磁気共鳴イメージング装置および磁気共鳴イメージング装置の動作制御方法
【課題】印加されるプリパルスの組合せによらず、安定した画像コントラストを得る。
【解決手段】プリパルスシーケンスにおいて、MTCパルス以外のプリパルスを印加する場合、ユーザにより設定されたスキャンパラメータに従って、MTCパルスのみを印加する場合のMT効果を得られるよう、他のプリパルスによるMT効果を加味して入力されたスキャンパラメータを補正する。補正は、予め用意するMT効果を特定する関数、または、プリスキャン結果を用いる。さらに得られた補正値を、検証し、調整するよう構成してもよい。
【解決手段】プリパルスシーケンスにおいて、MTCパルス以外のプリパルスを印加する場合、ユーザにより設定されたスキャンパラメータに従って、MTCパルスのみを印加する場合のMT効果を得られるよう、他のプリパルスによるMT効果を加味して入力されたスキャンパラメータを補正する。補正は、予め用意するMT効果を特定する関数、または、プリスキャン結果を用いる。さらに得られた補正値を、検証し、調整するよう構成してもよい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は核磁気共鳴(以下、NMRという)現象を利用した磁気共鳴撮像(Magnetic Resonance Imaging、以下、MRIという)技術に関し、特に、本計測に先んじて印加する高周波磁場(RF)パルスであるプリパルスの印加制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
MRIは、被検体、特に人体の組織を構成する原子核スピンが発生するNMR信号(エコー信号)を計測し、形態や機能を2次元的あるいは3次元的に画像化する技術である。撮像においては、エコー信号には、傾斜磁場によって異なる位相エンコードが付与されるとともに周波数エンコードされた時系列データとして計測される。計測されたエコー信号は、2次元または3次元フーリエ変換され、画像に再構成される。
【0003】
MRIでは、特定領域のプロトンや、特定分子のプロトンの信号を選択的に抑制して画質を改善するため、本計測に先んじて、RFパルスを印加する撮像手法がある。本計測に先んじて印加するRFパルスをプリパルスと呼ぶ。プリパルスには、例えば、脂肪を抑制するFatSatパルス、CHESSパルス、流入してくる静脈血の信号を抑制することにより動脈の識別能を高めるプリサチパルス、筋肉や脳実質の信号を抑制する磁化転移コントラスト(magnetization transfer contrast)(以下、MTC)パルス等がある。
【0004】
MTCパルスは、筋肉や脳実質の信号を抑制することにより血管の描出能を向上させることができる。また、CHESSパルスも、脂肪の信号を抑制することにより血管の描出能を高めることができる。このため、CHESSパルス、MTCパルス、プリサチパルス等は、FBI(fresh blood imaging)、3D TOF撮像といった血管、血流の撮像に用いられる。また、例えば、心時相との同期撮影を行うものでは、繰り返し時間TRやエコー時間TEに制約があり、コントラストが低下するため、これを補うため、MTCパルスと脂肪抑制パルスとが併用される(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開11−299753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
プリパルスを印加するシーケンスでは、プリパルスにより抑制したい組織内のプロトンのみを励起し、その後、クラッシャーパルスを印加することにより、当該組織からの信号を抑制する。このため、プリパルスの照射周波数は、抑制したい信号の共振周波数帯域に合わせ、かつ、抑制したくない信号の共振周波数帯域からずらした共振周波数に設定される。
【0007】
MTCパルスが抑制する、筋肉や脳実質などの組織に多く存在する蛋白に結合したプロトン(蛋白結合水プロトン)の共振周波数帯域は、血液のような自由なプロトン(自由水プロトン)の共振周波数帯域に比べて広い。このため、プリパルスシーケンスにおいて、他の組織を抑制するプリパルスが印加されると、これらのプリパルスによっても、蛋白結合水プロトンが抑制されるMT効果が発生する。
【0008】
このMT効果は、画像全体のコントラストに影響を及ぼす。従って、プリパルスシーケンスにおいて、MTCパルスが他のプリパルスと併用される場合、他のプリパルスにMT効果も加わり、ユーザが意図した画像コントラストを得られない可能性が高い。また、使用するプリパルスが異なる複数の撮像を行う場合、得られるMT効果が各撮像で異なり、画像全体のコントラストが安定しない。特に、FBIなどの差分処理を行う撮像において、差分を行う元画像の間で印加するプリパルスが異なる場合、MT効果の違いにより、予期せぬ信号強度の差が発生し、差分結果に影響を与えることがある。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、印加されるプリパルスの組合せによらず、安定した画像コントラストを得る技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、プリパルスシーケンスにおいて、MTCパルス以外のプリパルスを印加する場合、ユーザにより設定されたスキャンパラメータに従って、MTCパルスのみを印加する場合のMT効果を得られるよう、他のプリパルスによるMT効果を加味して入力されたスキャンパラメータを補正する。補正は、予め用意するMT効果を特定する関数、または、プリスキャン結果を用いる。
【0011】
具体的には、所定のパルスシーケンスに従って、静磁場中におかれた被検体に高周波磁場を照射する照射手段と前記被検体からのエコー信号を受信する受信手段との動作を制御する制御手段を備える磁気共鳴イメージング装置であって、前記パルスシーケンスは、磁化転移コントラストパルス(MTCパルス)を含む複数のプリパルスを印加するプリパルスシーケンスを備え、前記制御手段は、前記MTCパルスのパラメータ値を補正する補正手段を備え、補正後の前記MTCパルスのパラメータ値を用いて前記プリパルスシーケンスにおいて前記MTCパルスが照射されるよう前記照射手段を制御し、前記補正手段は、前記MTCパルスをユーザが設定したMTCパルスのパラメータ値に従って単独でプリパルスとして印加した場合に得られる目標磁化転移効果が、全プリパルスの印加により得られるよう、前記MTCパルスのパラメータ値を補正することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置を提供する。
【0012】
また、所定のパルスシーケンスに従って、静磁場中におかれた被検体に高周波磁場を照射する照射手段と前記被検体からのエコー信号を受信する受信手段との動作を制御する制御手段を備える磁気共鳴イメージング装置における動作制御方法であって、前記照射手段で照射する高周波磁場を特定するパラメータの入力を受け付けるパラメータ入力受付ステップと、前記受け付けたパラメータを補正する補正ステップと、前記補正後のパラメータを用い、前記照射手段を制御するとともに、前記受信手段の動作を制御し、計測を行う計測ステップと、を備え、前記補正ステップでは、前記MTCパルスをユーザが設定したMTCパルスのパラメータ値に従って単独でプリパルスとして印加した場合に得られる目標磁化転移効果が、全プリパルスの印加により得られるよう、前記MTCパルスのパラメータ値が補正されることを特徴とする動作制御方法を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、印加されるプリパルスの組合せによらず、MT効果が安定し、安定した画像コントラストを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第一の実施形態のMRI装置の機能ブロック図である。
【図2】第一の実施形態のパルスシーケンスを説明するための説明図である。
【図3】自由水プロトンと蛋白結合水プロトンとの共振周波数帯域について説明するための説明図である。
【図4】第一の実施形態の制御部110の機能ブロック図である。
【図5】第一の実施形態の計測処理のフローチャートである。
【図6】MTCパルスのフリップアングルとオフセット周波数とMT効果との関係を示すグラフである。
【図7】第一の実施形態の補正処理のフローチャートである。
【図8】第二の実施形態の補正処理のフローチャートである。
【図9】第三の実施形態の制御部110の機能ブロック図である。
【図10】第三の実施形態の補正処理のフローチャートである。
【図11】第四の実施形態の制御部110の機能ブロック図である。
【図12】第四の実施形態の補正処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<<第一の実施形態>>
以下、本発明を適用する第一の実施形態について説明する。以下、本発明の実施形態を説明するための全図において、同一機能を有するものは同一符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0016】
まず、本実施形態のMRI装置の構成について説明する。図1は本実施形態のMRI装置100の機能ブロック図である。本実施形態のMRI装置100は、磁石102と、傾斜磁場コイル103と、高周波磁場(RF)コイル104と、RFプローブ105と、傾斜磁場電源106と、RF送信部107と、信号検出部108と、信号処理部109と、制御部110と、表示部111と、操作部112と、ベッド113とを備える。
【0017】
磁石102は、被検体101の周囲の領域(検査空間)に静磁場を発生する。傾斜磁場コイル103は、X、Y、Zの3方向のコイルで構成され、傾斜磁場電源106からの信号に応じて、それぞれ、検査空間に傾斜磁場パルスを印加する。RFコイル104は、RF送信部107からの信号に応じて検査空間にRFパルスを印加(照射)する。RFプローブ105は、被検体101が発生するMR信号(エコー信号)を検出する。RFプローブ105で受信したエコー信号は、信号検出部108で検出され、信号処理部109で信号処理され、制御部110に入力される。制御部110は、各部の動作を制御するとともに、入力された信号から画像を再構成し、表示部111に表示する。また、ベッド113は被検体が横たわるためのものである。
【0018】
なお、MRI装置100は、検査空間の静磁場不均一を補正するシムコイルと、シムコイルに電流を供給するシム電源とをさらに備えてもよい。
【0019】
現在MRIの撮像対象は、被検体102の主たる構成物質、プロトンである。プロトン密度の空間分布や、励起されたプロトンの緩和現象の空間分布を画像化することで、人体頭部、腹部、四肢等の形態または、機能を2次元もしくは3次元的に撮影する。
【0020】
撮像は、制御部110が、予め定められた制御のタイムチャート(パルスシーケンス)に従って上記各部の動作を制御することにより実現される。制御部110は、パルスシーケンスに従って、傾斜磁場電源106、RF送信部107、信号検出部108の動作を制御し、RFパルス、傾斜磁場パルスを印加するとともに、エコー信号を収集する。このとき、RFパルス、傾斜磁場パルスの印加量等は、ユーザが操作部112を介して設定するスキャンパラメータで決定される。
【0021】
本実施形態のパルスシーケンスは、画像再構成のためのエコー信号を収集する本計測を実行する本計測シーケンス部と、本計測に先立ち、様々な効果を与えるプリパルスを印加するプリパルスシーケンス部とを備える。本実施形態で実行されるパルスシーケンス200の一例を図2に示す。ここで、RF/Signal軸は、RFパルスの印加タイミングとエコー信号の発生タイミングを、Gx、Gy,Gz軸は、それぞれX、Y、Z方向の傾斜磁場の印加タイミングを示す。
【0022】
ここでは、プリパルスシーケンス部210において、脂肪を抑制するFatSatパルス211と、FatSatパルス211と蛋白結合水内のプロトンのみを励起するMTCパルス213との2種のプリパルスを印加するものを例示する。プリパルスシーケンス部210では、FatSatパルス211を印加し、残留横磁化を位相分散させるスポイラ傾斜磁場パルス212を各軸に印加する。次に、MTCパルス213を印加し、励起された磁化が一定の確率で周囲のプロトンと磁化の転移(MT)を起こした状態で、クラッシャー傾斜磁場パルス214を各軸に印加する。
【0023】
本計測シーケンス部220では、例えば、傾斜磁場パルス221とともに撮像対象領域のプロトンを励起するRFパルス222を印加する。そして、異なり位相エンコードを与える傾斜磁場パルス223を印加し、それぞれの位相エンコードで得られるエコー信号224を周波数エンコードを与える傾斜磁場パルス225を印加しながら検出する。なお、位相エンコードの数は通常1枚の画像あたり128、256、512等の値が選ばれる。各エコー信号は通常128、256、512、1024個のサンプリングデータからなる時系列信号として検出する。また、これらのデータをフーリエ変換(以下、FT)して1枚のMR画像が再構成される。
【0024】
プリパルスシーケンス部210の各プリパルスは、ユーザから入力されるスキャンパラメータに従って、印加される。ここで、ユーザから入力されるスキャンパラメータは、オフセット周波数ΔF、強度(フリップアングルFA)、Durationまたはバンド幅(BW)である。
【0025】
ここで、自由水プロトンと蛋白結合水プロトンとの共振周波数帯域について図3を用いて説明する。図3において、701は自由水プロトンの共振周波数帯域であり、702は蛋白結合水プロトンの共振周波数帯域である。MTCパルス213では、蛋白結合水プロトンのみを励起する。このため、MTCパルス213の照射周波数は、蛋白結合水プロトンの共振周波数帯域702内で、自由水プロトンの共振周波数帯域701外の所定の周波数に設定する。
【0026】
MTCパルス213の照射周波数は、図3に示すように、例えば、自由水プロトンの共振周波数帯域701から703だけオフセットさせた照射周波数704に設定される。なお、励起された磁化は、一定の確率で周囲のプロトンと磁化の転移(MT)を起こす。この状態でクラッシャー傾斜磁場パルス214を印加することにより、筋肉や脳実質のようにMTが盛んな組織は抑制され、MTの少ない血液はあまり抑制されない。これにより、血管のコントラストが向上する。
【0027】
ところが、図3に示すように、蛋白結合水プロトンの共振周波数帯域702は、自由水プロトンの共振周波数帯域701に比較して広い。水と脂肪の共振周波数差は約3.5ppmであるため、脂肪の共振周波数帯域も蛋白結合水プロトンの共振周波数帯域702内に入る。従って、FatSatパルス201によっても、蛋白結合水内のプロトンが励起され、MTが発生する。このため、プリパルスシーケンス部210において、FatSatパルス211とMTCパルス213とが印加される場合、再構成されるMR画像には、MTCパルス213によるMT効果に加え、FatSatパルス211によるMT効果も発生する。
【0028】
本実施形態の制御部110は、プリパルスシーケンス部210において、MTCパルス213以外の他のプリパルスも印加される場合であっても、ユーザが設定したMTCパルス213のスキャンパラメータに従って、MTCパルスが単独で印加された場合に得られるMT効果(目標MT効果)が得られるよう、ユーザが設定したMTCパルス213のスキャンパラメータを補正する。
【0029】
図4は、これを実現する本実施形態の制御部110の機能ブロック図である。本図に示すように、本実施形態の制御部110は、パルスシーケンスとスキャンパラメータに従って各部を動作させる計測部310と、信号処理部109を介して得た信号から画像を再構成する画像再構成部320とを備える。計測部310は、ユーザからスキャンパラメータの入力を受け付ける受付部311と、受付部311で受け付けたスキャンパラメータから制御信号を生成する生成部312と、生成部312が生成した制御信号を用い、パルスシーケンスに従って傾斜磁場電源106、RF送信部107を動作させる動作制御部313と、受付部311で受け付けたMTCパルスのスキャンパラメータを補正する補正部314と、を備える。
【0030】
受付部311は、ユーザから操作部112を介して入力されたスキャンパラメータを受け付け、制御部110が備える記憶部(不図示)に記憶する。入力されるプリパルスのスキャンパラメータには、フリップアングルFA、オフセット周波数ΔF、Durationまたはバンド幅BW等がある。
【0031】
生成部312は、記憶部に格納されたスキャンパラメータで特定される仕様で傾斜磁場パルスおよびRFパルスが印加され、パルスシーケンスが実行されるよう、傾斜磁場電源106およびRF送信部107に出力する制御情報を生成する。MTCパルスの場合、フリップアングルFAから、そのフリップアングルFAを実現するRF照射ゲインを決定し、オフセット周波数ΔFから、照射周波数を決定する。
【0032】
動作制御部313は、生成部312が生成した制御情報に従って傾斜磁場電源106およびRF送信部107に制御信号を出力し、これらの動作を制御する。プリパルスの場合、生成部312が決定したRF照射ゲインおよび照射周波数でパルスシーケンスに指定された順にRFパルスを照射するようRF送信部107を制御する。
【0033】
補正部314は、受付部311が受け付けた各プリパルスのスキャンパラメータを用い、MTCパルスのスキャンパラメータ(MTCパラメータ)を補正する。ここでは、上述のように、プリパルスシーケンス部210において印加が予定される全プリパルスによって、目標MT効果が得られるよう、MTCパラメータを補正する。
【0034】
本実施形態の制御部110は、CPUとメモリと記憶装置とを備え、記憶装置に格納されたプログラムをメモリにロードしてCPUが実行することにより、上記各機能は実現される。
【0035】
本実施形態の計測部310による計測処理の流れを説明する。図5は、本実施形態の計測処理の処理フローである。まず、ユーザは、操作部112を介してスキャンパラメータを入力する。受付部311は、スキャンパラメータの入力を受け付けると、記憶部に記憶する(ステップS1001)。
【0036】
スキャンパラメータが記憶部に記憶されると、補正部314は、MTCパラメータを補正し、記憶部のMTCパラメータを補正後のものに置き換える(ステップS1002)。
【0037】
補正を終えると、生成部312は、記憶部に記憶されるスキャンパラメータから各プリパルスを含むRFパルス、傾斜磁場パルスの制御情報を生成する(ステップS1003)。
【0038】
制御情報の生成を終えると、動作制御部313は、パルスシーケンスと制御情報とに従い、MRI装置100の各部に指示を出力し、計測を実行する(ステップS1004)。
【0039】
次に、本実施形態の補正部314によるMTCパラメータの補正処理を説明する。
【0040】
補正処理の説明に先立ち、まず、MTCパラメータによるMT効果について説明する。MT効果gは、制御対象の組織の抑制の度合いを示すもので、MTCパルスを印加する場合としない場合との信号強度比で表す。MTCパルスを印加しない場合の信号強度SIMT−OFFと、MTCパルスを印加する場合の信号強度SIMT−ONとを用い、以下の式(1)で定量的に算出する。
g=(SIMT−OFF−SIMT−ON)/SIMT−OFF (1)
詳細は、以下の非特許文献1に記載されている。
〔非特許文献1〕Fundamental study of Magnetization Transfer Contrast(MTC) Effect : Optimization of MT Pulse Condition Using Experimental Phantom, Hideaki Kawata,et al., JJRT.,Vol.60,No.10,1437−1443(2004)
【0041】
図6は、MTCパルスのフリップアングルFA[deg]毎の、オフセット周波数ΔF[Hz]とMT効果gとの関係を示すグラフである。横軸はオフセット周波数ΔF[Hz]であり、縦軸はMT効果gを示す。このように、MT効果gは、MTCパルスのオフセット周波数ΔFを変化させることにより変化する。また、MTCパルスのフリップアングルFAを変化させることにより変化する。従って、MT効果gは、オフセット周波数ΔFとフリップアングルFAとを変数とする関数(MT効果関数)G(ΔF、FA)として規定することができる。
【0042】
本実施形態の補正部314による補正処理では、まず、オフセット周波数ΔFとフリップアングルFAとを変数とする関数として表されるMT効果関数G(ΔF、FA)を、予め実験等で求める。MT効果関数G(ΔF、FA)は、例えば、被検体101を実際に載置し、MTCパルスのオフセット周波数ΔFとフリップアングルFAとを変化させ、図6に示すグラフを生成し、それを近似することにより決定する。決定したMT効果関数G(ΔF、FA)は、制御部110が備える記憶部に保持する。
【0043】
本実施形態の補正は、このMT効果関数G(ΔF、FA)を用いて行う。図7は、本実施形態の補正部314による補正処理の処理フローである。本実施形態では、MTCパラメータのオフセット周波数ΔFとフリップアングルFAのいずれか一方の値を、他のプリパルスによるMT効果と合わせて目標MT効果を得ることができるよう補正する。
【0044】
受付部311が受け付けたスキャンパラメータを記憶部に記憶すると、または、記憶後、ユーザから補正処理開始の指示を受け付けると、補正部314は、MTCパルスによるMT効果gMTC(=G(ΔFMTC、FAMTC))を算出する(ステップS1101)。ここで、ΔFMTCおよびFAMTCは、それぞれ、入力されたMTCパラメータのオフセット周波数およびフリップアングルである。
【0045】
次に、補正部314は、MTC以外のプリパルスのオフセット周波数ΔFOTHとフリップアングルFAOTHとを用い、MTC以外のプリパルスによるMT効果gOTH(=G(ΔFOTH、FAOTH))を算出する(ステップS1102)。なお、MTC以外のプリパルスが複数ある場合は、各プリパルスによるMT効果を合算する。
【0046】
gMTCとgOTHとを得ると、補正部314は、以下の式(2)または(3)により、MTCパラメータのオフセット周波数の補正値ΔFCORまたはフリップアングルの補正値FACORを算出する(ステップS1104)。なお、オフセット周波数ΔFとフリップアングルFAとは、いずれか一方を、入力されたスキャンパラメータ値に固定し、他方を算出する。
G(ΔFCOR、FAMTC)=gMTC−gOTH (2)
G(ΔFMTC、FACOR)=gMTC−gOTH (3)
【0047】
ステップS1104で算出した補正値で、記憶部に記憶されているMTCパラメータを置き換える(ステップS1105)。
【0048】
以上の補正部314の補正処理により、記憶部に記憶されているMTCパラメータは補正値に置き換えられ、生成部312は、補正後のMTCパラメータ(補正後のオフセット周波数、入力されたフリップアングル、Duration又はバンド幅の組、および、補正後のフリップアングル、入力されたオフセット周波数、Durationまたはバンド幅の組のいずれか)を用い、上述のように制御情報を生成する。
【0049】
なお、上記のステップS1102およびS1103は、いずれを先に計算してもよい。
【0050】
以上説明したように、本実施形態によれば、補正部314により、他のプリパルスにより得られるMT効果分、得られるMT効果が低減するようMTCパラメータが補正される。そして、補正後のMTCパラメータに従って、生成部312により制御情報が生成され、動作制御部313により各部が制御される。従って、最終的に得られるMT効果は、ユーザが入力したMTCパルスにより得られる目標MT効果となる。
【0051】
従って、本実施形態によれば、MTCパルス以外のプリパルスが印加される場合であっても、MTCパルスのスキャンパラメータとして入力されたパラメータから期待される目標MT効果を得ることができる。すなわち、ユーザが意図したMT効果による画像コントラストを得ることができる。また、本実施形態によれば、プリパルスの種類と数とによらず、目標MT効果を得ることができる。従って、プリパルスシーケンスで印加されるプリパルスの種類が異なる場合であっても、また、各プリパルスシーケンスにおいて、印加するプリパルスを変更する場合であっても、同じ目標MT効果が得られ、画像コントラストが安定する。すなわち、プリパルスシーケンスにおいて印加するプリパルスによらず、得られる画像の質が安定する。また、それぞれ異なるプリパルスを印加して得た複数の画像の差分処理を行う場合、元画像のコントラストが安定するため、MT効果の違いによる差分不良の発生を抑制することができる。
【0052】
なお、上記実施形態では、オフセット周波数ΔFおよびフリップアングルFAで定まるMT効果を示すMT効果関数Gは1種類としているが、撮像部位または撮像対象組織毎に関数Gを備えるよう構成してもよい。
【0053】
撮像部位、撮像対象組織毎にMT効果関数Gを備える場合、補正部314は、ユーザが撮像対象、組織として入力したパラメータに従って、使用する関数を決定する。また、補正部314は、設定される受信コイルの種類により、MT効果関数Gを決定するよう構成してもよい。
【0054】
MT効果は組織により変化するため、撮像部位、撮像対象組織毎にMT効果関数Gを備える場合、部位、組織に応じたMT効果関数Gを用いることにより、より正確なMT効果を計算できる。従って、最終的に得られる画像のコントラスト、画質がより安定する。
【0055】
<<第二の実施形態>>
次に、本発明を適用する第二の実施形態について説明する。本実施形態のMRI装置100の構成は、基本的に第一の実施形態と同様である。また、本実施形態の計測部310による計測処理も基本的に第一の実施形態と同様である。ただし、補正部314による補正処理が異なる。
【0056】
第一の実施形態では、予めMT効果関数gを決定し、それを用いて、全プリパルスにより目標MT効果を実現するようMTCパラメータを補正するが。本実施形態では、実際に計測を行った結果を用いて、全プリパルスにより目標MT効果を実現するようMTCパラメータを補正する。
【0057】
以下、本実施形態について、第一の実施形態と異なる構成である補正部314による補正処理に主眼をおいて説明する。本実施形態の補正部314は、MT効果関数Gを用いて、MT効果を算出するのではなく、実際に印加するプリパルスを変化させてプリスキャンを行い、その結果から、MTCパルス単独によるMT効果と、他のプリパルスのみによるMT効果を算出し、全プリパルスを印加して目標MT効果を得るMTCパラメータを決定する。
【0058】
なお、本実施形態においても、第一の実施形態同様、予めオフセット周波数ΔFおよびフリップアングルFAを変数とするMT効果関数Gを算出しておく。また、MT効果関数Gは、第一の実施形態同様、撮影対象部位、組織毎に用意しておいてもよい。
【0059】
図8は、本実施形態の補正部314による補正処理の処理フローである。受付部311が受け付けたスキャンパラメータを記憶部に記憶すると、または、記憶後、ユーザから補正処理開始の指示を受け付けると、補正部314は、生成部312に、受け付けたスキャンパラメータから制御情報を生成させる(ステップS1201)。
【0060】
そして、生成した制御情報を用い、MTCパルスのみ印加して計測を実行し、収集したエコー信号から、その信号強度SIMTCONを得る(ステップS1202)。
【0061】
次に、全てのプリパルスを印加して、計測を実行し、収集したエコー信号から、その信号強度SIONを得る(ステップS1203)。また、全てのプリパルスを印加せず、計測を実行し、収集したエコー信号から、その信号強度SIOFFを得る(ステップS1204)。
【0062】
各信号強度SION、SIOFF、SIMTCONを得ると、補正部314は、式(1)を用い、MTCパルスによるMT効果gMTCと、MTC以外のプリパルスによるMT効果gOTHとを算出する(ステップS1205、ステップS1206)。MTCパルスによるMT効果gMTCは、式(1)において、SIMT−OFFにSIOFFを、SIMT−ONにSIMTCONを代入することにより算出する。また、MTC以外のプリパルスによるMT効果gOTHは、同様に、SIMT−OFFにSIMTCONを、SIMT−ONにSIONを代入することにより算出する。
【0063】
補正部314は、このgMTCおよびgOTHと、予め用意したMT効果関数Gとを用い、第一の実施形態の式(2)または(3)により、MTCパラメータのオフセット周波数の補正値ΔFCORまたはフリップアングルの補正値FACORを算出する(ステップS1207)。なお、本実施形態においても、オフセット周波数ΔFとフリップアングルFAとは、いずれか一方を、入力されたスキャンパラメータ値に固定し、他方を算出する。
【0064】
そして、ステップS1206で算出した補正値で、記憶部に記憶されているMTCパラメータを置き換える(ステップS1208)。
【0065】
以上の補正部314の補正処理により、記憶部に記憶されているMTCパラメータは補正値に置き換えられ、生成部312は、補正後のMTCパラメータを用い、上述のように制御情報を生成する。
【0066】
なお、上記のステップS1202からS1204の実行順、および、ステップS1205とS1206の実行順は問わない。
【0067】
以上説明したように、本実施形態によれば、第一の実施形態同様の効果を得ることができる。さらに、実際にプリスキャンにより計測を行った結果から、目標MT効果および他のプリパルスによるMT効果を得ている。このように、本実施形態では、実測結果を用いて補正に用いるMT効果を算出しているため、例えば、組織の状態などによるMT効果の誤差を抑えることができる。このため、より高い精度で補正値算出に用いるMT効果を得ることができる。従って、より高い精度で補正値を得ることができ、最終的に得られる画像のコントラストもさらに安定する。
【0068】
なお、本実施形態では、プリスキャンで、全てのプリパルスを印加する、全てのプリパルスを印加しない、MTCパルスのみ印加する、の3種のプリパルスシーケンスを用い、それぞれ計測を行っているが、行う計測の種類はこれに限られない。目標MT効果、および、MTCパルス以外のプリパルスによるMT効果を算出できればよい。
【0069】
例えば、全てのプリパルスを印加する、全てのプリパルスを印加しない、MTCパルス以外のプリパルスのみを印加する、の3種類のプリパルスシーケンスを用い、計測を行ってもよい。MTCパルス以外のプリパルスのみを印加するプリスキャンにより信号強度をSIOTHONとすると、SIOFFとSIOTHONとの差を取ることにより、MTC以外のプリパルスによるMT効果gOTHが算出できる。
【0070】
<<第三の実施形態>>
次に、本発明を適用する第三の実施形態を説明する。本実施形態のMRI装置は基本的に第一の実施形態と同様の構成を有する。また、本実施形態の計測部310による計測処理も基本的に第一の実施形態と同様である。ただし、本実施形態では、補正部314が算出した補正値の適否を検証し、調整する。
【0071】
以下、本実施形態について、第一の実施形態と異なる構成に主眼をおいて説明する。図9は、本実施形態の制御部110の機能ブロック図である。本実施形態では、上記機能を実現するため、補正部314は、調整部315を備える。
【0072】
本実施形態の補正部314は、第一の実施形態同様、MT効果関数Gを用い、補正値を算出する。その後、調整部315により、算出した補正値を調整する調整処理を行う。そして、調整後の補正値で記憶部のMTCパラメータを置き換える。
【0073】
調整部315では、補正部314が第一の実施形態で算出した補正値の適否を判別し、適切な値となるまで、調整を繰り返す。判別は、補正値により得られるMT効果gが予め定めた閾値以内であるか否かにより行う。調整は、補正値を予め定められた調整量分変化させることにより行う。なお、調整回数(繰り返し回数)の上限を定めておくよう構成してもよい。
【0074】
以下、本実施形態の補正部314による補正処理について、調整部315による調整処理に主眼をおいて説明する。図10は、本実施形態の補正部314による補正処理の処理フローである。上述のように、補正部314は、オフセット周波数ΔFおよびフリップアングルFAのいずれか一方を補正する。ここでは、一例として、フリップアングルFAを補正し、繰り返し回数の上限は設けない場合を例にあげて説明する。
【0075】
なお、本実施形態においても、第一の実施形態同様、予めオフセット周波数ΔFおよびフリップアングルFAを変数とするMT効果関数Gを算出しておく。また、MT効果関数Gは、第一の実施形態同様、撮影対象部位、組織毎に用意しておいてもよい。
【0076】
受付部311がスキャンパラメータを記憶部に記憶すると、補正部314は、第一の実施形態の手順で、ステップS1104まで実行し、MTCパラメータの補正値FACORを算出する(ステップS1301)。本実施形態では、このとき、算出した補正値FACORを補正MTCパラメータとして先に記憶されているスキャンパラメータとは別に記憶部に記憶する(ステップS1302)。
【0077】
次に、調整部315は、生成部312に、ユーザが入力したスキャンパラメータから制御情報を生成させる(ステップS1303)。そして、調整部315は、その制御情報を用い、MTCパルスのみ印加して計測を実行し、収集したエコー信号からその信号強度SIMTCONを得る(ステップS1304)。
【0078】
その後、調整部315は、生成部312に、第二の制御情報を生成させる(ステップS1305)。第二の制御情報は、フリップアングルFAについては算出した補正値FACORを用い、他のスキャンパラメータについてはユーザが入力した値を用い、生成される。そして、第二の制御情報を用い、全てのプリパルスを印加して、計測を実行し、収集したエコー信号から、その信号強度SIONCORを得る(ステップS1306)。
【0079】
調整部315は、式(1)のSIMT−OFFにSIMTCONを、SIMT−ONにSIONCORを代入し、MT効果gOTHを算出する(ステップS1307)。ここで算出されるMT効果gOTHは、MTCパルス以外のプリパルスによるMT効果となる。すなわち、補正値が正確であればあるほど、補正値を用いて、全プリパルスを印加して計測した場合の信号強度SIONCORは、ユーザが設定したMTCパラメータで、MTCパルスを単独で印加して計測した場合の信号強度SIMTCONに近づき、これらを用いて算出されるMTCパルス以外のプリパルスによるMT効果gOTHは、0に近づく。
【0080】
調整部315は、算出したMT効果gOTHの絶対値が予め定めた閾値A以下であるか否かを判別する(ステップS1308)。閾値A以下であれば、適切と判別し、その時点の補正値FACORを、調整後の補正値と確定し、MTCパラメータを補正値FACORに置き換え(ステップS1309)、補正処理を終了する。
【0081】
一方、閾値Aより大きい場合、調整部315は、MT効果gOTHの正負を判別する(ステップS1311)。負の場合、すなわち、SIONの方が大きい場合、現在の補正値FACORでは、MTCパルスによるMT効果が不足しているため、FACORに予め定められた調整値dFAを加算し、ステップS1302で記憶した補正値を更新する(ステップS1312)。そして、ステップS1305へ移行する。
【0082】
また、ステップS1311において、負でない場合、すなわち、SIMTONがSIONより小さい場合、現在の補正値FACORでは、MTCパルスによるMT効果が過剰であるため、調整部315は、FACORから予め定められた調整値dFAを減算し、ステップS1302で記憶した補正値を更新する(ステップS1313)。そして、ステップS1305へ移行する。
【0083】
本実施形態の補正部314は、調整部315による以上の調整処理により、生成した補正値FACORの適否を検証し、それに従って補正値FACORを調整し、調整後の補正値FACORを記憶部のMTCパラメータと置き換える。それを受けて、生成部312は、補正後のMTCパラメータを用い、他の実施形態同様、制御情報を生成し、それを用いて動作制御部313は計測を行う。
【0084】
なお、上述のように、ステップS1305からステップS1316の調整処理の繰り返し回数に上限Nを設けてもよい。この場合、補正部314は、調整処理を繰り返す毎に回数をカウントする。そして、上限N回目でもステップS1307で算出したMT効果gOTHの絶対値が予め定めた閾値A以下とならない場合、適切な補正値が得られていないことを意味するワーニングおよび計測の実行の有無を受け付ける表示を表示部111に行う。
【0085】
そして、補正部314は、ユーザからの入力を待ち、実行の指示を受け付けた場合、その時点の補正値を、調整後の補正値と確定し、MTCパラメータを補正値に置き換え、補正処理を終了する。それを受けて、生成部312は、補正後のMTCパラメータを用い、他の実施形態同様、制御情報を生成し、動作制御部313は計測を行う。
【0086】
一方、実行しない旨の指示を受け付けた場合、補正部314は、ユーザに再度、スキャンパラメータの入力を促す。ユーザが新たにスキャンパラメータを入力すると、受付部311がそれを受け付け、上述の補正処理を開始する。
【0087】
なお、上記調整処理では、オフセット周波数ΔFは固定し、フリップアングルFAを補正および調整する場合を例にあげて説明したが、オフセット周波数ΔFを補正する場合も同様である。ただし、MT効果が不足している場合は、上記ステップS1312において、オフセット周波数ΔFCORから予め定められた調整値dΔFを減算し、一方、MT効果が過剰である場合、上記ステップS1316において、オフセット周波数ΔFCORに予め定めた調整値dΔFを加算する。
【0088】
以上説明したように、本実施形態によれば、第一の実施形態と同様、MTCパルス以外のプリパルスが印加される場合であっても、そのプリパルスの種類と数によらず、ユーザの意図したMT効果を得ることができ、安定した画像コントラストを得ることができる。さらに、本実施形態によれば、得られた補正値をさらに調整するため、より精度の高い補正値を得ることができる。本実施形態によれば、このようにして得たスキャンパラメータを用いて計測を実行するため、画像コントラストはより安定する。
【0089】
<<第四の実施形態>>
次に、本発明を適用する第四の実施形態を説明する。本実施形態のMRI装置は、基本的に第二の実施形態と同様の構成を有する。また、本実施形態の計測部310による計測処理も基本的に第二の実施形態と同様である。ただし、本実施形態では、補正部314が算出した補正値の適否を検証し、補正部314にフィードバックする。
【0090】
以下、本実施形態について、第二の実施形態と異なる構成に主眼をおいて説明する。図11は、本実施形態の制御部110の機能ブロック図である。本実施形態では、上記機能を実現するため、補正部314は、検証部316を備える。
【0091】
本実施形態の補正部314は、第二の実施形態同様、プリスキャンにより補正値を算出し、記憶部に記憶されているスキャンパラメータを算出結果で更新する。プリスキャンは、記憶部に記憶されているスキャンパラメータを用いて実行する。そして、算出結果について、検証部316にその適否を判別させる。判別結果が不適の場合、補正後のMTCパラメータを用い、再度同様の手法で補正値を算出する。本実施形態においても、補正の繰り返し回数の上限を定めておいてもよい。
【0092】
検証部316は、補正部314がMTCパラメータの補正値を算出する毎に、当該補正値の適否を判別する。判別は、補正値により得られるMT効果gが予め定めた閾値以内であるか否かにより行う。
【0093】
以下、本実施形態の補正部314による補正処理について、検証部316による検証処理に主眼をおいて説明する。図12は、本実施形態の補正部314による補正処理の処理フローである。上述のように、補正部314は、オフセット周波数ΔFおよびフリップアングルFAのいずれか一方を補正する。以下では、一例として、フリップアングルFAを補正し、繰り返し回数の上限を設けない場合を例にあげて説明する。
【0094】
なお、本実施形態においても、第一の実施形態同様、予めオフセット周波数ΔFおよびフリップアングルFAを変数とするMT効果関数Gを算出しておく。また、MT効果関数Gは、第一の実施形態同様、撮影対象部位、組織毎に用意しておいてもよい。
【0095】
受付部311が、受け付けたスキャンパラメータを記億部に記憶すると、または、記憶後、ユーザから補正処理開始の指示を受け付けると、第二の実施形態の補正処理のステップS1201からステップS1208を実行し、記憶部に記憶されているスキャンパラメータを補正値FACORに置き換える(ステップS1201〜ステップS1208)。
【0096】
次に、検証部316は、補正値検証処理を行う。すなわち、検証部316は、生成部312に、補正後のフリップアングルFACORとユーザが設定した他のMTCパラメータから制御情報を生成させる(ステップS1401)。そして、生成した制御情報を用い、全てのプリパルスを印加して計測を実行し、収集したエコー信号から、その信号強度SIONCORを得る(ステップS1402)。
【0097】
検証部316は、式(1)のSIMT−OFFに、補正処理の途中で得たSIMTCONを、SIMT−ONにSIONCORを代入し、MT効果gOTHを算出する(ステップS1403)。ここで算出されるMT効果gOTHは、第三の実施形態同様、MTCパルス以外のプリパルスによるMT効果となる。すなわち、補正値が正確であればあるほど、補正値を用いて、全プリパルスを印加して計測した場合の信号強度SIONCORは、ユーザが設定したMTCパラメータで、MTCパルスを単独で印加して計測した場合の信号強度SIMTCONに近づき、これらの値から算出されるMTCパルス以外のプリパルスによるMT効果gOTHは、0に近づく。
【0098】
検証部316は、算出したMT効果gOTHの絶対値が予め定めた閾値A以下であるか否かを判別する(ステップS1404)。閾値A以下であれば、適切と判別する。補正部314は、検証部316の検証結果を受け、その時点の補正値FACORを、調整後の補正値と確定し、補正処理を終了する。
【0099】
一方、閾値Aより大きい場合、検証部316は、不適と判別する。この場合、補正部314は、検証部316の検証結果を受け、全プリパルス印加時の信号強度SIONを補正後のMTCパラメータから算出した制御情報を用いて計測した信号強度SIONCORとし(ステップS1405)、ステップS1206へ移行し、処理を繰り返す。
【0100】
本実施形態の補正部314は、検証部316による以上の検証処理により、生成した補正値の適否を検証し、それに従って、補正値の算出を繰り返し、補正値の精度を高める。補正値が所定の精度となると、それを受けて、生成部312は、補正後のMTCパラメータを用い、他の実施形態同様、制御情報を生成し、動作制御部313は各部を制御し、計測を行う。
【0101】
なお、本実施形態においても、第三の実施形態同様、ステップS1206からステップS1405の検証処理の繰り返し回数の上限Nを設けてもよい。この場合、不適と判別された後、補正部314は、繰り返し回数を越えているか否かを判別し、越えていなければ、上記同様ステップS1206へ戻る。
【0102】
一方、越えている場合は、第三の実施形態同様、補正部314は、適切な補正値を得られていないことを意味するワーニングおよび処理の実行の有無を受け付ける表示を表示部111に行い、ユーザからの指示を待つ。そして、実行の指示を受け付けると、補正部314は、補正処理を終了する。一方、実行しない旨の指示を受け付けると、補正部314は、ユーザに再度、スキャンパラメータの入力を促す。ユーザが新たにスキャンパラメータを入力すると、受付部311がそれを受け付け、上述の補正処理を開始する。
【0103】
なお、上記検証処理では、オフセット周波数ΔFは固定し、フリップアングルFAを補正および調整する場合を例にあげて説明したが、オフセット周波数ΔFを補正する場合も同様である。
【0104】
以上説明したように、本実施形態によれば、第二の実施形態と同様、MTCパルス以外のプリパルスが印加される場合であっても、そのプリパルスの種類と数によらず、ユーザの意図したMT効果を得ることができる。さらに、本実施形態によれば、得られた補正値の適否を検証し、その結果をフィードバックし、補正値の算出を繰り返すため、より精度の高い補正値を得ることができる。本実施形態では、このようにして得たスキャンパラメータを用いて計測を実行するため、画像コントラストはより安定する。
【0105】
なお、上記各実施形態では、プリパルスのスキャンパラメータとしてオフセット周波数が設定されるよう構成しているが、設定されるスキャンパラメータはこれに限られない。例えば、ユーザに励起位置を入力させるよう構成してもよい。この場合、受付部311は、入力された励起位置を受け付け、オフセット周波数を算出する。すなわち、オフセット周波数は、撮像中心の共振周波数に対する周波数差となる。
【符号の説明】
【0106】
100:MRI装置、101:被検体、102:磁石、103:傾斜磁場コイル、104:RFコイル、105:RFプローブ、106:傾斜磁場電源、107:RF送信部、108:信号検出部、109:信号処理部、110:制御部、111:表示部、112:操作部、113:ベッド、200:パルスシーケンス、210:プリパルスシーケンス部、211:FatSatパルス、212:スポイラ傾斜磁場パルス、213:MTCパルス、214:クラッシャー傾斜磁場パルス、220:本計測シーケンス部、221:傾斜磁場パルス、222:RFパルス、223:傾斜磁場パルス、224:エコー信号、225:傾斜磁場パルス、310:計測部、311:受付部、312:生成部、313:動作制御部、314:補正部、315:調整部、316:検証部、320:画像再構成部、701:自由水プロトンの共振周波数帯域、702:蛋白結合水プロトンの共振周波数帯域、703:オフセット、704:MTCパルスの照射周波数
【技術分野】
【0001】
本発明は核磁気共鳴(以下、NMRという)現象を利用した磁気共鳴撮像(Magnetic Resonance Imaging、以下、MRIという)技術に関し、特に、本計測に先んじて印加する高周波磁場(RF)パルスであるプリパルスの印加制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
MRIは、被検体、特に人体の組織を構成する原子核スピンが発生するNMR信号(エコー信号)を計測し、形態や機能を2次元的あるいは3次元的に画像化する技術である。撮像においては、エコー信号には、傾斜磁場によって異なる位相エンコードが付与されるとともに周波数エンコードされた時系列データとして計測される。計測されたエコー信号は、2次元または3次元フーリエ変換され、画像に再構成される。
【0003】
MRIでは、特定領域のプロトンや、特定分子のプロトンの信号を選択的に抑制して画質を改善するため、本計測に先んじて、RFパルスを印加する撮像手法がある。本計測に先んじて印加するRFパルスをプリパルスと呼ぶ。プリパルスには、例えば、脂肪を抑制するFatSatパルス、CHESSパルス、流入してくる静脈血の信号を抑制することにより動脈の識別能を高めるプリサチパルス、筋肉や脳実質の信号を抑制する磁化転移コントラスト(magnetization transfer contrast)(以下、MTC)パルス等がある。
【0004】
MTCパルスは、筋肉や脳実質の信号を抑制することにより血管の描出能を向上させることができる。また、CHESSパルスも、脂肪の信号を抑制することにより血管の描出能を高めることができる。このため、CHESSパルス、MTCパルス、プリサチパルス等は、FBI(fresh blood imaging)、3D TOF撮像といった血管、血流の撮像に用いられる。また、例えば、心時相との同期撮影を行うものでは、繰り返し時間TRやエコー時間TEに制約があり、コントラストが低下するため、これを補うため、MTCパルスと脂肪抑制パルスとが併用される(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開11−299753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
プリパルスを印加するシーケンスでは、プリパルスにより抑制したい組織内のプロトンのみを励起し、その後、クラッシャーパルスを印加することにより、当該組織からの信号を抑制する。このため、プリパルスの照射周波数は、抑制したい信号の共振周波数帯域に合わせ、かつ、抑制したくない信号の共振周波数帯域からずらした共振周波数に設定される。
【0007】
MTCパルスが抑制する、筋肉や脳実質などの組織に多く存在する蛋白に結合したプロトン(蛋白結合水プロトン)の共振周波数帯域は、血液のような自由なプロトン(自由水プロトン)の共振周波数帯域に比べて広い。このため、プリパルスシーケンスにおいて、他の組織を抑制するプリパルスが印加されると、これらのプリパルスによっても、蛋白結合水プロトンが抑制されるMT効果が発生する。
【0008】
このMT効果は、画像全体のコントラストに影響を及ぼす。従って、プリパルスシーケンスにおいて、MTCパルスが他のプリパルスと併用される場合、他のプリパルスにMT効果も加わり、ユーザが意図した画像コントラストを得られない可能性が高い。また、使用するプリパルスが異なる複数の撮像を行う場合、得られるMT効果が各撮像で異なり、画像全体のコントラストが安定しない。特に、FBIなどの差分処理を行う撮像において、差分を行う元画像の間で印加するプリパルスが異なる場合、MT効果の違いにより、予期せぬ信号強度の差が発生し、差分結果に影響を与えることがある。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、印加されるプリパルスの組合せによらず、安定した画像コントラストを得る技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、プリパルスシーケンスにおいて、MTCパルス以外のプリパルスを印加する場合、ユーザにより設定されたスキャンパラメータに従って、MTCパルスのみを印加する場合のMT効果を得られるよう、他のプリパルスによるMT効果を加味して入力されたスキャンパラメータを補正する。補正は、予め用意するMT効果を特定する関数、または、プリスキャン結果を用いる。
【0011】
具体的には、所定のパルスシーケンスに従って、静磁場中におかれた被検体に高周波磁場を照射する照射手段と前記被検体からのエコー信号を受信する受信手段との動作を制御する制御手段を備える磁気共鳴イメージング装置であって、前記パルスシーケンスは、磁化転移コントラストパルス(MTCパルス)を含む複数のプリパルスを印加するプリパルスシーケンスを備え、前記制御手段は、前記MTCパルスのパラメータ値を補正する補正手段を備え、補正後の前記MTCパルスのパラメータ値を用いて前記プリパルスシーケンスにおいて前記MTCパルスが照射されるよう前記照射手段を制御し、前記補正手段は、前記MTCパルスをユーザが設定したMTCパルスのパラメータ値に従って単独でプリパルスとして印加した場合に得られる目標磁化転移効果が、全プリパルスの印加により得られるよう、前記MTCパルスのパラメータ値を補正することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置を提供する。
【0012】
また、所定のパルスシーケンスに従って、静磁場中におかれた被検体に高周波磁場を照射する照射手段と前記被検体からのエコー信号を受信する受信手段との動作を制御する制御手段を備える磁気共鳴イメージング装置における動作制御方法であって、前記照射手段で照射する高周波磁場を特定するパラメータの入力を受け付けるパラメータ入力受付ステップと、前記受け付けたパラメータを補正する補正ステップと、前記補正後のパラメータを用い、前記照射手段を制御するとともに、前記受信手段の動作を制御し、計測を行う計測ステップと、を備え、前記補正ステップでは、前記MTCパルスをユーザが設定したMTCパルスのパラメータ値に従って単独でプリパルスとして印加した場合に得られる目標磁化転移効果が、全プリパルスの印加により得られるよう、前記MTCパルスのパラメータ値が補正されることを特徴とする動作制御方法を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、印加されるプリパルスの組合せによらず、MT効果が安定し、安定した画像コントラストを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第一の実施形態のMRI装置の機能ブロック図である。
【図2】第一の実施形態のパルスシーケンスを説明するための説明図である。
【図3】自由水プロトンと蛋白結合水プロトンとの共振周波数帯域について説明するための説明図である。
【図4】第一の実施形態の制御部110の機能ブロック図である。
【図5】第一の実施形態の計測処理のフローチャートである。
【図6】MTCパルスのフリップアングルとオフセット周波数とMT効果との関係を示すグラフである。
【図7】第一の実施形態の補正処理のフローチャートである。
【図8】第二の実施形態の補正処理のフローチャートである。
【図9】第三の実施形態の制御部110の機能ブロック図である。
【図10】第三の実施形態の補正処理のフローチャートである。
【図11】第四の実施形態の制御部110の機能ブロック図である。
【図12】第四の実施形態の補正処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<<第一の実施形態>>
以下、本発明を適用する第一の実施形態について説明する。以下、本発明の実施形態を説明するための全図において、同一機能を有するものは同一符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0016】
まず、本実施形態のMRI装置の構成について説明する。図1は本実施形態のMRI装置100の機能ブロック図である。本実施形態のMRI装置100は、磁石102と、傾斜磁場コイル103と、高周波磁場(RF)コイル104と、RFプローブ105と、傾斜磁場電源106と、RF送信部107と、信号検出部108と、信号処理部109と、制御部110と、表示部111と、操作部112と、ベッド113とを備える。
【0017】
磁石102は、被検体101の周囲の領域(検査空間)に静磁場を発生する。傾斜磁場コイル103は、X、Y、Zの3方向のコイルで構成され、傾斜磁場電源106からの信号に応じて、それぞれ、検査空間に傾斜磁場パルスを印加する。RFコイル104は、RF送信部107からの信号に応じて検査空間にRFパルスを印加(照射)する。RFプローブ105は、被検体101が発生するMR信号(エコー信号)を検出する。RFプローブ105で受信したエコー信号は、信号検出部108で検出され、信号処理部109で信号処理され、制御部110に入力される。制御部110は、各部の動作を制御するとともに、入力された信号から画像を再構成し、表示部111に表示する。また、ベッド113は被検体が横たわるためのものである。
【0018】
なお、MRI装置100は、検査空間の静磁場不均一を補正するシムコイルと、シムコイルに電流を供給するシム電源とをさらに備えてもよい。
【0019】
現在MRIの撮像対象は、被検体102の主たる構成物質、プロトンである。プロトン密度の空間分布や、励起されたプロトンの緩和現象の空間分布を画像化することで、人体頭部、腹部、四肢等の形態または、機能を2次元もしくは3次元的に撮影する。
【0020】
撮像は、制御部110が、予め定められた制御のタイムチャート(パルスシーケンス)に従って上記各部の動作を制御することにより実現される。制御部110は、パルスシーケンスに従って、傾斜磁場電源106、RF送信部107、信号検出部108の動作を制御し、RFパルス、傾斜磁場パルスを印加するとともに、エコー信号を収集する。このとき、RFパルス、傾斜磁場パルスの印加量等は、ユーザが操作部112を介して設定するスキャンパラメータで決定される。
【0021】
本実施形態のパルスシーケンスは、画像再構成のためのエコー信号を収集する本計測を実行する本計測シーケンス部と、本計測に先立ち、様々な効果を与えるプリパルスを印加するプリパルスシーケンス部とを備える。本実施形態で実行されるパルスシーケンス200の一例を図2に示す。ここで、RF/Signal軸は、RFパルスの印加タイミングとエコー信号の発生タイミングを、Gx、Gy,Gz軸は、それぞれX、Y、Z方向の傾斜磁場の印加タイミングを示す。
【0022】
ここでは、プリパルスシーケンス部210において、脂肪を抑制するFatSatパルス211と、FatSatパルス211と蛋白結合水内のプロトンのみを励起するMTCパルス213との2種のプリパルスを印加するものを例示する。プリパルスシーケンス部210では、FatSatパルス211を印加し、残留横磁化を位相分散させるスポイラ傾斜磁場パルス212を各軸に印加する。次に、MTCパルス213を印加し、励起された磁化が一定の確率で周囲のプロトンと磁化の転移(MT)を起こした状態で、クラッシャー傾斜磁場パルス214を各軸に印加する。
【0023】
本計測シーケンス部220では、例えば、傾斜磁場パルス221とともに撮像対象領域のプロトンを励起するRFパルス222を印加する。そして、異なり位相エンコードを与える傾斜磁場パルス223を印加し、それぞれの位相エンコードで得られるエコー信号224を周波数エンコードを与える傾斜磁場パルス225を印加しながら検出する。なお、位相エンコードの数は通常1枚の画像あたり128、256、512等の値が選ばれる。各エコー信号は通常128、256、512、1024個のサンプリングデータからなる時系列信号として検出する。また、これらのデータをフーリエ変換(以下、FT)して1枚のMR画像が再構成される。
【0024】
プリパルスシーケンス部210の各プリパルスは、ユーザから入力されるスキャンパラメータに従って、印加される。ここで、ユーザから入力されるスキャンパラメータは、オフセット周波数ΔF、強度(フリップアングルFA)、Durationまたはバンド幅(BW)である。
【0025】
ここで、自由水プロトンと蛋白結合水プロトンとの共振周波数帯域について図3を用いて説明する。図3において、701は自由水プロトンの共振周波数帯域であり、702は蛋白結合水プロトンの共振周波数帯域である。MTCパルス213では、蛋白結合水プロトンのみを励起する。このため、MTCパルス213の照射周波数は、蛋白結合水プロトンの共振周波数帯域702内で、自由水プロトンの共振周波数帯域701外の所定の周波数に設定する。
【0026】
MTCパルス213の照射周波数は、図3に示すように、例えば、自由水プロトンの共振周波数帯域701から703だけオフセットさせた照射周波数704に設定される。なお、励起された磁化は、一定の確率で周囲のプロトンと磁化の転移(MT)を起こす。この状態でクラッシャー傾斜磁場パルス214を印加することにより、筋肉や脳実質のようにMTが盛んな組織は抑制され、MTの少ない血液はあまり抑制されない。これにより、血管のコントラストが向上する。
【0027】
ところが、図3に示すように、蛋白結合水プロトンの共振周波数帯域702は、自由水プロトンの共振周波数帯域701に比較して広い。水と脂肪の共振周波数差は約3.5ppmであるため、脂肪の共振周波数帯域も蛋白結合水プロトンの共振周波数帯域702内に入る。従って、FatSatパルス201によっても、蛋白結合水内のプロトンが励起され、MTが発生する。このため、プリパルスシーケンス部210において、FatSatパルス211とMTCパルス213とが印加される場合、再構成されるMR画像には、MTCパルス213によるMT効果に加え、FatSatパルス211によるMT効果も発生する。
【0028】
本実施形態の制御部110は、プリパルスシーケンス部210において、MTCパルス213以外の他のプリパルスも印加される場合であっても、ユーザが設定したMTCパルス213のスキャンパラメータに従って、MTCパルスが単独で印加された場合に得られるMT効果(目標MT効果)が得られるよう、ユーザが設定したMTCパルス213のスキャンパラメータを補正する。
【0029】
図4は、これを実現する本実施形態の制御部110の機能ブロック図である。本図に示すように、本実施形態の制御部110は、パルスシーケンスとスキャンパラメータに従って各部を動作させる計測部310と、信号処理部109を介して得た信号から画像を再構成する画像再構成部320とを備える。計測部310は、ユーザからスキャンパラメータの入力を受け付ける受付部311と、受付部311で受け付けたスキャンパラメータから制御信号を生成する生成部312と、生成部312が生成した制御信号を用い、パルスシーケンスに従って傾斜磁場電源106、RF送信部107を動作させる動作制御部313と、受付部311で受け付けたMTCパルスのスキャンパラメータを補正する補正部314と、を備える。
【0030】
受付部311は、ユーザから操作部112を介して入力されたスキャンパラメータを受け付け、制御部110が備える記憶部(不図示)に記憶する。入力されるプリパルスのスキャンパラメータには、フリップアングルFA、オフセット周波数ΔF、Durationまたはバンド幅BW等がある。
【0031】
生成部312は、記憶部に格納されたスキャンパラメータで特定される仕様で傾斜磁場パルスおよびRFパルスが印加され、パルスシーケンスが実行されるよう、傾斜磁場電源106およびRF送信部107に出力する制御情報を生成する。MTCパルスの場合、フリップアングルFAから、そのフリップアングルFAを実現するRF照射ゲインを決定し、オフセット周波数ΔFから、照射周波数を決定する。
【0032】
動作制御部313は、生成部312が生成した制御情報に従って傾斜磁場電源106およびRF送信部107に制御信号を出力し、これらの動作を制御する。プリパルスの場合、生成部312が決定したRF照射ゲインおよび照射周波数でパルスシーケンスに指定された順にRFパルスを照射するようRF送信部107を制御する。
【0033】
補正部314は、受付部311が受け付けた各プリパルスのスキャンパラメータを用い、MTCパルスのスキャンパラメータ(MTCパラメータ)を補正する。ここでは、上述のように、プリパルスシーケンス部210において印加が予定される全プリパルスによって、目標MT効果が得られるよう、MTCパラメータを補正する。
【0034】
本実施形態の制御部110は、CPUとメモリと記憶装置とを備え、記憶装置に格納されたプログラムをメモリにロードしてCPUが実行することにより、上記各機能は実現される。
【0035】
本実施形態の計測部310による計測処理の流れを説明する。図5は、本実施形態の計測処理の処理フローである。まず、ユーザは、操作部112を介してスキャンパラメータを入力する。受付部311は、スキャンパラメータの入力を受け付けると、記憶部に記憶する(ステップS1001)。
【0036】
スキャンパラメータが記憶部に記憶されると、補正部314は、MTCパラメータを補正し、記憶部のMTCパラメータを補正後のものに置き換える(ステップS1002)。
【0037】
補正を終えると、生成部312は、記憶部に記憶されるスキャンパラメータから各プリパルスを含むRFパルス、傾斜磁場パルスの制御情報を生成する(ステップS1003)。
【0038】
制御情報の生成を終えると、動作制御部313は、パルスシーケンスと制御情報とに従い、MRI装置100の各部に指示を出力し、計測を実行する(ステップS1004)。
【0039】
次に、本実施形態の補正部314によるMTCパラメータの補正処理を説明する。
【0040】
補正処理の説明に先立ち、まず、MTCパラメータによるMT効果について説明する。MT効果gは、制御対象の組織の抑制の度合いを示すもので、MTCパルスを印加する場合としない場合との信号強度比で表す。MTCパルスを印加しない場合の信号強度SIMT−OFFと、MTCパルスを印加する場合の信号強度SIMT−ONとを用い、以下の式(1)で定量的に算出する。
g=(SIMT−OFF−SIMT−ON)/SIMT−OFF (1)
詳細は、以下の非特許文献1に記載されている。
〔非特許文献1〕Fundamental study of Magnetization Transfer Contrast(MTC) Effect : Optimization of MT Pulse Condition Using Experimental Phantom, Hideaki Kawata,et al., JJRT.,Vol.60,No.10,1437−1443(2004)
【0041】
図6は、MTCパルスのフリップアングルFA[deg]毎の、オフセット周波数ΔF[Hz]とMT効果gとの関係を示すグラフである。横軸はオフセット周波数ΔF[Hz]であり、縦軸はMT効果gを示す。このように、MT効果gは、MTCパルスのオフセット周波数ΔFを変化させることにより変化する。また、MTCパルスのフリップアングルFAを変化させることにより変化する。従って、MT効果gは、オフセット周波数ΔFとフリップアングルFAとを変数とする関数(MT効果関数)G(ΔF、FA)として規定することができる。
【0042】
本実施形態の補正部314による補正処理では、まず、オフセット周波数ΔFとフリップアングルFAとを変数とする関数として表されるMT効果関数G(ΔF、FA)を、予め実験等で求める。MT効果関数G(ΔF、FA)は、例えば、被検体101を実際に載置し、MTCパルスのオフセット周波数ΔFとフリップアングルFAとを変化させ、図6に示すグラフを生成し、それを近似することにより決定する。決定したMT効果関数G(ΔF、FA)は、制御部110が備える記憶部に保持する。
【0043】
本実施形態の補正は、このMT効果関数G(ΔF、FA)を用いて行う。図7は、本実施形態の補正部314による補正処理の処理フローである。本実施形態では、MTCパラメータのオフセット周波数ΔFとフリップアングルFAのいずれか一方の値を、他のプリパルスによるMT効果と合わせて目標MT効果を得ることができるよう補正する。
【0044】
受付部311が受け付けたスキャンパラメータを記憶部に記憶すると、または、記憶後、ユーザから補正処理開始の指示を受け付けると、補正部314は、MTCパルスによるMT効果gMTC(=G(ΔFMTC、FAMTC))を算出する(ステップS1101)。ここで、ΔFMTCおよびFAMTCは、それぞれ、入力されたMTCパラメータのオフセット周波数およびフリップアングルである。
【0045】
次に、補正部314は、MTC以外のプリパルスのオフセット周波数ΔFOTHとフリップアングルFAOTHとを用い、MTC以外のプリパルスによるMT効果gOTH(=G(ΔFOTH、FAOTH))を算出する(ステップS1102)。なお、MTC以外のプリパルスが複数ある場合は、各プリパルスによるMT効果を合算する。
【0046】
gMTCとgOTHとを得ると、補正部314は、以下の式(2)または(3)により、MTCパラメータのオフセット周波数の補正値ΔFCORまたはフリップアングルの補正値FACORを算出する(ステップS1104)。なお、オフセット周波数ΔFとフリップアングルFAとは、いずれか一方を、入力されたスキャンパラメータ値に固定し、他方を算出する。
G(ΔFCOR、FAMTC)=gMTC−gOTH (2)
G(ΔFMTC、FACOR)=gMTC−gOTH (3)
【0047】
ステップS1104で算出した補正値で、記憶部に記憶されているMTCパラメータを置き換える(ステップS1105)。
【0048】
以上の補正部314の補正処理により、記憶部に記憶されているMTCパラメータは補正値に置き換えられ、生成部312は、補正後のMTCパラメータ(補正後のオフセット周波数、入力されたフリップアングル、Duration又はバンド幅の組、および、補正後のフリップアングル、入力されたオフセット周波数、Durationまたはバンド幅の組のいずれか)を用い、上述のように制御情報を生成する。
【0049】
なお、上記のステップS1102およびS1103は、いずれを先に計算してもよい。
【0050】
以上説明したように、本実施形態によれば、補正部314により、他のプリパルスにより得られるMT効果分、得られるMT効果が低減するようMTCパラメータが補正される。そして、補正後のMTCパラメータに従って、生成部312により制御情報が生成され、動作制御部313により各部が制御される。従って、最終的に得られるMT効果は、ユーザが入力したMTCパルスにより得られる目標MT効果となる。
【0051】
従って、本実施形態によれば、MTCパルス以外のプリパルスが印加される場合であっても、MTCパルスのスキャンパラメータとして入力されたパラメータから期待される目標MT効果を得ることができる。すなわち、ユーザが意図したMT効果による画像コントラストを得ることができる。また、本実施形態によれば、プリパルスの種類と数とによらず、目標MT効果を得ることができる。従って、プリパルスシーケンスで印加されるプリパルスの種類が異なる場合であっても、また、各プリパルスシーケンスにおいて、印加するプリパルスを変更する場合であっても、同じ目標MT効果が得られ、画像コントラストが安定する。すなわち、プリパルスシーケンスにおいて印加するプリパルスによらず、得られる画像の質が安定する。また、それぞれ異なるプリパルスを印加して得た複数の画像の差分処理を行う場合、元画像のコントラストが安定するため、MT効果の違いによる差分不良の発生を抑制することができる。
【0052】
なお、上記実施形態では、オフセット周波数ΔFおよびフリップアングルFAで定まるMT効果を示すMT効果関数Gは1種類としているが、撮像部位または撮像対象組織毎に関数Gを備えるよう構成してもよい。
【0053】
撮像部位、撮像対象組織毎にMT効果関数Gを備える場合、補正部314は、ユーザが撮像対象、組織として入力したパラメータに従って、使用する関数を決定する。また、補正部314は、設定される受信コイルの種類により、MT効果関数Gを決定するよう構成してもよい。
【0054】
MT効果は組織により変化するため、撮像部位、撮像対象組織毎にMT効果関数Gを備える場合、部位、組織に応じたMT効果関数Gを用いることにより、より正確なMT効果を計算できる。従って、最終的に得られる画像のコントラスト、画質がより安定する。
【0055】
<<第二の実施形態>>
次に、本発明を適用する第二の実施形態について説明する。本実施形態のMRI装置100の構成は、基本的に第一の実施形態と同様である。また、本実施形態の計測部310による計測処理も基本的に第一の実施形態と同様である。ただし、補正部314による補正処理が異なる。
【0056】
第一の実施形態では、予めMT効果関数gを決定し、それを用いて、全プリパルスにより目標MT効果を実現するようMTCパラメータを補正するが。本実施形態では、実際に計測を行った結果を用いて、全プリパルスにより目標MT効果を実現するようMTCパラメータを補正する。
【0057】
以下、本実施形態について、第一の実施形態と異なる構成である補正部314による補正処理に主眼をおいて説明する。本実施形態の補正部314は、MT効果関数Gを用いて、MT効果を算出するのではなく、実際に印加するプリパルスを変化させてプリスキャンを行い、その結果から、MTCパルス単独によるMT効果と、他のプリパルスのみによるMT効果を算出し、全プリパルスを印加して目標MT効果を得るMTCパラメータを決定する。
【0058】
なお、本実施形態においても、第一の実施形態同様、予めオフセット周波数ΔFおよびフリップアングルFAを変数とするMT効果関数Gを算出しておく。また、MT効果関数Gは、第一の実施形態同様、撮影対象部位、組織毎に用意しておいてもよい。
【0059】
図8は、本実施形態の補正部314による補正処理の処理フローである。受付部311が受け付けたスキャンパラメータを記憶部に記憶すると、または、記憶後、ユーザから補正処理開始の指示を受け付けると、補正部314は、生成部312に、受け付けたスキャンパラメータから制御情報を生成させる(ステップS1201)。
【0060】
そして、生成した制御情報を用い、MTCパルスのみ印加して計測を実行し、収集したエコー信号から、その信号強度SIMTCONを得る(ステップS1202)。
【0061】
次に、全てのプリパルスを印加して、計測を実行し、収集したエコー信号から、その信号強度SIONを得る(ステップS1203)。また、全てのプリパルスを印加せず、計測を実行し、収集したエコー信号から、その信号強度SIOFFを得る(ステップS1204)。
【0062】
各信号強度SION、SIOFF、SIMTCONを得ると、補正部314は、式(1)を用い、MTCパルスによるMT効果gMTCと、MTC以外のプリパルスによるMT効果gOTHとを算出する(ステップS1205、ステップS1206)。MTCパルスによるMT効果gMTCは、式(1)において、SIMT−OFFにSIOFFを、SIMT−ONにSIMTCONを代入することにより算出する。また、MTC以外のプリパルスによるMT効果gOTHは、同様に、SIMT−OFFにSIMTCONを、SIMT−ONにSIONを代入することにより算出する。
【0063】
補正部314は、このgMTCおよびgOTHと、予め用意したMT効果関数Gとを用い、第一の実施形態の式(2)または(3)により、MTCパラメータのオフセット周波数の補正値ΔFCORまたはフリップアングルの補正値FACORを算出する(ステップS1207)。なお、本実施形態においても、オフセット周波数ΔFとフリップアングルFAとは、いずれか一方を、入力されたスキャンパラメータ値に固定し、他方を算出する。
【0064】
そして、ステップS1206で算出した補正値で、記憶部に記憶されているMTCパラメータを置き換える(ステップS1208)。
【0065】
以上の補正部314の補正処理により、記憶部に記憶されているMTCパラメータは補正値に置き換えられ、生成部312は、補正後のMTCパラメータを用い、上述のように制御情報を生成する。
【0066】
なお、上記のステップS1202からS1204の実行順、および、ステップS1205とS1206の実行順は問わない。
【0067】
以上説明したように、本実施形態によれば、第一の実施形態同様の効果を得ることができる。さらに、実際にプリスキャンにより計測を行った結果から、目標MT効果および他のプリパルスによるMT効果を得ている。このように、本実施形態では、実測結果を用いて補正に用いるMT効果を算出しているため、例えば、組織の状態などによるMT効果の誤差を抑えることができる。このため、より高い精度で補正値算出に用いるMT効果を得ることができる。従って、より高い精度で補正値を得ることができ、最終的に得られる画像のコントラストもさらに安定する。
【0068】
なお、本実施形態では、プリスキャンで、全てのプリパルスを印加する、全てのプリパルスを印加しない、MTCパルスのみ印加する、の3種のプリパルスシーケンスを用い、それぞれ計測を行っているが、行う計測の種類はこれに限られない。目標MT効果、および、MTCパルス以外のプリパルスによるMT効果を算出できればよい。
【0069】
例えば、全てのプリパルスを印加する、全てのプリパルスを印加しない、MTCパルス以外のプリパルスのみを印加する、の3種類のプリパルスシーケンスを用い、計測を行ってもよい。MTCパルス以外のプリパルスのみを印加するプリスキャンにより信号強度をSIOTHONとすると、SIOFFとSIOTHONとの差を取ることにより、MTC以外のプリパルスによるMT効果gOTHが算出できる。
【0070】
<<第三の実施形態>>
次に、本発明を適用する第三の実施形態を説明する。本実施形態のMRI装置は基本的に第一の実施形態と同様の構成を有する。また、本実施形態の計測部310による計測処理も基本的に第一の実施形態と同様である。ただし、本実施形態では、補正部314が算出した補正値の適否を検証し、調整する。
【0071】
以下、本実施形態について、第一の実施形態と異なる構成に主眼をおいて説明する。図9は、本実施形態の制御部110の機能ブロック図である。本実施形態では、上記機能を実現するため、補正部314は、調整部315を備える。
【0072】
本実施形態の補正部314は、第一の実施形態同様、MT効果関数Gを用い、補正値を算出する。その後、調整部315により、算出した補正値を調整する調整処理を行う。そして、調整後の補正値で記憶部のMTCパラメータを置き換える。
【0073】
調整部315では、補正部314が第一の実施形態で算出した補正値の適否を判別し、適切な値となるまで、調整を繰り返す。判別は、補正値により得られるMT効果gが予め定めた閾値以内であるか否かにより行う。調整は、補正値を予め定められた調整量分変化させることにより行う。なお、調整回数(繰り返し回数)の上限を定めておくよう構成してもよい。
【0074】
以下、本実施形態の補正部314による補正処理について、調整部315による調整処理に主眼をおいて説明する。図10は、本実施形態の補正部314による補正処理の処理フローである。上述のように、補正部314は、オフセット周波数ΔFおよびフリップアングルFAのいずれか一方を補正する。ここでは、一例として、フリップアングルFAを補正し、繰り返し回数の上限は設けない場合を例にあげて説明する。
【0075】
なお、本実施形態においても、第一の実施形態同様、予めオフセット周波数ΔFおよびフリップアングルFAを変数とするMT効果関数Gを算出しておく。また、MT効果関数Gは、第一の実施形態同様、撮影対象部位、組織毎に用意しておいてもよい。
【0076】
受付部311がスキャンパラメータを記憶部に記憶すると、補正部314は、第一の実施形態の手順で、ステップS1104まで実行し、MTCパラメータの補正値FACORを算出する(ステップS1301)。本実施形態では、このとき、算出した補正値FACORを補正MTCパラメータとして先に記憶されているスキャンパラメータとは別に記憶部に記憶する(ステップS1302)。
【0077】
次に、調整部315は、生成部312に、ユーザが入力したスキャンパラメータから制御情報を生成させる(ステップS1303)。そして、調整部315は、その制御情報を用い、MTCパルスのみ印加して計測を実行し、収集したエコー信号からその信号強度SIMTCONを得る(ステップS1304)。
【0078】
その後、調整部315は、生成部312に、第二の制御情報を生成させる(ステップS1305)。第二の制御情報は、フリップアングルFAについては算出した補正値FACORを用い、他のスキャンパラメータについてはユーザが入力した値を用い、生成される。そして、第二の制御情報を用い、全てのプリパルスを印加して、計測を実行し、収集したエコー信号から、その信号強度SIONCORを得る(ステップS1306)。
【0079】
調整部315は、式(1)のSIMT−OFFにSIMTCONを、SIMT−ONにSIONCORを代入し、MT効果gOTHを算出する(ステップS1307)。ここで算出されるMT効果gOTHは、MTCパルス以外のプリパルスによるMT効果となる。すなわち、補正値が正確であればあるほど、補正値を用いて、全プリパルスを印加して計測した場合の信号強度SIONCORは、ユーザが設定したMTCパラメータで、MTCパルスを単独で印加して計測した場合の信号強度SIMTCONに近づき、これらを用いて算出されるMTCパルス以外のプリパルスによるMT効果gOTHは、0に近づく。
【0080】
調整部315は、算出したMT効果gOTHの絶対値が予め定めた閾値A以下であるか否かを判別する(ステップS1308)。閾値A以下であれば、適切と判別し、その時点の補正値FACORを、調整後の補正値と確定し、MTCパラメータを補正値FACORに置き換え(ステップS1309)、補正処理を終了する。
【0081】
一方、閾値Aより大きい場合、調整部315は、MT効果gOTHの正負を判別する(ステップS1311)。負の場合、すなわち、SIONの方が大きい場合、現在の補正値FACORでは、MTCパルスによるMT効果が不足しているため、FACORに予め定められた調整値dFAを加算し、ステップS1302で記憶した補正値を更新する(ステップS1312)。そして、ステップS1305へ移行する。
【0082】
また、ステップS1311において、負でない場合、すなわち、SIMTONがSIONより小さい場合、現在の補正値FACORでは、MTCパルスによるMT効果が過剰であるため、調整部315は、FACORから予め定められた調整値dFAを減算し、ステップS1302で記憶した補正値を更新する(ステップS1313)。そして、ステップS1305へ移行する。
【0083】
本実施形態の補正部314は、調整部315による以上の調整処理により、生成した補正値FACORの適否を検証し、それに従って補正値FACORを調整し、調整後の補正値FACORを記憶部のMTCパラメータと置き換える。それを受けて、生成部312は、補正後のMTCパラメータを用い、他の実施形態同様、制御情報を生成し、それを用いて動作制御部313は計測を行う。
【0084】
なお、上述のように、ステップS1305からステップS1316の調整処理の繰り返し回数に上限Nを設けてもよい。この場合、補正部314は、調整処理を繰り返す毎に回数をカウントする。そして、上限N回目でもステップS1307で算出したMT効果gOTHの絶対値が予め定めた閾値A以下とならない場合、適切な補正値が得られていないことを意味するワーニングおよび計測の実行の有無を受け付ける表示を表示部111に行う。
【0085】
そして、補正部314は、ユーザからの入力を待ち、実行の指示を受け付けた場合、その時点の補正値を、調整後の補正値と確定し、MTCパラメータを補正値に置き換え、補正処理を終了する。それを受けて、生成部312は、補正後のMTCパラメータを用い、他の実施形態同様、制御情報を生成し、動作制御部313は計測を行う。
【0086】
一方、実行しない旨の指示を受け付けた場合、補正部314は、ユーザに再度、スキャンパラメータの入力を促す。ユーザが新たにスキャンパラメータを入力すると、受付部311がそれを受け付け、上述の補正処理を開始する。
【0087】
なお、上記調整処理では、オフセット周波数ΔFは固定し、フリップアングルFAを補正および調整する場合を例にあげて説明したが、オフセット周波数ΔFを補正する場合も同様である。ただし、MT効果が不足している場合は、上記ステップS1312において、オフセット周波数ΔFCORから予め定められた調整値dΔFを減算し、一方、MT効果が過剰である場合、上記ステップS1316において、オフセット周波数ΔFCORに予め定めた調整値dΔFを加算する。
【0088】
以上説明したように、本実施形態によれば、第一の実施形態と同様、MTCパルス以外のプリパルスが印加される場合であっても、そのプリパルスの種類と数によらず、ユーザの意図したMT効果を得ることができ、安定した画像コントラストを得ることができる。さらに、本実施形態によれば、得られた補正値をさらに調整するため、より精度の高い補正値を得ることができる。本実施形態によれば、このようにして得たスキャンパラメータを用いて計測を実行するため、画像コントラストはより安定する。
【0089】
<<第四の実施形態>>
次に、本発明を適用する第四の実施形態を説明する。本実施形態のMRI装置は、基本的に第二の実施形態と同様の構成を有する。また、本実施形態の計測部310による計測処理も基本的に第二の実施形態と同様である。ただし、本実施形態では、補正部314が算出した補正値の適否を検証し、補正部314にフィードバックする。
【0090】
以下、本実施形態について、第二の実施形態と異なる構成に主眼をおいて説明する。図11は、本実施形態の制御部110の機能ブロック図である。本実施形態では、上記機能を実現するため、補正部314は、検証部316を備える。
【0091】
本実施形態の補正部314は、第二の実施形態同様、プリスキャンにより補正値を算出し、記憶部に記憶されているスキャンパラメータを算出結果で更新する。プリスキャンは、記憶部に記憶されているスキャンパラメータを用いて実行する。そして、算出結果について、検証部316にその適否を判別させる。判別結果が不適の場合、補正後のMTCパラメータを用い、再度同様の手法で補正値を算出する。本実施形態においても、補正の繰り返し回数の上限を定めておいてもよい。
【0092】
検証部316は、補正部314がMTCパラメータの補正値を算出する毎に、当該補正値の適否を判別する。判別は、補正値により得られるMT効果gが予め定めた閾値以内であるか否かにより行う。
【0093】
以下、本実施形態の補正部314による補正処理について、検証部316による検証処理に主眼をおいて説明する。図12は、本実施形態の補正部314による補正処理の処理フローである。上述のように、補正部314は、オフセット周波数ΔFおよびフリップアングルFAのいずれか一方を補正する。以下では、一例として、フリップアングルFAを補正し、繰り返し回数の上限を設けない場合を例にあげて説明する。
【0094】
なお、本実施形態においても、第一の実施形態同様、予めオフセット周波数ΔFおよびフリップアングルFAを変数とするMT効果関数Gを算出しておく。また、MT効果関数Gは、第一の実施形態同様、撮影対象部位、組織毎に用意しておいてもよい。
【0095】
受付部311が、受け付けたスキャンパラメータを記億部に記憶すると、または、記憶後、ユーザから補正処理開始の指示を受け付けると、第二の実施形態の補正処理のステップS1201からステップS1208を実行し、記憶部に記憶されているスキャンパラメータを補正値FACORに置き換える(ステップS1201〜ステップS1208)。
【0096】
次に、検証部316は、補正値検証処理を行う。すなわち、検証部316は、生成部312に、補正後のフリップアングルFACORとユーザが設定した他のMTCパラメータから制御情報を生成させる(ステップS1401)。そして、生成した制御情報を用い、全てのプリパルスを印加して計測を実行し、収集したエコー信号から、その信号強度SIONCORを得る(ステップS1402)。
【0097】
検証部316は、式(1)のSIMT−OFFに、補正処理の途中で得たSIMTCONを、SIMT−ONにSIONCORを代入し、MT効果gOTHを算出する(ステップS1403)。ここで算出されるMT効果gOTHは、第三の実施形態同様、MTCパルス以外のプリパルスによるMT効果となる。すなわち、補正値が正確であればあるほど、補正値を用いて、全プリパルスを印加して計測した場合の信号強度SIONCORは、ユーザが設定したMTCパラメータで、MTCパルスを単独で印加して計測した場合の信号強度SIMTCONに近づき、これらの値から算出されるMTCパルス以外のプリパルスによるMT効果gOTHは、0に近づく。
【0098】
検証部316は、算出したMT効果gOTHの絶対値が予め定めた閾値A以下であるか否かを判別する(ステップS1404)。閾値A以下であれば、適切と判別する。補正部314は、検証部316の検証結果を受け、その時点の補正値FACORを、調整後の補正値と確定し、補正処理を終了する。
【0099】
一方、閾値Aより大きい場合、検証部316は、不適と判別する。この場合、補正部314は、検証部316の検証結果を受け、全プリパルス印加時の信号強度SIONを補正後のMTCパラメータから算出した制御情報を用いて計測した信号強度SIONCORとし(ステップS1405)、ステップS1206へ移行し、処理を繰り返す。
【0100】
本実施形態の補正部314は、検証部316による以上の検証処理により、生成した補正値の適否を検証し、それに従って、補正値の算出を繰り返し、補正値の精度を高める。補正値が所定の精度となると、それを受けて、生成部312は、補正後のMTCパラメータを用い、他の実施形態同様、制御情報を生成し、動作制御部313は各部を制御し、計測を行う。
【0101】
なお、本実施形態においても、第三の実施形態同様、ステップS1206からステップS1405の検証処理の繰り返し回数の上限Nを設けてもよい。この場合、不適と判別された後、補正部314は、繰り返し回数を越えているか否かを判別し、越えていなければ、上記同様ステップS1206へ戻る。
【0102】
一方、越えている場合は、第三の実施形態同様、補正部314は、適切な補正値を得られていないことを意味するワーニングおよび処理の実行の有無を受け付ける表示を表示部111に行い、ユーザからの指示を待つ。そして、実行の指示を受け付けると、補正部314は、補正処理を終了する。一方、実行しない旨の指示を受け付けると、補正部314は、ユーザに再度、スキャンパラメータの入力を促す。ユーザが新たにスキャンパラメータを入力すると、受付部311がそれを受け付け、上述の補正処理を開始する。
【0103】
なお、上記検証処理では、オフセット周波数ΔFは固定し、フリップアングルFAを補正および調整する場合を例にあげて説明したが、オフセット周波数ΔFを補正する場合も同様である。
【0104】
以上説明したように、本実施形態によれば、第二の実施形態と同様、MTCパルス以外のプリパルスが印加される場合であっても、そのプリパルスの種類と数によらず、ユーザの意図したMT効果を得ることができる。さらに、本実施形態によれば、得られた補正値の適否を検証し、その結果をフィードバックし、補正値の算出を繰り返すため、より精度の高い補正値を得ることができる。本実施形態では、このようにして得たスキャンパラメータを用いて計測を実行するため、画像コントラストはより安定する。
【0105】
なお、上記各実施形態では、プリパルスのスキャンパラメータとしてオフセット周波数が設定されるよう構成しているが、設定されるスキャンパラメータはこれに限られない。例えば、ユーザに励起位置を入力させるよう構成してもよい。この場合、受付部311は、入力された励起位置を受け付け、オフセット周波数を算出する。すなわち、オフセット周波数は、撮像中心の共振周波数に対する周波数差となる。
【符号の説明】
【0106】
100:MRI装置、101:被検体、102:磁石、103:傾斜磁場コイル、104:RFコイル、105:RFプローブ、106:傾斜磁場電源、107:RF送信部、108:信号検出部、109:信号処理部、110:制御部、111:表示部、112:操作部、113:ベッド、200:パルスシーケンス、210:プリパルスシーケンス部、211:FatSatパルス、212:スポイラ傾斜磁場パルス、213:MTCパルス、214:クラッシャー傾斜磁場パルス、220:本計測シーケンス部、221:傾斜磁場パルス、222:RFパルス、223:傾斜磁場パルス、224:エコー信号、225:傾斜磁場パルス、310:計測部、311:受付部、312:生成部、313:動作制御部、314:補正部、315:調整部、316:検証部、320:画像再構成部、701:自由水プロトンの共振周波数帯域、702:蛋白結合水プロトンの共振周波数帯域、703:オフセット、704:MTCパルスの照射周波数
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のパルスシーケンスに従って、静磁場中におかれた被検体に高周波磁場を照射する照射手段と前記被検体からのエコー信号を受信する受信手段との動作を制御する制御手段を備える磁気共鳴イメージング装置であって、
前記パルスシーケンスは、磁化転移コントラストパルス(MTCパルス)を含む複数のプリパルスを印加するプリパルスシーケンスを備え、
前記制御手段は、前記MTCパルスのパラメータ値を補正する補正手段を備え、補正後の前記MTCパルスのパラメータ値を用いて前記プリパルスシーケンスにおいて前記MTCパルスが照射されるよう前記照射手段を制御し、
前記補正手段は、前記MTCパルスをユーザが設定したMTCパルスのパラメータ値に従って単独でプリパルスとして印加した場合に得られる目標磁化転移効果が、全プリパルスの印加により得られるよう、前記MTCパルスのパラメータ値を補正すること
を特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記補正手段は、プリパルスによる磁化転移効果を算出する磁化転移効果算出手段を備え、
前記磁化転移効果算出手段は、前記目標磁化移転効果と、前記MTCパルス以外の他のプリパルスによる他磁化転移効果とを算出し、
前記補正手段は、前記MTCパルスにより、前記目標磁化転移効果から前記他磁化転移効果を減算した磁化転移効果を得られるよう、前記MTCパルスのパラメータ値を補正すること
を特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
請求項2記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記磁化転移効果算出手段は、プリパルスのパラメータを変数とする関数を用い、前記磁化転移効果を算出すること
を特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
請求項2記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記磁化転移効果算出手段は、前記プリパルスシーケンスで印加するプリパルスを変更して前記パルスシーケンスを実行するプリスキャン実行手段を備え、
前記プリスキャン実行手段が印加するプリパルスを変更して得た前記エコー信号の信号強度をから、前記磁化転移効果を算出すること
を特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
請求項3記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記補正手段は、前記補正後のMTCパルスパラメータの適否を判別し、不適な場合調整する調整手段をさらに備えること
を特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項6】
請求項4記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記補正手段は、前記補正後のMTCパルスパラメータの適否を判別する検証手段をさらに備え、
不適と判別された場合、前記補正後のMTCパラメータを用い、再度補正値を算出すること
を特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項7】
所定のパルスシーケンスに従って、静磁場中におかれた被検体に高周波磁場を照射する照射手段と前記被検体からのエコー信号を受信する受信手段との動作を制御する制御手段を備える磁気共鳴イメージング装置の動作制御方法であって、
前記照射手段で照射する高周波磁場を特定するパラメータの入力を受け付けるパラメータ入力受付ステップと、
前記受け付けたパラメータを補正する補正ステップと、
前記補正後のパラメータを用い、前記照射手段を制御するとともに、前記受信手段の動作を制御し、計測を行う計測ステップと、を備え、
前記補正ステップでは、前記MTCパルスをユーザが設定したMTCパルスのパラメータ値に従って単独でプリパルスとして印加した場合に得られる目標磁化転移効果が、全プリパルスの印加により得られるよう、前記MTCパルスのパラメータ値が補正されること
を特徴とする磁気共鳴イメージング装置の動作制御方法。
【請求項1】
所定のパルスシーケンスに従って、静磁場中におかれた被検体に高周波磁場を照射する照射手段と前記被検体からのエコー信号を受信する受信手段との動作を制御する制御手段を備える磁気共鳴イメージング装置であって、
前記パルスシーケンスは、磁化転移コントラストパルス(MTCパルス)を含む複数のプリパルスを印加するプリパルスシーケンスを備え、
前記制御手段は、前記MTCパルスのパラメータ値を補正する補正手段を備え、補正後の前記MTCパルスのパラメータ値を用いて前記プリパルスシーケンスにおいて前記MTCパルスが照射されるよう前記照射手段を制御し、
前記補正手段は、前記MTCパルスをユーザが設定したMTCパルスのパラメータ値に従って単独でプリパルスとして印加した場合に得られる目標磁化転移効果が、全プリパルスの印加により得られるよう、前記MTCパルスのパラメータ値を補正すること
を特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記補正手段は、プリパルスによる磁化転移効果を算出する磁化転移効果算出手段を備え、
前記磁化転移効果算出手段は、前記目標磁化移転効果と、前記MTCパルス以外の他のプリパルスによる他磁化転移効果とを算出し、
前記補正手段は、前記MTCパルスにより、前記目標磁化転移効果から前記他磁化転移効果を減算した磁化転移効果を得られるよう、前記MTCパルスのパラメータ値を補正すること
を特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
請求項2記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記磁化転移効果算出手段は、プリパルスのパラメータを変数とする関数を用い、前記磁化転移効果を算出すること
を特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
請求項2記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記磁化転移効果算出手段は、前記プリパルスシーケンスで印加するプリパルスを変更して前記パルスシーケンスを実行するプリスキャン実行手段を備え、
前記プリスキャン実行手段が印加するプリパルスを変更して得た前記エコー信号の信号強度をから、前記磁化転移効果を算出すること
を特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
請求項3記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記補正手段は、前記補正後のMTCパルスパラメータの適否を判別し、不適な場合調整する調整手段をさらに備えること
を特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項6】
請求項4記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記補正手段は、前記補正後のMTCパルスパラメータの適否を判別する検証手段をさらに備え、
不適と判別された場合、前記補正後のMTCパラメータを用い、再度補正値を算出すること
を特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項7】
所定のパルスシーケンスに従って、静磁場中におかれた被検体に高周波磁場を照射する照射手段と前記被検体からのエコー信号を受信する受信手段との動作を制御する制御手段を備える磁気共鳴イメージング装置の動作制御方法であって、
前記照射手段で照射する高周波磁場を特定するパラメータの入力を受け付けるパラメータ入力受付ステップと、
前記受け付けたパラメータを補正する補正ステップと、
前記補正後のパラメータを用い、前記照射手段を制御するとともに、前記受信手段の動作を制御し、計測を行う計測ステップと、を備え、
前記補正ステップでは、前記MTCパルスをユーザが設定したMTCパルスのパラメータ値に従って単独でプリパルスとして印加した場合に得られる目標磁化転移効果が、全プリパルスの印加により得られるよう、前記MTCパルスのパラメータ値が補正されること
を特徴とする磁気共鳴イメージング装置の動作制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−110086(P2011−110086A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−266214(P2009−266214)
【出願日】平成21年11月24日(2009.11.24)
【出願人】(000153498)株式会社日立メディコ (1,613)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月24日(2009.11.24)
【出願人】(000153498)株式会社日立メディコ (1,613)
【Fターム(参考)】
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