磁気記録媒体および磁気再生装置
【課題】いわゆるビットパターンドメディアにおいて、再生ヘッドによるデータ読取りに際して再生ヘッドの位置補正を行うのに適した磁気記録媒体、および、そのような磁気記録媒体を備える磁気再生装置を提供する。
【解決手段】磁気記録媒体Y1は、一列に並ぶ複数の磁性部22を含むデータ部R2と、磁性部22の配列方向においてデータ部から離隔するサーボ部R1と、サーボ部R1およびデータ部R2の間に位置し且つ少なくとも一つの磁性部23を含む再生出力確認部R3とを備える。磁性部22,23は、トラック中心線T2に沿って一列に位置し、トラック中心線T2に直交する方向における磁性部22,23の中心位置は、トラック中心線T2上に位置する。トラック中心線T2に直交する方向において磁性部23は磁性部22より長い。
【解決手段】磁気記録媒体Y1は、一列に並ぶ複数の磁性部22を含むデータ部R2と、磁性部22の配列方向においてデータ部から離隔するサーボ部R1と、サーボ部R1およびデータ部R2の間に位置し且つ少なくとも一つの磁性部23を含む再生出力確認部R3とを備える。磁性部22,23は、トラック中心線T2に沿って一列に位置し、トラック中心線T2に直交する方向における磁性部22,23の中心位置は、トラック中心線T2上に位置する。トラック中心線T2に直交する方向において磁性部23は磁性部22より長い。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターニングされた磁性部を記録層に有する磁気記録媒体、および、そのような磁気記録媒体を備えた磁気再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハードディスクなどの記憶装置を構成するための記録媒体として、磁気ディスクが知られている。磁気ディスクは、ディスク基板と所定の磁性構造を有する記録層とを含む積層構造を有する。コンピュータシステム等における情報処理量の増大に伴い、磁気ディスクについては高記録密度化の要求が高まっている。
【0003】
磁気ディスクないし磁気記録媒体の技術分野においては、高記録密度化を図るのに適した磁気ディスクとして、いわゆるビットパターンドメディア(BPM)が知られている。BPMは、垂直磁気異方性を有してパターニングされた磁性部を記録層に有する。記録層には、同心円状に配された複数のトラックが設けられている。セクタサーボ方式の従来のBPMの記録層では、トラックごとに複数のセクタがディスク周方向に連なり、各セクタには、サーボ領域とこれに対応付けられたデータ領域とが含まれる。サーボ領域には、所定パターンの磁性部によってサーボ情報(トラック情報、セクタ情報、およびバースト信号等を含む)が形成されている。データ領域には、トラックごとに、一定のピッチで離隔して一列に配列する複数の磁性体ドットが設けられ、当該磁性体ドット列にユーザデータが記録される。このようなBPMたる磁気ディスクについては、例えば下記の特許文献1〜3に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−100499号公報
【特許文献2】特開2008−123638号公報
【特許文献3】特開2008−234774号公報
【0005】
記録媒体としてBPMを備える記録再生装置等は、BPMに加え、例えば、スピンドルモータと、再生ヘッドおよび記録ヘッドを伴うヘッドスライダと、スイングアームと、アクチュエータとを備える。スピンドルモータは、BPMを回転させるためのものである。ヘッドスライダは、再生時や記録時においてBPMの記録面に対して対向配置されるものである。ヘッドスライダの再生ヘッドは、BPMからの磁界を検出可能で且つ検出磁界に応じて出力可能な素子であり、磁界検知部たるコア部を有する。ヘッドスライダの記録ヘッドは、BPMのデータ領域の磁性体ドットの磁化方向を反転させるための磁界を発生させるための素子である。スイングアームは、ヘッドスライダを先端にて支持するためのものである。アクチュエータは、BPMに対向するヘッドスライダ(再生ヘッドと記録ヘッドを伴う)のディスク径方向における位置を変化させるべくスイングアームを動作させるためのものである。
【0006】
記録媒体としてBPMを備える記録再生装置等において、BPMのデータ領域に記録されているデータを読み取る際には、まず、BPMを回転しつつ、BPMの記録面に対向するヘッドスライダないしこれに伴う再生ヘッドがシーク動作される。このシーク動作では、再生ヘッドを介して得られる各所のサーボ領域のサーボ情報に基づいて、アクチュエータが稼働して、ディスク径方向において再生ヘッドが目的トラックへと移動される。次に、回転するBPMの記録面に対向する再生ヘッドがトラッキング制御される。具体的には、目的トラック内の目的セクタにおけるサーボ領域のサーボ情報(バースト信号)に基づいて、アクチュエータが稼働して、当該サーボ領域のトラック中心線に再生ヘッドが追従するように、ディスク径方向において再生ヘッドが位置決め制御される。再生ヘッドのコア部はディスク径方向に幅を有するところ、トラッキング制御では、コア幅のディスク径方向における中心位置(コア幅中心位置)がサーボ領域のトラック中心線に追従するように、アクチュエータは再生ヘッドのディスク径方向位置を微調整する。このようなトラッキング制御を経た後、回転するBPMの記録面に対向する再生ヘッドは、当該目的セクタにおけるデータ領域に至り、当該データ領域にある磁性体ドットからの信号磁界が、順次、再生ヘッドによって検出される。当該再生ヘッドからは、検出された信号磁界に対応して再生信号が出力されることとなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来、BPMのデータ領域のデータを読み取る際、再生ヘッドが目的セクタのサーボ情報に基づく上述のようなトラッキング制御を経ても、再生ヘッドのコア幅中心位置が、当該目的セクタのデータ領域のトラック中心線から比較的大きくずれる場合がある。その理由は、次のとおりである。
【0008】
BPMにおいては、各トラックの各セクタのデータ領域にてユーザデータが記録される一列の磁性体ドットは、上述のように一定のピッチで離隔する。BPMのデータ領域にユーザデータを記録する際には、回転するBPMの記録面に記録ヘッドを対向させつつデータ領域に磁界を印加するところ、記録ヘッドの直下に各磁性体ドットが至るタイミングと記録ヘッドの磁界発生タイミングとを同期させる必要がある。そのため、BPMの各セクタのサーボ領域のサーボ情報形成位置とデータ領域の間には、当該同期を実現するための情報をなす所定パターンの磁性部(例えば、データ領域の磁性体ドット列と同じ一定ピッチでディスク周方向に配列する複数の磁性部)が設けられる。当該同期情報は、記録ヘッドによるデータ領域への記録ないし書き込みの前に再生ヘッドによって読み取られるものである。
【0009】
BPMでは、各セクタにて、ディスク周方向におけるサーボ領域のサーボ情報形成位置とデータ領域の間に同期情報が形成されるために、ディスク周方向におけるサーボ情報形成位置とデータ領域の離隔距離は、比較的長い。同期情報が形成されている領域がディスク周方向に長いほど上述の同期の精度は向上する傾向にあるところ、同期情報形成領域がディスク周方向に長いほど、各セクタのディスク周方向におけるサーボ領域のサーボ情報形成位置とデータ領域の離隔距離は、長い。そして、当該離隔距離が長いほど、当該サーボ領域のトラック中心線のディスク径方向位置、および、当該データ領域のトラック中心線のディスク径方向位置は、それぞれ、製造誤差によって設計位置からずれやすい。すなわち、各セクタのディスク周方向におけるサーボ領域のサーボ情報形成位置とデータ領域の離隔距離が長いほど、当該サーボ領域のトラック中心線の径方向位置と、当該データ領域のトラック中心線の径方向位置とは、異なりやすい。一のトラックの一のセクタにてサーボ領域およびデータ領域の両トラック中心線の径方向位置が異なると、再生ヘッドが当該セクタのサーボ情報に基づくトラッキング制御を経ても、再生ヘッドのコア幅中心位置がデータ領域のトラック中心線からずれることとなる。データ領域におけるこのような再生ヘッドの位置ずれは、サーボ領域およびデータ領域の両トラック中心線の径方向位置の差が大きいほど、顕著となる。
【0010】
以上のような理由から、再生ヘッドが目的セクタのサーボ情報に基づく上述のようなトラッキング制御を経ても、再生ヘッドのコア幅中心位置が、当該目的セクタのデータ領域のトラック中心線から比較的大きくずれる場合があるのである。
【0011】
データ領域のトラック中心線からの上述のような再生ヘッドの位置ずれは、再生ヘッドからの再生信号について、出力低下を招来する。BPMにおけるデータ領域にてユーザデータをなす磁性体ドットは、それぞれが相当程度に小さい(磁性体ドットの直径は例えば20nm程度)。磁性体ドットが小さいほど、磁性体ドットから発生している磁界は小さい。そのため、データ領域のトラック中心線からの上述のような再生ヘッドの位置ずれは、再生ヘッドからの再生信号について、適切に再生処理できない程度の出力低下を招来する場合があり、好ましくない。
【0012】
本発明は、以上のような事情の下で考え出されたものである。本発明の目的は、いわゆるビットパターンドメディアにおいて、再生ヘッドによるデータ読取りに際して再生ヘッドの位置補正を行うのに適した磁気記録媒体、および、そのような磁気記録媒体を備える磁気再生装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1の側面によると磁気記録媒体が提供される。この磁気記録媒体は、データ部と、サーボ部と、再生出力確認部とを備える。データ部は、データ書込み用の一列に並ぶ複数の第1磁性部を含む。サーボ部は、一列の第1磁性部の配列方向においてデータ部から離隔する。再生出力確認部は、サーボ部およびデータ部の間に位置し且つ少なくとも一つの第2磁性部を含む。データ部の複数の第1磁性部、および、再生出力確認部の少なくとも一つの第2磁性部は、仮想線に沿って一列に位置する。当該仮想線に直交する方向における第1磁性部および第2磁性部の中心位置は、当該仮想線上に位置する。また、当該仮想線に直交する方向において、第2磁性部は第1磁性部より長い。
【0014】
本発明の第2の側面によると磁気再生装置が提供される。この磁気再生装置は、磁気記録媒体と、当該磁気記録媒体からの磁界を検出するための再生ヘッドとを備える。磁気記録媒体は、データ部と、サーボ部と、再生出力確認部とを備える。データ部は、データ書込み用の一列に並ぶ複数の第1磁性部を含む。サーボ部は、一列の第1磁性部の配列方向においてデータ部から離隔する。再生出力確認部は、サーボ部およびデータ部の間に位置し且つ少なくとも一つの第2磁性部を含む。データ部の複数の第1磁性部、および、再生出力確認部の少なくとも一つの第2磁性部は、仮想線に沿って一列に位置する。当該仮想線に直交する方向における第1磁性部および第2磁性部の中心位置は、当該仮想線上に位置する。また、当該仮想線に直交する方向において、第2磁性部は第1磁性部より長い。
【発明の効果】
【0015】
本発明の第1の側面に係る磁気記録媒体は、セクタサーボ方式を採用するものであり、セクタ内に、サーボ情報を伴うサーボ部と、当該サーボ部に対応付けられたデータ部と、サーボ部およびデータ部の間に位置する再生出力確認部とが存在する。本磁気記録媒体について再生ないし読取りを実行するには、磁界検出素子である再生ヘッドを使用する。再生ヘッドは、磁界検知部たるコア部を有する。再生ヘッドないしそのコア部は、読取りを実行する際、本磁気記録媒体に対向しつつ本磁気記録媒体に対して相対的に周回する。サーボ部のサーボ情報には、読取りを実行する再生ヘッドを目的トラックの幅方向中心位置(トラック中心位置)に位置決め制御(トラッキング制御)するための位置決め信号(例えばバースト信号)が含まれる。再生出力確認部の少なくとも一つの第2磁性部は、再生ヘッドが検出可能な磁界を発生している。データ部の複数の第1磁性部および再生出力確認部の少なくとも一つの第2磁性部は、仮想線たるトラック中心線に直交する方向におけるそれらの中心位置が当該仮想線(トラック中心線)上に位置するように、一列に配列している。このような本磁気記録媒体について、再生ヘッドを使用して読取りを実行するに際しては、目的トラックの目的セクタにあるサーボ部のサーボ情報に含まれる位置決め信号に基づいて、再生ヘッドについて目的トラックにトラッキング制御することができる。また、目的とするデータ部の第1磁性部列からの信号磁界を再生ヘッドによって検出する前に、再生出力確認部の少なくとも一つの第2磁性部に由来する磁界を再生ヘッドによって検出することができる。そして、再生ヘッドが第2磁性部由来の磁界を検出して信号として出力する電流値または電圧値を利用して、仮想線(トラック中心線)に直交する方向における再生ヘッドの位置補正を行うことが可能である。データ領域の第1磁性部は仮想線直交方向において再生ヘッドのコア幅よりも相当程度に小さい場合が多い。そのため、再生出力確認部の第2磁性部が当該第1磁性部よりも仮想線直交方向において長いことは、仮想線直交方向の長さについてコア幅との差の小さな第2磁性部を採用して前記の位置補正の精度を高めるのに好適である。位置補正は、例えば以下のようにして行うことが可能である。
【0016】
仮想線直交方向における再生ヘッドのコア幅中心位置と当該仮想線との距離(再生ヘッドずれ量)が許容最大値のときに当該再生ヘッドが第2磁性部からの磁界を検出して信号として出力する値(設定値)を、電圧値または電流値として予め決定しておく。これと共に、再生ヘッドずれ量と、当該位置ずれ状態にある再生ヘッドが第2磁性部からの磁界を検出して信号として出力する値との関係(ずれ量―出力関係)を所定の態様で把握しておく(ずれ量が大きくなるほど、出力は小さくなる傾向にある)。目的サーボ部上の通過によりトラッキング制御を受けた再生ヘッドが再生出力確認部の第2磁性部からの磁界を検出して出力する値(確認出力値)が前記設定値以上の場合、目的データ部の一列の第1磁性部について、順次、再生ヘッドによって信号磁界を検出する。再生ヘッドからの確認出力値が設定値未満である場合、再生ヘッドずれ量は許容最大値を超えているので、目的データ部の第1磁性部からの信号磁界を再生ヘッドによって検出しない。目的データ部にて再生ヘッドによる読取りを実行せずに、再生ヘッドを本磁気記録媒体に対して相対的に周回させて再び前記の目的サーボ部に至らせる。そして、当該目的サーボ部上の通過によって再生ヘッドについて再びトラッキング制御を行う際、当該制御にて決定されるヘッド変位量(仮想線直交方向に再生ヘッドを変位させるべき量)に、ずれ量を低減する可能性のある変位量(補償候補変位量)を含ませる。補償候補変位量は、確認出力値および前記のずれ量―出力関係に基づいて導出することができる。このような二周目のトラッキング制御を受けた再生ヘッドが再生出力確認部の第2磁性部からの磁界を検出して出力する値(再確認出力値)が前記設定値以上である場合、目的データ部にて再生ヘッドによる読取りを実行する。仮に再生ヘッドからの再確認出力値が設定値未満である場合、目的データ部にて再生ヘッドによる読取りを実行せずに、再生ヘッドを本磁気記録媒体に対して相対的に周回させて再び前記の目的サーボ部に至らせる。そして、当該目的サーボ部上の通過によって再生ヘッドについて再びトラッキング制御を行う際、当該制御にて決定されるヘッド変位量に、ずれ量を低減させる変位量(補償量)を含ませる。この補償量は、再確認出力値および前記のずれ量―出力関係に基づいて導出することができる。本磁気記録媒体では、多くともこのような三周目のトラッキング制御により、再生ヘッドについて、再生出力確認部の第2磁性部からの磁界を検出して出力する値が前記設定値以上となるように、位置決め制御することができる。そのため、再生ヘッドが目的サーボ部上の通過によって三周目のトラッキング制御を受けた後には、目的データ部にて再生ヘッドによる読取りを実行する。
【0017】
本磁気記録媒体によると、再生ヘッドが目的サーボ部上の通過による一周目のトラッキング制御を受けた後に仮想線(トラック中心線)からずれているかどうかを、再生出力確認部の第2磁性部由来の磁界を利用して確認することができる。そして、再生ヘッドずれ量が許容最大値を超えている場合には、例えば上述のようにして、二周目または三周目のトラッキング制御の際に、ずれ量が許容最大値以内に収まるように再生ヘッドを位置補正することができる。
【0018】
以上のように、本発明の第1の側面に係る磁気記録媒体は、再生ヘッドによるデータ読取りに際して再生ヘッドの位置補正を行うのに適する。このような磁気記録媒体は、再生ヘッドからの再生信号について充分な信号強度を確保して、適切な読取りないし再生処理を実行するのに好適である。
【0019】
本発明の第2の側面に係る磁気再生装置においては、磁気記録媒体からの読取りに際して、第1の側面に関して上述したのと同様の効果が奏される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る磁気ディスク装置を表す。
【図2】図1に示す磁気ディスク装置の機能ブロック図である。
【図3】図1に示す磁気ディスク装置の備える磁気ディスクの平面図である。
【図4】図3に示す磁気ディスクの部分拡大平面図である。
【図5】図4の線V−Vに沿った断面図である。
【図6】第1の実施形態における磁気ディスクの製造方法における一部の工程を表す。
【図7】図6の後に続く工程を表す。
【図8】図7の後に続く工程を表す。
【図9】第1の実施形態に係る磁気ディスク装置における再生ヘッド位置補正処理のフローチャートを表す。
【図10】ずれ量―出力関係の一例を表す。
【図11】第1の実施形態に係る磁気ディスク装置における再生ヘッド位置補正の一例を表す。
【図12】第1の実施形態に係る磁気ディスク装置における再生ヘッド位置補正の一例を表す。
【図13】第1の実施形態における磁気ディスクの第1変形例の部分拡大平面図である。
【図14】第1の実施形態における磁気ディスクの第2変形例の部分拡大平面図である。
【図15】本発明の第2の実施形態に係る磁気ディスク装置を表す。
【図16】図15に示す磁気ディスク装置の機能ブロック図である。
【図17】図15に示す磁気ディスク装置の備える磁気ディスクの平面図である。
【図18】図17に示す磁気ディスクの部分拡大平面図である。
【図19】図18の線XIX−XIXに沿った断面図である。
【図20】第2の実施形態に係る磁気ディスク装置における再生ヘッド位置補正処理のフローチャートを表す。
【図21】第2の実施形態に係る磁気ディスク装置における再生ヘッド位置補正の一例を表す。
【図22】第2の実施形態に係る磁気ディスク装置における再生ヘッド位置補正の一例を表す。
【図23】第2の実施形態における磁気ディスクの変形例の部分拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1および図2は、本発明の第1の実施形態に係る磁気ディスク装置X1を表す。図1は、磁気ディスク装置X1の筐体内の斜視図である。図2は、磁気ディスク装置X1の機能ブロック図である。
【0022】
磁気ディスク装置X1は、複数の磁気ディスクY1と、スピンドルモータ1と、ヘッドスライダ2と、スイングアーム3と、アクチュエータ4と、ディスクコントローラ5とを備える。
【0023】
複数の磁気ディスクY1は、所定の間隔を空けて配されている。磁気ディスクY1は、ビットパターンドメディア(BPM)であり、両面に記録面を有する。また、磁気ディスクY1は、セクタサーボ方式を採用するものであり、各セクタ内に、サーボ情報をなす磁性パターンを含むサーボ領域、および、磁性体ドット列を含むユーザデータ領域を含む。スピンドルモータ1は、磁気ディスクY1を回転させるためのものである。ヘッドスライダ2は、再生時や記録時において磁気ディスクY1の記録面に対して対向配置されるものであり、再生ヘッド2aおよび記録ヘッド2bを有する。再生ヘッド2aは、磁気ディスクY1からの磁界を検出可能で且つ検出磁界に応じて出力可能な素子であり、磁界検知部たるコア部を有する。コア部のトラック幅方向の長さ(コア幅)は、例えば30〜80nmである。このような再生素子としては、MR素子やGMR素子を挙げることができる。記録ヘッド2bは、磁気ディスクY1のデータ領域の磁性体ドットの磁化方向を反転させるための磁界を発生させるための素子である。これら再生ヘッド2aおよび記録ヘッド2bは、図2に模式的に示すように、磁気ディスクY1の周方向に離隔している。スイングアーム3は、ヘッドスライダ2を先端にて支持するためのものである。アクチュエータ4は、磁気ディスクY1に対向するヘッドスライダ2(再生ヘッド2aと記録ヘッド2bを伴う)のディスク径方向における位置を変化させるべくスイングアーム3を動作させるためのものである。アクチュエータ4は、例えばボイスコイルモータである。ディスクコントローラ5は、スピンドルモータ1、ヘッドスライダ2、およびアクチュエータ4を駆動制御するためのものである。このようなディスクコントローラ5は、例えば、CPUやメモリなどを備えたマイクロコンピュータを含む。また、ディスクコントローラ5には、図2に示すように、トラッキング制御部5a、再生出力取得部5b、補償変位量決定部5cなどの機能モジュールが含まれる。
【0024】
図3から図5は、磁気ディスクY1を表す。図3は、磁気ディスクY1の平面図である。図4は、磁気ディスクY1の部分拡大平面図である。図5は、図4の線V−Vに沿った断面図である。
【0025】
磁気ディスクY1は、ディスク基板10、記録層20、軟磁性層30、および保護膜40(図3および図4では図示略)を含む積層構造を有する、情報記録と情報再生とを実行可能なBPMである。また、磁気ディスクY1では、セクタサーボ方式が採用されて、図3に示すように複数のセクタSが設定されている。
【0026】
ディスク基板10は、主に、磁気ディスクY1の剛性を確保するための部位であり、例えば、アルミニウム合金、ガラス、シリコン、またはポリカーボネート樹脂よりなる。
【0027】
記録層20は、各セクタSにおいて、図4および図5に示すように、サーボ領域R1、ユーザデータ領域R2、および再生出力確認領域R3を含む。サーボ領域R1およびユーザデータ領域R2は、ディスクの周方向D1に離隔する。再生出力確認領域R3は、ユーザデータ領域R2のサーボ領域R1側にてユーザデータ領域R2に隣接する(即ち、再生出力確認領域R3は、サーボ領域R1とユーザデータ領域R2の間に位置する)。また、記録層20は、サーボ領域R1に含まれる複数の磁性部21と、ユーザデータ領域R2に含まれる複数の磁性部22(磁性体ドット)と、再生出力確認領域R3に含まれる磁性部23と、磁性部21,22,23間に介在する非磁性部24とを含む。磁性部21,22,23のそれぞれは、例えば硬磁性材料よりなり、垂直磁気異方性を有する。磁性部21,22,23のための硬磁性材料としては、例えばCoPt、CoPtCr、またはSmCoを採用することができる。非磁性部24は、例えばSiN、C、またはSiO2などの非磁性材料よりなる。非磁性部24の存在により、磁性部21,22,23間の磁気的相互作用が充分に抑制される。記録層20の厚さは例えば10〜30nmである。このような記録層20には、磁気ディスクY1の図3に示す回転中心Aを共通中心として同心円状に配された複数のトラックが設定されている。
【0028】
サーボ領域R1における複数の磁性部21は、サーボ情報を形成するためのものであり、磁気ディスクY1について読取りを実行するための上述の再生ヘッド2aが検出可能な磁界を発生している。サーボ情報には、例えばトラック情報、セクタ情報、トラッキング制御用のバースト信号、および同期信号等が含まれる。図4および図5には、サーボ情報の一部をなす磁性部21を示す。ディスクの径方向D2において、各磁性部21は、トラック幅に相当する長さや、複数のトラックにわたる長さを有する。また、サーボ領域R1の各トラックの径方向D2における中心位置(トラック幅中心位置)を通る仮想線をトラック中心線T1として表す。
【0029】
ユーザデータ領域R2における複数の磁性部22は、ユーザデータが書き換え可能に記録されるものである。各磁性部22は、図4に示すようにドット状の単一の記録セルであり、上述の再生ヘッド2aが検出可能な磁界を発生している。各磁性部22の直径は、例えば10〜30nmである。ユーザデータ領域R2の各トラックの径方向D2における中心位置(トラック幅中心位置)を通る仮想線をトラック中心線T2として表す。各トラックに含まれる複数の磁性部22は、トラック中心線T2に沿って一列に並ぶ。具体的には、一列に並ぶ複数の磁性部22のそれぞれの、径方向D2(トラック中心線T2に直交する方向)における中心位置は、一本のトラック中心線T2上に位置する。
【0030】
再生出力確認領域R3における各磁性部23は、上述の再生ヘッド2aが検出可能な磁界を発生している。磁性部23は、サーボ領域R1上を通過してトラッキング制御を受けた再生ヘッド2aがユーザデータ領域R2上に進入する直前に再生ヘッド2aに磁性部23由来の磁界を検出させ、当該検出に起因する再生ヘッド2aからの再生出力を確認するためのものである。各磁性部23は、同じトラックに属するユーザデータ領域R2の複数の磁性部22とともに、トラック中心線T2に沿って一列に並ぶ。具体的には、磁性部23の径方向D2における中心位置は、同じトラックに属する一列の磁性部22のそれぞれの径方向D2における中心位置と同様に、一本のトラック中心線T2上に位置する。また、径方向D2において、磁性部23は磁性部22より長い。好ましくは、トラック中心線T2に直交する方向において、磁性部23は、再生ヘッド2aの上記コア幅以下の長さを有する。より好ましくは、トラック中心線T2に直交する方向における磁性部23の長さは、再生ヘッド2aのコア幅に等しい。
【0031】
軟磁性層30は、磁気ディスクY1への書込み時等に保護膜40に対向する上述の記録ヘッド2bからの磁束を再び記録ヘッド2bに環流させる磁路を効率よく形成するためのものである。このような軟磁性層30は、高透磁率を有して大きな飽和磁化を有するとともに小さな保磁力を有する軟磁性材料よりなる。書込み時には、記録ヘッド2bによる記録磁界の印加によって、ユーザデータ領域R2の各磁性部22が所定方向に磁化されるところ、軟磁性層30が存在することにより、磁性部22を磁化反転させるのに必要な実効的な記録磁界を低減させることが可能となる。軟磁性層30のための軟磁性材料としては、例えば、FeC、FeNi、FeCoB、FeCoSiC、またはFeCo−AlOを採用することができる。
【0032】
保護膜40は、記録層20や軟磁性層30を外界から物理的および化学的に保護するための部位であり、例えば、SiN、SiO2、またはダイアモンドライクカーボン(DLC)よりなる。保護膜40の厚さは、例えば1〜5nmである。保護膜40の露出面は、磁気ディスクY1の記録面をなす。
【0033】
以上のような記録層20、軟磁性層30、および保護膜40を含む積層構造を磁気ディスクY1はディスク基板10の両面上に有する。また、記録層20、軟磁性層30、および保護膜40を含む積層構造中には、必要に応じて他の層が含まれてもよい。
【0034】
図6から図8は、磁気ディスクY1の製造方法の一例を表す。本方法では、まず、図6(a)に示すように、ディスク基板10上に、軟磁性層30、磁性膜20’、およびレジスト膜61を順次形成する。軟磁性層30の形成においては、例えばスパッタリング法により、軟磁性層30に関して上述した軟磁性材料をディスク基板10上に成膜する。磁性膜20’の形成においては、例えばスパッタリング法により、磁性部21,22,23に関して上述した磁性材料を軟磁性層30上に成膜する。レジスト膜61の形成においては、熱硬化型レジスト材料または紫外線硬化型レジスト材料をスピンコーティング法によって磁性膜20’上に成膜する。
【0035】
次に、図6(b)および図7(a)に示すように、スタンパ62を使用してインプリント工程を行う。スタンパ62は、転写面62’を有し、転写面62’側に凹部62a,62b,62cを有する。凹部62aは、上述の磁性部21に対応するパターン形状を有する。凹部62bは、上述の磁性部22に対応するパターン形状を有する。凹部62cは、上述の磁性部23に対応するパターン形状を有する。レジスト膜61として紫外線硬化型レジスト材料よりなるものを採用する場合、スタンパ62としては、紫外線が透過可能なものを使用する。
【0036】
インプリント工程では、このようなスタンパ62の転写面62’をレジスト膜61に押し付ける。レジスト膜61が熱硬化型レジスト材料よりなる場合、スタンパ62をレジスト膜61に押し付けた状態で加熱してレジスト膜61を硬化させる。レジスト膜61が紫外線硬化型レジスト材料よりなる場合、スタンパ62をレジスト膜61に押し付けた状態でレジスト膜61に対して紫外線を照射してレジスト膜61を硬化させる。このようなインプリント工程によって、転写面62’の凹凸形状がレジスト膜61に転写されて、レジストマスク61Aが形成される。レジストマスク61Aには、スタンパ62の凹部62a,62b,62cに応じて形成された凸部61a,61b,61cが含まれる。また、インプリント工程では、図7(a)に示すように、スタンパ62は磁性膜20’に至らず、磁性膜20’とスタンパ62との間にレジスト材料が残存するのが好ましい。スタンパ62が磁性膜20’に至ると、形成されるレジストマスク61Aと磁性膜20’との接触面積が低下するなどしてレジストマスク61Aが磁性膜20’から剥離しやすくなってしまう。そのような剥離が生じないように、スタンパ62と磁性膜20’との間にレジスト材料が意図的に残されるのが好ましいのである。
【0037】
本方法では、スタンパ62を使用して行う上述のインプリント工程の後、図7(b)に示すように、スタンパ62をレジストマスク61Aから取り外す。
【0038】
次に、凸部61a,61b,61cを有するレジストマスク61Aの側から磁性膜20’に対して異方性ドライエッチングを施すことにより、図8(a)に示すように、上述の磁性部21,22,23をパターン形成する。この後、例えば所定の溶解液を作用させることにより、レジストマスク61Aの残渣を除去する。
【0039】
次に、図8(b)に示すように非磁性部24を形成する。具体的には、磁性部21,22,23間の隙間を充填しつつ磁性部21,22,23を覆うように、非磁性部24に関して上述した非磁性材料を堆積させた後、過剰分を例えば研磨除去して磁性部21,22,23を露出させる。本工程にて、記録層20が形成されることとなる。
【0040】
次に、図8(c)に示すように保護膜40を形成する。保護膜40の形成においては、例えばスパッタリング法により、保護膜40に関して上述した材料を記録層20上に成膜する。以上のようにして、上述の磁気ディスクY1を適切に製造することができる。
【0041】
本方法においては、磁性部21,22,23をパターニングする際に必要なマスク(所定の凸部61a,61b,61cを有するレジストマスク61A)の形成にあたり、スタンパ62を使用して行うインプリント法を採用するため、電子ビーム描画装置を使用する必要はない。すなわち、磁気ディスクY1ごとの製造過程において、磁性部パターニング用のマスクを形成するのに、長時間にわたる電子ビーム描画装置による露光処理を行う必要はない。したがって、本方法は、磁気ディスクY1を効率よく製造するのに適し、磁気ディスクY1の量産化を図りやすい。
【0042】
サーボ領域R1の複数の磁性部21(サーボ情報)、ユーザデータ領域R2の複数の磁性部22(複数の磁性体ドット列)、および、再生出力確認領域R3の複数の磁性部23は、上述のような製造過程にてパターン形成されたものである。各セクタSにて、周方向D1におけるサーボ領域R1のサーボ情報形成位置とユーザデータ領域R2との間の離隔距離は、比較的長い。当該離隔距離が長いほど、径方向D2において、サーボ領域R1のトラック中心線T1の位置と、ユーザデータ領域R2のトラック中心線T2の位置とは、製造誤差によって設計位置からずれやすい。これに対し、各セクタSにて、再生出力確認領域R3は、サーボ領域R1側にてユーザデータ領域R2に隣接している。すなわち、再生出力確認領域R3の各磁性部23は、ユーザデータ領域R2に対し、サーボ領域R1のサーボ情報形成位置よりも近い。そのため、再生出力確認領域R3の各磁性部23の径方向D2中心位置は、ユーザデータ領域R2の各トラック中心線T2上に高精度に位置することができる。
【0043】
以上のような磁気ディスク装置X1における情報記録時には、磁気ディスク装置X1の各部が協働して、回転される磁気ディスクY1の記録層20のユーザデータ領域R2に対し、ヘッドスライダ2の記録ヘッド2bによってデータが書き込まれる。
【0044】
磁気ディスク装置X1における情報再生時には、磁気ディスク装置X1の各部が協働して、ヘッドスライダ2の再生ヘッド2aにより、回転される磁気ディスクY1の記録層20のユーザデータ領域R2からデータが読み取られる。具体的には、次のとおりである。
【0045】
情報再生時には、スピンドルモータ1が回転駆動することによって磁気ディスクY1を回転させつつ、磁気ディスクY1の記録面に対向するヘッドスライダ2ないしこれに伴う再生ヘッド2aがシーク動作される。シーク動作では、再生ヘッド2aを介して得られる各所のサーボ領域R1のサーボ情報に基づいて、アクチュエータ4が稼働して、径方向D2において再生ヘッド2aが目的トラックへと移動される。再生ヘッド2aないしそのコア部は、磁気ディスクY1に対向しつつ磁気ディスクY1に対して相対的に周回する。
【0046】
図9は、磁気ディスク装置X1の情報再生時におけるトラッキング制御以後の制御処理のフローチャートを表す。シーク動作された再生ヘッド2aは、上述のトラッキング制御部5aの指示に基づいてトラッキング制御される(S1)。具体的には、目的トラックの目的セクタSのサーボ領域R1のサーボ情報(バースト信号)に基づき、アクチュエータ4が稼働して、サーボ領域R1のトラック中心線T1に再生ヘッド2aが追従するように径方向D2において再生ヘッド2aが位置決め制御される。再生ヘッド2aのコア部は径方向D2に幅を有する。当該トラッキング制御では、このコア幅の径方向D2における中心位置(コア幅中心位置P)が当該サーボ領域R1の目的トラックのトラック中心線T1に追従するように、アクチュエータ4は再生ヘッド2aの径方向D2位置を微調整する。図4では、一のトラック中心線T1に対するトラッキング制御を受けた再生ヘッド2aのコア部を太線で示す。
【0047】
再生ヘッド2aがトラッキング制御を受けた後、必要に応じて当該再生ヘッド2aについて位置補正を行う。位置補正に利用すべく、再生ヘッド2aのコア幅中心位置Pとトラック中心線T2の距離(ずれ量)が許容最大値Lのときに再生ヘッド2aが磁性部23からの磁界を検出して信号として出力する値(設定値E1)を、電圧値または電流値として予め決定しておく。これとともに、ずれ量と、当該位置ずれ状態にある再生ヘッド2aが磁性部23からの磁界を検出して信号として出力する値との関係(ずれ量―出力関係)を所定の態様で把握しておく。これら設定値E1およびずれ量―出力関係は、ディスクコントローラ5内のメモリまたは他に設けられるメモリに記憶され、トラッキング制御以後において必要に応じて利用される。本実施形態で利用するずれ量―出力関係を図10に示す。本実施形態では、テーブルの態様で、ずれ量―出力関係がメモリに記憶されている。図10のずれ量―出力関係では、ずれ量iL(i=1,2,3,・・・,n)のときの出力値Ei(i=1,2,3,・・・,n)とずれ量iLとが対応付けられている。具体的には、ずれ量が許容最大値Lのときの出力値(設定値E1)と当該許容最大値Lとが対応付けられ、ずれ量2L(Lの2倍)のときの出力値E2とずれ量2Lとが対応付けられ、ずれ量nLのときの出力値Enとずれ量nLとが対応付けられている。ずれ量が増大するほど出力値は減少する。また、トラッキング制御後の位置補正に利用するためのずれ量―出力関係における最大のずれ量nLは、例えば、トラック幅の半分程度に相当する。
【0048】
サーボ領域R1上の通過によりトラッキング制御を受けた再生ヘッド2aは、再生出力確認領域R3の磁性部23上を通過するとき、磁性部23からの磁界を検出して出力する。上述の再生出力取得部5bは、このときの出力値を確認出力値Eとして取得して上述の補償変位量決定部5cに送る(S2)。
【0049】
次に、再生出力取得部5bから確認出力値Eを受け取った補償変位量決定部5cは、確認出力値Eと上述の設定値E1とを比較する(S3)。この比較において、確認出力値Eが設定値E1以上である場合(即ち、E1≦Eの場合)、補償変位量決定部5cは、再生ヘッド2aについて位置補正が不要であると決定する(即ち、補償変位量は0であると決定する)。したがって、E1≦Eの場合には、次に、再生ヘッド2aによる読取りを実行する(S4)。具体的には、ユーザデータ領域R2の一列の磁性部22について、順次、再生ヘッド2aによって信号磁界を検出する。
【0050】
再生ヘッド2aからの確認出力値Eが設定値E1未満である場合(即ち、E<E1の場合)、再生ヘッド2aのずれ量は許容最大値Lを超えているので、再生ヘッド2aを、読取りを実行させずに、目的ユーザデータ領域R2上を相対的に通過させる。E<E1のとき、図11(a)に示すようにトラック中心線T2から回転中心A寄りの内側に再生ヘッド2aがずれている場合と、図12(a)に示すようにトラック中心線T2から外側に再生ヘッド2aがずれている場合とが想定されるところ、ずれ量をL1とする。図11および図12では、ユーザデータ領域R2の一のトラック中心線T2に沿って一列に並ぶ磁性部22,23、および、図中右方向に磁性部23上を通過する再生ヘッド2aのコア部を示す。E<E1の場合、補償変位量決定部5cは、確認出力値Eおよび上述のずれ量―出力関係に基づいて、ずれ量L1を低減する可能性のある変位量(補償候補変位量L’)を決定する(S5)。具体的には、補償変位量決定部5cは、図10のテーブルを参照ないし利用して、Ei≦E<E(i−1)の関係式を充足するiを導出した後にこのEiに対応するiLを選択し、このiLからLを減じた値たる(i−1)Lを補償候補変位量L’として選択する。
【0051】
次に、再生ヘッド2aを磁気ディスクY1に対して相対的に周回させて再び目的サーボ領域R1に至らせる。そして、目的サーボ領域R1上の通過によって再生ヘッド2aについて再びトラッキング制御を行う(S1)。このとき、当該トラッキング制御にて決定されるヘッド変位量(トラック中心線T1に直交する方向にて再生ヘッド2aを変位させるべき量)に、上記の補償候補変位量L’を含ませる。本実施形態では、補償候補変位量L’は、トラック中心線T1に対して回転中心Aとは反対の外側への変位量として、当該二周目のトラッキング制御にて決定されるヘッド変位量に含ませる。
【0052】
次に、上述のような二周目のトラッキング制御を受けた再生ヘッド2aは、再生出力確認領域R3の磁性部23上を通過するとき、磁性部23からの磁界を検出して出力する。再生出力取得部5bは、このときの出力値を確認出力値E’として取得して補償変位量決定部5cに送る(S2)。
【0053】
次に、再生出力取得部5bから確認出力値E’を受け取った補償変位量決定部5cは、確認出力値E’と上述の設定値E1とを比較する(S3)。この比較において、確認出力値E’が設定値E1以上である場合(即ち、E1≦E’の場合)、補償変位量決定部5cは、再生ヘッド2aについて位置補正が不要であると決定する(即ち、補償変位量は0であると決定する)。したがって、E1≦E’の場合には、次に、再生ヘッド2aによる読取りを実行する(S4)。具体的には、ユーザデータ領域R2の一列の磁性部22について、順次、再生ヘッド2aによって信号磁界を検出する。上述の一周目のトラッキング制御後に再生ヘッド2aが図11(a)に示すようにトラック中心線T2から回転中心A寄りの内側にずれていた場合(ずれ量はL1)、二周目のトラッキング制御を受けた再生ヘッド2aは、図11(b)に示すように位置補正される。すなわち、二周目のトラッキング制御を受けた再生ヘッド2aのトラック中心線T2からのずれ量L2は(L1−L’)であり、L2=(L1−L’)≦Lの関係式が充足される(上述のように、Lは再生ヘッド位置ずれ量の許容最大値である)。したがって、上述の一周目のトラッキング制御後に再生ヘッド2aが図11(a)に示すように位置ずれしていた場合には、再生ヘッド2aが当該二周目のトラッキング制御を経た後に、再生ヘッド2aによる読取りを実行することとなる。実質的には、二周目のトラッキング制御後にE1≦E’の結果を得た場合、一周目のトラッキング制御を受けた再生ヘッド2aにつき、例えば図11(a)に示すように、トラック中心線T2から回転中心A寄りの内側にずれていたと判定することが可能である。
【0054】
二周目のトラッキング制御を受けた再生ヘッド2aからの確認出力値E’が設定値E1未満である場合(即ち、E’<E1の場合)、再生ヘッド2aのずれ量は許容最大値Lを超えているので、再生ヘッド2aによる読取りを実行させない。このような再生ヘッド2aについては、目的ユーザデータ領域R2上を相対的に通過させる。上述の一周目のトラッキング制御後に再生ヘッド2aが図12(a)に示すようにトラック中心線T2から位置ずれしている場合(ずれ量はL1)、二周目のトラッキング制御を受けた再生ヘッド2aは、図12(b)に示すような位置にて磁性部23上を通過する。すなわち、二周目のトラッキング制御を受けた再生ヘッド2aのトラック中心線T2からのずれ量L2は(L1+L’)であり、L2≦Lの関係式は充足されない。したがって、上述の一周目のトラッキング制御後に再生ヘッド2aが図12(a)に示すように位置ずれしていた場合には、再生ヘッド2aが当該二周目のトラッキング制御を経た後に、再生ヘッド2aによる読取りは実行されない。実質的には、二周目のトラッキング制御の後にE’<E1の結果を得た場合、一周目のトラッキング制御を受けた再生ヘッド2aにつき、例えば図12(a)に示すように、トラック中心線T2から外側にずれていたと判定することが可能である。
【0055】
E’<E1の場合、次に、補償変位量決定部5cは、確認出力値E’および上述のずれ量―出力関係に基づき、ずれ量L2を低減する変位量(補償候補変位量L”)を決定する(S5)。例えば、補償変位量決定部5cは、図10のテーブルを参照ないし利用して、Ei≦E<E(i−1)の関係式を充足するiを導出した後にこのEiに対応するiLを選択し、このiLからLを減じた値たる(i−1)Lを補償候補変位量L”として選択する。
【0056】
次に、再生ヘッド2aを磁気ディスクY1に対して相対的に周回させて再び目的サーボ領域R1に至らせる。そして、目的サーボ領域R1上の通過によって再生ヘッド2aについて再びトラッキング制御を行う(S1)。このとき、当該トラッキング制御にて決定されるヘッド変位量(トラック中心線T1に直交する方向にて再生ヘッド2aを変位させるべき量)に、上記の補償候補変位量L”を含ませる。本実施形態では、補償候補変位量L”は、トラック中心線T1から回転中心A寄りの内側への変位量として、当該三周目のトラッキング制御にて決定されるヘッド変位量に含ませる。
【0057】
次に、上述のような三周目のトラッキング制御を受けた再生ヘッド2aは、再生出力確認領域R3の磁性部23上を通過するとき、磁性部23からの磁界を検出して出力する。再生出力取得部5bは、このときの出力値を確認出力値E”として取得して補償変位量決定部5cに送る(S2)。
【0058】
次に、再生出力取得部5bから確認出力値E”を受け取った補償変位量決定部5cは、確認出力値E”と上述の設定値E1とを比較する(S3)。この比較において、確認出力値E”が設定値E1以上である場合(即ち、E1≦E’の場合)、補償変位量決定部5cは、再生ヘッド2aについて位置補正が不要であると決定する(即ち、補償変位量は0であると決定する)。したがって、E1≦E”の場合には、次に、再生ヘッド2aによる読取りを実行する(S4)。具体的には、ユーザデータ領域R2の一列の磁性部22について、順次、再生ヘッド2aによって信号磁界を検出する。
【0059】
上述の二周目のトラッキング制御の後に再生ヘッド2aが図12(b)に示すようにトラック中心線T2から外側にずれていた場合(ずれ量はL2)、三周目のトラッキング制御を受けた再生ヘッド2aは、図12(c)に示すように位置補正される。すなわち、三周目のトラッキング制御を受けた再生ヘッド2aのトラック中心線T2からのずれ量L3は(L2−L”)であり、L3=(L2−L”)≦Lの関係式が充足される(上述のように、Lは再生ヘッド位置ずれ量の許容最大値である)。したがって、上述の一周目のトラッキング制御後に再生ヘッド2aが図12(a)に示すように位置ずれしていた場合には、再生ヘッド2aが当該三周目のトラッキング制御を経た後に、再生ヘッド2aによる読取りが実行されることとなる。
【0060】
磁気ディスク装置X1によると、再生ヘッド2aが目的サーボ領域R1上の通過による一周目のトラッキング制御を受けた後にトラック中心線T2からずれているかどうかを、再生出力確認領域R3の磁性部23由来の磁界を利用して確認することができる。そして、再生ヘッド2aのずれ量が許容最大値Lを超えている場合には、例えば上述のようにして、二周目または三周目のトラッキング制御の際に、ずれ量が許容最大値L以内に収まるように再生ヘッド2aを位置補正することができる。このように、磁気ディスク装置X1およびこれに含まれる磁気ディスクY1は、再生ヘッド2aによるデータ読取りに際して再生ヘッド2aの位置補正を行うのに適する。このような磁気ディスク装置X1および磁気ディスクY1は、再生ヘッド2aからの再生信号について充分な信号強度を確保して、適切な読取りないし再生処理を実行するのに好適である。
【0061】
本実施形態では、トラック中心線T2に直交する方向において、再生出力確認部R3の磁性部23はユーザデータ領域R2の磁性部22より長い。ユーザデータ領域R2の磁性部22はトラック中心線T2直交方向において再生ヘッド2aのコア幅よりも相当程度に小さい場合が多い。そのため、再生出力確認部R3の磁性部23が磁性部22よりもトラック中心線T2直交方向において長いことは、トラック中心線T2直交方向の長さについてコア幅との差の小さな磁性部23を採用して上述の位置補正の精度を高めるのに好適である。好ましくは、トラック中心線T2直交方向において、磁性部23は、再生ヘッド2aのコア幅以下の長さを有する、より好ましくは、トラック中心線T2直交方向における磁性部23の長さは再生ヘッド2aのコア幅に等しい。これらの構成は、上述の位置補正の精度を高めるのに好適である。
【0062】
図13は、磁気ディスクY1の第1変形例の部分拡大平面図である。磁気ディスクY1は、図13に示すように、再生出力確認用の磁性部23を再生出力確認部として更にユーザデータ領域R2内の磁性部22列の中に有してもよい。このような第1変形例の構成によると、再生ヘッド2aによる読取りを実行している途中で、再生ヘッド2aに位置ずれが生じているかどうかをユーザデータ領域R2内の磁性部23由来の磁界を利用して確認することができる。読取り実行途中で再生ヘッド2aのずれ量が許容最大値Lを超えていると判断された場合、ユーザデータ領域R2の磁性部23より下流側の磁性部22についての読取りを中断することができる。そして、ユーザデータ領域R2の磁性部23由来の磁界を利用して、ずれ量が許容最大値L以内に収まるように上述したのと同様にして再生ヘッド2aを位置補正した後に、ユーザデータ領域R2の磁性部23より下流側の磁性部22についての読取りを再開することができる。
【0063】
図14は、磁気ディスクY1の第2変形例の部分拡大平面図である。磁気ディスクY1は、図14に示すように、再生出力確認領域R3にて、単一の磁性部23に代えて、一列の複数の磁性部23を備えてもよい。第2変形例における磁性部23は3個以上である。このような第2変形例の構成によると、上記補償候補変位量L’,L”を上述の方法のようにトラッキング制御のルーティーンにフィードバックせずに、再生ヘッド2aの位置補正を行うことが可能である。第2変形例における具体的位置補正手法は、次のとおりである。
【0064】
まず、一周目のトラッキング制御(S1)の後に、ユーザデータ領域R2側から少なくとも3番目以降の第1の磁性部23を利用して再生出力取得部5bによって確認出力値Eを取得する(S2)。その後、再生ヘッド2aが次の第2の磁性部23上に至る前に、補償変位量決定部5cによる確認出力値Eと設定値E1の比較を行う(S3)。E1≦Eである場合、再生ヘッド2aについて位置補正は行わない。E<E1の場合、再生ヘッド2aが第2の磁性部23上に至る前に、補償変位量決定部5cによって補償候補変位量L’を決定し(S5)、且つ、アクチュエータ4を稼働させて再生ヘッド2aを例えば回転中心Aとは反対側(外側)に変位させる(変位量はL’)。
【0065】
次に、上述の第2の磁性部23を利用して再生出力取得部5bによって確認出力値E’を取得する(S2)。その後、再生ヘッド2aが次の第3の磁性部23上に至る前に、補償変位量決定部5cによる確認出力値E’と設定値E1の比較を行う(S3)。E1≦Eである場合、再生ヘッド2aについて更なる位置補正は行わない。E’<E1である場合、再生ヘッド2aが次の磁性部23上に至る前に、補償変位量決定部5cによって補償候補変位量L”を決定し(S5)、且つ、アクチュエータ4を稼働させて再生ヘッド2aを例えば回転中心A側(内側)に変位させる(変位量はL”)。
【0066】
次に、第3の磁性部23を利用して再生出力取得部5bによって確認出力値E”を取得する(S2)。その後、再生ヘッド2aがユーザデータ領域R2の磁性部22上に至る前に、補償変位量決定部5cによる確認出力値E”と設定値E1の比較を行う(S3)。そして、E1≦Eであることを確認した後、再生ヘッド2aによる読取りを実行する(S4)。具体的には、ユーザデータ領域R2の一列の磁性部22について、順次、再生ヘッド2aによって信号磁界を検出する。
【0067】
第2変形例によると、再生ヘッド2aが目的サーボ領域R1上の通過による一度のトラッキング制御を受けた後に、トラック中心線T2からずれているかどうかを、再生出力確認領域R3の第1の磁性部23由来の磁界を利用して確認することができる。そして、再生ヘッド2aのずれ量が許容最大値Lを超えている場合には、上述のようにして、再生ヘッド2aがユーザデータ領域R2の磁性部22に至る前に、ずれ量が許容最大値L以内に収まるように再生ヘッド2aを位置補正することができる。このように、第2変形例たる磁気ディスクY1およびこれを備える磁気ディスク装置X1は、再生ヘッド2aによるデータ読取りに際して再生ヘッド2aの位置補正を行うのに適する。このような磁気ディスクY1および磁気ディスク装置X1は、再生ヘッド2aからの再生信号について充分な信号強度を確保して、適切な読取りを実行するのに好適である。
【0068】
図15および図16は、本発明の第2の実施形態に係る磁気ディスク装置X2を表す。図15は、磁気ディスク装置X2の筐体内の斜視図である。図16は、磁気ディスク装置X2の機能ブロック図である。
【0069】
磁気ディスク装置X2は、複数の磁気ディスクY2と、スピンドルモータ1と、ヘッドスライダ2と、スイングアーム3と、アクチュエータ4と、ディスクコントローラ5’とを備える。磁気ディスク装置X2は、複数の磁気ディスクY1に代えて複数の磁気ディスクY2を備える点、および、ディスクコントローラ5に代えてディスクコントローラ5’を備える点において、上述の磁気ディスク装置X1と異なる。
【0070】
図17から図19は、磁気ディスクY2を表す。図17は、磁気ディスクY2の平面図である。図18は、磁気ディスクY2の部分拡大平面図である。図19は、図18の線XIX−XIXに沿った断面図である。
【0071】
磁気ディスクY2は、ディスク基板10、記録層20A、軟磁性層30、および保護膜40(図17および図18では図示略)を含む積層構造を有する、情報記録と情報再生とを実行可能なBPMである。また、磁気ディスクY2では、セクタサーボ方式が採用されて、図17に示すように複数のセクタSが設定されている。磁気ディスクY2は、記録層20に代えて記録層20Aを有する点において、磁気ディスクY1と異なる。
【0072】
記録層20Aは、各セクタSにおいて、図18および図19に示すように、サーボ領域R1、ユーザデータ領域R2、および再生出力確認領域R3を含む。サーボ領域R1およびユーザデータ領域R2は、ディスクの周方向D1に離隔する。再生出力確認領域R3は、ユーザデータ領域R2のサーボ領域R1側にてユーザデータ領域R2に隣接する(即ち、再生出力確認領域R3は、サーボ領域R1とユーザデータ領域R2の間に位置する)。また、記録層20Aは、サーボ領域R1に含まれる複数の磁性部21と、ユーザデータ領域R2に含まれる複数の磁性部22(磁性体ドット)と、再生出力確認領域R3に含まれる磁性部23Aと、磁性部21,22,23A間に介在する非磁性部24とを含む。記録層20Aは、再生出力確認領域R3において磁性部23に代えて磁性部23Aを有する点において、磁気ディスクY1の記録層20と異なる。
【0073】
再生出力確認領域R3における各磁性部23Aは、磁気ディスク装置X2の再生ヘッド2aが検出可能な磁界を発生している。磁性部23Aは、サーボ領域R1上を通過してトラッキング制御を受けた再生ヘッド2aがデータ領域R2上に進入する直前に再生ヘッド2aに磁性部23A由来の磁界を検出させて、当該検出に起因する再生ヘッド2aからの再生出力を確認するためのものである。各磁性部23Aは、径方向D2に延びる主部23aおよび延出部23b,23cを有する。トラック中心線T2に直交する方向における主部23aの中心位置はトラック中心線T2上に位置する。延出部23bは、トラック中心線T2に対する一方の側においてトラック中心線T2に沿って主部23aから延出する。延出部23cは、トラック中心線T2に対する他方の側においてトラック中心線T2に沿って延出部23bとは反対の側に主部23aから延出する。各磁性部23Aは、同じトラックに属するユーザデータ領域R2の複数の磁性部22とともに、トラック中心線T2に沿って一列に並ぶ。具体的には、磁性部23Aの主部23aの径方向D2における中心位置は、同じトラックに属する一列の磁性部22のそれぞれの径方向D2における中心位置と同様に、一本のトラック中心線T2上に位置する。また、径方向D2において、磁性部23Aの主部23aは磁性部22より長い。好ましくは、トラック中心線T2に直交する方向において、主部23aは、再生ヘッド2aのコア幅以下の長さを有する。より好ましくは、トラック中心線T2に直交する方向における主部23aの長さは、再生ヘッド2aのコア幅に等しい。このような磁性部23Aは、上述の磁性部23と同様に、例えば硬磁性材料よりなり、垂直磁気異方性を有する。磁性部23Aのための硬磁性材料としては、例えばCoPt、CoPtCr、またはSmCoを採用することができる。
【0074】
磁気ディスクY2は、記録層20A、軟磁性層30、および保護膜40を含む積層構造をディスク基板10の両面上に有する。また、記録層20A、軟磁性層30、および保護膜40を含む積層構造中には、必要に応じて他の層が含まれてもよい。
【0075】
磁気ディスクY2は、図6から図8を参照して磁気ディスクY1の製造方法として上述したのと同様の手法(インプリント法)を利用して製造することができる。インプリント法を利用した製造方法は、磁気ディスクY2を効率よく製造するのに適し、磁気ディスクY2の量産化を図りやすい。
【0076】
磁気ディスクY2の各セクタSでは、周方向D1におけるサーボ領域R1のサーボ情報形成位置とユーザデータ領域R2との間の離隔距離は、比較的長い。当該離隔距離が長いほど、径方向D2において、サーボ領域R1のトラック中心線T1の位置と、ユーザデータ領域R2のトラック中心線T2の位置とは、製造誤差によって設計位置からずれやすい。これに対し、各セクタSにて、再生出力確認領域R3は、サーボ領域R1側にてユーザデータ領域R2に隣接している。すなわち、再生出力確認領域R3の各磁性部23Aは、ユーザデータ領域R2に対し、サーボ領域R1のサーボ情報形成位置よりも近い。そのため、再生出力確認領域R3の磁性部23Aないしその主部23aの径方向D2中心位置は、ユーザデータ領域R2のトラック中心線T2上に高精度に位置することができる。
【0077】
一方、磁気ディスクY2のディスクコントローラ5’は、図16に示すように更に位置ずれ方向判断部5dおよび補正変位実行部5eを機能モジュールとして含む点において、磁気ディスク装置X1のディスクコントローラ5と異なる。
【0078】
以上のような磁気ディスク装置X2における情報記録時には、磁気ディスク装置X2の各部が協働して、回転される磁気ディスクY2の記録層20Aのユーザデータ領域R2に対し、ヘッドスライダ2の記録ヘッド2bによってデータが書き込まれる。
【0079】
磁気ディスク装置X2における情報再生時には、磁気ディスク装置X2の各部が協働して、ヘッドスライダ2の再生ヘッド2aにより、回転される磁気ディスクY2の記録層20Aのユーザデータ領域R2からデータが読み取られる。具体的には、次のとおりである。
【0080】
情報再生時には、スピンドルモータ1が回転駆動することによって磁気ディスクY2を回転させつつ、磁気ディスクY2の記録面に対向するヘッドスライダ2ないしこれに伴う再生ヘッド2aがシーク動作される。シーク動作では、再生ヘッド2aを介して得られる各所のサーボ領域R1のサーボ情報に基づいて、アクチュエータ4が稼働して、径方向D2において再生ヘッド2aが目的トラックへと移動される。再生ヘッド2aないしそのコア部は、磁気ディスクY2に対向しつつ磁気ディスクY2に対して相対的に周回する。
【0081】
図20は、磁気ディスク装置X2の情報再生時におけるトラッキング制御以後の制御処理のフローチャートを表す。シーク動作された再生ヘッド2aは、上述のトラッキング制御部5aの指示に基づいてトラッキング制御される(S1)。具体的には、目的トラックの目的セクタSのサーボ領域R1のサーボ情報(バースト信号)に基づき、アクチュエータ4が稼働して、サーボ領域R1のトラック中心線T1に再生ヘッド2aが追従するように径方向D2において再生ヘッド2aが位置決め制御される。再生ヘッド2aのコア部は径方向D2に幅を有する。当該トラッキング制御では、このコア幅の径方向D2における中心位置(コア幅中心位置P)が当該サーボ領域R1のトラック中心線T1に追従するように、アクチュエータ4は再生ヘッド2aの径方向D2位置を微調整する。図17では、一のトラック中心線T1に対するトラッキング制御を受けた再生ヘッド2aのコア部を太線で示す。
【0082】
再生ヘッド2aがトラッキング制御を受けた後、必要に応じて当該再生ヘッド2aについて位置補正を行う。位置補正用に、再生ヘッド2aのコア幅中心位置Pとトラック中心線T2のずれ量が許容最大値Lのときに再生ヘッド2aが磁性部23Aの主部23aからの磁界を検出して信号として出力する値(設定値E1)を、電圧値または電流値として予め決定しておく。これとともに、ずれ量と、当該位置ずれ状態にある再生ヘッド2aが主部23aからの磁界を検出して信号として出力する値との関係(ずれ量―出力関係)を所定の態様で把握しておく。これら設定値E1およびずれ量―出力関係は、ディスクコントローラ5’内のメモリまたは他に設けられるメモリに記憶され、トラッキング制御以後において必要に応じて利用される。本実施形態で利用するずれ量―出力関係を図10に示す。本実施形態では、テーブルの態様で、ずれ量―出力関係がメモリに記憶されている。図10のずれ量―出力関係では、ずれ量iLのときの出力値Eiとずれ量iLとが対応付けられている(i=1,2,3,・・・,n)。具体的には、ずれ量が許容最大値Lのときの出力値(設定値E1)と当該許容最大値Lとが対応付けられ、ずれ量2Lのときの出力値E2とずれ量2Lとが対応付けられ、ずれ量nLのときの出力値Enとずれ量nLとが対応付けられている。ずれ量iLが増大するほど出力値Eiは減少する。また、トラッキング制御後の位置補正に利用するためのずれ量―出力関係における最大のずれ量nLは、例えば、トラック幅の半分に相当する。
【0083】
サーボ領域R1上の通過によりトラッキング制御を受けた再生ヘッド2aは、再生出力確認領域R3の磁性部23A上を通過する間、磁性部23Aからの磁界を検出して出力し続ける。この間、出力信号のピーク値は、例えば図21(b)および図22(b)に示すように再生ヘッド2aのコア部が主部23a上を通過する際に、現れる。図21および図22では、ユーザデータ領域R2の一のトラック中心線T2に沿って一列に並ぶ磁性部22,23A、および、図中右方向に相対移動する再生ヘッド2aのコア部を示す。再生出力取得部5bは、このピーク値を確認出力値Eとして取得し、ピーク値取得時より時間t1前の出力値を前出力値e1として取得し、且つ、ピーク値取得時より時間t2後の出力値を後出力値e2として取得する(S2)。そして、再生出力取得部5bは、確認出力値Eを上述の補償変位量決定部5cに送り、且つ、前出力値e1および後出力値e2を上述の位置ずれ方向判断部5dに送る。前出力値e1に係る時間t1については、例えば図21(a)および図22(a)に示すように延出部23b上に再生ヘッド2aのコア部が位置する範囲で予め設定しておく。後出力値e2に係る時間t2については、例えば図21(c)および図22(c)に示すように延出部23c上に再生ヘッド2aのコア部が位置する範囲で予め設定しておく。時間t1,t2は、好ましくは、ピーク値取得時からの同一の時間間隔として設定される。
【0084】
次に、再生出力取得部5bから確認出力値Eを受け取った補償変位量決定部5cは、確認出力値Eと上述の設定値E1とを比較する(S3)。この比較において、確認出力値Eが設定値E1以上である場合(即ち、E1≦Eの場合)、補償変位量決定部5cは、再生ヘッド2aについて位置補正が不要であると決定する(即ち、補償変位量は0であると決定する)。したがって、E1≦Eの場合には、次に、再生ヘッド2aによる読取りを実行する(S7)。具体的には、ユーザデータ領域R2の一列の磁性部22について、順次、再生ヘッド2aによって信号磁界を検出する。
【0085】
再生ヘッド2aからの確認出力値Eが設定値E1未満である場合(即ち、E<E1の場合)、再生ヘッド2aのずれ量は許容最大値Lを超えているので再生ヘッド2aの位置補正を行う。E<E1のとき、図21(b)に示すようにトラック中心線T2から回転中心A寄りの内側に再生ヘッド2aがずれている場合と、図22(b)に示すようにトラック中心線T2から外側に再生ヘッド2aがずれている場合が想定されるところ、ずれ量をL1とする。E<E1の場合、補償変位量決定部5cは、確認出力値Eおよび上述のずれ量―出力関係に基づいて、ずれ量L1を低減する可能性のある変位量(補償候補変位量L’)を決定し、補償候補変位量L’を補正変位実行部5eに送る(S4)。補償変位量決定部5cは、具体的には、図10のテーブルを参照して、Ei≦E<E(i−1)の関係式を充足するiを導出した後にこのEiに対応するiLを選択し、このiLからLを減じた値たる(i−1)Lを補償候補変位量L’として選択する。
【0086】
次に、再生出力取得部5bから前出力値e1および後出力値e2を受け取った位置ずれ方向判断部5dは、前出力値e1と後出力値e2とを比較して、再生ヘッド2aの位置ずれ方向を判断し、判断結果を補正変位実行部5eに送る(S5)。この比較において、前出力値e1が後出力値e2より大きい場合(即ち、e1>e2の場合)、位置ずれ方向判断部5dは、トラック中心線T2から回転中心A寄りの内側に再生ヘッド2aがずれていると判断する。図21は、前出力値e1が後出力値e2より大きい場合の一例を表すものである。また、この比較において、前出力値e1が後出力値e2より小さい場合(即ち、e1<e2の場合)、位置ずれ方向判断部5dは、トラック中心線T2から外側に再生ヘッド2aがずれていると判断する。図22は、前出力値e1が後出力値e2より小さい場合の一例を表すものである。
【0087】
次に、補償候補変位量L’および位置ずれ方向に関する上記判断結果を受け取った補正変位実行部5eは、補償候補変位量L’および当該判断結果に基づいてアクチュエータ4を稼働させて再生ヘッド2aを補償候補変位量L’変位させる(S6)。上記ステップS5にて例えば図21の(a)から(c)に示すようにトラック中心線T2から回転中心A寄りの内側に再生ヘッド2aがずれていると判断された場合には、ステップS6では、例えば図21(d)に示すように再生ヘッド2aは外側に変位される。上記ステップS5にて例えば図22の(a)から(c)に示すようにトラック中心線T2から外側に再生ヘッド2aがずれていると判断された場合には、ステップS6では、例えば図22(d)に示すように再生ヘッド2aは回転中心A寄りの内側に変位される。このような位置補正を受けた再生ヘッド2aのトラック中心線T2からのずれ量L2は(L1−L’)であり、L2=(L1−L’)≦Lの関係式が充足される(上述のように、Lは再生ヘッド位置ずれ量の許容最大値である)。再生ヘッド2aがこのような位置補正を受けた後、ユーザデータ領域R2において再生ヘッド2aによる読取りを実行する(S7)。
【0088】
磁気ディスク装置X2によると、再生ヘッド2aが目的サーボ領域R1上の通過によるトラッキング制御を受けた後にトラック中心線T2からずれているかどうかを、再生出力確認領域R3の磁性部23A由来の磁界を利用して確認することができる。そして、再生ヘッド2aのずれ量が許容最大値Lを超えている場合には、例えば上述のようにして、ずれ量が許容最大値L以内に収まるように再生ヘッド2aを位置補正することができる。このように、磁気ディスク装置X2およびこれに含まれる磁気ディスクY2は、再生ヘッド2aによるデータ読取りに際して再生ヘッド2aの位置補正を行うのに適する。このような磁気ディスク装置X2および磁気ディスクY2は、再生ヘッド2aからの再生信号について充分な信号強度を確保して、適切な読取りないし再生処理を実行するのに好適である。
【0089】
磁気ディスク装置X2における上述の位置補正方法においては、ステップS5,S6の順序を入れ替えてもよいし、ステップS5,S6を併行して行ってもよい。
【0090】
本実施形態では、トラック中心線T2に直交する方向において、再生出力確認部R3の磁性部23Aの主部23aはユーザデータ領域R2の磁性部22より長い。ユーザデータ領域R2の磁性部22はトラック中心線T2直交方向において再生ヘッド2aのコア幅よりも相当程度に小さい場合が多い。そのため、再生出力確認部R3の磁性部23Aの主部23aが磁性部22よりもトラック中心線T2直交方向に長いことは、トラック中心線T2直交方向の長さについてコア幅との差の小さな磁性部23Aを採用して上述の位置補正の精度を高めるのに好適である。好ましくは、トラック中心線T2直交方向において、磁性部23Aの主部23aは、再生ヘッド2aのコア幅以下の長さを有する、より好ましくは、トラック中心線T2直交方向における磁性部23Aの主部23aの長さは再生ヘッド2aのコア幅に等しい。これらの構成は、上述の位置補正の精度を高めるのに好適である。
【0091】
図23は、磁気ディスクY2の変形例の部分拡大平面図である。磁気ディスクY2は、図23に示すように、再生出力確認用の磁性部23Aを再生出力確認部として更にユーザデータ領域R2内の磁性部22列の中に有してもよい。このような変形例の構成によると、再生ヘッド2aによる読取りを実行している途中で、再生ヘッド2aに位置ずれが生じているかどうか及び位置ずれ方向を、ユーザデータ領域R2内の磁性部23A由来の磁界を利用して確認することができる。読取り実行途中で再生ヘッド2aのずれ量が許容最大値Lを超えている場合、ユーザデータ領域R2の磁性部23A由来の磁界を利用して、ずれ量が許容最大値L以内に収まるように上述したのと同様にして再生ヘッド2aを位置補正することができる。このように、本変形例によると、再生ヘッド2aによる読取りを実行している途中で、再生ヘッド2aの位置補正を適切に行うことができる。
【0092】
以上のまとめとして、本発明の構成およびそのバリエーションを以下に付記として列挙する。
【0093】
(付記1)データ書込み用の一列に並ぶ複数の第1磁性部を含むデータ部と、
前記一列の第1磁性部の配列方向において前記データ部から離隔するサーボ部と、
前記サーボ部および前記データ部の間に位置し且つ少なくとも一つの第2磁性部を含む再生出力確認部と、を備え、
前記複数の第1磁性部および前記少なくとも一つの第2磁性部は、仮想線に沿って一列に位置し、当該仮想線に直交する方向における前記第1磁性部および前記第2磁性部の中心位置は当該仮想線上に位置し、当該仮想線に直交する方向において前記第2磁性部は前記第1磁性部より長い、磁気記録媒体。
(付記2)前記一列の第1磁性部の間に位置し且つ少なくとも一つの追加の第2磁性部を含む、追加の再生出力確認部を更に備え、前記仮想線に直交する方向における前記少なくとも一つの追加の第2磁性部の中心位置は当該仮想線上に位置し、当該仮想線に直交する方向において前記追加の第2磁性部は前記第1磁性部より長い、付記1に記載の磁気記録媒体。
(付記3)前記第2磁性部は、主部、第1延出部、および第2延出部を含み、前記仮想線に直交する方向における前記主部の中心位置は当該仮想線上に位置し、前記第1延出部は、前記仮想線に対する一方の側において当該仮想線に沿って前記主部から延出し、且つ、前記第2延出部は、前記仮想線に対する他方の側において当該仮想線に沿って前記第1延出部とは反対の側において前記主部から延出する、付記1または2に記載の磁気記録媒体。
(付記4)前記仮想線に直交する方向において、前記第2磁性部は、前記第1磁性部および前記第2磁性部に由来する磁界を検出するための再生ヘッドのコア幅以下の長さを有する、付記1から3のいずれか一つに記載の磁気記録媒体。
(付記5)前記仮想線に直交する方向における前記第2磁性部の長さは、前記再生ヘッドのコア幅に等しい、付記4に記載の磁気記録媒体。
(付記6)磁気記録媒体と、
前記磁気記録媒体からの磁界を検出するための再生ヘッドと、を備え、
前記磁気記録媒体は、
データ書込み用の一列に並ぶ複数の第1磁性部を含むデータ部と、
前記一列の第1磁性部の配列方向において前記データ部から離隔するサーボ部と、
前記サーボ部および前記データ部の間に位置し且つ少なくとも一つの第2磁性部を含む再生出力確認部と、を備え、
前記複数の第1磁性部および前記少なくとも一つの第2磁性部は、仮想線に沿って一列に位置し、当該仮想線に直交する方向における前記第1磁性部および前記第2磁性部の中心位置は当該仮想線上に位置し、当該仮想線に直交する方向において前記第2磁性部は前記第1磁性部より長い、磁気再生装置。
(付記7)前記一列の第1磁性部の間に位置し且つ少なくとも一つの追加の第2磁性部を含む、追加の再生出力確認部を更に備え、前記仮想線に直交する方向における前記少なくとも一つの追加の第2磁性部の中心位置は当該仮想線上に位置し、当該仮想線に直交する方向において前記追加の第2磁性部は前記第1磁性部より長い、付記6に記載の磁気再生装置。
(付記8)前記第2磁性部は、主部、第1延出部、および第2延出部を含み、前記仮想線に直交する方向における前記主部の中心位置は当該仮想線上に位置し、前記第1延出部は、前記仮想線に対する一方の側において当該仮想線に沿って前記主部から延出し、且つ、前記第2延出部は、前記仮想線に対する他方の側において当該仮想線に沿って前記第1延出部とは反対の側において前記主部から延出する、付記6または7に記載の磁気再生装置。
(付記9)前記仮想線に直交する方向において、前記第2磁性部は、前記再生ヘッドのコア幅以下の長さを有する、付記6から8のいずれか一つに記載の磁気再生装置。
(付記10)前記仮想線に直交する方向における前記第2磁性部の長さは、前記再生ヘッドのコア幅に等しい、付記9に記載の磁気再生装置。
【符号の説明】
【0094】
X1,X2 磁気ディスク装置
1 スピンドルモータ
2 ヘッドスライダ
2a 再生ヘッド
P コア幅中心位置
2b 記録ヘッド
3 スイングアーム
4 アクチュエータ
5,5’ ディスクコントローラ
Y1,Y2 磁気ディスク
R1 サーボ領域
R2 ユーザデータ領域
R3 再生出力確認領域
T1,T2 トラック中心線
10 ディスク基板
20,20A 記録層
21,22,23,23A 磁性部
23a 主部
23b,23c 延出部
24 非磁性部
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターニングされた磁性部を記録層に有する磁気記録媒体、および、そのような磁気記録媒体を備えた磁気再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハードディスクなどの記憶装置を構成するための記録媒体として、磁気ディスクが知られている。磁気ディスクは、ディスク基板と所定の磁性構造を有する記録層とを含む積層構造を有する。コンピュータシステム等における情報処理量の増大に伴い、磁気ディスクについては高記録密度化の要求が高まっている。
【0003】
磁気ディスクないし磁気記録媒体の技術分野においては、高記録密度化を図るのに適した磁気ディスクとして、いわゆるビットパターンドメディア(BPM)が知られている。BPMは、垂直磁気異方性を有してパターニングされた磁性部を記録層に有する。記録層には、同心円状に配された複数のトラックが設けられている。セクタサーボ方式の従来のBPMの記録層では、トラックごとに複数のセクタがディスク周方向に連なり、各セクタには、サーボ領域とこれに対応付けられたデータ領域とが含まれる。サーボ領域には、所定パターンの磁性部によってサーボ情報(トラック情報、セクタ情報、およびバースト信号等を含む)が形成されている。データ領域には、トラックごとに、一定のピッチで離隔して一列に配列する複数の磁性体ドットが設けられ、当該磁性体ドット列にユーザデータが記録される。このようなBPMたる磁気ディスクについては、例えば下記の特許文献1〜3に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−100499号公報
【特許文献2】特開2008−123638号公報
【特許文献3】特開2008−234774号公報
【0005】
記録媒体としてBPMを備える記録再生装置等は、BPMに加え、例えば、スピンドルモータと、再生ヘッドおよび記録ヘッドを伴うヘッドスライダと、スイングアームと、アクチュエータとを備える。スピンドルモータは、BPMを回転させるためのものである。ヘッドスライダは、再生時や記録時においてBPMの記録面に対して対向配置されるものである。ヘッドスライダの再生ヘッドは、BPMからの磁界を検出可能で且つ検出磁界に応じて出力可能な素子であり、磁界検知部たるコア部を有する。ヘッドスライダの記録ヘッドは、BPMのデータ領域の磁性体ドットの磁化方向を反転させるための磁界を発生させるための素子である。スイングアームは、ヘッドスライダを先端にて支持するためのものである。アクチュエータは、BPMに対向するヘッドスライダ(再生ヘッドと記録ヘッドを伴う)のディスク径方向における位置を変化させるべくスイングアームを動作させるためのものである。
【0006】
記録媒体としてBPMを備える記録再生装置等において、BPMのデータ領域に記録されているデータを読み取る際には、まず、BPMを回転しつつ、BPMの記録面に対向するヘッドスライダないしこれに伴う再生ヘッドがシーク動作される。このシーク動作では、再生ヘッドを介して得られる各所のサーボ領域のサーボ情報に基づいて、アクチュエータが稼働して、ディスク径方向において再生ヘッドが目的トラックへと移動される。次に、回転するBPMの記録面に対向する再生ヘッドがトラッキング制御される。具体的には、目的トラック内の目的セクタにおけるサーボ領域のサーボ情報(バースト信号)に基づいて、アクチュエータが稼働して、当該サーボ領域のトラック中心線に再生ヘッドが追従するように、ディスク径方向において再生ヘッドが位置決め制御される。再生ヘッドのコア部はディスク径方向に幅を有するところ、トラッキング制御では、コア幅のディスク径方向における中心位置(コア幅中心位置)がサーボ領域のトラック中心線に追従するように、アクチュエータは再生ヘッドのディスク径方向位置を微調整する。このようなトラッキング制御を経た後、回転するBPMの記録面に対向する再生ヘッドは、当該目的セクタにおけるデータ領域に至り、当該データ領域にある磁性体ドットからの信号磁界が、順次、再生ヘッドによって検出される。当該再生ヘッドからは、検出された信号磁界に対応して再生信号が出力されることとなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来、BPMのデータ領域のデータを読み取る際、再生ヘッドが目的セクタのサーボ情報に基づく上述のようなトラッキング制御を経ても、再生ヘッドのコア幅中心位置が、当該目的セクタのデータ領域のトラック中心線から比較的大きくずれる場合がある。その理由は、次のとおりである。
【0008】
BPMにおいては、各トラックの各セクタのデータ領域にてユーザデータが記録される一列の磁性体ドットは、上述のように一定のピッチで離隔する。BPMのデータ領域にユーザデータを記録する際には、回転するBPMの記録面に記録ヘッドを対向させつつデータ領域に磁界を印加するところ、記録ヘッドの直下に各磁性体ドットが至るタイミングと記録ヘッドの磁界発生タイミングとを同期させる必要がある。そのため、BPMの各セクタのサーボ領域のサーボ情報形成位置とデータ領域の間には、当該同期を実現するための情報をなす所定パターンの磁性部(例えば、データ領域の磁性体ドット列と同じ一定ピッチでディスク周方向に配列する複数の磁性部)が設けられる。当該同期情報は、記録ヘッドによるデータ領域への記録ないし書き込みの前に再生ヘッドによって読み取られるものである。
【0009】
BPMでは、各セクタにて、ディスク周方向におけるサーボ領域のサーボ情報形成位置とデータ領域の間に同期情報が形成されるために、ディスク周方向におけるサーボ情報形成位置とデータ領域の離隔距離は、比較的長い。同期情報が形成されている領域がディスク周方向に長いほど上述の同期の精度は向上する傾向にあるところ、同期情報形成領域がディスク周方向に長いほど、各セクタのディスク周方向におけるサーボ領域のサーボ情報形成位置とデータ領域の離隔距離は、長い。そして、当該離隔距離が長いほど、当該サーボ領域のトラック中心線のディスク径方向位置、および、当該データ領域のトラック中心線のディスク径方向位置は、それぞれ、製造誤差によって設計位置からずれやすい。すなわち、各セクタのディスク周方向におけるサーボ領域のサーボ情報形成位置とデータ領域の離隔距離が長いほど、当該サーボ領域のトラック中心線の径方向位置と、当該データ領域のトラック中心線の径方向位置とは、異なりやすい。一のトラックの一のセクタにてサーボ領域およびデータ領域の両トラック中心線の径方向位置が異なると、再生ヘッドが当該セクタのサーボ情報に基づくトラッキング制御を経ても、再生ヘッドのコア幅中心位置がデータ領域のトラック中心線からずれることとなる。データ領域におけるこのような再生ヘッドの位置ずれは、サーボ領域およびデータ領域の両トラック中心線の径方向位置の差が大きいほど、顕著となる。
【0010】
以上のような理由から、再生ヘッドが目的セクタのサーボ情報に基づく上述のようなトラッキング制御を経ても、再生ヘッドのコア幅中心位置が、当該目的セクタのデータ領域のトラック中心線から比較的大きくずれる場合があるのである。
【0011】
データ領域のトラック中心線からの上述のような再生ヘッドの位置ずれは、再生ヘッドからの再生信号について、出力低下を招来する。BPMにおけるデータ領域にてユーザデータをなす磁性体ドットは、それぞれが相当程度に小さい(磁性体ドットの直径は例えば20nm程度)。磁性体ドットが小さいほど、磁性体ドットから発生している磁界は小さい。そのため、データ領域のトラック中心線からの上述のような再生ヘッドの位置ずれは、再生ヘッドからの再生信号について、適切に再生処理できない程度の出力低下を招来する場合があり、好ましくない。
【0012】
本発明は、以上のような事情の下で考え出されたものである。本発明の目的は、いわゆるビットパターンドメディアにおいて、再生ヘッドによるデータ読取りに際して再生ヘッドの位置補正を行うのに適した磁気記録媒体、および、そのような磁気記録媒体を備える磁気再生装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1の側面によると磁気記録媒体が提供される。この磁気記録媒体は、データ部と、サーボ部と、再生出力確認部とを備える。データ部は、データ書込み用の一列に並ぶ複数の第1磁性部を含む。サーボ部は、一列の第1磁性部の配列方向においてデータ部から離隔する。再生出力確認部は、サーボ部およびデータ部の間に位置し且つ少なくとも一つの第2磁性部を含む。データ部の複数の第1磁性部、および、再生出力確認部の少なくとも一つの第2磁性部は、仮想線に沿って一列に位置する。当該仮想線に直交する方向における第1磁性部および第2磁性部の中心位置は、当該仮想線上に位置する。また、当該仮想線に直交する方向において、第2磁性部は第1磁性部より長い。
【0014】
本発明の第2の側面によると磁気再生装置が提供される。この磁気再生装置は、磁気記録媒体と、当該磁気記録媒体からの磁界を検出するための再生ヘッドとを備える。磁気記録媒体は、データ部と、サーボ部と、再生出力確認部とを備える。データ部は、データ書込み用の一列に並ぶ複数の第1磁性部を含む。サーボ部は、一列の第1磁性部の配列方向においてデータ部から離隔する。再生出力確認部は、サーボ部およびデータ部の間に位置し且つ少なくとも一つの第2磁性部を含む。データ部の複数の第1磁性部、および、再生出力確認部の少なくとも一つの第2磁性部は、仮想線に沿って一列に位置する。当該仮想線に直交する方向における第1磁性部および第2磁性部の中心位置は、当該仮想線上に位置する。また、当該仮想線に直交する方向において、第2磁性部は第1磁性部より長い。
【発明の効果】
【0015】
本発明の第1の側面に係る磁気記録媒体は、セクタサーボ方式を採用するものであり、セクタ内に、サーボ情報を伴うサーボ部と、当該サーボ部に対応付けられたデータ部と、サーボ部およびデータ部の間に位置する再生出力確認部とが存在する。本磁気記録媒体について再生ないし読取りを実行するには、磁界検出素子である再生ヘッドを使用する。再生ヘッドは、磁界検知部たるコア部を有する。再生ヘッドないしそのコア部は、読取りを実行する際、本磁気記録媒体に対向しつつ本磁気記録媒体に対して相対的に周回する。サーボ部のサーボ情報には、読取りを実行する再生ヘッドを目的トラックの幅方向中心位置(トラック中心位置)に位置決め制御(トラッキング制御)するための位置決め信号(例えばバースト信号)が含まれる。再生出力確認部の少なくとも一つの第2磁性部は、再生ヘッドが検出可能な磁界を発生している。データ部の複数の第1磁性部および再生出力確認部の少なくとも一つの第2磁性部は、仮想線たるトラック中心線に直交する方向におけるそれらの中心位置が当該仮想線(トラック中心線)上に位置するように、一列に配列している。このような本磁気記録媒体について、再生ヘッドを使用して読取りを実行するに際しては、目的トラックの目的セクタにあるサーボ部のサーボ情報に含まれる位置決め信号に基づいて、再生ヘッドについて目的トラックにトラッキング制御することができる。また、目的とするデータ部の第1磁性部列からの信号磁界を再生ヘッドによって検出する前に、再生出力確認部の少なくとも一つの第2磁性部に由来する磁界を再生ヘッドによって検出することができる。そして、再生ヘッドが第2磁性部由来の磁界を検出して信号として出力する電流値または電圧値を利用して、仮想線(トラック中心線)に直交する方向における再生ヘッドの位置補正を行うことが可能である。データ領域の第1磁性部は仮想線直交方向において再生ヘッドのコア幅よりも相当程度に小さい場合が多い。そのため、再生出力確認部の第2磁性部が当該第1磁性部よりも仮想線直交方向において長いことは、仮想線直交方向の長さについてコア幅との差の小さな第2磁性部を採用して前記の位置補正の精度を高めるのに好適である。位置補正は、例えば以下のようにして行うことが可能である。
【0016】
仮想線直交方向における再生ヘッドのコア幅中心位置と当該仮想線との距離(再生ヘッドずれ量)が許容最大値のときに当該再生ヘッドが第2磁性部からの磁界を検出して信号として出力する値(設定値)を、電圧値または電流値として予め決定しておく。これと共に、再生ヘッドずれ量と、当該位置ずれ状態にある再生ヘッドが第2磁性部からの磁界を検出して信号として出力する値との関係(ずれ量―出力関係)を所定の態様で把握しておく(ずれ量が大きくなるほど、出力は小さくなる傾向にある)。目的サーボ部上の通過によりトラッキング制御を受けた再生ヘッドが再生出力確認部の第2磁性部からの磁界を検出して出力する値(確認出力値)が前記設定値以上の場合、目的データ部の一列の第1磁性部について、順次、再生ヘッドによって信号磁界を検出する。再生ヘッドからの確認出力値が設定値未満である場合、再生ヘッドずれ量は許容最大値を超えているので、目的データ部の第1磁性部からの信号磁界を再生ヘッドによって検出しない。目的データ部にて再生ヘッドによる読取りを実行せずに、再生ヘッドを本磁気記録媒体に対して相対的に周回させて再び前記の目的サーボ部に至らせる。そして、当該目的サーボ部上の通過によって再生ヘッドについて再びトラッキング制御を行う際、当該制御にて決定されるヘッド変位量(仮想線直交方向に再生ヘッドを変位させるべき量)に、ずれ量を低減する可能性のある変位量(補償候補変位量)を含ませる。補償候補変位量は、確認出力値および前記のずれ量―出力関係に基づいて導出することができる。このような二周目のトラッキング制御を受けた再生ヘッドが再生出力確認部の第2磁性部からの磁界を検出して出力する値(再確認出力値)が前記設定値以上である場合、目的データ部にて再生ヘッドによる読取りを実行する。仮に再生ヘッドからの再確認出力値が設定値未満である場合、目的データ部にて再生ヘッドによる読取りを実行せずに、再生ヘッドを本磁気記録媒体に対して相対的に周回させて再び前記の目的サーボ部に至らせる。そして、当該目的サーボ部上の通過によって再生ヘッドについて再びトラッキング制御を行う際、当該制御にて決定されるヘッド変位量に、ずれ量を低減させる変位量(補償量)を含ませる。この補償量は、再確認出力値および前記のずれ量―出力関係に基づいて導出することができる。本磁気記録媒体では、多くともこのような三周目のトラッキング制御により、再生ヘッドについて、再生出力確認部の第2磁性部からの磁界を検出して出力する値が前記設定値以上となるように、位置決め制御することができる。そのため、再生ヘッドが目的サーボ部上の通過によって三周目のトラッキング制御を受けた後には、目的データ部にて再生ヘッドによる読取りを実行する。
【0017】
本磁気記録媒体によると、再生ヘッドが目的サーボ部上の通過による一周目のトラッキング制御を受けた後に仮想線(トラック中心線)からずれているかどうかを、再生出力確認部の第2磁性部由来の磁界を利用して確認することができる。そして、再生ヘッドずれ量が許容最大値を超えている場合には、例えば上述のようにして、二周目または三周目のトラッキング制御の際に、ずれ量が許容最大値以内に収まるように再生ヘッドを位置補正することができる。
【0018】
以上のように、本発明の第1の側面に係る磁気記録媒体は、再生ヘッドによるデータ読取りに際して再生ヘッドの位置補正を行うのに適する。このような磁気記録媒体は、再生ヘッドからの再生信号について充分な信号強度を確保して、適切な読取りないし再生処理を実行するのに好適である。
【0019】
本発明の第2の側面に係る磁気再生装置においては、磁気記録媒体からの読取りに際して、第1の側面に関して上述したのと同様の効果が奏される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る磁気ディスク装置を表す。
【図2】図1に示す磁気ディスク装置の機能ブロック図である。
【図3】図1に示す磁気ディスク装置の備える磁気ディスクの平面図である。
【図4】図3に示す磁気ディスクの部分拡大平面図である。
【図5】図4の線V−Vに沿った断面図である。
【図6】第1の実施形態における磁気ディスクの製造方法における一部の工程を表す。
【図7】図6の後に続く工程を表す。
【図8】図7の後に続く工程を表す。
【図9】第1の実施形態に係る磁気ディスク装置における再生ヘッド位置補正処理のフローチャートを表す。
【図10】ずれ量―出力関係の一例を表す。
【図11】第1の実施形態に係る磁気ディスク装置における再生ヘッド位置補正の一例を表す。
【図12】第1の実施形態に係る磁気ディスク装置における再生ヘッド位置補正の一例を表す。
【図13】第1の実施形態における磁気ディスクの第1変形例の部分拡大平面図である。
【図14】第1の実施形態における磁気ディスクの第2変形例の部分拡大平面図である。
【図15】本発明の第2の実施形態に係る磁気ディスク装置を表す。
【図16】図15に示す磁気ディスク装置の機能ブロック図である。
【図17】図15に示す磁気ディスク装置の備える磁気ディスクの平面図である。
【図18】図17に示す磁気ディスクの部分拡大平面図である。
【図19】図18の線XIX−XIXに沿った断面図である。
【図20】第2の実施形態に係る磁気ディスク装置における再生ヘッド位置補正処理のフローチャートを表す。
【図21】第2の実施形態に係る磁気ディスク装置における再生ヘッド位置補正の一例を表す。
【図22】第2の実施形態に係る磁気ディスク装置における再生ヘッド位置補正の一例を表す。
【図23】第2の実施形態における磁気ディスクの変形例の部分拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1および図2は、本発明の第1の実施形態に係る磁気ディスク装置X1を表す。図1は、磁気ディスク装置X1の筐体内の斜視図である。図2は、磁気ディスク装置X1の機能ブロック図である。
【0022】
磁気ディスク装置X1は、複数の磁気ディスクY1と、スピンドルモータ1と、ヘッドスライダ2と、スイングアーム3と、アクチュエータ4と、ディスクコントローラ5とを備える。
【0023】
複数の磁気ディスクY1は、所定の間隔を空けて配されている。磁気ディスクY1は、ビットパターンドメディア(BPM)であり、両面に記録面を有する。また、磁気ディスクY1は、セクタサーボ方式を採用するものであり、各セクタ内に、サーボ情報をなす磁性パターンを含むサーボ領域、および、磁性体ドット列を含むユーザデータ領域を含む。スピンドルモータ1は、磁気ディスクY1を回転させるためのものである。ヘッドスライダ2は、再生時や記録時において磁気ディスクY1の記録面に対して対向配置されるものであり、再生ヘッド2aおよび記録ヘッド2bを有する。再生ヘッド2aは、磁気ディスクY1からの磁界を検出可能で且つ検出磁界に応じて出力可能な素子であり、磁界検知部たるコア部を有する。コア部のトラック幅方向の長さ(コア幅)は、例えば30〜80nmである。このような再生素子としては、MR素子やGMR素子を挙げることができる。記録ヘッド2bは、磁気ディスクY1のデータ領域の磁性体ドットの磁化方向を反転させるための磁界を発生させるための素子である。これら再生ヘッド2aおよび記録ヘッド2bは、図2に模式的に示すように、磁気ディスクY1の周方向に離隔している。スイングアーム3は、ヘッドスライダ2を先端にて支持するためのものである。アクチュエータ4は、磁気ディスクY1に対向するヘッドスライダ2(再生ヘッド2aと記録ヘッド2bを伴う)のディスク径方向における位置を変化させるべくスイングアーム3を動作させるためのものである。アクチュエータ4は、例えばボイスコイルモータである。ディスクコントローラ5は、スピンドルモータ1、ヘッドスライダ2、およびアクチュエータ4を駆動制御するためのものである。このようなディスクコントローラ5は、例えば、CPUやメモリなどを備えたマイクロコンピュータを含む。また、ディスクコントローラ5には、図2に示すように、トラッキング制御部5a、再生出力取得部5b、補償変位量決定部5cなどの機能モジュールが含まれる。
【0024】
図3から図5は、磁気ディスクY1を表す。図3は、磁気ディスクY1の平面図である。図4は、磁気ディスクY1の部分拡大平面図である。図5は、図4の線V−Vに沿った断面図である。
【0025】
磁気ディスクY1は、ディスク基板10、記録層20、軟磁性層30、および保護膜40(図3および図4では図示略)を含む積層構造を有する、情報記録と情報再生とを実行可能なBPMである。また、磁気ディスクY1では、セクタサーボ方式が採用されて、図3に示すように複数のセクタSが設定されている。
【0026】
ディスク基板10は、主に、磁気ディスクY1の剛性を確保するための部位であり、例えば、アルミニウム合金、ガラス、シリコン、またはポリカーボネート樹脂よりなる。
【0027】
記録層20は、各セクタSにおいて、図4および図5に示すように、サーボ領域R1、ユーザデータ領域R2、および再生出力確認領域R3を含む。サーボ領域R1およびユーザデータ領域R2は、ディスクの周方向D1に離隔する。再生出力確認領域R3は、ユーザデータ領域R2のサーボ領域R1側にてユーザデータ領域R2に隣接する(即ち、再生出力確認領域R3は、サーボ領域R1とユーザデータ領域R2の間に位置する)。また、記録層20は、サーボ領域R1に含まれる複数の磁性部21と、ユーザデータ領域R2に含まれる複数の磁性部22(磁性体ドット)と、再生出力確認領域R3に含まれる磁性部23と、磁性部21,22,23間に介在する非磁性部24とを含む。磁性部21,22,23のそれぞれは、例えば硬磁性材料よりなり、垂直磁気異方性を有する。磁性部21,22,23のための硬磁性材料としては、例えばCoPt、CoPtCr、またはSmCoを採用することができる。非磁性部24は、例えばSiN、C、またはSiO2などの非磁性材料よりなる。非磁性部24の存在により、磁性部21,22,23間の磁気的相互作用が充分に抑制される。記録層20の厚さは例えば10〜30nmである。このような記録層20には、磁気ディスクY1の図3に示す回転中心Aを共通中心として同心円状に配された複数のトラックが設定されている。
【0028】
サーボ領域R1における複数の磁性部21は、サーボ情報を形成するためのものであり、磁気ディスクY1について読取りを実行するための上述の再生ヘッド2aが検出可能な磁界を発生している。サーボ情報には、例えばトラック情報、セクタ情報、トラッキング制御用のバースト信号、および同期信号等が含まれる。図4および図5には、サーボ情報の一部をなす磁性部21を示す。ディスクの径方向D2において、各磁性部21は、トラック幅に相当する長さや、複数のトラックにわたる長さを有する。また、サーボ領域R1の各トラックの径方向D2における中心位置(トラック幅中心位置)を通る仮想線をトラック中心線T1として表す。
【0029】
ユーザデータ領域R2における複数の磁性部22は、ユーザデータが書き換え可能に記録されるものである。各磁性部22は、図4に示すようにドット状の単一の記録セルであり、上述の再生ヘッド2aが検出可能な磁界を発生している。各磁性部22の直径は、例えば10〜30nmである。ユーザデータ領域R2の各トラックの径方向D2における中心位置(トラック幅中心位置)を通る仮想線をトラック中心線T2として表す。各トラックに含まれる複数の磁性部22は、トラック中心線T2に沿って一列に並ぶ。具体的には、一列に並ぶ複数の磁性部22のそれぞれの、径方向D2(トラック中心線T2に直交する方向)における中心位置は、一本のトラック中心線T2上に位置する。
【0030】
再生出力確認領域R3における各磁性部23は、上述の再生ヘッド2aが検出可能な磁界を発生している。磁性部23は、サーボ領域R1上を通過してトラッキング制御を受けた再生ヘッド2aがユーザデータ領域R2上に進入する直前に再生ヘッド2aに磁性部23由来の磁界を検出させ、当該検出に起因する再生ヘッド2aからの再生出力を確認するためのものである。各磁性部23は、同じトラックに属するユーザデータ領域R2の複数の磁性部22とともに、トラック中心線T2に沿って一列に並ぶ。具体的には、磁性部23の径方向D2における中心位置は、同じトラックに属する一列の磁性部22のそれぞれの径方向D2における中心位置と同様に、一本のトラック中心線T2上に位置する。また、径方向D2において、磁性部23は磁性部22より長い。好ましくは、トラック中心線T2に直交する方向において、磁性部23は、再生ヘッド2aの上記コア幅以下の長さを有する。より好ましくは、トラック中心線T2に直交する方向における磁性部23の長さは、再生ヘッド2aのコア幅に等しい。
【0031】
軟磁性層30は、磁気ディスクY1への書込み時等に保護膜40に対向する上述の記録ヘッド2bからの磁束を再び記録ヘッド2bに環流させる磁路を効率よく形成するためのものである。このような軟磁性層30は、高透磁率を有して大きな飽和磁化を有するとともに小さな保磁力を有する軟磁性材料よりなる。書込み時には、記録ヘッド2bによる記録磁界の印加によって、ユーザデータ領域R2の各磁性部22が所定方向に磁化されるところ、軟磁性層30が存在することにより、磁性部22を磁化反転させるのに必要な実効的な記録磁界を低減させることが可能となる。軟磁性層30のための軟磁性材料としては、例えば、FeC、FeNi、FeCoB、FeCoSiC、またはFeCo−AlOを採用することができる。
【0032】
保護膜40は、記録層20や軟磁性層30を外界から物理的および化学的に保護するための部位であり、例えば、SiN、SiO2、またはダイアモンドライクカーボン(DLC)よりなる。保護膜40の厚さは、例えば1〜5nmである。保護膜40の露出面は、磁気ディスクY1の記録面をなす。
【0033】
以上のような記録層20、軟磁性層30、および保護膜40を含む積層構造を磁気ディスクY1はディスク基板10の両面上に有する。また、記録層20、軟磁性層30、および保護膜40を含む積層構造中には、必要に応じて他の層が含まれてもよい。
【0034】
図6から図8は、磁気ディスクY1の製造方法の一例を表す。本方法では、まず、図6(a)に示すように、ディスク基板10上に、軟磁性層30、磁性膜20’、およびレジスト膜61を順次形成する。軟磁性層30の形成においては、例えばスパッタリング法により、軟磁性層30に関して上述した軟磁性材料をディスク基板10上に成膜する。磁性膜20’の形成においては、例えばスパッタリング法により、磁性部21,22,23に関して上述した磁性材料を軟磁性層30上に成膜する。レジスト膜61の形成においては、熱硬化型レジスト材料または紫外線硬化型レジスト材料をスピンコーティング法によって磁性膜20’上に成膜する。
【0035】
次に、図6(b)および図7(a)に示すように、スタンパ62を使用してインプリント工程を行う。スタンパ62は、転写面62’を有し、転写面62’側に凹部62a,62b,62cを有する。凹部62aは、上述の磁性部21に対応するパターン形状を有する。凹部62bは、上述の磁性部22に対応するパターン形状を有する。凹部62cは、上述の磁性部23に対応するパターン形状を有する。レジスト膜61として紫外線硬化型レジスト材料よりなるものを採用する場合、スタンパ62としては、紫外線が透過可能なものを使用する。
【0036】
インプリント工程では、このようなスタンパ62の転写面62’をレジスト膜61に押し付ける。レジスト膜61が熱硬化型レジスト材料よりなる場合、スタンパ62をレジスト膜61に押し付けた状態で加熱してレジスト膜61を硬化させる。レジスト膜61が紫外線硬化型レジスト材料よりなる場合、スタンパ62をレジスト膜61に押し付けた状態でレジスト膜61に対して紫外線を照射してレジスト膜61を硬化させる。このようなインプリント工程によって、転写面62’の凹凸形状がレジスト膜61に転写されて、レジストマスク61Aが形成される。レジストマスク61Aには、スタンパ62の凹部62a,62b,62cに応じて形成された凸部61a,61b,61cが含まれる。また、インプリント工程では、図7(a)に示すように、スタンパ62は磁性膜20’に至らず、磁性膜20’とスタンパ62との間にレジスト材料が残存するのが好ましい。スタンパ62が磁性膜20’に至ると、形成されるレジストマスク61Aと磁性膜20’との接触面積が低下するなどしてレジストマスク61Aが磁性膜20’から剥離しやすくなってしまう。そのような剥離が生じないように、スタンパ62と磁性膜20’との間にレジスト材料が意図的に残されるのが好ましいのである。
【0037】
本方法では、スタンパ62を使用して行う上述のインプリント工程の後、図7(b)に示すように、スタンパ62をレジストマスク61Aから取り外す。
【0038】
次に、凸部61a,61b,61cを有するレジストマスク61Aの側から磁性膜20’に対して異方性ドライエッチングを施すことにより、図8(a)に示すように、上述の磁性部21,22,23をパターン形成する。この後、例えば所定の溶解液を作用させることにより、レジストマスク61Aの残渣を除去する。
【0039】
次に、図8(b)に示すように非磁性部24を形成する。具体的には、磁性部21,22,23間の隙間を充填しつつ磁性部21,22,23を覆うように、非磁性部24に関して上述した非磁性材料を堆積させた後、過剰分を例えば研磨除去して磁性部21,22,23を露出させる。本工程にて、記録層20が形成されることとなる。
【0040】
次に、図8(c)に示すように保護膜40を形成する。保護膜40の形成においては、例えばスパッタリング法により、保護膜40に関して上述した材料を記録層20上に成膜する。以上のようにして、上述の磁気ディスクY1を適切に製造することができる。
【0041】
本方法においては、磁性部21,22,23をパターニングする際に必要なマスク(所定の凸部61a,61b,61cを有するレジストマスク61A)の形成にあたり、スタンパ62を使用して行うインプリント法を採用するため、電子ビーム描画装置を使用する必要はない。すなわち、磁気ディスクY1ごとの製造過程において、磁性部パターニング用のマスクを形成するのに、長時間にわたる電子ビーム描画装置による露光処理を行う必要はない。したがって、本方法は、磁気ディスクY1を効率よく製造するのに適し、磁気ディスクY1の量産化を図りやすい。
【0042】
サーボ領域R1の複数の磁性部21(サーボ情報)、ユーザデータ領域R2の複数の磁性部22(複数の磁性体ドット列)、および、再生出力確認領域R3の複数の磁性部23は、上述のような製造過程にてパターン形成されたものである。各セクタSにて、周方向D1におけるサーボ領域R1のサーボ情報形成位置とユーザデータ領域R2との間の離隔距離は、比較的長い。当該離隔距離が長いほど、径方向D2において、サーボ領域R1のトラック中心線T1の位置と、ユーザデータ領域R2のトラック中心線T2の位置とは、製造誤差によって設計位置からずれやすい。これに対し、各セクタSにて、再生出力確認領域R3は、サーボ領域R1側にてユーザデータ領域R2に隣接している。すなわち、再生出力確認領域R3の各磁性部23は、ユーザデータ領域R2に対し、サーボ領域R1のサーボ情報形成位置よりも近い。そのため、再生出力確認領域R3の各磁性部23の径方向D2中心位置は、ユーザデータ領域R2の各トラック中心線T2上に高精度に位置することができる。
【0043】
以上のような磁気ディスク装置X1における情報記録時には、磁気ディスク装置X1の各部が協働して、回転される磁気ディスクY1の記録層20のユーザデータ領域R2に対し、ヘッドスライダ2の記録ヘッド2bによってデータが書き込まれる。
【0044】
磁気ディスク装置X1における情報再生時には、磁気ディスク装置X1の各部が協働して、ヘッドスライダ2の再生ヘッド2aにより、回転される磁気ディスクY1の記録層20のユーザデータ領域R2からデータが読み取られる。具体的には、次のとおりである。
【0045】
情報再生時には、スピンドルモータ1が回転駆動することによって磁気ディスクY1を回転させつつ、磁気ディスクY1の記録面に対向するヘッドスライダ2ないしこれに伴う再生ヘッド2aがシーク動作される。シーク動作では、再生ヘッド2aを介して得られる各所のサーボ領域R1のサーボ情報に基づいて、アクチュエータ4が稼働して、径方向D2において再生ヘッド2aが目的トラックへと移動される。再生ヘッド2aないしそのコア部は、磁気ディスクY1に対向しつつ磁気ディスクY1に対して相対的に周回する。
【0046】
図9は、磁気ディスク装置X1の情報再生時におけるトラッキング制御以後の制御処理のフローチャートを表す。シーク動作された再生ヘッド2aは、上述のトラッキング制御部5aの指示に基づいてトラッキング制御される(S1)。具体的には、目的トラックの目的セクタSのサーボ領域R1のサーボ情報(バースト信号)に基づき、アクチュエータ4が稼働して、サーボ領域R1のトラック中心線T1に再生ヘッド2aが追従するように径方向D2において再生ヘッド2aが位置決め制御される。再生ヘッド2aのコア部は径方向D2に幅を有する。当該トラッキング制御では、このコア幅の径方向D2における中心位置(コア幅中心位置P)が当該サーボ領域R1の目的トラックのトラック中心線T1に追従するように、アクチュエータ4は再生ヘッド2aの径方向D2位置を微調整する。図4では、一のトラック中心線T1に対するトラッキング制御を受けた再生ヘッド2aのコア部を太線で示す。
【0047】
再生ヘッド2aがトラッキング制御を受けた後、必要に応じて当該再生ヘッド2aについて位置補正を行う。位置補正に利用すべく、再生ヘッド2aのコア幅中心位置Pとトラック中心線T2の距離(ずれ量)が許容最大値Lのときに再生ヘッド2aが磁性部23からの磁界を検出して信号として出力する値(設定値E1)を、電圧値または電流値として予め決定しておく。これとともに、ずれ量と、当該位置ずれ状態にある再生ヘッド2aが磁性部23からの磁界を検出して信号として出力する値との関係(ずれ量―出力関係)を所定の態様で把握しておく。これら設定値E1およびずれ量―出力関係は、ディスクコントローラ5内のメモリまたは他に設けられるメモリに記憶され、トラッキング制御以後において必要に応じて利用される。本実施形態で利用するずれ量―出力関係を図10に示す。本実施形態では、テーブルの態様で、ずれ量―出力関係がメモリに記憶されている。図10のずれ量―出力関係では、ずれ量iL(i=1,2,3,・・・,n)のときの出力値Ei(i=1,2,3,・・・,n)とずれ量iLとが対応付けられている。具体的には、ずれ量が許容最大値Lのときの出力値(設定値E1)と当該許容最大値Lとが対応付けられ、ずれ量2L(Lの2倍)のときの出力値E2とずれ量2Lとが対応付けられ、ずれ量nLのときの出力値Enとずれ量nLとが対応付けられている。ずれ量が増大するほど出力値は減少する。また、トラッキング制御後の位置補正に利用するためのずれ量―出力関係における最大のずれ量nLは、例えば、トラック幅の半分程度に相当する。
【0048】
サーボ領域R1上の通過によりトラッキング制御を受けた再生ヘッド2aは、再生出力確認領域R3の磁性部23上を通過するとき、磁性部23からの磁界を検出して出力する。上述の再生出力取得部5bは、このときの出力値を確認出力値Eとして取得して上述の補償変位量決定部5cに送る(S2)。
【0049】
次に、再生出力取得部5bから確認出力値Eを受け取った補償変位量決定部5cは、確認出力値Eと上述の設定値E1とを比較する(S3)。この比較において、確認出力値Eが設定値E1以上である場合(即ち、E1≦Eの場合)、補償変位量決定部5cは、再生ヘッド2aについて位置補正が不要であると決定する(即ち、補償変位量は0であると決定する)。したがって、E1≦Eの場合には、次に、再生ヘッド2aによる読取りを実行する(S4)。具体的には、ユーザデータ領域R2の一列の磁性部22について、順次、再生ヘッド2aによって信号磁界を検出する。
【0050】
再生ヘッド2aからの確認出力値Eが設定値E1未満である場合(即ち、E<E1の場合)、再生ヘッド2aのずれ量は許容最大値Lを超えているので、再生ヘッド2aを、読取りを実行させずに、目的ユーザデータ領域R2上を相対的に通過させる。E<E1のとき、図11(a)に示すようにトラック中心線T2から回転中心A寄りの内側に再生ヘッド2aがずれている場合と、図12(a)に示すようにトラック中心線T2から外側に再生ヘッド2aがずれている場合とが想定されるところ、ずれ量をL1とする。図11および図12では、ユーザデータ領域R2の一のトラック中心線T2に沿って一列に並ぶ磁性部22,23、および、図中右方向に磁性部23上を通過する再生ヘッド2aのコア部を示す。E<E1の場合、補償変位量決定部5cは、確認出力値Eおよび上述のずれ量―出力関係に基づいて、ずれ量L1を低減する可能性のある変位量(補償候補変位量L’)を決定する(S5)。具体的には、補償変位量決定部5cは、図10のテーブルを参照ないし利用して、Ei≦E<E(i−1)の関係式を充足するiを導出した後にこのEiに対応するiLを選択し、このiLからLを減じた値たる(i−1)Lを補償候補変位量L’として選択する。
【0051】
次に、再生ヘッド2aを磁気ディスクY1に対して相対的に周回させて再び目的サーボ領域R1に至らせる。そして、目的サーボ領域R1上の通過によって再生ヘッド2aについて再びトラッキング制御を行う(S1)。このとき、当該トラッキング制御にて決定されるヘッド変位量(トラック中心線T1に直交する方向にて再生ヘッド2aを変位させるべき量)に、上記の補償候補変位量L’を含ませる。本実施形態では、補償候補変位量L’は、トラック中心線T1に対して回転中心Aとは反対の外側への変位量として、当該二周目のトラッキング制御にて決定されるヘッド変位量に含ませる。
【0052】
次に、上述のような二周目のトラッキング制御を受けた再生ヘッド2aは、再生出力確認領域R3の磁性部23上を通過するとき、磁性部23からの磁界を検出して出力する。再生出力取得部5bは、このときの出力値を確認出力値E’として取得して補償変位量決定部5cに送る(S2)。
【0053】
次に、再生出力取得部5bから確認出力値E’を受け取った補償変位量決定部5cは、確認出力値E’と上述の設定値E1とを比較する(S3)。この比較において、確認出力値E’が設定値E1以上である場合(即ち、E1≦E’の場合)、補償変位量決定部5cは、再生ヘッド2aについて位置補正が不要であると決定する(即ち、補償変位量は0であると決定する)。したがって、E1≦E’の場合には、次に、再生ヘッド2aによる読取りを実行する(S4)。具体的には、ユーザデータ領域R2の一列の磁性部22について、順次、再生ヘッド2aによって信号磁界を検出する。上述の一周目のトラッキング制御後に再生ヘッド2aが図11(a)に示すようにトラック中心線T2から回転中心A寄りの内側にずれていた場合(ずれ量はL1)、二周目のトラッキング制御を受けた再生ヘッド2aは、図11(b)に示すように位置補正される。すなわち、二周目のトラッキング制御を受けた再生ヘッド2aのトラック中心線T2からのずれ量L2は(L1−L’)であり、L2=(L1−L’)≦Lの関係式が充足される(上述のように、Lは再生ヘッド位置ずれ量の許容最大値である)。したがって、上述の一周目のトラッキング制御後に再生ヘッド2aが図11(a)に示すように位置ずれしていた場合には、再生ヘッド2aが当該二周目のトラッキング制御を経た後に、再生ヘッド2aによる読取りを実行することとなる。実質的には、二周目のトラッキング制御後にE1≦E’の結果を得た場合、一周目のトラッキング制御を受けた再生ヘッド2aにつき、例えば図11(a)に示すように、トラック中心線T2から回転中心A寄りの内側にずれていたと判定することが可能である。
【0054】
二周目のトラッキング制御を受けた再生ヘッド2aからの確認出力値E’が設定値E1未満である場合(即ち、E’<E1の場合)、再生ヘッド2aのずれ量は許容最大値Lを超えているので、再生ヘッド2aによる読取りを実行させない。このような再生ヘッド2aについては、目的ユーザデータ領域R2上を相対的に通過させる。上述の一周目のトラッキング制御後に再生ヘッド2aが図12(a)に示すようにトラック中心線T2から位置ずれしている場合(ずれ量はL1)、二周目のトラッキング制御を受けた再生ヘッド2aは、図12(b)に示すような位置にて磁性部23上を通過する。すなわち、二周目のトラッキング制御を受けた再生ヘッド2aのトラック中心線T2からのずれ量L2は(L1+L’)であり、L2≦Lの関係式は充足されない。したがって、上述の一周目のトラッキング制御後に再生ヘッド2aが図12(a)に示すように位置ずれしていた場合には、再生ヘッド2aが当該二周目のトラッキング制御を経た後に、再生ヘッド2aによる読取りは実行されない。実質的には、二周目のトラッキング制御の後にE’<E1の結果を得た場合、一周目のトラッキング制御を受けた再生ヘッド2aにつき、例えば図12(a)に示すように、トラック中心線T2から外側にずれていたと判定することが可能である。
【0055】
E’<E1の場合、次に、補償変位量決定部5cは、確認出力値E’および上述のずれ量―出力関係に基づき、ずれ量L2を低減する変位量(補償候補変位量L”)を決定する(S5)。例えば、補償変位量決定部5cは、図10のテーブルを参照ないし利用して、Ei≦E<E(i−1)の関係式を充足するiを導出した後にこのEiに対応するiLを選択し、このiLからLを減じた値たる(i−1)Lを補償候補変位量L”として選択する。
【0056】
次に、再生ヘッド2aを磁気ディスクY1に対して相対的に周回させて再び目的サーボ領域R1に至らせる。そして、目的サーボ領域R1上の通過によって再生ヘッド2aについて再びトラッキング制御を行う(S1)。このとき、当該トラッキング制御にて決定されるヘッド変位量(トラック中心線T1に直交する方向にて再生ヘッド2aを変位させるべき量)に、上記の補償候補変位量L”を含ませる。本実施形態では、補償候補変位量L”は、トラック中心線T1から回転中心A寄りの内側への変位量として、当該三周目のトラッキング制御にて決定されるヘッド変位量に含ませる。
【0057】
次に、上述のような三周目のトラッキング制御を受けた再生ヘッド2aは、再生出力確認領域R3の磁性部23上を通過するとき、磁性部23からの磁界を検出して出力する。再生出力取得部5bは、このときの出力値を確認出力値E”として取得して補償変位量決定部5cに送る(S2)。
【0058】
次に、再生出力取得部5bから確認出力値E”を受け取った補償変位量決定部5cは、確認出力値E”と上述の設定値E1とを比較する(S3)。この比較において、確認出力値E”が設定値E1以上である場合(即ち、E1≦E’の場合)、補償変位量決定部5cは、再生ヘッド2aについて位置補正が不要であると決定する(即ち、補償変位量は0であると決定する)。したがって、E1≦E”の場合には、次に、再生ヘッド2aによる読取りを実行する(S4)。具体的には、ユーザデータ領域R2の一列の磁性部22について、順次、再生ヘッド2aによって信号磁界を検出する。
【0059】
上述の二周目のトラッキング制御の後に再生ヘッド2aが図12(b)に示すようにトラック中心線T2から外側にずれていた場合(ずれ量はL2)、三周目のトラッキング制御を受けた再生ヘッド2aは、図12(c)に示すように位置補正される。すなわち、三周目のトラッキング制御を受けた再生ヘッド2aのトラック中心線T2からのずれ量L3は(L2−L”)であり、L3=(L2−L”)≦Lの関係式が充足される(上述のように、Lは再生ヘッド位置ずれ量の許容最大値である)。したがって、上述の一周目のトラッキング制御後に再生ヘッド2aが図12(a)に示すように位置ずれしていた場合には、再生ヘッド2aが当該三周目のトラッキング制御を経た後に、再生ヘッド2aによる読取りが実行されることとなる。
【0060】
磁気ディスク装置X1によると、再生ヘッド2aが目的サーボ領域R1上の通過による一周目のトラッキング制御を受けた後にトラック中心線T2からずれているかどうかを、再生出力確認領域R3の磁性部23由来の磁界を利用して確認することができる。そして、再生ヘッド2aのずれ量が許容最大値Lを超えている場合には、例えば上述のようにして、二周目または三周目のトラッキング制御の際に、ずれ量が許容最大値L以内に収まるように再生ヘッド2aを位置補正することができる。このように、磁気ディスク装置X1およびこれに含まれる磁気ディスクY1は、再生ヘッド2aによるデータ読取りに際して再生ヘッド2aの位置補正を行うのに適する。このような磁気ディスク装置X1および磁気ディスクY1は、再生ヘッド2aからの再生信号について充分な信号強度を確保して、適切な読取りないし再生処理を実行するのに好適である。
【0061】
本実施形態では、トラック中心線T2に直交する方向において、再生出力確認部R3の磁性部23はユーザデータ領域R2の磁性部22より長い。ユーザデータ領域R2の磁性部22はトラック中心線T2直交方向において再生ヘッド2aのコア幅よりも相当程度に小さい場合が多い。そのため、再生出力確認部R3の磁性部23が磁性部22よりもトラック中心線T2直交方向において長いことは、トラック中心線T2直交方向の長さについてコア幅との差の小さな磁性部23を採用して上述の位置補正の精度を高めるのに好適である。好ましくは、トラック中心線T2直交方向において、磁性部23は、再生ヘッド2aのコア幅以下の長さを有する、より好ましくは、トラック中心線T2直交方向における磁性部23の長さは再生ヘッド2aのコア幅に等しい。これらの構成は、上述の位置補正の精度を高めるのに好適である。
【0062】
図13は、磁気ディスクY1の第1変形例の部分拡大平面図である。磁気ディスクY1は、図13に示すように、再生出力確認用の磁性部23を再生出力確認部として更にユーザデータ領域R2内の磁性部22列の中に有してもよい。このような第1変形例の構成によると、再生ヘッド2aによる読取りを実行している途中で、再生ヘッド2aに位置ずれが生じているかどうかをユーザデータ領域R2内の磁性部23由来の磁界を利用して確認することができる。読取り実行途中で再生ヘッド2aのずれ量が許容最大値Lを超えていると判断された場合、ユーザデータ領域R2の磁性部23より下流側の磁性部22についての読取りを中断することができる。そして、ユーザデータ領域R2の磁性部23由来の磁界を利用して、ずれ量が許容最大値L以内に収まるように上述したのと同様にして再生ヘッド2aを位置補正した後に、ユーザデータ領域R2の磁性部23より下流側の磁性部22についての読取りを再開することができる。
【0063】
図14は、磁気ディスクY1の第2変形例の部分拡大平面図である。磁気ディスクY1は、図14に示すように、再生出力確認領域R3にて、単一の磁性部23に代えて、一列の複数の磁性部23を備えてもよい。第2変形例における磁性部23は3個以上である。このような第2変形例の構成によると、上記補償候補変位量L’,L”を上述の方法のようにトラッキング制御のルーティーンにフィードバックせずに、再生ヘッド2aの位置補正を行うことが可能である。第2変形例における具体的位置補正手法は、次のとおりである。
【0064】
まず、一周目のトラッキング制御(S1)の後に、ユーザデータ領域R2側から少なくとも3番目以降の第1の磁性部23を利用して再生出力取得部5bによって確認出力値Eを取得する(S2)。その後、再生ヘッド2aが次の第2の磁性部23上に至る前に、補償変位量決定部5cによる確認出力値Eと設定値E1の比較を行う(S3)。E1≦Eである場合、再生ヘッド2aについて位置補正は行わない。E<E1の場合、再生ヘッド2aが第2の磁性部23上に至る前に、補償変位量決定部5cによって補償候補変位量L’を決定し(S5)、且つ、アクチュエータ4を稼働させて再生ヘッド2aを例えば回転中心Aとは反対側(外側)に変位させる(変位量はL’)。
【0065】
次に、上述の第2の磁性部23を利用して再生出力取得部5bによって確認出力値E’を取得する(S2)。その後、再生ヘッド2aが次の第3の磁性部23上に至る前に、補償変位量決定部5cによる確認出力値E’と設定値E1の比較を行う(S3)。E1≦Eである場合、再生ヘッド2aについて更なる位置補正は行わない。E’<E1である場合、再生ヘッド2aが次の磁性部23上に至る前に、補償変位量決定部5cによって補償候補変位量L”を決定し(S5)、且つ、アクチュエータ4を稼働させて再生ヘッド2aを例えば回転中心A側(内側)に変位させる(変位量はL”)。
【0066】
次に、第3の磁性部23を利用して再生出力取得部5bによって確認出力値E”を取得する(S2)。その後、再生ヘッド2aがユーザデータ領域R2の磁性部22上に至る前に、補償変位量決定部5cによる確認出力値E”と設定値E1の比較を行う(S3)。そして、E1≦Eであることを確認した後、再生ヘッド2aによる読取りを実行する(S4)。具体的には、ユーザデータ領域R2の一列の磁性部22について、順次、再生ヘッド2aによって信号磁界を検出する。
【0067】
第2変形例によると、再生ヘッド2aが目的サーボ領域R1上の通過による一度のトラッキング制御を受けた後に、トラック中心線T2からずれているかどうかを、再生出力確認領域R3の第1の磁性部23由来の磁界を利用して確認することができる。そして、再生ヘッド2aのずれ量が許容最大値Lを超えている場合には、上述のようにして、再生ヘッド2aがユーザデータ領域R2の磁性部22に至る前に、ずれ量が許容最大値L以内に収まるように再生ヘッド2aを位置補正することができる。このように、第2変形例たる磁気ディスクY1およびこれを備える磁気ディスク装置X1は、再生ヘッド2aによるデータ読取りに際して再生ヘッド2aの位置補正を行うのに適する。このような磁気ディスクY1および磁気ディスク装置X1は、再生ヘッド2aからの再生信号について充分な信号強度を確保して、適切な読取りを実行するのに好適である。
【0068】
図15および図16は、本発明の第2の実施形態に係る磁気ディスク装置X2を表す。図15は、磁気ディスク装置X2の筐体内の斜視図である。図16は、磁気ディスク装置X2の機能ブロック図である。
【0069】
磁気ディスク装置X2は、複数の磁気ディスクY2と、スピンドルモータ1と、ヘッドスライダ2と、スイングアーム3と、アクチュエータ4と、ディスクコントローラ5’とを備える。磁気ディスク装置X2は、複数の磁気ディスクY1に代えて複数の磁気ディスクY2を備える点、および、ディスクコントローラ5に代えてディスクコントローラ5’を備える点において、上述の磁気ディスク装置X1と異なる。
【0070】
図17から図19は、磁気ディスクY2を表す。図17は、磁気ディスクY2の平面図である。図18は、磁気ディスクY2の部分拡大平面図である。図19は、図18の線XIX−XIXに沿った断面図である。
【0071】
磁気ディスクY2は、ディスク基板10、記録層20A、軟磁性層30、および保護膜40(図17および図18では図示略)を含む積層構造を有する、情報記録と情報再生とを実行可能なBPMである。また、磁気ディスクY2では、セクタサーボ方式が採用されて、図17に示すように複数のセクタSが設定されている。磁気ディスクY2は、記録層20に代えて記録層20Aを有する点において、磁気ディスクY1と異なる。
【0072】
記録層20Aは、各セクタSにおいて、図18および図19に示すように、サーボ領域R1、ユーザデータ領域R2、および再生出力確認領域R3を含む。サーボ領域R1およびユーザデータ領域R2は、ディスクの周方向D1に離隔する。再生出力確認領域R3は、ユーザデータ領域R2のサーボ領域R1側にてユーザデータ領域R2に隣接する(即ち、再生出力確認領域R3は、サーボ領域R1とユーザデータ領域R2の間に位置する)。また、記録層20Aは、サーボ領域R1に含まれる複数の磁性部21と、ユーザデータ領域R2に含まれる複数の磁性部22(磁性体ドット)と、再生出力確認領域R3に含まれる磁性部23Aと、磁性部21,22,23A間に介在する非磁性部24とを含む。記録層20Aは、再生出力確認領域R3において磁性部23に代えて磁性部23Aを有する点において、磁気ディスクY1の記録層20と異なる。
【0073】
再生出力確認領域R3における各磁性部23Aは、磁気ディスク装置X2の再生ヘッド2aが検出可能な磁界を発生している。磁性部23Aは、サーボ領域R1上を通過してトラッキング制御を受けた再生ヘッド2aがデータ領域R2上に進入する直前に再生ヘッド2aに磁性部23A由来の磁界を検出させて、当該検出に起因する再生ヘッド2aからの再生出力を確認するためのものである。各磁性部23Aは、径方向D2に延びる主部23aおよび延出部23b,23cを有する。トラック中心線T2に直交する方向における主部23aの中心位置はトラック中心線T2上に位置する。延出部23bは、トラック中心線T2に対する一方の側においてトラック中心線T2に沿って主部23aから延出する。延出部23cは、トラック中心線T2に対する他方の側においてトラック中心線T2に沿って延出部23bとは反対の側に主部23aから延出する。各磁性部23Aは、同じトラックに属するユーザデータ領域R2の複数の磁性部22とともに、トラック中心線T2に沿って一列に並ぶ。具体的には、磁性部23Aの主部23aの径方向D2における中心位置は、同じトラックに属する一列の磁性部22のそれぞれの径方向D2における中心位置と同様に、一本のトラック中心線T2上に位置する。また、径方向D2において、磁性部23Aの主部23aは磁性部22より長い。好ましくは、トラック中心線T2に直交する方向において、主部23aは、再生ヘッド2aのコア幅以下の長さを有する。より好ましくは、トラック中心線T2に直交する方向における主部23aの長さは、再生ヘッド2aのコア幅に等しい。このような磁性部23Aは、上述の磁性部23と同様に、例えば硬磁性材料よりなり、垂直磁気異方性を有する。磁性部23Aのための硬磁性材料としては、例えばCoPt、CoPtCr、またはSmCoを採用することができる。
【0074】
磁気ディスクY2は、記録層20A、軟磁性層30、および保護膜40を含む積層構造をディスク基板10の両面上に有する。また、記録層20A、軟磁性層30、および保護膜40を含む積層構造中には、必要に応じて他の層が含まれてもよい。
【0075】
磁気ディスクY2は、図6から図8を参照して磁気ディスクY1の製造方法として上述したのと同様の手法(インプリント法)を利用して製造することができる。インプリント法を利用した製造方法は、磁気ディスクY2を効率よく製造するのに適し、磁気ディスクY2の量産化を図りやすい。
【0076】
磁気ディスクY2の各セクタSでは、周方向D1におけるサーボ領域R1のサーボ情報形成位置とユーザデータ領域R2との間の離隔距離は、比較的長い。当該離隔距離が長いほど、径方向D2において、サーボ領域R1のトラック中心線T1の位置と、ユーザデータ領域R2のトラック中心線T2の位置とは、製造誤差によって設計位置からずれやすい。これに対し、各セクタSにて、再生出力確認領域R3は、サーボ領域R1側にてユーザデータ領域R2に隣接している。すなわち、再生出力確認領域R3の各磁性部23Aは、ユーザデータ領域R2に対し、サーボ領域R1のサーボ情報形成位置よりも近い。そのため、再生出力確認領域R3の磁性部23Aないしその主部23aの径方向D2中心位置は、ユーザデータ領域R2のトラック中心線T2上に高精度に位置することができる。
【0077】
一方、磁気ディスクY2のディスクコントローラ5’は、図16に示すように更に位置ずれ方向判断部5dおよび補正変位実行部5eを機能モジュールとして含む点において、磁気ディスク装置X1のディスクコントローラ5と異なる。
【0078】
以上のような磁気ディスク装置X2における情報記録時には、磁気ディスク装置X2の各部が協働して、回転される磁気ディスクY2の記録層20Aのユーザデータ領域R2に対し、ヘッドスライダ2の記録ヘッド2bによってデータが書き込まれる。
【0079】
磁気ディスク装置X2における情報再生時には、磁気ディスク装置X2の各部が協働して、ヘッドスライダ2の再生ヘッド2aにより、回転される磁気ディスクY2の記録層20Aのユーザデータ領域R2からデータが読み取られる。具体的には、次のとおりである。
【0080】
情報再生時には、スピンドルモータ1が回転駆動することによって磁気ディスクY2を回転させつつ、磁気ディスクY2の記録面に対向するヘッドスライダ2ないしこれに伴う再生ヘッド2aがシーク動作される。シーク動作では、再生ヘッド2aを介して得られる各所のサーボ領域R1のサーボ情報に基づいて、アクチュエータ4が稼働して、径方向D2において再生ヘッド2aが目的トラックへと移動される。再生ヘッド2aないしそのコア部は、磁気ディスクY2に対向しつつ磁気ディスクY2に対して相対的に周回する。
【0081】
図20は、磁気ディスク装置X2の情報再生時におけるトラッキング制御以後の制御処理のフローチャートを表す。シーク動作された再生ヘッド2aは、上述のトラッキング制御部5aの指示に基づいてトラッキング制御される(S1)。具体的には、目的トラックの目的セクタSのサーボ領域R1のサーボ情報(バースト信号)に基づき、アクチュエータ4が稼働して、サーボ領域R1のトラック中心線T1に再生ヘッド2aが追従するように径方向D2において再生ヘッド2aが位置決め制御される。再生ヘッド2aのコア部は径方向D2に幅を有する。当該トラッキング制御では、このコア幅の径方向D2における中心位置(コア幅中心位置P)が当該サーボ領域R1のトラック中心線T1に追従するように、アクチュエータ4は再生ヘッド2aの径方向D2位置を微調整する。図17では、一のトラック中心線T1に対するトラッキング制御を受けた再生ヘッド2aのコア部を太線で示す。
【0082】
再生ヘッド2aがトラッキング制御を受けた後、必要に応じて当該再生ヘッド2aについて位置補正を行う。位置補正用に、再生ヘッド2aのコア幅中心位置Pとトラック中心線T2のずれ量が許容最大値Lのときに再生ヘッド2aが磁性部23Aの主部23aからの磁界を検出して信号として出力する値(設定値E1)を、電圧値または電流値として予め決定しておく。これとともに、ずれ量と、当該位置ずれ状態にある再生ヘッド2aが主部23aからの磁界を検出して信号として出力する値との関係(ずれ量―出力関係)を所定の態様で把握しておく。これら設定値E1およびずれ量―出力関係は、ディスクコントローラ5’内のメモリまたは他に設けられるメモリに記憶され、トラッキング制御以後において必要に応じて利用される。本実施形態で利用するずれ量―出力関係を図10に示す。本実施形態では、テーブルの態様で、ずれ量―出力関係がメモリに記憶されている。図10のずれ量―出力関係では、ずれ量iLのときの出力値Eiとずれ量iLとが対応付けられている(i=1,2,3,・・・,n)。具体的には、ずれ量が許容最大値Lのときの出力値(設定値E1)と当該許容最大値Lとが対応付けられ、ずれ量2Lのときの出力値E2とずれ量2Lとが対応付けられ、ずれ量nLのときの出力値Enとずれ量nLとが対応付けられている。ずれ量iLが増大するほど出力値Eiは減少する。また、トラッキング制御後の位置補正に利用するためのずれ量―出力関係における最大のずれ量nLは、例えば、トラック幅の半分に相当する。
【0083】
サーボ領域R1上の通過によりトラッキング制御を受けた再生ヘッド2aは、再生出力確認領域R3の磁性部23A上を通過する間、磁性部23Aからの磁界を検出して出力し続ける。この間、出力信号のピーク値は、例えば図21(b)および図22(b)に示すように再生ヘッド2aのコア部が主部23a上を通過する際に、現れる。図21および図22では、ユーザデータ領域R2の一のトラック中心線T2に沿って一列に並ぶ磁性部22,23A、および、図中右方向に相対移動する再生ヘッド2aのコア部を示す。再生出力取得部5bは、このピーク値を確認出力値Eとして取得し、ピーク値取得時より時間t1前の出力値を前出力値e1として取得し、且つ、ピーク値取得時より時間t2後の出力値を後出力値e2として取得する(S2)。そして、再生出力取得部5bは、確認出力値Eを上述の補償変位量決定部5cに送り、且つ、前出力値e1および後出力値e2を上述の位置ずれ方向判断部5dに送る。前出力値e1に係る時間t1については、例えば図21(a)および図22(a)に示すように延出部23b上に再生ヘッド2aのコア部が位置する範囲で予め設定しておく。後出力値e2に係る時間t2については、例えば図21(c)および図22(c)に示すように延出部23c上に再生ヘッド2aのコア部が位置する範囲で予め設定しておく。時間t1,t2は、好ましくは、ピーク値取得時からの同一の時間間隔として設定される。
【0084】
次に、再生出力取得部5bから確認出力値Eを受け取った補償変位量決定部5cは、確認出力値Eと上述の設定値E1とを比較する(S3)。この比較において、確認出力値Eが設定値E1以上である場合(即ち、E1≦Eの場合)、補償変位量決定部5cは、再生ヘッド2aについて位置補正が不要であると決定する(即ち、補償変位量は0であると決定する)。したがって、E1≦Eの場合には、次に、再生ヘッド2aによる読取りを実行する(S7)。具体的には、ユーザデータ領域R2の一列の磁性部22について、順次、再生ヘッド2aによって信号磁界を検出する。
【0085】
再生ヘッド2aからの確認出力値Eが設定値E1未満である場合(即ち、E<E1の場合)、再生ヘッド2aのずれ量は許容最大値Lを超えているので再生ヘッド2aの位置補正を行う。E<E1のとき、図21(b)に示すようにトラック中心線T2から回転中心A寄りの内側に再生ヘッド2aがずれている場合と、図22(b)に示すようにトラック中心線T2から外側に再生ヘッド2aがずれている場合が想定されるところ、ずれ量をL1とする。E<E1の場合、補償変位量決定部5cは、確認出力値Eおよび上述のずれ量―出力関係に基づいて、ずれ量L1を低減する可能性のある変位量(補償候補変位量L’)を決定し、補償候補変位量L’を補正変位実行部5eに送る(S4)。補償変位量決定部5cは、具体的には、図10のテーブルを参照して、Ei≦E<E(i−1)の関係式を充足するiを導出した後にこのEiに対応するiLを選択し、このiLからLを減じた値たる(i−1)Lを補償候補変位量L’として選択する。
【0086】
次に、再生出力取得部5bから前出力値e1および後出力値e2を受け取った位置ずれ方向判断部5dは、前出力値e1と後出力値e2とを比較して、再生ヘッド2aの位置ずれ方向を判断し、判断結果を補正変位実行部5eに送る(S5)。この比較において、前出力値e1が後出力値e2より大きい場合(即ち、e1>e2の場合)、位置ずれ方向判断部5dは、トラック中心線T2から回転中心A寄りの内側に再生ヘッド2aがずれていると判断する。図21は、前出力値e1が後出力値e2より大きい場合の一例を表すものである。また、この比較において、前出力値e1が後出力値e2より小さい場合(即ち、e1<e2の場合)、位置ずれ方向判断部5dは、トラック中心線T2から外側に再生ヘッド2aがずれていると判断する。図22は、前出力値e1が後出力値e2より小さい場合の一例を表すものである。
【0087】
次に、補償候補変位量L’および位置ずれ方向に関する上記判断結果を受け取った補正変位実行部5eは、補償候補変位量L’および当該判断結果に基づいてアクチュエータ4を稼働させて再生ヘッド2aを補償候補変位量L’変位させる(S6)。上記ステップS5にて例えば図21の(a)から(c)に示すようにトラック中心線T2から回転中心A寄りの内側に再生ヘッド2aがずれていると判断された場合には、ステップS6では、例えば図21(d)に示すように再生ヘッド2aは外側に変位される。上記ステップS5にて例えば図22の(a)から(c)に示すようにトラック中心線T2から外側に再生ヘッド2aがずれていると判断された場合には、ステップS6では、例えば図22(d)に示すように再生ヘッド2aは回転中心A寄りの内側に変位される。このような位置補正を受けた再生ヘッド2aのトラック中心線T2からのずれ量L2は(L1−L’)であり、L2=(L1−L’)≦Lの関係式が充足される(上述のように、Lは再生ヘッド位置ずれ量の許容最大値である)。再生ヘッド2aがこのような位置補正を受けた後、ユーザデータ領域R2において再生ヘッド2aによる読取りを実行する(S7)。
【0088】
磁気ディスク装置X2によると、再生ヘッド2aが目的サーボ領域R1上の通過によるトラッキング制御を受けた後にトラック中心線T2からずれているかどうかを、再生出力確認領域R3の磁性部23A由来の磁界を利用して確認することができる。そして、再生ヘッド2aのずれ量が許容最大値Lを超えている場合には、例えば上述のようにして、ずれ量が許容最大値L以内に収まるように再生ヘッド2aを位置補正することができる。このように、磁気ディスク装置X2およびこれに含まれる磁気ディスクY2は、再生ヘッド2aによるデータ読取りに際して再生ヘッド2aの位置補正を行うのに適する。このような磁気ディスク装置X2および磁気ディスクY2は、再生ヘッド2aからの再生信号について充分な信号強度を確保して、適切な読取りないし再生処理を実行するのに好適である。
【0089】
磁気ディスク装置X2における上述の位置補正方法においては、ステップS5,S6の順序を入れ替えてもよいし、ステップS5,S6を併行して行ってもよい。
【0090】
本実施形態では、トラック中心線T2に直交する方向において、再生出力確認部R3の磁性部23Aの主部23aはユーザデータ領域R2の磁性部22より長い。ユーザデータ領域R2の磁性部22はトラック中心線T2直交方向において再生ヘッド2aのコア幅よりも相当程度に小さい場合が多い。そのため、再生出力確認部R3の磁性部23Aの主部23aが磁性部22よりもトラック中心線T2直交方向に長いことは、トラック中心線T2直交方向の長さについてコア幅との差の小さな磁性部23Aを採用して上述の位置補正の精度を高めるのに好適である。好ましくは、トラック中心線T2直交方向において、磁性部23Aの主部23aは、再生ヘッド2aのコア幅以下の長さを有する、より好ましくは、トラック中心線T2直交方向における磁性部23Aの主部23aの長さは再生ヘッド2aのコア幅に等しい。これらの構成は、上述の位置補正の精度を高めるのに好適である。
【0091】
図23は、磁気ディスクY2の変形例の部分拡大平面図である。磁気ディスクY2は、図23に示すように、再生出力確認用の磁性部23Aを再生出力確認部として更にユーザデータ領域R2内の磁性部22列の中に有してもよい。このような変形例の構成によると、再生ヘッド2aによる読取りを実行している途中で、再生ヘッド2aに位置ずれが生じているかどうか及び位置ずれ方向を、ユーザデータ領域R2内の磁性部23A由来の磁界を利用して確認することができる。読取り実行途中で再生ヘッド2aのずれ量が許容最大値Lを超えている場合、ユーザデータ領域R2の磁性部23A由来の磁界を利用して、ずれ量が許容最大値L以内に収まるように上述したのと同様にして再生ヘッド2aを位置補正することができる。このように、本変形例によると、再生ヘッド2aによる読取りを実行している途中で、再生ヘッド2aの位置補正を適切に行うことができる。
【0092】
以上のまとめとして、本発明の構成およびそのバリエーションを以下に付記として列挙する。
【0093】
(付記1)データ書込み用の一列に並ぶ複数の第1磁性部を含むデータ部と、
前記一列の第1磁性部の配列方向において前記データ部から離隔するサーボ部と、
前記サーボ部および前記データ部の間に位置し且つ少なくとも一つの第2磁性部を含む再生出力確認部と、を備え、
前記複数の第1磁性部および前記少なくとも一つの第2磁性部は、仮想線に沿って一列に位置し、当該仮想線に直交する方向における前記第1磁性部および前記第2磁性部の中心位置は当該仮想線上に位置し、当該仮想線に直交する方向において前記第2磁性部は前記第1磁性部より長い、磁気記録媒体。
(付記2)前記一列の第1磁性部の間に位置し且つ少なくとも一つの追加の第2磁性部を含む、追加の再生出力確認部を更に備え、前記仮想線に直交する方向における前記少なくとも一つの追加の第2磁性部の中心位置は当該仮想線上に位置し、当該仮想線に直交する方向において前記追加の第2磁性部は前記第1磁性部より長い、付記1に記載の磁気記録媒体。
(付記3)前記第2磁性部は、主部、第1延出部、および第2延出部を含み、前記仮想線に直交する方向における前記主部の中心位置は当該仮想線上に位置し、前記第1延出部は、前記仮想線に対する一方の側において当該仮想線に沿って前記主部から延出し、且つ、前記第2延出部は、前記仮想線に対する他方の側において当該仮想線に沿って前記第1延出部とは反対の側において前記主部から延出する、付記1または2に記載の磁気記録媒体。
(付記4)前記仮想線に直交する方向において、前記第2磁性部は、前記第1磁性部および前記第2磁性部に由来する磁界を検出するための再生ヘッドのコア幅以下の長さを有する、付記1から3のいずれか一つに記載の磁気記録媒体。
(付記5)前記仮想線に直交する方向における前記第2磁性部の長さは、前記再生ヘッドのコア幅に等しい、付記4に記載の磁気記録媒体。
(付記6)磁気記録媒体と、
前記磁気記録媒体からの磁界を検出するための再生ヘッドと、を備え、
前記磁気記録媒体は、
データ書込み用の一列に並ぶ複数の第1磁性部を含むデータ部と、
前記一列の第1磁性部の配列方向において前記データ部から離隔するサーボ部と、
前記サーボ部および前記データ部の間に位置し且つ少なくとも一つの第2磁性部を含む再生出力確認部と、を備え、
前記複数の第1磁性部および前記少なくとも一つの第2磁性部は、仮想線に沿って一列に位置し、当該仮想線に直交する方向における前記第1磁性部および前記第2磁性部の中心位置は当該仮想線上に位置し、当該仮想線に直交する方向において前記第2磁性部は前記第1磁性部より長い、磁気再生装置。
(付記7)前記一列の第1磁性部の間に位置し且つ少なくとも一つの追加の第2磁性部を含む、追加の再生出力確認部を更に備え、前記仮想線に直交する方向における前記少なくとも一つの追加の第2磁性部の中心位置は当該仮想線上に位置し、当該仮想線に直交する方向において前記追加の第2磁性部は前記第1磁性部より長い、付記6に記載の磁気再生装置。
(付記8)前記第2磁性部は、主部、第1延出部、および第2延出部を含み、前記仮想線に直交する方向における前記主部の中心位置は当該仮想線上に位置し、前記第1延出部は、前記仮想線に対する一方の側において当該仮想線に沿って前記主部から延出し、且つ、前記第2延出部は、前記仮想線に対する他方の側において当該仮想線に沿って前記第1延出部とは反対の側において前記主部から延出する、付記6または7に記載の磁気再生装置。
(付記9)前記仮想線に直交する方向において、前記第2磁性部は、前記再生ヘッドのコア幅以下の長さを有する、付記6から8のいずれか一つに記載の磁気再生装置。
(付記10)前記仮想線に直交する方向における前記第2磁性部の長さは、前記再生ヘッドのコア幅に等しい、付記9に記載の磁気再生装置。
【符号の説明】
【0094】
X1,X2 磁気ディスク装置
1 スピンドルモータ
2 ヘッドスライダ
2a 再生ヘッド
P コア幅中心位置
2b 記録ヘッド
3 スイングアーム
4 アクチュエータ
5,5’ ディスクコントローラ
Y1,Y2 磁気ディスク
R1 サーボ領域
R2 ユーザデータ領域
R3 再生出力確認領域
T1,T2 トラック中心線
10 ディスク基板
20,20A 記録層
21,22,23,23A 磁性部
23a 主部
23b,23c 延出部
24 非磁性部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
データ書込み用の一列に並ぶ複数の第1磁性部を含むデータ部と、
前記一列の第1磁性部の配列方向において前記データ部から離隔するサーボ部と、
前記サーボ部および前記データ部の間に位置し且つ少なくとも一つの第2磁性部を含む再生出力確認部と、を備え、
前記複数の第1磁性部および前記少なくとも一つの第2磁性部は、仮想線に沿って一列に位置し、当該仮想線に直交する方向における前記第1磁性部および前記第2磁性部の中心位置は当該仮想線上に位置し、当該仮想線に直交する方向において前記第2磁性部は前記第1磁性部より長い、磁気記録媒体。
【請求項2】
前記一列の第1磁性部の間に位置し且つ少なくとも一つの追加の第2磁性部を含む、追加の再生出力確認部を更に備え、前記仮想線に直交する方向における前記少なくとも一つの追加の第2磁性部の中心位置は当該仮想線上に位置し、当該仮想線に直交する方向において前記追加の第2磁性部は前記第1磁性部より長い、請求項1に記載の磁気記録媒体。
【請求項3】
前記第2磁性部は、主部、第1延出部、および第2延出部を含み、前記仮想線に直交する方向における前記主部の中心位置は当該仮想線上に位置し、前記第1延出部は、前記仮想線に対する一方の側において当該仮想線に沿って前記主部から延出し、且つ、前記第2延出部は、前記仮想線に対する他方の側において当該仮想線に沿って前記第1延出部とは反対の側において前記主部から延出する、請求項1または2に記載の磁気記録媒体。
【請求項4】
前記仮想線に直交する方向において、前記第2磁性部は、前記第1磁性部および前記第2磁性部に由来する磁界を検出するための再生ヘッドのコア幅以下の長さを有する、請求項1から3のいずれか一つに記載の磁気記録媒体。
【請求項5】
前記仮想線に直交する方向における前記第2磁性部の長さは、前記再生ヘッドのコア幅に等しい、請求項4に記載の磁気記録媒体。
【請求項6】
磁気記録媒体と、
前記磁気記録媒体からの磁界を検出するための再生ヘッドと、を備え、
前記磁気記録媒体は、
データ書込み用の一列に並ぶ複数の第1磁性部を含むデータ部と、
前記一列の第1磁性部の配列方向において前記データ部から離隔するサーボ部と、
前記サーボ部および前記データ部の間に位置し且つ少なくとも一つの第2磁性部を含む再生出力確認部と、を備え、
前記複数の第1磁性部および前記少なくとも一つの第2磁性部は、仮想線に沿って一列に位置し、当該仮想線に直交する方向における前記第1磁性部および前記第2磁性部の中心位置は当該仮想線上に位置し、当該仮想線に直交する方向において前記第2磁性部は前記第1磁性部より長い、磁気再生装置。
【請求項1】
データ書込み用の一列に並ぶ複数の第1磁性部を含むデータ部と、
前記一列の第1磁性部の配列方向において前記データ部から離隔するサーボ部と、
前記サーボ部および前記データ部の間に位置し且つ少なくとも一つの第2磁性部を含む再生出力確認部と、を備え、
前記複数の第1磁性部および前記少なくとも一つの第2磁性部は、仮想線に沿って一列に位置し、当該仮想線に直交する方向における前記第1磁性部および前記第2磁性部の中心位置は当該仮想線上に位置し、当該仮想線に直交する方向において前記第2磁性部は前記第1磁性部より長い、磁気記録媒体。
【請求項2】
前記一列の第1磁性部の間に位置し且つ少なくとも一つの追加の第2磁性部を含む、追加の再生出力確認部を更に備え、前記仮想線に直交する方向における前記少なくとも一つの追加の第2磁性部の中心位置は当該仮想線上に位置し、当該仮想線に直交する方向において前記追加の第2磁性部は前記第1磁性部より長い、請求項1に記載の磁気記録媒体。
【請求項3】
前記第2磁性部は、主部、第1延出部、および第2延出部を含み、前記仮想線に直交する方向における前記主部の中心位置は当該仮想線上に位置し、前記第1延出部は、前記仮想線に対する一方の側において当該仮想線に沿って前記主部から延出し、且つ、前記第2延出部は、前記仮想線に対する他方の側において当該仮想線に沿って前記第1延出部とは反対の側において前記主部から延出する、請求項1または2に記載の磁気記録媒体。
【請求項4】
前記仮想線に直交する方向において、前記第2磁性部は、前記第1磁性部および前記第2磁性部に由来する磁界を検出するための再生ヘッドのコア幅以下の長さを有する、請求項1から3のいずれか一つに記載の磁気記録媒体。
【請求項5】
前記仮想線に直交する方向における前記第2磁性部の長さは、前記再生ヘッドのコア幅に等しい、請求項4に記載の磁気記録媒体。
【請求項6】
磁気記録媒体と、
前記磁気記録媒体からの磁界を検出するための再生ヘッドと、を備え、
前記磁気記録媒体は、
データ書込み用の一列に並ぶ複数の第1磁性部を含むデータ部と、
前記一列の第1磁性部の配列方向において前記データ部から離隔するサーボ部と、
前記サーボ部および前記データ部の間に位置し且つ少なくとも一つの第2磁性部を含む再生出力確認部と、を備え、
前記複数の第1磁性部および前記少なくとも一つの第2磁性部は、仮想線に沿って一列に位置し、当該仮想線に直交する方向における前記第1磁性部および前記第2磁性部の中心位置は当該仮想線上に位置し、当該仮想線に直交する方向において前記第2磁性部は前記第1磁性部より長い、磁気再生装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2010−225203(P2010−225203A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−68589(P2009−68589)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
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