説明

磁気ディスク用ガラス基板の製造方法及び磁気ディスクの製造方法

【課題】磁気ディスク用ガラス基板の内外径端面部分の加工コストを低減しつつ、磁気ディスク用ガラス基板の端面部分の形状精度を向上させること。
【解決手段】本発明の磁気ディスク用ガラス基板1の製造方法は、研磨テープ31によりガラス基板1の内外径端面部分に対して面取り加工を施す面取り加工工程と、この面取り加工工程に連続して研磨テープ31によりガラス基板1の内外径端面部分に対して内外径端面研磨加工を施す端面研磨加工工程とを具備することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードディスクドライブ(以下、「HDD」という)等の磁気ディスク装置に用いられる磁気ディスク用ガラス基板の製造方法及びその磁気ディスク用ガラス基板を用いた磁気ディスクの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
HDD等の磁気ディスク装置に搭載される磁気記録媒体として磁気ディスクがある。磁気ディスクは、アルミニウム−マグネシウム合金などで構成された金属板上にNiP膜を被着した基板、ガラス基板、セラミックス基板上に磁性層や保護層を積層したりして作製される。従来では、磁気ディスク用の基板としてアルミニウム合金基板が広く用いられていたが、近年の磁気ディスクの小型化、薄板化、高密度記録化に伴って、アルミニウム合金基板に比べて表面の平坦度や薄板での強度に優れたガラス基板が用いられるようになってきている。このような磁気ディスク用ガラス基板においては、アルミニウム合金基板に比べて強度に優れているので、磁気ディスク装置の高速回転化に適している。また、平滑で平坦な表面を得ることができるので、磁気ヘッドの浮上量を低下させてS/N比の向上と高記録密度化に適している。
【0003】
一般に、このような磁気ディスク用ガラス基板は、切り出し工程;形状加工工程;粗面化工程(第1研削工程);精ラッピング工程(第2研削工程);端面研磨工程;主表面研磨工程第1及び第2研磨工程);化学強化工程などの工程を経て製造される。これらの工程において、磁気ディスク用ガラス基板の内外径端面部分の研摩仕上げは、従来、形状加工工程にて面取り加工を専用に行う面取り加工機と、端面研磨工程にて内外径端面の研磨を専用に行う内外径端面研磨機とによって行われている。
【0004】
面取り加工機においては、枚葉方式にて端面形状を転写する形の外接型の砥石工具(例えば、SD#325、#500)等の電着ボンドの砥石であって、ダイヤモンド砥粒を有する電着砥石を用いて形状転写加工にて面取り加工した後、磁気ディスク用ガラス基板を取り外す。そして、内外径端面研磨機において、仕上げ研磨加工として倣い研磨方式による仕上げ加工を行っている。この倣い研磨方式においては、バッチ方式若しくは枚葉方式にて、セリアスラリを研磨材とし、工具として線径0.2mm〜0.3mmのナイロンブラシにより研磨仕上げを行うか、或いは、ウレタンパッドにセリアスラリを用いて内外径端面部分を研磨加工による仕上げ加工を行っている。
【0005】
すなわち、磁気ディスク用ガラス基板の内外径端面部分は、上述したように大別される面取り加工及び内外径端面研磨加工の2つのプロセスによって、所定の形状を有しながら、研削ダメージを除去した高品位な鏡面品位に仕上げられるものとなっている。
【0006】
一方、磁気ディスク用ガラス基板の端面からのパーティクルの発生を抑止し、磁性層や保護層を成膜する際のアーキングを防止するために端面に主表面の周縁に沿ったテクスチャをディスクの周方向に形成する磁気ディスク用ガラス基板の製造方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この磁気ディスク用ガラス基板の製造方法においては、所定速度でサプライロールから送り操作される研磨テープをテイクアップロールで巻き取るように構成したテクスチャ加工装置を備え、主表面となる部分を送り操作される一対の研磨テープの間に挿入し、これらの研磨テープを所定の圧力で磁気ディスク用ガラス基板の両面側の主表面に押接させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−293840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述したような従来の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法においては、内外径端面部分の加工方法として、面取り加工及び内外径端面研磨加工の少なくとも2つの加工プロセスをそれぞれ個別の専用装置で行っていることから、プロセスの工程としては、工程固有の装置、副資材及び磁気ディスク用ガラス基板の移載に伴う手間及び人員が必要となり、これらのための管理、運用コストが必要となっている。
【0009】
また、磁気ディスク用ガラス基板の交換(段取替え)を工程間で必要とすることから、所謂、芯ずれに伴う取代増加を引き起こし、結果的に寸法精度や同芯度など形状精度の悪化を引き起こす要因となってしまう。
【0010】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、磁気ディスク用ガラス基板の内外径端面部分の加工コストを低減しつつ、磁気ディスク用ガラス基板の端面部分の形状精度を向上させることができる磁気ディスク用ガラス基板の製造方法及び磁気ディスクの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法は、研磨テープによりガラス基板の内外径端面部分に対して面取り加工を施す面取り加工工程と、前記面取り加工工程に連続して研磨テープにより前記ガラス基板の内外径端面部分に対して内外径端面研磨加工を施す端面研磨加工工程とを具備することを特徴とする。
【0012】
この方法によれば、研磨テープによりガラス基板の内外径端面部分に対して面取り加工が施された後、連続して研磨テープによりガラス基板の内外径端面部分に対して内外径端面研磨加工が施されることから、従来のように、面取り加工及び内外径端面研磨加工を個別の専用装置で行う必要がなくなる。これにより、工程固有の装置、副資材及び磁気ディスク用ガラス基板の移載に伴う手間及び人員等を削減することができるので、管理、運用コストを低減することが可能となる。また、面取り加工工程及び内外径端面研磨加工工程が連続して行われることから、磁気ディスク用ガラス基板の交換処理等を省略できるので、芯ずれを防止でき、寸法精度や同芯度など形状精度を向上することが可能となる。この結果、磁気ディスク用ガラス基板の内外径端面部分の加工コストを低減しつつ、磁気ディスク用ガラス基板の端面部分の形状精度を向上させることが可能となる。
【0013】
本発明の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法においては、前記面取り加工工程では大粒径の研磨剤を用いた前記研磨テープを用いる一方、前記端面研磨加工工程では小粒径の研磨剤を用いた前記研磨テープを用いることが好ましい。この場合には、加工工程に好適な研磨剤を用いた研磨テープによりガラス基板の内外径端面部分の研磨加工を行うことが可能となる。
【0014】
また、本発明の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法においては、前記端面研磨加工工程において、所定の面取り形状が形成された樹脂製のパッド部材によって前記研磨テープを前記ガラス基板に押圧することが好ましい。この場合には、ガラス基板の内外径端面部分の形状に対応して研磨テープで当該端面部分を研磨することができるので、効果的にガラス基板の内外径端面部分に対して内外径端面研磨加工を施すことが可能となる。
【0015】
さらに、本発明の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法においては、前記端面研磨加工工程において、前記パッド部材により前記研磨テープを前記ガラス基板の中心方向、当該ガラス基板の平行面から上方向及び下方向の3方向に押圧することが好ましい。この場合には、押圧方向を加工対象となる部位に応じて分別することで、常に新しい研磨テープの面を各端部面へ接触させることができるので、適切に各端部面に内外径端面研磨加工を施すことが可能となる。また、ガラス基板の内外径端面部分における端面部(T面部)及び端部傾斜部(C面部)にそれぞれ均一な内外径端面研磨加工を施すことができるので、T面部及びC面部の仕上がり精度にバラつきが発生するのを防止することが可能となる。
【0016】
さらに、本発明の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法においては、前記面取り加工工程及び端面研磨加工工程において、前記ガラス基板に対する加工点に前記研磨テープを順次搬送し、当該加工点で未使用の前記研磨テープを前記ガラス基板に接触させることが好ましい。この場合には、ガラス基板に対する加工点において、常に未使用の研磨テープをガラス基板に接触させることができるので、例えば、回転砥石のように定期的なメンテナンスを必要とすることなく、また、加工レートを安定的に維持した状態で磁気ディスク用ガラス基板の内外径端面に加工を施すことが可能となる。
【0017】
例えば、本発明の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法において、前記研磨テープに用いられる研磨剤は、少なくともダイヤモンド、アルミナ、セリウム、シリカ及び炭化珪素砥粒の1つを含み、その粒径が0.1〜100umに設定される。
【0018】
本発明の磁気ディスクの製造方法は、上述したいずれかの磁気ディスク用ガラス基板の製造方法により製造された磁気ディスク用ガラス基板上に、少なくとも磁性層を形成することを特徴とする。
【0019】
この方法によれば、磁気ディスク用ガラス基板の内外径端面部分の加工コストを低減しつつ、磁気ディスク用ガラス基板の端面部分の形状精度が改善されることから、ガラス基板上に磁性層等を形成して磁気ディスクを製造する際の製造コストを低減しつつ、端部形状に優れた磁気ディスクを製造することが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法及び磁気ディスクの製造方法によれば、研磨テープによりガラス基板の内外径端面部分に対して面取り加工が施された後、連続して研磨テープによりガラス基板の内外径端面部分に対して内外径端面研磨加工が施されることから、従来のように、面取り加工及び内外径端面研磨加工を個別の専用装置で行う必要がなくなる。これにより、工程固有の装置、副資材及び磁気ディスク用ガラス基板の移載に伴う手間及び人員等を削減することができるので、管理、運用コストを低減することが可能となる。また、面取り加工工程及び内外径端面研磨加工工程が連続して行われることから、磁気ディスク用ガラス基板の交換処理等を省略できるので、芯ずれを防止でき、寸法精度や同芯度など形状精度を向上することが可能となる。この結果、磁気ディスク用ガラス基板の内外径端面部分の加工コストを低減しつつ、磁気ディスク用ガラス基板の端面部分の形状精度を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施の形態に係るガラス基板の製造方法を実現可能な内外径端面加工装置の一例を示す模式図である。
【図2】図1に示す内外径端面加工装置のパッドホルダ近傍の構成を拡大した斜視図である。
【図3】図1に示す内外径端面加工装置の動作状態を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。なお、本実施の形態に係る磁気ディスク用ガラス基板(以下、「ガラス基板」という)の製造方法により製造されるガラス基板の材料としては、アルミノシリケートガラス、ソーダライムガラス、ボロシリケートガラスなどを用いることができる。
【0023】
ガラス基板の製造工程については、その概略を述べれば、切り出し工程;形状加工工程;粗面化工程(第1研削工程);精ラッピング工程(第2研削工程);端面研磨工程;主表面研磨工程第1及び第2研磨工程);化学強化工程などの工程を含む。本実施の形態に係るガラス基板の製造方法においては、形状加工工程において、ガラス基板に対して面取り加工のみならず、従来の端面研磨工程で行われていた内外径端面研磨加工を施すことで、内外径端面部分の加工に要する管理、運用コストを低減すると共に、ガラス基板の端面形状の悪化を改善するものである。
【0024】
すなわち、本実施の形態に係るガラス基板の製造方法においては、研磨テープを用いてガラス基板の内外径端面部分に対して面取り加工を施した後、連続して研磨テープによりガラス基板の内外径端面部分に対して内外径端面研磨加工を施すものである。これにより、2つの加工プロセスで面取り加工及び内外径端面研磨加工を行う必要がなくなるので、従来のように、面取り加工及び内外径端面研磨加工用の個別の専用装置を必要としない。これにより、工程固有の装置、副資材及び磁気ディスク用ガラス基板の移載に伴う手間及び人員等を削減することができるので、管理、運用コストを低減することが可能となる。また、面取り加工工程及び内外径端面研磨加工工程が連続して行われることから、ガラス基板の交換処理等を省略できるので、芯ずれを防止でき、寸法精度や同芯度など形状精度を向上することが可能となる。
【0025】
また、本実施の形態に係るガラス基板の製造方法においては、加工工程に好適な研磨剤を用いた研磨テープによりガラス基板の内外径端面部分の研磨加工を行っている。具体的には、ガラス基板の内外径端面部分に対して面取り加工を施す際には、大粒径の研磨剤を用いた研磨テープを用いている。一方、内外径端面部分に対して端面研磨加工を施す際には、小粒径の研磨剤を用いた研磨テープを用いている。
【0026】
さらに、本実施の形態に係るガラス基板の製造方法においては、ガラス基板の内外径端面部分の形状に対応して研磨テープで当該端面部分を研磨するために、所定の面取り形状が形成された樹脂製のパッド部材によって研磨テープをガラス基板に押圧している。具体的には、ガラス基板の端部傾斜部(C面部)と端面部(T面部)に応じた面取り形状が形成されたパッド部材により研磨テープがガラス基板に押圧される。
【0027】
さらに、本実施の形態に係るガラス基板の製造方法においては、常に新しい研磨テープの面をガラス基板の端部面へ接触させるためにパッド部材による研磨テープの押圧方向を加工対象となるガラス基板の部位に応じて分別している。具体的には、パッド部材により研磨テープをガラス基板の中心方向、当該ガラス基板の平行面から上方向及び下方向の3方向に押圧する。
【0028】
さらに、本実施の形態に係るガラス基板の製造方法においては、面取り加工工程及び端面研磨加工工程において、ガラス基板に対する研磨加工点において、常に未使用の研磨テープをガラス基板に接触させるために、ガラス基板に対する研磨加工点に研磨テープを順次搬送し、当該研磨加工点で未使用の研磨テープをガラス基板に接触させている。
【0029】
本実施の形態に係るガラス基板の製造方法は、例えば、以下のようなガラス基板の内外形端面加工を行う内外形端面加工装置により実現される。図1は、本実施の形態に係るガラス基板の製造方法を実現可能な内外径端面加工装置の一例を示す模式図である。図2は、図1に示す内外径端面加工装置のパッドホルダ近傍の構成を拡大した斜視図である。なお、内外径端面加工装置ではガラス基板の内径及び外径をそれぞれ研磨可能な一対のパッドホルダを備えるが、図1及び図2においては、説明の便宜上、内径側の一方のパッドホルダのみを示している。
【0030】
図1に示すように、本実施の形態に係るガラス基板の製造方法を実現可能な内外径端面加工装置100は、ガラス基板1を回転させる回転ユニット2と、ガラス基板1の内外径端面を研磨する研磨ユニット3と、この研磨ユニット3を上下方向及び水平方向に駆動する駆動ユニット4と、研磨ユニット3への後述する研磨テープ31の供給及びこの研磨テープの回収を行うテープ搬送ユニット5とを備えて構成されている。なお、図1においては、単一の研磨ユニット3に対応して駆動ユニット4及びテープ搬送ユニット5を1つずつ備える場合について示しているが、実際には4つの研磨ユニット3に応じて複数の駆動ユニット4及びテープ搬送ユニット5が備えられている。
【0031】
回転ユニット2は、ガラス基板1の下面を真空吸着する吸着ステージ21と、この吸着ステージ21に駆動ベルト22を介して接続されたスピンドルモータ23とを有している。スピンドルモータ23は、駆動ベルト22を介して吸着ステージ21を高速回転可能に構成され、吸着ステージ21に真空吸着されているガラス基板1を高速回転可能に構成されている。
【0032】
研磨ユニット3は、特に図2に示すように、ガラス基板1の内外径端面を研磨する研磨テープ31と、この研磨テープ31をガラス基板1の内外径端面に押圧する複数の研磨パッド32と、これらの研磨パッド32を保持するパッドホルダ33と、このパッドホルダ33に支持され、研磨テープ31を案内する複数のガイドローラ34とを有している。研磨ユニット3においては、後述する駆動ユニット4の駆動状態に応じて所定の研磨パッド32に対応して配置された研磨テープ31を、高速回転するガラス基板1の内外径端面に押圧して面取り加工及び研磨加工を施すことができるように構成されている。
【0033】
ここで、研磨テープ31は、例えば、PET等のフィルム基材に研磨砥粒をポリエステル等のバインダ樹脂で固定したテープで構成される。フィルム基材の膜厚は、例えば、25um〜100umに設定されている。研磨テープ31に用いられる研磨剤は、例えば、ダイヤモンド、アルミナ、セリウム、シリカ及び炭化珪素砥粒であり、その粒径は0.1〜100umに設定されている。特に、研磨テープ31には、面取り加工時に使用される大粒径の研磨剤を有する部分と、内外径端面研磨加工時に使用される小粒径の研磨剤を有する部分とが存在し、双方の加工に応じた所望のタイミングでテープ搬送ユニット5から搬送されるものとなっている。
【0034】
研磨パッド32は、高硬質の樹脂材料で形成され、例えば、高硬質シリコンゴムや高硬質ウレタン等の形状加工が可能な樹脂材料が利用される。また、研磨パッド32は、ガラス基板1の内外径端面における端面部(T面部)の研磨用の研磨パッド32aと、端部傾斜部(C面部)の研磨用の研磨パッド32b、32cとから構成されている。これらの研磨パッド32a〜32cには、研磨対象となるガラス基板1の部位に応じた所定の面取り形状が形成されている。例えば、研磨パッド32aには、ガラス基板1のT面部を研磨可能に面取り形状が形成され、研磨パッド32bには、C面部の上方側部分を研磨可能に面取り形状が形成され、研磨パッド32cには、C面部の下方側部分を研磨可能に面取り形状が形成されている。
【0035】
パッドホルダ33は、例えば、金属材料で形成され、研磨パッド32を着脱可能に保持している。また、パッドホルダ33は、所定位置でガイドローラ34を回転可能に支持している。この場合において、ガイドローラ34は、研磨テープ31が研磨パッド32a〜32cの研磨箇所の近傍を通過するように配置されている。このガイドローラ34は、例えば、樹脂材料で形成され、テープ搬送ユニット5によって搬送される研磨テープ31の搬送状態に応じて回転可能に構成されている。また、ガイドローラ34は、研磨パッド32の交換時にパッドホルダ33から取り外し可能に構成されている。
【0036】
駆動ユニット4は、図1に示すように、研磨ユニット3を上下方向に駆動する上下駆動装置41と、研磨ユニット3を水平方向に駆動する水平駆動装置42とを有している。上下駆動装置41は、例えば、図1に示す研磨ユニット3でガラス基板1の内径端面におけるT面部を研磨する場合に研磨ユニット3を図1に示す下方側に駆動する。一方、水平駆動装置42は、図1に示す研磨ユニット3でガラス基板1の内径端面におけるT面部を研磨する場合に研磨ユニット3を図1に示す右方側に駆動する。
【0037】
なお、上下駆動装置41及び水平駆動部42は、それぞれ研磨ユニット3に連結された軸を上下方向及び水平方向駆動方向に駆動制御可能な駆動モータと、その軸を上下方向及び水平方向に押圧制御可能なシリンダとを有している。これらの上下駆動部41及び水平駆動部42においては、ガラス基板1に対する面取り加工時と、内外径端面研磨加工時との間で駆動制御を変更する。すなわち、面取り加工時においては、駆動モータで軸の移動量のみが制御されるのに対し、内外径端面研磨加工時においては、研磨ユニット3を所定位置に移動した状態からシリンダで軸を押圧する制御が行われる。
【0038】
テープ搬送ユニット5は、未使用の研磨テープ31が巻き付けられ、この研磨テープ31を研磨ユニット3に供給するテープ供給ローラ51と、研磨ユニット3でガラス基板1の加工に使用された研磨テープ31を回収するテープ回収ローラ52とを有している。テープ搬送ユニット5は、研磨ユニット3によるガラス基板1の内外径端面部分の加工の際、順次研磨テープ31を搬送する。特に、テープ搬送ユニット5は、ガラス基板1に対する面取り加工時に大粒径の研磨剤を有する研磨テープ31を搬送し、内外径端面研磨加工時に小粒径の研磨剤を有する研磨テープ31を搬送する。
【0039】
このような内外径端面加工装置100によりガラス基板1の内外径端面部分の加工を行う場合には、回転ユニット2でガラス基板1を高速回転させた状態で、テープ搬送ユニット5から順次新しい研磨テープ31をガラス基板1に対する研磨加工点に搬送しながら行われる。このようにガラス基板1の内外径端面部分の加工は、テープ搬送ユニット5において順次研磨テープ31を搬送しながら行われることから、ガラス基板1の内外径端面には、常に新しい研磨テープ31が接触し続けることとなる。これにより、従来の回転砥石のように定期的なメンテナンスを必要とすることなく、また、加工レートを安定的に維持した状態でガラス基板1の内外径端面に加工を施すことが可能となっている。
【0040】
ガラス基板1の内外径端面部分の面取り加工を行う場合には、テープ供給ローラ51から大粒径の研磨剤を有する研磨テープ31が供給される。この状態で駆動ユニット4により研磨ユニット3がガラス基板1の内外径端面部分に接触するように駆動される。例えば、ガラス基板1の内外径端面部分のT面部に面取り加工を行う場合には、図3(a)に示すように、水平駆動装置42で研磨パッド32aに対応して配置された研磨テープ31がT面部に接触するように研磨ユニット3を駆動し、T面部の面取り加工を行う。一方、ガラス基板1の内外径端面部分のC面部に面取り加工を行う場合には、図3(b)、図3(c)に示すように、上下駆動装置41で研磨パッド32b、32cに対応して配置された研磨テープ31がC面部に接触するように研磨ユニット3を駆動し、C面部の面取り加工を行う。なお、面取り加工時においては、駆動ユニット4は、研磨パッド32をガラス基板1の内外径端面部分に押圧する制御を行うことはない。
【0041】
面取り加工後、ガラス基板1の内外径端面部分の内外径端面研磨加工を行う場合には、テープ供給ローラ51から小粒径の研磨剤を有する研磨テープ31が供給される。この状態において、駆動ユニット4により研磨ユニット3がガラス基板1の内外径端面部分に接触するように駆動される。なお、この場合における研磨ユニット3の駆動態様については、原則として面取り加工時と同様である。すなわち、ガラス基板1の内外径端面部分のT面部に内外径端面研磨加工を行う場合には、図3(a)に示すように、水平駆動装置42で研磨パッド32aに対応して配置された研磨テープ31がT面部に接触するように研磨ユニット3を駆動し、T面部の内外径端面研磨加工を行う。一方、ガラス基板1の内外径端面部分のC面部に内外径端面研磨加工を行う場合には、図3(b)、図3(c)に示すように、上下駆動装置41で研磨パッド32b、32cに対応して配置された研磨テープ31がC面部に接触するように研磨ユニット3を駆動し、C面部の内外径端面研磨加工を行う。なお、内外径端面研磨加工を行う際には、ガラス基板1の表面状態に応じて研磨水が使用される。
【0042】
このように本実施の形態に係るガラス基板の製造方法においては、大粒径の研磨剤を有する研磨テープ31を用いて面取り加工を行った後に、小粒径の研磨剤を有する研磨テープ31を用いて内外径端面研磨加工を、ガラス基板1を交換することなく連続して行う。これにより、ガラス基板1の交換(段取替え)を行う必要がなくなることから、所謂、芯ずれに伴う取代増加を防止でき、寸法精度や同芯度など形状精度を向上させることが可能となる。
【0043】
なお、内外径端面研磨加工時においては、駆動ユニット4により研磨パッド32をガラス基板1の内外径端面部分に押圧する制御が行われる点で面取り加工時の駆動制御と異なる。すなわち、内外径端面研磨加工時においては、所定の面取り形状が形成された研磨パッド32にて研磨テープ31をガラス基板1の内外径端面部分に押圧させている。このように所定の面取り形状が形成された研磨パッド32にて研磨テープ31をガラス基板1の内外径端面部分に押圧することにより、ガラス基板1の内外径端面部分の形状に対応して研磨テープ31で当該端面部分を研磨することができるので、効果的にガラス基板1の内外径端面部分に対して内外径端面研磨加工を施すことが可能となる。
【0044】
特に、研磨テープ31を押圧する際、研磨パッド32の押圧方向は、T面部の加工時には図3(a)に示すようにガラス基板1の中心方向とし、C面部の上方側部分の加工時には図3(b)、図3(c)に示すように、ガラス基板1を平行に見て下方向とし、C面部の下方側部分の加工時には図3(b)、図3(c)に示すように、ガラス基板1を平行に見て上方向としている。このように押圧方向を加工対象となる部位に応じて分別することで、常に新しい研磨テープ31の面を各端部面へ接触させることができ、適切に各端部面に内外径端面研磨加工を施すことが可能となっている。
【0045】
特に、上述した駆動ユニット4による研磨パッド3の押圧方法においては、駆動ユニット4における押圧制御により、ガラス基板1の内外径端面部分におけるT面部及びC面部にそれぞれ均一な内外径端面研磨加工を施すことができる。一般的に、ブラシによる研磨プロセスにおいて、バッチ方式でのブラシ研磨では、ブラシの毛先や研磨剤を重ねられた基板の隙間に効率よく接触させることが困難であり、C面部とT面部との仕上がりにバラつきが発生し、特に、C面部がT面部に比べて仕上がり精度が劣化する傾向にある。これに対し、本実施の形態に係るガラス基板の製造方法においては、ガラス基板1の内外径端面部分におけるT面部及びC面部にそれぞれ均一な内外径端面研磨加工を施すことができるので、T面部及びC面部の仕上がり精度にバラつきが発生するのを防止することができる。
【0046】
また、T面部及びC面部の各面に対して研磨テープ31の接触面を平行に配置することができるため、端部の形状が丸みを帯びることもない。上述したバッチ式のブラシ研磨においては、C面部の仕上げ精度のバラつきによって、磁気ディスク用ガラス基板の端部の残留クラックが部分的に除去できないため、ガラス基板の抗折強度低下を招いている。一方、残留クラックを完全除去するために端面研磨の取代を増やすと、端部は丸みをおびた形状となる。これに対し、本実施の形態に係るガラス基板の製造方法においては、端部の形状が丸みを帯びるのを防止できるので、ガラス基板1の内外径端面部分に残る残留クラックを完全に除去しつつ、内外径端面部分の形状を所望の形状に加工することが可能となっている。
【0047】
そして、内外径端面部分に残る残留クラックを除去することができるので、ガラス基板1の抗折強度低下を招くことがない。従って、従来、このようなガラス基板1の抗折強度を増加させることを目的として行われる化学強化処理を省略することが可能となる。このため、ガラス基板1の製造に要する工程コストを低減することが可能となる。また、化学強化処理を省略することから、ガラス基板1が内径中心方向に膨張することで内径が変化するといった不具合も回避することが可能となる。
【0048】
(実施例)
以下、実施例に基づいて本発明を更に具体的に説明する。この実施例においては、以下に示す(1)切り出し工程、(2)内外径端面加工工程(形状加工工程・端面研磨工程)(3)粗面化工程(第1研削工程)、(4)精ラッピング工程(第2研削工程)、(5)主表面研磨工程、(6)磁気ディスク製造工程を経てガラス基板1を製造すると共に、このように製造したガラス基板1を用いて磁気ディスクを製造した。
【0049】
(1)切り出し工程
まず、切り出し工程においては、例えば、フロート法で製造した厚さ0.95mmのアルミノシリケートガラスからなる板状ガラス素材を所定の大きさの四角形に切断したものを使用し、そのトップ面にガラスカッターで、ガラス基板1となされる領域の外周側及び内周側の略周縁を描く円形の切り筋を形成した。そして、この切り筋を形成した板状ガラス素材のトップ面側を全体的にヒータで加熱し、上記切り筋を板状ガラス素材のボトム面側に進行させて所定の直径を有するガラス基板1を切り出した。
【0050】
(2)内外径端面加工工程(形状加工工程・端面研磨工程)
次に、内外径端面加工工程においては、外周端面及び内周端面の研削をして外径を65mm、内径(中心部の円孔の直径)を20mmとした後、上述した内外径端面加工装置100により、ガラス基板1を高速回転させながら、その内径及び外径の面取り加工を施すと共に、内外径端面研磨加工を施した。面取り加工を施した後におけるガラス基板1の端面の表面粗さは、Rmaxで2μm程度であった。そして、内外径端面研磨加工を施した後におけるガラス基板1の端面の表面粗さは、Rmaxで0.4μm、Raで0.1μm程度であった。なお、一般に、2.5(インチ)型HDD(ハードディスクドライブ)では、外径が65mmの磁気ディスクが用いられる。
【0051】
(3)粗面化工程(第1研削工程)
粗面化工程(第1研削工程)においては、平面研磨機による遊離砥粒研磨を用いる機械的方法を適用した。遊離砥粒研磨を用いてガラス基板の表面全体が略均一の表面粗さ(Ra=0.01〜0.4μm程度)になるように研磨加工を施した。なお、粗面化工程において目標とする表面粗さは、後述する精ラッピング工程で使用する固定砥粒の粒度との関係で決めることが望ましい。
【0052】
(4)精ラッピング工程(第2研削工程)
精ラッピング工程(第2研削工程)においては、粗面化されたガラス基板の主表面を、固定砥粒研磨パッドを用いて研削した。この精ラッピング工程においては、粗面化されたガラス基板をラッピング装置にセットして、ダイヤモンドシートを用いてガラス基板の表面をラッピングすることにより、高加工レートで表面粗さRaを0.1μm以下で、平坦度を7μm以下とすることができた。
【0053】
(5)主表面研磨工程(第1研磨工程、第2研磨工程)
主表面研磨工程においては、まず、ラッピング工程で残留した傷や歪みの除去するための第1研磨工程を、上述した両面研磨装置を用いて行なった。この第1研磨工程においては、ポリシャが硬質ポリシャ(硬質発泡ウレタン)である研磨パッド1を用いて、ガラス基板の主表面の研磨を行った。なお、研磨剤としては、酸化セリウム砥粒を用いた。
【0054】
次に、第1研磨工程で使用した同一の両面研磨装置を用いて第2研磨工程を行った。この第2研磨工程においては、ポリシャが軟質ポリシャ(スウェード)である研磨パッド1に替えてガラス基板の主表面の研磨を行った。なお、研磨剤としては、第1研磨工程で用いた酸化セリウム砥粒よりも微細なシリカ砥粒を用いた。
【0055】
このように、切り出し工程、内外径端面加工工程(形状加工工程・端面研磨工程)、粗面化工程(第1研削工程)、精ラッピング工程(第2研削工程)、主表面研磨工程を経て、平坦で、且つ、平滑な高剛性を有する磁気ディスク用のガラス基板1を得た。
【0056】
(6)磁気ディスク製造工程
磁気ディスク製造工程においては、このガラス基板1の両面に、スパッタリング装置を用いて、シード層、下地層、磁性層及び保護層を成膜すると共に、潤滑層を形成して磁気ディスクを製造した。この場合、シード層には、CrTi薄膜からなる第1のシード層と、AlRu薄膜からなる第2のシード層とを形成した。下地層は、CrW薄膜で、磁性層の結晶構造を良好にするために設けた。磁性層は、CoPtCrB合金からなる。保護層は、磁性層が磁気ヘッドとの接触によって劣化することを防止するためのもので、水素化カーボンからなり、耐磨耗性が得られる。潤滑層は、パーフルオロポリエーテルの液体潤滑剤をディップ法により形成した。このようにして、上述したガラス基板1を用いた磁気ディスクを得た。
【0057】
このように本実施の形態に係るガラス基板1の製造方法においては、研磨テープ31によりガラス基板1の内外径端面部分に対して面取り加工が施された後、連続して研磨テープ31によりガラス基板1の内外径端面部分に対して内外径端面研磨加工が施されることから、従来のように、面取り加工及び内外径端面研磨加工を個別の専用装置で行う必要がなくなる。これにより、工程固有の装置、副資材及び磁気ディスク用ガラス基板の移載に伴う手間及び人員等を削減することができるので、管理、運用コストを低減することが可能となる。また、面取り加工工程及び内外径端面研磨加工工程が連続して行われることから、ガラス基板1の交換処理等を省略できるので、芯ずれを防止でき、寸法精度や同芯度など形状精度を向上することが可能となる。この結果、ガラス基板1の内外径端面部分の加工コストを低減しつつ、磁気ディスク用ガラス基板の端面部分の形状精度を向上させることが可能となる。
【0058】
本発明は上記実施の形態に限定されず、適宜変更して実施することができる。上記実施の形態における材質、個数、サイズ、処理手順などは一例であり、本発明の効果を発揮する範囲内において種々変更して実施することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、研磨テープ31によりガラス基板1の内外径端面部分に対して面取り加工を施した後、連続して研磨テープ31によりガラス基板1の内外径端面部分に対して内外径端面研磨加工を施すことで、磁気ディスク用ガラス基板の内外径端面部分の加工コストを低減しつつ、磁気ディスク用ガラス基板の端面部分の形状精度を向上させるものであり、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0060】
100 内外径端面加工装置
1 ガラス基板(磁気ディスク用ガラス基板)
2 回転ユニット
21 吸着ステージ
22 駆動ベルト
23 スピンドルモータ
3 研磨ユニット
31 研磨テープ
32a〜32c 研磨パッド
33 パッドホルダ
34 ガイドローラ
4 駆動ユニット
41 上下駆動装置
42 水平駆動装置
5 テープ搬送ユニット
51 テープ供給ローラ
52 テープ回収ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨テープによりガラス基板の内外径端面部分に対して面取り加工を施す面取り加工工程と、前記面取り加工工程に連続して研磨テープにより前記ガラス基板の内外径端面部分に対して内外径端面研磨加工を施す端面研磨加工工程とを具備することを特徴とする磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
【請求項2】
前記面取り加工工程では大粒径の研磨剤を用いた前記研磨テープを用いる一方、前記端面研磨加工工程では小粒径の研磨剤を用いた前記研磨テープを用いることを特徴とする請求項1記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
【請求項3】
前記端面研磨加工工程において、所定の面取り形状が形成された樹脂製のパッド部材によって前記研磨テープを前記ガラス基板に押圧することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
【請求項4】
前記端面研磨加工工程において、前記パッド部材により前記研磨テープを前記ガラス基板の中心方向、当該ガラス基板の平行面から上方向及び下方向の3方向に押圧することを特徴とする請求項3記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
【請求項5】
前記面取り加工工程及び端面研磨加工工程において、前記ガラス基板に対する加工点に前記研磨テープを順次搬送し、当該加工点で未使用の前記研磨テープを前記ガラス基板に接触させることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
【請求項6】
前記研磨テープに用いられる研磨剤は、少なくともダイヤモンド、アルミナ、セリウム、シリカ及び炭化珪素砥粒の1つを含み、その粒径が0.1〜100umに設定されることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法により製造された磁気ディスク用ガラス基板上に、少なくとも磁性層を形成することを特徴とする磁気ディスクの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−231849(P2010−231849A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−78968(P2009−78968)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】