説明

磁気インク文字読み取り装置および媒体支持部材

【課題】磁性粉が媒体支持部材に付着した場合でも、磁気インク文字の誤読を防止できる磁気インク文字読み取り装置を提供すること。
【解決手段】磁気インク文字読み取り装置7は、磁気インク文字2bの読み取り時に、走査経路11に沿って移動する磁気ヘッド10に対して小切手2を当接状態に保持する媒体支持部材131を有する。媒体支持部材131は下端面131bに内側走査経路部分111に沿って延びる溝131cを備えているので、小切手2から剥がれた磁性粉をこの溝131c内に付着させることができる。溝131c内に付着した磁性粉と磁気ヘッド10との間にはギャップが形成されるので、磁気ヘッド10が磁性粉に起因して検出する磁界の変化が小さくなる。従って、磁性粉に起因する磁界の変化をノイズとして排除できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気ヘッドを移動させて小切手などの磁気記録媒体に印刷された磁気インク文字を読み取る磁気インク文字読み取り装置に関する。より詳細には、磁気インク文字を読み取る際に、移動する磁気ヘッドに対して磁気記録媒体を当接状態に保持するための媒体支持部材の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
小切手などの磁気記録媒体に印刷された磁気インク文字を読み取る磁気インク文字読み取り装置では、磁気ヘッドに押え部材を対峙させ、これらの間を通過する磁気記録媒体を押え部材によって磁気ヘッドに押し付けた状態を形成している。これにより、磁気インク文字を読み取る際に磁気記録媒体が磁気ヘッドから浮き上がり、読み取り精度が低下するという弊害を防止している。このような押え部材を備えた磁気インク文字読み取り装置は特許文献1に開示されている。これとは逆に、小切手などの磁気記録媒体の側を定まった位置に配置し、磁気ヘッドの側を磁気記録媒体の表面に沿って移動させることにより、磁気インク文字を読み取る磁気インク文字読み取り装置も知られている。この場合にも、磁気記録媒体が磁気ヘッドから離れることの無いように、磁気記録媒体の背面側を支持する平坦な媒体支持面を備える媒体支持部材によって支持する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−232384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、磁気インク文字の読み取り時には相対的に磁気ヘッドが磁気記録媒体表面の磁気インク文字の印刷部分を摺動するので、磁性粉が磁気記録媒体の表面から剥がれる場合がある。剥がれた磁性粉が磁気ヘッドに対峙している媒体支持部材の媒体支持面に付着すると、磁気インク文字の誤読などの弊害が発生する可能性がある。
【0005】
特許文献1に開示されているような磁気ヘッドによる読み取り位置を経由させて磁気記録媒体を搬送させて読み取りを行う場合には、磁気ヘッドに対峙している媒体押え部材の表面は磁気ヘッド表面に対峙する狭い幅寸法のもので良く、また、当該表面は搬送される読み取り対象の磁気記録媒体が摺動するので、当該表面に付着した磁性粉は搬送される磁気記録媒体によって拭き取られる。
【0006】
これに対して、磁気ヘッドを移動させて磁気記録媒体の磁気インク文字を読み取る場合には、磁気ヘッドの移動範囲を包含する細長い媒体支持面を備えた媒体支持部材を配置しておく必要がある。このため、媒体支持面に磁性粉が付着しやすく、また、磁気記録媒体によって付着した磁性粉が拭き取られることもないので、長期使用によって磁性粉が表面に堆積し、磁気インク文字の誤読の原因になる可能性が高い。
【0007】
本発明の課題は、このような点に鑑みて、磁気ヘッドを移動させて磁気記録媒体の磁気インク文字の読み取りを行う際に、移動する磁気ヘッドに磁気記録媒体を当接状態に保持するために用いる磁気文字読み取り装置の媒体支持部材を改良して、磁性粉の付着に起因する誤読を防止できるようにすることにある。また、本発明の課題は、かかる新たな媒体支持部材を備えた磁気インク文字読み取り装置を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は、
磁気ヘッドを定まった走査経路に沿って移動させて磁気記録媒体の磁気インク文字を読み取る際に、移動する前記磁気ヘッドに前記磁気記録媒体を当接状態に保持するために用いる磁気インク文字読み取り装置の媒体支持部材であって、
前記走査経路に沿って移動する前記磁気ヘッドに対峙させるヘッド対峙面と、
前記ヘッド対峙面に形成した前記走査経路に沿って延びる所定長さの凹部またはスリットにより規定される空隙部とを有していることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、媒体支持部材のヘッド対峙面に走査経路に沿って延びる空隙部が形成されているので、磁気記録媒体の表面から剥がれた磁性粉をこの空隙部内に付着させることができる。ここで、磁性粉が空隙部内に付着すれば、磁性粉と磁気ヘッドとの間にはギャップが形成される。従って、長期使用によって付着した磁性粉が堆積した場合でも、磁気ヘッドが磁性粉の堆積部分を通過する際に検出する磁界の変化は、磁気ヘッドが磁気インク文字を通過する際に検出する磁界の変化と比較して小さいものとなる。この結果、磁性粉に起因する磁界の変化をノイズとして排除することが可能となるので、磁性粉の付着に起因する誤読を防止することができる。
【0010】
本発明において、磁気記録媒体を移動する磁気ヘッドから離れることのないように支持するためには、前記走査経路の方向に直交する幅方向において、前記ヘッド対峙面における前記空隙部の両側の部位には、前記走査経路上に位置している前記磁気記録媒体を前記磁気ヘッドに当接状態に保持するための媒体支持面が形成されていることが望ましい。
【0011】
本発明において、前記ヘッド対峙面における前記空隙部の前記走査経路の方向の両側の部位には、前記走査経路に沿って移動する前記磁気ヘッドを摺動させるためのヘッドクリーニング面が形成されていることが望ましい。このようにすれば、磁気記録媒体から剥がれた磁性粉が移動する磁気ヘッドに付着した場合などに、ヘッドクリーニング面によって磁性粉を磁気ヘッドから掻き取ることができる。従って、磁気ヘッドに付着した磁性粉によって磁気インク文字の誤読が発生することを防止できる。
【0012】
本発明において、少なくとも前記ヘッド対峙面が形成されている部分が弾性素材から形成されていることが望ましい。このようにすれば、媒体支持部材によって、磁気記録媒体を所定の付勢力で磁気ヘッドに押し付けることができる。
【0013】
次に、本発明の磁気インク文字読み取り装置は、所定の走査経路に沿って移動可能であり、当該走査経路の途中に設定された読み取り区間内に配置された磁気記録媒体の磁気インク文字を読み取るための磁気ヘッドと、前記磁気ヘッドを前記走査経路に沿って移動させる磁気ヘッド移動機構と、移動する前記磁気ヘッドに、前記読み取り区間に配置された前記磁気記録媒体を当接状態に保持する媒体支持部材とを有し、前記媒体支持部材は、上記の媒体支持部材であり、当該媒体支持部材の前記空隙部は、前記ヘッド対峙面において、少なくとも、前記走査経路の前記読み取り区間を包含する部分に形成されていることを特徴とする。
【0014】
本発明の磁気インク文字読み取り装置によれば、磁気記録媒体の表面から剥がれた磁性粉を、媒体支持部材のヘッド対峙面に形成された空隙部内に付着させることができる。ここで、磁性粉が空隙部内に付着すれば、磁性粉と磁気ヘッドとの間にはギャップが形成される。従って、長期使用によって付着した磁性粉が堆積した場合でも、磁気ヘッドが磁性粉の堆積部分を通過する際に検出する磁界の変化は、磁気ヘッドが磁気インク文字を通過する際に検出する磁界の変化と比較して小さいものとなる。この結果、磁性粉に起因する磁界の変化をノイズとして排除することが可能となるので、磁性粉の付着に起因する誤読を防止することができる。
【0015】
本発明において、移動する前記磁気ヘッドと磁気記録媒体との当接状態を確実に形成するためには、媒体支持部材によって磁気記憶媒体を支持するためには、前記媒体支持部材を、前記磁気記録媒体を前記磁気ヘッドに当接状態に支持可能な媒体支持位置、および、当該媒体支持位置に対して前記磁気ヘッドの側から遠ざかる方向に移動した退避位置に移動させる媒体支持部材移動機構を有していることが望ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、媒体支持部材のヘッド対峙面には走査経路に沿って延びる空隙部が形成されているので、磁気記録媒体の表面から剥がれた磁性粉をこの空隙部内に付着させることができる。ここで、磁性粉が空隙部内に付着すれば、磁性粉と磁気ヘッドとの間にはギャップが形成される。従って、長期使用によって付着した磁性粉が堆積した場合でも、磁気ヘッドが磁性粉の堆積部分を通過する際に検出する磁界の変化は、磁気ヘッドが磁気インク文字を通過する際に検出する磁界の変化と比較して小さいものとなる。この結果、磁性粉に起因する磁界の変化をノイズとして排除することが可能となるので、磁性粉の付着に起因する誤読を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】磁気インク文字読み取り装置を搭載する小切手処理装置の外観斜視図である。
【図2】小切手処理装置の概略縦断面図である。
【図3】小切手処理装置の下ケースの斜視図である。
【図4】磁気インク文字読み取り位置の周辺を拡大して示す縦断面図である。
【図5】磁気インク文字読み取り装置の主要部を取り出して示す説明図である。
【図6】媒体支持部材を下方から見た斜視図である。
【図7】媒体支持部材を模式的に示す平面図および断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、図面を参照して、本発明を適用した磁気インク文字読み取り装置を搭載する小切手処理装置を説明する。
【0019】
(小切手処理装置)
図1は本発明の磁気インク文字読み取り装置を搭載する小切手処理装置の外観斜視図である。図2は小切手処理装置の内部構造を示す概略縦断面図である。図3は小切手処理装置の下ケースを示す斜視図である。
【0020】
本例の小切手処理装置1は、銀行など金融機関の窓口に設置され、小切手2の決済を行う際などに使用される。小切手処理装置1は小切手2の所定の印刷部分2aに印刷されている磁気インク文字2bから磁気インク文字を読み取るとともに、小切手2に対する裏書の印刷や小切手2の表裏の面の光学的な読み取りを行う。図1に示すように、小切手処理装置1は、前側部分に操作パネル3aが設けられた上ケース3と、この上ケース3の下方に配置された直方体形状の下ケース4を備えている。下ケース4の前端部分は上ケース3の前面よりも前方に突出しており、下ケース4の前端部分と上ケース3の前面との間の部位には、装置幅方向の中央部分に小切手2を挿入するための媒体挿入口5が所定幅で開口している。
【0021】
図2、図3に示すように、小切手処理装置1の内部には、媒体挿入口5から挿入された小切手2を搬送するための媒体搬送路6が装置前後方向に直線状に延びるように構成されている。媒体搬送路6は下ケース4の上面に沿って一定幅で延びており、その幅寸法は媒体挿入口5の幅と同一寸法である。媒体搬送路6には、磁気インク文字読み取り位置A、印刷位置B、画像読み取り位置Cが前側からこの順番で設けられている。磁気インク文字読み取り位置Aには磁気インク文字読み取り装置7が配置され、印刷位置Bには印刷装置8が配置され、画像読み取り位置Cにはスキャナー装置9が配置されている。
【0022】
磁気インク文字読み取り装置7は、磁気インク文字読み取り位置Aにおいて、磁気ヘッド10を装置幅方向に往復移動させ、往路において媒体搬送路6に配置された小切手2に印刷されている磁気インク文字2bの着磁処理を行ない、復路において着磁処理された磁気インク文字2bを読み取る。磁気インク文字読み取り装置7は、磁気ヘッド10と、磁気ヘッド10を走査経路11に沿って往復移動させるための磁気ヘッド移動機構12と、移動する磁気ヘッド10と小切手2の当接状態を保持するための媒体支持機構13を備えている。走査経路11は、磁気インク文字読み取り位置Aにおいて装置幅方向(媒体搬送方向と直交する方向)に延びている。磁気ヘッド10、走査経路11および磁気ヘッド移動機構12は下ケース4に構成されており、媒体支持機構13は上ケース3に搭載されている。
【0023】
印刷装置8は、印刷位置Bを記録媒体搬送に沿って搬送される小切手2の上面(背面側)に裏書などの印刷を行なう。印刷装置8は、印刷ヘッド14と、印刷ヘッド14による印刷位置Bを規定しているプラテン15と、印刷ヘッド14をプラテン15に沿って装置幅方向に往復移動させるための印刷ヘッド搬送機構16を備えている。印刷ヘッド14は、インクリボンに記録ワイヤを打ち当ててインクリボンのインクを小切手2に付着させて印刷するシリアル・インパクト・ドット・マトリクス(SIDM)プリントヘッドである。印刷ヘッド14および印刷ヘッド搬送機構16は上ケース3に搭載されており、プラテン15は下ケース4に搭載されている。
【0024】
スキャナー装置9は、画像読み取り位置Cを媒体搬送路6に沿って搬送される小切手2の上面および下面を光学的に読み取って、小切手2の表裏の面の画像情報を得る。スキャナー装置9は、上面を読み取るために上ケース3に搭載された第1スキャナー17と下面を読み取るために下ケース4に搭載された第2スキャナー18を備えている。各スキャナー17、18は媒体搬送路6を横断するよう配置されており、第1スキャナー17と第2スキャナー18は媒体搬送路6を挟んで対向している。
【0025】
媒体搬送路6における磁気インク文字読み取り位置Aと印刷位置Bの間、印刷位置Bと画像読み取り位置Cの間、および、画像読み取り位置Cの後方には、媒体搬送路6に沿って小切手2を搬送する媒体搬送機構の第1〜第3搬送ローラー対20、21、22が配置されている。各搬送ローラー対は、上ケース3に搭載された第1〜第3上側ローラー20a、21a、22aと、下ケース4に搭載された第1〜第3下側ローラー20b、21b、22bを備える。
【0026】
磁気インク文字読み取り位置Aと、最も前に位置する第1搬送ローラー対20の間には、図3に示すように、小切手2の媒体挿入口5への挿入を検出するための複数の媒体挿入検出器23が設けられている。媒体挿入検出器23は媒体搬送経路を挟んで対向する発光部と受光部を備える光透過型のフォトセンサーである。
【0027】
下ケース4における第1搬送ローラー対20と印刷位置Bの間には、複数枚の整列板24が装置幅方向に直線状に並んで配置されている。各整列板24は、媒体搬送方向と直交する矩形端面を備えており、各整列板24の矩形端面が媒体搬送路6内に進出した図2、図3に示す進出位置と、各整列板24の矩形端面が媒体搬送路6から退避した退避位置との間を進退可能となっている。
【0028】
各整列板24の装置幅方向の両側には、図3に示すように、一対の媒体整列検出器25が配置されている。一対の媒体整列検出器25は、それぞれ媒体搬送経路を挟んで対向する発光部と受光部を備える光透過型のフォトセンサーである。
【0029】
ここで、小切手処理装置1の制御系(不図示)は、CPUやROM、RAMを備える主制御部を中心に構成されている。主制御部には、媒体挿入検出器23および媒体整列検出器25からの信号が入力されるようになっている。主制御部はこれらの信号などに基づいて、磁気インク文字読み取り装置7、印刷装置8、スキャナー装置9、媒体搬送機構および整列板24を連携させて駆動制御する。また、主制御部には記憶部が接続されており、主制御部は、磁気インク文字読み取り装置7およびスキャナー装置9によって小切手2から読み取った磁気インク文字および画像情報をこの記憶部に記憶保持する。さらに、主制御部は、小切手2から読み取った磁気インク文字および画像情報を小切手処理装置1に接続されたホストコンピューター(不図示)に送信する。
【0030】
(小切手処理動作)
決済処理に際して、小切手2は、磁気インク文字2bが印刷された表面が下を向いた状態で媒体挿入口5に挿入される。小切手2の挿入が媒体挿入検出器23によって検出されると、整列板24は退避位置から進出位置に進出させられる。また、第1搬送ローラー対20が駆動され、小切手2は、媒体搬送路6に沿った媒体搬送方向を装置後方に向かって搬送される。ここで、搬送される小切手2の媒体搬送方向の下流側の端縁が整列板24に当接することにより、媒体搬送方向に対する傾き(スキュー)が適切な状態に直される。小切手2の傾きがなくなると、小切手2が当接している整列板24の両側に設けられた一対の媒体整列検出器25の受光部が小切手2により遮光されるので、これにより、小切手2が媒体搬送方向に対して適切な姿勢になったことが検出される。
【0031】
小切手2が媒体搬送方向に対して適切な姿勢になると、整列板24は退避位置に戻される。しかる後に、小切手2は磁気インク文字読み取り位置Aに搬送されて、停止する。小切手2が磁気インク文字読み取り位置Aにセットされると、小切手2の磁気インク文字2bの印刷部分2aは、走査経路11上に位置した状態となる。
【0032】
次に、磁気インク文字読み取り装置7は、磁気ヘッド10を走査経路11に沿って往動させながら媒体搬送路6に配置された小切手2に印刷されている磁気インク文字2bの着磁処理を行い、復動させながら着磁処理された磁気インク文字2bを読み取る。ここで、磁気インク文字2bの着磁処理および読み取りが行なわれる間、媒体支持機構13によって、移動する磁気ヘッド10と小切手2の当接状態が保持される。
【0033】
その後、小切手2は、画像読み取り位置Cを通過するように搬送される。この間に第1スキャナー17および第2スキャナー18は、小切手2の表裏の面を画像情報として読み取る。ここで、小切手2から読み取られた磁気インク文字および画像情報は、小切手処理装置1に接続されたホストコンピューターに送信される。ホストコンピューターでは、小切手処理装置1からの磁気インク文字および画像情報を利用して小切手2の決済処理を行なう。
【0034】
しかる後に、小切手2は、印刷位置Bを通過するように搬送される。この間に、小切手2には印刷装置8による裏書の印刷が施される。裏書の印刷が終わると、小切手2は搬送されて、小切手処理装置1の背面側、或いは、媒体挿入口5から排出される。
【0035】
(磁気インク文字読み取り装置)
次に、図2〜図6を参照して、磁気インク文字読み取り装置7を詳細に説明する。図4は磁気インク文字読み取り位置の周辺を拡大して示す縦断面図である。図4では媒体支持機構によって小切手と磁気ヘッドが当接状態で保持されている状態を示している。図5は磁気インク文字読み取り装置の主要部を取り出して示す説明図である。図6は媒体支持部材を下方から見た斜視図である。図7(a)は磁気ヘッド、走査経路、小切手および媒体支持部材を模式的に示す平面図であり、図7(b)はそのA−A´線における縦断面図である。
【0036】
図2、図4に示すように、磁気インク文字読み取り装置7は、磁気ヘッド10、走査経路11、磁気ヘッド移動機構12および媒体支持機構13を備えている。
【0037】
磁気ヘッド10は、電力を供給することにより所定の磁界を発生させるとともに、読み取り部10aを通過する磁束の変化に応じた起電力を発生させる。図3に示すように、磁気ヘッド10の上端面10bは装置幅方向(走査経路の延設方向)に沿った凸曲面となっており、読み取り部10aは上端面10bの装置幅方向の中央部分に設けられている。
【0038】
走査経路11は、図3に示すように、下ケース4の上面部分に沿って装置幅方向に延びている。走査経路11は、媒体搬送路6の内側に位置する内側走査経路部分(読み取り区間)111、内側走査経路部分111の左側に位置する左側走査経路部分112、および、内側走査経路部分111の右側に位置する右側走査経路部分113を備えている。内側走査経路部分111は走査経路11の装置幅方向の中央に位置しており、左側走査経路部分112と右側走査経路部分113とは同じ長さ寸法となっている。ここで、媒体挿入口5の装置幅方向の任意の位置に挿入された小切手2は、媒体搬送路6内を媒体搬送方向に対して適切な姿勢で搬送され、装置幅方向の任意の位置で磁気インク文字読み取り位置Aにセットされる。小切手2が磁気インク文字読み取り位置Aにセットされると、小切手2の磁気インク文字2bの印刷部分2aが内側走査経路部分111上に配置された状態となる。
【0039】
磁気ヘッド移動機構12は、図5に示すように、下ケース4に搭載される左右のフレーム部分41、42に平行に架け渡された2本のガイド軸121、122を備えている。2本のガイド軸121、122には、磁気ヘッド10を搭載した磁気ヘッドユニット123が移動可能に支持されている。2本のガイド軸121、122の下方には、磁気ヘッドユニット123をガイド軸121、122に沿って往復移動させるためのモーター124およびタイミングベルト125が配置されている。磁気ヘッドユニット123はタイミングベルト125の一部分に固定されており、モーター124が回転駆動されることによりタイミングベルト125が回転すると、磁気ヘッド10がガイド軸121、122に沿って移動する。図3、図5は磁気インク文字読み取り装置7の待機状態を示しており、磁気ヘッド10は左側走査経路部分112の左端のホームポジション10Aに停止している。
【0040】
媒体支持機構13は、図2、図4に示すように、媒体支持部材131と、媒体支持部材131を昇降させる媒体支持部材移動機構132を備えている。
【0041】
媒体支持部材131は、EPDM(エチレン・プロピレン・ジエンゴム)などの弾性素材から形成された細長い部材であり、図3において点線で示すように、走査経路11に沿って配置されている。また、媒体支持部材131は、図4に示すように、平坦な上端面131aを備えており、この上端面131aは媒体支持部材移動機構132に取り付けられている。
【0042】
図6に示すように、媒体支持部材131において移動する磁気ヘッド10と対峙する下端面(ヘッド対峙面)131bには、長手方向(走査経路11の方向)に延びる一定幅の溝(凹部)131cが形成されている。媒体支持部材131の短手方向(走査経路11の方向と直交する方向)における溝131cの両側の部位には、移動する磁気ヘッド10に小切手2を当接状態に保持するための平坦な媒体支持面131dが形成されている。媒体支持部材131の長手方向において溝131cに隣接する両側の部位には、移動する磁気ヘッド10を摺動させるためのヘッドクリーニング面131e、131fが形成されている。ヘッドクリーニング面131e、131fは、媒体支持面131dと同一平面上に位置している。媒体支持部材131は、溝131cが形成されている部位を除いて一定の厚さ寸法を備えている。
【0043】
媒体支持部材131の短手方向の両側面は、複数の突出部131gによって構成された凹凸面となっている。突出部131gは直方体形状をしており、一定間隔で配列されている。また、突出部131gは長手方向における同じ位置から、短手方向の両側に突出している。
【0044】
ここで、図7(a)、(b)に示すように、媒体支持部材131は装置幅方向の長さ寸法lが媒体搬送路6の内側走査経路部分111よりも長く設定されており、左端部分が左側走査経路部分112の上方に位置し、右側部分は右側走査経路部分113の上方に位置している。
【0045】
溝131cは、内側走査経路部分111と対向する位置に形成されており、装置幅方向において内側走査経路部分111と対応する長さ寸法を備えている。装置前後方向における溝131cの幅寸法は、小切手処理装置1によって処理される小切手2の印刷部分2aの装置前後方向における幅寸法と対応する寸法となっている。溝131cの断面形状は矩形であり、その深さ寸法は0.5mmとなっている。なお、溝131cの断面形状は矩形に限られるものではなく、また、その深さは一定でなくてもよい。
【0046】
媒体支持面131dは、溝131cに沿って装置幅方向に延びており、内側走査経路部分111と対応する長さ寸法を備えている。従って、小切手2が磁気インク文字読み取り位置Aの装置幅方向のどのような位置にセットされた場合でも、媒体支持面131dによって小切手2を支持することが可能となっている。
【0047】
左側のヘッドクリーニング面131eは、媒体支持部材131において左側走査経路部分112と対向している左端部分に形成されている。右側のヘッドクリーニング面131fは媒体支持部材131において右側走査経路部分113と対向している右端部分に形成されている。
【0048】
媒体支持部材移動機構132は、媒体支持部材131を、図2に示す退避位置131Aと図5に示す媒体支持位置131Bの間で昇降させる。退避位置131Aは、媒体支持面131dが磁気ヘッド10から上方に離れている位置であり、媒体支持部材131が媒体搬送路6上を搬送される小切手2と干渉しない位置である。媒体支持位置131Bは、媒体支持部材131が、磁気ヘッド10に対して、磁気インク文字読み取り位置Aにセットされた小切手2を当接状態に支持する位置である。
【0049】
本例では、媒体支持位置131Bは、図7(b)に示すように、磁気ヘッド10が左側走査経路部分112および右側走査経路部分113を移動する際に、その読み取り部10aが媒体支持部材131のヘッドクリーニング面131e、131fに摺接する位置となっている。なお、媒体支持部材131は弾性素材から形成されているので、媒体支持位置131Bにおいて磁気ヘッド10が小切手2に当接したときに弾性変形し、小切手2を所定の付勢力で磁気ヘッド10に押し付ける。
【0050】
(磁気インク文字読み取り動作)
小切手2が磁気インク文字読み取り位置Aにセットされると、磁気インク文字読み取り装置7は、媒体支持部材131を退避位置131Aから媒体支持位置131Bに移動させる。
【0051】
次に、磁気インク文字読み取り装置7は、ホームポジション10Aに停止している磁気ヘッド10に所定の電力を供給して、磁気ヘッド10から所定の磁界を発生させる。その後、磁気ヘッド移動機構12のモーター124を駆動制御して、磁界を発生させた状態の磁気ヘッド10を、ホームポジション10Aから内側走査経路部分111を経由して右側走査経路部分113の右端の折り返し位置10B(図7参照)に至る走査経路11の往路に沿って移動させる。この往動の間に、磁気インク文字読み取り位置Aにセットされた小切手2の磁気インク文字2bは着磁される。
【0052】
しかる後に、磁気インク文字読み取り装置7は、磁気ヘッド移動機構12のモーター124を駆動制御して、磁気ヘッド10を、折り返し位置10Bから内側走査経路部分111を経由してホームポジション10Aに至る走査経路11の復路に沿って移動させる。この復動の間に、磁気インク文字2bは読み取られる。すなわち、着磁処理された磁気インク文字2b上を磁気ヘッド10が通過すると電磁誘導によって磁気ヘッド10に起電力が発生するので、磁気インク文字読み取り装置7は、発生した起電力に基づいて磁気インク文字2bを読み取る。
【0053】
ここで、図7(b)に示すように、磁気ヘッド10が走査経路11を往復する間、媒体支持部材131は、内側走査経路部分111に配置された小切手2を、移動する磁気ヘッド10に対して当接状態に保持する。この結果、小切手2が磁気ヘッド10から離れてしまうことがないので、磁気インク文字への着磁を確実に行なうことができる。また、磁気インク文字の読み取りを精度よく行なうことができる。
【0054】
(磁性粉に起因する誤読の防止効果)
本例の磁気インク文字読み取り装置7では、磁気インク文字2bの着磁処理時および読み取り時に、磁気ヘッド10が小切手2の印刷部分2aを摺動するので、磁性粉が小切手2の印刷部分2aから剥がれる場合がある。剥がれた磁性粉が媒体支持部材131の下端面131bに付着して堆積すると、磁気インク文字2bの誤読などの弊害が発生する可能性がある。
【0055】
これに対して、本例では、媒体支持部材131の下端面131bに、走査経路11に沿って延びる溝131cによって規定した空隙部を設けてある。従って、小切手2の印刷部分2aから剥がれた磁性粉をこの空隙部内に付着させることができる。ここで、磁性粉が空隙部内に付着すれば、磁性粉と磁気ヘッド10との間にはギャップが形成される。従って、長期使用によって付着した磁性粉が堆積した場合でも、磁気ヘッド10が磁性粉の堆積部分を通過する際に検出する磁界の変化は、磁気ヘッド10が磁気インク文字2bを通過する際に検出する磁界の変化と比較して小さいものとなる。この結果、磁性粉に起因する磁界の変化をノイズとして排除することが可能となるので、磁性粉の付着に起因する誤読を防止することができる。
【0056】
また、本例では、媒体支持部材131がヘッドクリーニング面131e、131fを備えており、媒体支持部材131が媒体支持位置131Bに位置しているときに磁気ヘッド10が左側走査経路部分112を移動すると、読み取り部10aがヘッドクリーニング面131eに摺接する。また、磁気ヘッド10が右側走査経路部分113を移動すると、ヘッドクリーニング面131fに摺接する。この結果、小切手2から剥がれた磁性粉が移動する磁気ヘッド10に付着した場合などに、ヘッドクリーニング面131e、131fによって磁性粉を磁気ヘッド10から掻き取ることができる。従って、磁気ヘッド10に付着した磁性粉によって磁気インク文字2bの誤読が発生することを防止できる。
【0057】
(その他の実施の形態)
上記の例では、溝131cによって媒体支持部材131に空隙部を設けたが、溝131cの代わりにスリットを形成することによって空隙部を設けてもよい。また、上記の例では、ヘッドクリーニング面131e、131fを媒体支持面131dと同一平面上に位置させていたが、ヘッドクリーニング面131e、131fが媒体支持面131dよりも下方に位置するように、媒体支持部材131の両端部分を突出させてもよい。さらに、上記の例では、媒体支持部材131を昇降可能としているが、移動する磁気ヘッド10に対して小切手2を当接状態に支持可能な位置に媒体支持部材131を固定しておくこともできる。
【符号の説明】
【0058】
1・小切手処理装置、2・小切手、2a・印刷部分、2b・磁気インク文字、3・上ケース、3a・操作パネル、4・下ケース、5・媒体挿入口、6・媒体搬送路、7・磁気インク文字読み取り装置、8・印刷装置、9・スキャナー装置、10・磁気ヘッド、10a・読み取り部、10b・上端面、10A・ホームポジション、10B・折り返し位置、11・走査経路、12・磁気ヘッド移動機構、13・媒体支持機構、14・印刷ヘッド、15・プラテン、16・印刷ヘッド搬送機構、17・18・スキャナー、20・21・22・搬送ローラー対、20a・21a・21b・上側ローラー、20b・21b・22b・下側ローラー、23・媒体挿入検出器、24・整列板、25・媒体整列検出器、41・42・フレーム部分、111・内側走査経路部分(読み取り区間)、112・左側走査経路部分、113・右側走査経路部分、121・122・ガイド軸、123・磁気ヘッドユニット、124・モーター、125・タイミングベルト、131・媒体支持部材、131a・上端面、131b・下端面(ヘッド対峙面)、131c・溝、131d・媒体支持面、131e・131f・ヘッドクリーニング面、131g・突出部、131A・退避位置、131B・媒体支持位置、132・媒体支持部材移動機構、A・磁気インク文字読み取り位置、B・印刷位置、C・画像読み取り位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気ヘッドを定まった走査経路に沿って移動させて磁気記録媒体の磁気インク文字を読み取る際に、移動する前記磁気ヘッドに前記磁気記録媒体を当接状態に保持するために用いる磁気インク文字読み取り装置の媒体支持部材であって、
前記走査経路に沿って移動する前記磁気ヘッドに対峙させるヘッド対峙面と、
前記ヘッド対峙面に形成した前記走査経路に沿って延びる所定長さの凹部またはスリットにより規定される空隙部とを有していることを特徴とする磁気インク文字読み取り装置の媒体支持部材。
【請求項2】
請求項1において、
前記走査経路の方向に直交する幅方向において、前記ヘッド対峙面における前記空隙部の両側の部位には、前記走査経路上に位置している前記磁気記録媒体を前記磁気ヘッドに当接状態に保持するための媒体支持面が形成されていることを特徴とする磁気インク文字読み取り装置の媒体支持部材。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記ヘッド対峙面における前記空隙部の前記走査経路の方向の両側の部位には、前記走査経路に沿って移動する前記磁気ヘッドを摺動させるためのヘッドクリーニング面が形成されていることを特徴とする磁気インク文字読み取り装置の媒体支持部材。
【請求項4】
請求項1ないし3のうちのいずれかの項において、
少なくとも前記ヘッド対峙面が形成されている部分が弾性素材から形成されていることを特徴とする磁気インク文字読み取り装置の媒体支持部材。
【請求項5】
所定の走査経路に沿って移動可能であり、当該走査経路の途中に設定された読み取り区間内に配置された磁気記録媒体の磁気インク文字を読み取るための磁気ヘッドと、
前記磁気ヘッドを前記走査経路に沿って移動させる磁気ヘッド移動機構と、
移動する前記磁気ヘッドに、前記読み取り区間に配置された前記磁気記録媒体を当接状態に保持する媒体支持部材とを有し、
前記媒体支持部材は、請求項1ないし4のうちのいずれかの項に記載の媒体支持部材であり、
当該媒体支持部材の前記空隙部は、前記ヘッド対峙面において、少なくとも、前記走査経路の前記読み取り区間を包含する部分に形成されていることを特徴とする磁気インク文字読み取り装置。
【請求項6】
請求項5において、
前記媒体支持部材を、前記磁気記録媒体を前記磁気ヘッドに当接状態に支持可能な媒体支持位置、および、当該媒体支持位置に対して前記磁気ヘッドの側から遠ざかる方向に移動した退避位置に移動させる媒体支持部材移動機構を有していることを特徴とする磁気インク文字読み取り装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−164877(P2011−164877A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−26263(P2010−26263)
【出願日】平成22年2月9日(2010.2.9)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】