説明

磁気記録媒体及びその製造方法

【課題】強磁性粉末の微細化と磁性層の高充填化の両者が達成され、磁性層の表面平滑性及び電磁変換特性に優れる磁気記録媒体を提供する。
【解決手段】非磁性支持体と、非磁性支持体の一方の面上の下層非磁性層と、下層非磁性層上の上層磁性層とを有する磁気記録媒体であって、前記下層非磁性層は、カーボンブラック、カーボンブラック以外の非磁性無機粉末及び結合剤樹脂を含み、前記上層磁性層は、強磁性粉末及び極性基を有する結合剤樹脂を含み、前記強磁性粉末は、平均長軸長が10〜50nmの強磁性金属粉末、又は平均板径が5〜40nmの六方晶フェライト磁性粉末であり、前記上層磁性層において、前記極性基を有する結合剤樹脂は、前記強磁性粉末の単位比表面積(BET法による)当たり前記極性基が0.18〜0.35μmol/m2 の範囲となる量で含まれている、磁気記録媒体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気記録媒体及びその製造方法に関し、より詳しくは、磁性層の表面平滑性及び電磁変換特性に優れる磁気記録媒体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、記録データ量の増大に対応すべく、磁気記録媒体の高密度記録化が求められている。特に、コンピュータのデータ記録に用いられるLTOR (登録商標:Linear Tape Open)、DLTR (登録商標:Digital Linear Tape)と称される磁気テープ等の磁気記録媒体の高密度記録化が求められている。高密度記録化のために記録波長が短波長化され、記録トラック幅が狭くされ、磁性層が薄膜化されており、電磁変換特性の向上の観点から、強磁性粉末の微細化、及び磁性層の高充填化が要求される。また、記録波長の短波長化に伴い、スペーシングロスの観点から、磁性層表面はより平滑であることが要求される。
【0003】
特許第2700706号公報には、強磁性合金粉末と結合剤を含む磁性層を有する磁気記録媒体において、前記強磁性合金粉末の長軸長が2000オングストローム以下で、飽和磁化(σs)が100emu/g以上であり、前記結合剤のうち1分子中に3個以上の水酸基と1×10-5eq/g以上の−SO3 M、−OSO3 M、−COOM、−PO(OM’)2 、−OPO(OM’)2 (M、M’は水素、アルカリ金属、アンモニウムを示す。)より選ばれた極性基を有するポリウレタン樹脂をポリイソシアネートに対し同量以上含み、かつ1×10-5eq/g以上の−SO3 M、−OSO3 M、−COOM、−PO(OM’)、−OPO(OM’)2 (M、M’は水素、アルカリ金属、アンモニウムを示す。)より選ばれた極性基を有する塩化ビニル系共重合体を含む磁気記録媒体が開示されている(特許請求の範囲)。
【0004】
特開2003−59028号公報には、強磁性粉末と結合剤を含む磁性層を有する磁気記録媒体であって、前記強磁性粉末は、平均長軸長が10〜80nmで結晶子サイズが8〜18nmの強磁性金属粉末又は平均板径が5〜40nmの強磁性六方晶フェライト粉末であり、かつ前記結合剤は、−SO3 M、−OSO3 M、−PO(OM’)2 、−OPO(OM’)2 、及び−COOM(Mは水素原子、アルカリ金属又はアンモニウム塩を表す。)から選ばれる少なくとも一種の極性基を0.2〜0.7meq/g、及び/又は、−CONR1 2 、−NR1 2 、及び−NR1 2 3 + (R1 、R2 、及びR3 は独立に水素原子又はアルキル基を表す。)から選ばれる少なくとも一種の極性基を0.5〜5meq/g含有する磁気記録媒体が開示されている(特許請求の範囲)。
【0005】
特開2005−149621号公報には、非磁性支持体の一方の面上に、非磁性粉末及び結合剤樹脂を含む非磁性層と、強磁性金属粉末及び結合剤樹脂を含む磁性層とを有し、 前記強磁性金属粉末の平均長軸長が80nm以下であり、前記磁性層表面の、原子間力顕微鏡により測定された100μm2 領域における、3次元中心面平均粗さが3.0nm以下であり、かつ、前記磁性層表面の、原子間力顕微鏡により測定された100μm2 領域における、平均高さ面から±5.0nm以上の凹凸部分の占有面積が15%以下である磁気記録媒体が開示されている(特許請求の範囲)。
【0006】
特開2005−149622号公報には、非磁性支持体の一方の面上に、非磁性粉末及び結合剤樹脂を含む非磁性層と、六方晶フェライト磁性粉末及び結合剤樹脂を含む磁性層とを有し、
前記六方晶フェライト磁性粉末の平均板径が10〜40nmであり、前記磁性層表面の、原子間力顕微鏡により測定された100μm2 領域における、3次元中心面平均粗さが3.0nm以下であり、かつ、前記磁性層表面の、原子間力顕微鏡により測定された100μm2 領域における、平均高さ面から±5.0nm以上の凹凸部分の占有面積が15%以下である磁気記録媒体が開示されている(特許請求の範囲)。
【0007】
【特許文献1】特許第2700706号公報
【特許文献2】特開2003−59028号公報
【特許文献3】特開2005−149621号公報
【特許文献4】特開2005−149622号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、電磁変換特性の向上の観点から、強磁性粉末の微細化、及び磁性層の高充填化が要求される。しかしながら、強磁性粉末の微細化は、その比表面積の増加を伴い、強磁性粉末を均一分散させるためにより多量の結合剤樹脂が必要となる。すなわち、磁性層塗料における強磁性粉末P (Powder) と結合剤樹脂B (Binder) との重量比率P/Bが低下する。そのため、磁性層における強磁性粉末の充填率[磁性層の単位体積中に存在する強磁性粉末の重量(g/cm3 )]が低下する。このように、強磁性粉末の微細化と磁性層の高充填化とは、トレードオフの関係にある。
【0009】
本発明の目的は、強磁性粉末の微細化と磁性層の高充填化の両者が達成され、磁性層の表面平滑性及び電磁変換特性に優れる磁気記録媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、磁性層において、極性基を有する結合剤樹脂を、微細な強磁性粉末の単位比表面積当たりの前記極性基の数が特定の範囲となる量で用いることにより、磁性層塗料における強磁性粉末P (Powder) と結合剤樹脂B (Binder) との重量比率P/Bを低下させることなく、強磁性粉末を均一分散させることができ、磁性層における強磁性粉末の充填率を高くすることができることを見いだした。
【0011】
本発明には、以下の発明が含まれる。
(1) 非磁性支持体と、非磁性支持体の一方の面上の下層非磁性層と、下層非磁性層上の上層磁性層とを少なくとも有する磁気記録媒体であって、
前記下層非磁性層は、カーボンブラック、カーボンブラック以外の非磁性無機粉末、及び結合剤樹脂を少なくとも含み、
前記上層磁性層は、強磁性粉末、及び極性基を有する結合剤樹脂を少なくとも含み、
前記強磁性粉末は、平均長軸長が10〜50nmの強磁性金属粉末、又は平均板径が5〜40nmの六方晶フェライト磁性粉末であり、
前記上層磁性層において、前記極性基を有する結合剤樹脂は、前記強磁性粉末の単位比表面積(BET法による)当たり前記極性基が0.18〜0.35μmol/m2 の範囲となる量で含まれている、磁気記録媒体。
【0012】
(2) 前記強磁性粉末の比表面積(BET法による)が60〜100m2 /gである、上記(1)に記載の磁気記録媒体。
【0013】
(3) 前記上層磁性層において、前記極性基を有する結合剤樹脂の前記極性基は、全結合剤樹脂材料の質量を基準として、40〜150eq/トンの割合で含まれている、上記(1)又は(2)に記載の磁気記録媒体。
【0014】
(4) 前記上層磁性層は0.30μm以下の厚さを有する、上記(1)〜(3)のうちのいずれかに記載の磁気記録媒体。
【0015】
(5) 前記下層非磁性層に含まれる結合剤樹脂は、電子線硬化性樹脂の硬化物である、上記(1)〜(4)のうちのいずれかに記載の磁気記録媒体。
【0016】
(6) 前記下層非磁性層は0.3〜2.5μm以下の厚さを有する、上記(1)〜(5)のうちのいずれかに記載の磁気記録媒体。
【0017】
(7) 前記磁気記録媒体は、非磁性支持体の他方の面上に、カーボンブラック、カーボンブラック以外の非磁性無機粉末、及び結合剤樹脂を少なくとも含むバックコート層を有する、上記(1)〜(6)のうちのいずれかに記載の磁気記録媒体。
【0018】
(8) 前記磁気記録媒体は、磁気抵抗型ヘッド(MRヘッド)で再生する磁気記録再生システムに用いられる、上記(1)〜(7)のうちのいずれかに記載の磁気記録媒体。
【0019】
(9) 非磁性支持体と、非磁性支持体の一方の面上の下層非磁性層と、下層非磁性層上の上層磁性層とを少なくとも有する磁気記録媒体の製造方法であって、
非磁性支持体の一方の面上に、カーボンブラック、カーボンブラック以外の非磁性無機粉末、及び結合剤樹脂を少なくとも含む非磁性層用塗料を塗布して下層非磁性層を形成する工程と、
前記下層非磁性層上に、強磁性粉末、及び極性基を有する結合剤樹脂を少なくとも含み、前記強磁性粉末は、平均長軸長が10〜50nmの強磁性金属粉末、又は平均板径が5〜40nmの六方晶フェライト磁性粉末であり、前記極性基を有する結合剤樹脂は、前記強磁性粉末の単位比表面積(BET法による)当たり前記極性基が0.18〜0.35μmol/m2 の範囲となる量で含まれている磁性層用塗料を塗布、乾燥して上層磁性層を形成する工程と
を含む磁気記録媒体の製造方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、上層磁性層に含まれる強磁性粉末は、平均長軸長が10〜50nmの強磁性金属粉末、又は平均板径が5〜40nmの六方晶フェライト磁性粉末であり、且つ、前記上層磁性層において前記極性基を有する結合剤樹脂は、前記強磁性粉末の単位比表面積(BET法による)当たり前記極性基が0.18〜0.35μmol/m2 の範囲となる特定の量で含まれているので、微細な強磁性粉末を用いていながら、磁性層塗料における強磁性粉末Pと結合剤樹脂Bとの重量比率P/Bを低下させることなく、強磁性粉末を均一分散させることができ、磁性層における強磁性粉末の充填率を高くすることができる。このようにして、強磁性粉末の微細化と磁性層の高充填化の両者が達成され、磁性層の表面平滑性及び電磁変換特性に優れる磁気記録媒体が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の磁気記録媒体は、非磁性支持体と、非磁性支持体の一方の面上の下層非磁性層と、下層非磁性層上の上層磁性層とを少なくとも有し、非磁性支持体の他方の面上のバックコート層を通常有する。下層非磁性層は例えば厚さ0.3〜2.5μmであり、上層磁性層は例えば厚さ0.30μm以下、好ましくは0.03〜0.30μmであり、バックコート層は例えば厚さ0.3〜0.8μmであり、磁気記録媒体の全厚さは好ましくは4.0〜7.0μmである。なお、上層磁性層上に潤滑剤塗膜や磁性層保護用の各種塗膜などが必要に応じて設けられてもよい。また、非磁性支持体の磁性層が設けられる前記一方の面には、下層非磁性層と非磁性支持体との接着性の向上等を目的として、下塗り層(易接着層)が設けられてもよい。その際、下塗り層の厚さは0.05〜0.30μmが好ましい。接着性向上等の効果が発現するために下塗り層の厚さは0.05μm以上が好ましく、0.05μm以上0.30μm以下の厚さで十分な効果が得られる。
【0022】
[上層磁性層]
上層磁性層は、少なくとも強磁性粉末、及び極性基を有する結合剤樹脂を含有する。
【0023】
本発明において、上層磁性層に含まれる強磁性粉末は、平均長軸長が10〜50nmの強磁性金属粉末、又は平均板径が5〜40nmの六方晶フェライト磁性粉末である。このような微細なサイズの強磁性粉末を適切な量の結合剤樹脂を用いて均一分散させることにより、磁性層における強磁性粉末の充填率[磁性層の単位体積中に存在する強磁性粉末の重量(g/cm3 )]を高くすることができると共に、表面平滑性に優れた磁性層を得ることができる。従来は、このような微細なサイズの強磁性粉末は一般に分散性が悪いので、均一分散のために結合剤樹脂を多く用いる必要があり、高い充填率を得ることができなかった。本発明においては、後述するように、極性基を有する結合剤樹脂を前記強磁性粉末の単位比表面積当たりの極性基の数が特定の範囲となるように用いることにより、磁性層塗料における強磁性粉末Pと結合剤樹脂Bとの重量比率P/Bを低下させることなく、微細なサイズの強磁性粉末を均一分散させることができる。そのため、強磁性粉末の高い充填率と優れた表面平滑性を有する磁性層を得ることができ、電磁変換特性を向上させることができる。
【0024】
強磁性金属粉末の平均長軸長は10〜50nmであり、好ましくは20〜45nmである。強磁性金属粉末の平均長軸長が50nmを超えると、磁性層における強磁性粉末の充填率を高くすることができない。平均長軸長が10nm未満であると、強磁性金属粉末の磁気的異方性が弱まり配向しにくくなり、磁気特性(出力)が低下する。強磁性金属粉末の平均短軸長は好ましくは2〜20nm、より好ましくは5〜15nmであり、アスペクト比は好ましくは2〜10であり、より好ましくは3〜7である。平均長軸長、平均短軸長は、通常、透過型電子顕微鏡により測定する。
【0025】
強磁性粉末の平均長軸長、平均短軸長及びアスペクト比は、前駆体作成時の溶液濃度、溶液添加手順、pH、攪拌時間等;添加元素被着時の温度、pH、溶液濃度、熱処理条件等;添加元素の種類・量、及び焼成温度、焼成時間、焼成雰囲気、昇温速度の条件等を考慮することにより調整できる。
【0026】
強磁性粉末のサイズが小さくなると比表面積は概して大きくなるが、強磁性金属粉末のBET法による比表面積は好ましくは60〜100m2 /gであり、より好ましくは65〜100m2 /gであり、さらに好ましくは70〜100m2 /gである。強磁性金属粉末のBET法による比表面積が100m2 /gを超えると、該粉末は表面に凹凸のある形状となり、磁性塗料中における分散性が低下しやすい。比表面積が60m2 /g未満であると、該粉末は凝集しやすく、磁性塗料中における分散性が低下しやすい。強磁性粉末の比表面積は、上記強磁性粉末の平均長軸長の調整方法と同様の条件を考慮することにより調整できる。
【0027】
強磁性金属粉末の保磁力Hcは好ましくは118.5〜278.5kA/m(1500〜3500Oe)、飽和磁化σsは好ましくは70〜160Am2/kg(emu/g)である。また、強磁性金属粉末を用いて作製した媒体のHcは118.5〜278.5kA/m(1500〜3500Oe)が好ましい。
【0028】
強磁性金属粉末としては、特に限定されないが、α−Feを主成分とする金属粉末が好適に用いられる。強磁性金属粉末は、Ni、Co、Al、Si、稀土類元素等がドープされていてもよい。強磁性金属粉末中の各金属元素の含有量は例えば、Feを100としたときの各金属の質量比で表して、Ni=0.3〜8.0、Co=3.0〜45.0、Al=0.5〜8.0、Si=0.5〜8.0、稀土類元素=0.2〜10.0、但し、Al+Si=2.0〜15.0である。稀土類元素は、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Gd、Dy、及びYから選ばれる。
【0029】
六方晶フェライト粉末の平均板径は5〜40nmであり、好ましくは10〜25nmである。六方晶フェライト粉末の平均板径が40nmを超えると、磁性層における六方晶フェライト粉末の充填率を高くすることができない。平均板径が5nm未満であると、六方晶フェライト粉末の磁気的異方性が弱まり配向しにくくなり、磁気特性(再生出力)が低下する。六方晶フェライト粉末の板比は好ましくは2〜7である。平均板径は、通常、透過型電子顕微鏡により測定する。
【0030】
六方晶フェライト粉末の平均板径は、前駆体作成時の溶液濃度、溶液添加手順、pH、攪拌時間等;添加元素被着時の温度、pH、溶液濃度、熱処理条件等;添加元素の種類・量、及び焼成温度、焼成時間、焼成雰囲気、昇温速度の条件等を考慮することにより調整できる。
【0031】
六方晶フェライト粉末のサイズが小さくなると比表面積は概して大きくなるが、六方晶フェライト粉末のBET法による比表面積は好ましくは60〜100m2 /gであり、より好ましくは65〜100m2 /gであり、さらに好ましくは70〜100m2 /gである。六方晶フェライト粉末のBET法による比表面積が100m2 /gを超えると、該粉末は表面に凹凸のある形状となり、磁性塗料中における分散性が低下しやすい。比表面積が60m2 /g未満であると、該粉末は凝集しやすく、磁性塗料中における分散性が低下しやすい。六方晶フェライト粉末の比表面積は、上記六方晶フェライト粉末の平均板径の調整方法と同様の条件を考慮することにより調整できる。
【0032】
六方晶フェライト粉末の保磁力Hcは好ましくは79.6〜278.5kA/m(1000〜3500Oe)、飽和磁化σsは好ましくは40〜70Am2/kg(emu/g)である。また、六方晶フェライト粉末を用いて作製した媒体のHcは94.8〜318.3kA/m(1200〜4000Oe)が好ましい。
【0033】
上層磁性層の結合剤樹脂として、強磁性粉末を良好に分散させるために極性基を有する樹脂を用いる。極性基を有する樹脂としては特に制限なく、熱可塑性樹脂、熱硬化性ないし反応型樹脂、放射線(電子線又は紫外線)硬化性樹脂等が、媒体の特性、工程条件に合わせて適宜組み合わせて選択されて使用される。
【0034】
熱可塑性樹脂としては、軟化温度が150℃以下、平均分子量5,000 〜200,000 、重合度50〜2,000 程度のものが用いられ、また、熱硬化性樹脂、反応型樹脂又は放射線硬化型樹脂としては、平均分子量5,000 〜200,000 、重合度50〜2,000 程度のものであって、塗布、乾燥、カレンダー加工後に加熱及び/又は放射線(電子線又は紫外線)照射することにより、縮合、付加等の反応により分子量が増大するものが用いられる。
【0035】
これらのうちで、好ましく用いられるものとしては、以下に示すような極性基を有する塩化ビニル系共重合体と、極性基を有するポリウレタン樹脂との組み合わせである。
【0036】
塩化ビニル系共重合体としては、塩化ビニル含有量60〜95質量%、特に60〜90質量%のものが好ましく、その平均重合度は100〜500程度であることが好ましい。 このような塩化ビニル系樹脂としては、塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合体、塩化ビニル−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−マレイン酸共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコール−マレイン酸共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリート共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリート−マレイン酸共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコール−グリシジル(メタ)アクリレート共重合体、塩化ビニル−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート−グリシジル(メタ)アクリレート共重合体、塩化ビニル−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート共重合体等が挙げられ、特に塩化ビニルとエポキシ(グリシジル)基を含有する単量体との共重合体が好ましい。
【0037】
塩化ビニル系共重合体は、分散性向上のために、硫酸基(−OSO3 Y)及び/又はスルホ基(−SO3 Y)を極性基(以下、S含有極性基という)として含有するものが好ましい。前記S含有極性基において、Yは、H、アルカリ金属のいずれであってもよいが、Y=K、すなわち−OSO3 K、−SO3 Kであることが特に好ましい。塩化ビニル系共重合体は、前記S含有極性基のうちいずれか一方のみを含有していてもよく、両者を含有していてもよく、両者を含むときにはその含有比は任意である。前記S含有極性基は、該極性基を有している塩化ビニル系共重合体の質量を基準として、40〜100eq/トンの割合で含まれていることが好ましい。
【0038】
また、塩化ビニル系共重合体は、上記S含有極性基の他に必要に応じて、−OPO2 Y基、−PO3 Y基、−COOY基(ここで、Yは、H、又はアルカリ金属を示す)、−NR1 2 基、−N+ 1 2 3 基(ここで、R1 、R2 及びR3 は、独立にH、アルキル基、又はヒドロキシアルキル基を示す)から選ばれる他の極性基を含有していてもよい。この場合には、前記他の極性基は、前記S含有極性基との合計として、該極性基を有している塩化ビニル系共重合体の質量を基準として、40〜100eq/トンの割合で含まれていることが好ましい。塩化ビニル系共重合体を合成するに際して、極性基を有している原料モノマー化合物の使用割合を調整することによって、塩化ビニル系共重合体に含まれる極性基の割合を適宜変化させることができる。
【0039】
上記塩化ビニル系樹脂と併用するポリウレタン樹脂とは、ポリエステルポリオール及び/又はポリエーテルポリオール等のヒドロキシ基含有樹脂とポリイソシアネート含有化合物との反応により得られる樹脂の総称であって、数平均分子量5,000 〜200,000 程度で、Q値(質量平均分子量/数平均分子量)1.5〜4程度のものである。ポリウレタン樹脂は、耐摩耗性及び下層非磁性層の接着性の点で有効である。
【0040】
ポリウレタン樹脂は、末端や側鎖に極性基を有するものであり、S含有極性基、P含有極性基、N含有極性基から選ばれる少なくとも1つの極性基を含有するものが好ましく、S含有極性基を含有するものが特に好ましい。
【0041】
ポリウレタン樹脂中に含まれる極性基として、−SO3 M、−OSO3 M、−SR等のS含有極性基、−PO3 M、−PO2 M、−POM、−P=O(OM1 )(OM2 )、−OP=O(OM1 )(OM2 )等のP含有極性基、−COOM、−OH、−NR1 2 、−N+ 1 2 3 - (ここで、M、M1 、M2 は、H、Li、Na、Kを示し、R1 、R2 及びR3 は、独立にH又は炭化水素基を示し、Xはハロゲン原子を示す)、エポキシ基、−CN等が挙げられる。これらの極性基から選ばれる少なくとも1つの極性基が、共重合又は付加反応により導入されたポリウレタン樹脂を用いることが好ましい。これら極性基は骨格樹脂の主鎖中に存在しても、分枝中に存在してもよい。これら極性基は、該極性基を有しているポリウレタン樹脂の質量を基準として、40〜300eq/トンの割合で含まれていることが好ましい。
【0042】
このようなポリウレタン樹脂は公知の方法により、特定の極性基含有化合物及び/又は特定の極性基含有化合物と反応させた原料樹脂等を含む原料を、溶剤中又は無溶剤中で反応させることにより得られる。ポリウレタン樹脂を合成するに際して、極性基含有化合物の使用割合を調整することによって、ポリウレタン樹脂に含まれる極性基の割合を適宜変化させることができる。
【0043】
またポリウレタン樹脂は、ガラス転移温度Tgが−20℃≦Tg≦80℃の範囲のものが好ましい。
【0044】
上記塩化ビニル系樹脂と上記ポリウレタン樹脂とは、塩化ビニル系樹脂/ポリウレタン樹脂の質量比が10/90〜90/10の範囲となるように混合して用いることが好ましい。
【0045】
また、上記塩化ビニル系樹脂と上記ポリウレタン樹脂に加えて、これら以外の極性基を有する結合剤樹脂、又は極性基を有していない結合剤樹脂を用いてもよい。上記塩化ビニル系樹脂と上記ポリウレタン樹脂が、全結合剤樹脂材料の80質量%以上を占めるように用いることが好ましい。極性基を有していない結合剤樹脂を用いる場合には、全結合剤樹脂材料の20質量%以下とすべきであり、用いないことが好ましい。
【0046】
結合剤樹脂の極性基は、磁性層において用いる全結合剤樹脂材料の質量を基準として、40〜150eq/トンの割合で含まれるようにすることが好ましい。全結合剤樹脂材料とは、極性基を有する結合剤樹脂、極性基を有していない結合剤樹脂、及び次に説明する架橋剤(硬化剤)を含む。
【0047】
これらの結合剤樹脂を硬化する架橋剤としては、各種ポリイソシアナート、特にジイソシアナートを用いることができ、特に、トリレンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、メチレンジイソシアナートの1種以上を用いることが好ましい。これらの架橋剤は、トリメチロールプロパン等の水酸基を複数有するもので変性した架橋剤又はジイソシアネート化合物3分子が結合したイソシアヌレート型の架橋剤として用いることが特に好ましく、結合剤樹脂に含有される官能基等と結合して樹脂を架橋する。架橋剤の含有量は、結合剤樹脂100質量部に対し、10〜30質量部とすることが好ましい。このような熱硬化性樹脂を硬化するには、一般に加熱オーブン中で50〜70℃にて12〜48時間加熱すればよい。
【0048】
本発明においては、磁性層において、前記極性基を有する結合剤樹脂が、前記強磁性粉末の単位比表面積(BET法による)当たり前記極性基が0.18〜0.35μmol/m2 の範囲となる量で含まれるように設定する。高い再生出力を得るために、強磁性粉末は磁性層を基準として70〜90質量%程度含まれるようにするとよい。
【0049】
前記極性基の数(濃度)が上記特定の範囲となるように、前記極性基を有する結合剤樹脂を用いることにより、磁性層塗料における強磁性粉末Pと結合剤樹脂Bとの重量比率P/Bを低下させることなく、比表面積の大きい微細なサイズの強磁性粉末を均一分散させることができる。結合剤樹脂が極性基を有しており、その極性基が強磁性粉末の表面と親和性を有するために、強磁性粉末が分散される。しかしながら、微細なサイズの強磁性粉末の近傍に存在し得る結合剤樹脂の量は限られている。そのため、単純に結合剤樹脂の使用量を増やしても良好な分散性は得られず、重量比率P/Bを低下させてしまうだけである。また、微細なサイズの強磁性粉末は比表面積が大きいため、強磁性粉末の表面と接触できる最適な極性基の数(濃度)が存在すると考えられる。本発明においては、強磁性粉末の単位比表面積に応じて、極性基の数を適切な範囲に設定することにより、重量比率P/Bを低下させることなく、微細なサイズの強磁性粉末を均一分散させる。その結果、微細なサイズの強磁性粉末を用いたことによる磁性層表面平滑性の向上が得られ、出力の向上やエラーの減少(すなわち電磁変換特性の向上)が得られる。
【0050】
前記極性基を有する結合剤樹脂の量が、前記強磁性粉末の単位比表面積(BET法による)当たり極性基が0.18μmol/m2 未満であると、強磁性粉末の分散が不十分となり、具体的には、強磁性粉末同士が磁気的に結合し、巨大なクラスタを形成し、磁性層の面割れが生じる。一方、極性基が0.35μmol/m2 を超えると、強磁性粉末の分散が不十分となり、具体的には、過剰な極性基同士の相互作用によって強磁性粉末が凝集し、磁性層の面割れが生じる。
【0051】
磁性層塗料における強磁性粉末Pと結合剤樹脂Bとの重量比率P/Bについて、P/Bが高くなると、すなわち、結合剤樹脂Bを少なく用いると、極性基量を所望の範囲にしても、強磁性粉末Pを囲む結合剤樹脂Bが不足して分散不良となり、粉落ちが発生しヘッド目詰まりが起こりやすくなる。一方、P/Bが低くなると、すなわち、結合剤樹脂Bを多く用いると、極性基量を所望の範囲にしても、強磁性粉末Pの充填率が低下して、出力が得られにくくなる。P/Bは6/1〜4.5/1が好ましく、これを満足し、且つ極性基量が所望の範囲となるような前記極性基を有する結合剤樹脂を用いることが好ましい。架橋剤(硬化剤)は、通常、強磁性粉末P及び結合剤樹脂Bの分散処理後に塗料に添加されるので、P/Bは、架橋剤を含めずに強磁性粉末P及び結合剤樹脂Bについて考慮される。
【0052】
さらに上層磁性層中には、磁性層の機械的強度を高めるためと、磁気ヘッドの目詰まりを防ぐために、例えばα−アルミナ(モース硬度9)等のモース硬度6以上の研磨材を含有させる。このような研磨材は通常、不定形状であり、磁気ヘッドの目詰まりを防ぎ、塗膜の強度を向上させる。
【0053】
研磨材の平均粒径は、例えば0.01〜0.2μmであり、0.05〜0.2μmであることが好ましい。平均粒径が大きすぎると、磁性層表面からの突出量が大きくなって、電磁変換特性の低下、ドロップアウトの増加、ヘッド摩耗量の増大等を招く。平均粒径が小さすぎると、磁性層表面からの突出量が小さくなって、ヘッド目詰まりの防止効果が不十分となる。
【0054】
平均粒径は、通常、透過型電子顕微鏡により測定する。研磨材の含有量は、強磁性粉末100質量部に対し、3〜25質量部、好ましくは5〜20質量部含有すればよい。
また、磁性層中には、必要に応じ、界面活性剤等の分散剤、高級脂肪酸、脂肪酸エステル、シリコンオイル等の潤滑剤、その他の各種添加物を添加してもよい。
【0055】
さらに上層磁性層中には、各成分の分散性を向上させるために、公知の分散剤を含有させるとよい。
【0056】
上層磁性層形成用の塗料は、公知の方法で、上記各成分に有機溶剤を加えて、混合、攪拌、混練、分散等を行い調製する。用いる有機溶剤は特に制限はなく、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤や、トルエン等の芳香族系溶剤などの各種溶媒の1種又は2種以上を、適宜選択して用いればよい。有機溶剤の添加量は、上記各成分の合計量100質量部に対し100〜1900質量部程度とすればよい。
【0057】
上層磁性層の厚さは好ましくは0.30μm以下、0.03〜0.30μm、更に好ましくは0.03〜0.25μmとする。磁性層が厚すぎると、自己減磁損失や厚み損失が大きくなる。
【0058】
上層磁性層表面の中心線平均粗さ(Ra)は、好ましくは1.0〜5.0nm、より好ましくは1.0〜4.0nmとする。Raが1.0nm未満では表面が平滑すぎて、走行安定性が悪化して走行中のトラブルが生じやすくなる。一方、5.0nmを越えると、磁性層表面が粗くなり、MR型ヘッドを用いた再生システムでは、再生出力等の電磁変換特性が劣化する。
【0059】
[下層非磁性層]
下層非磁性層は、カーボンブラック、カーボンブラック以外の非磁性無機粉末、及び結合剤樹脂を少なくとも含む。
【0060】
下層非磁性層に含まれるカーボンブラックとしては、ゴム用ファーネスブラック、ゴム用サーマルブラック、カラー用ブラック、アセチレンブラック等を用いることができる。比表面積は5〜600m2 /g、DBP吸油量は30〜400ml/100g、粒子径は10〜100nmが好ましい。使用できるカーボンブラックは具体的には「カーボンブラック便覧」、カーボンブラック協会編を参考にすることができる。
【0061】
カーボンブラックの配合量は、下層非磁性層において5〜30質量%、好ましくは10〜25質量%である。
【0062】
下層非磁性層に含まれるカーボンブラック以外の非磁性無機粉末としては、例えば、α−酸化鉄(α−Fe2 3 )、α−水酸化鉄(α−FeO(OH))、CaCO3 、酸化チタン、硫酸バリウム、α−Al2 3 等の無機粉末が挙げられる。これらのうち、α酸化鉄、及びα水酸化鉄の少なくとも一方が含まれることが好ましい。また、α−酸化鉄、及びα−水酸化鉄は針状のものが好ましい。
【0063】
カーボンブラックと前記カーボンブラック以外の非磁性無機粉末の配合比率は、質量比(カーボンブラック/カーボンブラック以外の非磁性無機粉末)で95/5〜5/95が好ましい。カーボンブラックの配合比率が5質量部を下回ると、表面電気抵抗に問題が生じることがある。カーボンブラック以外の非磁性無機粉末の配合比率が5質量部を下回ると、下層非磁性層の表面平滑性の悪化及び機械的強度の低下の可能性がある。下層非磁性層の表面平滑性の悪化は、上層磁性層の表面平滑性の悪化の原因となる。
【0064】
下層非磁性層の結合剤樹脂として、熱可塑性樹脂、熱硬化性ないし反応型樹脂、放射線(電子線又は紫外線)硬化性樹脂等が、媒体の特性、工程条件に合わせて適宜組み合わせて選択されて使用される。これらのうち、電子線硬化性樹脂が好ましく、以下に示すような電子線線硬化性の塩化ビニル系共重合体及びポリウレタン樹脂の組み合わせが好ましい。
【0065】
塩化ビニル系共重合体としては、塩化ビニル含有量50〜95質量%、特に55〜90質量%のものが好ましく、その平均重合度は100〜500程度であることが好ましい。特に塩化ビニルとエポキシ(グリシジル)基を含有する単量体との共重合体が好ましい。塩化ビニル系共重合体は、公知の手法により(メタ)アクリル系二重結合等を導入して電子線感応変性を行ったものである。
【0066】
上記塩化ビニル系樹脂と併用するポリウレタン樹脂とは、ポリエステルポリオール及び/又はポリエーテルポリオール等のヒドロキシ基含有樹脂とポリイソシアネート含有化合物との反応により得られる樹脂の総称であって、数平均分子量5,000 〜200,000 程度で、Q値(質量平均分子量/数平均分子量)1.5〜4程度のものである。ポリウレタン樹脂は、公知の手法により(メタ)アクリル系二重結合を導入して電子線感応変性を行ったものである。
【0067】
塩化ビニル系共重合体及びポリウレタン樹脂に加えて、非磁性層において全結合剤の20質量%以下の範囲で、公知の各種樹脂が含有されてもよい。
【0068】
下層非磁性層に用いる結合剤樹脂の含有量は、下層非磁性層中のカーボンブラックとカーボンブラック以外の前記非磁性無機粉末の合計100質量部に対し、好ましくは10〜100質量部、より好ましくは12〜30質量部である。結合剤の含有量が少なすぎると、下層非磁性層における結合剤樹脂の比率が低下し、十分な塗膜強度が得られない。結合剤の含有量が多すぎると、テープ媒体の場合にテープ幅方向の湾曲が強く起きやすく、ヘッドとの接触が悪くなる傾向にある。
【0069】
下層非磁性層には必要に応じて潤滑剤を含有することが好ましい。潤滑剤としては、飽和、不飽和に関わらず、ステアリン酸、ミリスチン酸等の脂肪酸、ブチルステアレート、ブチルパルミテート等の脂肪酸エステル、糖類など公知のものを、単独であるいは2種以上混合して用いることができ、融点の異なる脂肪酸を2種以上混合し用いることや、融点の異なる脂肪酸エステルを2種以上混合し用いることも好ましい。これは、磁気記録媒体の使用される、あらゆる温度環境に応じた潤滑剤を、媒体表面に持続して供給する必要があるからである。
【0070】
下層非磁性層の潤滑剤の含有量は、目的に応じ適宜調整すればよいが、下層非磁性層中のカーボンブラックとカーボンブラック以外の前記非磁性無機粉末の合計質量に対し、1〜20質量%が好ましい。
【0071】
下層非磁性層形成用の塗料は、公知の方法で、上記各成分に有機溶剤を加えて、混合、攪拌、混練、分散等を行い調製する。用いる有機溶剤は特に制限はなく、上層磁性層に使用するものと同様のものが使用可能である。有機溶剤の添加量は、カーボンブラック、カーボンブラック以外の各種無機粉末等、結合剤樹脂及び多官能モノマーの合計量100質量部に対し100〜900質量部程度とすればよい。
【0072】
下層非磁性層の厚さは、通常0.3〜2.5μm、好ましくは0.5〜2.0μmである。非磁性層が薄すぎると、非磁性支持体の表面粗さの影響を受けやすくなり、その結果、非磁性層の表面平滑性が悪化して磁性層の表面平滑性も悪化しやすくなり、電磁変換特性が低下する傾向にある。また、光透過率が高くなるので、媒体端を光透過率の変化により検出する場合に問題となる。一方、非磁性層をある程度以上厚くしても性能は向上しない。
【0073】
[バックコート層]
バックコート層は、走行安定性の改善や磁性層の帯電防止等のために必要に応じて設けられ、特に構造や組成は限定されないが、例えば、カーボンブラック、カーボンブラック以外の非磁性無機粉末、及び結合剤樹脂を含むものを用いることができる。
【0074】
バックコート層は、バックコート層を基準として30〜80重量%のカーボンブラックを含有することが好ましい。
【0075】
バックコート層には、前記カーボンブラック以外に、機械的強度をコントロールするために、各種非磁性無機粉末を用いることができ、無機粉末として例えば、α−Fe2 3 、CaCO3 、酸化チタン、硫酸バリウム、α−Al2 3 等を挙げることができる。
【0076】
バックコート層形成用の塗料は、公知の方法で、上記各成分に有機溶剤を加えて、混合、攪拌、混練、分散等を行い調製する。用いる有機溶剤は特に制限はなく、上層磁性層や下層非磁性層に使用するものと同様のものが使用可能である。
【0077】
バックコート層の厚さ(カレンダー加工後)は、1.0μm以下、好ましくは0.1〜1.0μm、より好ましくは0.2〜0.8μmである。
【0078】
[非磁性支持体]
非磁性支持体として用いる材料には特に制限はなく、目的に応じて各種可撓性材料、各種剛性材料から選択し、各種規格に応じてテープ状、シート状、カード状、ディスク状などの所定形状及び寸法とすればよい。例えば、可撓性材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル類、ポリプロピレン等のポリオレフィン類、ポリアミド(PA)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリカーボネートなどの各種樹脂が挙げられる。非磁性支持体として、PEN、PA、PI、及びPAIから選ばれる樹脂製のフィルムが好ましい。非磁性支持体の厚さは、例えば3.0〜15.0μmであり、2.0〜6.0μmであることが好ましい。
【0079】
[磁気記録媒体の製造]
本発明において、調製された各非磁性層形成用塗料、磁性層形成用塗料、バックコート層形成用塗料を用いて、塗布、乾燥、カレンダー、硬化等により、それぞれの塗膜(塗層)を形成し、磁気記録媒体を製造する。
【0080】
本発明において、下層非磁性層及び上層磁性層は、いわゆるウェット・オン・ドライ塗布方式によって形成することが好ましい。しかしながら、ウェット・オン・ウェット塗布方式によって形成してもよい。ウェット・オン・ドライ塗布方式の場合には、まず、非磁性支持体の一方の面上に、非磁性層用塗料を塗布、乾燥し、必要に応じてカレンダー処理を行い、未硬化の下層非磁性層を得る。その後、未硬化の下層非磁性層を硬化させる。下層非磁性層の結合剤樹脂材料として電子線硬化性樹脂を用いた場合には、電子線照射を行い下層非磁性層を硬化させる。次に、硬化された下層非磁性層上に磁性層用塗料を塗布、配向、乾燥して、上層磁性層を形成する。バックコート層の形成の順序は任意であり、すなわち、下層非磁性層の形成前、下層非磁性層の形成後であり上層磁性層の形成前、上層磁性層の形成後のいずれであってもよい。
【0081】
塗布方法としては、グラビアコート、リバースロールコート、ダイノズルコート、バーコート等の公知の種々の塗布手段を用いることができる。
【実施例】
【0082】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0083】
[粉体特性の測定方法]
(平均長軸長、及び平均板径の測定)
測定対象の粉体の100,000倍の透過型電子顕微鏡(TEM; Transmission Electron Microscope) 写真を撮影し、写真から不作為に抽出した100個の粒子について、長軸長又は板径を測定した。これらの値の平均値を平均長軸長又は平均板径とした。
【0084】
(比表面積の測定)
Quantachrome社製 NOVA2000seriesを使用し、BET法により比表面積を求めた。BET測定は、例えば、試料粉体を脱気し、吸着占有面積の判っている分子を吸着させ、その後の脱離量から、試料の比表面積を求める方法である。
【0085】
[実施例1]
(非磁性層用塗料の調製)
非磁性粉末 針状α−FeOOH 80.0質量部
(平均長軸長:0.1μm、結晶子径:12nm)
非磁性粉末 カーボンブラック 20.0質量部
(三菱化学(株)製 商品名:#950B、平均粒径:17nm、BET比表面積:250m2 /g、DBP吸油量:70ml/100g、pH:8)
電子線硬化型結合剤 電子線硬化性塩化ビニル樹脂 12.0質量部
(東洋紡績(株)製 商品名:TB−0246、(固形分)塩化ビニル−エポキシ含有モノマー共重合体、平均重合度:310、過硫酸カリ使用S含有量:0.6%(質量百分率)、2−イソシアネートエチルメタクリレート(MOI)を使用して日本ゼオン(株)製 MR110をアクリル変性したもの、アクリル含有量:6モル/1モル)
電子線硬化型結合剤 電子線硬化性ポリウレタン樹脂 10.0質量部
(東洋紡績(株)製 商品名:TB−0216、(固形分)ヒドロキシ含有アクリル化合物−ホスホン酸基含有リン化合物−ヒドロキシ含有ポリエステルポリオール、平均分子量:13,000、P含有量:0.2%(質量百分率)、アクリル含有量:8モル/1モル)
分散剤 リン酸エステル界面活性剤 3.2質量部
(東邦化学工業(株)製 商品名:RE−610)
研磨材 α−アルミナ 5.0質量部
(住友化学(株)製 商品名:HIT60A、平均粒径:0.18μm)
NV(固形分濃度)=33%(質量百分率)
溶剤比率 MEK/トルエン/シクロヘキサン=2/2/1(質量比)
【0086】
上記の材料をニーダーで混練した後、0.8mmのジルコニアビーズを充填率80%(空隙率50vol%)で充填した横型のピンミルによって分散した。その後、さらに、下記潤滑剤材料:
潤滑剤 脂肪酸 0.5質量部
(日本油脂(株)製 商品名:NAA180)
潤滑剤 脂肪酸アマイド 0.5質量部
(花王(株)製 商品名:脂肪酸アマイドS)
潤滑剤 脂肪酸エステル 1.0質量部
(日光ケミカルズ(株)製 商品名:NIKKOLBS)
を添加して、
NV(固形分濃度)=25%(質量百分率)
溶剤比率 MEK/トルエン/シクロヘキサン=2/2/1(質量比)
となるように希釈した後、分散を行った。続いて、得られた塗料をさらに絶対濾過精度1.0μmのフィルターで濾過して、非磁性塗料を作製した。
【0087】
(磁性層用塗料の調製)
強磁性粉末 Fe系針状強磁性粉末 100.0質量部
(Fe/Co/Al/Y=100/24/29/14(原子比)、Hc:215kA/m、σs:130Am2 /kg、BET比表面積値:70m2 /g、平均長軸長:35nm)
熱硬化型塩化ビニル樹脂 塩化ビニル共重合体 12.0質量部
(日本ゼオン(株)製 商品名:MR110、極性基濃度63eq/t)
熱硬化型ポリウレタン樹脂 ポリエステルポリウレタン 8.0質量部
(スルホン酸ナトリウム極性基含有、極性基濃度41eq/t)
分散剤 リン酸系界面活性剤 1.5質量部
(東邦化学工業(株)製、商品名:RE610)
研磨材 α−アルミナ 10.0質量部
(住友化学(株)製 商品名:HIT60A、平均粒径:0.18μm)
NV(固形分濃度)=30%(質量百分率)
溶剤比率 MEK/トルエン/シクロヘキサノン=4/4/2(質量比)
【0088】
上記の材料をニーダーで混練した後、前分散として、0.8mmのジルコニアビーズを充填率80%(空隙率50vol%)で充填した横型のピンミルによって分散した。次いで、
NV(固形分濃度)=10%(質量百分率)
溶剤比率 MEK/トルエン/シクロヘキサン=15/15/70(質量比)
となるように希釈してから、仕上げ分散を行った。
【0089】
続いて、得られた塗料に熱硬化剤(日本ポリウレタン工業(株)製 コロネートL)を固形分として、上記結合剤樹脂の合計質量部の20質量%となる量で添加混合した後、さらに絶対濾過精度0.5μmのフィルターで濾過して、実施例1の磁性層用塗料を作製した。
【0090】
(バックコート層用塗料の調製)
カーボンブラック 75.0質量部
(キャボット社製 商品名:BP−800、平均粒径17nm、DBP吸油量68ml/100g、BET比表面積210m2 /g)
カーボンブラック 15.0質量部
(キャボット社製 商品名:BP−130、平均粒径75nm、DBP吸油量69ml/100g、BET比表面積25m2 /g)
炭酸カルシウム
(白石工業(株)製 商品名:白艶華0、平均粒径30nm) 10.0質量部
ニトロセルロース 65.0質量部
(旭化成工業(株)製 商品名:BTH1/2)
ポリウレタン樹脂 35.0質量部
(脂肪族ポリエステルジオール/芳香族ポリエステルジオール=43/57)
NV(固形分濃度)=30%(質量百分率)
溶剤比率 MEK/トルエン/シクロヘキサン=1/1/1(質量比)
【0091】
上記の材料のうち有機溶剤の一部を除いた状態で、上記材料をニーダーにて高粘度状態で十分に混練処理した。次いで、混練処理された材料に除いておいた有機溶剤を添加して、ディゾルバにて十分に攪拌し、その後、上記材料をニーダーにて混練処理した。その後、前分散として、0.8mmのジルコニアビーズを充填率80%(空隙率50vol%)で充填した横型のピンミルによって分散した。
【0092】
その後、さらに、分散された材料を、
NV(固形分濃度)=10%(質量百分率)
溶剤比率 MEK/トルエン/シクロヘキサン=50.0/40.0/10.0(質量比)となるように希釈してから、仕上げ分散を行った。続いて、得られた塗料に熱硬化剤(日本ポリウレタン工業(株)製 コロネートL)10質量部を添加混合した後、さらに絶対濾過精度0.5μmのフィルターで濾過して、バックコート層用塗料を作製した。
【0093】
(非磁性層形成工程)
厚さ6.2μmのベースフィルム(ポリエチレンナフタレートフィルム)の一方の面上に、カレンダー加工後の厚さが2.0μmになるように、上記の非磁性層用塗料をノズルにより押し出し塗布法で塗布して、乾燥した。その後、プラスチックロールと金属ロールとを組み合わせたカレンダーによって、ニップ数4回、加工温度100℃、線圧3500N/cmで加工を行い、さらに、照射量4.0Mrad、加速電圧200kVにて電子線照射を行い、下層非磁性層を形成した。
【0094】
(磁性層形成工程)
上記のようにして形成した下層非磁性層上に、上記の磁性層用塗料を、加工後の厚さが0.2μmになるようにノズルにより押し出し塗布法で塗布して、配向を行い、乾燥した。その後、プラスチックロールと金属ロールとを組み合わせたカレンダーによって、ニップ数4回、加工温度100℃、線圧3500N/cmで加工を行い、上層磁性層を形成した。
【0095】
(バックコート形成工程)
ベースフィルムの他方の面上に、上記のバックコート層用塗料を、加工後の厚さが0.7μmになるようにノズルにより押し出し塗布法で塗布して、乾燥した。その後、プラスチックロールと金属ロールとを組み合わせたカレンダーによって、ニップ数4回、加工温度100℃、線圧3500N/cmで加工を行い、バックコート層を形成した。
【0096】
以上のようにして得られた磁気記録テープ原反を、60℃で48時間熱硬化させて、次いで、1/2inch(=12.650mm)幅にスリット(裁断)し、実施例1の磁気記録テープサンプルとしてのデータ用テープを作製した。
【0097】
[実施例2〜12及び比較例1〜8]
磁性層用塗料の調製において、
強磁性粉末として、それぞれ表1に示す平均長軸長及びBET比表面積値を有するFe系針状強磁性粉末100.0質量部を用いて、
熱硬化型塩化ビニル樹脂として、それぞれ表1に示す塩化ビニル共重合体MR110又はMR104(日本ゼオン(株)製 商品名:MR104、極性基濃度94eq/t) 12.0質量部を用いて、
熱硬化型ポリウレタン樹脂として、それぞれ表1に示す極性基濃度を有するスルホン酸ナトリウム極性基含有ポリエステルポリウレタン 8.0質量部を用いた以外は、実施例1と同様にして、磁性層用塗料をそれぞれ作製した。得られた各磁性層用塗料を用いて、実施例1と同様にして、各磁気記録テープサンプルを作製した。
【0098】
[実施例13〜14]
磁性層用塗料の調製において、
強磁性粉末として、それぞれ表1に示す平均長軸長及びBET比表面積値を有するFe系針状強磁性粉末100.0質量部を用いて、
熱硬化型塩化ビニル樹脂として、それぞれ表1に示す塩化ビニル共重合体MR110又はMR104 10質量部を用いて、
熱硬化型ポリウレタン樹脂として、それぞれ表1に示す極性基濃度を有するスルホン酸ナトリウム極性基含有ポリエステルポリウレタン 6.7質量部を用いた以外は、実施例1と同様にして、磁性層用塗料をそれぞれ作製した。得られた各磁性層用塗料を用いて、実施例1と同様にして、各磁気記録テープサンプルを作製した。
【0099】
[実施例15〜16]
磁性層用塗料の調製において、
強磁性粉末として、それぞれ表1に示す平均長軸長及びBET比表面積値を有するFe系針状強磁性粉末100.0質量部を用いて、
熱硬化型塩化ビニル樹脂として、それぞれ表1に示す塩化ビニル共重合体MR110又はMR104 13.3質量部を用いて、
熱硬化型ポリウレタン樹脂として、それぞれ表1に示す極性基濃度を有するスルホン酸ナトリウム極性基含有ポリエステルポリウレタン 8.9質量部を用いた以外は、実施例1と同様にして、磁性層用塗料をそれぞれ作製した。得られた各磁性層用塗料を用いて、実施例1と同様にして、各磁気記録テープサンプルを作製した。
【0100】
[磁気テープの評価]
各磁気記録テープサンプルについて、次の評価を行った。
【0101】
(テープ表面の観察)
テープの磁性層表面を、微分干渉光学顕微鏡を用いて、倍率100倍及び倍率200倍でそれぞれ観察した。表1に、観察面に面割れ、及び凝集の存在が認められなかったものを○とし、面割れ、及び凝集のいずれか又は両者の存在が認められたものをXとして示した。
【0102】
(表面粗さ(中心線平均粗さ:Ra))
「TALYSTEPシステム」(テーラーホブソン社製)を用い、JIS B0601−1982に基づいて、テープの磁性層表面の中心線平均粗さRaの測定を行った。
測定の条件は、フィルター0.18〜9Hz、触針0.1×2.5μmスタイラス、触針圧2mg、測定スピード0.03mm/sec、測定長さ500μmとした。なお、磁性層表面のRaの測定は、最終的なカレンダー処理及び硬化処理後に行った。
【0103】
(ビットエラーレートbERの測定)
カートリッジに組み込んだ各磁気テープサンプルについて、磁気記録ヘッドで記録波長0.25μmの単一記録波長を記録し、信号のP−P値(振幅)に対して50%以下のP−P値(振幅)の信号をミッシングパルスとし、4個以上連続したミッシングパルスを欠陥Long Defectとして検出した。基準テープとしての比較例1の磁気テープサンプルの1m当たりのLong Defectの個数をNとし、各磁気テープサンプルの1m当たりのLong Defectの個数をXとし、各磁気テープサンプルについてLog10(X/N)をビットエラーレートとしてそれぞれ算出した。算出した各ビットエラーレートの比較を行った。なお、再生ヘッドとしては、磁気抵抗効果型磁気ヘッド(MRヘッド)を用いた。
【0104】
以上の結果を表1に示す。
【0105】
【表1】

【0106】
[実施例17]
(磁性層用塗料の調製)
強磁性粉末 六方晶フェライト粉末 100.0質量部
(Hc:215kA/m、σs:50Am2 /kg、BET比表面積値:70m2 /g、平均板径:20nm)
熱硬化型塩化ビニル樹脂 塩化ビニル共重合体 12.0質量部
(日本ゼオン(株)製 商品名:MR110、極性基濃度63eq/t)
熱硬化型ポリウレタン樹脂 ポリエステルポリウレタン 8.0質量部
(スルホン酸ナトリウム極性基含有、極性基濃度41eq/t)
分散剤 リン酸系界面活性剤 1.5質量部
(東邦化学工業(株)製、商品名:RE610)
研磨材 α−アルミナ 10.0質量部
(住友化学(株)製 商品名:HIT60A、平均粒径:0.18μm)
NV(固形分濃度)=30%(質量百分率)
溶剤比率 MEK/トルエン/シクロヘキサノン=4/4/2(質量比)
【0107】
上記の材料をニーダーで混練した後、前分散として、0.8mmのジルコニアビーズを充填率80%(空隙率50vol%)で充填した横型のピンミルによって分散した。次いで、
NV(固形分濃度)=10%(質量百分率)
溶剤比率 MEK/トルエン/シクロヘキサン=15/15/70(質量比)
となるように希釈してから、仕上げ分散を行った。
【0108】
続いて、得られた塗料に熱硬化剤(日本ポリウレタン工業(株)製 コロネートL)を固形分として、上記結合剤樹脂の合計質量部の20質量%となる量で添加混合した後、さらに絶対濾過精度0.5μmのフィルターで濾過して、実施例17の磁性層用塗料を作製した。
【0109】
得られた磁性層用塗料、実施例1で用いたのと同じ非磁性層用塗料及びバックコート層用塗料を用いて、実施例1と同様にして、実施例17の磁気記録テープサンプルを作製した。
【0110】
[実施例18〜28及び比較例9〜16]
磁性層用塗料の調製において、
強磁性粉末として、それぞれ表2に示す平均板径及びBET比表面積値を有する六方晶フェライト粉末100.0質量部を用いて、
熱硬化型塩化ビニル樹脂として、それぞれ表2に示す塩化ビニル共重合体MR110又はMR104 12.0質量部を用いて、
熱硬化型ポリウレタン樹脂として、それぞれ表2に示す極性基濃度を有するスルホン酸ナトリウム極性基含有ポリエステルポリウレタン 8.0質量部を用いた以外は、実施例17と同様にして、磁性層用塗料をそれぞれ作製した。得られた各磁性層用塗料を用いて、実施例17と同様にして、各磁気記録テープサンプルを作製した。
【0111】
[実施例29〜30]
磁性層用塗料の調製において、
強磁性粉末として、それぞれ表2に示す平均板径及びBET比表面積値を有する六方晶フェライト粉末100.0質量部を用いて、
熱硬化型塩化ビニル樹脂として、それぞれ表2に示す塩化ビニル共重合体MR110又はMR104 10質量部を用いて、
熱硬化型ポリウレタン樹脂として、それぞれ表2に示す極性基濃度を有するスルホン酸ナトリウム極性基含有ポリエステルポリウレタン 6.7質量部を用いた以外は、実施例17と同様にして、磁性層用塗料をそれぞれ作製した。得られた各磁性層用塗料を用いて、実施例17と同様にして、各磁気記録テープサンプルを作製した。
【0112】
[実施例31〜32]
磁性層用塗料の調製において、
強磁性粉末として、それぞれ表2に示す平均板径及びBET比表面積値を有する六方晶フェライト粉末100.0質量部を用いて、
熱硬化型塩化ビニル樹脂として、それぞれ表2に示す塩化ビニル共重合体MR110又はMR104 13.3質量部を用いて、
熱硬化型ポリウレタン樹脂として、それぞれ表2に示す極性基濃度を有するスルホン酸ナトリウム極性基含有ポリエステルポリウレタン 8.9質量部を用いた以外は、実施例17と同様にして、磁性層用塗料をそれぞれ作製した。得られた各磁性層用塗料を用いて、実施例17と同様にして、各磁気記録テープサンプルを作製した。
【0113】
[磁気テープの評価]
各磁気記録テープサンプルについて、前記と同様にして評価を行った。
【0114】
以上の結果を表2に示す。
【0115】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
非磁性支持体と、非磁性支持体の一方の面上の下層非磁性層と、下層非磁性層上の上層磁性層とを少なくとも有する磁気記録媒体であって、
前記下層非磁性層は、カーボンブラック、カーボンブラック以外の非磁性無機粉末、及び結合剤樹脂を少なくとも含み、
前記上層磁性層は、強磁性粉末、及び極性基を有する結合剤樹脂を少なくとも含み、
前記強磁性粉末は、平均長軸長が10〜50nmの強磁性金属粉末、又は平均板径が5〜40nmの六方晶フェライト磁性粉末であり、
前記上層磁性層において、前記極性基を有する結合剤樹脂は、前記強磁性粉末の単位比表面積(BET法による)当たり前記極性基が0.18〜0.35μmol/m2 の範囲となる量で含まれている、磁気記録媒体。
【請求項2】
前記強磁性粉末の比表面積(BET法による)が60〜100m2 /gである、請求項1に記載の磁気記録媒体。
【請求項3】
前記上層磁性層において、前記極性基を有する結合剤樹脂の前記極性基は、全結合剤樹脂材料の質量を基準として、40〜150eq/トンの割合で含まれている、請求項1又は2に記載の磁気記録媒体。
【請求項4】
非磁性支持体と、非磁性支持体の一方の面上の下層非磁性層と、下層非磁性層上の上層磁性層とを少なくとも有する磁気記録媒体の製造方法であって、
非磁性支持体の一方の面上に、カーボンブラック、カーボンブラック以外の非磁性無機粉末、及び結合剤樹脂材料を少なくとも含む非磁性層用塗料を塗布して下層非磁性層を形成する工程と、
前記下層非磁性層上に、強磁性粉末、及び極性基を有する結合剤樹脂を少なくとも含み、前記強磁性粉末は、平均長軸長が10〜50nmの強磁性金属粉末、又は平均板径が5〜40nmの六方晶フェライト磁性粉末であり、前記極性基を有する結合剤樹脂は、前記強磁性粉末の単位比表面積(BET法による)当たり前記極性基が0.18〜0.35μmol/m2 の範囲となる量で含まれている磁性層用塗料を塗布、乾燥して上層磁性層を形成する工程と
を含む磁気記録媒体の製造方法。

【公開番号】特開2008−257754(P2008−257754A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−95603(P2007−95603)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】