説明

磁気ディスク装置

【課題】螺旋状のサーボ情報を使用して、同心円状のデータトラックに対するヘッドの位置決め制御を効率的に行なうことができる磁気ディスク装置を提供することにある。
【解決手段】螺旋状のサーボ情報が記録されたディスク媒体11を使用するディスクドライブにおいて、CPU19は、同心円状のデータトラックのセンタに相当する仮想トラックセンタを想定した場合の仮想サーボ情報を生成する。CPU19は、当該仮想サーボ情報を使用して、ヘッド12を同心円状のデータトラックのセンタに位置決めするための制御を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的にはサーボ情報が記録されたディスク媒体を使用する磁気ディスク装置に関し、特に、螺旋状のサーボ情報を使用したヘッド位置決め制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、ハードディスクドライブを代表とする磁気ディスク装置(以下、ディスクドライブと表記する場合がある)では、データの記録媒体であるディスク媒体上には、ヘッドの位置決め制御に使用されるサーボ情報が記録されている。ディスクドライブでは、ヘッドにより読出されたサーボ情報を使用して、ディスク媒体上での目標位置(目標トラック)にヘッドが位置決め制御される。
【0003】
ヘッドは、位置決めされた目標位置で、データの書き込み動作あるいはデータの読出し動作を実行する。なお、通常では、ヘッドは、リードヘッドとライトヘッドとに分離されており、リードヘッドによりデータ(サーボ情報も含む)を読出し、ライトヘッドによりデータを書き込む。
【0004】
ディスク媒体上に記録されるサーボ情報は、通常では周方向に一定間隔で配置されるサーボセクタに記録されており、これらのサーボセクタにより同心円状のサーボトラックを構成する。ディスクドライブでは、サーボ情報に基づいて位置決めされるヘッドにより、ディスク媒体上に構成される同心円状のデータトラックにユーザデータが記録される。
【0005】
ところで、ディスクドライブの製造工程において、ディスク媒体上にサーボ情報を記録するサーボ書き込み工程の効率化を図るために、同心円状ではなく、螺旋状(スパイラル)のサーボ情報が記録されたディスク媒体を使用するディスクドライブが提案されている(例えば、特許文献1を参照)。これは、同心円状のサーボ情報に対して、螺旋状のサーボ情報を書き込む場合に、ヘッドの停止時間がないため、相対的に短時間でディスク媒体上の全面にサーボ情報を書き込むことが可能であるためである。
【特許文献1】特開2005−32350号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
製品化されたディスクドライブでは、ディスク媒体上の同心円状のデータトラックに、ユーザデータ(コンピュータデータや映像などのストリームデータ)を書き込むことが要求される。これは、同心円状のデータトラックは、螺旋状トラックに対して、ランダムアクセスの効率が高いためである。
【0007】
しかしながら、螺旋状のサーボトラックからサーボ情報を読出して、同心円状のデータトラックに対するヘッドの位置決め制御を行なう場合に、サーボトラックとデータトラックの各トラック中止線がずれるため、そのままでは位置決め精度が低下する。このため、位置決め制御動作の効率が低下し、結果として同心円状のデータトラックに対するランダムアクセス性能が低下する。
【0008】
そこで、本発明の目的は、螺旋状のサーボ情報を使用して、同心円状のデータトラックに対するヘッドの位置決め制御を効率化し、十分なランダムアクセス性能を確保できる磁気ディスク装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の観点に従った磁気ディスク装置は、リードヘッド及びライトヘッドを有するヘッドと、螺旋状のサーボトラックを構成し、サーボ情報が記録されている複数のサーボセクタが一定間隔で周方向にかつ放射状に配置されており、前記ヘッドにより記録されたユーザデータにより同心円状のデータトラックが構成されているディスク媒体とを備えた構成である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、螺旋状のサーボ情報を使用して、同心円状のデータトラックに対するヘッドの位置決め制御を効率的に行なうことができる磁気ディスク装置を提供できる。従って、螺旋状のサーボ情報を使用して、同心円状のデータトラックに対するランダムアクセスの効率化を図ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
【0012】
(ディスクドライブの構成)
図1は、本実施形態に関するディスクドライブの構成を示すブロック図である。
【0013】
本実施形態のディスクドライブ10は、磁気記録媒体としてディスク媒体11を使用するハードディスクドライブである。ディスク媒体11は、後述するように、螺旋状のサーボトラックを構成するサーボ情報が記録されている。ディスク媒体11は、スピンドルモータ(SPM)13に固定されて、高速回転されるようにディスクドライブ10内に組み込まれている。
【0014】
一方、ディスクドライブ10は、ディスク媒体11に対してデータ(サーボ情報とユーザデータ)を読出すリードヘッド12Rと、データを書き込むためのライトヘッド12Wを含むヘッド12を有する。ヘッド12は、ボイスコイルモータ(VCM)15により駆動されるアクチュエータ14に搭載されている。VCM15は、VCMドライバ21により駆動電流が供給されて、駆動制御される。アクチュエータ14は、後述するマイクロプロセッサ(CPU)19により駆動制御されて、ヘッド12をディスク媒体11上の目標位置(目標トラック)に位置決めするためのヘッド移動機構である。
【0015】
このようなヘッド・ディスクアセンブリ以外に、ディスクドライブ10は、プリアンプ回路16と、信号処理回路17と、ディスクコントローラ(HDC)18と、CPU19と、メモリ20とを有する。
【0016】
プリアンプ回路16は、ヘッド12のリードヘッドから出力されるリードデータ信号を増幅するリードアンプ、及びライトデータ信号をライトヘッドに供給するためのライトアンプを有する。即ち、ライトアンプは、信号処理回路17から出力されるライトデータ信号をライト電流信号に変換して、ライトヘッドに送出する。
【0017】
信号処理回路17は、リード/ライトデータ信号(サーボ情報に対応するサーボ信号を含む)を処理する信号処理回路であり、リード/ライトチャネルとも呼ばれている。信号処理回路17は、後述するように、サーボ信号からサーボ情報を再生するためのサーボデコーダを含む。
【0018】
HDC18は、ドライブ10とホストシステム22(例えばパーソナルコンピュータや各種のディジタル機器)とのインターフェース機能を有する。HDC18は、ディスク11とホストシステム22間のリード/ライトデータの転送制御を実行する。
【0019】
CPU10は、ドライブ10のメインコントローラであり、本実施形態に関するヘッド位置決め制御及びユーザデータの通常のリード/ライト動作制御を実行する。メモリ20は、不揮発性メモリであるフラッシュメモリ(EEPROM)以外に、RAM及びROMなどを含み、CPU19の制御に必要な各種データ及びプログラムを保存する。
【0020】
(ディスク媒体の構成)
図2及び図3は、本実施形態に関するディスク媒体11の構成を説明するための図である。
【0021】
図2は、本実施形態に関するディスク媒体11上に記録された螺旋状(スパイラル)のサーボ情報(サーボパターン)の記録状態を示す図である。サーボ情報は、周方向に一定の間隔で配置されるサーボセクタ(+印)110に記録されている。サーボセクタ110は、ディスク媒体11の半径方向に放射線状になるように構成されている。一方、各サーボセクタ110は、それぞれの中心線(トラックセンタ)を隣接サーボセクタ間で結ぶと螺旋状(スパイラル)のサーボトラック100になるように構成されている。要するに、隣接するサーボ情報はそれぞれ、半径位置をずらした位置に書き込まれている。
【0022】
図3は、螺旋状のサーボ情報(サーボトラック100)が書き込まれたディスク媒体11上に、同心円状の多数のデータトラック200が構成されている状態を示す。各データトラック200は、サーボセクタ間に配置される複数のデータセクタから構成されている。本実施形態では、後述するように、データトラック200のトラックセンタ(中心線)TCと、サーボトラックのトラックセンタ(中心線)SCとは一致しない。
【0023】
図4は、各サーボセクタ110に記録されるサーボ情報の構成を示す図である。
【0024】
サーボ情報は、パッド(PAD)部30、サーボマーク(SM)部31、セクタ部32、アドレス部33、及びサーボバーストパターン部34からなる。図4において、符号Wは、データトラック幅の半分に相当することを示す。
【0025】
パッド部30は、ギャップ及びサーボAGCと呼ぶ同期信号領域を含む。サーボマーク部31は、サーボセクタを識別するための信号領域である。セクタ部32は、サーボセクタ110を識別するためのセクタコードの記録領域である。アドレス部33は、トラック(シリンダ)を識別するためのトラックコード(シリンダコード)の記録領域である。サーボバーストパターン部34は、サーボトラック内のヘッド12の位置を検出するためのサーボバーストパターンA〜Dが記録されている領域である。
【0026】
ここで、各サーボバーストパターンA〜Dのそれぞれの境界をサーボセンタSCとした場合に、特に、サーボバーストパターンA,Bの境界に対応するサーボセンタSCを、サーボトラックのトラックセンタ(中心線)SCとする。図4は、シリンダコードにより識別されるサーボトラックのトラックセンタSCと、データトラック200のトラックセンタTCとが一致している状態を示す。
【0027】
図5は、同心円状に構成されたサーボ情報がディスク媒体上に記録されている場合を示す図である。即ち、各サーボセクタにおいて、サーボバーストパターンA,Bの境界に対応するサーボセンタ(サーボトラックのトラックセンタ)SCの半径位置は、同一である。サーボトラックのトラックセンタ)SCは、データトラック200のセンタTCと一致する。
【0028】
ディスクドライブでは、リードヘッド12RがサーボトラックのトラックセンタSCに位置決めされた状態で、ライトヘッド12Wにより、データトラック200上にユーザデータが記録される。
【0029】
図6は、図5を簡略表現した図であり、ある時刻におけるヘッド位置から読み出されるシリンダコード(アドレス部33のシリンダ番号)を示している。即ち、リードヘッド12Rは、同じ半径位置からは常に同じシリンダコードを読み出すことになる。
【0030】
(サーボ書き込みプロセス)
次に、図11を参照して、本実施形態の螺旋状のサーボ情報を、ディスク媒体11上に記録するためのサーボ書き込み手順を説明する。ここでは、ディスクドライブ10において、組み込まれたディスク媒体11上に、サーボ情報を書き込むセルフサーボライト方法による手順を説明する。
【0031】
まず、ディスク媒体11がディスクドライブ10のスピンドルモータ13に組み込まれると、CPU19は、メモリ20に格納されたサーボ書き込み動作を実行するためのプログラムを起動し、サーボ情報の書き込み未動作を開始する。
【0032】
具体的には、CPU19は、ヘッド12をディスク媒体11の最内周まで移動させる(ステップS1)。ここから、ヘッド12をディスク媒体11の外周方向に等速移動を開始する(ステップS2)。CPU19は、記録すべきサーボバーストパターン(A〜D)及びシリンダコードを設定し、サーボセクタ0を書き込み開始時点としてサーボパターンを書き込む(ステップS3,S4)。即ち、ディスク媒体11上の最内周に、サーボバーストパターンAを1周分書き、サーボバーストパターンDを1周分書き、サーボバーストパターンBを1周分書き、サーボバーストパターンCを1周分書く。これを、外周方向に等速移動しながら、かつヘッド12の移動待ち時間無しに繰り返す(ステップS5,S6)。
【0033】
そして、CPU19は、記録すべきサーボバーストパターン(A〜D)及びシリンダコードを、ディスク媒体11の内周から外周までのほぼ全面的に書き込むと、書き込み動作及びヘッドの等速移動を停止させる(ステップS7,S8)。
【0034】
ここで、ディスク媒体11上に第1のサーボ情報を書き込む場合、サーボトラックライタ以外に、磁気転写方式による専用のサーボ情報書き込み装置を使用してもよい。また、クリーンルーム内において、ディスク媒体11をディスクドライブ10内に組み込んだ後に、プッシュピン型サーボトラックライタを使用して、第1のサーボ情報を書き込む方法でもよい。プッシュピン型サーボトラックライタは、ディスクドライブ10内のヘッド12を操作して、ディスク媒体11上に第1のサーボ情報を書き込む。
【0035】
このような手順で、図2に示すように、螺旋状のサーボトラック100を構成するように、各サーボセクタ110にサーボ情報を書き込むことができる。即ち、各サーボセクタ110の中心線を一筆書きしたような状態である。
【0036】
但し、図9に示すように、セクタ番号0からサーボ情報の書き込みを開始して、セクタ番号N−1まで1周分の書き込みを終了すると、サーボ情報が0.5トラック分ずれた半径位置に記録されることになる。即ち、螺旋状のサーボ情報では、サーボバーストパターンA,Bの境界に対応するサーボトラックのセンタSCの半径位置は、図8に示すように、データトラック200のセンタ(後述するVTC)とは一致せず、0.5トラック分ずれた位置となる。
【0037】
(ヘッド位置決め制御)
以下、本実施形態の螺旋状に記録されたサーボ情報を使用して、同心円状のデータトラック200に対してユーザデータのリード/ライトを行なう場合のヘッド位置決め制御を説明する。
【0038】
本実施形態のディスクドライブ10は、センタSCが螺旋状(スパイラル)となるサーボ情報を読出して、同心円状のデータトラック200にユーザデータを書き込むようにヘッド位置決め制御を行なう。また、同心円状のデータトラック200からユーザデータを読出す必要がある。
【0039】
そこで、本実施形態のヘッド位置決め制御は、データトラック200のセンタに相当する仮想トラックセンタ(仮想トラック中心線)VTCを想定し、当該仮想トラックセンタVTCにヘッド12を位置決めする(図8及び図9を参照)。
【0040】
ここで、図7は、図8及び図9を簡略表現した図であり、ある時刻におけるヘッド位置から読み出されるシリンダコード(アドレス部33のシリンダ番号)を示している。即ち、リードヘッド12Rは、サーボ情報が螺旋状に記録されているため、同じ半径位置でも、異なるシリンダコードを読み出す場合がある。
【0041】
次に、図12のフローチャートを参照して、ヘッド位置決め制御のトラック追従動作(トラック・フォローイング)を行なう場合の手順を説明する。
【0042】
ディスクドライブ10では、CPU19は、リードヘッド12Rによりサーボ情報を読出して、目標データトラック200を識別し、当該目標データトラック200のセンタにリードヘッド12Rまたはライトヘッド12Wを位置決めする。
【0043】
具体的には、リードヘッド12Rは、各サーボセクタ110からサーボ情報を読出す。信号処理回路17は、リードヘッド12Rからのサーボ信号からシリンダコード及びサーボバーストパターン(A〜D)を再生する(ステップS11)。
【0044】
ここで、CPU19は、後述するように、信号処理回路17から取得したシリンダコードのエラー判定を実行する(ステップS12)。次に、CPU19は、前記の仮想トラックセンタVCTに基づいて、サーボセクタ110から読出したサーボ情報からサーボバーストパターン(A〜D)を補正した仮想サーボ情報に変換する(ステップS13)。CPU19は仮想サーボ情報を使用して、リードヘッド12Rを仮想トラックセンタVCTに位置決め制御し、シリンダコードを読出す。更に、CPU19は、当該シリンダコードに基づいたシーク制御演算、即ち目標シリンダコードの目標データトラックのセンタに位置決めするためのVCM15の電流値を算出する(ステップS14)。このような処理を、ディスク媒体11が1周する期間に、各サーボセクタ毎に繰り返す(ステップS15,S16,S17)。
【0045】
要するに、CPU19は、仮想トラックセンタVCTに基づいた仮想サーボ情報を生成し、当該仮想サーボ情報(補正したサーボバーストパターンA,B)を使用してリードヘッド12Rの追従動作を実行する。CPU19は、位置決めされたリードヘッド12Rにより読出すシリンダコードを使用して、後述するように、目標データトラックのセンタにヘッド12を位置決めするためのシーク動作を実行する。
【0046】
(シリンダコードの再生方法)
図10は、リードヘッド12Rにより、サーボセクタ(セクタ番号k)からシリンダコードを読出すときの状態を示す図である。図10に示すように、リードヘッド12Rが周方向である矢印140の方向に位置するとき、リードヘッド12Rにより読み出されるシリンダ番号はN−1からNに増える。
【0047】
ここで、サーボセクタ(セクタ番号k)におけるシリンダコード(アドレス)をCYL(k)とした場合、トラック位置xとその補正値x_crctから下記のような関係式(1),(2)が成立する。
【0048】
CYL(k)=round(x+x_crct)…(1)
ここで、roundは四捨五入を意味する演算記号である。
【0049】
x_crct =0.5*k/n…(2)
ここで、nはサーボセクタ数を意味する。
【0050】
なお,x_crctの特性は、図16に図示できる。
【0051】
図13は、前述のステップS12で示すエラー判定処理の具体的手順を示すフローチャートである。即ち、CPU19は、ホストシステムから22により設定される目標シリンダコードと、前記式(2)で示す補正値(x_crct)から、各サーボセクタにおける読み取りシリンダコード予測値を算出する(ステップS21)。CPU19は、リードヘッド12Rにより実際に読出されたシリンダコードとシリンダコード予測値とを比較して、一致していれば正常と判定する(ステップS22)。また、比較結果が不一致であれば、読出されたシリンダコードがエラーであると判定する。
【0052】
図14及び図15は、仮想サーボ情報を具体的に説明するための図である。
【0053】
前述したように、CPU19は、リードヘッド12Rにより読出されるサーボバーストパターンA,Bに基づいて、その境界位置に対する位置誤差(xs)を算出する。ここで、本実施形態では、サーボ情報は螺旋状に配置されているため、算出される位置誤差量xsは、図14(B)に示すように、のこぎり波形141となる。
【0054】
ここで、図14(A)に示すように、螺旋状に配置されたサーボバーストパターンA,Bに対して、リードヘッド12Rを矢印140の方向である同心円状のデータトラックのセンタTCに位置決めする場合、位置誤差量xsは下記式(3)に示すようになる。
【0055】
xs=xr-0.5*k/n…(3)
ここで、xrはサーボバーストパターンA,Bに基づいた位置情報である。
【0056】
即ち、螺旋状に書き込まれたサーボ情報を使用すると、サーボセクタ毎に、位置誤差量xsは異なる値となる。
【0057】
このため、CPU19は、同心円状のデータトラックのセンタに位置決めするために、図14(B)に示すように、一定値(142)となるような仮想サーボ情報(位置誤差量)を算出する。
【0058】
仮想サーボ情報xiは、下記式(4)により表現できる。
【0059】
xi=xs+x_crct…(4)
即ち、CPU19は、図15に示すように、螺旋状に配置されたサーボバーストパターンA,Bに基づいて算出した位置誤差量xsと補正値とにより、同心円状のデータトラックのセンタに対する位置誤差量を算出する(ステップS31)。換言すれば、仮想サーボ情報xiは、サーボセクタのトラックセンタTCを仮想トラックセンタVTCに変換するための情報である。CPU19は、仮想サーボ情報xiに基づいて、螺旋状に配置されているサーボバーストパターンに対して、ヘッド12を同心円状のデータトラックのセンタ(VTC)に正常に位置決めしたか否かを判定する(ステップS32)。CPU19は、ヘッド12の位置決めがエラーの場合には、特にデータを書き込むための記録動作を禁止する。
【0060】
図17は、本実施形態のヘッド位置決め制御系を説明するためのブロック図である。制御系170は、具体的には、CPU19により実行される制御動作である。
【0061】
制御系170では、位置情報検出部175は、サーボデコーダ17から出力されるサーボ情報(シリンダコードとサーボバースト値)から、螺旋状の位置情報を検出する。一方、補正量算出部176は、サーボセクタ毎の補正値を算出する。仮想位置算出部174は、前述したように、のこぎり波形の位置情報と補正値とから、仮想サーボ情報(仮想位置情報)xiを算出する。制御部173は、目標シリンダ値に基づいた目標位置と仮想位置情報との誤差に基づいて、ドライバ21を制御してヘッド12の位置決め制御を実行する。
【0062】
図18は、ヘッド位置決め制御に含まれるシーク動作を説明するためのフローチャートである。
【0063】
即ち、CPU19は、ホストシステム22から目標シリンダ(目標トラック)を受けると、目標サーボアドレスに変換する(ステップS41,S42)。一方、リードヘッド12Rにより読出される螺旋状のサーボ情報は、信号処理回路17のサーボデコーダによりデコードされる(ステップS43)。
【0064】
CPU19は、サーボセクタ毎のサーボ情報から仮想サーボ情報に変換(生成)する(ステップS44)。さらに、CPU19は、仮想サーボ情報に基づいて、ヘッド12を同心円状のデータトラックのセンタ(VTC)に位置決めするためのシーク制御演算を実行する(ステップS45)。
【0065】
CPU19は、次のサーボセクタでの補正値を算出するとともに、サーボアドレスと仮想サーボ情報とを比較する(ステップS46,S47)。比較結果が一致であれば、ヘッド12を目標シリンダである同心円状のデータトラックのセンタ(VTC)に位置決めしたことにより、シーク動作は終了となる。一方、比較結果が不一致の場合には、CPU19は、次のサーボセクタからのサーボ情報から仮想サーボ情報に変換する処理から繰り返す(ステップS48)。
【0066】
以上のようにして、シーク動作中に、仮想サーボ情報を用いたヘッド移動制御を行うことにより、シーク動作の終了直後から同心円状のデータトラックに対して、データのリード/ライトを実行することができる。即ち、螺旋状のサーボ情報を使用して、結果として同心円状のデータトラックに対するランダムシーク動作を効率的に行なうことができる。
【0067】
図19は、本実施形態でのシーク動作を、補正処理をしないで実行した場合を示す図である。即ち、通常のシーク動作では、螺旋状のサーボ情報を使用して、ヘッド12を移動制御する場合に、トラックセンタTCを目指した移動となる。しかし、ユーザデータを記録する位置は、同心円状のデータトラックのセンタに相当する仮想トラックセンタVTCであるため、トラック追従動作の開始時に不連続過渡応答が生じてしまう。
【0068】
図20は、本実施形態でのシーク動作を、補正処理を伴って実行した場合を示す図である。即ち、図18のフローチャートに示すように、本実施形態のシーク動作では、仮想サーボ情報を使用して、ヘッド12を移動制御する場合に、仮想トラックセンタVTCを目指した移動となる。従って、シーク動作終了時には、同心円状のデータトラックのセンタに位置決めされるため、不連続過渡応答が生じない。従って、同心円状のサーボ情報を使用する場合と同様のランダムアクセス動作を実現することができる。
【0069】
以上のように本実施形態によれば、螺旋状のサーボ情報が記録されたディスク媒体11上に、同心円状のデータトラックのセンタに相当する仮想トラックセンタVTCを想定した仮想サーボ情報を使用することにより、同心円状のサーボ情報を使用する場合と同様のアクセス性能を有するヘッド位置決め制御(シーク動作及びトラック追従動作)を実現できる。従って、結果として、螺旋状のサーボ情報を使用して、同心円状のデータトラックに対するランダムアクセスの効率化を図ることが可能となる。
【0070】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の実施形態に関するディスクドライブの要部を示すブロック図。
【図2】本実施形態に関するディスク媒体上のサーボトラックを説明するための図。
【図3】本実施形態に関するディスク媒体上のデータトラックを説明するための図。
【図4】本実施形態に関するサーボセクタに記録されるサーボ情報の構成を示す図。
【図5】本実施形態に関するサーボ情報と、同心円状のサーボ情報との相違を説明するための図。
【図6】本実施形態に関するサーボ情報と、同心円状のサーボ情報との相違を説明するための図。
【図7】本実施形態に関するサーボ情報の簡略図。
【図8】本実施形態に関するサーボ情報の状態を説明するための図。
【図9】本実施形態に関するサーボ情報の状態を説明するための図。
【図10】本実施形態に関するシリンダコードの再生方法を説明するための図。
【図11】本実施形態に関するサーボ情報の書き込み手順を説明するためのフローチャート。
【図12】本実施形態に関するヘッド位置決め制御の手順を説明するためのフローチャート。
【図13】本実施形態に関するヘッド位置決め制御のエラー判定処理を説明するためのフローチャート。
【図14】本実施形態に関する仮想サーボ情報を説明するための図。
【図15】本実施形態に関する仮想サーボ情報による位置決め動作を説明するためのフローチャート。
【図16】本実施形態に関するシリンダコードの再生方法を説明するための図。
【図17】本実施形態に関するヘッド位置決め制御系を説明するためのブロック図。
【図18】本実施形態に関するシーク動作を説明するためのフローチャート。
【図19】本実施形態に関して補正なしのシーク動作を説明するための図。
【図20】本実施形態に関して補正ありのシーク動作を説明するための図。
【符号の説明】
【0072】
10…ディスクドライブ、11…ディスク媒体、12…ヘッド、
12R…リードヘッド、12W…ライトヘッド、13…スピンドルモータ(SPM)、
14…アクチュエータ、15…ボイスコイルモータ(VCM)、
16…プリアンプ回路、17…信号処理回路(サーボデコーダを含む)、
18…ディスクコントローラ(HDC)、19…マイクロプロセッサ(CPU)、
20…メモリ、21…VCMドライバ、22…ホストシステム、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リードヘッド及びライトヘッドを有するヘッドと、
螺旋状のサーボトラックを構成し、サーボ情報が記録されている複数のサーボセクタが一定間隔で周方向にかつ放射状に配置されており、前記ヘッドにより記録されたユーザデータにより同心円状のデータトラックが構成されているディスク媒体と
を具備したことを特徴とする磁気ディスク装置。
【請求項2】
リードヘッド及びライトヘッドを有するヘッドと、
連続的な1本の螺旋を描くように螺旋状のサーボトラックを構成し、サーボ情報が記録されている複数のサーボセクタが一定間隔で周方向にかつ放射状に配置されており、前記ヘッドにより記録されたユーザデータにより同心円状のデータトラックが構成されているディスク媒体と
を具備したことを特徴とする磁気ディスク装置。
【請求項3】
前記リードヘッドにより読出された前記サーボ情報に基づいて前記データトラックの中心線に対応する仮想トラック中心線を想定した仮想サーボ情報を生成し、当該仮想サーボ情報に基づいて前記リードヘッドまたは前記ライトヘッドを前記データトラックに位置決め制御を実行する制御手段をさらに有することを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれか1項に記載の磁気ディスク装置。
【請求項4】
前記制御手段は、
前記ヘッドにより前記サーボセクタから読出された前記サーボ情報に含まれる位置情報に基づいて、前記サーボトラックの中心線からの位置誤差を算出する手段と、
前記仮想トラック中心線に対する前記位置誤差の補正値を算出し、当該補正値を使用して前記仮想トラック中心線に対応する位置情報を前記仮想サーボ情報として算出する手段とを含むことを特徴とする請求項3に記載の磁気ディスク装置。
【請求項5】
前記制御手段は、
前記ヘッドにより前記サーボセクタから読出された前記サーボ情報に含まれる位置情報に基づいて、前記サーボトラックの中心線からの位置誤差を算出する手段と、
前記仮想トラック中心線に対する前記位置誤差の補正値を算出し、当該補正値を使用して前記仮想トラック中心線に対応する位置情報を前記仮想サーボ情報として算出する手段と、
前記ヘッドの位置決め制御に含まれるシーク動作時に、前記仮想サーボ情報を使用して前記目標データトラックまで前記ヘッドを移動させる動作を実行することを特徴とする請求項3項に記載の磁気ディスク装置。
【請求項6】
前記制御手段は、
前記ヘッドにより前記サーボセクタから読出されたセクタ番号に基づいて、前記サーボセクタに対応するシリンダ番号を予測したシリンダ予測値と、前記ヘッドにより前記サーボセクタから読出された実際のシリンダ番号とを比較して、当該比較結果が不一致の場合にはエラー判定を行なうことを特徴とする請求項3に記載の磁気ディスク装置。
【請求項7】
前記制御手段は、
前記ヘッドにより前記サーボセクタから読出された前記サーボ情報に含まれる位置情報に基づいて、前記サーボトラックの中心線からの位置誤差を算出する手段と、
前記仮想トラック中心線に対する前記位置誤差の補正値を算出し、当該補正値を使用して前記仮想トラック中心線に対応する位置情報を前記仮想サーボ情報として算出する手段と、
前記ヘッドの位置決め制御において前記目標データトラックの中心線上に位置決めするトラック追従動作時に、前記仮想サーボ情報を使用して前記トラック追従動作を実行することを特徴とする請求項3に記載の磁気ディスク装置。
【請求項8】
前記制御手段は、
前記仮想サーボ情報を使用して前記目標データトラックの中心線上に前記ヘッドの位置決めができない場合には、所定のエラー処理を実行することを特徴とする請求項3から請求項7のいずれか1項に記載の磁気ディスク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2009−76199(P2009−76199A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−309902(P2008−309902)
【出願日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【分割の表示】特願2005−318506(P2005−318506)の分割
【原出願日】平成17年11月1日(2005.11.1)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】