説明

磁気共鳴イメージング装置およびプログラム

【課題】関心領域においてコントラストの高いMR画像を得ることができる磁気共鳴イメージング装置、およびプログラムを提供する。
【解決手段】操作者9が関心領域ROIaを設定する。関心領域ROIaを設定した後、関心領域ROIaから、アナログ回路53の送信ゲインTgを、Tg=Tg1、Tg2、・・・、Tgnの順で変更しながら、磁気共鳴信号を収集する。これらの磁気共鳴信号を収集した後、アナログ回路53の送信ゲインTgの値と、関心領域ROIaから収集された磁気共鳴信号の信号強度との関係に基づいて、本スキャンを実行するときの送信ゲインTgの値を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体から磁気共鳴信号を収集する磁気共鳴イメージング装置、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴イメージング装置では、RFパルスのフリップ角を最適化するために、送信ゲインを調整することが行われる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-043473号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
送信ゲインを調整する場合、一般的には、撮像面を励起し、撮像面の全体から得られる磁気共鳴信号を収集し、収集された磁気共鳴信号の信号強度に基づいて、最適な送信ゲインを求めている。しかし、静磁場不均一や送信磁場不均一などが原因で、撮像面におけるスピンの励起角度にばらつきが発生し、撮像面の中の関心領域においてスピンが必ずしも所望の励起角度で励起されないことがある。したがって、撮像面の全体から得られる磁気共鳴信号を用いて送信ゲインを求めても、関心領域において十分なコントラストを有するMR画像が得られないことがある。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑み、関心領域においてコントラストの高いMR画像を得ることができる磁気共鳴イメージング装置、およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の問題を解決する本発明の磁気共鳴イメージング装置は、
被検体から磁気共鳴信号を収集する磁気共鳴イメージング装置であって、
送信ゲインの値に応じた駆動信号が供給されることによって、RFパルスを送信するRFコイルと、
操作者の操作に応じて上記被検体の関心領域を設定する関心領域設定手段と、
を有し、
上記送信ゲインの値を変更しながら上記関心領域から磁気共鳴信号を収集し、収集された磁気共鳴信号の信号強度に基づいて、上記送信ゲインの値を決定する。
また、本発明のプログラムは、
送信ゲインの値に応じた駆動信号をRFコイルに供給することによって、被検体にRFパルスを送信し、上記被検体から磁気共鳴信号を収集する磁気共鳴イメージング装置のプログラムであって、
操作者の操作に応じて上記被検体の関心領域を設定する関心領域設定処理と、
上記送信ゲインの値を変更しながら上記関心領域から収集した磁気共鳴信号の信号強度に基づいて、上記送信ゲインの値を決定する送信ゲイン決定処理と、
を計算機に実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、関心領域から発生する磁気共鳴信号に基づいて送信ゲインの値を決定している。したがって、関心領域において十分なコントラストを有するMR画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1の実施形態の磁気共鳴イメージング装置1を示す図である。
【図2】MRI装置1の処理フローの一例を示す図である。
【図3】プリスキャン時のスライスの一例を示す図である。
【図4】表示装置7の表示画面7aに表示されたMR画像の一例を概略的に示す図である。
【図5】サジタル画像SA5に関心領域が設定された後の表示画面7aを示す図である。
【図6】関心領域ROIaおよびROIbとスライスSS5との位置関係を示す図である。
【図7】操作者9によってスライスが位置決めされた後の表示画面7aを示す図である。
【図8】スライスAmと、操作者9によって設定された撮像視野FOV1との位置関係を概略的に示す図である。
【図9】関心領域ROIaおよびROIbから磁気共鳴信号を収集するために使用されるパルスシーケンスの一例である。
【図10】PRESSシーケンスによって磁気共鳴信号を収集するときの説明図である。
【図11】アナログ回路53の送信ゲインTgの値と、関心領域ROIaから収集された磁気共鳴信号の信号強度との関係を示すグラフである。
【図12】再構成されたMR画像を概略的に示す図である。
【図13】表示装置7の表示画面7aに表示されたMR画像の一例を概略的に示す図である。
【図14】第2の実施形態におけるMRI装置1の処理フローの一例を示す図である。
【図15】MR画像IA12に関心領域が設定された後の表示装置7を示す図である。
【図16】関心領域ROIcから磁気共鳴信号を収集するために使用されるパルスシーケンスの一例である。
【図17】決定された撮像視野を示す図である。
【図18】関心領域ROIcの長さLx’およびLy’が短すぎる場合の撮像視野FOV2の設定方法の説明図である。
【図19】関心領域ROIcの長さLx’およびLy’の一方のみが短すぎる場合の基準ピクセルREFを示す図である。
【図20】関心領域ROIcの長さLx’およびLy’が長すぎる場合の撮像視野FOV2の設定方法の説明図である。
【図21】関心領域ROIcの長さLx’およびLy’の一方のみが長すぎる場合の基準ピクセルREFを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、発明を実施するための形態について説明するが、本発明は、以下の形態に限定されることはない。
【0010】
(1)第1の実施形態
図1は、第1の実施形態の磁気共鳴イメージング装置1を示す図である。
【0011】
磁気共鳴イメージング装置(以下、「MRI装置」と呼ぶ。MRI:Magnetic Resonance Imaging)1は、磁場発生装置2と、テーブル3と、受信コイル4と、制御装置5と、入力装置6と、表示装置7とを有している。
【0012】
磁場発生装置2は、被検体8が収容されるボア21と、超伝導コイル22と、勾配コイル23と、送信コイル24とを有している。超伝導コイル22は静磁場B0を印加し、勾配コイル23は勾配磁場を印加し、送信コイル24はRFパルスを送信する。尚、第1の実施形態では、超伝導コイル22が用いられているが、超伝導コイル22の代わりに、永久磁石を用いてもよい。
【0013】
テーブル3は、被検体8を搬送するためのクレードル31を有している。クレードル31によって、被検体8はボア21に搬送される。
【0014】
受信コイル4は、被検体8の頭部8aに取り付けられている。受信コイル4が受信したMR(Magnetic Resonance)信号は、制御装置5に伝送される。
【0015】
制御装置5は、シーケンサ51〜中央処理装置57を有している。
【0016】
シーケンサ51は、中央処理装置57の制御を受けて、RFパルスの情報(中心周波数、バンド幅など)を有するデジタル信号51aと、勾配磁場の情報(勾配磁場の強度など)を有する勾配信号51bとを出力する。
【0017】
DAC(Digital Analog Converter)52は、デジタル信号51aをアナログ信号52aに変換する。
【0018】
アナログ回路53は、中央処理装置57の制御に従って設定された送信ゲインTgに従って、アナログ信号52aの振幅を調整し、振幅が調整されたアナログ信号53aをRFアンプ54に出力する。
【0019】
RFアンプ54は、振幅が調整されたアナログ信号53aを所定の増幅率で増幅し、送信コイル24を駆動する駆動信号54aを出力する。
【0020】
勾配磁場駆動回路55は、入力された勾配信号51bに基づいて、勾配コイル23を駆動するための駆動信号55aを、勾配コイル23に供給する。
【0021】
受信器56は、受信コイル4で受信された磁気共鳴信号を信号処理し、中央処理装置57に伝送する。
【0022】
中央処理装置57は、シーケンサ51および表示装置7に必要な情報を伝送したり、受信器56から受け取った信号に基づいて画像を再構成するなど、MRI装置1の各種の動作を実現するように、MRI装置1の各部の動作を総括する。中央処理装置57は、例えばコンピュータ(computer)によって構成される。尚、中央処理装置57は、本発明における送信ゲイン設定手段、関心領域設定手段、およびシーケンス条件決定手段の一例であり、所定のプログラムを実行することにより、これらの手段として機能する。
【0023】
入力装置6は、操作者9の操作に応答して、制御装置5に種々の命令などを伝送する。
【0024】
表示装置7は、画像などを表示する。
【0025】
以下に、MRI装置1の動作について、図2を参照しながら説明する。
【0026】
図2は、MRI装置1の処理フローの一例を示す図である。
【0027】
ステップS1では、後述するステップS2において操作者9がスキャン計画を立てるために使用されるMR画像(図4参照)のデータを収集するためのプリスキャンが行われる。操作者9は、入力装置6(図1参照)を操作して、プリスキャンを実行するためのプリスキャン実行命令を入力する。
【0028】
プリスキャン実行命令が入力されると、シーケンサ51(図1参照)は、中央処理装置57の制御を受けて、プリスキャン用のパルスシーケンスのRFパルスの情報(中心周波数、バンド幅など)を有するデジタル信号51aを出力する。デジタル信号51aは、DAC(Digital
Analog Converter)52でアナログ信号52aに変換され、アナログ回路53に入力される。アナログ回路53は、中央処理装置57によって予め設定された送信ゲインTg=Tg0に従って、アナログ信号52aの振幅を調整し、振幅が調整されたアナログ信号53aをRFアンプ54に出力する。RFアンプ54は、振幅が調整されたアナログ信号53aを所定の増幅率で増幅し、送信コイル24を駆動する駆動信号54aとして出力する。送信コイル24は、駆動信号54aに従ってRFパルスを送信する。
【0029】
また、シーケンサ51は、中央処理装置57の制御を受けて、プリスキャン用のパルスシーケンスの勾配磁場の情報(勾配磁場の強度など)を有する勾配信号51bを、勾配磁場駆動回路55に出力する。勾配磁場駆動回路55は、入力された勾配信号51bに基づいて、勾配コイル23を駆動するための駆動信号55aを、勾配コイル23に供給する。勾配コイル23は、駆動信号55aに従って、勾配磁場を印加する。
【0030】
図3は、プリスキャン時のスライスの一例を示す図である。
【0031】
プリスキャンでは、p枚のコロナル断面のスライスSC1〜SCp(図3(a)参照)、q枚のサジタル断面のスライスSS1〜SSq(図3(b)参照)、およびr枚のアキシャル断面のスライスSR1〜SRr(図3(c)参照)が設定される。スライスの枚数p、q、rは、例えば、p=q=r=7(枚)である。
【0032】
第1の実施形態では、スライスSC1〜SCp、SS1〜SSq、およびSR1〜SRrのスライス厚Tは、同じ厚さT0である。しかし、スライス厚Tは、スライスごとに異なる値であってもよい。
【0033】
プリスキャン用のパルスシーケンスが実行されることにより、図3に示すスライスが選択され、磁気共鳴信号8b(図1参照)が得られる。磁気共鳴信号8bは受信コイル4で受信され、受信器56に伝送される。受信器56は受け取った信号を処理し、中央処理装置57に渡す。中央処理装置57は受信器56から受け取った信号に基づいて画像を再構成する。第1の実施形態では、図3に示すスライスが選択されるので、p枚のコロナル画像COi(iは1〜pの整数)、q枚のサジタル画像SAj(jは1〜qの整数)、およびr枚のアキシャル画像AXk(kは1〜rの整数)が再構成される。プリスキャンが実行された後、ステップS2に進む。
【0034】
ステップS2では、操作者9は、後述するステップS4で行われる本スキャンのスキャン計画を立てる。操作者9は、スキャン計画を立てるために、プリスキャンにより得られたMR(Magnetic
Resonance)画像を表示画面7に表示する。
【0035】
図4は、表示装置7の表示画面7aに表示されたMR画像の一例を概略的に示す図である。
【0036】
表示画面7aは、コロナル画像COiを表示するためのビューポートVC、サジタル画像SAiを表示するためのビューポートVS、およびアキシャル画像AXiを表示するためのビューポートVAを有している。図4では、ビューポートVC、VS、およびVAには、それぞれコロナル画像CO5、サジタル画像SA5、およびアキシャル画像AX5が表示されている。操作者9は、入力装置6から必要な情報を入力することによって、ビューポートVC、VS、およびVAに表示される画像を、それそれ、p枚のコロナル画像COi、q枚のサジタル画像SAj、およびr枚のアキシャル画像AXkの中から自在に変更することができる。
【0037】
操作者9は、先ず、ビューポートVC、VS、およびVAに表示される画像を変更しながら、高コントラストで撮影したい関心領域を設定する。第1の実施形態では、操作者9は、サジタル画像SA5に関心領域を設定するとする。この場合、操作者9は、ビューポートVSにサジタル画像SA5を表示させておき、入力装置6を操作して、サジタル画像SA5に、高コントラストで撮影したい関心領域を設定する。
【0038】
図5は、サジタル画像SA5に関心領域が設定された後の表示画面7aを示す図である。
【0039】
図5には、操作者9が、サジタル画像SA5に2個の関心領域ROIaおよびROIbを設定した場合が示されている。第1の実施形態では、関心領域ROIaおよびROIbは矩形状であるが、関心領域の形状は、円形などの別の形状であってもよい。また、設定される関心領域の数は、1個でもよいし、3個以上でもよい。
【0040】
関心領域ROIaおよびROIbが設定されたサジタル画像SA5は、サジタル断面のスライスSS5(図3(b)参照)の画像データを表しているので、関心領域ROIaおよびROIbは、スライスSS5の一部の領域を囲っている(図6参照)。
【0041】
図6は、関心領域ROIaおよびROIbとスライスSS5との位置関係を示す図である。
【0042】
図6(a)は、スライスSS5に対する関心領域ROIaおよびROIbの位置を示す図、図6(b)は、関心領域ROIaおよびROIbの大きさの説明図である。
【0043】
関心領域ROIaのx方向、y方向、およびz方向の長さは、それぞれxa、ya、およびzaであり、関心領域ROIbのx方向、y方向、およびz方向の長さは、それぞれxb、yb、およびzbである。尚、関心領域ROIaおよびROIbのx方向の長さxaおよびxbは、スライスSS5のスライス厚T0に等しいので、xa=xb=T0である。
【0044】
操作者9は、関心領域ROIaおよびROIbを設定した後、スライスの位置決めを行う。
【0045】
操作者9は、サジタル画像SA5の上に、関心領域ROIaおよびROIbを横切るようにスライスの位置決めを行う。
【0046】
図7は、操作者9によってスライスが位置決めされた後の表示画面7aを示す図である。
【0047】
図7では、操作者9が、サジタル画像SA5にスライスAm(mは1〜nまでの整数)を位置決めした例が示されている。操作者9がサジタル画像SA5にスライスAmを位置決めすると、ビューポートVCおよびVAに表示されているコロナル画像CO5およびアキシャル画像AX5にも、スライスAmの位置が自動的に表示される。また、操作者9は、スライスAmのスライス厚Tも設定する。第1の実施形態では、T=Tsに設定されている。これによって、スライスA1〜Anが設定される。図7を参照すると、スライスA1〜Anのうちの一部のスライスのみが関心領域ROIa又はROIbに交差していることが分かる。
【0048】
操作者9は、更に、撮像視野FOVも設定する。第1の実施形態では、FOV=FOV1と設定されている。図8には、スライスAmと、操作者9によって設定された撮像視野FOV1との位置関係が概略的に示されている。
【0049】
図4〜図8を参照しながら説明したように、操作者9は、本スキャンのスキャン計画を立てる。スキャン計画を立てた後、操作者9は、入力装置6を操作して、本スキャンを実行するための本スキャン実行命令を入力する。本スキャン実行命令が入力されると、ステップS3に進む。
【0050】
ステップS3では、関心領域ROIaおよびROIbから磁気共鳴信号を収集し、収集した磁気共鳴信号の信号強度に基づいて、本スキャンを実行するときの送信ゲインTgの値を決定するための処理を行う。ステップS3の説明に当たっては、先ず、関心領域ROIaおよびROIbから磁気共鳴信号を収集するために使用されるパルスシーケンスについて説明する。
【0051】
図9は、関心領域ROIaおよびROIbから磁気共鳴信号を収集するために使用されるパルスシーケンスの一例である。
【0052】
第1の実施形態では、PRESS(Point RESolved
Spectroscopy)シーケンスを用いて、関心領域ROIaおよびROIbから磁気共鳴信号を収集する。PRESSシーケンスは、3つのRFパルスPrf1、Prf2、およびPrf3を有している。RFパルスPrf1はフリップ角α°であり、RFパルスPrf2およびPrf3はフリップ角2α°である。以下に、PRESSシーケンスを用いることによって、どのようにして関心領域ROIaおよびROIbから磁気共鳴信号が収集されるかについて説明する。尚、以下では、関心領域ROIaから磁気共鳴信号を収集する方法について説明するが、同様の方法で、関心領域ROIbから磁気共鳴信号を収集することができる。
【0053】
図10は、PRESSシーケンスによって磁気共鳴信号を収集するときの説明図である。
【0054】
PRESSシーケンスは、関心領域ROIaにおいて互いに交差する3つのスライスBz、Bx、およびByを順に選択することによって、関心領域ROIaから磁気共鳴信号を発生させるシーケンスである。スライスBzは、関心領域ROIaのz方向の長さza(図6(b)参照)に一致したスライス厚を有している。また、スライスBxは、関心領域ROIaのx方向の長さxa(図6(b)参照)に一致したスライス厚を有している。更に、スライスByは、関心領域ROIaのy方向の長さya(図6(b)参照)に一致したスライス厚を有している。スライスBzは、RFパルスPrf1および勾配磁場Gz1(図9参照)によって選択され、スライスBxは、RFパルスPrf2および勾配磁場Gx1によって選択され、スライスByは、RFパルスPrf3および勾配磁場Gy1によって選択される。
【0055】
スライスBz、Bx、およびByのスライス位置およびスライス厚は、RFパルスPrf1、Prf2、およびPrf3の中心周波数Fcおよびバンド幅BWと、勾配磁場Gz1、Gx1、およびGy1の強度とによって決定される。したがって、スライスBz、Bx、およびByが関心領域ROIaで交差するように、RFパルスPrf1、Prf2、およびPrf3の中心周波数Fcおよびバンド幅BWと、勾配磁場Gz1、Gx1、およびGy1の強度とを決定することによって、関心領域ROIaから磁気共鳴信号を収集することができる。そこで、ステップS3は、RFパルスPrf1、Prf2、およびPrf3の中心周波数Fcおよびバンド幅BWと、勾配磁場Gz1、Gx1、およびGy1の強度とを決定するためのサブステップS31を有している。
【0056】
サブステップS31では、スライスBz、Bx、およびByを関心領域ROIaで交差させるためのPRESSシーケンスの条件(RFパルスPrf1、Prf2、およびPrf3の中心周波数Fcおよびバンド幅BWと、勾配磁場Gz1、Gx1、およびGy1の強度)を決定する。RFパルスPrf1、Prf2、およびPrf3の中心周波数Fcおよびバンド幅BWと、勾配磁場Gz1、Gx1、およびGy1の強度とが決定されることによって、関心領域ROIaから磁気共鳴信号を収集することが可能となる。
【0057】
PRESSシーケンスにおけるRFパルスの中心周波数Fcおよびバンド幅BWと、勾配磁場Gz1、Gx1、およびGy1の強度とを決定した後、サブステップS32に進む。
【0058】
サブステップS32では、アナログ回路53の送信ゲインTgをTg1、Tg2、・・・、Tgnの順で変更し、アナログ回路53の送信ゲインTgを変更するたびに、PRESSシーケンスを実行することによって関心領域ROIaから磁気共鳴信号を収集する。以下に、アナログ回路53の送信ゲインTgをTg1、Tg2、・・・、Tgnの順で変更しながら、PRESSシーケンスを実行する手順について説明する。
【0059】
先ず、アナログ回路53の送信ゲインTgをTg=Tg1に設定する。その後、シーケンサ51は、中央処理装置57の制御を受けて、PRESSシーケンスのRFパルスの情報(中心周波数Fc、バンド幅BWなど)を有するデジタル信号51aを出力する。デジタル信号51aは、DAC52でアナログ信号52aに変換され、アナログ回路53に入力される。アナログ回路53は、設定された送信ゲインTg=Tg1に従って、アナログ信号52aの振幅を調整し、振幅が調整されたアナログ信号53aをRFアンプ54に出力する。RFアンプ54は、振幅が調整されたアナログ信号53aを所定の増幅率で増幅し、増幅されたアナログ信号53aを、送信コイル24を駆動する駆動信号54aとして出力する。送信コイル24は、駆動信号54aに従ってRFパルスを送信する。
【0060】
また、シーケンサ51は、中央処理装置57の制御を受けて、PRESSシーケンスの勾配磁場の情報(勾配磁場の強度など)を有する勾配信号51bを、勾配磁場駆動回路55に出力する。勾配磁場駆動回路55は、入力された勾配信号51bに基づいて、勾配コイル23を駆動するための駆動信号55aを、勾配コイル23に供給する。勾配コイル23は、駆動信号55aに従って、勾配磁場を印加する。
【0061】
したがって、アナログ回路53の送信ゲインTg=Tg1に設定された状態で、PRESSシーケンスが実行される。これによって、関心領域ROIaから、アナログ回路53の送信ゲインTg=Tg1のときの磁気共鳴信号が収集される。
【0062】
以下同様に、アナログ回路53の送信ゲインTgを、Tg=Tg2、・・・、Tgnの順で順番に変更しながら、PRESSシーケンスを実行する。これによって、関心領域ROIaから、アナログ回路53の送信ゲインTg=Tg2、・・・、Tgnのときの磁気共鳴信号も収集される。
【0063】
上記のようにして、関心領域ROIaから、アナログ回路53の送信ゲインTg=Tg1、Tg2、・・・、Tgnのときの磁気共鳴信号が収集される。これらの磁気共鳴信号を収集した後、サブステップS33に進む。
【0064】
サブステップS33では、アナログ回路53の送信ゲインTgの値と、関心領域ROIaから収集された磁気共鳴信号の信号強度との関係に基づいて、本スキャン(後述するステップS4)を実行するときの送信ゲインTgの値を決定する。
【0065】
図11は、アナログ回路53の送信ゲインTgの値と、関心領域ROIaから収集された磁気共鳴信号の信号強度との関係を示すグラフである。
【0066】
グラフの横軸はアナログ回路53の送信ゲインTgの値を示しており、グラフの縦軸は関心領域ROIaから収集された磁気共鳴信号の信号強度を示している。
【0067】
グラフには、アナログ回路53の送信ゲインTgの値と磁気共鳴信号の信号強度との関係を表すn個のデータD1〜Dnが示されている。各データD1〜Dnは、アナログ回路53の送信ゲインTgの値Tg1、Tg2、・・・、Tgnにおける磁気共鳴信号の信号強度を表している。第1の実施形態では、データD1〜Dnに基づいて、磁気共鳴信号の信号強度が最大値Smaxになるときの送信ゲインTg=Tgaを決定する。Tgaは、例えば、データD1〜Dnのフィティング曲線CFにおける信号強度の最大値Smaxから決定することができる。
【0068】
尚、データD1〜Dnを比較すると、データDxが信号強度の最大値を表しているので、データDxにおける送信ゲインTgxを、信号強度が最大値Smaxになるときの送信ゲインTgaとしてもよい。
【0069】
送信ゲインTg=Tgaを決定した後、同様の方法で、送信ゲインTgを変更しながら、もう一つの関心領域ROIb(図5参照)からも磁気共鳴信号を収集し、信号強度が最大値になるときの送信ゲインTg=Tgbを決定する。
【0070】
これらの送信ゲインTgaおよびTgbを決定した後、ステップS4に進む。
【0071】
ステップS4では、各スライスAm(m=1〜n)(図7参照)から磁気共鳴信号を収集するための本スキャンが実行される。本スキャンを実行するために、先ず、アナログ回路53の送信ゲインTgを、Tg=Tgaに設定する。その後、シーケンサ51は、中央処理装置57の制御を受けて、本スキャンを実行するためのパルスシーケンスのRFパルスの情報(中心周波数、バンド幅など)を有するデジタル信号51aを出力する。デジタル信号51aは、DAC52でアナログ信号52aに変換され、アナログ回路53に入力される。アナログ回路53は、設定された送信ゲインTgaに従って、アナログ信号52aの振幅を調整し、振幅が調整されたアナログ信号53aをRFアンプ54に出力する。RFアンプ54は、振幅が調整されたアナログ信号53aを所定の増幅率で増幅し、増幅されたアナログ信号53aを、送信コイル24を駆動する駆動信号54aとして出力する。送信コイル24は、駆動信号54aに従ってRFパルスを送信する。
【0072】
また、シーケンサ51は、中央処理装置57の制御を受けて、本スキャンを実行するためのパルスシーケンスの勾配磁場の情報(勾配磁場の強度など)を有する勾配信号51bを、勾配磁場駆動回路55に出力する。勾配磁場駆動回路55は、入力された勾配信号51bに基づいて、勾配コイル23を駆動するための駆動信号55aを、勾配コイル23に供給する。勾配コイル23は、駆動信号55aに従って、勾配磁場を印加する。
【0073】
したがって、アナログ回路53の送信ゲインTg=Tgaに設定された状態で、各スライスAm(mは1〜nの整数)(図7参照)から磁気共鳴信号を収集するための本スキャンが実行される。各スライスAmから発生した磁気共鳴信号は受信コイル4で受信され、受信器56に伝送される。受信器56は受け取った信号を処理し、中央処理装置57に渡す。中央処理装置57は受信器56から受け取った信号に基づいてMR画像を再構成する。
【0074】
また、アナログ回路53の送信ゲインTg=Tgaに設定された状態で、本スキャンを実行した後、アナログ回路53の送信ゲインTgを、Tg=TgaからTgbに変更する。その後、シーケンサ51は、中央処理装置57の制御を受けて、本スキャンを実行するためのパルスシーケンスのRFパルスの情報(中心周波数、バンド幅など)を有するデジタル信号51aと、勾配磁場の情報(勾配磁場の強度など)を有する勾配信号51bとを再び出力する。したがって、アナログ回路53の送信ゲインTg=Tgbに設定された状態で、各スライスAm(mは1〜nの整数)(図7参照)から磁気共鳴信号を収集するための本スキャンが実行される。各スライスAmから発生した磁気共鳴信号は受信コイル4で受信され、受信器56に伝送される。受信器56は受け取った信号を処理し、中央処理装置57に渡す。中央処理装置57は、受信器56から受け取った信号に基づいてMR画像を再構成する。
【0075】
図12は、再構成されたMR画像を概略的に示す図である。
【0076】
図12(a)は、送信ゲインTg=Tgaにおける各スライスAm(mは1〜nの整数)(図7参照)のMR画像IAm(mは1〜nの整数)を示している。例えば、MR画像IA11、IA12、およびIA13は、それぞれ関心領域ROIaを横切るスライスA11、A12、およびA13のMR画像である。
【0077】
図12(b)は、送信ゲインTg=Tgbにおける各スライスAmのMR画像IBm(mは1〜nの整数)を示している。例えば、MR画像IB17、IB18、IB19、IB20、およびIB21は、それぞれ関心領域ROIbを横切るスライスA17、A18、A19、A20、およびA21のMR画像である。
【0078】
本スキャンを行うことによって、図12にしめすように、MR画像IAmおよびIBmが得られる。本スキャンを実行した後、ステップS5に進む。
【0079】
ステップS5では、操作者9は、ステップS4により得られたMR画像を表示装置7に表示する。
【0080】
図13は、表示装置7の表示画面7aに表示されたMR画像の一例を概略的に示す図である。
【0081】
表示画面7aは、2つのビューポートVaおよびVbを有している。ビューポートVaは、送信ゲインTg=Tgaにおける各スライスAmのMR画像IAm(図12(a)参照)を表示するビューポートであり、ビューポートVbは、送信ゲインTg=Tgbにおける各スライスAmのMR画像IBm(図12(b)参照)を表示するビューポートである。図13では、ビューポートaおよびVbには、それぞれMR画像IA12およびIB18が表示されている。操作者9は、入力装置6から必要な情報を入力することによって、ビューポートVaに各スライスAmのMR画像IAmを切替自在に表示することができる。また、操作者9は、入力装置6から必要な情報を入力することによって、ビューポートVbに各スライスAmのMR画像IBmを切替自在に表示することができる。
【0082】
ビューポートVaに表示されるスライスAmのMR画像IAmは、送信ゲインTg=Tgaに設定した状態で得られた画像である。送信ゲインTgaは、図11を参照しながら説明したように、関心領域ROIaから収集される磁気共鳴信号の信号強度を最大にするための送信ゲインTgである。したがって、関心領域ROIaを横切るスライスA11、A12、およびA13のMR画像IA11、IA12、およびIA13(図12(a)参照)には、関心領域ROIaの一部分が高コントラストで描出される。このため、送信ゲインTg=Tgaに設定した状態で本スキャンを実行することによって、関心領域ROIaにおいてコントラストの高いMR画像を得ることができる。
【0083】
また、ビューポートVbに表示されるスライスAmのMR画像IBmは、送信ゲインTg=Tgbに設定した状態で得られた画像である。送信ゲインTgbは、関心領域ROIb(図12(b)参照)から収集される磁気共鳴信号の信号強度を最大にするための送信ゲインTgである。したがって、関心領域ROIbを横切るスライスA17、A18、A19、A20、およびA21のMR画像IB17、IB18、IB19、IB20、およびIB21(図12(b)参照)には、関心領域ROIbの一部分が高コントラストで描出される。このため、送信ゲインTg=Tgbに設定した状態で本スキャンを実行することによって、関心領域ROIbにおいてコントラストの高いMR画像を得ることができる。
【0084】
尚、第1の実施形態では、スライスBx、By、およびBz(図10参照)のスライス厚は、関心領域ROIaの長さに一致させている。しかし、スライスBx、By、およびBzのスライス厚は、必ずしも関心領域ROIaの長さに一致させる必要はなく、関心領域ROIaの長さxa、ya、およびzaより大きくても小さくてもよい。ただし、スライスBx、By、およびBzのスライス厚が、関心領域ROIaの長さxa、ya、およびzaより大きすぎると、関心領域ROIaの周囲の領域の磁気共鳴信号の割合が多くなるので、最適な送信ゲインTgを算出することが困難になる。また、スライスBx、By、およびBzのスライス厚が、関心領域ROIaの長さxa、ya、およびzaより小さすぎると、関心領域ROIaの中で、磁気共鳴信号が収集されない領域の割合が多くなるので、やはり最適な送信ゲインTgを算出することが困難になる。したがって、スライスBx、By、およびBzのスライス厚は、関心領域ROIaの長さxa、ya、およびzaにできるだけ近いことが望ましい。
【0085】
第1の実施形態では、関心領域ROIaは矩形状であるが、関心領域ROIaの形状は、必ずしも矩形状でなくてもよく、別の形状(例えば、円形)であってもよい。関心領域ROIaの形状が矩形状でなくても、できるだけ関心領域ROIaを含むようにスライスBx、By、およびBzを設定することによって、関心領域ROIaにおいてコントラストの高いMR画像を得ることができる。
【0086】
第1の実施形態では、関心領域ROIaから磁気共鳴信号を収集するために、PRESSシーケンスを用いている。しかし、PRESSシーケンスの代わりに、STEAM(STimulated
Echo Acquisition Mode)シーケンスなど、別のシーケンスを用いてもよい。
【0087】
(2)第2の実施形態
第2の実施形態のMRI装置のハードウェア構成は、図1に示される第1の実施形態のMRI装置1と同じであるので、ハードウェア構成についての説明は省略する。以下に、第2の実施形態のMRI装置の動作について、図14を参照しながら説明する。
【0088】
図14は、第2の実施形態におけるMRI装置の処理フローの一例を示す図である。
【0089】
ステップS1〜S5は、第1の実施形態におけるステップS1〜S5と同じであるので説明は省略する。尚、第2の実施形態では、ステップS4において、T1強調画像を得るためのスキャン(以下、「T1スキャン」と呼ぶ)が実行されているとする。
【0090】
ステップS6では、操作者9は、ビューポートVaおよびVbに表示される画像(図13参照)を変更しながら、後述するステップS8のスキャンを実行するときに高コントラストで撮影したい関心領域を設定する。第2の実施形態では、操作者9は、ビューポートVaに表示されるスライスA12のMR画像IA12に関心領域を設定するとする。この場合、操作者9は、ビューポートVaにMR画像IA12を表示させておき、入力装置6を操作して、MR画像IA12に、高コントラストで撮影したい関心領域を設定する。
【0091】
図15は、MR画像IA12に関心領域が設定された後の表示装置7を示す図である。
【0092】
関心領域ROIcは、周波数エンコード方向の長さがLx’であり、位相エンコード方向の長さがLy’である。図15には、操作者9が、MR画像IA12に1個の関心領域ROIcを設定した場合が示されているが、設定される関心領域の数は、2個以上でもよい。
【0093】
関心領域ROIcを設定した後、操作者9は、入力装置6を操作して、後述するステップS8において実行されるT2強調画像を取得するためのスキャン(以下、「T2スキャン」と呼ぶ)の実行命令を入力する。実行命令が入力されると、ステップS7に進む。
【0094】
ステップS7では、関心領域ROIcから磁気共鳴信号を収集し、収集した磁気共鳴信号の信号強度に基づいて、後述するステップS8のT2スキャンを実行するときの送信ゲインTgの値を決定する。ステップS7の説明に当たっては、先ず、関心領域ROIcから磁気共鳴信号を収集するために使用されるパルスシーケンスについて説明する。
【0095】
図16は、関心領域ROIcから磁気共鳴信号を収集するために使用されるパルスシーケンスの一例である。
【0096】
ステップS7では、グラディエントエコー系のシーケンスを用いて、関心領域ROIcから磁気共鳴信号を収集し、送信ゲインTgを決定している。ステップS7は、送信ゲインTgを決定するために、サブステップS71〜S74を有している。以下に、サブステップS71〜S74について説明する。
【0097】
サブステップS71では、操作者9が設定した関心領域ROIcに基づいて、中央処理装置57が、スライスA12(図12(a)参照)の中に、後述するステップS73においてグラディエントエコー系のシーケンスを実行するときの撮像視野を決定する。
【0098】
図17は、決定された撮像視野を示す図である。
【0099】
図17(a)は、スライスA12と撮像視野との位置関係を示す図である。図17(a)には、スライスA12の中に、2つの撮像視野FOV1およびFOV2が示されている。撮像視野FOV1は、ステップS2において操作者9が設定した撮像視野である(図8参照)。撮像視野FOV2は、中央処理装置57によって決定された撮像視野である。撮像視野FOV2の各ピクセルは、周波数エンコード方向の長さがΔxであり、位相エンコード方向の長さがΔyである。
【0100】
以下に、撮像視野FOV2をどのように決定しているかを、図17を参照しながら説明する。
【0101】
撮像視野FOVを決定するために、先ず、関心領域ROIcに基づいて、撮像視野FOV2の各ピクセルの基準となる基準ピクセルREF(図17(a)参照)を設定する。
【0102】
図17(b)は、関心領域ROIcと基準ピクセルREFとの位置関係を示す図である。
【0103】
基準ピクセルREFは、関心領域ROIcと同じ位置に設定される。基準ピクセルREFは、関心領域ROIcと同じ寸法である。基準ピクセルREFを設定した後、基準ピクセルREFを基準にして、スライスA12内における他のピクセルを位置決めする。したがって、撮像視野FOV2の各ピクセルの長さΔxおよびΔyは、以下の式で表される。
Δx=Lx’ ・・・(1)
Δy=Ly’ ・・・(2)
ここで、 Lx’:関心領域ROIcの周波数エンコード方向の長さ(図15参照)
Ly’:関心領域ROIcの位相エンコード方向の長さ(図15参照)
【0104】
このようにして、後述するステップS73においてグラディエントエコー系のシーケンス(図16参照)を実行するときの撮像視野FOV2が設定される。
【0105】
ただし、撮像視野FOV2が被検体の頭部の断面8cよりも狭くなると、後述するステップS73において磁気共鳴信号を収集した場合、磁気共鳴信号の折り返りが発生する恐れがある。したがって、撮像視野FOV2は、周波数エンコード方向および位相エンコード方向の幅が十分に大きいことが望ましい。第2の実施形態では、撮像視野FOV2を、操作者9によって設定された撮像視野FOV1よりも広くなるように設定している。操作者9によって設定された撮像視野FOV1は、被検体の頭部の断面8cよりも広くなるように設定されているので、撮像視野FOV1よりも広くなるように撮像視野FOV2を設定することによって、磁気共鳴信号の折り返りを確実に防止できる。ただし、折り返りが十分に低減できるのであれば、撮像視野FOV2は、撮像視野FOV1より狭くてもよい。
【0106】
尚、上記の説明では、撮像視野FOV2の各ピクセルの長さΔxおよびΔyは、関心領域ROIcの長さLx’およびLy’と同じである(式(1)および(2)参照)。しかし、関心領域ROIcの長さLx’およびLy’が短すぎる場合にも、ピクセルの長さΔxおよびΔyを関心領域ROIcの長さLx’およびLy’に一致させてしまうと、ピクセルサイズが小さくなりすぎてしまい、撮像視野FOV2のスキャン時間が長くなるという問題がある。また、関心領域ROIcの長さLx’およびLy’が長すぎる場合にも、ピクセルの長さΔxおよびΔyを関心領域ROIcの長さLx’およびLy’に一致させてしまうと、ピクセルサイズが大きくなりすぎてしまい、撮像視野FOV2の解像度が粗くなりすぎるという問題がある。そこで、関心領域ROIcの長さLx’およびLy’が短すぎる又は長すぎる場合、以下のようにして撮像視野FOV2を設定する。
【0107】
図18は、関心領域ROIcの長さLx’およびLy’が短すぎる場合の撮像視野FOV2の設定方法の説明図である。
【0108】
図18(a)は撮像視野FOV2を示す図、図18(b)は撮像視野FOV2の基準ピクセルREFと関心領域ROIcとの関係を示す図である。
【0109】
関心領域ROIcの長さLx’およびLy’が短すぎる場合、ピクセルの長さΔxおよびΔyを、それぞれ関心領域ROIcの長さLx’およびLy’よりも長く設定する(図18(b)参照)。ピクセルの長さΔxおよびΔyを設定した後、関心領域ROIcを含むように基準ピクセルREFを設定し、基準ピクセルREFを基準にして他のピクセルを二次元的に配列することによって、撮像視野FOV2が設定される。したがって、ピクセルサイズが小さくなりすぎることが防止されるので、スキャン時間が長くなる問題を解消することができる。関心領域ROIcの長さLx’およびLy’が短すぎるかどうかを判断する方法としては、ピクセルの長さΔxおよびΔyの下限値Lを予め決めておき、Lx’およびLy’と下限値Lとを比較する方法が考えられる。Lx’およびLy’と下限値Lとを比較し、Lx’およびLy’が下限値Lよりも小さい場合は、Lx’およびLy’は短すぎると判断することができる。Lx’およびLy’が短すぎると判断した場合は、ピクセルの長さΔxおよびΔyを下限値Lに一致させることによって、図18に示すように、ピクセルの長さΔxおよびΔyを、それぞれ関心領域ROIcの長さLx’およびLy’よりも長く設定することができる。
【0110】
図18(b)では、関心領域ROIcの長さLx’およびLy’の両方が短すぎる場合の基準ピクセルREFが示されているが、関心領域ROIcの長さLx’およびLy’の一方のみが短すぎる場合、基準ピクセルREFは以下のように設定される。
【0111】
図19は、関心領域ROIcの長さLx’およびLy’の一方のみが短すぎる場合の基準ピクセルREFを示す図である。
【0112】
図19では、関心領域ROIcの長さLx’のみが短すぎる場合の基準ピクセルREFが示されている。この場合、基準ピクセルREFの長さΔxは、関心領域ROIcの長さLx’よりも長いが、基準ピクセルREFの長さΔyは、関心領域ROIcの長さLy’に一致している。
【0113】
図18および図19を参照しながら説明したように、関心領域ROIcの長さLx’およびLy’が短すぎる場合には、ピクセルの長さΔxおよびΔyが関心領域ROIcの長さLx’およびLy’よりも長く設定される。したがって、ピクセルサイズが小さくなりすぎることが防止されるので、スキャン時間が長くなる問題を解消することができる。
【0114】
尚、図18および図19では、関心領域ROIcの長さLx’およびLy’が短すぎる場合の撮像視野FOV2の設定方法について説明されている。次に、関心領域ROIcの長さLx’およびLy’が長すぎる場合の撮像視野FOV2の設定方法について説明する。
【0115】
図20は、関心領域ROIcの長さLx’およびLy’が長すぎる場合の撮像視野FOV2の設定方法の説明図である。
【0116】
図20(a)は撮像視野FOV2を示す図、図20(b)は撮像視野FOV2の基準ピクセルREFと関心領域ROIcとの関係を示す図である。
【0117】
関心領域ROIcの長さLx’が長すぎる場合、関心領域ROIcが周波数エンコード方向にd等分されるように、基準ピクセルを設定する。また、関心領域ROIcの長さLy’が長すぎる場合は、関心領域ROIcが位相エンコード方向にe等分されるように、基準ピクセルを設定する。
【0118】
図20では、関心領域ROIcが周波数エンコード方向に2等分され、位相エンコード方向に3等分されるように、6個の基準ピクセルREF1〜REF6が設定されている。
【0119】
6個の基準ピクセルREF1〜REF6を基準にして他のピクセルを二次元的に配列することによって、撮像視野FOV2が設定される。
【0120】
関心領域ROIcの長さLx’およびLy’が長すぎる場合には、ピクセルの長さΔxおよびΔyが関心領域ROIcの長さLx’およびLy’よりも短く設定される。したがって、ピクセルサイズが大きくなりすぎることが防止されるので、撮像視野FOV2の解像度が粗くなるという問題を解消することができる。関心領域ROIcの長さLx’およびLy’が長すぎるかどうかを判断する方法としては、ピクセルの長さΔxおよびΔyの上限値Uを予め決めておき、Lx’およびLy’と上限値Uとを比較する方法が考えられる。Lx’およびLy’と上限値Uとを比較し、Lx’およびLy’が上限値Uよりも長い場合は、Lx’およびLy’は長すぎると判断することができる。Lx’およびLy’が長すぎると判断した場合は、図20に示すように、関心領域ROIcが周波数エンコード方向にd等分されるとともに、関心領域ROIcが位相エンコード方向にe等分されるように、基準ピクセルを設定する。これによって、ピクセルの長さΔxおよびΔyを、それぞれ関心領域ROIcの長さLx’およびLy’よりも短く設定することができる。
【0121】
尚、図20(b)では、関心領域ROIcの長さLx’およびLy’の両方が長すぎる場合の基準ピクセルREFが示されているが、関心領域ROIcの長さLx’およびLy’の一方のみが長すぎる場合、基準ピクセルREFは以下のように設定される。
【0122】
図21は、関心領域ROIcの長さLx’およびLy’の一方のみが長すぎる場合の基準ピクセルREFを示す図である。
【0123】
図21では、関心領域ROIcの長さLy’のみが長すぎる場合に設定される基準ピクセルREF1〜REF3が示されている。この場合、基準ピクセルREF1〜REF3は、関心領域ROIcを位相エンコード方向にのみ3等分している。
【0124】
関心領域ROIcの長さLx’およびLy’が長すぎる場合には、ピクセルの長さΔxおよびΔyが関心領域ROIcの長さLx’およびLy’よりも短く設定される。したがって、ピクセルサイズが大きくなりすぎることが防止されるので、撮像視野FOV2の解像度が粗くなるという問題を解消することができる。
【0125】
図17〜図21を参照しながら説明した手順で撮像視野FOV2を設定した後、サブステップS72に進む。
【0126】
サブステップS72では、中央処理装置57が、関心領域ROIcから磁気共鳴信号を収集するために使用されるパルスシーケンス(図16参照)の条件を決定する。第2の実施形態では、パルスシーケンスの条件として、以下の条件を決定する。
(1)周波数エンコード方向の勾配磁場の強度、
(2)位相エンコード方向の勾配磁場のステップ数および最小位相エンコーディングステップの面積、
【0127】
これらの条件(1)および(2)は、撮像視野FOV2のピクセルの長さΔxおよびΔyと、撮像視野FOV2の周波数エンコード方向のピクセル数および位相エンコード方向のピクセル数から求められる。
【0128】
条件(1)および(2)を求めた後、サブステップS73に進む。
【0129】
サブステップS73では、アナログ回路53の送信ゲインTgをTg1、Tg2、・・・、Tgnの順で変更し、アナログ回路53の送信ゲインTgを変更するたびに、パルスシーケンスを実行することによって関心領域ROIaから磁気共鳴信号を収集する。以下に、アナログ回路53の送信ゲインTgをTg1、Tg2、・・・、Tgnの順で変更しながら、パルスシーケンスを実行する手順について説明する。
【0130】
先ず、アナログ回路53の送信ゲインTgをTg1に設定する。その後、シーケンサ51は、中央処理装置57の制御を受けて、図16に示すパルスシーケンスのRFパルスの情報(中心周波数、バンド幅など)を有するデジタル信号51aを出力する。デジタル信号51aは、DAC52でアナログ信号52aに変換され、アナログ回路53に入力される。アナログ回路53は、設定された送信ゲインTg1に従って、アナログ信号52aの振幅を調整し、振幅が調整されたアナログ信号53aをRFアンプ54に出力する。RFアンプ54は、振幅が調整されたアナログ信号53aを所定の増幅率で増幅し、増幅されたアナログ信号53aを、送信コイル24を駆動する駆動信号54aとして出力する。送信コイル24は、駆動信号54aに従ってRFパルスを送信する。
【0131】
また、シーケンサ51は、中央処理装置57の制御を受けて、図16に示すパルスシーケンスの勾配磁場の情報(周波数エンコード方向の勾配磁場の強度、位相エンコード方向の勾配磁場のステップ数および最小位相エンコーディングステップの面積など)を有する勾配信号51bを、勾配磁場駆動回路55に出力する。勾配磁場駆動回路55は、入力された勾配信号51bに基づいて、勾配コイル23を駆動するための駆動信号55aを、勾配コイル23に供給する。勾配コイル23は、駆動信号55aに従って、勾配磁場を印加する。
【0132】
したがって、アナログ回路53の送信ゲインTgがTg1に設定された状態で、図16に示すパルスシーケンスが実行される。これによって、スライスA12の撮像視野FOV2(図17参照)がスキャンされ、スライスA12の撮像視野FOV2から、アナログ回路53の送信ゲインTgがTg1のときの磁気共鳴信号が収集される。
【0133】
以下同様に、アナログ回路53の送信ゲインTgをTg2、・・・、Tgnの順で順番に変更しながら図16に示すパルスシーケンスを実行する。これによって、スライスA12の撮像視野FOV2から、アナログ回路53の送信ゲインTgがTg2、・・・、Tgnのときの磁気共鳴信号も収集される。
【0134】
上記のようにして、スライスA12の撮像視野FOV2から、アナログ回路53の送信ゲインTgがTg1、Tg2、・・・、Tgnのときの磁気共鳴信号が収集される。これらの磁気共鳴信号を収集した後、サブステップS74に進む。
【0135】
サブステップS74では、スライスA12の撮像視野FOV2から収集した磁気共鳴信号に基づいて、T2スキャン(後述するステップS8)を実行するときの送信ゲインTgの値を決定する。
【0136】
送信ゲインTgの値を決定するために、先ず、スライスA12の撮像視野FOV2から収集した磁気共鳴信号から、関心領域ROIc(図15参照)における磁気共鳴信号の信号強度を算出する。関心領域ROIcには基準ピクセルREFが割り当てられているので(図17参照)、基準ピクセルREFにおける磁気共鳴信号の信号強度が、関心領域ROIcにおける磁気共鳴信号の信号強度となる。
【0137】
尚、複数の基準ピクセルが設定される場合(図20参照)、関心領域ROIcにおける磁気共鳴信号の信号強度は、例えば、各基準ピクセルにおける磁気共鳴信号の信号強度の平均値とすることができる。
【0138】
関心領域ROIcにおける磁気共鳴信号の信号強度を算出した後、アナログ回路53の送信ゲインTgの値と、算出した関心領域ROIcにおける磁気共鳴信号の信号強度との関係に基づいて、T2スキャン(後述するステップS8)を実行するときの送信ゲインTgの値を決定する。送信ゲインTgの値は、第1の実施形態において図11を参照しながら説明した方法と同様の方法で決定される。ここでは、決定された送信ゲインTgの値を、Tg=Tgcとする。送信ゲインTgcを決定した後、ステップS8に進む。
【0139】
ステップS8では、T2スキャンが実行される。T2スキャンを実行するために、先ず、アナログ回路53の送信ゲインTgが、サブステップS74で決定した値Tgcに設定される。その後、シーケンサ51は、T2スキャンを実行するためのパルスシーケンスのRFパルスの情報(中心周波数、バンド幅など)を有するデジタル信号51aを出力する。デジタル信号51aは、DAC52でアナログ信号52aに変換され、アナログ回路53に入力される。アナログ回路53は、設定された送信ゲインTgcに従って、アナログ信号52aの振幅を調整し、振幅が調整されたアナログ信号53aをRFアンプ54に出力する。RFアンプ54は、振幅が調整されたアナログ信号53aを所定の増幅率で増幅し、増幅されたアナログ信号53aを、送信コイル24を駆動する駆動信号54aとして出力する。送信コイル24は、駆動信号54aに従ってRFパルスを送信する。
【0140】
また、シーケンサ51は、中央処理装置57の制御を受けて、T2スキャンを実行するためのパルスシーケンスの勾配磁場の情報(周波数エンコード方向の勾配磁場の強度、位相エンコード方向の勾配磁場のステップ数および最小位相エンコーディングステップの面積など)を有する勾配信号51bを、勾配磁場駆動回路55に出力する。勾配磁場駆動回路55は、入力された勾配信号51bに基づいて、勾配コイル23を駆動するための駆動信号55aを、勾配コイル23に供給する。勾配コイル23は、駆動信号55aに従って、勾配磁場を印加する。
【0141】
したがって、アナログ回路53の送信ゲインTg=Tgcに設定された状態で、スライスA1〜An(図7参照)から磁気共鳴信号を収集するためのT2スキャンが実行される。被検体からの磁気共鳴信号は受信コイル4で受信され、受信器56に伝送される。受信器56は受け取った信号を処理し、中央処理装置57に渡す。中央処理装置57は受信器56から受け取った信号に基づいて画像を再構成する。
【0142】
アナログ回路53の送信ゲインTgをTg=Tgcに設定した状態で、T2スキャンを実行した後、ステップS9に進む。
【0143】
ステップS9では、ステップS8により得られたMR画像が表示装置7に表示される。ステップS8により得られたMR画像は、送信ゲインTg=Tgcに設定した状態で得られた画像である。送信ゲインTgcは、関心領域ROIcから収集される磁気共鳴信号の信号強度を最大にするための送信ゲインであるので、関心領域ROIcが高コントラストで描出されたMR画像を得ることができる。
【符号の説明】
【0144】
1 MRI装置
2 磁場発生装置
3 テーブル
4 受信コイル
5 制御装置
6 入力装置
7 表示装置
8 被検体
9 オペレータ
21 ボア
22 超伝導コイル
23 勾配コイル
24 送信コイル
31 クレードル
51 シーケンサ
52 送信器
53 アナログ回路
54 RFアンプ
55 勾配磁場電源
56 受信器
57 中央処理装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体から磁気共鳴信号を収集する磁気共鳴イメージング装置であって、
送信ゲインの値に応じた駆動信号が供給されることによって、RFパルスを送信するRFコイルと、
操作者の操作に応じて前記被検体の関心領域を設定する関心領域設定手段と、
を有し、
前記送信ゲインの値を変更しながら前記関心領域から磁気共鳴信号を収集し、収集された磁気共鳴信号の信号強度に基づいて、前記送信ゲインの値を決定する、磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
前記関心領域から磁気共鳴信号を収集するためのパルスシーケンスの条件を決定するシーケンス条件決定手段を有する、請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
前記パルスシーケンスは、PRESSシーケンスである、請求項2に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
前記シーケンス条件決定手段は、
前記PRESSシーケンスのRFパルスの中心周波数およびバンド幅と、勾配磁場の強度とを決定する、請求項3に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
前記パルスシーケンスは、グラディエントエコー系のパルスシーケンスである、請求項2に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項6】
前記シーケンス条件決定手段は、
前記グラディエントエコー系のパルスシーケンスの周波数エンコード方向の勾配磁場の強度と、位相エンコード方向の勾配磁場のステップ数および最小位相エンコーディングステップの面積とを決定する、請求項5に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項7】
前記シーケンス条件決定手段は、
前記関心領域から磁気共鳴信号を収集するための撮像視野を設定し、前記撮像視野のピクセルの長さと、前記撮像視野の周波数エンコード方向のピクセル数および位相エンコード方向のピクセル数とに基づいて、前記グラディエントエコー系のパルスシーケンスの周波数エンコード方向の勾配磁場の強度と、位相エンコード方向の勾配磁場のステップ数および最小位相エンコーディングステップの面積とを決定する、請求項6に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項8】
RFパルスの情報を有するデジタル信号を出力するシーケンサと、
前記デジタル信号をアナログ信号に変換するDA変換手段と、
前記アナログ信号の振幅を調整するアナログ回路と、
振幅が調整された前記アナログ信号を増幅するRFアンプと、
前記アナログ回路の送信ゲインを設定する送信ゲイン設定手段と、
を有する、請求項1〜7のうちのいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項9】
送信ゲインの値に応じた駆動信号をRFコイルに供給することによって、被検体にRFパルスを送信し、前記被検体から磁気共鳴信号を収集する磁気共鳴イメージング装置のプログラムであって、
操作者の操作に応じて前記被検体の関心領域を設定する関心領域設定処理と、
前記送信ゲインの値を変更しながら前記関心領域から収集した磁気共鳴信号の信号強度に基づいて、前記送信ゲインの値を決定する送信ゲイン決定処理と、
を計算機に実行させるためのプログラム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図14】
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【図16】
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【図19】
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【図21】
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【図8】
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【図13】
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【図15】
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【図17】
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【図18】
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【図20】
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【公開番号】特開2011−45627(P2011−45627A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−197892(P2009−197892)
【出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【出願人】(300019238)ジーイー・メディカル・システムズ・グローバル・テクノロジー・カンパニー・エルエルシー (1,125)
【Fターム(参考)】