説明

磁気記録媒体、磁気記録装置、および磁気記録媒体製造方法

【課題】ユーザデータ領域およびサーボ領域の各々において複数の記録磁性部が離隔して設けられている磁気記録媒体において、サーボ領域の記録磁性部の磁化反転を抑制する。
【解決手段】本発明の磁気記録媒体X1は、ユーザデータ領域S1およびサーボ領域S2を含む記録層20を備える。ユーザデータ領域S1は、相対的に大きな磁気異方性エネルギを有する第1磁性材料よりなる垂直磁性層21aと、相対的に小さな磁気異方性エネルギを有する第2磁性材料よりなり且つ垂直磁性層21aと交換結合する垂直磁性層21bと、を含む積層構造を有する複数の記録磁性部21を含む。サーボ領域S2は、例えば、第2磁性材料よりも磁気異方性エネルギの大きな第3磁性材料よりなり且つ垂直磁気異方性を有する複数の記録磁性部22を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターニングされた記録磁性部を有する磁気記録媒体、そのような磁気記録媒体を備えた磁気記録装置、および、そのような磁気記録媒体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ハードディスクなどの記憶装置を構成するための記録媒体として、磁気ディスク(磁気記録媒体)が知られている。磁気ディスクは、ディスク基板と所定の磁性構造を有する記録層とを含む積層構造を有する。コンピュータシステム等における情報処理量の増大に伴い、磁気ディスクについては高記録密度化の要求が高まっている。
【0003】
磁気ディスクの技術分野においては、高記録密度化を図るのに適した磁気ディスクとして、いわゆるビットパターンドメディア(BPM)が知られている。BPMたる磁気ディスクについては、例えば下記の特許文献1〜3に記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開2005−100499号公報
【特許文献2】特開2008−123638号公報
【特許文献3】特開2008−234774号公報
【0005】
図16および図17は、BPMたる従来の磁気ディスク80を表す。図16は、磁気ディスク80の部分拡大平面図である。図17は、図16の線XVII−XVIIに沿った断面図である。
【0006】
磁気ディスク80は、ディスク基板81、記録層82、および保護膜83(図16では図示略)からなる積層構造を有する。記録層82は、磁気ディスク80の周方向D1に隣り合って交互に配されたユーザデータ領域S1およびサーボ領域S2を含み、相互に離隔する複数の記録磁性部82Aと、相互に離隔する複数の記録磁性部82Bと、これらの間に介在する非磁性部82Cとからなる。記録磁性部82Aは、垂直磁気異方性を有し、ユーザデータ領域S1に含まれる。ユーザデータ領域S1における複数の記録磁性部82Aの各々は図16に示すようにドット状の単一の記録セルをなすように設けられ、各記録磁性部82Aが所定方向に磁化されて、周方向D1に連なる記録磁性部82Aにおいて所定のユーザデータが記録されている。一方、記録磁性部82Bは、垂直磁気異方性を有し、サーボ領域S2に含まれる。サーボ領域S2において周方向D1に連なる記録磁性部82Bにおいてサーボ情報が保持される。図16に示すように、記録磁性部82Bは磁気ディスク80の径方向D2に延びる形状を有する。径方向D2において、記録磁性部82Bは、トラック幅に相当する長さや、複数のトラックにわたる長さを有する。BPMたる磁気ディスク80では、サーボ情報をなすための記録磁性部82Bは、記録セルをなすための記録磁性部82Aよりも、磁気ディスク80の径方向D2において長い。
【0007】
図18から図20は、従来の磁気ディスク80の製造方法を表す。磁気ディスク80の製造においては、まず、図18(a)に示すように、垂直磁気異方性を有する磁性膜82’がディスク基板81上に形成される。次に、図18(b)に示すように、スピンコーティング法により、磁性膜82’上に所定のレジスト膜84が形成される。次に、図18(c)および図19(a)に示すように、スタンパ85を使用したインプリント工程が行われる。スタンパ85は複数の凹部85aを有する。凹部85aは、上述の記録層82における記録磁性部82A,82Bに対応するパターン形状を有し、且つ、各凹部85aの深さは全て同じである。本工程では、このようなスタンパ85がレジスト膜84に押し付けられる。これにより、スタンパ85の凹凸情報がレジスト膜84に転写されて、磁性膜82’上にレジストパターン84Aが形成される。レジストパターン84Aは、上述の記録層82における記録磁性部82A,82Bに対応するパターン形状を有する。インプリント工程の後、レジストパターン84Aからスタンパ85が取り外される。
【0008】
本方法では、次に、図19(b)に示すように、レジストパターン84Aがマスクとして利用されて磁性膜82’に対してドライエッチングが施され、磁性膜82’がパターニングされる。これにより、上述の記録磁性部82A,82Bがパターン形成されることとなる。次に、図20(a)に示すように、レジストパターン84Aが除去される。次に、図20(b)に示すように、記録磁性部82A,82B間に非磁性部82Cが形成される。次に、図20(c)に示すように、保護膜83が形成される。以上のような方法により、パターニングされた記録磁性部82A,82Bを有する従来の磁気ディスク80は製造される。
【0009】
磁気ディスク80において、ユーザデータ領域S1に含まれる記録磁性部82Aと、サーボ領域S2に含まれる記録磁性部82Bとは、上述のように同じ磁性膜82’に由来して形成され、同じ組成の磁性材料よりなる。記録磁性部82A,82Bが同じ組成の磁性材料よりなるため、記録磁性部82Aの異方性磁界と記録磁性部82Bの異方性磁界とは同じである。しかしながら、記録磁性部82Aの保磁力と記録磁性部82Bの保磁力とは有意に異なる。記録磁性部82A,82Bは同じ組成の磁性材料よりなるけれども、記録磁性部82Aの保磁力と記録磁性部82Bの保磁力とは有意に異なるのである。
【0010】
膜状であって垂直磁気異方性を有する磁性部の保磁力は、当該磁性部のパターン形状によって異なり得るところ、当該磁性部の磁気的な孤立度が高いほど、当該磁性部の保磁力は高い傾向にあることが知られている。すなわち、膜状であって垂直磁気異方性を有する磁性部の広がり面積が大きいほど、当該磁性部の保磁力は小さい傾向にあることが知られている。そして、膜状であって垂直磁気異方性を有する磁性部の保磁力は、当該磁性部における磁化反転の生じやすさに影響を与える。保磁力が小さいほど、磁性部は磁化反転しやすい。
【0011】
従来の磁気ディスク80においては、サーボ領域S2に含まれる記録磁性部82Bは、上述のように径方向D2に延びる形状を有し、ユーザデータ領域S1に含まれるドット状の記録磁性部82Aよりも、広がり面積が大きい。そのため、記録磁性部82Bの保磁力は、記録磁性部82Aの保磁力よりも有意に小さい。そして、ユーザデータ領域S1に含まれる記録磁性部82Aについては、記録や再生を実行するために稼働する記録装置における記録用の磁気ヘッドによって磁化方向を変更可能な程度に、保磁力が小さく設定される。このような記録磁性部82Aよりも、記録磁性部82Bは保磁力が小さくなる。このような記録磁性部82Bは、磁気ヘッドからの漏れ磁界などの磁気的外乱の作用によって、磁化反転してしまう場合がある。
【0012】
このように、BPMたる従来の磁気ディスク80においては、サーボ領域S2の記録磁性部82Bに磁気的外乱が作用することによって記録磁性部82Bが磁化反転しやすい。サーボ領域S2にてサーボ情報を保持する複数の記録磁性部82Bにおいて、磁化方向が本来的な方向から反転している記録磁性部82Bが存在すると、磁気ディスク80について記録や再生を実行するために稼働する記録装置の磁気ヘッドが当該サーボ領域S2において適切なサーボ情報を読み取ることができない。すなわち、記録装置においてサーボ情報検出エラーが頻発する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、以上のような事情の下で考え出されたものであり、ユーザデータ領域およびサーボ領域の各々において複数の記録磁性部が離隔して設けられた、サーボ領域の記録磁性部の磁化反転を抑制するのに適した磁気記録媒体、そのような磁気記録媒体を備える磁気記録装置、および、そのような磁気記録媒体を製造するための方法を提供することを、目的とする。
【0014】
本発明の第1の側面によると磁気記録媒体が提供される。この磁気記録媒体は、ユーザデータ領域およびサーボ領域を含む記録層を備える。ユーザデータ領域は複数の第1記録磁性部を含み、サーボ領域は複数の第2記録磁性部を含む。第1記録磁性部は、相対的に大きな磁気異方性エネルギを有する第1磁性材料よりなる第1垂直磁性層と、相対的に小さな磁気異方性エネルギを有する第2磁性材料よりなり且つ第1垂直磁性層と交換結合する第2垂直磁性層と、を含む積層構造を有する。第2記録磁性部は、第2磁性材料よりも磁気異方性エネルギの大きな第3磁性材料よりなり、且つ、垂直磁気異方性を有する。
【0015】
本発明の第1の側面に係る磁気記録媒体において、ユーザデータ領域に含まれる第1記録磁性部の第1垂直磁性層は、第2垂直磁性層をなす第2磁性材料よりも磁気異方性エネルギの大きな磁性材料、例えば硬磁性材料よりなる。これに対し、第1記録磁性部の第2垂直磁性層は、第1垂直磁性層をなす第1磁性材料よりも磁気異方性エネルギの小さな磁性材料、例えば軟磁性材料よりなる。第1記録磁性部では、これら第1および第2垂直磁性層が交換結合している。すなわち、第1記録磁性部は、例えば硬磁性層たる第1垂直磁性層(ハード層)と例えば軟磁性層たる第2垂直磁性層(ソフト層)とが交換結合してなるいわゆるハード/ソフト スタック構造をとる。
【0016】
ハード/ソフト スタック構造をとる磁性部において、ハード層とソフト層の磁化がコヒーレンシーを保って一緒に回転し得る程度に当該磁性部の全体厚さが充分に小さい場合、当該磁性部における実効的な異方性磁界Hkは、下記の式(1)で表されることが知られている。式(1)において、Hk0は、ソフト層(第1記録磁性部では第2垂直磁性層)がない場合の異方性磁界であり、γは、ハード層(第1記録磁性部では第1垂直磁性層)に対するソフト層(第1記録磁性部では第2垂直磁性層)の厚さの比である。
【0017】
【数1】

【0018】
式(1)からは、γが大きいほどHkは小さい傾向にあることが分かる。γの増加により、Hk0に対してHkは1+γに反比例して減少するのである。そのため、ハード/ソフト スタック構造をとる磁性部の異方性磁界Hkは、ソフト層が存在しないとした場合(γ=0の場合)における異方性磁界Hk0より小さい。そして、ハード/ソフト スタック構造をとる磁性部が磁気的に充分に孤立している場合には、当該磁性部の異方性磁界Hkが小さいほど当該磁性部の保磁力Hcも小さい傾向にある。
【0019】
したがって、本発明の第1の側面においては、第1記録磁性部(ハード/ソフト スタック構造をとる)の異方性磁界Hkは、第2垂直磁性層(ソフト層)が存在しないとした場合における異方性磁界Hk0よりも小さい。そして、第1記録磁性部が磁気的に充分に孤立している場合には、当該第1記録磁性部の異方性磁界Hkが小さいほど当該第1記録磁性部の保磁力Hc1も小さい傾向にある。本磁気記録媒体では、複数のこのような第1記録磁性部において、ユーザデータを書き換え可能に記録することができる。
【0020】
また、本発明の第1の側面に係る磁気記録媒体において、サーボ領域に含まれる第2記録磁性部は、第1記録磁性部の第2垂直磁性層をなす第2磁性材料よりも磁気異方性エネルギの大きな磁性材料、例えば硬磁性材料よりなる。このような第2記録磁性部については、異方性磁界の比較的に大きな磁性部として設けることが可能である。第2記録磁性部が磁気的に充分に孤立している場合には、当該第2記録磁性部の異方性磁界が大きいほど当該第2記録磁性部の保磁力Hc2も大きい傾向にある。保磁力Hc2が大きいほど、第2記録磁性部は磁化反転しにくい。本磁気記録媒体は、複数のこのような第2記録磁性部において、サーボ情報を保持することができる。
【0021】
以上のように、本磁気記録媒体は、異方性磁界を小さく設定しやすく従って保磁力を小さく設定しやすい第1記録磁性部をユーザデータ領域に有し、且つ、異方性磁界を大きく設定しやすく従って保磁力を大きく設定しやすい第2記録磁性部をサーボ領域に有する。このような本磁気記録媒体では、第2記録磁性部の保磁力Hc2を第1記録磁性部の保磁力Hc1より大きく設定しやすい。或は、本磁気記録媒体では、保磁力Hc2が保磁力Hc1より小さくても、当該保磁力間の差を、上述の磁気ディスク80の記録磁性部82Aの保磁力と記録磁性部82Bの保磁力(記録磁性部82Aの保磁力より小さい)との差よりも小さく設定しやすい。したがって、本磁気記録媒体は、サーボ領域の記録磁性部の磁化反転を抑制するのに適する。具体的には、本媒体は、ユーザデータ領域に含まれる第1記録磁性部について記録用磁気ヘッドによって磁化方向を変更可能な程度に保磁力を小さく設定しつつ、サーボ領域に含まれる第2記録磁性部について磁化反転を抑制する程度に保磁力を大きく設定するのに適する。
【0022】
本発明の第2の側面によると磁気記録媒体が提供される。この磁気記録媒体は、ユーザデータ領域およびサーボ領域を含む記録層を備える。ユーザデータ領域は複数の第1記録磁性部を含み、サーボ領域は複数の第2記録磁性部を含む。第1記録磁性部は、相対的に大きな磁気異方性エネルギを有する第1磁性材料よりなる第1垂直磁性層と、相対的に小さな磁気異方性エネルギを有する第2磁性材料よりなり且つ第1垂直磁性層と交換結合する第2垂直磁性層と、を含む積層構造を有する。第2記録磁性部は、第3垂直磁性層と第4垂直磁性層とを含む積層構造を有する。第3垂直磁性層は、第2磁性材料よりも磁気異方性エネルギの大きな第3磁性材料よりなる。第4垂直磁性層は、第3磁性材料よりも磁気異方性エネルギの小さな第4磁性材料よりなり、第3垂直磁性層と交換結合し、且つ第2垂直磁性層より薄い。
【0023】
本発明の第2の側面に係る磁気記録媒体において、ユーザデータ領域に含まれる第1記録磁性部の第1垂直磁性層は、第2垂直磁性層をなす第2磁性材料よりも磁気異方性エネルギの大きな磁性材料、例えば硬磁性材料よりなる。これに対し、第1記録磁性部の第2垂直磁性層は、第1垂直磁性層をなす第1磁性材料よりも磁気異方性エネルギの小さな磁性材料、例えば軟磁性材料よりなる。第1記録磁性部では、これら第1および第2垂直磁性層が交換結合している。すなわち、第1記録磁性部は、例えば硬磁性層たる第1垂直磁性層(ハード層)と例えば軟磁性層たる第2垂直磁性層(ソフト層)とが交換結合してなるいわゆるハード/ソフト スタック構造をとる。ハード/ソフト スタック構造をとる磁性部において、ハード層とソフト層の磁化がコヒーレンシーを保って一緒に回転し得る程度に当該磁性部の全体厚さが充分に小さい場合、当該磁性部における実効的な異方性磁界Hkは、上述のように上記式(1)で表される。したがって、本発明の第2の側面においては、第1の側面に関して上述したのと同様に、第1記録磁性部(ハード/ソフト スタック構造をとる)の異方性磁界Hkは、第2垂直磁性層(ソフト層)が存在しないとした場合における異方性磁界Hk0より小さい。そして、第1記録磁性部が磁気的に充分に孤立している場合には、当該第1記録磁性部の異方性磁界Hkが小さいほど当該第1記録磁性部の保磁力Hc1も小さい傾向にある。本磁気記録媒体では、複数のこのような第1記録磁性部において、ユーザデータを書き換え可能に記録することができる。
【0024】
また、本発明の第2の側面に係る磁気記録媒体において、サーボ領域に含まれる第2記録磁性部の第3垂直磁性層は、第1記録磁性部の第2垂直磁性層をなす第2磁性材料よりも磁気異方性エネルギの大きな磁性材料、例えば硬磁性材料よりなる。これに対し、第2記録磁性部の第4垂直磁性層は、第3垂直磁性層をなす第3磁性材料よりも磁気異方性エネルギの小さな磁性材料、例えば軟磁性材料よりなる。第2記録磁性部では、これら第3および第4垂直磁性層が交換結合している。すなわち、第2記録磁性部は、例えば硬磁性層たる第3垂直磁性層(ハード層)と例えば軟磁性層たる第4垂直磁性層(ソフト層)とが交換結合してなるいわゆるハード/ソフト スタック構造をとる。このようにハード/ソフト スタック構造をとる第2記録磁性部の異方性磁界Hkは、第1記録磁性部の異方性磁界Hkと同様、上記式(1)で表される。一方、第2記録磁性部の第4垂直磁性層(ソフト層)は、第1記録磁性部の第2垂直磁性層(ソフト層)よりも薄い。ハード/ソフト スタック構造をとる磁性部におけるソフト層が薄いほど、即ち、ハード層に対するソフト層の厚さの比γが小さいほど、当該磁性部の異方性磁界Hkは大きい傾向にある。そのため、共にハード/ソフト スタック構造をとる第1および第2記録磁性部であっても、第1記録磁性部よりも第2記録磁性部を、異方性磁界の大きな磁性部として設けやすい。第2記録磁性部が磁気的に充分に孤立している場合には、当該第2記録磁性部の異方性磁界が大きいほど当該第2記録磁性部の保磁力Hc2も大きい傾向にある。保磁力Hc2が大きいほど、第2記録磁性部は磁化反転しにくい。本磁気記録媒体は、複数のこのような第2記録磁性部において、サーボ情報を保持することができる。
【0025】
以上のように、本磁気記録媒体は、異方性磁界を小さく設定しやすく従って保磁力を小さく設定しやすい第1記録磁性部をユーザデータ領域に有し、且つ、異方性磁界を大きく設定しやすく従って保磁力を大きく設定しやすい第2記録磁性部をサーボ領域に有する。このような本磁気記録媒体では、第2記録磁性部の保磁力Hc2を第1記録磁性部の保磁力Hc1より大きく設定しやすい。或は、本磁気記録媒体では、保磁力Hc2が保磁力Hc1より小さくても、当該保磁力間の差を、上述の磁気ディスク80の記録磁性部82Aの保磁力と記録磁性部82Bの保磁力(記録磁性部82Aの保磁力より小さい)との差よりも小さく設定しやすい。したがって、本磁気記録媒体は、サーボ領域の記録磁性部の磁化反転を抑制するのに適する。具体的には、本媒体は、ユーザデータ領域に含まれる第1記録磁性部について記録用磁気ヘッドによって磁化方向を変更可能な程度に保磁力を小さく設定しつつ、サーボ領域に含まれる第2記録磁性部について磁化反転を抑制する程度に保磁力を大きく設定するのに適する。
【0026】
本発明の第3の側面によると磁気記録媒体が提供される。この磁気記録媒体は、ユーザデータ領域およびサーボ領域を含む記録層を備える。ユーザデータ領域は、垂直磁気異方性を有する複数の第1記録磁性部を含み、サーボ領域は、垂直磁気異方性を有する複数の第2記録磁性部を含み、第2記録磁性部の異方性磁界は第1記録磁性部の異方性磁界より大きい。
【0027】
本磁気記録媒体においては、第2記録磁性部の異方性磁界は第1記録磁性部の異方性磁界よりも大きいところ、第2記録磁性部が磁気的に充分に孤立している場合には、当該第2記録磁性部の異方性磁界が大きいほど当該第2記録磁性部の保磁力も大きい傾向にある。第2記録磁性部の保磁力が大きいほど、第2記録磁性部は磁化反転しにくい。本磁気記録媒体は、複数のこのような第2記録磁性部において、サーボ情報を保持することができる。
【0028】
このような本磁気記録媒体では、第2記録磁性部の保磁力Hc2を第1記録磁性部の保磁力Hc1より大きく設定しやすい。或は、本磁気記録媒体では、保磁力Hc2が保磁力Hc1より小さくても、当該保磁力間の差を、上述の磁気ディスク80の記録磁性部82Aの保磁力と記録磁性部82Bの保磁力(記録磁性部82Aの保磁力より小さい)との差よりも小さく設定しやすい。したがって、本磁気記録媒体は、サーボ領域の記録磁性部の磁化反転を抑制するのに適する。具体的には、本媒体は、ユーザデータ領域に含まれる第1記録磁性部について記録用磁気ヘッドによって磁化方向を変更可能な程度に保磁力を小さく設定しつつ、サーボ領域に含まれる第2記録磁性部について磁化反転を抑制する程度に保磁力を大きく設定するのに適する。
【0029】
本発明の第4の側面によると磁気記録装置が提供される。この磁気記録装置は、本発明の第1の側面、第2の側面、または第3の側面に係る磁気記録媒体を備える。本発明の第1の側面に係る磁気記録媒体を備える磁気記録装置では、その具備する磁気記録媒体において、第1の側面に関して上述した効果が奏される。本発明の第2の側面に係る磁気記録媒体を備える磁気記録装置では、その具備する磁気記録媒体において、第2の側面に関して上述した効果が奏される。本発明の第3の側面に係る磁気記録媒体を備える磁気記録装置では、その具備する磁気記録媒体において、第3の側面に関して上述した効果が奏される。
【0030】
本発明の第5の側面によると磁気記録媒体製造方法が提供される。この磁気記録媒体製造方法は、第1工程、第2工程、第3工程、および第4工程を含む。第1工程では、相対的に磁気異方性エネルギの大きな第1磁性材料を基材上に成膜して、垂直磁気異方性を有する第1磁性材料層を形成する。第2工程では、相対的に磁気異方性エネルギの小さな第2磁性材料を第1磁性材料層上に成膜して、垂直磁気異方性を有し且つ第1磁性材料層と交換結合する第2磁性材料層を形成する。第3工程では、第1領域および第2領域を含み、第1領域において相対的に高い複数の凸部を有し且つ第2領域において相対的に低い複数の凸部を有する、マスクを、第2磁性材料層上に形成する。第4工程では、第1磁性材料層、第2磁性材料層、およびマスクを含む積層構造部に対して、マスクの側から異方性エッチング処理を施す。これにより、第4工程では、マスクの第1領域に対応する箇所にて、第1磁性材料層に由来する第1垂直磁性層および第2磁性材料層に由来する第2垂直磁性層を含む複数の第1記録磁性部を形成する。これとともに、第4工程では、マスクの第2領域に対応する箇所にて、第1磁性材料層に由来する複数の第2記録磁性部を形成する。このような方法によると、本発明の第1の側面または第3の側面に係る磁気記録媒体を適切に製造することができる。
【0031】
本発明の第6の側面によると磁気記録媒体製造方法が提供される。この磁気記録媒体製造方法は、第1工程、第2工程、第3工程、および第4工程を含む。第1工程では、相対的に磁気異方性エネルギの大きな第1磁性材料を基材上に成膜して、垂直磁気異方性を有する第1磁性材料層を形成する。第2工程では、相対的に磁気異方性エネルギの小さな第2磁性材料を第1磁性材料層上に成膜して、垂直磁気異方性を有し且つ第1磁性材料層と交換結合する第2磁性材料層を形成する。第3工程では、第1領域および第2領域を含み、第1領域において相対的に高い複数の凸部を有し且つ第2領域において相対的に低い複数の凸部を有する、マスクを、第2磁性材料層上に形成する。第4工程では、第1磁性材料層、第2磁性材料層、およびマスクを含む積層構造部に対して、マスクの側から異方性エッチング処理を施す。これにより、第4工程では、マスクの第1領域に対応する箇所にて、第1磁性材料層に由来する第1垂直磁性層および第2磁性材料層に由来する第2垂直磁性層を含む複数の第1記録磁性部を形成する。これとともに、第4工程では、マスクの第2領域に対応する箇所にて、第1磁性材料層に由来する第3垂直磁性層および第2磁性材料層に由来して第2垂直磁性層よりも薄い第4垂直磁性層を含む複数の第2記録磁性部を形成する。このような方法によると、本発明の第2の側面または第3の側面に係る磁気記録媒体を適切に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
図1から図3は、本発明の第1の実施形態に係る磁気ディスクX1を表す。図1は、磁気ディスクX1の平面図である。図2は、磁気ディスクX1の部分拡大平面図である。図3は、図2の線III−IIIに沿った断面図である。
【0033】
磁気ディスクX1は、ディスク基板10、記録層20、軟磁性層30、および保護膜40(図1および図2では図示略)を含む積層構造を有する、情報記録と情報再生とを実行可能なビットパターンドメディア(BPM)である。
【0034】
ディスク基板10は、主に、磁気ディスクX1の剛性を確保するための部位であり、例えば、アルミニウム合金、ガラス、シリコン、またはポリカーボネート樹脂よりなる。
【0035】
記録層20は、ディスク基板10側の第1面20aおよび保護膜40側ないし記録面側の第2面20bを有し、磁気ディスクX1の周方向D1において交互に配されたユーザデータ領域S1およびサーボ領域S2を含む。また、記録層20は、ユーザデータ領域S1に含まれて相互に離隔する複数の記録磁性部21と、サーボ領域S2に含まれて相互に離隔する複数の記録磁性部22と、これらの間に介在する非磁性部23とを含んでなる。このような記録層20には、ユーザデータ領域S1およびサーボ領域S2にわたって延び且つ磁気ディスクX1の回転中心Aを共通中心として同心円状に配された複数のトラック(図示略)が設けられている。
【0036】
ユーザデータ領域S1における複数の記録磁性部21の各々は、図2に示すように、ドット状の単一の記録セルをなすように設けられている。図2に表れている記録磁性部21の直径は、例えば10〜30nmである。また、記録磁性部21は、図3に示すように、垂直磁気異方性を有する垂直磁性層21aと、垂直磁気異方性を有する垂直磁性層21bとを含む積層構造を有する。垂直磁性層21aは、相対的に大きな磁気異方性エネルギを有する第1磁性材料よりなり、垂直磁性層21bは、相対的に小さな磁気異方性エネルギを有する第2磁性材料よりなる。第1磁性材料は例えば硬磁性材料であり、垂直磁性層21aのための硬磁性材料としては、例えば、CoPt、CoPtCr、またはSmCoを採用することができる。第2磁性材料は例えば軟磁性材料であり、垂直磁性層21bのための軟磁性材料としては、例えばCoやNiFeを採用することができる。記録磁性部21では、これら垂直磁性層21a,21bが交換結合している。すなわち、記録磁性部21は、例えば硬磁性層たる垂直磁性層21a(ハード層)と例えば軟磁性層たる垂直磁性層21b(ソフト層)とが交換結合してなるいわゆるハード/ソフト スタック構造をとる。このような記録磁性部21の全体厚さは、垂直磁性層21a(ハード層)と垂直磁性層21b(ソフト層)の磁化がコヒーレンシーを保って一緒に回転し得る程度に充分に小さく設定されており、例えば5〜20nmである。垂直磁性層21aの厚さは例えば4〜15nmである。垂直磁性層21bの厚さは例えば1〜5nmである。良好なハード/ソフト スタック構造をなすうえでは、垂直磁性層21bは垂直磁性層21aよりも薄いのが好ましい。ユーザデータ領域S1においては、各記録磁性部21が所定方向に磁化されて、磁気ディスクX1の周方向D1に連なる記録磁性部21において所定のユーザデータが書き換え可能に記録されている。
【0037】
サーボ領域S2における複数の記録磁性部22の各々は、図2に示すように、磁気ディスクX1の径方向D2に延びる形状を有する。径方向D2において、記録磁性部22は、トラック幅に相当する長さや、複数のトラックにわたる長さを有する。そして、記録磁性部22は、記録磁性部21の垂直磁性層21bの第2磁性材料よりも磁気異方性エネルギの大きな第3磁性材料よりなり、且つ、垂直磁気異方性を有する。第3磁性材料は例えば硬磁性材料であり、記録磁性部22のための硬磁性材料としては、例えば、CoPt、CoPtCr、またはSmCoを採用することができる。記録磁性部22のための第3磁性材料は、記録磁性部21の垂直磁性層21aのための第1磁性材料と、同じであってもよいし、異なってもよい。また、記録磁性部22は、記録層20の第2面20b側において記録磁性部21よりも退避している。このような記録磁性部22の厚さは例えば5〜20nmである。サーボ領域S2においては、磁気ディスクX1の周方向D1に連なる記録磁性部22においてサーボ情報が保持される。
【0038】
非磁性部23は、例えばSiN、C、SiO2などの非磁性材料よりなる。非磁性部23の存在により、記録磁性部21間、記録磁性部22間、および記録磁性部21,22間の磁気的相互作用が充分に抑制されて、各記録磁性部21および各記録磁性部22について充分に高い磁気的孤立度が確保されている。
【0039】
軟磁性層30は、磁気ディスクX1への記録時等に保護膜40に対向する磁気ヘッド(図示略)からの磁束を再び当該ヘッドに環流させる磁路を効率よく形成するためのものであり、高透磁率を有して大きな飽和磁化を有するとともに小さな保磁力を有する軟磁性材料よりなる。記録時には、記録用磁気ヘッドによる記録磁界の印加によって、ユーザデータ領域S1の各記録磁性部21が所定方向に磁化されるところ、軟磁性層30が存在することにより、記録磁性部21を磁化反転させるのに必要な実効的な記録磁界を低減させることが可能となる。このような軟磁性層30のための軟磁性材料としては、例えば、FeC、FeNi、FeCoB、FeCoSiC、FeCo−AlOを採用することができる。
【0040】
保護膜40は、記録層20や軟磁性層30を外界から物理的および化学的に保護するための部位であり、例えば、SiN、SiO2、またはダイアモンドライクカーボン(DLC)よりなる。
【0041】
以上のようなディスク基板10、記録層20、軟磁性層30、および保護膜40を含む磁気ディスクX1の積層構造中には、必要に応じて他の層が含まれてもよい。また、磁気ディスクX1は、記録層20、軟磁性層30、および保護膜40を含む積層構造をディスク基板10の片面または両面に有する。
【0042】
磁気ディスクX1において、ユーザデータ領域S1に含まれる各記録磁性部21は、上述のように、垂直磁性層21a(ハード層)と垂直磁性層21b(ソフト層)とが交換結合してなるいわゆるハード/ソフト スタック構造をとる。ハード/ソフト スタック構造をとる磁性部において、ハード層とソフト層の磁化がコヒーレンシーを保って一緒に回転し得る程度に当該磁性部の全体厚さが充分に小さい場合、当該磁性部における実効的な異方性磁界Hkは、下記の式(1)で表されることが知られている。式(1)において、Hk0は、ソフト層(記録磁性部21では垂直磁性層21b)がない場合の異方性磁界であり、γは、ハード層(記録磁性部21では垂直磁性層21a)に対するソフト層(記録磁性部21では垂直磁性層21b)の厚さの比である。
【0043】
【数2】

【0044】
式(1)からは、γが大きいほどHkは小さい傾向にあることが分かる。γの増加により、Hk0に対してHkは1+γに反比例して減少するのである。そのため、ハード/ソフト スタック構造をとる磁性部の異方性磁界Hkは、ソフト層が存在しないとした場合(γ=0の場合)における異方性磁界Hk0より小さい。そして、ハード/ソフト スタック構造をとる磁性部が磁気的に充分に孤立している場合には、当該磁性部の異方性磁界Hkが小さいほど当該磁性部の保磁力Hcも小さい傾向にある。
【0045】
したがって、磁気ディスクX1においては、記録磁性部21(ハード/ソフト スタック構造をとる)の異方性磁界Hkは、垂直磁性層21b(ソフト層)が存在しないとした場合における異方性磁界Hk0よりも小さい。そして、非磁性部23の存在によって記録磁性部21は磁気的に充分に孤立しているところ、記録磁性部21の異方性磁界Hkが小さいほど記録磁性部21の保磁力Hc1も小さい傾向にある。磁気ディスクX1では、複数のこのような記録磁性部21において、ユーザデータを書き換え可能に記録することができる。
【0046】
また、磁気ディスクX1において、サーボ領域S2に含まれる各記録磁性部22は、上述のように、記録磁性部21の垂直磁性層21bをなす第2磁性材料よりも磁気異方性エネルギの大きな磁性材料、例えば硬磁性材料よりなる。このような記録磁性部22については、異方性磁界の比較的に大きな磁性部として設けることが可能である。好ましくは、記録磁性部22の異方性磁界は、記録磁性部21の異方性磁界より大きい。非磁性部23の存在によって記録磁性部22は磁気的に充分に孤立しているところ、記録磁性部22の異方性磁界が大きいほど記録磁性部22の保磁力Hc2も大きい傾向にある。好ましくは、記録磁性部22の保磁力Hc2は、記録磁性部21の保磁力Hc1より大きい。保磁力Hc2が大きいほど、記録磁性部22は磁化反転しにくい。磁気ディスクX1は、複数のこのような記録磁性部22において、サーボ情報を保持することができる。
【0047】
以上のように、磁気ディスクX1は、異方性磁界を小さく設定しやすく従って保磁力を小さく設定しやすい記録磁性部21をユーザデータ領域S1に有し、且つ、異方性磁界したがって保磁力を大きく設定しやすい記録磁性部22をサーボ領域S2に有する。このような磁気ディスクX1では、記録磁性部22の保磁力Hc2を記録磁性部21の保磁力Hc1より大きく設定することが可能である。或は、磁気ディスクX1では、保磁力Hc2が保磁力Hc1より小さくても、当該保磁力間の差を、上述の磁気ディスク80の記録磁性部82Aの保磁力と記録磁性部82Bの保磁力(記録磁性部82Aの保磁力より小さい)との差よりも小さく設定することが可能である。したがって、磁気ディスクX1は、サーボ領域S2の記録磁性部22の磁化反転を抑制するのに適する。具体的には、磁気ディスクX1は、ユーザデータ領域S1の記録磁性部21について記録用磁気ヘッドによって磁化方向を変更可能な程度に保磁力を小さく設定しつつ、サーボ領域S2の記録磁性部22について磁化反転を抑制する程度に保磁力を大きく設定するのに適する。
【0048】
磁気ディスクX1の記録層20の記録磁性部22は、図3に示すように、記録層20の第2面20b側において記録磁性部21よりも退避している。このような構成は、記録磁性部22について磁化反転を抑制するのに資する。このような構成によると、磁気ディスクX1への記録時等に保護膜40に対向して走行する磁気ヘッド(図示略)と記録磁性部22との間の距離を大きく設定しやすいからである。磁気ヘッドと記録磁性部22との間の距離が大きいほど、磁気ヘッドからの漏れ磁界が記録磁性部22へ作用することは抑制され、記録磁性部22の磁化反転は抑制される。
【0049】
図4から図6は、磁気ディスクX1の製造方法を表す。本方法においては、まず、図4(a)に示すように、ディスク基板10上に、軟磁性層30、磁性膜51、磁性膜52、およびレジスト膜53を順次形成する。軟磁性層30の形成においては、例えばスパッタリング法により、軟磁性層30に関して上述した軟磁性材料をディスク基板10上に成膜する。磁性膜51の形成においては、例えばスパッタリング法により、記録磁性部21の垂直磁性層21aまたは記録磁性部22に関して上述した磁性材料を軟磁性層30上に成膜する。磁性膜52の形成においては、例えばスパッタリング法により、記録磁性部21の垂直磁性層21bに関して上述した磁性材料を磁性膜51上に成膜する。レジスト膜53の形成においては、熱硬化型レジスト材料または紫外線硬化型レジスト材料をスピンコーティング法によって磁性膜52上に成膜する。
【0050】
次に、図4(b)および図5(a)に示すように、スタンパ60を使用してインプリント工程を行う。スタンパ60は、製造すべき磁気ディスクX1におけるユーザデータ領域S1に対応する第1領域S1’とサーボ領域S2に対応する第2領域S2’とを含む。また、スタンパ60は、転写面60aを有し、転写面60a側に複数の凹部61および複数の凹部62を有する(即ち、転写面60aは凹凸形状を伴う)。複数の凹部61は第1領域S1’に設けられており、複数の凹部62は第2領域S2’に設けられている。凹部61は凹部62よりも深い。レジスト膜53として紫外線硬化型レジスト材料よりなるものを採用する場合、スタンパ60としては、紫外線が透過可能なものを使用する。
【0051】
本インプリント工程では、このようなスタンパ60の転写面60aをレジスト膜53に押し付ける。レジスト膜53が熱硬化型レジスト材料よりなる場合、スタンパ60をレジスト膜53に押し付けた状態で加熱してレジスト膜53を硬化させる。レジスト膜53が紫外線硬化型レジスト材料よりなる場合、スタンパ60をレジスト膜53に押し付けた状態でレジスト膜53に対して紫外線を照射してレジスト膜53を硬化させる。このようなインプリント工程によって、転写面60aの凹凸形状がレジスト膜53に転写されて、レジストマスク53Aが形成される。レジストマスク53Aは、製造すべき磁気ディスクX1におけるユーザデータ領域S1に対応する第1領域S1”とサーボ領域S2に対応する第2領域S2”とを含む。第1領域S1”には、スタンパ60の凹部61に応じて形成された凸部53aが含まれる。第2領域S2”には、スタンパ60の凹部62に応じて形成された凸部53bが含まれる。凸部53aの長さL1は、凸部53bの長さL2よりも大きい。
【0052】
また、本インプリント工程では、図5(a)に示すように、スタンパ60は磁性膜52に至らず、磁性膜52とスタンパ60との間にはレジスト材料が残存するのが好ましい。スタンパ60が磁性膜52に至ると、形成されるレジストマスク53Aと磁性膜52との接触面積が低下するなどしてレジストマスク53Aが磁性膜52から剥離しやすくなってしまう。そのような剥離が生じないように、スタンパ60と磁性膜52との間にレジスト材料が意図的に残されるのが好ましいのである。
【0053】
図7は、スタンパ60の作製方法の一例を表す。本方法においては、まず、図7(a)に示すように、スピンコーティング法によってディスク状の石英基板60’上にフォトレジスト膜70を形成する。
【0054】
次に、図7(b)に示すように、フォトリソ法によってフォトレジスト膜70に凹部71,72を形成する。具体的には、所定の電子ビーム描画装置を使用して行う露光処理によって所定パターン(潜像)をフォトレジスト膜70に露光形成した後、当該フォトレジスト膜70に現像処理を施す。露光処理においては、露光強度および露光時間を調節することによって、凹部72形成予定箇所における露光深さよりも、凹部71形成予定箇所における露光深さを大きくする。このような手法により、深さの異なる凹部71と凹部72とをフォトレジスト膜70に形成することができる。
【0055】
次に、図7(c)に示すように、フォトレジスト膜70側から石英基板60’に対して異方性ドライエッチングを施して、石英基板60’において凹部61,62を形成する。以上のようにして、スタンパ60を作製することができる。
【0056】
磁気ディスクX1の製造においては、スタンパ60を使用して行う上述のインプリント工程の後、図5(b)に示すように、スタンパ60をレジストマスク53Aから取り外す。
【0057】
次に、凸部53a,53bを有するレジストマスク53Aの側から磁性膜51,52に対して異方性ドライエッチングを施すことにより、図6(a)に示すように、上述の記録磁性部21,22をパターン形成する。レジストマスク53Aの凸部53a,53bの高さや、磁性膜52の厚さ、本工程でのエッチング時間等を調整することにより、磁性膜51,52由来の部分を有する記録磁性部21と、磁性膜52由来の部分を有さない記録磁性部22とを形成することができる。この後、例えば所定の溶解液を作用させることにより、レジストマスク53Aの残渣を除去する。
【0058】
次に、図6(b)に示すように非磁性部23を形成する。具体的には、記録磁性部21,22間の隙間を充填しつつ記録磁性部21,22を覆うように、非磁性部23に関して上述した非磁性材料を堆積させた後、過剰分を例えば研磨除去する。本工程にて、記録層20が形成されることとなる。
【0059】
次に、図6(c)に示すように保護膜40を形成する。保護膜40の形成においては、例えばスパッタリング法により、保護膜40に関して上述した材料を記録層20上に成膜する。以上のようにして、記録層20におけるユーザデータ領域S1に複数の記録磁性部21を有し且つサーボ領域S2に複数の記録磁性部22を有する磁気ディスクX1を、適切に製造することができる。
【0060】
本方法においては、記録磁性部21,22をパターニングする際に必要なマスク(所定の凸部53a,53bを有するレジストマスク53A)の形成にあたり、スタンパ60を使用して行うインプリント法を採用するため、電子ビーム描画装置を使用する必要はない。すなわち、磁気ディスクX1ごとの製造過程において、長時間にわたる電子ビーム描画装置による露光処理を行う必要はない。したがって、本方法は、磁気ディスクX1を効率よく製造するのに適し、磁気ディスクX1の量産化を図りやすい。
【0061】
図8および図9は、本発明の第2の実施形態に係る磁気ディスクX2を表す。図8は、磁気ディスクX2の拡大平面図であり、第1の実施形態に係る上述の磁気ディスクX1にとっての図2に相当する。図9は、図8の線IX−IXに沿った断面図であり、磁気ディスクX1にとっての図3に相当する。
【0062】
磁気ディスクX2は、ディスク基板10、記録層20’、軟磁性層30、および保護膜40を含む積層構造を有する、情報記録と情報再生とを実行可能なBPMである。磁気ディスクX2は、記録層20に代えて記録層20’を備える点において、磁気ディスクX1と異なる。
【0063】
記録層20’は、ディスク基板10側の第1面20aおよび保護膜40側ないし記録面側の第2面20bを有し、磁気ディスクX2の周方向D1において交互に配されたユーザデータ領域S1およびサーボ領域S2を含む。また、記録層20’は、ユーザデータ領域S1に含まれて相互に離隔する複数の記録磁性部21と、サーボ領域S2に含まれて相互に離隔する複数の記録磁性部22’と、これらの間に介在する非磁性部23とを含んでなる。このような記録層20’には、ユーザデータ領域S1およびサーボ領域S2にわたって延び且つ磁気ディスクX2の回転中心を共通中心として同心円状に配された複数のトラック(図示略)が設けられている。記録層20’は、記録磁性部22に代えて記録磁性部22’を備える点において、磁気ディスクX1における上述の記録層20と異なる。
【0064】
ユーザデータ領域S1における複数の記録磁性部21の各々は、図8に示すように、ドット状の単一の記録セルをなすように設けられている。図8に表れている記録磁性部21の直径は、例えば10〜30nmである。また、記録磁性部21は、図9に示すように、垂直磁気異方性を有する垂直磁性層21aと、垂直磁気異方性を有する垂直磁性層21bとを含む積層構造を有する。垂直磁性層21aは、相対的に大きな磁気異方性エネルギを有する第1磁性材料よりなり、垂直磁性層21bは、相対的に小さな磁気異方性エネルギを有する第2磁性材料よりなる。第1磁性材料は例えば硬磁性材料であり、垂直磁性層21aのための硬磁性材料としては、例えば、CoPt、CoPtCr、またはSmCoを採用することができる。第2磁性材料は例えば軟磁性材料であり、垂直磁性層21bのための軟磁性材料としては、例えばCoやNiFeを採用することができる。記録磁性部21では、これら垂直磁性層21a,21bが交換結合している。すなわち、記録磁性部21は、例えば硬磁性層たる垂直磁性層21a(ハード層)と例えば軟磁性層たる垂直磁性層21b(ソフト層)とが交換結合してなるいわゆるハード/ソフト スタック構造をとる。このような記録磁性部21の全体厚さは、垂直磁性層21a(ハード層)と垂直磁性層21b(ソフト層)の磁化がコヒーレンシーを保って一緒に回転し得る程度に充分に小さく設定されており、例えば5〜20nmである。垂直磁性層21aの厚さは例えば4〜15nmである。垂直磁性層21bの厚さは例えば1〜5nmである。良好なハード/ソフト スタック構造をなすうえでは、垂直磁性層21bは垂直磁性層21aよりも薄いのが好ましい。ユーザデータ領域S1においては、各記録磁性部21が所定方向に磁化されて、磁気ディスクX2の周方向D1に連なる記録磁性部21において所定のユーザデータが書き換え可能に記録されている。
【0065】
サーボ領域S2における複数の記録磁性部22’の各々は、図8に示すように、磁気ディスクX2の径方向D2に延びる形状を有する。径方向D2において、記録磁性部22’は、トラック幅に相当する長さや、複数のトラックにわたる長さを有する。また、記録磁性部22’は、図9に示すように、垂直磁気異方性を有する垂直磁性層22aと、垂直磁気異方性を有する垂直磁性層22bとを含む積層構造を有する。垂直磁性層22aは、記録磁性部21の垂直磁性層21bをなす第2磁性材料よりも磁気異方性エネルギの大きな第3磁性材料よりなり、垂直磁性層21bは、当該第3磁性材料よりも磁気異方性エネルギの小さな第4磁性材料よりなる。第3磁性材料は例えば硬磁性材料であり、垂直磁性層22aのための硬磁性材料としては、例えば、CoPt、CoPtCr、またはSmCoを採用することができる。垂直磁性層22aのための第3磁性材料は、記録磁性部21の垂直磁性層21aのための第1磁性材料と、同じであってもよいし、異なってもよい。第4磁性材料は例えば軟磁性材料であり、垂直磁性層22bのための軟磁性材料としては、例えばCoやNiFeを採用することができる。垂直磁性層22bのための第4磁性材料は、記録磁性部21の垂直磁性層21bのための第2磁性材料と、同じであってもよいし、異なってもよい。また、記録磁性部22’は、記録層20’の第2面20b側において記録磁性部21よりも退避している。記録磁性部22’では、これら垂直磁性層22a,22bが交換結合している。すなわち、記録磁性部22’は、例えば硬磁性層たる垂直磁性層22a(ハード層)と例えば軟磁性層たる垂直磁性層22b(ソフト層)とが交換結合してなるいわゆるハード/ソフト スタック構造をとる。このような記録磁性部22’の全体厚さは、垂直磁性層22a(ハード層)と垂直磁性層22b(ソフト層)の磁化がコヒーレンシーを保って一緒に回転し得る程度に充分に小さく設定されており例えば5〜20nmである。垂直磁性層22aの厚さは例えば4.5〜15.5nmである。垂直磁性層22bの厚さは、記録磁性部21の垂直磁性層21bの厚さより小さい限りにおいて、例えば0.5〜4.5nmである。良好なハード/ソフト スタック構造をなすうえでは、垂直磁性層22bは垂直磁性層22aよりも薄いのが好ましい。サーボ領域S2においては、磁気ディスクX2の周方向D1に連なる記録磁性部22’においてサーボ情報が保持される。
【0066】
記録層20’以外の磁気ディスクX2の構成は、記録層20以外の磁気ディスクX1の構成と同じである。ディスク基板10、記録層20’、軟磁性層30、および保護膜40を含む磁気ディスクX2の積層構造中には、必要に応じて他の層が含まれてもよい。また、磁気ディスクX2は、記録層20’、軟磁性層30、および保護膜40を含む積層構造をディスク基板10の片面または両面に有する。
【0067】
磁気ディスクX2において、ユーザデータ領域S1に含まれる各記録磁性部21は、上述のように、垂直磁性層21a(ハード層)と垂直磁性層21b(ソフト層)とが交換結合してなるいわゆるハード/ソフト スタック構造をとる。ハード/ソフト スタック構造をとる磁性部において、ハード層とソフト層の磁化がコヒーレンシーを保って一緒に回転し得る程度に当該磁性部の全体厚さが充分に小さい場合、当該磁性部における実効的な異方性磁界Hkは、上述のように上記式(1)で表される。したがって、磁気ディスクX2においては、磁気ディスクX1に関して上述したのと同様に、記録磁性部21(ハード/ソフト スタック構造をとる)の異方性磁界Hkは、垂直磁性層21b(ソフト層)が存在しないとした場合における異方性磁界Hk0より小さい。そして、非磁性部23の存在によって記録磁性部21は磁気的に充分に孤立しているところ、記録磁性部21の異方性磁界Hkが小さいほど記録磁性部21の保磁力Hc1も小さい傾向にある。磁気ディスクX2では、複数のこのような記録磁性部21において、ユーザデータを書き換え可能に記録することができる。
【0068】
また、磁気ディスクX2において、サーボ領域S2に含まれる各記録磁性部22’は、上述のように、垂直磁性層22a(ハード層)と垂直磁性層22b(ソフト層)とが交換結合してなるいわゆるハード/ソフト スタック構造をとる。このようにハード/ソフト スタック構造をとる記録磁性部22’の異方性磁界Hkは、記録磁性部21の異方性磁界Hkと同様、上記式(1)で表される。一方、記録磁性部22’の垂直磁性層22b(ソフト層)は、記録磁性部21の垂直磁性層21b(ソフト層)よりも薄い。ハード/ソフト スタック構造をとる磁性部におけるソフト層が薄いほど、即ち、ハード層に対するソフト層の厚さの比γが小さいほど、当該磁性部の異方性磁界Hkは大きい傾向にある。そのため、共にハード/ソフト スタック構造をとる記録磁性部21,22’であっても、例えば、記録磁性部21よりも記録磁性部22’を、異方性磁界の大きな磁性部として設けることが可能である。非磁性部23の存在によって記録磁性部22’は磁気的に充分に孤立しているところ、記録磁性部22’の異方性磁界が大きいほど記録磁性部22’の保磁力Hc2も大きい傾向にある。保磁力Hc2が大きいほど、記録磁性部22’は磁化反転しにくい。磁気ディスクX2は、複数のこのような記録磁性部22’において、サーボ情報を保持することができる。
【0069】
以上のように、磁気ディスクX2は、異方性磁界を小さく設定しやすく従って保磁力を小さく設定しやすい記録磁性部21をユーザデータ領域S1に有し、且つ、異方性磁界したがって保磁力を大きく設定しやすい記録磁性部22’をサーボ領域S2に有する。このような磁気ディスクX2では、記録磁性部22’の保磁力Hc2を記録磁性部21の保磁力Hc1より大きく設定することが可能である。或は、磁気ディスクX2では、保磁力Hc2が保磁力Hc1より小さくても、当該保磁力間の差を、上述の磁気ディスク80の記録磁性部82Aの保磁力と記録磁性部82Bの保磁力(記録磁性部82Aの保磁力より小さい)との差よりも小さく設定することが可能である。したがって、磁気ディスクX2は、サーボ領域S2の記録磁性部22’の磁化反転を抑制するのに適する。具体的には、磁気ディスクX2は、ユーザデータ領域S1の記録磁性部21について記録用磁気ヘッドによって磁化方向を変更可能な程度に保磁力を小さく設定しつつ、サーボ領域S2の記録磁性部22’について磁化反転を抑制する程度に保磁力を大きく設定できる。
【0070】
磁気ディスクX2の記録層20の記録磁性部22’は、記録層20の第2面20b側において記録磁性部21よりも退避している。このような構成は、記録磁性部22’について磁化反転を抑制するのに資する。このような構成によると、磁気ディスクX2への記録時等に保護膜40に対向して走行する磁気ヘッド(図示略)と記録磁性部22’との間の距離を大きく設定しやすいからである。磁気ヘッドと記録磁性部22’との間の距離が大きいほど、磁気ヘッドからの漏れ磁界が記録磁性部22’へ作用することは抑制され、記録磁性部22’の磁化反転は抑制される。
【0071】
図10から図12は、磁気ディスクX2の製造方法を表す。本方法においては、まず、図10(a)に示すように、ディスク基板10上に、軟磁性層30、磁性膜51、磁性膜52、およびレジスト膜53を順次形成する。軟磁性層30、磁性膜51,52、およびレジストマスク53の形成手法については、磁気ディスクX1の製造方法に関して図4(a)を参照して上述したのと同様である。
【0072】
次に、図10(b)および図11(a)に示すように、スタンパ60を使用してインプリント工程を行う。スタンパ60は、製造すべき磁気ディスクX2におけるユーザデータ領域S1に対応する第1領域S1’とサーボ領域S2に対応する第2領域S2’とを含む。また、スタンパ60は、転写面60aを有し、転写面60a側に複数の凹部61および複数の凹部62を有する(即ち、転写面60aは凹凸形状を伴う)。複数の凹部61は第1領域S1’に設けられており、複数の凹部62は第2領域S2’に設けられている。凹部61は凹部62よりも深い。レジスト膜53として紫外線硬化型レジスト材料よりなるものを採用する場合、スタンパ60としては、紫外線が透過可能なものを使用する。スタンパ60の製造手法は、磁気ディスクX1の製造方法に関して図7を参照して上述したのと同様である。
【0073】
本インプリント工程では、このようなスタンパ60の転写面60aをレジスト膜53に押し付ける。レジスト膜53が熱硬化型レジスト材料よりなる場合、スタンパ60をレジスト膜53に押し付けた状態で加熱してレジスト膜53を硬化させる。レジスト膜53が紫外線硬化型レジスト材料よりなる場合、スタンパ60をレジスト膜53に押し付けた状態でレジスト膜53に対して紫外線を照射してレジスト膜53を硬化させる。このようなインプリント工程によって、転写面60aの凹凸形状がレジスト膜53に転写されて、レジストマスク53Aが形成される。レジストマスク53Aは、製造すべき磁気ディスクX2におけるユーザデータ領域S1に対応する第1領域S1”とサーボ領域S2に対応する第2領域S2”とを含む。第1領域S1”には、スタンパ60の凹部61に応じて形成された凸部53aが含まれる。第2領域S2”には、スタンパ60の凹部62に応じて形成された凸部53bが含まれる。凸部53aの長さL1は、凸部53bの長さL2よりも大きい。
【0074】
また、本インプリント工程では、図11(a)に示すように、スタンパ60は磁性膜52に至らず、磁性膜52とスタンパ60との間にはレジスト材料が残存するのが好ましい。スタンパ60が磁性膜52に至ると、形成されるレジストマスク53Aと磁性膜52との接触面積が低下するなどしてレジストマスク53Aが磁性膜52から剥離しやすくなってしまう。そのような剥離が生じないように、スタンパ60と磁性膜52との間にレジスト材料が意図的に残されるのが好ましいのである。
【0075】
磁気ディスクX2の製造においては、スタンパ60を使用して行う上述のインプリント工程の後、図11(b)に示すように、スタンパ60をレジストマスク53Aから取り外す。
【0076】
次に、図12(a)に示すように、凸部53a,53bを有するレジストマスク53Aの側から磁性膜51,52に対して異方性ドライエッチングを施すことにより、上述の記録磁性部21,22’をパターン形成する。レジストマスク53Aの凸部53a,53bの高さや、磁性膜52の厚さ、本工程でのエッチング時間等を調整することにより、記録磁性部21と、当該記録磁性部21とは磁性膜52由来の部分の厚さの異なる記録磁性部22’とを形成することができる。この後、例えば所定の溶解液を作用させることにより、レジストマスク53Aの残渣を除去する。
【0077】
次に、図12(b)に示すように非磁性部23を形成する。具体的には、磁気ディスクX1の製造方法に関して図6(b)を参照して上述したのと同様である。本工程にて、記録層20’が形成されることとなる。
【0078】
次に、図12(c)に示すように保護膜40を形成する。具体的には、磁気ディスクX1の製造方法に関して図6(c)を参照して上述したのと同様である。以上のようにして、記録層20’におけるユーザデータ領域S1に複数の記録磁性部21を有し且つサーボ領域S2に複数の記録磁性部22’を有する磁気ディスクX2を、適切に製造することができる。
【0079】
本方法においては、記録磁性部21,22’をパターニングする際に必要なマスク(所定の凸部53a,53bを有するレジストマスク53A)の形成にあたり、スタンパ60を使用して行うインプリント法を採用するため、電子ビーム描画装置を使用する必要はない。すなわち、磁気ディスクX2ごとの製造過程において、長時間にわたる電子ビーム描画装置による露光処理を行う必要はない。したがって、本方法は、磁気ディスクX2を効率よく製造するのに適し、磁気ディスクX2の量産化を図りやすい。
【0080】
図13は、本発明の第3の実施形態に係る磁気記録装置Yを表す。磁気記録装置Yは、複数の磁気ディスク100と、磁気ヘッド101と、スピンドルモータ102と、スイングアーム103と、アクチュエータ104と、ディスクコントローラ105とを備える。
【0081】
複数の磁気ディスク100は、所定の間隔を空けて配されている。各磁気ディスク100は、上述の磁気ディスクX1または上述の磁気ディスクX2であり、表裏両面に記録層を有する。磁気ヘッド101は、磁気ディスク100に対してデータを読み書きするためのものであり、磁気ディスク100の記録面と対向するように各スイングアーム103の先端に設けられている。このような磁気ヘッド101には、書き込み用ないし記録用のヘッド部(図示略)と読み取り用ないし再生用のヘッド部(図示略)とが磁気ディスク100の周方向に離隔して設けられている。スピンドルモータ102は、磁気ディスク100を高速回転させる回転駆動手段である。スイングアーム103は、磁気ディスク100の径方向において磁気ヘッド101を移動させるためのものであり、アクチュエータ104によって動作させられる。アクチュエータ104は、ボイスコイルモータなどからなる。ディスクコントローラ105は、磁気ヘッド101、スピンドルモータ102、およびアクチュエータ104を駆動制御するためのものである。このようなディスクコントローラ105は、例えば、CPUやメモリなどを備えたマイクロコンピュータよりなる。
【0082】
このような磁気記録装置Yにおける情報記録時には、磁気記録装置Yの各部が協働して、磁気ヘッド101の書き込み用ヘッド部によって磁気ディスク100の記録層のユーザデータ領域にデータが書き込まれる。また、磁気記録装置Yにおける情報再生時には、磁気記録装置Yの各部が協働して、磁気ヘッド101の読み取り用ヘッド部によって磁気ディスク100の記録層のユーザデータ領域からデータが読み取られる。
【実施例】
【0083】
〔サンプル膜A1〜A8〕
スパッタリング法により、硬磁性材料たるCo80Pt20を、垂直磁気異方性を有するように石英基板(旭硝子製)上に所定の厚さで成膜して、サンプル膜A1〜A8を作製した。本スパッタリング成膜においては、DCマグネトロンスパッタリング装置を使用し、Co80Pt20ターゲットを使用し、スパッタガスとしてArガスを使用し、スパッタガス圧力を1.0Paとし、放電電力を500Wとした。サンプル膜A1〜A8の各々のパターン形状は、一辺が2cmの正方形である。サンプル膜A1の厚さは3nm、サンプル膜A2の厚さは5nm、サンプル膜A3の厚さは6nm、サンプル膜A4の厚さは8nm、サンプル膜A5の厚さは10nm、サンプル膜A6の厚さは12nm、サンプル膜A7の厚さは14nm、サンプル膜A8の厚さは15nmである。
【0084】
サンプル膜A1〜A8について、磁化容易軸方向の異方性磁界(H0)を測定した。異方性磁界の測定には、試料振動型磁力計(Vibrating Sample Magnetometer:VSM)を使用した。サンプル膜A1〜A8の異方性磁界測定の結果を図14(a)にまとめる。
【0085】
〔サンプル膜B1〜B5〕
スパッタリング法により、硬磁性材料たるCo80Pt20を、垂直磁気異方性を有するように石英基板(旭硝子製)上に所定の厚さで成膜した。本スパッタリング成膜においては、DCマグネトロンスパッタリング装置を使用し、Co80Pt20ターゲットを使用し、スパッタガスとしてArガスを使用し、スパッタガス圧力を1.0Paとし、放電電力を500Wとした。その後、スパッタリング法により、軟磁性材料たるCoを、垂直磁気異方性を有するように当該CoPt膜上に所定の厚さで成膜した。本スパッタリング成膜においては、DCマグネトロンスパッタリング装置を使用し、Coターゲットを使用し、スパッタガスとしてArガスを使用し、スパッタガス圧力を1.0Paとし、放電電力を500Wとした。このようにして、サンプル膜B1〜B5を作製した。サンプル膜B1〜B5の各々のパターン形状は、一辺が2cmの正方形である。サンプル膜B1では、CoPt膜の厚さは7nmであり、且つ、Co膜の厚さは3nmである。サンプル膜B2では、CoPt膜の厚さは6nmであり、且つ、Co膜の厚さは4nmである。サンプル膜B3では、CoPt膜の厚さは5nmであり、且つ、Co膜の厚さは5nmである。サンプル膜B4では、CoPt膜の厚さは4nmであり、且つ、Co膜の厚さは6nmである。サンプル膜B5では、CoPt膜の厚さは3nmであり、且つ、Co膜の厚さは7nmである。サンプル膜B1〜B5の全体厚さは、10nmである。
【0086】
サンプル膜B1〜B5について、サンプル膜A1〜A8と同様に、磁化容易軸方向の異方性磁界(H0)を測定した。サンプル膜B1〜B5の異方性磁界測定の結果を図14(b)にまとめる。
【0087】
〔サンプル膜についての評価〕
サンプル膜A1〜A8は、各々、単層の磁性部であり、例えば、上述の磁気ディスクX1における記録磁性部22に相当するものである。サンプル膜B1〜B5は、各々、ハード/ソフト スタック構造をとる磁性部であり、例えば、磁気ディスクX1における記録磁性部21に相当するものである。図14の表にまとめられた数値からは、ハード/ソフト スタック構造をとるサンプル膜B1〜B5の異方性磁界はサンプル膜A1〜A8の異方性磁界よりも小さい傾向にあることが、理解できよう。例えば、サンプル膜A1の異方性磁界が0.8kOeであるのに対し、サンプル膜B5(CoPt膜の厚さはサンプル膜A1の厚さと同じで3nm)の異方性磁界は0.55kOeである。サンプル膜A2の異方性磁界が1kOeであるのに対し、サンプル膜B3(CoPt膜の厚さはサンプル膜A2の厚さと同じで5nm)の異方性磁界は0.65kOeである。サンプル膜A3の異方性磁界が1kOeであるのに対し、サンプル膜B2(CoPt膜の厚さはサンプル膜A3の厚さと同じで6nm)の異方性磁界は0.7kOeである。
【0088】
〔実施例〕
図15(a)に示す構成を有する磁気ディスクを、実施例の磁気ディスクとして、図4から図6を参照して上述した方法によって作製した。本実施例の磁気ディスクは、上述の第1の実施形態に係る磁気ディスクX1に含まれる構造を有するものである。本実施例の磁気ディスクの製造過程における図4(a)を参照して上述した磁性膜51形成工程では、スパッタリング法により、硬磁性材料たるCo80Pt20を、垂直磁気異方性を有するように所定下地膜上に10nmの厚さで成膜した。本スパッタリング成膜においては、DCマグネトロンスパッタリング装置を使用し、Co80Pt20ターゲットを使用し、スパッタガスとしてArガスを使用し、スパッタガス圧力を1.0Paとし、放電電力を500Wとした。本実施例の磁気ディスクの製造過程における図4(a)を参照して上述した磁性膜52形成工程では、スパッタリング法により、軟磁性材料たるCoを、垂直磁気異方性を有するようにCoPt膜上に3nmの厚さで成膜した。本スパッタリング成膜においては、DCマグネトロンスパッタリング装置を使用し、Coターゲットを使用し、スパッタガスとしてArガスを使用し、スパッタガス圧力を1.0Paとし、放電電力を500Wとした。本実施例の磁気ディスクは、磁性膜51,52に由来して形成された複数の記録磁性部21(CoPt層/Co層)を記録層20のユーザデータ領域に有し、且つ、磁性膜51に由来して形成された複数の記録磁性部22(CoPt層)を記録層20のサーボ領域に有する。各サーボ領域の複数の記録磁性部22において、サーボ情報が保持される。
【0089】
〔比較例〕
図15(b)に示す構成を有する磁気ディスクを比較例の磁気ディスクとして作製した。本比較例の磁気ディスクは、ユーザデータ領域に含まれる第1の記録磁性部と同様に、サーボ領域に含まれる第2の記録磁性部がハード/ソフト スタック構造をとる点でのみ、上述の実施例の磁気ディスクと異なる。各サーボ領域の複数の第2の記録磁性部において、サーボ情報が保持される。
【0090】
〔エラー測定〕
実施例の磁気ディスクおよび比較例の磁気ディスクの各々について、サーボ情報検出エラーの頻度を調べた。具体的には、電磁石(20kOe)によって測定対象の磁気ディスクの記録磁性部を一方向に着磁させた後、当該磁気ディスクを磁気ドライブに組み込み、ヘッドをロードさせ、当該磁気ディスクのサーボ情報信号を再生し、サーボ情報たるセクタナンバーを復調した。その結果、実施例の磁気ディスクでは、全セクタ(全セクタ数は190)において、サーボ情報検出エラーは生じなかった。これに対し、比較例の磁気ディスクでは、5セクタ(全セクタ数は190)において、サーボ情報検出エラーが生じた。これらから、本発明に含まれる実施例の磁気ディスクは、比較例の磁気ディスクよりも、サーボ領域の記録磁性部の磁化反転を抑制するのに適することが理解できよう。
【0091】
以上のまとめとして、本発明の構成およびそのバリエーションを以下に付記として列挙する。
【0092】
(付記1)ユーザデータ領域およびサーボ領域を含む記録層を備え、
前記ユーザデータ領域は、相対的に大きな磁気異方性エネルギを有する第1磁性材料よりなる第1垂直磁性層と、相対的に小さな磁気異方性エネルギを有する第2磁性材料よりなり且つ前記第1垂直磁性層と交換結合する第2垂直磁性層と、を含む積層構造を有する複数の第1記録磁性部を含み、
前記サーボ領域は、前記第2磁性材料よりも磁気異方性エネルギの大きな第3磁性材料よりなり且つ垂直磁気異方性を有する複数の第2記録磁性部を含む、磁気記録媒体。
(付記2)ユーザデータ領域およびサーボ領域を含む記録層を備え、
前記ユーザデータ領域は、相対的に大きな磁気異方性エネルギを有する第1磁性材料よりなる第1垂直磁性層と、相対的に小さな磁気異方性エネルギを有する第2磁性材料よりなり且つ前記第1垂直磁性層と交換結合する第2垂直磁性層と、を含む積層構造を有する複数の第1記録磁性部を含み、
前記サーボ領域は、前記第2磁性材料よりも磁気異方性エネルギの大きな第3磁性材料よりなる第3垂直磁性層と、前記第3磁性材料よりも磁気異方性エネルギの小さな第4磁性材料よりなり、前記第3垂直磁性層と交換結合し、且つ前記第2垂直磁性層より薄い、第4垂直磁性層と、を含む積層構造を有する複数の第2記録磁性部を含む、磁気記録媒体。
(付記3)前記第2垂直磁性層は前記第1垂直磁性層よりも薄い、付記1または2に記載の磁気記録媒体。
(付記4)前記第4垂直磁性層は前記第3垂直磁性層よりも薄い、付記2または3に記載の磁気記録媒体。
(付記5)前記第1磁性材料および前記第3磁性材料は同一材料よりなる、付記1から4のいずれか一つに記載の磁気記録媒体。
(付記6)前記第2磁性材料および前記第4磁性材料は同一材料よりなる、付記2から5のいずれか一つに記載の磁気記録媒体。
(付記7)前記第1磁性材料はCoPtであり、前記第2磁性材料はCoである、付記1から6のいずれか一つに記載の磁気記録媒体。
(付記8)前記記録層は、第1面および当該第1面とは反対の第2面を有し、前記第2面の側において前記第2記録磁性部は前記第1記録磁性部よりも退避している、付記1から7のいずれか一つに記載の磁気記録媒体。
(付記9)ユーザデータ領域およびサーボ領域を含む記録層を備え、
前記ユーザデータ領域は、垂直磁気異方性を有する複数の第1記録磁性部を含み、
前記サーボ領域は、垂直磁気異方性を有する複数の第2記録磁性部を含み、
前記第2記録磁性部の異方性磁界は前記第1記録磁性部の異方性磁界より大きい、磁気記録媒体。
(付記10)前記第2記録磁性部の保磁力は、前記第1記録磁性部の保磁力より大きい、付記1から9のいずれか一つに記載の磁気記録媒体。
(付記11)付記1から10のいずれか一つに記載の磁気記録媒体を備える磁気記録装置。
(付記12)相対的に磁気異方性エネルギの大きな第1磁性材料を基材上に成膜して、垂直磁気異方性を有する第1磁性材料層を形成する工程と、
相対的に磁気異方性エネルギの小さな第2磁性材料を前記第1磁性材料層上に成膜して、垂直磁気異方性を有し且つ前記第1磁性材料層と交換結合する第2磁性材料層を形成する工程と、
第1領域および第2領域を含み、前記第1領域において相対的に高い複数の凸部を有し且つ前記第2領域において相対的に低い複数の凸部を有する、マスクを、前記第2磁性材料層上に形成する工程と、
前記第1磁性材料層、前記第2磁性材料層、および前記マスクを含む積層構造部に対して、前記マスクの側から異方性エッチング処理を施すことにより、前記マスクの前記第1領域に対応する箇所にて、前記第1磁性材料層に由来する第1垂直磁性層および前記第2磁性材料層に由来する第2垂直磁性層を含む複数の第1記録磁性部を形成し、且つ、前記マスクの前記第2領域に対応する箇所にて、前記第1磁性材料層に由来する複数の第2記録磁性部を形成する工程と、を含む、磁気記録媒体製造方法。
(付記13)相対的に磁気異方性エネルギの大きな第1磁性材料を基材上に成膜して、垂直磁気異方性を有する第1磁性材料層を形成する工程と、
相対的に磁気異方性エネルギの小さな第2磁性材料を前記第1磁性材料層上に成膜して、垂直磁気異方性を有し且つ前記第1磁性材料層と交換結合する第2磁性材料層を形成する工程と、
第1領域および第2領域を含み、前記第1領域において相対的に高い複数の凸部を有し且つ前記第2領域において相対的に低い複数の凸部を有する、マスクを、前記第2磁性材料層上に形成する工程と、
前記第1磁性材料層、前記第2磁性材料層、および前記マスクを含む積層構造部に対して、前記マスクの側から異方性エッチング処理を施すことにより、前記マスクの前記第1領域に対応する箇所にて、前記第1磁性材料層に由来する第1垂直磁性層および前記第2磁性材料層に由来する第2垂直磁性層を含む複数の第1記録磁性部を形成し、且つ、前記マスクの前記第2領域に対応する箇所にて、前記第1磁性材料層に由来する第3垂直磁性層および前記第2磁性材料層に由来して前記第2垂直磁性層よりも薄い第4垂直磁性層を含む複数の第2記録磁性部を形成する工程と、を含む、磁気記録媒体製造方法。
(付記14)前記マスクを形成するための前記工程は、前記第2磁性材料層上にレジスト膜を形成する工程と、凹凸形状を伴う転写面を有するスタンパの前記転写面を前記レジスト膜に対して押し付けることによって当該レジスト膜に前記凹凸形状を転写する工程と、を含む付記12または13に記載の磁気記録媒体製造方法。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る磁気ディスクの平面図である。
【図2】図1に示す磁気ディスクの部分拡大平面図である。
【図3】図2の線III−IIIに沿った断面図である。
【図4】図1に示す磁気ディスクの製造方法における一部の工程を表す。
【図5】図4の後に続く工程を表す。
【図6】図5の後に続く工程を表す。
【図7】スタンパの作製方法を表す。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る磁気ディスクの部分拡大平面図である。第1の実施形態に係る磁気ディスクにとっての図2に相当する。
【図9】図8の線IX−IXに沿った断面図である。
【図10】図8に示す磁気ディスクの製造方法における一部の工程を表す。
【図11】図10の後に続く工程を表す。
【図12】図11の後に続く工程を表す。
【図13】本発明の第3の実施形態に係る磁気記録装置を表す。
【図14】(a)は、サンプル膜A1〜A8についての異方性磁界測定の結果をまとめた表である。(b)は、サンプル膜B1〜B5についての異方性磁界測定の結果をまとめた表である。
【図15】(a)は、実施例たる磁気ディスクの構成を表す。(b)は比較例たる磁気ディスクの構成を表す。
【図16】従来のビットパターンドメディアたる磁気ディスクの部分拡大平面図である。
【図17】図16の線XVII−XVIIに沿った断面図である。
【図18】図16に示す磁気ディスクの製造方法における一部の工程を表す。
【図19】図18の後に続く工程を表す。
【図20】図19の後に続く工程を表す。
【符号の説明】
【0094】
X1,X2,80 磁気ディスク
S1 ユーザデータ領域
S2 サーボ領域
10,81 ディスク基板
20,82 記録層
20a 第1面
20b 第2面
21,22,82A,82B 記録磁性部
21a,21b,22a,22b 垂直磁性層
23,82C 非磁性部
30,83 軟磁性層
40,84 保護膜
51,52 磁性膜
53 レジスト膜
53A レジストマスク
53a,53b 凸部
60 スタンパ
60a 転写面
61,62 凹部
Y 磁気記録装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザデータ領域およびサーボ領域を含む記録層を備え、
前記ユーザデータ領域は、相対的に大きな磁気異方性エネルギを有する第1磁性材料よりなる第1垂直磁性層と、相対的に小さな磁気異方性エネルギを有する第2磁性材料よりなり且つ前記第1垂直磁性層と交換結合する第2垂直磁性層と、を含む積層構造を有する複数の第1記録磁性部を含み、
前記サーボ領域は、前記第2磁性材料よりも磁気異方性エネルギの大きな第3磁性材料よりなり且つ垂直磁気異方性を有する複数の第2記録磁性部を含む、磁気記録媒体。
【請求項2】
ユーザデータ領域およびサーボ領域を含む記録層を備え、
前記ユーザデータ領域は、相対的に大きな磁気異方性エネルギを有する第1磁性材料よりなる第1垂直磁性層と、相対的に小さな磁気異方性エネルギを有する第2磁性材料よりなり且つ前記第1垂直磁性層と交換結合する第2垂直磁性層と、を含む積層構造を有する複数の第1記録磁性部を含み、
前記サーボ領域は、前記第2磁性材料よりも磁気異方性エネルギの大きな第3磁性材料よりなる第3垂直磁性層と、前記第3磁性材料よりも磁気異方性エネルギの小さな第4磁性材料よりなり、前記第3垂直磁性層と交換結合し、且つ前記第2垂直磁性層より薄い、第4垂直磁性層と、を含む積層構造を有する複数の第2記録磁性部を含む、磁気記録媒体。
【請求項3】
前記記録層は、第1面および当該第1面とは反対の第2面を有し、前記第2面の側において前記第2記録磁性部は前記第1記録磁性部よりも退避している、請求項1または2に記載の磁気記録媒体。
【請求項4】
ユーザデータ領域およびサーボ領域を含む記録層を備え、
前記ユーザデータ領域は、垂直磁気異方性を有する複数の第1記録磁性部を含み、
前記サーボ領域は、垂直磁気異方性を有する複数の第2記録磁性部を含み、
前記第2記録磁性部の異方性磁界は前記第1記録磁性部の異方性磁界より大きい、磁気記録媒体。
【請求項5】
前記第2記録磁性部の保磁力は、前記第1記録磁性部の保磁力より大きい、請求項1から4のいずれか一つに記載の磁気記録媒体。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一つに記載の磁気記録媒体を備える磁気記録装置。
【請求項7】
相対的に磁気異方性エネルギの大きな第1磁性材料を基材上に成膜して、垂直磁気異方性を有する第1磁性材料層を形成する工程と、
相対的に磁気異方性エネルギの小さな第2磁性材料を前記第1磁性材料層上に成膜して、垂直磁気異方性を有し且つ前記第1磁性材料層と交換結合する第2磁性材料層を形成する工程と、
第1領域および第2領域を含み、前記第1領域において相対的に長い複数の凸部を有し且つ前記第2領域において相対的に短い複数の凸部を有する、マスクを、前記第2磁性材料層上に形成する工程と、
前記第1磁性材料層、前記第2磁性材料層、および前記マスクを含む積層構造部に対して、前記マスクの側から異方性エッチング処理を施すことにより、前記マスクの前記第1領域に対応する箇所にて、前記第1磁性材料層に由来する第1垂直磁性層および前記第2磁性材料層に由来する第2垂直磁性層を含む複数の第1記録磁性部を形成し、且つ、前記マスクの前記第2領域に対応する箇所にて、前記第1磁性材料層に由来する複数の第2記録磁性部を形成する工程と、を含む、磁気記録媒体製造方法。
【請求項8】
相対的に磁気異方性エネルギの大きな第1磁性材料を基材上に成膜して、垂直磁気異方性を有する第1磁性材料層を形成する工程と、
相対的に磁気異方性エネルギの小さな第2磁性材料を前記第1磁性材料層上に成膜して、垂直磁気異方性を有し且つ前記第1磁性材料層と交換結合する第2磁性材料層を形成する工程と、
第1領域および第2領域を含み、前記第1領域において相対的に長い複数の凸部を有し且つ前記第2領域において相対的に短い複数の凸部を有する、マスクを、前記第2磁性材料層上に形成する工程と、
前記第1磁性材料層、前記第2磁性材料層、および前記マスクを含む積層構造部に対して、前記マスクの側から異方性エッチング処理を施すことにより、前記マスクの前記第1領域に対応する箇所にて、前記第1磁性材料層に由来する第1垂直磁性層および前記第2磁性材料層に由来する第2垂直磁性層を含む複数の第1記録磁性部を形成し、且つ、前記マスクの前記第2領域に対応する箇所にて、前記第1磁性材料層に由来する第3垂直磁性層および前記第2磁性材料層に由来して前記第2垂直磁性層よりも薄い第4垂直磁性層を含む複数の第2記録磁性部を形成する工程と、を含む、磁気記録媒体製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2010−129131(P2010−129131A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−303830(P2008−303830)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】