説明

磁気テープ、磁気テープの製造方法及び製造装置

【課題】 高密度記録可能な直線性の高い磁気テープを得る。
【解決手段】 走行する広幅シートを外周面で支持するサクションローラと、広幅シートを所定の幅にカットするスリッタと、スリッタによりカットされた磁気テープを巻き取る巻取りローラを備えた磁気テープ製造装置により、磁気テープを製造する方法において、サクションローラに設けられた多数の吸引孔が、円筒状のサクションローラの同一円周上に設けられた一方の吸引孔群と、吸引孔群に隣接しており同一円周上に設けられた他方の吸引孔群とを交互に配置することにより形成され、一方の吸引孔群の開口領域の円周方向の両端における円筒状のサクションローラの中心軸に平行な2本の延長線上において、他方の吸引孔群の開口領域がともに存在していることを特徴とする磁気テープの製造方法を提供することにより上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気テープ、磁気テープの製造方法及び製造装置に関するものであり、特に、テープのエッジ部分の直線性の高い磁気テープ及びこの磁気テープの製造方法、磁気テープの製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
データ信号や映像信号等の情報信号を記録する磁気テープとして、ポリエステルやポリエチレンテレフタレート(PET)等からなる非磁性支持体上に酸化物磁性粉末や合金磁性粉末等の粉末磁性材料を有機高分子材料からなる結合剤中に分散せしめた磁性塗料を塗布、乾燥することにより磁性層を形成した、いわゆる塗布型の磁気テープが広く使用されている。
【0003】
このような磁性層を形成したウエブ状の磁気テープ原反の搬送には、円筒状のガイドローラと、磁気テープの原反を円筒状の外周表面に吸着させるサクションローラ(サクションドラム)が組み合わされ、磁気テープ原反をS字状に巻き付けて送り出すようになっている。
【0004】
サクションローラは、例えば、所定の厚みを有する円筒形ローラ部に、吸着孔を多数設けた構造からなり、磁気テープ原反との密着性を高めるために従来のゴム製のガイドローラに代わって導入されたもので、円筒形ローラ部の内部より吸引作用を(バキューム)を行い、円筒形ローラ部の外周面に沿って移動走行する磁気テープ原反が、円筒形ローラ部に設けられた吸着孔を介し、円筒形ローラ部に密着するする構成となっている。従って、この磁気テープ原反は、円筒形ローラ部の表面に密着されるため、磁気テープ原反と磁気テープローラ部の間で起こるすべりを大幅に軽減することができる。
【0005】
この後、磁気テープは幅広のウエブ状の磁気テープ原反をスリッタに連続的に通過させて裁断することによって製造される。製造された磁気テープには、幅方向の縁部の位置を基準として、微狭のサーボトラックが書き込まれる。従って、縁部の直線性が低いとサーボトラックの直線性も低くなり、書き込んだサーボトラック信号を検出することが困難となる。
【0006】
特に昨今では、高密度記録の要求を満たすため、トラック数を増加させる傾向にあるが、直線性の悪い磁気テープは、トラッキングエラーを誘発するため、正確な記録再生を行うことに支障をきたす。
【0007】
特許文献1では、メッシュ或いは多孔質材料で形成されたサクション吸引部における吸引状態と非サクション吸引部における非吸引状態とを繰り返すことにより、磁気テープ原反の有する張力をカットするサクションローラが開示されている。
【特許文献1】特開2003−233904号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示された発明では、サクション吸引部からウエブ状の磁気テープ原反が剥離する際、ウエブ状の磁気テープに周期的な張力変動を与えることとなる。裁断部においてウエブ状の磁気テープ原反の張力変動が生じると、磁気テープのうねりを生成し、これにより磁気テープの直線性が悪くなることとなる。
【0009】
一般に、裁断部におけるウエブ状の磁気テープ原反の張力変動は、搬送ローラやサクションローラによる外乱がウエブ状の磁気テープ原反を介し、裁断部まで伝播していくことが考えられる。
【0010】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、基準ローラに使用されているサクションローラの吸引部からウエブ状の磁気テープ原反を剥離する際の張力変動を抑制し、裁断された後の磁気テープのうねりを減少させるものであり、直線性を高めた磁気テープ、この磁気テープの製造方法及び製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の発明は、走行する広幅シートを外周面で支持するサクションローラと、送り出された前記広幅シートを所定の幅にカットするスリッタと、前記スリッタによりカットされた磁気テープを巻き取る巻取りローラと、を備えた磁気テープ製造装置により製造される磁気テープにおいて、前記サクションローラに設けられた吸引孔が、円筒状のサクションローラの同一円周上に設けられた一方の吸引孔群と、隣接する吸引孔であって同一円周上に設けられた他方の吸引孔群とを交互に配置することにより形成されており、一方の吸引孔群の吸引孔の開口領域の両端の円筒状のサクションローラの中心軸に平行な2本の延長線上において、他方の吸引孔群の吸引孔の開口領域がともに存在している磁気テープの製造装置により製造されたことを特徴とする磁気テープである。
【0012】
これにより、高密度記録が可能な磁気テープを得ることができる。
【0013】
尚、ここで磁気テープのエッジにおいてフーリエ変換を行って得られる周期及び周波数とは、磁気テープのエッジの長手方向をX軸、それに垂直な方向をY軸とした場合に計測により得られたエッジ領域の外形データについて、X軸を時間軸に置き換えて、フーリエ変換を行うことにより得られる周期及び周波数を意味する。
【0014】
請求項2に記載の発明は、前記磁気テープの両エッジの中心位置座標について、フーリエ変換を行って得られる50〔mm〕以下の周期における周波数に対する振幅の積分値が、2.8×10−3〔mm〕以下であることを特徴とする請求項1に記載の磁気テープである。
【0015】
請求項3に記載の発明は、走行する広幅シートを外周面で支持するサクションローラと、送り出された前記広幅シートを所定の幅にカットするスリッタと、前記スリッタによりカットされた磁気テープを巻き取る巻取りローラと、を備えた磁気テープ製造装置により磁気テープを製造する磁気テープの製造方法において、前記サクションローラに設けられた吸引孔が、円筒状のサクションローラの同一円周上に設けられた一方の吸引孔群と、隣接する吸引孔であって同一円周上に設けられた他方の吸引孔群とを交互に配置することにより形成されており、一方の吸引孔群の吸引孔の開口領域の両端の円筒状のサクションローラの中心軸に平行な2本の延長線上において、他方の吸引孔群の吸引孔の開口領域がともに存在していることを特徴とする磁気テープの製造方法である。
【0016】
請求項4に記載の発明は、前記磁気テープの両エッジの中心位置座標について、フーリエ変換を行って得られる50〔mm〕以下の周期における周波数に対する振幅の積分値が、2.8×10−3〔mm〕以下であることを特徴とする請求項3に記載の磁気テープの製造方法である。
【0017】
請求項5に記載の発明は、走行する広幅シートを外周面で支持するサクションローラと、送り出された前記広幅シートを所定の幅にカットするスリッタと、前記スリッタによりカットされた磁気テープを巻き取る巻取りローラと、を備えた磁気テープ製造装置において、前記サクションローラに設けられた吸引孔が、円筒状のサクションローラの同一円周上に設けられた一方の吸引孔群と、隣接する吸引孔であって同一円周上に設けられた他方の吸引孔群とを交互に配置することにより形成されており、一方の吸引孔群の吸引孔の開口領域の両端の円筒状のサクションローラの中心軸に平行な2本の延長線上において、他方の吸引孔群の吸引孔の開口領域がともに存在していることを特徴とする磁気テープの製造装置である。
【0018】
請求項6に記載の発明は、前記磁気テープの両エッジの中心位置座標について、フーリエ変換を行って得られる50〔mm〕以下の周期における周波数に対する振幅の積分値が、2.8×10−3〔mm〕以下であることを特徴とする請求項5に記載の磁気テープの製造装置である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、磁気テープのうねりを減少させることができ、磁気テープの直線性を高めることができるため、高密度記録に適した磁気テープを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明に係る磁気テープ、磁気テープの製造方法及び製造装置ついて説明する。
【0021】
〔磁気テープ製造方法及び製造装置〕
以下、本発明に係る磁気テープの製造方法及び磁気テープの製造装置の実施の形態について、図1に基づき説明する。図1は本実施の形態に係る磁気テープの製造装置10の全体構成を模式的に示す側面図である。図1に示すように製造装置10は、巻き戻しリール12、サクションローラ16、スリッタ22、巻取ハブ28、及び複数のガイドローラ18、20、24で構成されている。
【0022】
巻き戻しリール12には、ロール状に巻回された広幅シートである磁気テープ原反(幅広のテープに相当)14のバルクが装着される。磁気テープ原反14は、通常、非磁性支持体上に強磁性微粒子を含む磁性層を塗布法や真空蒸着法等により形成し、その磁性層に配向処理、乾燥処理、表面処理等を行うことによって製造される。
【0023】
巻き戻しリール12に装着された磁気テープ原反14は、サクションローラ16を駆動することによって巻き戻しリール12から連続的に引き出される。サクションローラ16は、磁気テープ原反14を走行させるためのローラであり、例えば、サクションドラムが使用される。サクションドラムは、磁気テープ原反14を表面に吸着しながら回転するドラムであり、ドラムの表面に溝を形成し、磁気テープ14の保持力を増加させるとよい。なお、このサクションローラ16の回転速度が基準となって、後述する巻取ハブ28やスリッタ22の回転刃30、32の回転速度が制御される。
【0024】
サクションローラ16によって巻き戻しリール12から送り出された磁気テープ原反14は、サクションローラ16の前段に設置された複数のガイドローラ18と、サクションローラ16の後段に設置された複数のガイドローラ20にガイドされながらスリッタ22に送られる。
【0025】
スリッタ22は、幅広の磁気テープ原反14を幅狭の複数本の磁気テープ(幅狭のテープに相当)26に裁断する装置である。スリッタ22は、円筒状の回転下刃30と、薄い円盤状の回転上刃32とを備える。回転下刃30は、下側シャフトにスペーサを介して嵌合固定され、回転上刃32は、下側シャフトと平行な上側シャフトにスペーサを介して嵌合固定される。
【0026】
上側シャフトと下側シャフトは、回転速度を自由に可変可能なモータに接続されており、サクションローラ16の回転速度に応じて、回転上刃32と回転下刃30の回転速度が調節される。
【0027】
上記の如く構成されたスリッタ22に磁気テープ原反14が導入されると、磁気テープ原反14は、受け刃である回転下刃30を巻きかけられながら、回転上刃32によって剪断力が付与され、裁断される。これにより、磁気テープ原反14は、100〜500本に裁断され、規定の幅寸法(例えば12.65mm、25.4mm、3.81mm等)の磁気テープ26が形成される。
【0028】
裁断後の磁気テープ26は、ガイドローラ24に巻きかけられた後、巻取りローラである巻取ハブ28に巻き取られる。ガイドローラ24と巻取ハブ28は、高さ位置を変えて三段に配設されており、各磁気テープ26は隣接する磁気テープ26と異なる高さ位置のガイドローラ24を経て、異なる高さ位置の巻取ハブ28に巻回される。
【0029】
ガイドローラ24と巻取ハブ28の間には、テンション検出装置25が設けられ、このテンション検出装置25によって、ガイドローラ24と巻取ハブ28との間の磁気テープ26のテンションが測定される。テンション検出装置25は制御装置27に接続されており、制御装置27は、巻取ハブ28のモータ(上段の巻取ハブに対応するモータのみ図示)29に接続され、モータ29の回転数を制御し、磁気テープ26の巻取速度、すなわち磁気テープ26のテンションを調節する。
【0030】
〔サクションローラ〕
本発明に係る磁気テープの製造装置に用いられるサクションローラ16について説明する。
【0031】
図2は、本発明に係る磁気テープの製造装置に用いられるサクションローラ16の斜視図である。サクションローラ16の表面には、吸引孔37が設けられている。吸引は、不図示の吸引ポンプにより矢印の方向に吸引されることにより行われる。
【0032】
図3に、本発明の実施の形態に係るサクションローラ16の表面の拡大図を示す。本発明に係る磁気テープ製造装置においては、吸引孔37は、円周に沿って2種類の吸引孔群37P、37Sが設けられており、各々の吸引孔群は、サクションローラ16の中心軸に平行な方向で隣接して配列されている。このため外形的には吸引孔37が千鳥状に形成されている。
【0033】
具体的には、一方の吸引孔群37Pの吸引孔37pは、同一形状の吸引孔37pが、サクションローラ16の円周に沿って配列されており、吸引孔37pの円周方向の幅がAであり、円周方向のピッチがBで配列されている。
【0034】
他方の吸引孔群37Sの吸引孔37sも同様に、同一形状の吸引孔37sが、サクションローラ16の円周に沿って配列されており、吸引孔37sの円周方向の幅が(D−C)であり、円周方向のピッチはBで配列されている。即ち、吸引孔群37Sは、吸引孔37pの円周方向の一方の端(図面上、上端)を基準として、吸引孔37sの円周方向の一方の端(図面上、上端)の位置がC、他方の端(図面上、下端)の位置がDとなるよう構成されている。
【0035】
また、サクションローラ16上の吸引孔37pと37sとの関係は、A−C>0、D−B>0となるよう構成されている。即ち、吸引孔37pの円周方向の一方の端(図面上、上端)におけるサクションローラ16の中心軸に平行な線L1上には、隣接する吸引孔群37Sの吸引孔37sである開口領域が存在している。また、吸引孔37pの円周方向の他方の端(図面上、下端)におけるサクションローラ16の中心軸に平行な線L2上には、隣接する吸引孔群37Sの吸引孔37sである開口領域が存在している。
【0036】
即ち、サクションローラ16に密着しているウエブ状の磁気テープ原反14は、サクションローラ16とウエブ状の磁気テープ原反14の接点におけるサクションローラ16の中心軸に平行な方向では、吸引孔群37Pの吸引孔37pか、吸引孔群37Sの吸引孔37sのどちらか一方により必ず吸引がされている。
【実施例】
【0037】
本発明の実施例と従来技術に基づく比較例とを参照しつつ説明する。尚、使用した磁気テープ原反の膜厚は、7〔μm〕である。
【0038】
〔実施例〕
本発明に係る実施例では、サクションローラ16の表面に形成された吸引孔は、図4(a)に示すように、A=1.5〔mm〕、B=2.0〔mm〕、C=1.0〔mm〕、D=2.5〔mm〕である。よって、吸引孔群37P、37Sはともに、円周方向の開口の幅が1.5〔mm〕の吸引孔37p、37sが、2.0〔mm〕のピッチで設けられている。即ち、吸引孔37pと吸引孔37sは、サクションローラ16の中心軸に平行な方向において、円周方向の両端で0.5〔mm〕重複しているサクションローラを用いた。
【0039】
〔比較例〕
比較例では、サクションローラ16の表面に形成された吸引孔は、図4(b)に示すように、A=1.5〔mm〕、B=52.0〔mm〕、C=0〔mm〕、D=1.5〔mm〕である。よって、吸引孔群37P、37Sはともに、円周方向の開口の幅が1.5〔mm〕の吸引孔37p、37sが、52.0〔mm〕のピッチで設けられている。吸引孔37pと吸引孔37sは、サクションローラ16の中心軸に平行な方向において並んだ構成となっているサクションローラ16を用いた。
【0040】
〔磁気テープの測定〕
<磁気テープ測定装置>
図5に、本発明に係る磁気テープ測定装置のブロック図、図6(a)に、本発明に係る磁気テープ測定装置の上面図を示す。図6(b)は、図6(a)の部分拡大図である。
【0041】
本発明に係る磁気テープ測定装置70は、制御部72、測定制御部74、測定位置制御機構76、画像測定手段80、演算処理部82から構成されている。
【0042】
制御部72は、磁気テープ測定装置70の全体を制御する機能を有している。
【0043】
測定制御部74は、測定位置制御機構76及び画像測定手段80の制御を行う。
【0044】
測定位置制御機構76は、測定制御部74からの制御信号に基づき、画像測定手段80の位置制御並びに画像測定手段80の座標位置の出力を行う。具体的には、画像測定手段80をX軸方向である磁気テープ51の長手方向、Y軸方向である磁気テープ51の幅方向、磁気テープ51に対し上下方向となるZ軸方向について移動させ位置制御を行う。X方向である磁気テープ51の長手方向の位置制御は、X軸方向の位置制御が可能なアクチュエーター等からなるX軸制御手段64により行い、Y軸方向である磁気テープ51の幅方向の位置制御には、Y軸方向の位置制御が可能なアクチュエーター等からなるY軸制御手段63により行い、Z方向である磁気テープ51の上下方向の位置制御は、Z軸方向の位置制御が可能なアクチュエーター等からなるZ軸制御手段62により行う。
【0045】
画像測定手段80は、CCDカメラ等からなり、入射した光を電気信号に変換する。変換された電気信号は測定制御部74に伝達され、測定制御部74は、この情報をもとに測定位置制御機構76の制御を行う。
【0046】
演算処理部82は、測定位置制御機構76により得られた位置座標の情報をもとに、高速フーリエ変換等の演算処理を行う。図では測定位置制御機構76により得られた位置座標の情報は、測定制御部74を介し、演算処理部82に伝達しているが、測定制御部74を介することなく、直接演算処理部82に伝達してもよい。
【0047】
図7に、磁気テープ測定装置の磁気テープ51の長手方向の断面図を示し、図8に、磁気テープ測定装置に含まれる磁気テープ固定部材の磁気テープ51の幅方向の断面図を示す。図7(a)、図8(a)に基づき、磁気テープ固定部材50について説明する。
【0048】
磁気テープ固定部材50は、透明なアクリルからなる上部基板52と、ガラスからなる下部基板53、上部基板52の両側に設けられたゴム等の弾性体54、弾性体54を介し、上部基板52と下部基板53とを接続する側面板55により構成されており、磁気テープ固定部材50の下部基板53には、減圧孔56が設けられている。磁気テープ51の進入部分と排出部分には、それぞれダンパー57が設けられており、磁気テープ固定部材50内は、密閉された状態に近い状態となっている。尚、図7(a)に示すように、磁気テープ固定部材50の磁気テープ51の存在している面の反対面には、蛍光灯やハロゲンランプ等からなる照明手段65が設けられている。また、上記照明手段65等の制御は、磁気テープ測定装置70内の制御部72により行われる。
【0049】
<磁気テープ測定方法>
図9に、磁気テープの測定方法の流れを示す。
【0050】
最初にステップ102(S102)において、Nカウンターの値を1に設定する。
【0051】
次に、ステップ104(S104)において、測定対象となる磁気テープ51の長手方向に張力を付与する。具体的には、図6(a)、図7(a)に示すように、磁気テープ固定部材50内、即ち、上部基板52と下部基板53の間に磁気テープ51を通した後、磁気テープ51の長手方向に張力を付与する。具体的には、磁気テープ51を巻き取るための不図示の複数のローラ等により磁気テープ51の長手方向に張力を付与する。本実施の形態では、磁気テープ51の長手方向に0.3〔N〕の張力を付与した。
【0052】
次に、ステップ106(S106)において、磁気テープ51の測定対象となる領域を板状の透明体で挟み込む。具体的には、磁気テープ固定部材50に磁気テープ51を通した状態で、図8(a)に示すように、下部基板53に設けられた減圧孔56より、磁気テープ固定部材50内の空気を不図示の真空ポンプにより矢印の方向に排気し、減圧することにより、磁気テープ51を上部基板52と下部基板53により挟み込む。磁気テープ固定部材50内は、図7(a)に示すように、密閉に近い状態となっており、上部基板52の両側には弾性体54が設けられているため、減圧孔56より排気し磁気テープ固定部材50内を減圧することにより、図7(b)、図8(b)に示すように、上部基板52と下部基板53によって、容易に磁気テープ51を挟み込むことができる。この状態では、磁気テープ51は、上部基板52、及び、下部基板53と密着した状態となっているため、上部基板52と下部基板53の間で、磁気テープ51は移動することはない。尚、本実施の形態では、挟み込み工程は、ステップ104とステップ106からなる。
【0053】
次に、ステップ108(S108)において、照明手段65により、磁気テープ51の下部基板53側より光を照射する。尚、本実施の形態では、照明工程は、ステップ108に相当する。
【0054】
次に、ステップ110(S110)において、画像測定手段80であるCCDカメラの設置を行う。具体的には、測定対象となる磁気テープ51に対し、照明手段65の設けられている面と反対の面に画像測定手段80であるCCDカメラを設置する。画像測定手段80であるCCDカメラは、先に説明したように、位置制御が可能なアクチュエーターにより、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向に移動させることが可能である。尚、本実施の形態では、設置工程は、ステップ110に相当する。
【0055】
次に、ステップ112(S112)において、画像測定手段80であるCCDカメラの視野内に磁気テープ51の奥エッジ51OEの画像が映し出されるような位置に、画像測定手段80であるCCDカメラをY軸制御手段63により移動させる。尚、本発明では、磁気テープ51のエッジであって、−Y方向側に位置しているエッジを奥エッジ51OE、それに対し、+Y方向側に位置しているエッジを手前エッジ51TEと称する。
【0056】
次に、ステップ114(S114)において、磁気テープ51におけるピントが合うように画像測定手段80であるCCDカメラをZ軸方向に移動し調整を行う。具体的には、画像測定手段80であるCCDカメラをZ軸制御手段62により移動し、画像測定手段80であるCCDカメラの視野内のピントの調整を行う。
【0057】
次に、ステップ116(S116)において、画像測定手段80であるCCDカメラのY軸方向の位置の微調整を行う。図6(b)は、画像測定手段80であるCCDカメラの視野内61に磁気テープ51が写し出された際の様子を透過して示した図である。図6(b)に基づき具体的に説明すると、磁気テープ51のエッジ部分である奥エッジ51OEが、画像測定手段80であるCCDカメラの視野内61の中心部に位置するよう画像測定手段80であるCCDカメラをY軸制御手段63により移動させ位置の調整を行う。具体的には、CCDカメラの視野内61より得られた画像の全体光量の値に基づき、エッジ部分がCCDカメラの視野内61の中心部にくるよう位置合わせを行う。言い換えれば、磁気テープ51は、背面より照明手段65により光を照射しているが、磁気テープ51の存在している部分は、光が遮られるため、殆ど光は透過することはない。従って、CCDカメラの視野内61に入射する光は、照明手段65により照射された光のうち磁気テープ51の存在していない領域より入射する光である。このため、CCDカメラの視野内61の中心部に磁気テープ51のエッジ部分がくるように位置あわせした後は、この時の光量の値を基準として磁気テープ51のエッジの位置あわせを行うことにより、常に、CCDカメラの視野内61の中心部に磁気テープ51のエッジがくるように位置合わせを行うことが可能となる。
【0058】
次に、ステップ118(S118)において、画像測定手段80であるCCDカメラの現在の位置情報を出力する。具体的には、磁気テープ51の長手方向であるX軸の座標(X座標)、それに対し直角な方向であるY軸(略磁気テープ51の幅方向)の座標(Y座標)の位置情報を画像測定手段80であるCCDカメラより出力し、測定制御部74に伝達する。尚、X座標、Y座標ともに出力するのは、最初の一回(N=1)の場合のみで、それ以降(N>1)の場合は、Y座標の情報のみ画像測定手段80であるCCDカメラより出力する。即ち、N=1の場合は、X座標:α、奥エッジ51OEであるY座標:βの値が出力され伝達されるが、それ以降のN>1の場合では、奥エッジ51OEであるY座標:βの値のみ伝達される。
【0059】
次に、ステップ120(S120)において、画像測定手段80であるCCDカメラの視野内61に磁気テープ51の手前エッジ51TEの画像が写し出される位置に、画像測定手段80であるCCDカメラを移動させる。尚、この画像測定手段80であるCCDカメラの移動については、Y軸制御手段63のみを用いる。
【0060】
次に、ステップ122(S122)において、磁気テープ51におけるピントが合うように画像測定手段80であるCCDカメラをZ軸方向に移動させ調整を行う。具体的には、画像測定手段80であるCCDカメラをZ軸制御手段62により移動させ、画像測定手段80であるCCDカメラの視野内のピントの調整を行う。
【0061】
次に、ステップ124(S124)において、画像測定手段80であるCCDカメラのY軸方向の位置の微調整を行う。具体的には、磁気テープ51のエッジ部分である手前エッジ51TEが、画像測定手段80であるCCDカメラの視野内61の中心部に位置するよう画像測定手段80であるCCDカメラをY軸制御手段63により移動させ位置の調整を行う。具体的な、位置合せの方法は先に述べた方法と同様である。
【0062】
次に、ステップ126(S126)において、画像測定手段80であるCCDカメラの現在の位置情報を出力する。具体的には、磁気テープ51の手前エッジ51TEのY座標の位置情報のみを画像測定手段80であるCCDカメラより出力し、測定制御部74に伝達する。即ち、手前エッジ51TEであるY座標:γの値のみ伝達される。尚、本実施の形態では、磁気テープ測定工程は、ステップ112からステップ126までの工程に相当する。
【0063】
次に、ステップ128(S128)において、画像測定手段80であるCCDカメラをX軸の+方向にα〔mm〕移動させる。尚、本実施の形態では、画像測定手段移動工程は、ステップ128に相当する。
【0064】
次に、ステップ130(S130)において、Nカウンターの値に1を加える。
【0065】
次に、ステップ132(S132)において、Nカウンターの値が、1024を超えているか否かの判断を行う。Nカウンターの値が、1024を超える値である場合、測定はこれで終了する。一方、Nカウンターの値が、1024を超える値でない場合、ステップ112に移行する。これにより、X方向の位置をα〔mm〕移動させなから、磁気テープ51の奥エッジ51OEと手前エッジ51TEのY方向の位置座標を順次測定することにより、各々1024個の位置座標を得ることができる。尚、本実施の形態では、1024個の位置情報を得る場合について説明したが、Nカウンターの値を変えることにより、任意の回数測定を行うことが可能である。測定回数は、後にフーリエ変換を行う場合を考慮すれば、2のべき乗の値が好ましい。
【0066】
測定の順序に関しては、本実施の形態以外の方法であっても良く、本実施の形態とは逆に、手前エッジ51TEを測定した後、奥エッジ51OEの測定を行う測定方法や、奥エッジ51OEの測定→手前エッジ51TEの測定→X方向にα〔mm〕移動→手前エッジ51TEの測定→奥エッジ51OEの測定→X方向にα〔mm〕移動といった順序で測定を行っても良い。
【0067】
以上の流れにより得られた情報は、測定制御部74により処理が行われる。具体的には、最初に測定した磁気テープ51のX座標:α、N番目に測定した奥エッジ51OEのY座標:β、手前エッジ51TEのY座標:γとした場合、
N番目の奥エッジ51OEの座標(X、Y)=(α+(N−1)α、β
N番目の手前エッジ51TEの座標(X、Y)=(α+(N−1)α、γ
となる。また、測定により得られた情報により、測定制御部74では、磁気テープ51の奥エッジ51OEと手前エッジ51TEの中心点である中点の算出と、磁気テープ51の幅が算出される。
N番目の中点の座標(X、Y)=(α+(N−1)α、(β+γ)/2)
N番目の位置の幅=|β−γ
以上得られたデータ及び算出されたデータは、測定制御部74内では、図10に示す構造のファイルとして記憶される。
【0068】
<直線性の評価方法>
次に、直線性の評価方法について説明する。
【0069】
図10に示す構造のファイルについて、X座標を時間と置換し、奥エッジ51OEのY座標、手前エッジ51TEのY座標、中点、幅の値の高速フーリエ変換(FFT)を図5に示す演算処理部82により行う。これにより、奥エッジ51OEのY座標、手前エッジ51TEのY座標、中点、幅の周波数λと振幅(スペクトラム)S(f)を算出することができる。ここで、振幅(スペクトラム)S(f)は、算出した周波数f〔Hz〕の関数であり、周期λ(=1/f)〔mm〕に対する奥エッジ51OEのY座標、手前エッジ51TEのY座標、中点、幅の振幅(スペクトラム)S(f)の関数ともなる。
【0070】
この振幅(スペクトラム)S(f)の関数について、所定の周期区間の最初の波長をλ、最後の波長をλとした場合、下記の式より所定の周期区間の振幅の積分値(スペクトラム)Pを得ることができる。
【0071】
P=∫S(f)df (1/λ≦f≦1/λ
所定の周期区間の振幅の積分値(スペクトラム)Pは、所定の周期区間(λからλ)における積分値となり、この所定の周期区間の振幅の積分値(スペクトラム)Pに基づき、磁気テープ51の直線性を評価することができる。
【0072】
これにより、磁気テープ巻取り装置等の走行装置の外乱が含まれない磁気テープのエッジの形状を測定し評価することができ、磁気テープのもつ周期性を正確に得ることができる。
【0073】
〔測定結果〕
本発明に係る実施の形態により、実施例により製造した磁気テープ、比較例により製造した磁気テープについて測定を行った。具体的には、照明手段65として蛍光灯を用い、ステップ128におけるX軸の移動量α=1〔mm〕とし、取得した奥エッジ51OEのY座標、手前エッジ51TEのY座標の値を各々1024個得た。
【0074】
この測定結果に基づき、X座標を時間と置換し、奥エッジ51OEのY座標、手前エッジ51TEのY座標、中点、幅の値の高速フーリエ変換(FFT)を行った結果について、周期が50〔mm〕以下(λ=0〔mm〕、λ=50〔mm〕)の振幅(スペクトラム)の積分値を図11に示す。周期が50〔mm〕以下を対象にしているのは、特にこの値以下での振幅(スペクトラム)の積分値が磁気テープ51の直線性の評価において重要な指標となるからである。
【0075】
この結果、奥エッジ、手前エッジ、中点のすべてにおいて、振幅(スペクトラム)の積分値は、比較例に対し実施例の方が低くなっており、実施例において製造した磁気テープの直線性が高いことがわかる。具体的な指標としては、奥エッジと手前エッジの中心位置座標である中点における直線性を基準とし、この値が、2.8×10−3〔mm〕以下であれば、高密度記録に対応した磁気テープとなることが経験上得られている。比較例では、中点の値、即ち両エッジの平均値が、2.9×10−3〔mm〕であり、2.8×10−3〔mm〕を超える値であるのに対し、実施例では、中点の値は、2.45×10−3〔mm〕であり、2.8×10−3〔mm〕以下であり、高密度記録に対応した磁気テープとなる。
【0076】
以上、本発明に係る磁気テープの形状測定方法及び、磁気テープの形状測定装置について詳細に説明したが、本発明は、以上の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明に係る磁気テープ製造装置の全体構成図
【図2】本発明に係る磁気テープ製造装置におけるサクションローラの斜視図
【図3】本発明に係る磁気テープ製造装置におけるサクションローラ構成部材の表面図
【図4】本発明に係る磁気テープ製造装置におけるサクションローラの表面図
【図5】磁気テープの形状測定装置のブロック図
【図6】磁気テープの形状測定装置の上面図
【図7】磁気テープの形状測定装置の側面図
【図8】磁気テープの形状測定装置の磁気テープ固定部材の断面図
【図9】磁気テープの形状測定方法のフローチャート
【図10】磁気テープの形状測定方法により測定した磁気テープの測定情報のデータ構造を示す概要図
【図11】本発明の実施例において演算処理により得られたスペクトラムの積分値のグラフ
【符号の説明】
【0078】
16…サクションローラ、37…吸収孔、37p…吸引孔、37s…吸引孔、A…吸引孔37pの円周方向の幅、B…吸引孔37pの円周方向ピッチ、C…吸引孔37pの円周方向の一端を基準とした吸引孔37sの円周方向の一方の端の位置、D…吸引孔37pの円周方向の一端を基準とした吸引孔37sの円周方向の他方の端の位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行する広幅シートを外周面で支持するサクションローラと、
送り出された前記広幅シートを所定の幅にカットするスリッタと、
前記スリッタによりカットされた磁気テープを巻き取る巻取りローラと、
を備えた磁気テープ製造装置により製造される磁気テープにおいて、
前記サクションローラに設けられた吸引孔が、円筒状のサクションローラの同一円周上に設けられた一方の吸引孔群と、隣接する吸引孔であって同一円周上に設けられた他方の吸引孔群とを交互に配置することにより形成されており、一方の吸引孔群の吸引孔の開口領域の両端の円筒状のサクションローラの中心軸に平行な2本の延長線上において、他方の吸引孔群の吸引孔の開口領域がともに存在している磁気テープの製造装置により製造されたことを特徴とする磁気テープ。
【請求項2】
前記磁気テープの両エッジの中心位置座標について、フーリエ変換を行って得られる50〔mm〕以下の周期における周波数に対する振幅の積分値が、2.8×10−3〔mm〕以下であることを特徴とする請求項1に記載の磁気テープ。
【請求項3】
走行する広幅シートを外周面で支持するサクションローラと、
送り出された前記広幅シートを所定の幅にカットするスリッタと、
前記スリッタによりカットされた磁気テープを巻き取る巻取りローラと、
を備えた磁気テープ製造装置により磁気テープを製造する磁気テープの製造方法において、
前記サクションローラに設けられた吸引孔が、円筒状のサクションローラの同一円周上に設けられた一方の吸引孔群と、隣接する吸引孔であって同一円周上に設けられた他方の吸引孔群とを交互に配置することにより形成されており、一方の吸引孔群の吸引孔の開口領域の両端の円筒状のサクションローラの中心軸に平行な2本の延長線上において、他方の吸引孔群の吸引孔の開口領域がともに存在していることを特徴とする磁気テープの製造方法。
【請求項4】
前記磁気テープの両エッジの中心位置座標について、フーリエ変換を行って得られる50〔mm〕以下の周期における周波数に対する振幅の積分値が、2.8×10−3〔mm〕以下であることを特徴とする請求項3に記載の磁気テープの製造方法。
【請求項5】
走行する広幅シートを外周面で支持するサクションローラと、
送り出された前記広幅シートを所定の幅にカットするスリッタと、
前記スリッタによりカットされた磁気テープを巻き取る巻取りローラと、
を備えた磁気テープ製造装置において、
前記サクションローラに設けられた吸引孔が、円筒状のサクションローラの同一円周上に設けられた一方の吸引孔群と、隣接する吸引孔であって同一円周上に設けられた他方の吸引孔群とを交互に配置することにより形成されており、一方の吸引孔群の吸引孔の開口領域の両端の円筒状のサクションローラの中心軸に平行な2本の延長線上において、他方の吸引孔群の吸引孔の開口領域がともに存在していることを特徴とする磁気テープの製造装置。
【請求項6】
前記磁気テープの両エッジの中心位置座標について、フーリエ変換を行って得られる50〔mm〕以下の周期における周波数に対する振幅の積分値が、2.8×10−3〔mm〕以下であることを特徴とする請求項5に記載の磁気テープの製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−265532(P2007−265532A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−89291(P2006−89291)
【出願日】平成18年3月28日(2006.3.28)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】