説明

磁気媒体の真偽識別方法および装置

【課題】磁気媒体の残留雑音を指紋として決定し、その指紋により磁気媒体の真偽を判断する。
【解決手段】残留雑音を測定するには、従来の磁気記録トランスジューサ(130)を使用することができる。残留雑音をディジタル化して同じ磁気媒体上に指紋として記録し、それにより磁気媒体を「指紋で識別」することができる。その後、上記「指紋」は、その磁気媒体をオリジナルであると確認し、真偽を識別するために後で使用することができる。ディジタル化された指紋は真偽判断のときの読み出し速度と指紋化されたときの速度とを補正して照合する。この方法により、クレジット・カード、コンピュータ・プログラム・ディスケット、光磁気ディスク、ビデオテープ、カセット・テープ、銀行小切手、株券等を含む、関連磁気媒体を有するすべての磁気媒体、またはすべての対象物を「指紋により識別」することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
種々の磁気媒体を指紋により判断し、真偽を識別するための方法および装置
関連出願への相互参照
本出願は、1993年4月9日出願の出願第08/046,040号の一部継続出願である1994年4月4日出願の出願第08/222,693号の一部継続出願である。
【背景技術】
【0002】
磁気記録媒体からの読出し信号のノイズ源については、今まで調査が行われ特定されてきた。上記ノイズ源の一つとしては、磁気媒体そのもののマイクロ構造の不均質および欠陥がある。他の特定されたノイズ源と同様に、上記のノイズ源から発生したノイズもランダムに発生するものなので、それを測定するには統計的分析しかないと多年にわたって考えられてきた。本発明の発明者は、最近、このノイズ成分が、不変の決定的な特徴を持つものであること、すなわち、磁気ヘッドと媒体の位置および磁気媒体の磁気的経歴に完全に依存する、永久的のものであり繰り返して使用することができる特徴であることを証明した。本発明の発明者が行った実験によって確認したところによれば、媒体上に信号が全然記録されていない状態で、直流の場にだけ曝された場合には、観察した読出し信号はほとんど同じものである。上記条件のもとでの読出し信号に対する磁気の影響は、媒体の磁化の空間的な変動、すなわち、磁気領域、リップル、異方性の場および飽和磁化の局部的変動によるものである。局部的特性は、上記領域を形成し、塗布の後は変化しない個々の粒子の形状および磁気特性によって影響される。それ故、磁気媒体上の一定の点で測定した、名目上は均等に磁化された領域からのノイズは再現性を持っている。本明細書で発明者が証明するように、残留状態または残留雑音を測定するために、磁気媒体をDCで飽和し、その後でその出力を測定することができる。本発明の発明者は、正のDC飽和を行った後の残留雑音を、負のDC飽和を行った後の残留雑音と比較することにより、上記残留雑音が磁気媒体のマイクロ構造の関数であることを確認した。上記残留雑音の波形は、相互に事実上の「鏡像」であることを発見し、相互に密接な相関関係があることを証明した。同様に、残留雑音が、決定的な特徴を持ち、繰り返して使用することができ、磁気媒体それ自身の物理的なマイクロ構造に関連していることを確認するために、他の方法も使用した。永久的なマイクロ構造による残留雑音は、実際に使用した任意の磁気経歴後の永久的なマイクロ構造に特有の識別可能な特徴を示す。非特許文献1に掲載されたホインビル、インデックおよびミューラの「縦方向の磁気記録媒体の空間ノイズ現象」参照。上記論文は参考文献として本明細書に組み込んである。
【0003】
現在米国および世界中で販売および/または配布されている種々の文書および極めて種々様々な録音済み磁気媒体を、識別し特徴により見分けるための方法および装置がこの業界で長いこと求められていた。上記磁気媒体の例としては、磁気および光磁気ディスクおよびテープ、カセット・テープ、オープン・リール・テープ、ビデオ・テープ等を含む娯楽産業で製造、販売されているものなどがある。磁気媒体のもう一つの主要なマーケットは、通常フロッピー(登録商標)・ディスクの形で販売および/または配布されている膨大な量のコンピュータ・プログラムである。磁気媒体は、またビデオ・テープ、カセット・テープ、および電話による会話の磁気媒体上のその他の記録、犯罪活動のビデオ記録、および他の調査およびドキュメンタリに使用されるものを含むオリジナルな磁気媒体を識別し、その真偽を判断する目的にも使用されるが、その場合上記の識別および真偽の判断は重要事項である。磁気媒体の真偽の判断および確認のための技術を必要とするもう一つの例としては、磁気データ・カードの分野がある。磁気データ・カードの例としては、周知のクレジット・カード、ATMカード、デビット・カード、セキュリティ・カードまたはIDカード、マス・トランジット・カード、さらには航空券またはデータを磁気的に記録するための磁気ストライプをその上に持つ他の証明書等がある。当業者なら周知のように、事実上すべての磁気データ・カードは、顧客の口座番号または他の類似の識別データを記録するのに使用される、予め記録した磁気データを含む磁気ストライプを持つ。毎年巨額の金額が偽造および他の偽造コピーおよび使用方法により失われるが、このような損失は、関連する取引が承認される前に、磁気データ・カードの身元の真偽および確認を行うことができる信頼できる装置および方法があれば、事実上防止できる性質のものである。さらに他の例としては、本発明の発明者が知っているある種の特定の努力が払われてきた紙に印刷したドキュメント等もある。
【0004】
本明細書で使用されている「磁気媒体」という言葉は、磁場が固有のものであろうと、誘導されたものであろうと、そのような磁場により感知することができるすべての物質、材料、表面または物理的実体を指すものと理解されたい。すでに説明したように、古くからある磁気媒体の例は多いが、これらは狭い意味で磁気的アナログまたはディジタル・データと一緒に、データ、音楽等のような情報を符号化したものを記録することができる面と見なすことができる。しかし、本発明の発明者の定義に中には、他の例も含まれる。例えば、吹き付けまたは石版印刷または他のプロセス、すなわち、静電気により塗布した磁気トナーを使用する写真コピー・プロセスにより表面に塗布した磁気インク、表面に塗布することができ、金属の薄片を固着するために乾燥するペンキのような種々の流体内の金属の薄片、または他の磁化することができる粒子の懸濁液、および外部磁束を持たないが、例えば、脈動したとき、外部的に感知することができる場を発生する材料のようなものである。「磁気媒体」という言葉に対する上記定義が理解できれば、さらに他の物理的な例が思い浮かぶ。そのような例としては、小切手、銀行為替手形、為替および社債、株券等のようなその他の流通または非流通金融証書のような、磁気インクで書かれた紙を使用したすべての文書などがある。
【0005】
非特許文献2掲載の大村による「ディジタル通信における暗号の新しい用途」という表題の論文に記載されているような、偽造できないものを作る技術が発表されている。その論文中に記載されているように、基本的なアイデアは、紙のある種の一意の「指紋」を測定し、例えば、株券の製造者の秘密のキーを使用して、それを記号(暗号)化するというものである。ここで指紋という用語はその不規則性によって固有性を有する識別要素であり、人体の指紋と同じ機能を有するものとして以下「指紋」と称する。この指紋は、紙の上の線に沿って細く強い光線を移動させ、紙を通過する光の強さを測定することによって作ることができる。その後、上記線に沿った紙の繊維の一意のランダムなパターンにより測定される光の強度の関数が、紙の特定の紙片の指紋を形成する。その後、この指紋はディジタル化され、秘密の暗号機能により暗号化される。その後、暗号化された指紋は、バーコードのようなディジタル形式で別々に紙の上に印刷される。後日、株券の真偽は、紙の上の暗号化されたデータを解読するための秘密でない公開の解読機能を使用して確認し、その上に記録された強度関数、または指紋を再現することができる。次に、株券の実際の強度関数の測定が行われる。この新しく測定した強度関数が、解読データから再現された強度関数と一致する場合には、その文書は本物と判断される。この方法は、公開キー暗号システムと呼ばれる周知の秘密システムが持つ利点を持つ。このシステムはトラップ・ドア一方向機能を使用する。ユーザが秘密のキー(トラップ・ドア)を選択し、トラップ・ドア一方向機能をデータに適用した後は、この手順が公開されている解読に使用するアルゴリズムを決定する。トラップ・ドア一方向機能は、また暗号化メッセージを作成するのにも使用される。その後、すべての他のユーザは、暗号文にそのアルゴリズムを適用して元のメッセージを理解することができる。このシステムの場合には、作成者しかそのアルゴリズムを知らないので、作成者トラップ・ドアに帰属する誰でも読むことができるメッセージをつくることができるのは他にはいない。これにより、偽造の文書の指紋に一致するように、すでに記録されている指紋を単純な偽造により変更しようという試みが防止される。
【0006】
特許文献1は、従来技術による指紋、すなわち、偽造できないものを作ろうとするもう一つの他の例を開示している。上記米国特許に開示されているように、株券のようなものは、紙の質、文書上に磁気媒体を塗布するプロセス、および媒体での磁気粒子の分散の非均質により、その上の磁気媒体のストライプの密度は種々に変化している。磁気媒体を塗布するとき、密度の変動はアトランダムに起こる。上記密度の変動は固定され、文書を識別する際に再び使用することができる。文書には、第二の磁気ストライプも塗布されるが、この磁気ストライプは、磁気読取り/書きこみシステムの一部となるように、記録技術の周知の規格に従って厳格に指定され、高度に制御された媒体からなる。動作中、非均質の磁気ストライプは、直線DC信号または直線AC信号または直線バイアス信号からなる標準記録により、消去され、記録される。記録が行われた後で、もう一つの磁気ヘッドが、記録された磁気ストライプの磁気特性を感知し、感知された磁気特性は、ディジタルの機械が読むことができるフォーマットに変換され、簡単な書き込み機能で、第二の磁気ストライプ上に別々に記録される。真偽の判断を行うために、株券は最初に、他の組の磁気ヘッドの下を通るが、この磁気ヘッドは、感知したノイズ信号がディジタル的に記録され、機械が読むことができる表現を読む。その後、第二の組の磁気ヘッドが、密度の変動している磁気ストライプを読むが、この読取りは、最初それを消去し、同じ標準ノイズ関数を記録し、それから密度の変動している磁気ストライプにより「歪」んでいる状態の予め記録したノイズ関数を感知するという方法で行われる。それがその記録表現と一致する場合には、文書は本物であり、オリジナルであると判断される。それ故、特許文献1の方法に従って、一組の磁気ストライプを文書に塗布し、(ノイズと呼ぶ)特定の信号を記録、測定し、そしてその出力をディジタル的に記録しなければならない。さらに、磁気ストライプの一方は、必ずその出力のランダムな様子を維持できるように、記録するための工業規格以外の規格に従って、ランダムな方法で塗布しなければならない。このようなステップを必要とするので、特許文献1は実行するのが難しく、不便である。
【0007】
特許文献2は、クレジット・カード、文書等の真偽を判断するために磁気媒体を使用する従来技術による試みのさらにもう一つの例を開示している。この特許文献2のコンセプトは、磁気媒体の以下「マクロ」変化と呼ぶ巨視的変化、およびある実施例の場合はその上に記録された「強化」信号、第二の実施例の場合には独立している「強化」信号に対する上記マクロ変化の影響に焦点を当てているという点では、上記特許文献1と実際非常によく似ている。どちらの実施例の場合も、3〜9回(好適な実施例の場合は5回)にわたって、磁気ストライプから選択した約2.6インチの部分を読むことにより、また磁気ヘッド・ノイズ、電気的ノイズおよび任意の他の非媒体ノイズの効果を「平均化」するために、収集したデータ点の相関関係を調べることにより、その「マクロ」変動を測定する。上記の相関関係は、信号が磁気ストライプの上記の2.6インチの部分に記録されていた場合には、上記信号に対して上記マクロ変動により誘導された変動を表す「代表的プロファイル」となる。上記変動が、信頼できる相関関係を生じるほど有意なものでない場合は、媒体内に有意な微視的非均質が存在しないことを示しているので、その媒体は廃棄処分される。このことは、製造された媒体の仕様からのずれが非常に僅かであることを示しているか、そうでない場合には、記録信号に対して確実に検出することが可能で、繰り返して使用することができる変動を生じるような、メーカーの透かし模様等による十分なマクロ・レベルの変動が存在しないことを示している。特許文献2は、またマクロ・レベルのノイズが、磁気領域の下の基板上に磁気記号を表示したり、物理的にある量の材料を移動させるために、磁気材料の選択した部分を隆起させることによる、ストライプの明らかな磁気特性の局部的な変化により増大する可能性があることを示唆している。測定したノイズ・レベルが、記録された強化信号のピークに対して有意な影響を持っている場合には、データを収集するには簡単なピーク検出/保持回路で十分であり、また予め記録した「代表的プロファイル」と現在検出したデータ点とを単に比較するだけで、媒体が本物であるかどうかを十分判断できることが分かっている。それ故、特許文献2の主な特徴は、マクロ・レベルのノイズの使用であり、その上、本特許が開示するマクロ・レベル・ノイズ検出装置を実行するための装置および方法では、マイクロ構造ノイズ・レベルの指紋を確実に作成し、後でオリジナルの真偽を判断するために、その存在を確認することはできないと思われる。
【0008】
従来技術を使用して上記およびその他の問題を解決するために、本発明の発明者は、磁気媒体を識別し、その真偽の判断をすることができるように、文書ばかりでなく、他の対象物、そしてより重要なことは磁気媒体それ自身を特徴によって判断するために、その磁気マイクロ構造により、磁気媒体それ自身の一意で、決定的な特徴を持つ残留雑音の特性を使用するための方法および装置を開発した。この発明技術は、磁気媒体それ自身の微細構造(マイクロ構造)は微細粒子の永久的なランダムな特性的な配置を示し、それ故、決定的な特徴を持つという発見に基づいている。すなわち、いったん製造された後は、記録媒体の物理的マイクロ構造は、すべての従来の記録プロセスを受けても変化することはない。微粒子状の媒体の場合には、各微粒子の位置および方向は、どのように磁場が掛けられても接着剤内で変化しない。薄いフィルム媒体の場合には、微細結晶の向きおよびフィルムの結晶粒界は、記録および再生プロセス中に変化を起こさない。磁気記録プロセスの基礎となっているのは、回転したり、修正したりすることができないこれら固定された、ミクロ的な特徴を持つ粒子に対する磁化である。磁気媒体のある部分が強い場によって一方向に飽和している場合には、残留磁化は媒体の上記のマイクロ構造によって大きく影響される。残留状態は、記録面上の任意の点に対して決定的な影響を持つ。媒体中の各微粒子または粒子の大きさは、数百から数千オングストロームである。その大きさが小さいために、磁気面の小さな部分は非常に多数の上記物理的微粒子または粒子を含む。製造工程においては、通常、それら微粒子の整合が行われるが、どんな場合でも個々の向きおよび位置に幾分ばらつきができる。実際の偏差は、媒体の表面のある部分に特有なものになるので、その向きはその媒体の署名すなわち、「指紋」の役割を果たす。意図的であろうとうとなかろうと、この分布を再現することは、事実上不可能である。何故なら、そうするにはマイクロメートル以下のレベルで無数の微粒子の向きを正確に操作しなければならないからである。それ故、記録面上の特定の部分上の微粒子の多くの組の向きにより、その媒体を一意に識別することができる。実験により、本発明の発明者は、約30〜4300マイクロメートルの長さからの残留雑音は、磁気媒体を「その特徴により指紋とする」のに十分なデータを含んでいることを発見した。特許文献2の場合には、磁気媒体のマクロ・ノイズを、磁気媒体を指紋とするので、66,040マイクロメートル(2.6インチ)の長さを必要とするが、それと比較するとこれは大きな違いである。
【0009】
【特許文献1】米国特許第4,806,740号
【特許文献2】1991年6月15日付けのピース他の米国特許第4,985,614号
【非特許文献1】1992年11月発行の「磁気に関するIEEE会報」28巻、6号
【非特許文献2】1990年5月発行の「IEEE通信マガジン」
【発明の開示】
【0010】
簡単に説明すると、本発明は非常に簡単で、一般の消費者が現在使用している事実上のすべての読取りまたは読取り/書き込み装置に通常設置され、使用されている従来の記録ヘッドにより実行することができる。そのような装置としては、クレジット・カード・リーダ、光磁気ディスク・プレーヤー、カセット・プレーヤー、VCRおよびパソコン等がある。さらに、カード・リーダは、事実上どの装置またはプロセスにも接続することができ、またカード・リーダは、本人であることを示す有効な通行証を提示することができるものだけが入力またはアクセスすることができる「守衛」として使用される。正確な特徴による識別を行うのに、比較的少量の「磁気媒体」しか必要としないので、本発明は、上記磁気記録面以外の広い分野でも使用することができる。例えば、銀行小切手につけられた磁気を持つ番号は、個々の各小切手の正確な、「指紋による識別」を行うのに十分な長さを持つ。
【0011】
もっとも簡単な実施例の場合について説明すると、従来の記録ヘッドは、磁気媒体の指定部分だけをDC飽和させ、残っている残留雑音を「読取る」または、「再生」するだけである。都合のよいことに、指紋はすでに媒体中のその場所に磁気記録されている部分の、二つの磁気の遷移の間の領域から入手することができる。アナログ信号であるこの残留雑音は、媒体それ自身または他の場所に、多くの場合、トラップ・ドア機能を使用して、機械が読むことができるフォーマットで、ディジタル化し、記録することができる。それ故、磁気媒体はその指紋により「ラベル」を貼られたことになる。その磁気媒体の確認または真偽の識別は、より機密保持が必要な場合には、ディジタル的に記録された指紋を周知の公開キーを使用して解読しなければならないが、その点を除けば、上記プロセスを反対に行うだけで簡単に行うことができる。測定された残留雑音が、記録されている残留雑音と一致する場合には、磁気媒体は本物であると識別される。
【0012】
広い用途を持つ本発明の方法および装置は、多くの用途で使うことができる。
【0013】
例えば、ある種の用途、例えば、符号化された対象物が一般に使用されていないもので、ユーザの目的のためだけの識別に使用されるような場合には、トラップ・ドア機能を使用する必要はない。一例をあげると、在庫品目への使用がある。
【0014】
他の例としては、その上にデータまたは情報を記録することができない磁気媒体の用途などがある。例えば、銀行小切手は、金融業界における小切手決裁システムでの種々の段階での銀行小切手の処理に使用される、その下縁部に沿って記録されている磁気媒体による番号を持つ。上記システムの任意の一つまたはそれ以上の選択された場所で、小切手が有効であり、偽造小切手でないことを確認するために、指紋を使用することができる。このような用途の場合には、銀行小切手が、自分達が使用するために口座を開いている人に宛てたものである場合は、その銀行小切手は、発行機関によってその指紋をチェックすることができる。そうすることにより、銀行小切手上に印刷された正確または不正確な口座開設者に関する情報を使用して、銀行小切手の広く行われている偽造を防止することができる。このような方法により、商業銀行は、確実に自分の銀行に口座を開いている人だけが、自行の印刷および本物と認めた銀行小切手を使用して、小切手決裁システムによりその銀行小切手を引き受けることができる。本発明の指紋による識別プロセスを上記のように使用することによって、商業銀行システムでのかなりの量の偽造を防止することができる。
【0015】
他の金融機関で本発明の指紋による識別プロセスを使用すれば、口座番号、証明書番号および他の識別証印またはデータを印刷し、これらの金融証書が処理されるとき、それを読取ることによって、現在使用している文書パラダイムに最小限度の介入または修正を加えるだけで、多くの他の種類の詐欺、偽造等を防止することができる。株券、債券、無記名債券、ボンド・クーポン、国庫証券および他の金融証券を、指紋により識別し、偽造を防止することができる。金融市場で処理される際に証書が種々の場所で処理されるとき、磁気証明書番号、口座番号、識別番号または証書上の他の番号が読取られるのと同時に、指紋の読み取りおよび確認を容易に行うことができる。すでに実行された特定の番号およびすでに実行したリーダを使用することにより、処理機械を最小限度変更するだけで、このさらに高いレベルの本物に対する保護を行うことができる。それ故、本発明の装置および方法は、この特定の用途に適応させるのに非常に適している。
【0016】
さらに他の用途としては、大量に出回っているアプリケーション・ソフトウェアの「コピー防止」がある。予め記録したソフトウェアの一般に流布しているディスケットのコピー防止のために、多年にわたって多くの方法が試みられてきたが、ほとんどすべて失敗に終わった。それには多くの原因があるが、その原因の一つは、今までに行われたすべてのコピー防止の方法は、ユーザのコンピュータでのソフトウェアの動作を妨害するという方法をとっていたことである。本発明を使用した場合には、コピー防止の方法は、ソフトウェアの動作を妨害するのではなく、単に、他の面では通常に書き込まれたコードの動作に、予め条件を与えるだけで行うことができる。その実行に当たっては、ソフトウェアのディスケットは、最初自分が、挿入されているコンピュータに、ディスケットの指定部分の指紋を読取るように命令し、それを予め記録した同じ指紋と比較する。指紋が一致する場合には、ソフトウェアは、コンピュータにディスケット上に記憶されているアプリケーション・ソフトウェアを、さらに読み込み、実行することを許可する。しかし、コンピュータが検出した指紋が、ソフトウェアに記憶されている指紋と一致しない場合には、ソフトウェア自身は、プログラムをさらに読み込むことを禁止、その実行を禁止する。こうすることにより、ユーザは絶対に他の人に使用させるために、プログラムのコピーを行うことができない。この方法は、また好適な実施例の詳細な説明のところで説明するように、指紋を比較する際に、指紋が一致しなくても、最初の一回だけコピーを行うことができるが、しかしその後は指紋が一致しなければコピーを行うことができないようにするために、一枚のアーカイブまたはバックアップ・コピーだけを作ることができるように、若干の修正を行うことができる。この方法は容易に行うことができるし、「コピー防止」アプリケーション・ソフトウェアは信頼でき、価格も易く、すでにユーザが使用している非常に多数のコンピュータのハードウェアにほんの僅かな変更を行うだけですむ。
【0017】
本発明の他の重要な用途としては、ほとんど大部分のクレジット・カード上にすでに塗布されている一本の磁気ストライプを使用して、クレジット・カードの真偽を識別する方法などがある。この場合も、本発明は、特許文献2とはハッキリと異なっている。何故なら、上記特許はマクロ指紋技術専用に使用するための2.6インチの長さのストライプを必要とするので、第二のストライプを追加しなければならないからである。上記と同じ方法が、特定のクレジット・カード上に含まれている特定の磁気ストライプの「指紋」を測定し、記録するために使用される。その後で、クレジット・カード・リーダは、使用する度にその同じ指紋が一致したときだけそれが本物であることを確認する。すでに多くのクレジット・カードが流通しているので、通常、これらクレジット・カードの有効期限が切れる事態が発生し、そのため、一般の消費者が所持しているクレジット・カードを絶えず新しいクレジット・カードと交換しなければならない。それ故、時間が経つにつれて、クレジット・カードというものは「指紋により確認された」クレジット・カードのことを指すのだというふうに容易に変換することができる。
【0018】
さらに、「指紋」システムをより急速に実行するために、現在のカードの基準を使用の度毎に「指紋により識別する」ことができる。このことは、カードの各所有者が各カードを次に使用する時に行うことができる。
【0019】
この用途と少し異なる用途の場合には、本発明をいわゆるスマート・カードのようなデータベースまたはプロセッサに接続することができる。このようなクレジット・カード類似の装置は、実際には、多くの場合、標準クレジット・カード磁気ストライプの他に、搭載電子メモリおよび/またはマイクロプロセッサを含む。上記メモリまたはマイクロプロセッサは、マネー代用データを含むすべての種類の情報を含むことができる。例えば、現在、多数の上記スマート・カードが、ヨーロッパにおいて電話用プリペイドカードとして使用されているが、これらカードにはペイホーンによって課金される金額が予め記録されている。上記カードは、予め支払った金額がなくなるまで使用された後に捨てられる。詐欺を防止するために、種々の機密保持の方法が開発されてきたが、それらの方法を破る方法も考案される。本発明は、スマート・カードに対する機密保護の方法として非常に適している。何故なら、この方法は特定の磁気媒体の磁気粒子による微細構造(マイクロ構造)だけに基づいているからである。使用中、磁気指紋は磁気ストライプ上に、(カードに搭載されている)スマート・カードのメモリ、または中央のコンピュータに記憶することができる。トラップ・ドア機能と一緒に使用する場合には、トラップ・ドア機能にアクセスしないで偽造カードを作ることはできないし、各取引は、中央の決算機関に電話連絡しなくても、ローカル・カード・リーダのところで迅速に予め真偽の識別を行うことができる。すべてのクレジット・カードの使用期限延長の場合には、特定のカードの履歴を追跡することができるような、完全な記録または追跡用データを作成するために、各取引と一緒に指紋データを記憶することができる。それ故、現在一般に使用されている方法で、正しいけれども盗難にあった番号で多数の偽造カードが作成されているが、そのような偽造も防止また有効に摘発することができる。
【0020】
他のレベルの機密保護の場合には、指紋の位置がランダムに決められる。そのようなランダムの位置は、カード番号の一つの特徴となる。例えば、カード番号のモジュロ「P」は、読み取りエレクトロニクスに、その周辺で指紋が発見できる特定のデータ・ビットを指定することができる。
【0021】
さらに他の重要な用途としては、本発明を守衛として使用するという方法がある。許可されたものだけが、任意のシステム、プロセス、機械、場所または他の機能にアクセスすることができるようにしたい場合には、本発明は独特で信頼できる解決策を提供する。最も簡単な方法は、本発明の指紋で識別できる磁気ストライプによりパスカードを作ることである。いくつかの例をパスカードを使用する場合を想定して説明するが、どのような磁気媒体でも本発明を開示に従って同じように使用することができることを理解されたい。それ故、そのような他の実施例および実行方法も本発明の範囲内に含まれること、および「パスカード」に含まれることを理解されたい。このパスカードは、個人識別カードとして使用することができる。この個人識別カードは、使用中のカードの特定の磁気指紋を記憶させることにより、アクセスの制御ばかりでなく、サービス、機能等にアクセスする特定の個人の識別にも使用することができる。多くの実施例も容易に思いつくことができる。例えば、遠隔地の端末を通してのコンピュータ・ネットワークへのアクセスを、本発明のパスカードを使用して制御することができる。このような制御は、ディスケットに記憶されている指紋の真偽を識別することができる任意のフロッピー・ディスク・ドライブに、容易に挿入することができるディスケットを使用して行うことができる。他の方法としては、パスカードを読むことができる価格の安いカード・リーダも使用することができる。他の多くの用途には、修正したカード・リーダを使用することができる。例えば、銀行の金銭出納係にパスカードを割り当て、このパスカードを出納係りが入力したすべての取引の追跡に使用し、それにより出納係りの詐欺をより完全に防止することができる。ビジネス、健康プラン、大学、病院および他の組織および施設が使用している無数の識別カードは容易に、パスカードを採用し、使用することができ、そのサービス、施設等のユーザをより確実に識別し、予め真偽を判断することができる。現在使用しているカードを、容易に本発明のパスカードと交換することができるばかりでなく、他の新しいサービスおよびシステムも実行することができる。何故なら、本発明により高度な機密保護が行われるからである。新しいサービス等としては、ホーム・ショッピングおよびペイバーヴュー方式のビデオ等がある。そうなると、当然国全体のデータを含むデータベース、国全体で使用できる識別カード、およびクレジット・カードまたはパスカードが現在よりより広い範囲で使用されるようになる。あるシステムが、特定のパスカードの磁気指紋だけでなく、画像ID、人間の指紋、(クレジット・カードに現在印刷されている)ホログラム、またはそれによりパスカード・システムが事実上完全に安全になる他の類似の方法のような二次的機密保持チェックを使用する場合には、特に使用範囲が広くなる。上記機密保護が行われるので、人々は進んで、そのような詳細な個人財政情報および健康情報を使用するようになり、上記システムが実現するだろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図1に示すように、磁気媒体20の一部は、ランダムなパターンに配列されている複数の微細結晶構造22からなる。この微細結晶構造22は、その直径が数百から数千オングストロームの微粒子または粒子からなる。図1は、この物理的微細構造を示すために、大きく拡大したものである。図2に示すように、微細結晶構造は、磁気媒体全体に広がっている。しかし、図2の磁気媒体24それ自身は、当業者なら周知のように、トラック26、28、30からなっている。別々の部分の略図しか示していないが、指紋は媒体24の任意の部分から入手することができる。
【0023】
図3および図4について説明すると、複数の従来の記録ヘッド32、34、36はヘッド・トランスポート37に装着されていて、磁気媒体38は、当業者なら周知のように、制御できるような方法で、記録ヘッド32、34、36に接触した状態で送られる。上記記録ヘッド32−36としては、当業者なら周知のように、任意の磁気トランスジューサまたは磁気光学トランスジューサ・ヘッドを使用することができる。当業者なら周知のように、その入力および出力を制御し、読み取り、さらに再生または他の使用目的にために信号を処理するために、記録ヘッド32−36は、すべて電子回路39に接続している。図4には三つのヘッド32、34、36しか図示してないが、通常の当業者なら、本明細書に開示してあるように、本発明の目的を達成するには、任意の数の複数の記録ヘッドを容易に設置することができ、また必要とすることをよく理解することができるだろう。本発明においては、プロトタイプを組み立て、ひとつのヘッドを使用して本発明が作動することを実証する。図3に示すように、薄いフィルム・テープの形で示した、薄いフィルム磁気媒体またはテープ42の指定部分40の磁気「指紋」は、ディジタル化し機械が読むことができるコード46等の形で、上記薄いフィルム磁気媒体またはテープ42上の第二の部分44に記録することができる。
【0024】
好適な実施例の場合、本発明は、指紋が存在する磁気媒体の一部分40の微細構造による残留雑音の特性を読み取り、測定するための方法を使用した。好適には、上記部分40は、数十から数百マイクロメートル程度であることが好ましい。その後、この部分はDC飽和され、それにより生じた残留雑音を測定する「読み取り」ステップへと送られる。
【0025】
これは好適な実施例であるが、媒体に記録されていようがいまいが、指紋は何時でもそこに存在することを理解されたい。それ故、指紋を入手するために、指紋を含んでいる指定部分をDC飽和すること、または同じ極性でDC飽和することは必ずしも必要ではない。そのかわり、唯一の重要なことは、残留雑音とそれより前に測定した残留雑音の相関関係の比較を容易にするような方法を決定することである。さらに、「磁気媒体」という言葉は、アナログ・データ、または磁気的な「1」および「0」を記録するのに使用される磁気面だけではなく、より遙かに広い意味を持っていることを理解されたい。「磁気媒体」という言葉は、その磁場を通して感知することができるすべての磁気面および磁気物質を含む。
【0026】
情報が「一回の」測定で入手されたものである場合には、その情報は電子ノイズと微粒子の向きによる残留雑音の両方を含む。この「ノイズ」または「残留雑音」は、電子的にアナログ信号であると考えられているので、その後、この情報はディジタル化され、図3のコード46で示すように、情報の約数十から数百のディジタル・ビットの形で記録される。実験中、本発明の発明者は、測定波形に含まれる電子ノイズを除去するために、何回も測定を行い、その結果の平均値を求めた。しかし、二組のデータ、すなわち、「一回の」測定値と何回かの測定値の平均値とが比較されたときに、高い相関が観察されており、それにより商業的用途においては「一回の」測定値でも、データの平均値に対して容易に使用できることが証明された。本発明の発明者が自らの前に発表した論文に記載した、上記の関係は、下記式(1)の正規化相互相関係数rが使用されている。
【0027】
【数1】

「指紋」、すなわち、残留雑音を再生、測定するために、このプロセスが同じように反復して使用され、一回の測定による二つの波形を比較したとき、その間の相関関係はもっと低かった。しかし、一回の測定による二つの波形について観察した相関関係は有意であり、商業的用途にもこの方法を使用できることがはっきりと証明された。
【0028】
図24に示すように、指紋による識別のために使用した信号の部分は、記録した信号の残りの部分と比較すると非常に小さい。図25に示すように、図24の円で囲んだ部分、すなわち、指紋部分は、波形をより詳細に示すために増幅することができる。図26においては、本発明による相関関係は、媒体中に指紋が存在することを確認すると定義することができる「ピーク」を示している。
【0029】
図5に示すように、本発明の実際の実施例としては、磁気ストライプ50の一部54の指紋を示す、コード52によりコード化されている磁気ストライプ50が塗布されている磁気データ・カード48もある。それ故、磁気データ・カード48がカード・リーダ56中に「挿入」されると、カード・リーダ56は、記憶されている指紋データを判断するために、コード52を読み、それを翻訳することができ、磁気ストライプ50の部分54の指紋を読み、一致するかどうかを調べるために両者を比較し、一致する場合には、磁気データ・カード48を変造されていない本物と認めることができる真正のカードであると判断する。他の方法の場合には、指紋をカード上に記憶する必要はなく、そのかわりに他の場所のデータベースのような中枢の部分に記憶することができる。
【0030】
図10に示すように、磁気指紋真偽確認装置の略ブロック図は、すでに説明したように、クレジット・カードまたはパスカード104上の磁気媒体102を読取るための読取りヘッド100を含む。図23のゲイン回路を含む磁気トリガ回路106は、ロジック素子にパルスを供給し、これによりメモリ112は、(図22に示す基準電圧発生装置を含む)アナログ−ディジタル・コンバータ110の出力である、読取りヘッドからのディジタル・データストリームVsを記憶することができる。その後、マイクロコントローラ114は、クレジット・カードまたはパスカード104の真偽を判断するために、そのデータを処理し、それを元の指紋と比較する。図11に磁気トリガ回路106のさらに詳細な図を示す。磁気トリガ回路106は、図11の下半分のタイミング・チャートに示すように、しきい値発生装置(図20参照)が発生したしきい値を持つ一組のアナログ・コンパレータ(図14参照)を通して、正のパルス出力118および負のパルス出力120を発生させるため、読取りヘッド100からの出力を増幅するための(図15にその詳細を示す)プリアンプ116を含む。ロジック108は、コネクタ122を通してパソコンに接続することにより、図12に示すように実行することができる。図13にメモリ素子124のより詳細な図を示す。また図14にトリガ回路126のより完全な図を示す。さらに、図15にプリアンプ回路128を示す。図16に磁気指紋を決定する装置のブロック図130を示す。この磁気指紋を決定する回路はカスタム集積回路で実行するように配置されている。
【0031】
本発明の多くの実行例の場合、記録ヘッド、カード・リーダ等を通して送られる磁気媒体の速度は、それが有効であるかどうかを確認または真偽の判断を行うために、磁気指紋が最初に測定されるときと、その後で磁気指紋が読み取られるときの両方の場合に一定であるように設定されている。この固定読み取り速度のいくつかの例としては、コンピュータでフロッピー・ディスクが回転する速度、VCRテープが演奏される速度、オーディオ・カセット・テープが演奏される速度、ATMカードのモータ駆動読取り速度、自動装置による銀行小切手の処理速度等がある。モータ駆動カード・リーダを使用することができるある種のクレジット・カードの場合も、固定読取り速度が使用されている。しかし、他の用途の場合には、制御された速度が期待できない場合もある。恐らく今日周知の最も普及している用途としては、小売り店の店員が読取りトラックを通してカードを読み取らせるタイプの広く使用されているクレジット・カード・リーダがある。磁気媒体の速度を変えることができる場合、または磁気媒体の速度が、指紋が最初に測定されたときの速度とは異なる場合のような上記の場合に対応するために、本発明の発明者は、磁気指紋に対応するデータを確実に捕捉し、確認プロセスで使用する多くの方法を開発してきた。このような方法の開発は、有効なクレジット・カード、パスカード等が不当に拒否されるのを防止する一助となっている。本発明をよりよく理解してもらうために、磁気ストライプが塗布されているクレジット・カードに関連して、上記の種々の方法について説明する。しかし、これらの方法は磁気媒体の速度を変えることができるか、または元の指紋による識別ステップの速度から変えようと思えば変えることができる、すべての用途に同じように使用することができることを理解されたい。
【0032】
そのブロック図を図10に示す磁気指紋真偽確認装置の場合には、磁気媒体上に記録された二つのトリガ・パルスの間で、一連の、多分150程のデータ点が取り出される。図11の磁気トリガ回路に図示するように、十分に強い正の方向に進むパルスの「中心」が検出されたとき、信号「正のパルス」はアクティブになる。同様に、十分に強い負の方向に進むパルスが検出されたとき、信号「負のパルス」はアクティブになる。パルスの中央の位置を検出するために、(図19にさらに詳細に示すように)アクティブ微分回路により入力信号の導関数が取り出される。パルスの中心を検出することによって、指紋領域を形成しているパルスの中心間の距離が固定されるが、この距離はクレジット・カードがクレジット・カード・リーダに挿入される度に、確実の確認することができる距離を示す。レベル感知検出も行われるが、これは偽のトリガ・パルスに対する防護策の一助として行われるものである。アナログ−ディジタル・コンバータは、Fs1のような固定した繰返し頻度でサンプリングを行う。それ故、サンプリングの間隔は、デルタx1である。この場合、デルタx1は、V1(クレジット・カードの速度)をFs1(サンプリング頻度)で割ったものに等しい。サンプリング周波数(サンプリングの繰返し頻度)Fs1が、数百キロヘルツである場合には、デルタx1はほぼ1ミクロンのオーダーになる。取り出したサンプリングの数、P(150程度)は、カウントされ、指紋と一緒にクレジット・カード上に記録される。信頼性を改善する目的で、ヘッド・ノイズ、電子記回路ノイズおよび磁気マイクロ構造ノイズ以外の他のすべてのノイズの影響を取り除くために、磁気指紋は数回読み取られ、その平均がとられる。これによりクレジット・カードに対する指紋を測定して決定するプロセスは完了する。
【0033】
そのカードが使用されていて、その指紋の真偽を確認したい場合には、その指紋による識別の際にサンプリングされた、カードの磁気媒体の同じ領域をサンプリングする必要がある。さらに、サンプリングされた点の間の距離が、そのカードの指紋の決定が行われた時の距離と、同じでなければならない。本発明の実施例の場合には、この距離はデルタx1である。この距離は正確に同じであることが望ましいが、本発明の発明者は、数パーセント程度の誤差があっても支障がないことを発見した。サンプリング地点の間隔は、アナログ−ディジタル・コンバータのサンプリング周波数およびクレジット・カードが読み取りヘッドを通過する速度の両方により決まる。カードの読み取りが手動で行われるために、実に種々様々な装置が現在使用されていて、小売り点の店員は異なる速度でクレジット・カードをカード・リーダに読み取らせる。オリジナルのサンプリングの間隔と同じ間隔でサンプルデータを入手するための一つの方法は、非常に多くの数のサンプリングを行うオーバーサンプリングの方法である。このようなサンプリングの実施は、ソフトウェアによっても、ハードウェアによっても行うことができる。すなわち、Fs1と比較すると、遙かに高速なサンプリング頻度Fs2が選択される。これにより、新しいサンプリングの間隔であるデルタx2が作られるが、このデルタx2は元の指紋を決定するプロセスの場合に取り出されたサンプル数と比較すると、多くのサンプル、すなわち、それの約100倍も多いサンプルを得る。すなわち、150のサンプルの代わりに、15,000のサンプルを取り出すことになる。このようなサンプルを得るサンプリングの場合には、比較のために必要な同じサンプルデータの組を供給するのに、M個毎のサンプルだけを使用するだけでよい。このMの値としてはQ/Pの比が選ばれる。この場合、Pは指紋を決定したときの二つのトリガ・パルスの間に採取されたサンプルの数であり、Qは高いサンプリング周波数Fs2を使用する販売時点で採取されたサンプリングの数である。トリガ・パルス間の距離は変化しないし、Fs2に対するFs1の比はすでに知られているので、指紋を決定した時のその速度と比較した小売り点でのカード速度は、容易に測定することができる。このオーバーサンプリング手法を使用することによって、販売時点において、約100の係数によるオーバーサンプリングは、指紋の決定が行われた時点で使用された速度の5倍の速度に相当する元のサンプリング間隔の2%以内の有効なサンプリング間隔となることを、数学的に容易に証明することができる。必要な場合には、さらに速いオーバーサンプリングの速度を使用すれば、さらに大きな速度比を使用することができる。
【0034】
本発明のプロトタイプを製作していた時に発明者が行った研究により、指紋のサンプリングの数値を符号化するための僅か3ビットの大きさのディジタル語を使用すれば、提案された相関関係分析技術を使用して、容認できる結果を十分入手することができることが分かっている。この言語のサイズは小さいから、この相関関係の処理を行えるように、カスタム集積回路(IC)を設計することができることを示唆している。1ビットのデータ・ストリームのデータ速度が、速度r1より十分速い場合には、速度r1のnビットの語は、1ビットのデータ・ストリームから作ることができることは当業者にとって周知である。(例えば、シグマ−デルタ変換に関する文献参照。)例えば、1983年6月発行のIEEEジャーナル掲載のジェスパース他の「内蔵二進法コリレータ・モジュール」参照。その最も簡単な形の場合には、オーバーサンプリング速度の四倍の因数ごとに、1ビットずつ語の長さを長くすることができる。さらに、提案の相関関係技術の場合には、nビットのデータ語を作る必要がない場合が非常に多い。そのような場合には、1ビットのデータ・ストリームに対して相関関係を取ることは簡単なことである。
【0035】
(磁気媒体の残留雑音の場合のように)1ビット・データの場合で、ゼロ平均を持つ信号の場合には、相関係数rは下記式(2)により与えられる。
【0036】
【数2】

それ故、この相関関係分析は、図17に示すような簡単なアップ/ダウン・カウンタ132により行うことができる。この図に示すように、読み取りヘッド100の出力は、プリアンプ116により増幅され、このプリアンプ116は、高速のサンプリング速度用アナログ・コンパレータ134に接続し、上記コンパレータはロジック・ゲート136のx1入力に接続している。1ビットのデータ・ストリーム内の元の指紋データは、ビットが一致するときは正になり、一致しないときは負になるような、同期入力である。アップ/ダウン・カウンタ132の出力は、あるしきい値と比較されるが、そのしきい値より大きい場合には、元の指紋と一致することを示す。
【0037】
1ビットのデータ・ストリームを高速で採取し、低速でNビット語にすることができるように、その逆も同様に行うことができる。すなわち、作成時に、残留雑音による指紋を決定された磁気媒体は、例えば、4ビットアナログ−ディジタル・コンバータによりサンプリングすることができる。その後、指紋データを4ビット語で記憶することができる。真偽の識別を行う時点で、4ビットのサンプリングされたデータ値は、最近のモデルのCDプレーヤーで行われるように、より速い速度で1ビットのデータ・ストリームに変換することができる。その後、この4ビットのデータ・ストリームは、アナログ・コンパレータ134からの1ビット・データ・ストリームとの相関関係がチェックされる。
【0038】
最初の識別のための指紋を決定するプロセスに対応するデータのサンプリングをより確実にするための、他の方法は、本質的に、クレジット・カードの速度を測定し、サンプリング速度をその速度に一致するように調整するプロセスを含む。より正確に説明すると、二つの遷移または他の基準マークが固定距離Dだけ離れた状態で、カード上に置かれる。カードが第一の遷移から第二の遷移へと移動するのに掛かる時間が、カードがカード・リーダを通過する速度として決められる。その後、サンプリング速度を、第二の間隔の間カードが移動する速度が、第一の間隔の移動速度と一致するとの仮定に基づく速度に一致するように調整することができる。上記距離は数百ミクロンにしか過ぎないので、この仮定は信頼できるものである。この技術を使用すれば、なんらのオーバーサンプリングを必要としないので、確認、すなわちカード読取りステップ中に収集したデータ点を記憶するのに必要なメモリの容量は最低限度の容量で済む。この方法を使用する場合には、N/M x Freference(基準周波数)がFs(サンプリング周波数)に等しくなるように、入力周波数が因数Mにより分割され、フィードバック・ループが因数Nによって分割される場合には、位相ロックド・ループを使用することができる。因数MおよびNは、標本のサイズ、期待されるサンプリング周波数、距離D等のようなシステムの他のパラメータに基づいて選択することができる。すでに説明したように、この技術は、オーバーサンプリングを行わなくてすみ、そのため必要なメモリの容量が少なくて済むという利点を持つ。この方法は、数百ミクロンという物理的に非常に短い領域で速度測定を行うという精度の問題が起こるという欠点がある。
【0039】
すでに説明したように、モータ駆動のクレジット・カード・リーダ、またはカードがカード・リーダを通過する速度を別々の方法で標準化されたクレジット・カード・リーダを、上記サンプリングおよびそれの整合に関する問題を最小限度まで少なくするために使用することができる。さらに、最も良い結果をもたらすような複合的な方法を得るために、いくつかの方法を組み合わせることができる。例えば、クレジット・カード・リーダを、上記のように、オーバーサンプリングに対する要件を、理想的に除外するようなサンプリング間隔に、一致するように設計することができる。しかし、間隔の変動が確実に修正されるように、サンプリング間隔の整合と一緒にオーバーサンプリング手法を使用することもできる。
【0040】
図6に示すように、コンピュータ58は、当業者ならすべて周知のように、フロッピー・ディスケット62を読むための、フロッピー・ディスク・ドライブ60を持つ。本発明の装置のさらに他の実施例の場合には、フロッピー・ディスケット62上に記録されているソフトウェアは、最初その指紋を判断するために、フロッピー・ディスケット62からなる磁気媒体の指定の部分を読み、その指紋をフロッピー・ディスケット62に常駐するプログラムに記憶されている指紋と比較するように要求する。両方の指紋が一致する場合には、コンピュータ58はフロッピー・ディスケット62に記憶されているアプリケーション・プログラムを実行することができる。フロッピー・ディスケット62上に記憶されているプログラムが、オリジナルのフロッピー・ディスケットでない場合には、アプリケーション・プログラムは実行されない。何故なら、測定した指紋がフロッピー・ディスケット62に含まれているデータに記憶されている指紋と一致しないからである。この実施例を変形した実施例の場合には、フロッピー・ディスケット62に常駐しているプログラムが、測定した指紋が記憶している指紋と一致するか、一回の不一致の場合に限って、作動するのを許した場合、一回だけアーカイバル、すなわち、フロッピー・ディスケット62のコピーが許可される。その後、一致しなかった指紋もフロッピー・ディスケット62に常駐しているアプリケーション・ソフトウェアに記憶される。その結果、ユーザが使用するとき、上記プログラムは、オリジナルのフロッピー・ディスケット62、および第二のフロッピー・ディスケットを認識し、そのバックアップ、すなわち、アーカイバル、すなわち、コピーを作る。
【0041】
本発明のさらに他の実施例の場合には、光磁気ディスク・プレーヤー64は、そのトレーに収容されていて、トレー68が引き込まれるとすぐに再生することができるディスク66を持つ。しかし、ディスク66は、ディスク媒体に整合するように記憶された指紋を持つことができる。光磁気ディスク・プレーヤー64が、測定した指紋と記録した指紋との比較に従って、ドライブ装置媒体ディスク66の再生に予め条件付けをするための適当な回路を持っている場合には、ディスク66の不法なコピーを防止することができる。同様に、ディスク66からのテープ上へのすべてのコピーは、その上に記録された正しくない指紋を含み、テープのプレイバック装置が、記憶している指紋と測定した指紋との間の一致に基づいて、再生に予め条件付けをする適当な回路を持っている場合には、それ以降の再生も禁止される。
【0042】
図8に示すように、本発明のさらに他の実施例の場合には、すでに説明したように、正しい指紋を測定し、カセットまたはディジタル・テープ70上に記憶するプロセスを含み、すでに説明したように、再生に予め条件付けをするために、記録された指紋と測定した指紋を測定し、比較するために必要な回路を持つカセット・テープ・プレーヤー72を使用している。
【0043】
本発明のさらに他の実施例の場合には、図9に示すように、VCR74は挿入する準備のできているVCRテープ76を持つ。本発明を使用すれば、VCR74に含まれている適当な回路により比較できるように、指紋を直ちに測定し、VCR上でコード化することができる。それ故、正しく構成されている場合には、それが本物であるか、オリジナルである場合を除いて、VCRはテープを再生しない。
【0044】
図27に示すように、本発明のさらに他の実施例は、銀行小切手200の真偽を識別するためのものである。この場合、複数の磁気インクによる番号202が銀行小切手200の下縁部に沿って印刷されていて、それぞれの番号は指紋として識別でき、使用することができる「磁気媒体」からなる。例えば、基準文字203は磁気インクで表示されているが、その長さは本発明の指紋による識別を行うのに十分なものでなければならない。この目的のための他の方法の場合には、標準化した文字の任意の一文字を、その位置の中の任意のある位置で使用することができる。さらに、銀行小切手200上の種々の位置で使用されるいろいろに変化する番号を収容するために、追加の数字を、単に指紋による識別プロセスを行うために追加することもできる。基準文字203または追加数字を使用することにより、ある種の統一性を導入することができ、口座のチェックなどにより、特定のデータ・ビットが銀行毎に変化した場合でも、上記統一性を維持することができる。すでに説明したように、指紋自身のディジタル表示を、三つだけのアスキー文字または他の文字に収容することができるので、銀行小切手200に、上記余分の文字を追加し、各銀行小切手200上に指紋の数値を直ちに記録するのに適する状態にすることができる。この実施例を使用することによって、各銀行小切手を指紋により容易に識別できるようになり、各銀行小切手上に磁気インクにより指紋の数値を表示し、小切手決裁システムの種々の段階での処理の時点で、直ちに真偽の識別ができるようになる。他の方法としては、指紋データを暗号化することもできるし、小切手200上にすでに存在する他の任意のデータに含めることもできる。株券、社債、ボンド・クーポン、無記名債券、為替、商品券等についても同じことがいえる。この種の磁気媒体は、一般的に、その主な目的がその上に情報を磁気的に記録することではない、非記録タイプの磁気媒体と見なすことができる。すなわち、銀行小切手の下縁部上に磁気インクで表示した小数は、それ自身、情報、すなわち、小数を記録するために輪郭内に書き込まれている。この磁気インクによる番号は、他のデータを記録するためのものではない。それどころか、上記磁気インクによる数字それ自身は、小切手が処理されるときに読み取られる性質のものである。これら小数は、「磁気媒体」という言葉に対するサブセットと見なすことができ、その上に追加情報を磁気的に記録するための記録磁気媒体を含む。上記記録磁気媒体の例としては、光磁気ディスクおよびテープ、カセット・テープ、オープン・リール・テープ、ビデオ・テープ、コンピュータ・フロッピー・ディスケット、クレジット・カードおよびATMカード等がある。本発明の発明者は、本明細書に説明するように、記録タイプおよび非記録タイプの両方を含む、すべての種類の磁気媒体と一緒に容易に使用することができるものと考える。
【0045】
当業者には明らかなように、本発明に対して種々の変更および修正を行うことができる。しかし、そのような変更または修正は、本発明の開示の中に含まれる。本発明は添付の請求の範囲によってのみ制限される。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】磁気媒体の一部の微細構造(マイクロ構造)の拡大図である。
【図2】その上にマイクロ構造を持つ磁気媒体の数本のトラックの拡大図である。
【図3】機械が読むことができるコードで、その上に記録した指紋を持つ磁気媒体のトラックの部分図である。
【図4】三つの従来の記録ヘッドとその下を通る磁気媒体である。
【図5】クレジット・カード・リーダにより読取られる、その上にコード化された指紋データを持つクレジット・カードである。
【図6】フロッピー・ディスク・ドライブに挿入されるコンピュータ・ディスケットを持つパソコンである。
【図7】そのトレーに光磁気ディスクが収容された状態の、光磁気ディスク・プレーヤーの斜視図である。
【図8】その内部にカセット・テープが挿入されているカセット・プレーヤーである。
【図9】テープを挿入するばかりになっているVCRの斜視図である。
【図10】磁気指紋照合確認回路のブロック図である。
【図11】図10の磁気トリガ回路のブロック図である。
【図12】パソコンを使用する本発明の実施例の略図である。
【図13】図12の実行の際に使用されるメモリの略図である。
【図14】図12の実行の際に使用されるトリガ回路の略図である。
【図15】図12の実行の際に使用されるプリアンプ回路の略図である。
【図16】集積回路で実行するために設定された、磁気指紋照合確認回路のブロック図である。
【図17】単一ビット・データ・ストリームを使用する相関回路の略図である。
【図18】欠番である。
【図19】アクティブ微分回路の略図である。
【図20】しきい値発生装置の略図である。
【図21】欠番である。
【図22】ADC基準発生装置の略図である。
【図23】利得回路の略図である。
【図24】磁気クレジット・カード・ストライプから読取ったデータの曲線である。
【図25】図24の丸で囲んだ部分の拡大図である。
【図26】二つの指紋の相関関係を示す波形である。
【図27】本発明の磁気インク番号の使用方法を詳細に示す、銀行小切手のような金融証券の一部の拡大図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録された指紋(その不規則性によって固有性を有する識別要素を以下指紋という)を有する対象物の真偽を識別するための装置であって、前記対象物は磁気媒体の部分を有し、前記磁気媒体の部分は磁性を有する微細粒子からなり、該微細粒子はその寸法、形状が異なると共に、該微細粒子の配列が不規則性を有する構造を持ち(以下これを磁気媒体の微細構造という)、前記指紋は前記磁気媒体の微細構造に由来する残留雑音からなり、前記残留雑音は前記磁気媒体の部分が読み取り用の磁気ヘッドを通過して第1の速度で動かされるときに前もって決定されており、
記識別装置は、
前記記録された指紋を読み出すための手段と、
前記読み出された指紋を前記以前に決定されている残留雑音に変換する手段と、
前記磁気媒体の微細構造に由来する残留雑音を、前記磁気媒体の部分が読み取り用の磁気ヘッドを第2の速度で通過するときの前記磁気媒体の部分から直接決定する手段と、
前記変換された、以前に決定されている残留雑音と前記直接決定された残留雑音とを比較して合致するかどうかを決定し、それによって対象物の真偽を判断する比較手段と、
からなり、
前記比較手段は前記第1の速度と前記第2の速度との差異を補償する手段を有することを特徴とする対象物の真偽を識別するための装置。
【請求項2】
記録された指紋(その不規則性によって固有性を有する識別要素を以下指紋という)を有する対象物の真偽を識別するための装置であって、前記対象物は磁気媒体の部分を有し、前記磁気媒体の部分は磁性を有する微細粒子からなり、該微細粒子はその寸法、形状が異なると共に、該微細粒子の配列が不規則性を有する構造を持ち(以下これを磁気媒体の微細構造という)、前記指紋は前記磁気媒体の微細構造に由来する残留雑音からなり、前記記録された指紋は、読み取られた前記残留雑音の代表値であるアナログ信号を多数サンプリングした第1のサンプリング値からなり、前記多数の第1のサンプリング値は前記以前に決定された残留雑音を表わす値であり、前記多数の第1のサンプリングは第1のサンプリング間隔を有し、識別装置は、
前記記録された指紋を読み出すための手段と、
前記読み出された指紋を前記以前に決定されている残留雑音に変換する手段と、
前記磁気媒体の部分から直接残留雑音を読み取って決定する手段と、
前記変換された、以前に決定されている残留雑音と前記直接決定された残留雑音とを比較して合致するかどうかを決め、それによって対象物の真偽を判断するための比較する手段と、からなる装置であり、
前記決定手段が、
(1)前記残留雑音を前記磁気媒体の部分から直接感知して前記直接読み取った残留雑音を表わすアナログ信号を生成する感知手段と、
(2)前記直接読み取られる値である前記残留雑音からのアナログ信号に対して多数のサンプリングを行うための第2のサンプリングを行う手段と、前記第2のサンプリングは第2のサンプリング間隔を有し、第2のサンプリング間隔は前記第1のサンプリング間隔とは異なっており、比較する手段が、第2のサンプリング値を補償する手段を含み、前記補償する手段は、前記第2の多数のサンプリングの1つの組合せを、前記第1の多数のサンプリングのサンプリング間隔と実質的に同じサンプリング間隔を示すように残すことからなる手段を含み、前記残した1つの組合せが前記直接読み取って決定する残留雑音とすることを特徴とする装置。
【請求項3】
請求項2に記載された装置において、
記録された指紋が第1の多数のサンプリングの表示値であり、前記サンプリングの表示値が予め決定されている残留雑音を表示する値であり、前記第1のサンプリングは第1のサンプリング間隔を有し、
指紋を読み取って決定する手段が、
(1)前記磁気媒体の部分から直接残留雑音を検知するための手段と、前記手段は磁気媒体の部分が読み取り用磁気ヘッドを通過するときの第2の通過速度で決定する手段を含み、前記速度により、直接検知される残留雑音を表示するアナログ信号を生成するものであり、
(2)前記直接読み取る残留磁気の代表値である第2の多数のサンプリングを行うため、磁気媒体の部分から、生成したアナログ信号から規定されたサンプリング速度でサンプリングするための手段とからなり、
さらに、前記補償手段が、
(1)前記磁気媒体の部分が読み取り用磁気ヘッドを通過するときの第2の通過速度を測定する手段と、
(2)第2のサンプリング間隔が、実質的に、第1のサンプリング間隔と同じとなるように、前記測定された第2の速度に応じてサンプリング周期(単位時間当たりの回数)を規定するための手段と
からなる装置。
【請求項4】
請求項3に記載された装置において、第2の通過速度を測定する手段が、前記対象物が少なくとも固定された距離だけ離れた2つの基準となるマークを有しており、2つの基準となるマークが前記読み取り用磁気ヘッドを通過するときの速度を前記第2の速度として測定する手段である装置。
【請求項5】
記録された磁気媒体の部分に多数の、磁気方向が交互に変化する磁気が縞状に記録され、前記縞状の部分の磁気の極大部すなわち、磁気の遷移を、前記基準となるマークとして隣り合った2つの前記磁気の遷移を使用した請求項3に記載の装置。
【請求項6】
前記対象物がその対象物に前記指紋を持ち、読み出す手段が、その対象物から直接記録された指紋を読み出す手段を有する請求項1〜5に記載のいずれか1項に記載の対象物。
【請求項7】
前記磁気媒体の微細構造は磁気媒体内の永久的な粒子の不規則配列からなり、粒子の寸法が数百〜数千オングストロームのオーダーである請求項1〜6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
請求項1〜4、または6〜7のいずれか1項に記載の装置において、
前記指紋が磁気媒体の微細構造に由来する残留雑音から予め決定された残留雑音からなり、前記予め決定された残留雑音は前記磁気媒体の非記録部分から決定された雑音であり、前記磁気媒体の非記録部分はその上に、受信されず、データを磁気的に記憶されていない磁気媒体の一部であり、前記決定する手段が、前記磁気媒体の部分が前記第2の速度で読み出し用磁気ヘッドの部分を通過するときの非記録部分から直接残留雑音を決定するための手段を含むことを特徴とする装置。
【請求項9】
前記非記録部分は対象物に磁気インクで書かれた1つ以上の文字を有する対象物である請求項8に記載の装置。
【請求項10】
記録された指紋(その不規則性によって固有性を有する識別要素を以下指紋という)を有する対象物の真偽を識別するための方法であって、前記対象物は磁気媒体の部分を有し、前記磁気媒体の部分は磁性を有する微細粒子からなり、該微細粒子はその寸法、形状が異なると共に、該微細粒子の配列が不規則性を有する構造を持ち(以下これを磁気媒体の微細構造という)、前記指紋は前記磁気媒体の微細構造に由来する残留雑音からなり、前記残留雑音は前記磁気媒体の部分が磁気ヘッドを第1の速度で動かされるときに前もって決定されており、前記方法は、
前記磁気媒体の部分が磁気ヘッドを第2の速度で通過するときの、前記磁気媒体の微細構造に由来する残留雑音を前記磁気媒体の部分から直接に決定する工程と、
前記予め決定されている残留雑音と前記直接決定された残留雑音とを比較して相関を取る工程と、該工程は前記相関関係によって対象物が真正であるかどうかを示す工程であり、
前記相関を取る工程は前記第1の速度と第2の速度の間の違いを補償する工程を含むことを特徴とする対象物の真偽を識別するための方法。
【請求項11】
記録された指紋(その不規則性によって固有性を有する識別要素を以下指紋という)を有する対象物の真偽を識別するための方法であって、前記対象物は磁気媒体の部分を有し、前記磁気媒体の部分は磁性を有する微細粒子からなり、該微細粒子はその寸法、形状が異なると共に、該微細粒子の配列が不規則性を有する構造を持ち(以下これを磁気媒体の微細構造という)、前記指紋は前記磁気媒体の微細構造に由来する残留雑音からなり、前記記録された指紋は、読み取られた前記残留雑音の代表値であるアナログ信号を多数サンプリングした第1のサンプリング値からなり、前記第1の多数のサンプリング値は前記予め決められた残留雑音を表示する値であり、前記第1の多数のサンプリングは第1のサンプリング間隔を有し、
前記識別するための方法は、
前記磁気媒体の部分から直接残留雑音を読み取って決定する工程と、
前記変換された、予め決定されている残留雑音と前記直接読み取って決定された残留雑音とを比較し、合致するかどうかを決め、それによって対象物の真偽を判断するための比較する工程と、からなる方法であり、
決定する工程が、
(1)前記直接読み取る残留雑音を表示する値であるアナログ信号を生成するために前記磁気媒体の部分からの残留雑音を直接読み取る工程と、
(2)前記直接読み取られる値である前記残留雑音からのアナログ信号に対して多数の第2のサンプリングを行う、第2のサンプリング工程と、前記多数の第2のサンプリングは第2のサンプリング間隔を有し、第2のサンプリング間隔は前記第1のサンプリング間隔とは異なっており、
比較する工程が、第2のサンプリング値を補償する工程を含み、前記補償する工程は、前記第2の多数のサンプリングの1つの組合せを、前記第1の多数のサンプリングのサンプリング間隔と実質的に同じサンプリング間隔を示すように残すことからなる工程を含み、前記残した1つの組合せが直接読み取って決定する残留雑音とすることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法において、
決定する工程が
(1)前記磁気媒体の部分が読み取り用磁気ヘッドを第2の速度で通過し、それにより前記直接読み取られる残留雑音を示す値であるアナログ信号を生成するときの前記磁気媒体の部分からの直接の残留雑音を検知する工程と、
(2)前記直接読み取る残留雑音を示す第2の多数のサンプリング値を得るための規定されたサンプリング周期でアナログ信号をサンプリングする工程と、
さらに補償する工程が
(1)前記磁気媒体の部分が読み取り用磁気ヘッドを通過するときの第2の速度を測定する工程と、
(2)前記測定された第2の速度に応じて前記第2の多数のサンプリングが、実質的に前記第1のサンプリング間隔と同じになるようにサンプリング周期を規定する工程とからなることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項12に記載された方法において、第2の通過速度を測定する工程が、前記対象物が少なくとも固定された距離だけ離れた2つの基準となるマークを有しており、2つの基準となるマークが前記読み取り用磁気ヘッドを通過するときの速度を前記第2の速度として測定する工程とする方法。
【請求項14】
記録された磁気媒体の部分に多数の、磁気方向が交互に変化する磁気が縞状に記録され、前記縞状の部分の磁気の極大部すなわち、磁気の遷移を、前記基準となるマークとして隣り合った2つの前記磁気の遷移を使用した請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記対象物がその対象物に前記指紋を持ち、その対象物から直接記録された指紋を読み出す工程を有する請求項10〜14に記載のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記磁気媒体の微細構造は磁気媒体内の永久的な粒子の不規則配列からなり、粒子の寸法が数百〜数千オングストロームのオーダーである請求項10〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
請求項10〜13、または15〜16のいずれか1項に記載の方法において、
前記指紋が磁気媒体の微細構造に由来する残留雑音から予め決定された残留雑音からなり、前記予め決定された残留雑音は前記磁気媒体の非記録部分から決定された雑音であり、前記磁気媒体の非記録部分はその上に、受信されず、データを磁気的に記憶されていない磁気媒体の一部であり、前記決定する工程が、前記磁気媒体の部分が前記第2の速度で読み出し用磁気ヘッドの部分を通過するときの非記録部分から直接残留雑音を決定するための工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項18】
前記非記録部分は対象物に磁気インクで書かれた1つ以上の文字を有する対象物である請求項17に記載の方法。
【請求項19】
後に対象物の同一性を決定するために対象物の指紋(その不規則性によって固有性を有する識別要素を以下指紋という)を決定する装置であって、前記対象物は一部にその上にデータを磁気的に記憶するのに使われてない非記録部分を持つ磁気媒体であって、前記非記録部分を有する磁気媒体は磁気媒体の微細構造を有し(磁気媒体を構成する磁性を有する微細粒子はその寸法、形状が異なると共に、該微細粒子の配列が不規則性を有する構造を持ち以下磁気媒体の微細構造という)、
前記装置は、
前記磁性媒体の非記録部分の前記微細構造に由来する残留雑音を決定する手段と、前記残留雑音が対象物の指紋を構成し、
後に前記対象物の同一性を判断するために、後に決定された前記残留雑音と比較するために前記対象物の指紋を記録する手段とからなる装置。
【請求項20】
前記対象物の磁性媒体の非記録部分が対象物に使用された1つ以上の磁気インクによる文字である請求項19に記載の装置
【請求項21】
後に対象物の同一性を決定するために対象物の指紋(その不規則性によって固有性を有する識別要素を以下指紋という)を決定するための方法であって、前記対象物は一部にその上にデータを磁気的に記憶するのに使われてない非記録部分を持つ磁気媒体であって、前記非記録部分を有する磁気媒体は磁気媒体の微細構造を有し(磁気媒体を構成する磁性を有する微細粒子はその寸法、形状が異なると共に、該微細粒子の配列が不規則性を有する構造を持ち以下磁気媒体の微細構造という)、
前記方法は、
前記磁性媒体の非記録部分の前記微細構造に由来する残留雑音を決定する工程と、前記残留雑音が対象物の指紋を構成し、
後に前記対象物の同一性を判断するために、後に決定された前記残留雑音と比較するために前記対象物の指紋を記録する工程とからなる方法。
【請求項22】
前記対象物の磁性媒体の非記録部分が、対象物に使用された1つ以上の磁気インクによる文字である請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記対象物に使用された1つ以上の磁性インクの文字が、対象物上に磁気インクで印刷された1つの数字である請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記対象物が金融証券である請求項21〜23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
記録された指紋(その不規則性によって固有性を有する識別要素を以下指紋という)を有する対象物の真偽を識別するための装置であって、前記対象物が、その上に磁気的にデータを記憶するのに使用していない磁気媒体の非記録部分を有しており、前記磁気媒体の部分は磁性を有する微細粒子からなり、該微細粒子はその寸法、形状が異なると共に、該微細粒子の配列が不規則性を有する構造を持ち(以下磁気媒体の微細構造という)、前記指紋は前記磁気媒体の非記録部分の微細構造に由来する、予め決定された残留雑音からなり、前記装置は
前記記録された指紋を読み取るための手段と、
前記読み出された指紋を前記予め決定されている残留雑音に変換する手段と、
前記磁気媒体の非記録部分の前記磁気媒体の微細構造に由来する残留雑音を前記磁気媒体の部分から直接に決定する手段と、
前記変換された、予め決定されている残留雑音と前記直接決定された残留雑音とを比較し、合致するかどうかを決め、それによって対象物の真偽を判断するための比較をするための手段と、からなる装置
【請求項26】
前記対象物の磁気媒体の非記録部分が、対象物に使用された1つ以上の磁気インクによる文字である請求項25に記載の装置。
【請求項27】
記録された指紋(その不規則性によって固有性を有する識別要素を以下指紋という)を有する対象物の真偽を識別するための方法であって、前記対象物が、その上に磁気的にデータを記憶するのに使用していない磁気媒体の非記録部分を有しており、前記磁気媒体の部分は磁性を有する微細粒子からなり、該微細粒子はその寸法、形状が異なると共に、該微細粒子の配列が不規則性を有する構造を持ち(以下磁気媒体の微細構造という)、前記指紋は前記磁気媒体の非記録部分の前記微細構造に由来する、予め決定された残留雑音からなり、前記方法は
前記磁気媒体の非記録部分の前記磁気媒体の微細構造に由来する残留雑音を前記磁気媒体の部分から直接に決定する工程と、
前記指紋と前記直接決定された残留雑音との相関関係を取り、その相関関係によって対象物が真正かどうかを判断する工程と、からなる方法。
【請求項28】
前記対象物の磁気媒体の非記録部分が、対象物に使用された1つ以上の磁気インクによる文字である請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記対象物に使用された1つ以上の磁性インクの文字が、対象物上に磁気インクで印刷された1つの数字である請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記対象物が金融証券である請求項27〜29のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図19】
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【図20】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2006−294241(P2006−294241A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−158380(P2006−158380)
【出願日】平成18年6月7日(2006.6.7)
【分割の表示】特願平8−509506の分割
【原出願日】平成7年8月14日(1995.8.14)
【出願人】(500204278)ワシントン ユニヴァーシティー (14)
【Fターム(参考)】