説明

磁気治療器用容器

【課題】磁気遮蔽性に優れた磁気治療器用容器を提供する。
【解決手段】磁気治療器を収容するための凹部12が形成された本体部10と、上記本体部10の凹部12開口を開閉自在に蓋する蓋部11とを有し、少なくとも上記本体部10の凹部12底面と蓋部11の内側面に、鉄板14が貼着されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気遮蔽性に優れた磁気治療器用容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、人体に磁力を作用させて肩凝りや腰痛等を治療する磁気治療が、広く行われている。上記磁気治療には、例えば図6(a)に示すような磁気治療器1が用いられる。この磁気治療器1は、粒状磁石2と、これを皮膚に貼るための粘着シート3とで構成されており、通常、図6(b)に示すように、2本の平行な切れ目Pが入った離型紙4によって、複数個の磁気治療器1(図では6個)をシート状に保持し、紙箱等に収容した状態で販売するようになっている。
【0003】
上記磁気治療器1の粒状磁石2は、比較的強い磁力を発するため、これを皮膚に貼ったり、衣料に取り付けて用いたりすると、皮膚に対峙する作用面以外の部分に対しても磁気の影響が及び、例えば上着の内ポケットに入れていた定期券やキャッシュカードの記録内容が損なわれる等のトラブルが発生するおそれがある。
【0004】
そこで、このようなトラブルを防ぐために、磁石の周囲をシールドして磁力が周囲に漏洩することを防止する技術が提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平9−248345号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このものは、衣料に取り付けて用いるタイプの磁気治療器において、その使用時における磁気漏洩の防止を目的としているにすぎない。
【0006】
一方、磁気治療器における磁力は、使用時だけでなく、未使用時においても、常時漏洩して周囲に影響を及ぼしており、この磁気漏洩によって、経時的に磁石の磁力が低下することが、最近、わかってきた。このため、従来は、紙材やプラスチックによって簡易的に包装されていた磁気治療器を、できるだけ外部に磁気を漏らさない形で収容することのできる容器の開発が強く望まれているが、そのような容器は未だ実用化されていない。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、磁気遮蔽性に優れた磁気治療器用容器の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明は、磁気治療器を収容するための凹部が形成された本体部と、上記本体部の凹部開口を開閉自在に蓋する蓋部とを有し、少なくとも上記本体部の凹部底面と蓋部の内側面に、磁性体層が形成されている磁気治療器用容器を第1の要旨とする。
【0009】
また、本発明は、そのなかでも、特に、上記磁性体層が、鉄、ニッケル、酸化鉄、酸化クロム、コバルトおよびフェライトから選択される少なくとも一つの磁性体、もしくはそれらの合金からなる磁性体によって形成されている磁気治療器用容器を第2の要旨とし、それらのなかでも、特に、上記本体部と蓋部が合成樹脂成形品からなり、上記本体部の凹部底面と蓋部の内側面に、磁性体からなる板状体を貼着することにより磁性体層が形成されている磁気治療器用容器を第3の要旨とする。
【発明の効果】
【0010】
すなわち、本発明は、少なくとも、本体部の磁気治療器を収容するための凹部底面と、これを蓋する蓋部の内側面とに、磁性体層を形成するようにしたものである。この容器によれば、磁気治療器を、上記磁性体層で上下から挟むようにして収容することができるため、上下の磁性体層によって、磁気治療器の磁石から発生する磁束を吸収して磁界を微弱にすることにより、磁石の磁気低下と容器外への磁気漏洩とを効果的に防止することができる。
【0011】
したがって、この容器に磁気治療器を収容しておけば、使用時まで磁気治療器の磁気低下がなく、磁気治療器の品質を長期にわたって高く維持することができる。そして、容器外への磁気漏洩が防止されているため、保管時や携帯時に、キャッシュカードや定期券等の磁気記録媒体に接しても、これらの記録内容を損なう等のトラブルを生じることがない。
【0012】
そして、本発明のなかでも、特に、上記磁性体層が、鉄、ニッケル、酸化鉄、酸化クロム、コバルトおよびフェライトから選択される少なくとも一つの磁性体、もしくはそれらの合金からなる磁性体によって形成されている磁気治療器用容器は、磁性体による磁束吸収性能に優れており、好適である。
【0013】
また、本発明のなかでも、特に、上記本体部と蓋部が合成樹脂成形品からなり、上記本体部の凹部底面と蓋部の内側面に、磁性体からなる板状体を貼着することにより磁性体層が形成されている磁気治療器用容器は、一定の磁気漏洩防止効果を確保しながら、容器の本体部と蓋部を比較的薄く設計することができ、しかも安価に提供することができるため、好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
つぎに、本発明を実施するための最良の形態について説明する。ただし、本発明は、この実施の形態に限られるものではない。
【0015】
図1は、本発明の磁気治療器用容器(以下、「容器」と略す)の一実施の形態を示す外観図、図2は、この容器を開いた状態を前からみた説明図である。この容器は、本体部10と蓋部11とからなり、上記本体部10には、図6(b)に示すような磁気治療器1のシート状保持体を収容するための凹部12が形成されている。そして、蓋部11は、上記本体部10の後端部に、ヒンジ構造13によって回転自在に連結されており、この蓋部11を閉じることにより、上記凹部12の開口が覆われて蓋されるようになっている。
【0016】
上記本体部10と蓋部11とは、ともに合成樹脂成形品で形成されているが、上記本体部10における凹部12の底面には、厚み0.5mmの鉄板14が貼着されている。また、上記蓋部11の内側面にも、同じく厚み0.5mmの鉄板14が貼着されている。
【0017】
そこで、図3に示すように、上記本体部10の凹部12内に、磁気治療器1のシート状保持体を収容し、その状態で蓋部11を閉じると、上記磁気治療器1が、蓋部11の内側の鉄板14と、本体部10の凹部12内の鉄板14とで上下から挟まれた形になり、磁気治療器1の粒状磁石2から発生する磁束が、上下の鉄板14によって吸収されて磁界が微弱になるため、粒状磁石2の磁気低下と、容器外への磁気漏洩とを、効果的に防止することができる。
【0018】
したがって、この容器に磁気治療器1のシート状保持体を収容して保管し、あるいは携帯すれば、この容器の近辺に定期券やキャッシュカード等の磁気記録媒体があっても、それらの記録を損傷するおそれがなく、安心である。しかも、粒状磁石2の磁気低下が防止されるため、経時的に磁力が弱くならず、磁気治療器1としての優れた品質を、長期にわたって維持することができる。
【0019】
なお、上記の例では、本体部10における凹部12の底面と、蓋部11の内側面のそれぞれに、鉄板14を貼着することにより磁性体層を形成したが、磁性体層の形成面積は、各面において、できるだけ広く形成することが望ましく、各面の80%〜100%を覆うよう形成することが好適である。そして、用いる鉄板14の厚みは、0.5mmに限らず、適宜に設定することができるが、磁気治療器1が発生する磁束を、外部に漏らすことなく吸収しうる性能を備え、かつ容器全体が重くなりすぎない厚みであることが好ましく、そのためには、0.1〜1.0mmに設定することが好適である。
【0020】
また、上記磁性体層の材質は、鉄に限らず、磁束吸収能を備えた磁性体であれば、特に限定するものではなく、鉄以外に、例えば、ニッケル、酸化鉄、酸化クロム、コバルト、フェライト等があげられる。これらは、単独で用いても、種類の異なる磁性体を2層以上重ねて用いてもよい。また、これらの磁性体を適宜組み合わせた合金からなる磁性体であってもよい。
【0021】
そして、容器内に磁性体層を形成する場合、上記の例のように、板状の磁性体を対象とする面に貼着してもよいし、メッキや塗装等によって磁性体層を形成するようにしてもよい。その場合は、磁性体層の厚みは、0.05〜0.5mmに設定することが好適である。もちろん、容器本体部10の凹部12底面と蓋部11内側面以外の、容器内側の全面(周縁部も含む)に磁性体層を形成してもよい。さらに、容器全体を、磁性体で形成してもよく、その場合は、磁性体の厚みは、0.5〜2.0mm設定することが好適である。
【0022】
また、上記の例において、本体部10と蓋部11との係合機構および開閉機構は、特に限定するものではなく、例えば、化粧料を収容するコンパクト等と同様の構造を用いることができる。
【0023】
さらに、蓋部11を、化粧料のコンパクト容器のように、ヒンジ構造を利用して手前から後方に開く構造にする以外に、例えば、蓋部11を、スライド式で開閉して磁気治療器1を収容する凹部12を露出させる構造にしてもよい。
【0024】
例えば、図4(a)に示すように、蓋部11が、本体部10に対し、矢印で示すようにスライドして開閉するようになっている容器において、少なくとも、蓋部11の内側面と、凹部12の底面とに、磁性体層14aを形成したものがあげられる。
【0025】
また、他の例として、図4(b)に示すように、蓋部11に対し、本体部10が引き出し状に取り付けられており、矢印で示すように、本体部10を引き出して開閉する(相対的には「蓋部11が本体部10の凹部12開口を開閉自在に蓋する」構造になっている)容器において、少なくとも、蓋部11の上面の内側面と、凹部12の底面とに、磁性体層14aを形成したものがあげられる。
【0026】
さらに、図5に示すように、浅い瓶形状の容器において、少なくとも、本体部10の底面と、本体部10の首部にら合される蓋部11の内側面とに、磁性体層14aを形成したものであってもよい。
【0027】
なお、これらの例は、容器に収容される磁気治療器が、例えば図6(b)に示すように、シート状に保持されたものであることを前提とした例であるが、容器に収容される磁気治療器そのものの形態、そして、その販売形態は、どのようなものであっても差し支えない。本発明の容器は、収容する磁気治療器の形態に応じて、適宜の形状に設定することができる。
【実施例】
【0028】
つぎに、本発明の実施例について、比較例と併せて説明する。
【0029】
〔実施例1〕
図1、図2に示された磁気治療器用容器を作製し、容器内に、図6(b)に示すような、6個の磁気治療器がシート状に保持されたもの(エレキバン、ピップフジモト社製)を収容した。そして、容器を閉じた状態で、下記の方法により、容器外側の磁束密度を測定したところ、1ガウスであり、この値によれば、容器の外側にキャッシュカード等を重ねておいても、記録情報に影響がでない程度に磁気が遮蔽されていることがわかった。
【0030】
<磁束密度の測定>
容器外側の磁束密度は、ガウスメータ(MG601、マグナ社製)を用いて、容器蓋部の表面における磁束密度を測定することにより求めた。磁気治療器そのものの磁束密度は、上記ガウスメータを用いて、磁気治療器の粒状磁石表面における磁束密度を測定することにより求めた。
【0031】
〔対照例〕
なお、容器に入れない剥き出しの状態で、上記磁気治療器のシート状保持体の磁束密度を測定すると、1000ガウスであり、この値によれば、剥き出しの磁気治療器にキャッシュカード等を重ねておくと、記録情報に影響がでるおそれがあることがわかった。
【0032】
〔実施例2〕
鉄板に代えて、容器の本体部10の凹部12底面と、蓋部11の内側面に、厚み0.2mmのニッケルメッキを施した。それ以外は実施例1と同様にして、磁気治療器用容器を作製し、磁気治療器のシート状保持体を収容して容器外側の磁束密度を測定したところ、5ガウスであった。したがって、このものも、容器外側にキャッシュカード等を重ねておいても、記録情報に影響がでない程度に磁気が遮蔽されていることがわかった。
【0033】
〔比較例〕
実施例1と同様の容器であって、全体が合成樹脂のみで成形され、磁性体層を設けないものを作製した。この容器に磁気治療器のシート状保持体を収容し、容器外側の磁束密度を測定したところ、900ガウスであり、この容器の外側にキャッシュカード等を重ねておくと、記録情報に影響がでるおそれがあることがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施例の外観図である。
【図2】上記実施例において、蓋部を開いた状態を示す説明図である。
【図3】上記実施例において、凹部内に磁気治療器のシート状保持体を収容した状態を示す説明図である。
【図4】(a)は本発明の他の実施例の説明図、(b)は本発明のさらに他の実施例の説明図である。
【図5】本発明の他の実施例の説明図である。
【図6】(a)は磁気治療器の一般的な構成を示す説明図、(b)は上記磁気治療器の販売形態の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0035】
10 本体部
11 蓋部
12 凹部
14 鉄板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気治療器を収容するための凹部が形成された本体部と、上記本体部の凹部開口を開閉自在に蓋する蓋部とを有し、少なくとも上記本体部の凹部底面と蓋部の内側面に、磁性体層が形成されていることを特徴とする磁気治療器用容器。
【請求項2】
上記磁性体層が、鉄、ニッケル、酸化鉄、酸化クロム、コバルトおよびフェライトから選択される少なくとも一つの磁性体、もしくはそれらの合金からなる磁性体によって形成されている請求項1記載の磁気治療器用容器。
【請求項3】
上記本体部と蓋部が合成樹脂成形品からなり、上記本体部の凹部底面と蓋部の内側面に、磁性体からなる板状体を貼着することにより磁性体層が形成されている請求項1または2記載の磁気治療器用容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−143852(P2007−143852A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−342218(P2005−342218)
【出願日】平成17年11月28日(2005.11.28)
【出願人】(000158781)紀伊産業株式会社 (327)
【Fターム(参考)】