磁気記憶装置、ヘッド駆動制御装置及びヘッド駆動制御方法
【課題】
従来のマイクロアシスト記録方法による磁気記憶装置では、外部環境によっては情報再生時やシーク時に高周波磁界発振素子を動作状態にしておくと、情報が消失、もしくは書き換えられてしまうことがある。
【解決手段】
磁気記録媒体と、該磁気記録媒体に書き込むための記録磁界を発生する記録磁極と高周波磁界を発生する高周波磁界発振素子とを少なくとも備えるマイクロ波アシスト磁気記録ヘッドと、磁気記録媒体から情報を読み取る磁気再生ヘッドと、前記磁気記録ヘッドが書き込む信号、前記磁気再生ヘッドが読み取る信号を処理する信号処理手段、および該高周波磁界発振器と該磁気記録媒体とのクリアランスを制御する手段とを備える磁気記憶装置において、記録時以外には前記高周波磁界発振素子を動作させないことを特徴とする。
従来のマイクロアシスト記録方法による磁気記憶装置では、外部環境によっては情報再生時やシーク時に高周波磁界発振素子を動作状態にしておくと、情報が消失、もしくは書き換えられてしまうことがある。
【解決手段】
磁気記録媒体と、該磁気記録媒体に書き込むための記録磁界を発生する記録磁極と高周波磁界を発生する高周波磁界発振素子とを少なくとも備えるマイクロ波アシスト磁気記録ヘッドと、磁気記録媒体から情報を読み取る磁気再生ヘッドと、前記磁気記録ヘッドが書き込む信号、前記磁気再生ヘッドが読み取る信号を処理する信号処理手段、および該高周波磁界発振器と該磁気記録媒体とのクリアランスを制御する手段とを備える磁気記憶装置において、記録時以外には前記高周波磁界発振素子を動作させないことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気記録媒体に対し高周波磁界を印加することにより磁化反転を誘導する機能を有する磁気記録ヘッドを搭載した磁気記憶装置、ヘッド駆動制御装置並びにその制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インターネット環境の進化、クラウドコンピューティングの浸透などによるデータセンタの増設などにより、生成される情報量が近年急増している。記録密度が最も高く、ビットコストに優れた磁気ディスク装置(HDD)などの磁気記憶装置が”ビッグデータ時代”のストレージの主役であることは間違いない。このためには、磁気記憶装置の大容量化、それを支える高密度化が必須である。
【0003】
高密度化の基本はスケーリング則であって、磁気ヘッドのトラック幅、ヘッド・媒体間のスペーシング、媒体の結晶粒などを小さくする事が必須である。しかし媒体の結晶粒を小さくすると、磁化状態を保とうとする異方性エネルギーが小さくなり、熱擾乱により、記録された磁化状態が乱されやすくなる。この現象は超常磁性効果と呼ばれる。このため、非特許文献1に記載されているように、1Tb/in2程度の時代になると現状技術の単なる延長では実用限界の壁があるとされる。これは、超常磁性限界、トリレンマ(trilemma)などと呼ばれる。
【0004】
高密度化のためにはこれを越える技術を開発することが最大の課題であり、これに対して特開平7−244801号公報(特許文献1)では、外部に設けた高周波源を磁気ヘッドの動きに追従させることで、磁気共鳴条件を満たす高周波磁界を磁気記録媒体に供給し、磁気記録媒体のスピンが高周波磁界のエネルギーを吸収して保磁力が実効的に低下することを利用して、媒体の温度を事実上上昇させることなく、高保磁力媒体にも低磁界で書き込みが行えるスピン加熱記録方法が提案されていた。
【0005】
このようなスピン加熱記録方法では、磁気共鳴条件を満たす周波数範囲にパワーが集中した高周波電磁界を加えられるので、伝導電子のプラズマ振動や格子振動などの、スピン以外の内部自由度をあまり励起することなく、スピンのみを選択的に励起、すなわちスピン加熱することができ、一般の加熱のように媒体全体の温度が上昇することはないとされる。このようにマイクロ波帯の高周波磁界を磁気記録媒体に印加し、磁気共鳴現象を利用して磁気記録をおこなう方法は、マイクロ波アシスト磁気記録方法(MAMR:Microwave Assisted Magnetic Recording)と呼ばれる(非特許文献1)。
【0006】
また、高周波磁界を利用する別の方法として、磁気記録層の一部分又はこの一部分の近傍に高周波磁界を印加して渦電流を発生させることによってこの一部分を加熱し、この一部分の保磁力を一時的に低下させた状態にした上で、この一部分の少なくとも一部に書き込み磁界を印加して、磁気記録媒体に書き込みを行う熱アシスト磁気記録方法が特開2008−34004号公報 (特許文献2)も開示されていた。更に、この熱アシスト磁気記録方法において簡便にエネルギーを照射する方法として、特開2005−285242号公報(特許文献3)には、高周波発振器として少なくとも2つの磁性薄膜を備えたスピントルク型もしくはスピン共鳴型の微小スピン波発生素子が開示されている。
【0007】
近年、スピントルクによってスピンを高速回転して高周波磁界を発生する、高周波磁界発生層 FGL(Field Generation Layer)を利用した微小構造の実用的なスピントルク型高周波発振素子(STO:Spin Torque Oscillator)が非特許文献2及び米国特許7616412B2(特許文献8)で提案されている。次いで、非特許文献3では、同種の構造の高周波発振素子STOを垂直磁気ヘッドの主磁極に隣接して配置し、STOからのマイクロ波帯域の高周波磁界で媒体磁化の才差運動を励起し、スウィッチング磁界を下げながら磁気異方性の大きな磁気記録媒体に情報を磁気記録し高密度化を図るマイクロ波アシスト記録方法が開示されている。
【0008】
更に、特許第4255869号(特許文献4)では、高周波磁界発振素子から、磁化反転させたい磁気記録媒体の磁化の才差運動方向と同じ方向に回転する高周波磁界を、記録磁界極性に応じて発生せしめることで、磁化反転をより効率良く誘起する方法も開示された。これらにより、マイクロ波アシスト記録方法の実用化に向けた研究開発が近年急速に加速されるようになり、特開2011−113621号公報(特許文献5)では、本方法の実用化に向け、マイクロ波アシスト記録に必要な高周波発振素子の信頼性を確保すると共にその発振を確実に維持するために、ライトゲートの入力に応じて、記録磁界が印加されている状態で一定有効時間だけ定常レベルより高レベルの高周波発振素子駆動信号を供給するヘッド駆動制御装置も開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平7−244801号公報
【特許文献2】特開2008−34004号公報
【特許文献3】特開2005−285242号公報
【特許文献4】特許第4255869号
【特許文献5】特開2011−113621号公報
【特許文献6】特開2006−114159号公報
【特許文献7】特開2007−220232号公報
【特許文献8】米国特許7616412B2
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Y. Shiroishi,et al,”Future Options for HDD Storage”, IEEE Trans. Magn., Vol.45, no.10, pp3816−3822 (2009)
【非特許文献2】X.Zhu and J.−G.Zhu, “Bias−field−free microwave oscillator driven by perpendicularly polarized spin current”, IEEE Trans. Magn., vol.42, pp.2670−2672, 2006.
【非特許文献3】J−G.Zhu, X.Zhu, and Y.Tang,”Microwave Assisted Magnetic Recording”, IEEE trans. Magn., Vol44, no.1,pp125−131(2008)
【非特許文献4】S. Okamoto, M. Igarashi, N. Kikuchi, and O. Kitakami: “Microwave assisted switching mechanism and its stable switching limit”, J. Appl. Phys. 107, pp123914−7 (2010)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1、4や非特許文献2、3では、スピン注入によるスピントルク効果を用いた新構造の高周波発生素子を実際の磁気記憶装置に適用し、マイクロ波アシスト記録方法として記録再生を行い適切に使いこなすための詳細なフローは十分に検討されてはおらず、問題点も含めて開示もされていなかった。この状況は特許文献2、3などのように、高周波磁界を用いて加熱する熱アシスト方法でも同様であった。そこで本発明者らは、高周波発生素子を搭載した磁気記憶装置を従来装置と同様の種々の環境条件で鋭意検討、試験をしたところ、高記録密度化は達成できるものの、実用化に向けて以下の大きな課題があることが判明した。
【0012】
最大の課題は、特開2006−114159号公報(特許文献6)記載のような従来技術の延長で磁気ヘッドに十分な漏洩磁界対策を施したにも拘らず、外部環境によっては情報再生時やシーク時に、記録ヘッドを非動作状態にしておいても、情報が消失、もしくは書き換えられてしまうことである。この根本原因について発明者らはLLG(Landau−Lifshitz−Gilbert)シミュレーション、及び実験の両面から鋭意検討を行い、本現象は、従来の記録方法では十分対策できていた外部機器や磁気記録媒体におけるサーボ情報、記録情報などからの微小な浮遊磁界でも高周波磁界発振素子に大きな影響を与え、情報再生もしくはシーク時のような非記録動作時にも、高周波磁界発振素子が磁気記録媒体に作用してしまうことに起因することが明らかになった。
【0013】
更に、量産に向けた試作時に、新構造の高周波磁界発生素子を、磁気記憶装置に組み込み、装置を動作させたときの磁気記憶装置の製造歩留りが従来ヘッドに比べて極端に低いという課題があることも判明した。LLGシミュレーションを駆使した発明者らの検討によれば、これは、スピントルク効果を用いた高周波発生素子の高周波磁界強度と発振周波数には強い素子寸法依存性があり、更に、これら発振特性に強い影響を与える記録ヘッド磁界においても、記録電流にたいするその応答時間がばらつくため、従来ヘッド以上の磁区構造制御技術と加工精度が要求されること、更に高周波磁界による媒体磁化の才差運動の動的励起過程は極めて複雑であり、アシスト効果自身も磁気記録媒体や磁気ヘッドの製造プロセスのバラツキや、物性常数の温度依存性に強く依存すること、に起因することが明らかになった。
【0014】
以上のように、マイクロ波アシスト記録方法を情報記憶装置に適用する為には、消去や、誤記録(記録状態が記録時とは異なる状態に変異すること)の問題と、本方法による磁気記憶装置の製造歩留が特に低いという問題を克服することが最大の課題であることが明らかになった。この課題の本質は上述のように、高周波発振素子により媒体磁化の才差運動を励起する過程が、非常に複雑な動的確率現象であることに起因し、従来技術の枠をはるかに超えるプロセス技術が要求されてしまうことにある。従って、マイクロ波アシスト記録方法の実用化には、この本質を踏まえたうえで、装置レベルでの対策が必須であり、本発明が解決しようとする課題である。即ち、本発明の目的は、高い信頼性、製造歩留り、記録密度とを有する大容量・高信頼性の磁気記憶装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本願は上記課題を解決して、目的を達成する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、磁気記録媒体と、該磁気記録媒体に書き込むための記録磁界を発生する記録磁極と、高周波磁界を発生する高周波磁界発振素子とを少なくとも備えるマイクロ波アシスト磁気記録ヘッドと、磁気記録媒体から情報を読み取る磁気再生ヘッドと、前記磁気記録ヘッドの記録動作、前記磁気再生ヘッド再生動作を制御・処理する手段、および該高周波磁界発振素子と該磁気記録媒体とのクリアランス(clearance、隙間、スペーシング)を制御する手段とを備える磁気記憶装置である。本発明の磁気記憶装置において、少なくとも情報再生の主要時(実質的に信号を読み取っている時間)に、前記高周波磁界発振素子に動作時と逆極性の電流を通電する、もしくは電流を全く通電しないなどの手段で、記録時以外には前記高周波磁界発振素子を動作させないようにしたことを特徴とする。
【0016】
なお、装置の記録動作への切り替え時には、主磁極への記録電流通電前に前記高周波磁界発振素子への通電が完了していることが好ましく、この記録動作時に、記録磁極への記録電流、高周波発振素子への動作電流、ならびにクリアランス制御手段の調整を装置製造時に、更には装置動作時にも実施することがより好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、記録時以外は高周波磁界発振素子によるマイクロ波アシスト効果を抑制することで、マイクロ波アシスト磁気記録方法における情報消去、誤記録などの確率を従来の垂直記録方法よりも小さくし、更に、磁気記録ヘッド励磁電流の通電よりも前、すなわち記録磁界が印加される前に、マイクロ波アシスト素子に予め駆動電流を通電しておき、更に、そのタイミングを装置製造時、より好ましくは装置動作時にも調整することで、高い信頼性、製造歩留り、記録密度とを有する大容量・高信頼性の磁気記憶装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1A】本発明による磁気ヘッドと磁気記録媒体の概念図の例である。
【図1B】高周波磁界発生素子の各層の磁化状態を示す。
【図1C】磁気ヘッド励磁電流と高周波磁界との関係の一例を示す。
【図2】本発明によるヘッド駆動制御装置および磁気記憶装置の概念図の例である。
【図3】本発明による磁気ヘッドと磁気記録媒体の実施例である。
【図4】本発明によるマイクロ波アシスト記録効果とアシスト効果抑制の例である。
【図5】本発明によるパラメータ制御のフローチャートの例である。
【図6】本発明の実施例図5により決定されたパラメータ制御の概念図の例である。
【図7】本発明によるパラメータ制御の別のフローチャートの例である。
【図8】本発明の実施例図7により決定されたパラメータ制御の概念図の例である。
【図9】本発明により決定されたパラメータ制御の別の概念図の例である。
【図10】本発明による高周波発振素子電流動作タイミングの設定フローチャートの例である。
【図11】本発明実施例図10により決定されたタイミングの設定の概念図の例である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、実施例について図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0020】
図1Aに本発明の磁気記憶装置の構成例の一部である磁気記録再生ヘッドの概略図を示す。磁気記録再生ヘッドは、磁気記録媒体130上をクリアランス101で100方向に走行するスライダ150上に形成された、再生ヘッド部110、記録ヘッド部120、および特許第4255869号(特許文献4)記載のような、クリアランス制御用の熱膨張素子部TFC(Thermal Flying Height Controller)102とから主に構成される。ここでTFC102は、NiFe合金などの高比抵抗、高熱膨張材料からなり、アルミナ膜などで絶縁した、50〜150Ω程度の発熱抵抗体薄膜で構成される。ヘッド保護層151はCVD−C、FCAC(Filtered Cathodic Arc Carbon)などからなり、底面152は磁気記録再生ヘッドの浮上面(ABS:Air Baring Surface)である。スライダ150は、特開2007−220232号公報(特許文献7)記載のように、磁気ヘッド磁極部の浮上量が磁気記録媒体全周に亘って10nm程度になるように、Al2O3−TiCセラミックスのABS面に負圧が発生するようにエッチング加工を施したもので、大きさはフェムト(femto)型で0.85mm×0.7mm×0.23mm程度である。本実施例では、磁気記録再生ヘッドは再生ヘッド部110が先頭で記録ヘッド部120が後方になる向きに磁気記録媒体130が相対的に移動する構成としているが、逆構成であったとしても良く、またヘッド保護層はなくても良い。
【0021】
再生ヘッド部110は、シールド層111、再生センサ素子112、上部磁気シールド113と下部磁気シールド114とからなる構成である。再生センサ素子112は媒体からの信号を再生する役割を担うもので、その構成としては、TMR(Tunneling Magneto−Resistive)効果、CPP(Current Perpendicular to Plane)−GMR(Giant Magnetro−Resistance)効果、ないしはEMR(Extraordinary Magneto−Resistive)効果を有するもの、更にはSTO(Spin Torque Oscillator)効果を応用したものや、いわゆる差動型であっても良い。その素子幅TWrは、目標とする記録磁界や、記録密度に応じて設計及び、加工され、その大きさは80nm〜5nm程度である。なお、同図で出力の取り出し端子は省略して記載してある。
【0022】
記録ヘッド部120は高周波磁界145を発生するための高周波磁界発振素子部140、記録ヘッド磁界145を発生するための記録磁極(主磁極)122、高周波磁界発振素子140の磁化回転方向などを制御するための補助磁極124及び、記録磁極を励磁するためのCuなどからなるコイル123で構成される。なお、磁気ギャップ125は、記録磁極122と補助磁極124との間に設けられ、発振制御磁界126は高周波磁界発振素子140の磁化方向及び磁化回転方向などを制御する。
【0023】
ここで記録磁極122は、FeCoNi、CoFe合金などの高飽和磁束軟磁性膜をメッキ法もしくはスパッタ法などで製膜し、ベベル角(bevel angle)が10〜20度の台形状であって、ABS面に近づくにつれその断面積が小さくなるように形成される。なお台形状の記録磁極の広い側の記録素子の幅TWWは、目標とする記録磁界や、記録密度に応じて設計及び、加工され、その大きさは160nm〜10nm程度である。また、本発明における記録磁極122は、補助磁極124も含めてCoNiFe合金や、NiFe合金などの軟磁性合金薄膜で形成され、非磁性層を用いてその周囲を囲った、いわゆるWAS構造(Wrap Around Structure)とすることが好ましい。
【0024】
高周波発振素子部140は、FeCo、NiFeなどの軟磁性合金、CoPt、CoCrなどの硬磁性合金、Fe0.4Co0.6、Fe0.01Co0.99、Co0.8Ir0.2などの負の垂直磁気異方性を有する磁性合金、CoFeGe、CoMnGe、CoFeAl、CoFeSi、CoMnSiなどのホイスラー合金、TbFeCoなどのRe−TM系アルモファス系合金、あるいはCo/Fe、Co/Irなどの磁性人工格子などからなる高周波磁界発生層FGL141と、Au、Ag、Pt、Ta、Ir、Al、Si、Ge、Ti、Cuなどの非磁性伝導材料などからなる中間層142と、更に、高周波磁界発生層FGLにスピントルクを与えるためのスピン注入固定層143などから構成される。
【0025】
ここで、FGL141の幅WFGLは、目標とする記録磁界や、記録密度に応じて設計及び、加工され、その大きさは150nm〜5nm程度である。また、非磁性中間層142の膜厚は、高いスピン注入効率を得るために、その膜厚を0.2〜4nmの程度とすることが好ましく、スピン注入固定層143としては、垂直磁気異方性を持った材料を用いることによりFGLの発振を安定させることが出来るので、Co/Pt、Co/Ni、Co/Pd、CoCrTa/Pd などの人工磁性材料を用いることが好ましい。更に、FGL141の高周波磁化回転を安定化させるため、スピン注入固定層143と同様の構成の回転ガイド強磁性層をFGL141に隣接して設けても良い。また、スピン注入層143とFGL141の積層順は逆にしても良い。なお、スピンは直流電源144からFGL141などに供給されるが、図1Aではその構造を示す為に電流の供給端子は省略して簡略化して記載してある。
【0026】
図1Bに、磁気記録媒体130に記録を行う時の高周波磁界発生素子140の各層の磁化状態を模式的に示す。ここで、矢印146、147は、それぞれスピン注入固定層143、高周波磁界発生層(FGL)141の磁化、矢印148は高周波磁界発生層(FGL)の磁化147の回転方向、矢印149は高周波発生素子に電源144から供給される直流電流である。
【0027】
磁気記録媒体130の磁性層133、134に記録された上向きの磁化137を下向きに書き換える場合の概念図を図1Bの(b−1)に示す。この場合には、記録磁極122から、図1Aで下向きの記録磁界121aが発生するように記録ヘッドのコイル123に記録電流を通電する。このとき、記録磁極122からの磁界の一部126が補助磁極124に向けてギャップ部125にも発生する。図1Aに示すように、スピン注入固定層143及び、高周波磁界発生層(FGL)141の磁化を右向きに配向させるのに十分強い発振制御磁界126aが発生するように、予め記録磁極122、補助磁極124、磁気ギャップ125などの構造や、材料、更には高周波発生素子140の構造や、材料などを設計しておく。
【0028】
このように設定しておくことで、図1Bの(b−1)に示すように、高周波磁界発生層141の磁化147aが反時計回り(矢印148aの方向)に高速回転し、磁気記録媒体130の上向きの記録磁化137が反時計回りに才差運動するのをアシストする性質の高周波磁界を発生する。最終的に、この高周波磁界145のアシスト効果に助けられ、下向きの記録磁界121aによって磁気記録媒体130の上向き磁化137は下向きに反転し、情報の書き換えが行われることになる。なおここで、上記の発振周波数は発振制御磁界126aとFGL141の異方性磁界の和によって決まる。このため、例えば軟磁性材料や負の垂直磁気異方性材料でFGL141を構成した場合には、その異方性磁界は小さいので、FGL141の発振周波数は発振制御磁界126aの強さに応じて決まることになる。なお記録ヘッドからの発振制御磁界は、記録ヘッド励磁電流に対して0.1 ns程度の遅れがある。この遅延時間は、磁気ヘッドの製造ばらつき、環境温度などに応じて変化するので、後で述べるように、これらを補償することが望ましい。
【0029】
次に、これとは逆に、磁気記録媒体130の磁性層133,134に記録された下向きの磁化138を上向きに書き換える場合について、図1Bの(b−2)の概念図を用いて説明する。まずスピン注入固定層143及びFGL141に、図1Bの(b−1)と逆向き(左向き)で強い発振制御磁界126bを印加し、スピン注入固定層143及びFGL141の磁化147bの向きを、図1Bの(b−1)とは逆向き(左向き)になるように高速でスウィッチさせる。この状態になると、FGL141の磁化147bはスピン注入固定層143から注入されたスピンのエネルギーを吸収し、磁気記録媒体130から見て図1Bの(b−1)とは逆回転(矢印148bの方向)で高速に回転することになる。この逆回転のFLG141の磁化147bからは、図1Bの(b−1)とは反対の性質、すなわち下向きの記録磁化138の才差運動をアシストする(上向きへの反転をアシストする)性質を有する高周波磁界が発生する。最終的に、この高周波磁界145のアシスト効果により、上向きの記録磁界121bによって、磁気記録媒体130の下向き磁化138は上向きに反転し、情報の書き換えが行われることになる。
【0030】
図1Cに、LLGシミュレーションにより解析した、本発明の上記構造の磁気ヘッドにおける磁気ヘッド励磁電流と高周波磁界との関係の一例を示す。記録電流の極性を変えたときに、そのタイミングと高周波発振周波数との兼ね合いで、0.1nsの時間範囲でSTOの発振波形が若干乱れることもあるが、安定して高周波磁界が発生していることがわかる。一般に、高周波磁界の発振周波数や、強度は、記録電流、又は磁界のスウィッチング後に時間とともに変化する。このため、非特許文献4で議論されているように、磁気ヘッドの構造、材料、磁気記録媒体の材料、製造プロセス、又は構造などを適切に設計し、調整すれば、媒体磁化の才差運動と高周波磁界との同期、及び才差運動の高周波磁界からのエネルギーの吸収、及び媒体スウィッチング磁界の低減が行なわれた、マイクロ波アシスト記録が可能となる。
【0031】
LLGシミュレーションによれば、上記の高周波磁界を効率よく発生せしめるためには、FGL141は、その膜厚を1〜100nm、より好ましくは5〜30nmとし、かつ磁区構造が出来にくく、安定して磁化が回転できるように、その素子幅、素子高さを略等しくすることが好ましいことが判明した。なお、素子寸法が40〜20nm程度以下になると磁区構造の発生が抑制され、強い磁界を印加すれば、軟磁性材料、硬磁性材料、又は負の垂直磁気異方性材料のいずれの材料でも安定して発振するようになることも確認された。このことから、マイクロ波アシスト記録方法は特に高密度記録に適しているといえる。しかしながら、その高周波磁界強度や発振周波数には、強い素子寸法依存性、磁気ヘッドからの発振制御磁界の方向や強度の依存性があることも明らかになった。これらは製造プロセスのばらつきに依るだけでなく、環境温度にも依存する。したがって、マイクロ波アシスト方法の実用化には、磁気ヘッドの加工精度の飛躍的向上とあわせ、ヘッド加工寸法のバラツキや環境条件に依存しにくい装置レベルでの調整法の開発、導入が必須であり、後者については後に詳細に本実施例の中で説明する。
【0032】
磁気記録媒体130は、ガラスやNiPメッキAlなどから構成される非磁性基板136上に、FeCoTaZrなどからなる軟磁性下地層135、CoCrPt、L12−Co3Pt基合金、L12−(CoCr)3Pt基合金、L11−Co50Pt50基合金、CoCrB/Pt、CoB/Pd磁性人工格子、L10型FePt、などを主な構成要素とする磁性膜からなる第一、及び第二の記録層134、133、更にCなどからなる保護層132、及び潤滑層131などから構成される。矢印137、138は、それぞれ磁気記録媒体に記録された上向き、下向きの磁化を示す。
【0033】
ここで、記録層の少なくとも一層は垂直磁気異方性を持つ材料であることが好ましく、その磁化の共鳴周波数と高周波発振素子140の高周波磁界の発振周波数は大きくは違わないことが好ましい。なお、磁気的な結合を制御するための中間層を両層の間に設けてもよい。また、軟磁性下地層135と基板136との間に少なくとも一層の非磁性層を設け、また、軟磁性下地層135と磁性層134との間にRuなどの少なくとも一層の非磁性中間層やそれに加えて磁性中間層を設けても良い。更に、軟磁性下地層135を、Ruなどを介した2層構造としたり、磁性層133,134を単層もしくは、3層以上の多層構造としても良い。なお、本実施例では、基板136の片面に磁性層133,134などを設けた例を示したが、これらを非磁性基板136の両面に設けても良い。本実施例では磁気記録媒体130は各ビットが連続して存在する連続媒体の例を示したが、基板上に10nm程度の磁性パターンを設けたパターン媒体でもよい。
【0034】
図2には、本発明を適用した磁気記憶装置の構成例を示す。すなわち、本実施例は、スピンドルモータ200、磁気記録媒体201、アーム202、高周波発振素子(STO)、記録再生素子や、クリアランス制御素子TFCなどを有する磁気ヘッドスライダ203とサスペンション204を含む磁気ヘッドHGA(Head Gimbal Assembly)205、アクチュエータ206、STOを駆動するための駆動信号(駆動電流信号または駆動電圧信号)207を生成する高周波発振素子駆動制御装置などを有する本発明のヘッド駆動制御装置(R/W−IC)208、R/Wチャネル209、マイクロプロセッサ(CPU)210、ディスクコントローラ(HDC)211などから構成される。なお、アクチュエータ206がロータリー型のアクチュエータであれば、磁気記憶装置の小型軽量化の点で好ましい。
【0035】
ここで、CPU210は、磁気記憶装置の主制御装置で、記録再生動作や磁気ヘッドの位置決めに必要なサーボ制御をおこなうものである。たとえば、CPUは、R/W−ICに含まれる各種レジスタにその動作に必要なパラメータを設定する。各種レジスタには、後述のように、所定の温度、磁気記録媒体領域毎の記録電流値、クリアランス制御値、STO駆動電流値、記録電流、STO駆動電流のオーバシュート値、あるいはタイミング時間などが独立に設定される。
【0036】
HDC211は、磁気記憶装置と上位のホストシステム(図示せず)とのインターフェースを構成し、磁気記録媒体上に記録データ213を書き込む情報記録の開始(記録のタイミング)を指示するためのライトゲートをR/Wチャネル209に出力することなどにより、記録再生情報の転送制御を行う。
【0037】
R/Wチャネル209は信号処理回路であり、情報記録時にはディスクコントローラ211から転送された記録情報を符号化した信号213をR/W−ICに出力、情報再生時には磁気ヘッド205から出力された再生信号を復号化した再生情報をディスクコントローラ211に出力する。
【0038】
R/W−IC208は、上記ライトゲートの入力に応じて、少なくともR/Wチャネル209から供給される記録データ213に対応する記録信号(記録電流)が生成され、通電タイミングを制御された高周波発振素子(STO)駆動信号(駆動電流信号または駆動電圧信号)とともに磁気ヘッドに供給する駆動集積回路で、CPUから記録電流値、STO駆動電流値、TFC投入電力値などが設定されるレジスタ、より好ましくはレジスタからなる設定テーブルを有し、それらに基づいた記録電流、STO駆動電流、オーバシュート、TFC投入電力などを生成する。ここで各レジスタ値は、磁気記録媒体の領域、環境温度、気圧などの条件毎に変化させることができる。なお、R/Wチャネル209、CPU210、HDC211などは、通常1チップのシステム集積回路(SoC:System on Chip)212に組み込まれている。
【0039】
以下に本発明の磁気記憶装置における記録再生動作の概略を説明する。パソコンなどのホスト、上位システムからの情報の記録や、再生の命令に従い、磁気記憶装置のメイン制御装置であるCPU210による制御で、磁気記録媒体201が所定の回転数でスピンドルモータ200により回転し、更に、再生素子により、予め磁気記憶装置の製造工程で磁気記録媒体に記録されたサーボ情報からの信号を用いて媒体上の位置を検出するとともに、アーム202を介してアクチュエータ206で磁気ヘッドHGA205を制御することで、磁気記録媒体の所定の記録トラック上に移動(シーク動作)させ、その位置で磁気ヘッドのフォローイング動作を行う。次いでそのトラック上で、情報の記録再生が以下のように行われる。
【0040】
情報記録時には、ディスクコントローラ211から、磁気記録媒体上に記録データ213を書き込むデータ記録の開始(記録のタイミング)を指示するためのライトゲートがR/Wチャネル209に出力される。このライトゲートの入力に応じて、R/Wチャネル209から供給される記録データ213に対応する記録信号(記録電流)が生成され、通電タイミングを制御された高周波発振素子(STO)駆動信号(駆動電流信号または駆動電圧信号)とともに駆動信号207が、磁気ヘッド203の記録ヘッド部120に供給され、磁気記録媒体上の所定記録トラックにマイクロ波アシスト方法で記録される。
【0041】
一方、情報再生時には、磁気記録媒体に記録された磁化情報を読み取る磁気ヘッド203の再生ヘッド部110から出力される再生信号がR/W−ICで増幅され、R/Wチャネル209に伝送され、復号化される。再生情報がディスクコントローラ211に出力される。
【0042】
本実施例では、磁気記録媒体が1個、磁気ヘッドスライダが2個の場合を示したが、磁気記録媒体1個に対し磁気ヘッドスライダが1個でも良く、また磁気記録媒体、磁気ヘッドを目的に応じて複数個に適宜増やしても良い。
【0043】
最適化方法及び効果を含め、実施例の詳細について以下に説明する。
(最適化方法及び効果)
本発明の特徴である、漏洩磁界、及び記録ヘッド120や高周波発振素子140の製造プロセスばらつきに起因する性能ばらつきを補償するための、記録ヘッド120(コイル123)への記録電流IW、高周波発振素子140の動作電流144、ならびに熱膨張素子TFC102によるクリアランス補正の方法とその効果について、以下に説明する。
【0044】
上記構成で、記録ヘッド部120における記録磁極122のトラック幅TWW、高周波磁界発生素子140の磁化高速回転体FGL141の素子幅WFGL、及び再生ヘッド部110における再生素子112の素子幅TWr、及びそれぞれの主要な構成、熱膨張素子TFC102の位置や個数、更に磁気ディスク130の構成を図3の実施例1a、1b、1cに示すように変えて、磁気ヘッドや磁気記録媒体を試作して、磁気記憶装置に搭載した。
【0045】
マイクロ波磁気記録方法を採用した本磁気記憶装置において、比較例として、従来技術と同様にFGL層における不安定磁気構造の発生抑制、すなわち素子の安定動作のために、高周波発振素子を常時動作させた状態で記録再生をおこなったところ、高い記録密度は実現できるものの、外部環境によっては、情報再生、もしくはシーク時に、情報消去、もしくは誤記録がなされてしまうことがあった。
【0046】
従来から、スピンドルモータ、パソコンなど外部機器からの浮遊磁界が磁気記録媒体の軟磁性下地層に吸収されて記録磁極に集められ、更にこの磁界と、磁気記録媒体に記録された複雑な記録パターンからの漏れ磁界が重なって、記録磁極に磁界が集中することは知られていた。そこで、本発明でも、特開2006−114159号公報(特許文献6)記載のような従来技術によって、十分に浮遊磁界対策を施した構造を採用し、シミュレーションでも十分な外部磁界耐性があることを確認していたにもかかわらず上記の問題が発生したので、上記の問題はマイクロ波アシスト記録方法に固有の問題と考えられた。
【0047】
そこで、本現象の根本原因についてLLGシミュレーション、及び実験の両面から鋭意検討を行った。その結果、従来技術で対策済みの記録磁極からの微弱な磁界に加え、別機構によって誘起される磁界が、高周波発振素子のアシスト効果と重なり、情報再生時、もしくはシーク時にも情報消去や、誤記録が引き起こされていることが明らかになった。ここで、別機構によって誘起される磁界とは、磁気記録媒体の漏れ磁界のうち、記録ヘッドのギャップ部を介して吸収され、かつ、強められるタイプの記録パターンからの磁界によるものであり、この磁界は、図1に示した発振制御磁界126と同じ成分を有するため、FGL141やアシスト効果に影響を与えてしまうことが判明した。すなわち、非記録動作時には本来存在してはならないこの磁界のために、ギャップ部125に挿入されている高周波発信素子140が誤動作し、アシスト効果を誘起してしまうのである。このメカニズムは、従来記録方法では全く問題とならなかったタイプのもので、磁気ギャップ部125に高周波発振素子140を設ける本マイクロ波アシスト記録方法に固有の問題であり、記録磁極122や、補助磁極124を軟磁性体で形成し、媒体130からの漏れ磁界も吸い込むポテンシャルの高い記録ヘッドにおいては、部品レベル単独では避けることの出来ない本質的な課題であることが判明した。
【0048】
そこでまず、記録動作時以外の装置動作時にアシスト効果を抑制する技術について、装置レベルで鋭意検討を重ねた。本実施例の磁気ヘッド、磁気記録媒体で図2に示した装置を組み立てた後に、まず所定の磁気記録媒体の領域Rで、高周波発振素子を所定の電流値で動作させ、更に主磁極のコイルに記録電流を通電し、主磁極を励磁してサーボ信号を磁気記録媒体に記録した。
【0049】
ついで、このサーボ信号を元に正負の電流値ISTOを高周波発振素子に通電しつつ、主磁極122のコイル123に通電して所定の検査信号などを記録し、検査信号を再生した時のそれぞれのISTOでのS/Nを評価した結果を図4に示す。図4に示すS/Nは相対値を示す。その結果、図4に示すように、主磁極への記録電流(外部記録磁界を想定)によっては、マイクロ波アシスト磁気ヘッドによるアシスト効果は、信号の再生時に、その駆動電流を零(高周波発振素子非動作)にしても残るので、記録磁界121とFGL141との相互作用の為に記録動作時以外の装置動作時にも影響が残ることが判明した。しかしながら、その大きさは十分小さく、実用上十分無視できる程度であるが、より好ましくは、逆極性の電流−Idを信号再生時の直前に(又は信号記録終了時の直後に)高周波発振素子に通電してその影響をキャンセルすることでアシスト効果を完全に抑制できることが明らかになった。実際に高周波発振素子140への通電を停止、もしくは各領域Rで逆極性の電流−Idを通電し、情報消去や、誤記録を起こした比較例と同じ条件で磁気記憶装置を所定の台数評価したところ、いずれの場合でも、情報消去、もしくは誤記録などの問題は全く観測されない事を確認できた。
【0050】
そこで次に、高周波発生素子を、上記の非動作状態から動作状態に再現性良く安定に移行せしめると共に、ヘッドや、媒体の最高性能を引き出し、製造バラツキや環境条件変化の影響を緩和するための方法について、本発明のヘッド駆動制御装置を用いて鋭意検討を行った。高周波発振素子を安定に発振せしめ、高周波発振素子の高周波磁界と磁気記録媒体の媒体才差運動とのそれぞれの周波数や位相の整合性をとることは、効率よいアシスト効果をえるために重要である。
【0051】
しかし、それらの周波数や位相も、FGL層の磁区構造の安定性と同様に、製造プロセスのバラツキや、物性常数の温度依存性や、磁気ヘッドからの発振制御磁界の相対方位、強度によって変化する。本発明者らが鋭意検討した結果、ECC(Exchange−coupled composite)媒体に対し、マイクロ波アシスト記録ヘッドでその記録磁極に通電する少なくとも0.1ns以上、より好ましくは1ns以上よりも前に、前記の非動作もしくは逆極性通電状態の高周波磁界発振素子140に、素子動作に必要な通電を開始し、記録電流通電開始に対するタイミングを磁気記録媒体や外部環境に応じて適宜調整することで、FGL層内の磁化回転を定常化し、かつ、安定化でき、更に磁気記録媒体に対して最適なアシスト効果を得ることができ、その結果としてエラーレートを常に安定に保つことができることを見出した。なお、記録磁界は、通常、記録電流に対して0.2〜0.5ns程度の遅延があるので、これに適切に対処するために、STO駆動電流のオフのタイミング調整も同様に重要である。
【0052】
LLGシミュレーションなどで詳細に検討した結果、本効果は、以下の条件によって得られることが明らかとなった。
【0053】
(1)電流が数十nmのサイズの素子内で定常的に安定して流れ、しかも磁界が印加されて高周波磁界発振素子の発振が安定化するには、0.1〜1ns程度必要で、位相整合のタイミングを考えると、その5%程度相当の時間の余裕をみてタイミングを制御することが効果的である。
【0054】
(2)高周波磁界発振素子140や磁気記録媒体130のダンピング定数αなどを適切に設定した系では、それらの磁化回転周波数が時間とともに変化し、位相整合をより取り易くなり、適切なチューニングでより効率よいアシスト効果を実現できる。
【0055】
(3)更に、補助磁極124を設け、面内磁界成分を持たせた記録磁界を磁気記録媒体に印加しつつ高周波磁界を印加すると、特にECC型の媒体では、結晶粒内磁化間のダイポール相互作用が、それぞれの媒体結晶粒における磁化の才差運動の位相が合うように効果的に作用する。
【0056】
すなわち、記録電流に対するSTO駆動電流のオン、オフの適切なタイミング調整などを、本発明のヘッド駆動制御装置や方法を用いて、磁気記憶装置レベルで行うことにより、高周波発生素子140を非動作状態から動作状態に再現性良く安定に移行せしめ、更に、高周波磁界と、媒体記録ビットを決める磁化反転領域内にある結晶粒磁化群の才差運動との同期をとれる確率を高めることができ、所望の高いアシスト効果を得ることが出来ると考えられることが確認された。
(装置調整の手順)
以上の知見をもとに発明された、本発明のヘッド駆動制御装置による磁気記憶装置調整のフローチャートを図5に示す。
【0057】
本実施例のヘッド駆動制御装置では、高周波発振素子140への通電タイミング、その通電の電流波形と電流値、クリアランス制御電力、及び記録磁極への記録電流とが同時に設定される(501)。本ヘッド駆動制御装置、及び、前記の磁気ヘッドを4個、磁気記録媒体を2枚用いて図2の磁気記憶装置を組み立てた後に、まず所定の磁気記録媒体の領域で、まず高周波発振素子が磁気記録媒体から所定のクリアランスを確保するように熱膨張素子TFC102の投入電力を調整する(PTFC(1))。これは例えば、熱膨張素子TFC102に電力を順次投入し、磁気記録媒体130との接触を検知したら、その時の投入電力から、所定のクリアランスに相当する電力を低減することで行う。なお、事前に、クリアランス、熱膨張量、TFCへの投入電力量との関係は明らかにしておくものとする。なお、STO駆動電流の、記録電流に対するオン、オフのタイミングtRW(1)、tRWB(1)、電流波形(オーバシュート)OS(1)なども事前に予備評価し、適正値を決定しておく。
【0058】
次いで、図6に示すように、高周波発振素子140を所定の電流値ISTO(1)、所定のタイミングtRW(1)、tRWB(1)、電流波形(オーバシュート)OS(1)で動作させ、更に、記録磁極122に記録電流IW(1)を通電して、励磁してサーボ信号を磁気記録媒体130の前記の所定領域に記録する(502)。なお、オーバシュート(OS)は、スピンの才差運動の初期加速のための電流波形である。
【0059】
ついで、このサーボ信号を元に上記所定の領域に、図5の表5aに記載のIW(m)、ISTO(n)の各組み合わせで、所定の検査信号の記録再生を行う(503)。これらの値はパラメータ制御用テーブルとしてレジスタに格納しておく。なおここでは、電流値ISTOを一定として、IWを変えて主磁極122のコイル123に通電するプロセスを行い、更に、電流値ISTOを変えながらこのプロセスを繰り返した。それぞれの組み合わせでのビットエラーレート、オーバライト、再生出力、及び隣接トラック記録干渉特性(ATI:Adjacent Track Interference)などの記録再生特性を測定し、もっとも高い特性が得られる最適のIW(m)、ISTO(n)の組み合わせを決定する。
【0060】
ついで、この状態で、熱膨張素子TFCへの投入電力PTFC、クリアランスを再度計測し(504)、所定の値よりもクリアランスが小さくなっていれば(投入電力PTFC(i)が所定値以下で無ければ)(505)、記録電流IWを一水準下げて記録再生特性を計測しながら、高周波発振素子140への通電量を最適化し(506)、再度クリアランスが所定の値になっているか評価する。このプロセスをクリアランスが所定の値以下になるまで繰り返し、IW、ISTO、PTFCの最終的な最適値を決定する(507)。なお、ここで、記録パターンに応じ、記録電流IWタイミングの事前補償(いわゆるライトプリコンペ(write pre−compensation))も自動的に行った。
【0061】
オーバシュート(OS)が高いとタイミングtRWやそのばらつきが少なくてもすむ傾向があるが、高すぎると素子動作が安定しないので、調整することが好ましい。そこで、最後に、高周波発振素子140内の電流分布や発振状態の安定化を図る為に、高周波発振素子への電流波形OSと、通電タイミングtRWを、図5の表5b記載の組み合わせのように変えて、ビットエラーレート、オーバライト、再生出力、及び隣接トラック記録干渉特性(ATI)などの記録再生特性を同様に測定し(508)、最も高い特性が得られる最適のOS(h)、tRW(k)の組み合わせを決定する(509)。なお、図5では省略したが、図6に示すように、tRW(k)の設定と同様にSTO駆動電流を切断するタイミングtRWB(k)の調整も実施した。以上の最適値は、パラメータ制御用テーブルとしてヘッド駆動制御装置のレジスタに格納され、磁気記憶装置動作の制御に用いられる。
【0062】
図6には、本実施例のフローチャートに従って最適化された記録電流、及び高周波素子駆動電流の動作概念図を示した。図6は、記録電流IWと電流値ISTOのそれぞれの通電の開始のタイミングを比較したものである。記録電流IWの通電開始前よりも通電タイミングtRWだけ前倒しで高周波発振素子140への電流値ISTOの通電を開始する。また、通電タイミングtRWは、高周波発振素子140に電流値ISTOを通電してから素子内の電流分布や発振状態の安定化や記録などの安定化を図る為に必要な時間である。
なお、ハードディスク装置(HDD)のような磁気記憶装置では、記録と再生の切り替え時間は50ns程度であり、本実施例ではこの時間内に切り替えが完了し、更に高周波発振素子駆動回路の起動完了時期が記録ヘッド駆動回路の再生から記録への切り替え時期よりも少なくとも0.1ns以上前になるようにして、それぞれの起動タイミングを調整した。なおそれぞれの回路系の立ち上り時間は10ns程度であった。
【0063】
本実施例においては、図3の実施例1a、1b、1cの組み合わせでは、いずれも従来技術並みの製造歩留りで、それぞれの記録密度が1.2Tb/in2、1.6Tb/in2、2.0Tb/in2となり、従来技術の2〜3倍の記録密度が達成できることが確認された。さらに、外部磁界に対する耐力も従来装置と同等以上であることも確認できた。また、通電タイミングtRWが0であっても同様な効果が得られた。
【実施例2】
【0064】
図7に、記録密度がより高く、外部磁界耐力が一層懸念される場合に特に有効な実施例を示す。
【0065】
まず、実施例1で述べたヘッド駆動制御装置、磁気ヘッドを6個、磁気記録媒体を3枚用いて図2に示す磁気記憶装置を組み立てた後に、所定の磁気記録媒体の領域で、まず実施例1と同様に、高周波発振素子が磁気記録媒体から所定のクリアランスを確保するように熱膨張素子TFCの投入電力を調整する(PTFC(1))(701)。次いで、高周波発振素子を所定の電流値ISTO(1)、電流波形OS(1)で動作させ、更に記録磁極に記録電流IW(1)を通電し、励磁してサーボ信号を磁気記録媒体130に記録した(702)。なおここで、素子内の電流分布や発振状態の安定化、安定記録を図る為に、事前の実験で求めた平均的な値のtRW(1)だけIW(1)の通電開始よりも早くISTO(1)の安定電流分を通電し、また、記録磁界は記録電流から0.2ns〜0.5ns程度遅延することを考慮して、tRWB(1)だけ遅れて通電終了した。このtRWは温度によって変わり、また、tRWBは、記録周波数や温度によって変わるので、それぞれ最適化が必要です。
【0066】
ついで、このサーボ信号を元に、図4に示したように、正負の電流値ISTOを高周波発振素子140に通電しつつ、主磁極122に通電して所定の検査信号を記録し、それぞれのISTOでのS/Nを評価し、高周波発振素子140のアシスト効果抑制電流−Idを決定した(703)。これらの値は、パラメータ制御用テーブルとしてヘッド駆動制御装置のレジスタに格納される。
【0067】
次いで、高周波発振素子140を所定の電流値ISTO(1)、オーバシュートOS(1)で動作させ、更記録磁極に記録電流IW(1)を通電し、励磁してサーボ信号を磁気記録媒体130の前記の所定領域に記録し、ついで、このサーボ信号を元に上記所定の領域に、図7の表7aに記載したIW(m)、ISTO(n)の各組み合わせで、所定の検査信号の記録再生を行う(704)。ここでは、IWを一定として、ISTOを変えて記録を行うプロセスを行い、更に、記録電流IWを変えながらこのプロセスを繰り返した。それぞれの組み合わせでのビットエラーレート、オーバライト、再生出力、及び隣接トラック記録干渉特性(ATI)などの記録再生特性を測定し、最も高い特性が得られる最適のIW(m)、ISTO(n)の組み合わせを決定する(705)。なお、IWとISTOの可変の順序を上記とは逆にしても同様に最適の組み合せを決定できる。
【0068】
ついで、この状態で、熱膨張素子への投入電力PTFC、クリアランスを再度計測し、所定の値とのクリアランスの差(投入電力PTFCの差の絶対値)が大きくなっていれば(706)、記録電流IWを一水準下げて記録再生特性を計測しながら、高周波発振素子への通電量を最適化し(707)、再度クリアランスが所定の値になっているか評価する。このプロセスをクリアランスが所定の値以下になるまで繰り返し、IW、ISTO、PTFCの最終的な最適値を決定する(708)。これらの最適値は、パラメータ制御用テーブルとしてヘッド駆動制御装置のレジスタに格納され、ヘッド駆動装置の制御に用いられる。なおここで、特殊記録パターンに対する記録電流IWのタイミングの事前補償(いわゆるライトプリコンペ)も自動的に行った。
【0069】
図8には本実施例のフローチャートに従って最適化された記録電流、高周波素子駆動電流の動作概念図を示す。本実施例において、実施例1と同等の装置製造歩留り、記録密度が達成できていることが確認され、さらに、外部磁界に対する耐力は実施例1の1.5倍以上に改善されていることが確認された。また、実施例1と同様に、通電タイミングtRW、切断タイミングtRWB、アシスト効果抑止電流IdやオーバシュートOSについて最適化を行なったところ、実施例1の2倍程度と高い外部環境変化に対する信頼性(再生時のエラーが無い)が得られ、特に好ましかった。
【実施例3】
【0070】
実施例3として、最もコストパフォーマンスの高い系の例を示す。
【0071】
まず、実施例1で述べたヘッド駆動制御装置、磁気ヘッドを1個、磁気記録媒体を1枚用いて図2に示す磁気記憶装置を組み立てた後に、所定の磁気記録媒体130の領域で、実施例1と同様に、高周波発振素子140が磁気記録媒体130から所定のクリアランスを確保するように熱膨張素子の投入電力を調整する(PTFC(1))(501)。次いで、高周波発振素子140を所定の電流値ISTO(1)で動作させ、更に、記録磁極122のコイル123に記録電流IW(1)を通電し、励磁してサーボ信号を磁気記録媒体に記録する(502)。本実施例では高周波発振素子駆動回路にはオーバシュート機能と逆極性電流通電機能を省略してある。またここで、ISTO(1)の通電の際は、他の実施例と同様に、IW(1)の通電のタイミングよりもtRW(1)だけ早く安定電流分を通電開始し、tRWB(1)だけ遅れて通電を終了した。
【0072】
次いで、図7のフローと同様に、高周波発振素子140を所定の電流値ISTO(1)で動作させ、更に、記録磁極122のコイル123に記録電流IW(1)を通電し、励磁してサーボ信号を磁気記録媒体130の前記の所定領域に記録し、ついで、このサーボ信号を元に上記所定の領域に、図7のIW(m)−ISTO(n)の表に記載の各組み合わせで所定の検査信号の記録再生を行う(704)。ここでは、IWを一定として、ISTOを変えて記録を行うプロセスを行い、更に、記録電流IWを変えながらこのプロセスを繰り返した。それぞれの組み合わせでのビットエラーレート、オーバライト、再生出力、及び隣接トラック記録干渉特性(ATI)などの記録再生特性を測定し、最も高い特性が得られる最適のIW(m)、ISTO(n)の組み合わせを決定する(705)。なお、IWとISTOの可変の順序を上記とは逆にしても同様に最適の組み合せを決定できる。
【0073】
ついで、この状態で、熱膨張素子への投入電力PTFC、クリアランスを再度計測し、所定の値とのクリアランスの差(投入電力PTFCの差の絶対値)が大きくなっていれば(706)、記録電流IWを一水準下げて記録再生特性を計測しながら、高周波発振素子140への通電量を最適化し(707)、再度クリアランスが所定の値になっているか評価する。このプロセスをクリアランスが所定の値以下になるまで繰り返し、IW、ISTO、PTFCの最終的な最適値を決定する(708)。これらの最適値は、パラメータ制御用テーブルとしてヘッド駆動制御装置のレジスタに格納され、ヘッド駆動装置の制御に用いられる。なおここで、記録パターンに応じ、特殊記録パターンに対する記録電流IWのタイミングの事前補償(いわゆるライトプリコンペ)も自動的に行った。
【0074】
図9には本実施例のフローチャートに従って最適化された記録電流、及び高周波素子駆動電流の動作概念図を示す。本実施例において、実施例1に比べて製造歩留りや、記録密度で数%劣るが、従来技術に比べ外部磁界耐力特性は同等で、記録密度特性は圧倒的に優れた磁気記憶装置が実現できていることが確認された。また実施例1と同様に、通電タイミングtRW、切断タイミングtRWBの最適化を行なったところ、実施例1と同等の製造歩留りまで歩留りが改善され、好ましかった。
【実施例4】
【0075】
本実施例では、室温での動作だけでなく装置保証温度範囲全域で優れた特性を有する装置を提供できる磁気記憶装置の例について説明する。
【0076】
図10に装置動作環境が変化した場合における、記録電流通電開始時を基準とした時の高周波発振素子149における電流動作タイミングの本発明の設定フロー図を、動作オン時のタイミングtRWを例として示す。本実施例の磁気記憶装置は、実施例1、2及び3と同様にして組立てられるが、追加機能として、外部環境検知機能と、外部環境を検知した情報をもとに、図5もしくは7に記載のプロセスで各パラメータを再調整する補正機能とを有するものである。外部環境検知機能と検知した情報をもとに、記録電流と高周波発振素子との動作タイミングtRWを再調整する補正機能について、以下に説明する。以下では、外部環境の検知の対象は温度である。
【0077】
まず、全温度領域をT1,T2,・・,TPの境界温度によってQ+1(Q:0、1、2、・・・)の領域に分割する。Q=0の場合には分割しない。各温度領域T≦T1、・・、Tq−1<T≦Tq、・・、TQ<Tを、それぞれの温度条件A[1]、・・、A[q]、・・、A[Q+1]と定義する。
【0078】
まず、高周波発振素子140を動作をオン、オフするタイミングは、磁気記憶装置の製造工程で図5などに示したフローにより決定し、その値tRW(IN)およびtRWB(IN)に設定する。更に、その製造や、検査工程で、上記温度領域で適切な代表点を決め、それら代表温度で予め最適なパラメータを図5などに示したフローにより事前に求め、ヘッド駆動制御装置のレジスタに格納し(1001)、磁気記憶装置の制御に用いる。
【0079】
次いで、フィールドでの実動作環境において、環境温度が変化し、磁気記憶装置の磁気記録ヘッド、及び磁気記録媒体を囲む環境温度Tが温度条件A[q]になれば(1003〜1006)、高周波発振素子140を動作させるタイミングを、それぞれの温度条件に対応した通電タイミングtRW(q)に変更し(1007〜1010)、記録再生を行う。高周波発振素子の動作オフのタイミングtRWB(q)についても同様である。図11(a)、(b)には、それぞれ図10に示した実施例のQ=3、1の例を高周波発振素子の動作オンのタイミングtRW(q)について示す。高周波発振素子の動作オフのタイミングtRWB(q)についても同様である。図8に示したように、再生動作時には抑制電流を設定すると信頼性が更に向上するので、特に好ましい。
【0080】
上記の実施例1、2及び3では温度環境変化を例に本発明の構成を説明したが、クリアランスが影響を受ける気圧変化に応じて最適パラメータを決定し、環境温度に応じてそれらのパラメータで磁気記録を行うように調整することで、動作保証環境で更に優れた特性を有する磁気記憶装置を提供できることは言うまでもない。
【0081】
また、上記の実施例では、高周波発振素子140が、記録磁極122と補助磁極124の間のギャップ部にある場合について説明したが、記録磁極122の近傍に高周波発振素子140があればギャップ部である必要はなく、また磁気ディスク装置(HDD)を例に本発明の構成を説明したが、磁気テープ装置など他の磁気記憶装置にも適用できる。
【符号の説明】
【0082】
100:磁気ヘッドの走行方向
101:磁気ヘッドと磁気記録媒体のクリアランス
102:熱膨張素子部(TFC)
102a,b:熱膨張素子部(TFC)
102c,d:熱膨張素子部(TFC)
110:再生ヘッド部
111:シールド層
112:センサ素子
113:磁気シールド
114:下部磁気シールド
120:記録ヘッド部
121:記録磁界
122:記録磁極(主磁極)
123:コイル
124:補助磁極
125:記録ギャップ部
126:発振制御磁界
130:磁気記録媒体
131:潤滑層
132:保護層
133:第2の磁性層
134:第1の磁性層
135:軟磁性下地層
136:非磁性基板
137:磁気記録媒体に記録された上向き磁化
138:磁気記録媒体に記録された下向き磁化
140:高周波発振素子部(STO)
141:高周波磁界発生層(FGL)
142:中間層
143:スピン注入固定層
144:STO駆動用直流電源
145:高周波磁界
146:スピン注入固定層の磁化
147:高周波磁界発生層(FGL)の磁化
148:高周波磁界発生層(FGL)の磁化の回転方向
149:STO駆動電流
150:スライダ
151:ヘッド保護膜
152:磁気記録再生ヘッド浮上面(ABS)
200:スピンドルモータ
201:磁気記録媒体
202:アーム
203:磁気記録記録再生素子搭載スライダ
204:サスペンション
205:HGA
206:アクチュエータ
207:STOを駆動するための駆動信号
208:ヘッドアンプ集積回路(R/W−IC)
209:信号処理回路(R/Wチャネル)
210:マイクロプロセッサ(CPU)
211:ディスクコントローラ(HDC)
212:システム集積回路
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気記録媒体に対し高周波磁界を印加することにより磁化反転を誘導する機能を有する磁気記録ヘッドを搭載した磁気記憶装置、ヘッド駆動制御装置並びにその制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インターネット環境の進化、クラウドコンピューティングの浸透などによるデータセンタの増設などにより、生成される情報量が近年急増している。記録密度が最も高く、ビットコストに優れた磁気ディスク装置(HDD)などの磁気記憶装置が”ビッグデータ時代”のストレージの主役であることは間違いない。このためには、磁気記憶装置の大容量化、それを支える高密度化が必須である。
【0003】
高密度化の基本はスケーリング則であって、磁気ヘッドのトラック幅、ヘッド・媒体間のスペーシング、媒体の結晶粒などを小さくする事が必須である。しかし媒体の結晶粒を小さくすると、磁化状態を保とうとする異方性エネルギーが小さくなり、熱擾乱により、記録された磁化状態が乱されやすくなる。この現象は超常磁性効果と呼ばれる。このため、非特許文献1に記載されているように、1Tb/in2程度の時代になると現状技術の単なる延長では実用限界の壁があるとされる。これは、超常磁性限界、トリレンマ(trilemma)などと呼ばれる。
【0004】
高密度化のためにはこれを越える技術を開発することが最大の課題であり、これに対して特開平7−244801号公報(特許文献1)では、外部に設けた高周波源を磁気ヘッドの動きに追従させることで、磁気共鳴条件を満たす高周波磁界を磁気記録媒体に供給し、磁気記録媒体のスピンが高周波磁界のエネルギーを吸収して保磁力が実効的に低下することを利用して、媒体の温度を事実上上昇させることなく、高保磁力媒体にも低磁界で書き込みが行えるスピン加熱記録方法が提案されていた。
【0005】
このようなスピン加熱記録方法では、磁気共鳴条件を満たす周波数範囲にパワーが集中した高周波電磁界を加えられるので、伝導電子のプラズマ振動や格子振動などの、スピン以外の内部自由度をあまり励起することなく、スピンのみを選択的に励起、すなわちスピン加熱することができ、一般の加熱のように媒体全体の温度が上昇することはないとされる。このようにマイクロ波帯の高周波磁界を磁気記録媒体に印加し、磁気共鳴現象を利用して磁気記録をおこなう方法は、マイクロ波アシスト磁気記録方法(MAMR:Microwave Assisted Magnetic Recording)と呼ばれる(非特許文献1)。
【0006】
また、高周波磁界を利用する別の方法として、磁気記録層の一部分又はこの一部分の近傍に高周波磁界を印加して渦電流を発生させることによってこの一部分を加熱し、この一部分の保磁力を一時的に低下させた状態にした上で、この一部分の少なくとも一部に書き込み磁界を印加して、磁気記録媒体に書き込みを行う熱アシスト磁気記録方法が特開2008−34004号公報 (特許文献2)も開示されていた。更に、この熱アシスト磁気記録方法において簡便にエネルギーを照射する方法として、特開2005−285242号公報(特許文献3)には、高周波発振器として少なくとも2つの磁性薄膜を備えたスピントルク型もしくはスピン共鳴型の微小スピン波発生素子が開示されている。
【0007】
近年、スピントルクによってスピンを高速回転して高周波磁界を発生する、高周波磁界発生層 FGL(Field Generation Layer)を利用した微小構造の実用的なスピントルク型高周波発振素子(STO:Spin Torque Oscillator)が非特許文献2及び米国特許7616412B2(特許文献8)で提案されている。次いで、非特許文献3では、同種の構造の高周波発振素子STOを垂直磁気ヘッドの主磁極に隣接して配置し、STOからのマイクロ波帯域の高周波磁界で媒体磁化の才差運動を励起し、スウィッチング磁界を下げながら磁気異方性の大きな磁気記録媒体に情報を磁気記録し高密度化を図るマイクロ波アシスト記録方法が開示されている。
【0008】
更に、特許第4255869号(特許文献4)では、高周波磁界発振素子から、磁化反転させたい磁気記録媒体の磁化の才差運動方向と同じ方向に回転する高周波磁界を、記録磁界極性に応じて発生せしめることで、磁化反転をより効率良く誘起する方法も開示された。これらにより、マイクロ波アシスト記録方法の実用化に向けた研究開発が近年急速に加速されるようになり、特開2011−113621号公報(特許文献5)では、本方法の実用化に向け、マイクロ波アシスト記録に必要な高周波発振素子の信頼性を確保すると共にその発振を確実に維持するために、ライトゲートの入力に応じて、記録磁界が印加されている状態で一定有効時間だけ定常レベルより高レベルの高周波発振素子駆動信号を供給するヘッド駆動制御装置も開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平7−244801号公報
【特許文献2】特開2008−34004号公報
【特許文献3】特開2005−285242号公報
【特許文献4】特許第4255869号
【特許文献5】特開2011−113621号公報
【特許文献6】特開2006−114159号公報
【特許文献7】特開2007−220232号公報
【特許文献8】米国特許7616412B2
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Y. Shiroishi,et al,”Future Options for HDD Storage”, IEEE Trans. Magn., Vol.45, no.10, pp3816−3822 (2009)
【非特許文献2】X.Zhu and J.−G.Zhu, “Bias−field−free microwave oscillator driven by perpendicularly polarized spin current”, IEEE Trans. Magn., vol.42, pp.2670−2672, 2006.
【非特許文献3】J−G.Zhu, X.Zhu, and Y.Tang,”Microwave Assisted Magnetic Recording”, IEEE trans. Magn., Vol44, no.1,pp125−131(2008)
【非特許文献4】S. Okamoto, M. Igarashi, N. Kikuchi, and O. Kitakami: “Microwave assisted switching mechanism and its stable switching limit”, J. Appl. Phys. 107, pp123914−7 (2010)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1、4や非特許文献2、3では、スピン注入によるスピントルク効果を用いた新構造の高周波発生素子を実際の磁気記憶装置に適用し、マイクロ波アシスト記録方法として記録再生を行い適切に使いこなすための詳細なフローは十分に検討されてはおらず、問題点も含めて開示もされていなかった。この状況は特許文献2、3などのように、高周波磁界を用いて加熱する熱アシスト方法でも同様であった。そこで本発明者らは、高周波発生素子を搭載した磁気記憶装置を従来装置と同様の種々の環境条件で鋭意検討、試験をしたところ、高記録密度化は達成できるものの、実用化に向けて以下の大きな課題があることが判明した。
【0012】
最大の課題は、特開2006−114159号公報(特許文献6)記載のような従来技術の延長で磁気ヘッドに十分な漏洩磁界対策を施したにも拘らず、外部環境によっては情報再生時やシーク時に、記録ヘッドを非動作状態にしておいても、情報が消失、もしくは書き換えられてしまうことである。この根本原因について発明者らはLLG(Landau−Lifshitz−Gilbert)シミュレーション、及び実験の両面から鋭意検討を行い、本現象は、従来の記録方法では十分対策できていた外部機器や磁気記録媒体におけるサーボ情報、記録情報などからの微小な浮遊磁界でも高周波磁界発振素子に大きな影響を与え、情報再生もしくはシーク時のような非記録動作時にも、高周波磁界発振素子が磁気記録媒体に作用してしまうことに起因することが明らかになった。
【0013】
更に、量産に向けた試作時に、新構造の高周波磁界発生素子を、磁気記憶装置に組み込み、装置を動作させたときの磁気記憶装置の製造歩留りが従来ヘッドに比べて極端に低いという課題があることも判明した。LLGシミュレーションを駆使した発明者らの検討によれば、これは、スピントルク効果を用いた高周波発生素子の高周波磁界強度と発振周波数には強い素子寸法依存性があり、更に、これら発振特性に強い影響を与える記録ヘッド磁界においても、記録電流にたいするその応答時間がばらつくため、従来ヘッド以上の磁区構造制御技術と加工精度が要求されること、更に高周波磁界による媒体磁化の才差運動の動的励起過程は極めて複雑であり、アシスト効果自身も磁気記録媒体や磁気ヘッドの製造プロセスのバラツキや、物性常数の温度依存性に強く依存すること、に起因することが明らかになった。
【0014】
以上のように、マイクロ波アシスト記録方法を情報記憶装置に適用する為には、消去や、誤記録(記録状態が記録時とは異なる状態に変異すること)の問題と、本方法による磁気記憶装置の製造歩留が特に低いという問題を克服することが最大の課題であることが明らかになった。この課題の本質は上述のように、高周波発振素子により媒体磁化の才差運動を励起する過程が、非常に複雑な動的確率現象であることに起因し、従来技術の枠をはるかに超えるプロセス技術が要求されてしまうことにある。従って、マイクロ波アシスト記録方法の実用化には、この本質を踏まえたうえで、装置レベルでの対策が必須であり、本発明が解決しようとする課題である。即ち、本発明の目的は、高い信頼性、製造歩留り、記録密度とを有する大容量・高信頼性の磁気記憶装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本願は上記課題を解決して、目的を達成する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、磁気記録媒体と、該磁気記録媒体に書き込むための記録磁界を発生する記録磁極と、高周波磁界を発生する高周波磁界発振素子とを少なくとも備えるマイクロ波アシスト磁気記録ヘッドと、磁気記録媒体から情報を読み取る磁気再生ヘッドと、前記磁気記録ヘッドの記録動作、前記磁気再生ヘッド再生動作を制御・処理する手段、および該高周波磁界発振素子と該磁気記録媒体とのクリアランス(clearance、隙間、スペーシング)を制御する手段とを備える磁気記憶装置である。本発明の磁気記憶装置において、少なくとも情報再生の主要時(実質的に信号を読み取っている時間)に、前記高周波磁界発振素子に動作時と逆極性の電流を通電する、もしくは電流を全く通電しないなどの手段で、記録時以外には前記高周波磁界発振素子を動作させないようにしたことを特徴とする。
【0016】
なお、装置の記録動作への切り替え時には、主磁極への記録電流通電前に前記高周波磁界発振素子への通電が完了していることが好ましく、この記録動作時に、記録磁極への記録電流、高周波発振素子への動作電流、ならびにクリアランス制御手段の調整を装置製造時に、更には装置動作時にも実施することがより好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、記録時以外は高周波磁界発振素子によるマイクロ波アシスト効果を抑制することで、マイクロ波アシスト磁気記録方法における情報消去、誤記録などの確率を従来の垂直記録方法よりも小さくし、更に、磁気記録ヘッド励磁電流の通電よりも前、すなわち記録磁界が印加される前に、マイクロ波アシスト素子に予め駆動電流を通電しておき、更に、そのタイミングを装置製造時、より好ましくは装置動作時にも調整することで、高い信頼性、製造歩留り、記録密度とを有する大容量・高信頼性の磁気記憶装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1A】本発明による磁気ヘッドと磁気記録媒体の概念図の例である。
【図1B】高周波磁界発生素子の各層の磁化状態を示す。
【図1C】磁気ヘッド励磁電流と高周波磁界との関係の一例を示す。
【図2】本発明によるヘッド駆動制御装置および磁気記憶装置の概念図の例である。
【図3】本発明による磁気ヘッドと磁気記録媒体の実施例である。
【図4】本発明によるマイクロ波アシスト記録効果とアシスト効果抑制の例である。
【図5】本発明によるパラメータ制御のフローチャートの例である。
【図6】本発明の実施例図5により決定されたパラメータ制御の概念図の例である。
【図7】本発明によるパラメータ制御の別のフローチャートの例である。
【図8】本発明の実施例図7により決定されたパラメータ制御の概念図の例である。
【図9】本発明により決定されたパラメータ制御の別の概念図の例である。
【図10】本発明による高周波発振素子電流動作タイミングの設定フローチャートの例である。
【図11】本発明実施例図10により決定されたタイミングの設定の概念図の例である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、実施例について図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0020】
図1Aに本発明の磁気記憶装置の構成例の一部である磁気記録再生ヘッドの概略図を示す。磁気記録再生ヘッドは、磁気記録媒体130上をクリアランス101で100方向に走行するスライダ150上に形成された、再生ヘッド部110、記録ヘッド部120、および特許第4255869号(特許文献4)記載のような、クリアランス制御用の熱膨張素子部TFC(Thermal Flying Height Controller)102とから主に構成される。ここでTFC102は、NiFe合金などの高比抵抗、高熱膨張材料からなり、アルミナ膜などで絶縁した、50〜150Ω程度の発熱抵抗体薄膜で構成される。ヘッド保護層151はCVD−C、FCAC(Filtered Cathodic Arc Carbon)などからなり、底面152は磁気記録再生ヘッドの浮上面(ABS:Air Baring Surface)である。スライダ150は、特開2007−220232号公報(特許文献7)記載のように、磁気ヘッド磁極部の浮上量が磁気記録媒体全周に亘って10nm程度になるように、Al2O3−TiCセラミックスのABS面に負圧が発生するようにエッチング加工を施したもので、大きさはフェムト(femto)型で0.85mm×0.7mm×0.23mm程度である。本実施例では、磁気記録再生ヘッドは再生ヘッド部110が先頭で記録ヘッド部120が後方になる向きに磁気記録媒体130が相対的に移動する構成としているが、逆構成であったとしても良く、またヘッド保護層はなくても良い。
【0021】
再生ヘッド部110は、シールド層111、再生センサ素子112、上部磁気シールド113と下部磁気シールド114とからなる構成である。再生センサ素子112は媒体からの信号を再生する役割を担うもので、その構成としては、TMR(Tunneling Magneto−Resistive)効果、CPP(Current Perpendicular to Plane)−GMR(Giant Magnetro−Resistance)効果、ないしはEMR(Extraordinary Magneto−Resistive)効果を有するもの、更にはSTO(Spin Torque Oscillator)効果を応用したものや、いわゆる差動型であっても良い。その素子幅TWrは、目標とする記録磁界や、記録密度に応じて設計及び、加工され、その大きさは80nm〜5nm程度である。なお、同図で出力の取り出し端子は省略して記載してある。
【0022】
記録ヘッド部120は高周波磁界145を発生するための高周波磁界発振素子部140、記録ヘッド磁界145を発生するための記録磁極(主磁極)122、高周波磁界発振素子140の磁化回転方向などを制御するための補助磁極124及び、記録磁極を励磁するためのCuなどからなるコイル123で構成される。なお、磁気ギャップ125は、記録磁極122と補助磁極124との間に設けられ、発振制御磁界126は高周波磁界発振素子140の磁化方向及び磁化回転方向などを制御する。
【0023】
ここで記録磁極122は、FeCoNi、CoFe合金などの高飽和磁束軟磁性膜をメッキ法もしくはスパッタ法などで製膜し、ベベル角(bevel angle)が10〜20度の台形状であって、ABS面に近づくにつれその断面積が小さくなるように形成される。なお台形状の記録磁極の広い側の記録素子の幅TWWは、目標とする記録磁界や、記録密度に応じて設計及び、加工され、その大きさは160nm〜10nm程度である。また、本発明における記録磁極122は、補助磁極124も含めてCoNiFe合金や、NiFe合金などの軟磁性合金薄膜で形成され、非磁性層を用いてその周囲を囲った、いわゆるWAS構造(Wrap Around Structure)とすることが好ましい。
【0024】
高周波発振素子部140は、FeCo、NiFeなどの軟磁性合金、CoPt、CoCrなどの硬磁性合金、Fe0.4Co0.6、Fe0.01Co0.99、Co0.8Ir0.2などの負の垂直磁気異方性を有する磁性合金、CoFeGe、CoMnGe、CoFeAl、CoFeSi、CoMnSiなどのホイスラー合金、TbFeCoなどのRe−TM系アルモファス系合金、あるいはCo/Fe、Co/Irなどの磁性人工格子などからなる高周波磁界発生層FGL141と、Au、Ag、Pt、Ta、Ir、Al、Si、Ge、Ti、Cuなどの非磁性伝導材料などからなる中間層142と、更に、高周波磁界発生層FGLにスピントルクを与えるためのスピン注入固定層143などから構成される。
【0025】
ここで、FGL141の幅WFGLは、目標とする記録磁界や、記録密度に応じて設計及び、加工され、その大きさは150nm〜5nm程度である。また、非磁性中間層142の膜厚は、高いスピン注入効率を得るために、その膜厚を0.2〜4nmの程度とすることが好ましく、スピン注入固定層143としては、垂直磁気異方性を持った材料を用いることによりFGLの発振を安定させることが出来るので、Co/Pt、Co/Ni、Co/Pd、CoCrTa/Pd などの人工磁性材料を用いることが好ましい。更に、FGL141の高周波磁化回転を安定化させるため、スピン注入固定層143と同様の構成の回転ガイド強磁性層をFGL141に隣接して設けても良い。また、スピン注入層143とFGL141の積層順は逆にしても良い。なお、スピンは直流電源144からFGL141などに供給されるが、図1Aではその構造を示す為に電流の供給端子は省略して簡略化して記載してある。
【0026】
図1Bに、磁気記録媒体130に記録を行う時の高周波磁界発生素子140の各層の磁化状態を模式的に示す。ここで、矢印146、147は、それぞれスピン注入固定層143、高周波磁界発生層(FGL)141の磁化、矢印148は高周波磁界発生層(FGL)の磁化147の回転方向、矢印149は高周波発生素子に電源144から供給される直流電流である。
【0027】
磁気記録媒体130の磁性層133、134に記録された上向きの磁化137を下向きに書き換える場合の概念図を図1Bの(b−1)に示す。この場合には、記録磁極122から、図1Aで下向きの記録磁界121aが発生するように記録ヘッドのコイル123に記録電流を通電する。このとき、記録磁極122からの磁界の一部126が補助磁極124に向けてギャップ部125にも発生する。図1Aに示すように、スピン注入固定層143及び、高周波磁界発生層(FGL)141の磁化を右向きに配向させるのに十分強い発振制御磁界126aが発生するように、予め記録磁極122、補助磁極124、磁気ギャップ125などの構造や、材料、更には高周波発生素子140の構造や、材料などを設計しておく。
【0028】
このように設定しておくことで、図1Bの(b−1)に示すように、高周波磁界発生層141の磁化147aが反時計回り(矢印148aの方向)に高速回転し、磁気記録媒体130の上向きの記録磁化137が反時計回りに才差運動するのをアシストする性質の高周波磁界を発生する。最終的に、この高周波磁界145のアシスト効果に助けられ、下向きの記録磁界121aによって磁気記録媒体130の上向き磁化137は下向きに反転し、情報の書き換えが行われることになる。なおここで、上記の発振周波数は発振制御磁界126aとFGL141の異方性磁界の和によって決まる。このため、例えば軟磁性材料や負の垂直磁気異方性材料でFGL141を構成した場合には、その異方性磁界は小さいので、FGL141の発振周波数は発振制御磁界126aの強さに応じて決まることになる。なお記録ヘッドからの発振制御磁界は、記録ヘッド励磁電流に対して0.1 ns程度の遅れがある。この遅延時間は、磁気ヘッドの製造ばらつき、環境温度などに応じて変化するので、後で述べるように、これらを補償することが望ましい。
【0029】
次に、これとは逆に、磁気記録媒体130の磁性層133,134に記録された下向きの磁化138を上向きに書き換える場合について、図1Bの(b−2)の概念図を用いて説明する。まずスピン注入固定層143及びFGL141に、図1Bの(b−1)と逆向き(左向き)で強い発振制御磁界126bを印加し、スピン注入固定層143及びFGL141の磁化147bの向きを、図1Bの(b−1)とは逆向き(左向き)になるように高速でスウィッチさせる。この状態になると、FGL141の磁化147bはスピン注入固定層143から注入されたスピンのエネルギーを吸収し、磁気記録媒体130から見て図1Bの(b−1)とは逆回転(矢印148bの方向)で高速に回転することになる。この逆回転のFLG141の磁化147bからは、図1Bの(b−1)とは反対の性質、すなわち下向きの記録磁化138の才差運動をアシストする(上向きへの反転をアシストする)性質を有する高周波磁界が発生する。最終的に、この高周波磁界145のアシスト効果により、上向きの記録磁界121bによって、磁気記録媒体130の下向き磁化138は上向きに反転し、情報の書き換えが行われることになる。
【0030】
図1Cに、LLGシミュレーションにより解析した、本発明の上記構造の磁気ヘッドにおける磁気ヘッド励磁電流と高周波磁界との関係の一例を示す。記録電流の極性を変えたときに、そのタイミングと高周波発振周波数との兼ね合いで、0.1nsの時間範囲でSTOの発振波形が若干乱れることもあるが、安定して高周波磁界が発生していることがわかる。一般に、高周波磁界の発振周波数や、強度は、記録電流、又は磁界のスウィッチング後に時間とともに変化する。このため、非特許文献4で議論されているように、磁気ヘッドの構造、材料、磁気記録媒体の材料、製造プロセス、又は構造などを適切に設計し、調整すれば、媒体磁化の才差運動と高周波磁界との同期、及び才差運動の高周波磁界からのエネルギーの吸収、及び媒体スウィッチング磁界の低減が行なわれた、マイクロ波アシスト記録が可能となる。
【0031】
LLGシミュレーションによれば、上記の高周波磁界を効率よく発生せしめるためには、FGL141は、その膜厚を1〜100nm、より好ましくは5〜30nmとし、かつ磁区構造が出来にくく、安定して磁化が回転できるように、その素子幅、素子高さを略等しくすることが好ましいことが判明した。なお、素子寸法が40〜20nm程度以下になると磁区構造の発生が抑制され、強い磁界を印加すれば、軟磁性材料、硬磁性材料、又は負の垂直磁気異方性材料のいずれの材料でも安定して発振するようになることも確認された。このことから、マイクロ波アシスト記録方法は特に高密度記録に適しているといえる。しかしながら、その高周波磁界強度や発振周波数には、強い素子寸法依存性、磁気ヘッドからの発振制御磁界の方向や強度の依存性があることも明らかになった。これらは製造プロセスのばらつきに依るだけでなく、環境温度にも依存する。したがって、マイクロ波アシスト方法の実用化には、磁気ヘッドの加工精度の飛躍的向上とあわせ、ヘッド加工寸法のバラツキや環境条件に依存しにくい装置レベルでの調整法の開発、導入が必須であり、後者については後に詳細に本実施例の中で説明する。
【0032】
磁気記録媒体130は、ガラスやNiPメッキAlなどから構成される非磁性基板136上に、FeCoTaZrなどからなる軟磁性下地層135、CoCrPt、L12−Co3Pt基合金、L12−(CoCr)3Pt基合金、L11−Co50Pt50基合金、CoCrB/Pt、CoB/Pd磁性人工格子、L10型FePt、などを主な構成要素とする磁性膜からなる第一、及び第二の記録層134、133、更にCなどからなる保護層132、及び潤滑層131などから構成される。矢印137、138は、それぞれ磁気記録媒体に記録された上向き、下向きの磁化を示す。
【0033】
ここで、記録層の少なくとも一層は垂直磁気異方性を持つ材料であることが好ましく、その磁化の共鳴周波数と高周波発振素子140の高周波磁界の発振周波数は大きくは違わないことが好ましい。なお、磁気的な結合を制御するための中間層を両層の間に設けてもよい。また、軟磁性下地層135と基板136との間に少なくとも一層の非磁性層を設け、また、軟磁性下地層135と磁性層134との間にRuなどの少なくとも一層の非磁性中間層やそれに加えて磁性中間層を設けても良い。更に、軟磁性下地層135を、Ruなどを介した2層構造としたり、磁性層133,134を単層もしくは、3層以上の多層構造としても良い。なお、本実施例では、基板136の片面に磁性層133,134などを設けた例を示したが、これらを非磁性基板136の両面に設けても良い。本実施例では磁気記録媒体130は各ビットが連続して存在する連続媒体の例を示したが、基板上に10nm程度の磁性パターンを設けたパターン媒体でもよい。
【0034】
図2には、本発明を適用した磁気記憶装置の構成例を示す。すなわち、本実施例は、スピンドルモータ200、磁気記録媒体201、アーム202、高周波発振素子(STO)、記録再生素子や、クリアランス制御素子TFCなどを有する磁気ヘッドスライダ203とサスペンション204を含む磁気ヘッドHGA(Head Gimbal Assembly)205、アクチュエータ206、STOを駆動するための駆動信号(駆動電流信号または駆動電圧信号)207を生成する高周波発振素子駆動制御装置などを有する本発明のヘッド駆動制御装置(R/W−IC)208、R/Wチャネル209、マイクロプロセッサ(CPU)210、ディスクコントローラ(HDC)211などから構成される。なお、アクチュエータ206がロータリー型のアクチュエータであれば、磁気記憶装置の小型軽量化の点で好ましい。
【0035】
ここで、CPU210は、磁気記憶装置の主制御装置で、記録再生動作や磁気ヘッドの位置決めに必要なサーボ制御をおこなうものである。たとえば、CPUは、R/W−ICに含まれる各種レジスタにその動作に必要なパラメータを設定する。各種レジスタには、後述のように、所定の温度、磁気記録媒体領域毎の記録電流値、クリアランス制御値、STO駆動電流値、記録電流、STO駆動電流のオーバシュート値、あるいはタイミング時間などが独立に設定される。
【0036】
HDC211は、磁気記憶装置と上位のホストシステム(図示せず)とのインターフェースを構成し、磁気記録媒体上に記録データ213を書き込む情報記録の開始(記録のタイミング)を指示するためのライトゲートをR/Wチャネル209に出力することなどにより、記録再生情報の転送制御を行う。
【0037】
R/Wチャネル209は信号処理回路であり、情報記録時にはディスクコントローラ211から転送された記録情報を符号化した信号213をR/W−ICに出力、情報再生時には磁気ヘッド205から出力された再生信号を復号化した再生情報をディスクコントローラ211に出力する。
【0038】
R/W−IC208は、上記ライトゲートの入力に応じて、少なくともR/Wチャネル209から供給される記録データ213に対応する記録信号(記録電流)が生成され、通電タイミングを制御された高周波発振素子(STO)駆動信号(駆動電流信号または駆動電圧信号)とともに磁気ヘッドに供給する駆動集積回路で、CPUから記録電流値、STO駆動電流値、TFC投入電力値などが設定されるレジスタ、より好ましくはレジスタからなる設定テーブルを有し、それらに基づいた記録電流、STO駆動電流、オーバシュート、TFC投入電力などを生成する。ここで各レジスタ値は、磁気記録媒体の領域、環境温度、気圧などの条件毎に変化させることができる。なお、R/Wチャネル209、CPU210、HDC211などは、通常1チップのシステム集積回路(SoC:System on Chip)212に組み込まれている。
【0039】
以下に本発明の磁気記憶装置における記録再生動作の概略を説明する。パソコンなどのホスト、上位システムからの情報の記録や、再生の命令に従い、磁気記憶装置のメイン制御装置であるCPU210による制御で、磁気記録媒体201が所定の回転数でスピンドルモータ200により回転し、更に、再生素子により、予め磁気記憶装置の製造工程で磁気記録媒体に記録されたサーボ情報からの信号を用いて媒体上の位置を検出するとともに、アーム202を介してアクチュエータ206で磁気ヘッドHGA205を制御することで、磁気記録媒体の所定の記録トラック上に移動(シーク動作)させ、その位置で磁気ヘッドのフォローイング動作を行う。次いでそのトラック上で、情報の記録再生が以下のように行われる。
【0040】
情報記録時には、ディスクコントローラ211から、磁気記録媒体上に記録データ213を書き込むデータ記録の開始(記録のタイミング)を指示するためのライトゲートがR/Wチャネル209に出力される。このライトゲートの入力に応じて、R/Wチャネル209から供給される記録データ213に対応する記録信号(記録電流)が生成され、通電タイミングを制御された高周波発振素子(STO)駆動信号(駆動電流信号または駆動電圧信号)とともに駆動信号207が、磁気ヘッド203の記録ヘッド部120に供給され、磁気記録媒体上の所定記録トラックにマイクロ波アシスト方法で記録される。
【0041】
一方、情報再生時には、磁気記録媒体に記録された磁化情報を読み取る磁気ヘッド203の再生ヘッド部110から出力される再生信号がR/W−ICで増幅され、R/Wチャネル209に伝送され、復号化される。再生情報がディスクコントローラ211に出力される。
【0042】
本実施例では、磁気記録媒体が1個、磁気ヘッドスライダが2個の場合を示したが、磁気記録媒体1個に対し磁気ヘッドスライダが1個でも良く、また磁気記録媒体、磁気ヘッドを目的に応じて複数個に適宜増やしても良い。
【0043】
最適化方法及び効果を含め、実施例の詳細について以下に説明する。
(最適化方法及び効果)
本発明の特徴である、漏洩磁界、及び記録ヘッド120や高周波発振素子140の製造プロセスばらつきに起因する性能ばらつきを補償するための、記録ヘッド120(コイル123)への記録電流IW、高周波発振素子140の動作電流144、ならびに熱膨張素子TFC102によるクリアランス補正の方法とその効果について、以下に説明する。
【0044】
上記構成で、記録ヘッド部120における記録磁極122のトラック幅TWW、高周波磁界発生素子140の磁化高速回転体FGL141の素子幅WFGL、及び再生ヘッド部110における再生素子112の素子幅TWr、及びそれぞれの主要な構成、熱膨張素子TFC102の位置や個数、更に磁気ディスク130の構成を図3の実施例1a、1b、1cに示すように変えて、磁気ヘッドや磁気記録媒体を試作して、磁気記憶装置に搭載した。
【0045】
マイクロ波磁気記録方法を採用した本磁気記憶装置において、比較例として、従来技術と同様にFGL層における不安定磁気構造の発生抑制、すなわち素子の安定動作のために、高周波発振素子を常時動作させた状態で記録再生をおこなったところ、高い記録密度は実現できるものの、外部環境によっては、情報再生、もしくはシーク時に、情報消去、もしくは誤記録がなされてしまうことがあった。
【0046】
従来から、スピンドルモータ、パソコンなど外部機器からの浮遊磁界が磁気記録媒体の軟磁性下地層に吸収されて記録磁極に集められ、更にこの磁界と、磁気記録媒体に記録された複雑な記録パターンからの漏れ磁界が重なって、記録磁極に磁界が集中することは知られていた。そこで、本発明でも、特開2006−114159号公報(特許文献6)記載のような従来技術によって、十分に浮遊磁界対策を施した構造を採用し、シミュレーションでも十分な外部磁界耐性があることを確認していたにもかかわらず上記の問題が発生したので、上記の問題はマイクロ波アシスト記録方法に固有の問題と考えられた。
【0047】
そこで、本現象の根本原因についてLLGシミュレーション、及び実験の両面から鋭意検討を行った。その結果、従来技術で対策済みの記録磁極からの微弱な磁界に加え、別機構によって誘起される磁界が、高周波発振素子のアシスト効果と重なり、情報再生時、もしくはシーク時にも情報消去や、誤記録が引き起こされていることが明らかになった。ここで、別機構によって誘起される磁界とは、磁気記録媒体の漏れ磁界のうち、記録ヘッドのギャップ部を介して吸収され、かつ、強められるタイプの記録パターンからの磁界によるものであり、この磁界は、図1に示した発振制御磁界126と同じ成分を有するため、FGL141やアシスト効果に影響を与えてしまうことが判明した。すなわち、非記録動作時には本来存在してはならないこの磁界のために、ギャップ部125に挿入されている高周波発信素子140が誤動作し、アシスト効果を誘起してしまうのである。このメカニズムは、従来記録方法では全く問題とならなかったタイプのもので、磁気ギャップ部125に高周波発振素子140を設ける本マイクロ波アシスト記録方法に固有の問題であり、記録磁極122や、補助磁極124を軟磁性体で形成し、媒体130からの漏れ磁界も吸い込むポテンシャルの高い記録ヘッドにおいては、部品レベル単独では避けることの出来ない本質的な課題であることが判明した。
【0048】
そこでまず、記録動作時以外の装置動作時にアシスト効果を抑制する技術について、装置レベルで鋭意検討を重ねた。本実施例の磁気ヘッド、磁気記録媒体で図2に示した装置を組み立てた後に、まず所定の磁気記録媒体の領域Rで、高周波発振素子を所定の電流値で動作させ、更に主磁極のコイルに記録電流を通電し、主磁極を励磁してサーボ信号を磁気記録媒体に記録した。
【0049】
ついで、このサーボ信号を元に正負の電流値ISTOを高周波発振素子に通電しつつ、主磁極122のコイル123に通電して所定の検査信号などを記録し、検査信号を再生した時のそれぞれのISTOでのS/Nを評価した結果を図4に示す。図4に示すS/Nは相対値を示す。その結果、図4に示すように、主磁極への記録電流(外部記録磁界を想定)によっては、マイクロ波アシスト磁気ヘッドによるアシスト効果は、信号の再生時に、その駆動電流を零(高周波発振素子非動作)にしても残るので、記録磁界121とFGL141との相互作用の為に記録動作時以外の装置動作時にも影響が残ることが判明した。しかしながら、その大きさは十分小さく、実用上十分無視できる程度であるが、より好ましくは、逆極性の電流−Idを信号再生時の直前に(又は信号記録終了時の直後に)高周波発振素子に通電してその影響をキャンセルすることでアシスト効果を完全に抑制できることが明らかになった。実際に高周波発振素子140への通電を停止、もしくは各領域Rで逆極性の電流−Idを通電し、情報消去や、誤記録を起こした比較例と同じ条件で磁気記憶装置を所定の台数評価したところ、いずれの場合でも、情報消去、もしくは誤記録などの問題は全く観測されない事を確認できた。
【0050】
そこで次に、高周波発生素子を、上記の非動作状態から動作状態に再現性良く安定に移行せしめると共に、ヘッドや、媒体の最高性能を引き出し、製造バラツキや環境条件変化の影響を緩和するための方法について、本発明のヘッド駆動制御装置を用いて鋭意検討を行った。高周波発振素子を安定に発振せしめ、高周波発振素子の高周波磁界と磁気記録媒体の媒体才差運動とのそれぞれの周波数や位相の整合性をとることは、効率よいアシスト効果をえるために重要である。
【0051】
しかし、それらの周波数や位相も、FGL層の磁区構造の安定性と同様に、製造プロセスのバラツキや、物性常数の温度依存性や、磁気ヘッドからの発振制御磁界の相対方位、強度によって変化する。本発明者らが鋭意検討した結果、ECC(Exchange−coupled composite)媒体に対し、マイクロ波アシスト記録ヘッドでその記録磁極に通電する少なくとも0.1ns以上、より好ましくは1ns以上よりも前に、前記の非動作もしくは逆極性通電状態の高周波磁界発振素子140に、素子動作に必要な通電を開始し、記録電流通電開始に対するタイミングを磁気記録媒体や外部環境に応じて適宜調整することで、FGL層内の磁化回転を定常化し、かつ、安定化でき、更に磁気記録媒体に対して最適なアシスト効果を得ることができ、その結果としてエラーレートを常に安定に保つことができることを見出した。なお、記録磁界は、通常、記録電流に対して0.2〜0.5ns程度の遅延があるので、これに適切に対処するために、STO駆動電流のオフのタイミング調整も同様に重要である。
【0052】
LLGシミュレーションなどで詳細に検討した結果、本効果は、以下の条件によって得られることが明らかとなった。
【0053】
(1)電流が数十nmのサイズの素子内で定常的に安定して流れ、しかも磁界が印加されて高周波磁界発振素子の発振が安定化するには、0.1〜1ns程度必要で、位相整合のタイミングを考えると、その5%程度相当の時間の余裕をみてタイミングを制御することが効果的である。
【0054】
(2)高周波磁界発振素子140や磁気記録媒体130のダンピング定数αなどを適切に設定した系では、それらの磁化回転周波数が時間とともに変化し、位相整合をより取り易くなり、適切なチューニングでより効率よいアシスト効果を実現できる。
【0055】
(3)更に、補助磁極124を設け、面内磁界成分を持たせた記録磁界を磁気記録媒体に印加しつつ高周波磁界を印加すると、特にECC型の媒体では、結晶粒内磁化間のダイポール相互作用が、それぞれの媒体結晶粒における磁化の才差運動の位相が合うように効果的に作用する。
【0056】
すなわち、記録電流に対するSTO駆動電流のオン、オフの適切なタイミング調整などを、本発明のヘッド駆動制御装置や方法を用いて、磁気記憶装置レベルで行うことにより、高周波発生素子140を非動作状態から動作状態に再現性良く安定に移行せしめ、更に、高周波磁界と、媒体記録ビットを決める磁化反転領域内にある結晶粒磁化群の才差運動との同期をとれる確率を高めることができ、所望の高いアシスト効果を得ることが出来ると考えられることが確認された。
(装置調整の手順)
以上の知見をもとに発明された、本発明のヘッド駆動制御装置による磁気記憶装置調整のフローチャートを図5に示す。
【0057】
本実施例のヘッド駆動制御装置では、高周波発振素子140への通電タイミング、その通電の電流波形と電流値、クリアランス制御電力、及び記録磁極への記録電流とが同時に設定される(501)。本ヘッド駆動制御装置、及び、前記の磁気ヘッドを4個、磁気記録媒体を2枚用いて図2の磁気記憶装置を組み立てた後に、まず所定の磁気記録媒体の領域で、まず高周波発振素子が磁気記録媒体から所定のクリアランスを確保するように熱膨張素子TFC102の投入電力を調整する(PTFC(1))。これは例えば、熱膨張素子TFC102に電力を順次投入し、磁気記録媒体130との接触を検知したら、その時の投入電力から、所定のクリアランスに相当する電力を低減することで行う。なお、事前に、クリアランス、熱膨張量、TFCへの投入電力量との関係は明らかにしておくものとする。なお、STO駆動電流の、記録電流に対するオン、オフのタイミングtRW(1)、tRWB(1)、電流波形(オーバシュート)OS(1)なども事前に予備評価し、適正値を決定しておく。
【0058】
次いで、図6に示すように、高周波発振素子140を所定の電流値ISTO(1)、所定のタイミングtRW(1)、tRWB(1)、電流波形(オーバシュート)OS(1)で動作させ、更に、記録磁極122に記録電流IW(1)を通電して、励磁してサーボ信号を磁気記録媒体130の前記の所定領域に記録する(502)。なお、オーバシュート(OS)は、スピンの才差運動の初期加速のための電流波形である。
【0059】
ついで、このサーボ信号を元に上記所定の領域に、図5の表5aに記載のIW(m)、ISTO(n)の各組み合わせで、所定の検査信号の記録再生を行う(503)。これらの値はパラメータ制御用テーブルとしてレジスタに格納しておく。なおここでは、電流値ISTOを一定として、IWを変えて主磁極122のコイル123に通電するプロセスを行い、更に、電流値ISTOを変えながらこのプロセスを繰り返した。それぞれの組み合わせでのビットエラーレート、オーバライト、再生出力、及び隣接トラック記録干渉特性(ATI:Adjacent Track Interference)などの記録再生特性を測定し、もっとも高い特性が得られる最適のIW(m)、ISTO(n)の組み合わせを決定する。
【0060】
ついで、この状態で、熱膨張素子TFCへの投入電力PTFC、クリアランスを再度計測し(504)、所定の値よりもクリアランスが小さくなっていれば(投入電力PTFC(i)が所定値以下で無ければ)(505)、記録電流IWを一水準下げて記録再生特性を計測しながら、高周波発振素子140への通電量を最適化し(506)、再度クリアランスが所定の値になっているか評価する。このプロセスをクリアランスが所定の値以下になるまで繰り返し、IW、ISTO、PTFCの最終的な最適値を決定する(507)。なお、ここで、記録パターンに応じ、記録電流IWタイミングの事前補償(いわゆるライトプリコンペ(write pre−compensation))も自動的に行った。
【0061】
オーバシュート(OS)が高いとタイミングtRWやそのばらつきが少なくてもすむ傾向があるが、高すぎると素子動作が安定しないので、調整することが好ましい。そこで、最後に、高周波発振素子140内の電流分布や発振状態の安定化を図る為に、高周波発振素子への電流波形OSと、通電タイミングtRWを、図5の表5b記載の組み合わせのように変えて、ビットエラーレート、オーバライト、再生出力、及び隣接トラック記録干渉特性(ATI)などの記録再生特性を同様に測定し(508)、最も高い特性が得られる最適のOS(h)、tRW(k)の組み合わせを決定する(509)。なお、図5では省略したが、図6に示すように、tRW(k)の設定と同様にSTO駆動電流を切断するタイミングtRWB(k)の調整も実施した。以上の最適値は、パラメータ制御用テーブルとしてヘッド駆動制御装置のレジスタに格納され、磁気記憶装置動作の制御に用いられる。
【0062】
図6には、本実施例のフローチャートに従って最適化された記録電流、及び高周波素子駆動電流の動作概念図を示した。図6は、記録電流IWと電流値ISTOのそれぞれの通電の開始のタイミングを比較したものである。記録電流IWの通電開始前よりも通電タイミングtRWだけ前倒しで高周波発振素子140への電流値ISTOの通電を開始する。また、通電タイミングtRWは、高周波発振素子140に電流値ISTOを通電してから素子内の電流分布や発振状態の安定化や記録などの安定化を図る為に必要な時間である。
なお、ハードディスク装置(HDD)のような磁気記憶装置では、記録と再生の切り替え時間は50ns程度であり、本実施例ではこの時間内に切り替えが完了し、更に高周波発振素子駆動回路の起動完了時期が記録ヘッド駆動回路の再生から記録への切り替え時期よりも少なくとも0.1ns以上前になるようにして、それぞれの起動タイミングを調整した。なおそれぞれの回路系の立ち上り時間は10ns程度であった。
【0063】
本実施例においては、図3の実施例1a、1b、1cの組み合わせでは、いずれも従来技術並みの製造歩留りで、それぞれの記録密度が1.2Tb/in2、1.6Tb/in2、2.0Tb/in2となり、従来技術の2〜3倍の記録密度が達成できることが確認された。さらに、外部磁界に対する耐力も従来装置と同等以上であることも確認できた。また、通電タイミングtRWが0であっても同様な効果が得られた。
【実施例2】
【0064】
図7に、記録密度がより高く、外部磁界耐力が一層懸念される場合に特に有効な実施例を示す。
【0065】
まず、実施例1で述べたヘッド駆動制御装置、磁気ヘッドを6個、磁気記録媒体を3枚用いて図2に示す磁気記憶装置を組み立てた後に、所定の磁気記録媒体の領域で、まず実施例1と同様に、高周波発振素子が磁気記録媒体から所定のクリアランスを確保するように熱膨張素子TFCの投入電力を調整する(PTFC(1))(701)。次いで、高周波発振素子を所定の電流値ISTO(1)、電流波形OS(1)で動作させ、更に記録磁極に記録電流IW(1)を通電し、励磁してサーボ信号を磁気記録媒体130に記録した(702)。なおここで、素子内の電流分布や発振状態の安定化、安定記録を図る為に、事前の実験で求めた平均的な値のtRW(1)だけIW(1)の通電開始よりも早くISTO(1)の安定電流分を通電し、また、記録磁界は記録電流から0.2ns〜0.5ns程度遅延することを考慮して、tRWB(1)だけ遅れて通電終了した。このtRWは温度によって変わり、また、tRWBは、記録周波数や温度によって変わるので、それぞれ最適化が必要です。
【0066】
ついで、このサーボ信号を元に、図4に示したように、正負の電流値ISTOを高周波発振素子140に通電しつつ、主磁極122に通電して所定の検査信号を記録し、それぞれのISTOでのS/Nを評価し、高周波発振素子140のアシスト効果抑制電流−Idを決定した(703)。これらの値は、パラメータ制御用テーブルとしてヘッド駆動制御装置のレジスタに格納される。
【0067】
次いで、高周波発振素子140を所定の電流値ISTO(1)、オーバシュートOS(1)で動作させ、更記録磁極に記録電流IW(1)を通電し、励磁してサーボ信号を磁気記録媒体130の前記の所定領域に記録し、ついで、このサーボ信号を元に上記所定の領域に、図7の表7aに記載したIW(m)、ISTO(n)の各組み合わせで、所定の検査信号の記録再生を行う(704)。ここでは、IWを一定として、ISTOを変えて記録を行うプロセスを行い、更に、記録電流IWを変えながらこのプロセスを繰り返した。それぞれの組み合わせでのビットエラーレート、オーバライト、再生出力、及び隣接トラック記録干渉特性(ATI)などの記録再生特性を測定し、最も高い特性が得られる最適のIW(m)、ISTO(n)の組み合わせを決定する(705)。なお、IWとISTOの可変の順序を上記とは逆にしても同様に最適の組み合せを決定できる。
【0068】
ついで、この状態で、熱膨張素子への投入電力PTFC、クリアランスを再度計測し、所定の値とのクリアランスの差(投入電力PTFCの差の絶対値)が大きくなっていれば(706)、記録電流IWを一水準下げて記録再生特性を計測しながら、高周波発振素子への通電量を最適化し(707)、再度クリアランスが所定の値になっているか評価する。このプロセスをクリアランスが所定の値以下になるまで繰り返し、IW、ISTO、PTFCの最終的な最適値を決定する(708)。これらの最適値は、パラメータ制御用テーブルとしてヘッド駆動制御装置のレジスタに格納され、ヘッド駆動装置の制御に用いられる。なおここで、特殊記録パターンに対する記録電流IWのタイミングの事前補償(いわゆるライトプリコンペ)も自動的に行った。
【0069】
図8には本実施例のフローチャートに従って最適化された記録電流、高周波素子駆動電流の動作概念図を示す。本実施例において、実施例1と同等の装置製造歩留り、記録密度が達成できていることが確認され、さらに、外部磁界に対する耐力は実施例1の1.5倍以上に改善されていることが確認された。また、実施例1と同様に、通電タイミングtRW、切断タイミングtRWB、アシスト効果抑止電流IdやオーバシュートOSについて最適化を行なったところ、実施例1の2倍程度と高い外部環境変化に対する信頼性(再生時のエラーが無い)が得られ、特に好ましかった。
【実施例3】
【0070】
実施例3として、最もコストパフォーマンスの高い系の例を示す。
【0071】
まず、実施例1で述べたヘッド駆動制御装置、磁気ヘッドを1個、磁気記録媒体を1枚用いて図2に示す磁気記憶装置を組み立てた後に、所定の磁気記録媒体130の領域で、実施例1と同様に、高周波発振素子140が磁気記録媒体130から所定のクリアランスを確保するように熱膨張素子の投入電力を調整する(PTFC(1))(501)。次いで、高周波発振素子140を所定の電流値ISTO(1)で動作させ、更に、記録磁極122のコイル123に記録電流IW(1)を通電し、励磁してサーボ信号を磁気記録媒体に記録する(502)。本実施例では高周波発振素子駆動回路にはオーバシュート機能と逆極性電流通電機能を省略してある。またここで、ISTO(1)の通電の際は、他の実施例と同様に、IW(1)の通電のタイミングよりもtRW(1)だけ早く安定電流分を通電開始し、tRWB(1)だけ遅れて通電を終了した。
【0072】
次いで、図7のフローと同様に、高周波発振素子140を所定の電流値ISTO(1)で動作させ、更に、記録磁極122のコイル123に記録電流IW(1)を通電し、励磁してサーボ信号を磁気記録媒体130の前記の所定領域に記録し、ついで、このサーボ信号を元に上記所定の領域に、図7のIW(m)−ISTO(n)の表に記載の各組み合わせで所定の検査信号の記録再生を行う(704)。ここでは、IWを一定として、ISTOを変えて記録を行うプロセスを行い、更に、記録電流IWを変えながらこのプロセスを繰り返した。それぞれの組み合わせでのビットエラーレート、オーバライト、再生出力、及び隣接トラック記録干渉特性(ATI)などの記録再生特性を測定し、最も高い特性が得られる最適のIW(m)、ISTO(n)の組み合わせを決定する(705)。なお、IWとISTOの可変の順序を上記とは逆にしても同様に最適の組み合せを決定できる。
【0073】
ついで、この状態で、熱膨張素子への投入電力PTFC、クリアランスを再度計測し、所定の値とのクリアランスの差(投入電力PTFCの差の絶対値)が大きくなっていれば(706)、記録電流IWを一水準下げて記録再生特性を計測しながら、高周波発振素子140への通電量を最適化し(707)、再度クリアランスが所定の値になっているか評価する。このプロセスをクリアランスが所定の値以下になるまで繰り返し、IW、ISTO、PTFCの最終的な最適値を決定する(708)。これらの最適値は、パラメータ制御用テーブルとしてヘッド駆動制御装置のレジスタに格納され、ヘッド駆動装置の制御に用いられる。なおここで、記録パターンに応じ、特殊記録パターンに対する記録電流IWのタイミングの事前補償(いわゆるライトプリコンペ)も自動的に行った。
【0074】
図9には本実施例のフローチャートに従って最適化された記録電流、及び高周波素子駆動電流の動作概念図を示す。本実施例において、実施例1に比べて製造歩留りや、記録密度で数%劣るが、従来技術に比べ外部磁界耐力特性は同等で、記録密度特性は圧倒的に優れた磁気記憶装置が実現できていることが確認された。また実施例1と同様に、通電タイミングtRW、切断タイミングtRWBの最適化を行なったところ、実施例1と同等の製造歩留りまで歩留りが改善され、好ましかった。
【実施例4】
【0075】
本実施例では、室温での動作だけでなく装置保証温度範囲全域で優れた特性を有する装置を提供できる磁気記憶装置の例について説明する。
【0076】
図10に装置動作環境が変化した場合における、記録電流通電開始時を基準とした時の高周波発振素子149における電流動作タイミングの本発明の設定フロー図を、動作オン時のタイミングtRWを例として示す。本実施例の磁気記憶装置は、実施例1、2及び3と同様にして組立てられるが、追加機能として、外部環境検知機能と、外部環境を検知した情報をもとに、図5もしくは7に記載のプロセスで各パラメータを再調整する補正機能とを有するものである。外部環境検知機能と検知した情報をもとに、記録電流と高周波発振素子との動作タイミングtRWを再調整する補正機能について、以下に説明する。以下では、外部環境の検知の対象は温度である。
【0077】
まず、全温度領域をT1,T2,・・,TPの境界温度によってQ+1(Q:0、1、2、・・・)の領域に分割する。Q=0の場合には分割しない。各温度領域T≦T1、・・、Tq−1<T≦Tq、・・、TQ<Tを、それぞれの温度条件A[1]、・・、A[q]、・・、A[Q+1]と定義する。
【0078】
まず、高周波発振素子140を動作をオン、オフするタイミングは、磁気記憶装置の製造工程で図5などに示したフローにより決定し、その値tRW(IN)およびtRWB(IN)に設定する。更に、その製造や、検査工程で、上記温度領域で適切な代表点を決め、それら代表温度で予め最適なパラメータを図5などに示したフローにより事前に求め、ヘッド駆動制御装置のレジスタに格納し(1001)、磁気記憶装置の制御に用いる。
【0079】
次いで、フィールドでの実動作環境において、環境温度が変化し、磁気記憶装置の磁気記録ヘッド、及び磁気記録媒体を囲む環境温度Tが温度条件A[q]になれば(1003〜1006)、高周波発振素子140を動作させるタイミングを、それぞれの温度条件に対応した通電タイミングtRW(q)に変更し(1007〜1010)、記録再生を行う。高周波発振素子の動作オフのタイミングtRWB(q)についても同様である。図11(a)、(b)には、それぞれ図10に示した実施例のQ=3、1の例を高周波発振素子の動作オンのタイミングtRW(q)について示す。高周波発振素子の動作オフのタイミングtRWB(q)についても同様である。図8に示したように、再生動作時には抑制電流を設定すると信頼性が更に向上するので、特に好ましい。
【0080】
上記の実施例1、2及び3では温度環境変化を例に本発明の構成を説明したが、クリアランスが影響を受ける気圧変化に応じて最適パラメータを決定し、環境温度に応じてそれらのパラメータで磁気記録を行うように調整することで、動作保証環境で更に優れた特性を有する磁気記憶装置を提供できることは言うまでもない。
【0081】
また、上記の実施例では、高周波発振素子140が、記録磁極122と補助磁極124の間のギャップ部にある場合について説明したが、記録磁極122の近傍に高周波発振素子140があればギャップ部である必要はなく、また磁気ディスク装置(HDD)を例に本発明の構成を説明したが、磁気テープ装置など他の磁気記憶装置にも適用できる。
【符号の説明】
【0082】
100:磁気ヘッドの走行方向
101:磁気ヘッドと磁気記録媒体のクリアランス
102:熱膨張素子部(TFC)
102a,b:熱膨張素子部(TFC)
102c,d:熱膨張素子部(TFC)
110:再生ヘッド部
111:シールド層
112:センサ素子
113:磁気シールド
114:下部磁気シールド
120:記録ヘッド部
121:記録磁界
122:記録磁極(主磁極)
123:コイル
124:補助磁極
125:記録ギャップ部
126:発振制御磁界
130:磁気記録媒体
131:潤滑層
132:保護層
133:第2の磁性層
134:第1の磁性層
135:軟磁性下地層
136:非磁性基板
137:磁気記録媒体に記録された上向き磁化
138:磁気記録媒体に記録された下向き磁化
140:高周波発振素子部(STO)
141:高周波磁界発生層(FGL)
142:中間層
143:スピン注入固定層
144:STO駆動用直流電源
145:高周波磁界
146:スピン注入固定層の磁化
147:高周波磁界発生層(FGL)の磁化
148:高周波磁界発生層(FGL)の磁化の回転方向
149:STO駆動電流
150:スライダ
151:ヘッド保護膜
152:磁気記録再生ヘッド浮上面(ABS)
200:スピンドルモータ
201:磁気記録媒体
202:アーム
203:磁気記録記録再生素子搭載スライダ
204:サスペンション
205:HGA
206:アクチュエータ
207:STOを駆動するための駆動信号
208:ヘッドアンプ集積回路(R/W−IC)
209:信号処理回路(R/Wチャネル)
210:マイクロプロセッサ(CPU)
211:ディスクコントローラ(HDC)
212:システム集積回路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気記録媒体と、該磁気記録媒体に書き込むための記録磁界を発生する記録磁極と高周波磁界を発生する高周波磁界発振素子とを少なくとも備えるマイクロ波アシスト磁気記録ヘッドと、磁気記録媒体から情報を読み取る磁気再生ヘッドと、前記磁気記録ヘッドの記録動作、前記磁気再生ヘッド再生動作を制御・処理する手段、および該高周波磁界発振器と該磁気記録媒体とのクリアランスを制御する手段とを備える磁気記憶装置において、記録時以外には前記高周波磁界発振素子を動作させない手段を有することを特徴とする磁気記憶装置。
【請求項2】
前記磁気記憶装置において、前記マイクロ波アシスト磁気記録ヘッドが、記録磁極と補助磁極を有し、かつこれらの間のギャップ部に高周波磁界発振素子を有することを特徴とする請求項1に記載の磁気記憶装置。
【請求項3】
請求項1ないし2に記載の磁気記憶装置において、少なくとも情報再生の主要時に、前記高周波磁界発振素子への通電を停止するか、もしくは動作時と逆極性の電流を通電することを特徴とする磁気記憶装置。
【請求項4】
前記磁気記憶装置において、装置の記録動作への切り替え時には、記録磁極への記録電流通電の開始よりも有限または0の所定の時間だけ前に前記高周波磁界発振素子への通電が開始していることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の磁気記憶装置。
【請求項5】
前記磁気記憶装置において、すくなくとも製造工程中に、前記高周波磁界発振器への通電と記録磁極への通電のタイミングを、該磁気記憶装置の所定の領域の記録再生特性を最適化する値に調整することを特徴とする請求項4に記載の磁気記憶装置。
【請求項6】
前記磁気記憶装置において、すくなくとも製造工程の記録動作時に、記録磁極への記録電流、高周波発振素子への動作電流、ならびにクリアランスのそれぞれの値を、該磁気記憶装置の所定の領域の記録再生特性が最適となるように調整することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の磁気記憶装置。
【請求項7】
前記磁気記憶装置において、磁気記憶装置の環境が変化した場合に前記高周波発振素子への通電のタイミングを再調整することを特徴とする請求項5および6のいずれかに記載の磁気記憶装置。
【請求項8】
前記磁気記憶装置において、前記記録再生特性が再生出力もしくはエラーレートであることを特徴とする請求項5から7のいずれかに記載の磁気記憶装置。
【請求項9】
前記磁気記憶装置において、磁気記録再生装置の環境変化が温度変化であることを特徴とする請求項7および8のいずれかに記載の磁気記憶装置。
【請求項10】
前記磁気記憶装置において、磁気記憶装置の環境変化が気圧変化であることを特徴とする請求項7および8のいずれかに記載の磁気記憶装置。
【請求項11】
前記磁気記憶装置において、前記磁気記録媒体の各記録ビッドがパターン化技術で形成されていることを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の磁気記憶装置。
【請求項12】
前記磁気記憶装置において、マイクロ波発振素子幅もしくは主磁極幅のいずれか狭い幅よりも更に小さな記録トラックピッチで磁気記録をおこなうことを特徴とする請求項1から11のいずれかに記載の磁気記憶装置。
【請求項13】
前記磁気記録再生装置において、マイクロ波発振素子幅もしくは主磁極幅のいずれか狭い幅の略1/2の記録トラックピッチで磁気記録をおこなうことを特徴とする請求項1から12のいずれかに記載の磁気記録再生装置。
【請求項14】
記録信号を供給する記録信号供給手段と、高周波磁界発振素子に駆動信号を供給する駆動制御手段とを少なくとも具備したヘッド駆動制御装置において、情報記録を指示するライトゲートの入力に応じて前記記録信号供給手段と前記高周波発振素子駆動制御手段の動作タイミングを切り替える駆動制御手段を具備することを特徴とするヘッド駆動制御装置。
【請求項15】
前記ヘッド駆動制御装置において、装置の記録動作への切り替え時には、記録磁極への記録電流通電の開始よりも有限または0の所定の時間だけ前に前記高周波磁界発振素子への通電を開始しする手段を有することを特徴とする請求項14に記載のヘッド駆動制御装置。
【請求項16】
前記高周波発振素子駆動制御手段は、正、負の極性を切り換える駆動手段を含むことを特徴とする請求項15に記載のヘッド駆動制御装置。
【請求項17】
前記高周波発振素子駆動制御手段は、オーバシュート量を調整する駆動手段を含むことを特徴とする請求項15及び16のいずれかに記載のヘッド駆動制御装置。
【請求項18】
高周波磁界発振器と該磁気記録媒体とのクリアランスを制御する手段を具備することを特徴とする請求項15から17のいずれかに記載のヘッド駆動制御装置。
【請求項19】
少なくとも前記高周波磁界発振素子駆動信号の値、オーバシュート量の値、前記記録信号供給信号の値、これらの動作タイミングの値を保持するレジスタを有することを特徴とする請求項15から18のいずれかに記載のヘッド駆動制御装置。
【請求項20】
高周波発振素子を有する磁気ヘッドを含む磁気記憶装置に適用するヘッド駆動制御方法であって、情報記録時に、前記磁気ヘッドに対して記録信号を供給する処理と、前記情報の記録を指示するライトゲートの入力に応じて、記録時以外には前記高周波磁界発振素子の動作を停止させる処理を有することを特徴とするヘッド駆動制御方法。
【請求項21】
請求項20に記載のヘッド駆動制御方法において、装置の記録動作への切り替え時には、記録磁極への記録電流通電の開始よりも有限または0の所定の時間だけ前に前記高周波磁界発振素子への通電が開始する処理を有することを特徴とするヘッド駆動制御方法。
【請求項22】
磁気記録媒体と、該磁気記録媒体に書き込むための記録磁界を発生する記録磁極と高周波磁界を発生する高周波磁界発振素子とを少なくとも備えるマイクロ波アシスト磁気記録ヘッドと、磁気記録媒体から情報を読み取る磁気再生ヘッドと、前記磁気記録ヘッドの記録動作、前記磁気再生ヘッド再生動作を制御・処理する手段、および該高周波磁界発振器と該磁気記録媒体とのクリアランスを制御するクリアランス制御手段とを備える磁気記憶装置を制御するためのパラメータを、磁気記憶装置の製造工程において決定する方法において、
前記記録磁界を発生させるための第1の電流の値と前記高周波磁界を発生させるための第2の電流の値の組合せを変えて前記磁気記録媒体に記録再生を行なって、高い記録再生特性が得られる前記第1及び第2の電流の値の組合せを決定する第1のステップ、
前記クリアランス制御手段によって前記クリアランスが所定の値になるまで変えながら、前記第1のステップで決定した前記第1及び第2の電流の値を可変して前記磁気記録媒体に記録再生を行なって、高い記録再生特性が得られる、前記第1及び第2の電流の値の組合せを決定する第2のステップ、
前記第2のステップで決定した前記第1及び第2の電流の値によって前記磁気記録媒体に記録再生を行なう際に、前記第2の電流の電流波形と通電時のタイミングを変えることによって、高い記録再生特性が得られる前記電流波形と前記通電タイミングとの組合せを決定する第3のステップと、
を有することを特徴とする磁気記憶装置を制御するためのパラメータの決定方法。
【請求項23】
磁気記録媒体と、該磁気記録媒体に書き込むための記録磁界を発生する記録磁極と高周波磁界を発生する高周波磁界発振素子とを少なくとも備えるマイクロ波アシスト磁気記録ヘッドと、磁気記録媒体から情報を読み取る磁気再生ヘッドと、前記磁気記録ヘッドの記録動作、前記磁気再生ヘッド再生動作を制御・処理する手段、および該高周波磁界発振器と該磁気記録媒体とのクリアランスを制御するクリアランス制御手段とを備える磁気記憶装置を制御するためのパラメータを、磁気記憶装置の製造工程において決定する方法において、
前記記録磁界を発生させるための第1の電流の所定の値と前記高周波磁界を発生させるための第2の電流の所定の値によって前記磁気記録媒体に記録再生を行なって、高い記録再生特性が得られる、非記録動作時に通電する前記第2の電流の値をアシスト効果抑制電流の値を決定する第1のステップ、
前記第1の電流の値と前記第2の電流の値の組合せを変えて前記磁気記録媒体に記録再生を行なって、高い記録再生特性が得られる前記第1及び第2の電流の値の組合せを決定する第2のステップ、
前記クリアランス制御手段によって前記クリアランスが所定の値になるまで変えながら、前記第1のステップで決定した前記第1及び第2の電流の値を可変して前記磁気記録媒体に記録再生を行なって、高い記録再生特性が得られる、前記第1及び第2の電流の値の組合せを決定する第3のステップ、
を有することを特徴とする磁気記憶装置を制御するためのパラメータの決定方法。
【請求項24】
前記通電時のタイミングは、前記第1の電流の通電開始よりも前に前記第2の電流を通電開始する通電タイミングと、前記第1の電流の通電停止よりも後に前記第2の電流を通電停止する切断タイミングとを含むことを特徴とする請求項22記載の磁気記憶装置を制御するためのパラメータの決定方法。
【請求項25】
前記通電タイミング及び前記切断タイミングの少なくとも一方は、環境温度に応じて決定することを特徴とする請求項24記載の磁気記憶装置を制御するためのパラメータの決定方法。
【請求項1】
磁気記録媒体と、該磁気記録媒体に書き込むための記録磁界を発生する記録磁極と高周波磁界を発生する高周波磁界発振素子とを少なくとも備えるマイクロ波アシスト磁気記録ヘッドと、磁気記録媒体から情報を読み取る磁気再生ヘッドと、前記磁気記録ヘッドの記録動作、前記磁気再生ヘッド再生動作を制御・処理する手段、および該高周波磁界発振器と該磁気記録媒体とのクリアランスを制御する手段とを備える磁気記憶装置において、記録時以外には前記高周波磁界発振素子を動作させない手段を有することを特徴とする磁気記憶装置。
【請求項2】
前記磁気記憶装置において、前記マイクロ波アシスト磁気記録ヘッドが、記録磁極と補助磁極を有し、かつこれらの間のギャップ部に高周波磁界発振素子を有することを特徴とする請求項1に記載の磁気記憶装置。
【請求項3】
請求項1ないし2に記載の磁気記憶装置において、少なくとも情報再生の主要時に、前記高周波磁界発振素子への通電を停止するか、もしくは動作時と逆極性の電流を通電することを特徴とする磁気記憶装置。
【請求項4】
前記磁気記憶装置において、装置の記録動作への切り替え時には、記録磁極への記録電流通電の開始よりも有限または0の所定の時間だけ前に前記高周波磁界発振素子への通電が開始していることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の磁気記憶装置。
【請求項5】
前記磁気記憶装置において、すくなくとも製造工程中に、前記高周波磁界発振器への通電と記録磁極への通電のタイミングを、該磁気記憶装置の所定の領域の記録再生特性を最適化する値に調整することを特徴とする請求項4に記載の磁気記憶装置。
【請求項6】
前記磁気記憶装置において、すくなくとも製造工程の記録動作時に、記録磁極への記録電流、高周波発振素子への動作電流、ならびにクリアランスのそれぞれの値を、該磁気記憶装置の所定の領域の記録再生特性が最適となるように調整することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の磁気記憶装置。
【請求項7】
前記磁気記憶装置において、磁気記憶装置の環境が変化した場合に前記高周波発振素子への通電のタイミングを再調整することを特徴とする請求項5および6のいずれかに記載の磁気記憶装置。
【請求項8】
前記磁気記憶装置において、前記記録再生特性が再生出力もしくはエラーレートであることを特徴とする請求項5から7のいずれかに記載の磁気記憶装置。
【請求項9】
前記磁気記憶装置において、磁気記録再生装置の環境変化が温度変化であることを特徴とする請求項7および8のいずれかに記載の磁気記憶装置。
【請求項10】
前記磁気記憶装置において、磁気記憶装置の環境変化が気圧変化であることを特徴とする請求項7および8のいずれかに記載の磁気記憶装置。
【請求項11】
前記磁気記憶装置において、前記磁気記録媒体の各記録ビッドがパターン化技術で形成されていることを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の磁気記憶装置。
【請求項12】
前記磁気記憶装置において、マイクロ波発振素子幅もしくは主磁極幅のいずれか狭い幅よりも更に小さな記録トラックピッチで磁気記録をおこなうことを特徴とする請求項1から11のいずれかに記載の磁気記憶装置。
【請求項13】
前記磁気記録再生装置において、マイクロ波発振素子幅もしくは主磁極幅のいずれか狭い幅の略1/2の記録トラックピッチで磁気記録をおこなうことを特徴とする請求項1から12のいずれかに記載の磁気記録再生装置。
【請求項14】
記録信号を供給する記録信号供給手段と、高周波磁界発振素子に駆動信号を供給する駆動制御手段とを少なくとも具備したヘッド駆動制御装置において、情報記録を指示するライトゲートの入力に応じて前記記録信号供給手段と前記高周波発振素子駆動制御手段の動作タイミングを切り替える駆動制御手段を具備することを特徴とするヘッド駆動制御装置。
【請求項15】
前記ヘッド駆動制御装置において、装置の記録動作への切り替え時には、記録磁極への記録電流通電の開始よりも有限または0の所定の時間だけ前に前記高周波磁界発振素子への通電を開始しする手段を有することを特徴とする請求項14に記載のヘッド駆動制御装置。
【請求項16】
前記高周波発振素子駆動制御手段は、正、負の極性を切り換える駆動手段を含むことを特徴とする請求項15に記載のヘッド駆動制御装置。
【請求項17】
前記高周波発振素子駆動制御手段は、オーバシュート量を調整する駆動手段を含むことを特徴とする請求項15及び16のいずれかに記載のヘッド駆動制御装置。
【請求項18】
高周波磁界発振器と該磁気記録媒体とのクリアランスを制御する手段を具備することを特徴とする請求項15から17のいずれかに記載のヘッド駆動制御装置。
【請求項19】
少なくとも前記高周波磁界発振素子駆動信号の値、オーバシュート量の値、前記記録信号供給信号の値、これらの動作タイミングの値を保持するレジスタを有することを特徴とする請求項15から18のいずれかに記載のヘッド駆動制御装置。
【請求項20】
高周波発振素子を有する磁気ヘッドを含む磁気記憶装置に適用するヘッド駆動制御方法であって、情報記録時に、前記磁気ヘッドに対して記録信号を供給する処理と、前記情報の記録を指示するライトゲートの入力に応じて、記録時以外には前記高周波磁界発振素子の動作を停止させる処理を有することを特徴とするヘッド駆動制御方法。
【請求項21】
請求項20に記載のヘッド駆動制御方法において、装置の記録動作への切り替え時には、記録磁極への記録電流通電の開始よりも有限または0の所定の時間だけ前に前記高周波磁界発振素子への通電が開始する処理を有することを特徴とするヘッド駆動制御方法。
【請求項22】
磁気記録媒体と、該磁気記録媒体に書き込むための記録磁界を発生する記録磁極と高周波磁界を発生する高周波磁界発振素子とを少なくとも備えるマイクロ波アシスト磁気記録ヘッドと、磁気記録媒体から情報を読み取る磁気再生ヘッドと、前記磁気記録ヘッドの記録動作、前記磁気再生ヘッド再生動作を制御・処理する手段、および該高周波磁界発振器と該磁気記録媒体とのクリアランスを制御するクリアランス制御手段とを備える磁気記憶装置を制御するためのパラメータを、磁気記憶装置の製造工程において決定する方法において、
前記記録磁界を発生させるための第1の電流の値と前記高周波磁界を発生させるための第2の電流の値の組合せを変えて前記磁気記録媒体に記録再生を行なって、高い記録再生特性が得られる前記第1及び第2の電流の値の組合せを決定する第1のステップ、
前記クリアランス制御手段によって前記クリアランスが所定の値になるまで変えながら、前記第1のステップで決定した前記第1及び第2の電流の値を可変して前記磁気記録媒体に記録再生を行なって、高い記録再生特性が得られる、前記第1及び第2の電流の値の組合せを決定する第2のステップ、
前記第2のステップで決定した前記第1及び第2の電流の値によって前記磁気記録媒体に記録再生を行なう際に、前記第2の電流の電流波形と通電時のタイミングを変えることによって、高い記録再生特性が得られる前記電流波形と前記通電タイミングとの組合せを決定する第3のステップと、
を有することを特徴とする磁気記憶装置を制御するためのパラメータの決定方法。
【請求項23】
磁気記録媒体と、該磁気記録媒体に書き込むための記録磁界を発生する記録磁極と高周波磁界を発生する高周波磁界発振素子とを少なくとも備えるマイクロ波アシスト磁気記録ヘッドと、磁気記録媒体から情報を読み取る磁気再生ヘッドと、前記磁気記録ヘッドの記録動作、前記磁気再生ヘッド再生動作を制御・処理する手段、および該高周波磁界発振器と該磁気記録媒体とのクリアランスを制御するクリアランス制御手段とを備える磁気記憶装置を制御するためのパラメータを、磁気記憶装置の製造工程において決定する方法において、
前記記録磁界を発生させるための第1の電流の所定の値と前記高周波磁界を発生させるための第2の電流の所定の値によって前記磁気記録媒体に記録再生を行なって、高い記録再生特性が得られる、非記録動作時に通電する前記第2の電流の値をアシスト効果抑制電流の値を決定する第1のステップ、
前記第1の電流の値と前記第2の電流の値の組合せを変えて前記磁気記録媒体に記録再生を行なって、高い記録再生特性が得られる前記第1及び第2の電流の値の組合せを決定する第2のステップ、
前記クリアランス制御手段によって前記クリアランスが所定の値になるまで変えながら、前記第1のステップで決定した前記第1及び第2の電流の値を可変して前記磁気記録媒体に記録再生を行なって、高い記録再生特性が得られる、前記第1及び第2の電流の値の組合せを決定する第3のステップ、
を有することを特徴とする磁気記憶装置を制御するためのパラメータの決定方法。
【請求項24】
前記通電時のタイミングは、前記第1の電流の通電開始よりも前に前記第2の電流を通電開始する通電タイミングと、前記第1の電流の通電停止よりも後に前記第2の電流を通電停止する切断タイミングとを含むことを特徴とする請求項22記載の磁気記憶装置を制御するためのパラメータの決定方法。
【請求項25】
前記通電タイミング及び前記切断タイミングの少なくとも一方は、環境温度に応じて決定することを特徴とする請求項24記載の磁気記憶装置を制御するためのパラメータの決定方法。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図1B】
【図1C】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−73661(P2013−73661A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−213976(P2011−213976)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成20年度 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「超高密度ナノビット磁気記録技術の開発(グリーンITプロジェクト)」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成20年度 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「超高密度ナノビット磁気記録技術の開発(グリーンITプロジェクト)」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
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