説明

磁気共鳴イメージング装置及びその画像処理方法

【課題】異なるスライス設定条件で撮像された画像同士であっても、精度良く合成することができる磁気共鳴イメージング装置を提供する。
【解決手段】実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置は、被検体を第1のスライス設定条件によって撮像した第1のスライス画像群と、前記被検体を前記第1のスライス設定条件とは異なる第2のスライス設定条件によって撮像した第2のスライス画像群を入力する入力部と、前記第2のスライス画像群を3次元ボリュームデータに変換し、前記3次元ボリュームデータから、前記第1のスライス設定条件に合致するようにスライスを切り出して変換スライス画像を生成し、スライス位置及びスライス方向が互いに対応する前記第1のスライス画像と前記変換スライス画像とを合成して合成スライス画像を生成する画像処理部と、前記合成スライス画像を表示する表示部と、を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、磁気共鳴イメージング装置及びその画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴イメージング(MRI:Magnetic Resonance Imaging)は、静磁場中に置かれた被験体の原子核スピンをラーモア周波数のRF周波数で磁気的に励起し、この励起に伴って発生する磁気共鳴信号(MR信号)から画像を再構成する撮像法である。
【0003】
磁気共鳴イメージングによって生成するMRI画像は形態画像と機能画像に大別される。このうち、形態画像は、縦緩和時間(T1)や横緩和時間(T2)、或いはプロトン密度が組織によって異なること等を利用し、被検体内部の組織にT1、T2、或いはプロトンの差によってコントラストをつけることによって、被検体内部の各組織の形状を画像化するものである。組織間の縦緩和時間(T1)の差異によるコントラストが大きくなるように撮像条件を設定して生成する画像をT1強調画像と呼び、組織間の横緩和時間(T2)の差異によるコントラストが大きくなるように撮像条件を設定して生成する画像をT2強調画像と呼ぶ。
【0004】
一方、機能画像は、組織の機能を何らかの方法で指標化し、指標化した量の空間的な分布を画像化するものである。機能画像には、ディフージョン(Diffusion)画像、パフュージョン(Perfusion)画像、fMRI(functional MRI)画像等がある(例えば、特許文献1、2等)。
【0005】
ディフュージョン画像は、ADC(Apparent Diffusion Coefficient)と呼ばれる拡散係数や、異方性拡散を表すFA(Fractional Anisotropy)値といった指標の被検体内(例えば脳)における空間分布を求めて画像化するものである。パフュージョン(Perfusion)画像は、例えば、脳血液量(CBV: Cerebral Blood Volume)、脳血液量(CBF: Cerebral Blood Flow)、平均通過時間(MTT: Mean Transit Time)といった灌流(Perfusion)に関する機能の指標の空間分布を画像化するものである。また、fMRI画像は、脳の活動によって生じる脳内の局所的な血流の変化を画像化するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−119831号公報
【特許文献2】特開2010−187776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
MRI画像を用いて患者を検査(スタディ)する場合、1つのスタディにおいて、撮像条件を変えながら撮像し、撮像条件ごとに得られる一連の画像(以下、この一連の画像をシリーズと呼ぶ)を、異なるシリーズ間で対比させながら読影(比較読影)することがしばしば行われる。例えば、シリーズAで患部を含む所定の撮像領域を、同じスライス方向のT1強調画像を複数のスライス位置で撮像する。一方、シリーズBでは同じスライス方向と同じスライス位置におけるT2強調画像を取得する。このような場合には、シリーズAのT1強調画像の中から選択した1画像と同じスライス位置と同じスライス方向のT2強調画像をシリーズBの中から選択することができるため、T1強調画像とT2強調画像との比較読影を比較的容易に行うことができる。同じスライス位置、同じスライス方向のT1強調画像とT2強調画像とを画面内に並列表示させてもよいし、2つの画像を合成して(重ね合わせて)表示してもよい。
【0008】
これに対して、スライス方向及びスライス位置の双方或いはいずれか一方が、シリーズAとシリーズBとで異なる場合には、2つの画像(T1強調画像とT2強調画像)を並列表示しても正しい比較読影ができず、また2つの画像を合成することもできない。換言すれば、撮像条件のうち、スライス方向やスライス位置等のスライス設定条件がシリーズ間で異なる場合には、異なったスライス設定条件で撮像された2つの画像(或いは複数の画像)を並列表示しても比較読影の意義が低減され、また2つの画像(或いは複数の画像)を合成することもできない。
【0009】
上記は、T1強調画像とT2強調画像という形態画像同士の並列表示或いは合成に関する従来の問題であるが、同じ問題は形態画像と機能画像とを並列表示或いは合成する場合にも生じる。また、機能画像の撮像においては、同じスライスを時間の経過と共に連続的に撮像して複数の時相に対応する複数画像を生成することがしばしば行われる。しなしながら、従来の画像表示では、そもそも複数時相の機能画像を1つの形態画像にそれぞれ合成して表示することすら行われていなかった。
【0010】
そこで、異なるスライス設定条件で撮像された画像同士であっても、精度良く合成することができる磁気共鳴イメージング装置及びその画像処理方法が要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置は、被検体を第1のスライス設定条件によってスライス位置を変えながら撮像した複数の第1のスライス画像、又はスライス位置を固定して撮像した第1のスライス画像を入力する第1の入力部と、前記被検体を前記第1のスライス設定条件とは異なる第2のスライス設定条件によってスライス位置を変えながら撮像した複数の第2のスライス画像を入力する第2の入力部と、前記複数の第2のスライス画像を3次元ボリュームデータに変換し、前記3次元ボリュームデータから、前記第1のスライス設定条件に合致するようにスライスを切り出して変換スライス画像を生成し、スライス位置及びスライス方向が互いに対応する前記第1のスライス画像と前記変換スライス画像とを合成して合成スライス画像を生成する画像処理部と、前記合成スライス画像を表示する表示部と、を備えたことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置の構成例を示す図。
【図2】従来のスライス画像の合成の問題点を説明する図。
【図3】第1の実施形態に係るスライス画像の合成処理の一例を示すフローチャート。
【図4】第1の実施形態に係るスライス画像の合成処理の概念を説明する図。
【図5】第2の実施形態に係るスライス画像の合成処理の一例を示すフローチャート。
【図6】第2の実施形態に係るスライス画像の合成処理の概念を説明する第1の図。
【図7】第2の実施形態に係るスライス画像の合成処理の概念を説明する第2の図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
磁気共鳴イメージング装置の実施の形態について添付図面を参照して説明する。
【0014】
(1)構成
図1は、本実施形態における磁気共鳴イメージング装置1の全体構成を示すブロック図である。図1に示すように、磁気共鳴イメージング装置1は、MRI装置本体10、入力部20、画像処理部30、表示部40、ユーザI/F50、付帯情報抽出部51、撮像条件設定部52等を備えて構成される。また、磁気共鳴イメージング装置1は、外部の画像サーバ100と接続可能に構成してもよい。
【0015】
MRI装置本体10は、図示しない静磁場用磁石、傾斜磁場電源、傾斜磁場コイル、送受信コイル、RF送信部、RF受信部、シーケンスコントローラ、画像再構成部、画像データベース等を備えて構成される。
【0016】
静磁場用磁石は、MRI装置本体10のボア内に均一な静磁場を発生させるための磁石である。この静磁場内に横臥する被検体に対してFRパルス列と傾斜磁場パルス列からなる所定のパルスシーケンスを印加すると、被検体はラーモア周波数をもつMR信号を発生する。パルスシーケンスは、ユーザがユーザI/F50を介して入力する撮像条件に基づいてシーケンスコントローラで設定される。
【0017】
RF送信部はシーケンスコントローラで設定されたパルスシーケンスに基づいてRFパルスを生成する。生成されたRFパルスは送受信コイルを介して被検体に印加される。
【0018】
一方、傾斜磁場電源もシーケンスコントローラで設定されたパルスシーケンスに基づいて傾斜磁場電流を生成する。傾斜磁場電流は傾斜磁場コイルに流され、傾斜磁場コイルからパルス状の傾斜磁場が被検体に印加される。
【0019】
RFパルスの印加によって励起された被検体内部組織のスピンはMR信号を発生するが、各スピンに印加される磁場の強度は傾斜磁場の存在によりスピンの位置毎に異なる。このため、各スピンから発せられるMR信号の周波数或いは位相は、組織の位置に応じて異なったものとなる。
【0020】
RF受信部は、送受信コイルを介してこのMR信号を受信し、受信したMR信号をデジタル量に変換して画像再構成部に出力する。
【0021】
画像再構成部は、入力したMR信号(生データ、或いはk空間データとも呼ばれる)に対して逆フーリエ変換を含む再構成処理を施し、実空間での画像を生成しMRI装置本体10内の画像データベースに一時的に保存する。さらに、再構成された画像を外部の画像サーバ100に出力し、画像サーバ100において画像或いは画像ファイルを保存するようにしてもよい。
【0022】
画像データベースに保存された画像は入力部20によって読み出され、画像処理部30に出力される。入力部20は、第1の入力部20aと第2の入力部20bとを有している。
【0023】
前述したように、MRI画像を用いて患者を検査(スタディ)する場合、1つのスタディにおいて、撮像条件を変えながら撮像し、撮像条件ごとに得られる一連の画像を、異なるシリーズ間で対比させながら比較読影することがしばしば行われる。同じ患者に対する2次元画像(スライス画像)をスライス設定条件の異なるシリーズ(例えばシリーズAとシリーズBの2つのシリーズ)で取得し、シリーズ間でスライス画像を比較読影する。
【0024】
ここで、スライス設定条件とは、スライス位置やスライス方向(向き)の他、マトリクスサイズや解像度等のスライス画像に関する設定条件を指す。スライスを平行移動させながら(即ち、スライス位置を変えながら)被検体を撮像して複数のスライス画像を生成する場合には、スライスの数や間隔もスライス設定条件に含まれる。
【0025】
前記の第1の入力部20aと第2の入力部20bには、それぞれ異なるスライス設定条件で撮像されたスライス画像(スライスが複数の場合にはスライス画像群と呼ぶ場合もある)が入力される。たとえば、第1の入力部20aには、所定のスライス方向でスライス位置を少しずつ変えながら撮像した複数のT1強調画像(第1のスライス設定条件で撮像された第1のスライス画像群)が入力される。一方、第2の入力部20bには、第1のスライス画像群とは異なるスライス方向で撮像された複数のT2強調画像(第2のスライス設定条件で撮像された第2のスライス画像群)が入力される。
【0026】
上記の例では、第1の入力部20a及び第2の入力部20bの双方に複数の形態画像(例えばT1強調画像群とT2強調画像群)が入力されるが、これに限定されるものではない。一方(例えば第2の入力部20b)には上記と同じ複数の形態画像群を入力し、他方(例えば第2の入力部20b)に機能画像を入力してもよい。
【0027】
なお、形態画像は上記のT1強調画像やT2強調画像に限定されず、被検体内部の各組織の形態或いは形状を画像化したもの全般を含む。また、機能画像とは、組織の機能を何らかの方法で指標化し、指標化した量の空間的な分布を画像化するものである。機能画像には、ディフージョン(Diffusion)画像、パフュージョン(Perfusion)画像、fMRI(functional MRI)画像等がある。また、機能画像は、必ずしも総てではないが、一般にスライス位置を固定にしつつ、同じスライスを時系列(時相)に沿って順次撮像し、指標の時間的な変化を画像化したものが多い。
【0028】
第1の入力部20a及び第2の入力部20bで入力されたスライス画像は画像処理部30に入力される。
【0029】
画像処理部30は、複数の第2のスライス画像を3次元ボリュームデータに変換し(3Dボリュームデータ変換部31)、この3次元ボリュームデータから、第1のスライス設定条件に合致するようにスライスを切り出して変換スライス画像を生成する(スライス画像切り出し部32)。そしてスライス位置及びスライス方向が互いに対応する第1のスライス画像と生成した変換スライス画像とを合成して、つまり重ね合わせて合成スライス画像を生成する(合成部33)。
【0030】
(2)動作
本実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置1の動作、特に画像処理部30におけるスライス画像の合成動作についてより具体的に説明する。
【0031】
図2は、本実施形態との比較のため、従来のスライス画像の合成における問題を説明する図である。
【0032】
図2の上段に示すように、シリーズA(例えば複数のT1強調画像)とシリーズB(例えば複数のT2強調画像)のスライス設定条件が全く同じであれば、シリーズAのT1強調画像の中から選択した1画像と同じスライス位置とスライス方向のT2強調画像をシリーズBの中から選択することができるため、T1強調画像とT2強調画像との比較読影を比較的容易に行うことができる。同じスライス位置、同じスライス方向のT1強調画像とT2強調画像とを画面内に並列表示させてもよいし、2つの画像を合成して(重ね合わせて)表示してもよい。
【0033】
これに対して、図2の下段に示すように、スライス設定条件(スライス方向やスライス位置等)がシリーズAとシリーズBとで異なる場合には、2つの画像(T1強調画像とT2強調画像)を並列表示しても正しい比較読影ができず、また2つの画像を合成することもできない。
【0034】
本実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置1は、このような不都合を解消し、スライス設定条件がシリーズ間で異なる場合であっても互いのスライス画像を正しく合成する手法を提供する。以下では、形態画像と形態画像とを合成する場合と、形態画像と機能画像を合成する場合を例にとって説明する。
【0035】
(第1の実施形態:形態画像と形態画像の合成)
図3は、形態画像同士を合成する場合の処理例を示すフローチャートであり、図4はこの処理の概念を説明する図である。
【0036】
図3のステップST10では、第1のスライス設定条件を含む第1の撮像条件で被検体を撮像する。そして、この撮像条件で撮像された第1のスライス画像群(図4の左下に示すシリーズAの画像群:形態画像)を、MRI装置本体10から第1の入力部20aを介して画像処理部30に入力する。なお、既に撮像が行われており、その画像が外部の画像サーバ100に保存されている場合には、画像サーバ100から第1のスライス画像群を入力しても良い。
【0037】
ステップST11では、第1のスライス設定条件を撮像条件設定部52(図1参照)から画像処理部30に入力する。ユーザは、ユーザI/F50等を介して、スライス位置、スライス方向、スライス数、スライス間隔、解像度、マトリクスサイズ等のスライス設定条件や、パルスシーケンスのパラメータ等の撮像条件を入力し、撮像条件設定部52に設定する。MRI装置本体10では、撮像条件設定部52に設定されたこれらの撮像条件に従って被検体を撮像する。一方、画像処理部30は、撮像条件設定部52に設定されたスライス設定条件(第1のスライス設定条件)を入力し、後の処理に利用する。
【0038】
なお、一般に医用画像ファイルには、その付帯情報として撮像条件に関する情報が含まれている。したがって、撮像条件設定部52からスライス設定条件を取得することに換えて、或いはこれと並行して、第1のスライス画像の画像ファイルから第1のスライス設定条件を抽出してもよい。この場合、スライス設定条件の抽出は、図1の付帯情報抽出部51が行う。
【0039】
ステップST12では、ステップST10と同様に、第2のスライス設定条件を含む第2の撮像条件で被検体を撮像し、この撮像条件で撮像された第2のスライス画像群(図4の左上に示すシリーズBの画像群:形態画像)を、MRI装置本体10から第2の入力部20bを介して画像処理部30に入力する。なお、画像サーバ100から第2のスライス画像群を入力しても良い。
【0040】
ステップST13では、ステップST11と同様にして、第2のスライス設定条件を画像処理部30に入力する。
【0041】
図4に示すように、シリーズAとシリーズBとでは、スライス方向やスライス間隔等のスライス設定条件が異なっており、画像処理部30に入力されたままの状態では、互いのスライスを合成することはできない。
【0042】
そこで、ステップST14では、入力した第2のスライス画像群(シリーズB)を、図4の上段中央に示すように、3次元ボリュームデータに変換する。3次元ボリュームデータへの変換に際しては、ステップST13で入力した第2のスライス設定条件を利用することができ、スライスとスライスの間のデータが必要な場合は公知の補間処理等で補間すればよい。
【0043】
次に、ステップST15で、3次元ボリュームデータから第1のスライス設定条件(即ち、ステップST11で入力したシリーズAのスライス設定条件)に合致するようにスライスを切り出して、変換スライス画像を生成する。変換スライス画像は、図4の下段中央に破線で示すスライス画像である。スライス設定条件の合致は、スライス位置やスライス方向の他、画素の大きさ(解像度)や画素数(マトリクスサイズ)が、シリーズAのスライス画像と、シリーズBから変換された変換スライス画像との間で合致するように行われる。この合致処理によって、シリーズAのスライス画像と、シリーズBから変換された変換スライス画像とを合成することが可能となる。
【0044】
ステップST16では、スライス位置及びスライス方向が互いに対応する第1のスライス画像(シリーズAのスライス画像)と変換スライス画像とを合成する。
【0045】
そして、ステップST17において、合成スライス画像を表示部40に表示する。
【0046】
なお、ステップST16で2つのスライス画像を合成する際に、表示上の輝度や色等の合成比率を、ユーザI/F50を介してユーザが適宜設定できるようにしても良い。
【0047】
また、入力した第1、第2のスライス画像の位置、拡大率、輝度等をユーザが調整できるようにしても良い。この場合、調整後の第2のスライス画像群(シリーズBのスライス画像群)が3次元ボリュームデータに変換される。
【0048】
本実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置1によれば、スライス位置やスライス方向等のスライス設定条件が異なるスライス画像同士を確実に合成することができるため、精度良く比較読影を行うことができる。
【0049】
また、上記では2つのスライス画像(第1のスライス画像と変換スライス画像)を合成した後、合成画像を表示する例を説明したが、2つのスライス画像を合成することなく、第1のスライス画像と変換スライス画像とを1つの画面に並列表示させてもよい。この場合でも、第1のスライス画像と変換スライス画像とでは、スライス位置、スライス方向、解像度、マトリクスサイズ等が合致しているため、高い精度の比較読影が可能となる。
【0050】
(第2の実施形態:形態画像と機能画像の合成)
図5は、形態画像と機能画像とを合成する場合の処理例を示すフローチャートであり、図6は、その処理の概念を説明する図である。
【0051】
図5のステップST20では、第1のスライス設定条件を含む第1の撮像条件で被検体を撮像する。図5に示す第2の実施形態では、第1のスライス画像は、図6の左下に示すシリーズAの機能画像である。パフュージョン(Perfusion)画像等の機能画像は、例えば、脳血液量(CBV: Cerebral Blood Volume)の時間的な変化を観察するために、同一スライスを時系列に沿って順次撮像し、図6の左下に示すように、t=T1、T2、・・・、Tnの複数のスライス画像を生成することが多い。以下においても、図6の左下に示すシリーズAの機能画像を第1のスライス画像の例として説明する。
【0052】
ステップST20では、時系列に沿って撮像した機能画像(第1のスライス画像)を、MRI装置本体10から第1の入力部20aを介して画像処理部30に入力する。なお、既に撮像が行われており、その画像が外部の画像サーバ100に保存されている場合には、画像サーバ100から第1のスライス画像を入力しても良い。
【0053】
ステップST21では、第1のスライス設定条件を第1の実施形態と同様に、撮像条件設定部52、又は付帯情報抽出部51から入力する。
【0054】
ステップST22では、第2のスライス設定条件を含む第2の撮像条件で被検体を撮像し、この撮像条件で撮像された第2のスライス画像群(図6の左上に示すシリーズBの画像群:形態画像)を、MRI装置本体10から第2の入力部20bを介して画像処理部30に入力する。なお、画像サーバ100から第2のスライス画像群を入力しても良い。
【0055】
そして、ステップST23では、第2のスライス設定条件(シリーズBのスライス設定条件)を入力する。
【0056】
ステップST24では、図6の上段中央に示すように、入力したシリーズBの形態画像群を3次元ボリュームデータに変換する。3次元ボリュームデータへの変換は第1の実施形態と同様に行われる。
【0057】
ステップST25では、3次元ボリュームデータから第1のスライス設定条件に合致するように、3次元ボリュームデータからスライスを切り出して、変換スライス画像を生成する。即ち、図6の上段右側に示すように、3次元ボリュームデータから、シリーズAの機能画像のスライス位置、スライス方向、解像度、マトリクスサイズ等に合致するように、変換スライス画像B’を切り出す。切り出した変換スライス画像B’もやはり形態画像である。変換スライス画像B’の切り出しは、第1の実施形態と同様に、ステップST21で入力した第1のスライス設定条件(機能画像のスライス設定条件)を用いることによって自動的に行われる。
【0058】
ステップST26では、切り出した変換スライス画像B'(形態画像)と、シリーズAの時系列の各機能画像を合成し、合成スライス画像を生成する。合成スライス画像は、時系列の機能画像に、これと対応する位置の形態画像が重ね合わされた画像である。
【0059】
ステップST27では、生成された合成スライス画像が表示部40に表示される。
【0060】
図7は、第2の実施形態の他の例を示す図である。図7に示す例では、入力した機能画像(シリーズA)のスライス方向と、形態画像(シリーズB)のスライス方向が全く異なっている。このような場合、従来は機能画像と形態画像とを重ねあわせることはできなかった。重ね合わせるためには、機能画像のスライス設定条件と同じスライス条件に設定して、再度形態画像を取得する必要があった。これに対して、第2の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置1では、形態画像のスライス画像群を一旦3次元ボリュームデータに変換し、その上で機能画像のスライス設定条件と合致するスライスを3次元ボリュームデータから切り出すことにより、機能画像に形態画像を精度良く重ね合わせて表示することが可能となる。この結果、診断上有用な合成画像を、短時間で効率よく取得することが可能となる。
【0061】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0062】
1 磁気共鳴イメージング装置
10 MRI装置本体
20a 第1の入力部
20b 第2の入力部
30 画像処理部
40 表示部
51 付帯情報抽出部
52 撮像条件設定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体を第1のスライス設定条件によってスライス位置を変えながら撮像した複数の第1のスライス画像、又はスライス位置を固定して撮像した第1のスライス画像を入力する第1の入力部と、
前記被検体を前記第1のスライス設定条件とは異なる第2のスライス設定条件によってスライス位置を変えながら撮像した複数の第2のスライス画像を入力する第2の入力部と、
前記複数の第2のスライス画像を3次元ボリュームデータに変換し、前記3次元ボリュームデータから、前記第1のスライス設定条件に合致するようにスライスを切り出して変換スライス画像を生成し、スライス位置及びスライス方向が互いに対応する前記第1のスライス画像と前記変換スライス画像とを合成して合成スライス画像を生成する画像処理部と、
前記合成スライス画像を表示する表示部と、
を備えたことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
前記第1及び第2のスライス設定条件は、スライス位置、スライス方向及び解像度を含む撮像条件である、
ことを特徴とする請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
スライス位置を変えながら撮像した前記複数の第1のスライス画像及び前記複数の第2のスライス画像は、いずれも形態画像である、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
スライス位置を固定して撮像した前記第1のスライス画像は機能画像であり、前記複数の第2のスライス画像は形態画像である、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
前記第1のスライス画像は、同一スライス位置を時系列に沿って順次撮像した複数の機能画像であり、
前記画像処理部は、時系列に沿って撮像した前記複数の機能画像と前記変換スライス画像とを合成して前記時系列に対応する複数の合成スライス画像を生成する、
ことを特徴とする請求項4に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項6】
前記機能画像は、ディフージョン(Diffusion)画像、パフュージョン(Perfusion)画像、又はfMRI(functional MRI)画像のいずれかである、
ことを特徴とする請求項5に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項7】
前記第1のスライス設定条件及び前記第2のスライス設定条件を含む撮像条件を設定する撮像条件設定部、をさらに備え、
前記画像処理部は、前記撮像条件設定部で設定される前記第2のスライス設定条件を用いて前記第2のスライス画像を3次元ボリュームデータに変換する一方、前記撮像条件設定部で設定される前記第1のスライス設定条件を用いて前記3次元ボリュームデータから前記変換スライス画像を切り出す、
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項8】
前記第1及び第2のスライス画像の各画像ファイルに含まれる付帯情報から前記第1及び第2のスライス設定条件をそれぞれ抽出する付帯情報抽出部、をさらに備え、
前記画像処理部は、前記付帯情報抽出部で抽出された前記第2のスライス設定条件を用いて前記第2のスライス画像を3次元ボリュームデータに変換する一方、前記付帯情報抽出部で抽出された前記第1のスライス設定条件を用いて前記3次元ボリュームデータから前記変換スライス画像を切り出す、
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項9】
被検体を第1のスライス設定条件によってスライス位置を変えながら撮像した複数の第1のスライス画像、又はスライス位置を固定して撮像した第1のスライス画像を入力し、
前記被検体を前記第1のスライス設定条件とは異なる第2のスライス設定条件によってスライス位置を変えながら撮像した複数の第2のスライス画像を入力し、
前記複数の第2のスライス画像を3次元ボリュームデータに変換し、前記3次元ボリュームデータから、前記第1のスライス設定条件に合致するようにスライスを切り出して変換スライス画像を生成し、スライス位置及びスライス方向が互いに対応する前記第1のスライス画像と前記変換スライス画像とを合成して合成スライス画像を生成し、
前記合成スライス画像を表示する、
ステップを備えたことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置の画像処理方法。
【請求項10】
スライス位置を変えながら撮像した前記複数の第1のスライス画像及び前記複数の第2のスライス画像は、いずれも形態画像である、
ことを特徴とする請求項9に記載の磁気共鳴イメージング装置の画像処理方法。
【請求項11】
スライス位置を固定して撮像した前記第1のスライス画像は機能画像であり、前記複数の第2のスライス画像は形態画像であり、
前記合成するステップは、時系列に沿って撮像した前記複数の機能画像と前記変換スライス画像とを合成して前記時系列に対応する複数の合成スライス画像を生成する、
ことを特徴とする請求項9に記載の磁気共鳴イメージング装置の画像処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−22185(P2013−22185A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−158897(P2011−158897)
【出願日】平成23年7月20日(2011.7.20)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】