説明

磁気共鳴イメージング装置

【課題】 SSFPシーケンスにおいて、フリップ角を変化させる制御をおこなっても、画像にブラーリングやゴーストなどのアーチファクトを発生させないようする。
【解決手段】 静磁場中に配置された被検体の撮像領域にRFパルスを繰り返し照射して、該撮像領域のスピンを定常状態にしてエコーデータの計測を行うSSFPシーケンスを実行する際に、RFパルスのフリップ角を周期的に変化させて、スピンを周期的定常状態にしてエコーデータを計測する。その際、相対的に大きいフリップ角のRFパルスを照射して得られたエコーデータがk空間の低域に配置されるように各エコーデータの位相エンコードを制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気共鳴イメージング(以下、「MRI」という)装置に関し、特に、スピンを定常状態自由歳差運動(Steady State Free Precession ;SSFP)状態にして計測する際の高周波磁場パルスのフリップ角制御に関する。
【背景技術】
【0002】
MRI装置は、被検体、特に人体の組織を構成する原子核スピンが発生するNMR信号(エコー信号)を計測し、その頭部、腹部、四肢等の形態や機能を2次元的に或いは3次元的に画像化する装置である。撮影においては、NMR信号には、傾斜磁場によって異なる位相エンコードが付与されるとともに周波数エンコードされて、時系列データとして計測される。計測されたNMR信号は、2次元又は3次元フーリエ変換されることにより画像に再構成される。
【0003】
上記MRI装置を用いた代表的な高速撮像法として、スピンをSSFP状態にしてエコー信号を計測するSSFPシーケンスが知られている。SSFPシーケンスは、数ms程度の非常に短い繰り返し時間(TR)で高周波磁場パルス(以下RFパルスという)を被検体に繰り返し照射する。これにより、スピンは、縦緩和時間(T1)程度の時間が経過した後に、励起と緩和がバランスした状態(SSFP状態)に収束する。そのSSFP状態では、高いSNRのエコー信号が得られ、信号及び画像のコントラストは、横緩和時間(T2)と縦緩和時間(T1)の比:T2/T1となる。SSFPシーケンスの代表的な適用例として心臓シネ撮像があり、心臓シネ撮像において心筋/心内腔は高コントラストとなるので、心内腔の血液量を評価するのに有用となる。
【0004】
一方、SSFPシーケンスは、3〜4msの非常に短い間隔で、フリップ角が60〜120deg.のRFパルスを繰り返し照射するため、3T等の超高磁場MRI装置においてはSAR(Specific Absorption Ratio)が高くなり、SARの低減が課題となる。
【0005】
SARを低減する方法として最も単純な方法は、フリップ角を小さくする、または、繰り返し時間(TR)を延長する方法である。しかしながら、この方法では、心臓シネ撮像において心筋/心内腔のコントラストが低下してしまう。
【0006】
SARを低減すると共に画像のコントラストを保持する方法としては、位相エンコードに依存してフリップ角を変化させる方法(例えば特許文献1)がある。この方法は、画像のコントラストに影響するk空間低域のエコーデータを収集する際に大きいフリップ角でRFパルスを照射し、k空間高域のエコーデータを収集する際に小さいフリップ角でRFパルスを照射する。そのため、SARを低減しつつ、フリップ角を一定にする通常のSSFPシーケンスと同様に高コントラストを実現することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2005-524453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した特許文献1に記載の方法では、SSFP状態を保持することができないため、画像にブラーリングやゴーストなどのアーチファクトを発生させる原因となる。
【0009】
そこで、本発明は上記課題を鑑みてなされたものであり、SSFPシーケンスにおいて、フリップ角を変化させる制御をおこなっても、画像にブラーリングやゴーストなどのアーチファクトを発生させないようにして、高画質の画像を得ることが可能なMRI装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明のMRI装置は、静磁場中に配置された被検体の撮像領域にRFパルスを繰り返し照射して、該撮像領域のスピンを定常状態にしてエコーデータの計測を行うSSFPシーケンスを実行する際に、RFパルスのフリップ角を周期的に変化させて、スピンを周期的定常状態にしてエコーデータを計測する。その際、相対的に大きいフリップ角のRFパルスを照射して得られたエコーデータがk空間の低域に配置されるように各エコーデータの位相エンコードを制御する。
【発明の効果】
【0011】
本発明のMRI装置によれば、フリップ角を周期的に変化させてスピンを周期的定常状態にし、大フリップ角のRFパルスを照射して得られたエコーデータをk空間の低域に、小フリップ各のRFパルスを照射して得られたエコーデータをk空間の高域に、それぞれ配置する。
【0012】
その結果、フリップ角を変化させる制御をおこなっても、画像にブラーリングやゴーストなどのアーチファクトを発生させないようにして、高画質の画像を得ることが可能になる。特に、3T等の超高磁場MRI装置においてはSARを低減することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係るMRI装置の一実施例の全体構成を示すブロック図
【図2】第1の実施形態におけるセグメント計測を示し、(a)図はRFパルスのフリップ角変化、(b)図は、エコーデータのk空間配置
【図3】(1)式に基づくフリップ角変化を有するRFパルスを照射した場合における、共鳴周波数とのずれがゼロとなるスピンの信号強度の時間変化を数値計算した結果を示す図
【図4】RFパルスのフリップ角を周期的に変化させた場合の心筋/心内腔のコントラストの時間変化を示す図
【図5】第2の実施形態における、N個の心時相を計測する計測期間と、隣接する計測期間を接続する接続期間におけるRFパルスのフリップ角変化を示す図
【図6】周期的な定常状態での信号強度と、(3)式で得られるフリップ角を一定に照射し続ける従来のSSFPシーケンスの場合の定常状態を数値計算した結果を示す図
【図7】演算処理部114の機能ブロック図を示し、(a)図は第1の実施形態の、(b)図は第2の実施形態の、(c)図は第3の実施形態の、機能ブロック図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面に従って本発明のMRI装置の好ましい実施例について詳説する。なお、発明の実施例を説明するための全図において、同一機能を有するものは同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略する。
【0015】
最初に、本発明に係るMRI装置を図1に基づいて説明する。図1は、本発明に係るMRI装置の一実施例の全体構成を示すブロック図である。
【0016】
このMRI装置は、NMR現象を利用して被検体101の断層画像を得るもので、図1に示すように、静磁場発生磁石102と、傾斜磁場コイル103及び傾斜磁場電源109と、RF送信コイル104及びRF送信部110と、RF受信コイル105及び信号検出部106と、信号処理部107と、計測制御部111と、全体制御部108と、表示・操作部113と、被検体101を搭載する天板を静磁場発生磁石102の内部に出し入れするベッド112と、を備えて構成される。
【0017】
静磁場発生磁石102は、垂直磁場方式であれば被検体101の体軸と直交する方向に、水平磁場方式であれば体軸方向に、それぞれ均一な静磁場を発生させるもので、被検体101の周りに永久磁石方式、常電導方式あるいは超電導方式の静磁場発生源が配置されている。
【0018】
傾斜磁場コイル103は、MRI装置の実空間座標系(静止座標系)であるX、Y、Zの3軸方向に巻かれたコイルであり、それぞれの傾斜磁場コイルは、それを駆動する傾斜磁場電源109に接続され電流が供給される。具体的には、各傾斜磁場コイルの傾斜磁場電源109は、それぞれ後述の計測制御部111からの命令に従って駆動されて、それぞれの傾斜磁場コイルに電流を供給する。これにより、X、Y、Zの3軸方向に傾斜磁場Gx、Gy、Gzが発生する。
【0019】
2次元スライス面の撮像時には、スライス面(撮像断面)に直交する方向にスライス傾斜磁場パルス(Gs)が印加されて被検体101に対するスライス面が設定され、そのスライス面に直交して且つ互いに直交する残りの2つの方向に位相エンコード傾斜磁場パルス(Gp)と周波数エンコード(リードアウト)傾斜磁場パルス(Gf)が印加されて、NMR信号(エコー信号)にそれぞれの方向の位置情報がエンコードされる。
【0020】
RF送信コイル104は、被検体101にRFパルスを照射するコイルであり、RF送信部110に接続され高周波パルス電流が供給される。これにより、被検体101の生体組織を構成する原子のスピンにNMR現象が誘起される。具体的には、RF送信部110が、後述の計測制御部111からの命令に従って駆動されて、高周波パルスが振幅変調され、増幅された後に被検体101に近接して配置されたRF送信コイル104に供給されることにより、RFパルスが被検体101に照射される。
【0021】
RF受信コイル105は、被検体101の生体組織を構成するスピンのNMR現象により放出されるエコー信号を受信するコイルであり、信号検出部106に接続されて受信したエコー信号が信号検出部106に送られる。
【0022】
信号検出部106は、RF受信コイル105で受信されたエコー信号の検出処理を行う。具体的には、後述の計測制御部111からの命令に従って、信号検出部106が、受信されたエコー信号を増幅し、直交位相検波により直交する二系統の信号に分割し、それぞれを所定数(例えば128、256、512等)サンプリングし、各サンプリング信号をA/D変換してディジタル量に変換し、後述の信号処理部107に送る。従って、エコー信号は所定数のサンプリングデータからなる時系列のデジタルデータ(以下、エコーデータという)として得られる。
【0023】
信号処理部107は、エコーデータに対して各種処理を行い、処理したエコーデータを計測制御部111に送る。
【0024】
計測制御部111は、被検体101の断層画像の再構成に必要なエコーデータ収集のための種々の命令を、主に、傾斜磁場電源109と、RF送信部110と、信号検出部106に送信してこれらを制御する制御部である。具体的には、計測制御部111は、後述する全体制御部108の制御で動作し、ある所定のシーケンスの制御データに基づいて、傾斜磁場電源109、RF送信部110及び信号検出部106を制御して、被検体101へのRFパルスの照射及び傾斜磁場パルスの印加と、被検体101からのエコー信号の検出と、を繰り返し実行し、被検体101の撮像領域についての画像の再構成に必要なエコーデータの収集を制御する。繰り返しの際には、2次元撮像の場合には位相エンコード傾斜磁場の印加量を、3次元撮像の場合には更にスライスエンコード傾斜磁場の印加量も、変えて行なう。位相エンコードの数は通常1枚の画像あたり128、256、512等の値が選ばれ、スライスエンコードの数は、通常16、32、64等の値が選ばれる。これらの制御により信号処理部107からのエコーデータを全体制御部108に出力する。
【0025】
全体制御部108は、計測制御部111の制御、及び、各種データ処理と処理結果の表示及び保存等の制御を行うものであって、CPU及びメモリを内部に有する演算処理部114と、光ディスク、磁気ディスク等の記憶部115とを有して成る。具体的には、計測制御部111を制御してエコーデータの収集を実行させ、計測制御部111からのエコーデータが入力されると、演算処理部114がそのエコーデータに印加されたエンコード情報に基づいて、メモリ内のk空間に相当する領域に記憶させる。以下、エコーデータをk空間に配置する旨の記載は、エコーデータをメモリ内のk空間に相当する領域に記憶させることを意味する。また、メモリ内のk空間に相当する領域に記憶されたエコーデータ群をk空間データともいう。そして演算処理部114は、このk空間データに対して信号処理やフーリエ変換による画像再構成等の処理を実行し、その結果である被検体101の画像を、後述の表示・操作部113に表示させると共に記憶部115に記録させる。
【0026】
表示・操作部113は、再構成された被検体101の画像を表示する表示部と、MRI装置の各種制御情報や上記全体制御部108で行う処理の制御情報を入力するトラックボール又はマウス及びキーボード等の操作部と、から成る。この操作部は表示部に近接して配置され、操作者が表示部を見ながら操作部を介してインタラクティブにMRI装置の各種処理を制御する。
【0027】
現在MRI装置の撮像対象核種は、臨床で普及しているものとしては、被検体の主たる構成物質である水素原子核(プロトン)である。プロトン密度の空間分布や、励起状態の緩和時間の空間分布に関する情報を画像化することで、人体頭部、腹部、四肢等の形態または、機能を2次元もしくは3次元的に撮像する。
【0028】
(本発明の概要)
本発明は、SSFPシーケンスにおいて、その複数の繰り返しの内の少なくとも一部の繰り返しにおいて、RFパルスのフリップ角を周期的に変化させる。フリップ角を周期的に変化させることによって、得られるエコーデータの信号強度や内在するコントラストも周期的に変化することになるが、その周期的に変化する信号強度又はコントラストが最大又は相対的に高くなるエコーデータがk空間の低空間周波数領域(以下、低域と略記する)に配置されるようにする。そのためには、相対的に大きいフリップ角のRFパルスを照射して得られたエコーデータが相対的に信号強度又はコントラストが高くなるので、相対的に大きいフリップ角のRFパルスを照射して得られたエコーデータがk空間の低域に配置されるように、各エコーデータの位相エンコード、即ち、エコーデータの計測の際に印加する位相エンコード傾斜磁場の印加量を制御する。これにより、高コントラストの画像が得られる。
【0029】
また、フリップ角の周期的変化に基づくエコーデータの周期的変化が原因となる画像アーチファクトをさらに抑制するために、k空間の位相エンコード方向においてエコーデータの変化が一周期以内となるように、エコーデータのk空間配置を制御する。或いは、エコーデータの周期的変化を軽減するようにk空間データをその位相エンコード方向に補正する。
【0030】
以下、本発明の各実施形態を詳細に説明する。
【0031】
(第1の実施形態)
次に、本発明のMRI装置及びSSFPシーケンスのRFパルス制御方法についての第1の実施形態を説明する。本第1の実施形態は、所定の周期関数に基づいて、RFパルスのフリップ角を周期的に変化させる。そして、相対的に大きいフリップ角のRFパルスを照射して得られたエコーデータがk空間の低域に配置されるように、各エコーデータの位相エンコードを制御する。
【0032】
また、好ましくは、k空間の位相エンコード方向においてエコーデータの変化が一周期以内となるように、エコーデータのk空間配置を制御するために、所謂セグメント計測を併用する。以下、本第1の実施形態を詳細に説明する。
【0033】
最初に、本第1の実施形態におけるRFパルスのフリップ角を周期的に変化させる方法について、図2,2Bを用いて説明する。図2,2Bでは、周期関数として三角関数を用いてRFパルスのフリップ角を周期的に変化させる場合を示す。なお、本第1の実施形態は、周期関数として、三角関数に限定されず任意の周期関数(例えば、ハニング窓・ハミング窓・ガウシアン等の窓関数)を用いてもよい。なお、他の傾斜磁場パルス波形については省略してある。
【0034】
周期的に変化させるRFパルスについて、そのフリップ角の最大値をα1、最小値をα2とし、周期的にフリップ角を変化させるRFパルスの一周期分の数をβ、とすると、n(0〜β-1)番目のRFパルスのフリップ角α(n)、つまり一周期分のフリップ角を以下の(1)式に基づいて変化させる。
【0035】
α(n)=(α1−α2)/2×cos(2π×n/β)+(α1+α2)/2 (1)
複数周期に渡ってフリップ角を変化させる場合は、(1)式の周期関数を必要周期だけ繰り返す。このようにフリップ角を周期関数に基づいて変化させると、一定のフリップ角(例えばα1)のRFパルスを照射し続ける従来のSSFPシーケンスと比較して、SARを低減することが可能となる。
【0036】
(1)式に基づくフリップ角変化を有するRFパルスを照射した場合における、共鳴周波数とのずれがゼロとなるスピンの信号強度の時間変化を数値計算した結果を図3に示す。図中の横軸はRFパルス照射回数を、縦軸はスピンの横磁化の信号強度を示す。実線は本第1の実施形態の場合を示し、破線はフリップ角が一定である従来のSSFPシーケンスを用いた場合を示す。上段の(a)図はRFパルス照射回数が0から800回までの全体変化を示し、下段の(b)図はRFパルス照射回数が700から800回を拡大表示したものである。数値計算に用いたパラメータの値は、α1=60deg.、α2=30deg.、β=10、で、T1=1200ms、T2=250ms、であり、従来のSSFPシーケンスでのフリップ角はα1とした。従来のSSFPシーケンスでは、時間の経過とともに定常状態に近づき、横磁化の信号強度は一定値に漸近することが分かる。これに対して、本第1の実施形態では、横磁化の信号強度は、フリップ角の周期関数と同じ周期の周期的な変化を繰り返す周期的定常状態に漸近することが分かる。
【0037】
次に、RFパルスのフリップ角の周期的変化が、得られるエコーデータのコントラストに及ぼす影響について説明する。RFパルスのフリップ角を周期的に変化させると、得られるエコーデータのコントラストも同じ周期で周期的に変化する。具体的には、フリップ角が大きなRFパルスが照射されて得られたエコーデータは高コントラストとなり、フリップ角が小さなRFパルスが照射されて得られたエコーデータは低コントラストとなる。
【0038】
一例として、RFパルスのフリップ角を周期的に変化させた場合の心筋/心内腔のコントラストの時間変化を図4に示す。図3同様、実線は本第1の実施形態の場合を示し、破線は従来のSSFPシーケンスの場合を示す。なお、コントラストは、以下の(2)式により導出した。
【0039】
(心筋/血液コントラスト)=(血液の信号強度)−(心筋の信号強度) (2)
従来のSSFPシーケンスを用いた場合、コントラストは一定の値に近づくのに対して、本第1の実施形態ではコントラストは周期的に変化することが分かる。さらに、図3と比較してみれば、周期的に変化するコントラストの内で高コントラストとなるエコーデータは、最大(α1)又はその近傍のフリップ角を有するRFパルスを照射して得られたエコーデータであることが理解される。逆に、低コントラストとなるエコーデータは、最小(α2)又はその近傍のフリップ角を有するRFパルスを照射して得られたエコーデータであることが理解される。したがって、周期的に変化するコントラストの内で高コントラストとなるエコーデータ、つまり最大(α1)又はその近傍のフリップ角を有するRFパルスを照射して得られたエコーデータ、をk空間の低域に配置する。そのためには、最大(α1)又はその近傍のフリップ角を有するRFパルスを照射して得られるエコーデータには、k空間低域に配置されるように、低位相エンコードを付与する、つまり、低印加量の位相エンコード傾斜磁場を印加する。これにより、従来の一定フリップ角のSSFPシーケンスと同様の高コントラストな画像を取得することが可能となる。
【0040】
(具体例:心臓シネ撮像)
次に、本第1の実施形態の具体例として、フリップ角の周期的変化とセグメント計測とを併用する心臓シネ撮像を説明する。セグメント計測に基づいてエコーデータのk空間配置を制御することにより、k空間の位相エンコード方向においてエコーデータの変化が一周期以内となることを説明する。
【0041】
最初に、本心臓シネ撮像における演算処理部114の各機能を、図7(a)に示す機能ブロック図に基づいて説明する。本第1の実施形態に係る演算処理部114は、周期的フリップ角変調部701、k空間配置設定部702、セグメント計測設定部703と、を有して成る。
【0042】
周期的フリップ角変調部701は、予め設定された撮像条件に基づいて、上述したように、RFパルスのフリップ角を周期的に変化させる周期関数(1)式を具体的に決定するためのパラメータである、フリップ角の最大値α1、最小値α2、周期的にフリップ角を変化させるRFパルスの数β、の値を決定し、n(0〜β-1)番目のRFパルスのフリップ角α(n)を求める。そして求めた1周期分の各フリップ角の値を計測制御部111に通知する。
【0043】
k空間配置設定部702は、k空間に配置する各エコーデータに付与する位相エンコードを設定する。その際、上述したように、最大(α1)又はその近傍のフリップ角を有するRFパルスを照射して得られるエコーデータには、k空間低域に配置されるように、低位相エンコードを設定する。他方、最小(α2)又はその近傍のフリップ角を有するRFパルスを照射して得られるエコーデータが、k空間の低域以外の領域、例えば高域に配置されるように、その位相エンコードを設定する。そして、設定したエコーデータ毎の位相エンコードに対応して、エコーデータ毎の位相エンコード傾斜磁場の印加量を設定し、設定したエコーデータ毎の位相エンコード傾斜磁場の印加量データを計測制御部111に通知する。
【0044】
セグメント計測設定部703については、予め設定された撮像条件に基づいて、セグメント計測に係る各種条件設定を行う。詳細は、以下の心臓シネ撮像の説明において説明する。
【0045】
従来の一般的な心臓シネ撮像では、心電図R波からのディレイ時間が異なる複数の心時相の画像をそれぞれ取得する際に、各心時相の画像に対応するk空間をそれぞれ複数のセグメントに分割して、複数心拍で全セグメントのデータを取得するセグメント計測が行われる。具体的には、k空間を分割するセグメント数を同一心時相とする期間内に取得するエコーデータ数とし、セグメント計測を継続する心拍数を一つのセグメントを構成する位相エンコードの異なるエコーデータ数とする。そして、同一心時相内で各セグメントにおける同じ位置のエコーデータを順次計測し、心拍毎にセグメント内で取得するエコーデータを異ならせるように、エコーデータの計測の際に印加する位相エンコード傾斜磁場の印加量を制御する。このようなエコーデータの取得方法により、心時相の異なる複数の画像取得に必要な各k空間データを複数心拍で取得できる。ただし、スピンを定常状態に維持するために、心周期や心拍とは無関係に、SSFPシーケンスの繰り返し時間(TR)でRFパルスを照射し続ける。
【0046】
一方、本第1の実施形態における心臓シネ撮像では、上記セグメント計測を基本とし、心周期の内で同一心時相とする期間を、フリップ角を変化させる周期関数の周期と略同一にする。つまり、フリップ角を変化させる周期関数の一周期毎に心時相が変わる。或いは逆に、一心周期内の心時相数に基づいて、フリップ角を変化させる周期関数の周期を決定してもよい。具体的には、セグメント計測設定部703は、SSFPシーケンスの繰り返し時間をTR、フリップ角を周期的に変化させる周期をTとすると、(1)式の周期関数を用いる場合には、セグメント数をβとして、
TR X β = T = 一心周期の時間 (3)
とする。そして、位相エンコードステップ数をNpeとすると、計測を繰り返す心拍数を、INT(Npe/β)+1(INT(*)は*の内から整数を取得する関数)とする。
【0047】
さらに、k空間配置設定部702は、画像コントラストが従来の一定フリップ角のSSFPシーケンスと略同じになるように、フリップ角とエコーデータのセグメント配置との関係を設定する。具体的には、従来のSSFPシーケンスにおける一定フリップ角と略同じであって、フリップ角の大きなRFパルスを照射して取得されたエコーデータがk空間の低域セグメントに配置され、フリップ角が小さなRFパルスを照射して取得されたエコーデータがk空間の高域セグメントに配置されるように、RFパルスのフリップ角及び位相エンコード傾斜磁場の印加量を設定する。
【0048】
そこで、フリップ角とエコーデータのコントラストとの関係は前述したとおりであることから、周期的フリップ角設定部701は、図2(a)に示すように、RFパルスのフリップ角変化を一周期内で最小の値から開始するよう設定する。このフリップ角変化に合わせて、k空間配置設定部702は、一方の高域セグメントから低域セグメントを経由して他方の高域セグメントに向けて、各セグメントのエコーデータをそれぞれ計測するように該各エコーデータの位相エンコードを設定する。その結果、各心時相(つまり、周期関数の各周期)において、RFパルスのフリップ角は、略最小の値から開始して順次増加していき、k空間の低域セグメントのエコーデータ計測時点で略最大に達し、その後順次減少し、同一心時相内の最後で略最小となる。以後、次の心時相(つまり周期関数の次の周期)でも同様のフリップ角の変化を繰り返す。
【0049】
上記のようにセグメント計測されたk空間データの一例を図2(b)に示す。図2(b)は、図2(a)の一心時相内で照射される各RFパルスのフリップ角と、各RFパルスが照射されて取得されたエコーデータが配置されるk空間の各セグメントとの関係を示す。kxが周波数エンコード方向に対応し、ky方向が位相エンコード方向に対応する。図2(a)は一心時相で10個のエコーデータが計測される例なので、図2(b)は10つのセグメント(SEG-1〜SEG-10)に分割されたk空間を示し、一心時相内で取得された各エコーデータは、それぞれ対応するセグメント内で位相エンコード方向の略同じ位置に配置される。その際、前半の最小フリップ角又はその近傍のRFパルス照射時に取得されたエコーデータはk空間のky方向負側の高域セグメントに配置され、中間の最大フリップ角又はその近傍のRFパルス照射時に取得されたエコーデータはk空間のky方向低域セグメントに配置され、後半の最小フリップ角又はその近傍のRFパルス照射時に取得されたエコーデータはk空間のky方向正側の高域セグメントに配置される。その結果、1心拍でN(=10)周期のフリップ角変化により、エコーデータにもN(=10)周期の変化が発生するが、セグメント計測を行うことにより、k空間に配置されたエコーデータは、その位相エンコード(ky)方向の変化が1周期に低減されることが理解される。
【0050】
以上のように、本第1の実施形態のSSFPシーケンスは、RFパルスのフリップ角を周期的に変化させることによって、以下の効果が得られる。即ち、
1) 一定フリップ角のRFパルスを照射する従来のSSFPシーケンスと比較して、SARを低減することが可能になる。
2) k空間の低域には、従来のSSFPシーケンスの一定フリップ角と同程度のフリップ角のRFパルス照射で得られたエコーデータが配置されるので、従来のSSFPシーケンスで得られる画像と同程度の高コントラストを有する画像が得られる。
3) 本実施形態1のSSFPシーケンスは、RFパルスのフリップ角を周期的に変化させるため、スピンを周期的定常状態に導く。その結果、得られるエコーデータの信号強度と内在するコントラストも周期的に変化する。しかしながら、セグメント計測と組み合わせることによって、k空間に配置されたエコーデータの位相エンコード方向における変化は、一周期分の変化に低減される。このようなk空間データで得られる画像においては、RFパルスのフリップ角の変化に基づくブラーリングやゴーストなどのアーチファクトが抑制される。
【0051】
以上説明したように、本第1の実施形態のMRI装置及びSSFPシーケンスのRFパルス制御方法は、RFパルスのフリップ角を周期的に変化させてスピンを周期的定常状態にする。そして、最大フリップ角のRFパルスを照射して得られたエコーデータをk空間の低域に配置する。これにより、SARを低減して、従来の一定フリップ角のSSFPシーケンスと同程度の高コントラストの画像が得られる。また、好ましくは、セグメント計測を行うことで、k空間の位相エンコード方向のエコーデータの変化を一周期とする。これにより、RFパルスのフリップ角の変化に基づくブラーリングやゴーストなどのアーチファクトが発生しない高画質の画像を得ることが可能になる。
【0052】
(第2の実施形態)
次に、本発明のMRI装置についての第2の実施形態を説明する。同一被検体であっても心周期(或いは、単位時間当たりの心拍数)は一定でなく変動する。一方、スピンの周期的定常状態を維持するためには、RFパルスのフリップ角を変化させる周期関数の周期が一定である必要がある。
【0053】
そこで、本第2の実施形態では、一心周期を、複数時相のエコーデータを計測する計測期間と、隣接する心周期の間で計測期間を接続する接続期間と、に分割して、接続期間を心周期の変動に応じて可変にして、周期的定常状態を維持しつつ心周期の変動を吸収する。
【0054】
計測期間においては、前述の第1の実施形態と同様に、RFパルスのフリップ角を周期的に変化させてエコーデータの計測を行う。
【0055】
一方、接続期間においては、スピンが図3のような周期的定常状態を維持できるようにRFパルスのフリップ角を一定にする又は変化させる。具体的には、接続期間を3つの部分期間に分割する。つまり、RFパルスのフリップ角を所定の一定値にする一定期間と、この一定期間の開始側に直前の計測期間終了時におけるフリップ角から一定値に橋渡す前過渡期間と、一定期間の終了側に一定値から次の心周期における計測期間の開始時のフリップ角に橋渡す後過渡期間と、に分割する。
【0056】
最初に、上記本第2の実施形態を実施する演算処理部114の各機能を、図7(b)に示す機能ブロック図に基づいて説明する。本第2の実施形態に係る演算処理部114は、周期的フリップ角変調部701、k空間配置設定部702、接続期間設定部704、を有して成る。なお、セグメント計測設定部703は、必要に応じて設ける。
【0057】
周期的フリップ角変調部701は、前述の第1の実施形態における周期的フリップ角変調部701の機能と同様なので、説明を省略する。
【0058】
k空間配置設定部702は、前述の第1の実施形態におけるk空間配置設定部702の機能と同様なので、説明を省略する。
【0059】
接続期間設定部704は、接続期間の設定及び接続期間の内の一定期間におけるフリップ角を設定する。詳細は後述する。
【0060】
以下、本第2の実施形態の詳細を図5、6、7(b)に基づいて説明する。
【0061】
図5は、一心周期中にN個の心時相を設定し、計測期間で連続する1〜N心時相のエコーデータを計測し、一つの心周期で第N心時相の計測終了後から次の心周期における第1心時相の計測開始までの期間を接続期間とする例を示している。接続期間設定部704は、これらの期間設定を行う。
【0062】
計測期間では、前述の第1の実施形態と同様に、RFパルスのフリップ角を周期的に変化させて、第1心時相から第N心時相までのエコーデータを計測する。具体的には、例えば(1)式に示したような所定の周期関数に従って、RFパルスのフリップ角を周期的にN回変化させ、その際、RFパルスの開始及び終了時のフリップ角が共に略最小の値になるように変化させる。周期的フリップ角変調部701は、このような計測期間におけるフリップ角の周期的変化を設定する。
【0063】
接続期間は、RFパルスのフリップ角を所定の一定値にする一定期間502と、この一定期間の開始側に第N心時相の計測終了時におけるフリップ角から一定値に橋渡す前過渡期間501と、一定期間の終了側に一定値から次の心周期における第1心時相の計測開始時のフリップ角に橋渡す後過渡期間503と、から成る。そして、第N心時相の計測終了時及び第1心時相の計測開始時のフリップ角が略最小の値であることから、前過渡期間501ではフリップ角を略最小の値から一定値に変化させ、後過渡期間503ではフリップ角を一定値から略最小の値に変化させる。
【0064】
具体的には、計測期間においてRFパルスのフリップ角を変化させる周期関数の最大値をα1、最小値をα2とし、一定期間におけるRFパルスの一定フリップ角をα3とすると、前過渡期間では、α2からα3へとフリップ角を変化させることになり、後過渡期間では、α3からα2へとフリップ角を変化させることになる。特に、周期関数を三角関数として一定期間における一定フリップ角α3を
α3=(α1+α2)/2 (4)
とした場合には、前過渡期間501と後過渡期間503は、それぞれ周期関数の周期の1/4周期分の期間となり、フリップ角の変化のさせ方は、その1/4周期分の周期関数に基づく変化とする。
【0065】
周期の変動を吸収するためには、一定期間502の時間的長さを心周期の変動に応じて長短させる。具体的には、心周期が長くなれば一定期間502を長くし、心周期が短くなれば一定期間502を短くする。これにより、計測期間及びその期間内でのフリップ角の周期的変化を心周期の変動によらずに一定にすることができるので、心周期の変動がスピンの周期的定常状態及び計測されるエコーデータに与える影響を最小限にすることができる。
【0066】
なお一定期間502を、次の心電図R波検出後、一定の待機時間が経過するまで継続する。この待機時間は短い方がよいが、システムの応答時間を待つ必要があるため一定の処理時間を待機時間として設けておく必要があるためである。
【0067】
接続期間設定部704は、以上のような接続期間の設定及び接続期間におけるフリップ角の設定を行う。
【0068】
次に、接続期間を設けることにより、周期的な定常状態を保つことが可能であることを示すために、周期的な定常状態での信号強度と、(4)式で得られるフリップ角α3を一定に照射し続ける従来のSSFPシーケンスの場合の定常状態を数値計算した結果を、図6に示す。横軸は(最小フリップ角α2)/(最大フリップ角α1)を示し、縦軸は横磁化の信号強度を示す。なお、α1は60度.に固定し、数値計算に用いたパラメータの値は図3と同様である。この場合、RFパルスの一周期分の数β=10であるため、前過渡期間、及び後過渡期間におけるRFパルスの数は2回(10×1/4=2.5を整数に丸め込んだ回数)である。図中ダイヤ印は、本発明に係るフリップ角を周期的に変化させて得られる周期的定常状態の信号強度を示し、四角印は、(4)式で得られるフリップ角α3を用いた場合の定常状態を示す。特に、横軸上の同じ(最小フリップ角)/(最大フリップ角)における本発明に係る周期的定常状態の信号強度(ダイヤ印)は、信号強度軸の下側から、1周期の内の0/10周期と9/10周期の時点、1/10周期と8/10周期の時点、2/10周期と7/10周期の時点、3/10周期と6/10周期の時点、及び、4/10周期と5./10周期の時点の値を示す。図より、周期的定常状態において、前過渡期間、および後過渡期間である2/10=1/5周期における信号強度は、(4)式を用いた場合の定常状態とよく一致することがわかる。特に、α2/α1が1に近い場合にはほぼ一致している。従って、本第2の実施形態のように、1/4周期の時点で一定のフリップ角とする一定期間502に移行する接続領域を用いることで、周期的な定常状態を保つことが可能であることが理解される。
【0069】
以上説明したように、本実施形態のMRI装置は、一心周期を、複数時相のエコーデータを計測する計測期間と、隣接する心周期の間で計測期間を接続する接続期間と、に分割して、心周期の変動に応じて接続期間を長短させることで、該心周期の変動を吸収する。そして、計測期間では、RFパルスのフリップ角を周期的に変化させ、接続期間では、フリップ角を一定にする一定期間を設け、一定期間の前後に計測期間のフリップ角へ橋渡すようにフリップ角を変化させる過渡期間を設ける。これにより、接続期間を設けてもスピンの周期的定常状態を維持することが可能になり、被検体の心周期が変動しても、前述の第1の実施形態と同様の効果を得ることができると共に、心周期の変動によらずに高画質の画像を得ることができる。
【0070】
(第3の実施形態)
本発明のMRI装置についての第3の実施形態を説明する。図3から分かるように、RFパルスのフリップ角を周期的に変化させると、得られるエコーデータの信号値も周期的に変化する。そのため、k空間データは、その位相エンコード方向に変調されてしまう。つまり、エコーデータの信号値の周期的変化を反映した重み付けがk空間データの位相エンコード方向に行われることになる。このk空間データにおける位相エンコード方向の変調を軽減するために、本第3の実施形態では、k空間データ取得後にk空間デーをその位相エンコード方向に補正する。
【0071】
最初に、上記本第3の実施形態を実施する演算処理部114の各機能を、図7(c)に示す機能ブロック図に基づいて説明する。本第3の実施形態に係る演算処理部114は、周期的フリップ角変調部701、k空間配置設定部702、K空間データ補正部705、を有して成る。なお、セグメント計測設定部703と接続期間設定部704は、必要に応じて設ける。
【0072】
周期的フリップ角変調部701は、前述の第1の実施形態における周期的フリップ角変調部701の機能と同様なので、説明を省略する。
【0073】
k空間配置設定部702は、前述の第1の実施形態におけるk空間配置設定部702の機能と同様なので、説明を省略する。
【0074】
k空間データ補正部705は、フリップ角の周期的変化に基づくk空間データの位相エンコード方向の変調を補正する。詳細は後述する。
【0075】
次に、k空間データ補正部705が行う、RFパルスのフリップ角を周期的に変化させること基づく、k空間データの変調の影響を補正するいくつかの補正処理を説明する。
【0076】
第1の補正方法は、本計測の前にプリスキャンを行い、プリスキャンで得られたエコーデータの信号強度変化に基づいて、補正係数又は補正関数を求め、求めた補正係数又は補正関数を用いて、k空間データをその位相エンコード方向に補正する。
【0077】
プリスキャンとしては、位相エンコード傾斜磁場を印加せずに、図2に示した本計測におけるRFパルスのフリップ角変化と同様にフリップ角を変化させて、スピンを周期的定常状態にした後に、少なくともフリップ角を変化させる周期関数の1周期分以上のエコーデータを計測する。このようにして計測された各エコーデータの信号強度は、フリップ角の周期的変化が反映されて、周期的に変化したものとなる。
【0078】
そこで、この信号強度が周期的に変化する各エコーデータを用いて、フリップ角が最大の場合に得られたエコーデータの信号強度に対する他のフリップ角の場合のエコーデータの信号強度の比をフリップ角毎に求め、求めた比の逆数を補正係数として、この補正係数をフリップ角毎に求める。或いは、フリップ角と補正係数との関係を表す補正関数とする。そして、k空間データの各エコーデータを、そのエコーデータを計測する際のフリップ角に対応する補正係数を掛け合わせることで補正する。その結果、フリップ角の周期的変化に基づくエコーデータの信号強度の周期的変化を抑制することが可能になり、高画質の画像を得ることが可能になる。
【0079】
第2の補正方法は、エコーデータの変調パターンを事前に計算して求め、求めた変調パターンに基づいて、補正係数又は補正関数を求め、求めた補正係数又は補正関数を用いて、k空間データをその位相エンコード方向に補正する。
【0080】
例えば、前述の第1の実施形態で説明したように、α1=60deg.、α2=30deg.、β=10、で、T1=1200ms、T2=250ms、として(1)式に基づいてRFパルスを変化させた場合には図3に示したようなエコーデータの信号強度変化が得られる。そこで、十分に周期的定常状態に到達した後の信号強度変化の一周期分を求め、求めた各エコーデータの信号強度から補正係数又は補正関数を求める。この補正係数又は補正関数の求め方、及び、求めた補正係数又は補正関数を用いたk空間データの補正については、第1の補正方法と同じなので詳細な説明を省略する。
【0081】
以上説明したように、本実施形態のMRI装置は、RFパルスのフリップ角を周期的に変化させることに基づくエコーデータの信号強度の変化を補正する補正係数又は補正関数を求めて、エコーデータの信号強度の変化が軽減されるように、k空間データをその位相エンコード方向に補正する。その結果、フリップ角の周期的変化に基づく画像アーチファクトが抑制され、高画質の画像が得られることになる。
【符号の説明】
【0082】
101 被検体、102 静磁場発生磁石、103 傾斜磁場コイル、104 送信RFコイル、105 RF受信コイル、106 信号検出部106、107 信号処理部、108 全体制御部、109 傾斜磁場電源、110 RF送信部、111 計測制御部、112 ベッド、113 表示・操作部、114 演算処理部、115 記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静磁場中に配置された被検体の撮像領域にRFパルスを照射するRFパルス照射部と、
前記撮像領域にRFパルスを繰り返し照射して、該撮像領域のスピンを定常状態にしてエコーデータの計測を行うSSFPシーケンスの実行を制御する計測制御部を備えた磁気共鳴イメージング装置であって、
前記RFパルスのフリップ角を周期的に変化させるよう設定する周期的フリップ角変調部と、
相対的に大きいフリップ角のRFパルスを照射して得られたエコーデータをk空間の低域に配置するように、前記エコーデータの位相エンコードを設定するk空間配置設定部と、
を備え、
前記計測制御部は、前記周期的フリップ角変調部が設定した周期的に変化するフリップ角と、前記k空間配置設定部が設定した前記エコーデータ毎の位相エンコードと、を用いて前記SSFPシーケンスを実行することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記周期的フリップ角変調部は、前記RFパルスのフリップ角を周期的に変化させる周期関数を設定して、該周期関数に基づいて、前記RFパルスのフリップ角の周期的変化を設定することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記k空間を位相エンコード方向に複数のセグメントに分割して、前記フリップ角に応じて、各セグメントに配置する前記エコーデータを設定するセグメント計測設定部を備え、
前記計測制御部は、前記セグメント計測設定部が設定したセグメント毎のエコーデータ配置となるように、各エコーデータに印加する前記位相エンコードを制御することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記被検体の心周期を複数の時相に分割して時相毎の前記エコーデータを計測する計測期間と、隣接する計測期間を接続し、一定のフリップ角のRFパルスを照射する一定期間を有する接続期間と、を設定する接続期間設定部を備え、
前記計測制御部は、前記隣接する計測期間の間に前記接続期間設定部を設けて、前記SSFPシーケンスを実行することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
請求項4記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記接続期間は、前記一定期間の前と後に、それぞれ、前記計測期間のフリップ角から前記一定期間のフリップ角へと橋渡しする前過渡期間と、前記一定期間のフリップ角から前記計測期間のフリップ角へと橋渡しする後過渡期間を有することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項6】
請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置において、
複数の前記エコーデータが配置されて成るk空間データの、前記フリップ角の周期的変化に基づく位相エンコード方向の信号強度変化を補正するk空間データ補正部を備えていることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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