説明

磁気センサデバイス

【課題】故障を高い精度で検出する磁気センサデバイスを提供する。
【解決手段】第1の磁気センサIC1は、主に、磁界の変化に応じてシフト側リニア出力信号10aを出力するメイン磁気センサ10と、磁界の変化に応じて、シフト側リニア出力信号10aと略同一の出力となるシフト側リニア出力信号12aを出力するサブ磁気センサ12と、シフト側リニア出力信号10a、12aの差分を算出するオペアンプ20と、オペアンプ20により算出された差分ΔVの絶対値がしきい値Voffより大きくなるとき、メイン磁気センサ10及びサブ磁気センサ12の少なくとも一方が故障したと判定する故障判定部25と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気センサデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の技術として、円筒状の磁石が固定された移動体と、磁石の周面に対向配置され、移動体の傾倒量を検知する第1及び第2のGMR(Giant Magneto Resistive effect)センサと、第1及び第2のGMRセンサのいずれの検知面とも平行でない位置に検知面が配置された第3のGMRセンサと、第1〜第3のGMRセンサによる検知値に基づいて少なくとも第1〜第3のGMRセンサのいずれか1つの故障を判定する判定回路とを備えた移動体位置検出装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この第1〜第3のGMRセンサは、端子を基板に形成された穴に差し込んで半田付けされることにより、基板の表面から垂直方向に立てて設置される。
【0004】
また、判定回路は、第1及び第2のGMRセンサによる検知値を加算する加算回路と、加算回路により加算された値に所定の係数を乗算した値と第3のGMRセンサによる検知値とを比較する比較回路とから構成される。
【0005】
移動体位置検出装置は、上記の乗算した値と第3のGMRセンサによる検知値が一致しない場合に少なくとも第1〜第3のGMRセンサのいずれか1つが故障していると判定する。
【0006】
しかし、従来の移動体位置検出装置は、第1〜第3のGMRセンサの正確な配置が難しく、検知値にばらつきが生じて上記の所定の係数を正確に設定することが困難となり、故障の検出精度に問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−115645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、故障を高い精度で検出する磁気センサデバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、磁界の変化に応じて第1のリニア出力信号を出力する第1の磁気センサと、前記磁界の変化に応じて、前記第1のリニア出力信号と略同一の出力となる第2のリニア出力信号を出力する第2の磁気センサと、前記第1及び第2のリニア出力信号の差分を算出する算出部と、前記算出部により算出された前記差分の絶対値がしきい値より大きくなるとき、前記第1及び第2の磁気センサの少なくとも一方が故障したと判定する故障判定部と、を備えた磁気センサデバイスを提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、故障を高い精度で検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1(a)は、本発明の実施の形態に係る第1の磁気センサICのシフト信号とダイアグ信号に関する回路図であり、(b)は、第1の磁気センサICの入出力を示す概略図、(c)は、第2の磁気センサICの入出力を示す概略図、(d)は、シフト装置のシフトパターンを示す概略図である。
【図2】図2(a)は、本発明の実施の形態に係るメイン磁気センサとサブ磁気センサの出力電圧(V)と操作位置の関係を示すグラフであり、(b)は、シフト装置に関するブロック図である。
【図3】図3は、本発明の実施の形態に係る第1の磁気センサICの動作に関するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[実施の形態]
(第1の磁気センサICの構成)
図1(a)は、本発明の実施の形態に係る第1の磁気センサIC(Integrated Circuit)のシフト信号とダイアグ信号に関する回路図であり、(b)は、第1の磁気センサICの入出力を示す概略図、(c)は、第2の磁気センサICの入出力を示す概略図、(d)は、シフト装置のシフトパターンを示す概略図である。
【0013】
本実施の形態における磁気センサデバイスとしての第1の磁気センサIC1は、例えば、車両の後述するシフト装置に搭載されるものとする。第1の磁気センサIC1は、例えば、シフト装置の後述するシフトレバーに設けられた磁石50の移動による磁界の変化に基づいてシフトレバーの操作位置を検出するものである。なお、第1の磁気センサIC1が搭載される装置は、シフト装置に限定されず、操作部の操作位置に応じた出力信号を出力する装置に広く利用されるものである。
【0014】
また、シフト装置は、第1の磁気センサIC1と同じ構成及び機能を有する第2の磁気センサIC3をさらに備えた2重系のデバイスである。
【0015】
この第1及び第2の磁気センサIC1、3は、例えば、シフト装置内の後述する基板52(図2(b)参照。)を挟んで対向して配置される。第1及び第2の磁気センサIC1、3は、例えば、磁石50の移動による磁界の変化によって、第1の磁気センサIC1のセレクト信号1aと第2の磁気センサIC3のセレクト信号3a、第1の磁気センサIC1のシフト信号1bと第2の磁気センサIC3のシフト信号3bが同じ出力となるように構成されている。なお、第1及び第2の磁気センサIC1、3の配置は、上記に限定されず、各出力が同じ出力となる配置であれば、例えば、2つの磁気センサを重ねて配置しても良い。
【0016】
第2の磁気センサIC3は、第1の磁気センサIC1と同じ構成であるので、以下では、第1の磁気センサIC1の具体的な構成について説明する。
【0017】
第1の磁気センサIC1は、主に、磁界の変化に応じて第1のリニア出力信号としてのシフト側リニア出力信号10aを出力する第1の磁気センサとしてのメイン磁気センサ10と、磁界の変化に応じて、シフト側リニア出力信号10aと略同一の出力となる第2のリニア出力信号としてのシフト側リニア出力信号12aを出力する第2の磁気センサとしてのサブ磁気センサ12と、シフト側リニア出力信号10a、12aの差分を算出する算出部としてのオペアンプ20と、オペアンプ20により算出された差分ΔVの絶対値がしきい値Voffより大きくなるとき、メイン磁気センサ10及びサブ磁気センサ12の少なくとも一方が故障したと判定する故障判定部25と、を備える。
【0018】
第1及び第2の磁気センサIC1、3は、図1(a)〜(c)に示すように、例えば、一方の端子に電圧Vccが印加され、他方の端子が接地されている。また、第1の磁気センサIC1は、メイン磁気センサ10、サブ磁気センサ12、オペアンプ14、20及び故障判定部25等が、一体となってパッケージされている。第2の磁気センサIC3は、第1の磁気センサIC1と同様にパッケージされている。
【0019】
図2(a)は、本発明の実施の形態に係るメイン磁気センサとサブ磁気センサの出力電圧(V)と操作位置の関係を示すグラフであり、(b)は、シフト装置に関するブロック図である。図2(a)は、メイン磁気センサ10及びサブ磁気センサ12が正常であるときの出力電圧を示している。
【0020】
第1の磁気センサIC1のメイン磁気センサ10は、例えば、周知の複数のMR(magnetic resistance)素子から構成され、図1(d)に示すシフトパターン4のセレクト方向及びシフト方向の操作位置を検出するように構成されている。ここでセレクト方向とは、例えば、図1(d)に示すように、操作位置41(M)と操作位置44(N)を結んだ方向である。また、シフト方向とは、例えば、セレクト方向と直交する方向である。なお、メイン磁気センサ10及びサブ磁気センサ12は、ホール素子やGMR素子等の磁気センサから構成されても良い。
【0021】
メイン磁気センサ10は、例えば、磁石50が操作位置40〜42のいずれかにあるとき、セレクト信号1aとしてLoを出力し、磁石50が操作位置43〜45のいずれかにあるときは、セレクト信号1aとしてHiを出力するデジタル出力を行うように構成されている。
【0022】
メイン磁気センサ10は、例えば、図1(d)に示すシフトパターン4のシフト方向に応じたシフト側リニア出力信号10aを出力するように構成されている。このシフト側リニア出力信号10aは、例えば、図2(a)に示すように、操作位置40(+)〜操作位置42(−)間、及び操作位置43(R)〜操作位置45(D)間がリニア出力となる。
【0023】
シフト側リニア出力信号10aは、例えば、図1(a)に示すように、オペアンプ14の非反転入力端子に入力する。シフト側リニア出力信号10aは、例えば、抵抗16と抵抗18の中点電位であり、オペアンプ14の反転入力端子側に印加された電圧Vrefにより調整され、シフト信号1bとして第1の磁気センサIC1から出力される。
【0024】
サブ磁気センサ12は、例えば、メイン磁気センサ10のシフト方向の操作位置を検出するMR素子と同じ構成を有し、図2(a)に示すように、シフト側リニア出力信号10aと同じ出力となるシフト側リニア出力信号12aを出力するように構成されている。サブ磁気センサ12は、例えば、メイン磁気センサ10と同一のリニア出力となるように、メイン磁気センサ10に近接して配置される。
【0025】
このシフト側リニア出力信号12aは、例えば、オペアンプ20の反転入力端子に入力し、非反転入力端子に入力したメイン磁気センサ10のシフト側リニア出力信号10aとの差分ΔVがオペアンプ20により算出され、算出された差分ΔVが差分信号20aとして出力される。この差分ΔVは、図2(a)に示すように、メイン磁気センサ10及びサブ磁気センサ12に異常がないときは、ゼロとなる。
【0026】
第1の磁気センサIC1の故障判定部25は、第1のコンパレータとしてのコンパレータ26と、第2のコンパレータとしてのコンパレータ28と、OR回路30と、を含んで構成される。
【0027】
差分信号20aは、コンパレータ26の非反転入力端子に入力し、抵抗22と抵抗24の中点電位であり、コンパレータ26の反転入力端子に印加されたしきい値Voffと比較される。コンパレータ26は、比較結果を第1の出力信号26aとしてOR回路30に出力する。
【0028】
コンパレータ26は、例えば、差分ΔVがしきい値Voffよりも小さいときは、Loを出力し、大きいときは、Hiを出力するように構成されている。
【0029】
また、差分信号20aは、コンパレータ28の反転入力端子から入力し、抵抗22と抵抗24の中点電位であり、コンパレータ28の非反転入力端子に印加されたしきい値Voffと比較される。コンパレータ28は、比較結果を第2の出力信号28aとしてOR回路30に出力する。
【0030】
コンパレータ28は、例えば、差分ΔVがしきい値Voffよりも小さいときは、Loを出力し、大きいときは、Hiを出力するように構成されている。
【0031】
OR回路30は、一端にVccが印加され、他端が接地された論理和回路である。このOR回路30は、入力する第1及び第2の出力信号26a、28aが(Lo、Lo)の組み合わせ以外のとき、メイン磁気センサ10又はサブ磁気センサ12の故障を示すダイアグ信号1cを出力するように構成されている。
【0032】
シフト装置5は、図2(b)に示すように、車両ECU(Electronic Control Unit)6に接続される。
【0033】
車両ECU6は、例えば、シフト装置5の第1及び第2の磁気センサIC1、3から出力されるセレクト信号1a、3a及びシフト信号1b、3bに基づいてシフトレバー51の操作位置を判定し、判定した操作位置に基づくシフト信号60を駆動部7に出力する。
【0034】
また、車両ECU6は、例えば、第1の磁気センサIC1からのダイアグ信号1c又は、第2の磁気センサIC3からのダイアグ信号3cが入力するとき、シフト装置5の故障を車両の乗員に報知するため、報知部8に報知信号61を出力する。なお、車両ECU6は、例えば、ダイアグ信号1cとダイアグ信号3cのうちいずれかの信号が入力したとき、ダイアグ信号を出力した磁気センサICとは異なる磁気センサICの出力に基づいて駆動部7を切り替えるように構成されても良い。
【0035】
駆動部7は、例えば、車両ECU6から出力されたシフト信号60に基づいてエンジンの回転を伝える複数のギアのギア比を変更する。
【0036】
報知部8は、例えば、ランプの点灯や音によって、乗員にシフト装置5の故障を報知する。なお、故障の報知の方法は、上記に限定されない。
【0037】
(動作)
図3は、本発明の実施の形態に係る第1の磁気センサICの動作に関するフローチャートである。以下に、第1の磁気センサICの動作について説明する。なお、シフト装置5のシフトレバー51は、停車中は操作位置44(N)に操作されているものとする。
【0038】
車両の電気系統をオン状態にすると、車両の電源から電圧Vccが第1及び第2の磁気センサIC1、3に印加される。第1の磁気センサIC1のメイン磁気センサ10は、オペアンプ14の非反転入力端子とオペアンプ20の非反転入力端子にシフト側リニア出力信号10aを出力する。また、サブ磁気センサ12は、オペアンプ20の反転入力端子にシフト側リニア出力信号12aを出力する。また、第1及び第2の磁気センサIC1、3は、車両ECU6にセレクト信号1a、3aを出力する。
【0039】
オペアンプ20は、シフト側リニア出力信号10aとサブ磁気センサ12のシフト側リニア出力信号12aとの差分ΔVを算出する(S1)。
【0040】
算出された差分ΔVは、差分信号20aとしてコンパレータ26の非反転入力端子とコンパレータ28の反転入力端子に入力する。
【0041】
次に、コンパレータ26は、差分信号20aとしきい値Voffとを比較して第1の出力信号26aを出力し、コンパレータ28は、差分信号20aとしきい値Voffとを比較して第2の出力信号28aを出力する。
【0042】
OR回路30は、入力した第1及び第2の出力信号26a、28aに基づいて―Voff<ΔV<Voffが成り立つか否かを判定する。OR回路30は、―Voff<ΔV<Voffが成り立つとき(S2;Yes)、メイン磁気センサ10及びサブ磁気センサ12が正常であると判定する(S3)。正常であるとき、第1の磁気センサIC1は、車両の電源がオフされるまで、ステップ1から動作を続ける。
【0043】
ここで、OR回路30は、入力した第1及び第2の出力信号26a、28aに基づいて―Voff<ΔV<Voffが成り立たないとき(S2;No)、メイン磁気センサ10及びサブ磁気センサ12のいずれかに故障が発生したと判定してダイアグ信号1cを出力する(S4)。
【0044】
車両ECU6は、出力されたダイアグ信号1cに基づいて報知信号61を報知部8に出力し、報知部8は、報知信号61に基づいてシフト装置5の故障を報知する。
【0045】
(効果)
本実施の形態に係る第1の磁気センサIC1によれば、ECU等で構成される判定部を必要としないで、故障の有無を判定することができる。また、第1の磁気センサIC1によれば、ECU等で構成される判定部を必要としないので、低コストで故障の自己検出を行うことができる。
【0046】
本実施の形態に係る第1の磁気センサIC1によれば、メイン磁気センサ10とサブ磁気センサ12が一体となってパッケージされているので、配置ずれによるメイン磁気センサ10とサブ磁気センサ12の出力誤差を抑えることができ、故障の検出精度が高い。
【0047】
本実施の形態に係る第1の磁気センサIC1によれば、同一の出力となるシフト側リニア出力信号10aとシフト側リニア出力信号12aの差分ΔVに基づいて故障の有無を判定するので、ある操作位置を示す出力信号を出力し続けるような故障が発生したときでも、正確に故障を検出することができる。
【0048】
なお、本発明は、上記した実施の形態に限定されず、本発明の技術思想を逸脱あるいは変更しない範囲内で種々の変形及び組み合わせが可能である。
【0049】
例えば、上記の実施の形態において、算出部及び故障判定部は、電子回路によって構成されたが、これに限定されず、一部又は全体をソフトウエアによって置き換え、コンピュータによって実行する構成としても良い。
【符号の説明】
【0050】
1…第1の磁気センサIC、1a…セレクト信号、1b…シフト信号、1c…ダイアグ信号、3…第2の磁気センサIC、3a…セレクト信号、3b…シフト信号、3c…ダイアグ信号、4…シフトパターン、5…シフト装置、6…車両ECU、7…駆動部、8…報知部、10…メイン磁気センサ、10a…シフト側リニア出力信号、12…サブ磁気センサ、12a…シフト側リニア出力信号、14…オペアンプ、16、18…抵抗、20…オペアンプ、20a…差分信号、22、24…抵抗、25…故障判定部、26…コンパレータ、26a…第1の出力信号、28…コンパレータ、28a…第2の出力信号、30…OR回路、40〜45…操作位置、50…磁石、51…シフトレバー、52…基板、60…シフト信号、61…報知信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁界の変化に応じて第1のリニア出力信号を出力する第1の磁気センサと、
前記磁界の変化に応じて、前記第1のリニア出力信号と略同一の出力となる第2のリニア出力信号を出力する第2の磁気センサと、
前記第1及び第2のリニア出力信号の差分を算出する算出部と、
前記算出部により算出された前記差分の絶対値がしきい値より大きくなるとき、前記第1及び第2の磁気センサの少なくとも一方が故障したと判定する故障判定部と、
を備えた磁気センサデバイス。
【請求項2】
前記算出部は、オペアンプを含んで構成され、
前記故障判定部は、前記差分を非反転入力端子、前記しきい値を反転入力端子に入力して比較し、第1の出力信号を出力する第1のコンパレータと、前記差分を反転入力端子、前記しきい値を非反転入力端子に入力して比較し、第2の出力信号を出力する第2のコンパレータと、前記第1及び第2の出力信号に基づいて前記第1及び第2の磁気センサの少なくとも一方の故障を示すダイアグ信号を出力するOR回路を含んで構成される請求項1に記載の磁気センサデバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−73062(P2012−73062A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−216807(P2010−216807)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】