説明

磁気センサ、該センサの作製方法、並びに、該センサを用いた標的物質検出装置及びバイオセンサキット

【課題】直接検出のできない物質の数や濃度を比較的正確に検出することが可能であり、かつ種々の標的物質の検出に用いることが可能なセンサを提供すること。
【解決手段】検出領域内で、検体中に含まれる標的物質に該標的物質よりも大きい標識物質を結合させ、該標識物質を検出することによって、前記標的物質を間接的に検出する磁気センサであって、前記検出領域を構成する部材の表面に前記標的物質を相対的に捕捉しやすい捕捉領域と、前記標的物質を相対的に捕捉しにくい非捕捉領域とを有し、前記捕捉領域が前記非捕捉領域で囲まれている磁気センサ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、標的物質検出用の磁気センサ、その製造方法、並びに、このセンサを用いた標的物質検出用の装置及びキットに関する。
【背景技術】
【0002】
定量的なイムノアッセイとして、放射免疫分析法(RIA : radio immunoassayもしくはIRMA:immunoradiometric assay)が古くから知られている。この方法では、放射性核種によって競合抗原あるいは抗体を標識し、比放射能の測定結果から抗原が定量的に測定される。つまり抗原などの標的物質を標識してこれを間接的に測定する。この方法は感度が高いことから、臨床診断において大きな貢献を果たしたが、放射性核種の安全性の問題が有り専用の施設や装置が必要となるという欠点がある。そこで、より扱いやすい方法として、例えば、蛍光物質、酵素、電気化学発光分子、磁性粒子などの標識を用いる方法が提案されてきた。標識に酵素を用いる酵素免疫測定法(EIA:Enzyme Immunoassay)は、抗原-抗体反応をさせた後に、酵素標識抗体を反応させ、その酵素に対する基質を添加して発色させ、その吸光度により比色定量する方法である。
【0003】
近年、磁気抵抗効果膜を用いることによって標識物質として用いた微量の磁性粒子を容易に検出する方法が提案されている(非特許文献1及び2参照)。
【0004】
非特許文献1では、80μm×5μmおよび20μm×5μmのサイズの巨大磁気抵抗効果(GMR: Giant Magnetoresisitance effect)膜を用い、直径2.8μmの複数個の磁性粒子の検出を行なっている。GMR膜で用いられている磁性膜は面内磁化膜であり、磁性粒子に印加する磁界は磁性膜に対して膜面垂直方向に印加されている。したがって磁界の印加によって磁化された磁性粒子から生じる浮遊磁界が、図4に示されるようにGMR膜の磁性膜に概略膜面内方向に印加され、磁性膜の磁化はこの磁界方向に揃う。図4において、200は磁気センサであり、400は磁性粒子、410は磁化ベクトル、420は印加磁界ベクトル、430は浮遊磁界をそれぞれ示す。磁気抵抗効果膜の電気抵抗の大きさは2つの磁性膜の相対的な磁化方向に依存しており、磁化方向が平行であると電気抵抗が比較的小さく、反平行であると比較的大きいという特徴を持つ。平行、反平行という磁化状態を実現させるために磁気抵抗効果膜の2つの磁性膜における一方の磁性膜の磁化方向は固定され、他方は磁性粒子からの浮遊磁界によって磁化反転可能であるような保磁力を有する磁性材料で構成される。もし磁性粒子がGMRセンサの上に存在しない場合は、外部磁界を印加しても磁性膜に膜面内方向の磁界が印加されないので磁化反転が生じない。検出回路は、固定抵抗と磁性粒子が固定されないGMRセンサと、磁性粒子が固定し得るGMRセンサと、の2つのセンサによってブリッジ回路を構成し、このブリッジ回路に誘起される電位差をロッキングアンプで検出する構成となっている。非特許文献2では2μm×6μmのサイズのGMRセンサを用い、直径2μmの磁性粒子の検出を行っている。引用文献1と同様にGMRセンサは、磁性粒子が固定し得るものと固定されないものを並べて形成し、この2つのGMRセンサの出力信号を比較することで磁性粒子の検出を行っている。ただし、磁性膜は面内磁化膜であり、かつ磁性粒子に印加する磁界は磁性膜に対して膜面内長手方向である。
【0005】
以上のように磁気抵抗効果膜を用いた磁性粒子の検出方法は、磁性粒子を所望の方向に磁化し、磁性粒子から発する浮遊磁界によって磁気抵抗効果膜の磁化方向を変化させて検出を行うものである。これらの方法は、測定に用いる装置や試薬などの取り扱いが簡単であり、比較的短い時間で検出が可能であるという利点を有する。
【0006】
センサ上への磁性粒子の固定は、例えば検出しようとする標的物質が抗原である場合、抗原抗体反応を用いて行われる。すなわち、センサ上へ一次抗体を形成しておき、これに抗原を含んでいる可能性のある血液などの検査対象物を反応させ、その後、二次抗体によって修飾されている磁性粒子を反応させる。この一連の操作によって、検査対象物の中に抗原が存在する場合は、センサ上に、一次抗体−抗原−二次抗体−磁性粒子という結合が生じる。抗原が存在しなければ、上記結合はできず、結果として磁性粒子はセンサ上に固定されない。
【0007】
上記、固定方法を用いると、標的物質1個に対して磁性粒子1個がセンサ上に固定されるので、高感度な磁気センサを用いることによって、標的物質1個が検出可能である。
【0008】
標識物質には、蛍光、酵素、電気化学発光、放射性、磁性など様々なものが存在し、標識物質に合った検出手段を用いて、標的物質の数や濃度を検出する。
【0009】
蛍光標識、酵素標識、電気化学発光標識等を標識として用いた場合は、光学的な測定方法に用いられ、光の吸収率や透過率、あるいは発光光量を計測することによって、標的物質の検出が行われる。また、放射性同位元素を含有する放射性標識を用いる場合は、比放射能の測定を行い、標的物質の定量を行う。上記のような光学的測定方法や放射能測定法を用いる場合は、大きな測定装置が必要であるという短所を有する。これに対し、近年提案された磁性標識を用いた場合には、小さな測定装置を用いて検出を行うことが可能である。磁性標識を用いる場合には、小さな磁気センサによって、磁性粒子から発する磁界の検出を行う。磁気センサにはホール素子や磁気抵抗効果素子が使用可能である。
【非特許文献1】David R. Baselt, et al. Biosensors & Bioelectronics 13, 731 (1998)
【非特許文献2】D. L. Graham, et al. Biosensors & Bioelectronics 18, 483 (2003))
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
非特許文献2におけるセンサでは、センサ上部には単一組成の膜が形成され、標的物質が結合する例えば抗体のような物質が一様に配置されている。バイオセンサに用いられる修飾された磁性粒子の大きさは、数百nm〜数十μmであるが、抗原などの標的物質に結合する物質は数nm程度の大きさのものが多い。したがって、図5(a)に示すように、抗体などがセンサ上部に密に形成されているならば、抗原がすべての抗体に吸着されたとしても、磁性粒子が抗体よりもはるかに大きい為に、磁性粒子はすべての抗原に固定されない場合が生じる。その結果、固定された磁性粒子の数と吸着した抗原の数が著しく異なり、抗原の数あるいは濃度を検出することが困難となってしまう場合があるという問題がある。例えば、図5(b)に示すように抗原が固定された場合でも、抗原の数が異なるにもかかわらず、磁性粒子の数は図5(a)に示す場合と変わらず、磁性粒子の数と抗原の数が1対1対応せず、抗原の正しい数が検出されない。
【0011】
本発明の目的は、上記の標的物質と標識との関係に基づく検出感度の問題を解決し得るセンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明により提供される磁気センサは、検出領域内で、検体中に含まれる標的物質に該標的物質よりも大きい標識物質を結合させ、該標識物質を検出することによって、前記標的物質を間接的に検出する磁気センサであって、前記検出領域を構成する部材の表面に前記標的物質を相対的に捕捉しやすい捕捉領域と、前記標的物質を相対的に捕捉しにくい非捕捉領域とを有し、前記捕捉領域が前記非捕捉領域で囲まれていることを特徴とする。
【0013】
本発明により提供される磁気センサの製造方法の第一の態様は、検出領域を構成する部材の表面に標的物質を相対的に捕捉しやすい捕捉領域と、該捕捉領域を囲み、前記標的物質を相対的に捕捉しにくい非捕捉領域とを有し、検出領域内で、検体中に含まれる標的物質に該標的物質よりも大きい標識物質を結合させ、該標識物質を検出することによって、前記標的物質を間接的に検出する磁気センサの製造方法であって、前記非捕捉領域を構成する材料からなる膜上にアルミニウム膜を形成する工程と、前記アルミニウム膜を陽極酸化して孔を形成する工程と、前記孔中に前記捕捉領域を構成する材料を充填する工程と、
前記充填された領域を残して、前記アルミニウム膜を除去し、前記非捕捉領域を構成する材料からなる膜を表出させる工程と、を有することを特徴とする。
【0014】
本発明の磁気センサの製造方法の別の態様は、検出領域を構成する部材の表面に標的物質を相対的に捕捉しやすい捕捉領域と、該捕捉領域を囲み、前記標的物質を相対的に捕捉しにくい非捕捉領域とを有し、検出領域内で、検体中に含まれる標的物質に該標的物質よりも大きい標識物質を結合させ、該標識物質を検出することによって、前記標的物質を間接的に検出する磁気センサの製造方法であって、前記非捕捉領域を構成する材料からなる膜に前記捕捉領域を構成する材料を含む針を近づけ、該針と前記非捕捉領域を構成する材料からなる膜との間に電圧を印加し、前記捕捉領域を構成する材料からなるドットを前記非捕捉領域を構成する材料からなる膜上に形成することを特徴とする。
【0015】
更に別の態様は、検出領域を構成する部材の表面に標的物質を相対的に捕捉しやすい捕捉領域と、該捕捉領域を囲み、前記標的物質を相対的に捕捉しにくい非捕捉領域とを有し、検出領域内で、検体中に含まれる標的物質に該標的物質よりも大きい標識物質を結合させ、該標識物質を検出することによって、前記標的物質を間接的に検出する磁気センサの製造方法であって、前記非捕捉領域を構成する材料からなる膜上に配されたレジスト膜に孔を形成する工程と、前記レジスト膜上に前記捕捉領域を構成する材料を形成し、前記孔中に前記捕捉領域を構成する材料を充填する工程と、前記前記レジスト膜を除去して前記非捕捉領域を構成する材料からなる膜を表出させる工程と、を有することを特徴とする。
【0016】
更に別の態様は、検出領域を構成する部材の表面に標的物質を相対的に捕捉しやすい捕捉領域と、該捕捉領域を囲み、前記標的物質を相対的に捕捉しにくい非捕捉領域とを有し、検出領域内で、検体中に含まれる標的物質に該標的物質よりも大きい標識物質を結合させ、該標識物質を検出することによって、前記標的物質を間接的に検出する磁気センサの製造方法であって、前記非捕捉領域を構成する材料からなる膜を形成する工程と、前記膜の表面に窪みを形成する工程と、前記窪みに前記捕捉領域を構成する材料を形成する工程と、を有することを特徴とする。
【0017】
本発明により提供される検出装置は、標的物質検出用の磁気センサと、該磁気センサにおいて得られる信号に基づいて前記センサへの標的物質の捕捉を検出する検出手段と、を有する標的物質の検出装置において、前記磁気センサが上記の構成のセンサであり、前記検出手段が、前記センサにおいて得られる信号を、基準値と比較して、前記標的物質の捕捉を検出する手段を有することを特徴とする。
【0018】
本発明により提供される標的物質検出用のキットは、上記構成のセンサと、前記標識物質と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明の磁気センサは、直接検出のできない標的物質の数や濃度を、より正確に検出する場合に対して適用可能であり、かつ種々の標的物質の検出に用いることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明は先に挙げた問題に鑑み、標識物質の数と標的物質の数の差を少なくし、より正確な定量検出を可能とする場合にも好適な構造を有する磁気センサを提案するものである。
【0021】
具体的には、本発明の磁気センサでは、検出領域を構成する部材の表面に、標的物質を相対的に捕捉しやすい捕捉領域と、標的物質を相対的に捕捉しにくい非捕捉領域を有し、捕捉領域が非捕捉領域で囲まれている。標的物質を相対的に捕捉しやすい捕捉領域は、標識物質により標識される標的物質が固定されやすい極微小領域として形成される。この領域はそれ自身が標的物質捕捉機能を有するものでもよいし、抗体などの標的物質捕捉機能を有する物質を固定可能な領域として形成したものでもよい。
【0022】
本発明の磁気センサにおいては、図5を用いて前述した標的物質に対する標識物質の数が1対1対応しないという課題を解決し、標的物質に対する標識物質の数を1対1対応させて正確に標的物質の量を測定し得る。
【0023】
本発明の磁気センサでは、標的物質を相対的に捕捉しやすい領域を標的物質を相対的に捕捉しにくい非捕捉領域で囲んだことにより、標的物質が非捕捉領域に捕捉されること防ぐ。これにより捕捉領域に捕捉される標的物質とこれに結合する標識物質とを正確に対応づけることができ、抗原やDNA等の生体分子の数や濃度を、より正確に検出することが可能となる。
【0024】
本発明においては、捕捉領域の複数が非捕捉領域中に点在するように構成することもできる。
【0025】
また、捕捉領域の一つの大きさは、標的物質の一つが捕捉される大きさであり、複数の標的物質を捕捉できない大きさとすることもできる。
【0026】
また、捕捉領域の複数を標識物質の直径よりも大きい距離離間して配することもできる。
【0027】
本発明においては、捕捉領域は、金を含有する領域とすることができ、非捕捉領域は、シリコンを含有する領域とすることができる。そして、シリコンを含有する領域は窒化シリコン、酸化シリコンまたは、これらの混合物で構成することができる。
【0028】
本発明のセンサの構成によれば、標的物質が占める空間が、標識物質が占める空間よりも小さく、標的物質補足領域の複数が、標識物質が占める空間の大きさ以上の間隔で離れて配置されている構成を得る上で好適な構造を有する。このように標的物質捕捉領域の複数を配置することで、検体中での標的物質の数や濃度を、より正確に検出することが可能となる。
【0029】
標識物質としては、磁性粒子などを用いることができる。
【0030】
センサと組み合わせる検出手段には、標的物質を直接検出する場合と標識を用いて間接的に検出する場合のそれぞれにおいて好適なものを選択して用いる。
標的物質捕捉領域への標的物質の捕捉を磁気の変化として検出する場合には、磁気センサを一体化させることで本発明のセンサを、磁気の変化を信号に変化して出力できる磁気センサを構成することがきる。
【0031】
上記の構成の磁気センサの検出領域を構成する部材の作製には以下の各方法を好適に利用することができる。
【0032】
第一の方法は以下の工程を有する。
(1)非捕捉領域を構成する材料からなる膜上にアルミニウム膜を形成する工程。
(2)アルミニウム膜を陽極酸化して孔を形成する工程。
(3)前記孔中に前記捕捉領域を構成する材料を充填する工程。
(4)前記充填された領域を残して、前記アルミニウム膜を除去し、前記非捕捉領域を構成する材料からなる膜を表出させる工程。
【0033】
この方法では、陽極酸化の条件を適宜設定することで、各標的物質捕捉領域の大きさや間隔の調整が可能である。
【0034】
第二の方法は以下の工程を有する。
・非捕捉領域を構成する材料からなる膜に前記捕捉領域を構成する材料を含む針を近づけ、該針と前記非捕捉領域を構成する材料からなる膜との間に電圧を印加し、前記捕捉領域を構成する材料からなるドットを前記非捕捉領域を構成する材料からなる膜上に形成する工程。
【0035】
この方法では、針と捕捉領域との間隔、捕捉領域を構成する材料の種類、電圧の印加条件、電圧印加時における針と非捕捉領域を構成する材料からなる膜との位置などに応じて、ドットの形状や大きさ、各ドットの間隔の調整が可能である。
【0036】
第三の方法は以下の工程を有する。
(1)非捕捉領域を構成する材料からなる膜上に配されたレジスト膜に孔を形成する工程。(2)前記レジスト膜上に前記捕捉領域を構成する材料を形成し、前記孔中に前記捕捉領域を構成する材料を充填する工程。
(3)前記前記レジスト膜を除去して前記非捕捉領域を構成する材料からなる膜を表出させる工程。
【0037】
この方法では、標的物質捕捉領域の位置(間隔)は、レジスト膜に設けた孔により規定される。
【0038】
第四の方法は以下の工程を有する。
(1)非捕捉領域を構成する材料からなる膜を形成する工程。
(2)前記膜の表面に窪みを形成する工程。
(3)前記窪みに前記捕捉領域を構成する材料を形成する工程。
【0039】
この方法における窪みへの捕捉領域を構成する材料の形成には、クラスタービーム法などが好適に利用できる。
【0040】
標的物質を相対的に捕捉しやすい捕捉領域を形成するための材料としては、金などを挙げることができる。
【0041】
標的物質を相対的に捕捉しにくい非捕捉領域を形成するための材料としては、シリコンを含有する材料があげられ、より具体的には窒化シリコン、酸化シリコンをあげることができる。
【0042】
上記の構成のセンサと、センサから得られる信号に基づいてセンサへの標的物質の捕捉を検出する検出手段と、を少なくとも用いて標的物質検出装置を構成することができる。
【0043】
更に、上記の構成のセンサと、標識物質と、を少なくとも用いて標的物質検出用のキットを提供することができる。また、上記の構成の検出装置と、標識物質と、を少なくとも用いて標的物質検出用のキットを提供することもができる。これらのキットには、検体の調製や検体をセンサと反応させるための各種の試薬を更に含むことができる。
【0044】
以下、標識物質が磁性粒子である検体溶液中の抗原の検出を例として、以下に本発明を詳細に説明する。
【0045】
図1に示すように、筐体100の中に、磁気センサ200が形成され、磁気センサ200は外部検出回路300と接続されている。磁気センサ200は、磁気抵抗効果素子やホール素子など、どのような磁界検出素子でも良い。なかでも、磁性粒子400からの僅かな浮遊磁界を検出するには感度の良いものが好ましい。そのようなものとしては、磁気抵抗効果素子であるTMR(Tunneling Magnetoresistance)素子や、BMR(Ballistic Magnetoresisitance)素子が好適に用いられる。磁気センサ200の上部には、検体500と磁気センサ200を電気的に絶縁する為に、絶縁膜600が形成されている。ただし検体500と磁気センサ200を絶縁する必要が無い場合には、絶縁体600は形成しなくても構わない。絶縁体600の上部には、標的物質である抗原820が比較的固定されやすい(相対的に捕捉されやすい)領域710と、比較的固定されにくい(相対的に捕捉されにくい)領域720が混在するように形成した固定膜700が形成されている。ここで、710、720及び700は検出領域を構成する部材を構成している。検出しようとする物質、つまり標的物質である抗原820に特異的に吸着する一次抗体810を所定の領域に固定することで、標的物質が比較的固定されやすい領域710が形成されている。一次抗体810は、一領域に一つのみ固定される状態が好ましく、領域710の面積、抗体の濃度、固定化プロセス等によって調節可能である。ついで、検体500を一次抗体810に接触させる。もし、検体500中に、標的物質である抗原820が存在するならば、一次抗体810と結合する。さらに、抗原820と特異的に結合する二次抗体830が修飾されている磁性粒子400を注入すると、一次抗体810、抗原820および二次抗体830を介して磁性粒子400が磁気検出エリアに固定される。
【0046】
上記方法によれば、一次抗体810に固定された抗原820には、二次抗体830を介して磁性粒子400が高い割合で固定されるので、抗原820の数や濃度を正確に検出することが可能である。
【0047】
ここで、本発明のより好ましい形態を図6を用いて説明する。図6は、図1に示したセンサ構成のうち、標的物質である抗原820を相対的に捕捉しやすい領域710を2つ配した例を示すものである。つまり、抗原を捕捉しやすい領域710を2つとし、抗原820を相対的に捕捉しにくい領域720、一次抗体810、二次抗体830、磁性粒子400を図1から抜き出したものである。その他の構成は図1に示したものと同様である。図6に示した例では2つの捕捉しやすい領域710それぞれは、標的物質の一つが捕捉される大きさで複数の捕捉物質を捕捉できない大きさとなっている。更に2つの捕捉しやすい領域710は磁性粒子400の直径よりも大きな距離離間して配されている。こうすることにより、抗原820と標識物質である磁性粒子400とは1対1対応することになり、図5(b)を参照して前述した抗原の数(濃度)が正確に把握できないといった弊害が生じない。これにより標的物質の個数(濃度)をより正確に測定できる。
【0048】
本発明に用いられる抗体としては従来用いられているものが使用可能である。また、磁性粒子に固定させる二次抗体も同様に種々のものが使用可能である。検体としては、標的物質(タンパク質、核酸、糖鎖)やアレルゲン、バクテリア、ウイルス等の抗体が特異的に認識できるものが対象となる。また、本発明は生体分子の検出に限らず、磁性粒子を直接的にあるいは間接的に固定できる物質であれば、どのようなものでも検出可能である。
【0049】
上述した構成の本発明にかかるセンサと、標識物質とを少なくとも用いて標的物質検出用のキットを提供することができる。
【実施例】
【0050】
以下、本発明を、実施例を挙げてさらに詳細に説明する。
(実施例1)
本実施例において、本発明の磁気センサの作製方法の一例を図2により説明する。
【0051】
シリコンウエハ201表面に、膜厚20nmのCr膜202、膜厚20nmのPt膜203、膜厚10nmのMnIr膜204、膜厚5nmのFeCo膜205、膜厚1.6nmのAl2O3膜206、膜厚5nmのFeCo膜207、膜厚20nmのNiFe膜208、膜厚5nmのPt膜209をマグネトロンスパッタリングによって順次積層して多層膜構造体を得る(図2(a))。Al2O3膜206は、Al2O3ターゲットを用いて成膜した後に、O2ガスを成膜チャンバー内に導入し、プラズマ酸化を行うことで酸素欠損を補う。シリコンウエハ201側から順に、Cr/Pt多層膜は下部電極となり、MnIr/FeCo多層膜はTMR膜のピン層(磁化方向が固定されている層)、Al2O3膜206はトンネル膜、FeCo/NiFe多層膜はフリー層(磁化方向が印加磁界によって変化しやすい層)、Pt膜203は加工時の磁性膜の変質を防ぐ為の保護層である。
【0052】
多層膜の表面に、レジスト膜をスピンコーターによって約1μmの均一な膜厚で塗布し、ベーキングした後に紫外線によって所望の形状にパターニングする。その後、再度ベーキングを行い、現像液内に浸漬した後に純水によって洗浄し、所望のパターン形状のレジスト膜210を得る。本実施例では、レジストパターン形状はΦ30μmの円形とする(図2(b))。レジスト膜及びパターニング加工用の現像液などのレジストパターニング用の材料としては公知の材料が利用できる。
【0053】
ついで、Arガスを用いたドライエッチングによって、多層膜表面からAl2O3膜206表面までエッチングを行う(図2(c))。さらに、Al2O3ターゲットをArとO2の混合ガスを導入してマグネトロンスパッタし、Al2O3からなる層間絶縁膜220を形成する(図2(d))。その後、多層構造体をレジスト剥離液中に浸漬した状態で超音波洗浄し、レジスト膜およびその上部に形成されるAl2O3膜を除去する。
【0054】
微細加工された多層構造体の表面に、さらに膜厚30nmのPt膜231、膜厚10nmのAl2O3膜232、膜厚30nmのSiN膜233、膜厚5nmのCr膜234、膜厚5μmのAl膜235を順次形成する(図2(e))。本成膜におけるPt膜231はTMR素子の上部電極であり、Al2O3膜232はTMR素子と素子上部の多層膜との絶縁膜である。標的物質と磁気センサの距離は、感度において重要であり、その距離が短いほど高感度な磁気センサが期待される。したがって、TMR膜のフリー層上部に形成される多層膜は、各膜がそれぞれの機能を発揮する範囲で薄い方が好ましく、各膜厚は本実施例で示した値に限定されるものではない。
【0055】
その後、先端の曲率半径の小さな針先を、Al膜表面に押し当て窪み240を形成する(図2(f))。本実施例においては、曲率半径が約10nmの針を用いる。また、隣り合う針先との間隔を500nmとする。
【0056】
表面に窪み240を形成した多層構造体をシュウ酸溶液中に浸漬し、Al膜を陽極酸化する。このとき陽極酸化は、Al膜に窪みが形成されている部分を起点とし進行する。陽極酸化は形成される穴がCr膜まで達した時点で止める。陽極酸化によって形成される穴の径は平均15nm程度である(図2(g))。
【0057】
陽極酸化処理された多層膜構造体の穴を有する側の表面を清浄にした後、Al膜に形成された孔の底部にAuドット251を成膜する(図2(h))。この孔はアスペクト比が著しく高いために、多層膜構造体表面に対して垂直方向に高い割合でAu原子が飛来することが好ましく、そのような成膜方法として低圧遠隔スパッタ、SIS(Self Ionized Sputter)、コリメートスパッタ、イオン化スパッタ等が一般的に知られている
Auの成膜が完了した後、Al膜をアルカリ溶液によってウェットエッチングする。このとき、Al膜上部に形成されるAu膜が保護膜となってエッチングが進行しない場合には、研磨によってAl膜表面のAu膜を除去した後、エッチングすると良い。Al膜を除去した後、塩素系ガスによってCr膜のドライエッチングを行う(図2(i))。ただし、Auドットの下部に存在するCrは残す必要が有る為、塩素イオンを高い速度でCr表面に衝突させ、Auドットの下部は極力エッチングされないようにすることが好ましい。
【0058】
上記のプロセスによって、TMR素子上部にSiN膜上に500nmピッチで点在する微小Auドットが形成された本発明の磁気センサが作製可能である。
【0059】
本実施例では、磁気センサとしてTMR素子を用いるが、GMR素子、BMR素子、ホール素子、異常ホール素子、プレーナーホール素子など、様々な磁気センサが使用可能である。
【0060】
本発明の磁気センサを用いて、液中の磁性粒子の個数検出が可能である。
【0061】
本発明の磁気センサの上部電極と下部電極に検出回路を接続し、測定を行う前の初期抵抗値を測定しておく。検出対象である磁性粒子が著しく小さく、スーパーパラ磁性を示す場合には、外部から磁性粒子に磁界を印加して検出を行う。したがって、初期抵抗値を測定する場合においても、同様に磁界を印加した状態で行う。印加する磁界の大きさは、磁性粒子が検出可能である大きさの浮遊磁界を磁気センサに与えることができるようになる大きさの磁界であって、特に厳密に規定されるものではないが、本実施例においては磁気センサ表面に垂直な500 Oeの磁界とする。また、検出回路は非特許文献1に記載されているような、ブリッジ回路およびロッキンアンプを用いた高感度な検出回路でも良いし、定電流源および電圧計からなる単純な構成でも良い。
【0062】
ついで、磁気センサを、標的物質としての磁性粒子を含む検体溶液中に浸漬する。磁気センサ表面のAuドットと磁性粒子に修飾されたチオール基の結合によって、磁気センサ表面に検出対象である磁性粒子が固定化される。検体溶液中に浮遊している磁性粒子は時間が経つと共に徐々に固定され、全磁性粒子が固定された時の磁気センサの検出信号と初期値を比較することによって、磁性粒子の個数を知ることが可能である。あるいは全磁性粒子が固定される前であっても、固定化時間に対する検出信号の変化から、検出信号の飽和値を推測し、全磁性粒子の個数を知ることも可能である。検体溶液中に多くの磁性粒子が存在し、磁気センサ上に全磁性粒子が固定し得ない場合には、多数の磁気センサを検体溶液中に浸漬させれば良い。
【0063】
さらに、本発明の磁気センサを用いて、バイオセンシングを行うことが可能である。その一例を図1を更に参照して説明する。なお、図2の構成におけるAuドット251は図1における比較的固定されやすい領域710に相当し、SiN膜233の表面は比較的固定されにくい領域720に相当し、これらにより固定膜700が形成されている。更に、図2の工程を経て得られた磁気センサは図1において200として示されている。
【0064】
固定膜700の表面は、まず親水化処理が施された後、アミノシランカップリング剤処理される。さらに一次抗体810を固定化させるためのグルタルアルデヒド等架橋剤を用いて、アミノシランカップリング剤由来のアミノ基とペプチド鎖間を化学結合させ所望の抗原を補足する一次抗体180が固定されている。
【0065】
この検出デバイスを用い、以下のプロトコールに従って前立腺癌のマーカーとして知られている前立腺特異抗原(PSA)の検出を試みることができる。PSAの大きさは数nm程度と小さい。検出デバイスには、PSAを認識する一次抗体810が固定化されている。
(1)抗原820であるPSAを含むリン酸緩衝生理食塩水に検出デバイスを浸し、5分間インキュベートする。
(2)工程(1)を経た検出デバイスをリン酸緩衝生理食塩水で洗浄して未反応のPSAを洗い流す。
(3)磁性粒子400により標識された抗PSA抗体を含むリン酸緩衝生理食塩水に工程(2)を経た検出デバイスを浸し、5分間インキュベートする。
(4)工程(3)を経た検出デバイスをリン酸緩衝生理食塩水で洗浄して、未反応の標識抗体を洗い流す。
【0066】
ただし、磁性粒子400の平均直径は約400nmでスーパーパラ磁性を示す。固定化膜700が約500nmの間隔で形成されているので、磁性粒子400が立体障害を起す領域には抗原820は固定されない。
【0067】
まず、無磁場中でTMR膜200に定電流を流し、このときのTMR膜200の電圧を測定しておく。次いでTMR膜200の表面に抗原抗体反応を介して固定された磁性粒子400に下方向で500 Oeの大きさの外部磁界を印加し、磁性粒子400の磁化を下方向に向ける。磁性粒子400からは浮遊磁界が発生し、フリー層には外部磁界と浮遊磁界の合成磁界が印加され磁化反転が生じる。この状態で再びTMR膜200に定電流を流し電圧の変化量を測定し、被検体溶液中に抗原820を検出することができる。
【0068】
(実施例2)
実施例1において、陽極酸化を用いたAuドットパターンの作製方法について説明したが、針形状部を有するAuターゲットを用いてAuドットを所望のパターンで成膜することも可能である。
【0069】
実施例1における図2(d)の磁気センサを形成した状態の多層膜構造体の表面に膜厚30nmのSiN膜233を成膜した後、レジスト膜をスピンコーターによって約1μmの均一な膜厚で塗布し、ベーキングした後に紫外線によって、例えば、センサ素子上部以外の領域などのAuドットを形成しない領域をレジスト膜が覆うようにパターニングする。その後、再度ベーキングを行い、現像液内に浸漬した後に純水によって洗浄し、所望のパターン形状のレジスト膜を得る。ついで、針状形状のAuターゲットと被処理表面を平行に対向させて近づけて配置しておく。この状態でAuターゲットをスパッタリングすると、針先のAuからAu原子が素子表面に飛来し、針先の直下にのみAuドットが形成される。その後、レジスト剥離液に素子を浸漬した状態で超音波洗浄を行い、レジスト膜およびその上部に形成されたAuドットを除去し、磁気センサを内蔵する標的物質検出用のセンサを得る。標識物質を用いて、間接的に標的物質を検出する場合には、針状形状のターゲットは、センサ200上に固定される標的物質に、標識物質が固定されるように、標識物質の粒径以上のピッチで並んでいる物を用いる。
- なお、レジスト膜からなるパターンの形成およびその除去には公知の材料および方法を用いることができる。
【0070】
一方、針状形状のAuターゲットは全体がAuから形成されているものでも、針状の基体表面にAu膜が設けられているものなどのAu部分を有するものでもよい。
【0071】
(実施例3)
さらにレジスト膜パターニングによって素子上部に微細孔を形成し、その孔にAuを成膜することによって、Auドットを所望のパターンで成膜することも可能である。
【0072】
実施例1における図2(d)の磁気センサを形成した状態の多層膜構造体の表面に膜厚30nmのSiN膜233を成膜した後、レジスト膜をスピンコーターによって約200nmの均一な膜厚で塗布し、ベーキングした後、Auドットを形成する位置に電子線を照射して孔を形成する。その後、再度ベーキングを行い、現像液内に浸漬した後に純水によって洗浄し、所望のパターン形状のレジスト膜を得る。形成する孔はφ50nm程度で、隣り合う孔との間隔は、標識物質の粒径よりも大きくしておく。ついで、指向性の低い成膜装置によって孔内にAu膜を成膜し、孔の底部に中心部の膜厚が厚いAuドットを形成する。その後、レジスト剥離液に素子を浸漬した状態で超音波洗浄を行い、レジスト膜およびその上部に形成されたAuドットを除去する。なお、レジスト膜からなるパターンの形成およびその除去には公知の材料および方法を用いることができる。
【0073】
さらに、多層膜構造体の表面全面をArガスによってドライエッチングし、Auドットの径を所望の大きさまで小さくしていく。このとき、SiN膜からのNの遊離を防ぐ為に、エッチングガスをArとN2の混合ガスとしても良い。以上のプロセスを経て磁気センサを内蔵する標的物質検出用のセンサを得る。
【0074】
(実施例4)
実施例3において、膜厚30nmのSiN膜233の上部に塗布したレジスト膜に、比較的ドーズ量の少ない電子線を照射する。その後、再度ベーキングを行い、現像液内に浸漬した後に純水によって洗浄し、図3(a)に示すようなレジストパターンを形成する。レジストパターンの窪みのピッチは、標識物質の粒径よりも大きくしておく。その後、ドライエッチングによってレジスト膜を薄くしていき、下部SiN膜233が僅かにエッチングされた時点でエッチングを止める。レジスト膜を除去した後、クラスタービームを用いてAu原子をSiN膜233表面に飛ばすことによって、SiN膜233の窪みにAu原子が集まり、図3(b)に示すようなAuドット251が形成される。以上のプロセスを経て磁気センサを内蔵する標的物質検出用のセンサを得る。
なお、レジスト膜からなるパターンの形成およびその除去には公知の材料および方法を用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明よれば、直接検出のできない物質の数や濃度を比較的正確に検出することが可能であり、かつ種々の標的物質の検出に用いることが可能なセンサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明のセンサの構成例を説明するための概念図である。
【図2】本発明のセンサの作製プロセスの一例を説明する概念図である。
【図3】本発明のセンサの作製プロセスの一例を説明する概念図である。
【図4】磁気センサの構成例を示す模式図である。
【図5】磁気センサの構成例を示す模式図である。
【図6】本発明のセンサの構成例を説明するための概念図である。
【符号の説明】
【0077】
100 筐体
200 磁気センサ
300 外部検出回路
310 半導体レーザー
320 受光素子
330 励起光
340 蛍光
400 磁性粒子
500 検体
600 絶縁体
700 固定膜
710 標的物質捕捉領域
720 シリコン含有領域
810 一次抗体
820 抗原
830 二次抗体
201 シリコンウエハ
202 Cr膜
203 Pt膜
204 MnIr膜
205 FeCo膜
206 Al2O3
207 FeCo膜
208 NiFe膜
209 Pt膜
210 レジスト膜
220 層間絶縁膜220
231 Pt膜
232 Al2O3
233 SiN膜
234 Cr膜234
235 Al膜
240 窪み
251 Auドット
410 磁化ベクトル
420 印加磁界ベクトル
430 浮遊磁界
440 蛍光粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出領域内で、検体中に含まれる標的物質に該標的物質よりも大きい標識物質を結合させ、該標識物質を検出することによって、前記標的物質を間接的に検出する磁気センサであって、前記検出領域を構成する部材の表面に前記標的物質を相対的に捕捉しやすい捕捉領域と、前記標的物質を相対的に捕捉しにくい非捕捉領域とを有し、前記捕捉領域が前記非捕捉領域で囲まれていることを特徴とする磁気センサ。
【請求項2】
前記捕捉領域の複数が前記非捕捉領域中に点在する請求項1に記載の磁気センサ。
【請求項3】
前記捕捉領域の一つの大きさは、前記標的物質の一つが捕捉される大きさであり、複数の標的物質を捕捉できない大きさである請求項2に記載の磁気センサ。
【請求項4】
前記捕捉領域の複数が前記標識物質の直径よりも大きい距離離間して配されている請求項3に記載の磁気センサ。
【請求項5】
前記捕捉領域は、金を含有する領域であり、前記非捕捉領域は、シリコンを含有する領域である請求項1に記載の磁気センサ。
【請求項6】
前記シリコンを含有する領域は窒化シリコンまたは酸化シリコンからなる請求項5に記載の請求項5に記載の磁気センサ。
【請求項7】
検出領域を構成する部材の表面に標的物質を相対的に捕捉しやすい捕捉領域と、該捕捉領域を囲み、前記標的物質を相対的に捕捉しにくい非捕捉領域とを有し、検出領域内で、検体中に含まれる標的物質に該標的物質よりも大きい標識物質を結合させ、該標識物質を検出することによって、前記標的物質を間接的に検出する磁気センサの製造方法であって、
前記非捕捉領域を構成する材料からなる膜上にアルミニウム膜を形成する工程と、
前記アルミニウム膜を陽極酸化して孔を形成する工程と、
前記孔中に前記捕捉領域を構成する材料を充填する工程と、
前記充填された領域を残して、前記アルミニウム膜を除去し、前記非捕捉領域を構成する材料からなる膜を表出させる工程と、
を有することを特徴とする磁気センサの製造方法。
【請求項8】
検出領域を構成する部材の表面に標的物質を相対的に捕捉しやすい捕捉領域と、該捕捉領域を囲み、前記標的物質を相対的に捕捉しにくい非捕捉領域とを有し、検出領域内で、検体中に含まれる標的物質に該標的物質よりも大きい標識物質を結合させ、該標識物質を検出することによって、前記標的物質を間接的に検出する磁気センサの製造方法であって、
前記非捕捉領域を構成する材料からなる膜に前記捕捉領域を構成する材料を含む針を近づけ、該針と前記非捕捉領域を構成する材料からなる膜との間に電圧を印加し、前記捕捉領域を構成する材料からなるドットを前記非捕捉領域を構成する材料からなる膜上に形成することを特徴とする磁気センサの製造方法。
【請求項9】
検出領域を構成する部材の表面に標的物質を相対的に捕捉しやすい捕捉領域と、該捕捉領域を囲み、前記標的物質を相対的に捕捉しにくい非捕捉領域とを有し、検出領域内で、検体中に含まれる標的物質に該標的物質よりも大きい標識物質を結合させ、該標識物質を検出することによって、前記標的物質を間接的に検出する磁気センサの製造方法であって、
前記非捕捉領域を構成する材料からなる膜上に配されたレジスト膜に孔を形成する工程と、前記レジスト膜上に前記捕捉領域を構成する材料を形成し、前記孔中に前記捕捉領域を構成する材料を充填する工程と、前記レジスト膜を除去して前記非捕捉領域を構成する材料からなる膜を表出させる工程と、を有することを特徴とする磁気センサの製造方法。
【請求項10】
検出領域を構成する部材の表面に標的物質を相対的に捕捉しやすい捕捉領域と、該捕捉領域を囲み、前記標的物質を相対的に捕捉しにくい非捕捉領域とを有し、検出領域内で、検体中に含まれる標的物質に該標的物質よりも大きい標識物質を結合させ、該標識物質を検出することによって、前記標的物質を間接的に検出する磁気センサの製造方法であって、
前記非捕捉領域を構成する材料からなる膜を形成する工程と、前記膜の表面に窪みを形成する工程と、前記窪みに前記捕捉領域を構成する材料を形成する工程と、を有することを特徴とする磁気センサの製造方法。
【請求項11】
前記捕捉領域を構成する材料は金を含有し、前記非捕捉領域を構成する材料は、シリコンを含有する請求項7乃至請求項10のいずれか1項に記載の磁気センサの製造方法。
【請求項12】
前記シリコンを含有する材料は、窒化シリコンまたは酸化シリコンである請求項11に記載の磁気センサの製造方法。
【請求項13】
標的物質検出用の磁気センサと、該磁気センサにおいて得られる信号に基づいて前記センサへの標的物質の捕捉を検出する検出手段と、を有する標的物質の検出装置において、
前記センサが請求項1乃至6のいずれかに記載のセンサであり、前記検出手段が、前記センサにおいて得られる信号を、基準値と比較して、前記標的物質の捕捉を検出する手段を有することを特徴とする検出装置。
【請求項14】
請求項1乃至6のいずれかに記載のセンサと、前記標識物質と、を備えることを特徴とする標的物質検出用のキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−278966(P2007−278966A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−108498(P2006−108498)
【出願日】平成18年4月11日(2006.4.11)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】