説明

磁気ヘッドサスペンション

【課題】耐衝撃性及びシーク方向の振動特性の双方を向上させ得る磁気ヘッドサスペンションを提供する。
【解決手段】荷重曲げ部として、支持部10における幅方向両側から先端側へ延びる一対の支持片12,12に両持ち支持された弾性板であって、磁気ヘッドサスペンション幅方向に沿った荷重曲げ中心線回りに捩れ弾性変形可能な弾性板60を備える。弾性板は、荷重曲げ中心線より先端側の部分において、ロードビーム部を形成するロードビーム基板130及びフレクシャ部を形成するフレクシャ基板140の双方に溶接されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードディスク等の記憶媒体に対してデータをリード及び/又はライトする磁気ヘッドを支持する為の磁気ヘッドサスペンションに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、磁気ヘッドによって記録媒体に対してデータをリード及び/又はライトするデータ記憶装置は、ノートブック型パーソナルコンピュータや携帯音楽プレーヤー等のモバイル機器においても広く利用されており、これに伴い、前記磁気ヘッドを支持する磁気ヘッドサスペンションにはより高い耐衝撃性が求められるようになってきている。
即ち、前記磁気ヘッドサスペンションには、前記データ記憶装置を作動状態のままで地面に落下させてしまった場合等において、磁気ヘッドがディスク面を損傷させることを可及的に防止することが望まれる。
【0003】
例えば、作動中の前記データ記憶装置に前記磁気ヘッドをディスク面に近づける方向の衝撃力が加えられた場合には、前記磁気ヘッドと前記ディスク面との間に存する空気膜によって前記磁気ヘッドが前記ディスク面に衝突することをある程度は回避できる。
しかしながら、作動中の前記データ記憶装置に前記磁気ヘッドを前記ディスク面から離間させる方向へ一定以上の大きさの衝撃力が加わると、前記磁気ヘッドが前記ディスク面から離間する方向に跳躍し、この跳躍の揺れ戻しの際に前記磁気ヘッドが前記ディスク面に衝突して、前記ディスク面及び前記磁気ヘッドが損傷する恐れがある。
【0004】
従って、前記データ記憶装置の耐衝撃性を向上させるためには、外部から印可される衝撃力によって前記磁気ヘッドが跳躍動作を行うことを可及的に防止すること、逆に言うと、前記磁気ヘッドの跳躍動作を引き起こす衝撃力の加速度(限界加速度)を可及的に上げることが必要となる。
【0005】
前記磁気ヘッドは、前記データ記憶装置に装着される磁気ヘッドサスペンションに支持されている。
詳しくは、前記磁気ヘッドサスペンションは、前記磁気ヘッドを前記ディスク面へ向けて押し付ける為の荷重を発生する荷重曲げ部と、前記荷重を前記磁気ヘッドに伝達するためのロードビーム部と、前記荷重曲げ部を介して前記ロードビーム部を支持する支持部と、前記磁気ヘッドが搭載されるヘッド搭載領域を有し、前記ロードビーム部に溶接されるフレクシャ部とを備えている。
【0006】
例えば、前記荷重曲げ部によって発生される前記荷重を増加させることによって、前記限界加速度を引き上げることが可能となる。
しかしながら、前記荷重は、前記ディスク面上での前記磁気ヘッドの浮上高さを制御するために適切な範囲に設定する必要がある。従って、前記荷重を増加させることで前記限界加速度を引き上げるという方法には、自ずと限界がある。
【0007】
又、前記ロードビーム部の質量を低減させることで衝撃力が加わった際に前記ロードビーム部に付加される慣性力を小さくすることによっても、前記限界加速度を引き上げることが可能である。
しかしながら、前記ロードビーム部の質量を低減させる為には、前記ロードビーム部の板厚を薄くしたり、及び/又は、前記ロードビーム部に孔を形成する必要があり、その結果、前記ロードビーム部の剛性が低下し、これにより、振動特性及びロード/アンロード特性が劣化するという問題がある。
【0008】
衝撃力印可時における前記磁気ヘッドの跳躍動作を抑える為のさらに他の構成として、前記ロードビーム部に、前記荷重曲げ部に接合される部分より基端側へ延びる延在部を設ける構成が提案されている(例えば、下記特許文献1〜4参照)。
この構成は、前記ロードビーム部のうち前記荷重曲げ部より先端側に位置する部分の質量と前記荷重曲げ部より基端側に位置する質量とを可及的に等しくすることにより、外部からの衝撃力印可時における前記磁気ヘッドの跳躍動作を抑えるものであり、前記ロードビーム部の剛性低下を招くことが無い点で有用である。
【0009】
しかしながら、これらの特許文献に記載の磁気ヘッドサスペンションにおいては、前記ロードビーム部は、前記支持部に片持ち支持された状態の前記荷重曲げ部の自由端部に接合されている。この構成では、衝撃力が印可された際に、前記ロードビーム部の支持点(即ち、前記ロードビーム部及び前記荷重曲げ部の接合点)がディスク面と直交する方向に大きく変動してしまう。
従って、前記各特許文献に記載の磁気ヘッドサスペンションは、前記ロードビーム部の剛性低下を招くという問題は生じないものの、前記限界加速度を十分には引き上げることができない。
【0010】
さらに、前記磁気ヘッドサスペンションはアクチュエータの駆動に応じて前記磁気ヘッドをハードディスク等の記憶媒体上において径方向(シーク方向)へ高速移動させ、前記磁気ヘッドを目的のトラック上に正確に位置決めさせる部材であるから、振動特性、特に、前記ディスク面と平行なシーク方向の振動特性の向上(即ち、SWAYモードの共振周波数の高域化)が望まれている。
【特許文献1】特開平9−082052号公報
【特許文献2】特開平11−039808号公報
【特許文献3】特開2004−348804号公報
【特許文献4】特開2005−174506号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、前記従来技術に鑑みなされたものであり、耐衝撃性及びシーク方向の振動特性の双方を向上させ得る磁気ヘッドサスペンションの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、前記目的を達成する為に、磁気ヘッドをディスク面へ向けて押し付ける為の荷重を発生する荷重曲げ部と、前記荷重を前記磁気ヘッドに伝達するためのロードビーム部と、前記荷重曲げ部を介して前記ロードビーム部を支持する支持部と、前記磁気ヘッドを支持するヘッド搭載領域を有し、前記ロードビーム部に溶接されるフレクシャ部とを備えた磁気ヘッドサスペンションであって、前記支持部は、本体領域と、前記本体領域の幅方向両側から先端側へ延び、両者の間に先端側へ開く凹部を画する一対の支持片であって、磁気ヘッドサスペンションの長手方向中心線を基準にして対称とされた一対の支持片とを有し、前記磁気ヘッドサスペンションは前記一対の支持片に両持ち支持された弾性板を備え、前記弾性板は、前記一対の支持片にそれぞれ当接され且つ適宜の溶接点において溶接される第1及び第2支持部当接領域と、前記凹部内において前記ロードビーム部に当接され且つ適宜の溶接点において溶接されるロードビーム部当接領域と、前記ロードビーム部当接領域と前記第1及び第2支持部当接領域との間をそれぞれ連結する第1及び第2延在領域とを有し、前記第1及び第2延在領域が磁気ヘッドサスペンションの幅方向に沿った荷重曲げ中心線回りに捩れ弾性変形することで前記荷重曲げ部として作用するように構成され、前記ロードビーム部当接領域のうち前記荷重曲げ中心線より先端側に位置する部分が、少なくとも前記長手方向中心線を基準にして左右対称な一対の第1溶接点において、前記ロードビーム部を形成するロードビーム基板及び前記フレクシャ部を形成するフレクシャ基板の双方に溶接されている磁気ヘッドサスペンションを提供する。
【0013】
好ましくは、前記弾性板の前記ロードビーム部当接領域は、前記磁気ヘッドサスペンションの長手方向位置に関し前記第1及び第2延在領域に対応した中央領域と前記中央領域から先端側へ延びる先端領域とを有し得る。
斯かる構成において、前記一対の第1溶接点は前記先端領域に位置される。
【0014】
より好ましくは、前記フレクシャ基板は、前記ロードビーム基板に当接され且つ適宜の溶接点において溶接されるロードビーム部当接領域と、前記ロードビーム部当接領域から先端側へ延びる一対の支持片と、前記一対の支持片の自由端部に連結され、前記磁気ヘッドが搭載される前記ヘッド搭載領域と、前記ロードビーム部当接領域から前記ロードビーム基板を越えて磁気ヘッドサスペンション幅方向外方へ延びる一対の拡幅領域とを有し、且つ、前記弾性板は、前記一対の拡幅領域と当接し得るように前記ロードビーム部当接領域の前記先端領域から前記ロードビーム基板を越えて磁気ヘッドサスペンション幅方向外方へ延びる一対の外方延在領域を有し得る。
そして、前記一対の外方延在領域及び前記一対の拡幅領域は、少なくとも前記長手方向中心線を基準にして左右対称な一対の第2溶接点において互いに溶接される。
【0015】
さらに好ましくは、前記フレクシャ基板は、前記支持部に当接され且つ適宜の溶接点において溶接される支持部当接領域と、前記ロードビーム部当接領域の幅方向両側から基端側へ延びて前記支持部当接領域に連結される一対のブリッジ領域であって、前記長手方向中心線を基準にして互いに対称とされた一対のブリッジ領域とを有し得る。
前記フレクシャ基板における前記ロードビーム部当接領域の基端側は、磁気ヘッドサスペンション幅方向中央において前記荷重曲げ中心線より基端側へ延びる中央基端側延在部と、前記一対のブリッジ領域にそれぞれつながるように磁気ヘッドサスペンション幅方向両側から基端側へ延びる一対の移行部であって、前記長手方向中心線を基準にして互いに対称とされた一対の移行部とを有し得る。
前記中央基端側延在部は、前記長手方向中心線を基準にして対称配置された一又は複数の第3溶接点において前記ロードビーム基板及び前記弾性板の双方に溶接される。
前記中央基端側延在部と前記一対の移行部との間は、平面視において基端側へ開く凹状とされており、前記凹状の先端側は前記荷重曲げ中心線上に位置される。
【0016】
前記種々の構成において、前記磁気ヘッドサスペンションは、好ましくは、前記荷重曲げ中心線より基端側に位置し且つ平面視において前記凹部内に位置するように前記ロードビーム基板に固着された平衡質量体を備え得る。
【0017】
より好ましくは、前記平衡質量体は磁気ヘッドサスペンション幅方向に沿った折り曲げ部を有し、前記折り曲げ部より基端側の領域が基端側へ行くに従って前記ディスク面から離間するように前記折り曲げ部において曲げられる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る磁気ヘッドサスペンションによれば、支持部における一対の支持片にそれぞれ当接され且つ適宜の溶接点において溶接される第1及び第2支持部当接領域と、前記一対の支持片によって画される凹部内においてロードビーム部に当接され且つ適宜の溶接点において溶接されるロードビーム部当接領域と、前記ロードビーム部当接領域と前記第1及び第2支持部当接領域との間をそれぞれ連結する第1及び第2延在領域であって、磁気ヘッドサスペンション幅方向に沿った荷重曲げ中心線回りに捩れ弾性変形する第1及び第2延在領域とを有する弾性板が、前記磁気ヘッドをディスク面に向けて押し付ける荷重を発生する荷重曲げ部として作用するように構成されているので、衝撃力が加えられた際に前記ロードビーム部と前記荷重曲げ部との接合点がディスク面に直交する方向に変動することを有効に防止でき、これにより、耐衝撃性を向上させることができる。
さらに、本発明に係る磁気ヘッドサスペンションによれば、前記弾性板における前記ロードビーム部当接領域のうち前記荷重曲げ中心線より先端側に位置する部分が、少なくとも前記長手方向中心線を基準にして左右対称な一対の第1溶接点において前記ロードビーム部を形成するロードビーム基板及び前記フレクシャ部を形成するフレクシャ基板の双方に溶接されており、前記フレクシャ基板が前記ロードビーム基板の剛性を補強する補強部材としても作用するように構成されている。従って、質量を増加させることなく、前記磁気ヘッドサスペンションのうち前記荷重曲げ中心線より先端側に位置する部分のシーク方向の剛性を向上させることができる(即ち、SWAYモードの共振周波数を高域化させることができる)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
実施の形態1
以下、本発明に係る磁気ヘッドサスペンションの好ましい一実施の形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
図1(a)及び(b)に、それぞれ、本実施の形態に係る磁気ヘッドサスペンション1の上面図(ディスク面とは反対側から視た図)及び下面図(前記ディスク面の側から見た図)を示す。
又、図2に、図1(b)におけるII部拡大図を示す。
【0020】
図1及び図2に示すように、前記磁気ヘッドサスペンション1は、磁気ヘッド100をディスク面へ向けて押し付ける為の荷重を発生する荷重曲げ部20と、前記荷重を磁気ヘッド100に伝達するためのロードビーム部30と、前記荷重曲げ部20を介して前記ロードビーム部30を支持する支持部10と、前記磁気ヘッド100を支持するヘッド搭載領域43を有し、前記ロードビーム部30に溶接されるフレクシャ部40とを備えている。
【0021】
前記支持部10は、前記荷重曲げ部20を介して前記ロードビーム部30を支持する為の部材であり、比較的高剛性を有するものとされる。
本実施の形態においては、前記支持部10は、図1(a)及び(b)に示すように、基端部がアクチュエータの回転中心に連結されるアームとされている。これに代えて、前記支持部10を、キャリッジアームの先端にスウェッジ加工により接合されるボス部を備えたベースプレートとすることも可能である。
前記支持部10は、例えば、厚さ0.1mm〜0.8mmのステンレス板によって好適に形成される。
【0022】
本実施の形態においては、前記支持部10は、図1及び図2に示すように、前記磁気ヘッドサスペンション1の幅方向中央に先端側に開く凹部13を画するように、幅方向両側から先端側へ延びる一対の支持片12を有している。
即ち、前記支持部10は、基端部が前記アクチュエータに直接又は間接的に連結される平板状の本体領域11と、前記本体領域11の先端部における幅方向両端側から先端側へ延びる前記一対の支持片12とを有しており、前記一対の支持片12の間に前記凹部13が画されている。
【0023】
前記ロードビーム部30は、前述の通り、前記荷重曲げ部20によって発生される荷重を前記磁気ヘッド100に伝達する為の部材であり、従って、所定の剛性が要求される。
前記ロードビーム部30は、所定形状に成形されたロードビーム基板130によって形成されている。
【0024】
前記ロードビーム基板130の板厚を前記荷重曲げ部20を形成する下記弾性板60や前記フレクシャ部40を形成するフレクシャ基板140の板厚よりも厚くすることで前記ロードビーム部30の剛性を確保することも可能であるし、及び/又は、前記ロードビーム基板130の両側縁にフランジ部35を設けることによって前記ロードビーム基板130の厚みを前記フレクシャ基板140と同程度にしつつ前記ロードビーム部30の剛性を確保することも可能である。
【0025】
なお、本実施の形態においては、図1(a)及び(b)に示すように、前記ロードビーム基板130の両側縁に前記フランジ部35を設けることで、前記ロードビーム基板130の板厚を可及的に薄くしつつ前記ロードビーム部30の剛性を確保している。
前記ロードビーム基板130は、例えば、厚さ0.015mm〜0.1mm程度のステンレス板とされる。
【0026】
前記ロードビーム部30の先端部には、図1(a)に示すように、所謂ディンプルと呼ばれる突起31が設けられている。
前記突起31は、ディスク面に近接する方向に、例えば、0.04mm〜0.08mm程度突出されている。この突起31は、前記フレクシャ部40における前記ヘッド搭載領域43の裏面(ディスク面とは反対側の面)に接触しており、前記荷重はこの突起31を介して前記フレクシャ部40のヘッド搭載領域43に伝達される。
【0027】
前記フレクシャ部40は、前記磁気ヘッド100を支持する為の部材である。
本実施の形態においては、前記フレクシャ部40は、図1及び図2に示すように、前記磁気ヘッド100を支持するヘッド搭載領域43を有し、前記ロードビーム基板130に当接され且つ適宜の溶接点において溶接されるフレクシャ基板140と、前記フレクシャ基板140に積層された絶縁層150と、前記絶縁層150に積層された導体層155とを一体的に有する配線一体型とされている。
【0028】
前記フレクシャ基板140は、例えば、厚さ0.015mm〜0.025mm程度のステンレス板とされる。
詳しくは、前記フレクシャ基板140は、図1(b)及び図2に示すように、前記ロードビーム基板130に当接され且つ適宜の溶接点51において前記ロードビーム基板130に溶接されるロードビーム部当接領域141と、前記ロードビーム部当接領域141から先端側へ延びる一対の支持片142と、前記一対の支持片142の自由端部に連結され、前記磁気ヘッド100が搭載される前記ヘッド搭載領域43とを有している。
【0029】
前記ヘッド搭載領域43は、ディスク面と対向する対向面において前記磁気ヘッド100を支持している。
前述の通り、前記ヘッド搭載領域43の裏面には前記突起31が接触しており、従って、前記ヘッド搭載領域43は前記突起31を支点としてロール方向及びピッチ方向に柔軟に揺動し得るようになっている。
【0030】
本実施の形態においては、図1(b)及び図2に示すように、前記フレクシャ基板140は、さらに、前記支持部10に当接され且つ適宜の溶接点52において溶接される支持部当接領域144と、前記ロードビーム部当接領域141の幅方向両側から基端側へ延びて前記支持部当接領域144に連結される一対のブリッジ領域145とを有している。
前記一対のブリッジ領域145は、図1及び図2に示すように、前記ロードビーム部当接領域141と前記支持部当接領域144との間を連結するように前記凹部13内に延びており、且つ、前記磁気ヘッドサスペンション1の長手方向中心線CLを基準にして互いに対して対称とされている。
【0031】
図1及び図2に示すように、前記磁気ヘッドサスペンション1は、さらに、前記支持部10における前記一対の支持片12に両持ち支持された弾性板60を有しており、前記弾性板60が前記荷重曲げ部20として作用している。
【0032】
図3(a)に、前記弾性板60の拡大下面図を示す。
前記弾性板60は、図3(a)に示すように、前記一対の支持片12にそれぞれ当接され且つ適宜の溶接点53(図1(b)参照)において溶接される第1及び第2支持部当接領域61,62と、前記凹部13内において前記ロードビーム部30に当接され且つ少なくとも後述する下記一対の第1溶接点21において溶接されるロードビーム部当接領域65と、前記ロードビーム部当接領域65と前記第1及び第2支持部当接領域61,62との間をそれぞれ連結する第1及び第2延在領域71,72とを有している。
【0033】
前記弾性板60は、前記第1及び第2延在領域71,72が磁気ヘッドサスペンション1の幅方向に沿った荷重曲げ中心線BL回りに捩れ弾性変形することで前記荷重を発生するように構成されている。
【0034】
即ち、前記磁気ヘッド100がディスク面の回転に伴う空気圧を受けて前記ディスク面上で浮上する状態における前記第1及び第2延在領域71,72の荷重曲げ中心線BL回りの捩れ弾性変形動作によって生じる前記弾性板60の保有弾性が前記磁気ヘッド100をディスク面へ向けて押し付ける押し付け荷重として作用し、この押し付け荷重が前記空気圧とつり合うことで、前記磁気ヘッド100は作動状態において前記ディスク面上で浮上する。
【0035】
前記弾性板60は、前記荷重曲げ中心線BL回りの捩り動作によって前記荷重を発生し得るような部材によって形成される。前記弾性板60は、例えば、厚さ0.02mm〜0.1mm程度のステンレス板によって好適に形成される。
【0036】
好ましくは、前記弾性板60の前記第1及び第2延在領域71,72は、前記磁気ヘッドサスペンション1がデータ記憶装置に実装される前の状態において、前記第1及び第2支持部当接領域61,62が前記一対の支持片12によって前記ディスク面に略平行に保持された状態で、前記ロードビーム部当接領域65における磁気ヘッドサスペンション長手方向先端側及び基端側が前記ディスク面に対して近接及び離間するように、前記荷重曲げ中心線BL回りに捩り変形される。
【0037】
斯かる構成においては、前記一対の第1及び第2延在領域71,72が前記荷重曲げ中心線BL回りに捩り戻されて所定の押し付け荷重を発生する状態で、前記磁気ヘッドサスペンション1がデータ記憶装置に実装される。そして、前記磁気ヘッド100が前記ディスク面上に位置する状態で前記ディスク面の回転に伴う空気圧を受ける磁気ヘッドサスペンションの作動(ロード)時には、前記空気圧を受けた状態での前記一対の第1及び第2延在領域71,72の前記荷重曲げ中心線BL回りの捩り戻り弾性変形によって生じる押し付け荷重が前記空気圧と釣り合うことで前記磁気ヘッド100がディスク面上で浮上する。従って、前記押し付け荷重の制御を安定して行うことができる。
【0038】
本実施の形態においては、図1及び図2に示すように、前記弾性板60は前記支持部10のディスク面側に位置している。
即ち、前記支持部当接領域61,62は、前記一対の支持片12におけるディスク面側の下面に当接された状態で溶接点53において溶接固定されている。
【0039】
一方、前記ロードビーム基板130は、図1(a)に示すように、前記弾性板60の前記ディスク面とは反対側に位置し、且つ、前記フレクシャ基板140は、図1(b)及び図2に示すように、前記ロードビーム基板130及び前記弾性板60の前記ディスク面側に位置している。
即ち、前記ロードビーム基板130の下面(前記ディスク面側の面)が前記弾性板60における前記ロードビーム部当接領域65の上面(前記ディスク面とは反対側の面)に当接されている。
一方、前記フレクシャ基板140の上面が、前記弾性板60が存在しない領域においては前記ロードビーム基板130の下面(前記ディスク面側の面)に当接され、且つ、前記弾性板60が存在する領域においては前記弾性板60の下面(前記ディスク面側の面)に当接されている。
【0040】
このように、本実施の形態に係る磁気ヘッドサスペンション1においては、両端支持された状態の前記弾性板60が前記荷重曲げ部20として作用するように構成されており、これにより、下記効果を奏し得るようになっている。
【0041】
即ち、従来の磁気ヘッドサスペンションにおける荷重曲げ部は、基端部がアーム等の支持部に支持され且つ自由端部においてロードビーム部を支持する片持ちバネ形態とされている。
斯かる従来構成においては、外部からの衝撃力印可時に、ロードビーム部の支持点(即ち、ロードビーム部及び荷重曲げ部の接合点)がディスク面と直交する方向に大きく変動してしまう。従って、仮に、ロードビーム部を、剛性低下を招くことなく軽量化したり、及び/又は、ロードビーム部の支持点を基準にして該ロードビーム部の先端側及び基端側の質量平衡化を行ったとしても、衝撃力が加わった際に磁気ヘッドがディスク面に直交する方向に跳躍することを十分には抑えることはできない。
【0042】
これに対し、本実施の形態に係る磁気ヘッドサスペンション1においては、両端支持された前記弾性板60が前記荷重曲げ部20として作用するように構成されている。
斯かる構成によれば、外部から衝撃力が印可された際に、前記ロードビーム部30の支持点(即ち、前記ロードビーム基板130と前記弾性板60との接合点)がディスク面と直交する方向に変動することを有効に防止でき、これにより、衝撃力が加わった際の前記磁気ヘッド100の跳躍動作を抑え、前記磁気ヘッドサスペンション1の耐衝撃性を大幅に向上させることができる。
【0043】
図3(b)に示すように、前記第1及び第2延在領域71,72の先端側の辺及び基端側の辺を直線状とすることも可能であるが、好ましくは、前記第1及び第2延在領域71,72の先端側の辺及び基端側の辺は、平面視においてそれぞれ先端側及び基端側に開く凹状とされる。
斯かる構成を備えることにより、前記第1及び第2延在領域71,72が荷重曲げ中心線BL回りに無理なく捩り弾性変形動作を行うことができ、これにより、荷重バラツキの低減(荷重安定化)及びばね定数のバラツキ低減(ばね定数安定化)を図ることができる。
本実施の形態においては、図3(a)に示すように、前記第1及び第2延在領域71,72の先端側の辺及び基端側の辺は、平面視においてそれぞれ先端側及び基端側へ開く湾曲形状とされている。
【0044】
さらに、本実施の形態に係る磁気ヘッドサスペンション1においては、図1〜図3に示すように、前記弾性板60における前記ロードビーム部当接領域65のうち前記荷重曲げ中心線BLより先端側に位置する部分が、少なくとも前記長手方向中心線CLを基準にして左右対称な一対の第1溶接点21において、前記ロードビーム基板130及び前記フレクシャ基板140の双方に溶接されており、これにより、耐衝撃性の悪化を招くことなく、前記磁気ヘッドサスペンション1のうち前記荷重曲げ中心線BLより先端側に位置する部分のシーク方向(ディスク面と平行な方向)の剛性を高め、主共振モードである首振りモード(SWAYモード)の共振周波数を向上させている。
【0045】
即ち、前記ロードビーム基板130の板厚を厚くすることで前記磁気ヘッドサスペンション1のうち前記荷重曲げ中心線BLより先端側に位置する部分のシーク方向の剛性を高めることも可能であるが、この構成では、前記ロードビーム部30の質量が増加し、これにより、耐衝撃性が悪化する。
【0046】
これに対し、本実施の形態においては、前記弾性板60における前記ロードビーム部当接領域65のうち前記荷重曲げ中心線BLより先端側に位置する部分と前記ロードビーム基板130と前記フレクシャ基板140とが、少なくとも前記長手方向中心線CLを基準にして左右対称な一対の第1溶接点21において、溶接されている。
斯かる構成によれば、前記フレクシャ基板140が前記ロードビーム基板130の剛性を補強する補強部材としても作用することになり、従って、前記ロードビーム基板130の板厚を厚くすることなく、前記磁気ヘッドサスペンション1のうち前記荷重曲げ中心線BLより先端側に位置する部分のシーク方向の剛性を高めることができる。
【0047】
好ましくは、図1及び図2に示すように、前記フレクシャ基板140は、磁気ヘッドサスペンション長手方向に関し、前記ロードビーム基板130と共に前記弾性板60に溶接される部分と前記ロードビーム部当接領域141の先端部分との間において前記ロードビーム部当接領域141から磁気ヘッドサスペンション幅方向外方へ前記ロードビーム基板130を越えて延びる一対の拡幅領域148であって、長手方向中心線CLを基準にして互いに対して対称とされた一対の拡幅領域148を有し得る。
前記一対の拡幅領域148を備えることにより、前記ロードビーム部30に対する前記フレクシャ基板140によるシーク方向剛性補強効果をより向上させることができる。
【0048】
前記一対の拡幅領域148は、例えば、一枚のシート材から複数の前記フレクシャ基板を成形する際に隣接するフレクシャ基板同士を繋ぐブリッジ部を利用して形成することができる。
即ち、通常、一枚のシート材から複数の前記フレクシャ基板を成形するが、その際、前記フレクシャ基板が変形することを防止する為に、隣接するフレクシャ基板同士がブリッジ部で繋がれた状態のプリ成形体を形成し、その後に、前記ブリッジ部を切断して前記フレクシャ基板を形成する。
このような製造方法で前記フレクシャ基板を形成する場合において、好ましくは、切断された後の前記ブリッジ部によって前記拡幅領域148が形成されるように、前記プリ成形体を形成することができる。
斯かる製造方法によれば、実質的に製造工程を増加させることなく、前記拡幅領域148を備えた前記フレクシャ基板140を得ることができる。
【0049】
なお、本実施の形態においては、前述の通り、前記ロードビーム基板130の両側縁に前記フランジ部35が設けられているが、前記フランジ部35は、図1(a)に示すように、前記ディスク面から離間する方向へ折り曲げられており、且つ、前記フレクシャ基板140は、図1(b)及び図2に示すように、前記ロードビーム基板130におけるディスク面側の下面に当接されている。
従って、前記フランジ部35に抵触することなく、前記フレクシャ基板140に前記拡幅領域148を備えることができる。
【0050】
本実施の形態に係る磁気ヘッドサスペンション1は、前記フレクシャ基板140と前記ロードビーム基板130との接合を強固にしつつ、前記弾性板60が前記荷重曲げ中心線BL回りに容易に捩り弾性変形動作を行えるように、さらに下記構成を備えている。
【0051】
即ち、図2に示すように、前記フレクシャ基板14における前記ロードビーム部当接領域141の基端側は、磁気ヘッドサスペンション幅方向中央において前記荷重曲げ中心線BLより基端側へ延びる中央基端側延在部141aと、前記一対のブリッジ領域145にそれぞれつながるように磁気ヘッドサスペンション幅方向両側から基端側へ延びる一対の移行部141bであって、前記長手方向中心線CLを基準にして互いに対称とされた一対の移行部141bとを有している。
【0052】
斯かる構成において、前記中央基端側延在部141aは、図2に示すように、前記長手方向中心線CLを基準にして対称配置された一又は複数の第3溶接点25(図示の形態においては長手方向中心線CL上に位置する一つの溶接点25)において前記ロードビーム基板130及び前記弾性板60の双方に溶接されており、これにより、前記フレクシャ基板140と前記ロードビーム基板130とを強固に接合させている。
【0053】
さらに、前記フレクシャ基板140における前記ロードビーム当接領域141の基端側は、図2に示すように、前記中央基端側延在部141aと前記一対の移行部141bとの間の部分141cが平面視において基端側へ開く凹状とされており、且つ、前記凹状の先端側が前記荷重曲げ中心線BL上に位置されている。
斯かる構成によれば、前記弾性板60の前記荷重曲げ中心線BL回りの捩り弾性変形動作に対して、前記フレクシャ基板140の剛性が悪影響を及ぼすことを可及的に防止できる。
【0054】
本実施の形態に係る磁気ヘッドサスペンション1は、図1及び図2に示すように、さらに、前記荷重曲げ中心線BLより基端側に位置し且つ平面視において前記凹部13内に位置するように前記ロードビーム基板130に固着された平衡質量体200を備えており、これにより、前記荷重曲げ部20として作用する前記弾性板60に支持される部材の荷重曲げ中心線BLを基準にした先端側及び基端側の質量平衡化を図っている。
【0055】
具体的には、前記ロードビーム基板130は、図1及び図2に示すように、前記荷重曲げ中心線BLより先端側に位置する先端領域131と、前記荷重曲げ中心線BLより基端側に位置する基端領域132とを有している。
なお、前記ロードビーム基板130は、前記先端領域131から先端側へ延びるリフトタブ領域133をさらに有している。このリフトタブ領域133は、前記磁気ヘッドサスペンション1Aのロード/アンロードの切換を行う際に使用される。即ち、前記磁気ヘッドサスペンション1Aの非作動(アンロード)時に、前記磁気ヘッド100が前記ディスク面の外方に位置するように前記磁気ヘッドサスペンションがシーク方向へ移動する際に、前記リフトタブ領域133がデータ記憶装置におけるランプに係合する。斯かる構成により、前記磁気ヘッドサスペンション1Aのアンロード時における耐衝撃性をアップさせることができる。
【0056】
前記平衡質量体200は、図1及び図2に示すように、前記荷重曲げ中心線BLより基端側に位置し且つ平面視において前記凹部13内に位置するように前記ロードビーム基板130の前記基端領域132に溶接によって固着されている。
斯かる平衡質量体200を設けることにより、前記基端領域132を可及的に短くしつつ、前記荷重曲げ中心線BLを基準にして先端側に位置する部分の質量と基端側に位置する部分の質量との平衡化を図ることができ、これにより、衝撃力が加わった際の磁気ヘッド跳躍動作を有効に抑え、耐衝撃特性を向上させることができる。
【0057】
詳しくは、前記平衡質量体200は、前記ロードビーム基板130における前記基端領域132の上面に当接され且つ適宜の溶接点55,56において溶接されるロードビーム部当接領域210と、前記ロードビーム部当接領域210から前記凹部13内において基端側へ延びる基端側延在領域220とを有している。
【0058】
本実施の形態においては、図2に示すように、前記平衡質量体200の前記ロードビーム部当接領域210は、前記長手方向中央線CLを基準にして対称に配置された一対の先端側溶接点55において前記ロードビーム基板130及び前記弾性板60の双方に溶接され、且つ、前記一対の先端側溶接点55より基端側において前記長手方向中央線CLを基準にして対称に配置された一対の基端側溶接点56において前記ロードビーム基板130に溶接されている。
前記平衡質量体200は、例えば、厚さ0.05mm〜0.4mm程度の金属板によって形成され得る。
【0059】
前述の通り、前記ロードビーム基板130には、幅方向両側に上方を向くように折り曲げられた一対のフランジ部35が設けられている。従って、前記平衡質量体200の前記ロードビーム部当接領域210は、前記一対のフランジ部35の間において前記ロードビーム基板130の上面に当接された状態で溶接固定されており、これにより、前記平衡質量体200と前記ロードビーム基板130との接続部分において一定の剛性が確保されている。
【0060】
図4(a)及び(b)に、それぞれ、前記平衡質量体200の下面図(前記ディスク面側から視た図)及び側面図を示す。
図1,図2及び図4に示すように、前記平衡質量体200は磁気ヘッドサスペンション幅方向に沿った折り曲げ部205を有し、前記折り曲げ部205より基端側の領域が基端側へ行くに従って前記ディスク面から離間するように前記折り曲げ部205において曲げられている
【0061】
このように、前記折り曲げ部205より基端側の領域が基端側へ行くに従って前記ディスク面から離間するように前記平衡質量体200を形成することにより、前記磁気ヘッドサスペンション1の作動状態において、前記平衡質量体200を前記ディスク面へ近づける向きの衝撃力が加わった際に、前記平衡質量体200の基端側が前記ディスク面に衝突することを有効に防止できる。
【0062】
好ましくは、前記平衡質量体200は、図4(b)に示すように、前記折り曲げ部205を含む領域が他の領域に比して薄肉とされる。
斯かる構成によれば、前記折り曲げ部205での前記平衡質量体200の曲げ加工を安定的に行うことができる。
前記薄肉化は、例えば、前記平衡質量体200における前記折り曲げ部205に対応する部分の少なくとも一方側の面(本実施の形態においてはディスク面側の面)をエッチングすることにより、容易に行うことができる。
【0063】
実施の形態2
以下、本発明に係る磁気ヘッドサスペンションの他の実施の形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
図5(a)及び(b)に、それぞれ、本実施の形態2に係る磁気ヘッドサスペンション2の上面図及び下面図を示す。
又、図6に、図5(b)におけるVI部拡大図を示す。
なお、図中、前記実施の形態1における同一部材には同一符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0064】
本実施の形態に係る磁気ヘッドサスペンション2は、前記弾性板60が弾性板260に変更されている点において、前記実施の形態1に係る磁気ヘッドサスペンション1と相違している。
図7に、前記弾性板260の拡大下面図を示す。
【0065】
図7に示すように、前記弾性板260は、前記ロードビーム部当接領域65が、磁気ヘッドサスペンション長手方向位置に関し前記第1及び第2延在領域71,72に対応した中央領域66に加えて、前記中央領域66から先端側へ延びる先端領域67を有している点において、前記実施の形態1における前記弾性板60と相違している。
【0066】
そして、前記一対の第1溶接点21は前記先端領域67に位置されている。
即ち、前記弾性板260は、前記ロードビーム部当接領域65における前記先端領域67に位置された前記一対の第1溶接点21において、前記ロードビーム基板130及び前記フレクシャ基板140の双方に溶接されている。
【0067】
このように、前記弾性板260の前記ロードビーム当接領域65に、磁気ヘッドサスペンション長手方向に関し、前記第1及び第2延在部71,72より先端側へ延びる前記先端領域67を設け、前記先端領域67を少なくとも前記一対の第1溶接点21において前記ロードビーム基板130及び前記フレクシャ基板140の双方に溶接することにより、前記磁気ヘッドサスペンション2のうち前記荷重曲げ中心線BLより先端側に位置する部分のシーク方向の剛性をより効果的に向上させることができる。
【0068】
ここで、本実施の形態に係る磁気ヘッドサスペンション2に対して、有限要素法を用いて行った首振りモードの共振周波数に関する解析結果及び磁気ヘッド100の跳躍動作を引き起こす衝撃力の限界加速度に関する解析結果について説明する。
【0069】
この解析においては、実施例として、図5に示す前記磁気ヘッドサスペンション2であって、前記フレクシャ基板140、前記ロードビーム基板130、前記平衡質量体200、前記弾性板260及び前記支持部10が全てSUS304−HTAであり、且つ、厚さがそれぞれ、0.018mm、0.02mm、0.2mm、0.03mm及び0.3mmである磁気ヘッドサスペンション2を用いた。
比較例として、前記一対の第1溶接点21においては前記弾性板260及び前記ロードビーム基板130だけが溶接され、前記フレクシャ基板140は溶接されていない点において前記実施例と異なる磁気ヘッドサスペンションを用いた。
【0070】
前記実施例及び前記比較例を用いて行ったシーク方向の共振周波数に関する解析結果(周波数応答特性)を図8に示す。
又、前記実施例及び前記比較例に対して、前記磁気ヘッド100がディスク面から離れる方向の衝撃波(正弦半波)であって、パルス幅0.5mmsec,1.0msec及び2.0msecの衝撃波をそれぞれ加え、前記磁気ヘッド100の跳躍を引き起こす衝撃波の加速度(限界快速度)を解析した。その結果を、図9に示す。
【0071】
図8及び図9から明らかなように、実施例に係る磁気ヘッドサスペンションは、比較例に係る磁気ヘッドサスペンションに対して、全てのパルス幅の衝撃波において限界加速度が同等以上であった。又、SWAYモードの共振周波数に関しては、比較例に係る磁気ヘッドサスペンションにおいては11.8kHzであるのに対し、実施例に係る磁気ヘッドサスペンションにおいては12.5kHzであり、実施例に係る磁気ヘッドサスペンションは比較例に係る磁気ヘッドサスペンションに対して700Hz程度向上されている。
これは、前記フレクシャ基板140が前記ロードビーム部30のシーク方向に関する剛性補強部材として作用していることによるものと考えられる。
【0072】
実施の形態3
以下、本発明に係る磁気ヘッドサスペンションの他の実施の形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
図10(a)及び(b)に、それぞれ、本実施の形態3に係る磁気ヘッドサスペンション3の上面図及び下面図を示す。
又、図11に、図10(b)におけるXI部拡大図を示す。
なお、図中、前記実施の形態1及び2における同一部材には同一符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0073】
図10及び図11に示すように、本実施の形態に係る磁気ヘッドサスペンション3は、前記実施の形態2に係る磁気ヘッドサスペンション2において、前記弾性板260の代わりに弾性板360を備えている。
【0074】
図12に、前記弾性板360の拡大下面図を示す。
図12に示すように、前記弾性板360は、前記第1及び第2支持部当接領域61,62と、前記中央領域66及び前記先端領域67を含む前記ロードビーム部当接領域65と、前記第1及び第2延在領域71,72と、前記ロードビーム部当接領域65の前記先端領域67から前記ロードビーム基板130を越えて磁気ヘッドサスペンション幅方向外方へ延びる一対の外方延在領域75とを備えている。
【0075】
前記弾性板360における前記ロードビーム部当接領域65の前記先端領域67は、図10〜図12に示すように、前記実施の形態2におけると同様に、前記一対の第1溶接点21において前記ロードビーム基板130及び前記フレクシャ基板140の双方に溶接されている。
【0076】
さらに、本実施の形態においては、図10〜図12に示すように、前記弾性板360における前記一対の外方延在領域75が、少なくとも前記長手方向中心線CLを基準にして左右対称な一対の第2溶接点22において前記フレクシャ基板140における前記一対の拡幅領域148に溶接されている。
【0077】
このように、前記弾性板360に前記ロードビーム基板130を越えて磁気ヘッドサスペンション幅方向外方へ延びる前記一対の外方延在領域75を設け且つ前記フレクシャ基板140にも前記ロードビーム基板130を越えて磁気ヘッドサスペンション幅方向外方へ延びる前記一対の拡幅領域148を設けると共に、前記一対の外方延在領域75及び前記一対の拡幅領域148を少なくとも前記一対の第2溶接点22において溶接することにより、前記磁気ヘッドサスペンション3のうち前記荷重曲げ中心線BLより先端側に位置する部分のシーク方向の剛性をさらに効果的に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】図1(a)及び(b)は、それぞれ、本発明の実施の形態1に係る磁気ヘッドサスペンションの上面図(ディスク面とは反対側から視た図)及び下面図(ディスク面の側から見た図)である。
【図2】図2は、図1(b)におけるII部拡大図である。
【図3】図3(a)は、前記実施の形態1に係る磁気ヘッドサスペンションにおける弾性板の拡大下面図であり、図3(b)は、変形例に係る弾性板の拡大下面図である。
【図4】図4(a)及び(b)は、それぞれ、図1及び図2に示す前記磁気ヘッドサスペンションにおける平衡質量体の下面図及び側面図である。
【図5】図5(a)及び(b)は、それぞれ、本発明の実施の形態2に係る磁気ヘッドサスペンションの上面図及び下面図である。
【図6】図6は、図5(b)におけるVI部拡大図である。
【図7】図7は、前記実施の形態2に係る磁気ヘッドサスペンションにおける弾性板の拡大下面図である。
【図8】図8は、前記実施の形態2の実施例に係る磁気ヘッドサスペンション及び比較例に係る磁気ヘッドサスペンションに対するシーク方向の共振周波数に関する解析結果を示すグラフである。
【図9】図9は、前記実施例及び比較例に係る磁気ヘッドサスペンションに対する限界加速度に関する解析結果を示すグラフである。
【図10】図10(a)及び(b)は、それぞれ、本発明の実施の形態3に係る磁気ヘッドサスペンションの上面図及び下面図である。
【図11】図11は、図10(b)におけるXI部拡大図である。
【図12】図12は、前記実施の形態3に係る磁気ヘッドサスペンションにおける弾性板の拡大下面図である。
【符号の説明】
【0079】
1〜3 磁気ヘッドサスペンション
10 支持部
11 本体領域
12 支持片
13 凹部
20 荷重曲げ部
21 一対の第1溶接点
22 一対の第2溶接点
25 第3溶接点
30 ロードビーム部
40 フレクシャ部
43 磁気ヘッド搭載領域
51〜53 溶接点
60 弾性板
61,62 第1及び第2支持部当接領域
65 ロードビーム部当接領域
66 中央領域
67 先端領域
71,72 第1及び第2延在領域
75 一対の外方延在領域
130 ロードビーム基板
140 フレクシャ基板
141 ロードビーム部当接領域
141a 中央基端側延在部
141b 一対の移行部
142 一対の支持片
144 支持部当接領域
145 一対のブリッジ領域
148 一対の拡幅領域
200 平衡質量体
205 折り曲げ部
CL 長手方向中心線
BL 荷重曲げ中心線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気ヘッドをディスク面へ向けて押し付ける為の荷重を発生する荷重曲げ部と、前記荷重を前記磁気ヘッドに伝達するためのロードビーム部と、前記荷重曲げ部を介して前記ロードビーム部を支持する支持部と、前記磁気ヘッドを支持するヘッド搭載領域を有し、前記ロードビーム部に溶接されるフレクシャ部とを備えた磁気ヘッドサスペンションであって、
前記支持部は、本体領域と、前記本体領域の幅方向両側から先端側へ延び、両者の間に先端側へ開く凹部を画する一対の支持片であって、磁気ヘッドサスペンションの長手方向中心線を基準にして対称とされた一対の支持片とを有し、
前記磁気ヘッドサスペンションは前記一対の支持片に両持ち支持された弾性板を備え、
前記弾性板は、前記一対の支持片にそれぞれ当接され且つ適宜の溶接点において溶接される第1及び第2支持部当接領域と、前記凹部内において前記ロードビーム部に当接され且つ適宜の溶接点において溶接されるロードビーム部当接領域と、前記ロードビーム部当接領域と前記第1及び第2支持部当接領域との間をそれぞれ連結する第1及び第2延在領域とを有し、前記第1及び第2延在領域が磁気ヘッドサスペンションの幅方向に沿った荷重曲げ中心線回りに捩れ弾性変形することで前記荷重曲げ部として作用するように構成され、
前記ロードビーム部当接領域のうち前記荷重曲げ中心線より先端側に位置する部分が、少なくとも前記長手方向中心線を基準にして左右対称な一対の第1溶接点において、前記ロードビーム部を形成するロードビーム基板及び前記フレクシャ部を形成するフレクシャ基板の双方に溶接されていることを特徴とする磁気ヘッドサスペンション。
【請求項2】
前記弾性板の前記ロードビーム部当接領域は、前記磁気ヘッドサスペンションの長手方向位置に関し前記第1及び第2延在領域に対応した中央領域と、前記中央領域から先端側へ延びる先端領域とを有し、
前記一対の第1溶接点は前記先端領域に位置していることを特徴とする請求項1に記載の磁気ヘッドサスペンション。
【請求項3】
前記フレクシャ基板は、前記ロードビーム基板に当接され且つ適宜の溶接点において溶接されるロードビーム部当接領域と、前記ロードビーム部当接領域から先端側へ延びる一対の支持片と、前記一対の支持片の自由端部に連結され、前記磁気ヘッドが搭載される前記ヘッド搭載領域と、前記ロードビーム部当接領域から前記ロードビーム基板を越えて磁気ヘッドサスペンション幅方向外方へ延びる一対の拡幅領域とを有し、
前記弾性板は、前記一対の拡幅領域と当接し得るように前記ロードビーム部当接領域の前記先端領域から前記ロードビーム基板を越えて磁気ヘッドサスペンション幅方向外方へ延びる一対の外方延在領域を有しており、
前記一対の外方延在領域及び前記一対の拡幅領域は、少なくとも前記長手方向中心線を基準にして左右対称な一対の第2溶接点において互いに溶接されていることを特徴とする請求項2に記載の磁気ヘッドサスペンション。
【請求項4】
前記フレクシャ基板は、前記支持部に当接され且つ適宜の溶接点において溶接される支持部当接領域と、前記ロードビーム部当接領域の幅方向両側から基端側へ延びて前記支持部当接領域に連結される一対のブリッジ領域であって、前記長手方向中心線を基準にして互いに対称とされた一対のブリッジ領域とを有し、
前記フレクシャ基板における前記ロードビーム部当接領域の基端側は、磁気ヘッドサスペンション幅方向中央において前記荷重曲げ中心線より基端側へ延びる中央基端側延在部と、前記一対のブリッジ領域にそれぞれつながるように磁気ヘッドサスペンション幅方向両側から基端側へ延びる一対の移行部であって、前記長手方向中心線を基準にして互いに対称とされた一対の移行部とを有し、
前記中央基端側延在部は、前記長手方向中心線を基準にして対称配置された一又は複数の第3溶接点において前記ロードビーム基板及び前記弾性板の双方に溶接され、
前記中央基端側延在部と前記一対の移行部との間は、平面視において基端側へ開く凹状とされており、
前記凹状の先端側は前記荷重曲げ中心線上に位置していることを特徴とする請求項3に記載の磁気ヘッドサスペンション。
【請求項5】
前記荷重曲げ中心線より基端側に位置し且つ平面視において前記凹部内に位置するように前記ロードビーム基板に固着された平衡質量体を備えていることを特徴とする請求項1から4の何れかに記載の磁気ヘッドサスペンション。
【請求項6】
前記平衡質量体は磁気ヘッドサスペンション幅方向に沿った折り曲げ部を有し、前記折り曲げ部より基端側の領域が基端側へ行くに従って前記ディスク面から離間するように前記折り曲げ部において曲げられていることを特徴とする請求項5に記載の磁気ヘッドサスペンション。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−259338(P2009−259338A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−107465(P2008−107465)
【出願日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【出願人】(000175722)サンコール株式会社 (96)
【Fターム(参考)】