説明

磁気ディスク装置の検査方法、製造方法、および磁気ディスク装置

【課題】磁気ディスクに書き込まれたサーボ・トラックの幅を検査する方法を提供する。
【解決手段】再生ヘッドを磁気ディスクの半径方向に移動させながら各サーボ・トラックに順番に位置付けてバースト・パターンの再生信号を読み出す。バースト・パターンから再生した再生信号の出力値からトラック幅を検査する検査信号値401を生成する。検査信号値の良否を判定する初期基準値403を設定する。P2までは検査信号値を初期基準値で評価する。P1とP2の間で連続する所定のサーボ・トラック数に対応する検査信号値がすべて初期基準値から外れたとき、P2で初期基準値を修正して修正基準値を生成する。P2以降は検査信号値を修正基準値で評価する。本検査方法は、マグネットで消磁された領域と消磁用のデータ・パターンが書き込まれた領域が重複する重複消磁領域のサーボ・トラックの検査に有効である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気ディスクに書き込まれたサーボ・トラックのトラック幅を検査する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
データ面サーボ方式の磁気ディスク装置では、磁気ディスクのデータ記録面に放射状に書き込まれたサーボ・データから再生ヘッドが再生したサーボ信号に基づいて磁気ヘッドの位置決めをしている。サーボ・データは再生ヘッドが再生した信号に基づいてMPUが再生ヘッドの位置を認識することができるように構成されているため磁気ディスク上に同心円状の複数のサーボ・トラックを定義することができる。サーボ・トラックは、磁気ディスクの半径方向(以後、適宜単に半径方向という。)において再生ヘッドを正確に所定の位置に位置決めをするために一定の間隔で書き込まれている必要がある。
【0003】
製造段階では磁気ディスクにサーボ・データを書き込んだあとに、半径方向におけるサーボ・トラックのトラック幅を検査して、許容範囲にあるか否かを検査している。トラック幅が許容範囲から外れたサーボ・トラックの数が所定数の範囲にある間は、当該サーボ・トラックのシリンダ番号を欠陥登録テーブルに登録して使用しないようにして対処している。欠陥登録テーブルに登録されるシリンダ番号の数が所定数を超えたときには当該磁気ディスク装置を欠陥品として再生処理をすることになっているため、歩留まりが低下する。サーボ・トラックの幅を検査するときに、磁気ディスク装置に実装される再生ヘッドでバースト・パターンを再生した再生信号の出力値から代用特性としての検査信号値を生成し基準値と比較して判断する方法がある。
【0004】
特許文献1は、ハードディスクに記録されたトラック幅の不均一によって発生するオフトラック現象を防止する技術を開示する。同文献に記載された技術では、サーボ・セクタに含まれるA、B、C、Dのバースト領域を利用してトラック幅が正常であるか否かを判断し、トラック幅が正常でないと判断したときはサーボ・セクタのサーボ信号を消去してトラックを再形成する。
【特許文献1】特開2003−331545号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
製造段階においては、磁気ディスク装置の組み立てが完了したあとに各種の動作試験が行われる。動作試験に合格しない磁気ディスク装置は、それまでの工程で磁気ディスクに書き込んだサーボ・データや試験データを消磁装置で一括して消磁して新たなサーボ・データを書き込んだりパラメータを調整したりした後に再度動作試験を行う。消磁装置には一定方向に磁束を発生しているマグネットが装備されており、これを磁気ディスクの表面に近づけて磁気ディスクを回転させて、磁気ディスクを全体に渡って一定方向に磁化して過去に書き込まれた磁気信号を除去する。
【0006】
このとき磁気ディスクは磁気ディスク装置に取り付けられた状態であるため、磁気ディスクに対するマグネットの配置に物理的な制約があり、スピンドル軸の周囲には消磁できない領域が残ってしまう。消磁できない領域には新しいサーボ・データを書き込むことができないので、最内周サーボ・トラックから半径方向に存在する一定の領域では、磁気ディスク装置に実装される磁気ヘッドを使用して消磁用のデータ・パターンを書き込んでいる。消磁用のデータ・パターンとマグネットで消磁した領域とは、安全のために部分的に重複させている。本発明の発明者達は、検査信号値を使用してサーボ・トラックのトラック幅の検査を行う方法において、この重複する領域でサーボ・トラックのトラック幅が連続して不合格になる割合が高いことに気付いた。さらに検査で不合格になったサーボ・トラックを調べてみると、トラック幅に異常がなくても検査信号値が不合格になる値を示すことがわかってきた。
【0007】
その原因は、重複する領域に書き込まれたサーボ・データから再生した再生信号の出力値には、一定のバイアス値が加わるため、検査信号値がサーボ・トラックのトラック幅を正確に代表しなくなるためである。検査信号値を利用したトラック幅の検査方法は簡便で、2つの消磁方式による消磁が重複する領域以外では正確な判定を得ることができるため、この検査方法を用いてトラック幅を磁気ディスクの全体に渡って正確に判断する方法が望まれている。
【0008】
そこで本発明の目的は、磁気ディスクのサーボ・トラックのトラック幅を正確に検査する方法を提供することにある。さらに本発明の目的は、サーボ・トラックのトラック幅を正確に検査する方法を用いた磁気ディスク装置の製造方法を提供することにある。さらに本発明の目的は、サーボ・トラックのトラック幅を正確に検査することができる磁気ディスク装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、サーボ・トラックのトラック幅をバースト・パターンから再生した再生信号の出力値から計算した検査信号値により評価する検査方法に関する。ここにトラック幅はトラック・ピッチと同義である。本発明では、検査信号値が実際のトラック幅を代表しない状態になったことを検出したのちに、検査信号値を評価する基準値を修正して当該サーボ・トラックを誤って欠陥サーボ・トラックと認定しないようにする。本発明では、検査にかかる磁気ディスク装置に実装される再生ヘッド、MPU、および検査プログラムを使用してトラック幅の検査を行う。しかし、本発明の思想には検査にかかる磁気ディスク装置と外部の検査装置との連係動作で検査することも含んでいる。
【0010】
磁気ディスク装置は、サーボ・トラックの幅を検査する間、磁気ディスク装置の再生ヘッドを磁気ディスクの半径方向に移動させながら各サーボ・トラックのバースト・パターンの再生信号を順番に読み出す。再生信号の出力値は再生ヘッドの各サーボ・トラックに対する半径方向の位置関係でその大きさが変化する。再生信号の出力値は、バースト・パターンを再生した信号の振幅に対応した値である。再生信号の出力値からトラック幅を検査する検査信号値TWが生成される。サーボ・トラックには、磁気ディスクの円周方向にサーボ・セクタが離散的に配置されている。同一のサーボ・トラック上にある各サーボ・セクタから再生された再生信号の複数の出力値から最大値、平均値、中央値などの代表値を計算して、代表値に基づいて検査信号値TWを生成してもよい。
【0011】
磁気ディスク装置では、検査信号値TWを評価する初期基準値S(B)を設定してトラック幅の良否を評価する。初期基準値S(B)は中心値、上限値、および下限値で構成することができる。この場合、磁気ディスク装置は検査信号値TWが初期基準値S(B)の上限値と下限値との間に入っていれば、サーボ・トラックのトラック幅は適正であると評価する。
【0012】
再生ヘッドを最外周サーボ・トラック方向または最内周サーボ・トラック方向に順番に移動させながら、初期基準値S(B)で検査信号値TWを評価したとき、連続する所定のサーボ・トラック数Xに対応する検査信号値TWがすべて初期基準値S(B)から外れる場合がある。磁気ディスクに書き込まれた通常のサーボ・データでは、サーボ・トラック数Xに対応する検査信号値TWがすべて初期基準値S(B)から外れる状態はほとんどない。本発明では、このような場合に、初期基準値S(B)を修正して修正基準値S(C)を生成して、検査信号値TWの値を修正基準値S(C)で評価する。
【0013】
MPUは、検査対象とするサーボ・トラックnから生成した検査信号値TW(n)とサーボ・トラックnに隣接して直前に検査されたサーボ・トラック(n−1)に適用した基準値S(n−1)から計算し、サーボ・トラックnのトラック幅の評価基準を緩和する方向に修正した修正基準値S(C)を生成する。緩和する量は、サーボ・トラック(n−1)に対する基準値S(n−1)に対して、サーボ・トラックnに対する修正基準値S(C)が急激に変化しないように設定することで、基準値を緩和したことにより誤った判断をしてしまうことを防ぐ。たとえば、検査対象とするサーボ・トラックnから生成した検査信号値TW(n)とサーボ・トラックnに隣接するサーボ・トラック(n−1)に適用した基準値S(n−1)との差に相当する値に基づいて生成した補正値の所定の割合を基準値S(n−1)に対して加算または減算して修正基準値S(C)を計算すると、検査信号値TWが連続的に初期基準値S(B)からはずれる場合に、修正基準値S(C)を徐々に緩和させてゆくことができる。
【0014】
磁気ディスクには、消磁用のデータ・パターンが書き込まれた領域とマグネットで消磁された領域が重複する領域が形成され、重複する領域にサーボ・データが書き込まれることがある。以後、重複する領域を重複消磁領域といい、それ以外の領域でデータ・パターンが書き込まれた領域またはマグネットで消磁された領域を単一消磁領域ということにする。重複消磁領域では、サーボ・データのバースト・パターンから再生した信号にバイアス値が加わることが経験されている。本発明においては、MPUがサーボ・トラック数Xに対応するそれぞれの検査信号値TWがすべて初期基準値S(B)から外れたときに、検査対象のサーボ・トラックが重複消磁領域に存在することを認識する。そして、重複消磁領域のサーボ・トラックを検査していることを認識した後は修正基準値S(C)を設定して、それ以降のサーボ・トラックの検査を修正基準値S(C)で行うようにしている。
【0015】
修正基準値S(C)は、初期基準値S(B)よりも検査信号値TWに対して緩和された基準値であるため、トラック幅が実際には異常なサーボ・トラックを適正であると判断する可能性が高まる。本発明においては、連続するサーボ・トラックについて生成したそれぞれの検査信号値TWがすべて初期基準値S(B)から外れるような場合でも、サーボ・トラック数Xに対する検査信号値TWは必ず初期基準値S(B)で評価される。その結果、サーボ・トラック数X分のサーボ・トラックは不合格になって欠陥登録テーブルに登録されるか、初期基準値S(B)で評価されてトラック幅が正常であることが保証される。重複消磁領域では、バースト・パターンの再生信号の出力値にバイアス値が加わる。リード/ライト・オフセットに含まれるサーボ・トラックでは、MPUがユーザ・データの記録位置を正確に認識する必要があるため、バースト・パターンの再生信号の出力値は安定している必要がある。したがって、リード/ライト・オフセットの中にバイアス値が加わるサーボ・トラックとバイアス値が加わらないサーボ・トラックが含まれることは望ましくない。
【0016】
サーボ・トラック数Xとしてリード/ライト・オフセットに対応するサーボ・トラック数を設定すれば、重複消磁領域と単一消磁領域の境界からリード/ライト・オフセットに対応するサーボ・トラック数だけ重複消磁領域に入った領域のサーボ・トラックは初期基準値S(B)で評価されるため、トラック幅が異常であると判定されるか、再生出力値はバイアス値の影響がサーボ制御に支障が生ずるほどではないため正常であると判定される。したがって、リード/ライト・オフセットに対応するサーボ・トラックの中に、問題が生ずるほどのバイアス値が加わるサーボ・トラックと、バイアス値が加わらないサーボ・トラックが混在することを防ぎ安定した再生動作を行うことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、磁気ディスクのサーボ・トラックのトラック幅を正確に検査する方法を提供することができた。さらに本発明により、サーボ・トラックのトラック幅を正確に検査する方法を用いた磁気ディスク装置の製造方法を提供することができた。さらに本発明により、サーボ・トラックのトラック幅を正確に検査することができる磁気ディスク装置を提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
[磁気ディスク装置の構成]
図1は、本発明の実施の形態にかかる磁気ディスク装置10の概略ブロック図である。磁気ディスク装置10は、ホスト装置11に接続可能な構成となっている。ホスト・インターフェース回路13は、ホスト装置11と磁気ディスク装置10とのデータ通信を制御するATA規格に対応する回路である。ホスト装置11と磁気ディスク装置10との間では、ホスト・インターフェース回路13を通じてデータ、コマンド、および制御情報などの入出力が行われる。ホスト装置11は、磁気ディスク装置10にデータを書き込んだり、磁気ディスク装置10からデータを読み取ったりするときに、ホスト・インターフェース回路13上に割り当てられたATAレジスタにアクセスする。
【0019】
入出力制御部15は、セクタ・バッファ17に対するデータの入出力を制御する。さらに入出力制御部15は、磁気ディスク100にデータを記録するときには、付帯情報とデータ・セットからなる物理セクタのフォーマット構造を生成する。フォーマット部23は、各物理セクタに付加するプリアンブル、SYNC、ポスト・アンブルといった付帯情報を生成して入出力制御部15に送る。リード・チャネル31は、磁気ディスク100から読み出したデータを処理して入出力制御部15に送る。リード・チャネル31は、さらに磁気ディスク100のサーボ・トラックから読み出したサーボ・データを処理してサーボ信号をサーボ・コントローラ27に送る。ライト・チャネル33は物理セクタのフォーマット構造のデータを入出力制御部15から受け取ってこれを処理しヘッド機構37に送る。
【0020】
ヘッド機構37は、磁気ヘッド41と、磁気ヘッド41を磁気ディスク100の所定の位置に位置付けるキャリッジ機構で構成される。磁気ヘッド41は、記録ヘッドと再生ヘッドで構成された複合型として構成されている。MPUユニット21は、プロセッサ、RAM、EEPROM、およびファームウエアを格納するROMなどで構成され、磁気ディスク装置10の記録または再生動作を制御する。ROMに格納されたファームウエアには、本実施の形態にかかるトラック幅の検査を実行する検査プログラムも含まれている。MPUユニット21は、ホスト装置11からホスト・インターフェース回路13のATAレジスタに書き込まれたコマンドを解釈して磁気ディスク装置10の動作を制御する。MPUユニット21は、ホスト装置11からライト・コマンドとともに送られた論理ブロック・アドレス(LBA)に基づいて、ドライバ回路35に信号を送り磁気ヘッド41を所定のLBAを有する物理セクタに位置付けるようにヘッド機構37を制御する。MPUユニット21は、再生ヘッドを所定のサーボ・トラックに位置付けるために位置制御プログラムを実行する。
【0021】
サーボ・コントローラ27は、リード・チャネル31から受け取ったサーボ・データの再生信号を処理してMPUユニット21に位置情報として送る。MPUユニット21はサーボ・コントローラ27から送られた位置情報に基づいて、ヘッド機構37の操作量に対応する制御信号を生成してドライバ35に送る。ドライバ35は、MPUユニット21から指示されたサーボ・トラックに磁気ヘッド41を位置付けるための制御電流を生成して、ヘッド機構37に送る。磁気ディスク装置10を構成するには、これら以外にも多くの周知の要素が必要であるが、本発明には特に関係がないので説明を省略する。また、図1に示した機能ブロックは例示として示したものであり、これらのいくつかの機能を1つの半導体装置に統合したり分割したりすることは当業者が自由になし得ることである。
【0022】
[磁気ディスクのフォーマット構造]
図2は、磁気ディスク100のフォーマット構造を示す図である。磁気ディスク100は、データ面サーボ方式を採用する磁気ディスク装置に適用されるフォーマット構造になっている。磁気ディスク100には、放射状に半径方向に延びた複数のサーボ・セクタ101が書き込まれている。サーボ・セクタ101a、101bの間にはデータ領域103が配置されて複数のデータ・セクタが定義されている。他のサーボ・セクタとデータ領域もほぼ同様の配置関係になっている。
【0023】
磁気ヘッドを通過するデータ・トラックの速度は外周側ほど速い。単位長さ当たりの記録ビット数を外周側と内周側とでできるだけ均一にして記憶容量を増大させるために磁気ディスク100は半径方向において4つのゾーン109、111、113、115に分割されている。各ゾーン内ではデータ領域103に同一周波数のライト・クロックでデータ・セクタの情報が書き込まれるが、外周側のゾーンほどライト・クロックの周波数を高くしてデータ・セクタの数が多くなるようにしている。これをゾーン・ビット・レコーディング方式という。
【0024】
磁気ディスク100には、サーボ・セクタ101により最内周サーボ・トラック107から最外周サーボ・トラック105まで同心円状に複数のサーボ・トラックが定義されており、磁気ディスク100はサーボ・トラックで定義されたデータ・トラックの円周方向にデータ・セクタの単位でユーザ・データを記録する。磁気ディスク装置100は、製造工程において組み立てが完了したあとに磁気ディスク100にセルフ・サーボ・ライト方式でサーボ・データが書き込まれ、磁気ヘッド、アンプ、サーボ・データなどに関連した各種のパラメータが調整されたあとに機能試験が実施される。機能試験に合格しない場合には、再度サーボ・データを書き換える場合がある。このとき磁気ディスク100を磁気ディスク装置10のスピンドル軸に固定した状態で、消磁装置を使って記録面をマグネットで一括消磁(DCイレーズ)する。
【0025】
磁気ディスク100がスピンドル軸に取り付けられた状態では、消磁装置の構造上最内周サーボ・トラック107から最外周サーボ・トラック105に向かって円周117で囲まれる領域を一括消磁することができない。これを補うために、再生行程では磁気ディスク装置100の磁気ヘッド41を使用して最内周トラック107から円周119の領域まで消磁用のデータ・パターンを書き込んでいる。よって、円周117の外側の領域と、円周119の内側の領域には重複消磁領域が発生する。消磁したあとに書き込まれるサーボ・データは、最内周サーボ・トラック107から最外周サーボ・トラック105まで書き込まれるため、重複消磁領域にも書き込まれることになる。
【0026】
[サーボ・セクタのフォーマット構造]
図3はサーボ・セクタ101のフォーマット構造を示す図2の部分的拡大図である。図3には、データ領域103に定義されたデータ・トラックN−1、トラックN、トラックN+1、およびトラックN+2とそれらに円周方向において隣接するサーボ・セクタ101を示している。サーボ・セクタ101は、識別情報領域121と、バースト・パターン領域123とにより構成されている。バースト・パターン領域123には、磁気ディスク100の半径方向に沿ってそれぞれ配列されたメイン・バースト・パターン列123A、123B、およびサブ・バースト・パターン列123C、123Dが設けられている。各バースト・パターン列123A、123B、123Cおよび123Dは、半径方向の寸法が同一になるように書き込まれたバースト・パターンA、B、C、およびDで構成されている。
【0027】
メイン・バースト・パターン列123Aと123Bは、磁気ヘッドを半径方向に移動したとき再生信号の位相が相互に180度シフトした位置に書き込まれており、メイン・バースト・パターンA、Bで構成されている。また、サブ・バースト・パターン列123Cと123Dは、磁気ヘッドを半径方向に移動したとき再生信号の位相が相互に180度シフトした位置に記録されており、サブ・バースト・パターンC、Dで構成されている。メイン・バースト・パターンとサブ・バースト・パターンとは、再生信号の位相が相互に90度シフトした関係となるように記録されている。各バースト・パターンの半径方向の寸法すなわちバースト・パターンのピッチはサーボ・トラックのトラック幅Pに等しくまたデータ・トラック102の幅にほぼ等しい。
【0028】
ここで、メイン・バースト・パターンAとメイン・バースト・パターンBの半径方向の境界をメイン・バースト・パターンの中心といい、サブ・バースト・パターンCとサブ・バースト・パターンDの半径方向の境界をサブ・バースト・パターンの中心ということにする。メイン・バースト・パターンの中心はサーボ・トラックの位置を定義する。図3に示したサーボ・データでは、メイン・バースト・パターンの中心とデータ・トラック102の中心とが一致しており、サブ・バースト・パターンの中心と各データ・トラック102の境界またはデータ・トラック間のマージンの中心とが一致している。ただし、本発明の範囲はこのような構成に限定されるものではなく、メイン・バースト・パターンの中心とデータ・トラックの中心が一致しない構成であっても適用することができる。
【0029】
また、記録ヘッドと再生ヘッドが離隔してスライダに形成された複合型の磁気ヘッドには、後述するリード/ライト・オフセットがあるため円周方向においてデータ・トラック102の中心とサーボ・トラックの中心とは通常一致しない。つまり、再生ヘッドが所定のサーボ・トラックに位置付けられたとき、記録ヘッドは半径方向にリード/ライト・オフセットの値だけ離れた位置に位置付けられる。識別情報領域121の先頭には、サーボ・セクタ開始コードが記録されている。また、識別情報領域121には、シリンダ識別番号を示すグレイコード(cyclic binary code:巡回2進符号)、およびサーボ・セクタ101の物理的識別番号を示すコード等が記録されている。
【0030】
磁気ディスク装置に実装される記録ヘッドでバースト・パターンA、B、C、Dを磁気ディスクに書き込む方法としてシームド(seamed)方式とシームレス(seamless)方式がある。シームド方式では、新たなサーボ・パターンを順番に書き込んでゆくときに半径方向に先に長めに書き込んでおいた他のサーボ・パターンの不要な部分を消磁(DCイレーズ)しながら書き込んでゆく。したがって、バースト・パターン領域123では、サーボ・パターンA、B、C、Dが書き込まれている領域以外の領域は、サーボ・データの書き込みのタイミングでも消磁される。シームレス方式では、新たなサーボ・パターンだけを所定の位置に書き込んでゆく。したがって、バースト・パターン領域123では、サーボ・パターンA、B、C、Dが書き込まれている領域以外の領域は、消磁工程で消磁された磁化状態になっている。本発明は、シームド方式およびシームレス方式のいずれの方式で書き込まれたサーボ・データの検査方法にも適用することができるが、シームレス方式で書き込まれた磁気ディスクの検査に特に有効である。
【0031】
[ヨー角とリード/ライト・オフセット]
ロータリー式の磁気ディスク装置では、図4(A)に示すようにヘッド支持機構に支持されたヘッド/スライダ401がヘッド支持機構の回転中心409までの距離を半径とする円周上を回動する。したがって再生ヘッドが磁気ディスク100の所定のサーボ・トラックに位置付けられるときにヘッド支持機構の回転中心409とヘッド/スライダ401の短手側の縁の中心を結ぶ線(以下、これを回動中心線という。)407と、ヘッド/スライダ401の中心位置におけるデータ・トラックの接線403、405との間に一定の角度が発生する。この角度を一般にヨー角という。
【0032】
磁気ディスク100に対してヘッド/スライダ401が最内周サーボ・トラック107に位置付けられているときは、最内周サーボ・トラック107の接線403と回動中心線407とがθ1のヨー角を形成し、ヘッド/スライダ401が最外周サーボ・トラック105に位置付けられているときは、最外周サーボ・トラック105の接線405と回動中心線407とがθ2のヨー角を形成する。図4(A)から明らかなように、ヨー角はヘッド/スライダ401の磁気ディスク100上の半径方向の位置により異なった値となる。
【0033】
ヘッド/スライダ401には、図4(B)に示すようにMRヘッドまたはGMRヘッドといった再生ヘッド413と誘導型の記録ヘッド411が同一スライダに形成されている。再生ヘッド413と記録ヘッド411とは一般に、回動中心線407がライト・ギャップおよびリード・ギャップの中心を通過するようにスライダの磁気ディスクに対する対向面に形成されている。再生ヘッド413と記録ヘッド411とは、回動中心線407の方向に所定のヘッド間隔Lで配置されている。したがって、再生ヘッド413と記録ヘッド411のヘッド間隔Lの半径方向の成分に相当する距離は、ヨー角により変化する。この半径方向の成分に対応する距離を、リード/ライト・オフセット(以下、RWOという。)ということにする。RWOは、ヨー角とヘッド間隔Lで決まる物理的な距離であるが、磁気ディスク装置では、再生ヘッド413と記録ヘッド411との間隔をサーボ・トラックの数から計算して間接的に求めているので、RWOを計算で求めた値で表す場合もある。本明細書では、RWOの物理的な距離をRWO[距離]といい、サーボ・トラックの数で計算したRWOの値をRWO[計算]ということにする。
【0034】
磁気ディスク装置10では、データの書き込み時に再生ヘッド413で磁気ディスク100上に書き込まれたサーボ・データを読み取って再生ヘッド413の位置を決めてから記録ヘッド411でユーザ・データを記録する。ヘッド/スライダ401の位置決め用に再生ヘッド413を使用し、書き込み用に再生ヘッド413からヘッド間距離Lだけ離れた位置にある記録ヘッド411を使用するため、磁気ディスク100の半径方向における実際にユーザ・データが記録される位置は、位置決めに使用したサーボ・トラックの位置である目標位置からRWO[距離]だけオフセットした位置になる。したがって再生時には、目標位置からRWO[距離]だけオフセットした位置に再生ヘッド413を位置決めする必要がある。RWO[距離]は、磁気ディスク100に対するスライダの位置すなわちヨー角で変化するので、再生ヘッドの位置ごとに再生ヘッドを正しく記録された位置に位置付けるためには、磁気ディスク装置がRWO[距離]を正確に認識する必要がある。
【0035】
目標位置に再生ヘッドを位置付けて記録したユーザ・データを再生するために、目標位置から記録位置までのRWO[距離]だけ再生ヘッドを移動させる動作をRWO補正ということにする。MPUユニット21は、位置決め制御プログラムを実行して再生したサーボ・データの出力信号から再生ヘッドの磁気ディスク上における位置を認識する。
【0036】
位置決め制御プログラムは、各サーボ・トラックに関するRWO[距離]を直接認識することはできないので、磁気ディスク100から読み出したサーボ・データの情報をもとにしてRWO補正を行っている。磁気ディスク装置10の製造段階では、磁気ディスク100にサーボ・データを書き込んだあとにすべてのサーボ・トラックについてRWOを実測する。実測したRWOをRWO[実測]ということにする。RWO[実測]は、RWO[距離]に対応するサーボ・トラックの数であり、ヘッド間距離L、サーボ・トラックのトラック幅、およびヨー角に依存する。
【0037】
磁気ディスク装置の製造段階ですべてのサーボ・トラックに関するRWO[実測]をメモリに記憶しておき、データの記録再生時に使用する方法も考えられるが、メモリの容量が膨大になるので実際的ではない。一般的な磁気ディスク装置では、磁気ディスクの半径方向に選択した数ポイント分のRWO[実測]だけをメモリに記憶し、メモリに記憶したサーボ・トラック以外のサーボ・トラックに関しては、RWO補正する量をRWO[実測]から計算したRWO[計算]を使用して求めている。位置決め制御プログラムは、RWO[計算]を、RWO[実測]間を直線補完式で補間計算したり、多項式近似による計算をしたりして求める。
【0038】
RWO補正するときにMPUユニット21が扱う量は、サーボ・データから再生した信号に基づいてカウントしたサーボ・トラックの数、またはRWO[計算]のサーボ・トラックの数ということになる。RWO[計算]は、サーボ・トラックが基準トラック・ピッチで書き込まれていることを前提にして求まるように位置決め制御プログラムは構成されている。したがって、RWO補正を行って、ユーザ・データの再生時に再生ヘッド413の位置決めを正確に行うためには、磁気ディスクに書き込まれているサーボ・トラックのトラック・ピッチが磁気ディスク100の各位置で基準トラック・ピッチに対して変動していないことが必要である。
【0039】
図5(A)において、基準サーボ・トラック・ピッチPである300nmでサーボ・データが磁気ディスク100のサーボ・セクタに書き込まれているものとし、ある目標位置であるサーボ・トラック421においてヘッド/スライダ401に形成された再生ヘッド413と記録ヘッド411のRWO[距離]427が3000nmあったとする。この場合、RWO[距離]427は3000/300=10トラックに相当するので、位置決め制御プログラムが再生時に目標トラック421に対するRWO[計算]428を10トラックと計算するように構成しておく。
【0040】
サーボ・トラック421にユーザ・データを記録する時には、最初に再生ヘッド413を目標トラック421に位置決めする。記録ヘッド411は同一スライダに形成されているため、再生ヘッド413が位置決めされた目標位置421からRWO[距離]427だけ離れた位置423にユーザ・データ425を記録する。この場合記録ヘッド411がユーザ・データを記録した位置は、目標位置421から10トラック離れた位置になる。ここに、再生ヘッド413の位置または記録ヘッド411の位置という場合はリード・ギャップの中心またはライト・ギャップの中心を意味している。
【0041】
ユーザ・データ425を再生するときに位置決め制御プログラムは、サーボ・トラック421に対するRWO[計算]である10トラックという情報に基づいてRWO補正をする。具体的には、サーボ・トラック421から位置423に向かって再生ヘッド413を移動させてサーボ・トラックの数をカウントし、10トラック目の位置である位置423に再生ヘッド413を位置付ける。サーボ・トラック・ピッチが基準トラック・ピッチに一致していれば再生ヘッド413は、目標位置421から3000nmオフセットした位置423に位置決めされる。位置423は磁気ディスク100の半径方向の位置におけるユーザ・データ425が記録され位置の中心であり再生時の再生ヘッド413の理想的な位置である。
【0042】
一方、図5(B)のように磁気ディスク100の局部的な領域でサーボ・トラック・ピッチP1が基準トラック・ピッチに比べて4%小さいとした場合には再生時に再生ヘッドをユーザ・データの中心に位置付けることができなくなる。目標サーボ・トラック429にユーザ・データを記録する時には、図5(A)の場合と同様に、目標位置429に再生ヘッド413を位置決めする。記録ヘッド411は、再生ヘッド413が位置決めされた目標サーボ・トラック429からRWO[距離]427(3000nm)だけ離れた位置にユーザ・データ439を記録する。
【0043】
再生時には、位置決め制御プログラムが補完式を使ってサーボ・トラック429のRWO[計算]433を10と計算する。具体的には、サーボ・トラック429から位置437に向かって再生ヘッド413を移動させてサーボ・トラックの数をカウントし、10トラック目の位置である位置435に再生ヘッド413を位置付ける。なお、サーボ・トラックの数は、位置誤差信号(PES)の値により1以下の数も計算できるので、MPUユニット21はサーボ・トラックの中心位置以外の位置も特定することができる。サーボ・トラック・ピッチP1は基準トラック・ピッチPより4%小さいため、10トラック分の距離は10×300×(1−0.04)=2880nmとなり、位置435と実際にユーザ・データ439が記録された位置437との間には3000−2880=120nmのオフセットが生じる。オフセットの量は、RWO[距離]が大きくなるほど増大し、この例では1トラック・ピッチの40%にまで達するため、再生ヘッドが正しくユーザ・データを再生できなくなる。したがって、トラック幅が所定の範囲に入っていることを確認する検査が必要になる。
【0044】
[トラック幅の検査方法]
つぎに、本実施の形態によりサーボ・トラックのトラック幅を検査する方法を図6のフローチャートを参照して説明する。トラック幅は、磁気ディスク装置10に実装されるMPUユニット21が検査プログラムを実行し、再生ヘッド413がバースト・パターンから再生した出力信号値を処理することで検査される。トラック幅は、磁気ディスク装置10を実用的に使用するときのサーボ制御の方法で再生ヘッドを図3に示したメイン・バースト・パターンの中心に位置付けてバースト・パターンの再生信号を再生し、トラック幅の代用特性を示す検査信号値TWを式(1)または式(2)を用いて計算することにより検査される。式(1)、式(2)においてAMP(A)、AMP(B)、AMP(C)、AMP(D)は、それぞれバースト・パターンA、B、C、Dから再生した再生信号をリード・チャネル33の増幅器で増幅した信号の振幅値である。
【0045】
【数1】

【0046】
【数2】

【0047】
検査信号値TWの計算に当たっては、1つのサーボ・トラック上で、円周方向に離散的に配置された複数のサーボ・セクタのそれぞれから再生したバースト・パターンの振幅値の平均値をAMP(A)、AMP(B)、AMP(C)、AMP(D)として使用する。平均値は、1つのサーボ・トラックに対する検査信号値TWの代表値としての意味を有しており、中央値、最大値、または最小値などの他の代表値を使用することもできる。式(1)においては、再生ヘッド413の中心がメイン・バースト・パターンA、Bの中心とサブ・バースト・パターンCの中心位置が一致するときに100になる。式(2)において、メイン・バースト・パターンA、Bの中心とサブ・バースト・パターンDの中心位置が一致するときも同様である。
【0048】
再生ヘッド413を所定のサーボ・トラックに位置付けるときは、MPUユニット21は式(3)を利用して再生ヘッド413の中心をメイン・バースト・パターンの中心に位置付ける。ここに、AMP(A)、AMP(B)は式(1)、(2)で説明した内容と同じである。Kは調整可能な係数でPESゲインともいわれ、Cはサーボ・トラックの中心(メイン・バースト・パターンの中心)におけるPESの値を決めるためのバイアス値で通常は1トラック・ピッチを100hで示すため80hが設定される。
【0049】
【数3】

【0050】
式(3)で計算した信号で再生ヘッド413をメイン・バースト・パターンの中心に位置付けたときに、式(1)または式(2)で計算した検査信号値TWが100にならないときは、書き込まれたバースト・パターンCまたはDの中心とメイン・バースト・パターンA、Bの中心とが実際に一致しないことが考えられる。この場合は、検査信号値TWの大きさが基準値を外れた場合にトラック幅が異常であると判定する。このような判定は、検査信号値TWを使用してトラック幅を検査する上で予定していることであり、当該サーボ・トラックを使用禁止にする必要がある。
【0051】
ブロック201では、検査信号値TWに対する初期基準値S(B)を設定する。初期基準値S(B)としては、本実施の形態においては、中心値を100としその上下10%に上限値と下限値を設定する。よって、初期基準値S(B)の上限値は110となり下限値は90となる。ブロック203では、再生ヘッド413を最内周サーボ・トラック107に位置付けてサーボ・データを再生し、ブロック205では式(1)または式(2)に基づいて検査信号値TWを生成する。ブロック207では、MPU21が、検査信号値TWが初期基準値S(B)の上限値と下限値の範囲に入っているかどうかを判断する。
【0052】
そして、ブロック211でMPUユニット21が最外周サーボ・トラック105に到達したか否かを判断し、最外周サーボ・トラック105に到達するまで再生ヘッド413を1サーボ・トラックずつ最外周サーボ・トラック105方向に移動させながら、式(1)または式(2)のいずれかを使用して検査信号値TWを評価する。よって、すべてのサーボ・トラックのトラック幅が検査される。
【0053】
ブロック213で最外周サーボ・トラック105に到達した時点で検査は終了する。この様子を図8を参照して説明する。図8には、シリンダ番号N+0からN+35までのサーボ・トラックのバースト・パターンから再生した再生信号の出力値から生成した検査信号値TW、当該検査信号値TWを評価する基準値である初期基準値S(B)と修正基準値S(C)が記載されている。初期基準値S(B)と修正基準値S(C)にはそれぞれ中心値と上限値および下限値が設定されている。上限値および下限値はそれぞれ本実施の形態では中心値の+10%と−10%に規定されている。初期基準値S(B)は、MPUユニット21のEEPROMに格納されているが、修正基準値S(C)は検査を開始する段階では磁気ディスク装置10の内部には存在していない。シリンダ番号N+0からN+10までは、検査信号値TWが100となっており、初期基準値S(B)を適用してそれらを評価したときいずれも正常と判断される。図8では、シリンダ番号N+0からN+10までのサーボ・トラックから生成された検査信号値TWは100で、シリンダ番号N+11からN+35までのサーボ・トラックから生成された検査信号値TWは80となっている。このような検査信号値TWは、典型的にはシリンダ番号N+11からN+35までのサーボ・データが重複消磁領域に書き込まれているときに生成される。
【0054】
図2で説明したように、円周117と最内周サーボ・トラック107との間は、磁気ディスク装置10に実装される記録ヘッドで、消磁用のデータ・パターンが書き込まれ、かつ、マグネットによる一括消磁がされていないので、サーボ・トラックの幅を代用する検査信号値TWを計算するAMP(A)、AMP(B)、AMP(C)、AMP(D)は、通常は正常な値で安定している。しかし、円周119と円周117の間の領域のように、消磁用のデータ・パターンとマグネットによる一括消磁が重複して施されている重複消磁領域では、各バースト・パターンの再生信号の出力値であるAMP(A)、AMP(B)、AMP(C)、AMP(D)に一定のバイアス値が加わることがわかっている。バイアス値をΔとしたとき、検査信号値TWは式(4)のようになり、バイアス値Δの影響で検査信号値TWが初期基準値S(B)から外れてしまうことがある。プラスのバイアス値+Δは、検査信号値TWを大きくするように作用し、マイナスのバイアス値−Δは、検査信号値TW小さくするように作用する。
【0055】
【数4】

【0056】
バイアス値Δは重複消磁領域に含まれるサーボ・トラックの全体に渡って影響するので、検査信号値TWが初期基準値S(B)から外れる状態は重複消磁領域に書き込まれたサーボ・データの連続するサーボ・トラックに対する検査信号値TWに現れる。式(4)で計算した検査信号値TWは、メイン・バースト・パターンA、Bの中心とサブ・バースト・パターンCまたはDの中心が一致している場合でも、初期基準値S(B)から外れることがある。しかし、式(3)に基づいてPESを計算して再生ヘッドの制御をする場合は、バイアス値Δが相殺されて影響がなくなるためこれらのサーボ・トラックは実際には使用可能である。バイアス値Δに起因して検査信号値TWが初期基準値S(B)から外れる場合には、これを欠陥セクタと認定して欠陥登録テーブルに登録する必要はない。
【0057】
実際に使用可能なサーボ・トラックを欠陥と認定してしまうと、欠陥サーボ・トラックの数が多くなり、磁気ディスク装置を欠陥として処理する必要がでてくるので歩留まりが低下するという問題が発生する。重複消磁領域のようにバイアス値Δが検査信号値TWに影響を与える領域では、初期基準値S(B)を使って検査信号値TWを評価すると、正常なサーボ・トラックを欠陥であると判断することがあるので、これを改善する必要がある。
【0058】
本実施の形態では、重複消磁領域に書き込まれて再生信号の出力値にバイアス値Δが加わったサーボ・トラックを、トラック幅が正常であるにもかかわらず欠陥であると判断しないようにするために、MPUユニット21は再生ヘッド413が重複消磁領域に入ったことを認識して、初期基準値S(B)をダイナミックに修正する。図6に戻って、ブロック207で、検査信号値TWが初期基準値S(B)から外れると、ブロック215では当該サーボ・トラックのシリンダ番号を欠陥登録テーブルに登録する。欠陥登録テーブルは、MPUユニット21のEEPROMに格納されており、磁気ディスク装置が動作するときにRAMに読み出されてMPUユニット21が、欠陥サーボ・トラックのシリンダ番号を認識するために使用される。
【0059】
ブロック217では、検査信号値TWが初期基準値S(B)から外れたサーボ・トラックの数が連続して所定数Xを超えたか否かを判断する。本実施の形態では所定数Xとして10個を設定している。連続する所定数Xの数は、RWOのサーボ・トラック数またはその最大値に設定することが望ましいがその理由は後に説明する。図8のシリンダ番号N+11からN+20までのサーボ・トラックは、検査信号値TWが80になり初期基準値S(B)の下限値より小さいためトラック幅が異常と判断された状態を示している。
【0060】
検査信号値TWが初期基準値S(B)から外れるサーボ・トラックの数が、散発的に発生する場合は、サーボ・データの書き込み時に磁気ディスク装置に何らかの外乱が加わって実際のサーボ・トラックの幅が異常になったと考えられるが、連続する所定数Xのサーボ・トラックに対する検査信号値TWがすべて初期基準値S(B)から外れるという状態は、重複消磁領域以外では通常あり得ない。したがって、ブロック221では検査対象のサーボ・トラックが重複消磁領域に入ったと判断して、重複消磁領域において検査信号値TWを適正に判断するために初期基準値S(B)を修正して修正基準値S(C)を生成する。
【0061】
修正基準値S(C)は、式5を利用して生成する。式(5)においてS(nー1)は、検査対象であるサーボ・トラックnの1つ前に検査したサーボ・トラック(n−1)のバースト・パターンを再生して生成した検査信号値TW(n−1)を評価するために使用した基準値の中心値で、Mは正の整数で、TW(n)は検査対象とするサーボ・トラックnのバースト・パターンを再生して生成した検査信号値である。S(n−1)は、初期基準値S(B)または修正基準値S(C)のいずれかである。
【0062】
【数5】

【0063】
式(5)の第2項は、サーボ・トラック(n−1)の評価に使用した基準値S(n−1)を補正する補正値である。補正値は、検査対象であるサーボ・トラックnに対する検査信号値TW(n)とS(n−1)の差の1/Mだけ、S(nー1)に修正を加えるという意味を有する。式(5)は、検査信号値TW(n)が、S(n−1)とTW(n)との間に差がある限り、徐々に基準値S(n−1)を修正して修正基準値S(C)をダイナミックに修正することを意味する。検査信号値TWの変化分だけ初期基準値S(B)を修正すると、検査信号値TW(n)がバイアス値Δの影響ではなく、実際のトラック幅に異常がある場合にも正常であると判断する可能性があるため、式(5)のようにS(n−1)とTW(n)との差の1/Mずつ基準値S(n−1)を修正することでそのような危険性を排除する。本実施の形態ではM=10に設定している。図8のシリンダ番号N+21のサーボ・トラックnについて生成した検査信号値TW(n)を評価するための修正基準値S(C)は、式(5)においてS(nー1)=100、TW(n)=80、M=10を代入して98となる。修正基準値S(C)の下限値は、0.9を乗じた値である88.2となる。同様にシリンダ番号N+22のサーボ・トラックnについて生成した検査信号値TW(n)を評価するための修正基準値S(C)は、式(5)においてS(nー1)=98、TW(n)=80、M=10を代入して96.2となる。修正基準値S(C)の下限値は、0.9を乗じた値である86.58となる。
【0064】
ブロック223でシリンダ番号N+21のサーボ・トラックについて生成した検査信号値TWは、修正基準値S(C)の下限値(88.2)より小さいため当該サーボ・トラックは異常と判断され、ブロック227でシリンダ番号が欠陥登録テーブルに登録される。ブロック229でMPUユニット21が最外周サーボ・トラック105まで検査したと判断するまでブロック231に移行して1シリンダずつ再生ヘッド413を最外周サーボ・トラック105まで移動させる。ブロック221からブロック231まで繰り返して検査してゆくと、シリンダN+22からシリンダN+27までは、MPUユニット21がブロック225で検査信号値TWを異常と判断してブロック227で欠陥登録テーブルに登録する。
【0065】
しかし、シリンダN+28以降のサーボ・トラックに対する検査では、検査信号値TWが修正基準値S(C)の下限値より大きくなるため、MPUユニット21はブロック225でそれらのサーボ・トラックを正常と判断する。したがって、MPUユニット21はシリンダ番号N+28からN+35までのサーボ・トラックを欠陥登録テーブルに登録しない。シリンダ番号N+36以降のサーボ・トラックから生成した検査信号値TWが継続的に80であれば、式(5)によりやがて、修正基準値S(C)の中心値は80になり下限値は70になる。よって、検査信号値TWが70より大きい場合には、MPUユニット21は当該サーボ・トラックを欠陥登録テーブルに登録しない。図8では、重複消磁領域で、検査信号値TWが単一消磁領域より小さい一定の値になっているが、本発明は検査信号値TWを基準値と比較するだけなので、検査信号値TWが変動する場合にも適用することができる。
【0066】
つぎに図7のフローチャートを参照して、検査対象となるサーボ・トラックが図2の円周119より最外周サーボ・トラック105側に移行した場合について説明する。円周119より外側は単一消磁領域であるため、連続する所定のサーボ・トラック数Xから生成した検査信号値TWがすべて初期基準値S(B)を超えることはない。したがって、単一消磁領域では、初期基準値S(B)を使用することが望ましい。図7のフローチャートは、ブロック221からブロック233までは、図6の同一参照番号のブロックと同一内容なので説明を省略する。ブロック301ではMPUユニット21は、検査信号値TW(n)が初期基準値S(B)の範囲に入っているか否かを判断する。初期基準値S(B)の範囲に入っている場合は、ブロック303でサーボ・トラックの数をカウントし、ブロック305では、サーボ・トラックの数が連続10個に達したか否かを判断する。
【0067】
ブロック305で、連続10個のサーボ・トラックから生成した検査信号値TWが初期基準値S(B)の範囲に入っていると判断した場合は、MPUユニット21は修正基準値S(C)に代えて、初期基準値S(B)を使用するように設定を変更し、図6のブロック201に移行する。なお、この間MPUユニット21は、ブロック223からブロック231までを継続して実行しており、修正基準値S(C)の中心値は徐々に初期基準値S(B)の中心値に近づいてゆく。修正基準値S(C)から初期基準値S(B)に戻すときも基準値を徐々に変化させてトラック幅を誤って判断することを防いでいる。これまでは、検査信号値TWが初期基準値S(B)より小さい場合を例にして説明してきたが、単一消磁領域で検査信号値TWが初期基準値S(B)より大きくなる場合も同様の手順で検査することができる。
【0068】
[重複消磁領域における検査信号値と基準値との関係]
図9は、図6、図7の手順に従ってサーボ・トラックのトラック幅を検査するときの重複消磁領域における検査信号値TWと基準値の関係を示す図である。図9において、ライン401は、各サーボ・トラックから生成した検査信号値TWを示し、ライン403は検査信号値TWを評価するために設定した初期基準値S(B)または修正基準値S(C)の下限値を示している。位置P1より左側の最内周サーボ・トラック107側は単一消磁領域であり、これらの領域にあるサーボ・トラックから生成された検査信号値TWは100で、これに対して初期基準値S(B)が設定されている。
【0069】
再生ヘッド413は最内周サーボ・トラック107側から最外周サーボ・トラック105側に向かって、1サーボ・トラックずつサーボ・データを再生し、式(1)、(2)で検査信号値TWを生成してトラック幅を検査しているものとする。位置P1で再生ヘッド413が重複消磁領域に入り、検査信号値TWは80に低下している。これに対して位置P2まで初期基準値S(B)が設定されている。位置P1と位置P2の間にあるサーボ・データから生成された検査信号値TWは初期基準値S(B)より小さいので、すべてのサーボ・トラックが欠陥であると認定され欠陥登録テーブルに登録される。図6、図8で説明した例では、位置P1と位置P2の間のサーボ・トラック数Xは10個である。位置P2は図6のブロック221に相当して、MPUユニット21は検査対象のサーボ・トラックが重複消磁領域に入っていると判断して修正基準値S(C)を生成し、これを検査信号値TWを評価する基準値として設定する。
【0070】
位置P2と位置P3の間では検査信号値TWが修正基準値S(C)で評価されるが、依然として検査信号値TWは修正基準値S(C)より小さいので、MPUユニット21はこの間に存在するサーボ・トラックを欠陥登録テーブルに登録する。検査信号値TWがその評価に適用された修正基準値S(C)より小さい間は式(5)でさらに修正基準値S(C)が小さくなるように修正されている。そして、再生ヘッド413が位置P3を超えると、検査信号値TWは修正基準値S(C)より大きくなるので、MPUユニット21は検査したサーボ・トラックを正常であると判断して、欠陥登録テーブルには登録しない。位置P2から位置P4までは、修正基準値S(C)の中心値より検査信号値TW(n)が小さい限り修正基準値S(C)は徐々に低下し、位置P4では修正基準値S(C)の中心値は検査信号値TWの80に一致し、下限値は72になる。
【0071】
再生ヘッド413が位置P5に到達したとき、重複消磁領域が終了し再び単一消磁領域に入って検査信号値TWの値は100になる。これに応じて修正基準値S(C)は徐々に上昇する。MPUユニット21が図7のブロック305で判断するように、連続する10個のサーボ・トラック数Xから生成した検査信号値TWが位置P6で初期基準値S(B)の範囲に入ったとき、MPUユニット21は、基準値を修正基準値S(C)から初期基準値S(B)に戻す。位置P6以降は、図4のブロック201から開始する手順で検査を継続する。従来は位置P1から位置P5までのサーボ・トラックはすべて欠陥登録テーブルに登録されていたが、本実施の形態にかかる手順によれば位置P3から位置P5までのサーボ・トラックは欠陥登録テーブルに登録されないので、誤って登録されるサーボ・トラックの数を減らすことができる。
【0072】
[重複消磁領域における欠陥サーボ・トラックの登録]
図10は、重複消磁領域における欠陥サーボ・トラックの登録とRWOとの関係を説明する図である。ライン417とライン411の間にある領域は重複消磁領域で、ライン417の最内周サーボ・トラック107側とライン411の最外周サーボ・トラック105側は、単一消磁領域である。本実施の形態では、初期基準値S(B)を修正して修正基準値S(C)を生成するタイミングを判断するために検査信号値TWがすべて初期基準値S(B)から外れた連続する所定のサーボ・トラック数X導入している。本実施の形態ではサーボ・トラック数を磁気ディスク100におけるRWO[計算]の最大値または、再生ヘッド413の位置ごとに定まるRWO[計算]の値に設定する。重複消磁領域のバースト・パターンに対する再生出力値にはバイアス値が加わり、検査信号値TWは初期基準値S(B)から外れると仮定したときに、サーボ・トラック数XをRWO[計算]に設定すると、ライン417とライン415の間およびライン411とライン413との間にあるサーボ・トラックに対する検査信号値TWはMPUユニット21が初期基準値S(B)を使用して評価するため、欠陥サーボ・トラックとして欠陥登録テーブルに登録される。欠陥登録テーブルに登録されない場合は、検査信号値TWが初期基準値S(B)の範囲に入ることが保証されることになる。
【0073】
図4、図5を参照して説明したように、磁気ディスク装置では、MPUユニット21が、サーボ・トラックの数およびPESを計算してRWO補正をするため、再生ヘッド413と記録ヘッド411との間にある各サーボ・トラックのトラック幅が所定の範囲内に入っていないと再生動作を適切に行うことができなくなる。重複消磁領域では単一消磁領域に対してバースト・パターンを再生した出力値にバイアス値が加わるので、RWO補正をする際に再生ヘッド413と記録ヘッド411との間に存在するバースト・パターンから再生した出力値が変動すると、安定したRWO補正ができない危険性がでてくる。
【0074】
図10では、ライン417とライン415の間およびライン411とライン413との間にあるサーボ・トラックは、初期基準値S(B)で評価されて再生出力値が単一消磁領域に相当することが保証されているか、あるいは、欠陥登録テーブルに登録されて使用できないように設定されるので、RWO補正を安定して行うことができるようになる。図9に示した手順では、重複消磁領域と単一消磁領域の一方の境界だけにサーボ・トラック数Xが設定されているが、サーボ・トラックの検査を最外周サーボ・トラック105側と最内周サーボ・トラック107との間で両方向から行うことで、図10のように境界の両側に初期基準値S(B)で評価されるサーボ・トラック数Xを設定することができるようになる。
【0075】
これまで本発明について図面に示した特定の実施の形態をもって説明してきたが、本発明は図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の効果を奏する限り、これまで知られたいかなる構成であっても採用することができることはいうまでもないことである。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】磁気ディスク装置の概略ブロック図である。
【図2】磁気ディスクのフォーマット構造を示す図である。
【図3】サーボ・セクタのフォーマット構造を示す図である。
【図4】磁気ディスク装置のヨー角とRWOを説明する図である。
【図5】RWO補正を説明する図である。
【図6】トラック幅の検査をする手順を示したフローチャートである。
【図7】トラック幅の検査をする手順を示したフローチャートである。
【図8】検査信号値、初期基準値、修正基準値の一例を示す図である。
【図9】サーボ・トラックのトラック幅を検査するときの重複消磁領域における検査信号値TW(n)と基準値の関係を示す図である
【図10】重複消磁領域における欠陥サーボ・トラックの登録とRWOとの関係を説明する図である。
【符号の説明】
【0077】
21…MPU
101…サーボ・セクタ
102…データ・トラック
105…最外周サーボ・トラック
107…最内周サーボ・トラック
401…ヘッド/スライダ
413…再生ヘッド
411…記録ヘッド



【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気ディスク装置において、磁気ディスクに書き込まれたサーボ・トラックの幅を検査する方法であって、
前記磁気ディスク装置の再生ヘッドを前記磁気ディスクの半径方向に移動させながら各サーボ・トラックに順番に位置付けて各サーボ・トラックのバースト・パターンの再生信号を読み出すステップと、
前記再生信号の出力値からトラック幅を検査する検査信号値TWを生成するステップと、
前記検査信号値TWの良否を判定する初期基準値S(B)を設定するステップと、
前記検査信号値TWを前記初期基準値S(B)で評価する第1の評価ステップと、
前記第1の評価ステップにおいて連続する所定のサーボ・トラック数Xに対応する前記検査信号値TWがすべて前記初期基準値S(B)から外れたとき前記初期基準値S(B)を修正して修正基準値S(C)を生成するステップと、
前記検査信号値TWの値を前記修正基準値S(C)で評価する第2の評価ステップと
を有する検査方法。
【請求項2】
前記サーボ・トラックの第1のバースト・パターンから再生した再生信号の出力値をAMP(A)とし、再生信号の位相が前記AMP(A)に対して前記磁気ディスクの半径方向に180度変位した位置に配置された第2のバースト・パターンから再生した再生信号の出力値をAMP(B)とし、前記第1のバースト・パターンと前記第2のバースト・パターンの間の中心に配置された第3のバースト・パターンから再生した再生信号の出力値をAMP(C)としたとき、前記検査信号値TWを、式(1)
【数1】

を利用して生成する請求項1記載の検査方法。
【請求項3】
前記修正基準値S(C)を、検査対象とするサーボ・トラックnについて生成した検査信号値TW(n)と前記サーボ・トラックnに隣接するサーボ・トラック(n−1)に適用した基準値S(n−1)との差に基づいて生成した補正値と、前記基準値S(n−1)とを使用して生成する請求項1記載の検査方法。
【請求項4】
前記基準値S(n−1)は、前記初期基準値S(B)または前記修正基準値S(C)のいずれかである請求項3記載の検査方法。
【請求項5】
Mを正の整数としたとき前記修正基準値S(C)を式(2)
【数2】

を利用して生成する請求項3記載の検査方法。
【請求項6】
前記第1の評価ステップにおいて前記サーボ・トラック数Xから生成したそれぞれの前記検査信号値TWがすべて前記初期基準値S(B)から外れたと判断したとき前記修正基準値S(C)を生成するステップを開始する請求項1記載の検査方法。
【請求項7】
前記第2の評価ステップにおいて前記サーボ・トラック数Xから生成したそれぞれの前記検査信号値TWがすべて前記初期基準値S(B)の範囲に入ったと判断したとき前記修正基準値S(C)に代えて前記初期基準値S(B)を設定するステップを有する請求項1記載の検査方法。
【請求項8】
前記修正基準値S(C)を生成するステップにおける前記サーボ・トラック数Xが、再生ヘッドと記録ヘッドとの間に発生するリード/ライト・オフセットに対応するサーボ・トラック数である請求項1記載の検査方法。
【請求項9】
前記修正基準値S(C)を生成するステップにおける前記サーボ・トラック数Xが、前記磁気ディスクにおいて再生ヘッドと記録ヘッドとの間に発生するリード/ライト・オフセットに対応するサーボ・トラック数の最大値である請求項1記載の検査方法。
【請求項10】
前記検査信号値TWを生成するステップが、前記サーボ・トラックの円周方向に配置された複数のサーボ・セクタのバースト・パターンから再生したそれぞれの再生信号の出力値に関する代表値から生成するステップを含む請求項1記載の検査方法。
【請求項11】
前記バースト・パターンがシームド・パターンである請求項1記載の検査方法。
【請求項12】
前記再生ヘッドを前記磁気ディスクの最内周サーボ・トラックから最外周サーボ・トラックに移動させながら各サーボ・トラックに順番に位置付けて各サーボ・トラックのバースト・パターンの再生信号を読み出すステップと、前記再生ヘッドを前記最外周サーボ・トラックから前記最内周サーボ・トラックに移動させながら各サーボ・トラックに順番に位置付けて各サーボ・トラックのバースト・パターンの再生信号を読み出すステップとを有する請求項1記載の検査方法。
【請求項13】
前記再生信号を読み出すステップが、第1のバースト・パターンから再生した再生信号の出力値をAMP(A)とし、再生信号の位相が前記AMP(A)に対して前記磁気ディスクの半径方向に180度変位した位置に配置された第2のバースト・パターンから再生した再生信号の出力値をAMP(B)とし、KおよびCを定数としたとき式(3)
【数3】

を使用して計算した信号を利用して前記再生ヘッドを各サーボ・トラックに位置付ける請求項1記載の検査方法。
【請求項14】
磁気ディスク装置を製造する方法であって、
磁気ディスクにサーボ・データを書き込んでサーボ・トラックを定義するステップと、
前記サーボ・トラックのトラック幅を、
(A)前記磁気ディスク装置の再生ヘッドを前記磁気ディスクの半径方向に移動させながら各サーボ・トラックに順番に位置付けて各サーボ・トラックのバースト・パターンの再生信号を読み出すステップと、
(B)前記再生信号の出力値から前記トラック幅を検査する検査信号値TWを生成するステップと、
(C)前記検査信号値TWの良否を判定する初期基準値S(B)を設定するステップと、
(D)前記検査信号値TWを前記初期基準値S(B)で評価する第1の評価ステップと、
(E)前記第1の評価ステップにおいて連続する所定のサーボ・トラック数Xに対応する前記検査信号値TWがすべて前記初期基準値S(B)から外れたとき前記初期基準値S(B)を修正して修正基準値S(C)を生成するステップと、
(F)前記検査信号値TWの値を前記修正基準値S(C)で評価する第2の評価ステップとを含む複数のステップで検査するステップと、
前記検査するステップで前記検査信号値TWが前記初期基準値S(B)または前記修正基準値S(C)から外れた前記サーボ・トラックのシリンダ番号を欠陥登録テーブルに登録するステップと
を有する製造方法。
【請求項15】
前記サーボ・データを書き込むステップに先立って、前記磁気ディスクをマグネットで消磁するステップと、前記消磁された領域の一部に消磁用のデータ・パターンを書き込むステップとを有する請求項14記載の磁気ディスク装置の製造方法。
【請求項16】
磁気ディスク装置であって、
サーボ・データが書き込まれた磁気ディスクと、
前記磁気ディスクのサーボ・データを再生する再生ヘッドと
前記磁気ディスク装置を制御するMPUと、
前記MPUが実行するプログラムを格納する第1の不揮発性記録媒体とを有し、
前記プログラムが前記MPUに、
(A)前記磁気ディスク装置の再生ヘッドを前記磁気ディスクの半径方向に移動させがら各サーボ・トラックに順番に位置付けて各サーボ・トラックのバースト・パターンの再生信号を読み出すステップと、
(B)前記再生信号の出力値から前記サーボ・トラックのトラック幅を検査する検査信号値TWを生成するステップと、
(C)前記検査信号値TWの良否を判定する初期基準値S(B)を設定するステップと、
(D)前記検査信号値TWを前記初期基準値S(B)で評価する第1の評価ステップと、
(E)前記第1の評価ステップにおいて連続する所定のサーボ・トラック数Xに対応する検査信号値TWがすべて前記初期基準値S(B)から外れたとき前記初期基準値S(B)を修正して修正基準値S(C)を生成するステップと、
(F)前記検査信号値TWの値を前記修正基準値S(C)で評価する第2の評価ステップと、
(G)前記第1の評価ステップまたは前記第2の評価ステップで前記検査信号値TWが前記初期基準値S(B)または前記修正基準値S(C)から外れた前記サーボ・トラックのシリンダ番号を欠陥登録テーブルに登録するステップとを実行させる磁気ディスク装置。
【請求項17】
前記磁気ディスク装置は、前記欠陥登録テーブルを格納した第2の不揮発性記録媒体を有する請求項16記載の磁気ディスク装置。
【請求項18】
前記磁気ディスクは、消磁用のデータ・パターンが書き込まれた領域とマグネットで消磁された領域を有する請求項16記載の磁気ディスク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−272970(P2007−272970A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−95770(P2006−95770)
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(503116280)ヒタチグローバルストレージテクノロジーズネザーランドビーブイ (1,121)
【Fターム(参考)】