説明

磁気共鳴イメージング装置

【課題】k空間の低周波領域に存在する異常データであっても検出して除去することにより、より良好な画質で画像データを生成することが可能な磁気共鳴イメージング装置を提供することである。
【解決手段】磁気共鳴イメージング装置は、データ収集手段、異常値検出手段、補正手段及び画像データ生成手段を備える。データ収集手段は、複数の高周波コイル及び受信チャンネルを用いて被検体から磁気共鳴信号を収集する。異常値検出手段は、複数の受信チャンネルで収集された磁気共鳴信号の重み付け加算によって各受信チャンネルのk空間上の各位置における磁気共鳴信号の計算値を算出し、収集された磁気共鳴信号と計算値との比較によって収集された磁気共鳴信号の異常データを検出する。補正手段は、異常データを補正する。画像データ生成手段は、補正後における磁気共鳴信号に基づいて画像データを生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、磁気共鳴イメージング(MRI: Magnetic Resonance Imaging)装置に関する。
【背景技術】
【0002】
MRIは、静磁場中に置かれた被検体の原子核スピンをラーモア周波数の高周波(RF: radio frequency)信号で磁気的に励起し、この励起に伴って発生する核磁気共鳴(NMR: nuclear magnetic resonance)信号から画像を再構成する撮像法である。
【0003】
MRIにおいて収集されたNMR信号は、k空間データとしてk空間に配置される。k空間データは、画像データの生成のための元データであるため、スパイクノイズ等の異常なデータを極力除去することが重要である。
【0004】
そこで、k空間において異常データを除去する様々な方法が考案されている。例えば、k空間の高周波領域におけるデータを用いて、スパイクノイズを除去する方法や低域通過型のアナログフィルタを用いることによって生データ上に出現するノイズ等の異常データを除去する方法が考案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
k空間の高周波領域におけるNMR信号の強度は相対的に小さく、低周波領域におけるNMR信号の強度は相対的に大きい。従って、k空間の高周波領域において高信号値を呈するスパイクノイズ等の異常データは、容易に検出して除去することが可能である。これに対して、k空間の低周波領域に存在する異常データは、高信号値を呈しても周辺の正常なNMR信号と容易に区別することができない。この結果、k空間の低周波領域に存在する異常データを除去することが困難になる場合があるという問題がある。
【0007】
本発明は、k空間の低周波領域に存在する異常データであっても検出して除去することにより、より良好な画質で画像データを生成することが可能な磁気共鳴イメージング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置は、データ収集手段、異常値検出手段、補正手段及び画像データ生成手段を備える。データ収集手段は、複数の高周波コイル及び前記複数の高周波コイルに接続される複数の受信チャンネルを用いて被検体から磁気共鳴信号を収集する。異常値検出手段は、前記複数の受信チャンネルでそれぞれk空間上の複数の位置について収集された磁気共鳴信号の重み付け加算によって各受信チャンネルのk空間上の各位置における磁気共鳴信号の計算値を算出し、収集された前記磁気共鳴信号と前記計算値との比較によって収集された前記磁気共鳴信号の異常データを検出する。補正手段は、前記異常データを補正する。画像データ生成手段は、前記異常データの補正後における磁気共鳴信号に基づいて画像データを生成する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置の構成図。
【図2】図1に示すRFコイルの詳細構成の一例を示す図。
【図3】図2に示す被検体の体表側に設けられるコイル要素の配置例を示す図。
【図4】図2に示す被検体の背面側に設けられるコイル要素の配置例を示す図。
【図5】図1に示すコンピュータの機能ブロック図。
【図6】図5に示す信号値算出部において、k空間のある位置におけるNMR信号の信号値を周辺のNMR信号の値から算出する方法を説明する図。
【図7】図5に示す信号値算出部において、k空間のある行におけるNMR信号列の信号値を周辺の行のNMR信号列から算出する方法を説明する図。
【図8】図5に示す信号値算出部において、ある受信チャンネルCHに対応するk空間のある行Lx(CH)におけるNMR信号列の信号値S(CH, Lx)を複数の受信チャンネルjで収集された周辺の行(L1, L2, L3, L4)のNMR信号列S(j, L1), S(j, L2), S(j, L3), S(j, L4)から算出する方法を説明する図。
【図9】図1に示す磁気共鳴イメージング装置によりk空間データの異常値補正処理を伴って被検体Pのイメージングを実行する際の流れを示すフローチャート。
【図10】図5に示す信号値算出部により設定されたカーネル関数Wを求めるためのk空間の領域及び異常データの検出対象として選択されたk空間の行の一例を示す図。
【図11】図5に示す信号値算出部による信号値の算出対象となるk空間の行Lm及びカーネル関数Wを用いて算出されたNMR信号の計算値Lcを示す図。
【図12】図5に示す異常値検出部による異常データの検出方法の一例を示す図。
【図13】図5に示す信号補正部による異常データの補正方法の一例を示す図。
【図14】図5に示す信号補正部により、複数の受信チャンネルにおいて検出された異常データを補正した例を示す図。
【図15】図5に示す信号値算出部41Aにより、異常データの補正後におけるk空間データを用いて再度カーネル関数Wを求める方法を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置について添付図面を参照して説明する。
【0011】
図1は本発明の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置の構成図である。
【0012】
磁気共鳴イメージング装置20は、静磁場を形成する筒状の静磁場用磁石21、この静磁場用磁石21の内部に設けられたシムコイル22、傾斜磁場コイル23及びRFコイル24を備えている。
【0013】
また、磁気共鳴イメージング装置20には、制御系25が備えられる。制御系25は、静磁場電源26、傾斜磁場電源27、シムコイル電源28、送信器29、受信器30、シーケンスコントローラ31及びコンピュータ32を具備している。制御系25の傾斜磁場電源27は、X軸傾斜磁場電源27x、Y軸傾斜磁場電源27y及びZ軸傾斜磁場電源27zで構成される。また、コンピュータ32には、入力装置33、表示装置34、演算装置35及び記憶装置36が備えられる。
【0014】
静磁場用磁石21は静磁場電源26と接続され、静磁場電源26から供給された電流により撮像領域に静磁場を形成させる機能を有する。尚、静磁場用磁石21は超伝導コイルで構成される場合が多く、励磁の際に静磁場電源26と接続されて電流が供給されるが、一旦励磁された後は非接続状態とされるのが一般的である。また、静磁場用磁石21を永久磁石で構成し、静磁場電源26が設けられない場合もある。
【0015】
また、静磁場用磁石21の内側には、同軸上に筒状のシムコイル22が設けられる。シムコイル22はシムコイル電源28と接続され、シムコイル電源28からシムコイル22に電流が供給されて静磁場が均一化されるように構成される。
【0016】
傾斜磁場コイル23は、X軸傾斜磁場コイル23x、Y軸傾斜磁場コイル23y及びZ軸傾斜磁場コイル23zで構成され、静磁場用磁石21の内部において筒状に形成される。傾斜磁場コイル23の内側には寝台37が設けられて撮像領域とされ、寝台37には被検体Pがセットされる。RFコイル24にはガントリに内蔵されたRF信号の送受信用の全身用コイルや寝台37や被検体P近傍に設けられるRF信号の受信用の局所コイルなどがある。
【0017】
また、傾斜磁場コイル23は、傾斜磁場電源27と接続される。傾斜磁場コイル23のX軸傾斜磁場コイル23x、Y軸傾斜磁場コイル23y及びZ軸傾斜磁場コイル23zはそれぞれ、傾斜磁場電源27のX軸傾斜磁場電源27x、Y軸傾斜磁場電源27y及びZ軸傾斜磁場電源27zと接続される。
【0018】
そして、X軸傾斜磁場電源27x、Y軸傾斜磁場電源27y及びZ軸傾斜磁場電源27zからそれぞれX軸傾斜磁場コイル23x、Y軸傾斜磁場コイル23y及びZ軸傾斜磁場コイル23zに供給された電流により、撮像領域にそれぞれX軸方向の傾斜磁場Gx、Y軸方向の傾斜磁場Gy、Z軸方向の傾斜磁場Gzを形成することができるように構成される。
【0019】
RFコイル24は、送信器29及び受信器30の少なくとも一方と接続される。送信用のRFコイル24は、送信器29からRF信号を受けて被検体Pに送信する機能を有し、受信用のRFコイル24は、被検体P内部の原子核スピンのRF信号による励起に伴って発生したNMR信号を受信して受信器30に与える機能を有する。
【0020】
図2は図1に示すRFコイル24の詳細構成の一例を示す図であり、図3は図2に示す被検体Pの体表側に設けられるコイル要素24cの配置例を示す図、図4は図2に示す被検体Pの背面側に設けられるコイル要素24cの配置例を示す図である。
【0021】
図2に示すようにRFコイル24は、筒状の全身用(WB: whole-body)コイル24aとフェーズドアレイコイル24bを備えている。フェーズドアレイコイル24bは、複数のコイル要素24cを備えており、被検体Pの体表側と背面側とにそれぞれ複数のコイル要素24cが配置される。
【0022】
例えば図3に示すように被検体の体表側には、広範囲の撮影部位がカバーされるようにx方向に4列、z方向に8列の合計32個のコイル要素24cが配置される。また、図4に示すように被検体の背面側にも同様に広範囲の撮影部位がカバーされるようにx方向に4列、z方向に8列の合計32個のコイル要素24cが配置される。背面側では、被検体Pの背骨の存在を考慮した感度向上の観点から、体軸付近に他のコイル要素24cよりも小さいコイル要素24cが配置される。
【0023】
一方、受信器30は、デュプレクサ30a,アンプ30b、切換合成器30c及び受信系回路30dを備えている。デュプレクサ30aは、送信器29、WBコイル24a及びWBコイル24a用のアンプ30bと接続される。アンプ30bは、各コイル要素24c及びWBコイル24aの数だけ設けられ、それぞれ個別に各コイル要素24c及びWBコイル24aと接続される。切換合成器30cは、単一又は複数個設けられ、切換合成器30cの入力側は、複数のアンプ30bを介して複数のコイル要素24又はWBコイル24aと接続される。受信系回路30dは、各コイル要素24c及びWBコイル24aの数以下となるように所望の数だけ設けられ、切換合成器30cの出力側に設けられる。
【0024】
WBコイル24aは、RF信号の送信用のコイルとして用いることができる。また、NMR信号の受信用のコイルとして各コイル要素24cを用いることができる。さらに、WBコイル24aを受信用のコイルとして用いることもできる。
【0025】
このため、デュプレクサ30aは、送信器29から出力された送信用のRF信号をWBコイル24aに与える一方、WBコイル24aにおいて受信されたNMR信号を受信器30内のアンプ24dを経由して切換合成器30cに与えるように構成されている。また、各コイル要素24cにおいて受信されたNMR信号もそれぞれ対応するアンプ24dを経由して切換合成器30cに出力されるように構成されている。
【0026】
切換合成器30cは、コイル要素24cやWBコイル24aから受けたNMR信号の合成処理及び切換を行って、対応する受信系回路30dに出力するように構成されている。換言すれば、受信系回路30dの数に合わせてコイル要素24cやWBコイル24aから受けたNMR信号の合成処理及び切換が切換合成器30cにおいて行われ、所望の複数のコイル要素24cを用いて撮影部位に応じた感度分布を形成して様々な撮影部位からのNMR信号を受信できるように構成されている。
【0027】
ただし、コイル要素24cを設けずに、WBコイル24aのみでNMR信号を受信するようにしてもよい。また、切換合成器30cを設けずに、コイル要素24cやWBコイル24aにおいて受信されたNMR信号を直接受信系回路30dに出力するようにしてもよい。さらに、より多くのコイル要素24cを広範囲に亘って配置することもできる。
【0028】
一方、制御系25のシーケンスコントローラ31は、傾斜磁場電源27、送信器29及び受信器30と接続される。シーケンスコントローラ31は傾斜磁場電源27、送信器29及び受信器30を駆動させるために必要な制御情報、例えば傾斜磁場電源27に印加すべきパルス電流の強度や印加時間、印加タイミング等の動作制御情報を記述したシーケンス情報を記憶する機能と、記憶した所定のシーケンスに従って傾斜磁場電源27、送信器29及び受信器30を駆動させることによりX軸傾斜磁場Gx、Y軸傾斜磁場Gy,Z軸傾斜磁場Gz及びRF信号を発生させる機能を有する。
【0029】
また、シーケンスコントローラ31は、受信器30におけるNMR信号の検波及びA/D (analog to digital)変換により得られた複素データである生データ(raw data)を受けてコンピュータ32に与えるように構成される。
【0030】
このため、送信器29には、シーケンスコントローラ31から受けた制御情報に基づいてRF信号をRFコイル24に与える機能が備えられる一方、受信器30には、RFコイル24から受けたNMR信号を検波して所要の信号処理を実行するとともにA/D変換することにより、デジタル化された複素データである生データを生成する機能と生成した生データをシーケンスコントローラ31に与える機能とが備えられる。
【0031】
また、コンピュータ32の記憶装置36に保存されたプログラムを演算装置35で実行することにより、コンピュータ32には各種機能が備えられる。ただし、プログラムの少なくとも一部に代えて、各種機能を有する特定の回路を磁気共鳴イメージング装置20に設けてもよい。
【0032】
図5は、図1に示すコンピュータ32の機能ブロック図である。
【0033】
コンピュータ32の演算装置35は、記憶装置36に保存されたプログラムを実行することにより撮像条件設定部40及びデータ処理部41として機能する。データ処理部41は、信号値算出部41A、異常値検出部41B、信号補正部41C、画像再構成部41D及び画像処理部41Eを有する。また、記憶装置36は、k空間データ記憶部42及び画像データ記憶部43として機能する。
【0034】
撮像条件設定部40は、入力装置33から入力された情報に基づいてパルスシーケンスを含む撮像条件を設定し、設定した撮像条件をシーケンスコントローラ31に出力する機能を有する。特に撮像条件設定部40は、フェーズドアレイコイル24bの複数のコイル要素24cをNMR信号の受信コイルとして使用するイメージングの撮像条件を設定する機能を備えている。
【0035】
複数のコイル要素24cを用いる高速イメージングはパラレルイメージング(PI)と呼ばれる。PIは、複数のコイル要素24cを用いてNMRエコーデータを受信し、かつ位相エンコードをスキップさせることによって画像再構成に必要な位相エンコード数を減らす高速撮像法である。PIの種類としては、SENSE (Sensitivity Encoding)、SMASH (SiMulataneou Acquisition of Spatial Harmonics)、GRAPPA (GeneRaized Autocalibrating Partially Parallel Acquisition)及びこれらを改良したイメージング法などが知られている。
【0036】
データ処理部41は、シーケンスコントローラ31からNMR信号を取得してk空間データ記憶部42に形成されたk空間にk空間データとして配置する機能、k空間データの異常値を検出して補正する機能、補正後のk空間データに基づいて画像データを生成する機能、画像データを画像データ記憶部43に保存する機能及び画像データを表示装置34に表示させる機能を有する。
【0037】
信号値算出部41Aは、ある1つの受信チャンネルで収集されたk空間の各位置におけるNMR信号の信号値を全ての受信チャンネルで収集された周辺の他の位置におけるNMR信号の値から算出するためのカーネル関数を求める機能と、カーネル関数を用いてk空間の各位置におけるNMR信号の信号値を算出する機能を有する。ここで、カーネル関数の求め方について説明簡易化のために、まず受信チャンネルが複数であることを考慮せずに説明する。
【0038】
図6は、図5に示す信号値算出部41Aにおいて、k空間のある位置におけるNMR信号の信号値を周辺のNMR信号の値から算出する方法を説明する図である。
【0039】
図6において横軸は、k空間の読み出し(RO: readout)方向を示し、縦軸は位相エンコード(PE: phase encode)方向を示す。図6に示すように、k空間上のある位置TにおけるNMR信号の信号値Stを、例えば、周囲の12箇所A, B, ..., LにおけるNMR信号から求めるためのカーネル関数Wは、位置A, B, ..., LにおけるNMR信号の信号値を要素とする4×3の行列Sを用いて式(1)で表される。
[数1]
St = W*S (1)
【0040】
同様に、位置Tを含む行の全ての位置におけるNMR信号の信号値を、各位置の周囲における12箇所のNMR信号からカーネル関数Wを用いて算出することができる。すなわち、特定の行における各位置におけるNMR信号の値を、それぞれPE方向に最も近いm行のライン上にあるRO方向に最も近いn個のm×n個のNMR信号の重み付け加算処理によって算出するためのカーネル関数を求めることができる。換言すれば、カーネル関数Wのパラメータとなる重み付け加算の重み係数を、特定の行におけるNMR信号の信号値及び周辺におけるNMR信号の信号値に基づいて計算することができる。そして、カーネル関数Wが求められると、k空間の各位置におけるNMR信号の信号値を周辺のNMR信号の値から算出することが可能となる。
【0041】
或いは、k空間上の特定の行における信号列の値を、他の複数の行における信号列の重み付け加算によって算出するためのカーネル関数を求めることもできる。
【0042】
図7は、図5に示す信号値算出部41Aにおいて、k空間のある行におけるNMR信号列の信号値を周辺の行のNMR信号列から算出する方法を説明する図である。
【0043】
図7において横軸はk空間のRO方向を示し、縦軸はPE方向を示す。図7に示すように、k空間上のある行LxにおけるNMR信号列の信号値を、例えば、最も近い4行L1, L2, L3, L4上のNMR信号列の値から求めるためのカーネル関数Wを求めることができる。すなわち、行LxにおけるNMR信号列の信号値及び4行L1, L2, L3, L4上のNMR信号列の値に基づいてカーネル関数Wのパラメータとなる重み係数を計算することができる。この場合、カーネル関数Wを用いて、k空間の各行におけるNMR信号列の信号値を周辺の行に属するNMR信号列の値から算出することが可能となる。
【0044】
実際には、NMR信号の受信用の複数のコイル要素24cに出力先として接続される受信チャンネルCH (CH = 1, 2, 3, ..., Nch)ごとにk空間上のNMR信号のデータセットが収集される。すなわち、Nch個の受信チャンネルでNMR信号が収集された場合、Nch個のk空間上のNMR信号のデータセットが収集される。
【0045】
この場合、ある1つの受信チャンネルCHに対応するk空間の位置T(CH)又は行Lx(CH)におけるNMR信号の信号値を複数の受信チャンネルCHで収集された位置T又は行Lxの周辺におけるNMR信号の信号値の重み付け加算によって計算する関数としてカーネル関数W(CH)を求めることができる。受信チャンネルCHに対応するk空間の位置T(CH)におけるNMR信号の信号値St(CH)の計算は、式(2)のように表すことができる。
【数2】

【0046】
すなわち、式(2)に示すように、各受信チャンネルj (j = 1, 2, 3, ..., Nch)にそれぞれ対応するk空間の位置T(j)の周辺におけるNMR信号の信号値を要素とする行列S(j)の各要素をその受信チャンネルjに対応するカーネル関数W(CH, j)で互いに重み付け加算し、更に、重み付け加算の結果W(CH, j)を受信チャンネルj間で加算することによってある受信チャンネルCHに対応するk空間の位置T(CH) におけるNMR信号の信号値St(CH)を計算することができる。従って、ある受信チャンネルCHで収集されたk空間の位置T(CH) におけるNMR信号の信号値St(CH)及び各受信チャンネルjで収集されたk空間の位置T(j)の周辺におけるNMR信号の信号値に基づいて式(2)によりカーネル関数W(CH, j)のパラメータを求めることができる。
【0047】
図8は、図5に示す信号値算出部41Aにおいて、ある受信チャンネルCHに対応するk空間のある行Lx(CH)におけるNMR信号列の信号値S(CH, Lx)を複数の受信チャンネルjで収集された周辺の行(L1, L2, L3, L4)のNMR信号列S(j, L1), S(j, L2), S(j, L3), S(j, L4)から算出する方法を説明する図である
【0048】
図8において、横軸はk空間のPE方向を、縦軸は受信チャンネル方向を、紙面に垂直な方向はRO方向を、それぞれ示す。図8に示すように、ある受信チャンネルCHの行Lx(CH)における信号例の値S(CH, Lx)を複数の受信チャンネルjで収集された行Lxの周辺の行(L1, L2, L3, L4)のNMR信号列の値S(j, L1), S(j, L2), S(j, L3), S(j, L4)から算出するためのカーネル関数W(CH, j)を求めることもできる。尚、図8は、受信チャンネルCH3の行Lxにおける信号値を4つの受信チャンネル(CH1, CH2, CH3, CH4)で収集された信号から計算する場合の例を示している。この場合、カーネル関数W(CH, j)は、式(3)により各受信チャンネルで収集されたNMR信号の信号値に基づいて求めることができる。
【数3】

但し、式(3)においてSl(j)は行Lxの周辺の行におけるNMR信号列の信号値を要素とする行列である。
【0049】
このように、ある受信チャンネルCHに対応する信号値を他の受信チャンネルを含む全てのチャンネルで収集された信号値を用いて重み付け加算して求めるようにカーネル関数W(CH, j)を決定すれば、カーネル関数W(CH, j)のパラメータとなる重み係数は、コイル要素24c間における感度分布の差異に応じた値となる。換言すれば、コイル要素24c間における感度分布の差異を考慮して、より正確かつ整合性のとれた信号値を、他の信号値から計算によって求めることが可能となる。
【0050】
カーネル関数Wを求めるために用いられるNMR信号の領域は、全領域とすることができる。すなわち、k空間上の全てのNMR信号を用いてカーネル関数Wの重み係数を求めることができる。但し、カーネル関数Wの精度向上及び処理簡略化の観点から、S/N (signal to noise ratio) が良好でかつ信号強度の絶対値が相対的に大きいk空間中心付近の低周波領域におけるNMR信号を用いてカーネル関数Wの重み係数を求めることが望ましい。
【0051】
このため、信号値算出部41Aには、入力装置33から入力された情報に基づいてカーネル関数Wを求めるためのk空間の領域を任意の領域に設定する機能が備えられる。
【0052】
異常値検出部41Bは、信号値算出部41Aにおいてカーネル関数を用いて算出されたNMR信号の計算値と、イメージングスキャンによってイメージングデータとして収集されたNMR信号の信号値とを比較する閾値処理によって受信チャンネルごとのk空間における異常データを検出する機能を有する。
【0053】
信号補正部41Cは、異常値検出部41Bにおいて検出されたk空間の異常データを補正する機能を有する。
【0054】
画像再構成部41Dは、k空間データ記憶部42からk空間データを取り込んでフーリエ変換(FT: Fourier transform)を含む画像再構成処理を施すことにより画像データを再構成する機能と、再構成した画像データを画像データ記憶部43に書き込む機能とを有する。
【0055】
画像処理部41Eは、画像データ記憶部43から画像データを取り込んで必要な画像処理を施す機能と、画像処理後の画像データを表示装置34に表示させる機能とを有する。PIではNMR信号の受信チャンネルごとに生成される複数の画像データの合成処理が診断画像データの生成に必要である。
【0056】
次に磁気共鳴イメージング装置20の動作及び作用について説明する。
【0057】
図9は、図1に示す磁気共鳴イメージング装置20によりk空間データの異常値補正処理を伴って被検体Pのイメージングを実行する際の流れを示すフローチャートである。
【0058】
まずステップS1において、シーケンスコントローラ31や静磁場用磁石21等のスキャンを実行するための磁気共鳴イメージング装置20の構成要素は、イメージングスキャンを実行し、被検体PからイメージングデータとしてNMR信号を収集する。
【0059】
そのために予め寝台37に被検体Pがセットされ、静磁場電源26により励磁された静磁場用磁石21(超伝導磁石)の撮像領域に静磁場が形成される。また、シムコイル電源28からシムコイル22に電流が供給されて撮像領域に形成された静磁場が均一化される。
【0060】
そして、撮像条件設定部40は、複数のコイル要素24cをNMR信号の受信コイルとする撮像条件を設定し、設定した撮像条件をシーケンスコントローラ31に出力する。そうすると、シーケンスコントローラ31は、パルスシーケンスを含む撮像条件に従って傾斜磁場電源27、送信器29及び受信器30を駆動させることにより被検体Pがセットされた撮像領域に傾斜磁場を形成させるとともに、RFコイル24からRF信号を発生させる。
【0061】
このため、被検体Pの内部における核磁気共鳴により生じたNMR信号が、RFコイル24により受信されて受信器30に与えられる。受信器30は、RFコイル24からNMR信号を受けて、所要の信号処理を実行した後、A/D変換することにより、デジタルデータのNMR信号である生データを生成する。受信器30は、生成した生データをシーケンスコントローラ31に与える。シーケンスコントローラ31は、生データをコンピュータ32のデータ処理部41に与え、データ処理部41はk空間データ記憶部42に形成されたk空間に生データをk空間データとして配置する。
【0062】
尚、NMR信号は、受信コイルとして用いたコイル要素24cごとに収集され、複数のコイル要素24cに出力先として接続される受信チャンネルの数だけk空間が作成される。このため、受信チャンネルごとにk空間データのセットが収集される。
【0063】
次にステップS2において、信号値算出部41Aは、入力装置33から入力された情報に基づいて、k空間の各位置におけるNMR信号の信号値を周辺のNMR信号の値から算出するカーネル関数Wを求めるためのk空間の領域を設定する。
【0064】
次にステップS3において、信号値算出部41Aは、カーネル関数Wを求めるためのk空間の領域に含まれるk空間データを用いてカーネル関数Wを求める。カーネル関数Wの計算には、各受信チャンネルで収集されたk空間データが用いられる。
【0065】
次にステップS4において、信号値算出部41Aは、異常データの検出対象となるk空間データを収集した受信チャンネル及び異常データの検出対象となるk空間データのPE方向における行を1つ選択する。受信チャンネル及び行の選択順序については、予め任意に設定しておくことができる。
【0066】
図10は、図5に示す信号値算出部41Aにより設定されたカーネル関数Wを求めるためのk空間の領域及び異常データの検出対象として選択されたk空間の行の一例を示す図である。
【0067】
図10において、横軸はk空間のRO方向を示し、縦軸はPE方向を示す。図10に示すように、受信チャンネルごとに画像データの生成に必要なk空間のRO方向の各ライン上におけるNMRデータが収集される。そして、k空間の低周波領域Rを、カーネル関数W(CH, j)を求めるための受信チャンネルj間で共通の領域として設定することができる。一方、異常データの検出対象となる行Lは、受信チャンネルjごとに選択される。
【0068】
次にステップS5において、信号値算出部41Aは、選択された受信チャンネル及び行の各点におけるNMR信号の計算値を、カーネル関数Wを用いてNMR信号の信号値の重み付け加算値として算出する。
【0069】
図11は、図5に示す信号値算出部41Aによる信号値の算出対象となる受信チャンネルCHに対応するk空間の行Lx(CH)及びカーネル関数W(CH. j)を用いて算出されたNMR信号の計算値Lcを示す図である。
【0070】
図11(A), (B)において、横軸はk空間のRO方向を示し、縦軸はPE方向を示す。また、図11(B)の縦軸方向は、受信チャンネルj方向にも対応している。図11(A)に示すように、異常データの検出対象として選択された受信チャンネルCHxに対応する行Lx(CHx)が、信号値算出部41Aによる信号値の算出対象となる。そして、図11(B)に示すように、信号値の算出対象となる行Lxの周辺における行(L1, L2, L3, L4)について全ての受信チャンネルjで収集されたNMR信号の信号値からカーネル関数Wを用いて受信チャンネルCHxに対応する行Lx(CHx)の計算値Lcが算出される。
【0071】
尚、図11は、k空間上の各行Lxにおける信号列の計算値Lcを、他の複数の行(L1, L2, L3, L4)における信号列の実測値の重み付け加算によって算出する場合の例を示しているが、図6に示すように、各位置におけるNMR信号の計算値を、m×n個のNMR信号の実測値に対応するカーネル関数Wによって算出することもできる。
【0072】
次にステップS6において、異常値検出部41Bは、選択された受信チャンネル及び行の各点におけるNMR信号の計算値Lcと、選択された受信チャンネル及び行の各点に対してイメージングスキャンによって収集されたNMR信号の信号値Lmとを比較する閾値処理によって、選択された受信チャンネル及び行におけるNMR信号の異常データを検出する。
【0073】
図12は、図5に示す異常値検出部41Bによる異常データの検出方法の一例を示す図である。
【0074】
図12において横軸はRO方向を示す。図12(A)は、選択された行L上におけるNMR信号のデータ点D1, D2, D3, ..., D6を示す。図12(B)の縦軸は、選択された行L上の各データ点D1, D2, D3, ..., D6について収集されたNMR信号の信号強度、つまりNMR信号の実測値Smを示す。図12(C)の縦軸は、選択された行L上の各データ点D1, D2, D3, ..., D6についてカーネル関数Wによって計算されたNMR信号の信号強度、つまりNMR信号の計算値Scを示す。また、図12(D)の縦軸は、選択された行L上の各データ点D1, D2, D3, ..., D6におけるNMR信号の実測値Smと計算値Scとの差分値ΔSを示す。
【0075】
図12に示すように、選択された行L上におけるNMR信号の各データ点D1, D2, D3, ..., D6におけるNMR信号の実測値Smと計算値Scとの差分値ΔSが閾値THを超えたか否かを判定することによってNMR信号の異常データを検出することができる。すなわち、差分値ΔSが閾値THを超えた場合に、対応するNMR信号の実測値Smが異常データであると判定することができる。図12は、データ点D5における差分値ΔSが閾値THを超えているため、データ点D5における実測値Smが異常データであると判定された場合の例を示している。
【0076】
閾値THは、望ましくは各データ点D1, D2, D3, ..., D6におけるNMR信号の複数の差分値ΔSから統計的に有意に異なる差分値ΔSを検出することが可能な値に決定される。但し、閾値THを、経験的に異常データを検出できる値に設定してもよい。
【0077】
次にステップS7において、信号補正部41Cは、異常値検出部41Bにおいて異常データであると判定されたNMR信号の実測値を補正する。
【0078】
図13は、図5に示す信号補正部41Cによる異常データの補正方法の一例を示す図である。
【0079】
図13(A), (B)において横軸は、RO方向を示す。また、図13(A)は、選択された行L上の各データ点D1, D2, D3, ..., D6における補正前のNMR信号の実測値Smを示し、図13(B)は、選択された行L上の各データ点D1, D2, D3, ..., D6における補正後のNMR信号の信号列Lcを示す。
【0080】
図13(A)に示すようにデータ点D5における実測値Smが異常データであると判定された場合、図13(B)に示すようにNMR信号の計算値Scと置換することによって異常データを補正することができる。これにより、選択された受信チャンネル及び行におけるNMR信号の異常データを除去することができる。
【0081】
尚、異常データの補正は、データの置換に限らず、異常データと判定されたデータ点におけるNMR信号の計算値Scと実測値Smとの重み付け加算処理や異常データと判定されたデータ点の周囲のデータ点におけるNMR信号の実測値Smに基づく補間処理によって行うようにしてもよい。
【0082】
そして、ステップS4からステップS7までの処理が全ての受信チャンネル及び行について実行される。そのために、ステップS8では、信号値算出部41Aが、異常データの検出対象となる受信チャンネル及び行が全て選択済みであるか否かを判定する。そして、全ての受信チャンネル及び行が選択されていないと判定された場合には、受信チャンネル及び行ごとにステップS4からステップS7までの処理が繰り返される。
【0083】
一方、全ての受信チャンネル及び行が選択されたと判定された場合には、ステップS4からステップS7までの処理が完了する。この結果、各受信チャンネルの各行における異常データがそれぞれ補正される。
【0084】
図14は、図5に示す信号補正部41Cにより、複数の受信チャンネルにおいて検出された異常データを補正した例を示す図である。
【0085】
図14において横軸方向は、RO方向及び受信チャンネル方向を示す。また図14(A)は、各受信チャンネル(CH1, CH2, CH3)の選択された行L上の各データ点D1, D2, D3, ..., D6における補正前のNMR信号の実測値Smを示し、図14(B)は、選択された行L上の各データ点D1, D2, D3, ..., D6における補正後のNMR信号の信号列Lcを示す。
【0086】
受信チャンネルごとのk空間における各行について異常データの検出処理が実行されると、図14(A)に示すように特定の受信チャンネルで収集されたNMR信号が異常データであっても検出することができる。そして、図14(B)に示すように各異常データをそれぞれカーネル関数WによるNMR信号の計算値Scと置換することによって異常データを補正することができる。
【0087】
尚、カーネル関数Wを求めるためのk空間の領域に異常データが存在すると、カーネル関数Wの精度が低下する。この場合、カーネル関数Wにより計算されるNMR信号の計算値Scの精度が不十分となる恐れがある。そこで、異常データの補正後におけるk空間データを用いて繰り返しカーネル関数Wを求めることによってカーネル関数Wの最適化を行うことができる。
【0088】
カーネル関数Wの最適化を行う場合には、ステップS9において、信号値算出部41Aが、カーネル関数Wの精度が十分であるか否かを判定する。例えば、予め入力装置33から信号値算出部41Aに入力されたカーネル関数Wの計算回数だけカーネル関数Wが計算されていない場合には、信号値算出部41Aにおいてカーネル関数Wの精度が十分でないと判定されるように設定することができる。或いは、カーネル関数Wを求めるためのk空間の領域において閾値を超える数又は乖離量の異常データが検出された場合には、信号値算出部41Aにおいてカーネル関数Wの精度が十分でないと判定されるように設定することもできる。
【0089】
ステップS9において、カーネル関数Wの精度が十分でないと判定された場合には、再びステップS3からステップS8までの処理が実行される。すなわち、異常データの補正後におけるk空間データを用いて再度カーネル関数Wが求められる。
【0090】
図15は、図5に示す信号値算出部41Aにより、異常データの補正後におけるk空間データを用いて再度カーネル関数Wを求める方法を説明する図である。
【0091】
図15において、横軸はk空間のRO方向を示し、縦軸はPE方向を示す。また、図15(A)は、カーネル関数Wを求めるためのk空間の領域Rに異常データが存在する場合の例を示し、図15(B)はカーネル関数Wを求めるためのk空間の領域Rにおける異常データをカーネル関数WによるNMR信号の計算値Scと置換した例を示す。
【0092】
図15に示すように、カーネル関数Wを求めるためのk空間の領域Rに異常データが存在する場合には、異常データをカーネル関数WによるNMR信号の計算値Scと置換した領域Rのk空間データを用いて再度カーネル関数Wを求めることができる。
【0093】
すなわち、カーネル関数Wの計算後において、カーネル関数Wの計算に用いた領域Rに含まれる全ての行について異常データの検出処理及び補正処理を行うと、k空間の領域Rが更新される。そこで、更新後の領域Rにおけるk空間データを用いて再度カーネル関数Wを計算することができる。
【0094】
更に、領域Rに含まれるk空間データの更新及び更新後のk空間データを用いたカーネル関数Wの計算を繰り返すことによって、カーネル関数Wの各パラメータをそれぞれ適切な値に収束させることができる。すなわち、領域Rに含まれる異常データを除去しながら領域Rにおけるk空間データ及びカーネル関数Wを更新することができる。
【0095】
そして、収束後の最適なカーネル関数Wを用いた各受信チャンネル及び各行における異常データの検出及び補正が完了すると、ステップS9において、信号値算出部41Aによりカーネル関数Wの精度が十分であると判定される。
【0096】
尚、カーネル関数Wの収束計算を行う間は、領域Rのみについて異常データの検出及び補正を行い、最適なカーネル関数Wが得られた後に全ての行について異常データの検出及び補正を行うようにしてもよい。また、最適なカーネル関数Wに基づく異常データの検出対象を、カーネル関数Wの収束計算前における初期のk空間データとしてもよい。
【0097】
ステップS9において、カーネル関数Wの精度が十分であると判定されると、ステップS10において、画像再構成部41Dは、異常データの補正後における受信チャンネルごとのk空間データをk空間データ記憶部42から取り込んで画像再構成処理を施す。これにより、受信チャンネルごとの画像データが再構成される。そして、再構成された画像データは画像データ記憶部43に書き込まれる。
【0098】
次にステップS11において、画像処理部41Eは、画像データ記憶部43から受信チャンネルごとの画像データを取り込んで合成処理等の必要な画像処理を施す。これにより、診断用の画像データが生成される。そして、画像処理部41Eは、画像処理後の診断画像データを表示装置34に出力させる。このため、ユーザは表示装置34に表示された診断画像を観察することが可能となる。
【0099】
つまり以上のような磁気共鳴イメージング装置20は、k空間上の各データ点における信号値を他のデータ点における信号値に基づいて計算するカーネル関数を求め、カーネル関数によるk空間データの計算値と収集されたk空間データの信号値とに基づいて異常データの検出及び補正を行うようにしたものである。
【0100】
このため、磁気共鳴イメージング装置20によれば、k空間上の位置に依らず、スパイクノイズ等の異常データを除去して画像品質を向上させることができる。特に、磁気共鳴イメージング装置20によれば、NMR信号の強度が大きいk空間の中心付近における異常データであっても除去することができる。
【0101】
特に、ある受信チャンネルに対応するk空間のNMR信号の信号値が、他の受信チャンネルで収集されたNMR信号の信号値を用いて計算されるため、コイル要素24cの感度差を反映させた信号値を得ることができる。このため、コイル要素24cの感度差が反映されない単純な補間処理や重み付け加算処理等の処理によって信号値を計算する場合に比べてより正確に信号値を計算し、コイル要素24cの感度差を反映させることが可能なk空間において異常データを良好に除去することができる。
【0102】
また、磁気共鳴イメージング装置20によれば、イメージング用に収集された自己データのみで異常データの検出及び補正を行うことができる。すなわち、異常データの除去のために本来イメージングに必要でないデータを収集する必要がない。このため、撮像時間の増加を抑制しつつ異常データの補正を行うことができる。
【0103】
以上、特定の実施形態について記載したが、記載された実施形態は一例に過ぎず、発明の範囲を限定するものではない。ここに記載された新規な方法及び装置は、様々な他の様式で具現化することができる。また、ここに記載された方法及び装置の様式において、発明の要旨から逸脱しない範囲で、種々の省略、置換及び変更を行うことができる。添付された請求の範囲及びその均等物は、発明の範囲及び要旨に包含されているものとして、そのような種々の様式及び変形例を含んでいる。
【符号の説明】
【0104】
20 磁気共鳴イメージング装置
21 静磁場用磁石
22 シムコイル
23 傾斜磁場コイル
24 RFコイル
24a WBコイル
24b フェーズドアレイコイル
24c コイル要素
25 制御系
26 静磁場電源
27 傾斜磁場電源
28 シムコイル電源
32 コンピュータ
37 寝台
40 撮像条件設定部
41 データ処理部
41A 信号値算出部
41B 異常値検出部
41C 信号補正部
41D画像再構成部
41E 画像処理部
42 k空間データ記憶部
43 画像データ記憶部
P 被検体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の高周波コイル及び前記複数の高周波コイルに接続される複数の受信チャンネルを用いて被検体から磁気共鳴信号を収集するデータ収集手段と、
前記複数の受信チャンネルでそれぞれk空間上の複数の位置について収集された磁気共鳴信号の重み付け加算によって各受信チャンネルのk空間上の各位置における磁気共鳴信号の計算値を算出し、収集された前記磁気共鳴信号と前記計算値との比較によって収集された前記磁気共鳴信号の異常データを検出する異常値検出手段と、
前記異常データを補正する補正手段と、
前記異常データの補正後における磁気共鳴信号に基づいて画像データを生成する画像データ生成手段と、
を備える磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
前記異常値検出手段は、前記異常データの補正後における磁気共鳴信号に基づいて前記磁気共鳴信号の計算値の算出を繰り返すように構成される請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
前記異常値検出手段は、k空間の低周波領域について収集された複数の磁気共鳴信号に基づいて前記重み付け加算の重み係数を決定するように構成される請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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