説明

磁気ディスク装置による計測方法、磁気ディスク装置

【課題】ユーザデータ用増幅率を変化させつつ計測可能とすることでダイナミックレンジを拡大すること。
【解決手段】増幅率制御部42は、ヘッド60がサーボデータを読み出している場合とユーザデータを読み出している場合とで読出用増幅部41の増幅率を変更する。さらに、ヒーター設定部24は、ヘッド60のタッチダウン検出を行なう場合に、ヒーター温度とともに読出用増幅率を変化させることで、リードライトチャネル30内のAGCにおけるダイナミックレンジを拡大し、AGCのゲイン収束値が0に張り付くことで発生するタッチダウンの誤検出を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ヘッドが読み出した磁気情報が、位置決め用のサーボデータであるか任意のデータを読み書き可能なユーザエリアに格納されたユーザデータであるかによってプリアンプの増幅率を変化させる磁気ディスク装置、およびその計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータの補助記憶装置として利用されるものの一つに磁気ディスク装置がある。この磁気ディスク装置は、磁性体を塗布したディスクを備え、該ディスクを磁化することでデータを記憶する。
【0003】
磁気ディスク装置が記憶するデータには大きく分けて2つの種類があり、一つはサーボデータ、一方はユーザデータと呼ばれる。サーボデータは、磁気ディスク装置がヘッドの位置を制御するために予め書き込まれたデータである。一方のユーザデータは、コンピュータから書き込み命令を受け付けた後、磁気ディスク装置によってディスクに書き込まれるデータである(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
磁気ディスク装置は、上記した各データをディスクから読み出す際、まず、再生ヘッドによって、ディスクから発生される磁界から信号を生成する。生成された信号は微弱であるため、磁気ディスク装置は、該信号をプリアンプに入力して増幅する。このとき、信号がどれだけ増幅されるかは、該プリアンプに対して設定される増幅率に基づく。
【0005】
一般的に、この増幅率は、サーボデータの信号やユーザデータの信号に対して、個々に設定されず、共通に設定される。つまり、プリアンプは、2種類の信号を区別せずに、共通に設定された増幅率で増幅する。例えば、プリアンプは、入力された信号がサーボデータの信号であっても、ユーザデータの信号であっても、同様に10倍に増幅する。
【0006】
【特許文献1】特開2005−302295号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、磁気ディスク装置におけるユーザデータの記録密度は高まる一方である。記録密度が高まれば高まるほど、水平記録方式ではディスク上の磁極の間隔が狭まり、垂直記録方式では同じくディスク上の極自体の面積が小さくなる。その結果、磁極がつくる磁界の強さが弱くなり、再生ヘッドによって生成されるユーザデータの信号もさらに微弱になってきている。
【0008】
一方、磁気ディスク装置がヘッドの位置を制御するために必要な情報は従来と特に変わることもないので、現在でもサーボデータの記録密度は従来と同程度で済んでいる。そのため、サーボデータの記録密度を高めるために、磁極の間隔を狭めたり極自体の面積を小さくしたりする必要がなく、磁極がつくる磁界の強さは従来と変わらない。その結果、ユーザデータの信号と、サーボデータの信号との信号強度の差が大きくなってきている。
【0009】
このような状況下で、プリアンプが、従来と同じように共通に設定された増幅率でサーボデータの信号やユーザデータの信号を増幅してしまうと、ユーザデータの信号に対する信号処理が行えなくなり、磁気ディスク装置がユーザデータを読み出せなくなる場合があるという課題があった。
【0010】
特に、タッチダウン計測でヘッドのヒーター設定を変えて行なう測定のように、計測途中でデータ部の出力が変わっていく計測や、通常動作時とは異なる出力となる条件下での計測においては、データ部での読み取り出力がダイナミックレンジを逸脱して計測を正しく行なうことができない場合が発生する。
【0011】
このため、データ部の読取出力に対する増幅率(ユーザデータ用増幅率)をサーボ部の読取出力に対する増幅率(サーボデータ用増幅率)に対して独立させ、さらにユーザデータ用増幅率を変化させつつ計測可能とすることでダイナミックレンジを拡大することが重要な課題となっていた。
【0012】
そこで、この発明は、上述した従来技術の課題を解決するためになされたものであり、サーボデータ用増幅率を固定し、ユーザデータ用増幅率を変更しつつデータ読取が可能なディスク装置、およびその計測方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明は、磁気ディスク表面から読み出した磁気情報が位置決め用のサーボデータである場合にはサーボデータ用増幅率で増幅し、前記磁気情報が任意のデータを読み書き可能なユーザエリアに格納されたユーザデータである場合にはユーザデータ用増幅率で増幅するプリアンプを備えた磁気ディスク装置において、前記ユーザデータを読み出して前記ユーザデータ用増幅率で増幅し、前記プリアンプ出力ステップの出力の大きさを評価し、前記出力評価ステップによる評価の結果、必要である場合には前記ユーザデータ用増幅率を変化させて前記プリアンプ出力ステップを再実行させて前記ユーザデータの信号強度を計測することを要件とする。
【0014】
また、本発明は、磁気ディスク表面から磁気情報を読み出すヘッドを温度変化させて浮上量を変更する場合に、計測時に前記ヘッドの温度変化に伴う前記信号強度の変化を計測することを要件とする。
【発明の効果】
【0015】
開示の装置、方法は、ユーザデータ用増幅率を変更しつつ信号強度を計測するので、増幅率が固定である場合に比して広いダイナミックレンジを得ることができる。そのため、例えばヒーターの特性を正確に計測し、ひいてはディスク装置の読み書き性能を向上することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る磁気ディスク装置による計測方法、および磁気ディスク装置の好適な実施例について詳細に説明する。
【実施例】
【0017】
図1は、実施例に係る磁気ディスク装置の概要および構成を説明するための図である。同図に示すように、磁気ディスク装置10は、主制御部20と、リードライトチャネル30と、プリアンプ40と、アクチュエータ50と、ヘッド60と、ヒーター61と、ディスク70とを備える。そして、磁気ディスク装置10は、ホストコンピュータ200に接続されて補助記憶装置となり、該ホストコンピュータ200からデータの書き込み指示や読み出し指示を受け付け、指示に応じてデータの保存や再生を行う。
【0018】
以下では、同図を用いて、まず、各部の概要を述べつつサーボゲート信号の説明を行い、サーボゲート信号が入力されるプリアンプ40の具体的な動作を説明し、最後に主制御部20の動作を説明する。
【0019】
ディスク70は、図1に示すように、複数のリング状の領域に分けられており、各リング状の領域についてはトラックと呼ばれている。また、ディスク70は、各トラックがさらに所定の領域に分けられており、各領域にサーボデータおよびユーザデータが磁気情報として書き込まれる。
【0020】
具体的には、ディスク70は、斜線部分で示す領域にサーボデータ、それ以外の領域にユーザデータが磁気情報として書き込まれる。なお、サーボデータとは、磁気ディスク装置10がヘッド60の位置を制御するために予めディスク70に書き込まれる磁気情報である。他方のユーザデータとは、磁気ディスク装置10が、ホストコンピュータ200から受け付けた書き込み指示に応じてディスク70に書き込む磁気情報である。
【0021】
また、ディスク70は、磁気ディスク装置10の動作時には、所定の回転数で回転している。
【0022】
ヘッド60は、ディスク70表面から一定の隙間を保って浮上し、該ディスク70表面から磁気情報を読み出す。ところで、ディスク70は回転しているので、ヘッド60は、サーボデータとしての磁気情報が書き込まれたサーボ領域およびユーザデータとしての磁気情報が書き込まれたデータ領域それぞれと交互に向き合う。その結果、ヘッド60は、それぞれの領域に書き込まれた磁気情報に基づいてサーボデータの信号およびユーザデータの信号を生成し、プリアンプ40に出力している。
【0023】
そして、プリアンプ40は、ヘッド60からの出力信号を所定の増幅率で増幅し、リードライトチャネル30に出力している。
【0024】
上記したように、磁気ディスク装置10の動作時、リードライトチャネル30には、サーボデータの信号またはユーザデータの信号いずれかが常に入力されている。
【0025】
リードライトチャネル30は、主制御部20の指示に応じて、プリアンプ40からの入力信号に対して種々の信号処理を行い、処理後の信号を主制御部20に出力する。
【0026】
この信号処理を行う際、リードライトチャネル30は、現にプリアンプ40から入力されている信号が、サーボデータの信号であるのか、ユーザデータの信号であるのかを識別し、サーボデータの信号だけを処理して主制御部20に処理結果を出力したり、ユーザデータの信号だけを処理して主制御部20に処理結果を出力したりする必要がある。
【0027】
サーボゲート信号は、ヘッド60が読み出した磁気情報が、位置決め用のサーボデータであるか任意のデータを読み書き可能なユーザエリアに格納されたユーザデータであるかを示す信号であり、主制御部20内のサーボゲート信号生成部23で生成される。リードライトチャネル30は、このサーボゲート信号を用いて、プリアンプ40からの入力信号をサーボデータの信号とユーザデータの信号に切り分けて処理する。
【0028】
例えば、出力レベルが所定値から他方の所定値へと一定間隔で交互に変わる信号をサーボゲート信号としてもよい。その場合には、リードライトチャネル30は、サーボゲート信号が所定値で入力されている間はプリアンプ40から入力されている信号をサーボデータの信号と判断し、出力レベルが変わって、サーボゲート信号が他方の所定値で入力されている間はプリアンプ40から入力されている信号をユーザデータの信号と判断する。
【0029】
以上がサーボゲート信号の説明である。次に、サーボゲート信号が入力されたプリアンプ40の動作を具体的に説明する。本発明に係る磁気ディスク装置10では、このサーボゲート信号がリードライトチャネル30のほか、プリアンプ40にも入力される。
【0030】
プリアンプ40は、ヘッド60の出力を増幅し、設定情報記憶部43と、増幅率制御部42と、読出用増幅部41と、書込用増幅部44とを備える。なお、サーボゲート信号は、増幅率制御部42に入力される。
【0031】
読出用増幅部41は、ヘッドの出力を所定の増幅率で増幅する。なお、読出用増幅部41の増幅率は可変である。
【0032】
書込用増幅部44は、リードライトチャネル30からの出力を所定の増幅率で増幅し、増幅後の信号をヘッド60に出力する。
【0033】
設定情報記憶部43は、サーボデータの信号に対する第1の増幅率(サーボデータ用増幅率)と、ユーザデータの信号に対する第2の増幅率(ユーザデータ用増幅率)とを記憶する。例えば、図2に示すように、設定情報記憶部43aは、サーボデータの信号に対する増幅率「A」と、ユーザデータの信号に対する「B」とを記憶する。なお、図2は、設定情報記憶部43が記憶する情報の例を示す図である。
【0034】
増幅率制御部42は、サーボゲート信号に基づき、磁気情報がサーボデータである場合とユーザデータである場合とで読出用増幅部41の増幅率を変化させる。
【0035】
例えば、サーボゲート信号が、出力レベルが所定値から他方の所定値へと一定間隔で交互に変わる信号である場合の増幅率制御部42の処理動作を図3のフローチャートを用いて説明する。
【0036】
図3は、増幅率制御部42の処理動作を説明するフローチャートであり、同図に示す処理フローは磁気ディスク装置10の動作中繰り返し実行される。
【0037】
増幅率制御部42は、入力されているサーボゲート信号の出力レベルが所定値の場合には(ステップS110肯定)、現にヘッド60から入力中の信号をサーボデータの信号と判断する。したがって、増幅率制御部42は、設定情報記憶部43を参照し(ステップS120)、読出用増幅部41の増幅率をサーボデータの信号用の増幅率「A」に設定する(ステップS130)。
【0038】
一方、増幅率制御部42は、入力されているサーボゲート信号の出力レベルが他方の所定値の場合には(ステップS110否定)、現にヘッド60から入力中の信号をユーザデータの信号と判断する。したがって、増幅率制御部42は、設定情報記憶部43を参照し(ステップS140)、読出用増幅部41の増幅率をユーザデータの信号用の増幅率「B」に設定する(ステップS150)。
【0039】
以上がプリアンプ40の動作の説明である。次に、主制御部20の説明を行い、磁気ディスク装置10が、ホストコンピュータ200の補助記憶装置としてデータの書き込みまたはデータの読み出しを行う処理を説明する。
【0040】
主制御部20は、磁気ディスク装置10全体を制御し、ホストコンピュータ200から受け付けたデータの書き込み指示またはデータの読み出し指示に応じた処理を実施する。具体的には、主制御部20は、ヘッド位置制御部21と、読み書き制御部22と、サーボゲート信号生成部23と、ヒーター設定部24と、ヒーター制御部25とを備える。なお、ホストコンピュータ200は、データの読み出し指示を行う場合には、読み出し命令と、ディスク70上のどこから読み出すかを示す読出位置情報と、を磁気ディスク装置10に送信する。また、ホストコンピュータ200は、書き込み指示を行う場合には、書き込み命令と、書き込むデータと、該データをディスク70上のどこに書き込むかを示す書込位置情報と、を磁気ディスク装置10に送信する。
【0041】
ヘッド位置制御部21は、アクチュエータ50を制御することによってヘッド60を目的のトラックまで運ぶ。
【0042】
具体的には、ヘッド位置制御部21は、ホストコンピュータ200から送信された読み出し命令と、読出位置情報とを受け取る。そして、ヘッド位置制御部21は、リードライトチャネル30に対し、サーボデータの信号を処理してヘッド60のディスク上の現在位置を通知するように指示する。すると、リードライトチャネル30から該ディスク上の現在位置情報が出力されるので、ヘッド位置制御部21は、該ディスク上の現在位置情報と、読出位置情報とに基づいてアクチュエータ50を制御し、ヘッド60を目的のトラックまで運ぶ。ヘッド60の位置決めが終わると、ヘッド位置制御部21は、読み出し命令と、読出位置情報とを読み書き制御部22に出力する。
【0043】
また、ヘッド位置制御部21は、ホストコンピュータ200から送信された書き込み命令と、書き込むデータと、書込位置情報を受け取る。そして、ヘッド位置制御部21は、リードライトチャネル30に対し、サーボデータの信号を処理してヘッド60のディスク上の現在位置を取得するように指示する。すると、リードライトチャネル30から該ディスク上の現在位置情報が出力されるので、ヘッド位置制御部21は、該ディスク上の現在位置情報と、書込位置情報とに基づいてアクチュエータ50を制御し、ヘッド60を目的のトラックまで運ぶ。ヘッド60の位置決めが終わると、ヘッド位置制御部21は、書き込み命令と、書き込むデータと、書込位置情報とを読み書き制御部22に出力する。
【0044】
読み書き制御部22は、ホストコンピュータ200から送信された書き込みデータをディスク70に保存したり、ディスク70からデータを再生してホストコンピュータ200に送信したりする。
【0045】
具体的には、読み書き制御部22は、ヘッド位置制御部21から読み出し命令と、読出位置情報とを受け取ると、リードライトチャネル30に対し、サーボデータの信号を処理してヘッド60のトラック上の現在位置を取得するように指示する。すると、リードライトチャネル30から該トラック上の現在位置情報が出力されるので、読み書き制御部22は、該トラック上の現在位置情報と、読出位置情報とに基づいてリードライトチャネル30に対し、ユーザデータの信号を処理してユーザデータを取得するように指示する。すると、リードライトチャネル30からユーザデータが出力されるので、読み書き制御部22は、該ユーザデータをホストコンピュータ200に送信する。
【0046】
また、読み書き制御部22は、ヘッド位置制御部21から書き込み命令と、書き込むデータと、書込位置情報とを受け取ると、リードライトチャネル30に対し、サーボデータの信号を処理してヘッド60のトラック上の現在位置を取得するように指示する。すると、リードライトチャネル30から該トラック上の現在位置情報が出力されるので、読み書き制御部22は、該トラック上の現在位置情報と、書込位置情報とに基づく所定のタイミングでリードライトチャネル30に書き込みデータを出力する。
【0047】
以上に説明したように、ヘッド位置制御部21や読み書き制御部22は、リードライトチャネル30に対して種々の指示をする。この際、リードライトチャネル30には、個々に設定された増幅率に基づいてプリアンプ40が増幅したサーボデータの信号やユーザデータの信号が入力される。したがって、ユーザデータの信号と、サーボデータの信号との電圧の差が大きくても、2種類の信号それぞれに対して適切な増幅率が設定されていれば、リードライトチャネル30においてユーザデータの信号に対する信号処理が行えなくなり、磁気ディスク装置10がデータを読み出せなくなるということはない。
【0048】
ヒーター61は、ヘッド60を温度変化させて、ディスク70に対するヘッド60の浮上量を調節する。このヒーター61の制御を主制御部20内部のヒーター制御25によって行なう。
【0049】
ヒーター設定部24は、ヒーター61の適切な設定値を求めるため、ヒーター50の特性を計測する処理部である。具体的にはヒーター設定部24は、図4に示すようにヒーター61の温度を徐々に上げながらリードライトチャネル30におけるAGCのゲイン収束値の変化を計測し、ゲイン収束値の飽和点(ヒーターの温度が上昇してもゲインが下がらなくなる、すなわちヘッド60がディスク70にタッチダウンする温度)を求める。
【0050】
しかしながら、途中でゲイン収束値が0に張り付いてしまった場合、実際にはタッチダウンが発生していなくとも、ゲイン収束値がそれ以下に下がることができないためにゲイン収束値が飽和し、誤検出が生じる。
【0051】
そこで、ヒーター設定部24は、増幅率制御部42にユーザデータ用増幅率を変更させ、図5に示したようにプリアンプによるゲインを下げることでAGCのゲイン収束値がタッチダウンによる飽和を計測できるように制御する。
【0052】
図6は、ヒーター設定部24によるタッチダウン計測の処理動作を説明するフローチャートであり、図7はフロー中で用いるプリアンプの設定の具体例である。図7では、プリアンプの増幅率は、0〜3の4段階となっており、設定「0」でゲインは10、設定「1」でゲインは20、設定「2」でゲインは40、設定「3」でゲインは80となっている。そして、このプリアンプの設定は、サーボデータ用増幅率PreAmpGainSとユーザデータ用増幅率PreAmpGainDとでそれぞれ個別に設定可能である。
【0053】
図6ではヒーター設定部24は、まず通常時に使用するために適正に設定されたユーザデータ用増幅率の値をバックアップし(ステップS101)、ユーザデータエリアのAGC収束値DGainを測定する(ステップS202)。
【0054】
そして、DGainが閾値Th1より小さく、かつプリアンプの増幅率が0より大きいかを判定する(ステップS203)。ここで、閾値Th1は、AGC収束値が小さく、0に張り付く可能性があるか(現在のプリアンプ設定が大きすぎるか)否かを判定する閾値である。
【0055】
DGainが閾値Th1より小さく、かつプリアンプの増幅率が0より大きい場合(ステップS203肯定)、ヒーター設定部24は、プリアンプの増幅率を一段階下げて(ステップS209)、再度ステップS202に移行する。
【0056】
一方、DGainが閾値Th1以下か、プリアンプの増幅率が0である場合(ステップS203否定)、ヒーター設定部24は、ヒーターの温度を上げて(ステップS204)、ユーザデータエリアのAGC収束値DGainを測定する(ステップS205)。
【0057】
そして、ヒーターの温度変化に対してDGainが飽和したか否かによってタッチダウンの発生を検知する(ステップS206)。そして、タッチダウンが発生していなければ(ステップS206否定)、再度ヒーター温度の上昇制御(ステップS204)に移行する。
【0058】
その結果、DGainが飽和した場合(ステップS206肯定)、ヒーター設定部24は、DGainが閾値Th2より小さく、かつプリアンプの増幅率が0より大きいかを判定する(ステップS207)。ここで、閾値Th2は、AGC収束値の飽和が0に張り付いたことによって発生したものであるか否か(タッチダウン検知が誤検知であるか否か)を判断するものであり、理想であれば1である。
【0059】
そして、DGainが閾値Th2より小さく、かつプリアンプの増幅率が0より大きい場合(ステップS207肯定)、プリアンプの増幅率を一段階下げて(ステップS209)、再度ステップS202に移行する。
【0060】
一方、DGainが閾値Th2以上か、プリアンプの増幅率が0である場合(ステップS207否定)、タッチダウンを正しく検知できたものとして、ユーザデータ用増幅率の値をバックアップした通常時用の値に戻し(ステップS208)、処理を終了する。
【0061】
以上説明してきたように、本実施例にかかる磁気ディスク装置では、ユーザデータ用増幅率を変更しつつ信号強度を計測するので、増幅率が固定である場合に比して広いダイナミックレンジを得ることができる。そのため、例えばヒーターの特性を正確に計測し、ひいてはディスク装置の読み書き性能を向上することができる。そのさい、サーボデータに対するゲイン設定は固定であるので、オントラック精度が低下することもない。
【0062】
また、本実施例では磁気ディスク装置の機能として説明をおこなったが、磁気ディスク装置に外部接続した装置がユーザデータの増幅率を制御しつつ本発明にかかる計測方法を実施することも出来る。
【0063】
また、本発明を磁気ディスク装置自体や磁気ディスク装置に外部接続された装置が実行するプログラムとして実現することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0064】
以上のように、本発明に係る磁気ディスク装置による計測方法、および磁気ディスク装置は、磁気ディスク装置による信号計測に有効であり、特に認識可能な信号強度のダイナミックレンジ拡大に適する。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】実施例に係る磁気ディスク装置の概要および構成を説明するための図である。
【図2】設定情報記憶部43が記憶する情報の例を示す図である。
【図3】増幅率制御部42の処理動作を説明するフローチャートである。
【図4】AGCゲイン収束値によるタッチダウン検出について説明する説明図である。
【図5】プリアンプの増幅率を変化させたタッチダウン検出について説明する説明図である。
【図6】本実施例にかかるタッチダウン検出の処理動作を説明するフローチャートである。
【図7】プリアンプ設定の具体例について説明する説明図である。
【符号の説明】
【0066】
10 磁気ディスク装置
20 主制御部
21 ヘッド位置制御部
22 読み書き制御部
23 サーボゲート信号生成部
24 ヒーター設定部
25 ヒーター制御部
30 リードライトチャネル
40 プリアンプ
41 読出用増幅部
42 増幅率制御部
43 設定情報記憶部
50 アクチュエータ
60 ヘッド
61 ヒーター
70 ディスク
83 切替部
90ディスク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気ディスク表面から読み出した磁気情報が位置決め用のサーボデータである場合にはサーボデータ用増幅率で増幅し、前記磁気情報が任意のデータを読み書き可能なユーザエリアに格納されたユーザデータである場合にはユーザデータ用増幅率で増幅するプリアンプを備えた磁気ディスク装置による計測方法であって、
前記ユーザデータを読み出して前記ユーザデータ用増幅率で増幅して出力するプリアンプ出力ステップと、
前記プリアンプ出力ステップの出力の大きさを評価する出力評価ステップと、
前記出力評価ステップによる評価の結果、必要である場合には前記ユーザデータ用増幅率を変化させて前記プリアンプ出力ステップを再実行させて前記ユーザデータの信号強度を計測する計測ステップと、
を含んだこと特徴とする磁気ディスク装置による計測方法。
【請求項2】
磁気ディスク表面から磁気情報を読み出すヘッドを温度変化させて浮上量を変更するヘッド温度制御ステップをさらに含み、前記計測ステップは前記ヘッドの温度変化に伴う前記信号強度の変化を計測することを特徴とする請求項1に記載の磁気ディスク装置による計測方法。
【請求項3】
磁気ディスク表面から読み出した磁気情報が位置決め用のサーボデータである場合にはサーボデータ用増幅率で増幅し、前記磁気情報が任意のデータを読み書き可能なユーザエリアに格納されたユーザデータである場合にはユーザデータ用増幅率で増幅するプリアンプを備えた磁気ディスク装置であって、
前記ユーザデータを読み出して前記ユーザデータ用増幅率で増幅した場合のプリアンプの出力の大きさを評価する出力評価部と、
前記出力評価部による評価の結果、必要である場合には前記ユーザデータ用増幅率を変化させて前記プリアンプ出力ステップを再実行させて前記ユーザデータの信号強度を計測する計測部と、
を備えたこと特徴とする磁気ディスク装置。
【請求項4】
磁気ディスク表面から磁気情報を読み出すヘッドを温度変化させて浮上量を変更するヘッド温度制御部をさらに備え、前記計測部は前記ヘッドの温度変化に伴う前記信号強度の変化を計測することを特徴とする請求項3に記載の磁気ディスク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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