説明

磁気ディスクの信号イレーズ装置

【課題】
DC消去のイレーズヘッドを交換することなく、逆極性でも磁気ディスクの書込信号をDC消去することができ、それによる磁化によりDTM等に対しても“0”あるいは“1”のサーボ情報を選択的に設定することが容易にできる磁気ディスクの信号イレーズ装置を提供することにある。
【解決手段】
この発明は、第3および第6のヨークブロックを第1および第2の磁気ヘッドブロックの外側からそれぞれ第2および第5のヨークブロックあるいは第1および第4のヨークブロックのいずれかに装着することで、装着されたヨークブロックの端面に着磁される磁極を分散させて磁気ディスクを磁化を阻止し、第3および第6のヨークブロックが装着されていないヨークブロックの端面は強い磁極のままとして磁気ディスクを磁化する。これにより、イレーズヘッドを交換することなく、相互に反対方向の磁化磁極が選択できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、磁気ディスクの信号イレーズ装置に関し、詳しくは、永久磁石により磁気ディスクを直流磁界で消去(DC消去)する場合において、そのイレーズヘッドを交換することなく、磁気ディスクに対して簡単に極性を反転させて逆極性で磁気ディスクの書込信号をDC消去することができ、あるいはそれによる磁気ディスク面の磁化によりDTM(ディスクリートトラックメディア)等に“0”あるいは“1”のサーボ情報を選択的に設定することが容易にできるような磁気ディスクの信号イレーズ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気ディスク製造後の磁気ディスクの電気的特性検査では、磁気ディスク上のトラックにテストデータを書込み、そのデータを読出して磁気ディスクの良否を評価している。検査用に書込まれたテストデータは、直流磁界を加えることで消去され、あるいは交流磁界を加えることで消去される。
直流磁界による消去の場合には、磁気ディスクに対する磁化方向が一様になり、“0”あるいは“1”のデータ書込によるデータの消去となるが、交流磁界の場合には“0”あるいは“1”のデータ書込みではなく、残留磁化成分をなくす完全な消去になる。
直流磁界による消去としては、永久磁石を装備したイレーズヘッドを磁気ディスク表面に沿って進退させるDC消去の磁気ディスクの書込信号に対するDC消去装置が公知である(特許文献1)。
これとは別にディスク面を上下方向から永久磁石で挟んで、異極を対向させてディスク面に垂直に磁束を発生させ、磁気ディスクを回転させた状態でディスク面を一様に特定の方向に磁化するするDC消去も行われている。このDC消去は、垂直磁気記憶装置のディスクとなるDTMあるいはトラック方向においてさらに微細に磁区分割したBPM(ビットパターンドメディア)等において、サーボ領域として形成された磁化領域を一様に磁化してサーボ情報を設定するのに利用されている。
なお、この種のサーボ情報を設定するDTM、BPMあるいはその他の凹凸パターンの記録層を有する磁気記録媒体(以下DTM等という)にあっては、サーボ情報に対応する形で磁性体がディスクのサーボ領域にあらかじめ埋め込まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−29106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
DTM等においてディスク面を上下方向から永久磁石で挟んでディスク面に垂直な磁束を発生して一様に磁化するDC消去によるサーボ領域の設定は、表面側をS極に、裏面側をN極に設定する場合と、その逆に表面側をN極に、裏面側をS極にする場合とがある。それにより表面側に“0”、裏面側に“1”のサーボ情報を設定する磁化あるいはその逆に設定する磁化とがある。なお、表面側をS極に裏面側をN極に設定する場合には、磁石のN極を磁気ディスクの表面側に配置し、磁石のS極を磁気ディスクの裏面側に配置してDC消去をすることになる。
このような異なる磁化をして磁気ディスクをDC消去する場合には、逆方向に磁束を発生させるためにそれぞれにイレーズヘッドを交換する必要がある。しかし、イレーズヘッドを交換した場合には磁極(マグネット)と磁気ディスクとの距離を再設定しなければならず、磁気ディスクの書込信号のイレーズ処理あるいはそれによるサーボ情報設定処理に時間がかかる問題がある。
この発明の目的は、このような従来技術の問題点を解決するものであって、DC消去のイレーズヘッドを交換することなく、逆極性でも磁気ディスクの書込信号をDC消去することができ、それによる磁化によりDTM等に対しても“0”あるいは“1”のサーボ情報を選択的に設定することが容易にできる磁気ディスクの信号イレーズ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような目的を達成するための第1の発明の磁気ディスクの信号イレーズ装置の特徴は、磁気ディスクが挿入される所定の間隙を介して対峙する第1および第2の磁気ヘッドブロックを有するイレーズヘッドと、磁気ディスクに対してイレーズヘッドを進退駆動する進退駆動機構とを有し、第1の磁気ヘッドブロックが第1の永久磁石ブロックとこれの前後に設けられた第1および第2のヨークブロックと第1および第2のヨークブロックのいずれかに外側から着脱可能に装着された第3のヨークブロックとからなり、第2の磁気ヘッドブロックが第2の永久磁石ブロックとこれの前後に設けられた第4および第5のヨークブロックと第4および第5のヨークブロックのいずれかに外側から着脱可能に装着された第6のヨークブロックとからなる。
さらに、所定の間隙に面する第1のヨークブロックの端面とこれに対峙する第4のヨークブロックの端面に第1および第2の永久磁石ブロックによりそれぞれ異極の磁極が着磁され、これらの磁極により磁気ディスクを磁化するときには第3のヨークブロックが第2のヨークブロックに装着されかつ第6のヨークブロックが第5のヨークブロックに装着されて所定の間隙に面する第2および第5のヨークブロックの端面にそれぞれ着磁される前記とは逆の異極の磁極が第3および第6のヨークブロックにそれぞれに分散されて着磁され、第2のヨークブロックの端面と第5のヨークブロックの端面にそれぞれ着磁された逆の異極の磁極により磁気ディスクを磁化するときには第3のヨークブロックが第1のヨークブロックに装着されかつ第6のヨークブロックが第4のヨークブロックに装着されて第1および第4のヨークブロックの端面にそれぞれ着磁される前記異極の磁極が第3および第6のヨークブロックにそれぞれ分散されて着磁されるものである。
【発明の効果】
【0006】
このように、この発明は、第3および第6のヨークブロックを第1および第2の磁気ヘッドブロックの外側からそれぞれ第2および第5のヨークブロックあるいは第1および第4のヨークブロックのいずれかに装着することで、装着されたヨークブロックの端面に着磁される磁極を分散させ、これによる磁気ディスクを磁化を阻止する。一方、第3および第6のヨークブロックが装着されていないヨークブロックの端面は強い磁極のままとし、これにより磁気ディスクを磁化する。これにより、イレーズヘッドを交換することなく、相互に反対方向の磁化磁極が選択でき、磁気ディスクに対する磁化方向を変更することが可能になる。
したがって、磁気ディスクに対して簡単に極性を反転させてDC消去の磁化が可能となり、DTM等にあってはこのDC消去の磁化により“0”あるいは“1”のサーボ情報を選択的に設定することが容易にできる。
その結果、磁化状態を変更する場合にあってもイレーズヘッドが1つで済み、それぞれイレーズヘッドを交換する必要がなく、磁極(マグネット)と磁気ディスクとの距離を再設定することが不要となる。これにより、磁気ディスクの書込信号のイレーズ処理あるいはそれによるサーボ情報設定処理に対するスループットを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、この発明の適用した一実施例の磁気ディスクの信号イレーズ装置の斜視図である。
【図2】図2は、N極−S極の磁束によるDC消去の磁気ディスクイレーズ処理の説明図である。
【図3】図3は、逆にS極−N極の磁束による図2に対して極性を反転させてDC消去の磁気ディスクイレーズ処理の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1において、10は、磁気ディスクの信号イレーズ装置であって、21は、DCイレーズされる磁気ディスク(DTM)であり、スピンドル22に装着されて回転する。
1は、イレーズ装置10に設けられたDC消去のためのイレーズヘッドであり、1a,1bは、DTM21の表裏面に対応してそれぞれ設けられたイレーズヘッド1の磁気ヘッドブロックである。
イレーズヘッド1は、進退駆動機構2によりDTM21の半径方向に進退する。磁気ヘッドブロック1a,1bは、DTM21が挿入される所定の間隙Sを有し、この間隙Sを介して対峙している。
進退駆動機構2は、SUS(ステンレススチール)、アルミニュウム等の非磁性金属の支持アーム2a,2bと、移動台座3、ガイドレール4、ベースフレーム5、ベルト駆動機構6、そしてモータ8等を有している。
【0009】
支持アーム2a,2bは、角柱ロッドで形成され、板状のヨークブロック14,17を除く磁気ヘッドブロック1a,1bの本体が角柱ロッドの水平の延びた先端側の端面に固定されている。これにより磁気ヘッドブロック1a,1bの本体は、それぞれに支持アーム2a,2bに支持されている。これにより磁気ヘッドブロック1a,1bは、間隙Sをもって上下に配置される。
それぞれの支持アーム2a,2bは、その根本側が移動台座3に固定支持されている。移動台座3には、中央に支持突起3aが起立して設けられ、支持アーム2aの根本は、この支持突起3aの前面に固定され、支持アーム2bの根本は、この支持突起3aの下側において移動台座3の前面に固定されている。移動台座3は、ガイドレール4上を移動してDTM21に対して進退する。DTM21は、これが前進したときに間隙Sに挿入されてそこに配置される。
【0010】
前進した磁気ヘッドブロック1aは、図2に示すように、DTM21の表面側に対峙して配置され、そのN極とS極とが表面になった永久磁石ブロック11と、この永久磁石ブロック11を挟んでこれの両側に結合された断面正方形の角柱状のヨークブロック(継鉄ブロック)12,13とをその本体として有している。
ヨークブロック12,13は、DTM21の表面に対して垂直方向に配列されて永久磁石ブロック11に接着剤を介して固定されて断面矩形ブロックとして永久磁石ブロック11に一体化されている。この角ブロックが磁気ヘッドブロック1a本体を形成し、この本体にはさらにヨークブロック13側にこれの外側から板状のヨークブロック14の表面がその側面に接して着脱可能に装着されている。
図1に示すように、ヨークブロック14の表面には孔14a,14bが設けられていて、板状のヨークブロック14は、図面右側の支持アーム2aの側面に設けられたねじ孔2c(図3参照)にこの孔14a,14bを介してボルトねじ19a,19bによりヨークブロック13の側面にその表面を介して装着されている。
なお、図面では見えていないが、永久磁石ブロック11を挟んで反対側のヨークブロック12にもヨークブロック14を装着する同様なねじ孔がヨークブロック12の側面に設けられている。
【0011】
磁気ヘッドブロック1bは、図2に示すように、DTM21の裏面側に対峙して配置され、永久磁石ブロック11とは逆方向にS極とN極の順になるように表面に平行になった永久磁石ブロック15と、この永久磁石ブロック15を挟んでこれの両側に結合された断面正方形の角柱状のヨークブロック16,17とをその本体として有している。
ヨークブロック16,17は、DTM21の表面に対して垂直方向に配列されて永久磁石ブロック15に接着剤を介して固定されて断面矩形ブロックとして一体化される。この角ブロックが磁気ヘッドブロック1b本体を形成し、この本体にはさらにヨークブロック17側にこれの外側から板状のヨークブロック18の表面がその側面に接して着脱可能に装着されている。
なお、図1〜図3では、永久磁石ブロック11,15は、それぞれヨークブロック12,13あるいはヨークブロック16,17と同様な大きさの断面正方形の角柱ブロックとなっているが、永久磁石ブロック11,15は、必ずしも各ヨークブロックと同じ形状のものである必要はない。
ヨークブロック18の側面にはヨークブロック14と同様に孔18a,18b(図1左側の図参照)が設けられている。図1,図2に示すように、ヨークブロック18は、図面右側の支持アーム2aの側面に設けられたねじ孔2d(図3参照)にこの孔18a,18bを介してボルトねじ19c,19dによりその表面がヨークブロック17の側面に装着されている。
なお、図面では見えていないが、永久磁石ブロック15を挟んで反対側のヨークブロック16にもヨークブロック18を装着する同様なねじ孔が設けられている。
【0012】
磁気ヘッドブロック1a,1bにおいては、永久磁石ブロック11と永久磁石ブロック15とが間隙Sを挟んで対峙し、さらにヨークブロック12,13とヨークブロック16,17とが間隙Sを挟んで相互に対峙し、また、ヨークブロック14とヨークブロック18とが間隙Sを挟んでそれぞれに対峙している。
永久磁石ブロック11のN極,S極は、ヨークブロック12,13の対峙するそれぞれ端面12a,13aにそれぞれN極,S極を着磁させる。同様に永久磁石ブロック15のS極,N極は、ヨークブロック16,17の対峙するそれぞれ端面16a,17aにそれぞれS極,N極を着磁させる。
その結果、それぞれ対峙するヨークブロック12,16の端面12a,16aとヨークブロックの端面17a,13aには相互に異極が磁化されて、かつそれぞれの異極は相互に反対極性になっている。
【0013】
ここで、角柱状のヨークブロック12,13のDTM21の表面に対峙する下側の端面12a,13aの面積(間隙Sに面する端面の面積)と角柱状のヨークブロック16,17のDTM21の裏面に対峙する上側の端面16a,17aの面積(間隙Sに面する端面の面積)とは実質的に等しく正方形をなしている。これに対して板状のヨークブロック14のDTM21の表面に対峙する下側の端面14a(ヨークブロック14の下側面/図2,図3参照)の面積(間隙Sに面する側端面の面積)と板状のヨークブロック18のDTM21の裏面に対峙する上側の端面18a(ヨークブロック18の上側面/図2,図3参照)の面積(間隙Sに面する側端面の面積)とは実質的に等しく長方形である。ヨークブロック14の端面とヨークブロック18の端面18aは、それぞれDTM21の半径方向に延びて、その面積は、前記の角柱状のヨークブロック12,13,16,17の端面12a,13a,16a,17aの正方形の2倍以上の面積となっている。
これにより、板状のヨークブロック14,18が装着されたヨークブロック13,17側の間隙Sに面する端面の面積は3倍以上に拡大され、間隙Sに面するヨークブロック13,17の端面13a,17aに着磁される磁極の面積がこれらの面積の合計分に分散されて着磁される。
【0014】
なお、永久磁石ブロック11と永久磁石ブロック15との対峙する間隙Sに面する端面の面積(間隙Sに面する側端面の面積)もこの実施例では等しいが、この発明では、間隙Sに面する各ヨークの端面の端面が対峙する関係に配置されればよいので、間隙Sに面する永久磁石ブロック11と永久磁石ブロック15の端面の面積は必ずしも各角柱状のヨークブロックと等しくする必要はない。
図1の左上部にヨークブロック14とヨークブロック18として示すように、板状のヨークブロック14と板状のヨークブロック18とは、図3に示すように、図面左側の角柱状のヨークブロック12,角柱状のヨークブロック16のぞれぞれにも装着することができる。それによりDTM21に対する磁化する磁束の向きを前記とは逆方向に変更することができる。
これは、ヨークブロック16,17の着磁による磁極の分散を解いて、ヨークブロック12,13の着磁による磁極側を分散させることによる。それにより、ヨークブロック16,17の磁極による磁束をDTM21に対する磁化磁束として磁束の方向を反転させる。
【0015】
図1に戻り、ガイドレール4は、ベースフレーム5に起立した支持ブロック5aを介して固定されている。ガイドレール4の両側面にはV溝4a,4b(4b側は図面では陰となって見えていない。)がそれぞれ形成され、移動台座3の底部から下に延びた軸受部材3b,3c(軸受部材3cは支持ブロック5aの陰となり、図面では見えていない。)のローラがV溝4a,4bに係合してこれを介してガイドレール4の両側で移動台座3が支持されている。
ガイドレール4の下側にはベルト駆動機構6が設けられ、そのエンドレスベルト6a(以下ベルト6a)が支持ブロック5aを囲むように配置されいる。ベースフレーム5の下側から水平に前後に突出したブラケット5a,5bに支持された垂直軸でローラ7a,7bが軸支され、これらローラ7a,7bがベルト6aに前後で係合している。
前側のローラ7aの軸5cは、ブラケット5aを貫通して軸5cの下側端部に設けられた笠歯車5dがモータ8の回転軸に設けられた笠歯車8aと噛合している。そこで、モータ8が駆動されることで、前側のローラ7aが駆動ローラとされてベルト6aが回転する。
【0016】
前側のローラ7aの正転,逆転駆動により、ベルト6aを介して結合された移動台座3がDTM21に対して前後に移動する。それによりイレーズヘッド1がDTM21に対して進退する。
なお、ベルト6aと移動台座3との結合は、移動台座3から垂下する結合板によるが、支持ブロック5aの陰となり、これは図面では見えていない。
ベースフレーム5は、両サイドにホトインタラプタ8a,8bが設けられている。なお、ホトインタラプタ8bは、イレーズヘッド1の陰となっているので、左上部に点線で示してある。
これらホトインタラプタ8a,8bの検出によりイレーズヘッド1がDTM21の内周から外周をカバーする範囲でDTM21を半径方向に走査することができる。
支持突起3aの頭部にはホトインタラプタ8a,8bのそれぞれの遮光板となるプレート9が設けられ、プレート9の垂下曲折部9aがホトインタラプタ8aの遮光板となり、垂下曲折部9bがホトインタラプタ8bの遮光板となっている。
【0017】
進退駆動機構2によりイレーズヘッド1が進退駆動されて、DTM21の半径方向に前進したときに、図2に示すように、永久磁石ブロック11により発生する磁束により着磁された間隙Sに面するヨークブロック12の端面12aにはN極が発生し、永久磁石ブロック15により発生する磁束により着磁された間隙Sに面するヨークブロック16の端面16aにはS極が発生する。これら磁極によって間隙Sに磁束MAが発生して間隙S内にあるDTM21の面が表面から裏面に向かってS−Nとして磁化され、表面側にデータ“0”が、裏面側にデータ“1”が書き込まれる。
磁束MAを発生した永久磁石ブロック11のN極からS極へと回帰する回帰磁界は、永久磁石ブロック15を経て分散した磁束MBとなってヨークブロック17の端面17aと板状のヨークブロック18の端面18aとにより拡大され、DTM21を経てヨークブロック13の端面13aと板状のヨークブロック14の端面14aとによる拡大された端面に至り、これらにより分散された後に永久磁石ブロック11のS極へと戻る。
【0018】
このときのヨークブロック14の端面(対峙面)14aとヨークブロック18の端面(対峙面)18aの面積がヨークブロック17とヨークブロック13との端面(対峙面)の面積の2倍か、それ以上あることからここでの発生している磁束MBは、DTM21を磁化する磁束MAに対して1/3か、それ以下に低下させることができる。しかも、この1/3以下の磁束は、磁気ディスクの半径方向に延びる板状のヨークブロック14の端面とヨークブロック18の端面とにより磁気ディスクの半径方向にも分散される。
この分散により磁束MBをDTM21を磁化しない磁力まで落とし、かつ、磁束MA側をDTM21の磁化に十分な強い磁力に設定することができる。
なお、このとき、永久磁石ブロック15のN極から発生する磁束は、磁束MBとなってヨークブロック17,ヨークブロック18からヨークブロック13,14を経て、永久磁石ブロック11を通り、間隙Sの磁束MBとなって永久磁石ブロック15のS極へ回帰する。
【0019】
DC消去としては、DTM21を回転させた状態で、外周の外のホームポジションからDTM21の外周から入り、内周側にイレーズヘッド1を移動して、その後、内周側から外周側へと戻り、イレーズヘッド1をDTM21の外周の外のホームポジションへまで移動して停止させる。
このとき、内周側の到達点でホトインタラプタ8bがイレーズヘッド1の位置を検出し、外周の外のホームポジションでホトインタラプタ8aがイレーズヘッド1の位置を検出する。
【0020】
ここで、図3に示すように、ヨークブロック14をヨークブロック13から取り外してボルトねじ19a,19bによりヨークブロック12に装着し、同様にヨークブロック18をヨークブロック17から取り外してボルトねじ19c,19dによりヨークブロック16に装着する。
このようにすると、永久磁石ブロック15により発生する磁束によりヨークブロック17の間隙Sに面する端面17aがN極が着磁され、永久磁石ブロック11により発生する磁束によりヨークブロック13の間隙Sに面する端面13aがS極に着磁される。これにより、磁束MCが発生して間隙S内にあるDTM21の面が裏面から表面に向かってN−Sと前記とは逆方向の磁束が発生する。これにより、今度は、表面側にデータ“1”が、裏面側にデータ“0”が書き込まれる。
なお、これに対してヨークブロック12,16の対峙する端面12a,16aとヨークブロック14,18の対峙する端面14a,18a側には、分散した磁化により磁束MDが発生している。この分散により磁束MDは、DTM21を磁化しない磁力まで落とされる。
【0021】
ここで、図2の間隙Sにおいてヨークブロック12,16の対峙する端面12a,16aの面積と、図3の間隙Sにおいてヨークブロック17,13の対峙する端面13a,17aの面積とはそれぞれ等しいことから磁束MCは、磁束MAに等しく、単に磁化極性が反転した着磁により発生している。
その結果、同じイレーズヘッド1において、実質的に同じ磁束密度で極性変更が可能になり、それにより表面側に“1”、裏面側に“0”のサーボ情報を設定する場合とその逆に設定する場合とにおいては、単にヨークブロック14,18の装着を変えるだけで容易に対応できる。もちろん、DC消去による磁気ディスクのその他の信号の消去も同様に容易である。
【産業上の利用可能性】
【0022】
以上説明してきたが、実施例では、永久磁石ブロックが両側から2本のヨークブロックにより狭持(サンドイッチ)された形で一体化されているが、この発明は、永久磁石ブロックが2本のヨークブロックによりサンドイッチされた形状に限定されるものではなく、2本のヨークブロックの上部に永久磁石ブロックが配置されても、また、2本のヨークブロックの背面に配置されていてもよい。この発明は、2本のヨークブロックが永久磁石ブロックに対して前後の関係で配置されていればよく、永久磁石ブロックの前後に多くのヨークブロックが設けられていてもよい。
また、実施例では、ヨークブロックは、角柱状のブロックとしているが、この発明は、これを円柱状のブロックとしてもよい。円柱状のブロックの側面に装着される板状のヨークブロックは、円柱状の側面に適合するように円柱状の凹みを設ければ済む。
同様にこの発明では、板状のヨークブロックは、間隙Sに面するヨークブロックの端面に着磁される磁極が磁気ディスクを磁化しない程度に着磁が分散されるものであれば板状のヨークブロックに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0023】
1…イレーズヘッド、1a,1b…磁気ヘッドブロック、
2…進退駆動機構、2a,2b…支持アーム、3…移動台座、
4…ガイドレール、5…ベースフレーム、6…ベルト駆動機構、
6a…エンドレズベルト、8…モータ、8a,8b…ホトインタラプタ、
9…プレート、9a,9b…垂下曲折部、
10…磁気ディスクの信号イレーズ装置、11,15…永久磁石ブロック、
12,13,16,17…角柱状のヨークブロック、
14,18…板状のヨークブロック、19c,19d…ボルトねじ、
21…ディスク(DTM)、22…スピンドル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気ディスクが挿入される所定の間隙を介して対峙する第1および第2の磁気ヘッドブロックを有するイレーズヘッドと、前記磁気ディスクに対して前記イレーズヘッドを進退駆動する進退駆動機構とを有し、
前記第1の磁気ヘッドブロックは、第1の永久磁石ブロックとこれの前後に設けられた第1および第2のヨークブロックと前記第1および第2のヨークブロックのいずれかに外側から着脱可能に装着された第3のヨークブロックとからなり、前記第2の磁気ヘッドブロックは、第2の永久磁石ブロックとこれの前後に設けられた第4および第5のヨークブロックと前記第4および第5のヨークブロックのいずれかに外側から着脱可能に装着された第6のヨークブロックとからなり、
前記所定の間隙に面する前記第1のヨークブロックの端面とこれに対峙する前記第4のヨークブロックの端面に前記第1および第2の永久磁石ブロックによりそれぞれ異極の磁極が着磁され、これらの磁極により前記磁気ディスクを磁化するときには前記第3のヨークブロックが前記第2のヨークブロックに装着されかつ前記第6のヨークブロックが前記第5のヨークブロックに装着されて前記所定の間隙に面する前記第2および第5のヨークブロックの端面にそれぞれ着磁される前記とは逆の異極の磁極が前記第3および第6のヨークブロックにそれぞれに分散されて着磁され、
前記第2のヨークブロックの前記端面と前記第5のヨークブロックの前記端面にそれぞれ着磁された前記逆の異極の磁極により前記磁気ディスクを磁化するときには前記第3のヨークブロックが前記第1のヨークブロックに装着されかつ前記第6のヨークブロックが前記第4のヨークブロックに装着されて前記第1および第4のヨークブロックの前記端面にそれぞれ着磁される前記異極の磁極が前記第3および第6のヨークブロックにそれぞれ分散されて着磁される磁気ディスクの信号イレーズ装置。
【請求項2】
前記第1および第2のヨークブロックは、前記第1の永久磁石ブロックを挟んで設けられ、前記第4および第5のヨークブロックは、前記第2の永久磁石ブロックを挟んで設けられ、前記第1、第2、第4および第5のヨークブロックの前記端面の面積はそれぞれ等しい請求項1記載の磁気ディスクの信号イレーズ装置。
【請求項3】
前記第3および第6のヨークブロックの前記端面の面積はそれぞれ等しく、前記磁気ディスクの半径方向に延びて形成されている請求項2記載の磁気ディスクの信号イレーズ装置。
【請求項4】
前記第3のヨークブロックは、前記第1あるいは前記第2のヨークブロックの前記端面に連続する端面を形成し、この端面により前記第1あるいは前記第2のヨークブロックの前記端面の面積を前記磁気ディスクの半径方向に倍以上に拡大し、前記第6のヨークブロックは、前記第4あるいは前記第5のヨークブロックの前記端面に連続する端面を形成し、この端面により前記第4あるいは前記第5のヨークブロックの前記端面の面積を前記磁気ディスクの半径方向に倍以上に拡大する請求項3記載の磁気ディスクの信号イレーズ装置。
【請求項5】
前記第1、第2、第4および第5のヨークブロックと前記第1および第2の永久磁石ブロックは、それぞれ前記磁気ディスクの表面に対して垂直な方向に延びた角柱状のブロックであり、前記第3および第6のヨークブロックは前記磁気ディスクの半径方向に延びた板状のブロックであり、前記第1、第2、第4および第5のヨークブロックの前記角柱状のブロックの柱の高さが等しく、前記第3および第6のヨークブロックは前記角柱状のブロックの側面に前記板状のブロックの表面が装着され、前記板状のブロックの側面が前記端面となっている請求項4記載の磁気ディスクの信号イレーズ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−187125(P2011−187125A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−51803(P2010−51803)
【出願日】平成22年3月9日(2010.3.9)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】