは、メガネ型コア20には限られず、たとえば、ドラム型コア、側面形状がT字型のコア等をコアとして用いるようにしても良い。また、メガネ型コア20は、複数のコア部材を付き合わせる等により構成されていても良い。
【0061】
また、上述の各実施の形態では、コイル30について、丸線の導線31から構成されるものについて説明している。しかしながら、コイルは、丸線の導線31から構成されるものには限られず、平角線等の幅広の導線から構成されていても良い。
【0062】
また、上述の各実施の形態では、ケース40としては、上面部41、端面部42および端子台部43を有し、さらに側面開口部44および下面開口部45を有するものについて説明している。しかしながら、ケースは、このような形状には限られず、たとえば、上面部41または端面部42が存在しないものをケースとしても良い。また、端子台部43が別体的なものをケースとしても良い。
【0063】
また、上述の各実施の形態における突出部46は、柱状には限られず、メガネ型コア20がX軸方向に沿って移動した場合に、当該メガネ型コア20と端子台部43との間に隙間Sが確保可能であれば、どのような形状であっても良い。なお、柱状以外の突出部の形状としては、円柱状、楕円柱状、多角柱状、突出部46のようなZ軸を長手とする柱状ではなくX軸またはY軸を長手とする種々の形状等が挙げられる。また、上述の各実施の形態のケース40において、突出部46を省略する構成を採用しても良い。
【0064】
また、上述の各実施の形態におけるリブ47は、その底面形状を三角形状としているが、当該リブ47は、突出の先端に向かうにつれて尖形状となっていれば、どのような形状であっても良い。なお、底面形状が三角形状以外のものとしては、四角形状等の角部の存在する多角形状、角部は存在するが他の辺が曲線となる形状等が挙げられる。また、リブ47は、ケース40とは別の材質から構成されていても良い。たとえば、リブ47は、ケース40にエラストマーを付着させることによって構成されていても良い。また、上述の各実施の形態のケース40において、リブ47を省略する構成を採用しても良い。
【0065】
また、上述の第2の実施の形態では、端子50は、連続端子体52の一部として構成されている。しかしながら、連続端子体52はこのような形状には限られず、たとえば、2つの上部端子と端子50とが連続している形状としても良い。
【0066】
また、上述の各実施の形態では、本発明を適用する磁性素子として、トランスの場合について説明している。しかしながら、磁性素子はトランスに限られるものではなく、トランス以外の磁性素子(インダクタ、チョークコイル、フィルタ等)に本発明を適用するようにしても良い。また、上述の実施の形態における磁性素子10は、その用途は特に限定されるものではなく、種々の用途に用いることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の磁性素子は、電気機器の分野において利用することができる。
【符号の説明】
【0068】
10…磁性素子
20…メガネ型コア(コアに対応)
21,21A,21B…貫通孔
22…中間部
23…端部
30…コイル
31…導線
32…巻回部
33,33A,33B…コイル端末
40…ケース
41…上面部
42…端面部
43…端子台部
44…側面開口部
45…下面開口部
46…突出部
47…リブ
48…鉤状凹部
48a…垂直凹部
48b…水平凹部
49…窪み部
50…端子
51…上部端子
52…連続端子体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアと、
絶縁性の被膜によって覆われている導線が巻回された状態で上記コアに配置されている第1及び第2のコイルと、
上記コアを保持すると共に、複数の端子を有する端子台部を備えるケースと、
を具備し、
上記第1及び第2のコイルの巻回部から延びる第1及び第2のコイル端末が互いに交差するように配置され、
上記第1及び第2のコイル端末のうちいずれか一方が上記端子台部の表側を通っていずれか一の上記端子に絡げられ、上記第1及び第2のコイル端末のうちいずれか他方が上記端子台部の裏側を通っていずれか他の上記端子に絡げられる、
ことを特徴とする磁性素子。
【請求項2】
請求項1記載の磁性素子であって、
前記ケースの内部には、前記端子台部よりも当該ケースの内方に向かって突出すると共に前記端子台部に向かう前記コアの移動を規制する突出部が設けられていることを特徴とする磁性素子。
【請求項3】
請求項1または2記載の磁性素子であって、
前記ケースの内部には、前記端子台部とは異なる少なくとも2つの内壁面から突出する少なくとも3つ以上のリブが設けられていると共に、
上記リブは、突出の先端に向かうにつれて尖形状に設けられていて、
この尖形状のリブを先端側から押し潰すことにより、前記コアが前記ケースの内部に保持される、
ことを特徴とする磁性素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−40443(P2011−40443A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−183832(P2009−183832)
【出願日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【出願人】(000107804)スミダコーポレーション株式会社 (285)
【Fターム(参考)】