説明

磁気検出装置

【課題】 広域な外部磁界に対し優れた集磁性を有しており、微弱な外部磁界に関しても高感度に検出可能な磁気検出装置を提供する。
【解決手段】 磁気検出装置1は、外部磁界に対しインピーダンス変化として電気的に応答する磁気検出部2と、コバルトアモルファスリボンを用いて構成され、磁気検出部2の両端に設けることにより外部磁界を集磁する効果を有する集磁部3と、磁気検出部2と集磁部3の基台となるSi基板4と、磁気検出部2と集磁部3とSi基板4とを封止固定するための封止樹脂5とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気抵抗素子と感度向上のために設置される集磁部とで構成される、磁気検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の技術として、MI(Magneto-Impedance)素子を使用した磁気検出素子が知られている。MI素子は、微小な外部磁界の変化に基づいてインピーダンスが変化する特性を有し、ある物質の磁気状態を電圧の出力信号として検出する磁気抵抗素子として、パーソナルコンピュータの記憶装置内に設置され、記録磁化を読み取る磁気ヘッド等の用途が見込まれている(例えば、特許文献1)。
【0003】
この磁気検出素子は、非磁性基板と、非磁性基板上に設けられた高透磁率磁性膜によるMI素子と、MI素子が磁気反応する方向においてMI素子の両端に設けられ、記憶媒体の記録磁化による磁束をMI素子に導く効果をもつ高透磁率磁性膜とを有する。
【0004】
この磁気検出素子によると、MI素子の両端に設けられた高透磁率磁性膜のうち、記録磁化読取り側に設けられた高透磁率磁性膜は、先端が絞りこまれた形状を有し、局所的に生じる微小な記録磁化を高い分解能で検出することができる。
【特許文献1】特開平8−330644号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の磁気検出素子によると、MI素子の一端に設けられた高透磁率磁性膜は、局所的な磁界を検出するために先端が絞り込まれた特別な形状をしており、また他端に設けられた高透磁率磁性膜は、MI素子の感度を補うために設置され、二つの高透磁率磁性膜はMI素子に対して非対称となるため、広域な外部磁界を検出するには集磁性が十分でないという問題がある。
【0006】
従って、本発明の目的は、広域な外部磁界に対し優れた集磁性を有しており、微弱な外部磁界に関しても高感度に検出可能な磁気検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記目的を達成するため、外部磁界を検出するMI(Magneto−Impedance)素子からなる磁気検出部と、前記MI素子が前記外部磁界に反応する方向に沿って、前記MI素子の両端に近接して設置され、高透磁率材料からなる集磁部とを有することを特徴とする磁気検出装置を提供する。
【0008】
また、本発明は上記目的を達成するため、外部磁界を検出するMI(Magneto−Impedance)素子からなる磁気検出部と、前記MI素子が外部磁界に反応する方向に沿って、前記MI素子の両端に近接して対称構造にて設置され、高透磁率材料からなる集磁部とを有することを特徴とする磁気検出装置を提供する。
【0009】
前記MI素子と前記集磁部との距離は2.0mm以内であり、前記MI素子と前記集磁部の厚さ方向の中心軸ずれは0.1mm以内であることが好ましい。
【0010】
前記集磁部は、前記高透磁率材料を複数積層して形成されていてもよい。
【0011】
前記高透磁率材料は、コバルトアモルファスを使用して構成してもよい。
【0012】
前記高透磁率材料は、フェライトを使用して構成してもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、広域な外部磁界に対し優れた集磁性を有しており、微弱な外部磁界に関しても高感度に検出可能な磁気検出装置を構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明の磁気検出装置の実施の形態を図面を参考にして詳細に説明する。
【0015】
(磁気検出装置の構成)
図1は本発明の実施の形態に係る磁気検出装置の概略構成図である。
【0016】
この磁気検出装置1は、外部磁界に対しインピーダンス変化として電気的に応答する磁気検出部2と、コバルトアモルファスリボンを用いて構成され、磁気検出部2の両端に設けることにより外部磁界を集磁する効果を有する集磁部3と、磁気検出部2と集磁部3の基台となるSi基板4と、磁気検出部2と集磁部3とSi基板4とを封止固定するための封止樹脂5とを有する。なお、封止樹脂5は必ずしも透明である必要はないが、内部構造を説明するため、透明なものを使用する。
【0017】
図2は本発明の実施の形態に関する磁気検出装置を示し、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A部における断面図である。
【0018】
図2(a)と(b)に示すように、磁気検出部2は、Si基板4の表面上につづら折れ状にパターン形成されたMI素子20と、MI素子20を外部と電気的に接続するため、またMI素子20どうしを電気的に接続するためのAlからなる電極21とを有する。また、磁気検出部2と集磁部3はSiOによるパッシベーション膜22により電気的に絶縁されている。
【0019】
磁気検出装置1は、MI素子20と集磁部3の間隔がD1となるように両者を設置している。また、MI素子20と集磁部3の厚み方向の中心軸ずれD2が0になるようにSi基板4に段部を形成している。
【0020】
また、MI素子20は約1μmの厚みを有する。集磁部3は、長さ12.5mm、幅1.2mm、厚さ20μmの形状のものを使用する。パッシベーション膜22は約0.5μmの厚さを有する。
【0021】
図3(a)〜(f)は磁気検出装置の製造工程を示す断面図である。なお、図2(a)のA−A部断面における工程を示している。
【0022】
まず、(a)に示すように、板状のSi基板4を用意する。次に(b)に示すように、CoNbZr等の高透磁率材料からなるMI素子20をSi基板4上に高周波スパッタリング成膜法によって形成する。次に(c)に示すように、Alからなる電極21をスパッタリングによって形成し、MI素子20と電気的に接続する。このMI素子20と電極21は磁気検出部2を構成する。次に(d)に示すように、Si基板をエッチングすることにより集磁部3を位置決めして取り付けるための段部を形成する。次に(e)に示すように、MI素子20と集磁部3の電気的絶縁、またMI素子20の保護のためにパッシベーション膜22を形成する。以上の工程により、Si基板4上に複数個のMI素子20、電極21およびパッシベーション膜22が形成される。次に(f)に示すように、各々の磁気検出部2をダイシングにより切り離す。
【0023】
図4(a)〜(b)は磁気検出装置の製造工程を示す断面図である。なお、図2(a)のA−A部断面における工程を示している。
【0024】
(a)に示すように、図3の工程において作成された素子において、集磁部3をSi基板の段部に取り付ける。次に(b)に示すように、全体を封止樹脂5により封止固定することにより磁気検出装置1が構成される。
【0025】
(磁気検出装置の動作)
以下に、本発明の実施の形態における磁気検出装置の動作を図1から図5を参照しつつ説明する。
【0026】
磁気検出部2の両端に設けられた集磁部3は、集磁部3の外側の一端から外側の他端にかけて磁気検出部2を貫くように磁束を集磁する。磁気検出部2のMI素子20は長手方向にて集磁された磁束に反応し、インピーダンス変化により電気的な信号として出力する。
【0027】
図5(a)は、MI素子と集磁部の距離D1と、磁気検出装置の感度変化率との関係における特性を示すグラフ、(b)は、MI素子と集磁部の厚みに関する中心軸ずれD2と、磁気検出装置の感度変化率との関係における特性を示すグラフ、(c)は、集磁部の有無に関し、MI素子のインピーダンス特性を示すグラフである。
【0028】
図5(a)に示すように、MI素子20の端と集磁部3の端との距離D1が大きくなるに従い、集磁部3がないときのインピーダンスR0に対する感度変化率Rμ/R0は減少していくことを確認している。上記の結果より、D1がおよそ2.0mm以下の場合に集磁部3は有効であるといえる。
【0029】
また図5(b)に示すように、MI素子20の厚さ方向の中心軸と集磁部3の厚さ方向の中心軸とのずれD2が大きくなるに従い、集磁部3がないときのインピーダンスR0に対する感度変化率Rμ/R0は減少していくことを確認している。上記の結果より、D2がおよそ0.1mm以下の場合に集磁部3は有効であるといえる。
【0030】
また図5(c)に示すように、集磁部3にコバルトアモルファスリボンを1枚使用した場合のMI素子20のインピーダンス特性R1は、D1が30μm、D2が0mmとしたとき、集磁部3が無い場合のMI素子20のインピーダンス特性R0に比べ、外部磁界に関して約2倍の感度を有することを確認している。
【0031】
(発明の実施の形態の効果)
上記した実施の形態によると、磁気検出装置1は、MI素子20と集磁部3とを所定範囲内の位置関係に配置することで、広域な外部磁界に対し高感度に磁気検出することが可能になる。
【0032】
また、磁気検出装置1は、集磁部3にコバルトアモルファスを使用したことにより、100kHz以上の周波数の磁界を集磁しないため、高周波を使用する電子機器等に搭載する場合に高周波フィルターを必要とせず部品点数減となり、構成を単純かつ小型にすることができる。
【0033】
また、コバルトアモルファスは選択度Qを持たず100kHz以下においてフラットな周波数特性を有するため、金属ケースを使用した電子機器等に搭載することが可能になる。また、コバルトアモルファスは柔軟性を有しており、搭載機器の形状に合わせて集磁部3を変形させて設置することが可能になる。
【0034】
なお、集磁部3にフェライトを使用しても良い。ただし、フェライトを使用する場合は、有効な集磁性を得るために0.5mm以上の厚みを必要とする。フェライトは選択度Qを持たず1MHz以下においてフラットな周波数特性を有するため、より広範囲の周波数域の磁界および電波を検出することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施の形態に係る磁気検出装置の概略構成図である。
【図2】本発明の実施の形態に関する磁気検出装置を示し、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A部における断面図である。
【図3】(a)〜(f)は磁気検出装置の製造工程を示す断面図である。
【図4】(a)〜(b)は磁気検出装置の製造工程を示す断面図である。
【図5】(a)は、MI素子と集磁部の距離D1と、磁気検出装置の感度変化率との関係における特性を示すグラフ、(b)は、MI素子と集磁部の厚みに関する中心軸ずれD2と、磁気検出装置の感度変化率との関係における特性を示すグラフ、(c)は、集磁部の有無に関し、MI素子のインピーダンス特性を示すグラフである。
【符号の説明】
【0036】
1…磁気検出装置
2…磁気検出部
3…集磁部
4…Si基板
5…封止樹脂
20…MI素子
21…電極
22…パッシベーション膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部磁界を検出するMI(Magneto−Impedance)素子からなる磁気検出部と、
前記MI素子が前記外部磁界に反応する方向に沿って、前記MI素子の両端に近接して設置され、高透磁率材料からなる集磁部とを有することを特徴とする磁気検出装置。
【請求項2】
外部磁界を検出するMI(Magneto−Impedance)素子からなる磁気検出部と、
前記MI素子が前記外部磁界に反応する方向に沿って、前記MI素子の両端に近接して対称構造にて設置され、高透磁率材料からなる集磁部とを有することを特徴とする磁気検出装置。
【請求項3】
前記MI素子と前記集磁部との距離は2.0mm以内であり、前記MI素子と前記集磁部の厚さ方向の中心軸ずれは0.1mm以内であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の磁気検出装置。
【請求項4】
前記集磁部は、前記高透磁率材料を複数積層して形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の磁気検出装置。
【請求項5】
前記高透磁率材料は、コバルトアモルファスからなることを特徴とする請求項1または2に記載の磁気検出装置。
【請求項6】
前記高透磁率材料は、フェライトからなることを特徴とする請求項1または2に記載の磁気検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−93328(P2007−93328A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−281295(P2005−281295)
【出願日】平成17年9月28日(2005.9.28)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】