説明

磁気シールドルーム、磁気シールドパネル

【課題】MRI装置からの漏洩磁場を、少ない電磁鋼板の使用量で効果的に遮蔽する。
【解決手段】MRI装置9に設けられた環状のコイルにおける中心線と直交する第1シールド面材11及び第2シールド面材12と、その他第3シールド面材13〜16で構成され、第1〜2シールド面材11、12内には、矩形断面の長辺が当該シールド面材の面厚方向となるように短冊形電磁鋼板3が配設され、短冊形電磁鋼板3は、シールド面材11、12における上記中心線との略直交点からその面周に至るまで互いに任意の角度間隔で延長され、第3〜6シールド面材13〜16内には、シールド面材11、12の面周に至るまで延長された短冊形電磁鋼板3間を互いに連結するように短冊形電磁鋼板3が所定間隔をおいて複数段に亘り配設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気を使用する閉空間から外部への磁気の影響を遮蔽し、或いは磁気を使用する閉空間への外部からの磁気の影響を遮蔽する際に好適な磁気シールドルーム、磁気シールドパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴イメージング装置(MRI装置)が近年において特に頻繁に利用されている。このMRI装置は、その磁場中心空間に強力な磁場を形成する装置であって、形成した磁場を人体に当てることにより、体内にある水素原子核がこの磁場に共鳴して微弱な電波を発生することから、この電波を受信して画像を作成することが可能となる。
【0003】
このようなMRI装置では、測定磁場や電波が外部からの磁気的な影響を受けるのを防止することにより、正常な動作を保証する必要がある。また、このようなMRI装置を収容する閉空間の外部にある他の機器や人体に対して磁気的な影響が及ぶのを防止する必要がある。このため、MRI装置を収容する閉空間を磁気シールドパネルで覆う磁気シールドルームに対する要求が高まっている。
【0004】
従来における磁気シールドルームに適用される磁気シールドパネルとしては、例えば、透磁率の高い方向性電磁鋼板、無方向性電磁鋼板、パーマロイ、軟磁性鋼板、アモルファス、液体急冷薄帯を結晶化させた微結晶磁性材料等からなる磁性板により、シールド対象空間の壁面を構成する、いわゆる密閉型磁気シールド構造が提案されている。しかしながら、この密閉型磁気シールド構造は、磁性体の材料特性から期待されるようなシールド特性を得ることが困難な場合があり、また空気や光の透過性を得ることができないという問題点があった。
【0005】
このため、磁性材料板の群を簾状又はルーバ状に並べて構成した、いわゆる開放型磁気シールド構造が提案されている(例えば、特許文献1〜3参照。)。この開放型磁気シールド構造では、短冊状又は長尺状の磁性材料板を板厚方向へ所定間隔をおいて複数段に亘り積層させることにより列状簾体を形成させる。このような列状簾体を構成することにより、密閉型磁気シールド構造と比較して高いシールド性能を示すことが実験的に確認されている。またこの開放型磁気シールド構造では、空気や光の透過性の向上も可能とすることができる。
【特許文献1】特開2002−164686号公報
【特許文献2】特開2006−351598号公報
【特許文献3】PCT/JP2004/003457
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、一般的な磁気シールドルーム70では、例えば図10に示すように、環状のコイルにおける中心線75と直交するガントリー面72には、かかる環状のコイルから漏洩してくる漏洩磁場の磁束が放射状に広がり、これらはガントリー面72の面周74へ向けて広がっていくことになる。その結果、このガントリー面72に放射される漏洩磁場の各磁束の取りえる角度方向は、互いに異なり、その伝搬方向はあらゆる角度に分散するものとなる。
【0007】
しかしながら、従来の開放型磁気シールド構造は、あくまで磁性材料板を板厚方向へ所定間隔をおいて複数段に亘り積層させる列状簾体を形成させるものであることから、このような磁束があらゆる角度に分散しているガントリー面72にこれを配設するためには、水平方向に磁性材料板の列状簾体を形成したパネルと、垂直方向に磁性材料板の列状簾体を形成したパネルの2種類を作製し、これを互いに重ね合わせることにより対処する他無かった。このため、天井面や床面、さらには他の側壁面と比較して、このガントリー面72のパネルの厚さのみが2倍となり、空間スペースを無駄に消費することにもつながり、更には材料コストの面においても改善の余地があった。さらには、ガントリー面72と他の天井面や床面等とのパネル厚さが異なることにより、これらを互いに連結させる際の接続金具の構造が複雑になり、作業も煩雑になり、施工性及び磁気シールド性確保の面で改善の余地があった。
【0008】
また、ガントリー面72に対して、水平方向に磁性材料板の列状簾体を形成したパネルと、垂直方向に磁性材料板の列状簾体を形成したパネルを重ね合わせて配設する工法では、磁性材料の使用量が増加してしまうという問題点があった。また、ガントリー面72に対して放射される磁束は、水平方向、垂直方向のみならず、あらゆる角度方向に向かって伝搬し、また磁束密度の分布も局所的に異なるものとなることから、当該工法では、上述の如きガントリー面72に対するあらゆる磁束の方向や分布に対応できず、磁性材料の不足や余剰を生じる領域が部分的に発生し、磁気シールド性の観点においても問題があった。
【0009】
さらに、上記従来の開放型磁気シールド構造は、外部からの磁場が放射されてきた場合に、これに対応することが困難であることから、閉空間中に収容されたMRI装置の動作がかかる外部磁場により支障をきたすのを完全に防止することができないという問題点もあった。
【0010】
そこで本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、MRI装置からの漏洩磁場を、少ない電磁鋼板の使用量で効果的に遮蔽可能な磁気シールドルーム、磁気シールドパネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に係る磁気シールドルームは、上述した課題を解決するために、収容された磁気共鳴イメージング装置からの漏洩磁場を遮蔽するシールド面材により包囲された磁気シールドルームにおいて、上記磁気共鳴イメージング装置に設けられた環状のコイルにおける中心線と直交する第1シールド面材及び第2シールド面材と、上記第1シールド面材及び第2シールド面材に対して互いに直交する第3シールド面材、第4シールド面材、第5シールド面材、第6シールド面材との6面により構成され、上記第1〜2シールド面材内には、矩形断面の長辺が当該シールド面材の面厚方向となるように短冊形電磁鋼板が配設され、当該短冊形電磁鋼板は、上記第1シールド面材並びに第2シールド面材における上記中心線との略直交点からその面周に至るまで互いに任意の角度間隔で延長されていることを特徴とする。
【0012】
請求項2に係る磁気シールドルームは、請求項1記載の磁気シールドルームにおいて、上記第3〜6シールド面材内には、第1シールド面材と第2シールド面材の面周に至るまで延長された短冊形電磁鋼板間を互いに連結するように短冊形電磁鋼板が所定間隔をおいて複数段に亘り配設されていることを特徴とする。
【0013】
請求項3に係る磁気シールドルームは、請求項1又は2記載の磁気シールドルームにおいて、上記第1〜6シールド面材には、さらに平板状の電磁鋼板が外側から外接され、及び/又は内側から内接されていることを特徴とする。
【0014】
請求項4に係る磁気シールドルームは、請求項1〜3のうち何れか1項記載の磁気シールドルームにおいて、上記第3〜6シールド面材内に配設されている上記短冊形電磁鋼板は、矩形断面の長辺が上記中心線へ向けて傾斜され、又は上記第3〜6シールド面材に対して垂直に配設されていることを特徴とする。
【0015】
請求項5に係る磁気シールドルームは、請求項1〜4のうち何れか1項記載の磁気シールドルームにおいて、第1〜2シールド面材の面周から突出された上記短冊形電磁鋼板の端部と、上記第3〜6シールド面材の側端部から突出された上記短冊形電磁鋼板の端部とは、互いに架設された連結用の電磁鋼板により連結されていることを特徴とする。
【0016】
請求項6に係る磁気シールドパネルは、請求項1〜5のうち何れか1項記載の磁気シールドルームにおける第1シールド面材又は第2シールド面材の一部を構成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明を適用した磁気シールドルームでは、この第1シールド面材において、短冊形電磁鋼板を、磁気共鳴イメージング装置に設けられた環状のコイルにおける中心線の略直交点からその面周に至るまで放射状に配置している。このため、磁気共鳴イメージング装置から漏洩してくる漏洩磁場は、この放射状に配置された短冊形電磁鋼板により引き込まれ、またその磁束はかかる放射状に配置された短冊形電磁鋼板に沿って流れていくことになる。あくまで、この第1シールド面材においては、磁気共鳴イメージング装置からの漏洩磁場の中心線と、この短冊形電磁鋼板の交差点を一致させていることから、これを中心として放射状に分布する漏洩磁場を効率よく吸収することができ、またこれを面周へと導くことが可能となる。
【0018】
面周へと導かれた漏洩磁場は、第3〜6シールド面材へと導かれ、第3〜6シールド面材13〜16に数段に亘って短冊形電磁鋼板を流れ、第2のシールド面材へと到達する。この第2のシールド面材に配設された短冊形電磁鋼板に対しても同様に接続用の電磁鋼板を介して漏洩磁場が流れこみ、さらに第2のシールド面材から再び上記中心線を介して磁気共鳴イメージング装置へと漏洩磁場が還流することになる。
【0019】
即ち、本発明を適用した磁気シールドルームは、MRI装置からの漏洩磁場の磁束方向に沿って短冊形電磁鋼板を配列させている。これにより、磁気共鳴イメージング装置からの漏洩磁場を吸収しこれを再び第2シールド面材側から磁気共鳴イメージング装置へと誘導することができ、外部空間に対して磁場の漏れを抑えることが可能となる。
【0020】
また本発明では、第1シールド面材、第2シールド面材において放射状に配置した短冊形電磁鋼板を1枚のパネルで構成すれば磁気の漏洩を防止することが可能となることから、従来技術の如く垂直方向、水平方向に磁性材料板の列状簾体を形成した2枚のパネルを作製し、これを貼り合わせる必要が無くなる。このため、第1シールド面材、第2シールド面材の板厚を薄く構成することが可能となり、施工空間を有効活用することが可能となる。これら第1〜2シールド面材と、第3〜6シールド面材の板厚とを同等することが可能となり、接続用金具を簡易な構成とすることも可能となり、施工性も向上させることが可能となる。第1シールド面材、第2シールド面材を1枚のパネルで構成することが可能な本発明では、使用すべき短冊形電磁鋼板の量を極力減らすことが可能となる。さらに、本発明では、磁気共鳴イメージング装置からの漏洩磁場の磁束方向に沿って短冊形電磁鋼板を配列させているため、各シールド面材において短冊形電磁鋼板の不足や余剰を生じる領域が部分的に発生することも無くすことができ、磁気シールド性をより向上させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための最良の形態として、収容された磁気共鳴イメージング装置からの漏洩磁場を遮蔽するシールド面材により包囲された磁気シールドルームについて、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0022】
図1は、本発明を適用した磁気シールドルーム1の斜視図である。この磁気シールドルーム1内には、磁気共鳴イメージング(MRI)装置9が収容されている。この共鳴イメージング装置9に設けられた環状のコイルにおける中心線10と直交する第1シールド面材11及び第2シールド面材12と、第1シールド面材11及び第2シールド面材12に対して互いに直交する第3シールド面材13、第4シールド面材14、第5シールド面材15、第6シールド面材16との6面により包囲されている。
【0023】
各シールド面材11〜16における充填材は、断熱性の材料で構成されていることが望ましいが、いかなる材料で構成されていてもよい。以下の例では、このシールド面材11〜16における充填材につきロックウールで構成される場合を例にとり説明をする。即ち、ロックウールは、玄武岩、鉄鋼スラグ等に石灰等を混合し、高温中で溶解することにより形成する人造鉱物繊維である。なお、このシールド面材11〜16における充填材の例としては、この他にグラスウール、炭化コルクといった繊維系の断熱材を用いるようにしてもよいし、けい酸カルシウムや撥水性パーライト、或いはポリエチレンフォーム等の発泡系断熱材を用いるようにしてもよい。さらにはグラスフォーム等のような発泡無機質系断熱材を適用するようにしてもよい。
【0024】
また各シールド面材11〜16は、一枚で構成されている場合に限定されるものではなく、後述する複数のパネル体を互いに連結させて一枚の面材を構成するようにしてもよい。
【0025】
ちなみに、このシールド面材11は、MRI装置9における環状のコイルから漏洩してくる漏洩磁場の磁束が直接的に入射されるいわゆるガントリー面を構成するものであり、またシールド面材14は天井面を構成するものであり、更にシールド面材16は床面を構成するものである。またシールド面材11、12、13、15は、それぞれ磁気シールドルーム1における側壁面を構成するものである。
【0026】
このようなシールド面材11〜16には、短冊形電磁鋼板3が配設されている。短冊形電磁鋼板3は、短冊形状の磁性体で構成され、例えば長手方向の透磁率が横断面方向の透磁率よりも大きい電磁鋼板からなる。この短冊形電磁鋼板3は、複数枚に亘る磁性材料薄板を板厚方向に積層することにより、一枚の電磁鋼板を構成するようにしてもよい。
【0027】
シールド面材11、12に設けられる短冊形電磁鋼板3は、図2に示すように、矩形断面の長辺eが上記シールド面材の面厚方向Fとなるように、それぞれ配設されている。また、この第1シールド面材11並びに第2シールド面材12に配置される短冊形電磁鋼板3は、例えば図3に示すように放射状に配置されている。この短冊形電磁鋼板3は、第1シールド面材11並びに第2シールド面材12における中心線10との略直交点19からその面周20に至るまで延長されている。また、互いに面周20に至るまで延長されている、隣接する短冊形電磁鋼板3間のなす角度は、任意のものであってもよい。但し、この第1シールド面材11に配設されている短冊形電磁鋼板3の角度間隔は、第2シールド面材11に配設されている短冊形電磁鋼板3の角度間隔及び枚数と互いに同一磁場が均一の場合は同一、磁場に違いがある場合は同一でなくてもよい。また、この略直交点19は、中心線10と直交する点と完全に一致する点に限定されるものではなく、多少のズレがあってもよい。
【0028】
また、第3〜6シールド面材13〜16には、図1に示すように短冊形電磁鋼板3が複数段に亘り配置されている。この短冊形電磁鋼板3は、第1シールド面材11で終わるもの、第1シールド面材から第3〜6シールド面材13〜16まで連結されるもの、更に第1シールド面材11、第3〜6シールド面材13〜16、及び第2シールド面材12まで連結されるもの、の何れかの形で具体化されることになる。図4は、図1におけるA-A断面図である。この第3〜6シールド面材13〜16に配設される短冊形電磁鋼板3は、矩形断面の長辺が中心線10へ向けて傾斜されている。
【0029】
図5は、図4中点線部分Gに示される第6シールド面材16の拡大断面図である。ちなみに、この図5では、複数のパネル体30を連結させることによりシールド面材16を構成する場合を想定しており、そのパネル体30のみの構成を示したものである。
【0030】
シールド面材16は、導電性を有する一対の金属板26が互いに対向して設けられ、この一対の金属板26間に充填材が充填されて構成されている。また、このシールド面材16には、枠材25が埋設されている。
【0031】
パネル体30の左端の構造は、一対の金属板26の双方の左端を内側に折り曲げて構成され、少なくとも第1の当接面34を形成させている。また、このパネル体30の右端の構造は、一対の金属板26の双方の右端を内側に折り曲げて構成され、少なくとも第2の当接面35を形成させている。
【0032】
このようにしてパネル体30の左端並びに右端を構成することにより、当該パネル体30を水平方向に連結させる際に、相手側の第1の当接面34と第2の当接面35とを互いに当接させることができ、ひいては、当該当接面34、35を介して電波が漏洩するのを防止することが可能となる。
【0033】
金属板26は、アルミニウム−亜鉛合金めっき鋼板としてのガルバリウム鋼板、或いは亜鉛めっき鋼板等が適用される。ガルバリウム鋼板、亜鉛めっき鋼板、ステンレスメッキ鋼板等の塗膜は、金具との接合部において通常そのまま用いるが、剥離するようにしてもよい。ちなみに、この金属板26としては、ステンレス鋼板、アルミめっき鋼板等を適用するようにしてもよい。即ち、このような材質からなる金属板26は、安価であり、しかも高い電磁遮蔽能を発揮させることが可能となる。また、この金属板26は、パネル体30の両面に設けられる場合に限定されるものではなく、何れか一の面に設けられていてもよい。なお、このパネル体30において、磁気遮蔽性能のみを持たせ、電磁遮蔽性能を持たせない場合には、この金属板26を省略するようにしてもよいし、エッジやガスケットのない通常のエスガード構造としてもよい。
【0034】
パネル体30内における充填材には、断面矩形状の枠材25が埋設されている。この枠材25の内部には、短冊形電磁鋼板3を配置可能な空間が形成されている。短冊形電磁鋼板3は、この枠材25内に形成された空間において任意の角度に配置することが可能となり、上述の如く、短冊形電磁鋼板3の矩形断面の長辺が中心線10へ向けて傾斜されるように配置することも可能となる。枠材断面形状は、矩形以外に円形や楕円形でもよい。
【0035】
なお、このパネル体30は、上述の如き第6シールド面材16に適用される場合のみならず、他の第3〜5シールド面材16に対しても同様に適用されるものである。
【0036】
図6(a)は、図5における紙面奥行き方向に隣接する他のパネル体30の連結部分を矢印J方向から示している。この図6(a)に示す連結部分におけるB断面を図6(b)に、またC断面を図6(c)に示す。この連結部分において短冊形電磁鋼板3を長手方向に連結する際には、例えば図6(a),(b)に示すように、各パネル体30における側端部に設けられたコ字状の補強材39から短冊形電磁鋼板3の端部を突出させるとともに、これら互いの短冊形電磁鋼板3の上下面には、さらに連結用の電磁鋼板33を架設するようにしてもよい。このとき、この連結部を構成するパネル体30の両面は、それぞれ接続用金具31、32により架設されている。この接続用金具31は、例えばハット形で構成するようにしてもよい。また、これら接続用金具31、32を互いに固定する場合には、図6(c)に示すように、短冊形電磁鋼板3が設けられていないC断面において、ビス38やボルト等で連結するようにしてもよい。
【0037】
また図7(a)は、図1におけるP部分のy方向からみた拡大図を示している。第1シールド面材11の側端部から突出された短冊形電磁鋼板3と、第4シールド面材14の側端部から突出された短冊形電磁鋼板3をそれぞれ接続用の電磁鋼板41を架設することにより連結させている。この連結部分においては、接続用金具42を内側から内接させ、また接続用金具43を外側から外接させる。この接続用金具42、43は、それぞれ両端が折り曲げられてなり、シールド面材11、14の両側に設けられた金属板26にそれぞれ当接されることになる。
【0038】
図7(b)は、電磁鋼板41が設けられていない部分である図1中のQ部分のy方向からみた拡大図を示している。接続用金具42、43は、このQ部分等において、ビス47やボルト等により互いに固定されることになる。
【0039】
図7(c)は、図1におけるR部分のx方向からみた拡大図を示している。このR部分においては、第1シールド面材11に配設された短冊形電磁鋼板3が図中斜上方向に向けて延長されてくる。このような斜上方向に延長されてくる短冊形電磁鋼板3と接続するために、第4シールド面材14に配設される短冊形電磁鋼板3においても同様の角度で傾斜させ、電磁鋼板41を介してこれらを互いに接続することになる。このとき、第4シールド面材14における短冊形電磁鋼板3を、短冊形電磁鋼板3の矩形断面の長辺が中心線10へ向けて傾斜されるように配置することにより、第1シールド面材11に配設された短冊形電磁鋼板3の延長方向と整合を取ることが可能となる。
【0040】
図7(d)は、図7(a)における矢印部分の断面図を示している。第1シールド面材11に配設された短冊形電磁鋼板3が図中斜上方向に向けて延長されてくる。このような斜上方向に延長されてくる短冊形電磁鋼板3に対して、第4シールド面材14に配設される短冊形電磁鋼板3は、当該第4シールド面材14に対して垂直に配設されている。かかる場合も同様に、電磁鋼板41を介してこれらを互いに接続することになる。
【0041】
ちなみに、この図7に示す連結構造は、他の第1〜2シールド面材11、12と第3〜6シールド面材13〜16との連結部分において適用されるものとする。
【0042】
次に、上述の如き構成からなる磁気シールドルーム1の作用効果について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0043】
図8は、本発明を適用した磁気シールドルーム1内に収容したMRI装置9から漏洩してくる漏洩磁場の内壁面における分布を示している。ちなみに、この磁気シールドルーム1では、環状のコイルから漏洩してくる漏洩磁場の磁束が中心線10を中心として放射状に広がり、これらは第1シールド面11の面周20へ向けて広がっていくことになる。その結果、この第1シールド面11に放射される漏洩磁場の各磁束の取りえる角度方向は、互いに異なり、その伝搬方向はあらゆる角度に分散するものとなる。
【0044】
本発明を適用した磁気シールドルーム1では、この第1シールド面材11において、短冊形電磁鋼板3を中心線10との略直交点19からその面周20に至るまで放射状に配置している。このため、MRI装置9から漏洩してくる漏洩磁場は、この放射状に配置された短冊形電磁鋼板3により引き込まれ、またその磁束はかかる放射状に配置された短冊形電磁鋼板3に沿って流れていくことになる。あくまで、この第1シールド面材11においては、MRI装置9からの漏洩磁場の中心線10と、この短冊形電磁鋼板3の交差点を一致させていることから、これを中心として放射状に分布する漏洩磁場を効率よく引き込むことができ、またこれを面周20へと導くことが可能となる。
【0045】
面周20へと導かれた漏洩磁場は、図7(a)に示す接続用の電磁鋼板41を介して第3〜6シールド面材13〜16へと導かれ、第3〜6シールド面材13〜16に数段に亘って短冊形電磁鋼板3を流れ、第2のシールド面材12へと到達する。この第2のシールド面材12に配設された短冊形電磁鋼板に対しても同様に接続用の電磁鋼板41を介して漏洩磁場が流れこみ、さらに第2のシールド面材12から再び中心線10を介してMRI装置9へと漏洩磁場が流れ込んでいくことになる。
【0046】
即ち、本発明を適用した磁気シールドルーム1は、MRI装置9からの漏洩磁場の磁束方向に沿って短冊形電磁鋼板3を配列させている。これにより、MRI装置9からの漏洩磁場を引き込み、これを再び第2シールド面材12側からMRI装置9へと誘導することができ、外部空間に対して磁場の漏れを抑えることが可能となる。
【0047】
また本発明では、第1シールド面材11、第2シールド面材12において放射状に配置した短冊形電磁鋼板3を1枚のパネルで構成すれば磁気の漏洩を防止することが可能となることから、従来技術の如く垂直方向、水平方向に磁性材料板の列状簾体を形成した2枚のパネルを作製し、これを貼り合わせる必要が無くなる。このため、第1シールド面材11、第2シールド面材12の板厚を薄く構成することが可能となり、施工空間を有効活用することが可能となる。これら第1〜2シールド面材11〜12と、第3〜6シールド面材13〜16の板厚とを同等することが可能となり、接続用金具42、43を簡易な構成とすることも可能となり、施工性も向上させることが可能となる。第1シールド面材11、第2シールド面材12を1枚のパネルで構成することが可能な本発明では、使用すべき短冊形電磁鋼板3の量を極力減らすことが可能となる。さらに、本発明では、MRI装置9からの漏洩磁場の磁束方向に沿って短冊形電磁鋼板3を配列させているため、各シールド面材11〜16において短冊形電磁鋼板3の不足や余剰を生じる領域が部分的に発生することも無くなり、磁気シールド性をより向上させることが可能となる。
【0048】
なお、本発明においては、第1シールド面材11における磁束の引き込み効果を増強させるべく、以下に説明する改良を施すようにしてもよい。
【0049】
図4における点線円内における短冊状電磁鋼板3は、長手方向の透磁率は高いものの、非長手方向(紙面奥行き方向)の透磁率は低い。特に、短冊状電磁鋼板3における点線円内の領域は、MRI装置9からの磁束が第1シールド面材11に対してほぼ垂直方向から放射されてくる。このような磁束の引き込み効果を増強させるべく、さらに短冊状電磁鋼板3を非長手方向に向けて配設するようにしてもよい。
【0050】
また、図4における実線円内の短冊状電磁鋼板の枚数を増加させることにより、磁束の引き込み効果を更に増強させるようにしてもよい。なお、この図4における点線と実線の位置は互いに入れ替えてもよい。
【0051】
図9(a),(b)は、本発明を適用した磁気シールドルーム1における他の実施の形態を示している。図9(c)は、第3〜6シールド面材13〜16に配設される短冊形電磁鋼板3を、当該第3〜6シールド面材13〜16に対して垂直に配設した例である。
【0052】
各第1〜6シールド面材11〜16には、さらに平板状の電磁鋼板51が外側から外接されている。これにより外部空間にある他の機器から漏洩してくる磁場が、この電磁鋼板51により引き込まれることになり、磁気シールドルーム1内に漏洩するのを防止することが可能となる。このように、本発明では、開放型磁気シールド構造を採用しつつも、外部からの磁気が放射されてきた場合においても、これに対処することができ、内部空間に収容されたMRI装置9の動作がかかる外部磁場により支障をきたすのを完全に防止することが可能となる。
【0053】
ちなみに、この電磁鋼板51は、各第1〜6シールド面材11〜16に対して内側から内接されていてもよいし、外側及び内側から、外接及び内接されていてもよいことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明を適用した磁気シールドルームの斜視図である。
【図2】短冊形電磁鋼板が配設されたシールド面材の断面図である。
【図3】第1シールド面材において放射状に配置された短冊形電磁鋼板の例を示す図である。
【図4】図1におけるA-A断面図である。
【図5】図4中点線部分Gに示される第6シールド面材の拡大断面図である。
【図6】パネル体同士の連結構造について説明するための図である。
【図7】パネル体同士の連結構造について説明するための他の図である。
【図8】本発明を適用した磁気シールドルーム内に収容したMRI装置から漏洩してくる漏洩磁場の内壁面における分布を示す図である。
【図9】本発明を適用した磁気シールドルームにおける他の実施の形態について説明するための図である。
【図10】一般的な磁気シールドルームにおけるガントリー面の漏洩磁場の分布を示す図である。
【符号の説明】
【0055】
1 磁気シールドルーム
3 短冊形電磁鋼板
9 MRI装置
10 中心線
11 第1シールド面材
12 第2シールド面材
13 第3シールド面材
14 第4シールド面材
15 第5シールド面材
16 第6シールド面材
19 略直交点
20 面周
25 枠材
26 金属板
30 パネル体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
収容された磁気共鳴イメージング装置からの漏洩磁場を遮蔽するシールド面材により包囲された磁気シールドルームにおいて、
上記磁気共鳴イメージング装置に設けられた環状のコイルにおける中心線と直交する第1シールド面材及び第2シールド面材と、上記第1シールド面材及び第2シールド面材に対して互いに直交する第3シールド面材、第4シールド面材、第5シールド面材、第6シールド面材との6面により構成され、
上記第1〜2シールド面材内には、矩形断面の長辺が当該シールド面材の面厚方向となるように短冊形電磁鋼板が配設され、当該短冊形電磁鋼板は、上記第1シールド面材並びに第2シールド面材における上記中心線との略直交点からその面周に至るまで互いに任意の角度間隔で延長されていること
を特徴とする磁気シールドルーム。
【請求項2】
上記第3〜6シールド面材内には、第1シールド面材と第2シールド面材の面周に至るまで延長された短冊形電磁鋼板間を互いに連結するように短冊形電磁鋼板が所定間隔をおいて複数段に亘り配設されていること
を特徴とする請求項1記載の磁気シールドルーム。
【請求項3】
上記第1〜6シールド面材には、さらに平板状の電磁鋼板が外側から外接され、及び/又は内側から内接されていること
を特徴とする請求項1又2に記載の磁気シールドルーム。
【請求項4】
上記第3〜6シールド面材内に配設されている上記短冊形電磁鋼板は、矩形断面の長辺が上記中心線へ向けて傾斜され、又は上記第3〜6シールド面材に対して垂直に配設されていること
を特徴とする請求項1〜3のうち何れか1項記載の磁気シールドルーム。
【請求項5】
第1〜2シールド面材の面周から突出された上記短冊形電磁鋼板の端部と、上記第3〜6シールド面材の側端部から突出された上記短冊形電磁鋼板の端部とは、互いに架設された連結用の電磁鋼板により連結されていること
を特徴とする請求項1〜4のうち何れか1項記載の磁気シールドルーム。
【請求項6】
請求項1〜5のうち何れか1項記載の磁気シールドルームにおける第1シールド面材又は第2シールド面材の一部を構成することを特徴とする磁気シールドパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−49129(P2009−49129A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−212915(P2007−212915)
【出願日】平成19年8月17日(2007.8.17)
【出願人】(306022513)新日鉄エンジニアリング株式会社 (897)
【出願人】(000207436)日鉄住金鋼板株式会社 (178)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】