説明

磁気共鳴イメージング装置

【課題】被検体の動きに起因するアーチファクトを抑制した磁気共鳴画像を短時間で撮像すること。
【解決手段】シーケンス情報生成部26aは、データ収集領域を形成する複数のデータ収集軌跡のうち、当該データ収集領域内の少なくとも外側に位置するデータ収集軌跡のデータ収集開始位置がk空間の原点近傍におけるデータ収集位置より同一の位相エンコード方向にて離れた位置となるように位相エンコードの傾斜磁場を強く設定する。さらに、シーケンス情報生成部26aは、データ収集開始時に印加される位相エンコード用傾斜磁場とは逆符号の傾斜磁場から同符号の傾斜磁場へと磁場強度が変化する位相エンコード用傾斜磁場をデータ収集中に印加させるシーケンス情報を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、磁気共鳴イメージング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴イメージング装置は、磁気共鳴現象を利用して被検体内を画像化する装置である。具体的には、磁気共鳴イメージング装置は、静磁場内に置かれた被検体に高周波(RF:Radio Frequency)磁場を印加し、それにより被検体から発せられる磁気共鳴信号を検出する。そして、磁気共鳴イメージング装置は、検出した磁気共鳴(MR: Magnetic Resonance)信号に基づいて磁気共鳴画像を再構成する。なお、磁気共鳴イメージング装置は、傾斜磁場コイルを有し、傾斜磁場コイルは、被検体に傾斜磁場を印加することで、磁気共鳴信号に空間的な位置情報を付加する。
【0003】
ところで、撮像中に被検体が動くと、動きによるアーチファクトが磁気共鳴画像に生じてしまう。このようなアーチファクトは、医師による磁気共鳴画像を用いた画像診断を困難とさせる原因となる。
【0004】
そこで、従来、被検体の動きを補正した磁気共鳴画像を再構成する方法として、例えば、PROPELLER (periodically rotated overlapping parallel lines with enhanced reconstruction)法が知られている(例えば、非特許文献1参照)。なお、PROPELLER法は、BLADE法とも呼ばれており、以下では、「blade回転データ収集法」と記載する。図17および18は、従来技術を説明するための図である。
【0005】
blade回転データ収集法は、図17に示すように、複数の平行なデータ収集軌跡により形成される「blade」と呼ばれる帯状領域を繰り返し時間ごとに回転させることによって、k空間において磁気共鳴信号のデータを非直交状(non-cartecian grid)に収集して充填する方法である。具体的には、blade回転データ収集法は、FSE(Fast Spin Echo)法などのマルチショットが可能な撮像法において実行され、繰り返し時間ごとに傾斜磁場を変化させることでbladeをk空間の原点を中心として回転させる。なお、blade回転データ収集法においては、通常、図17に示すように、bladeの長辺がリードアウト方向とされ、bladeの短辺が位相エンコード方向とされる。
【0006】
かかるblade回転データ収集法により収集されたデータでは、図17に示すように、k空間の原点近傍のデータが、各bladeに必ず存在する。したがって、bladeごとのデータをフーリエ変換して得られる各画像を比較することで、時系列の異なる各bladeに対応する各画像間の移動量を決定することができる。
【0007】
そして、決定した移動量に基づいて、各画像間のずれを回転移動や並進移動により補正し、補正処理された各bladeに対応する画像から逆フーリエ変換により生成された磁気共鳴信号のデータを再度フーリエ変換することで、被検体の動きに起因するアーチファクトが抑制された磁気共鳴画像を再構成することができる。
【0008】
また、通常のblade回転データ収集法では、上述したように、bladeの長辺がリードアウト方向とされるが、これにより静磁場不均一に起因する位相誤差が大きくなる場合がある。そこで、位相誤差を除去するため、図18に示すように、例えばEPI(Echo Planar Imaging)法においてbladeの短辺をリードアウト方向とし、bladeの長辺を位相エンコード方向として、bladeを繰り返し時間ごとに回転させるデータ収集法(Short Axis PROPELLER法)も提案されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Motion Correction With PROPELLER MRI: Application to Head Motion and Free-Breathing Cardiac Imaging, James G. Pipe, Magnetic Resonance in Medicine 42:963-969(1999)
【非特許文献2】A new propeller EPI design using short axis readouts, S. Skare et al., Proc. Intl. Soc. Mag. Reson. Med. 14:14(2006)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、上記した従来の技術では、被検体の動きに起因するアーチファクトを抑制した磁気共鳴画像を撮像するためにk空間において磁気共鳴信号のデータを重複して充填させていくので、撮像時間が長くなってしまう。図19は、従来技術の課題を説明するための図である。
【0011】
しかし、撮像時間の短縮のため、RFパルスのショット数を減らしたり、bladeの数を減らしたりすると、図19に示すように、blade間に隙間が生じ、かかるblade間の隙間は、磁気共鳴画像に線状アーチファクトが発生する要因となってしまう。
【0012】
したがって、上記した従来の技術は、被検体の動きに起因するアーチファクトを抑制した磁気共鳴画像の撮像時間を短縮することができないという課題があった。
【0013】
そこで、この発明は、上述した従来技術の課題を解決するためになされたものであり、被検体の動きに起因するアーチファクトを抑制した磁気共鳴画像を短時間で撮像することが可能となる磁気共鳴イメージング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1記載の本発明は、磁気共鳴イメージング装置が、複数のデータ収集軌跡により形成されるデータ収集領域を繰り返し時間ごとに回転させて磁気共鳴信号のデータを収集する際に、位相エンコード方向、またはリードアウト方向における前記データ収集領域の幅がk空間の原点から離れた位置にてk空間の原点近傍の幅より広がるように制御するデータ収集制御手段と、前記データ収集制御手段の制御により収集された前記磁気共鳴信号のデータから磁気共鳴画像を再構成する画像再構成手段と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明によれば、被検体の動きに起因するアーチファクトを抑制した磁気共鳴画像を短時間で撮像することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、実施例1に係るMRI装置の構成を説明するための図である。
【図2】図2は、FSE法においてblade回転データ収集法を実行する際のシーケンス情報を説明するための図である。
【図3】図3は、FSE法においてblade回転データ収集法を実行した際のデータ充填パターンを説明するための図である。
【図4】図4は、シーケンス情報生成部が生成するシーケンス情報の概要を説明するための図である。
【図5】図5は、FSE法における実施例1に係るシーケンス情報の具体例を説明するための図である。
【図6】図6は、図5に示すシーケンス情報による磁気共鳴信号のデータ充填パターンを説明するための図である。
【図7】図7は、FE法における実施例1に係るシーケンス情報の具体例を説明するための図である。
【図8】図8は、EPI法における実施例1に係るシーケンス情報の具体例を説明するための図である。
【図9】図9は、図8に示すシーケンス情報による磁気共鳴信号のデータ充填パターンを説明するための図である。
【図10】図10は、実施例1に係るMRI装置の処理を説明するためのフローチャートである。
【図11】図11は、bladeの形状がリードアウト方向において非対称である場合のデータ充填パターンを説明するための図である。
【図12】図12は、FSE法における実施例2に係るシーケンス情報の具体例を説明するための図である。
【図13】図13は、図12に示すシーケンス情報による磁気共鳴信号のデータ充填パターンを説明するための図である。
【図14】図14は、Short Axis PROPELLER法のデータ充填パターンを説明するための図である。
【図15】図15は、実施例3に係るシーケンス情報を説明するための図である。
【図16】図16は、図15に示すシーケンス情報による磁気共鳴信号のデータ充填パターンを説明するための図である。
【図17】図17は、従来技術を説明するための図(1)である。
【図18】図18は、従来技術を説明するための図(2)である。
【図19】図19は、従来技術の課題を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本実施形態の磁気共鳴イメージング装置を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下では、磁気共鳴イメージング装置を「MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置」と呼ぶ。
【実施例1】
【0018】
まず、実施例1に係るMRI装置の構成について説明する。図1は、実施例1に係るMRI装置の構成を説明するための図である。図1に示すように、実施例1に係るMRI装置100は、静磁場磁石1、傾斜磁場コイル2、傾斜磁場電源3、寝台4、寝台制御部5、送信コイル6、送信部7、受信コイル8、受信部9、シーケンス制御部10および計算機システム20を有する。
【0019】
静磁場磁石1は、中空の円筒形状に形成された磁石であり、内部の空間に一様な静磁場を発生する。静磁場磁石1としては、例えば、永久磁石、超伝導磁石などが使用される。
【0020】
傾斜磁場コイル2は、中空の円筒形状に形成されたコイルであり、静磁場磁石1の内側に配置される。傾斜磁場コイル2は、互いに直交するX,Y,Zの各軸に対応する3つのコイルが組み合わされて形成されており、これら3つのコイルは、後述する傾斜磁場電源3から個別に電流供給を受けて、X,Y,Zの各軸に沿って磁場強度が変化する傾斜磁場を発生させる。なお、Z軸方向は、静磁場と同方向とする。
【0021】
傾斜磁場電源3は、傾斜磁場コイル2に電流を供給する装置である。
【0022】
ここで、傾斜磁場コイル2によって発生するX,Y,Z各軸の傾斜磁場は、例えば、スライス選択用傾斜磁場「Gss」、位相エンコード方向の傾斜磁場「Gpe」およびリードアウト方向の傾斜磁場「Gro」にそれぞれ対応している。スライス選択用傾斜磁場「Gss」は、任意に撮像断面(スライス面)を決めるために利用される。位相エンコード方向の傾斜磁場「Gpe」は、主として空間的位置に応じて磁気共鳴信号の位相を変化させるために利用される。リードアウト方向の傾斜磁場「Gro」は、空間的位置に応じて磁気共鳴信号の周波数を変化させるために利用される。なお、ここでは、便宜上、通常の位相エンコード、周波数エンコードの方法に従って位相エンコード方向、リードアウト方向を定義しているが、本実施形態においては、後述するように、ここで位相エンコード方向と定義される方向に、位相エンコードのみならず周波数エンコードが付されることがある点を注意されたい。
【0023】
寝台4は、被検体Pが載置される天板4aを備え、寝台制御部5による制御のもと、被検体Pが載置された状態で天板4aを傾斜磁場コイル2の空洞(撮像口)内へ挿入する。通常、寝台4は、長手方向が静磁場磁石1の中心軸と平行になるように設置される。寝台制御部5は、後述する制御部26による制御のもと、寝台4を制御する装置であり、寝台4を駆動して、天板4aを長手方向および上下方向へ移動する。
【0024】
送信コイル6は、傾斜磁場コイル2の内側に配置され、送信部7から高周波パルスの供給を受けて高周波磁場を発生する。
【0025】
送信部7は、ラーモア周波数に対応する高周波パルスを送信コイル6に送信する。具体的には、送信部7は、発振部、位相選択部、周波数変換部、振幅変調部、高周波電力増幅部などを有する。発振部は、静磁場中における対象原子核に固有の共鳴周波数の高周波信号を発生する。位相選択部は、上記高周波信号の位相を選択する。周波数変換部は、位相選択部から出力された高周波信号の周波数を変換する。振幅変調部は、周波数変換部から出力された高周波信号の振幅を例えばsinc関数に従って変調する。高周波電力増幅部は、振幅変調部から出力された高周波信号を増幅する。
【0026】
受信コイル8は、傾斜磁場コイル2の内側に配置され、上記の高周波磁場の影響によって被検体Pから放射される磁気共鳴信号を受信する。そして、受信コイル8は、磁気共鳴信号を受信すると、受信した磁気共鳴信号を受信部9へ出力する。
【0027】
受信部9は、受信コイル8から出力される磁気共鳴信号を入力して磁気共鳴信号のデータを生成する。具体的には、受信部9は、選択器、前段増幅器、位相検波器およびアナログデジタル変換器を有する。選択器は、受信コイル8から出力される磁気共鳴信号を選択的に入力する。前段増幅器は、選択器から出力される磁気共鳴信号を増幅する。位相検波器は、前段増幅器から出力される磁気共鳴信号の位相を検波する。アナログデジタル変換器は、位相検波器から出力される信号をデジタル変換することで磁気共鳴信号のデータを生成する。
【0028】
シーケンス制御部10は、計算機システム20から送信されるシーケンス情報に基づいて、傾斜磁場電源3、送信部7および受信部9を駆動することで、被検体Pのスキャンを行う。そして、シーケンス制御部10は、傾斜磁場電源3、送信部7および受信部9を駆動して被検体Pをスキャンした結果、受信部9から磁気共鳴信号データが送信されると、その磁気共鳴信号データを計算機システム20へ転送する。
【0029】
なお、「シーケンス情報」とは、傾斜磁場電源3が傾斜磁場コイル2に供給する電源の強さや電源を供給するタイミング、送信部7が送信コイル6に送信する高周波信号の強さや高周波信号を送信するタイミング、受信部9が磁気共鳴信号を検出するタイミングなど、スキャンを行うための手順を時系列に沿って定義した情報である。すなわち、「シーケンス情報」は、k空間における磁気共鳴信号のデータを如何なる手順で充填するかを定義した情報である。
【0030】
計算機システム20は、MRI装置100の全体制御や、データ収集、画像再構成などを行ない、インタフェース部21、画像再構成部22、記憶部23、入力部24、表示部25および制御部26を有する。
【0031】
インタフェース部21は、シーケンス制御部10との間で授受される各種信号の入出力を制御する。例えば、インタフェース部21は、シーケンス制御部10に対してシーケンス情報を送信し、シーケンス制御部10から磁気共鳴信号データを受信する。磁気共鳴信号データを受信すると、インタフェース部21は、受信した磁気共鳴信号データを記憶部23に格納する。
【0032】
画像再構成部22は、記憶部23に記憶された磁気共鳴信号データに対して、後処理、すなわちフーリエ変換等の再構成処理を施すことによって、画像データ(磁気共鳴画像)を再構成する処理部である。なお、本実施例1に係る画像再構成部22の再構成処理の詳細については、後に詳述する。
【0033】
記憶部23は、インタフェース部21により受信された磁気共鳴信号データや、画像再構成部22により再構成された画像データなどを記憶する。
【0034】
入力部24は、操作者から各種操作や情報入力を受け付け、マウスやトラックボールなどのポインティングデバイスやキーボードなどを有し、表示部25と協働することによって、各種操作を受け付けるためのユーザインタフェースをMRI装置100の操作者に対して提供する。
【0035】
表示部25は、後述する制御部26による制御のもと、画像データ等の各種の情報を表示する。表示部25としては、液晶表示器などの表示デバイスが利用可能である。
【0036】
制御部26は、図示していないCPUやメモリ等を有し、MRI装置100の全体制御を行う。具体的には、制御部26は、入力部24を介して操作者から入力される撮像条件に基づいてシーケンス情報を生成し、生成したシーケンス情報をシーケンス制御部10に送信することでスキャンを制御したり、スキャンの結果としてシーケンス制御部10から送られる磁気共鳴信号データに基づく画像の再構成を制御したりする。
【0037】
ここで、制御部26は、図1に示すように、シーケンス情報生成部26aを有し、シーケンス情報生成部26aは、入力部24を介して操作者から入力される撮像条件に基づいてシーケンス情報を生成する。なお、本実施例1に係るシーケンス情報生成部26aが生成するシーケンス情報については、後に詳述する。
【0038】
このように、本実施例1におけるMRI装置100は、被検体P内から発せられる磁気共鳴信号を収集して磁気共鳴画像を再構成する装置である。そして、本実施例1におけるMRI装置100は、シーケンス情報生成部26aが生成するシーケンス情報に基づいて磁気共鳴信号を収集することで、被検体Pの動きに起因するアーチファクトを抑制した磁気共鳴画像を短時間で撮像可能となるように構成された装置である。
【0039】
具体的には、シーケンス情報生成部26aは、blade回転データ収集法が磁気共鳴画像の撮像条件として入力された場合、以下に説明するシーケンス情報を生成することでデータ収集の制御を行なう。なお、blade回転データ収集法とは、FSE(Fast Spin Echo)法などのマルチショットが可能な撮像法において実行され、複数の平行なデータ収集軌跡により形成される「blade」と呼ばれる帯状領域を繰り返し時間ごとに回転させることによって、k空間における磁気共鳴信号のデータを非直交状(non-cartecian grid)に収集して充填する方法である。 以下、シーケンス情報生成部26aが生成するシーケンス情報の具体例について説明する。最初に、blade回転データ収集法をFSE(Fast Spin Echo)法にて実行する際に、従来のシーケンス情報生成部26aが生成していたシーケンス情報について、図2および3を用いて説明する。図2は、FSE法においてblade回転データ収集法を実行する際のシーケンス情報を説明するための図であり、図3は、FSE法においてblade回転データ収集法を実行した際のデータ充填パターンを説明するための図である。
【0040】
FSE法では、RFパルス系列において、90°パルスの後に複数のエコー再収集パルス(通常は、180°パルス)を繰り返し加えて磁気共鳴信号(エコー信号)のエコー列が収集される(図2の(A)に示す「RF」を参照)。
【0041】
そして、FSE法にて実行されるblade回転データ収集法では、図2の(A)に示すように、位相エンコード方向の磁気共鳴信号のk空間におけるデータ収集位置を決めるための位相エンコード方向の傾斜磁場「Gpe」がデータ収集開始前およびデータ収集終了後それぞれで印加される。なお、データ収集終了後に印加される「Gpe」は、データ収集開始前に印加された「Gpe」により決められた位相エンコード方向の位置を初期位置に戻すために印加されるものであり、データ収集開始前およびデータ収集終了後に印加される位相エンコード方向の傾斜磁場の値は、絶対値は同一であるが、符号が反転されている。
【0042】
さらに、FSE法にて実行されるblade回転データ収集法では、図2の(A)に示すように、磁気共鳴信号の収集中にリードアウト方向の傾斜磁場「Gro」が印加される。このように位相エンコード方向の傾斜磁場およびリードアウト方向の傾斜磁場を印加することで、「Gpe」により決められた位相エンコード方向のデータ収集位置においてリードアウト方向に沿ったエコー列が1本収集される。
【0043】
ここで、位相エンコード方向の傾斜磁場は、180°パルスが加えられるごとに、磁場強度を変えて印加され、これにより、複数の平行なデータ収集軌跡からなるbladeが形成される。なお、図2の(A)に示す「Gss」は、被検体Pを撮像する際のスライス面が選択するために印加されるスライス選択用傾斜磁場を示すものである。
【0044】
例えば、5本の平行なデータ収集軌跡からなるbladeを形成する場合、FSE法にて実行されるblade回転データ収集法では、180°パルスが印加されるごとに、磁場強度を5回変化させた位相エンコード方向の傾斜磁場を印加する。図2の(A)では5本分の平行なデータ収集軌跡におけるシーケンスを重畳して示してあるが、図2の(B)において、それぞれのデータ収集軌跡における位相エンコード方向の傾斜磁場のシーケンスを別個に分けて示す。これにより、MRI装置100は、リードアウト方向に沿ったエコー列を位相エンコード方向の位置を変えながら収集する。なお、図2の(B)に示すように、blade の形状は、長辺がリードアウト方向、短辺が位相エンコード方向となる。
【0045】
そして、MRI装置100は、直交する3軸の傾斜磁場のうち、スライス選択に用いている傾斜磁場を除く2軸の傾斜磁場の強度比(例えば、X軸およびY軸の傾斜磁場の強度比)を変化させることによって、bladeをk空間の原点を中心として回転させる。その結果、図3に示すように、磁気共鳴信号のデータがblade単位でk空間にて充填される。
【0046】
しかし、前述したように、撮像時間短縮のために、RFパルスのショット数を減らしたり、bladeの数を減らしたりすると、blade間に隙間が生じ、かかるblade間の隙間は、磁気共鳴画像に線状のアーチファクトが発生する要因となってしまう。
【0047】
そこで、本実施例1に係るシーケンス情報生成部26aは、操作者が撮像時間を短くするために、撮像条件にて、RFパルスのショット数や、bladeの数を少なく設定した場合でも、blade間に隙間が生じないようなシーケンス情報を生成する。図4は、シーケンス情報生成部が生成するシーケンス情報の概要を説明するための図である。
【0048】
すなわち、シーケンス情報生成部26aは、図4に示すように、複数のデータ収集軌跡により形成されるデータ収集領域において、位相エンコード方向のデータ収集領域の幅がk空間の原点から離れた位置にてk空間の原点近傍の幅より広がるように制御するシーケンス情報を生成する。MRI装置100は、かかるシーケンス情報を実行することにより、データ収集領域を矩形ではなく末広がりの形状とする。これにより、MRI装置100は、磁気共鳴信号のデータ収集領域間に隙間が生じることを回避する。
【0049】
例えば、シーケンス情報生成部26aは、FSE法において、位相エンコード方向のデータ収集領域の幅がk空間の原点から離れた位置にてk空間の原点近傍の幅より広がるデータ収集領域を形成させるために、図5に示すようなシーケンス情報を生成する。図5は、FSE法における実施例1に係るシーケンス情報の具体例を説明するための図である。
【0050】
図2の(A)に示す一例と同様、シーケンス情報生成部26aは、図5の(A)に示すように、データ収集開始前およびデータ収集終了後それぞれで位相エンコード方向の傾斜磁場を印加する。なお、以下では、データ収集開始時を「t=0」とし、「t=0」の前に印加される位相エンコード方向の傾斜磁場の値を「G(0)」として記載する。また、以下では、データ収集終了時を「t=T」とし、「t=T」の後に印加される位相エンコード方向の傾斜磁場の値を「G(T)」として記載する。なお、「G(0)」と「G(T)」とは、「G(0)=−G(T)」の関係となる。
【0051】
そして、シーケンス情報生成部26aは、データ収集領域を形成する複数のデータ収集軌跡のうち、当該データ収集領域内の少なくとも外側に位置するデータ収集軌跡のデータ収集開始位置がk空間の原点近傍におけるデータ収集位置より同一の位相エンコード方向にて離れた位置となるように位相エンコードの傾斜磁場を強く設定する。
【0052】
例えば、従来印加されていたデータ収集開始前の位相エンコード方向の傾斜磁場を「G0(0)」とすると、「G(0)」は、「|G(0)|>|G0(0)|(ただし、G(0)とG0(0)とは同符号)」となるように設定される。これにより、従来印加されていたデータ収集終了後の位相エンコード方向の傾斜磁場を「G0(T)」とすると、「G(T)」は、「|G(T)|>|G0(T)|(ただし、G(T)とG0(T)とは同符号)」と設定される。
【0053】
そして、シーケンス情報生成部26aは、リードアウト方向の傾斜磁場が印加されているデータ収集中においても、位相エンコード方向に傾斜磁場を新たに印加させるシーケンス情報を生成する。具体的には、シーケンス情報生成部26aは、図5の(A)に示すように、データ収集開始前に印加される位相エンコード方向の傾斜磁場「G(0)」とは逆符号の傾斜磁場から同符号の傾斜磁場へと磁場強度が変化する位相エンコード方向の傾斜磁場をデータ収集中にさらに印加させるシーケンス情報を生成する。なお、ここで印加する傾斜磁場は、位相エンコード方向に傾斜し、通常は位相エンコード方向の傾斜磁場を発生するための傾斜磁場コイルを用いて印加されるものである。しかし、この傾斜磁場はデータ収集中に印加する傾斜磁場であるため、位相エンコードではなく周波数エンコードされる。換言すれば、本実施形態においては、従来位相エンコード方向で定義される方向にも周波数エンコードしている。以下、この傾斜磁場を位相エンコード方向の傾斜磁場と記載するが、本実施形態において位相エンコード方向の傾斜磁場は、位相エンコードのために印加されるものには限られないことに注意されたい。
【0054】
なお、シーケンス情報生成部26aは、従来のFSE法と同様に、位相エンコード方向の傾斜磁場が、180°パルスが加えられるごとに磁場強度を変えて印加されるシーケンス情報を生成する。図5の(A)では5本分の平行なデータ収集軌跡におけるシーケンスを重畳して示してあるが、図5の(B)において、それぞれのデータ収集軌跡における位相エンコード方向の傾斜磁場のシーケンスを別個に分けて示す。
【0055】
例えば、シーケンス情報生成部26aは、5本のデータ収集軌跡によりデータ収集領域を形成する場合、図5の(B)に示すように、データ収集軌跡(c)以外のデータ収集軌跡(a,b,d,e)については、「G(0)」の絶対値を「G0(0)」より強く設定したシーケンス情報を生成する。これにより、データ収集軌跡(a,b,d,e)の開始点の位置が、k空間原点近傍のデータ収集位置より同一の位相エンコード方向にて離れた位置となる。
【0056】
さらに、シーケンス情報生成部26aは、図5の(B)に示すように、データ収集軌跡(a,b,d,e)において、Groの印加中にも、「G(0)」とは逆符号の傾斜磁場から同符号の傾斜磁場へと直線的に変化する位相エンコード方向の傾斜磁場を印加させるシーケンス情報を生成する。かかる傾斜磁場により、データ収集軌跡(a,b,d,e)は、図5の(B)に示すように、時系列に沿って、位相エンコード方向に近づいた後に、再度位相エンコード方向に離れた位置に戻る軌跡となる。なお、k空間上で位相エンコード方向に離れた位置となったデータ収集終了位置は、「G(T)」により初期位置に戻され、さらに、次のデータ収集軌跡によるデータ収集を行なうために、180°パルスにより180°反転された位置に戻されることとなる。
【0057】
シーケンス情報生成部26aが生成したシーケンス情報は、インタフェース部21を介してシーケンス制御部10に対して送信され、シーケンス制御部10は、傾斜磁場電源3、送信部7および受信部9を駆動することで、被検体Pのスキャンを行う。図6は、図5に示すシーケンス情報による磁気共鳴信号のデータ充填パターンを説明するための図である。
【0058】
これにより、図6に示すように、5本のデータ収集軌跡により位相エンコード方向の両端が末広がりの形状となるデータ収集領域にて磁気共鳴信号のデータがk空間に充填される。なお、G(0)およびデータ収集中に印加される位相エンコード方向の傾斜磁場の磁場強度は、撮像条件として設定されたRFパルスのショット数およびbladeの数によりk空間を充填させた場合に生じるblade間の隙間の大きさに基づいて、操作者により手動で設定される場合でもよいし、制御部26の計算処理により自動的に設置される場合であってもよい。
【0059】
そして、図1に示す画像再構成部22は、シーケンス情報生成部26aが生成したシーケンス情報により収集された磁気共鳴信号のデータを用いて磁気共鳴画像を再構成する。具体的には、画像再構成部22は、各データ収集領域のサンプリング時間のずれを補正するなどの位相補正を行なう。
【0060】
ここで、PROPELLER法によって得られたデータは、図3に示すような変則的なデータ収集軌跡に沿って得られる。したがって、画像再構成部22は、データ収集軌跡に沿って得られているデータを通常の再構成処理で用いる直交マトリクスに沿ったデータに変換してもよい。具体的には、直交マトリクスの各位置のデータを得るために、対象となる位置の近隣に存在するデータ収集軌跡上のデータに基づく補間を行うことにより変換を行う。さらにここで、本実施例においては、k空間の原点から離れた位置では、データ収集軌跡に沿って得られるデータの密度が低くなるため、原点からの距離が遠くなるに従って、この補間のために用いるデータの範囲を広くしてもよい。より理想的には、原点からの距離に関わらず、同じ量のデータに基づいて直交マトリクス上の各点が得られるよう、補間の範囲を広くするなどの処理を行う。
【0061】
そして、画像再構成部22は、位相補正後のデータ収集領域ごとのデータをフーリエ変換により低分解能画像に変換する。これにより、画像再構成部22は、時系列の異なる各データ収集領域に対応する各低分解能画像を比較することで、各画像間の移動量を決定する。
【0062】
そして、画像再構成部22は、決定した移動量に基づいて、各低分解能画像間のずれを回転移動や並進移動により補正する。そして、画像再構成部22は、回転移動や並進移動の補正を行っても非剛体性の動きなどの影響により適切に補正されないデータを再構成処理の対象から除外するために各データ収集領域に対する重み付け処理を行なう。そして、画像再構成部22は、各低分解能画像を逆フーリエ変換により磁気共鳴信号データに変換する。そして、画像再構成部22は、再構成処理に用いる磁気共鳴信号データを各データ収集領域に付与された重み付けに基づいて決定し、磁気共鳴画像を再構成する。
【0063】
なお、末広がりのデータ収集領域により磁気共鳴信号のデータを充填させるシーケンス情報は、FSE法にて実行される場合に限定されるものではなく、他の撮像法においても実行される場合であってもよいものである。そこで、以下では、FE(Field Echo)法やEPI(Echo Planner Imaging)によりk空間を末広がりのデータ収集領域にて充填させる場合のシーケンス情報について図7〜9を用いて説明する。なお、図7は、FE法における実施例1に係るシーケンス情報の具体例を説明するための図であり、図8は、EPI法における実施例1に係るシーケンス情報のFE法における具体例を説明するための図であり、図9は、図8に示すシーケンス情報による磁気共鳴信号のデータ充填パターンを説明するための図である。
【0064】
FE法においては、180°パルスを加える代わりに、RFパルスとリードアウト方向の傾斜磁場とを反転させることでエコー信号を再収集させる(図7の「Gro」参照)。
【0065】
ここで、FE法においても、シーケンス情報生成部26aは、末広がりの形状となるデータ収集領域によりデータを収集するため、データ収集領域を形成する複数のデータ収集軌跡のうち、当該データ収集領域内の少なくとも外側に位置するデータ収集軌跡におけるデータ収集開始前の位相エンコード方向の傾斜磁場「G(0)」を、「|G(0)|>|G0(0)|(ただし、G(0)とG0(0)とは同符号)」となるように設定する。そして、シーケンス情報生成部26aは、「G(T)」を、「|G(T)|>|G0(T)|(ただし、G(T)とG0(T)とは同符号)」と設定する。
【0066】
さらに、シーケンス情報生成部26aは、図7に示すように、データ収集開始前に印加される位相エンコード方向の傾斜磁場「G(0)」とは逆符号の傾斜磁場から同符号の傾斜磁場へと磁場強度が変化する位相エンコード方向の傾斜磁場をデータ収集中にさらに印加させるシーケンス情報を生成する。これをさらに前述のシーケンスと同様に位相エンコード方向の磁場強度を変化させて、複数本のデータ収集軌跡を得る。これにより、FSE法と同様に、図6に示すように、位相エンコード方向の両端が末広がりの形状となるデータ収集領域にて磁気共鳴信号のデータがk空間に充填される。
【0067】
また、EPI法は、磁気共鳴信号のデータを高速に収集するために、データ収集時にプラスとマイナスとのリードアウト方向の傾斜磁場を高速に切り替えて、k空間を一筆書きのようにスキャンする方法である(図8の「Gro」参照)。かかる処理により、データ収集軌跡の終了位置と、当該データ収集軌跡の次に収集されるデータ収集軌跡の開始位置とがリードアウト方向において同一位置となる。すなわち、EPI法においては、「G(T)」は印加されない。
【0068】
ここで、EPI法においても、末広がりの形状となるデータ収集領域によりデータを収集するため、シーケンス情報生成部26aは、データ収集領域を形成する複数のデータ収集軌跡のうち、当該データ収集領域内の少なくとも外側に位置するデータ収集軌跡におけるデータ収集開始前の位相エンコード方向の傾斜磁場「G(0)」を、「|G(0)|>|G0(0)|(ただし、G(0)とG0(0)とは同符号)」となるように設定する。さらに、シーケンス情報生成部26aは、図8に示すように、データ収集開始前に印加される位相エンコード方向の傾斜磁場「G(0)」とは逆符号の傾斜磁場から同符号の傾斜磁場へと磁場強度が変化する位相エンコード方向の傾斜磁場をデータ収集中にさらに印加させるシーケンス情報を生成する。
【0069】
これにより、EPI法において、例えば、5本のデータ収集軌跡によりデータ収集領域を形成する場合、図8に示すように、データ収集軌跡の終了位置と当該データ収集軌跡の次に収集されるデータ収集軌跡の開始位置とがリードアウト方向において同一位置となる以外は、図5に示すデータ収集軌跡と同様の形状となる。
【0070】
かかるシーケンス情報が実行されることで、図9に示すように、5本のデータ収集軌跡により末広がりの形状となるデータ収集領域にて磁気共鳴信号のデータが一筆書きのように収集されて、k空間に充填される。
【0071】
次に、図10を用いて、実施例1に係るMRI装置100の処理について説明する。図10は、実施例1に係るMRI装置の処理を説明するためのフローチャートである。
【0072】
図10に示すように、実施例1に係るMRI装置100は、入力部24を介して操作者から磁気共鳴画像の撮像条件とともに、撮像開始要求を受け付けると(ステップS101肯定)、処理を開始する。具体的には、MRI装置100は、磁気共鳴画像の撮像法として、複数の平行なデータ収集軌跡により形成されるbladeを繰り返し時間毎に回転させて磁気共鳴信号のデータを収集する撮像法を実行する要求を受付けた場合、以下の処理を開始する。
【0073】
まず、シーケンス情報生成部26aは、複数のデータ収集軌跡により形成されるデータ収集領域において、位相エンコード方向のデータ収集領域の幅がk空間の原点から離れた位置にてk空間の原点近傍の幅より広がるように制御するシーケンス情報を生成する(S102)。例えば、シーケンス情報生成部26aは、撮像条件がFSE法である場合、図5に例示したシーケンス情報を生成し、撮像条件がFE法である場合、図7に例示したシーケンス情報を生成し、撮像条件がEPI法である場合、図8に例示したシーケンス情報を生成する。
【0074】
そして、シーケンス情報生成部26aが生成したシーケンス情報は、インタフェース部21を介してシーケンス制御部10に対して送信され、シーケンス制御部10は、傾斜磁場電源3、送信部7および受信部9を駆動する。これにより、受信部9は、末広がりの形状となるデータ収集領域により磁気共鳴信号のデータを収集する(ステップS103)。
【0075】
その後、画像再構成部22は、各データ収集領域のサンプリング時間のずれを補正するなどの位相補正を行なう(ステップS104)。
【0076】
続いて、画像再構成部22は、位相補正後のデータ収集領域ごとの磁気共鳴信号のデータをフーリエ変換により低分解能画像に変換し、各低分解能画像を比較することで、各画像間の移動量を決定する。
【0077】
そして、画像再構成部22は、決定した移動量に基づいて、回転移動による補正を行ない(ステップS105)、さらに、並進移動による補正を行なう(ステップS106)。
【0078】
その後、画像再構成部22は、各データ収集領域に対する重み付け処理を行ない(ステップS107)、各低分解能画像を逆フーリエ変換により磁気共鳴信号のデータに変換する。
【0079】
続いて、画像再構成部22は、再構成処理に用いる磁気共鳴信号データを各データ収集領域に付与された重み付けに基づいて決定したうえで、磁気共鳴画像を再構成し(ステップS108)、処理を終了する。
【0080】
なお、本実施例1では、データ収集中に印加される位相エンコード方向の傾斜磁場が直線的に変化するように設定される場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、データ収集中に印加される位相エンコード方向の傾斜磁場は、2次曲線的に変化するなど、非線形な任意のパターンにて変化される場合であってもよい。ただし、「G(0)」と「G(T)」と『「t=0」から「t=T」にて印加された位相エンコード方向の傾斜磁場の積分値』との和が「0」となることが必要である。
【0081】
上述したように、実施例1では、シーケンス情報生成部26aは、複数のデータ収集軌跡により形成されるデータ収集領域において、位相エンコード方向のデータ収集領域の幅がk空間の原点から離れた位置にてk空間の原点近傍の幅より広がるように制御するシーケンス情報を生成する。
【0082】
具体的には、シーケンス情報生成部26aは、データ収集領域を形成する複数のデータ収集軌跡のうち、当該データ収集領域内の少なくとも外側に位置するデータ収集軌跡のデータ収集開始位置がk空間の原点近傍におけるデータ収集位置より同一の位相エンコード方向にて離れた位置となるように位相エンコードの傾斜磁場を強く設定する。さらに、シーケンス情報生成部26aは、データ収集開始前に印加される位相エンコード方向の傾斜磁場とは逆符号の傾斜磁場から同符号の傾斜磁場へと磁場強度が変化する位相エンコード方向の傾斜磁場をデータ収集中に印加させるシーケンス情報を生成する。そして、画像再構成部22は、シーケンス情報生成部26aが生成したシーケンス情報により収集された磁気共鳴信号のデータを用いて磁気共鳴画像を再構成する。
【0083】
したがって、実施例1によれば、RFパルスのショット数を減らしたり、データ収集領域の数を減らしたりしても、データ収集領域に隙間が生じることを回避することができるので、被検体の動きに起因するアーチファクトを抑制した磁気共鳴画像を短時間で撮像することが可能となる。
【実施例2】
【0084】
実施例1では、データ収集領域の形状がリードアウト方向において対称である場合に生成されるシーケンス情報について説明した。実施例2では、データ収集領域の形状がリードアウト方向において非対称である場合に生成されるシーケンス情報について説明する。
【0085】
図11は、bladeの形状がリードアウト方向において非対称である場合のデータ充填パターンを説明するための図である。エコー時間(TE)を短くすることで、磁気共鳴画像のT1コントラストを向上させるために、例えば、図11に示すように、リードアウト方向の前半部が短く、リードアウト方向の後半部が長い非対称なbladeにて磁気共鳴画像のデータをk空間に充填させる場合がある。
【0086】
かかる場合でも、撮像時間を短縮するために、RFパルスのショット数を減らしたり、bladeの数を減らしたりすると、blade間に隙間が生じてしまう。
【0087】
そこで、実施例2に係るシーケンス情報生成部26aは、位相エンコード方向におけるデータ収集領域の一方の幅がk空間の原点から離れた位置にてk空間の原点近傍の幅より広がるように制御するためのシーケンス情報を生成する。なお、以下では、FSE法にて生成されるシーケンス情報について説明するが、本実施例2は、FE法やEPI法においても適用可能である。
【0088】
具体的には、実施例2に係るシーケンス情報生成部26aは、リードアウト方向の後半部における位相エンコード方向の幅がk空間の原点から離れた位置にてk空間の原点近傍の幅より広がるデータ収集領域を形成するためシーケンス情報を生成する。
【0089】
図12は、FSE法における実施例2に係るシーケンス情報の具体例を説明するための図である。実施例2に係るシーケンス情報生成部26aは、磁気共鳴信号データ収集中に同符号にて変化する位相エンコードの傾斜磁場を印加する。
【0090】
すなわち、実施例2に係るシーケンス情報生成部26aは、リードアウト方向の後半部における位相エンコード方向の幅のみを広げるために、データ収集領域を形成する複数のデータ収集軌跡のうち、当該データ収集領域内の少なくとも外側に位置するデータ収集軌跡における磁気共鳴信号データ収集中に、同符号にて変化する位相エンコードの傾斜磁場を印加する。例えば、実施例2に係るシーケンス情報生成部26aは、エコーセンター付近の位相エンコード方向の傾斜磁場強度を「0」にし、その後のデータ収集期間で、位相エンコード方向の傾斜磁場強度の絶対値が時間に応じて同符合にて大きくなるようなシーケンス情報を生成する。ここで、データ収集期間に印加される位相エンコード方向の傾斜磁場の符号は、G(0)と同符号とされる。
【0091】
さらに、データ収集期間に印加される位相エンコード方向の傾斜磁場によりリードアウト方向の後半部における位相エンコード方向の幅のみを広げる場合、シーケンス情報生成部26aは、「G(0)」に関しては、従来の位相エンコード方向の傾斜磁場「G0(0)」と同じ値とし、「G(T)」に関しては、位相エンコード方向に離れた位置となったデータ収集位置を初期位置に戻すために、「G0(T)」と同一符号にて絶対値を大きく設定したシーケンス情報を生成する。すなわち、「G(T)」は、「|G(T)|>|G0(T)|(ただし、G(T)とG0(T)とは同符号)」となる。具体的には、「G(T)」の絶対値は、「G(0)」と『「t=0」から「t=T」にて印加された位相エンコード方向の傾斜磁場の積分値』との和の絶対値と等しくなることが必要となる。
【0092】
例えば、シーケンス情報生成部26aは、図12の(B)に示すように、データ収集軌跡(a,b,d,e)において、Groの印加中にも、磁場強度「0」から『「G(0)」と同符号の傾斜磁場』へ直線的に変化する位相エンコード方向の傾斜磁場を印加させるシーケンス情報を生成する。さらに、シーケンス情報生成部26aは、図12の(B)に示すように、データ収集軌跡(c)以外のデータ収集軌跡(a,b,d,e)については、「G(T)」の絶対値を大きく設定したシーケンス情報を生成する。これにより、データ収集軌跡(a,b,d,e)のリードアウト方向の後半部における端点の位置は、図12の(B)に示すように、k空間原点近傍のデータ収集位置より同一の位相エンコード方向にて離れた位置となる。
【0093】
そして、実施例1と同様に、シーケンス情報生成部26aが生成したシーケンス情報は、インタフェース部21を介してシーケンス制御部10に対して送信され、シーケンス制御部10は、傾斜磁場電源3、送信部7および受信部9を駆動することで、被検体Pのスキャンを行う。図13は、図12に示すシーケンス情報による磁気共鳴信号のデータ充填パターンを説明するための図である。
【0094】
これにより、図13に示すように、5本のデータ収集軌跡によりリードアウト方向の後半部のみが末広がりの形状となるデータ収集領域にて磁気共鳴信号のデータがk空間に充填される。
【0095】
なお、上述した一例では、リードアウト方向の前半部が短く、リードアウト方向の後半部が長い非対称なデータ収集領域にて磁気共鳴画像のデータをk空間に充填させる場合について説明したが、リードアウト方向の前半部が長く、リードアウト方向の後半部が短い非対称なデータ収集領域にて磁気共鳴画像のデータをk空間に充填させる場合であっても、本発明は適用可能である。
【0096】
具体的には、シーケンス情報生成部26aは、リードアウト方向の前半部における位相エンコード方向の幅のみを広げるため、シーケンス情報生成部26aは、「G(T)」に関しては、従来の位相エンコード方向の傾斜磁場「G0(T)」と同じ値とし、「G(0)」に関しては、データ収集開始位置を位相エンコード方向に離れた位置とさせるために、従来の位相エンコード方向の傾斜磁場と同一符号にて絶対値を大きく設定したシーケンス情報を生成する。すなわち、シーケンス情報生成部26aは、「G(0)」を、「|G(0)|>|G0(0)|(ただし、G(0)とG0(0)とは同符号)」と設定する。
【0097】
そして、シーケンス情報生成部26aは、リードアウト方向の前半部にて広がった位相エンコード方向の幅を狭めるために、例えば、データ収集開始直後の位相エンコード方向の傾斜磁場強度を「G(0)」と逆符号の磁場強度とし、その後、エコーセンター付近の位相エンコード方向の傾斜磁場強度が「0」となるように変化するシーケンス情報を生成する。
【0098】
これにより、リードアウト方向の前半部のみが末広がりの形状となるデータ収集領域にて磁気共鳴信号のデータがk空間に充填される。
【0099】
なお、実施例2に係るMRI装置100の処理手順は、図10を用いて説明した実施例1に係るMRI装置100の処理手順のうち、ステップS102において生成されるシーケンス情報が図12に示すようなシーケンス情報である以外同じであるので説明を省略する。
【0100】
また、本実施例2でも、データ収集中に印加される位相エンコード方向の傾斜磁場が直線的に変化するように設定される場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、データ収集中に印加される位相エンコード方向の傾斜磁場は、2次曲線的に変化するなど、非線形な任意のパターンにて変化される場合であってもよい。
【0101】
上述したように、実施例2では、磁気共鳴画像のコントラストを向上させるためにデータ収集領域の形状がリードアウト方向において非対称である場合であっても、RFパルスのショット数を減らしたり、データ収集領域の数を減らしたりしても、データ収集領域に隙間が生じることを回避することができる。したがって、実施例2によれば、被検体の動きに起因するアーチファクトを抑制した磁気共鳴画像を短時間で撮像し、かつ、撮像される磁気共鳴画像の画質を向上することが可能となる。
【実施例3】
【0102】
実施例3では、Short Axis PROPELLER法と称されるデータ収集法において、blade間の隙間が生じることを回避する場合について、図14〜16を用いて説明する。なお、図14は、Short Axis PROPELLER法のデータ充填パターンを説明するための図であり、図15は、実施例3に係るシーケンス情報を説明するための図であり、図16は、図15に示すシーケンス情報による磁気共鳴信号のデータ充填パターンを説明するための図である。
【0103】
図14に示すように、Short Axis PROPELLER法では、EPI法においてbladeの短辺をリードアウト方向とし、bladeの長辺を位相エンコード方向として、bladeを繰り返し時間ごとに回転させることで、k空間にて磁気共鳴信号のデータが充填される。
【0104】
かかる収集法は、位相誤差を除去するためにEPI法にて実行されるものであるが、やはり、撮像時間を短縮するために、bladeの数を減らすと、blade間に隙間が生じてしまう。
【0105】
そこで、実施例3に係るシーケンス情報生成部26aは、図15の下図に示すように、リードアウト方向におけるデータ収集領域の幅がk空間の原点から離れた位置にてk空間の原点近傍の幅より広がるように、リードアウト方向の傾斜磁場の磁場強度を制御するシーケンス情報を生成する。
【0106】
すなわち、実施例3に係るシーケンス情報生成部26aは、データ収集時にプラスとマイナスとのリードアウト方向の傾斜磁場を高速に切り替える際に、図15の上図に示すように、リードアウト方向の傾斜磁場強度(Gro)の面積(磁場強度の時間積分値)を可変とする。例えば、実施例3に係るシーケンス情報生成部26aは、外側に位置するデータ収集軌跡にてデータを収集する際にリードアウト方向の傾斜磁場を印加する時間を、データ収集領域内の中心近傍に位置するデータ収集軌跡にてデータを収集する際の印加時間より長くすることで、磁場強度を変化させて、リードアウト方向の長さを可変とするシーケンス情報を生成する。
【0107】
かかるシーケンス情報により、図16に示すように、リードアウト方向の幅が末広がりの形状となるデータ収集領域により磁気共鳴信号のデータがk空間に充填される。
【0108】
なお、実施例3に係るMRI装置100の処理手順は、図10を用いて説明した実施例1に係るMRI装置100の処理手順のうち、ステップS102において生成されるシーケンス情報が図15に示すようなシーケンス情報である以外同じであるので説明を省略する。
【0109】
上述したように、実施例3では、Short Axis PROPELLER法においても、RFパルスのショット数を減らしたり、データ収集領域の数を減らしたりしても、データ収集領域に隙間が生じることを回避することができる。また、実施例3では、k空間中心付近のエコー間隔については短くしたままとなるので、位相誤差を抑えることができる。したがって、実施例3によれば、被検体の動きに起因するアーチファクトおよび位相誤差を抑制した磁気共鳴画像を短時間で撮像することが可能となる。
【0110】
なお、本実施例1〜3において説明した各処理のうち、自動的におこなわれるものとして説明した処理の全部または一部を手動的におこなうこともでき、あるいは、手動的におこなわれるものとして説明した処理の全部または一部を公知の方法で自動的におこなうこともできる。この他、上記文書中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各種のデータやパラメータを含む情報については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。
【0111】
また、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。さらに、各装置にて行なわれる各処理機能は、その全部または任意の一部が、CPUおよび当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、あるいは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。
【産業上の利用可能性】
【0112】
以上のように、本発明に係る磁気共鳴イメージング装置は、被検体内から発せられる磁気共鳴信号を収集して磁気共鳴画像を再構成する場合に有用であり、特に、被検体の動きに起因するアーチファクトを抑制した磁気共鳴画像を短時間で撮像することに適する。
【符号の説明】
【0113】
100 MRI装置(磁気共鳴イメージング装置)
1 静磁場磁石
2 傾斜磁場コイル
3 傾斜磁場電源
4 寝台
4a 天板
5 寝台制御部
6 送信コイル
7 送信部
8 受信コイル
9 受信部
10 シーケンス制御部
20 計算機システム
21 インタフェース部
22 画像再構成部
23 記憶部
24 入力部
25 表示部
26 制御部
26a シーケンス情報生成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のデータ収集軌跡により形成されるデータ収集領域を繰り返し時間ごとに回転させて磁気共鳴信号のデータを収集する際に、位相エンコード方向、またはリードアウト方向における前記データ収集領域の幅がk空間の原点から離れた位置にてk空間の原点近傍の幅より広がるように制御するデータ収集制御手段と、
前記データ収集制御手段の制御により収集された前記磁気共鳴信号のデータから磁気共鳴画像を再構成する画像再構成手段と、
を備えたことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
前記データ収集制御手段は、前記データ収集領域が位相エンコード方向よりもリードアウト方向に広くなるように制御し、前記データ収集領域を形成する複数のデータ収集軌跡のうち、当該データ収集領域内の少なくとも外側に位置するデータ収集軌跡において、データ収集開始前に印加される位相エンコード方向の傾斜磁場とは逆符号の傾斜磁場から同符号の傾斜磁場へと磁場強度が変化する位相エンコード方向の傾斜磁場をデータ収集中にさらに印加するように制御することを特徴とする請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
前記データ収集制御手段は、前記データ収集領域を形成する複数のデータ収集軌跡のうち、当該データ収集領域内の少なくとも外側に位置するデータ収集軌跡のデータ収集開始位置がk空間の原点近傍におけるデータ収集位置より同一の位相エンコード方向にて離れた位置となるように位相エンコード方向の傾斜磁場を強く設定するように制御することを特徴とする請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
前記データ収集領域の形状がリードアウト方向において非対称である場合、
前記データ収集制御手段は、前記データ収集領域を形成する複数のデータ収集軌跡のうち、当該データ収集領域内の少なくとも外側に位置するデータ収集軌跡における前記磁気共鳴信号のデータ収集中に、同符号にて変化する位相エンコード方向の傾斜磁場を印加するように制御することを特徴とする請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
前記データ収集制御手段は、前記データ収集領域がリードアウト方向よりも位相エンコード方向に広くなるように制御し、前記データ収集領域を形成する複数のデータ収集軌跡のうち、当該データ収集領域内の少なくとも外側に位置するデータ収集軌跡に対応するリードアウト方向の傾斜磁場をk空間の原点近傍におけるデータ収集軌跡に対応するリードアウト方向の傾斜磁場よりも長く印加するように制御することを特徴とする請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項6】
前記画像再構成手段は、k空間上の直交マトリクス上の複数の位置それぞれの近傍の補間範囲に位置する複数の前記データ収集軌跡上のデータに基づいて、前記データ収集軌跡上のデータを前記直交マトリクス上のデータに変換し、第一の位置のデータを得るための前記補間範囲は、前記第一の位置のよりも前記k空間に近い第二の位置のデータを得るための前記補間範囲よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2011−167509(P2011−167509A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−8989(P2011−8989)
【出願日】平成23年1月19日(2011.1.19)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】