説明

磁気記憶装置、及び磁気記憶プログラム、ならびに磁気記憶方法

【課題】磁気記憶媒体における異なるサーボライト方式によるサーボパターンに対して共通のファームウェアを用いて起動時間を短縮することができる磁気記憶装置、磁気記憶プログラム、磁気記憶方法を提供する。
【解決手段】 記憶媒体(磁気ディスク11)においてサーボライト方式が異なるサーボパターンが混在する記憶装置(磁気ディスク装置1)であって、記憶媒体のサーボパターンを読み込む読込部(磁気ヘッド15)と、読込部により読み込まれたサーボパターンに基づいて、サーボライト方式の特定を行う識別部(MCU21)と、識別部により特定されたサーボライト方式の情報を格納する格納部(バッファ24)と、サーボライト方式の情報に基づき、最適なサーボ制御方式を設定する設定部(MCU21)とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気記憶媒体のリードを行う磁気記憶装置、磁気記憶プログラム及び磁気記憶方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、サーボ情報の書き込み方式であるサーボライト方式(サーボパターン作成方法)が異なる磁気ディスク媒体が混在するHDD(Hard Disk Drive)等の磁気ディスク装置に対して、共通のプリント板、ファームウェアを搭載し、出荷前試験を行っている。なお、サーボ情報とは、磁気ヘッドを位置付ける位置決め制御を行うために使用される情報である。また、出荷前試験では、サーボライト方式を識別後、識別したサーボライト方式の結果を磁気ディスク媒体にあるシステム領域に格納する。このサーボライト方式の識別結果を使用することで共通化したファームウェアでサーボライト方式ごとに最適なパラメータを設定し共通化を行っており、その後、出荷の運びとなる。このような磁気ディスク装置において、起動直後は、サーボライト方式が未知であるため、システム領域を読み取るよりも前にサーボライト方式を識別し,最適なパラメータに設定することが必要である。従って従来では、システム領域を読み取るよりも前にサーボライト方式を識別する方法として、磁気ディスク媒体ロード時に、リトライ方式による総当り法を採用し、復調を正常に行えるまで、繰り返しサーボライト方式の識別を行っている。
【0003】
図20は、従来技術における、磁気ディスク装置の構成の一例を示すブロック図である。図20に示すように、磁気ディスク装置100は、磁気ディスク111と、SPM(SPindle Motor)112と、ヘッドアクチュエータ113と、VCM(Voice Coil Motor)114と、磁気ヘッド115と、ランプ116と、SPM駆動回路117と、VCM駆動回路118と、プリアンプ119と、RDC(Read Write Channel)120と、MCU(Micro Controller Unit)121と、不揮発領域122と、HDC(Hard Disk Controller)123と、バッファ124とを備える。なお、バッファ124には、後述するMCU121の動作により、サーボパターン識別のための変数であるサーボパターン識別値125が格納される。また、図20に示されているホスト200は、例えばATA(Advanced Technology Attachment)ホスト等の、磁気ディスク装置100へ所望の動作を行わせるコマンドを発行するものである。
【0004】
磁気ディスク111は、円盤状のアルミニウムやガラス基板等の物体に磁性層が形成されている記憶媒体であり、SPM112は、磁気ディスク111を回転駆動させるものである。ヘッドアクチュエータ113は、VCM114に設置され、先端に保持している磁気ヘッド115を支持するアームであり、VCM114は、このヘッドアクチュエータ113を駆動させるものである。また、磁気ヘッド115は、磁気ディスク111に格納されているデータの読み出し、書き込みを行うものであり、ランプ116は、磁気ディスク装置100が停止する際に、磁気ヘッド115が乗り上げて磁気ディスク111面上から退避するスロープを持つものである。
【0005】
また、SPM駆動回路117は、SPM112を回転駆動させるものであり、VCM駆動回路118は、VCM114を駆動させるものである。また、プリアンプ119は、磁気ヘッド115によって磁気ディスク111から読み出された信号及び磁気ディスク111へ書き込まれる信号を増幅するものである。また、RDC120は、磁気ディスク111に書き込まれる情報をエンコードし、磁気ディスク111から読み取られる信号をデコードするものである。
【0006】
また、MCU121は、装置内全てのデバイスの動作を制御するものであり、不揮発領域122はプログラムやデータ等が格納されている書き換え可能な不揮発性の記憶媒体である。HDC123は、磁気ディスク装置100とホスト200との間で送受信されるデータの誤りを訂正するものであり、バッファ124は、HDC123、ホスト200間で行われるデータ送受信時に生じるデータ入出力処理のタイミングのずれを補うため、 データを一時的に保持する揮発性の記憶領域である。
【0007】
次に、従来技術における磁気ディスク装置の動作について説明する。
【0008】
図21は、従来技術における、磁気ディスク装置の起動処理の一例を示すフローチャートである。
【0009】
まず、ユーザにより磁気ディスク装置100の電源が投入されると(S301)、MCU121は、SPM駆動回路117によりSPM112を回転駆動させ(S302)、磁気ディスク111を回転させる。SPM112回転後、MCU121は、不揮発領域122に格納されているサーボパターン識別値125をデフォルトでバッファ124にセットし(S303)、ロードを行うためのデフォルトのサーボライト方式のパラメータをセットする(S304)。デフォルトのパラメータセット後、MCU121は、磁気ディスク111のロードを開始し(S305)、ロードが正常に終了したかの判断を行う(S306)。なお、ロードが正常に終了したかの判断基準は、復調が行えたか否かである。
【0010】
ロードが正常に終了した場合(S306,YES)、MCU121は、磁気ディスク111上にあるシステム領域へ、磁気ヘッド115をシークし(S307)、システム領域のリードを行い(S308)、リードが成功したか否かの判断を行う(S309)。リードが成功した場合(S309,YES)、MCU121は、磁気ディスク111内のシステム領域にある正式なサーボパターン識別値をバッファにセットし(S310)、本フローは終了となる。
【0011】
一方、磁気ディスク111のロードが正常に終了しなかった場合(S306,NO)、MCU121は、アンロードを行い(S311)、別のサーボライト方式のパラメータをセットし(S312)、再度ロードを行う(S305)。なお、ロードが可能となるまで総当り法にて上述した処理を繰り返し行う。また、ステップS309において、システム領域のリードができない場合(S309,NO)、MCU121は、リトライ用のパラメータをセットし(S313)、再度システム領域のリードを行う(S308)。このように、システム領域のリードが成功するまで上述した処理が繰り返される。
【0012】
なお、サーボライト方式の従来技術として、サーボライト専用の装置で、複数枚の媒体を同時にサーボライトする方式である単板STW(Servo Track Writer)が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、マスタと呼ばれるサーボ情報のサーボパターンの雛型をスレーブ媒体に接触させて磁界を印加し、サーボパターンを形成する方式である磁気転写方式が知られている(例えば、特許文献2参照)。なお、磁気転写では、サーボパターン境界にダミーパターンを設けることで、サーボ部におけるマスタとスレーブ媒体との密着性を高める技術が知られている(例えば、特許文献3参照)。また、サーボパターンを識別する従来技術として、同一媒体に形成された複数のサーボパターンから、ヘッド特性に都合のよいパターンを選択する技術が知られている(例えば、特許文献4参照)。また、STWされた装置を識別する従来技術として、特定のエリアを設ける技術が知られている(例えば、特許文献5参照)。
【特許文献1】特開2000−21104号公報
【特許文献2】特開昭57−24032号公報
【特許文献3】特開2005−038580号公報
【特許文献4】特開2006−147104号公報
【特許文献5】特開2006−221771号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上述したような、システム領域を読み取る前にサーボライト方式を識別する方法である総当り法は、サーボライト方式を特定せずパラメータ設定によりロードを可能とする方式のため、オントラック品質に影響が出るという問題や、起動時間が増大するという問題がある。また、サーボ振幅とデータ部の振幅の差が生じるため、磁気転写のようなサーボ振幅が小さめのサーボライト方式では、プリアンプゲインを高めに設定するためにデータ部で入力過大となり、システム領域のリードができないという不都合が生じる。なお、システム領域を媒体上へ格納する方法に対し、システム領域をフラッシュROM(Read Only Memory)等の記憶装置に格納する方法の場合、総当り法を用いずにサーボライト方式を識別できるが、その分、コストがかかるという問題がある。また、出荷前試験において、ファームウェアを共通化せず、サーボライト方式ごとに個別のファームウェアおよび検査用テストプログラムを使用して試験を行う方法は、サーボライト方式ごとに磁気ディスク装置の制御プログラムを別々に用意しなければならず、コストがかかるという問題がある。
【0014】
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、磁気記憶媒体における異なるサーボライト方式によるサーボパターンに対して共通のファームウェアを用いて起動時間を短縮することができる磁気記憶装置、磁気記憶プログラム及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上述した課題を解決するため、磁気記憶装置は、記憶媒体においてサーボライト方式が異なるサーボパターンが混在する記憶装置であって、前記記憶媒体のサーボパターンを読み込む読込部と、前記読込部により読み込まれたサーボパターンに基づいて、サーボライト方式の特定を行う識別部と、前記識別部により特定されたサーボライト方式の情報を格納する格納部と、前記サーボライト方式の情報に基づき、最適なサーボ制御方式を設定する設定部とを備える。
【0016】
また、磁気記憶プログラムは、記憶媒体においてサーボライト方式が異なるサーボパターンが混在する記憶装置のプログラムであって、前記記憶媒体のサーボパターンを読み込む読込ステップと、前記読込ステップにより読み込まれたサーボパターンに基づいて、サーボライト方式の特定を行う識別ステップと、前記識別ステップにより特定されたサーボライト方式の情報を格納する格納ステップと、前記サーボライト方式の情報に基づき、最適なサーボ制御方式を設定する設定ステップとをコンピュータに実行させる。
【0017】
また、磁気記憶方法は、記憶媒体においてサーボライト方式が異なるサーボパターンが混在する記憶装置の方法であって、前記記憶媒体のサーボパターンを読み込む読込ステップと、前記読込ステップにより読み込まれたサーボパターンに基づいて、サーボライト方式の特定を行う識別ステップと、前記識別ステップにより特定されたサーボライト方式の情報を格納する格納ステップと、前記サーボライト方式の情報に基づき、最適なサーボ制御方式を設定する設定ステップとを備える。
【発明の効果】
【0018】
開示の磁気記憶装置、磁気記憶プログラム及び方法によれば、磁気記憶媒体における異なるサーボライト方式によるサーボパターンに対して共通のファームウェアを用いて起動時間の短縮が可能となるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
【0020】
(前提技術)
まず、実施の形態の一例を説明する前に、実施の形態の一例の前提である、磁気ディスク装置に対する出荷前試験について説明する。
【0021】
磁気ディスク装置を組み立て後、試験設備において磁気ディスク装置のファームウェアのダウンロードと、テストプログラムによる出荷前試験とが行われる。なお、ここでダウンロードとは、磁気ディスク装置上のMCUで動作するプログラムを磁気ディスク装置上の不揮発領域(Flashメモリ、媒体のシステム領域等)に書き込みを行うことを示す。また、テストプログラムは、磁気ディスク装置のキャリブレーションおよびライト、リード試験等を行うものである。
【0022】
上述したテストプログラムによる出荷前試験は、ATA等のホストから装置に対して、コマンドを発行し、所望の動作を行う試験である。磁気ディスク媒体がどのサーボライト方式であるかは試験設備により管理されており、所定のキャリブレーションの実施後、磁気ディスク媒体上のシステム領域にサーボライト方式の識別値が格納されるものとする。なお、同一の磁気ディスク装置内で、単板STWと磁気転写が混在していても問題がないよう、磁気ディスク媒体ごとにサーボライト方式の識別値を格納することが望ましい。また、サーボライト方式の識別を装置自身が行っても構わないが、その際は誤判定を避けるため、媒体両面で同じ識別結果が得られない場合は不良とすることが望ましい。
【0023】
実施の形態1.
次に、本実施の形態に係る磁気記憶装置の構成について説明する。図1は、実施の形態1に係る磁気ディスク装置の構成の一例を示すブロック図である。
【0024】
図1に示すように、磁気ディスク装置1は、磁気ディスク11と、SPM12と、ヘッドアクチュエータ13と、VCM14と、磁気ヘッド15(読込部,システム領域読込部)と、ランプ16と、SPM駆動回路17と、VCM駆動回路18と、プリアンプ19と、RDC20と、MCU21(識別部,設定部,
書換部)と、不揮発領域22と、HDC23と、バッファ24(格納部)とを備える。なお、バッファ24には、後述するMCU21の動作により、サーボパターン識別のための変数であるサーボパターン識別値25が格納される。また、図1に示されているホスト2は、例えばATAホスト等の、磁気ディスク装置1へ所望の動作を行わせるコマンドを発行するものである。
【0025】
磁気ディスク11は、円盤状のアルミニウムやガラス基板等の物体に磁性層が形成されている記憶媒体であり、SPM12は、磁気ディスク11を回転駆動させるものである。ヘッドアクチュエータ13は、VCM14に設置され、先端に保持している磁気ヘッド15を支持するアームであり、VCM14は、このヘッドアクチュエータ13を駆動させるものである。また、磁気ヘッド15は、磁気ディスク11に格納されているデータの読み出し、書き込みを行うものであり、ランプ16は、磁気ディスク装置1が停止する際に、磁気ヘッド15が乗り上げて磁気ディスク11面上から退避するスロープを持つものである。
【0026】
また、SPM駆動回路17は、SPM12を回転駆動させるものであり、VCM駆動回路18は、VCM14を駆動させるものである。また、プリアンプ19は、磁気ヘッド15によって磁気ディスク11から読み出された信号及び磁気ディスク11への書き込まれる信号を増幅するものである。また、RDC20は、磁気ディスク11に書き込まれる情報をエンコードし、磁気ディスク11から読み取られた信号をデコードするものである。
【0027】
また、MCU21は、装置内全てのデバイスの動作を制御するものであり、不揮発領域22はプログラムやデータ等が格納されている書き換え可能な不揮発性の記憶媒体である。また、HDC23は、磁気ディスク装置1とホスト2との間で送受信されるデータの誤りを訂正するものであり、バッファ24は、HDC23、ホスト2間で行われるデータ送受信時に生じるデータ入出力処理のタイミングのずれを補うため、データを一時的に保持する記憶領域である。
【0028】
なお、本実施の形態における磁気ディスク装置1は、サーボライト方式によらず、共通のファームウェアを搭載し、磁気ディスク11のサーボマーク及び基準トラック番号は同一であるものとする。
【0029】
次に、本実施の形態に係る磁気ディスク装置の動作について説明する。図2は、実施の形態1に係る磁気ディスク装置の起動処理の一例を示すフローチャートである。
【0030】
まず、ユーザにより磁気ディスク装置1の電源が投入されると(S101)、MCU21は、SPM駆動回路17によりSPM12を回転駆動させ(S102)、磁気ディスク11を回転させる。SPM12回転後、MCU21は、不揮発領域22に格納されているサーボパターン識別値25をデフォルトでバッファ24にセットし(S103)、ロードを行うためのデフォルトのサーボライト方式のパラメータをセットする(S104)。デフォルトのパラメータセット後、MCU21は、磁気ディスク11のロードを開始し(S105)、サーボライト方式の仮識別処理を行う(S106,読込ステップ,識別ステップ)。
【0031】
ここで、仮識別処理について説明する。仮識別処理は、MCU21が、磁気ディスク11のロード中に一定区間の各サンプルにおけるサーボAGC(Automatic Gain Control)の値を収集し、その平均値及び分散値を算出し、算出したサーボAGCの平均値と分散値に基づいて算出した指標xと閾値x0との対比により、サーボライト方式の判定を行うものである。なお、指標は、次式により算出する。
【0032】
x=σ2/μ
なお、この式において、σ2は、サーボAGCの分散値、μはサーボAGCをそれぞれ示す。
【0033】
MCU21は、上述した式により算出された指標xが、閾値x0を上回る場合を単板STWと判定し,それ以外を磁気転写と判定する。なお、磁気転写において、プリアンブルの磁化パターンは半径方向で連続であるため、どの位置でもサーボ振幅に大差はなく、サーボAGC値もばらつかない。しかしながら、単板STWでは、サイドイレーズにより、書き継ぎ位置においてはサーボ振幅は小さくなるが、非書き継ぎ位置においては大きくなるため、ロード中のサーボAGC値はばらつく。よって、指標xの値により、単板STWか磁気転写かの判定ができる。また、x0の範囲は、概ね0.5〜0.10とすることが望ましい。なお、上述した判定方法以外に、サーボAGCの平均値及び最大値、最小値でサーボライト方式を判定しても構わない。
【0034】
上述したような、サーボパターンの仮識別処理後、MCU21は、サーボパターン識別値25に仮識別処理(S106)にて判断されたサーボライト方式の結果を示す値をサーボライト識別値25にセットし(S107,格納ステップ)、この識別値に応じた最適なパラメータ(サーボ制御方式)をセットする(S108,設定ステップ)。なお、セットするパラメータについては、後述にて詳細を説明する。
【0035】
パラメータ設定後、MCU21は、ロードが正常に終了したかの判断を行う(S109)。なお、ロードが正常に終了したかの判断基準は、復調が行えたか否かである。下記に上述した仮識別処理のタイミングをチャートにて説明する。
【0036】
図3は、本実施の形態に係る、仮識別処理の一例を示すタイミングチャートである。図3に示すように、MCU21は、ロード開始と共に磁気ヘッド15をランプ16から離すために振り出し電流を印加する。次に、MCU21は、VCM電流を安定させ、サーボ検出を行う。なお、サーボ検出のタイミングは、磁気ヘッド15がランプ端を過ぎてからとなる。MCU21は、サーボ検出と同時に仮識別処理としてサーボAGCを取得し、取得したサーボAGCよりサーボライト方式を仮識別し、仮識別後にパラメータ設定、復調を行い、復調の成功によりロードを完了する。なお、MCU21は、VCM14のロード開始からサーボ検出開始までの駆動においては逆起電力による等速制御を行い、サーボ検出から仮識別完了までの駆動においてはサーボ位置による等速制御を行う。また、VCM電流はパラメータ設定中に低下するものである。
【0037】
ロードが正常に終了した場合(S109,YES)、MCU21は、磁気ディスク11上にあるシステム領域へ、磁気ヘッド15をシークし(S110)、システム領域のリードを行い(S111,システム領域読込ステップ)、リードが成功したか否かの判断を行う(S112)。リードが成功した場合(S112,YES)、MCU21は、磁気ディスク11上のシステム領域にある正式なサーボパターン識別値を、バッファ24に格納されているサーボパターン識別値25へ上書きし(S113,書換ステップ)、本フローは終了となる。なお、上書きは、仮識別にて誤検出した場合、装置動作に支障をきたすことを防止するために行われる。
【0038】
一方、ステップS109において、磁気ディスク11のロードが外的要因等により正常に終了しなかった場合(S109,NO)、MCU21は、磁気ディスク11からアンロードを行い(S114)、再度ロードを行う(S105)。なお、磁気ディスク11のロードが正常に終了するまで上述した処理を繰り返す。また、ステップS112において、システム領域のリードができない場合(S112,NO)、MCU21は、リトライ用のパラメータをセットし(S115)、再度システム領域のリードを行い(S111)、システム領域のリードが成功するまで上述した処理を繰り返す。
【0039】
次に、上述にて説明したステップS108において、サーボパターン識別値25へセットするパラメータの例として、偏心補正フィードフォワード、ヘッドチェンジシーク方式、リードチャネルの対称性補正を、図を用いて説明する。
【0040】
まず、図4〜図6を参照し、サーボライト方式ごとに、トラック追従時の補正方法について説明する。図4は、実施の形態1に係る、各サーボライト方式の偏心補正ゾーン(Zone)とトラック(Track)番号の相関図である。図5は、本実施の形態に係る、各サーボライト方式のサーボ制御の特徴を表わした図である。単板STW及び磁気転写は偏心が大きいため、1次偏心を補正する必要があり、さらに、1次以外の偏心成分を繰り返し補正によって圧縮する必要がある。その際、半径位置ごとに偏心成分が異なるため、図4に示すように、単板STWは、トラック(Track)番号が内周にいくにつれ細かくなることから、内周で細かくゾーン(Zone)幅を設定し、磁気転写は、内外周で細かくゾーン幅を設定する必要がある。よって図5に示すようなサーボ制御が必要となる。また、隣接トラックに共通した偏心成分を、RDC20によるフィードフォワード(Feed Forward)制御により、取り除くことが必要である。
【0041】
次に、偏心補正フィードフォワードについて説明する。図6は,本実施の形態に係る、偏心補正を行うリードチャネルの一例を示すサーボブロックの図である。図6に示すように、RDC20は、差分器20aと、フィードバック制御を行うController20bと、FeedForward20cと、加算器20dと、Plant20eと、加算器20fと、磁気転写用の偏心補正テーブル20gと、単板STW用の偏心補正テーブル20hとを有する。なお、偏心補正テーブル20g及び20hは、可変の偏心補正量を記憶するものである。
【0042】
差分器20aは、目標トラックxと、Plant20eから出力された現在の復調位置に加算器20fにてRROを加算した結果の復調位置yとの入力を受け付け、復調位置yの符号を反転させた値をxに加算し、この加算結果zをContorller20bへ受け渡すものである。すなわち、加算結果zは、目標トラックxと加算器20fから出力された復調位置yとの差分である。なお、RROについては後述にて説明する。
【0043】
上述の加算結果zを受け付けたController20bは、加算結果zに基づいて、目標トラックxと加算器20fから出力された復調位置yとの差分を補正するフィードバック制御信号Uを、加算器20dへ入力する。さらに、FeedForward20cは、仮識別にて識別されたサーボライト方式に基づく偏心補正テーブル(磁気転写用偏心補正テーブル20gまたは単板STW用偏心補正テーブル20h)から偏心補正量ΔUを読み取り、加算器20dへ入力する。加算器20dは、Controller20bからの出力Uと、FeedForward20cからの出力ΔUとを加算し、加算結果(U+ΔU)を、Plant20eへ入力する。
【0044】
Plant20eは、フィードバック制御信号(U+ΔU)の入力を受け、ヘッドアクチュエータ13およびその先端に取り付けられている磁気ヘッド15をフィードバック制御信号(U+ΔU)に基づいて移動制御する。また、Plant20eは、上述したフィードバック制御において、磁気ヘッド15を介して読み出され、復調された復調位置にRROの影響を加味した復調位置yを差分器20aへ入力する。上述したフィードバック制御による偏心補正である偏心補正フィードフォワードが行われることにより、磁気ヘッド15を目標位置に位置付けることが可能となる。
【0045】
次に、図7及び図8を参照し、ヘッドチェンジシーク方式について説明する。図7は、サーボライト方式ごとに異なるヘッドチェンジシークの選択内容を示す図である。図7に示すように、シーク前の磁気ディスク媒体と、シーク後の磁気ディスク媒体の偏心が同一である場合(単板STWの同一媒体シークに相当)以外は、高速なヘッドシーク制御ではエラーが発生する可能性が高くなるため、通常速度のヘッドシーク制御が行われる。なお、一般に、磁気ディスク装置は、複数の磁気ディスクを、一定間隔をおいて積み重ねて構成されるものである。以降、異なる媒体へのヘッドチェンジシークを「異媒体シーク」、同一媒体へのヘッドチェンジシークを「同一媒体シーク」と呼称する。
【0046】
次に、シーク方式選択処理について説明する。図8は、シーク方式選択処理手順の一例を示すフローチャートである。図8に示すように、先ず、MCU21は、サーボパターン識別値25に基づいてサーボライト方式識別結果を取得し(S201)、位置付け目標とする磁気ヘッドが、現在位置付けられている磁気ヘッドと同一の磁気ヘッドであるか否かを判定する(S202)。位置付け目標とする磁気ヘッドが、現在位置付けられている磁気ヘッドと同一の磁気ヘッドであると判定された場合(S202,YES)、ヘッドチェンジシーク方式として、高速シークを選択し(S203)、本フローは終了となる。
【0047】
一方、位置付け目標とする磁気ヘッドが、現在位置付けられている磁気ヘッドと同一の磁気ヘッドでないと判定された場合(S202,NO)、MCU21は、目標とする磁気ディスクが、現在磁気ヘッドが位置付けられている磁気ディスクと同一の磁気ディスクであるか否かを判定する(S204)。目標とする磁気ディスクは、現在磁気ヘッドが位置付けられている磁気ディスクと同一の磁気ディスクであると判定された場合(S204,YES)、MCU21は、サーボライト方式識別結果に基づき、サーボライト方式は『磁気転写』方式であるか否かを判定する(S205)。サーボライト方式が磁気転写でなかった場合(S205,NO)、S203へ移行する。サーボライト方式が磁気転写であった場合(S205,YES)、MCU21は、ヘッドチェンジシーク方式として、通常シークを選択し(S206)、本フローは終了となる。
【0048】
また、ステップS204において、目標とする磁気ディスクは、現在磁気ヘッドが位置付けられている磁気ディスクと同一の磁気ディスクでないと判定された場合(S204,NO)、MCU21は、サーボライト方式識別結果に基づき、サーボライト方式は、単板STWであるか否かを判定する(S207)。サーボライト方式が、単板STWであると判定された場合(S207,YES)、ステップS206へ移行し、本フローは終了となる。また、サーボライト方式が、単板STWでないと判定された場合(S207,NO)、MCU21は、サーボライト方式が判定できないため、HDC23を介して、ホスト2へ、エラー通知を出力し(S208)、本フローは終了となる。
【0049】
次に、図9〜図12を参照し、サーボパターン読み取り信号の補正について説明する。図9は、磁気ディスクからの読み取り信号が対称である場合の波形の一例を示す図である。また、図10は、磁気ディスクからの読み取り信号が非対称である場合の波形の一例を示す図である。図9に示すように、単板STWにみられる磁気ディスクからの読み取り信号の出力変動は、横軸に関して上下に対称であり、これは読み取り信号が良好な状態を示している。しかしながら、図10に示すように、磁気転写にみられる磁気ディスクからの読み取り信号の出力変動は、横軸に関して上下いずれかに偏っているために非対称であり、読み取り信号が良好でない。これは、初期化方向の磁化の磁力が、飽和記録に対して転写方向に不足している場合に散見される。
【0050】
次に、読み取り信号の非対称性を補正するリードチャネルの構成を説明する。図11は、読み取り信号から直流成分を除去するRDCの構成の一例を示すブロック図である。図11に示す通り、RDC20は、加算器20jと、DC Offset部20kと、VGA(Variable Gain Amplifier)部20lと、可変EQ(Equalizer)20mと、ADC(Analog Digital Converter)20nと、AGC Gainを記憶するRegister(レジスタ)部20oと、FIR(Finite Impulse Response)20pと、復調部20qと、PES演算部20rと、DFT回路20sと、対称性測定部20tとを有する。
【0051】
図10に示すように、磁気ディスクからの読み取り信号の出力変動が、横軸に関して非対称である場合には、磁気ディスクからの読み取り信号をVGA部20lに入力する前に、DCオフセットをフィードフォワードで入力しておくことで、復調エラーの発生確率を低減することが可能である。例えば、サーボライト方式が磁気転写の場合、MCU21は、AGC振幅を1とした場合は、DCオフセットキャンセル量を0.1と設定する。これは、磁気転写波形の立ち上がりと立下りの傾きが異なることに起因し、微分した後にDCオフセットキャンセル量を注入することで、最適化するためである。なお、DC Offset部20kによるDCオフセットのフィードフォワード処理を、対称性補正FF(Feed Forward)と呼ぶ。
【0052】
また、可変EQ20mの調整も、単板STW、磁気転写では、装置自身の磁気ヘッドでサーボライトされた波形ではないことに起因する周波数特性の違いが生ずるため、各々最適値に調整する必要がある。以降、この可変EQ20mの調整を、可変EQ調整と呼称する。また、FIR20pにおいて、MCU21が2タップのデジタルフィルタ(トランスバーサルフィルタ)係数を調整することで、波形を最適に調整することができる。例えば、サーボライト方式が単板STWの場合,MCU21は、2タップのデジタルフィルタ係数を(1,0.2)、磁気転写の場合、(1,−0.2)のように変更する。
【0053】
図12は、対称性補正FFおよび可変EQ調整の必要性の有無を、サーボライト方式ごとに示す図である。図12に示すように、単板STWでは、対称性補正FFは不要であるのに対し、磁気転写では、対称性補正FFは必要であり、可変EQ調整は何れも必要である。
【0054】
また、上述したパラメータ設定に伴い、MCU21は、プリアンプ19の仮ゲイン調整のためのサーボAGC値のスライスもサーボライト方式ごとに設定する。なお、プリアンプ19の仮ゲイン調整とは、出荷試験時に決定したゲインをリードする前の段階でオントラックし、システム領域をリードするために行うゲイン調整である。磁気ディスク11のサーボ部とデータ部では、振幅差が生じるため、どちらかが過大または過小にならないようなプリアンプゲインを設定する必要があり、そのため、MCU21は、サーボAGC値がある範囲に収まるように調整を行う。また、その範囲をサーボライト方式ごとに設定することが重要である。
【0055】
ここで、上述した処理により起動した磁気ディスク装置1の制御の一例として、RRO(Repeatable Run Out)非追従制御を説明する。なお、RRO非追従制御とは、サーボ帯域を超えたRRO成分にあえて追従させないことで、RPEおよびNRPE(Non−Repeatable Position Error)を低減する方式である。また、RRO成分とは、SPM12の回転の振動により発生する位置外乱である偏心の回転同期成分である。このようなRRO非追従制御においては、出荷前試験時に、個々のトラックにおいてRROを測定し、磁気ディスク11の記憶媒体上の一部に書き込んでおき、オントラックさせるときに読み出して使用する方式が一般的である。なお、RPEは、位置決め制御をおこなったときの位置誤差に含まれる磁気ディスク11の回転に同期した成分であり、NRPEは、位置決め制御を行ったときの位置誤差に含まれる磁気ディスク11の回転に同期しない(非同期)成分である。また、RROと、RPEとは異なるサーボライト方式で書き込まれたサーボパターンごとに異なる値を示す。
【0056】
上述したRRO非追従制御について詳細を説明する。図13は、RRO非追従制御を行うリードチャネルの一例を示すサーボブロックの図である。図13に示すように、RDC20は、差分器20aと、フィードバック制御を行うController20bと、Plant20eと、加算器20fと、磁気ディスク11上に記録したRROのテーブルであるRROテーブル20iとを有する。
【0057】
差分器20aは、目標トラックxと、RROテーブル20hからのRRO値sと、Plant20eから出力された現在の復調位置に加算器20fにてRROを加算した結果の復調位置y’との入力を受け付け、復調位置y’の符号を反転させた値をxに加算し、これらの加算結果z’をContorller20bへ受け渡す。すなわち、加算結果z’は、目標トラックxと、RRO値sと、加算器20fから出力された復調位置y’との差分である。なお、差分器20aにおいて、あらかじめRRO値sを足し込むことにより、RRO値sの影響を加算器20fの出力である復調位置y’から取り除き、RRO非追従を実現する。
【0058】
上述の加算結果を受け付けたController20bは、加算結果z’に基づいて、目標トラックxと加算器20fから出力された復調位置y’との差分を補正するフィードバック制御信号U’をPlant20eへ入力する。フィードバック制御信号U’の入力を受けたPlant20eは、ヘッドアクチュエータ13およびその先端に取り付けられている磁気ヘッド15をフィードバック制御信号U’に基づいて移動制御する。移動制御後、Plant20eは、フィードバック制御中において、磁気ヘッド15を介して読み出されて復調された復調位置にRROの影響を加味した復調位置y’を差分器20aへ出力する。上述したRRO非追従制御により、磁気ヘッド15を目標位置に位置付けることが可能となる。
【0059】
本実施の形態において、磁気ディスク装置を例にとり説明を行ったが、磁気記憶装置として、光ディスク媒体及び光ディスク装置、もしくは光磁気ディスク媒体及び光磁気ディスク装置等の記憶媒体及び記憶装置でも同様の効果を奏することは言うまでもない。
【0060】
本実施の形態によれば、磁気ヘッド15が磁気ディスク11にロードするタイミングでサーボライト方式の仮識別処理を行い、最適なパラメータを設定することにより、各サーボライト方式で共通のファームウェアを用いて、基準トラック番号を共通としても、起動時間の短縮及びリード品質の改善ができる。
【0061】
実施の形態2.
上述した実施の形態1では、サーボライト方式の仮識別処理をサーボAGC値に基づき算出した値により行ったが、磁気ディスク11のサーボ情報にあるバースト部(磁気転写におけるダミーバーストまたは単板STWにおける位置決め情報の後の信号部分)の代わりにサーボライト方式識別用の識別バーストを設けることで仮識別処理を行っても良い。以下、本実施の形態における実施の形態1とは異なる点について説明する。
【0062】
図14は、本実施の形態に係る、磁気ディスク媒体の表面にパターンニングされるサーボ情報の一例を示す概念図である。図14に示すように、磁気ディスク媒体3には、回転中心から半径方向に延びるサーボ情報が、複数のサーボパターンとして記録されている。このようなサーボパターンで記録されるサーボ情報は、複数のフレームを含み、1フレームは、サーボ部31とデータ部32とを含む。サーボ部31は、プリアンブル33、サーボマーク34、トラック番号35、位置決め情報36、識別バースト37(識別基準)を含む。なお、サーボマーク34は、例えば、二桁の16進数で表現され、当該フレームがサーボ情報のフレームであることを示す識別情報である。
【0063】
図15は、磁気ディスク媒体のデータ領域、識別領域の一例を示す概念図である。図15に示すように、磁気ディスク媒体3はデータ領域38と、識別領域39とで構成されており、識別領域39はロードアンロード領域であるためキズがつく恐れがあり、データ領域38として使用されない領域である。しかしながら、識別領域39におけるサーボが全滅する可能性は低いため、識別には使用可能である。
【0064】
図14、図15に示すように、本実施の形態では、サーボ部31に識別バースト37を設け、ロード中の識別領域39の識別バースト37を利用することにより、仮識別を行うものである。なお、識別バースト37は、データ領域38に作成しても構わないが、データフォーマット効率が低くなるため、データ領域38ではデータ部32として使用するのが望ましい。
【0065】
図16は、実施の形態2に係る、サーボデータの再生波形の一例を示す図である。磁気転写は、サーボ部31におけるマスタとスレーブ媒体の密着性を向上させるためにダミーバースト領域を設けるサーボライト方式であるため、このダミーバーストであるバースト部を識別バースト37として利用する。それに対し、単板STWは、識別バースト37は設けず、バースト部をACイレーズしておく。これにより、図16に示すように、磁気転写は識別バースト37があり、単板STWは、識別バースト37がない。よって識別バースト37の有無により、MCU21は、磁気転写と単板STWの仮識別を行う。この仮識別処理によれば、磁気ディスク媒体3のロード後、識別領域39において識別バースト37の有無をRDC20でモニターすることにより、ファームウェアでの仮識別を可能とする。
【0066】
以下、本実施の形態における、仮識別処理の動作について説明する。
【0067】
図17は、実施の形態2に係る、仮識別処理の一例を示すタイミングチャートである。図17に示すように、MCU21は、ロード開始と共に磁気ヘッド15をランプ16から離すために振り出し電流を印加する。次に、MCU21は、VCM電流を安定させ、サーボ検出を行う。なお、サーボ検出のタイミングは、磁気ヘッド15がランプ端を過ぎてからとなる。MCU21は、サーボ検出と同時に仮識別処理として識別バースト37のサンプリングを行い、サンプリング結果からサーボライト方式を仮識別し、仮識別後にパラメータ設定、復調を行い、復調の成功によりロードを完了する。なお、MCU21は、VCM14の、ロード開始からサーボ検出開始までの駆動においては逆起電力による等速制御を行い、サーボ検出から仮識別完了までの駆動においてはサーボ位置による等速制御を行う。また、VCM電流はパラメータ設定中に低下するものである。また、本実施の形態における仮識別処理以外の動作については、図2に示されているフローと同様となるため、説明を省略する。
【0068】
本実施の形態によれば、磁気転写により作製された磁気ディスク媒体3のダミーバーストを識別バースト37として利用し、単板STWにより作製された磁気ディスクの位置決め情報36の後の信号部分をACイレーズすることによって、識別バースト37の有無により仮識別を行うことができる。
【0069】
実施の形態3.
上述した実施の形態2では、磁気ディスク3のサーボ部にあるバースト部を識別用の識別バースト37として使用するため、単板STWは、バースト部をACイレーズし、磁気転写は、バースト部をそのままとしたが、磁気転写及び単板STWのバースト部の位相を違えることにより、仮識別を行っても良い。
【0070】
図18は、実施の形態3に係る、サーボデータの再生波形の一例を示す図である。図18に示すように、本実施の形態は、磁気転写と単板STWとで、バースト部の基準位置からの位相を違えた、識別バースト40(識別基準)を設けることにより、仮識別を行うものである。例えば、磁気転写では90度、単板STWでは−90度とする。なお、磁気転写は0度、単板STWは180度としてもよい。また、この仮識別処理によれば、RDC20において識別バースト40のサンプリング値をDFTし、位相量を取得しすることにより、ファームウェアで仮識別が可能となる。また、本実施の形態における仮識別処理の動作については、図17に示されているタイミングチャートと同様であり、仮識別処理以外の動作については図2に示されているフローと同様となるため、説明は省略する。
【0071】
本実施の形態によれば、磁気ディスク媒体3のバースト部にサーボライト方式ごとに位相の違う識別バースト40を設けることにより、仮識別を行うことができる。
【0072】
更に、磁気ディスク装置1において上述した各ステップを実行させるプログラムを、磁気ディスクプログラムとして提供することができる。上述したプログラムは、MCU21により読み取り可能な記録媒体に記憶させることによって、磁気ディスク装置1に実行させることが可能となる。また、図19に示すように、磁気ディスク装置1と接続された設定用端末4に記憶媒体5を読み込ませ、磁気ディスクプログラムを磁気ディスク装置1へ送信しても良い。ここで、 MCU21及び設定用端末4により読み取り可能な記録媒体としては、ROMやRAM等のコンピュータに内部実装される内部記憶装置、CD−ROMやフレキシブルディスク、DVDディスク、光磁気ディスク、ICカード等の可搬型記憶媒体や、コンピュータプログラムを保持するデータベース、或いは、他のコンピュータ並びにそのデータベースや、更に回線上の伝送媒体をも含むものである。
【0073】
本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他の様々な形で実施することができる。そのため、前述の実施の形態は、あらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、何ら拘束されない。更に、特許請求の範囲の均等範囲に属する全ての変形、様々な改良、代替および改質は、全て本発明の範囲内のものである。
【0074】
以上の実施の形態1〜3に関し、更に以下の付記を開示する。
【0075】
(付記1)
記憶媒体においてサーボライト方式が異なるサーボパターンが混在する記憶装置であって、
前記記憶媒体のサーボパターンを読み込む読込部と、
前記読込部により読み込まれたサーボパターンに基づいて、サーボライト方式の特定を行う識別部と、
前記識別部により特定されたサーボライト方式の情報を格納する格納部と、
前記サーボライト方式の情報に基づき、最適なサーボ制御方式を設定する設定部と、
を備えることを特徴とする記憶装置。
(付記2)
付記1に記載の記憶装置であって、
前記設定部は、前記識別部により特定されたサーボライト方式に基づいてプリアンプゲインの調整範囲を設定することを特徴とする記憶装置。
(付記3)
付記1に記載の記憶装置であって、
前記設定部は、前記識別部により特定されたサーボライト方式に基づいてDCオフセットのキャンセル量を設定することを特徴とする記憶装置。
(付記4)
付記1に記載の記憶装置であって、
前記設定部は、前記識別部により特定されたサーボライト方式に基づいてデジタルフィルタの値を設定することを特徴とする記憶装置。
(付記5)
付記1に記載の記憶装置であって、
前記識別部は、前記読込部により得られるサーボパターンのサーボAGC値に基づく所定の関数により、サーボライト方式を特定することを特徴とする記憶装置。
(付記6)
付記1に記載の記憶装置であって、
前記記憶媒体は、サーボ領域に、前記識別部に読み込ませるサーボライト方式を識別する基準となる識別基準が設けられ、
前記識別部は、前記記憶媒体における前記識別基準に基づいて、サーボライト方式を特定することを特徴とする記憶装置。
(付記7)
付記1に記載の記憶装置であって、
前記記憶媒体は、前記サーボ領域に識別基準が設けられ、
前記識別部は、前記記憶媒体における前記識別基準の位相の差異により、サーボライト方式を特定することを特徴とする記憶装置。
(付記8)
付記1に記載の記憶装置であって、
さらに、前記設定部により設定されたサーボ制御方式に基づき、前記記憶媒体のシステム領域に格納されているサーボライト方式の情報を読み込むシステム領域読込部と、
前記格納部に格納されているサーボライト方式の情報を前記システム領域読込部により読み込まれたサーボライト方式の情報に書き換える書換部と、
を備えることを特徴とする記憶装置。
(付記9)
サーボ領域を有する記憶媒体であって、
前記記憶媒体のサーボ領域に、サーボライト方式を識別する基準である識別基準が設けられていることを特徴とする記憶媒体。
(付記10)
記憶媒体においてサーボライト方式が異なるサーボパターンが混在する記憶装置の記憶プログラムであって、
前記記憶媒体のサーボパターンを読み込む読込ステップと、
前記読込ステップにより読み込まれたサーボパターンに基づいて、サーボライト方式の特定を行う識別ステップと、
前記識別ステップにより特定されたサーボライト方式の情報を格納する格納ステップと、
前記サーボライト方式の情報に基づき、最適なサーボ制御方式を設定する設定ステップと、
をコンピュータに実行させる記憶プログラム。
(付記11)
付記10に記載の記憶プログラムであって、
前記設定ステップは、前記識別ステップにより特定されたサーボライト方式に基づいてプリアンプゲインの調整範囲を設定することをコンピュータに実行させる記憶プログラム。
(付記12)
付記10に記載の記憶プログラムであって、
前記設定ステップは、前記識別ステップにより特定されたサーボライト方式に基づいてDCオフセットのキャンセル量を設定することをコンピュータに実行させる記憶プログラム。
(付記13)
付記10に記載の記憶プログラムであって、
前記識別ステップは、前記読込ステップにより得られるサーボパターンのサーボAGC値に基づく所定の関数により、サーボライト方式を特定することをコンピュータに実行させる記憶プログラム。
(付記14)
付記10に記載の記憶プログラムであって、
前記記憶媒体は、サーボ領域に、前記識別ステップに読み込ませるサーボライト方式を識別する基準となる識別基準が設けられ、
前記識別ステップは、前記記憶媒体における前記識別基準に基づいて、サーボライト方式を特定することをコンピュータに実行させる記憶プログラム。
(付記15)
付記10に記載の記憶プログラムであって、
前記記憶媒体は、前記サーボ領域に識別基準が設けられ、
前記識別ステップは、前記記憶媒体における前記識別基準の位相の差異により、サーボライト方式を特定することをコンピュータに実行させる記憶プログラム。
(付記16)
記憶媒体においてサーボライト方式が異なるサーボパターンが混在する記憶装置の記憶方法であって、
前記記憶媒体のサーボパターンを読み込む読込ステップと、
前記読込ステップにより読み込まれたサーボパターンに基づいて、サーボライト方式の特定を行う識別ステップと、
前記識別ステップにより特定されたサーボライト方式の情報を格納する格納ステップと、
前記サーボライト方式の情報に基づき、最適なサーボ制御方式を設定する設定ステップと、
を実行する記憶方法。
(付記17)
付記16に記載の記憶方法であって、
前記設定ステップは、前記識別ステップにより特定されたサーボライト方式に基づいてプリアンプゲインの調整範囲を設定することを特徴とする記憶方法。
(付記18)
付記16に記載の記憶方法であって、
前記設定ステップは、前記識別ステップにより特定されたサーボライト方式に基づいてDCオフセットのキャンセル量を設定することを特徴とする記憶方法。
(付記19)
付記16に記載の記憶方法であって、
前記識別ステップは、前記読込ステップにより得られるサーボパターンのサーボAGC値に基づく所定の関数により、サーボライト方式を特定することを特徴とする記憶方法。
(付記20)
付記16に記載の記憶方法であって、
前記記憶媒体は、サーボ領域に、前記識別ステップに読み込ませるサーボライト方式を識別する基準となる識別基準が設けられ、
前記識別ステップは、前記記憶媒体における前記識別基準に基づいて、サーボライト方式を特定することを特徴とする記憶方法。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】実施の形態1に係る、磁気ディスク装置の構成の一例を示すブロック図である。
【図2】実施の形態1に係る、磁気ディスク装置の起動処理の一例を示すフローチャートである。
【図3】実施の形態1に係る、仮識別処理の一例を示すタイミングチャートである。
【図4】実施の形態1に係る、各サーボライト方式の偏心補正ゾーン(Zone)とトラック(Track)番号の相関図である。
【図5】実施の形態1に係る、各サーボライト方式のサーボ制御の特徴を表わした図である。
【図6】実施の形態1に係る、偏心補正を行うリードチャネルの一例を示すサーボブロックの図である。
【図7】サーボライト方式ごとに異なるヘッドチェンジシークの選択内容を示す図である。
【図8】シーク方式選択処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図9】磁気ディスクからの読み取り信号が対称である場合の波形の一例を示す図である。
【図10】磁気ディスクからの読み取り信号が非対称である場合の波形の一例を示す図である。
【図11】読み取り信号から直流成分を除去するRDCの構成の一例を示すブロック図である。
【図12】対称性補正FFおよび可変EQ調整の必要性の有無を、サーボライト方式ごとに示す図である。
【図13】RRO非追従制御を行うリードチャネルの一例を示すサーボブロックの図である。
【図14】実施の形態2に係る、磁気ディスク媒体の表面にパターンニングされるサーボ情報の一例を示す概念図である。
【図15】磁気ディスク媒体のデータ領域、識別領域の一例を示す概念図である。
【図16】実施の形態2に係る、サーボデータの再生波形の一例を示す図である。
【図17】実施の形態2に係る、仮識別処理の一例を示すタイミングチャートである。
【図18】実施の形態3に係る、サーボデータの再生波形の一例を示す図である。
【図19】設定用端末により、記憶媒体の磁気ディスクプログラムを磁気ディスク装置へ送信する概念図である。
【図20】従来技術における、磁気ディスク装置の構成の一例を示すブロック図である。
【図21】従来技術における、磁気ディスク装置の起動処理の一例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0077】
1 磁気ディスク装置、11 磁気ディスク、12 SPM、13 ヘッドアクチュエータ、14 VCM、15 磁気ヘッド、16 ランプ、17 SPM駆動回路、18 VCM駆動回路、19 プリアンプ、20 RDC、21 MCU、22 不揮発領域、23 HDC、24 バッファ、25 サーボパターン識別値25、2 ホスト。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記憶媒体においてサーボライト方式が異なるサーボパターンが混在する記憶装置であって、
前記記憶媒体のサーボパターンを読み込む読込部と、
前記読込部により読み込まれたサーボパターンに基づいて、サーボライト方式の特定を行う識別部と、
前記識別部により特定されたサーボライト方式の情報を格納する格納部と、
前記サーボライト方式の情報に基づき、最適なサーボ制御方式を設定する設定部と、
を備えることを特徴とする記憶装置。
【請求項2】
請求項1に記載の記憶装置であって、
前記設定部は、前記識別部により特定されたサーボライト方式に基づいてプリアンプゲインの調整範囲を設定することを特徴とする記憶装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の記憶装置であって、
前記設定部は、前記識別部により特定されたサーボライト方式に基づいてDCオフセットのキャンセル量を設定することを特徴とする記憶装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の記憶装置であって、
前記設定部は、前記識別部により特定されたサーボライト方式に基づいてデジタルフィルタの値を設定することを特徴とする記憶装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の記憶装置であって、
前記識別部は、前記読込部により得られるサーボパターンのサーボAGC値に基づく所定の関数により、サーボライト方式を特定することを特徴とする記憶装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の記憶装置であって、
前記記憶媒体は、サーボ領域に、前記識別部に読み込ませるサーボライト方式を識別する基準となる識別基準が設けられ、
前記識別部は、前記記憶媒体における前記識別基準に基づいて、サーボライト方式を特定することを特徴とする記憶装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の記憶装置であって、
前記記憶媒体は、前記サーボ領域に識別基準が設けられ、
前記識別部は、前記記憶媒体における前記識別基準の位相の差異により、サーボライト方式を特定することを特徴とする記憶装置。
【請求項8】
サーボ領域を有する記憶媒体であって、
前記記憶媒体のサーボ領域に、サーボライト方式を識別する基準である識別基準が設けられていることを特徴とする記憶媒体。
【請求項9】
記憶媒体においてサーボライト方式が異なるサーボパターンが混在する記憶装置の記憶プログラムであって、
前記記憶媒体のサーボパターンを読み込む読込ステップと、
前記読込ステップにより読み込まれたサーボパターンに基づいて、サーボライト方式の特定を行う識別ステップと、
前記識別ステップにより特定されたサーボライト方式の情報を格納する格納ステップと、
前記サーボライト方式の情報に基づき、最適なサーボ制御方式を設定する設定ステップと、
をコンピュータに実行させる記憶プログラム。
【請求項10】
記憶媒体においてサーボライト方式が異なるサーボパターンが混在する記憶装置の記憶方法であって、
前記記憶媒体のサーボパターンを読み込む読込ステップと、
前記読込ステップにより読み込まれたサーボパターンに基づいて、サーボライト方式の特定を行う識別ステップと、
前記識別ステップにより特定されたサーボライト方式の情報を格納する格納ステップと、
前記サーボライト方式の情報に基づき、最適なサーボ制御方式を設定する設定ステップと、
を実行する記憶方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate