説明

磁気ヘッド及び磁気記録装置

【課題】スピントルク発振子を記録磁極の近傍に設置しても、スピントルク発振子の発振周波数の変動を抑制することを可能にする。
【解決手段】記録磁極22と、記録磁極の近傍に形成されたスピントルク発振子26と、スピントルク発振子に磁界を印加する磁界印加部28と、を備え、磁界印加部によってスピントルク発振子に印加される磁界は、記録磁極から発生される記録磁界と実質的に直交している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピントルク発振子を備えた磁気ヘッド及び磁気記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
1990年代においては、MR(Magneto-Resistive effect)ヘッドと、GMR(Giant Magneto-Resistive effect)ヘッドの実用化が引き金となって、HDD(Hard Disk Drive)の記録密度と記録容量が飛躍的な増加を示した。しかし、2000年代に入ってから磁気記録媒体の熱揺らぎの問題が顕在化してきたために、記録密度増加のスピードが一時的に鈍化した。それでも、面内磁気記録よりも原理的に高密度記録に有利である垂直磁気記録が2005年に実用化されたことが牽引力となって、昨今、HDDの記録密度は年率約40%の伸びを示している。
【0003】
また、最新の記録密度の実証実験では400Gbits/inchを超えるレベルが達成されており、このまま堅調に進展すれば、2012年頃には記録密度1Tbits/inchが実現されると予想されている。しかしながら、このような高い記録密度の実現は、垂直磁気記録方式を用いても、再び熱揺らぎの問題が顕在化するために容易ではないと考えられる。
【0004】
この問題を解消し得る記録方式として「高周波アシスト磁気記録方式」が提案されている。この高周波アシスト磁気記録方式では、記録信号周波数より十分に高い、磁気記録媒体の共鳴周波数付近の高周波磁界を局所的に印加する。この結果、磁気記録媒体が共鳴し、高周波磁界を印加された磁気記録媒体の保磁力(Hc)は元々の保磁力の半分以下となる。このため、記録磁界に高周波磁界を重畳することにより、より保磁力(Hc)が大きくかつ磁気異方性エネルギー(Ku)が大きい磁気記録媒体への磁気記録が可能となる(例えば、特許文献1)。しかし、この特許文献1に開示された手法ではコイルにより高周波磁界を発生させており、記録密度を高めるために磁気記録媒体の記録部位のサイズを小さくすればするほど、その記録部位に印加できる高周波磁界の強度が急激に減少するため、記録部位の保磁力を低下させることが難しい、という問題があった。
【0005】
そこで、高周波磁界の発生手段として、スピントルク発振子を利用する手法も提案されている(例えば、特許文献2、3参照)。これらの特許文献2、3に開示された技術においては、一対のスピントルク発振子は、スピン偏極層と、このスピン偏極層上に設けられた非磁性層と、この非磁性層上に設けられたスピン発振層との積層膜から構成される。直流電流をスピントルク発振子に通電するとスピン偏極層を通過する電子のスピンが偏極する。この偏極したスピン電流によりスピン発振層がスピントルクを受けることによって、スピン発振層の磁化が強磁性共鳴を生じ、その結果、スピン発振層から高周波磁界が発生することになる。
【0006】
このような現象は素子サイズが数十ナノメータ以下になると顕著に現れることから、スピントルク発振子から発生する高周波磁界の届く範囲は、スピントルク発振子から数十ナノメータ以下の微小領域内に限られる。発振周波数が磁気記録媒体の記録層の強磁性共鳴周波数に等しいか、または発振周波数をその近傍に設定して、スピントルク発振子を記録磁極の近傍に配置した磁気記録ヘッドを磁気記録媒体に近接対向させると、スピントルク発振子から発生する高周波磁界を磁気記録媒体の記録層の微細な記録部位にのみ印加することができる。その結果、微細な記録部位の保磁力だけを低下させることができる。
【0007】
この保磁力が低下するタイミングに、記録磁極を用いて上記記録部位に記録磁界を印加することで、記録部位だけを磁化反転させること、すなわち情報の書き込みが可能となる。
【0008】
一方、斜め記録磁界により保磁力(Hc)が大きい磁気記録媒体に記録する手法もある。Stoner-Wohlfarthのモデルによれば、45°方向磁界の場合に、保磁力(Hc)が大きい磁気記録媒体を小さな記録磁界で反転することが可能である。垂直磁気記録方式では記録磁極の記録媒体の対向面に対して交差した面から斜め記録磁界を発生させることが可能である。さらに、磁界強度の変化が急峻な斜め磁界を発生させるためには、記録磁極の近傍に補助磁極を追加することが有効である。記録磁極の記録媒体の対向面に対して交差した面と補助磁極の記録媒体の対向面に対して交差した面とのギャップ間隔を調整することにより、記録媒体内に発生する磁界方向を斜めとし、強度変化を急峻にすることが可能である。このため、記録磁極および補助磁極を備えた磁気記録ヘッドにより、高密度記録が可能となり、さらに保磁力(Hc)が大きくかつ磁気異方性エネルギー(Ku)が大きい磁気記録媒体を利用することが可能となる。
【特許文献1】米国特許第6011664号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2005/0023938号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2005/0219771号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
スピントルク発振子から発生する高周波磁界を印加して、記録部位の保磁力を効率よく低下させるためには、スピントルク発振子の発振周波数を磁気記録媒体の強磁性共鳴周波数と略等しくなるように設定することが必要である。スピントルク発振子の発振周波数は、スピン発振層に加わる有効磁界Heffに比例して増大する。この有効磁界Heffは、スピン発振層の内部磁界(磁気異方性など)と外部磁界(記録磁界など)の両方により決定される。スピントルク発振子を記録磁極の近傍に配置する場合に、記録磁極からスピントルク発振子に加わる磁界は数kOeにも達する大きな値となる。このため、スピントルク発振子に印加される記録磁界が内部磁界に比べて無視できないレベルに達し、書き込み磁界の向きによってスピントルク発振子の発振周波数が変化してしまうという問題があった。
【0010】
本発明は、上記事情を考慮してなされたものであって、スピントルク発振子を記録磁極の近傍に設置しても、スピントルク発振子の発振周波数の変動を抑制することのできる磁気ヘッド及びこの磁気ヘッドを有する磁気記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の態様による磁気ヘッドは、記録磁極と、前記記録磁極の近傍に形成されたスピントルク発振子と、前記スピントルク発振子に磁界を印加する磁界印加部と、を備え、前記磁界印加部によって前記スピントルク発振子に印加される磁界は、前記記録磁極から発生される記録磁界と実質的に直交していることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の第2の態様による磁気ヘッドは、記録磁極と、前記記録磁極の近傍に形成されたスピントルク発振子と、媒体対向面に平行な平面内において前記記録磁極と前記スピントルク発振子とを結ぶ方向と実質的に直交する方向の、前記スピントルク発振子の両端部に配置され、前記スピントルク発振子に磁界を印加する磁界印加部と、を備え、前記スピントルク発振子は、少なくとも1層の磁性体膜を有する第1磁性層と、少なくとも1層の磁性体膜を有する第2磁性層と、前記第1磁性層と前記第2磁性層との間に設けられた中間層と、前記中間層とは反対側の前記第1磁性層の面に設けられた第1電極層と、前記中間層と反対側の前記第2磁性層の面に設けられた第2電極層とを有し、前記第1磁性層と、前記中間層と、前記第2磁性層との膜面に対して垂直方向に電流を流すことが可能な電極と、を備え、前記第1電極層、前記第1磁性層、前記中間層、前記第2磁性層、および前記第2電極層は、前記スピントルク発振子の前記両端部を結ぶ方向に対して略平行な方向に積層されていることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の第3の態様による磁気ヘッドは、記録磁極と、前記記録磁極の近傍に形成されたスピントルク発振子と、媒体対向面に平行な平面内において前記記録磁極と前記スピントルク発振子とを結ぶ方向と実質的に直交する方向の、前記スピントルク発振子の両端部に配置され、前記スピントルク発振子に磁界を印加する磁界印加部と、を備え、前記スピントルク発振子は、少なくとも1層の磁性体膜を有する第1磁性層と、少なくとも1層の磁性体膜を有する第2磁性層と、前記第1磁性層と前記第2磁性層との間に設けられた中間層と、前記中間層とは反対側の前記第1磁性層の面に設けられた第1電極層と、前記中間層と反対側の前記第2磁性層の面に設けられた第2電極層とを有し、前記第1磁性層と、前記中間層と、前記第2磁性層との膜面に対して垂直方向に電流を流すことが可能な電極と、を備え、前記第1電極層、前記第1磁性層、前記中間層、前記第2磁性層、および前記第2電極層は、前記スピントルク発振子の前記両端部を結ぶ方向に対して略垂直な方向に積層されていることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の第4の態様による磁気記録装置は、磁気記録媒体と、第1乃至第3の態様のいずれかによる磁気ヘッドと、を備え、前記磁気記録ヘッドを用いて前記磁気記録媒体への書き込みを行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、スピントルク発振子を記録磁極の近傍に設置しても、記録磁界によるスピントルク発振周波数の変動を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0017】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態による磁気ヘッドを図1乃至図8を参照して説明する。本実施形態の磁気ヘッドは、高周波磁界アシスト用磁気ヘッドであって、垂直磁気記録媒体とともに用いられる。図1は、本実施形態の磁気ヘッドを、磁気記録媒体とともに、媒体対向面に垂直かつ磁気記録媒体の進行方向に平行な方向(トラック長手方向)の面で切断した断面図である。図2は、本実施形態の磁気ヘッドを、媒体対向面に垂直かつ磁気記録媒体の進行方向に垂直な方向(トラック幅方向)の面で切断した断面図である。
【0018】
図1に示したように、本実施形態の磁気記録ヘッドは、再生ヘッド部10と、書き込みヘッド部20を備えている。再生ヘッド部10は、磁気シールド12と、磁気シールド14と、磁気シールド12磁気シールド14とに挟まれた磁気再生素子16と、を有する。磁気再生素子16としてGMR(Giant Magneto-Resistive effect)素子やTMR(Tunneling Magneto-Resistive effect)素子などを用いることが可能である。磁気再生素子16は、磁気シールド12、14の磁気記録媒体100側の端部に挟まれて配置されている。磁気記録媒体100は、磁気記録媒体基板102と、この磁気記録媒体基板102上に設けられた軟磁性層103と、この軟磁性層103上に設けられた磁気記録層104とを備えている。磁気再生素子16は、磁気記録媒体100の磁気記録層104に近接して設けられており、磁気再生素子16の直下の磁気記録層104の領域(読み出し領域)と磁気回路を構成する。この磁気回路は、磁気記録層104の読み出し領域に記録されている磁化の向きによって磁気抵抗が異なる。この磁気抵抗の違いを磁気再生素子16によって検出することにより、磁気記録層104に記録された磁化の向き(記録情報)を読み出し(再生)する。磁気記録媒体100の進行方向を矢印50に示す。
【0019】
また、書き込みヘッド部20は、主磁極(記録磁極)22およびリターンヨーク(磁気シールド)24からなる磁気コア21と、これを励磁するための電磁コイル27と、スピントルク発振子26と、このスピントルク発振子に磁界を付与するための電磁石28と、を備えている。リターンヨーク24は、本体部24aと、本体部24aの磁気記録媒体100側の端部に接続する前部24bと、本体部24aの磁気記録媒体100側と反対側の端部に接続する後部24cと、を有している。また、後部24cは主磁極22の磁気記録媒体100と反対側の端部に接続している。スピントルク発振子26は、主磁極22の磁気記録媒体100側の端部と、リターンヨーク24の前部24bとの間に設けられている。電磁コイル27はリターンヨーク24の後部24cを取り囲むように、すなわち周回するように配置され、磁気コア21を励磁する。本実施形態においては、スピントルク発振子26は主磁極22のトレーリング側に設けられている。
【0020】
電磁石28はC字型の磁気コア28aと、この磁気コア28aを励磁するための電磁コイル28bとを有している(図2参照)。C字型の磁気コア28aは、磁気コア21と実質的に直交するように配置され、その磁極間にスピントルク発振子26が配置される。
【0021】
なお、再生ヘッド部の各要素、および書き込みヘッド部を構成する各要素は、アルミナ等の絶縁体(図示せず)により分離されている。なお、図2において、符号60は磁気記録媒体100の進行方向を示し、紙面に垂直に奥側から手前側に向かって磁気記録媒体100は進行する。
【0022】
書き込みヘッド部20から印加される磁界により、磁気記録層104の磁化が所定の方向に制御され、書き込みが行われる。再生ヘッド部10は、この磁気記録層104の磁化の方向を読み取る。
【0023】
本実施形態の磁気ヘッドに用いられるスピントルク発振子26の第1具体例を図3に示す。この第1具体例のスピントルク発振子26は、電極層26と、磁化の向きが固着されたスピン注入層26(第2磁性層)と、スピン透過率の高い中間層26と、発振層26(第1磁性層)と、電極層26と、が積層された積層構造を有している。そして、この積層構造の膜面が、磁気記録媒体100に対向する媒体対向面に対して略直交しかつ磁気記録媒体の進行方向50に対して略平行となっている。すなわち、この積層構造の膜面は、主磁極22からリターンヨーク24の前部24bに向かう方向に略平行になっている。また、この第1具体例においては、スピントルク発振子26の積層構造の膜面は、電磁石28によってスピントルク発振子26に印加される磁界の向きと略直交している。磁気ヘッドの内部または外部に適宜配置される定電流源70を用いることによって、図4に示すように、電極層26と電極層26を経由して、スピントルク発振子26に所定の直流電流を流すことができる。図4においては、電流は、矢印75に示すように、電極層26から電極層26に向かって流れる。すなわち、スピントルク発振子26の積層構造の膜面に略垂直に流れる。
【0024】
なお、図3においては、外部磁界がなく、定電流源70からの電流がスピントルク発振子26に流れないときのスピン注入層26および発振層26の磁化の配向状態を示しており、スピン注入層26は磁化が膜面に略直交する方向に配向し、発振層26は磁化が膜面に略平行な方向に配向している。この状態で、定電流源70からの電流をスピントルク発振子26に流すと、後述するように、発振層26の磁化にスピントルクが与えられ、図4に示すように発振層26の磁化は強磁性共鳴(磁化の歳差運動)を生じる。
【0025】
また、スピントルク発振子26は、図5に示す第2具体例のように、電極層26と、スピン注入層26と、スピン透過率の高い中間層26と、発振層26と、電極層26と、が積層された積層構造を有し、この積層構造の膜面が、媒体対向面に対して略直交しかつ磁気記録媒体の進行方向50に対して略直交してもよい。この場合、積層構造の膜面は、主磁極22からリターンヨーク24の前部24bに向かう方向に略直交している。また、この第2具体例においては、スピントルク発振子26の積層構造の膜面は、電磁石28によってスピントルク発振子26に印加される磁界の向きと略平行となっている。この図5においては、外部磁界がなく、定電流源70からの電流がスピントルク発振子26に流れないときのスピン注入層26および発振層26の磁化の配向状態を示しており、スピン注入層26および発振層26は磁化が膜面に略平行でかつ互いに反平行な方向(逆向き)に配向している。この状態で、定電流源70からの電流を図6に示すような矢印75の向きに、スピントルク発振子26に流すと、後述するように、発振層26の磁化にスピントルクが与えられ、図6に示すように発振層26の磁化は強磁性共鳴(磁化の歳差運動)を生じる。なお、外部磁界がなく、定電流源70からの電流がスピントルク発振子26に流れないときのスピン注入層26および発振層26の磁化が膜面に平行でかつ互いに平行な方向(同じ向き)に配向している場合は、図6に示す矢印75と反対方向に電流を流すことにより、発振層26の磁化にスピントルクが与えられ、発振層26の磁化は強磁性共鳴(磁化の歳差運動)を生じる。
【0026】
図3乃至図6からわかるように、電磁石28からスピントルク発振子26に印加されるバイアス磁界Hbiasは主磁極22からリターンヨーク24の前部24bに向かう方向と実質的に直交している。なお、図3乃至図6においては、主磁極22とリターンヨーク24の前部24bは、便宜上模式的に示している。
【0027】
次に、発振層26の磁化が強磁性共鳴する原理を説明する。電極層26、発振層26、中間層26、スピン注入層26、電極層26の順に電流を流すと、それとは反対方向に電子が流れることになる。この場合、電極層26からスピン注入層26に流入してスピン注入層26を通過する電子のスピンは、スピン注入層26の磁化の配向方向と平行な方向に偏極される。この偏極された電子は、スピン透過率の高い中間層26を経由して、発振層26に流入し、発振層26の磁化にスピントルクを与える。一方、これとは逆方向に電流を流す場合には、中間層26とスピン注入層26との界面において、スピン注入層26の磁化方向と反対向きのスピンを有する電子が反射される。そして、この反射された電子は中間層26を通り発振層26に注入され、これにより発振層26の磁化にスピントルクが与えられる。このため、発振層26の磁化は強磁性共鳴(磁化の歳差運動)を起こし、発振層26の磁気特性と電磁石28によって印加される磁界強度等に応じた高周波磁界を生じる。
【0028】
図1および図2に示したように、スピントルク発振子26は、主磁極22とリターンヨーク24の間、および磁界付与のための電磁石28の磁極の間に配置される。磁界付与のための電磁石28によるバイアス磁界Hbiasは、スピントルク発振子26の発振層26に付与される。スピントルク発振子26の発振周波数は、印加される磁界の大きさでほぼ決まるという性質があるため、電磁石28でバイアス磁界Hbiasを印加することにより、発振周波数を制御することが可能である。電磁石28は、飽和磁束密度が比較的大きい、FeCoなどの材料が用いられる。
【0029】
スピントルク発振子26の電極層26と電極層26は、Ti、Cuなどの電気抵抗が低く、酸化されにくい材料から形成することが好ましい。中間層26は、Cu、Ag、Au等のスピン透過率の高い材料から形成される。スピン注入層26または発振層26の材料としては、
(1)CoFe、CoNiFe、NiFe、CoZrNb、FeN、FeSi、FeAlSi等の、比較的、飽和磁束密度が大きく、膜面内方向に磁気異方性を有する軟磁性層(発振層に適する)
(2)膜面内方向に磁化が配向したCoCr系の磁性合金膜
(3)膜面垂直方向に磁化が配向したCoCrPt、CoCrTa、CoCrTaPt、CoCrTaNb等のCoCr系磁性層(スピン注入層に適する)
(4)TbFeCo等のRE−TM系アモルファス合金磁性層(スピン注入層に適する)
(5)Co/Pd、Co/Pt、CoCrTa/Pd等のCo人工格子磁性層(スピン注入層に適する)
(6)CoPt系やFePt系の合金磁性層や、SmCo系合金磁性層など、垂直配向性に優れた材料(スピン注入層に適する)
(7)CoFeにAl,Si,Ge,Mn,Crなどを添加した合金(スピン注入層に適する)
などのいずれかを用いることができる。また、飽和磁束密度および異方性磁界を調整するため、スピン注入層、発振層それぞれについて、上記材料を積層してもよい。この他に、発振層の発振周波数を上げるため、またはスピン注入層の磁化を効率的に固着するため、スピン注入層26または発振層26としては、上記材料を、非磁性体層を介して積層し、上記材料の磁化が反平行状態となる積層フェリ構造や、上記材料の磁化が平行となる積層構造としてもよい。この場合、非磁性層としては、Cu、Pt、Au、Ag、Pd、Ru等の貴金属を用いることが好ましく、Cr、Rh、Mo、W等の非磁性遷移金属を利用することも可能である。
【0030】
更に、スピン注入層26または発振層26の材料としては、交換結合を利用した強磁性体層と反強磁性体層との積層構造を用いても良い。これは、発振層の発振周波数を上げるため、またはスピン注入層の磁化を効率的に固着するためである。ここで、反強磁性体として、FeMn、NiMn、FeNiMn、FeMnRh、RhMn、CoMn、CrMn、CrMnPt、CrMnRh、CrMnCu、CrMnPd、CrMnIr、CrMnNi、CrMnCo、CrMnTi、PtMn、PdMn、PdPtMn、IrMnなどを用いることができる。
【0031】
発振層26の厚みは、十分な高周波磁界を磁気記録媒体100に付与するために5nm以上が好ましく、均一な発振モードの観点から20nm以下が好ましい。スピン注入層26の厚みは、スピン注入層26での発振を抑制するために2nm以上が好ましい。
【0032】
次に、本実施形態の効果について説明する。図7(a)乃至図7(d)は、特許文献2および3に開示されている従来の磁気ヘッドにおける主磁極からの漏れ磁界と、スピントルク発振子におけるスピン注入層の磁化方向との関係を説明する図である。効率のよい高周波磁界アシスト用磁気記録ヘッドを実現するためには、スピントルク発振子と主磁極とを近接させ、面内高周波磁界および斜め記録磁界とを磁気記録媒体内で効率的に重畳することが重要になる。そこで、スピントルク発振子を主磁極の近傍に形成すると、スピントルク発振子の発振層に印加される主磁極からの書き込み磁界が数kOeに達する。そのため、特許文献2および特許文献3に開示されている従来の構造では、書き込み磁界の向きによって、発振条件が変化してしまう問題があった。図7(a)乃至図7(b)に示すように、発振層の有効磁界Heffは書き込み磁界Hwriteでほぼ決定され、正負の書き込み磁界Hwriteの向きによって、スピン注入層の磁化方向MSILと略反平行(図7(a))、または略平行(図7(b))の配置をとる。電流を図7(c)、図7(d)に示す方向に流す場合には、有効磁界Heffとスピン注入層の磁化方向が略反平行な場合(図7(c))には、発振層にスピントルクが印加され、発振層の磁気特性と有効磁界等に応じた高周波磁界を生ずる。有効磁界Heffとスピン注入層の磁化方向MSILが略平行な場合(図7(d))には、発振層にスピントルクが印加されず、発振層の磁化は発振しない。なお、図7(a)乃至図7(d)において、符号Mは、発振層の磁化方向を示している。
【0033】
これに対して、本実施形態においては、図8(a)、図8(b)に示すように、バイアス磁界Hbiasの方向と、書き込み磁界Hwriteの方向は、概ね直交している。このため、主磁極22の書き込み磁界Hwriteの向きによって、スピントルク発振子26の発振層の有効磁界Heff(発振層の磁化の回転軸)は、スピントルク発振子26のバイアス磁界Hbiasの方向から所定の角度±θだけ傾くが、発振周波数を決める有効磁界Heffの、バイアス磁界Hbias方向の成分は変化しないと考えられるので、書き込み磁界Hwriteの向きが変化する際にも発振周波数を安定させることが可能である。図8(a)、図8(b)では、スピン注入層の磁化方向MSILは、バイアス磁界Hbias方向と略反平行に配向しており、角度θが十分に小さいために有効磁界Heffとスピン注入層の磁化方向MSILが略反平行の配置をとり、電流を図8(a)、図8(b)に示す矢印75の方向に流すと安定した発振が持続する。なお、図8(a)、図8(b)は、磁気記録媒体から見た書き込みヘッド部の平面図である。スピントルク発振子として、電極層26、発振層26、中間層26、スピン注入層26、電極層26とが電磁石28によってスピントルク発振子26に印加される磁化の向きと略平行な方向に積層される具体例を示したが、電極層26、発振層26、中間層26、スピン注入層26、電極層26とが電磁石28によってスピントルク発振子26に印加される磁化の向きと略直交する方向に積層されるスピントルク発振子を用いても、記録磁界によるスピントルク発振周波数変動を抑制することができる。
【0034】
次に、本実施形態の磁気ヘッドの変形例について説明する。
【0035】
(第1変形例)
第1実施形態の第1変形例による磁気ヘッドを図9に示す。図9は、本変形例の磁気ヘッドを、媒体対向面に垂直かつ磁気記録媒体の進行方向に垂直な方向(トラック幅方向)の面で切断した断面図である。本変形例においては、図2に示す第1実施形態の場合よりも、電磁石28の磁気コアを、スピントルク発振子26の媒体対向面から磁気記録媒体100から遠ざかる方向に数nmから10nm程度後退させた構成となっている。これにより、磁気記録媒体100に加わる電磁石28の磁気コア28aからの漏れ磁界強度が減衰し、記録部位の磁化情報を安定させることが可能となる。
【0036】
なお、本変形例も第1実施形態と同様に、記録磁界によるスピントルク発振周波数の変動を抑制することができる。
【0037】
なお、本変形例において、スピントルク発振子26として、図4に示すように電極層26、発振層26、中間層26、スピン注入層26、電極層26とが電磁石28によってスピントルク発振子26に印加される磁化の向きと略平行な方向に積層されるスピントルク発振子26を用いてもよい。また、図6に示すように電極層26、発振層26、中間層26、スピン注入層26、電極層26とが電磁石28によってスピントルク発振子26に印加される磁化の向きと略直交する方向に積層されるスピントルク発振子26を用いてもよい。
【0038】
(第2変形例)
第1実施形態の第2変形例による磁気ヘッドを図10に示す。図10は、本変形例の磁気ヘッドの概略構成を示す斜視図である。図4または図6に示す第1実施形態においては、電磁石28の磁気コア28aは、リターンヨーク24の後部24cを取り囲むように設けられていた。これに対して本変形例においては、主磁極22を取り囲むように設けられている。この磁気コア28aは、スピントルク発振子26に磁気的に接続される磁極を含み媒体対向面に平行でかつリターンヨーク24の前部24bから主磁極に向かう方向に垂直な方向に延在する一対の第1部分28aと、この第1部分28aに一端が接続され媒体対向面に平行でかつリターンヨーク24の前部24bから主磁極に向かう方向に平行な方向に延在する一対の第2部分28aと、この第2部分28aの他端に一端が接続され媒体対向面に垂直な方向に延在する一対の第3部分28aと、この一対の第3部分28aの他端に接続され媒体対向面に平行でかつリターンヨーク24の前部24bから主磁極に向かう方向に垂直な方向に延在する一対の第4部分28aと、を有している。そして、これらの第1乃至第4部分は主磁極22を取り囲むように配置されている。したがって、第4部分28aは主磁極22と、再生ヘッド部(図示せず)との間に配置されている。また、一対の第3部分28aのそれぞれを取り囲むように一対の電磁コイル28bが設けられている。
【0039】
本変形例も第1実施形態と同様に、記録磁界によるスピントルク発振周波数の変動を抑制することができる。
【0040】
なお、本変形例において、スピントルク発振子26として、図4に示すように電極層26、発振層26、中間層26、スピン注入層26、電極層26とが電磁石28によってスピントルク発振子26に印加される磁化の向きと略平行な方向に積層されるスピントルク発振子26を用いてもよい。また、図6に示すように電極層26、発振層26、中間層26、スピン注入層26、電極層26とが電磁石28によってスピントルク発振子26に印加される磁化の向きと略直交する方向に積層されるスピントルク発振子26を用いてもよい。
【0041】
(第3変形例)
第1実施形態の第3変形例による磁気ヘッドを図11に示す。図11は、本変形例の磁気ヘッドの概略構成を示す斜視図である。本変形例の磁気ヘッドは、図10に示す第2変形例において、電磁コイル28bが第4部分28aを取り囲むように設けられた構成となっている。
【0042】
本変形例も第1実施形態と同様に、記録磁界によるスピントルク発振周波数の変動を抑制することができる。
【0043】
図4に示すように電極層26、発振層26、中間層26、スピン注入層26、電極層26とが電磁石28によってスピントルク発振子26に印加される磁化の向きと略平行な方向に積層されるスピントルク発振子26を用いてもよい。また、図6に示すように電極層26、発振層26、中間層26、スピン注入層26、電極層26とが電磁石28によってスピントルク発振子26に印加される磁化の向きと略直交する方向に積層されるスピントルク発振子26を用いてもよい。
【0044】
(第4変形例)
次に、第1実施形態の第4変形例による磁気ヘッドを図12に示す。図12は、本変形例の磁気ヘッドを、磁気記録媒体とともに、媒体対向面に垂直かつ磁気記録媒体の進行方向に平行な方向(トラック長手方向)の面で切断した断面図である。本変形例の磁気ヘッドは、図1に示す第1実施形態の磁気ヘッドの書き込みヘッド部20を、単磁極構造の書き込みヘッド部20Aに置き換えた構成となっている。この書き込みヘッド20Aは、図1に示す第1実施形態のリターンヨーク24を、前部(シールド)24bが削除されたリターンヨーク24Aに置き換えた構成となっている。したがって、本変形例においては、媒体対向面に垂直かつ磁気記録媒体の進行方向に垂直な方向(トラック幅方向)の面で切断した断面は、第1実施形態で説明した図2と全く同一となる。
【0045】
従来の単磁極構造の磁気記録ヘッドにおいては、主磁極の直下に垂直成分の記録磁界が発生し、磁気記録媒体の内部において斜め記録磁界が十分に発生しないため、主磁極の近傍にリターンヨーク(シールド)を設置することが望ましい。しかしながら、本変形例のように電磁石28を主磁極22の近傍に設置する場合には(図2参照)、電磁石28の2つの磁極から発生する面内成分の磁界と、主磁極22から発生する垂直成分の記録磁界とが重なり合い、磁気記録媒体100の内部において、斜め記録磁界が発生する。そのため、リターンパス(シールド)24bを設けなくても、面内高周波磁界と、斜め記録磁界とが媒体内で重畳することが期待できる。このような斜め記録磁界を活用した磁気記録では、磁気記録媒体100の通常の保磁力よりも小さな磁界で記録することが可能となる。
【0046】
本変形例も第1実施形態と同様に、記録磁界によるスピントルク発振周波数の変動を抑制することができる。
【0047】
(第5変形例)
次に、第1実施形態の第5変形例による磁気ヘッドを図13に示す。図13は、本変形例の磁気ヘッドを、磁気記録媒体とともに、媒体対向面に垂直かつ磁気記録媒体の進行方向に平行な方向(トラック長手方向)の面で切断した断面図である。本変形例の磁気ヘッドは、図12に示す第4変形例の磁気ヘッドの書き込みヘッド20Aを、スピントルク発振子26が主磁極22のリーディング側に設けられた書き込みヘッド部20Bに置き換えた構成となっている。このため、電磁石28も主磁極22のリーディング側に配置されている。
【0048】
高周波アシスト磁界を用いた磁気記録では、スピントルク発振子26から発生する面内高周波磁界と、主磁極22から発生する記録磁界とが重畳した部分で書き込みが行われる。したがって、高周波アシスト磁界を用いた磁気記録では、通常の磁気記録よりも、主磁極22のみから発生する記録磁界に対して記録部位の磁化情報は安定する。そのため、本変形例のように、スピントルク発振子26を主磁極22のリーディング側に設置することが可能である。
【0049】
なお、本変形例においては、電磁石28の電磁コイル28bは、図14に示すように、磁気コア28aの、媒体対向面に垂直な一対の部分をそれぞれ取り囲むように設けてもよいし、図15に示すように、磁気コア28aの、媒体対向面から最も遠くかつ媒体対向面に平行な部分を取り囲むように設けてもよい。なお、図14および図15は、本変形例の磁気ヘッドを、媒体対向面に垂直かつ磁気記録媒体の進行方向に垂直な方向(トラック幅方向)の面で切断した断面図である。
【0050】
本変形例も第1実施形態と同様に、記録磁界によるスピントルク発振周波数の変動を抑制することができる。
【0051】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態による磁気ヘッドを図16乃至図18を参照して説明する。
【0052】
図16は、本実施形態の磁気ヘッドを、磁気記録媒体とともに、媒体対向面に垂直かつ磁気記録媒体の進行方向に平行な方向(トラック長手方向)の面で切断した断面図である。図17および図18は、それぞれ本実施形態の磁気ヘッドに用いられるスピントルク発振子の第1および第2具体例を示す斜視図である。
【0053】
第1実施形態の磁気ヘッドにおいては、スピントルク発振子26に電磁石28によりバイアス磁界を印加していたが、本実施形態の磁気ヘッドにおいては、電磁石の代わりに、ハードバイス膜によってバイアス磁界を印加する構成となっている。すなわち、図16に示すように、本実施形態の磁気ヘッドは、図1に示す第1実施形態において書き込みヘッド20の代わりに、電磁石28を削除した書き込みヘッド20Cを用いた構成となっている。この電磁石28を削除した代わりに、図17または図18に示すように、スピントルク発振子26の電極26、26の外側にハードバイス膜30を設けるとともに、スピントルク発振子26の電極26と発振層26との間にバイアス層26を設けた構成となっている。すなわち、スピントルク発振子26は、電極25、スピン注入層26、中間層26、発振層26、バイアス層26、電極26を備えている。
【0054】
本実施形態のように、ハードバイアス膜30を用いてスピントルク発振子26にバイアス磁界を印加する方式は、電磁石方式と比べて構造が簡単で作製が容易であるという利点を有する。スピントルク発振子26のバイアス層26は、ハードバイアス膜30の磁界を補うものであって、強い交換結合により発振層26やスピン注入層26の磁化を、トラック幅方向の有効磁界を向上するために用いられる。したがって、ハードバイアス膜30によるバイアス磁界で十分であれば、バイアス層26は無くてもよい。
【0055】
第1の具体例によるスピントルク発振子26は、図17に示すように、電極26と、バイアス層26、スピン注入層26と、中間層26と、発振層26と、電極26の膜面が、記録媒体対向面に対して略垂直かつハードバイアス膜30によってスピントルク発振子26に印加される磁化の向きと略垂直になっている。そして、定電流源70からの電流は矢印75の向きに流れ、ハードバイアス膜30によって付与される磁界と略平行となっている。なお、この第1具体例においては、スピン注入層26およびバイアス層26の磁化の向きは、膜面に垂直でかつ互いに平行となっている。
【0056】
また、第2の具体例のスピントルク発振子26は、図18に示すように、電極26と、下地層26と、バイアス層26、発振層26と、中間層26と、スピン注入層26と、電極26の膜面が、記録媒体対向面に対して略垂直かつハードバイアス膜30によってスピントルク発振子26に印加される磁化の向きと略平行となっている。スピン注入層26は、スピン注入膜2621と、中間膜2622と、スピン注入膜2623と、反強磁性膜2624をこの順に積層した構造になっている。そして、定電流源70からの電流は矢印75の向きに流れ、ハードバイアス膜30によって付与される磁界と略直交する。下地層26は膜厚5nmのCr、バイアス膜30は膜厚20nmのCoPt合金、発振層26は膜厚2nmのCoFe合金および膜厚6nmのNiFe合金の積層膜、中間層26は膜厚2nmのCu、スピン注入膜2621は膜厚3nmのFeCo合金、中間膜2622は膜厚0.8nmのRu、スピン注入膜2623は膜厚3nmのFeCo合金、反強磁性膜2624は膜厚7nmのIrMn合金、ハードバイアス膜30は膜厚5nmのCrおよび膜厚30nmのCoCrPt合金の積層膜より構成されている。なお、この第2具体例においては、スピン注入膜2623と、スピン注入膜2621と、バイアス層26の磁化の向きは、膜面に平行でかつこの順で互いに反平行となっている。これは、スピン注入膜2621と中間膜2622とスピン注入膜2623は積層フェリ構造となっており、かつ、反強磁性膜2624によりスピン注入膜2623は膜面平行方向に交換結合磁界が付与されているためである。さらに、下地層によりバイアス層26の容易軸方向が膜面平行方向になり、かつ、バイアス層26の磁化方向とハード膜30の磁化方向が反強磁性膜2624による交換結合磁界方向と平行となるように着磁を実施したためである。なお、図18では、主磁極22のコア幅x(すなわち記録媒体対向面に対し平行かつトラック幅に平行な主磁極の寸法)は、スピントルク発振子26のコア幅より狭くなっている。これは、記録媒体への書き込みは、主磁極22からの記録磁界と、スピントルク発振子26からの高周波磁界との重畳領域においてなされるため、より狭いスピントルク発振子26のコア幅により記録媒体上のトラック幅が決定することが可能であるためである。さらに、主磁極22のコア幅をより広くすることにより大きな記録磁界の発生が可能となり、より高い保磁力を有する記録媒体へ書き込むことが可能となっている。
【0057】
このように、第1および第2具体例のスピントルク発振子26に、ハードバイアス膜30から付与される磁界は、主磁極22とシールド24b間に発生するトラック長手方向の磁界と直交する方向(すなわちトラック幅に平行な方向)の磁界となっている。このように配置することにより、既に説明したように書き込み磁界の向きによらず、発振周波数を安定させることが可能である。
【0058】
また本発明の第1実施形態と同様に、スピン注入層26およびバイアス層26として、CoCrPt、CoCrTa、CoCrTaPt、CoCrTaNb等のCoCr系磁性層、CoPt系やFePt系の合金磁性層や、SmCo系合金磁性層などの垂直配向性に優れた材料を利用することができる。この場合、磁性層の磁化の向きを膜面垂直もしくは膜面平行になるよう制御するため、下地層を用いても良い。例えば、磁化方向を面内平行とするためにCr、Ta,Ti,W等の非磁性遷移金属およびこれらの合金およびそれらの積層膜を利用することが可能である。さらに、スピン注入層26およびバイアス層26として、交換結合を利用した強磁性体と反強磁性体との積層構造を利用することもできる。この場合、強磁性体として上記に記載したCoCr系合金、CoPt系合金、FePt系合金、SmCo系合金、ならびに、CoFe、CoNiFe,NiFe,CoZrNb、FeN,FeSi,FeAlSi等の軟磁性体、CoFeにAl,Si,Ge,Mn,Crなどを添加した合金を用いても良い。反強磁性体として、FeMn、NiMn、FeNiMn、FeMnRh、RhMn、CoMn、CrMn、CrMnPt、CrMnRh、CrMnCu、CrMnPd、CrMnIr、CrMnNi、CrMnCo、CrMnTi、PtMn、PdMn、PdPtMn、IrMnなどを利用することができる。さらに、強磁性体膜と非磁性膜と強磁性体膜とを積層した積層フェリ構造、もしくは、積層フェリ構造と反強磁性体とを積層した構造としてもよい。この場合、強磁性体膜として上記の強磁性体を利用可能であり、非磁性膜としてはCu、Pt、Au、Ag、Pd、Ru等の貴金属を用いることが好ましく、Cr、Rh、Mo、W等の非磁性遷移金属を利用することも可能であり、反強磁性体として上の記反強磁性体を利用可能である。
【0059】
次に、本実施形態の変形例を説明する。
【0060】
(第1変形例)
次に、第2実施形態の第1変形例による磁気ヘッドを図19に示す。図19は、本変形例の磁気ヘッドを、磁気記録媒体とともに、媒体対向面に垂直かつ磁気記録媒体の進行方向に平行な方向(トラック長手方向)の面で切断した断面図である。本変形例の磁気ヘッドは、図16に示す第2実施形態の磁気ヘッドの書き込みヘッド部20Cを、単磁極構造の書き込みヘッド部20Dに置き換えた構成となっている。この書き込みヘッド20Dは、図16に示す第2実施形態のリターンヨーク24を、前部(シールド)24bが削除されたリターンヨーク24Aに置き換えた構成となっている。
【0061】
従来の単磁極構造の磁気記録ヘッドにおいては、主磁極の直下に垂直成分の記録磁界が発生し、磁気記録媒体の内部において斜め記録磁界が十分に発生しないため、主磁極の近傍にリターンヨーク(シールド)を設置することが望ましい。しかしながら、本変形例のように電磁石28を主磁極22の近傍に設置する場合には、電磁石28の2つの磁極から発生する面内成分の磁界と、主磁極22から発生する垂直成分の記録磁界とが重なり合い、磁気記録媒体100の内部において、斜め記録磁界が発生する。そのため、リターンパス(シールド)24bを設けなくても、面内高周波磁界と、斜め記録磁界とが媒体内で重畳することが期待できる。このような斜め記録磁界を活用した磁気記録では、磁気記録媒体100の通常の保磁力よりも小さな磁界で記録することが可能となる。
【0062】
本変形例も第2実施形態と同様に、記録磁界によるスピントルク発振周波数の変動を抑制することができる。
【0063】
(第2変形例)
次に、第2実施形態の第2変形例による磁気ヘッドを図20に示す。図20は、本変形例の磁気ヘッドを、磁気記録媒体とともに、媒体対向面に垂直かつ磁気記録媒体の進行方向に平行な方向(トラック長手方向)の面で切断した断面図である。本変形例の磁気ヘッドは、図19に示す第1変形例の磁気ヘッドの書き込みヘッド20Dを、スピントルク発振子26が主磁極22のリーディング側に設けられた書き込みヘッド部20Eに置き換えた構成となっている。
【0064】
高周波アシスト磁界を用いた磁気記録では、スピントルク発振子26から発生する面内高周波磁界と、主磁極22から発生する記録磁界とが重畳した部分で書き込みが行われる。したがって、高周波アシスト磁界を用いた磁気記録では、通常の磁気記録よりも、主磁極22のみから発生する記録磁界に対して記録部位の磁化情報は安定する。そのため、本変形例のように、スピントルク発振子26を主磁極22のリーディング側に設置することが可能である。
【0065】
本変形例も第2実施形態と同様に、記録磁界によるスピントルク発振周波数の変動を抑制することができる。
【0066】
以上説明したように、本発明の第1および第2実施形態ならびにそれらの変形例のいずれかの磁気ヘッドによれば、主磁極(記録磁極)と、この主磁極の近傍に形成されたスピントルク発振子と、このスピントルク発振子に磁界を印加するための電磁石またはハードバイアス膜と、を備え、電磁石またはハードバイアス膜から発生するバイアス磁界が主磁極からの磁界方向と概ね直交している。具体的には、電磁石の磁極またはハードバイアス膜からのバイアス磁界が概ねトラック幅方向に加わるように、電磁石の磁極またはハードバイアス膜がトラック幅方向の端部に沿って配置される。電磁石は、一部に空隙を設けた閉磁路磁性体にコイルを巻いた構造を有し、その空隙における磁極対向面垂直方向に大きな磁界を発生する。ハードバイアス膜を用いる場合には、バイアス磁界の均一性および強度をアップするために、トラック幅方向端に一対用いることが望ましい。
【0067】
スピントルク発振子には、発振層、中間層、スピン注入層の積層構成と、発振に必要な所望の駆動電流を流す電極および直流電源が具備される。各層の膜面が磁気記録媒体の進行方向と平行な場合には、発振層の磁化が効率よく発振するために、膜面直方向に磁化が配向したスピン注入層を用い、バイアス磁界をトラック幅方向に加える。一方、各層の膜面がトラック幅方向と平行な場合には、発振層の磁化が効率よく発振するために、膜面内方向に磁化が配向したスピン注入層を用い、バイアス磁界をトラック幅方向に付与する。
【0068】
ここで、電磁石の磁性体やハードバイアス膜の磁界による直下の磁気記録媒体への悪影響を低減するために、スピントルク発振子や記録磁極に比べて電磁石の磁性体やハードバイアス膜は媒体対向面から後退させることが望ましい。
【0069】
(第3実施形態)
次に、本発明の磁気記録再生装置について説明する。図1乃至図20に関して説明した本発明の各実施形態およびその変形例による磁気ヘッドは、例えば、記録再生一体型の磁気ヘッドアセンブリに組み込まれ、磁気記録再生装置に搭載することができる。
【0070】
図21は、このような磁気記録装置の概略構成を例示する要部斜視図である。すなわち、本実施形態の磁気記録再生装置150は、ロータリーアクチュエータを用いた形式の装置である。同図において、長手記録用または垂直記録用磁気ディスク200は、スピンドル152に装着され、図示しない駆動装置制御部からの制御信号に応答する図示しないモータにより矢印Aの方向に回転する。磁気ディスク200は、垂直記録用の記録層と、軟磁性裏打ち層とを有した、2層の磁気記録媒体である。磁気ディスク200に格納する情報の記録再生を行うヘッドスライダ153は、薄膜状のサスペンション154の先端に取り付けられている。ここで、ヘッドスライダ153は、例えば、前述したいずれかの実施の形態にかかる磁気ヘッドをその先端付近に搭載している。
【0071】
磁気ディスク200が回転すると、ヘッドスライダ153の媒体対向面(ABS)は磁気ディスク200の表面から所定の浮上量をもって保持される。
【0072】
サスペンション154は、図示しない駆動コイルを保持するボビン部などを有するアクチュエータアーム155の一端に接続されている。アクチュエータアーム155の他端には、リニアモータの一種であるボイスコイルモータ156が設けられている。ボイスコイルモータ156は、アクチュエータアーム155のボビン部に巻き上げられた図示しない駆動コイルと、このコイルを挟み込むように対向して配置された永久磁石および対向ヨークからなる磁気回路とから構成される。
【0073】
アクチュエータアーム155は、固定軸157の上下2箇所に設けられた図示しないボールベアリングによって保持され、ボイスコイルモータ156により回転摺動が自在にできるようになっている。
【0074】
図22は、アクチュエータアーム155から先の磁気ヘッドアセンブリをディスク側から眺めた拡大斜視図である。すなわち、磁気ヘッドアッセンブリ160は、例えば駆動コイルを保持するボビン部などを有するアクチュエータアーム155を有し、アクチュエータアーム155の一端にはサスペンション154が接続されている。
【0075】
サスペンション154の先端には、図1乃至図20に関して前述したいずれかの再生用磁気ヘッドを具備するヘッドスライダ153が取り付けられている。サスペンション154はスピントルク発振子用と信号の書き込みおよび読み取り用のリード線164を有し、このリード線164とヘッドスライダ153に組み込まれた磁気ヘッドの各電極とが電気的に接続されている。図中165は磁気ヘッドアッセンブリ160の電極パッドである。
【0076】
ここで、ヘッドスライダ153の媒体対向面(ABS)と磁気ディスク200の表面との間には、所定の浮上量が設定されている。
【0077】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、磁気記録媒体として用い得るものは、図1乃至図20に例示した磁気記録媒体100には限定されず、記録層および軟磁性層を有する磁気記録媒体であれば、あらゆる媒体を用いて同様の効果を奏する。例えば、並列して配置された複数のトラックと、隣接するトラック間に設けられる非磁性部と有するディスクリートトラック型媒体や、複数の磁性体ビットと、これら複数の磁性体ビット間に設けられた非磁性体とを有するディスクリートビット型媒体を用いることができる。
【0078】
また、磁気ヘッドを構成する各要素の材料や形状などに関しても、具体例として前述したものには限定されず、当業者が選択しうる範囲のすべてを同様に用いて同様の効果を奏し得る。
【0079】
また、磁気記録再生装置に関しても、磁気記録媒体は、ハードディスクには限定されず、その他、フレキシブルディスクや磁気カードなどのあらゆる磁気記録媒体を用いることが可能である。さらに、磁気記録媒体を装置から取り外し可能した、いわゆる「リムーバブル」の形式の装置であっても良い。
【0080】
次に、上記各実施形態において用いることができる磁気記録媒体の一具体例を図23に示す。すなわち、本具体例の磁気記録媒体201は、ディスクリート型磁気記録媒体であって、非磁性体(あるいは空気)287により互いに分離された垂直配向した多粒子系の磁性ディスクリートトラック286を有する。この媒体201がスピンドルモータ204により回転され、媒体走行方向285に向けて移動する際に、ヘッドスライダ203に搭載された磁気記録ヘッド205により、記録磁化284を形成することができる。なお、ヘッドスライダ203はサスペンション202の先端に取り付けられている。このサスペンション202には信号の書き込みおよび読み取り用のリード線を有し、これらのリード線とヘッドスライダ203に組み込まれた磁気ヘッド205の各電極とが電気的に接続される。
【0081】
スピン発振子の記録トラック幅方向の幅(TS)を記録トラック286の幅(TW)以上で、且つ記録トラックピッチ(TP)以下とすることによって、スピン発振子から発生する漏れ高周波磁界による隣接記録トラックの保磁力低下を大幅に抑制することができる。このため、本具体例の磁気記録媒体では、記録したい記録トラック286のみを効果的に高周波アシスト磁気記録することができる。
【0082】
本具体例によれば、いわゆる「べた膜状」の多粒子系垂直媒体を用いるよりも、狭トラックすなわち高トラック密度の高周波アシスト記録装置を実現することが容易になる。また、高周波アシスト磁気記録方式を利用し、さらに従来の磁気記録ヘッドでは書き込み不可能なFePtやSmCo等の高磁気異方性エネルギー(Ku)の媒体磁性材料を用いることによって、媒体磁性粒子のさらなる微細化(ナノメータ級のサイズ)が可能となり、記録トラック方向(ビット方向)においても、従来よりも遥かに線記録密度の高い磁気記録装置を実現することができる。
【0083】
図24は、上記各実施形態において用いることができるもう一つの磁気記録媒体を例示する模式図である。すなわち、本具体例の磁気記録媒体201は、ディスクリートビット型磁気記録媒体であって、非磁性体287により違いに分離された磁性ディスクリートビット288を有する。この媒体201がスピンドルモータ204により回転され、媒体走行方向285に向けて移動する際に、ヘッドスライダ203に搭載された磁気記録ヘッド205により、記録磁化284を形成することができる。
【0084】
上記実施形態の磁気ヘッドによれば、図23及び図24に表したように、ディスクリートトラック型あるいはディスクリートビット型の磁気記録媒体201において、高い保磁力を有する記録層に対しても確実に記録することができ、高密度且つ高速の磁気記録が可能となる。
【0085】
この具体例においても、スピン発振素子の記録トラック幅方向の幅(TS)を記録トラック286の幅(TW)以上で、且つ記録トラックピッチ(TP)以下とすることによって、スピン発振子から発生する漏れ高周波磁界による隣接記録トラックの保磁力低下を大幅に抑制することができるため、記録したい記録トラック286のみを効果的に高周波アシスト磁気記録することができる。本実施例を用いれば、使用環境下での熱揺らぎ耐性を維持できる限りは、磁性ドット288の高磁気異方性エネルギー(Ku)化と微細化を進めることで、10Tbits/inch以上の高い記録密度の高周波アシスト磁気記録装置を実現できる可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の第1実施形態による磁気ヘッドのトラック長手方向の断面図。
【図2】第1実施形態の磁気記録ヘッドのトラック幅方向の断面図。
【図3】第1実施形態におけるスピントルク発振子の第1具体例を示す斜視図。
【図4】第1実施形態におけるスピントルク発振子の第1具体例を示す斜視図。
【図5】第1実施形態におけるスピントルク発振子の第2具体例を示す斜視図。
【図6】第1実施形態におけるスピントルク発振子の第2具体例を示す斜視図。
【図7】主磁極からの漏れ磁界と、スピントルク発振子の発振層に付与される有効磁界との関係を説明する説明図。
【図8】第1実施形態の効果を説明する図。
【図9】第1実施形態の第1変形例による磁気ヘッドのトラック幅方向の断面図。
【図10】第1実施形態の第2変形例による磁気ヘッドの斜視図。
【図11】第1実施形態の第3変形例による磁気ヘッドの斜視図。
【図12】第1実施形態の第4変形例による磁気ヘッドのトラック長手方向の断面図。
【図13】第1実施形態の第5変形例による磁気ヘッドのトラック長手方向の断面図。
【図14】第5変形例の磁気ヘッドの電磁コイルの位置を示す断面図。
【図15】第5変形例の磁気ヘッドの電磁コイルの位置を示す断面図。
【図16】本発明の第2実施形態による磁気ヘッドのトラック長手方向の断面図。
【図17】第2実施形態におけるスピントルク発振子の第1具体例を示す斜視図。
【図18】第2実施形態におけるスピントルク発振子の第2具体例を示す斜視図。
【図19】第2実施形態の第1変形例による磁気ヘッドのトラック長手方向の断面図。
【図20】第2実施形態の第2変形例による磁気ヘッドのトラック長手方向の断面図。
【図21】本発明の第3実施形態による磁気記録再生装置を示す斜視図。
【図22】第3実施形態の磁気記録再生装置のアクチュエータアーム155から先の磁気ヘッドアセンブリをディスク側から眺めた斜視図。
【図23】各実施形態に用いることのできるディスクリートトラック型磁気記録媒体を説明する図。
【図24】各実施形態に用いることのできるディスクリートビット型磁気記録媒体を説明する図。
【符号の説明】
【0087】
10 再生ヘッド部
12 磁気シールド
14 磁気シールド
16 磁気再生素子
20 書き込みヘッド
22 主磁極
24 リターンヨーク(シールド)
24a 本体部
24b 前部
24c 後部
26 スピントルク発振子
26 電極
26 スピン注入層
26 中間層
26 発振層
26 電極
26 バイアス層
27 電磁コイル
28 電磁石
28a 磁気コア
28b 電磁コイル
30 ハードバイアス膜
50 磁気記録媒体の進行方向を示す矢印
60 磁気記録媒体の進行方向を示す矢印
70 定電流源
75 スピントルク発振子を流れる電流の向きを示す矢印
100 磁気記録媒体
102 磁気記録媒体用基板
103 軟磁性層
104 磁気記録層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録磁極と、
前記記録磁極の近傍に形成されたスピントルク発振子と、
前記スピントルク発振子に磁界を印加する磁界印加部と、
を備え、
前記磁界印加部によって前記スピントルク発振子に印加される磁界は、前記記録磁極から発生される記録磁界と実質的に直交していることを特徴とする磁気ヘッド。
【請求項2】
記録磁極と、
前記記録磁極の近傍に形成されたスピントルク発振子と、
媒体対向面に平行な平面内において前記記録磁極と前記スピントルク発振子とを結ぶ方向と実質的に直交する方向の、前記スピントルク発振子の両端部に配置され、前記スピントルク発振子に磁界を印加する磁界印加部と、
を備え、
前記スピントルク発振子は、
少なくとも1層の磁性体膜を有する第1磁性層と、
少なくとも1層の磁性体膜を有する第2磁性層と、
前記第1磁性層と前記第2磁性層との間に設けられた中間層と、
前記中間層とは反対側の前記第1磁性層の面に設けられた第1電極層と、前記中間層と反対側の前記第2磁性層の面に設けられた第2電極層とを有し、前記第1磁性層と、前記中間層と、前記第2磁性層との膜面に対して垂直方向に電流を流すことが可能な電極と、
を備え、前記第1電極層、前記第1磁性層、前記中間層、前記第2磁性層、および前記第2電極層は、前記スピントルク発振子の前記両端部を結ぶ方向に対して略平行な方向に積層されていることを特徴とする磁気ヘッド。
【請求項3】
記録磁極と、
前記記録磁極の近傍に形成されたスピントルク発振子と、
媒体対向面に平行な平面内において前記記録磁極と前記スピントルク発振子とを結ぶ方向と実質的に直交する方向の、前記スピントルク発振子の両端部に配置され、前記スピントルク発振子に磁界を印加する磁界印加部と、
を備え、
前記スピントルク発振子は、
少なくとも1層の磁性体膜を有する第1磁性層と、
少なくとも1層の磁性体膜を有する第2磁性層と、
前記第1磁性層と前記第2磁性層との間に設けられた中間層と、
前記中間層とは反対側の前記第1磁性層の面に設けられた第1電極層と、前記中間層と反対側の前記第2磁性層の面に設けられた第2電極層とを有し、前記第1磁性層と、前記中間層と、前記第2磁性層との膜面に対して垂直方向に電流を流すことが可能な電極と、
を備え、
前記第1電極層、前記第1磁性層、前記中間層、前記第2磁性層、および前記第2電極層は、前記スピントルク発振子の前記両端部を結ぶ方向に対して略垂直な方向に積層されていることを特徴とする磁気ヘッド。
【請求項4】
前記磁界印加部は、空隙を有する磁気コアと、この磁気コアを取り囲むように設けられ前記磁気コアを励磁する電磁コイルとを有し、前記磁気コアから発生する磁界を前記スピントルク発振子に印加する電磁石であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の磁気ヘッド。
【請求項5】
前記磁界印加部は、ハードバイアス膜であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の磁気ヘッド。
【請求項6】
前記磁界印加部の磁気記録媒体に対向する媒体対向面が、前記スピントルク発振子の前記磁気記録媒体に対向する媒体対向面よりも前記磁気記録媒体から遠い位置にあることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の磁気ヘッド。
【請求項7】
前記記録磁極と磁気的に結合され、一部が媒体対向面に平行な方向に延在しているシールドをさらに備えたことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1つに記載の磁気ヘッド。
【請求項8】
前記スピントルク発振子は、前記シールドと前記記録磁極の間に設置されることを特徴とする請求項7記載の磁気ヘッド。
【請求項9】
磁気記録媒体と、
請求項1乃至8のいずれか1つに記載の磁気ヘッドと、
を備え、
前記磁気記録ヘッドを用いて前記磁気記録媒体への書き込みを行うことを特徴とする磁気記録装置。
【請求項10】
前記スピントルク発振子は、前記記録磁極のトレーリング側に設けられたことを特徴とする請求項9記載の磁気記録装置。
【請求項11】
前記スピントルク発振子は、前記記録磁極のリーディング側に設けられたことを特徴とする請求項9記載の磁気記録装置。
【請求項12】
前記磁気記録媒体は、並列して配置された複数のトラックと、隣接するトラック間に設けられる非磁性部とを有するディスクリートトラック型媒体であることを特徴とする請求項9乃至11のいずれかに記載の磁気記録装置。
【請求項13】
前記磁気記録媒体は、複数の磁性体ドットと、これら複数の磁性体ドット間に設けられた非磁性体とを有するディスクリートビット型媒体であることを特徴とする請求項9乃至11のいずれかに記載の磁気記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2009−80875(P2009−80875A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−247966(P2007−247966)
【出願日】平成19年9月25日(2007.9.25)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】