説明

磁束密度の高い無方向性電磁熱延鋼帯の製造方法

【課題】低コストで高磁束密度を得ることの出来る無方向性電磁熱延鋼帯の製造法を提供する。
【解決手段】鋼中に質量%で0.1%≦Si≦4.0%、0.1%≦Mn≦2.0%、0.03%≦P≦0.1%、Al≦2.5%、C≦0.004%、S≦0.003%、N≦0.003%、Ti≦0.005%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる溶鋼を板厚20mm以上100mm以下の薄鋳片に連続鋳造し、引き続き熱間圧延を施し、板厚0.4mm以上2mm以下とする無方向性電磁熱延鋼帯の製造方法において、連続鋳造後の薄鋳片の熱間圧延開始温度F0T、熱間圧延終了温度FTをそれぞれ650℃≦F0T≦850℃、550℃≦FT≦800℃以下に定めることを特徴とする無方向性電磁熱延鋼帯の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機器の鉄心材料として用いられる、磁束密度が高い無方向性電磁熱延鋼帯の製造方法に関するものである。特に、冷間圧延、再結晶焼鈍工程を省略することができ、製造コストの低い無方向性電磁熱延鋼帯の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化などの世界的な環境問題への意識の高まりにより、無方向性電磁熱延鋼帯が使用される回転機、コンプレッサーおよび中、小型変圧器、リアクトル等およびこれらが組み込まれた機器において効率規制が実施されつつある。このため、従来はローグレードの無方向性電磁熱延鋼帯が使用されてきた用途においても、より低鉄損のミドルグレードおよびハイグレードの無方向性電磁鋼板を使用する動きが広がりつつある。このため、無方向性電磁鋼板に対し、高磁束密度かつ低鉄損化への要請が従来よりも強まっている。
【0003】
無方向性電磁鋼板の低鉄損化は主としてSi、Al添加による電気抵抗率の増加により、鉄心を励磁した際にそれぞれの鋼板に発生する渦電流により生じるジュール熱損失を低減することにより行われてきた。また、同じ目的により、板厚を薄手化して渦電流の流れる経路を短くすることにより渦電流損を低減することも行われてきた。
【0004】
また、無方向性電磁鋼板が使用される各種機器の損失低減のためには、無方向性電磁鋼板を磁化するコイルに流れる励磁電流により生じるジュール熱損失である銅損の低減も重要である。この銅損の低減のためにはより低い励磁電流でより高い磁束密度を発現する素材が必要である。
【0005】
このためには無方向性電磁鋼板の集合組織を制御し、高磁束密度の無方向性電磁鋼板の開発が必須となる。磁束密度向上により鉄心の磁化はより強力になるため、鉄心の小型化が可能となり、回転機においてはトルクが高まり小型高出力化が可能となる。このように、高磁束密度無方向性電磁鋼板を用いることにより、回転機、変圧器などが小型軽量化できる利点がある。また、磁気シールドにおいてはシールド性が高まると同時に、シールドの薄手化が可能となる。
【0006】
従来、低鉄損無方向性電磁鋼板に主として添加されてきたSi、Al等の電気抵抗率の高い元素は、その含有量が増加すると飽和磁束密度が低下するため、動作磁束密度を下げざるをえず、結果として鉄心サイズが大きくなり、回転機、変圧器などが大型化するという課題があった。
【0007】
これに対し、本発明でその製造方法を開示する高磁束密度無方向性電磁熱延鋼帯では、磁束密度向上により回転機、鉄心ともに小型化が可能になるとともに、これらを積載した自動車、電車のような移動体においては系全体の重量が軽減されることにより稼働時のエネルギー損失を低減できるという利点もある。
【0008】
このように、高磁束密度無方向性電磁熱延鋼帯が実現することにより、鉄心及び回転機の動作時の銅損を低減でき小型化に寄与するのみならず、それを含めた装置全体の系へも多大な波及効果がある。
【0009】
一方で、新興国から供給される安価な無方向性電磁鋼板に対抗するために、製造コストの低減は喫緊の課題であり、従来の無方向性電磁鋼板製造法よりもはるかに安価な製造法の開発が求められていた。また、無方向性電磁鋼板を使用する需要家におけるコスト低減への要求は海外との大競争時代の中で高まっており、需要家からも従来よりも低コストかつ磁気特性の優れた無方向性電磁鋼板製造方法の開発が求められていた。
【0010】
この課題を解決する方法として、設備投資額が少ない薄鋳片製造プロセスが注目されつつあった。
【0011】
以下、本発明で製造された無方向性電磁鋼板を、無方向性電磁熱延鋼帯もしくは電磁熱延鋼帯と称し、従来技術による熱延電磁鋼板もしくは冷延工程の後、仕上焼鈍工程で再結晶組織を得る無方向性電磁鋼板もしくは冷延電磁鋼板と区別する。
【0012】
ここで無方向性電磁鋼板の磁気特性を向上させる原理について述べる。
【0013】
無方向性電磁鋼板で用いられるbcc鉄では結晶の単位格子の<100>方向が磁化容易軸に一致する。よって、無方向性電磁鋼板の集合組織では磁束が流れる板面内にbcc鉄の磁化容易軸が存在するランダムキューブ方位が理想的であるとされる。これはミラー指数を用い、v、wを任意の指数として{100}<0vw>と表記される。一般的に板面内に2つの<100>軸を有する結晶方位をキューブ方位と称する。
【0014】
しかしながら通常の冷間圧延、再結晶焼鈍により得られる無方向性電磁鋼板の集合組織では板面法線方向に<111>軸が一致したγファイバー集合組織が発達し、理想とするキューブ方位の存在はわずかである。
【0015】
これに対し、近年、特許文献1において、αγ変態を有しないSi含有量4%以上の薄鋳片に5%以上40%以下の低い冷延を施すことによるランダムキューブ集合組織を有する無方向性電磁鋼板の製造法が開示された。
【0016】
この先願では、薄鋳片の鋳造時に形成される柱状晶を利用することを技術思想としている。すなわち、薄鋳片の凝固組織に発達する柱状晶はその成長方向である板面法線方向に結晶の<100>軸が一致するため、他の2方向の<100>軸は板面内に位置し、無方向性電磁鋼板の特性に好ましいキューブ方位を有している。
【0017】
そして、この技術では薄鋳片に一定範囲の圧延率で冷間圧延を施すことにより、凝固の際に薄鋳片内に形成された柱状晶を核として仕上焼鈍時にキューブ方位の結晶粒を成長させ、仕上焼鈍後の成品のキューブ方位を富化させることにより無方向性電磁鋼板の磁気特性を改善することを技術思想とするものである。
【0018】
この先願ではSi含有量が4%以上であり、凝固から室温までα単相でαγ変態が生じない。このため凝固時に形成された方位のα相とγ層の間の変態による方位のランダム化が生じず、凝固中に形成されたキューブ方位を有する柱状晶を有効に活用し、キューブ方位を有する無方向性電磁鋼板が製造可能である。
【0019】
一方、この先願においては、凝固鋳片から最終板厚に至るまでに施す冷間圧延率が5%以上40%未満の小さい範囲に限られるため、冷間圧延による鋼帯の形状矯正の余地が少ないという課題がある。なぜなら、無方向性電磁鋼板は積層し鉄心を形成して使用するため、自動車鋼板などと比較して高い板厚精度を必要とするからである。
【0020】
特許文献2には、Si含有量が4%以下の溶鋼を直接連続鋳造して薄鋳片の板厚を30mm以上140mm以下とし、これを熱間圧延し0.7mm以上4.5mm以下の鋼帯とし、これを30%以上85%以下の最終冷延率で最終板厚とする無方向性電磁鋼板の製造方法が開示されている。
【0021】
この先願においては、通常200mm程度の連続鋳造スラブよりも板厚が薄い薄鋳片を出発材として熱間圧延で熱延鋼帯とするため、凝固鋳片から熱延鋼帯までの圧下率を低くすることが可能である。
【0022】
このため、薄鋳片において発達したキューブ方位を有する柱状晶の熱延鋼帯における残存率を高めることにより、圧延・再結晶後の集合組織を制御し、磁気特性を改善することを技術思想としている。
【0023】
この先願では、薄鋳片において発達したキューブ方位を有する柱状晶が、その後の熱間圧延中に再結晶により他の方位に変化しやすいため、キューブ方位の残存率の制御が困難であり、最終製品の磁気特性が不安定になりやすいという課題があった。
【0024】
また、この先願では、熱延鋼帯を冷延し、仕上焼鈍するため、コストが増加するという課題があった。
【0025】
特許文献3には、双ロール鋳造法などにより板厚5mm以下のストリップを連続鋳造し、冷却速度を制御する鋳造方法が、特許文献4には、冷却鋳造ロールにより板厚5mmのストリップを連続鋳造し、当該ストリップを熱間圧延に供し少なくとも15%の圧延を施す技術が公開されている。
【0026】
また、―特許文献5には、たとえば2mm以下の板厚の薄ストリップを鋳造後に冷却を制御する方法が開示されている。
【0027】
また、特許文献6には、鋼さいのMnO、SiO2、Al2O3からなる酸化物組成
を制御し、薄ストリップの鋳造を安定して行う方法が開示されている。
【0028】
しかしながら、凝固ストリップが5mm以下の薄手ストリップの場合、たとえ少なくとも15%の熱間圧延を施したとしても最終板厚に至るまでに制御熱延による熱延鋼帯の集合組織制御の余地は少なく、高磁束密度無方向性電磁熱延鋼帯を得ることが困難である。
【0029】
さらに、凝固ストリップの板厚が5mm以下では、仕上熱延による最終板厚までの板厚形状矯正の余地が少なく、板厚精度を向上が困難であり、無方向性電磁熱延鋼帯に必要とされる板厚精度が得難いという課題があった。
【0030】
特許文献7には熱延電磁鋼板の製造法として粗圧延後のシートバーを巻き取って均熱化し、仕上圧延を施す技術が開示されている。しかしこの製造方法の技術思想は、仕上圧延中の熱延鋼板の再結晶を促進させるため、再結晶集合組織はbcc鉄におけるγファイバーとなり、磁束密度は低下する。
【0031】
加えて、この先願の実施例では得られた熱延電磁鋼板を焼鈍するので、主方位であるγファイバーは焼鈍中の結晶粒成長に伴いさらに発達し、磁束密度は一層低下するという課題がある。
【0032】
このように、従来の薄鋳片製造設備もしくは熱延電磁鋼板製造方法は無方向性電磁熱延鋼板の製造プロセスに最適化されておらず改善の余地が多々あり、昨今の需要家において開発要請の強い、低コストでかつ鉄心の小型化に有利な高磁束密度無方向性電磁熱延鋼板を製造できるには至らず、需要家の前記の要請に応えることは出来なかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0033】
【特許文献1】特開平5−279740号公報
【特許文献2】特開2002−206114号公報
【特許文献3】特表2004−508942号公報
【特許文献4】特表2004−508944号公報
【特許文献5】特表2004−509770号公報
【特許文献6】特表2006−515801号公報
【特許文献7】特開平9−194939号公報
【特許文献8】特開昭55−24942号公報
【特許文献9】特開2006−124800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0034】
本発明は、設備投資額の少ない薄鋳片鋳造設備を活用し、適切な厚みの薄鋳片を出発材とし、かつ適切な温度域で仕上熱延を行い電磁熱延鋼帯を製造することにより、成品において従来の薄鋳片製造設備では得られなかった優れた集合組織を形成し、圧延方向から45°方向の磁束密度が高いという特徴を持つ無方向性電磁熱延鋼帯の製造技術を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0035】
本発明の要旨とするところは、以下の通りである。
(1)鋼中に質量%で
0.1%≦Si≦4.0%
0.1%≦Mn≦2.0%
0.03%≦P≦0.1%
Al≦2.5%
C≦0.004%
S≦0.003%
N≦0.003%
Ti≦0.005%
を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる溶鋼を板厚20mm以上100mm以下の薄鋳片に連続鋳造し、引き続き熱間圧延を施し、板厚0.4mm以上2mm以下の無方向性電磁熱延鋼帯を得る製造方法において、
連続鋳造後の薄鋳片の熱間圧延開始温度F0T、熱間圧延終了温度FTをそれぞれ以下のように定めることを特徴とする無方向性電磁熱延鋼帯の製造方法。
【0036】
650℃≦F0T≦850℃
550℃≦FT≦800℃
(2)鋼中に質量%で
0.1%≦Si≦4.0%
0.1%≦Mn≦2.0%
0.03%≦P≦0.1%
Al≦2.5%
C≦0.004%
S≦0.003%
N≦0.003%
Ti≦0.005%
0.001%≦REM≦0.01%
を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる溶鋼を板厚20mm以上100mm以下の薄鋳片に連続鋳造し、引き続き熱間圧延を施し、板厚0.4mm以上2mm以下の無方向性電磁熱延鋼帯を得る製造方法において、
連続鋳造後の薄鋳片の熱間圧延開始温度F0T、熱間圧延終了温度FTをそれぞれ以下のように定めることを特徴とする無方向性電磁熱延鋼帯の製造方法。
【0037】
650℃≦F0T≦850℃
550℃≦FT≦800℃
(3)鋼中に質量%で
0.1%≦Si≦4.0%
0.1%≦Mn≦2.0%
0.03%≦P≦0.1%
Al≦2.5%
0.1%≦Cr≦10%
C≦0.004%
S≦0.003%
N≦0.003%
Ti≦0.005%
を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる溶鋼を板厚20mm以上100mm以下の薄鋳片に連続鋳造し、引き続き熱間圧延を施し、板厚0.4mm以上2mm以下の無方向性電磁熱延鋼帯を得る製造方法において、
連続鋳造後の薄鋳片の熱間圧延開始温度F0T、熱間圧延終了温度FTをそれぞれ以下のように定めることを特徴とする無方向性電磁熱延鋼帯の製造方法。
【0038】
650℃≦F0T≦850℃
550℃≦FT≦800℃
(4)鋼中に質量%で
0.1%≦Si≦4.0%
0.1%≦Mn≦2.0%
0.03%≦P≦0.1%
Al≦2.5%
0.1%≦Cr≦10%
C≦0.004%
S≦0.003%
N≦0.003%
Ti≦0.005%
0.001%≦REM≦0.01%
を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる溶鋼を板厚20mm以上100mm以下の薄鋳片に連続鋳造し、引き続き熱間圧延を施し、板厚0.4mm以上2mm以下の無方向性電磁熱延鋼帯を得る製造方法において、
連続鋳造後の薄鋳片の熱間圧延開始温度F0T、熱間圧延終了温度FTをそれぞれ以下のように定めることを特徴とする無方向性電磁熱延鋼帯の製造方法。
【0039】
650℃≦F0T≦850℃
550℃≦FT≦800℃
(5)鋼中に質量%で
0.1%≦Si≦4.0%
0.1%≦Mn≦2.0%
0.03%≦P≦0.1%
Al≦2.5%
C≦0.004%
S≦0.003%
N≦0.003%
Ti≦0.005%
さらに、Sn、Cu、Sbの少なくとも一種類をそれぞれ0.01%以上0.1%以下の範囲で含有し、
残部がFeおよび不可避的不純物からなる溶鋼を板厚20mm以上100mm以下の薄鋳片に連続鋳造し、引き続き熱間圧延を施し、板厚0.4mm以上2mm以下の無方向性電磁熱延鋼帯を得る製造方法において、
連続鋳造後の薄鋳片の熱間圧延開始温度F0T、熱間圧延終了温度FTをそれぞれ以下のように定めることを特徴とする無方向性電磁熱延鋼帯の製造方法。
【0040】
650℃≦F0T≦850℃
550℃≦FT≦800℃
(6)鋼中に質量%で
0.1%≦Si≦4.0%
0.1%≦Mn≦2.0%
0.03%≦P≦0.1%
Al≦2.5%
C≦0.004%
S≦0.003%
N≦0.003%
Ti≦0.005%
0.001%≦REM≦0.01%
さらに、Sn、Cu、Sbの少なくとも一種類をそれぞれ0.01%以上0.1%以下の範囲で含有し、
残部がFeおよび不可避的不純物からなる溶鋼を板厚20mm以上100mm以下の薄鋳片に連続鋳造し、引き続き熱間圧延を施し、板厚0.4mm以上2mm以下の無方向性電磁熱延鋼帯を得る製造方法において、
連続鋳造後の薄鋳片の熱間圧延開始温度F0T、熱間圧延終了温度FTをそれぞれ以下のように定めることを特徴とする無方向性電磁熱延鋼帯の製造方法。
【0041】
650℃≦F0T≦850℃
550℃≦FT≦800℃
(7)鋼中に質量%で
0.1%≦Si≦4.0%
0.1%≦Mn≦2.0%
0.03%≦P≦0.1%
Al≦2.5%
0.1%≦Cr≦10%
C≦0.004%
S≦0.003%
N≦0.003%
Ti≦0.005%
さらに、Sn、Cu、Sbの少なくとも一種類をそれぞれ0.01%以上0.1%以下の範囲で含有し、
残部がFeおよび不可避的不純物からなる溶鋼を板厚20mm以上100mm以下の薄鋳片に連続鋳造し、引き続き熱間圧延を施し、板厚0.4mm以上2mm以下の無方向性電磁熱延鋼帯を得る製造方法において、
連続鋳造後の薄鋳片の熱間圧延開始温度F0T、熱間圧延終了温度FTをそれぞれ以下のように定めることを特徴とする無方向性電磁熱延鋼帯の製造方法。
【0042】
650℃≦F0T≦850℃
550℃≦FT≦800℃
(8)鋼中に質量%で
0.1%≦Si≦4.0%
0.1%≦Mn≦2.0%
0.03%≦P≦0.1%
Al≦2.5%
0.1%≦Cr≦10%
C≦0.004%
S≦0.003%
N≦0.003%
Ti≦0.005%
0.001%≦REM≦0.01%
さらに、Sn、Cu、Sbの少なくとも一種類をそれぞれ0.01%以上0.1%以下の範囲で含有し、
残部がFeおよび不可避的不純物からなる溶鋼を板厚20mm以上100mm以下の薄鋳片に連続鋳造し、引き続き熱間圧延を施し、板厚0.4mm以上2mm以下の無方向性電磁熱延鋼帯を得る製造方法において、
連続鋳造後の薄鋳片の熱間圧延開始温度F0T、熱間圧延終了温度FTをそれぞれ以下のように定めることを特徴とする無方向性電磁熱延鋼帯の製造方法。
【0043】
650℃≦F0T≦850℃
550℃≦FT≦800℃
(9)前記(1)〜(8)のいずれかにより得られた無方向性電磁熱延鋼帯。
(10)前記(1)〜(8)のいずれかに記載の方法により製造した無方向性電磁熱延鋼帯により製造した電磁部品であって、該電磁部品が、EIコア、回転機用分割コア、トランス用額縁鉄心、小型鉄心、リアクトル用鉄心、回転機用ステータ、回転機用ロータ、蛍光灯用安定器、螺旋コア、磁気シールドのいずれかであることを特徴とする電磁部品。
【発明の効果】
【0044】
本発明によれば、磁束密度の高い無方向性電磁熱延鋼帯を低コストで製造することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
発明者らは、設備投資額を低減可能な薄鋳片鋳造プロセスにおいて高磁束密度を達成する無方向性電磁熱延鋼帯の安価な製造方法について鋭意検討を重ねた結果、薄鋳片の鋳造厚みを一定条件に制御し、薄鋳片から電磁熱延鋼帯に至るまでの熱間圧延率を制御し、同時に薄鋳片を850℃以下の低温で熱間圧延を行うことで、電磁熱延鋼帯の集合組織を適切に制御し、圧延方向から45度方向の磁束密度が著しく向上することを新規に見出した。
【0046】
これにより磁気特性が優れ、かつ、冷間圧延、再結晶焼鈍工程を省略し、製造コストの低い製造方法を提供することが可能となった。
【0047】
これは先に述べた特許文献1および特許文献2のように、薄鋳片に存在するキューブ方位の柱状晶を活用し無方向性電磁鋼板の集合組織を制御する技術とは、全く異なる技術思想に基づくものである。
【0048】
これにより、従来技術では高磁束密度無方向性電磁鋼板を得るために、高炉、製鋼、粗熱延および仕上げ熱延からなる長大な設備により得た熱延板に、熱延板焼鈍などのコストのかかる追加工程を施し、その後冷延し仕上焼鈍したプロセスを、簡略化することが可能となる。
【0049】
すなわち、本発明では、設備投資額の少ない薄鋳片鋳造装置と熱間圧延により、低コストかつ高磁束密度の無方向性電磁熱延鋼帯の製造方法を提供するものである。特にこの製造法を行う際に、鋳造後の薄鋳片を適切な条件下で熱間圧延し電磁熱延鋼帯に仕上げることが、本発明が意図する高磁束密度無方向性電磁熱延鋼帯の製造に欠かせないことを開示するものである。
【0050】
まず、成分について説明すると、
Siは本発明においては、過度の添加は製品の磁束密度を低減させるため、その含有量を4.0%以下に制限する。一方、磁束密度の向上を妨げない範囲で電気抵抗率を確保して渦電流損を低減させる目的で0.1%以上の添加量が必要である。
【0051】
AlはSiと同様に電気抵抗率を確保するか、脱酸を目的として0.01%以上添加する。添加量が2.5%超であると磁束密度を低下させるため2.5%以下に添加量を定める。脱酸および電気抵抗率の確保はSi、Mn等で可能であるので本発明ではAlの添加は必須ではない。
【0052】
よって、Alの添加量には下限を定めず、2.5%≦Alと定める。不可避不純物として混入したAlは、その酸化能が高いため濃度は分析測定限界以下の「tr.」となる。これは多くの場合、Al<0.001%である。
【0053】
Cは過剰に含有すると使用中に磁気時効を起こし鉄損が増加するので含有量を0.004%以下に定める。
【0054】
本発明は高磁束密度無方向性電磁熱延鋼帯の製造を目的とするが、さらに、析出物を低減して鉄損を改善するためには、C含有量は0.003%以下であることが好ましく、さらには0.002%以下であることがより好ましい。
【0055】
S、Nは熱間圧延工程におけるスラブ加熱中に一部再固溶し、熱間圧延中にMnS、AlNの微細な析出物を再析出して仕上焼鈍時の結晶粒成長を抑制し、成品の磁束密度、鉄損が悪化する原因となる。このためその含有量は共に0.003%以下とする必要がある。
【0056】
その他に、本発明では脱酸のみならず電気抵抗率の向上もしくは再結晶集合組織制御、析出物MnS無害化などの目的のためにMnを添加してもよい。Mn添加量が0.1%未満ではMn添加の効果が得られないので、Mn添加量は0.1%以上に定める。また、Mn添加量が2.0%を超えると磁束密度が低下するのでMn添加量は2.0%以下に定める。
【0057】
また、Mnは無方向性電磁熱延鋼帯の製鋼過程で不可避不純物として0.1%以下が混入する場合がある。
【0058】
Pは本発明では硬度を上昇させ打ち抜き性を改善する目的で添加してもよい。P添加量が0.03%未満であるとその効果が十分でなく、0.1%超であると鉄損が増大するのでP添加量は0.03%以上0.1%以下に定める。P添加はSi含有量が少なく硬度の低い無方向性電磁熱延鋼帯において特に有効である。一方Si含有量が1%以上の場合は硬度が足りているのでP添加は必ずしも必要がない。
【0059】
また、0.025%以下のPは不可避不純物として含有されるが、不可避不純物のレベルの含有量では無方向性電磁熱延鋼帯の磁気特性に影響を及ぼさない。また、下記に述べるように、Crを0.1%未満、Sn、Cu、Sbをそれぞれ0.01%未満、REMを0.001%未満含んでも、本発明の磁気特性に影響を与えるものではなく、許容される。
【0060】
また、本発明では電気抵抗率を上昇させる目的でCrを添加してもよい。この場合、Cr添加量が0.1%未満であると添加効果が得られず、Cr添加量が10%超であると、鉄損が増加するので、Cr添加量は0.1%以上10%以下に定める。ただし、0.1%未満の添加であっても本発明の磁気特性を阻害するものではなく、本発明の範囲に含まれる。
【0061】
その他に、無方向性電磁熱延鋼帯の成品の再結晶集合組織改善を目的に、Sn、Cu、Sbの少なくとも一種類をそれぞれ0.01%以上0.1%以下の範囲で添加してもよい。この目的のための添加量は、0.01%未満ではその添加効果が得られず、0.1%超ではその効果が飽和しコスト増となるのでその添加量は0.01%以上かつ0.1%以下と定める。ただし、0.01%未満の添加であっても本発明の磁気特性を阻害するものではなく、本発明の範囲に含まれる。
【0062】
また、有害な硫化物析出を低減するために特許文献8に示されたごときCa添加を行ってもよい。
【0063】
Tiは微細なTiNとして析出し鉄損を増加させる。また、固溶Tiは、無方向性電磁熱延鋼帯に歪み取り焼鈍を施した際、該歪取り焼鈍中にTiCとして析出し、鉄損を増加させる。このようにTiは無方向性電磁熱延鋼帯の磁性にとって有害な元素である。
【0064】
Ti含有量が0.005%超であると鋼中に微細なTiNが多数析出し仕上焼鈍もしくは歪取り焼鈍中の無方向性電磁熱延鋼帯の結晶粒成長を妨げ、鉄損が増加し好ましくないのでTi含有量は0.005%以下と定める。
【0065】
薄鋳片プロセスでは、厚さ200mm程度のスラブを鋳造する連続鋳造プロセスに比べ、凝固の際の冷却速度が速く析出物が微細化しやすいため、Ti含有量は0.002%以下に低減することが好ましい。磁気特性をさらに向上させ、高磁束密度を達成するためには、さらに、0.001%以下にTi含有量を低減することがより好ましい。
【0066】
鋼中のSを固定して有害な硫化物を低減するとともにTiNを粗大に複合析出させ、鉄損を改善する効果的な方法として、特許文献9に開示されたごとく溶鋼にREMを添加してもよい。
【0067】
REMはREMオキシサルファイドを形成するが、本発明ではこのREMオキシサルファイド形成が無方向性電磁熱延鋼帯の磁気特性改善に特に有効に作用する。
【0068】
REM添加量が0.001%未満であると添加効果が十分でないので0.001%以上の添加に定める。また、0.01%超であると鉄損が増加するのでREM添加量は0.01%以下に定める。ただし、0.001%未満の添加であっても本発明の磁気特性を阻害するものではなく、本発明の範囲に含まれる。
【0069】
REMオキシサルファイドであるREMSはSをスカベンジングすると同時に、TiNをREMS上に複合析出させ、実質的に析出物を粗大化させることでTiの無害化も同時に可能となる。これにより鉄損の低減が一層促進される効果がある。
【0070】
このためにO含有量はREMSにおけるREM当量であることが好ましい。REM添加は特許文献9に開示されたごとく公知の方法で添加してもよい。
【0071】
ここで、REMとは希土類元素を意味し、元素周期律表においてランタノイドと称されるランタンからルテシウムまでの15元素にスカンジウムとイットリウムを加えた合計17元素の総称である。
【0072】
本発明ではそのうちの1種だけを用いても、2種類以上の元素を組み合わせて用いてもその効果は発揮され、本発明で規定した添加量の範囲内であれば無方向性電磁熱延鋼帯においてその効果は発揮される。
【0073】
薄鋳片では鋳造後、一般の連続鋳造スラブのようにスラブ加熱炉で長時間再加熱する工程を確保することが困難であり、鋳造後比較的短時間で熱間圧延に供し熱延鋼帯とすることから、S、Tiの無害化は高磁束密度かつ低鉄損の無方向性電磁熱延鋼帯を得るために重要な技術的ポイントである。
【0074】
次にプロセス条件について説明する。
【0075】
まず、本発明では、薄鋳片鋳造プロセスと熱間圧延により得られた成品を電磁熱延鋼帯と称し、従来の熱間圧延により得られる熱延電磁鋼板と区別する。
【0076】
前記成分からなる溶鋼は、20mm以上100mm以下の薄鋳片に鋳造される。薄鋳片の鋳造法は、固定モールド法、双ロール法、単ロール法、双ベルト法など、いずれの公知の方法でもよい。固定モールドには公知の方法でオシレーションをかけてもよい。
【0077】
この薄鋳片に熱間圧延を施し所定の厚みの電磁熱延鋼帯とする。この際、本発明では集合組織を制御し、目的とする圧延方向から45°方向の磁束密度が高い無方向性電磁熱延鋼帯を得るために、薄鋳片の熱間圧延を開始する温度の制御が最も肝要な点となる。
【0078】
鋳造後、連続して薄鋳片を熱間圧延に供する際に、鋳造後の薄鋳片を冷却帯を通過させ水冷等の公知の方法により冷却し、熱間圧延開始温度付近まで冷却した後、トンネル炉により熱間圧延開始温度に薄鋳片の温度を制御し、同時に薄鋳片を均熱化し、熱間圧延に供してもよい。薄鋳片の十分な冷却ゾーンが確保できるのであれば、薄鋳片の冷却は空冷により行ってもよい。トンネル炉による薄鋳片の温度制御は誘導過熱、ガス加熱など、公知の方法により行う。
【0079】
また、鋳造後の薄鋳片を冷却帯で熱間圧延開始温度付近まで冷却した後、所定の長さにコイル状に巻き取り、コイルボックス内にて公知の方法により、保熱もしくは加熱と同時に均熱化を行い、熱間圧延開始温度に薄鋳片の温度を制御し、その後薄鋳片を巻き戻して熱間圧延に供してもよい。この際、前後に熱間圧延する薄鋳片を公知の方法で溶接するなどして接合し、連続して熱間圧延を行ってもよい。
【0080】
また、薄鋳片の巻取り性を向上させるため、薄鋳片をコイル状に巻取る前に2%以上50%以下の予備圧延を施してもよい。予備圧延の圧延率が50%超であると圧下を行うスタンドの設備コストが上昇するので50%以下が好ましい。予備圧延の圧延率が2%未満であると薄鋳片の巻き取り性向上の効果が得られないので2%以上が好ましい。
【0081】
上記の薄鋳片の冷却は冷却帯における水冷のほか、冷却ロールを薄鋳片に接触させ薄鋳片からロールへの伝熱により行ってもよい。この際、冷却ロールにより10%以下の軽圧下を施し形状を調節してもよい。冷却ロールによる圧下量が10%超であると圧延反力が大きくなり冷却ロールの剛性を上げるための設備コストがかさむため圧下量は10%以下が好ましい。冷却ロールは複数設けてもよい。
【0082】
以下に本発明の技術思想の新規な点について述べる。
【0083】
無方向性電磁鋼板は大きく分けて熱延電磁鋼板と冷延電磁鋼板に分けられる。前者は熱間圧延した熱延鋼帯をそのまま無方向性電磁鋼板として使用に供するものである。製造プロセスが簡略である一方、集合組織の制御などが困難であり、特性は一般的に冷延電磁鋼板に劣る。
【0084】
冷延電磁鋼板は仕上熱延により得られた熱延板を酸洗し、冷間圧延した後、仕上焼鈍し表面皮膜を付与し使用に供する。特性を向上させるためには、冷間圧延率を適切に制御するか、もしくはさらに、熱延板を焼鈍し、冷間圧延前の結晶粒径を粗大化させた上で、冷間圧延、仕上焼鈍を施し表面皮膜を付与し使用に供する。
【0085】
特性は熱延電磁鋼板に比べ優れるものの、冷間圧延、仕上焼鈍工程、場合によってはさらに冷間圧延前に熱延板焼鈍工程を伴うため熱延電磁鋼板に比べ製造コストがかさむ課題がある。
【0086】
冷間圧延前に熱延板の焼鈍を行わない場合、冷間圧延、仕上焼鈍により得られた再結晶組織の主方位は板面法線方向に<111>軸が一致したγファイバー集合組織となり、無方向性電磁鋼板に最適な集合組織が得られない課題があった。
【0087】
一方、冷間圧延前に熱延板の焼鈍を施して冷間圧延前の結晶粒径を粗大化した場合、冷間圧延中に粗大な結晶粒中に剪断帯が形成され、この剪断帯からGoss方位と呼ばれる結晶粒が仕上焼鈍中に再結晶し成長する。このためγファイバー中のGoss方位の存在率が高まり磁気特性が向上する。
【0088】
Goss方位はbcc鉄の3つ磁化容易軸である<100>方向の一つが圧延方向と一致しており、残りの2つは板面上下に45°傾いた方向となっている。このため、圧延方向とその180°反対方向の2方向の磁束密度が優れているという特徴を有している。
【0089】
熱延電磁鋼板は熱間圧延により得られた無方向性電磁鋼板であり、高温の熱間圧延の直後に再結晶が進行しているため、その集合組織は冷延電磁鋼板と同じγファイバーであり、本来の無方向性電磁鋼板にとって好ましい集合組織ではない。
【0090】
発明者らは、この点に注目し、製造コストの低い薄鋳片鋳造プロセスを従来の熱延電磁鋼板に適用しつつ、新規な集合組織制御方法について鋭意検討を行った。
【0091】
その結果、薄鋳片の圧延開始温度を下げることにより、薄鋳片の熱間圧延中に歪みを開放し電磁熱延鋼帯の集合組織の再結晶を抑制し、45°キューブ集合組織と称される圧延集合組織を維持することで、本発明の特徴である圧延方向から45°方向の磁束密度が高い電磁熱延鋼帯を製造しうることを見出した。
【0092】
45°キューブ集合組織は板面内に圧延方向から45°傾いた2方向に磁化容易軸を有し、全周では4方向の磁束密度が高い特徴を持つ集合組織である。このため、板面内の磁化容易方向は、圧延方向とその180°反対方向の2方向に磁化容易方向を持つGoss方位の2倍になるという利点がある。
【0093】
また、その圧延集合組織を発達させるために、本発明では薄鋳片から電磁熱延鋼帯への圧下量を一定以上確保し、十分な圧延率が得られるように定めることが肝要であることも見出した。これらの新規な技術思想により製造方法を設計し、低コスト高磁束密度電磁熱延鋼帯の製造法の完成に至ったのである。
【0094】
先述のように本発明の電磁熱延鋼帯においては圧延集合組織が発達している。この集合組織は板面内に圧延方向から45°傾いた方向に4方向の磁化容易軸を有する。一方、従来技術のGoss系高磁束密度冷延電磁鋼板では板面内で圧延方向とその逆方向の2方向しか磁化容易方向が得られなかった。
【0095】
このように、本発明では板面内の磁化容易方向が従来の高磁束密度電磁鋼板の2方向からに4方向になり、2倍に増加した。しかも本発明では鋳造装置、熱延装置の規模が従来よりも小規模ですみ、冷延以降の工程が省略されるというコスト上のメリットもある。
【0096】
特許文献7には熱延電磁鋼板の製造法として粗圧延後のシートバーを巻き取って均熱化し、仕上圧延を施す技術が開示されている。しかしこの製造方法の目的は、仕上圧延後の熱延鋼板の温度を鋼板前端から後端に至るまで均一化するとともに、再結晶を促進することにある。しかしながら、この先願では再結晶集合組織はbcc鉄におけるγファイバーとなるため磁束密度は低下する。よって、この先願は本発明における再結晶の抑制による45°キューブ集合組織の発達促進とは技術思想が全く異なるものである。
【0097】
本発明では、薄鋳片の厚みが20mm未満であると、本発明が意図する電磁熱延鋼帯の集合組織を発達させるために必要な圧下量が不足するので、薄鋳片の厚みは20mm以上と定める。
【0098】
また、薄鋳片の厚みが20mm未満であると熱間圧延による電磁熱延鋼帯の形状制御の余地が少なくなり最終製品の板厚および形状制御が困難となる。この観点からも薄鋳片の厚みは20mm以上に定める。
【0099】
薄鋳片の厚みが100mm超であると、電磁熱延鋼帯の集合組織制御効果が飽和するとともに、薄鋳片の圧下量が増加するため、熱間圧延設備のコストが上昇し薄鋳片プロセスの経済性を損なう。よって、この観点からも本発明では薄鋳片の厚みは100mm以下に定める。
【0100】
薄鋳片を熱間圧延して仕上げた電磁熱延鋼帯の厚みが2mm超であると、常温での巻き戻しなどのハンドリング性に課題が生じるので、本発明では電磁熱延鋼帯の厚みは2mm以下に定める。
【0101】
また、電磁熱延鋼帯の厚みが0.4mm未満となると、熱延での板厚制御が困難となるので本発明では電磁熱延鋼帯の厚みは0.4mm以上に定める。
【0102】
熱間圧延開始温度F0Tが850℃超となると、熱間圧延中に再結晶が進行するため、圧延時に発達した45°キューブ集合組織の集積度が低下し、本発明が意図する圧延方向から45°方向の磁束密度が高い電磁熱延鋼帯が得られなくなる。よって本発明では熱間圧延開始温度F0Tは850℃以下に定める。
【0103】
また、熱間圧延開始温度F0Tが650℃未満となると、熱間圧延時の圧延反力が増大して圧延が困難となるので、熱間圧延開始温度F0Tは650℃以上に定める。
【0104】
熱間圧延終了温度FTが550℃未満となると、圧延反力が増大し、板厚制御が困難になり、積層して使用する無方向性電磁熱延鋼帯に要求される板厚制度が得られなくなるので熱間圧延終了温度は550℃以上に定める。
【0105】
熱間圧延終了温度が800℃超となると、熱間圧延中の再結晶が進行し熱延鋼帯の45°キューブ集合組織の集積度が低下し、成品の磁束密度が著しく低下するので、熱間圧延終了温度は800℃以下に定める。
【0106】
これにより、本発明により得られた薄鋳片を熱間圧延して得られた電磁熱延鋼帯の磁束密度は向上する。
【0107】
また、熱間圧延開始温度および熱間圧延終了温度が本発明の範囲を超過する場合、熱間圧延により造りこんだ電磁熱延鋼帯の45°キューブ集合組織が再結晶と粒成長の進行により消失し成品の磁束密度が低下することを発明者らは突き止めた。このように、本発明の新規性は薄鋳片の熱間圧延での再結晶・粒成長を抑制しつつ電磁熱延鋼帯の圧延集合組織を熱間圧延中に圧延歪みを開放しつつ発達させることにあり、本発明の最も肝要な技術思想である。
【0108】
本発明により得られた電磁熱延鋼帯は表面に酸化物からなるスケール層を有するため通常は皮膜は不要であり、そのまま使用に供してよい。しかしながら用途によっては酸洗後、皮膜を塗布し焼き付けて使用してもよい。
【0109】
本発明の製造法で得られた無方向性電磁熱延鋼帯は、所定の形状に打ち抜いた後は歪取り焼鈍を施さずに使用するか、或いは歪取り焼鈍を施してから使用してもよい。または打ち抜き工程を経て所定の形状のコア等に整形した後に、歪取り焼鈍を施して使用してもよい。
【0110】
本発明により得られた高磁束密度無方向性電磁鋼板は、小型軽量化を要求される電気機器、EIコア、回転機の鉄心、回転機用分割コア、回転機用ステータ、回転機用ロータ、トランス用額縁鉄心、小型鉄心、小型トランス、リアクトル用鉄心、蛍光灯用安定器、螺旋コア、磁気シールドに最適であるが、他にも各種コンプレッサー、発電機、高出力を要求される電気自動車用モーター等の鉄心用途等に適している。
次に、本発明の実施例について述べる。
[実施例1]
表1に示した成分を有する溶鋼を厚さ30mm、幅1300mmに鋳造し無方向性電磁熱延鋼帯用の薄鋳片とした。鋳造後の薄鋳片を冷却帯で水冷して温度を770℃とし、次いで熱間圧延開始温度を770℃として熱間圧延を行い板厚がそれぞれ0.8mm、1.2mmの電磁熱延鋼帯に仕上げた。その際、圧下スケジュール、圧延速度と熱間圧延スタンド間の冷却速度を制御し、熱間圧延終了温度を変化させた。
【0111】
また、比較例2として、同一の薄鋳片の熱間圧延開始温度を1000℃とし、熱間圧延終了温度を860℃として板厚0.8mm、1.2mmの電磁熱延鋼帯を製造した。
【0112】
また、比較例3として、同一の成分の鋼を連続鋳造により200mm厚みのスラブとし、これをスラブ加熱炉で1100℃に再加熱し、粗熱延により板厚を30mmとし、仕上熱延を熱間圧延開始温度を1000℃、熱間圧延終了温度を860℃として板厚0.8mm、1.2mmの熱延電磁鋼板を製造した。
【0113】
なお、この鋼のAr1変態点は880℃である。
【0114】
その後、電磁熱延鋼帯は圧延方向と左右に45°の角度をなす方向にエプスタイン試料を切断し、磁気特性を測定した。エプスタイン測定の際には、左右に剪断した試料をそれぞれ半分ずつ用意し、エプスタイン枠の平行な一組の枠に同じ方向に剪断した試料を挿入して測定を行った。
【0115】
比較例3の熱延電磁鋼板は圧延方向と板巾方向にエプスタイン試料を採取し磁束密度を測定した。
【0116】
表1に成分を、表2に熱間圧延終了温度と磁気特性の関係を示す。
【0117】
表2より、熱間圧延終了温度を本発明で規定する550℃以上800℃以下の範囲に適切に制御することにより、熱延板焼鈍などのコストのかかる工程を省略し、高磁束密度の無方向性電磁熱延鋼帯を製造することが可能である。
【0118】
【表1】

【0119】
【表2】

【0120】
[実施例2]
表3に示した成分を有する溶鋼を厚さ30mm、幅1250mmに鋳造し無方向性電磁熱延鋼帯用の薄鋳片とした。 鋳造後の薄鋳片を冷却帯で水冷して温度を800℃とし、これをトンネル炉にて加熱して温度を調整し±5℃以内に均熱化し、熱間圧延開始温度を810℃として熱間圧延を行い板厚0.4mm、1.5mmの電磁熱延鋼帯に仕上げた。その際、圧下スケジュール、圧延速度と熱間圧延スタンド間の冷却速度を制御し、熱間圧延終了温度を変化させた。
【0121】
また、比較例6として、同一の薄鋳片の熱間圧延開始温度を1000℃とし、熱間圧延終了温度を860℃として板厚0.4mm、1.5mmの電磁熱延鋼帯を製造した。
【0122】
また、比較例7として、同一の成分の鋼を連続鋳造により200mm厚みのスラブとし、これをスラブ加熱炉で1100℃に加熱し、粗熱延により板厚を30mmとし、仕上熱延を熱間圧延開始温度を1000℃、熱間圧延終了温度を860 ℃として板厚0.4mm、1.5mmの熱延電磁鋼板を製造した。
【0123】
なお、この鋼は融点までαγ変態を有しないα単相鋼である。
【0124】
その後、電磁熱延鋼帯は圧延方向と左右に45°の角度をなす方向にエプスタイン試料を切断し、磁気特性を測定した。エプスタイン測定の際には、左右に剪断した試料をそれぞれ半分ずつ用意し、エプスタイン枠の平行な一組の枠に同じ方向に剪断した試料を挿入して測定を行った。
【0125】
比較例7の熱延電磁鋼板はアプスタイン試料を圧延方向と板巾方向から採取して磁気測定を行った。
【0126】
表3に成分を、表4に熱間圧延終了温度と磁気特性の関係を示す。
【0127】
表4より、熱間圧延終了温度を本発明で規定する550℃以上800℃以下の範囲に適切に制御することにより、熱延板焼鈍などのコストのかかる工程を省略し、高磁束密度の無方向性電磁熱延鋼帯を製造することが可能である。
【0128】
【表3】

【0129】
【表4】

【0130】
[実施例3]
表5に示した鋼3の溶鋼を厚さ20mm、幅1200mmに鋳造し無方向性電磁熱延鋼帯の薄鋳片とした。
【0131】
鋳造後の薄鋳片を冷却帯で水冷して温度をいったん下げ、その後これをトンネル炉にて加熱して温度を調整し±5℃以内に均熱化し、熱間圧延開始温度を変化させて熱間圧延を行い板厚1.0mm、2.0mmの電磁熱延鋼帯に仕上げた。圧下スケジュール、圧延速度と熱間圧延スタンド間の冷却速度を制御し熱間圧延終了温度は600℃とした。
【0132】
なお、この鋼のAr1変態点は875℃である。
【0133】
Alは製鋼段階でAl脱酸やAl添加を実施していないため検出限界以下であった。本実験で使用した分析機器ではAlの検出限界は0.001%であり、この限界量以下と判定されたAlについては表中において「tr.」と記載した。
【0134】
その後、圧延方向と左右に45°の角度をなす方向にエプスタイン試料を切断し、磁気特性を測定した。エプスタイン測定の際には、左右に剪断した試料をそれぞれ半分ずつ用意し、エプスタイン枠の平行な一組の枠に同じ方向に剪断した試料を挿入して測定を行った。
【0135】
表5に成分を、表6に熱間圧延開始温度と磁気特性の関係を示す。
【0136】
表6より、仕上げ熱間圧延開始温度を本発明で定めた650℃以上850℃以下に適切に制御することにより、熱延板焼鈍などのコストのかかる工程を省略して、高磁束密度の無方向性電磁熱延鋼帯を製造することが可能である。
【0137】
【表5】

【0138】
【表6】

【0139】
[実施例4]
表7に示した鋼4の溶鋼を厚さ20mm、幅1100mmに鋳造し無方向性電磁熱延鋼帯用の薄鋳片とした。
【0140】
鋳造後の薄鋳片を冷却帯で水冷して温度を630℃とし、これをトンネル炉にて加熱して温度を調整し±5℃以内に均熱化し、熱間圧延開始温度を変化させて熱間圧延を行い板厚0.65mmの電磁熱延鋼帯に仕上げた。圧下スケジュール、圧延速度と熱間圧延スタンド間の冷却速度を制御し熱間圧延終了温度は605℃とした。
【0141】
その後、圧延方向と左右に45°の角度をなす方向にエプスタイン試料を切断し、磁気特性を測定した。エプスタイン測定の際には、左右に剪断した試料をそれぞれ半分ずつ用意し、エプスタイン枠の平行な一組の枠に同じ方向に剪断した試料を挿入して測定を行った。
【0142】
なお、この鋼は融点までαγ変態を有しないα単相である。
【0143】
表7に成分を、表8に熱間圧延開始温度と磁気特性の関係を示す。
【0144】
表8より、仕上げ熱間圧延開始温度を本発明で定めた650℃以上850℃以下に適切に制御することにより、高磁束密度の無方向性電磁熱延鋼帯を製造することが可能である。
【0145】
【表7】

【0146】
【表8】

【0147】
[実施例5]
表9に示した成分を有する溶鋼を厚さ30mm、幅1200mmに鋳造し無方向性電磁熱延鋼帯用の薄鋳片とした。 鋳造後の薄鋳片を冷却帯で水冷して温度を775℃とし、これをトンネル炉にて加熱して温度を調整し±5℃以内に均熱化し、熱間圧延開始温度を780℃とし、圧延スケジュール、圧延速度と熱間圧延スタンド間の冷却速度を制御し熱間圧延終了温度を670℃として板厚0.50mmの電磁熱延鋼帯に仕上げた。
【0148】
その後、圧延方向と左右に45°の角度をなす方向にエプスタイン試料を切断し、磁気特性を測定した。エプスタイン測定の際には、左右に剪断した試料をそれぞれ半分ずつ用意し、エプスタイン枠の平行な一組の枠に同じ方向に剪断した試料を挿入して測定を行った。
【0149】
なお、本実験では検出限界である0.001%以下のsol-Alは表中において「tr.」と記載した。
【0150】
表9に本発明と比較例の成分を、表10に仕上焼鈍温度と磁気特性の関係の測定結果を示す。
【0151】
表10より、本発明の成分範囲にSi、Al含有量を調節することにより高磁束密度の無方向性電磁熱延鋼帯を製造することが可能である。
【0152】
鋼5を用いた比較例13はSi含有量が本発明の範囲を下回っており、合金含有量がほぼ同等である本発明例23と比較しても磁束密度の値が著しく低く、鉄損が高く不適である。
【0153】
鋼18を用いた比較例14はSi含有量が本発明の範囲を超過しており、本発明例32等と比較して合金組成および含有量を加味して考慮したとしても磁束密度が著しく低く不適である。
【0154】
鋼19を用いた比較例15はAl含有量が本発明の範囲を超過しており、本発明例32等と比較して合金組成および含有量を加味して考慮したとしても磁束密度が著しく低く不適である。
【0155】
以上のように本発明で規定した範囲にSi、Al等の合金組成を制御し、適切なプロセス条件で製造することにより高磁束密度無方向性電磁熱延鋼帯の製造が可能である。
【0156】
また、鋼11では0.1%以下のMn、0.025%以下のPおよびtr.のAlが不可避不純物として混入している。しかしながらこの範囲であれば無方向性電磁熱延鋼帯の磁気特性を劣化させるものではない。
【0157】
【表9】

【0158】
【表10】

【0159】
[実施例6]
表11に示した成分を有する溶鋼を各厚みで幅1100mmの無方向性電磁鋼用の薄鋳片とした。
【0160】
鋳造後の薄鋳片を冷却帯で水冷して温度を770℃とし、これをトンネル炉にて加熱して温度を調整し±5℃以内に均熱化し、熱間圧延開始温度を775℃とし、圧延速度と熱間圧延スタンド間の冷却速度を制御し熱間圧延終了温度を665℃として板厚0.70mmの電磁熱延鋼帯に仕上げた。
【0161】
また、本発明例38、本発明例40、本発明例42、本発明例49、本発明例51、本発明例53では、鋳造後の薄鋳片を冷却帯で水冷して温度を770℃とし、これをコイル状に巻き取った後、コイルボックス炉に装入して16分間加熱し±5℃以内に均熱化し、再び巻きほどいてシートバー状に戻した後、熱間圧延開始温度を775℃とし、熱間圧延終了温度を665℃として板厚0.70mmの電磁熱延鋼帯に仕上げた。
【0162】
その後、圧延方向と左右に45°の角度をなす方向にエプスタイン試料を切断し、磁気特性を測定した。エプスタイン測定の際には、左右に剪断した試料をそれぞれ半分ずつ用意し、エプスタイン枠の平行な一組の枠に同じ方向に剪断した試料を挿入して測定を行った。
【0163】
表11に本発明と比較例の成分を、表12に薄鋳片板厚と磁気特性の関係を示す。
【0164】
表12より、薄鋳片の板厚を20mm以上100mm以下にすることにより、無方向性電磁熱延鋼帯の磁束密度が向上していることがわかる。
【0165】
【表11】

【0166】
【表12】

【0167】
[実施例7]
表13に示した成分を有する溶鋼を厚み30mmで幅1100mmの無方向性電磁熱延鋼帯用の薄鋳片とした。
【0168】
鋳造後の薄鋳片を冷却帯で水冷し、熱間圧延を760℃で開始した。圧延スケジュール、圧延速度と熱間圧延スタンド間の冷却速度を制御し、熱間圧延の終了温度を650℃として板厚0.5mmの電磁熱延鋼帯に仕上げた。
【0169】
その後、圧延方向と左右に45°の角度をなす方向にエプスタイン試料を切断し、磁気特性を測定した。エプスタイン測定の際には、左右に剪断した試料をそれぞれ半分ずつ用意し、エプスタイン枠の平行な一組の枠に同じ方向に剪断した試料を挿入して測定を行った。
【0170】
表11に本発明例と比較例の成分と磁気測定結果を示す。
【0171】
鋼22、鋼26を用いた本発明例はREM添加量が本発明で定めた範囲未満であり、REM添加効果による磁気特性の向上はみられないが、本発明の磁気特性レベルを満足する。
【0172】
鋼24、鋼29を用いた比較例はREM添加量が本発明で定めた範囲を超過しており、本発明例よりも鉄損が増加し、磁束密度が低く磁気特性が劣る。
【0173】
これに対し、鋼23、鋼25、鋼27、鋼28、鋼30ではREM添加量が本発明で定める範囲であり、磁束密度が高く鉄損が低く磁気特性が優れている。
【0174】
鋼31、鋼44はTi含有量が本発明で定めた範囲を超過しているため、Ti含有量が本発明で定めた範囲内である鋼40、鋼41、鋼42、鋼43よりも磁束密度が低く、鉄損が過大である。
【0175】
鋼32はSn添加量が本発明で定めた範囲未満であるため、Sn添加効果による磁気特性の向上はみられないが、本発明の磁気特性レベルを満足する。
【0176】
鋼34はSn添加量が本発明で定めた範囲を超過しているため、Sn添加量が本発明で定めた範囲である鋼33よりも磁束密度が低い。
【0177】
鋼35はCr添加量が本発明で定めた範囲未満であるため、Cr添加効果による鉄損の改善はみられないが、本発明の磁気特性レベルを満足する。
【0178】
鋼39はCr添加量が本発明で定めた範囲を超過しているため、Cr添加量が本発明で定めた範囲である鋼36、鋼37、鋼38よりも鉄損が増加している。
【0179】
また、鋼23、鋼27、鋼40、では0.2%以下のMn、0.025%以下のP、tr.のAlが不可避不純物として混入している。しかしながらこれらはこの範囲であれば、無方向性電磁熱延鋼帯の磁気特性に影響を与えない。
【0180】
鋼28、鋼41では0.2%以下のMnおよび0.025%以下のPが不可避不純物として混入している。しかしながらこれらはこの範囲であれば、無方向性電磁熱延鋼帯の磁気特性に影響を与えない。
【0181】
鋼45はSb添加量が本発明で定めた範囲未満であるため、Sb添加効果による磁束密度の向上はみられないが、本発明の磁気特性レベルを満足する。
【0182】
鋼47はSb添加量が本発明で定めた範囲を超過しているため、Sb添加量が本発明で定めた範囲である鋼46よりも磁束密度が低い。
【0183】
鋼48はCu添加量が本発明で定めた範囲未満であるため、Cu添加効果による磁束密度の向上はみられないが、本発明の磁気特性レベルを満足する。
【0184】
鋼50はCu添加量が本発明で定めた範囲を超過しているため、Cu添加量が本発明で定めた範囲である鋼49よりも磁束密度が低い。
【0185】
以上のように、本発明で定めた範囲に添加量を制御することにより、高磁束密度低鉄損を有する優れた磁気特性が得られることがわかる。
【0186】
【表13】

【産業上の利用可能性】
【0187】
本発明によれば、磁束密度の高い無方向性電磁熱延鋼帯を低コストで製造することが可能であり、産業上の利用可能性が高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼中に質量%で
0.1%≦Si≦4.0%
0.1%≦Mn≦2.0%
0.03%≦P≦0.1%
Al≦2.5%
C≦0.004%
S≦0.003%
N≦0.003%
Ti≦0.005%
を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる溶鋼を板厚20mm以上100mm以下の薄鋳片に連続鋳造し、引き続き熱間圧延を施し、板厚0.4mm以上2mm以下の無方向性電磁熱延鋼帯を得る製造方法において、
連続鋳造後の薄鋳片の熱間圧延開始温度F0T、熱間圧延終了温度FTをそれぞれ以下のように定めることを特徴とする無方向性電磁熱延鋼帯の製造方法。
650℃≦F0T≦850℃
550℃≦FT≦800℃
【請求項2】
鋼中に質量%で
0.1%≦Si≦4.0%
0.1%≦Mn≦2.0%
0.03%≦P≦0.1%
Al≦2.5%
C≦0.004%
S≦0.003%
N≦0.003%
Ti≦0.005%
0.001%≦REM≦0.01%
を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる溶鋼を板厚20mm以上100mm以下の薄鋳片に連続鋳造し、引き続き熱間圧延を施し、板厚0.4mm以上2mm以下の無方向性電磁熱延鋼帯を得る製造方法において、
連続鋳造後の薄鋳片の熱間圧延開始温度F0T、熱間圧延終了温度FTをそれぞれ以下のように定めることを特徴とする無方向性電磁熱延鋼帯の製造方法。
650℃≦F0T≦850℃
550℃≦FT≦800℃
【請求項3】
鋼中に質量%で
0.1%≦Si≦4.0%
0.1%≦Mn≦2.0%
0.03%≦P≦0.1%
Al≦2.5%
0.1%≦Cr≦10%
C≦0.004%
S≦0.003%
N≦0.003%
Ti≦0.005%
を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる溶鋼を板厚20mm以上100mm以下の薄鋳片に連続鋳造し、引き続き熱間圧延を施し、板厚0.4mm以上2mm以下の無方向性電磁熱延鋼帯を得る製造方法において、
連続鋳造後の薄鋳片の熱間圧延開始温度F0T、熱間圧延終了温度FTをそれぞれ以下のように定めることを特徴とする無方向性電磁熱延鋼帯の製造方法。
650℃≦F0T≦850℃
550℃≦FT≦800℃
【請求項4】
鋼中に質量%で
0.1%≦Si≦4.0%
0.1%≦Mn≦2.0%
0.03%≦P≦0.1%
Al≦2.5%
0.1%≦Cr≦10%
C≦0.004%
S≦0.003%
N≦0.003%
Ti≦0.005%
0.001%≦REM≦0.01%
を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる溶鋼を板厚20mm以上100mm以下の薄鋳片に連続鋳造し、引き続き熱間圧延を施し、板厚0.4mm以上2mm以下の無方向性電磁熱延鋼帯を得る製造方法において、
連続鋳造後の薄鋳片の熱間圧延開始温度F0T、熱間圧延終了温度FTをそれぞれ以下のように定めることを特徴とする無方向性電磁熱延鋼帯の製造方法。
650℃≦F0T≦850℃
550℃≦FT≦800℃
【請求項5】
鋼中に質量%で
0.1%≦Si≦4.0%
0.1%≦Mn≦2.0%
0.03%≦P≦0.1%
Al≦2.5%
C≦0.004%
S≦0.003%
N≦0.003%
Ti≦0.005%
さらに、Sn、Cu、Sbの少なくとも一種類をそれぞれ0.01%以上0.1%以下の範囲で含有し、
残部がFeおよび不可避的不純物からなる溶鋼を板厚20mm以上100mm以下の薄鋳片に連続鋳造し、引き続き熱間圧延を施し、板厚0.4mm以上2mm以下の無方向性電磁熱延鋼帯を得る製造方法において、
連続鋳造後の薄鋳片の熱間圧延開始温度F0T、熱間圧延終了温度FTをそれぞれ以下のように定めることを特徴とする無方向性電磁熱延鋼帯の製造方法。
650℃≦F0T≦850℃
550℃≦FT≦800℃
【請求項6】
鋼中に質量%で
0.1%≦Si≦4.0%
0.1%≦Mn≦2.0%
0.03%≦P≦0.1%
Al≦2.5%
C≦0.004%
S≦0.003%
N≦0.003%
Ti≦0.005%
0.001%≦REM≦0.01%
さらに、Sn、Cu、Sbの少なくとも一種類をそれぞれ0.01%以上0.1%以下の範囲で含有し、
残部がFeおよび不可避的不純物からなる溶鋼を板厚20mm以上100mm以下の薄鋳片に連続鋳造し、引き続き熱間圧延を施し、板厚0.4mm以上2mm以下の無方向性電磁熱延鋼帯を得る製造方法において、
連続鋳造後の薄鋳片の熱間圧延開始温度F0T、熱間圧延終了温度FTをそれぞれ以下のように定めることを特徴とする無方向性電磁熱延鋼帯の製造方法。
650℃≦F0T≦850℃
550℃≦FT≦800℃
【請求項7】
鋼中に質量%で
0.1%≦Si≦4.0%
0.1%≦Mn≦2.0%
0.03%≦P≦0.1%
Al≦2.5%
0.1%≦Cr≦10%
C≦0.004%
S≦0.003%
N≦0.003%
Ti≦0.005%
さらに、Sn、Cu、Sbの少なくとも一種類をそれぞれ0.01%以上0.1%以下の範囲で含有し、
残部がFeおよび不可避的不純物からなる溶鋼を板厚20mm以上100mm以下の薄鋳片に連続鋳造し、引き続き熱間圧延を施し、板厚0.4mm以上2mm以下の無方向性電磁熱延鋼帯を得る製造方法において、
連続鋳造後の薄鋳片の熱間圧延開始温度F0T、熱間圧延終了温度FTをそれぞれ以下のように定めることを特徴とする無方向性電磁熱延鋼帯の製造方法。
650℃≦F0T≦850℃
550℃≦FT≦800℃
【請求項8】
鋼中に質量%で
0.1%≦Si≦4.0%
0.1%≦Mn≦2.0%
0.03%≦P≦0.1%
Al≦2.5%
0.1%≦Cr≦10%
C≦0.004%
S≦0.003%
N≦0.003%
Ti≦0.005%
0.001%≦REM≦0.01%
さらに、Sn、Cu、Sbの少なくとも一種類をそれぞれ0.01%以上0.1%以下の範囲で含有し、
残部がFeおよび不可避的不純物からなる溶鋼を板厚20mm以上100mm以下の薄鋳片に連続鋳造し、引き続き熱間圧延を施し、板厚0.4mm以上2mm以下の無方向性電磁熱延鋼帯を得る製造方法において、
連続鋳造後の薄鋳片の熱間圧延開始温度F0T、熱間圧延終了温度FTをそれぞれ以下のように定めることを特徴とする無方向性電磁熱延鋼帯の製造方法。
650℃≦F0T≦850℃
550℃≦FT≦800℃
【請求項9】
請求項1から8のいずれかの方法により得られた無方向性電磁熱延鋼帯。
【請求項10】
請求項1から8のいずれかに記載の方法により製造した無方向性電磁熱延鋼帯により製造した電磁部品であって、該電磁部品が、EIコア、回転機用分割コア、トランス用額縁鉄心、小型鉄心、リアクトル用鉄心、回転機用ステータ、回転機用ロータ、蛍光灯用安定器、螺旋コア、磁気シールドのいずれかであることを特徴とする電磁部品。

【公開番号】特開2012−67330(P2012−67330A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−210707(P2010−210707)
【出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】