説明

磁気ディスク装置およびトラッキング制御回路

【課題】パターンドメディアに対するトラッキング制御を正確に実行することができる磁気ディスク装置を提供する。
【解決手段】試し書き位置移動制御手段は、サーボ領域を読み取ることで所望とする記録トラックT2のトラック位置を仮決めし、その仮決めされたトラック位置からトラックピッチTpの半ピッチ分Tp/2ずれた所定の試し書き位置に磁気ヘッドを合わせるように制御する。試し書き情報記録制御手段は、ユーザ領域Uの一部に対して所定の試し書き情報を書き込むように制御する。試し書き情報の書き込み後、試し書き記録状態検証手段は、試し書き情報が記録トラックT1,T2の2列に記録された状態か1列に記録された状態かを検証する。ヘッド位置ずれ調整手段は、2列に記録された状態か1列に記録された状態に応じて所望とする記録トラックに対する磁気ヘッドの位置ずれを調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、いわゆるパターンドメディアと称される磁気ディスクのトラッキング制御に優れた磁気ディスク装置、およびトラッキング制御回路に関する。
【背景技術】
【0002】
パターンドメディアのトラッキング制御に関する技術としては、特許文献1に開示されたものがある。同文献に開示された技術では、ディスク周方向にピッチPで複数の記録セル(磁性ドット)を並べることで複数列のサブトラックが形成され、かつ、隣り合う2列のサブトラック上における最近接の2つの記録セルがディスク周方向にP/2ピッチずれるように形成されたパターンドメディアを用いている。読み出しヘッドとしては、2列のサブトラックに跨って読み取り可能なものを用いている。
【0003】
このようなパターンドメディアに対するトラッキング制御では、読み出しヘッドがサブトラックを2列ずつまとめて読み取ることにより、隣り合うサブトラックのちょうど中間位置を読み出しヘッドが通るように制御される。具体的には、隣り合う2列のサブトラックにおいて複数の記録セルに記録されるビットパターンに応じた複数の信号パターンがあらかじめROMに記憶されている。隣り合う2列のサブトラックにおける複数の記録セルを実際に読み取り、これにより得られた実測信号と上記ROMに記憶された複数の信号パターンとを比較してトラックずれ情報を求め、このトラックずれ情報に基づいて読み出しヘッドのディスク径方向位置をトラッキング制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−157631号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来のパターンドメディアに対するトラッキング制御の技術では、あらかじめROMに記憶された複数の信号パターンを読み出し、これらの信号パターンと実測信号とを詳細に比較しなければ、隣り合うサブトラックの中間に位置合わせすることができない。そのため、トラッキング制御のアルゴリズムとしては複雑にならざるを得ず、さらには、製造時のパターン形成位置ずれなどによっても予め記憶された複数の信号パターンだけでは正確にトラッキング制御できないという難点があった。
【0006】
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、パターンドメディアに対するトラッキング制御を正確に実行することができる磁気ディスク装置、およびトラッキング制御回路を提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0008】
本発明によれば、ディスク周方向に並ぶ複数の磁性ドットにより記録トラックが形成され、この記録トラックがディスク径方向に所定のトラックピッチで複数列をなすようにユーザ領域が形成されているとともに、上記記録トラックそれぞれのトラック位置を示すためのサーボ領域が上記ユーザ領域とはディスク周方向に離間して形成された磁気ディスクと、上記記録トラックごとに上記磁性ドットのそれぞれに対して読み書き可能であるとともに、ディスク径方向の書き込み位置が上記記録トラックと記録トラックとの中間位置に合わされた状態ではこれら2列の記録トラックに対して同時に書き込み可能な磁気ヘッドと、上記磁気ディスクに対して上記磁気ヘッドを対向させつつディスク径方向に往復移動させる磁気ヘッド移動機構と、上記磁気ヘッドを介して上記サーボ領域を読み取ることで所望とする上記記録トラックのトラック位置を仮決めし、その仮決めされたトラック位置から上記トラックピッチの半ピッチ分ずれた所定の試し書き位置に上記磁気ヘッドを合わせるように上記磁気ヘッド移動機構を制御する試し書き位置移動制御手段と、上記試し書き位置に合わせられた上記磁気ヘッドにより、上記ユーザ領域の一部に対して所定の試し書き情報を書き込むように制御する試し書き情報記録制御手段と、上記試し書き情報の書き込み後、上記磁気ヘッドを介して上記ユーザ領域の一部を読み取ることにより、上記試し書き情報が上記記録トラックの2列に記録された状態か1列に記録された状態かを検証する試し書き記録状態検証手段と、上記試し書き情報が上記記録トラックの2列に記録された状態の場合、上記磁気ヘッドをディスク径方向に上記トラックピッチの半ピッチ分戻すように移動させる一方、上記試し書き情報が上記記録トラックの1列に記録された状態の場合、上記磁気ヘッドをディスク径方向に所定量ずつ移動させ、上記所望とする記録トラックに対して上記磁気ヘッドの位置ずれを調整するヘッド位置ずれ調整手段と、を備えた磁気ディスクのトラッキング制御に関する技術が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明により開示された技術によれば、試し書きによって記録トラックの2列に記録された状態であると検証された場合、磁気ヘッドがディスク径方向にトラックピッチの半ピッチ分戻すように移動させられることにより、所望とする記録トラックのトラック位置に対して磁気ヘッドが正確に位置決めされる。その一方、1列に記録された状態であると検証された場合には、磁気ヘッドがディスク径方向に所定量ずつ移動させられ、最終的には繰り返し検証を行って記録トラックの2列に記録された状態になる。これにより、所望とする記録トラックに対する磁気ヘッドの位置ずれが調整され、正しいトラック位置に磁気ヘッドを位置合わせすることができるので、いわゆるパターンドメディアに対するトラッキング制御を正確に実行することができる。
【0010】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明が適用された磁気ディスク装置の一実施形態を示す構成図である。
【図2】記録トラックに対するヘッドの位置状態を示す模式図である。
【図3】試し書き制御の手順を説明するためのフローチャートである。
【図4】他の実施形態におけるユーザ領域を示す模式図である。
【図5】他の実施形態における試し書き領域を示す模式図である。
【図6】図5の実施形態に対応する試し書き制御の手順を説明するためのフローチャートである。
【図7】他の実施形態における試し書き領域を示す模式図である。
【図8】他の実施形態における試し書き領域を示す模式図である。
【図9】本発明が適用された磁気ディスク装置の他の実施形態を示す構成図である。
【図10】図9の磁気ディスク装置による試し書き制御の手順を説明するためのフローチャートである。
【図11】本発明が適用された磁気ディスク装置の他の実施形態を示す構成図である。
【図12】図11の磁気ディスク装置による試し書き制御の手順を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照して具体的に説明する。
【0013】
図1〜3は、本発明が適用された磁気ディスク装置の一実施形態を示している。本実施形態の磁気ディスク装置Aは、いわゆるパターンドメディアの磁気ディスク1に対して磁気ヘッド2をトラッキング制御しながら磁気情報を読み書きする装置である。トラッキング制御に関係する構成要素としては、磁気ディスク1および磁気ヘッド2のほか、スピンドルモータ3、スイングアーム4、ボイスコイルモータ5、トラッキング制御回路10、およびVCM駆動部20を備えている。スイングアーム4およびボイスコイルモータ5は、磁気ヘッド移動機構として設けられている。磁気ヘッド2およびVCM駆動部20は、トラッキング制御回路10に接続されている。トラッキング制御回路10には、再生信号基準レベル記憶部11、試し書き制御開始判定部12、試し書き位置移動制御部13、試し書き情報記録制御部14、試し書き記録状態検証部15、およびヘッド位置ずれ調整部16が含まれる。
【0014】
磁気ディスク1は、いわゆるパターンドメディアであり、垂直磁気記録方式に適したものである。この磁気ディスク1には、磁気記録部分となる磁性ドットdが非磁性領域内において離散状に形成されている。特に本実施形態の磁気ディスク1は、以下のようなパターンで形成されている。
【0015】
磁気ディスク1には、ユーザ領域U、試し書き領域W、およびサーボ領域Sがディスク周方向にセクタ単位で形成されている。ユーザ領域Uは、磁気情報が記録再生される領域である。このユーザ領域Uには、図2に示すように、ディスク周方向Cに並ぶ多数の磁性ドットdにより記録トラックT1〜T3が形成され、これらの記録トラックT1〜T3がディスク径方向に所定のトラックピッチTpで複数列をなすように形成されている。本実施形態の磁気ディスク装置Aは、ユーザ領域Uにおける記録トラックT1〜T3の1列ずつに対して磁気情報の記録や再生を行うものである。なお、記録トラックT1〜T3の列数やディスク周方向Cに並ぶ磁性ドットdの数は、もちろん図示する数に限られるものではなく、実際には極めて多くの記録トラックの列や磁性ドットdが形成されている。
【0016】
磁性ドットdには、後述する記録ヘッド2Bからの垂直磁界により、磁気ディスク1の表面に対して上下いずれかの向きをなす磁化方向が磁気情報として記録される。図2においては、たとえば白抜きの磁性ドットdを上向きの磁化方向が記録されているものとし、黒塗りの磁性ドットdを下向きの磁化方向が記録されているものとして示している。このようなユーザ領域Uにおいて、磁気ディスク1の回転方向前側から磁性ドットdが所定個数並ぶ部分(図2では一例として白抜きの磁性ドットdが4個並ぶ領域)については、試し書き領域Wとして設けられている。この試し書き領域Wの磁性ドットdは、初期化によって磁化方向が一定の方向に揃えられた後、所定の試し書き情報が記録される。
【0017】
サーボ領域Sは、記録再生時のタイミング信号やディスク径方向のトラック位置が得られる磁気パターンの領域である。このサーボ領域Sには、特に符号を付さないが、プリアンブル部、アドレス部、およびバーストパターン部が含まれる。プリアンブル部は、ディスク周方向Cに並ぶ多数の磁性ドットdに対して記録再生を行う際の基準となるタイミング信号を生成するための磁気パターン部分である。アドレス部は、セクタ番号やトラック番号といったアドレス情報を示すための磁気パターン部分である。バーストパターン部は、たとえば所望とする列の記録トラックT2に対して後述の再生ヘッド2Aを位置合わせするための磁気パターン部分である。このようなサーボ領域Sは、ユーザ領域Uからディスク周方向Cにある程度離間して形成されている。そのため、たとえばディスク製造時のパターン形成位置ずれ、雰囲気温度による熱変形、あるいは外乱としての振動などにより、サーボ領域Sのみでは所望とする記録トラックT2のトラック位置に磁気ヘッド2を正確に位置合わせすることが保障されない。そのため、後述の試し書き制御が行われる。
【0018】
図1に示すように、磁気ヘッド2は、磁性ドットdに対して磁気情報の記録再生を行うものであり、図示しないスライダに組み込まれている。スライダは、磁気ディスク1の記録面と対向するようにスイングアーム3の先端に設けられている。磁気ヘッド2は、磁気情報の読み書きをそれぞれ独立して行う再生ヘッド2Aおよび記録ヘッド2Bを有する。再生ヘッド2Aと記録ヘッド2Bは、ディスク周方向Cに並んでおり、再生ヘッド2Aよりも磁気ディスク1の回転方向前側に記録ヘッド2Bが位置している。
【0019】
記録ヘッド2Bは、たとえば図2(A)に示すように、所望とする記録トラックT2のトラック位置に合わされた場合、その記録トラックT2に含まれる磁性ドットdのみに磁気情報を書き込み可能となり、隣接する記録トラックT1,T3の磁性ドットdに磁気情報が書き込まれることはない。一方、図2(A’)に示すように、たとえば隣り合う2列の記録トラックT1,T2の中間位置に記録ヘッド2Bが位置合わせされた場合、すなわち、各記録トラックT1,T2のトラック位置から半ピッチTp/2分ずれた位置に記録ヘッド2Bが位置する場合、記録ヘッド2Bが2列の記録トラックT1,T2に跨るため、これら2列の記録トラックT1,T2の双方に含まれる磁性ドットdに対して同時に磁気情報を書き込み可能となる。
【0020】
再生ヘッド2Aは、記録ヘッド2Bよりもディスク径方向のヘッド幅が小さく形成されている。このような再生ヘッド2Aは、たとえば図2(A)に示すように、所望とする記録トラックT2のトラック位置に合わされた場合、その記録トラックT2に並ぶ複数の磁性ドットdから磁気情報を読み出し可能となる。一方、図2(A’)に示すように、再生ヘッド2Aが隣り合う2列の記録トラックT1,T2のトラック位置から半ピッチ分Tp/2ずれ、これら2列の記録トラックT1,T2の中間位置に位置合わせされた場合、再生ヘッド2Aは、各記録トラックT1,T2の磁性ドットdにほとんど重ならないため、これらの記録トラックT1,T2の双方に含まれる磁性ドットdの磁気情報を読み取ることができない。このように再生ヘッド2Aが所望とする記録トラックT2からずれている場合、再生ヘッド2Aから出力される再生信号の信号レベルとしては、記録トラックT2に対して正しく位置合わせされた場合よりも小さくなる。
【0021】
なお、再生ヘッド2Aおよび記録ヘッド2Bは、概ねディスク径方向の同一位置にあるが、厳密には製造誤差やいわゆるスキュー角の関係でディスク径方向に若干ずれている。このような再生ヘッド2Aおよび記録ヘッド2Bの相対的な位置ずれについては、既知の位置ずれ補正回路によって対応することができる。本実施形態のトラッキング制御回路10には、位置ずれ補正回路が組み込まれており、この位置ずれ補正回路によって再生ヘッド2Aおよび記録ヘッド2Bの相対的な位置ずれが補正される。そのため、本実施形態の説明では、再生ヘッド2Aおよび記録ヘッド2Bが常にディスク径方向の同一位置にあるものとする。
【0022】
スピンドルモータ3は、磁気ディスク1を高速回転させるものである。スイングアーム4は、磁気ヘッド2を概ねディスク径方向に往復移動させるものであり、ボイスコイルモータ5によって揺動させられる。ボイスコイルモータ5は、VCM駆動部20によって駆動される。
【0023】
トラッキング制御回路10は、磁気ヘッド2およびVCM駆動部20を介したフィードバック制御により、各記録トラックT1〜T3のトラック位置に磁気ヘッド2を位置合わせするためのロジック回路である。このようなトラッキング制御回路10により実行されるトラッキング制御には、次の試し書き制御が含まれる。試し書き制御は、再生信号基準レベル記憶部11、試し書き制御開始判定部12、試し書き位置移動制御部13、試し書き情報記録制御部14、試し書き記録状態検証部15、およびヘッド位置ずれ調整部16によって実行される。
【0024】
再生信号基準レベル記憶部11には、再生ヘッド2Aから出力される再生信号の信号レベルに対して基準となるレベル(基準レベル)が予め記憶されている。
【0025】
試し書き制御開始判定部12は、再生信号の信号レベルと基準レベルとを比較し、その信号レベルが基準レベルよりも小さい場合に試し書き制御を開始させる。たとえば再生ヘッド2Aを介してサーボ領域Sを読み取り、所望とする記録トラックT2のトラック位置を仮決めして再生ヘッド2Aを位置合わせした状態とする。このとき、再生ヘッド2Aから出力される再生信号の信号レベルが基準レベルよりも小さい場合、試し書き制御開始判定部12は、図2(B)に示すように再生ヘッド2Aが所望とする記録トラックT2からディスク径方向に位置ずれした状態と判断する。これにより、試し書き制御開始判定部12は、試し書き領域Wの磁性ドットdの磁化方向を同一方向に揃えるように記録ヘッド2BによるDCイレーズやVCM駆動部20によるヘッド移動を実行させた後、試し書き位置移動制御部13に対して試し書き制御を開始させる。このような磁性ドットdの磁化方向を同一方向に揃える処理を初期化と称する。
【0026】
試し書き位置移動制御部13は、所望とする記録トラックT2について仮決めされたトラック位置から所定のディスク径方向にトラックピッチTpの半ピッチ分Tp/2ずれた試し書き位置に記録ヘッド2Bを移動させるようにVCM駆動部20を制御する。本実施形態では、一例として図2(A)から(A’)の位置、あるいは図2(B)から(B’)の位置へと移動させるように、図面上側に半ピッチ分Tp/2ずれた位置を試し書き位置として記録ヘッド2Bを移動させるものとする。
【0027】
試し書き情報記録制御部14は、試し書き位置に記録ヘッド2Bを位置決めした後、その記録ヘッド2Bを介して試し書き領域Wに所定の試し書き情報を書き込むように制御する。このような試し書き情報を書き込む前には、初期化によって試し書き領域Wの磁性ドットdがたとえば磁化方向上向きとなる白抜きに揃えられているため、試し書き情報が磁性ドットdに書き込まれると、その磁性ドットdの磁化方向が下向きとなって黒塗りの磁性ドットdになる。
【0028】
試し書き記録状態検証部15は、試し書き情報の書き込み後、再生ヘッド2Aを介して試し書き領域Wを読み取ることにより、たとえば図2(A’)に示すように試し書き位置の両側となる2列の記録トラックT1,T2に試し書き情報が記録された状態か、それら記録トラックT1,T2のいずれか1列(図2(B’)に示す例では記録トラックT1)に記録された状態かを検証する。このような試し書き情報の記録状態を検証する際には、再生ヘッド2Aが試し書き位置のディスク径方向両側に移動させられ、その試し書き位置も含めてディスク径方向の所定範囲で再生ヘッド2Aに読み取り動作を行わせる。これにより、試し書き位置からディスク径方向の所定範囲にある記録トラックT1,T2の磁性ドットdに対して試し書き情報が記録されたか否かが判別される。つまり、所望とする記録トラックT2を含む2列の記録トラックT1,T2に試し書き情報が記録されていると、試し書き位置の記録ヘッド2Bは、所望とする記録トラックT2から上側の記録トラックT1の方に概ね半ピッチ分Tp/2ずれた位置にあると認識され、1列の記録トラックT1のみに試し書き情報が記録されていると、試し書き位置の記録ヘッド2Bは、所望とする記録トラックT2から上側の記録トラックT1の方に半ピッチ分Tp/2ずれた位置よりもさらにずれた位置にあると認識される。
【0029】
ヘッド位置ずれ調整部16は、たとえば図2(B’)に示すように1列の記録トラックT1のみに試し書き情報が記録された状態の場合、試し書き領域Wの磁性ドットdの磁化方向を同一方向に揃えるように初期化した後、正しい試し書き位置となる2列の記録トラックT1,T2の中間位置へと近づく方向、すなわち下側の記録トラックT2の方へと所定量ずつ記録ヘッド2Bを移動させる。記録ヘッド2Bを移動させる所定量は、半ピッチ分Tp/2よりも小さく設定されている。これにより、記録ヘッド2Bは、正しい試し書き位置へと徐々に移動させられる。このような記録ヘッド2Bの移動を所定量ずつ繰り返しつつ試し書き情報の記録や試し書き記録状態の検証を再び行うことにより、最終的には2列の記録トラックT1,T2に同時に試し書き情報が記録される。2列の記録トラックT1,T2に試し書き情報が記録された状態になると、ヘッド位置ずれ調整部16は、図2(A’)から(A)の位置へと移動させるように半ピッチ分Tp/2だけ再生ヘッド2Aおよび記録ヘッド2Bを移動させる。これにより、再生ヘッド2Aおよび記録ヘッド2Bは、所望とする記録トラックT2に位置決めされる。
【0030】
次に、一例として所望とする記録トラックT2に対するトラッキング制御の手順につき、図3を参照して説明する。
【0031】
まず、図3に示すように、トラッキング制御回路50は、図示しないホストコンピュータからの命令に応じて再生ヘッド2Aを所望の記録トラックT2に移動させる(S1)。このとき、記録トラックT2のトラック位置は、再生ヘッド2Aを介してサーボ領域Sを読み取ることにより判明するが、先述したように製造時のパターン形成位置ずれによって必ずしも正しいトラック位置とは限らず、再生ヘッド2Aが記録トラックT2からずれている場合もある。そのため、現時点で再生ヘッド2Aが位置合わせされたトラック位置は、仮決めされたトラック位置となる。
【0032】
次に、試し書き制御開始判定部12は、仮決めされたトラック位置に再生ヘッド2Aを位置決めした状態でその再生ヘッド2Aにユーザ領域Uの磁性ドットdを読み取らせ、再生信号の信号レベルを検出する(S2)。このとき、図2(A)に示すように再生ヘッド2Aがちょうど記録トラックT2上に位置すれば、比較的大きな信号レベルが検出される一方、図2(B)に示すように記録トラックT2の磁性ドットdに対して再生ヘッド2Aがほとんど外れていれば、基準レベルよりも小さい信号レベルが検出される。
【0033】
このようにして検出された信号レベルが基準レベルよりも小さい場合(S3:YES)、試し書き制御開始判定部12は、試し書き領域Wを初期化した後、試し書き制御を開始させる(S4)。このとき、試し書き領域Wの初期化においては、全ての記録トラックT1〜T3を初期化する必要はなく、たとえば仮決めされたトラック位置に対してその上側に試し書き位置を設定する場合には、所望とする記録トラックT2とその上側の記録トラックT1の2列を初期化すればよい。
【0034】
試し書き制御が開始されると、試し書き位置移動制御部13は、仮決めされたトラック位置からその上側に半ピッチ分Tp/2だけずれた位置を試し書き位置とし、この試し書き位置へと記録ヘッド2Bを移動させる(S5)。この場合、再生ヘッド2Aおよび記録ヘッド2Bは、図2(B’)に示すように記録トラックT1の磁性ドットdのみに重なる。
【0035】
次に、試し書き情報記録制御部14は、試し書き記録処理を実行する(S6)。この試し書き記録処理によれば、試し書き位置の記録ヘッド2Bにより試し書き領域Wに対して試し書き情報が記録される。つまり、図2(B’)の場合には、試し書き領域Wにおける上側の記録トラックT1の磁性ドットdのみに試し書き情報が記録され、これらの磁性ドットdが白抜きから黒塗りの状態になる。
【0036】
次に、試し書き記録状態検証部15は、試し書き位置からディスク径方向両側の所定範囲にわたり再生ヘッド2Aを移動させ、その移動ごとに再生ヘッド2Aに読み取り動作を行わせる。これにより、試し書き記録状態検証部15は、試し書き領域Wにおいて所望とする記録トラックT1を含む2列の記録トラックT1,T2に対して試し書き情報が記録された状態か、これら2列の記録トラックT1,T2のいずれか1列のみに試し書き情報が記録された状態かを検証する(S7)。
【0037】
試し書き情報が2列の記録トラックT1,T2に記録された状態の場合(S8:YES)、ヘッド位置ずれ調整部16は、図2(A’)に示すように試し書き位置の記録ヘッド2Bが2列の記録トラックT1,T2の概ね中間位置にあると判断し、その試し書き位置から半ピッチ分Tp/2だけ仮決めしたトラック位置から試し書き位置に向かう方向とは逆方向、すなわち所望とする記録トラックT2に近づく方向に再生ヘッド2Aおよび記録ヘッド2Bを移動させる(S9)。これにより、再生ヘッド2Aおよび記録ヘッド2Bは、図2(A)に示すように所望とする記録トラックT2のトラック位置に位置決めされる。
【0038】
その後、ユーザ領域Uの記録トラックT2に対しては、そのトラック位置に位置決めされた記録ヘッド2Bあるいは再生ヘッド2Aによって記録再生処理が実行される(S10)。
【0039】
S8において、試し書き情報が1列のみに記録された状態の場合(S8:NO)、ヘッド位置ずれ調整部16は、試し書き領域Wを再び初期化し(S11)、その後、試し書き情報が記録されていなかった列に近づく方向に記録ヘッド2Bを所定量ずつ移動させる(S12)。これにより、記録ヘッド2Bは、たとえば図2(B’)の位置から図2(A’)の位置へと徐々に移動させられ、最終的には2列の記録トラックT1,T2に対して記録ヘッド2Bが跨った状態になる。このように記録ヘッド2Bを所定量ずつ移動させるごとに、試し書き情報記録制御部14は、S6の試し書き記録処理を実行する。なお、S11における試し書き領域Wの初期化においても、先述したように所望とする記録トラックT2とその上側の記録トラックT1の2列を初期化するのが好ましい。
【0040】
S3において、信号レベルが基準レベル以上として検出された場合(S3:NO)、試し書き制御開始判定部12は、図2(A)に示すように再生ヘッド2Aがちょうど記録トラックT2上に位置した状態と判断し、そのままS10の記録再生処理が実行される。
【0041】
なお、図3(B)の例としては、所望とする記録トラックT2から上側に再生ヘッド2Aおよび記録ヘッド2Bがずれている状態を示したが、もちろん所望とする記録トラックT2の下側に再生ヘッド2Aおよび記録ヘッド2Bがずれていてもよい。この場合、そのヘッド位置から上側に半ピッチ分Tp/2ずれた位置を試し書き位置とすると、概ね図2(A)に示すような状態になる。つまり、ヘッド位置が上側あるいは下側のいずれかの方向にずれている場合、そのヘッド位置から上側に半ピッチ分Tp/2だけずらして試し書きを行うと、記録トラックT1,T2のいずれか1列のみに試し書き情報が記録される。そのため、試し書き情報の記録状態を検証する際には、これら2列の記録トラックT1,T2について検証を行えばよい。これにより、たとえば記録トラックT2の1列のみに試し書き情報が記録されていた場合、再生ヘッド2Aおよび記録ヘッド2Bの当初仮決めされたトラック位置については、その記録トラックT2よりも下側にずれた位置と認識することができる。このような記録ヘッドの試し書き位置については、ヘッド位置から下側に半ピッチ分ずれた位置としてもよい。この場合も同様に試し書き情報について記録および検証を行うことができる。
【0042】
したがって、本実施形態の磁気ディスク装置Aによれば、試し書き制御によって所望とする記録トラックT2を含む2列の記録トラックT1,T2に記録された状態か、いずれか1列に記録された状態かを検証することで磁気ヘッド2の位置ずれが判明し、最終的には2列に記録された状態となる試し書き位置から半ピッチ分Tp/2だけ磁気ヘッド2を移動させるだけで所望とする記録トラックT2に磁気ヘッド2を位置決めすることができる。これにより、いわゆるパターンドメディアとしての磁気ディスク12に対するトラッキング制御を正確に実行することができ、記録トラックT1〜T3の1列ごとに磁気ヘッド2を正しく位置決めすることができる。
【0043】
図4〜11は、他の実施形態を示している。なお、先述した実施形態によるものと同様の構成要素については同一符号を付し、その説明を省略する。
【0044】
図4に一例として示す実施形態では、試し書き領域Wを含むユーザ領域Uの磁性ドットdが記録トラックT1〜T3の3列ごとにディスク周方向Cに位置ずれするように形成されている。このような磁性ドットdの形成パターンによれば、記録トラックT1〜T3の3列ごとにディスク周方向Cに周期的な書き込みタイミングを制御しながら試し書き制御を行うことにより、その3列以外の記録トラックに対する試し書き情報の記録を防止し、試し書き記録状態を検証する際に関係のない記録トラックからの混信を防ぐことができる。なお、試し書き領域を除くユーザ領域においては、各列の磁性ドットがディスク周方向に位置ずれしたようなパターンでなくてもよい。試し書き領域においては、記録トラックの1列ごとあるいは2列ごと、さらには4列以上ごとに磁性ドットが位置ずれしていてもよい。
【0045】
図5に示す実施形態では、ユーザ領域Uとは異なるパターンでこれとは別に試し書き領域Wが形成されている。この試し書き領域Wにおいては、たとえば各記録トラックT1〜T3を基準列としてそのディスク径方向内外両側にずれるように一例として二対の磁性ドットdが形成されている。なお、図5においては、試し書き領域Wにおける磁性ドットdとして記録トラックT2に対応するものしか便宜上示していない。この試し書き領域Wにおいて対をなす磁性ドットdがディスク径方向に並ぶピッチtは、トラックピッチTpよりも小さく、再生ヘッド2Aが一対の磁性ドットdを同時に読み取ることができる。このような試し書き領域Wは、図示しないサーボ領域とユーザ領域Uとの間に形成されている。なお、対をなす磁性ドットは、少なくとも一対あればよく、ディスク周方向に三対以上並ぶように設けてもよい。基準列は、記録トラックの全ての列とする必要はなく、たとえば1列おきに基準列を設定してもよい。この場合、非基準列となった記録トラックのトラック位置は、基準列のトラック位置から所定の方向にトラックピッチ分ずれた位置になり、基準列のトラック位置が判明すれば非基準列のトラック位置も容易に判明する。
【0046】
図5に対応するトラッキング制御としては、図6に示すような以下に説明する手順で実行される。なお、磁気ディスク装置の構成要素としては、図1と同一または類似のものになるため、図1の構成要素を適宜用いて説明する。
【0047】
まず、トラッキング制御回路50は、図示しないホストコンピュータからの命令に応じて再生ヘッド2Aを所望の記録トラックT2のトラック位置に移動させる(S20)。このとき、トラック位置は、再生ヘッド2Aを介してサーボ領域Sを読み取ることにより判明するが、先述の実施形態で説明したように製造時のパターン形成位置ずれによって必ずしも正しいトラック位置とは限らず、たとえば図5(B)に示すように再生ヘッド2Aが記録トラックT2からずれている場合もある。そのため、現時点で再生ヘッド2Aが位置合わせされたトラック位置は、仮決めされたトラック位置となる。
【0048】
次に、試し書き制御開始判定部12は、仮決めされたトラック位置に再生ヘッド2Aを位置決めした状態でその再生ヘッド2Aに試し書き領域Wを読み取らせ、再生信号の信号レベルを検出する(S21)。このとき、図5(A)に示すように再生ヘッド2Aがちょうど記録トラックT2上に位置すれば、試し書き領域Wにおいて対をなす磁性ドットdが同時に読み取られるため、磁性ドットdが2個分の比較的大きな信号レベルが検出される。その一方、図5(B)に示すように記録トラックT2に対して再生ヘッド2Aがずれていれば、磁性ドットdが1個分の信号レベルになるため、基準レベルよりも小さい信号レベルが検出される。
【0049】
このようにして検出された信号レベルが基準レベルよりも小さい場合(S22:YES)、試し書き制御開始判定部12は、試し書き領域Wの磁性ドットdを初期化した後(S23)、試し書き制御を開始させる。
【0050】
試し書き制御が開始されると、仮決めされたトラック位置をそのまま試し書き位置とし、試し書き情報記録制御部14は、試し書き記録処理を実行する(S24)。この試し書き記録処理によれば、試し書き位置の記録ヘッド2Bにより試し書き領域Wに対して試し書き情報が記録される。つまり、図5(B)の場合には、試し書き領域Wにおける上側の磁性ドットdのみに試し書き情報が記録され、これらの磁性ドットdが白抜きから黒塗りの状態になる。
【0051】
次に、試し書き記録状態検証部15は、試し書き位置からディスク径方向両側の所定範囲にわたり再生ヘッド2Aを移動させ、その移動ごとに再生ヘッド2Aに読み取り動作を行わせる。これにより、試し書き記録状態検証部15は、試し書き領域Wにおいて対をなす全ての磁性ドットdに試し書き情報が記録された状態か、これら対をなす磁性ドットdのディスク径方向片側のみに試し書き情報が記録された状態かを検証する(S25)。
【0052】
試し書き領域Wにおいて対をなす全ての磁性ドットdに試し書き情報が記録された状態の場合(S26:YES)、ヘッド位置ずれ調整部16は、図5(A)に示すように試し書き位置の記録ヘッド2Bが所望とする基準列の記録トラックT2に対して正しく位置合わせされた状態と判断する。これにより、記録ヘッド2Bおよび再生ヘッド2Aは、所望とする記録トラックT2に対してそのまま位置決めされ、ユーザ領域Uの記録トラックT2に対しては、そうして位置決めされた記録ヘッド2Bあるいは再生ヘッド2Aによって記録再生処理が実行される(S27)。
【0053】
S26において、試し書き領域Wにおいて対をなす磁性ドットdのディスク径方向片側のみに試し書き情報が記録された状態の場合(S26:NO)、ヘッド位置ずれ調整部16は、試し書き領域Wを再び初期化し(S28)、その後、所望とする記録トラックT2に近づく方向に記録ヘッド2Bを所定量ずつ移動させる(S29)。このとき、ヘッド位置ずれ調整部16は、上側の磁性ドットdのみに試し書き情報が記録された状態であれば、記録ヘッド2Bを下側の方向に移動させ、下側の磁性ドットdのみに試し書き情報が記録された状態であれば、記録ヘッド2Bを上側の方向に移動させる。たとえば、記録ヘッド2Bは、図5(B)の位置から図5(A)の位置へと徐々に移動させられ、その移動ごとに試し書き情報記録制御部14は、S6の試し書き記録処理を実行する。これにより、最終的には、対をなす全ての磁性ドットdに試し書き情報が記録される。
【0054】
S22において、信号レベルが基準レベル以上として検出された場合(S22:NO)、試し書き制御開始判定部12は、図5(A)に示すように再生ヘッド2Aが記録トラックT2上に位置した状態と判断する。したがって、この場合には、所望とする記録トラックT2に対して再生ヘッド2Aおよび記録ヘッド2Bが位置決めされた状態でそのままS10の記録再生処理が実行される。
【0055】
したがって、本実施形態の磁気ディスク装置によれば、磁気ヘッド2を半ピッチ分Tp/2ずらす必要がないので、トラッキング制御を迅速に行うことができ、記録再生処理を速やかに実行することができる。
【0056】
図7に示す実施形態は、図5に示す実施形態の変形例である。この実施形態に示す試し書き領域Wにおいては、記録トラックT2を基準列としてそのディスク径方向内外両側にずれる二対の磁性ドットdに加え、いずれかの磁性ドットdが記録トラックT2のトラック位置に一致しつつ図面において上側と下側にずれるように二対の磁性ドットが形成されている。なお、このような四対の磁性ドットからなるパターンは、その四対を1組として2組以上あってもよい。
【0057】
このような四対の磁性ドットパターンが形成された試し書き領域Wでは、試し書き記録状態を検証する際、以下のようにして試し書き記録状態が検証される。たとえば図7(A)に示す状態では、試し書き記録処理後にそのまま再生ヘッド2Aを介して試し書き領域Wを読み取ると、再生信号の信号レベルが「2112」のパターンで検出される。「2」は、2つの磁性ドットdを同時に読み取った場合の再生信号の信号レベルであり、「1」は、1つの磁性ドットdを読み取った場合の再生信号の信号レベルである。なお、いずれの磁性ドットdも読み取ることができなかった場合、再生信号の信号レベルは「0」となる。これにより、同図(A’)に示す状態では、再生信号の信号レベルが「1101」、同図(B)に示す状態では、再生信号の信号レベルが「1211」、同図(B’)に示す状態では、再生信号の信号レベルが「0100」のパターンで検出される。このような試し書き領域Wによれば、試し書き記録状態を検証する際に再生信号の信号レベルのパターンを読み取ることにより、記録トラックT2に対する磁気ヘッド2の位置ずれ量やずれ方向を詳細に認識することができ、その認識結果に基づいて磁気ヘッド2の位置ずれ調整を高精度かつ迅速に行うことができる。
【0058】
図8(A)および(B)に示す実施形態も、図5に示す実施形態の変形例である。この実施形態では、ユーザ領域U内においてディスク周方向Cに並ぶ磁性ドットdと磁性ドットdとの間に試し書き領域Wが形成されている。このような試し書き領域Wによっても、先述した図5および図6の実施形態によるものと同様の効果を得ることができる。
【0059】
図9に示す実施形態では、先述した図1の実施形態における再生信号基準レベル記憶部11に代わり、雰囲気温度検出センサ30が設けられている。磁気ディスク装置A’は、所定の温度範囲での使用を前提としており、その温度範囲では、サーボ領域Sの情報を用いてトラッキング制御を概ね正常に行うことが可能である。一方、所定の温度範囲の境界付近の温度、あるいは温度範囲から外れてしまった場合には、サーボ領域Sの情報を用いたトラッキング制御が不安定になることが懸念される。このような温度によるトラッキング制御の不安定性を解消すべく、図10に示すような雰囲気温度に応じたトラッキング制御を行う。
【0060】
図10に示すように、試し書き制御開始判定部12は、雰囲気温度検出センサ30によって検出された雰囲気温度が所定の許容範囲外にあると判断した場合(S30:YES)、試し書き領域Wを初期化した後、試し書き制御を開始させる(S4)。雰囲気温度が所定の許容範囲内であれば(S30:NO)、そのままS10の記録再生処理が実行される。このような磁気ディスク装置A’によれば、厳しい温度環境下においてトラッキング制御を行う場合でも、正常にトラッキング制御を行うことができる。なお、図9に示す実施形態については、たとえば図5に示すような試し書き領域とし、図6に示すトラッキング制御処理を実行させるようにしてもよい。
【0061】
図11に示す実施形態では、先述した図1の実施形態における再生信号基準レベル記憶部11や雰囲気温度検出センサ30に代わり、振動検出センサ40が設けられている。図12に示すように、試し書き制御開始判定部12は、振動検出センサ40によって検出された振動レベルが所定の許容範囲外にあると判断した場合(S40:YES)、試し書き領域Wを初期化した後、試し書き制御を開始させる(S4)。雰囲気温度が所定の許容範囲内であれば(S40:NO)、そのままS10の記録再生処理が実行される。このような磁気ディスク装置A”によれば、たとえば車載用の装置として振動が激しい環境下において使用される場合であっても、正確にトラッキング制御を行うことができる。なお、図11に示す実施形態についても、たとえば図5に示すような試し書き領域とし、図6に示すトラッキング制御処理を実行させるようにしてもよい。
【0062】
なお、本発明は、上記の各実施形態に限定されるものではない。
【0063】
上記実施形態で示した構成は、あくまでも一例にすぎず、仕様に応じて適宜設計変更することが可能である。
【0064】
たとえば記録トラックのトラックピッチは、記録ヘッドおよび再生ヘッドのヘッド幅に対して最適となるように設定されるが、本発明では、少なくとも記録ヘッドのヘッド幅が2列の記録トラックに跨る程度の大きさとされる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、たとえば垂直磁気記録方式の磁気ディスク装置におけるトラッキング制御に利用することができる。
【符号の説明】
【0066】
A,A’,A” 磁気ディスク装置
S サーボ領域
U ユーザ領域
W 試し書き領域
d 磁性ドット
T1〜T3 記録トラック
Tp トラックピッチ
1 磁気ディスク
2 磁気ヘッド
2A 再生ヘッド
2B 記録ヘッド
10 トラッキング制御回路
13 試し書き位置移動制御部(試し書き位置移動制御手段)
14 試し書き情報記録制御部(試し書き情報記録制御手段)
15 試し書き記録状態検証部(試し書き記録状態検証手段)
16 ヘッド位置ずれ調整部(ヘッド位置ずれ調整手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスク周方向に並ぶ複数の磁性ドットにより記録トラックが形成され、この記録トラックがディスク径方向に所定のトラックピッチで複数列をなすようにユーザ領域が形成されているとともに、上記記録トラックそれぞれのトラック位置を示すためのサーボ領域が上記ユーザ領域とはディスク周方向に離間して形成された磁気ディスクと、
上記記録トラックごとに上記磁性ドットのそれぞれに対して読み書き可能であるとともに、ディスク径方向の書き込み位置が上記記録トラックと記録トラックとの中間位置に合わされた状態ではこれら2列の記録トラックに対して同時に書き込み可能な磁気ヘッドと、
上記磁気ディスクに対して上記磁気ヘッドを対向させつつディスク径方向に往復移動させる磁気ヘッド移動機構と、
上記磁気ヘッドを介して上記サーボ領域を読み取ることで所望とする上記記録トラックのトラック位置を仮決めし、その仮決めされたトラック位置から上記トラックピッチの半ピッチ分ずれた所定の試し書き位置に上記磁気ヘッドを合わせるように上記磁気ヘッド移動機構を制御する試し書き位置移動制御手段と、
上記試し書き位置に合わせられた上記磁気ヘッドにより、上記ユーザ領域の一部に対して所定の試し書き情報を書き込むように制御する試し書き情報記録制御手段と、
上記試し書き情報の書き込み後、上記磁気ヘッドを介して上記ユーザ領域の一部を読み取ることにより、上記試し書き情報が上記記録トラックの2列に記録された状態か1列に記録された状態かを検証する試し書き記録状態検証手段と、
上記試し書き情報が上記記録トラックの2列に記録された状態の場合、上記磁気ヘッドをディスク径方向に上記トラックピッチの半ピッチ分戻すように移動させる一方、上記試し書き情報が上記記録トラックの1列に記録された状態の場合、上記磁気ヘッドをディスク径方向に所定量ずつ移動させ、上記所望とする記録トラックに対して上記磁気ヘッドの位置ずれを調整するヘッド位置ずれ調整手段と、
を備えている、磁気ディスク装置。
【請求項2】
上記ユーザ領域の一部においては、上記記録トラックの所定列数ごとに上記複数の磁性ドットがディスク周方向に位置ずれしている、請求項1に記載の磁気ディスク装置。
【請求項3】
ディスク周方向に並ぶ複数の磁性ドットにより記録トラックが形成され、この記録トラックがディスク径方向に所定のトラックピッチで複数列をなすようにユーザ領域が形成されているとともに、上記記録トラックの所定列を基準列としてそのディスク径方向内外両側にずれるように少なくとも一対の上記磁性ドットが試し書き領域として形成されており、かつ、上記記録トラックそれぞれのトラック位置を示すためのサーボ領域が上記ユーザ領域および試し書き領域とはディスク周方向に離間して形成された磁気ディスクと、
上記記録トラックごとに上記磁性ドットのそれぞれに対して読み書き可能であるとともに、ディスク径方向の書き込み位置が上記基準列の記録トラックに合わされた状態では上記試し書き領域における一対の磁性ドットに対して同時に書き込み可能な磁気ヘッドと、
上記磁気ディスクに対して上記磁気ヘッドを対向させつつディスク径方向に往復移動させる磁気ヘッド移動機構と、
上記磁気ヘッドを介して上記サーボ領域を読み取ることで上記基準列の記録トラックのトラック位置を仮決めし、その仮決めされたトラック位置を所定の試し書き位置として上記磁気ヘッドを合わせるように上記磁気ヘッド移動機構を制御する試し書き位置移動制御手段と、
上記試し書き位置に合わせられた上記磁気ヘッドにより、上記試し書き領域に対して所定の試し書き情報を書き込むように制御する試し書き情報記録制御手段と、
上記試し書き情報の書き込み後、上記磁気ヘッドを介して上記試し書き領域を読み取ることにより、上記試し書き情報が上記試し書き領域における一対の磁性ドット全てに記録された状態かディスク径方向片側の磁性ドットのみに記録された状態かを検証する試し書き記録状態検証手段と、
上記試し書き情報が上記一対の磁性ドット全てに記録された状態の場合、上記磁気ヘッドのディスク径方向位置が上記基準列の記録トラックに位置合わせされた状態と判断する一方、上記試し書き情報がディスク径方向片側の磁性ドットのみに記録された状態の場合、上記磁気ヘッドをディスク径方向に所定量ずつ移動させ、上記基準列の記録トラックに対して上記磁気ヘッドの位置ずれを調整するヘッド位置ずれ調整手段と、
を備えている、磁気ディスク装置。
【請求項4】
上記試し書き領域は、上記ユーザ領域と上記サーボ領域との間に形成されている、請求項3に記載の磁気ディスク装置。
【請求項5】
上記試し書き領域は、上記ユーザ領域内に存在するように形成されている、請求項3に記載の磁気ディスク装置。
【請求項6】
上記試し書き位置移動制御手段は、上記磁気ヘッドからの再生信号の信号レベルが所定の基準レベルより小さいとき、または、雰囲気温度が所定の許容範囲を逸脱するとき、あるいは、外乱による振動が所定の許容範囲を逸脱するときに上記磁気ヘッド移動機構を制御する、請求項1ないし5のいずれかに記載の磁気ディスク装置。
【請求項7】
ディスク周方向に並ぶ複数の磁性ドットにより記録トラックが形成され、この記録トラックがディスク径方向に所定のトラックピッチで複数列をなすようにユーザ領域が形成されているとともに、上記記録トラックそれぞれのトラック位置を示すためのサーボ領域が上記ユーザ領域とはディスク周方向に離間して形成された磁気ディスクと、
上記記録トラックごとに上記磁性ドットのそれぞれに対して読み書き可能であるとともに、ディスク径方向の書き込み位置が上記記録トラックと記録トラックとの中間位置に合わされた状態ではこれら2列の記録トラックに対して同時に書き込み可能な磁気ヘッドと、
上記磁気ディスクに対して上記磁気ヘッドを対向させつつディスク径方向に往復移動させる磁気ヘッド移動機構と、
を備えた磁気ディスク装置に組み込まれ、所望とする上記記録トラックに上記磁気ヘッドを位置決めするためのトラッキング制御回路であって、
上記磁気ヘッドを介して上記サーボ領域を読み取ることで上記所望とする記録トラックのトラック位置を仮決めし、その仮決めされたトラック位置から上記トラックピッチの半ピッチ分ずれた所定の試し書き位置に上記磁気ヘッドを合わせるように上記磁気ヘッド移動機構を制御する試し書き位置移動制御手段と、
上記試し書き位置に合わせられた上記磁気ヘッドにより、上記ユーザ領域の一部に対して所定の試し書き情報を書き込むように制御する試し書き情報記録制御手段と、
上記試し書き情報の書き込み後、上記磁気ヘッドを介して上記ユーザ領域の一部を読み取ることにより、上記試し書き情報が上記記録トラックの2列に記録された状態か1列に記録された状態かを検証する試し書き記録状態検証手段と、
上記試し書き情報が上記記録トラックの2列に記録された状態の場合、上記磁気ヘッドをディスク径方向に上記トラックピッチの半ピッチ分移動させる一方、上記試し書き情報が上記記録トラックの1列に記録された状態の場合、上記磁気ヘッドをディスク径方向に所定量ずつ移動させ、上記所望とする記録トラックに対して上記磁気ヘッドの位置ずれを調整するヘッド位置ずれ調整手段と、
を備えている、トラッキング制御回路。
【請求項8】
ディスク周方向に並ぶ複数の磁性ドットにより記録トラックが形成され、この記録トラックがディスク径方向に所定のトラックピッチで複数列をなすようにユーザ領域が形成されているとともに、上記記録トラックの所定列を基準列としてそのディスク径方向内外両側にずれるように少なくとも一対の上記磁性ドットが試し書き領域として形成されており、かつ、上記記録トラックそれぞれのトラック位置を示すためのサーボ領域が上記ユーザ領域および試し書き領域とはディスク周方向に離間して形成された磁気ディスクと、
上記記録トラックごとに上記磁性ドットのそれぞれに対して読み書き可能であるとともに、ディスク径方向の書き込み位置が上記基準列の記録トラックに合わされた状態では上記試し書き領域における一対の磁性ドットに対して同時に書き込み可能な磁気ヘッドと、
上記磁気ディスクに対して上記磁気ヘッドを対向させつつディスク径方向に往復移動させる磁気ヘッド移動機構と、
を備えた磁気ディスク装置に組み込まれ、上記基準列の記録トラックに対して上記磁気ヘッドを位置合わせするトラッキング制御回路であって、
上記磁気ヘッドを介して上記サーボ領域を読み取ることで上記基準列の記録トラックのトラック位置を仮決めし、その仮決めされたトラック位置を所定の試し書き位置として上記磁気ヘッドを合わせるように上記磁気ヘッド移動機構を制御する試し書き位置移動制御手段と、
上記試し書き位置に合わせられた上記磁気ヘッドにより、上記試し書き領域に対して所定の試し書き情報を書き込むように制御する試し書き情報記録制御手段と、
上記試し書き情報の書き込み後、上記磁気ヘッドを介して上記試し書き領域を読み取ることにより、上記試し書き情報が上記試し書き領域における一対の磁性ドット全てに記録された状態かディスク径方向片側の磁性ドットのみに記録された状態かを検証する試し書き記録状態検証手段と、
上記試し書き情報が上記一対の磁性ドット全てに記録された状態の場合、上記磁気ヘッドのディスク径方向位置が上記基準列の記録トラックに位置合わせされた状態と判断する一方、上記試し書き情報がディスク径方向片側の磁性ドットのみに記録された状態の場合、上記磁気ヘッドをディスク径方向に所定量ずつ移動させ、上記基準列の記録トラックに対して上記磁気ヘッドの位置ずれを調整するヘッド位置ずれ調整手段と、
を備えている、トラッキング制御回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−211866(P2010−211866A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−57760(P2009−57760)
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(309033264)東芝ストレージデバイス株式会社 (255)
【Fターム(参考)】