説明

磁気記録再生装置

【課題】 プロセス上での製造負担の極めて少ないバーストパターン形状であって、なおかつ正確な位置誤差信号を得ることができるバーストパターン形状を有する磁気記録媒体を用いた磁気記録再生装置を提供する。
【解決手段】 ディスクリートメディアにおけるバーストパターン形状を、トラック幅方向およびトラック円周方向にそれぞれ実質的な台形形状を有する形状(四角錐台形状)とし、トラック幅方向の台形形状において凸状磁気記録層の表面に対応する上辺をW1、凸状磁気記録層の下面に対応する下辺をW2、データ情報記録部のデータトラックピッチをTp、磁気ヘッドの読み出し幅をWrとしたときに所定の関係を満たすように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に磁気記録層が所定の凹凸パターンで形成され、いわゆるサーボ領域と情報データ領域を有する磁気記録媒体(ディスクリートタイプの磁気記録媒体)と、この媒体のサーボ信号を検出するとともに情報データを記録再生する磁気ヘッドとを有する磁気記録再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハードディスク等の磁気記録媒体の面記録密度の向上は、(1)線記録密度を向上させることと、(2)トラック密度を向上させることの双方の手法により達成されてきている。今後さらにより一層の高密度化を図るためには、上記双方の手法に基づく記録密度の向上が必要である。
【0003】
トラック密度を向上させることに関しては、磁気ヘッドの加工限界や、磁気ヘッド磁界の広がりに起因するサイドフリンジ、クロストークなどの問題が顕在化してきており、従来の改良手法の延長である磁気ヘッドの高トラック化技術を進歩させることによる面記録密度の向上は限界に達していると言える。
【0004】
一方、線記録密度を向上させる手法として、従来の長手磁気媒体においては、薄層化、高保磁力が図られてきたが、さらなる媒体の高密度化と記録磁化の熱揺らぎに対する安定性の観点から、これらの条件を満足する垂直磁気記録媒体が注目されている。
【0005】
このような実状のもと、面記録密度を向上させ、磁気ヘッドの高トラック密度化を補完する技術として、記録層を所定の凹凸パターンに形成するディスクリートトラックディスクタイプの磁気記録媒体が提案されている。例えば、特開平11−328662号公報には、基板に予め所定の凹凸が施され、その凹凸に沿って単層の垂直磁気層が形成されている磁気記録媒体が開示されている。
【0006】
高記録密度化を達成するには低スペーシング化が必要である。しかしながら、記録層の凹凸形状は磁気ヘッドの安定した浮上特性が得られないことがあり、ヘッドクラッシュなどの問題を引き起こす可能性がある。このような観点から、特開平10−222944号公報には、トラック幅方向に凹凸形状を変え磁気ヘッドの浮上安定性を目的とした記録媒体が開示されている。
【0007】
さらに、特開2000−195042号公報には、磁気ヘッドの浮上特性の安定性を確保するため、凹凸形状の凹部を非磁性材料もしくは他の材料で充填するディスクリートタイプの磁気記録媒体が提案されている。
【0008】
また、特開平6−111502号公報には、長手記録媒体における矩形状の凹凸構造によるトラッキングサーボのバーストパターンの幅、トラックピッチ及び再生ヘッドの読み出し幅との関係を規定した技術が開示されている。
【0009】
一般に、磁気ディスク装置において、使用される磁気記録媒体には、磁気ヘッドのトラッキング用のためのサーボ領域がサーボトラックライタにより記録されている。
【0010】
サーボ領域には、一般に、ISG(Initial Signal Gain)部、SVAM(SerVo Address Mark)部、グレイコード部、バースト部、およびパッド部が存在し、これらは、所定の機能を発揮するために、種々の磁気パターンが形成されている。
【0011】
これらの磁気パターンにおいて、バースト部は、通常、磁気記録媒体の半径方向に約1トラックピッチ分の幅で記録されている。また、それ以外のISG部、SVAM部、グレイコード部およびパッド部は、通常、ディスク半径方向に連続して記録されているか、あるいは、半径方向に少なくとも数トラック以上に亘って連続して記録されている。
【0012】
バースト部は、磁気ヘッドをトラック位置に正確にトラッキングさせるための正確な位置情報を得るためのパターンである。このようなバースト部のパターンは、例えば、(1)隣接するトラックピッチを規制する中心線にそれぞれ等しく跨るように設けられた第1のバースト及び第2のバーストの組みから構成されるか、(2)あるいは、これらに加えて、これらの組から半トラックピッチだけずれた位置に存在する第3のバースト及び第4のバーストの組みを付加して構成されている。
【0013】
最もシンプルな第1のバースト及び第2のバーストの組み合せにおけるトラッキング動作の一例を示すと以下の通りとなる。すなわち、磁気ヘッドが第1のバーストおよび第2のバーストを順次通過することにより、第1のバーストのパターンからの再生信号Saと第2のバーストのパターンからの再生信号Sbとを差動アンプで比較することにより位置誤差信号PES(Position Error Signal)=(Sa−Sb)の値が得られる。この位置誤差信号PES=(Sa−Sb)の値をサーボ制御用回路に入力し、位置誤差信号の大きさに応じて、トラッキング用サーボアクチュエータを駆動させることにより、磁気ヘッドの中心をデータトラックの中心へ追随させるように動作させている。
【0014】
しかしながら、従来のディスクリートメディアにおけるバーストパターンは矩形形状のパターンであり、正確な位置誤差信号を得るためには、矩形形状パターンが理想的ではあるが、矩形形状を形成の際、形状面および寸法面から非常に高い精度が要求される。
【0015】
このように成形精度を要求される分だけプロセス上での製造負担は極めて大きいと言える。
【0016】
このような問題を解決するために、本出願人は、すでに、特願2004−188121号として、2対(2組)のバーストパターンを備えるディスクリートメディアであって、当該バーストパターン形状を、トラック幅方向およびトラック円周方向にそれぞれ実質的な台形形状を有する形状(四角錐台形状)とし、トラック幅方向の台形形状において凸状磁気記録層の表面に対応する上辺をW1、凸状磁気記録層の下面に対応する下辺をW2、データ情報記録部のデータトラックピッチをTp、磁気ヘッドの読み出し幅をWrとしたときに所定の関係を満たすように構成してなる磁気記録再生装置の発明を提案している。そして、この提案によれば、プロセス上での製造負担の極めて少ないバーストパターン形状であって、なおかつ正確な位置誤差信号を得ることができるバーストパターン形状を有する磁気記録媒体を用いた磁気記録再生装置を提供することができる。
【0017】
【特許文献1】特開平11−328662号公報
【特許文献2】特開平10−222944号公報
【特許文献3】特開2000−195042号公報
【特許文献4】特開平6−111502号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかしながら、すでに本出願人により提案された2対(2組)のバーストパターンを備えるディスクリートメディアにおいては、さらに、トラックピッチとバーストピッチの関係が変わった場合においても最適に使用できる範囲が存在することが実験的に確認されてきており、本願発明は、その拡大された使用範囲域の保護を求めるものである。すなわち、本発明は、さらなる拡大使用範囲域においても、プロセス上での製造負担が極めて少なく、しかも正確な位置誤差信号を得ることができるバーストパターン形状を有する磁気記録媒体を用いた磁気記録再生装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
このような課題を解決するために、本発明は、データ情報記録部及びトラッキング用のサーボ用情報部を有する磁気記録媒体と、前記サーボ用情報部のサーボ情報を検出するとともに、前記データ情報記録部にデータ情報を記録し再生する磁気ヘッドと、を有する磁気記録再生装置において、前記データ情報記録部はデータトラックピッチTpのデータトラックを備え、前記サーボ用情報部は所定の凹凸パターンで形成された磁気記録層から構成されており、前記サーボ用情報部は、トラッキング用のバースト信号が記録されるバースト部を備え、前記バースト部は、バースト信号が記録された複数の凸部の磁気記録層からなる第1のバースト、第2のバースト、第3のバースト、および第4のバーストを有し、前記第1のバーストおよび第2のバーストは、対をなし、互いに、トラック幅方向に、2トラックピッチ分の距離(2Tp)ずれた位置を中心線として凸部の磁気記録層を形成するように配置されており、前記第3のバーストおよび第4のバーストは、対をなし、互いに、トラック幅方向に、2トラックピッチ分の距離(2Tp)ずれた位置を中心線として凸部の磁気記録層を形成するように配置されるとともに、当該第3のバーストおよび第4のバーストは、前記第1のバーストおよび第2のバーストの中心線から1トラックピッチ分の距離(1Tp)ずれた位置を中心線として凸部の磁気記録層を形成するように配置されており、前記凸部の磁気記録層は、トラック幅方向およびトラック円周方向にそれぞれ実質的な台形形状を有し(四角錐台形状)、前記トラック幅方向の台形形状において、凸状磁気記録層の表面に対応する上辺をW1、凸状磁気記録層の下面に対応する下辺をW2、データ情報記録部のデータトラックピッチをTp、磁気ヘッドの読み出し幅をWrとしたとき、
W1>Tpの場合であって、
1.25W2>Wr≧0.5W2
の条件を満たしてなるように構成される。
【0020】
また、本発明は、データ情報記録部及びトラッキング用のサーボ用情報部を有する磁気記録媒体と、前記サーボ用情報部のサーボ情報を検出するとともに、前記データ情報記録部にデータ情報を記録し再生する磁気ヘッドと、を有する磁気記録再生装置において、前記データ情報記録部はデータトラックピッチTpのデータトラックを備え、前記サーボ用情報部は所定の凹凸パターンで形成された磁気記録層から構成されており、前記サーボ用情報部は、トラッキング用のバースト信号が記録されるバースト部を備え、前記バースト部は、バースト信号が記録された複数の凸部の磁気記録層からなる第1のバースト、第2のバースト、第3のバースト、および第4のバーストを有し、前記第1のバーストおよび第2のバーストは、対をなし、互いに、トラック幅方向に、(2/3)トラックピッチ分の距離((2/3)Tp)ずれた位置を中心線として凸部の磁気記録層を形成するように配置されており、前記第3のバーストおよび第4のバーストは、対をなし、互いに、トラック幅方向に、(2/3)トラックピッチ分の距離((2/3)Tp)ずれた位置を中心線として凸部の磁気記録層を形成するように配置されるとともに、当該第3のバーストおよび第4のバーストは、前記第1のバーストおよび第2のバーストの中心線から(1/3)トラックピッチ分の距離((1/3)Tp)ずれた位置を中心線として凸部の磁気記録層を形成するように配置されており、前記凸部の磁気記録層は、トラック幅方向およびトラック円周方向にそれぞれ実質的な台形形状を有し(四角錐台形状)、前記トラック幅方向の台形形状において、凸状磁気記録層の表面に対応する上辺をW1、凸状磁気記録層の下面に対応する下辺をW2、データ情報記録部のデータトラックピッチをTp、磁気ヘッドの読み出し幅をWrとしたとき、
Tp>W2の場合であって、
1.5W2≧Wr≧0.5W1
の条件を満たしてなるように構成される。
【0021】
また、本発明の好ましい態様として、凸状磁気記録層の下辺であるW2から上辺であるW1までの高さをhとした場合、
tan85°≧2h/(W2−W1)≧tan50°
の条件を満たしてなるように構成される。
【0022】
また、本発明の好ましい態様として、データトラック幅をWとし、磁気的読み出し幅をWr、トラックピッチをTpとした場合、
Wr<2Tp−W
の条件を満たしてなるように構成される。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、ディスクリートメディアにおける2対のバーストパターンの配列を備え、当該バーストパターンの形状を、トラック幅方向およびトラック円周方向にそれぞれ実質的な台形形状を有する形状(四角錐台形状)とし、トラック幅方向の台形形状において凸状磁気記録層の表面に対応する上辺をW1、凸状磁気記録層の下面に対応する下辺をW2、データ情報記録部のデータトラックピッチをTp、磁気ヘッドの読み出し幅をWrとしたときに所定の関係を満たすように構成しているので、プロセス上での寸法精度マージンを或る程度取ることが可能で製造負担が軽減でき、なおかつ正確な位置誤差信号を得ることができるバーストパターン形状を有する磁気記録再生装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
【0025】
本発明の磁気記録再生装置は、データ情報記録部及びトラッキング用のサーボ用情報部を有する磁気記録媒体と、サーボ用情報部のサーボ情報を検出するとともに、前記データ情報記録部にデータ情報を記録し再生するための磁気ヘッドと、を有して構成されている。
【0026】
まず、最初に、装置全体の構成を把握するために、磁気記録再生装置の概略構成例の説明を図6に基づいて説明する。
【0027】
(磁気記録再生装置の概略構成例の説明)
図6には本発明の好適な一例である磁気記録再生装置の概略構成斜視図が示されている。この図において、磁気記録媒体1としてはディスク状の垂直磁気記録媒体(ディスクリートメディア)が用いられ、この媒体は、スピンドルモータ2により回転駆動されるようになっている。
【0028】
また、磁気記録媒体に対してデータの読み出しや書き込みを行なうために、媒体の外方から媒体内方に向けて延設された回動アーム4の先端には記録再生用の磁気ヘッド5が設けられている。回動アーム4はボイスコイルモータ3によって回動されるようになっており、例えば、記録再生用の磁気ヘッド5により検出されたサーボ信号に基づき磁気ヘッド5を所定のトラックに位置決めできるようになっている。
【0029】
記録再生用の磁気ヘッド5は記録素子および再生素子を有しており、記録素子としては、例えば主磁極励磁型の単磁極ヘッドが用いられ、再生素子としては例えばGMR(巨大磁気抵抗効果)ヘッドが用いられる。GMRヘッドの代わりに、TMR(トンネリング磁気抵抗効果)ヘッド等を用いてもよい。
【0030】
なお、本発明における磁気記録媒体の好適な一例として垂直磁気記録媒体を取りあげて説明しているが、いわゆる長手記録媒体についても適用可能である。
【0031】
(磁気記録媒体の説明)
次いで、磁気記録媒体の構成について説明する。
【0032】
図1には本発明に用いられるディスク状の磁気記録媒体1の全体形状を表す概略平面図が示され、図2には、図1の四角で囲まれた微小部分100の部分拡大概略図が示される。図2においては、主として、サーボ信号が記録された領域であるサーボ用情報部90および記録再生のためのデータトラック群であるデータ情報記録部80が概念的に現されている。
【0033】
図3には、本発明における磁気記録媒体の好適な実施の形態を概念的に示す断面図が示され、図3は、図2のα−α矢視断面図に実質的に相当する。
【0034】
図1において、図示されてはいないがディスク基板上には記録再生のための複数のデータトラック群が同心円状に配置・形成されている。
【0035】
また、ディスクの中心から外方に向けて、放射状にサーボ信号領域(サーボ用情報部90:図面で放射線状に描かれている箇所)が形成されている。すなわち、ディスク面をセクタで分割した、いわゆるセクタサーボ方式を適用している。そして、磁気記録媒体のサーボ用情報部90には、サーボトラッキングライタにより、サーボ情報が記録されている。
【0036】
サーボ用情報部90の構造について詳述すると、サーボ用情報部90(いわゆるサーボ領域)は、図2に示されるようにISG部91、SVAM部92、グレイコード部93、バースト部94およびパッド部95を有している。
【0037】
ISG(Initial Signal Gain)部91は、磁気記録媒体の磁性膜(磁性層)の磁気特性や磁気ヘッドの浮上量のむらの影響を排除するために設けられた連続パターンであり、トラック半径方向に連続して形成されている。このようなISG部91を磁気ヘッドにより再生している間、磁気記録媒体や磁気ヘッドによる出力バラツキを補正するため、サーボ復調回路はオートゲインコントロール(AGC)によりゲインが決められる。このような作用を行なうオートゲインコントロール(AGC)は、サーボ領域に存在するSVAM(SerVo Address Mark)部92を検出した時点でOFFにされ、以降のバースト部94に存在する再生振幅をISG部91の振幅で規格化する。
【0038】
グレイコード部93は各トラック番号情報、及びセクタ番号の情報が記録されている。
【0039】
バースト部94は、磁気ヘッドをトラック位置に正確にトラッキングさせるための正確な位置情報を得るためのパターンである。このパターンは、例えば、図2に示されるように、2トラックピッチ分の間隔を空けた基本中心線にそれぞれ等しく跨るように設けられた第1のバースト94a及び第2のバースト94bの組み(これらが1つの対をなしている)と、これらの組から1トラックピッチだけずれた位置に存在する第3のバースト94c及び第4のバースト94dの組み(これらが1つの対をなしている)とから構成されている。
【0040】
換言すれば、図2に示される実施の一例として、第1のバースト94aおよび第2のバースト94bは、互いに、トラック幅方向に、2トラックピッチずれた位置を中心線としてそれぞれ凸部の磁気記録層が形成されるように配置されており(Bp=2Tp;Bpはバーストパターンのピッチ、Tpはトラックピッチをそれぞれ表す)、第3のバースト94cおよび第4のバースト94dは、第1のバースト94aおよび第2のバースト94bの中心線から1トラックピッチだけずれた位置を中心線として凸部の磁気記録層が形成されるように配置されている(Bp=2Tp)。第1のバースト94a、第2のバースト94b、第3のバースト94cおよび第4のバースト94dの半径方向の長さは2トラック分の長さである。なお、第4のバースト94dは、図2の紙面の都合から半径方向に1トラック分の長さしか記載されていない。
【0041】
また、図示のごとく第1のバースト94a〜第4のバースト94dは順次、下流側に移行した状態でパターン配置されている。
【0042】
なお、本明細書では、第1のバースト94a〜第4のバースト94dを、第1のバーストトラック(VTR1)〜第4バーストトラック(VTR4)と称することもあるが、これらは同義である。
【0043】
また、本発明における2対(2組)のバーストパターンを備えるバースト部において、上記のように対をなすバーストパターンのピッチBpとトラックピッチTpとの関係は、Bp=2Tpの場合、およびBp=(2/3)Tpの場合を考察しており、詳細については、後述する。
【0044】
パット部95は、サーボ復調回路がサーボ領域を再生する間のクロック生成を維持出来るように復調回路系の遅延を吸収するために設けられたパターンである。
【0045】
ISG部91、SVAM部92、パッド部95はディスク半径方向に連続して記録されている。また、グレイコード部93も半径方向に少なくとも数トラック以上に亘って記録される。
【0046】
次いで、図3に基づいて、磁気記録媒体の好適な断面構成の一例を説明する。図3は、例えば、図2のα−α断面矢視図として把握することができる。
【0047】
図3に示されるように磁気記録媒体は、基板15と、この基板15の上に形成された配向層14と、この配向層14の上に形成された軟磁性層11と、この軟磁性層11の上に形成された中間層12と、この中間層12の上に形成された凹凸状の凸部に相当する垂直磁気記録層10および凹部に相当する非磁性層20と、これらの上に形成される保護層13とを有している。
【0048】
基板15としては、ガラス基板、NiP被着アルミ合金基板、Si基板などが好適に用いられる。配向層14としては、例えば、軟磁性層11のトラック幅方向への磁気異方性磁界を付与するためのPtMn等の反強磁性材料を用いることができる。その他、配向を制御するための非磁性合金であってもよい。
【0049】
軟磁性層11としては、CoZrNb合金、Fe系合金、Co系アモルファス合金、軟磁性/非磁性層の多層膜、軟磁性フェライト等が挙げられる。また、軟磁性層で非磁性層を挟んだ積層構造でもよい。
【0050】
中間層12は、この中間層の上に形成される垂直磁気記録層の垂直磁気異方性および結晶粒径を制御するために設けられ、例えば、CoTi非磁性合金が用いられる。その他、同様な作用をする非磁性金属、合金、もしくは低透磁率の合金を用いてもよい。
【0051】
凸部の垂直磁気記録層10としては、SiO2の酸化物系材料の中にCoPtなどの強磁性粒子をマトリックス状に含有させた媒体や、CoCr系合金、FePt合金、Co/Pd系の人工格子型多層合金などが好適に用いられる。後述するように本発明におけるサーボ信号を発生するように作用する記録層10は台形形状とされる。
【0052】
凹部の非磁性層20の材料としては、SiO2、Al23、TiO2、フェライトなどの非磁性酸化物、AlNなどの窒素化物、SiCなどの炭化物が用いられる。
【0053】
凸部の垂直磁気記録層10や凹部の非磁性層20の表面には、通常、CVD法などを用いてカーボン薄膜等の保護層13が形成される。
【0054】
凹凸パターンに基づく垂直磁気記録層10および非磁性層20の形成(いわゆるディスクリートタイプの媒体の形成)は、例えば、一定厚さに成膜した垂直磁気記録層10を所定の凹凸形状にエッチングした後に、エッチング深さに対応したSiO2をスパッタリングし、エッチングされた凹部を充填する。その後、媒体を、回転させながら斜めイオンビームエッチング法等により、垂直磁気記録層10の上に余分に堆積したSiO2を除去して、媒体表面全体を平坦化するようにすればよい。
【0055】
なお、図3における凹凸パターンに基づく垂直磁気記録層10および非磁性層20の形成(いわゆるディスクリートタイプの媒体の形成)のためのエッチング処理は、記録層の底部までに留めてあるが、さらに軟磁性層11の領域まで入り込むようなエッチング処理を行い、凹凸パターンを作製するようにしてもよい。
【0056】
図4には図3の変形例が示されている。図4の実施形態が図3のそれと異なる点は、一定厚さに成膜した垂直磁気記録層10を所定の凹凸形状にエッチングする際に、磁気特性に影響を及ぼさない範囲で凹部位置の磁性層を薄く残している点にある。図4および図3の形態はいずれも本発明の実施形態であり、図4および図3に付してある同一符号は同一部材を示している。
【0057】
(サーボ領域(サーボ用情報部)の仕様設定)
本発明の要部は、(1)プロセス上での寸法精度マージンを取ることが可能で精度面での製造負担を軽減させること、(2)トラッキングのための正確な位置誤差信号を得ることを目的として、ディスクリートメディアのサーボ領域におけるバースト部のバーストパターンを2対(2組)のバーストパターンとするとともに、各バーストパターン形状を、トラック幅方向およびトラック円周方向にそれぞれ実質的な台形形状を有する形状(四角錐台形状)とし、トラック幅方向の台形形状において凸状磁気記録層の表面に対応する上辺をW1、凸状磁気記録層の下面に対応する下辺をW2、データ情報記録部のデータトラックピッチをTp、磁気ヘッドの読み出し幅をWrとしたときに所定の関係を満たすように媒体の構成を設定しているところにある。なお、台形状形状の垂直磁気記録層において、多少上辺の角が落ちている形状であってもよい。
【0058】
なお、本発明の磁気ヘッドの読み出し幅Wr(磁気ヘッドの再生トラック幅)は、いわゆるSEM等により実測される光学寸法幅とは異なり、以下のように定義される。
【0059】
すなわち、書き込みトラック幅より十分小さなマイクロトラックを形成し、磁気ヘッドをトラック幅方向に順次移動させ、磁気ヘッドの再生出力Voutのオフトラックプロファイルを測定し、Voutの最大値(Vout MAX)の1/2の出力値(Vout MAX/2)における幅(いわゆる半値幅)を「読み出し幅Wr」と定義する。「読み出し幅Wr」の定義の状態図が図26に示される。
【0060】
本発明のバースト部の2対(2組)バーストパターンにおいて、各対(各組)のバーストパターンピッチBpはそれぞれ同一であり、バーストパターンピッチBpを規定する各対(各組)の中心線は、(1/2)Bpずつ順次、ずれていくように配置される。また、データ情報記録部のデータトラックピッチTpに対して、バーストパターンピッチBpが種々の値に規定される。本発明の場合、Bp=2Tp、Bp=(2/3)Tpの2つの場合に分けて考察している。
【0061】
本発明の要部は、これらの2つの場合について、各バーストパターン形状を、トラック幅方向およびトラック円周方向にそれぞれ実質的な台形形状を有する形状(四角錐台形状)とし、トラック幅方向の台形形状において凸状磁気記録層の表面に対応する上辺をW1、凸状磁気記録層の下面に対応する下辺をW2、上記データ情報記録部のデータトラックピッチをTp、磁気ヘッドの読み出し幅をWrとしたときに所定の関係を満たすように媒体の構成を設定しているところにある。
【0062】
なお、バーストパターン等の仕様設定の説明は、具体的実施例による実験結果を参照しつつ考察することでより理解が容易になると考えられるので、以下、実施例および比較例を交えた種々の実験例を参考にしながら本発明を説明する。
【実施例】
【0063】
〔I〕実験例1
M=2、n=1の場合
図2や図7に示されるごとく、バーストパターンの対数(組数)をMとして表した場合、M=2であって、バーストパターンピッチBpとデータトラックピッチTpとの関係式を、Bp=(2/n)Tpと表したときのn=1の場合である。換言すれば、2対(2組)のバーストパターンを備えるバースト部であって、バーストパターンピッチBpとデータトラックピッチTpとの関係がBp=2Tpの場合である。
【0064】
このケースにおいて、第1のバースト(VTR1)94aおよび第2のバースト(VTR2)94bは、対をなし、互いに、トラック幅方向に、2トラックピッチ分の距離(2Tp)ずれた位置を中心線として凸部の磁気記録層を形成するように配置されている。
【0065】
第3のバースト(VTR3)94cおよび第4のバースト(VTR4)94dは、対をなし、互いに、トラック幅方向に、2トラックピッチ分の距離(2Tp)ずれた位置を中心線として凸部の磁気記録層を形成するように配置されるとともに、これら第3のバースト(VTR3)94cおよび第4のバースト(VTR4)94dは、前記第1のバースト(VTR1)94aおよび第2のバースト(VTR2)94bの中心線から1トラックピッチ分の距離(1Tp)ずれた位置を中心線として凸部の磁気記録層を形成するように配置されている。
【0066】
(磁気記録媒体の構成)
図1に示されるようにディスク面をセクタで分割し、セクタサーボ方式を適用するために、図2に示されるようなサーボ領域90を形成した。すなわち、各サーボ信号のパターンに従って、ISG部91、SVAM部92、グレイコード部93、バースト部94、およびパッド部95を形成した。
【0067】
バースト信号を記録するバースト部94の凸部の磁気記録層(凸状磁気記録層)は、図5に示されるような台形状形状の垂直磁気記録層とした。凸状磁気記録層の表面に対応する上辺の寸法がW1であり、凸状磁気記録層の下面に対応する下辺の寸法がW2であり、下辺であるW2から上辺であるW1までの高さがhである。なお、W2>W1である。
【0068】
バースト部94以外のISG部91、SVAM部92、グレイコード部93、およびパッド部95における凸部は、図示していないがディスク半径方向に長い台形状形状の帯状凸部垂直磁気記録層とし、1ビットづつ間隔を置いて配置した。
【0069】
媒体の断面形状は、図3に示されるごとく、鏡面研磨したガラス基板15の上に、配向層14(下地層14)としてPtMn層を15nm厚さに形成し、この上にCoZrNbからなる軟磁性層11を200nm厚さに形成し、さらにこの上に非磁性合金CoTiからなる中間層12を8nm厚さに形成した。次いで、この上に垂直磁気記録層10を15nm厚さに形成した後、所定の凹凸形状を作製するために所定パターンのエッチング処理を行なった。次いで、エッチングされた凹部を充填するためにSiO2をスパッタリングした。次いで、SiO2を充填した媒体を回転させながら、斜めイオンビームエッチング処理を行い、垂直磁気記録層10上に形成された余分なSiO2を除去し、媒体表面を平坦化した。この上にCVD法によりカーボン薄膜の保護膜13を1nm厚さに形成し、さらにフォンブリン系潤滑剤を1nm厚さに塗布して媒体サンプルを完成させた。なお、垂直磁気記録層10は、SiO2の中にCoPtの強磁性粒子をマトリックス状に含ませた材料を用いた。
【0070】
垂直磁気記録層の磁気特性を、試料振動型磁力計(VSM)を用いて測定したところ、飽和磁化Msは350emu/cc、残留飽和磁化Mrは340emu/ccであった。垂直磁気記録層の厚さ(高さ)hは、上述のごとく15nmとした。
【0071】
サーボ信号の記録密度は、130K・FRPI(Flux Reversal Per Inch)とした。また、データ領域のトラックピッチTpを254K・TPI(Track Per Inch)に相当する100nmとした。データ領域におけるトラック(データトラック(DTR))の幅は、70nmとした。
【0072】
図5に示されるバーストパターンに相当する台形状形状の垂直磁気記録層の上辺W1および下辺W2の長さは、凹凸構造成形時のエッチング条件を変え、データトラックのトラックピッチTpの値を基準として、この基準から寸法的に大きくしたり小さくしたりして下記表1に示すような種々の形態の実験用バーストを形成した。台形状形状の台形の斜面と底面とのなす角度はすべての実験例において50°とした。すなわち、tan50°=2h/(W2−W1)を満たす形状とした。
【0073】
実験用バーストの形態は、上述のM=2、n=1の形態とした(図7)。データトラック(DTR)80のパターンに対して、第1のバーストトラック(VTR1)94a、第2のバーストトラック(VTR2)94b、第3のバーストトラック(VTR3)94c、第4のバーストトラック(VTR4)94dが配置され、磁気ヘッド位置に対するVTR1とVTR2からの出力の差分信号とVTR3とVTR4からの出力の差分信号とを合成することにより、精密なPES信号を生成するような構成にした。
【0074】
また、記録用磁気ヘッドには、磁気的書き込み幅80nmの薄膜インダクティブヘッドを用いた。再生用磁気ヘッドには、巨大磁気抵抗効果(GMR)ヘッドを用いた。なお、再生用磁気ヘッドの磁気的読み出し幅Wrは、表1に示すごとく他のパラメータ(W1,W2,Tp)との関係で種々のものを用いた。
【0075】
上記所定のサーボ領域及びデータ領域用に凹凸加工した垂直磁気記録媒体は、凸部の垂直磁気記録層を磁化してサーボ信号磁界を発生させるための処理を行なった。すなわち、直流磁界15kOeの発生した電磁石の磁極間をディスク面が磁極面に平行になるように設定した後、サーボ領域及びデータ領域の台形状形状の垂直磁気記録層を一括して着磁させてサーボ信号を記録した。
【0076】
このようにして準備された実験例1用の磁気記録媒体を用いて、下記の要領でトラッキング制御の実験を行った。
【0077】
すなわち、下記表1に示されるディスクリートトラックディスク、読み出し用磁気ヘッドにおいて、トラックピッチTpを基準にして、W1、W2、Wrのそれぞれの諸元の大小関係の組み合わせによる位置誤差信号PESを全て求め、トラッキング特性としてPESの線形性が隣接間のトラック位置変動をある程度許容されていることを考慮して使用可能かどうかの判断を「使用レベル」の可否として表中に示した。
【0078】
また、表1中の対応図面には、実施したW1,W2,TpおよびTrの関係が模式的図面として示されているので、対応する図面を参照されたい。また、PES信号も同時に図面中に示している。
【0079】
【表1】

【0080】
(1)表1に示される実施形態I−1の条件は、W1>Tpなる条件のもとに、磁気的読み出し幅Wrに対するバーストパターンのW1、W2並びにトラックピッチTpの関係を変えた場合に位置誤差信号PESがどのように変わるかを調べたものである。各ケースの対応図は図9〜図13がそれぞれ該当する。
【0081】
図9〜図13からわかるように、
「W1>Tpの場合であって、1.25W2>Wr≧0.5W2」の範囲において、位置誤差検出信号の線形性が得られ、位置誤差信号として使用可能レベルであることがわかる。
【0082】
なお、図7に示されるごとくM=2、n=1の場合の構造においては、上記W1>Tpの場合のみ考慮しておけばよい。
【0083】
なお、図25には図9のA−A矢視断面模式図が示されている。図9と図3に付してある同一符号は同一部材を示している。
【0084】
〔II〕実験例2
M=2、n=3の場合
図8に示されるごとく、バーストパターンの対数(組数)をMとして表した場合、M=2であって、バーストパターンピッチBpとデータトラックピッチTpとの関係式を、Bp=(2/n)Tpと表したときのn=3の場合である。換言すれば、2対(2組)のバーストパターンを備えるバースト部であって、バーストパターンピッチBpがデータトラックピッチTpの2/3倍の場合(Bp=(2/3)Tp)である。
【0085】
このケースにおいて、図8に示されるように第1のバースト(VTR1)94aおよび第2のバースト(VTR2)94bは、対をなし、互いに、トラック幅方向に、(2/3)トラックピッチ分の距離((2/3)Tp)ずれた位置を中心線として凸部の磁気記録層を形成するように配置されている。
【0086】
また、第3のバースト(VTR3)94cおよび第4のバースト(VTR4)94dは、対をなし、互いに、トラック幅方向に、(2/3)トラックピッチ分の距離((2/3)Tp)ずれた位置を中心線として凸部の磁気記録層を形成するように配置されるとともに、これら第3のバースト(VTR3)94cおよび第4のバースト(VTR4)94dは、前記第1のバースト(VTR1)94aおよび第2のバースト(VTR2)94bの中心線から(1/3)トラックピッチ分の距離((1/3)Tp)ずれた位置を中心線として凸部の磁気記録層を形成するように配置されている。
【0087】
(磁気記録媒体の構成)
上記実験例1における磁気記録媒体のバースト部の構造(M=2、n=1)を、上記のM=2、n=3の場合の構造(図8)に変えた。それ以外は、上記実験例Iと同様な要領で、実験例2に使用する磁気記録媒体を作製した。このような実験例2に使用する磁気記録媒体を用いて、上記実験例1に準じてトラッキング制御の実験を行った。
【0088】
すなわち、下記表2に示されるディスクリートトラックディスク、読み出し用磁気ヘッドにおいて、トラックピッチTpを基準にして、W1、W2、Wrのそれぞれの諸元の大小関係の組み合わせによる位置誤差信号PESを全て求め、トラッキング特性としてPESの線形性が使用可能かどうかの判断を「使用レベル」の可否として示した。
【0089】
また、表2中の対応図面には、実施したW1,W2,TpおよびTrの関係が模式的図面として示されているので、対応する図面を参照されたい。また、PES信号も同時に図面中に示している。
【0090】
【表2】

【0091】
(1)表2に示される実施形態II−1の条件は、Tp>W2なる条件のもとに、磁気的読み出し幅Wrに対するバーストパターンのW1、W2並びにトラックピッチTpの関係を変えた場合に位置誤差信号PESがどのように変わるかを調べたものである。各ケースの対応図は図14〜図19がそれぞれ該当する。
【0092】
図14〜図19からわかるように、
「Tp>W2の場合であって、1.5W2≧Wr≧0.5W1」の範囲において、位置誤差検出信号の線形性が得られ、位置誤差信号として使用可能レベルであることがわかる。
なお、図8に示されるごとくM=2、n=3の場合の構造においては、上記Tp>W2の場合のみ考慮しておけばよい。
【0093】
〔III〕実験例3
台形形状の斜面の角度依存性についての実験を行なった。すなわち、上記表1における実施形態I−1の下限の条件Wr=0.5W1(図10)について、台形形状パターンの斜面の角度依存性を調べた。
【0094】
下記表3に、台形状パターンの台形斜面の角度依存性を調べるため実施した結果を示す。台形状パターンの斜面の角度θを21°、の図面31°38.7°、50°、85°に設定したときのPESを図20〜図24に示した。表3において、線形性の観点から使用可能レベルの場合を「○」を付け、線形性的に使用が難しいものについては「×」で示した。
【0095】
【表3】

【0096】
表3の結果から、台形状形状のパターンにおいて、条件の厳しい場合においても、特にトラック幅方向における台形状構造の斜面と底面の角度が、少なくとも50°以上の角度を有することが好ましい。最大の斜面の角度は、85°以下とするのが好ましい。
【0097】
すなわち、凸状磁気記録層の下辺であるW2から上辺であるW1までの高さをhとした場合、
tan85°≧2h/(W2−W1)≧tan50°、好ましくは、
tan80 ≧2h/(W2−W1)≧tan70、とするのがよい。
【0098】
以上の結果より本発明の効果は明らかである。すなわち、本発明は、ディスクリートメディアにおけるバーストパターン形状を、トラック幅方向およびトラック円周方向にそれぞれ実質的な台形形状を有する形状(四角錐台形状)とし、トラック幅方向の台形形状において凸状磁気記録層の表面に対応する上辺をW1、凸状磁気記録層の下面に対応する下辺をW2、データ情報記録部のデータトラックピッチをTp、磁気ヘッドの読み出し幅をWrとしたときに所定の関係を満たすように構成しているので、プロセス上での寸法精度マージンを或る程度取ることが可能で製造負担が軽減され、なおかつ正確な位置誤差信号を得ることができるバーストパターン形状を有する磁気記録媒体およびそれを用いた磁気記録再生装置を提供することができる。
【0099】
なお、図4に示されるような磁性層の一部が残されている形態においても、薄く残っている残余の磁性層は磁気特性にほとんど影響を及ぼさないので、残余の部分を無視した凸状磁気記録層の下面に対応する下辺をW2と考えて、本発明を適用すればよい。
【0100】
なお、上記の実験例はあくまで位置誤差信号(PES)の線形性を確保するための条件であり、実際の装置においては、読み取りヘッドの幅Wr(磁気的読み出し幅Wr)が、隣接するデータトラックを直接再生しないようにする条件が付加される。
【0101】
すなわち、データトラック幅をWとし、トラックピッチをTpとした場合、
Wr<2Tp−W
という条件が必要となる。つまり、図27に示されるように、磁気的読み出し幅Wrが隣接する2つのデータトラックを跨がないようにするための条件である。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明の磁気記録装置は、特に、コンピュータに装備して用いられるものであり、情報記録のための装置産業に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】図1は、本発明のディスク状の磁気記録媒体の全体形状を表す概略平面図である。
【図2】図2は、図1の四角で囲まれた微小部分の部分拡大概略図である。
【図3】本発明の磁気記録媒体の好適な実施の形態を概念的に示す断面図である。
【図4】本発明の磁気記録媒体の好適な実施の形態を概念的に示す断面図である。
【図5】台形状形状の垂直磁気記録層の構造を示す概略斜視図である。
【図6】磁気記録再生装置の概略斜視図である。
【図7】いわゆるM=2,n=1の場合におけるバースト部の構造をトラックピッチとの関係を含めて描いた概略平面図である。
【図8】いわゆるM=2,n=3の場合におけるバースト部の構造をトラックピッチとの関係を含めて描いた概略平面図である。
【図9】具体的な実験態様を図面にしたものであって、磁気的読み出し幅Wrに対するバーストパターンのW1、W2並びにトラックピッチTpの関係を模式的に示す図面である。位置誤差信号PESも同時に併記してある。
【図10】具体的な実験態様を図面にしたものであって、磁気的読み出し幅Wrに対するバーストパターンのW1、W2並びにトラックピッチTpの関係を模式的に示す図面である。位置誤差信号PESも同時に併記してある。
【図11】具体的な実験態様を図面にしたものであって、磁気的読み出し幅Wrに対するバーストパターンのW1、W2並びにトラックピッチTpの関係を模式的に示す図面である。位置誤差信号PESも同時に併記してある。
【図12】具体的な実験態様を図面にしたものであって、磁気的読み出し幅Wrに対するバーストパターンのW1、W2並びにトラックピッチTpの関係を模式的に示す図面である。位置誤差信号PESも同時に併記してある。
【図13】具体的な実験態様を図面にしたものであって、磁気的読み出し幅Wrに対するバーストパターンのW1、W2並びにトラックピッチTpの関係を模式的に示す図面である。位置誤差信号PESも同時に併記してある。
【図14】具体的な実験態様を図面にしたものであって、磁気的読み出し幅Wrに対するバーストパターンのW1、W2並びにトラックピッチTpの関係を模式的に示す図面である。位置誤差信号PESも同時に併記してある。
【図15】具体的な実験態様を図面にしたものであって、磁気的読み出し幅Wrに対するバーストパターンのW1、W2並びにトラックピッチTpの関係を模式的に示す図面である。位置誤差信号PESも同時に併記してある。
【図16】具体的な実験態様を図面にしたものであって、磁気的読み出し幅Wrに対するバーストパターンのW1、W2並びにトラックピッチTpの関係を模式的に示す図面である。位置誤差信号PESも同時に併記してある。
【図17】具体的な実験態様を図面にしたものであって、磁気的読み出し幅Wrに対するバーストパターンのW1、W2並びにトラックピッチTpの関係を模式的に示す図面である。位置誤差信号PESも同時に併記してある。
【図18】具体的な実験態様を図面にしたものであって、磁気的読み出し幅Wrに対するバーストパターンのW1、W2並びにトラックピッチTpの関係を模式的に示す図面である。位置誤差信号PESも同時に併記してある。
【図19】具体的な実験態様を図面にしたものであって、磁気的読み出し幅Wrに対するバーストパターンのW1、W2並びにトラックピッチTpの関係を模式的に示す図面である。位置誤差信号PESも同時に併記してある。
【図20】台形状パターンの台形斜面の角度依存性を調べるため実施した実験態様を図面にしたものである。
【図21】台形状パターンの台形斜面の角度依存性を調べるため実施した実験態様を図面にしたものである。
【図22】台形状パターンの台形斜面の角度依存性を調べるため実施した実験態様を図面にしたものである。
【図23】台形状パターンの台形斜面の角度依存性を調べるため実施した実験態様を図面にしたものである。
【図24】台形状パターンの台形斜面の角度依存性を調べるため実施した実験態様を図面にしたものである。
【図25】図9のA−A´矢視断面模式図である。
【図26】「読み出し幅Wr」の定義を説明するための図面である。
【図27】磁気的読み出し幅Wrの上限の条件を説明するための図面である。
【符号の説明】
【0104】
1…磁気記録媒体
2…スピンドルモータ
3…ボイスコイルモータ
4…回動アーム
5…記録再生磁気ヘッド
10…垂直磁気記録層
11…軟磁性層
12…中間層
13…保護膜
14…配向層
20…非磁性層
80…データ情報記録部
90…サーボ用情報部
91…ISG部
92…SVAM部
93…グレイコード部
94…バースト部
95…パッド部
Tp…データトラックピッチ
Bp…バーストパターンピッチ
VTR1…第1のバーストトラック
VTR2…第2のバーストトラック
VTR3…第3のバーストトラック
VTR4…第4のバーストトラック
Wr…磁気的読み出し幅
W…データトラック幅
PES…位置誤差信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
データ情報記録部及びトラッキング用のサーボ用情報部を有する磁気記録媒体と、前記サーボ用情報部のサーボ情報を検出するとともに、前記データ情報記録部にデータ情報を記録し再生する磁気ヘッドと、を有する磁気記録再生装置において、
前記データ情報記録部はデータトラックピッチTpのデータトラックを備え、
前記サーボ用情報部は所定の凹凸パターンで形成された磁気記録層から構成されており、
前記サーボ用情報部は、トラッキング用のバースト信号が記録されるバースト部を備え、
前記バースト部は、バースト信号が記録された複数の凸部の磁気記録層からなる第1のバースト、第2のバースト、第3のバースト、および第4のバーストを有し、
前記第1のバーストおよび第2のバーストは、対をなし、互いに、トラック幅方向に、2トラックピッチ分の距離(2Tp)ずれた位置を中心線として凸部の磁気記録層を形成するように配置されており、
前記第3のバーストおよび第4のバーストは、対をなし、互いに、トラック幅方向に、2トラックピッチ分の距離(2Tp)ずれた位置を中心線として凸部の磁気記録層を形成するように配置されるとともに、当該第3のバーストおよび第4のバーストは、前記第1のバーストおよび第2のバーストの中心線から1トラックピッチ分の距離(1Tp)ずれた位置を中心線として凸部の磁気記録層を形成するように配置されており、
前記凸部の磁気記録層は、トラック幅方向およびトラック円周方向にそれぞれ実質的な台形形状を有し(四角錐台形状)、
前記トラック幅方向の台形形状において、凸状磁気記録層の表面に対応する上辺をW1、凸状磁気記録層の下面に対応する下辺をW2、データ情報記録部のデータトラックピッチをTp、磁気ヘッドの読み出し幅をWrとしたとき、
W1>Tpの場合であって、
1.25W2>Wr≧0.5W2
の条件を満たしてなることを特徴とする磁気記録再生装置。
【請求項2】
データ情報記録部及びトラッキング用のサーボ用情報部を有する磁気記録媒体と、前記サーボ用情報部のサーボ情報を検出するとともに、前記データ情報記録部にデータ情報を記録し再生する磁気ヘッドと、を有する磁気記録再生装置において、
前記データ情報記録部はデータトラックピッチTpのデータトラックを備え、
前記サーボ用情報部は所定の凹凸パターンで形成された磁気記録層から構成されており、
前記サーボ用情報部は、トラッキング用のバースト信号が記録されるバースト部を備え、
前記バースト部は、バースト信号が記録された複数の凸部の磁気記録層からなる第1のバースト、第2のバースト、第3のバースト、および第4のバーストを有し、
前記第1のバーストおよび第2のバーストは、対をなし、互いに、トラック幅方向に、(2/3)トラックピッチ分の距離((2/3)Tp)ずれた位置を中心線として凸部の磁気記録層を形成するように配置されており、
前記第3のバーストおよび第4のバーストは、対をなし、互いに、トラック幅方向に、(2/3)トラックピッチ分の距離((2/3)Tp)ずれた位置を中心線として凸部の磁気記録層を形成するように配置されるとともに、当該第3のバーストおよび第4のバーストは、前記第1のバーストおよび第2のバーストの中心線から(1/3)トラックピッチ分の距離((1/3)Tp)ずれた位置を中心線として凸部の磁気記録層を形成するように配置されており、
前記凸部の磁気記録層は、トラック幅方向およびトラック円周方向にそれぞれ実質的な台形形状を有し(四角錐台形状)、
前記トラック幅方向の台形形状において、凸状磁気記録層の表面に対応する上辺をW1、凸状磁気記録層の下面に対応する下辺をW2、データ情報記録部のデータトラックピッチをTp、磁気ヘッドの読み出し幅をWrとしたとき、
Tp>W2の場合であって、
1.5W2≧Wr≧0.5W1
の条件を満たしてなることを特徴とする磁気記録再生装置。
【請求項3】
凸状磁気記録層の下辺であるW2から上辺であるW1までの高さをhとした場合、
tan85°≧2h/(W2−W1)≧tan50°
の条件を満たしてなる請求項1または請求項2に記載の磁気記録再生装置。
【請求項4】
データトラック幅をWとし、磁気的読み出し幅をWr、トラックピッチをTpとした場合、
Wr<2Tp−W
の条件を満たしてなる請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の磁気記録再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2007−18651(P2007−18651A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−201573(P2005−201573)
【出願日】平成17年7月11日(2005.7.11)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】