説明

磁歪式荷重センサおよびそれを備えた移動体

【課題】応力集中に起因する出力変化のばらつきが防止され、信頼性および製造歩留まりが向上された磁歪式荷重センサおよびそれを備えた移動体を提供する。
【解決手段】コイルAの外周部および両端部を覆う磁気通路形成部材Bの両端部の中央には、開口Bha,Bhb,Eha,Ehbがそれぞれ形成されている。コイルの貫通孔Ahおよび開口Bha,Bhb,Eha,Ehbに棒状部材Cが挿入される。棒状部材Cの両端部は開口Bha,Bhb,Eha,Ehbから突出し、棒状部材Cは磁気通路形成部材Bと接触しないように配置される。棒状部材Cの両端部が、荷重伝達部材Da,Dbによりそれぞれ支持される。荷重伝達部材Da,Dbの一部が、それぞれハウジングEの開口Bha,Bhb,Eha,Ehbから外部に突出している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁歪効果を用いて荷重を電磁気的に検出する磁歪式荷重センサおよびそれを備えた移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
自動二輪車、水上バイク、移動棚、輸送機器、電動自転車または電動車椅子等の移動体に用いられる荷重センサには小型化が要求される。小型の荷重センサとして、磁歪式荷重センサが実用化されている。
【0003】
磁歪式荷重センサでは、荷重が加えられる部材の磁気特性の変化を電圧の変化に変換し、その電圧の変化に基づいて当該荷重を検出する。
【0004】
特許文献1には、磁歪式荷重センサである荷重検出装置が開示されている。特許文献1の荷重検出装置は、棒状の磁性体、励磁コイル、検出コイルおよび磁気シールドケースを備える。
【0005】
棒状の磁性体は、磁性材料により形成されている。磁性体の周囲には、励磁コイルおよび検出コイルが互いに電気的に絶縁された状態で巻回されている。磁気シールドケースは、磁性材料により形成され、磁性体、励磁コイルおよび検出コイルを収容する。
【0006】
磁性体の一端は、磁気シールドケースの上部に設けられた孔部から上方に突出している。磁性体の上端部には、ジョイントが設けられている。
【0007】
磁性体が励磁コイルにより磁化された状態で、荷重がジョイントを介して磁性体に加えられる。これにより、磁性体の軸方向に荷重が加わると、磁性体が圧縮される。その結果、逆磁歪効果により荷重検出装置のインピーダンスが変化するとともに、検出コイルの両端の電圧が変化する。そこで、検出コイルにおける電圧の変化に基づいて磁性体に加わった荷重が算出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−241955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上記の特許文献1の荷重検出装置において、磁性材料により形成された磁気シールドケースは、棒状の磁性体の下端部を支持するとともに励磁コイルおよび検出コイルの外周部、上部および下部を覆っている。これにより、磁気シールドケースは、磁性体が励磁コイルにより磁化される際に磁気通路として機能する。
【0010】
磁気シールドケースは磁性体の下端部を支持している。したがって、磁性体の上端に荷重が加えられると、磁性体の下端部と磁気シールドケースとの当接部にも応力が作用する。
【0011】
磁性体に加えられる荷重の方向が磁性体の軸方向からずれると、磁性体の下端部における応力分布が不均一となり、応力集中部が発生する。また、磁性体に加えられる荷重の方向が異なると、磁性体の下端部に発生する応力集中部の位置および大きさも異なる。それにより、磁性体に加えられる荷重が一定であっても、発生する応力集中部の位置および大きさに応じて磁性体の下端部における磁気特性がばらつく。
【0012】
さらに、磁性体の下端部と磁気シールドケースとが当接しているので、磁性体の下端部に応力集中部が発生すると、磁気シールドケースの磁性体との当接部分にも、磁性体に発生する応力集中部の位置および大きさに応じた応力集中部が発生する。それにより、磁気シールドケースにおいても、磁性体に発生する応力集中部の位置および大きさに応じて磁気特性がばらつく。
【0013】
磁性体に加えられる荷重の方向が異なると、磁性体の下端部における磁気特性のばらつきおよび磁気シールドケースの磁気特性のばらつきの影響を受けて、検出コイルの両端の電圧の変化がばらつく。その結果、荷重検出装置の出力のばらつきが大きくなり、荷重検出装置の信頼性が低下する。
【0014】
また、磁性体に加えられる荷重の方向が磁性体の軸方向と一致する場合でも、磁性体と磁気シールドケースとの当接部の形状および寸法にわずかでも誤差があると、磁性体の下端部における応力分布が不均一となり、応力集中部が発生する。
【0015】
したがって、上記の荷重検出装置を量産する際には、磁性体と磁気シールドケースとの当接部の形状および寸法の誤差により、荷重検出装置間で検出コイルの両端の電圧がばらつく。その結果、荷重検出装置の製造歩留まりが低下する。
【0016】
本発明の目的は、応力集中に起因する出力変化のばらつきが防止され、信頼性および製造歩留まりが向上された磁歪式荷重センサおよびそれを備えた移動体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
(1)本発明に係る磁歪式荷重センサは、貫通孔を有するコイルと、貫通孔に挿入された荷重検出部材と、コイルにより発生された磁束が通過する磁気通路を形成する磁気通路形成部材とを備え、荷重検出部材の両端部は、貫通孔に対向する磁気通路形成部材の部分からそれぞれ外側に突出し、外部から印加される荷重を荷重検出部材の一端部および他端部にそれぞれ伝達する第1および第2の荷重伝達部材と、磁気通路形成部材および荷重伝達部材を支持する支持部材とをさらに備え、第1および第2の荷重伝達部材は、第1の荷重伝達部材が外部から印加される荷重を荷重検出部材に伝達し第2の荷重伝達部材が荷重検出部材に伝達された荷重を受け止め可能に構成されるとともに、第2の荷重伝達部材が外部から印加される荷重を荷重検出部材に伝達し第1の荷重伝達部材が荷重検出部材に伝達された荷重を受け止め可能に構成されるものである。
【0018】
この発明に係る磁歪式荷重センサにおいては、磁気通路形成部材および第1および第2の荷重伝達部材が支持部材により支持されている。コイルに電流が流されることにより磁界が発生する。これにより、磁性材料からなる荷重検出部材が磁化される。
【0019】
この状態で、磁気通路形成部材の部分からそれぞれ外側に突出する荷重検出部材の両端部のうち少なくとも一端部に第1および第2の荷重伝達部材を通じて荷重が加えられると、荷重検出部材が歪む。それにより、コイルのインピーダンスが変化し、コイルに誘起される電圧が変化する。したがって、電圧の変化に基づいて荷重を検出することができる。
【0020】
ここで、荷重検出部材の中心軸に対してずれた方向に荷重が加えられると、荷重検出部材の端部に作用する応力の分布が不均一となる。これにより、荷重検出部材の両端部に応力集中部が発生する。
【0021】
さらに、第1および第2の荷重伝達部材を通じて荷重検出部材に加えられる荷重の方向および位置が異なると、荷重検出部材の両端部に発生する応力集中部の位置および大きさも異なる。それにより、荷重検出部材に加えられる荷重が一定である場合であっても、発生する応力集中部の位置および大きさに応じて荷重検出部材の端部における磁気特性がばらつく。
【0022】
この発明に係る磁歪式荷重センサにおいては、荷重検出部材の両端部が磁気通路形成部材の外部に突出している。換言すれば、磁歪式荷重センサの動作時において、荷重検出部材の両端部は磁気通路形成部材により形成される磁気通路の外側に位置する。
【0023】
その結果、磁歪式荷重センサの出力が荷重検出部材の端部に発生する応力集中部の影響を受けることが防止されるので、磁歪式荷重センサの出力が安定する。
【0024】
また、磁気通路形成部材、荷重検出部材、第1および第2の荷重伝達部材および支持部材の形状および寸法の誤差により荷重検出部材の端部に応力集中部が発生した場合でも、磁歪式荷重センサの出力変化が荷重検出部材の端部に発生する応力集中部の影響によりばらつくことが防止される。
【0025】
それにより、磁歪式荷重センサを量産する際の磁気通路形成部材、荷重検出部材、荷重伝達部材および支持部材の形状および寸法の精度が緩和される。その結果、磁歪式荷重センサの製造歩留まりが向上する。
【0026】
また、磁歪式荷重センサは、荷重検出部材の一端部および他端部に加えられる荷重をそれぞれ検出することが可能となる。これにより、2つの方向から加えられる荷重を1つの磁歪式荷重センサにより検出することができる。したがって、2つの方向から加えられる荷重を検出するために、個々の方向に対応する磁歪式荷重センサを用意する必要がないので、部品点数が低減される。それにより、磁歪式荷重センサの小型化および軽量化が実現される。
【0027】
さらに、1つの磁歪式荷重センサにより2つの方向から加えられる荷重を検出することができるので、2つの磁歪式荷重センサを用意する場合のように、2つの磁歪式荷重センサの感度の調整および2つの磁歪式荷重センサの選別が不要となる。その結果、装置の製造工程数および製造コストが低減され、製造歩留まりが向上する。
【0028】
(2)支持部材は、荷重検出部材が一定の範囲で移動可能となるように、第1および第2の荷重伝達部材を介して荷重検出部材を支持してもよい。
【0029】
この場合、荷重検出部材が一定の範囲で移動することができるので、荷重が加えられる方向に起因して荷重検出部材の端部に発生する応力集中が低減される。それにより、磁歪式荷重センサの出力変化のばらつきが十分に防止される。また、磁歪式荷重センサの製造歩留まりがさらに向上する。
【0030】
(3)支持部材は、第1および第2の荷重検出部材と磁気通路形成部材とが接触しないように第1および第2の荷重伝達部材を介して荷重検出部材を支持してもよい。この場合、磁歪式荷重センサの動作時に、荷重検出部材と磁気通路形成部材との間で磁気抵抗が著しく変化することが防止される。これにより、磁歪式荷重センサの出力変化が、荷重検出部材と磁気通路形成部材との間の磁気抵抗の変化の影響によりばらつくことが防止される。
【0031】
また、磁気通路形成部材には荷重検出部材との接触に起因する応力集中部が発生しないので、磁気通路形成部材の磁気特性がばらつかない。その結果、磁歪式荷重センサの出力変化がばらつくことが防止される。
【0032】
(4)荷重検出部材と磁気通路形成部材との間に非磁性材料からなる間隔形成部材が設けられてもよい。この場合、磁歪式荷重センサの動作時に、磁気通路形成部材と荷重検出部材との接触が確実に防止される。それにより、荷重検出部材と磁気通路形成部材との間で磁気抵抗が著しく変化することが確実に防止される。
【0033】
さらに、荷重検出部材が一定の範囲で移動する場合であっても、荷重検出部材と磁気通路形成部材との位置関係のずれ量が間隔形成部材により小さく制限される。それにより、磁気通路形成部材と荷重検出部材との位置関係のずれに起因するコイルのインピーダンスの変化が十分に低減される。それにより、磁歪式荷重センサの出力の安定性が向上される。
【0034】
(5)支持部材は、第1および第2の荷重伝達部材が一定の範囲で移動可能となるように、第1および第2の荷重伝達部材を支持してもよい。
【0035】
この場合、第1および第2の荷重伝達部材が一定の範囲で移動することができるので、荷重が加えられる方向に起因して荷重検出部材の端部に発生する応力集中が低減される。それにより、磁歪式荷重センサの出力変化のばらつきが十分に防止される。また、磁歪式荷重センサの製造歩留まりがさらに向上する。
【0036】
(6)支持部材は、第1および第2の荷重伝達部材を弾性体を介して支持してもよい。この場合、第1および第2の荷重伝達部材が弾性体を介して支持部材により支持されることにより、第1および第2の荷重伝達部材が一定の範囲で移動可能となる。それにより、荷重検出部材、第1および第2の荷重伝達部材および支持部材の形状および寸法に誤差が生じた場合でも、第1および第2の荷重伝達部材は弾性体により誤差の影響が吸収されつつ支持される。したがって、荷重検出部材、第1および第2の荷重伝達部材および支持部材の形状および寸法の精度が緩和され、磁歪式荷重センサの製造歩留まりが向上する。
【0037】
(7)支持部材は、コイル、磁気通路形成部材、荷重検出部材ならびに第1および第2の荷重伝達部材を収容するハウジングを含んでもよい。
【0038】
この場合、コイル、磁気通路形成部材、荷重検出部材および第1および第2の荷重伝達部材が、ハウジング内に収容される。それにより、磁歪式荷重センサの取り扱いが容易となる。また、コイル、磁気通路形成部材、荷重検出部材および第1および第2の荷重伝達部材が汚染されることが防止でき、磁歪式荷重センサの劣化を防止することができる。
【0039】
(8)磁気通路形成部材は、貫通孔の両端部にそれぞれ対向する部分に第1および第2の開口を有し、荷重検出部材の外面と第1および第2の開口の内面との間にそれぞれ第1の隙間が形成され、ハウジングは、荷重検出部材ならびに第1および第2の荷重伝達部材が一体的に一定の範囲で移動可能となるように、第1および第2の荷重伝達部材がそれぞれ嵌合する第3および第4の開口を有し、第1および第2の荷重伝達部材の外面と第3および第4の開口の内面との間にそれぞれ第2の隙間が形成され、第2の隙間の幅は、第1の隙間の幅以下であってもよい。
【0040】
この場合、第1の隙間により、荷重検出部材が磁気通路形成部材の第1および第2の開口内で、コイルの貫通孔の軸に交差する方向に移動可能となる。また、第2の隙間により、第1および第2の荷重伝達部材がハウジングの第3の開口内でコイルの貫通孔の軸に交差する方向に移動可能となる。
【0041】
第2の隙間の幅が第1の隙間の幅以下であるので、第1および第2の荷重伝達部材および荷重検出部材が、コイルの貫通孔の軸に交差する方向に移動可能に支持されつつ荷重検出部材と磁気通路形成部材との接触とが防止される。
【0042】
したがって、荷重が加えられる方向に起因して荷重検出部材の端部に発生する応力集中が低減される。それにより、磁歪式荷重センサの出力変化のばらつきが十分に防止される。また、磁歪式荷重センサの製造歩留まりがさらに向上する。
【0043】
また、磁歪式荷重センサの動作時に、荷重検出部材と磁気通路形成部材との間で磁気抵抗が著しく変化することが防止される。これにより、磁歪式荷重センサの出力変化が、荷重検出部材と磁気通路形成部材との間の磁気抵抗の変化の影響によりばらつくことが防止される。
【0044】
また、磁気通路形成部材には荷重検出部材との接触に起因する応力集中部が発生しないので、磁気通路形成部材の磁気特性がばらつかない。その結果、磁歪式荷重センサの出力変化がばらつくことが防止される。
【0045】
(9)磁気通路形成部材は、貫通孔の両端部にそれぞれ対向する部分に第1および第2の開口を有し、荷重検出部材の外面と第1および第2の開口の内面との間にそれぞれ第1の隙間が形成され、ハウジングは、荷重検出部材ならびに第1および第2の荷重伝達部材が一体的に一定の範囲で移動可能となるように、第1および第2の荷重伝達部材がそれぞれ嵌合する第3および第4の開口を有し、第1および第2の荷重伝達部材の外面と第3および第4の開口の内面との間にそれぞれ第2の隙間が形成され、第2の隙間の幅は、第1の隙間の幅以下であり、第1および第2の荷重伝達部材を通じて荷重検出部材に荷重をそれぞれ印加する第1および第2の荷重印加部材をさらに備え、第1および第2の荷重印加部材は、貫通孔の軸方向と直交する方向において第1の隙間の幅よりも大きな範囲で移動可能に設けられてもよい。
【0046】
この場合、コイルの貫通孔の軸と交差する方向において、第1の隙間により、荷重検出部材が磁気通路形成部材の第1および第2の開口内で、コイルの貫通孔の軸に交差する方向に移動可能となる。また、第2の隙間により、第1および第2の荷重伝達部材がハウジングの第3の開口内でコイルの貫通孔の軸に交差する方向に移動可能となる。
【0047】
荷重検出部材および第1および第2の荷重伝達部材は、ハウジング内で一体的に移動する。これにより、コイルの貫通孔の軸に交差する方向において、荷重検出部材の移動可能な範囲が第1および第2の荷重伝達部材の移動可能な範囲以下となる。
【0048】
ここで、第2の隙間の幅が第1の隙間の幅以下であるので、第1および第2の荷重伝達部材および荷重検出部材が、コイルの貫通孔の軸に交差する方向に移動可能に支持されつつ荷重検出部材と磁気通路形成部材との接触とが防止される。
【0049】
第1および第2の荷重印加部材により、第1および第2の荷重伝達部材を通じて荷重検出部材に荷重が印加される。これにより、荷重検出部材に確実に荷重を印加することができる。ここで、コイルの貫通孔の軸と交差する方向において、第1および第2の荷重印加部材は第1の隙間の幅よりも大きな範囲で移動可能である。したがって、コイルの貫通孔の軸に交差する方向において、第1および第2の荷重伝達部材の移動可能な範囲が第1および第2の荷重印加部材の移動可能な範囲以下となる。
【0050】
コイルの貫通孔の軸と交差する方向において、第1および第2の荷重伝達部材の移動可能な範囲が第1および第2の荷重印加部材の移動可能な範囲以下となることにより、荷重印加部材が第1および第2の荷重伝達部材に加える荷重の方向がコイルの貫通孔の軸に対して傾斜している場合に、第1および第2の荷重伝達部材の移動量が第1および第2の荷重印加部材の移動量以下となる。
【0051】
また、コイルの貫通孔の軸と交差する方向において、荷重検出部材の移動可能な範囲が第1および第2の荷重伝達部材の移動可能な範囲以下となることにより、第1および第2の荷重伝達部材が荷重検出部材に加える荷重の方向がコイルの貫通孔の軸に対して傾斜している場合に、荷重検出部材の移動量が第1および第2の荷重伝達部材の移動量以下となる。
【0052】
その結果、磁気通路形成部材に対する荷重検出部材の位置ずれおよび傾きを低減することができるので、磁歪式荷重センサの出力変化のばらつきがより十分に防止される。
【0053】
(10)磁歪式荷重センサは、一定の範囲で移動可能かつ第1および第2の荷重伝達部材に当接可能に設けられ、第1および第2の荷重伝達部材を通して荷重検出部材の一端部および他端部に荷重をそれぞれ印加する第1および第2の荷重印加部材をさらに備えてもよい。
【0054】
この場合、第1および第2の荷重印加部材により、第1および第2の荷重伝達部材を通じて荷重検出部材の両端部に荷重がそれぞれ印加される。これにより、荷重検出部材の両端部に確実に荷重を印加することができる。
【0055】
(11)第1および第2の荷重印加部材および第1および第2の荷重伝達部材は、コイルの貫通孔の軸に沿って、荷重検出部材を中心として対称的に配置されてもよい。
【0056】
この場合、荷重検出部材の一端側に位置する第1の荷重伝達部材に第1の荷重印加部材により荷重が加えられる場合と、荷重検出部材の他端側に位置する第2の荷重伝達部材に第2の荷重印加部材により荷重が加えられる場合とで、荷重が対称的な経路で荷重検出部材に伝達される。したがって、磁歪式荷重センサは、2つの方向から加えられる荷重を同じ精度で検出することができる。
【0057】
(12)ハウジングは、第1および第2の荷重伝達部材がそれぞれ嵌合する第3および第4の開口を有し、第1および第2の荷重伝達部材は、ハウジングの内側の一端面に対向または接触するフランジ部ならびに第1および第2の荷重検出部材の一端部および他端部がそれぞれ嵌合する第1および第2の凹部を有してもよい。
【0058】
この場合、第1および第2の荷重伝達部材の凹部に荷重検出部材の一端部が嵌合し、第1および第2の荷重伝達部材がハウジングの第3の開口に嵌合するとともにフランジ部がハウジングの内側の一端面に対向または接触する。それにより、荷重検出部材および第1および第2の荷重伝達部材が軸方向に移動可能にハウジング内に保持される。したがって、簡単な構造で荷重を正確に検出することが可能となる。
【0059】
(13)ハウジングの第3の開口の内面と第1および第2の荷重伝達部材の外面との間に隙間が形成され、磁歪式荷重センサは、第1および第2の荷重伝達部材をハウジングに対して貫通孔の軸方向と直交する方向に移動可能に保持する弾性部材をさらに備えてもよい。
【0060】
この場合、第1および第2の荷重伝達部材にコイルの貫通孔の軸方向に対して傾斜した方向に荷重が加わった場合に、第1および第2の荷重伝達部材が貫通孔の軸方向と直交する方向に弾性的に移動するので、荷重の加えられる方向に起因して荷重検出部材の一端部に発生する応力集中が低減される。それにより、磁歪式荷重センサの出力変化のばらつきが十分に低減される。
【0061】
(14)ハウジングは、第1の荷重伝達部材が嵌合する第3の開口および第2の荷重伝達部材が嵌合する第4の開口を有し、第1の荷重伝達部材は、ハウジングの内側の一端面に対向または接触する第1のフランジ部および荷重検出部材の一端部が嵌合する第1の凹部を有し、第2の荷重伝達部材は、ハウジングの内側の他端面に対向または接触する第2のフランジ部および荷重検出部材の他端部が嵌合する第2の凹部を有してもよい。
【0062】
この場合、第1の荷重伝達部材の第1の凹部に荷重検出部材の一端部が嵌合し、第1の荷重伝達部材がハウジングの第3の開口に嵌合するとともに第1のフランジ部がハウジングの内側の一端面に対向または接触する。また、第2の荷重伝達部材の第2の凹部に荷重検出部材の他端部が嵌合し、第2の荷重伝達部材がハウジングの第4の開口に嵌合するとともに第2のフランジ部がハウジングの内側の他端面に対向または接触する。それにより、第1および第2の荷重検出部材およ第1および第2の荷重伝達部材が軸方向に移動可能にハウジング内に保持される。したがって、簡単な構造で荷重を正確に検出することが可能となる。
【0063】
(15)ハウジングの第3の開口の内面と第1の荷重伝達部材の外面との間に隙間が形成され、ハウジングの第4の開口の内面と第2の荷重伝達部材の外面との間に隙間が形成され、磁歪式荷重センサは、第1の荷重伝達部材をハウジングに対して貫通孔の軸方向と直交する方向に移動可能に保持する第1の弾性部材と、第2の荷重伝達部材をハウジングに対して貫通孔の軸方向と直交する方向に移動可能に保持する第2の弾性部材とをさらに備えてもよい。
【0064】
この場合、第1または第2の荷重伝達部材にコイルの貫通孔の軸方向に対して傾斜した方向に荷重が加わった場合に、第1または第2の荷重伝達部材が貫通孔の軸方向に直交する方向に弾性的に移動する。それにより、荷重の加えられる方向に起因して荷重検出部材の一端部または他端部に発生する応力集中が低減される。したがって、磁歪式荷重センサの出力変化のばらつきが十分に低減される。
【0065】
(16)荷重検出部材と第1および第2の荷重伝達部材とが接合されてもよい。この場合、コイルの貫通孔の軸上で、第1および第2の荷重伝達部材を通じて荷重検出部材に圧縮荷重を加えることができるとともに、第1および第2の荷重伝達部材を通じて荷重検出部材に引っ張り荷重を加えることができる。したがって、応力集中に起因する出力変化のばらつきを防止しつつ、圧縮荷重および引っ張り荷重を検出することができる。
【0066】
(17)磁気通路形成部材は、貫通孔の両端部にそれぞれ対向する部分に第1および第2の開口を有し、荷重検出部材は、円柱形状を有し、荷重検出部材の両端部は、軸方向の断面の直径以上の長さ分、磁気通路形成部材の第1および第2の開口から突出してもよい。
【0067】
この場合、荷重検出部材の端部に局部的に集中して応力が作用する場合でも、荷重検出部材の両端部が荷重検出部材の直径以上の長さで第1および第2の開口から突出しているので、当該応力が荷重検出部材の突出部内で全面に広がる。それにより、磁気通路形成部材に覆われる荷重検出部材の部分においては、荷重検出部材の応力分布がほぼ均一となる。その結果、磁歪式荷重センサの出力変化が荷重検出部材の端部に発生する応力集中部の影響によりばらつくことが十分に防止される。
【0068】
(18)本発明の他の局面に従う移動体は、本体部と、本体部を移動させる駆動部と、荷重を検出する磁歪式荷重センサと、磁歪式荷重センサにより検出された荷重に基づいて駆動部を制御する制御部とを備え、磁歪式荷重センサは、貫通孔を有するコイルと、貫通孔に挿入された荷重検出部材と、コイルにより発生された磁束が通過する磁気通路を形成する磁気通路形成部材とを含み、荷重検出部材の両端部は、貫通孔に対向する磁気通路形成部材の部分からそれぞれ外側に突出し、外部から印加される荷重を荷重検出部材の一端部および他端部にそれぞれ伝達する第1および第2の荷重伝達部材と、磁気通路形成部材および第1および第2の荷重伝達部材を支持する支持部材とをさらに含む、第1および第2の荷重伝達部材は、第1の荷重伝達部材が外部から印加される荷重を荷重検出部材に伝達し第2の荷重伝達部材が荷重検出部材に伝達された荷重を受け止め可能に構成されるとともに、第2の荷重伝達部材が外部から印加される荷重を荷重検出部材に伝達し第1の荷重伝達部材が荷重検出部材に伝達された荷重を受け止め可能に構成されるものである。
【0069】
その移動体においては、磁歪式荷重センサにより荷重が検出され、検出された荷重に基づいて制御部により駆動部が制御される。それにより、駆動部により本体部が移動される。
【0070】
この移動体に用いられる磁歪式荷重センサにおいては、応力集中に起因する出力変化のばらつきが防止され、信頼性および製造歩留まりが向上されている。したがって、移動体を高い精度で制御することが可能になるとともに、移動体の信頼性が向上される。
【0071】
また、磁歪式荷重センサは、荷重検出部材の一端部および他端部に加えられる荷重をそれぞれ検出することが可能となる。これにより、2つの方向から加えられる荷重を1つの磁歪式荷重センサにより検出することができる。したがって、2つの方向から加えられる荷重を検出するために、個々の方向に対応する磁歪式荷重センサを用意する必要がないので、部品点数が低減される。それにより、磁歪式荷重センサの小型化および軽量化が実現される。
【0072】
さらに、1つの磁歪式荷重センサにより2つの方向から加えられる荷重を検出することができるので、2つの磁歪式荷重センサを用意する場合のように、2つの磁歪式荷重センサの感度の調整および2つの磁歪式荷重センサの選別が不要となる。その結果、移動体の製造工程数および製造コストが低減され、製造歩留まりが向上する。
【発明の効果】
【0073】
本発明によれば、荷重検出部材の両端部が磁気通路形成部材の外部に突出している。それにより、磁歪式荷重センサの出力が荷重検出部材の端部に発生する応力集中部の影響を受けることが防止されるので、磁歪式荷重センサの出力が安定する。
【0074】
また、磁気通路形成部材、荷重検出部材、第1および第2の荷重伝達部材および支持部材の形状および寸法の誤差により荷重検出部材の端部に応力集中部が発生した場合でも、上記と同様の効果が奏される。すなわち、磁歪式荷重センサの出力変化が荷重検出部材の端部に発生する応力集中部の影響によりばらつくことが防止される。
【0075】
それにより、磁歪式荷重センサを量産する際の磁気通路形成部材、荷重検出部材、第1および第2の荷重伝達部材および支持部材の形状および寸法の精度が緩和される。その結果、磁歪式荷重センサの製造歩留まりが向上する。
【0076】
また、磁歪式荷重センサを用いた移動体は、高い精度で制御することが可能になるとともに、移動体の信頼性が向上される。
【0077】
また、磁歪式荷重センサは、荷重検出部材の一端部および他端部に加えられる荷重をそれぞれ検出することが可能となる。これにより、2つの方向から加えられる荷重を1つの磁歪式荷重センサにより検出することができる。したがって、2つの方向から加えられる荷重を検出するために、個々の方向に対応する磁歪式荷重センサを用意する必要がないので、部品点数が低減される。それにより、磁歪式荷重センサの小型化および軽量化が実現される。
【0078】
さらに、1つの磁歪式荷重センサにより2つの方向から加えられる荷重を検出することができるので、2つの磁歪式荷重センサを用意する場合のように、2つの磁歪式荷重センサの感度の調整および2つの磁歪式荷重センサの選別が不要となる。その結果、装置の製造工程数および製造コストが低減され、製造歩留まりが向上する。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】図1は第1の実施の形態に係る磁歪式荷重センサの基本構成を説明するための図である。
【図2】図2は図1の磁歪式荷重センサ内の磁界の向きを示す図である。
【図3】図3は第1の実施の形態に係る磁歪式荷重センサの第1の具体例を示す断面図である。
【図4】図4は図3の磁歪式荷重センサのハウジング内における各構成部材の支持状態を説明するための図である。
【図5】図5は図3の棒状部材と磁気通路形成部材との位置関係に応じて変化するセンサ構成部のインピーダンスを説明するための図である。
【図6】図6は図3の磁歪式荷重センサの磁気通路形成部材の開口から突出する棒状部材の部分を説明するための図である。
【図7】図7は棒状部材の中心軸に対する荷重が加えられる方向の傾斜角度と磁歪式荷重センサの感度との関係を説明するための図である。
【図8】図8は第1の実施の形態に係る磁歪式荷重センサの第2の具体例を示す断面図である。
【図9】図9は第1の実施の形態に係る磁歪式荷重センサの第3の具体例を示す断面図である。
【図10】図10は第1の実施の形態に係る磁歪式荷重センサの第4の具体例を示す断面図である。
【図11】図11は第1の実施の形態に係る磁歪式荷重センサの第5の具体例を示す断面図である。
【図12】図12は第2の実施の形態に係る磁歪式荷重センサの基本構成を説明するための図である。
【図13】図13は第2の実施の形態に係る磁歪式荷重センサの具体例を示す上面図である。
【図14】図14は参考形態に係る磁歪式荷重センサの基本構成を説明するための図である。
【図15】図15は参考形態に係る磁歪式荷重センサの具体例を示す断面図である。
【図16】図16は、上記実施の形態に係る磁歪式荷重センサを用いた荷重検出回路の概略構成を示すブロック図である。
【図17】図17は図13の磁歪式荷重センサを用いた滑走艇の平面図である。
【図18】図18は図17の滑走艇の制御系を示すブロック図である。
【図19】図19は図15の磁歪式荷重センサを用いた電動自転車の側面図である。
【図20】図20は図19の電動自転車に用いられるパワーユニットの構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0080】
本発明の一実施の形態に係る磁歪式荷重センサについて説明する。
【0081】
[1] 第1の実施の形態
(1) 磁歪式荷重センサの基本構成
図1は、第1の実施の形態に係る磁歪式荷重センサの基本構成を説明するための図である。
【0082】
図1に示すように、第1の実施の形態に係る磁歪式荷重センサ100は、コイルA、磁性材料からなる磁気通路形成部材B、磁性材料からなる棒状部材C、非磁性材料からなる2つの荷重伝達部材Da,Db、非磁性材料からなるハウジングEおよび2つの荷重印加部材Fa,Fbを備える。
【0083】
以下の説明において、棒状部材Cは、磁歪式荷重センサ100に加えられる荷重を検出する荷重検出部材として機能する。
【0084】
また、以下の説明では、コイルA、磁気通路形成部材Bおよび棒状部材Cからなる集合体をセンサ構成部と称する。
【0085】
ここで、磁性材料とは、磁場中に置かれたときに磁気を帯びる性質を有する材料をいう。磁性材料としては、例えば、鉄系材料、鉄クロム系材料、鉄ニッケル系材料、鉄コバルト系材料、鉄ケイ素系材料、鉄アルミニウム系材料、純鉄、パーマロイまたは超磁歪材料、フェライト系ステンレス(例えばSUS430)等が用いられる。例えば、磁性材料である鉄の比透磁率(真空の透磁率に対する比率)は200である。
【0086】
また、非磁性材料とは、磁性材料以外の材料であり、例えば比透磁率が約1の材料をいう。なお、非磁性材料であるオーステナイト系ステンレス(例えばSUS304)、アルミニウムおよび銅の比透磁率は、1〜1.01である。
【0087】
コイルAは貫通孔Ahを有する。コイルAの外周部および両端部を覆うように磁気通路形成部材Bが形成されている。磁気通路形成部材Bの両端部の中央には開口Bha,Bhbがそれぞれ形成されている。
【0088】
貫通孔Ahおよび開口Bha,Bhbに棒状部材Cが挿入されている。この状態で、棒状部材Cの両端部は開口Bha,Bhbから突出している。より詳細には、棒状部材Cは、開口Bha,Bhbの外側端部を結ぶ線Bhae,Bhbeよりもそれぞれ外側(棒状部材Cの長手方向外側)に延びている。また、磁気通路形成部材Bと棒状部材Cとの距離Mgは、ハウジングEと荷重伝達部材Da,Dbとの距離Mdよりも大きくなっている。それにより、棒状部材Cは磁気通路形成部材Bと接触しないように配置されている。
【0089】
棒状部材Cの一端が非磁性材料からなる荷重伝達部材Daに嵌合している。棒状部材Cの他端が非磁性材料からなる荷重伝達部材Dbに嵌合している。
【0090】
ハウジングE内に、コイルA、磁気通路形成部材B、棒状部材Cおよび2つの荷重伝達部材Da,Dbが収容される。ハウジングEの両端部の中央には開口Eha,Ehbがそれぞれ形成されている。
【0091】
荷重伝達部材Da,Dbの一部が、それぞれハウジングEの開口Eha,Ehbから外部に突出している。開口Ehaから突出する荷重伝達部材Daに対して当接可能に荷重印加部材Faが配置されている。開口Ehbから突出する荷重伝達部材Dbに対して当接可能に荷重印加部材Fbが配置されている。
【0092】
図1では図示しないが、コイルAから延びるリード線は、ハウジングEの外部に引き出される。ハウジングEから引き出されたリード線は、図示しない発振回路、電流検出器、整流回路、増幅回路および中央演算処理回路(CPU)等の周辺回路(荷重検出回路)に接続される。
【0093】
(2) 磁歪式荷重センサの動作
磁歪式荷重センサ100の動作時においては、図示しない周辺回路の発振回路によりリード線を介してコイルAに交流電流が供給される。それにより、コイルAが駆動される。この場合、コイルAが励磁コイルとして機能し、棒状部材Cが磁化される。また、磁気通路形成部材Bが磁気通路として機能する。
【0094】
図2に図1の磁歪式荷重センサ100内の磁界の向きを示す。図2においては、コイルAが駆動された場合の磁歪式荷重センサ100内の磁界の向きが太い矢印により示されている。
【0095】
荷重印加部材Faにより荷重伝達部材Daに荷重が加えられる。そして、荷重伝達部材Daに加えられた荷重が棒状部材Cの一端に伝達される。
【0096】
これにより、棒状部材Cに圧縮力が作用する。このように、棒状部材Cに圧縮力が作用すると、逆磁歪効果により棒状部材Cの透磁率が変化し、コイルA、磁気通路形成部材Bおよび棒状部材Cからなるセンサ構成部のインピーダンスが変化する。
【0097】
その結果、コイルAに発生する誘導起電力(電圧)が変化する。この場合、コイルAは検出コイルとして機能する。コイルAにおける電圧が図示しないリード線を介して周辺回路により検出される。検出されたコイルAの電圧変化に基づいて荷重伝達部材Daに加えられた荷重が検出される。
【0098】
一方、荷重印加部材Fbにより荷重伝達部材Dbに荷重が加えられる。この場合においても、上記と同様にして、荷重伝達部材Dbに加えられた荷重が検出される。
【0099】
(3) 第1の実施の形態に係る磁歪式荷重センサによる効果
(3−a)
荷重伝達部材Daまたは荷重伝達部材Dbに荷重が加えられる際には、棒状部材Cの一端と荷重伝達部材Daとの当接部(図2点線部t1参照)、および棒状部材Cの他端と荷重伝達部材Dbとの当接部(図2点線部t2参照)に応力が作用し、棒状部材Cに圧縮力が作用する。
【0100】
ここで、荷重伝達部材Daまたは荷重伝達部材Dbに加えられる荷重の方向が棒状部材Cの軸方向からずれると、棒状部材Cの両端部における応力分布が不均一となり、応力集中部が発生する。
【0101】
さらに、荷重伝達部材Daまたは荷重伝達部材Dbに加えられる荷重の方向が異なると棒状部材Cの両端部に発生する応力集中部の位置および大きさも異なる。それにより、棒状部材Cに加えられる荷重が一定である場合であっても、発生する応力集中部の位置および大きさに応じて棒状部材Cの両端部における磁気特性がばらつく。
【0102】
本実施の形態に係る磁歪式荷重センサ100においては、棒状部材Cの両端部が磁気通路形成部材Bの外部に突出している。換言すれば、磁歪式荷重センサ100の動作時において、棒状部材Cの両端部は磁気通路形成部材Bにより形成される磁気通路の外側に位置する。
【0103】
その結果、磁歪式荷重センサ100の出力が棒状部材Cの両端部に発生する応力集中部の影響を受けないので、磁歪式荷重センサ100の出力が安定する。
【0104】
(3−b)
磁気通路形成部材Bと棒状部材Cとの間で接触状態および非接触状態が交互に発生すると、磁気通路形成部材Bと棒状部材Cとの間の磁気抵抗が著しく変化する。
【0105】
本実施の形態に係る磁歪式荷重センサ100では、棒状部材Cが磁気通路形成部材Bと接触しないように設けられている。したがって、磁気通路形成部材Bと棒状部材Cとの間で磁気抵抗が著しく変化することが防止される。その結果、磁歪式荷重センサ100の出力変化が、磁気通路形成部材Bと棒状部材Cとの間の磁気抵抗の変化の影響によりばらつくことが防止される。
【0106】
また、磁気通路形成部材Bと棒状部材Cとの距離Mgは、ハウジングEと荷重伝達部材Da,Dbとの距離Mdよりも大きくなっているので、棒状部材Cが磁気通路形成部材Bと接触しない。それにより、磁気通路形成部材Bには棒状部材Cとの接触に起因する応力集中部が発生しない。したがって、磁気通路形成部材Bの磁気特性がばらつかない。その結果、磁歪式荷重センサ100の出力変化がばらつくことが防止される。
【0107】
(3−c)
磁気通路形成部材Bと棒状部材Cとが互いに接触せず、棒状部材Cの一端と荷重伝達部材Daとの接続部、および棒状部材Cの他端と荷重伝達部材Dbとの接続部が磁気通路形成部材Bの外部に位置する。
【0108】
これにより、磁気通路形成部材B、棒状部材Cおよび荷重伝達部材Da,Dbの形状および寸法の誤差により棒状部材Cの両端に応力集中部が発生した場合でも、磁歪式荷重センサ100の出力が棒状部材Cの両端部に発生する応力集中部の影響を受けないので、磁歪式荷重センサ100の出力が安定する。
【0109】
それにより、磁歪式荷重センサ100を量産する際の磁気通路形成部材B、棒状部材Cおよび荷重伝達部材Da,Dbの形状および寸法の精度が緩和される。その結果、磁歪式荷重センサ100の製造歩留まりが向上する。
【0110】
(3−d)
2つの方向から加えられる荷重を2つの荷重センサを用いて検出する装置を作製する場合には、2つの荷重センサの感度を等しく調整すること、または等しい感度を有する2つの荷重センサを選別することが必要である。それにより、製造工程数および製造コストが増加する。
【0111】
本実施の形態に係る磁歪式荷重センサ100では、棒状部材Cの一端および他端に加えられる荷重をそれぞれ検出することが可能である。これにより、2つの方向から加えられる荷重を1つの磁歪式荷重センサ100により検出することができる。したがって、2つの方向から加えられる荷重を検出するために、個別に荷重センサを設ける必要がないので、部品点数が低減される。それにより、磁歪式荷重センサ100の小型化および軽量化が実現される。
【0112】
また、1つの磁歪式荷重センサ100により2つの方向から加えられる荷重を検出することができるので、2つの荷重センサの感度の調整および2つの荷重センサの選別が不要となる。その結果、装置の製造工程数および製造コストが低減され、製造歩留まりが向上する。
【0113】
(3−e)
荷重伝達部材Daが、荷重印加部材Faにより加えられる荷重を棒状部材Cに伝達するとともに、荷重伝達部材Dbを通じて棒状部材Cに伝達された荷重を受け止める。
【0114】
また、荷重伝達部材Dbが、荷重印加部材Fbにより加えられる荷重を棒状部材Cに伝達するとともに、荷重伝達部材Daを通じて棒状部材Cに伝達された荷重を受け止める。
【0115】
このように、本実施の形態に係る磁歪式荷重センサ100においては、荷重伝達部材Da,Dbが、荷重を伝達するとともに、荷重を受け止める働きを有する。
【0116】
したがって、荷重を伝達する部材と、荷重を受け止める部材とを個別に設ける必要がないので、部品点数が低減され、製造コストが低減される。
【0117】
また、磁歪式荷重センサ100は、その中心を基準として複数の構成部材が対称となるように配置されている。したがって、棒状部材Cの一端に荷重が加えられる場合と、棒状部材Cの他端に荷重が加えられる場合とで、荷重が対称的な経路で棒状部材Cに伝達される。したがって、2つの方向から加えられる荷重を同じ精度で検出することができる。
【0118】
(3−f)
本実施の形態に係る磁歪式荷重センサ100によれば、逆磁歪効果により荷重が検出される。それにより、歪ゲージ式ロードセルに比べて、非常に高い感度(数十倍から数百倍)で荷重を検出することができる。
【0119】
また、このように荷重を検出する感度が高いので、歪ゲージ式ロードセルのように、感度を向上させるために棒状部材Cを細くまたは薄く形成する必要がない。したがって、磁歪式荷重センサ100の強度が低下しない。それにより、十分な耐久性を確保することができる。
【0120】
以下、第1の実施の形態に係る磁歪式荷重センサ100の種々の具体例を説明する。
【0121】
(4) 磁歪式荷重センサの第1の具体例
第1の実施の形態に係る磁歪式荷重センサ100の第1の具体例を説明する。
【0122】
(4−a) 第1の具体例に係る磁歪式荷重センサの構成
図3は、第1の実施の形態に係る磁歪式荷重センサ100の第1の具体例を示す断面図である。図3に示すように、第1の具体例に係る磁歪式荷重センサ100aは、コイル10、磁気通路形成部材20、棒状部材30、2つの荷重伝達部材40a,40bおよびハウジング50を含む。
【0123】
これらのコイル10、磁気通路形成部材20、棒状部材30、2つの荷重伝達部材40a,40bおよびハウジング50は、それぞれ上述のコイルA、磁気通路形成部材B、棒状部材C、2つの荷重伝達部材Da,DbおよびハウジングEに相当する。
【0124】
また、コイル10、磁気通路形成部材20および棒状部材30からなる集合体が上述のセンサ構成部に相当する。したがって、以下の説明においても、コイル10、磁気通路形成部材20および棒状部材30からなる集合体をセンサ構成部と称する。
【0125】
コイル10は、導線11およびボビン12により構成されている。ボビン12は、長手形状を有するとともに、その両端にフランジ部を備える。ボビン12の2つのフランジ部間に導線11が巻回されている。ボビン12の軸心には貫通孔10hが形成されている。
【0126】
磁気通路形成部材20は、外周面および一端面を有する円筒形状の第1のケーシング部材21、および略円盤形状の第2のケーシング部材22により構成されている。
【0127】
第1のケーシング部材21および第2のケーシング部材22は、磁性材料により形成されている。これにより、磁歪式荷重センサ100aの動作時において、第1のケーシング部材21および第2のケーシング部材22の各々は磁気通路として機能する。
【0128】
第1のケーシング部材21内に環状の弾性部材19を介してコイル10が挿入される。第1のケーシング部材21の他端に第2のケーシング部材22が接続される。これにより、磁気通路形成部材20内にコイル10が収容される。
【0129】
第1のケーシング21の一端面の中央部には円形の開口21hが形成され、第2のケーシング22の中央部には円形の開口22hが形成されている。
【0130】
開口21h,22hには、それぞれスペーサSPが取り付けられている。スペーサSPは、非磁性材料により形成されている。
【0131】
貫通孔10hおよび開口21h,22hに円柱形状を有する棒状部材30が挿入される。この状態で、棒状部材30の一端部30aおよび他端部30bは開口21h,22hから突出している。棒状部材30は、磁性材料により形成されている。これにより、磁歪式荷重センサ100aの動作時において、棒状部材30はコイル10により磁化される。
【0132】
図3に示すように、棒状部材30の直径は、貫通孔10hおよび開口21h,22hのいずれの内径よりも小さい。これにより、棒状部材30の外面と貫通孔10hおよび開口21h,22hの内面との間に隙間が形成される。それにより、棒状部材30が磁気通路形成部材20と接触することが防止されている。
【0133】
上記のスペーサSPは、棒状部材30とコイル10および磁気通路形成部材20とが所定の位置関係で配置されるように、各部材の移動を制限している。詳細は後述する。
【0134】
棒状部材30の一端部30aは棒状部材30の直径以上の長さ分開口22hから突出しており、棒状部材30の他端部30bは棒状部材30の直径以上の長さ分開口21hから突出している。詳細は後述する。
【0135】
棒状部材30は、その中心軸が貫通孔10hおよび開口21h,22hの中心を結ぶ軸と一致するように後述の荷重伝達部材40a,40bにより支持される。
【0136】
荷重伝達部材40aは、円柱形状の軸部41aおよびフランジ部42aを有する。円柱形状の軸部41aの一端にフランジ部42aが形成されており、フランジ部42aの中央に円形の凹部43aが形成されている。
【0137】
荷重伝達部材40bも同様に、円柱形状の軸部41bおよびフランジ部42bを有する。円柱形状の軸部41bの一端にフランジ部42bが形成されており、フランジ部42bの中央に円形の凹部43bが形成されている。これらの荷重伝達部材40a,40bは、非磁性材料により形成されている。
【0138】
棒状部材30の一端部30aが荷重伝達部材40aの凹部43aに挿入され、接続される。また、棒状部材30の他端部30bが荷重伝達部材40bの凹部43bに挿入され、接続される。
【0139】
ハウジング50は、外周面および一端面を有する円筒形状の第1のハウジング51と、略円盤形状の第2のハウジング52とを含む。第1のハウジング51および第2のハウジング52は、非磁性材料により形成されている。
【0140】
コイル10、磁気通路形成部材20、棒状部材30および荷重伝達部材40a,40bからなる集合体が第1のハウジング51内に収容される。そこで、第1のハウジング51と第2のハウジング52とが複数のネジ59により接続される。
【0141】
第1のハウジング51および第2のハウジング52には、弾性力を有する樹脂等からなる複数のOリングO1〜O4が取り付けられている。
【0142】
上記において、第1のケーシング部材21、第2のケーシング部材22および棒状部材30を形成する磁性材料としては、例えば、鉄系材料、鉄クロム系材料、鉄ニッケル系材料、鉄コバルト系材料、鉄ケイ素系材料、鉄アルミニウム系材料、純鉄、パーマロイ、超磁歪材料、フェライト系ステンレス(例えばSUS430)等が挙げられる。第1のケーシング部材21、第2のケーシング部材22および棒状部材30に同じ磁性材料により形成されることが好ましい。本実施の形態では、第1のケーシング部材21、第2のケーシング部材22および棒状部材30にSUS430が用いられる。
【0143】
また、スペーサSP、荷重伝達部材40a,40b、第1のハウジング51および第2のハウジング52を形成する非磁性材料としては、例えば、オーステナイト系ステンレス、アルミニウムまたは銅等が挙げられる。本実施の形態では、荷重伝達部材40a,40bにSUS304が用いられ、第1のハウジング51および第2のハウジング52にアルミニウムが用いられる。
【0144】
(4−b) ハウジング内での各構成部材の支持状態
複数のOリングO1〜O4およびハウジング50内での各構成部材の支持状態について説明する。
【0145】
図4は、図3の磁歪式荷重センサ100aのハウジング50内における各構成部材の支持状態を説明するための図である。
【0146】
図4に示すように、第1のハウジング51の一端面の中央には、円形の開口51hが形成されている。開口51hの直径は、荷重伝達部材40bの軸部41bの直径よりも大きい。開口51hの内周面に環状の溝部51mが形成されている。
【0147】
磁歪式荷重センサ100aの組立て時には、溝部51mにOリングO1が取り付けられ、開口51hに荷重伝達部材40bの軸部41bが挿入される。
【0148】
ここで、OリングO1の断面の直径は溝部51mの深さよりも大きい。それにより、荷重伝達部材40bの軸部41bは、弾性力を有するOリングO1により支持される。したがって、荷重伝達部材40bの製造時においては、荷重伝達部材40bの形状および寸法に誤差が生じた場合でも、荷重伝達部材40bは、OリングO1により誤差の影響が吸収されつつハウジング50内で支持される。その結果、荷重伝達部材40bの形状および寸法精度が緩和される。この状態において、軸部41bの外周面と、開口51hの内周面との間の隙間G1は、例えば約0.1mmである。
【0149】
一方、第2のハウジング52の中央にも、円形の開口52hが形成されている。開口52hの直径は、荷重伝達部材40aの軸部41aの直径よりも大きい。開口52hの内周面に環状の溝部52mが形成されている。
【0150】
磁歪式荷重センサ100aの組立て時には、溝部52mにOリングO4が取り付けられ、開口52hに荷重伝達部材40bの軸部41aが挿入される。
【0151】
ここで、OリングO4の断面の直径は溝部52mの深さよりも大きい。それにより、荷重伝達部材40aの軸部41aは、弾性力を有するOリングO4により支持される。したがって、荷重伝達部材40aの製造時においては、荷重伝達部材40aの形状および寸法に誤差が生じた場合でも、荷重伝達部材40aは、OリングO4により誤差の影響が吸収されつつハウジング50内で支持される。その結果、荷重伝達部材40aの形状および寸法精度が緩和される。この状態において、軸部41aの外周面と、開口52hの内周面との間の隙間G2は、例えば約0.1mmである。
【0152】
上記のように、棒状部材30を支持する荷重伝達部材40a,40bは、それぞれOリングO1,O4を介してハウジング50により位置決めされている。これにより、荷重伝達部材40a,40bはハウジング50内で磁歪式荷重センサ100aの中心軸(ハウジング50の中心軸)と直交する方向において微少な変位量で移動することが許容されている。
【0153】
したがって、例えば荷重伝達部材40a,40bに磁歪式荷重センサ100aの中心軸から傾斜した方向から荷重が加わった場合でも、荷重伝達部材40aまたは荷重伝達部材40bがOリングO1,O4により弾性的に移動する。そのため、荷重の加えられる方向に起因して棒状部材30の一端部30aおよび他端部30bに発生する応力集中が低減される。それにより、磁歪式荷重センサ100aの出力変化のばらつきが十分に防止される。
【0154】
また、磁歪式荷重センサ100aに振動または衝撃が加えられた場合でも、棒状部材30に発生する振動または衝撃がOリングO1,O4により吸収される。それにより、磁歪式荷重センサ100aの出力変化が棒状部材30に発生する振動または衝撃の影響によりばらつくことが十分に防止される。
【0155】
第1のハウジング51は、長手方向における一端側に第1の外周壁511を有し、他端側に第2の外周壁512を有する。第2の外周壁512は、第1の外周壁511よりも大きい内径および外径を有する。
【0156】
第2のハウジング52は、円盤部521および環状のガイド部522を有する。円盤部521の中央に上述の開口52hが形成されている。ガイド部522は、円盤部521の一面から突出するように形成されている。
【0157】
ガイド部522は、第1のハウジング51と第2のハウジング52との嵌合時に、その外周面が第1のハウジング51の第2の外周壁512の内周面と当接するように、第1のハウジング51を第2のハウジング52の一面上に導く。
【0158】
ガイド部522の外周面には環状の溝部522mが形成されている。磁歪式荷重センサ100aの組立て時には、溝部522mにOリングO3が取り付けられ、第1のハウジング51と第2のハウジング52とが嵌合される。これにより、ハウジング50の密閉性が向上する。
【0159】
さらに、第1のハウジング51および第2のハウジング52の製造時においては、第1のハウジング51および第2のハウジング52の嵌合部に誤差が生じる場合がある。その場合でも、第1のハウジング51および第2のハウジング52は、OリングO2により誤差の影響が吸収されつつ嵌合される。その結果、第1のハウジング51および第2のハウジング52の形状および寸法精度が緩和される。
【0160】
ハウジング50内における磁気通路形成部材20の支持状態を説明する。
【0161】
第1の外周壁511の一端面に、環状の溝部511mが形成されている。磁歪式荷重センサ100aの組立て時には、溝部511mにOリングO2が取り付けられる。この状態で、コイル10および磁気通路形成部材20が第1のハウジング51内に挿入される。
【0162】
ここで、OリングO2の断面の直径は溝部511mの深さよりも大きい。それにより、第1のハウジング51内に磁気通路形成部材20が挿入される際には、磁気通路形成部材20の第2のケーシング部材22の一面がOリングO2と接触する。
【0163】
この状態で、第1のハウジング51と第2のハウジング52とが嵌合されることにより、第2のケーシング部材22の他面が第2のハウジング52のガイド部522の端面と当接する。
【0164】
これにより、第2のケーシング部材22は、弾性力を有するOリングO2およびガイド部522により挟まれることにより支持されている。第1のハウジング51および第2のケーシング部材22の製造時においては、第1のハウジング51および第2のケーシング部材22の形状および寸法に誤差が生じる場合がある。その場合でも、第2のケーシング部材22は、OリングO2により誤差の影響が吸収されつつハウジング50内で支持される。
【0165】
その結果、第1のハウジング51および第2のケーシング部材22の形状および寸法精度が緩和される。この状態において、第2のケーシング部材22の一面と、第1の外周壁511の端面との間の隙間G3は、例えば約0.2mmである。
【0166】
このように、磁気通路形成部材20は、ハウジング50内でOリングO2により弾性的に支持される。これにより、磁歪式荷重センサ100aに振動または衝撃が加えられた場合でも、磁気通路形成部材20に発生する振動または衝撃がOリングO2により吸収される。それにより、磁歪式荷重センサ100aの出力変化が棒状部材30に発生する振動または衝撃の影響によりばらつくことが十分に防止される。
【0167】
(4−c) 棒状部材の位置ずれの防止
磁歪式荷重センサ100aの内部に振動または衝撃が発生する際には、磁気通路形成部材20と棒状部材30との位置関係にずれが生じる場合がある。また、磁歪式荷重センサ100aの中心軸に対して傾斜した方向に荷重が加わる際にも、磁気通路形成部材20と棒状部材30との位置関係にずれが生じる場合がある。このような場合でも、上記のように、磁気通路形成部材20および棒状部材30はともに、ハウジング50内で弾性的に支持されているので、そのずれ量に応じてセンサ構成部のインピーダンスが変化する。
【0168】
図5は、図3の棒状部材30と磁気通路形成部材20との位置関係に応じて変化するセンサ構成部のインピーダンスを説明するための図である。図5(a)に、図3の棒状部材30の一端部30a周辺の拡大図が示されている。
【0169】
図5(a)に示すように、初めに棒状部材30の中心軸が第2のケーシング部材22の開口22hの中心に位置するように、棒状部材30を磁気通路形成部材20内に配置する。この場合、開口22hにスペーサSPが設けられていないと、棒状部材30は、その外周面と開口22hの内周面との間の間隔W分のずれが許容される。
【0170】
これに対して、開口22hにスペーサSPが設けられていると、棒状部材30は、その外周面とスペーサSPの内周面との間の間隔V分のずれが許容される。
【0171】
間隔Vは、スペーサSPの厚み分間隔Wよりも小さい。それにより、スペーサSPは磁気通路形成部材20と棒状部材30との位置関係のずれ量を小さく制限している。
【0172】
図5(b)に、磁気通路形成部材20に対する棒状部材30の中心軸の位置と、センサ構成部のインピーダンスとの関係が示されている。図5(b)において、縦軸はセンサ構成部のインピーダンスを示し、横軸は開口22h内における棒状部材30の中心軸の位置を示す。なお、横軸において、符号Xは開口22hの中心を示している。
【0173】
図5(b)に示すように、センサ構成部のインピーダンスは、棒状部材30の中心軸が開口22hの中心Xに位置する際に最小となる。そして、センサ構成部のインピーダンスは、棒状部材30の中心軸が開口22hの中心Xから離れるにつれて2次関数的に増加する。
【0174】
本具体例に係る磁歪式荷重センサ100aにおいては、上述のように、スペーサSPが磁気通路形成部材20と棒状部材30との位置関係のずれ量を小さく制限している。これにより、磁気通路形成部材20と棒状部材30との位置関係のずれに起因するセンサ構成部のインピーダンスの変化が十分に低減される。それにより、磁歪式荷重センサ100aの出力の安定性が向上されている。
【0175】
なお、スペーサSPは必ずしも設けられる必要はない。スペーサSPが設けられない場合であっても、ハウジング50内の各構成部材間の隙間を以下のように設定することにより、上記と同様の効果を得ることができる。
【0176】
図4に示すように、軸部41bの外周面と開口51hの内周面との間の隙間G1と、軸部41aの外周面と開口52hの内周面との間の隙間G2とを同じ幅に設定する。また、棒状部材30の外周面と開口21hの内周面との間の隙間G4と、棒状部材30の外周面と開口22hの内周面との間の隙間G5とを同じ幅に設定する。さらに、隙間G1,G2の幅が隙間G4,G5の幅以下となるように設定する。
【0177】
上記の隙間G1,G2は、それらの隙間内で棒状部材30を支持する荷重伝達部材40a,40bが磁歪式荷重センサ100aの中心軸に交差する方向へ移動することを許容する。また、隙間G4,G5は、それらの隙間内で棒状部材30が磁歪式荷重センサ100aの中心軸に交差する方向へ移動することを許容する。
【0178】
ここで、ハウジング50内において、隙間G4,G5は、隙間G1,G2の内側に位置する。これにより、棒状部材30は荷重伝達部材40a,40bにより支持されているので、隙間G1,G2,G3,G4が上記の関係を満たす場合、棒状部材30が許容される移動量は隙間G1,G2により制限される。
【0179】
したがって、この場合、ハウジング50内で許容される棒状部材30の移動量を予め考慮して隙間G1,G2の幅を設定することにより、棒状部材30の位置ずれに起因する磁歪式荷重センサ100aの出力の変動を低減することができる。
【0180】
この場合、棒状部材30の位置ずれを低減するために、部品点数を増加すること、磁歪式荷重センサ100aの重量を増加させること、および磁歪式荷重センサ100aを大型化することが不要である。それにより、磁歪式荷重センサ100aの小型化、軽量化および低コスト化が実現される。
【0181】
(4−d) 磁気通路形成部材から突出する棒状部材の長さ
図6は、磁気通路形成部材20の開口22hから突出する棒状部材30の部分を説明するための図である。図6では、スペーサSPは省略する。
【0182】
上述のように、本具体例において、棒状部材30の一端部30aは棒状部材30の直径以上の長さ分開口22hから突出している。これは、以下の理由による。
【0183】
図6に示すように、荷重伝達部材40a(図3)に荷重が加えられることにより、棒状部材30の両端部に局部的に応力が集中する場合がある(矢印p参照)。
【0184】
棒状部材30の一端部30aにおいて、局部的に集中して作用する応力は、棒状部材30の中心軸に平行な軸を中心として両側に約45°の範囲に広がって伝播する。
【0185】
本具体例では、棒状部材30の一端部30aが、棒状部材30の直径α以上の長さβ突出している。これにより、棒状部材30の一端部30aの縁部に局部的に集中して応力が作用する場合でも、その応力は棒状部材30の突出部内で断面の全域に広がる。
【0186】
それにより、第2のケーシング部材22の内側の棒状部材30の部分、すなわち図3の磁気通路形成部材20に覆われる棒状部材30の部分においては、棒状部材30に作用する応力が棒状部材30の全体に渡って広がる。したがって、棒状部材30の応力分布がほぼ均一となっている。
【0187】
これにより、磁気通路形成部材20内のコイル10が、棒状部材30の不均一な応力分布の影響を受けることが防止される。その結果、磁歪式荷重センサ100の出力が棒状部材Cに発生する応力集中部の影響を受けることが防止されるので、磁歪式荷重センサ100の出力が安定する。
【0188】
図6では図示しないが、上記と同じ理由で、棒状部材30の他端部30bも棒状部材30の直径以上の長さ分開口21hから突出している。それにより、磁歪式荷重センサ100の出力が棒状部材Cに発生する応力集中部の影響を受けることが防止されるので、磁歪式荷重センサ100の出力が十分に安定する。
【0189】
なお、本具体例では、棒状部材30が円柱形状を有するとしているが、棒状部材30は多角柱形状を有してもよい。この場合、棒状部材30の両端部は、当該多角形の外接円の直径以上の長さ分、磁気通路形成部材20から突出することが好ましい。
【0190】
(4−e) 磁歪式荷重センサの実験
本発明者は、以下に説明する実施例および比較例の磁歪式荷重センサの中心軸に対して傾斜した方向から荷重が加えられた場合における磁歪式荷重センサの出力特性について調査するために実験を行った。
【0191】
以下の説明において、傾斜角度とは、実施例および比較例の磁歪式荷重センサの中心軸に対する角度をいう。
【0192】
本発明者は図3に示す構造を有する実施例の磁歪式荷重センサ100aを作製した。そこで、磁歪式荷重センサ100aの荷重伝達部材40bに種々の傾斜角度で所定の荷重を加え、傾斜角度が0°である場合の磁歪式荷重センサ100aの感度に対する相対感度を測定した。
【0193】
ここで、感度とは、磁歪式荷重センサ100aに所定の荷重が加えられた場合のセンサ構成部のインピーダンスの変化量(インピーダンス変化量ΔZ)を、磁歪式荷重センサ100aに荷重が加えられない場合のセンサ構成部のインピーダンス(初期インピーダンスZ)で除算することにより得られる。
【0194】
また、相対感度とは、「0°の傾斜角度で所定の荷重を加えた場合の磁歪式荷重センサ100aの感度」に対する「任意の傾斜角度で所定の荷重を加えた場合の磁歪式荷重センサ100aの感度」の比率をいう。
【0195】
図7(a)に、実施例の磁歪式荷重センサ100aを用いた場合の傾斜角度と相対感度との関係が示されている。縦軸は相対感度を示し、横軸は傾斜角度を示す。
【0196】
図7(a)に示すように、実施例の磁歪式荷重センサ100aは、傾斜角度が0°から30°に変化する場合であっても、約6%しか相対感度が変化しなかった。約6%の相対感度の変化は実用上問題がない。そのため、実施例の磁歪式荷重センサ100aでは、出力が安定し、歩留まりの向上およびコストの低減が可能となることがわかった。
【0197】
一方、本発明者は比較例の磁歪式荷重センサを作製し、実施例の磁歪式荷重センサ100aとほぼ同じ実験を行った。実験に用いた比較例の磁歪式荷重センサは、図3の磁気通路形成部材20の第2のケーシング部材22に開口22hを有さず、第2のケーシング部材22が棒状部材30の一端部30aを支持する構成を有する。比較例の磁歪式荷重センサの他の部分の構成は、図3の磁歪式荷重センサと同様である。
【0198】
図7(b)に、比較例の磁歪式荷重センサを用いた場合の傾斜角度と相対感度との関係が示されている。縦軸は相対感度を示し、横軸は傾斜角度を示す。
【0199】
図7(b)に示すように、比較例の磁歪式荷重センサは、傾斜角度が0°から3°に変化するだけで、約30%の相対感度が変化した。
【0200】
上記より、実施例の磁歪式荷重センサ100aは、比較例の磁歪式荷重センサに比べて傾斜角度による影響を受けにくいことが明らかとなった。
【0201】
(5) 磁歪式荷重センサの第2の具体例
第1の実施の形態に係る磁歪式荷重センサ100の第2の具体例を説明する。第2の具体例に係る磁歪式荷重センサは、以下の点で第1の具体例に係る磁歪式荷重センサ100aと構成が異なる。
【0202】
図8は、第1の実施の形態に係る磁歪式荷重センサ100の第2の具体例を示す断面図である。
【0203】
第2の具体例に係る磁歪式荷重センサ100bにおいて、第1のハウジング51には、図4の溝部51mが形成されない代わりに、第1のハウジング51の一端面の内側に環状の溝部51nが形成されている。また、第2のハウジング52には、図4の溝部52mが形成されない代わりに、円盤部521の一面側に環状の溝部52nが形成されている。
【0204】
磁歪式荷重センサ100bの組立て時には、溝部51nにOリングO5が取り付けられる。ここで、OリングO5の断面の直径は溝部51nの深さよりも大きい。それにより、第1のハウジング51内に、コイル10、磁気通路形成部材20、棒状部材30および荷重伝達部材40a,40bからなる集合体が挿入される際には、荷重伝達部材40bのフランジ部42bの一面が、OリングO5と接触する。
【0205】
また、磁歪式荷重センサ100bの組立て時には、溝部52nにOリングO6が取り付けられる。ここで、OリングO6の断面の直径は溝部52nの深さよりも大きい。それにより、第1のハウジング51と第2のハウジング52とを嵌合する際には、荷重伝達部材40aのフランジ部42aの一面が、OリングO6と接触する。
【0206】
これにより、作製された磁歪式荷重センサ100bの内部では、棒状部材30の他端部30bを支持する荷重伝達部材40bが弾性力を有するOリングO5により支持される。また、棒状部材30の一端部30aを支持する荷重伝達部材40aが弾性力を有するOリングO6により支持される。
【0207】
この状態で、OリングO5は、荷重伝達部材40bを棒状部材30の中心に向かう方向に付勢する。また、OリングO6も、荷重伝達部材40aを棒状部材30の中心に向かう方向に付勢する。
【0208】
それにより、棒状部材30は、その軸方向にOリングO5,O6の弾性力が加えられた状態で支持されている。したがって、磁歪式荷重センサ100bに振動または衝撃が加えられた場合でも、棒状部材30の軸方向のがたつきが防止され、棒状部材30の破損が防止される。
【0209】
また、棒状部材30の位置ずれも防止される。これにより、棒状部材30の位置ずれに起因するセンサ構成部のインピーダンスの変化が十分に低減される。それにより、磁歪式荷重センサ100bの出力の安定性が向上されている。
【0210】
さらに、棒状部材30、ハウジング50および荷重伝達部材40a,40bの製造時において、各部材の形状および寸法に誤差が生じた場合でも、棒状部材30および荷重伝達部材40a,40bは、OリングO5,O6により誤差の影響が吸収されつつハウジング50内で支持される。したがって、棒状部材30、ハウジング50および荷重伝達部材40a,40bの形状および寸法精度が緩和される。
【0211】
(6) 磁歪式荷重センサの第3の具体例
第1の実施の形態に係る磁歪式荷重センサ100の第3の具体例を説明する。第3の具体例に係る磁歪式荷重センサは、以下の点で第2の具体例に係る磁歪式荷重センサ100bと構成が異なる。
【0212】
図9は、第1の実施の形態に係る磁歪式荷重センサ100の第3の具体例を示す断面図である。
【0213】
第3の具体例に係る磁歪式荷重センサ100cにおいて、第1のハウジング51の第2の外周壁512は図8の第2の具体例の第2の外周壁512に比べて十分に厚く形成されている。
【0214】
そして、第1の外周壁511の一端面に図8の溝部511mが形成されない代わりに、第2の外周壁512の一端面に、環状の溝部512mが形成されている。
【0215】
磁歪式荷重センサ100cの組立て時には、溝部512mにOリングO7が取り付けられる。ここで、OリングO7の断面の直径は溝部512mの深さよりも大きい。それにより、第1のハウジング51と第2のハウジング52とが嵌合する際には、第2のハウジング52の円盤部521の一面がOリングO7と接触する。
【0216】
これにより、第1のハウジング51と第2のハウジング52との間の位置ずれがさらに防止される。また、ハウジング50の密閉性がより向上する。
【0217】
また、第1のハウジング51および第2のハウジング52の製造時において、第1のハウジング51および第2のハウジング52の嵌合部に誤差が生じる場合がある。そのような場合でも、第1のハウジング51および第2のハウジング52は、OリングO3により誤差の影響が吸収されつつ嵌合される。その結果、第1のハウジング51および第2のハウジング52の形状および寸法精度が緩和される。
【0218】
図9に示すように、本具体例に係る磁歪式荷重センサ100cでは、第1のハウジング51の第1の外周壁511の一端面にOリングが設けられない。したがって、第2のケーシング部材22は、第1の外周壁511の一端面および第2のハウジング52のガイド部522により支持されている。
【0219】
この場合、磁気通路形成部材20をハウジング50内で強固に固定することができる。したがって、ハウジング50内に振動および衝撃が発生しない環境で磁歪式荷重センサ100cを用いる場合には、ハウジング50内で磁気通路形成部材20を精度よく配置することができるので、磁歪式荷重センサ100cの測定精度が向上する。
【0220】
(7) 磁歪式荷重センサの第4の具体例
第1の実施の形態に係る磁歪式荷重センサ100の第4の具体例を説明する。第4の具体例に係る磁歪式荷重センサは、以下の点で第3の具体例に係る磁歪式荷重センサ100cと構成が異なる。
【0221】
図10は、第1の実施の形態に係る磁歪式荷重センサ100の第4の具体例を示す断面図である。
【0222】
第4の具体例に係る磁歪式荷重センサ100dにおいて、第1のハウジング51の第2の外周壁512は第3の具体例と同様に、第2の具体例の第2の外周壁512に比べて十分に厚く形成されている。また、第1の外周壁511および第2の外周壁512は、互いの内周面が面一となるように形成されている。
【0223】
さらに、第1の外周壁511の内周面には環状の溝部511kが形成され、第2の外周壁512の内周面には環状の溝部512kが形成されている。
【0224】
第1のハウジング51への磁気通路形成部材20の挿入時には、溝部511k,512kにそれぞれOリングO8,O9が取り付けられる。OリングO8,O9は、それぞれの断面の直径が溝部511k,512kの深さよりも大きい。これにより、OリングO8,O9は、第1のハウジング51の内周面からその内側に突出する。
【0225】
磁気通路形成部材20の第2のケーシング部材22は、第1のケーシング部材21の一端面と同じ形状となるように形成されている。したがって、磁気通路形成部材20は、その外周面が面一となっている。
【0226】
磁気通路形成部材20が第1のハウジング51内に挿入されると、磁気通路形成部材20の外周面がOリングO8,O9に接触する。それにより、磁気通路形成部材20がハウジング50内で支持される。
【0227】
このように、本具体例に係る磁歪式荷重センサ100dにおいては、OリングO8,O9により磁気通路形成部材20が支持される。これにより、ハウジング50内で磁気通路形成部材20を支持するために、第2のケーシング部材22の外径を大きく形成し、第1のハウジング51と第2のハウジング52との間で第2のケーシング部材22の周縁部を挟み込む構造が不要である。
【0228】
それにより、第2のハウジング52に図9のガイド部522を設ける必要がなく、第1のハウジング51の第1の外周壁511と第2の外周壁512との間で内周面に段差を設ける必要もない。したがって、磁歪式荷重センサ100dの外径を小さくすることができる。その結果、磁歪式荷重センサ100dが小型化される。
【0229】
また、第1のハウジング51および磁気通路形成部材20の製造時において、第1のハウジング51の内周面および磁気通路形成部材20の外周面の形状および寸法に誤差が生じた場合でも、磁気通路形成部材20は、OリングO8,O9により誤差の影響が吸収されつつ第1のハウジング51内で支持される。その結果、第1のハウジング51および磁気通路形成部材20の形状および寸法精度が緩和される。
【0230】
(8) 磁歪式荷重センサの第5の具体例
第1の実施の形態に係る磁歪式荷重センサ100の第5の具体例を説明する。第5の具体例に係る磁歪式荷重センサは、以下の点で第1の具体例に係る磁歪式荷重センサ100aと構成が異なる。
【0231】
図11は、第1の実施の形態に係る磁歪式荷重センサ100の第5の具体例を示す断面図である。
【0232】
第5の具体例に係る磁歪式荷重センサ100eには、図3の荷重伝達部材40a,40bに代えて、荷重伝達部材40a,40bと形状が異なる荷重伝達部材400a,400bが設けられている。
【0233】
荷重伝達部材400a,400bは、それぞれ円柱形状を有する。また、荷重伝達部材400a,400bの一端面の中央には、それぞれ円形の凹部443a,443bが形成されている。
【0234】
荷重伝達部材400aの凹部443aに棒状部材30の一端部30aが挿入され、荷重伝達部材400aと棒状部材30とが接合される。荷重伝達部材400aと棒状部材30との接合は、ねじ込み、圧入、接着、溶接またはろう付け等により行われる。
【0235】
一方、荷重伝達部材400bの凹部443bに棒状部材30の他端部30bが挿入され、荷重伝達部材400bと棒状部材30とが接合される。荷重伝達部材400bと棒状部材30との接合も、ねじ込み、圧入、接着、溶接またはろう付け等により行われる。
【0236】
荷重伝達部材400a,400bがハウジング50内で棒状部材30を支持する。この状態で、荷重伝達部材400a,400bの各々は開口52h,51hに位置し、OリングO4,O1の弾性力により支持される。
【0237】
荷重伝達部材400a,400bの各々には、棒状部材30の軸上で磁歪式荷重センサ100eの外方へ延びるように荷重伝達軸410a,410bが一体形成されている。さらに、荷重伝達軸410a,410bの各々の端部には、環状部材411a,411bが一体形成されている。
【0238】
ここで、棒状部材30の透磁率は、棒状部材30に圧縮力が作用する場合のみならず、引っ張り力が作用する場合にも変化する。したがって、センサ構成部のインピーダンスは、棒状部材30に作用する圧縮力および引っ張り力に応じて変化する。
【0239】
上記構成を有する磁歪式荷重センサ100eによれば、棒状部材30と荷重伝達部材400a,400bとが接合されているので、棒状部材30の軸上で2つの環状部材411a,411bの間に圧縮力が加わることにより当該圧縮力を検出することができる(図11矢印J1参照)。また、棒状部材30の軸上で2つの環状部材411a,411bの間に引っ張り力が加わることにより当該引っ張り力を検出することができる(図11矢印J2参照)。
【0240】
[2] 第2の実施の形態
(1) 磁歪式荷重センサの基本構成
第2の実施の形態に係る磁歪式荷重センサは、以下の点で第1の実施の形態に係る磁歪式荷重センサ100と構成が異なる。
【0241】
図12は、第2の実施の形態に係る磁歪式荷重センサの基本構成を説明するための図である。
【0242】
図12に示すように、第2の実施の形態に係る磁歪式荷重センサ200は、台座CB上に設けられ、第1の実施の形態に係る磁歪式荷重センサ100の構成に加えて2つのアームGa,Gbおよび回転軸Hを備える。
【0243】
台座CB上には、ハウジングEと回転軸Hとが、所定の間隔で配置されている。
【0244】
2つのアームGa,Gbは、略U字形状をなすように互いに連結され、連結部で回転軸Hにより台座CB上に回転可能に支持されている。2つのアームGa,Gbのそれぞれの端部には、荷重印加部材Fa,Fbが取り付けられている。
【0245】
荷重印加部材Fa,Fbは、アームGa,Gbが回転軸Hを中心に回転することにより、ハウジングEにより支持される荷重伝達部材Da,Dbに当接する。
【0246】
図12に示すように、アームGa,Gbが矢印q1の方向に回転する場合には、アームGaに取り付けられた荷重印加部材Faが荷重伝達部材Daに当接する。それにより、荷重伝達部材Daに対して矢印q2の方向に荷重を加えることができる。
【0247】
また、アームGa,Gbが矢印r1の方向に回転する場合には、アームGbに取り付けられた荷重印加部材Fbが荷重伝達部材Dbに当接する。それにより、荷重伝達部材Dbに対して矢印r2の方向に荷重を加えることができる。
【0248】
なお、図12に示すように、本実施の形態に係る磁歪式荷重センサ200では、ハウジングEの両端面から棒状部材Cの軸方向に垂直な方向に延びる2つの延長部分Ea,Ebが設けられている。
【0249】
延長部分Ea,Eb間に、図示しない発振回路、電流検出器、整流回路、増幅回路およびCPU等の周辺回路(荷重検出回路)を備える基板SUが設けられている。基板SUには、コイルAから引き出されたリード線Rが接続される。また、基板SUはケーブルLを介して図示しない外部機器等に接続されている。
【0250】
(2) 第2の実施の形態に係る磁歪式荷重センサによる効果
上記のように、磁歪式荷重センサ200においては、2つの荷重印加部材Fa,Fbが、それぞれ回転軸Hを中心に回転することにより、ハウジングEの両端で支持される荷重伝達部材Da,Dbに荷重が加えられる。
【0251】
したがって、荷重伝達部材Da,Dbに加えられる荷重の方向および位置が対称となり、棒状部材Cの一端に荷重が加えられる場合と、棒状部材Cの他端に荷重が加えられる場合とで、荷重が対称的な経路で棒状部材Cに伝達される。その結果、2つの方向から加えられる荷重を同じ精度で検出することができる。
【0252】
(3) 磁歪式荷重センサの具体例
第2の実施の形態に係る磁歪式荷重センサ200の具体例を説明する。
【0253】
図13は、第2の実施の形態に係る磁歪式荷重センサ200の具体例を示す上面図である。図13に示すように、本具体例に係る磁歪式荷重センサ200aは、第1の実施の形態において説明した図3の磁歪式荷重センサ100aを含むとともに、アーム920a,920bおよび回転軸910を含む。
【0254】
本具体例において、図13の磁歪式荷重センサ100aは図12の磁歪式荷重センサ100に相当する。また、アーム920a,920bおよび回転軸910はそれぞれ上述のアームGa,Gbおよび回転軸Hに相当する。
【0255】
図13に示すように、本具体例に係る磁歪式荷重センサ200aは、台座990上に設けられる。
【0256】
台座990上には、図3の磁歪式荷重センサ100aと回転軸910とが、所定の間隔で配置されている。
【0257】
2つのアーム920a,920bは、略U字形状をなすように互いに連結され、連結部で回転軸910により台座990上に回転可能に支持されている。
【0258】
2つのアーム920a,920bには、板ばね支持部材921a,921bがそれぞれ設けられている。アーム920aの内側には、所定の間隔で2つの荷重制限部材922a,923aが設けられている。アーム920bの内側にも、所定の間隔で2つの荷重制限部材922b,923bが設けられている。
【0259】
板ばね支持部材921a,921bに、長手形状を有する板ばね930a,930bの一端が、例えばボルトを用いることによりそれぞれ取り付けられている。
【0260】
支持部材921a,921bに取り付けられた板ばね930a,930bの他端は、アーム920a,920bの端部に向かって延びている。
【0261】
板ばね930a,930bの中央部より他端に近い部分に突起部931a,931bが形成されている。
【0262】
板ばね930aの突起部931aは、2つの荷重制限部材922a,923aの間に位置し、アーム920aの内側に向かって突出している。この状態で、板ばね930aはアーム920aの内側に向かって付勢されている。
【0263】
板ばね930bの突起部931bは、2つの荷重制限部材922b,923bの間に位置し、アーム920bの内側に向かって突出している。この状態で、板ばね930bはアーム920bの内側に向かって付勢されている。
【0264】
本具体例では、板ばね930a,930bの突起部931a,931bが、図12の荷重印加部材Fa,Fbに相当する。したがって、図13に示すように、突起部931a,931bは、アーム920a,920bが回転することにより磁歪式荷重センサ100aの荷重伝達部材40a,40bに当接する。これにより、アーム920a,920bに作用する荷重が、荷重伝達部材40a,40bに加えられる。
【0265】
この場合、図13の矢印Yで示すように、板ばね930a,930bは弾性変形する。
【0266】
ここで、例えばアーム920bに作用する荷重が板ばね930bの弾性力よりも大きい場合には、突起部931bと荷重伝達部材40bとが当接した状態で、板ばね930bがアーム920bの外側に向かって押し戻される。
【0267】
そして、アーム920bの内側に設けられた荷重制限部材922b,923bが図3のハウジング50の一端面に当接する。これにより、アーム920bに作用する荷重が、荷重制限部材922b,923bとハウジング50の一端面との当接部に作用する。
【0268】
その結果、荷重伝達部材40bに板ばね930bの弾性力よりも大きい荷重が加えられることが防止されるので、過大な荷重が加えられることにより図3の棒状部材30が破損および劣化することが防止される。
【0269】
上記では、アーム920bに設けられる板ばね930bおよび荷重制限部材922b,923bの機能について説明したが、アーム920aに設けられる板ばね930aおよび荷重制限部材922a,923aも同様の機能を有する。
【0270】
したがって、本具体例に係る磁歪式荷重センサ200aは、耐久性が向上し、長寿命化が実現されている。
【0271】
[3] 参考形態
(1) 磁歪式荷重センサの基本構成
参考形態に係る磁歪式荷重センサは、以下の点で第1の実施の形態に係る磁歪式荷重センサ100と構成が異なる。
【0272】
図14は、参考形態に係る磁歪式荷重センサの基本構成を説明するための図である。
【0273】
図14に示すように、参考形態に係る磁歪式荷重センサ300には、1つの荷重伝達部材Dおよび1つの荷重印加部材Fのみが設けられる。
【0274】
これにより、棒状部材Cは、その一端部がハウジングEの一端面により支持され、他端部が荷重伝達部材Dにより支持されている。そして、荷重伝達部材Dに対して当接可能に荷重印加部材Fが配置されている。
【0275】
上記構成により、参考形態に係る磁歪式荷重センサ300は、棒状部材Cの一端側から加えられる荷重のみを検出することができる。これにより、棒状部材Cの他端側に荷重を加えるための構成が不要となる。その結果、棒状部材Cの軸方向における大きさを小さくできるとともに、構成が単純化し、低コスト化が実現される。また、一方向からの荷重のみを検出したい場合に、設置スペースが低減される。
【0276】
本参考形態に係る磁歪式荷重センサ300においても、棒状部材Cの両端部が磁気通路形成部材Bの外部に突出している。換言すれば、磁歪式荷重センサ300の動作時において、棒状部材Cの両端部は磁気通路形成部材Bにより形成される磁気通路の外側に位置する。
【0277】
その結果、磁歪式荷重センサ300の出力が棒状部材Cの両端部に発生する応力集中部の影響を受けることが防止されるので、磁歪式荷重センサ300の出力が安定する。
【0278】
(2) 磁歪式荷重センサの具体例
参考形態に係る磁歪式荷重センサ300の具体例を説明する。
【0279】
本具体例に係る磁歪式荷重センサは、以下の点で第1の実施の形態において説明した図3および図4の磁歪式荷重センサ100aと構成が異なる。
【0280】
図15は、参考形態に係る磁歪式荷重センサの具体例を示す断面図である。図15に示すように、本具体例に係る磁歪式荷重センサ300aには、図3の荷重伝達部材40aが設けられていない。
【0281】
また、ハウジング50を構成する第2のハウジング52の中央部には、開口52hが形成される代わりに、その一面側に円形の凹部52Jが形成されている。
【0282】
これにより、磁歪式荷重センサ300aの組立て時には棒状部材30の一端部30aが第2のハウジング52の凹部52Jに挿入される。それにより、棒状部材30は、その一端部30aが第2のハウジング52の凹部52Jにより支持され、他端部30bが荷重伝達部材40bにより支持される。
【0283】
その結果、磁歪式荷重センサ300aは、ハウジング50から突出する荷重伝達部材40bの部分に荷重が加えられる場合にのみ、当該荷重を検出することができる。
【0284】
本具体例に係る磁歪式荷重センサ300aにおいても、図3の磁歪式荷重センサ100aとほぼ同様の効果が得られる。
【0285】
[4] 荷重検出回路の構成
図16は、上記実施の形態に係る磁歪式荷重センサ100を用いた荷重検出回路の概略構成を示すブロック図である。なお、磁歪式荷重センサ100としては、磁歪式荷重センサ100a〜100eのいずれかを用いることができる。
【0286】
荷重検出回路600は、発振回路610、磁歪式荷重センサ100、温度補償抵抗回路620、電流検出器630A,630B、整流回路650A,650B、および増幅回路670を含む。
【0287】
発振回路610は、発振信号を磁歪式荷重センサ100のコイルの一端および温度補償抵抗回路620の一端に与える。磁歪式荷重センサ100は、外部からの荷重を検出する。電流検出器630Aは、磁歪式荷重センサ100のコイルの他端から供給される電流を電圧に変換する。電流検出器630Bは、温度補償抵抗回路620の他端から供給される電流を電圧に変換する。整流回路650Aは、電流検出器630Aから出力される電圧を整流および平滑化する。整流回路650Bは、電流検出器630Bから出力される電圧を整流および平滑化する。増幅回路670は、整流回路650Aの出力電圧と整流回路650Bの出力電圧との差分を増幅する。
【0288】
上述のように、図1の荷重伝達部材Daに加えられる荷重が棒状部材Cの一端に伝達され、棒状部材Cに圧縮力が作用する。それにより、逆磁歪効果により棒状部材Cの透磁率が変化し、コイルA、磁気通路形成部材Bおよび棒状部材Cからなるセンサ構成部のインピーダンスが変化する。このインピーダンス変化に対応する出力信号が増幅回路670により得られる。このようにして、荷重を電磁気的に検出することができる。
【0289】
荷重検出回路600の増幅回路670の出力信号は制御部680に与えられる。制御部680はCPU(中央演算処理装置)およびRAM(ランダムアクセスメモリ)等からなる。CPUは、RAMに格納された制御プログラムに従って動作する。この制御部680は、増幅回路670の出力信号に所定の演算を行い、演算結果に基づく制御信号をアクチュエータ690に与える。アクチュエータ690は、制御信号に応答して駆動力を発生する。
【0290】
なお、磁歪式荷重センサ100の代わりに磁歪式荷重センサ200(200a),300(300a)を用いてもよい。
【0291】
[5] 磁歪式荷重センサを用いた滑走艇
図17は図13の磁歪式荷重センサ200aを用いた滑走艇の平面図である。図18は図17の滑走艇の制御系を示すブロック図である。
【0292】
図17に示すように、滑走艇700は船体702を含む。船体702の上部のデッキ704には、操船者が跨って着座するシート706が設けられる。シート706の左右には操船者が足を乗せるためのステップ708が設けられる。シート706の前方には操船者が把持する操舵ハンドル710が設けられる。船体702内にはウォータージェット推進装置712が搭載される。
【0293】
ウォータージェット推進装置712は、エンジン714およびジェットポンプ716を含み、ジェットポンプ716の後端部にノズルディフレクタ718が設けられる。このウォータージェット推進装置712は、水をエンジン714の動力によって船体702の底から吸い上げ、ジェットポンプ716の後端部のノズルディフレクタ718から後方に噴出させることにより推力を得る。
【0294】
ノズルディフレクタ718は、ジェットポンプ716の後端部に左右方向に揺動自在に支持され、図示しないプッシュ・プルワイヤおよびステアリングアームを介して操舵ハンドル710の下端部に連結される。
【0295】
エンジン714は多気筒エンジンであり、クランク軸720の方向が船体702の前後方向となるように配置される。船体702の右側には吸気装置722が接続され、船体702の左側に図示しない排気装置が接続される。吸気装置722は、エンジン714の各気筒に対応して複数の気化器を含み、各気化器から対応する気筒へ燃料が供給される。各気化器は図18に示すスロットル弁724を含む。なお、各スロットル弁724は、図示しない復帰用スプリングによって閉じる方向に付勢されている。
【0296】
操舵ハンドル710は、操船者が把持するハンドルバー734、ステアリング軸受738、回転軸(ステアリング軸)910、および台座(取り付け用プレート)990を含む。回転軸910は、ハンドルバー734の中央部に取り付けられる。ステアリング軸受738は、回転軸910を回動自在に支持する。台座990は、ステアリング軸受738をデッキ704に固定する。
【0297】
台座990上には図13の磁歪式荷重センサ200aが装着されている。回転軸910には、磁歪式荷重センサ200aのアーム920a,920bが取り付けられる。また、ハンドルバー734および回転軸910を覆うようにハンドルカバー742が設けられる。
【0298】
回転軸910の下端部には、図示しないステアリングアームを介して操舵用のプッシュ・プルワイヤが接続される。ハンドルバー734を左右に回動させることにより、ステアリングアームが同方向に回動し、プッシュ・プルワイヤを介してノズルディフレクター718が左方または右方に揺動する。
【0299】
ハンドルバー734には、スロットルレバー726が設けられる。各スロットル弁724(図18)は互いに連動するように連結されており、スロットル弁724のうち最も船体702の前側に位置するスロットル弁724が操舵ハンドル710のスロットルレバー726にスロットルワイヤ728(図18)を介して接続される。スロットルレバー726を操作することによって、すべてのスロットル弁724が連動して開閉される。
【0300】
図18に示すように、エンジン714には、図17のクランク軸720の回転数を検出するためのエンジン回転数センサ730が設けられる。エンジン回転数センサ730は、コントローラ732にエンジン回転数を示す回転数信号を送出する。
【0301】
コントローラ732には、スロットル操作用サーボモータ746が接続されるとともに、磁歪式荷重センサ100aを含む荷重検出回路600が接続される。コントローラ732は、バッテリー756により給電される。
【0302】
サーボモータ746は、アーム748、モータ750、減速機752およびフィードバックポテンショメータ754により構成される。モータ750の回転が減速機752により減速されてアーム748に伝達される。フィードバックポテンショメータ754によりアーム748の実際の揺動角度が検出される。コントローラ732は、検出されたアーム748の揺動角度が設定されたアーム748の目標角度と一致するようにモータ750を制御する。このようにして、サーボモータ746において、アーム748の角度がフィードバック制御される。
【0303】
上述のように、スロットル弁724は、スロットルワイヤ728を介してスロットルレバー726に接続される。このスロットルワイヤ728は図17の回転軸910内に挿通される。スロットルワイヤ728は、アウターチューブ728aおよびインナーワイヤ728bを含む。アウターチューブ728aは、サーボモータ746のアーム748に接続され、インナーワイヤ728bはスロットル弁724に接続される。サーボモータ746のアーム748を揺動させることによって、インナーワイヤ728bを介してスロットル弁724を開閉することができる。
【0304】
コントローラ732およびスロットル操作用サーボモータ746により操舵補助装置が構成される。この操舵補助装置は、低速走行時の操舵性を向上させるために用いられる。
【0305】
コントローラ732には、荷重検出回路600から荷重を示す出力信号が与えられる。コントローラ732は、出力信号により示される荷重が所定値よりも大きいときにサーボモータ746にアーム748を揺動させるための制御信号を出力する。上記の所定値は、操船者が図17の操舵ハンドル710を限度まで回した状態で(最大舵角時に)、さらに通常の操舵時より大きな力をハンドルバー734に加えたときに磁歪式荷重センサ200aにより検出される荷重に設定されている。
【0306】
この操舵補助装置によれば、滑走艇700が低速で航走している状態で操船者が操舵ハンドル710を限度まで回し、さらに通常より大きな力で回した場合にコントローラ732により操舵制御が行われる。
【0307】
この場合、コントローラ732は、磁歪式荷重センサ100aにより検出された荷重に基づいてサーボモータ746のアーム748の目標角度を設定する。そして、コントローラ732は、フィードバックポテンショメータ754により検出されたアーム748の角度がこの目標角度に一致するようにサーボモータ746をフィードバック制御する。
【0308】
それにより、磁歪式荷重センサ100aにより検出される荷重(操船者が操舵ハンドル710に加えた力に相当)に対応する開度でスロットル弁724が開き、エンジン714の出力が制御される。
【0309】
本例では、コントローラ732が図16の制御部680に相当し、サーボモータ746がアクチュエータ690に相当する。
【0310】
なお、磁歪式荷重センサ200aに用いられる磁歪式荷重センサ100aの代わりに磁歪式荷重センサ100b,100c,100dを用いてもよい。
【0311】
[6] 磁歪式荷重センサを用いた電動自転車
図19は図15の磁歪式荷重センサ300aを用いた電動自転車800の側面図である。図20は図19の電動自転車に用いられるパワーユニットの構成を示す断面図である。
【0312】
図19に示す電動自転車800は、ハンドル802、前輪804、ダウンチューブ806、シートチューブ808、シート(サドル)810、後輪812およびホイールスプロケット814を含む。この電動自転車800の略中央下部にはパワーユニット816が設けられる。
【0313】
パワーユニット816は、人力による駆動系と電動モータ818による補助動力系とを有し、運転者の人力と補助動力とを合成して出力する。パワーユニット816には、クランク軸820が回転自在に接続され、クランク軸820の左右にはクランク822が取り付けられている。各クランク822の端部にはペダル824が回転自在に取り付けられている。なお、パワーユニット816には、コントローラ826が接続されている。パワーユニット816は、人力によりクランク軸820に入力されるトルクの大きさに応じて電動モータ818の出力(補助動力)を制御する。
【0314】
また、シート810の下方でかつシートチューブ808と後輪812とで囲まれる空間には、バッテリボックス828が着脱可能に装着されている。バッテリボックス828内には、シュリンクパックされた複数の単電池で構成される図示しないNi−Cdバッテリが収納される。
【0315】
運転者がペダル824を漕いでクランク軸820を回転駆動すると、クランク軸820に入力されるトルクが図20に示す磁歪式荷重センサ300aにより検出される。コントローラ826は、検出されたトルクに応じて電動モータ818の出力(補助動力)を制御する。
【0316】
したがって、人力とこれに比例する補助動力との合力がパワーユニット816から図示しないチェーンを介してホイールスプロケット814に伝達され、ホイールスプロケット814と後輪812とが回転駆動される。それにより、電動自転車800は、人力とこれに比例した補助動力とにより走行する。
【0317】
図20に示すように、パワーユニット816はハウジング830を含む。ハウジング830内には、クランク軸820に接続されるアーム832および磁歪式荷重センサ300aが収納される。また、アーム832は遊星ギア機構の図示しないリングギアを介してローラ834に接続される。ローラ834が磁歪式荷重センサ300aの荷重伝達部材40bに当接する。
【0318】
この電動自転車800では、遊星ギア機構のリングギアにクランク軸820から伝達されるトルクに比例した反力が発生し、この反力がローラ834を介して磁歪式荷重センサ300aの荷重伝達部材40bに作用する。磁歪式荷重センサ300aから出力される電流は図16の荷重検出回路600に与えられる。コントローラ826は、図16の荷重検出回路600の出力信号に基づいてトルクの大きさを算出し、そのトルクに応じて電動モータ818の出力(補助動力)を制御する。
【0319】
このように、磁歪式荷重センサ300aを用いることによりクランク軸820に入力されるトルクを正確に検出することができる。
【0320】
本例では、コントローラ826が図16の制御部680に相当し、電動モータ818がアクチュエータ690に相当する。
【0321】
なお、磁歪式荷重センサ300aの代わりに磁歪式荷重センサ100a,100b,100c,100dを用いてもよい。
【0322】
[7] 他の実施の形態
上記実施の形態に係る磁歪式荷重センサ100a,100b,100c,100d,100e,200aおよび参考形態に係る磁歪式荷重センサ300aは、滑走艇および電動自転車に限らず、自動二輪車、水上バイク、電動車椅子等の輸送機器に適用することができ、あるいは輸送機器に限らず、移動棚等の種々の移動体にも適用することができる。
【0323】
[8] 請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応
上記実施の形態に係る磁歪式荷重センサにおいては、コイルA,10の貫通孔Ah,10hが貫通孔に相当し、コイルA,10がコイルに相当し、開口Bha,21hが第1の開口に相当し、開口Bhb,22hが第2の開口に相当する。
【0324】
また、磁気通路形成部材B,20が磁気通路形成部材に相当し、棒状部材C,30が荷重検出部材に相当し、荷重伝達部材Da,Db,40a,40bが第1および第2の荷重伝達部材に相当し、ハウジングE,50が支持部材に相当する。
【0325】
さらに、スペーサSPが間隔形成部材に相当し、OリングO1,O4,O5,O6が弾性体に相当し、ハウジングE,50がハウジングに相当し、隙間G4,G5が第1の隙間に相当する。
【0326】
また、開口Eha,Ehb,51h,52hが第3の開口および第4の開口に相当し、隙間G1,G2が第2の隙間に相当し、凹部43a,43bが凹部または第1および第2の凹部に相当し、荷重印加部材Fa,Fbおよび突起部931a,931bが第1および第2の荷重印加部材に相当する。
【0327】
さらに、滑走艇700が移動体に相当し、船体702が本体部に相当し、エンジン714が駆動部に相当し、コントローラ732およびサーボモータ746が制御部に相当する。
【0328】
また、電動自転車800が移動体に相当し、ダウンチューブ806およびシートチューブ808が本体部に相当し、パワーユニット816が駆動部に相当し、コントローラ826が制御部に相当する。
【産業上の利用可能性】
【0329】
本発明は、滑走艇、電動自転車、自動二輪車、水上バイク、電動車椅子等の輸送機器、あるいは移動棚等の種々の移動体における荷重の検出に有効に利用できる。
【符号の説明】
【0330】
43a,43b 凹部
100a,100b,100c,100d,100e,200a,300a 磁歪式荷重センサ
700 滑走艇
702 船体
714 エンジン
732 コントローラ
746 サーボモータ
800 電動自転車
806 ダウンチューブ
808 シートチューブ
816 パワーユニット
826 コントローラ
931a,931b 突起部
A,10 コイル
Ah,10h 貫通孔
Bha,Bhb,Eha,Ehb,21h,22h,51h,52h 開口
B,20 磁気通路形成部材
C,30 棒状部材
Da,Db,40a,40b 荷重伝達部材
E,50 ハウジング
Fa,Fb 荷重印加部材
G1,G2,G4,G5 隙間
O1,O4,O5,O6 Oリング
SP スペーサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通孔を有するコイルと、
前記貫通孔に挿入された荷重検出部材と、
前記コイルにより発生された磁束が通過する磁気通路を形成する磁気通路形成部材とを備え、
前記荷重検出部材の両端部は、前記貫通孔に対向する前記磁気通路形成部材の部分からそれぞれ外側に突出し、
外部から印加される荷重を前記荷重検出部材の一端部および他端部にそれぞれ伝達する第1および第2の荷重伝達部材と、
前記磁気通路形成部材および前記荷重伝達部材を支持する支持部材とをさらに備え、
前記第1および第2の荷重伝達部材は、前記第1の荷重伝達部材が外部から印加される荷重を前記荷重検出部材に伝達し前記第2の荷重伝達部材が前記荷重検出部材に伝達された前記荷重を受け止め可能に構成されるとともに、前記第2の荷重伝達部材が外部から印加される荷重を前記荷重検出部材に伝達し前記第1の荷重伝達部材が前記荷重検出部材に伝達された前記荷重を受け止め可能に構成されることを特徴とする磁歪式荷重センサ。
【請求項2】
前記支持部材は、前記荷重検出部材が一定の範囲で移動可能となるように、前記第1および第2の荷重伝達部材を介して前記荷重検出部材を支持する、請求項1記載の磁歪式荷重センサ。
【請求項3】
前記支持部材は、前記第1および第2の荷重検出部材と前記磁気通路形成部材とが接触しないように前記第1および第2の荷重伝達部材を介して前記荷重検出部材を支持する、請求項1または2記載の磁歪式荷重センサ。
【請求項4】
前記荷重検出部材と前記磁気通路形成部材との間に非磁性材料からなる間隔形成部材が設けられた、請求項3記載の磁歪式荷重センサ。
【請求項5】
前記支持部材は、前記第1および第2の荷重伝達部材が一定の範囲で移動可能となるように、前記第1および第2の荷重伝達部材を支持する、請求項1〜4のいずれかに記載の磁歪式荷重センサ。
【請求項6】
前記支持部材は、前記第1および第2の荷重伝達部材を弾性体を介して支持する、請求項5記載の磁歪式荷重センサ。
【請求項7】
前記支持部材は、前記コイル、前記磁気通路形成部材、前記荷重検出部材ならびに前記第1および第2の荷重伝達部材を収容するハウジングを含む、請求項1〜6のいずれかに記載の磁歪式荷重センサ。
【請求項8】
前記磁気通路形成部材は、前記貫通孔の両端部にそれぞれ対向する部分に第1および第2の開口を有し、
前記荷重検出部材の外面と前記第1および第2の開口の内面との間にそれぞれ第1の隙間が形成され、
前記ハウジングは、前記荷重検出部材ならびに前記第1および第2の荷重伝達部材が一体的に一定の範囲で移動可能となるように、前記第1および第2の荷重伝達部材がそれぞれ嵌合する第3および第4の開口を有し、
前記第1および第2の荷重伝達部材の外面と前記第3および第4の開口の内面との間にそれぞれ第2の隙間が形成され、
前記第2の隙間の幅は、前記第1の隙間の幅以下である、請求項7記載の磁歪式荷重センサ。
【請求項9】
前記磁気通路形成部材は、前記貫通孔の両端部にそれぞれ対向する部分に第1および第2の開口を有し、
前記荷重検出部材の外面と前記第1および第2の開口の内面との間にそれぞれ第1の隙間が形成され、
前記ハウジングは、前記荷重検出部材ならびに前記第1および第2の荷重伝達部材が一体的に一定の範囲で移動可能となるように、前記第1および第2の荷重伝達部材がそれぞれ嵌合する第3および第4の開口を有し、
前記第1および第2の荷重伝達部材の外面と前記第3および第4の開口の内面との間にそれぞれ第2の隙間が形成され、
前記第2の隙間の幅は、前記第1の隙間の幅以下であり、
前記第1および第2の荷重伝達部材を通じて前記荷重検出部材に荷重をそれぞれ印加する第1および第2の荷重印加部材をさらに備え、
前記第1および第2の荷重印加部材は、前記貫通孔の軸方向と直交する方向において前記第1の隙間の幅よりも大きな範囲で移動可能に設けられる、請求項7記載の磁歪式荷重センサ。
【請求項10】
一定の範囲で移動可能かつ前記荷重伝達部材に当接可能に設けられ、前記第1および第2の荷重伝達部材を通して前記荷重検出部材の一端部および他端部に荷重をそれぞれ印加する第1および第2の荷重印加部材をさらに備えた、請求項1〜7のいずれかに記載の磁歪式荷重センサ。
【請求項11】
前記第1および第2の荷重印加部材および前記第1および第2の荷重伝達部材は、前記コイルの前記貫通孔の軸に沿って、前記荷重検出部材を中心として対称的に配置された、請求項10記載の磁歪式荷重センサ。
【請求項12】
前記ハウジングは、前記第1および第2の荷重伝達部材がそれぞれ嵌合する第3および第4の開口を有し、
前記第1および第2の荷重伝達部材は、前記ハウジングの内側の一端面に対向または接触するフランジ部ならびに前記第1および第2の荷重検出部材の一端部および他端部がそれぞれ嵌合する第1および第2の凹部を有する、請求項7記載の磁歪式荷重センサ。
【請求項13】
前記ハウジングの前記第3の開口の内面と前記第1および第2の荷重伝達部材の外面との間に隙間が形成され、
前記第1および第2の荷重伝達部材を前記ハウジングに対して前記貫通孔の軸方向と直交する方向に移動可能に保持する弾性部材をさらに備えた、請求項12記載の磁歪式荷重センサ。
【請求項14】
前記ハウジングは、前記第1の荷重伝達部材が嵌合する第3の開口および前記第2の荷重伝達部材が嵌合する第4の開口を有し、
前記第1の荷重伝達部材は、前記ハウジングの内側の一端面に対向または接触する第1のフランジ部および前記荷重検出部材の一端部が嵌合する第1の凹部を有し、
前記第2の荷重伝達部材は、前記ハウジングの内側の他端面に対向または接触する第2のフランジ部および前記荷重検出部材の他端部が嵌合する第2の凹部を有する、請求項7記載の磁歪式荷重センサ。
【請求項15】
前記ハウジングの前記第3の開口の内面と前記第1の荷重伝達部材の外面との間に隙間が形成され、前記ハウジングの前記第4の開口の内面と前記第2の荷重伝達部材の外面との間に隙間が形成され、
前記第1の荷重伝達部材を前記ハウジングに対して前記貫通孔の軸方向と直交する方向に移動可能に保持する第1の弾性部材と、
前記第2の荷重伝達部材を前記ハウジングに対して前記貫通孔の軸方向と直交する方向に移動可能に保持する第2の弾性部材とをさらに備えた、請求項14記載の磁歪式荷重センサ。
【請求項16】
前記荷重検出部材と前記第1および第2の荷重伝達部材とが接合された、請求項1〜15のいずれかに記載の磁歪式荷重センサ。
【請求項17】
前記磁気通路形成部材は、前記貫通孔の両端部にそれぞれ対向する部分に第1および第2の開口を有し、
前記荷重検出部材は、円柱形状を有し、
前記荷重検出部材の両端部は、軸方向の断面の直径以上の長さ分、前記磁気通路形成部材の第1および第2の開口から突出する、請求項1〜7のいずれかに記載の磁歪式荷重センサ。
【請求項18】
本体部と、
前記本体部を移動させる駆動部と、
荷重を検出する磁歪式荷重センサと、
前記磁歪式荷重センサにより検出された荷重に基づいて前記駆動部を制御する制御部とを備え、
前記磁歪式荷重センサは、
貫通孔を有するコイルと、
前記貫通孔に挿入された荷重検出部材と、
前記コイルにより発生された磁束が通過する磁気通路を形成する磁気通路形成部材とを含み、
前記荷重検出部材の両端部は、前記貫通孔に対向する前記磁気通路形成部材の部分からそれぞれ外側に突出し、
外部から印加される荷重を前記荷重検出部材の一端部および他端部にそれぞれ伝達する第1および第2の荷重伝達部材と、
前記磁気通路形成部材および前記荷重伝達部材を支持する支持部材とをさらに含む、
前記第1および第2の荷重伝達部材は、前記第1の荷重伝達部材が外部から印加される荷重を前記荷重検出部材に伝達し前記第2の荷重伝達部材が前記荷重検出部材に伝達された前記荷重を受け止め可能に構成されるとともに、前記第2の荷重伝達部材が外部から印加される荷重を前記荷重検出部材に伝達し前記第1の荷重伝達部材が前記荷重検出部材に伝達された前記荷重を受け止め可能に構成される、移動体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2011−95278(P2011−95278A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−28520(P2011−28520)
【出願日】平成23年2月14日(2011.2.14)
【分割の表示】特願2007−523959(P2007−523959)の分割
【原出願日】平成18年6月27日(2006.6.27)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)
【Fターム(参考)】