説明

磁気記録媒体用基板

【課題】洗浄工程における磁気記録媒体用基板の浮き上がりを防止し、良好に洗浄することが可能な磁気記録媒体用基板を提供する。
【解決手段】この実施形態に係る磁気記録媒体用基板は円板状の形状を有し、樹脂を母材としている。この基板の比重は、洗浄工程で用いられる洗浄剤の比重よりも大きい。例えば、基板に無機材料のフィラー材を含有させて、比重を1.2以上にしたり、基板表面に金属層を形成することで、比重を1.2以上にしたりする。これにより、磁気記録媒体用基板は洗浄剤に沈むため、磁気記録媒体用基板を良好に洗浄することができる。その結果、表面が洗浄な状態の磁気記録媒体用基板が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、磁気ディスク記録装置の基板に用いられる磁気記録媒体用基板に関し、特に、樹脂製の基板を用いた磁気記録媒体用基板に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータなどに用いられる磁気ディスク記録装置には、従来からアルミニウム基板又はガラス基板が用いられている。そして、この基板上に金属磁気薄膜が形成され、金属磁気薄膜を磁気ヘッドで磁化することにより情報が記録される(例えば特許文献1から特許文献6など)。
【0003】
例えばアルミニウム基板を用いる場合、アルミニウム板をプレス成形して円板状にした後、表面に対して高精度の研削・研磨加工及び洗浄工程を施すことにより、表面を平滑化し、続いて、めっき処理を施すことによりニッケル−リン(Ni−P)合金を基板の表面に形成する。その後、研磨加工、テクスチャー加工を施し、さらにスパッタリングによりCo系合金の磁性層を形成することで磁気記録媒体を製造している。
【0004】
また、ガラス基板を用いる場合、ガラス素材を溶融し、溶融したガラスをプレス成形し、円板状のガラス基板を作製する。そして、ガラス基板の表面に対して高精度の研削・研磨加工及び洗浄工程を施すことにより、表面を平滑化した後、アルカリの溶融塩によるイオン交換によって表面を化学強化処理し、精密洗浄工程を経た後、テクスチャー加工を施し、さらにスパッタリングによりCo系合金の磁性層を形成することで磁気記録媒体を製造している。
【0005】
ところで、磁気記録媒体用基板としてプラスチック基板などの樹脂製基板を採用する試みがなされている。この場合、樹脂製基板上に磁性層を形成することで磁気記録媒体を製造している。
【0006】
【特許文献1】特開2003−54965号公報
【特許文献2】特開2003−55001号公報
【特許文献3】特開2000−163740号公報
【特許文献4】特開2004−164773号公報
【特許文献5】特開2000−21019号公報
【特許文献6】特開2001−294615号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、樹脂製基板を用いて磁気記録媒体を製造する場合、樹脂製基板の洗浄工程において問題があった。
【0008】
洗浄工程においては、洗浄液(アルカリ溶液(NaOH、KOH)、酸溶液(塩酸、硝酸、硫酸、シュウ酸、クエン酸、酢酸)、アルカリ性洗剤液、酸性洗剤液、中性洗浄液、アルコール、エーテル、超純水、RO水など)に樹脂製基板を浸漬して樹脂製基板を洗浄している。ところが、樹脂製基板が洗浄剤から浮き上がってしまい、良好に樹脂製基板を洗浄できない問題があった。例えば、純水を用いて樹脂製基板を洗浄−濯ぎをする場合、樹脂製基板が純水から浮き上がってしまい、良好に基板を洗浄できなかった。また、樹脂製基板を揺動したり、超音波を当てて洗浄したりすると、樹脂製基板が洗浄剤から浮き上がってしまい、この場合も、良好に基板を洗浄できない問題があった。
【0009】
そこで、従来においては、樹脂製基板を押さえつけたりして、樹脂製基板の浮き上がりを防止していた。しかしながら、樹脂製基板を搬送するケースなどに、樹脂製基板を押さえつけるための機構を取り付けたりする必要があったため、機構が複雑になり、洗浄工程において簡便な構造を採用することができない問題があった。また、治具等による過度の接触により基板そのものを損傷してしまうおそれがあった。
【0010】
また、樹脂製基板の浮き上がりを防止するために、洗浄剤として比重の軽いフロン等の有機溶剤を用いて洗浄を行っていたが、排気設備等に関して製造設備の維持管理が複雑であり、また環境面においても問題があった。
【0011】
さらに、ドライエッチングなどのドライプロセスでの洗浄では、基板損傷のリスクもあり、近年の情報記録媒体用基板の要求品質に対し不十分となっていた。
【0012】
この発明は上記の問題を解決するものであり、洗浄工程における磁気記録媒体用基板の浮き上がりを防止し、良好に洗浄することが可能な磁気記録媒体用基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明の第1の形態は、円板状の形状を有する樹脂製の母材を基板とし、前記基板の比重が、洗浄工程で用いられる洗浄剤の比重よりも大きいことを特徴とする磁気記録媒体用基板である。
【0014】
この発明の第2の形態は、第1の形態に係る磁気記録媒体用基板であって、前記基板の比重が1.2以上であることを特徴とする。
【0015】
この発明の第3の形態は、第2の形態に係る磁気記録媒体用基板であって、前記基板に無機材料のフィラー材を含有させて、前記基板の比重を1.2以上としたことを特徴とする。
【0016】
この発明の第4の形態は、第3の形態に係る磁気記録媒体用基板であって、前記フィラー材は、酸化物、炭化物、窒化物の中から選ばれる一つ若しくは二つ以上の組み合わせであることを特徴とする。
【0017】
この発明の第5の形態は、第3の形態に係る磁気記録媒体用基板であって、前記フィラー材は、金属酸化物、金属炭化物、金属窒化物の中から選ばれる一つ若しくは二つ以上の組み合わせであることを特徴とする。
【0018】
この発明の第6の形態は、第3の形態に係る磁気記録媒体用基板であって、前記フィラー材は、単結晶体、多結晶体、鉱物、セラミックス、ガラスの中から選ばれる一つ若しくは二つ以上の組み合わせであることを特徴とする。
【0019】
この発明の第7の形態は、第3から第6のいずれかの形態に係る磁気記録媒体用基板であって、前記フィラー材が前記基板の全体に占める体積の割合が、5[%]以上であることを特徴とする。
【0020】
この発明の第8の形態は、第2の形態に係る磁気記録媒体用基板であって、前記基板の表面に被覆層を形成して、前記基板の比重を1.2以上としたことを特徴とする。
【0021】
この発明の第9の形態は、第8の形態に係る磁気記録媒体用基板であって、前記被覆層は非磁性の金属層、金属酸化物、金属炭化物、金属窒化物の中から選ばれる一つ若しくは二つ以上の組み合わせであることを特徴とする。
【0022】
この発明の第10の形態は、第8の形態に係る磁気記録媒体用基板であって、前記被覆層はNi合金層であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
この発明によると、磁気記録媒体用基板の比重が洗浄剤の比重よりも大きいため、磁気記録媒体用基板が洗浄剤に沈み、磁気記録媒体用基板を良好に洗浄することが可能となる。
【0024】
また、洗浄剤に純水を用いた場合も、磁気記録媒体用基板の比重を純水の比重よりも大きくすることで、磁気記録媒体用基板を純水に沈ませて、磁気記録媒体用基板を洗浄することが可能となる。純水は安価で環境に対する負荷も少ないため、従来における環境面の問題を解決することができ、さらに、洗浄能力が高いため、磁気記録媒体用基板を良好に洗浄することが可能となる。
【0025】
また、磁気記録媒体用基板の浮き上がりを防止するために、磁気記録媒体用基板を押さえつけたりする必要がないため、洗浄工程において、複雑な機構を利用する必要がなく、簡便な機構で磁気記録媒体用基板を洗浄することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
(構成)
この発明の実施形態に係る磁気記録媒体用基板の構成について説明する。この実施形態に係る磁気記録媒体用基板は円板状の形状を有し、円板の中央に貫通孔が形成されている。また、この磁気記録媒体用基板は樹脂により構成されている。そして、この磁気記録媒体用基板は、ハードディスクなどの磁気記録媒体の基板として用いられる。
【0027】
この実施形態に係る磁気記録媒体用基板の比重(水に対する比重)は、洗浄工程で用いられる洗浄剤の比重(水に対する比重)よりも大きい。また、磁気記録媒体用基板の比重(水に対する比重)が1.2以上であることが好ましい。
【0028】
磁気記録媒体用基板の比重が、洗浄工程で用いられる洗浄剤の比重よりも大きいため、洗浄工程において磁気記録媒体用基板が洗浄剤に沈み、磁気記録媒体用基板を良好に洗浄することができる。これにより、表面が清浄な状態の磁気記録媒体用基板が得られる。
【0029】
また、磁気記録媒体用基板が洗浄剤に沈むため、磁気記録媒体用基板を洗浄剤に容易に浸漬させることが可能となる。そのことにより、磁気記録媒体用基板を押さえつけたりする必要がないため、洗浄工程において、複雑な機構を利用する必要がなく、簡便な機構で磁気記録媒体用基板を洗浄することが可能となる。
【0030】
また、磁気記録媒体用基板の比重を1.2以上とすることで、酸性の洗浄剤、アルカリ性の洗浄剤、中性の洗浄剤、純水、又はアルコールの洗浄剤を用いても、磁気記録媒体用基板が洗浄剤に沈むため、磁気記録媒体用基板を良好に洗浄することが可能となる。
【0031】
例えば、酸性の洗浄剤には、塩酸(比重1.19)、過塩素酸(比重1.77)、次亜塩素酸、硫酸(比重1.84)、亜硫酸、硝酸(比重1.42)、炭酸,リン酸、クロム酸、クロロスルホン酸、臭化水素酸、ほう酸、フッ化水素酸、フッ化けい酸、フッ化ほう素酸、酢酸、シュウ酸(比重1.90)、クエン酸、オレイン酸、サリチル酸、石炭酸、酒石酸、乳酸、マレイン酸、りんご酸などから選択される1つ以上の酸性成分を純水、蒸留水などで希釈し、比重1.00から1.10の範囲に調整した酸性洗浄剤水溶液が用いられる。この実施形態に係る磁気記録媒体用基板の比重は、これら酸性の洗浄剤の比重よりも大きいため、磁気記録媒体用基板は洗浄剤に沈み、磁気記録媒体用基板を良好に洗浄することができる。
【0032】
また、アルカリ性の洗浄剤は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウム,水酸化マグネシウム、アンモニア、テトラメチル水酸化物などから選択される1つ以上のアルカリ成分を純水、蒸留水などで希釈し、比重1.00から1.10の範囲に調整したアルカリ性洗浄剤水溶液が用いられる。この実施形態に係る磁気記録媒体用基板の比重は、これらアルカリ性の洗浄剤の比重よりも大きいため、磁気記録媒体用基板は洗浄剤に沈み、磁気記録媒体用基板を良好に洗浄することができる。
【0033】
また、中性の洗浄剤は、イオン性界面活性剤(直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、脂肪酸ナトリウム、脂肪酸カリウム、アルキル硫酸エステルナトリウム、アルキルエーテル硫酸エステルナトリウム、アルファオレフィンスルホン酸ナトリウム 、アルキルスルホン酸ナトリウム、アルキルアミノ脂肪酸ナトリウム、アルキルベタイン、アルキルアミンオキシド、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、高級アルコール硫酸エステル塩)、非イオン性界面活性剤(しょ糖脂肪酸エステルソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪族アルカノールアミド、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル)などからなる界面活性剤を主体としており、その中から選択される1つ以上の界面活性剤成分を純水、蒸留水などで希釈し、比重1.00から1.10の範囲に調整した中性洗浄剤水溶液が用いられる。この実施形態に係る磁気記録媒体用基板の比重は、これら中性の洗浄剤の比重よりも大きいため、磁気記録媒体用基板は洗浄剤に沈み、磁気記録媒体用基板を良好に洗浄することができる。
【0034】
また、アルコールの洗浄剤には、メタノール(比重0.79)、エタノール(比重0.79)、イソプロピルアルコール(比重0.78)、イソブチルアルコール(比重0.80)、シクロヘキサノール(比重0.94)、ヘキシルアルコール(比重0.82)、ベンジルアルコール(比重1.05)などが用いられる。この実施形態に係る磁気記録媒体用基板の比重は、これらアルコールの洗浄剤の比重よりも大きいため、磁気記録媒体用基板は洗浄剤に沈み、磁気記録媒体用基板を良好に洗浄することができる。
【0035】
また、純水を用いて磁気記録媒体用基板を洗浄することができるため、従来における環境面の問題を解決することができ、さらに、高い洗浄能力が得られる。つまり、純水は、安価で安全(環境への影響が少ない)で、かつ洗浄能力が高いため、環境面と洗浄性の問題を解決することが可能となる。さらに、純水は、管理が容易であるという効果もある。
【0036】
次に、この実施形態に係る磁気記録媒体用基板の材料について説明する。磁気記録媒体用基板には、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、又は活性線硬化性樹脂の他、様々な樹脂を用いることができる。
【0037】
熱可塑性樹脂として、磁気記録媒体用基板には、例えば、ポリカーボネイト樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK樹脂)、環状ポリオレフィン樹脂、メタクリルスチレン樹脂(MS樹脂)、ポリスチレン樹脂(PS樹脂)、ポリエーテルイミド樹脂(PEI樹脂)、ABS樹脂、ポリエステル樹脂(PET樹脂、PBT樹脂など)、ポリオレフィン樹脂(PE樹脂、PP樹脂など)、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂(PES樹脂)、ポリアリレート樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリアミド樹脂、又は、アクリル樹脂などを用いることができる。また、熱硬化性樹脂として、例えば、フェノール樹脂、ユリア樹脂、不飽和ポリエステル樹脂(BMC樹脂など)、シリコン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、又は、ポリベンゾイミダゾール樹脂などを用いることができる。その他、ポリエチレンナフタレート樹脂(PEN樹脂)などを用いることができる。
【0038】
活性線硬化性樹脂として、例えば、光硬化性樹脂が用いられる。光硬化性樹脂としては、例えば、光硬化性アクリルウレタン系樹脂、光硬化性ポリエステルアクリレート系樹脂、光硬化性エポキシアクリレート系樹脂、光硬化性ポリオールアクリレート系樹脂、光硬化性エポキシ樹脂、光硬化シリコン系樹脂、又は、光硬化アクリル樹脂などを挙げることができる。
【0039】
また、塗説された硬化前の層に活性線を照射することによって硬化するときに、光開始剤を用いて硬化反応を促進させることが好ましい。このとき光増感剤を併用しても良い。
【0040】
また、空気中の酸素が上記硬化反応を抑制する場合は、酸素濃度を低下させる、または除去するために、例えば不活性ガス雰囲気下で活性線を照射することもできる。活性線としては、赤外線、可視光、紫外線などを適宜選択することができ、特に限定されるものではない。また、光硬化生樹脂のうち紫外線硬化性樹脂は光による硬化機能が高いため、紫外線硬化性樹脂を用いることが好ましい。また、活性線の照射中、または前後に加熱(若しくは冷却)によって硬化反応を促進させても良い。
【0041】
さらに、磁気記録媒体用基板には、液晶ポリマー、有機/無機ハイブリッド樹脂(例えば、高分子成分にシリコンを骨格として取り込んだもの)などを用いても良い。なお、上記に挙げた樹脂は磁気記録媒体用基板に用いられる樹脂の一例であり、この発明に係る基板がこれらの樹脂に限定されることはない。2種以上の樹脂を混合して樹脂製の基板としても良く、また、別々の層として異なる成分を隣接させた基板としても良い。
【0042】
また、母材としての樹脂は、極力、耐熱温度又はガラス転移温度Tgが高い方が望ましい。樹脂製の磁気記録媒体用基板にはスパッタリングにより磁性層が形成されるため、耐熱温度又はガラス転移温度Tgは、そのスパッタリングにおける温度以上であることが望ましい。例えば、耐熱温度又はガラス転移温度Tgが150℃以上である樹脂を用いることが望ましく、より好ましくは200℃以上である樹脂を用いることが望ましい。
【0043】
耐熱温度又はガラス転移温度Tgが150℃以上の代表的な樹脂として、耐熱性ポリカーボネイト、シリコン樹脂、フッ素樹脂(PTFE,FEP,ETFE)、無機フィラーを充填したフェノール、メラニン、エポキシ、ポリフェニレンスルファイド、不飽和ポリエステルなどの樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂(PES樹脂)、ポリエーテルイミド樹脂(PEI樹脂)、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂、BMC樹脂、又は、液晶ポリマーなどが挙げられる。より具体的には、ポリエーテルスルホン樹脂(PES樹脂)として、ユーデル(ソルベイアデバンストポリマーズ)、ポリエーテルイミド樹脂(PEI樹脂)として、ウルテム(日本GEプラスチック)、ポリアミドイミド樹脂として、トーロン(ソルベイアデバンストポリマーズ)、ポリイミド樹脂(熱可塑性)として、オーラム(三井化学)、ポリイミド(熱硬化性)として、ユーピレックス(宇部興産)、又は、ポリベンゾイミダゾール樹脂として、PBI/Celazole(クラリアントジャパン)が挙げられる。また、液晶ポリマーとして、スミカスーパーLCP(住友化学)、ポリエーテルエーテルケトンとして、ビクトレックス(ビクトレックスMC)が挙げられる。
【0044】
樹脂製の基板は、基板に対応した形状を有する金型を用いて、射出成形法、注型成形法、シート成形法、射出圧縮成形法、又は圧縮成形法などの成形法によって製造することができる。さらに、必要に応じて、成形した基板をカッティングし、打ち抜き、又はプレス成形を行ってこの実施形態に係る磁気記録媒体用基板を製造しても良い。
【0045】
また、上記射出成形法などによりこの実施形態に係る磁気記録媒体用基板を成形することで、基板の内径の寸法、外径の寸法、内周端部の形状、又は外周端部の形状の少なくとも1つを同時に形成することができる。つまり、基板の内径の寸法や外径の寸法に合わせて、射出成形法などに用いられる金型を作製し、その金型を用いることで、内径寸法や外径寸法が樹脂成形時に完成されることになる。また、基板の内周端部の形状や外周端部の形状に合わせて、金型を作製し、その金型を用いることで、内周端部の形状や外周端部の形状が樹脂成形時に形成されることになる。
【0046】
また、以上の説明は、基板が単一の樹脂により構成されているものを例として行ったが、基板は単一の樹脂で構成されているものに限らず、金属やガラスなどの非磁性材料の表面を樹脂層で被覆することにより構成されるものでも良い。この場合、樹脂で被覆される非磁性材料としては、樹脂、金属、セラミックス、ガラス、ガラスセラミックス、又は、有機無機複合材など、基板として適用できる様々な素材を用いることができる。なお、基板は単一の樹脂で構成されている方が、製造工程をより簡略化できるという効果があるため、好ましい。
【0047】
また、磁気記録媒体用基板として、吸湿による基板の寸法変化による磁気ヘッドとの位置ずれを防ぐために、吸湿性が少ない樹脂を用いることが望ましい。吸湿性の少ない樹脂の代表としては、ポリカーボネイトや環状ポリオレフィン樹脂がある。
【0048】
次に、この実施形態に係る磁気記録媒体用基板の具体的な構成について説明する。ここでは、磁気記録媒体用基板の比重を洗浄剤の比重よりも大きくする手法として、3つの形態について説明する。
【0049】
(第1の形態)
まず、第1の形態について説明する。この第1の形態では、樹脂材料に比重が大きい材料を含有させることで、磁気記録媒体用基板の比重を洗浄剤の比重よりも大きくする。
【0050】
例えば、無機材料のフィラー材を樹脂材料に含有させることで、磁気記録媒体用基板の比重を洗浄剤の比重よりも大きくする。
【0051】
フィラー材の材料としては、金属、酸化物、窒化物、炭化物、硫化物、炭酸化物、リン酸化物、フッ化物、ガラス、ガラスファイバー、又はカーボンファイバーなどが用いられる。具体的には、フィラー材の材料として、Si(シリコン)、Al(アルミニウム)、C(カーボン)、Sn(錫)、Zn(亜鉛)、Ti(チタン)、In(インジウム)、Mg(マグネシウム)、Pd(パラジウム)、Ba(バリウム)、La(ランタン)、Ta(タンタル)、Mo(モリブデン)、W(タングステン)、V(バナジウム)、又はSr(ストロンチウム)などを用いることができる。さらに、これらを主成分とする化合物、例えば、酸化物、窒化物、炭化物、硫化物、炭酸化物、リン酸化物、フッ化物などであっても良い。具体的には、SiO、ZrO、Al、TiO、SrCO、C、AlPO、CaCO、ITO、ZnS、MgFなどがフィラー材として用いられる。
【0052】
また、無機材料としては、SiO、ZrO、Al、TiO、又はガラスなどの酸化物や、SiC、WCなどの炭化物、BN、AlN、TiNなどの窒化物などを用いることが好ましい。
【0053】
なお、上述したフィラー材の材料の例は無機物質の例であるが、有機無機の複合物質をフィラー材の材料に用いても良く、さらに粒子状、繊維状、円柱状のものを組み合わせて使用しても良い。また、2種類以上の材料を同時にフィラー材として使用しても良い。
【0054】
また、粒子状フィラー材場合、粒径は50μm以下であることが好ましい。繊維状フィラー材の場合、繊維径が20μm以下、繊維長さが5mm以下であることが好ましい。円柱状フィラー材の場合、円柱の長さと円柱直径の大きい方が50μm以下であることが好ましい。
【0055】
さらに、樹脂製基板の全体に占める無機材料の体積の割合が、1.0[%]以上であることが好ましい。これ以下では、フィラーが均質に基板全体に分散されず、比重の偏りが発生する恐れがある。体積比で1.0%以上含有させることで、磁気記録媒体用基板の比重を均質に1.2以上とすることができるため、洗浄剤の比重よりも大きくすることが可能となる。
【0056】
なお、無機材料の種類や体積の割合を変えることにより、磁気記録媒体用基板の比重を変えることができるため、洗浄工程に用いる洗浄剤の比重に応じて、無機材料の種類や体積の割合を変えて、磁気記録媒体用基板の比重を洗浄剤の比重よりも大きくすればよい。
【0057】
(第2の形態)
次に、第2の形態について説明する。この第2の形態は、樹脂製基板の表面に被覆層を形成することで、磁気記録媒体用基板の比重を洗浄剤の比重よりも大きくする。
【0058】
被覆層には、金属層、磁性層(常磁性層、軟磁性層、又は強磁性層)、ガラス層、セラミック層等の酸化物層、又は、無機層と有機層との複合層(ハイブリッド層)が用いられる。被覆層の具体的な成分として、Mg(マグネシウム)、Ca(カルシウム)、Sr(ストロンチウム)Ba(バリウム)、Ti(チタン)、Sc(スカンジウム)、V(バナジウム)、Cr(クロム)、Mn(マンガン)、Fe(鉄)、Co(コバルト)、Ni(ニッケル)、Cu(銅)、Zn(亜鉛)、Al(アルミニウム)、Si(シリコン)、P(リン)、Ga(ガリウム)、Ge(ゲルマニウム)、As(砒素)、Se(セレン)、Y(イットリウム)、Zr(ジルコニウム)、Nb(ニオブ)、Mo(モリブデン)、Ru(ルテニウム)Rh(ロジウム)、Pd(パラジウム)、Ag(銀)、Cd(カドミウム)、In(インジウム)、Sn(錫)、Sb(アンチモン)、Te(テルル)、La(ランタン)、Ce(セリウム)、Pr(プラセオジウム)、Nd(ネオジウム)、Pm(プロメチウム)、Sm(サマリウム)、Eu(ユーロピウム)、Gd(ガドリウム)、Tb(テルビウム)、Dy(ジスプロシウム)、Ho(ホルミウム)、Er(エルビウム)、Tm(ツリウム)、Yb(イッテルビウム)、Lu(ルテチウム)、Hf(ハフニウム)、Ta(タンタル)、W(タングステン)、Re(レニウム)、Os(オスミウム)、Ir(イリジウム)、Pt(白金)、Au(金)、Tl(タリウム)、Pb(鉛)、Bi(ビスマス)、Po(ポロニウム)、などの元素を単体若しくは複数組み合わせて使用してもよく、又はそれらの酸化物、窒化物、炭化物を単体若しくは複数組み合わせて使用してもよい。
【0059】
また、合金層として、Ni−P(ニッケル−リン)合金層などを樹脂製基板の表面に形成してもよい。
【0060】
さらに、高密度化技術として期待の大きい垂直磁気記録媒体においては、基板表面に対して垂直に磁性体を並べる必要があり、そのためには、磁性層と基板との間に軟磁性層を形成する必要がある。この軟磁性層の代表的な合金として、Ni−Co(ニッケル−コバルト)合金がある。被覆層としてNi−Co合金を用いることにより、垂直磁気記録媒体における軟磁性層としての機能も果たすことが可能となる。
【0061】
被覆層は、電気めっき又は化学めっきなどのめっき法によって樹脂製基板の表面上に形成することが可能である。その他、スパッタリング、真空蒸着、又はCVD法などによっても形成することが可能である。また、バーコート法、ディップコート(浸漬引き上げ)法、スピンコート法、スプレー法、又は印刷法などの塗布法によって形成してもよい。
【0062】
なお、この実施形態に係る磁気記録媒体用基板を用いて磁気記録媒体を作製する場合、表面に形成された被覆層の上に磁性層を形成して磁気記録媒体とする。例えば、表面上に形成された被覆層を研磨し、研磨後の被覆層上にスパッタリングなどによりCo系合金などの磁性層を形成して磁気記録媒体とする。
【0063】
また、樹脂製基板には、表面に形成される被覆層との密着度が高い樹脂を用いることが好ましい。例えば、表面に極性基が存在する樹脂や、表面粗さRaが大きい樹脂や、フィラー材が含まれる樹脂や、表面に溝が設けられた樹脂などを基板の材料として用いることで、樹脂製基板と被覆層との密着度を高めることが可能となる。
【0064】
(第3の形態)
次に、第3の形態について説明する。この第3の形態は、比重が大きい樹脂を用いて磁気記録媒体用基板を作製することで、磁気記録媒体用基板の比重を洗浄剤の比重よりも大きくする。この場合、さらにフィラー材の添加や被複層の形成を組み合わせることよって、より一層の効果を得ることも出来る。
【0065】
例えば、フェノール樹脂(比重1.21〜1.30)、メラニン樹脂(比重1.48)、アリル樹脂(比重1.30〜1.40)、ポリイミド樹脂(比重1.33〜1.51)、高密度型エポキシ樹脂(比重1.25〜1.40)。高密度型シリコーン樹脂(比重1.22〜1.50)、高密度型不飽和ポリエステル樹脂(比重1.24〜1.46)、全芳香族ポリエステル樹脂(比重1.35)、ポリアミドイミド樹脂(比重1.41)、ポリエーテルイミド樹脂(比重1.27)、飽和ポリエステル樹脂(比重1.34〜1.39)、ポリアセタール樹脂(比重1.42)、ポリエーテルスルフォン樹脂(比重1.68)ポリフェニレンスルファイド樹脂(比重1.34)、ポリスルフォン樹脂(比重1.24)テトラフルオロエチレン樹脂(比重2.14〜2.20)トリフルオロエチレン樹脂(比重2.10〜2.20)、ポリ弗化ビニリデン樹脂(比重1.75〜1.78)を用いることで所望の特性を発揮できる。
【0066】
[実施例]
次に、この発明の具体的な実施例について説明する。
【0067】
(実施例1)
実施例1では、上記第1の形態による手法により、磁気記録媒体用基板の比重を洗浄剤の比重よりも大きくした。具体的には、樹脂材料に無機材料のフィラー材を含有させことで、磁気記録媒体用基板の比重を大きくした。
【0068】
(樹脂製基板)
基板の原料としてポリカーボネイト樹脂を用い、その原料に無機材料のフィラー材を含有させた。そして、射出成形により磁気記録媒体用基板を作製した。ポリカーボネイト樹脂として、パンライト(帝人社製)を用いた。この磁気記録媒体用基板の寸法を以下に示す。
外径:1インチ(25.4[mm])
基板の厚さ:0.4[mm]
【0069】
(フィラー材)
実施例1で用いたフィラー材の条件を以下に示す。
フィラー材の材料:ガラスパウダー
フィラー材の粒径:平均粒径12μm
磁気記録媒体用基板の全体に占める体積の割合:25%
【0070】
上記の条件によって磁気記録媒体用基板を作製することで、磁気記録媒体用基板の比重は、1.45になった。
【0071】
(評価)
実施例1に係る磁気記録媒体用基板を、中性の洗浄剤と純水に浸漬させて洗浄した。
【0072】
中性の洗浄剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテルを主成分とする市販の中性洗剤サンウォッシュLH−30(ライオン社製)を蒸留水で希釈し、比重0.99として用いた。
【0073】
実施例1に係る磁気記録媒体用基板の比重は1.45であり、中性の洗浄剤の比重は0.99であるため、磁気記録媒体用基板は中性の洗浄剤に沈み、良好に磁気記録媒体用基板を洗浄することができた。これにより、表面が洗浄な状態の磁気記録媒体用基板が得られた。
【0074】
また、実施例1に係る磁気記録媒体用基板の比重は純水よりも大きいため、磁気記録媒体用基板は純水に沈み、良好に磁気記録媒体用基板を洗浄することができた。これにより、表面が洗浄な状態の磁気記録媒体用基板が得られた。
【0075】
(実施例2)
実施例2では、上記第1の形態による手法により、磁気記録媒体用基板の比重を洗浄剤の比重よりも大きくした。具体的には、実施例1と同様に、樹脂材料に無機材料のフィラー材を含有させることで、磁気記録媒体用基板の比重を大きくした。なお、この実施例2に係る樹脂製基板は、実施例1と同じ樹脂(ポリカーボネイト樹脂)を用い、寸法も、実施例1に係る樹脂製基板の寸法と同じにした。
【0076】
(フィラー材)
実施例2では、フィラー材の材料を変えた。実施例2で用いたフィラー材の条件を以下に示す。
フィラー材の材料:石英(SiO)ファイバー
フィラー材の寸法:繊維径4μm、平均長さ0.70mm
磁気記録媒体用基板の全体に占める体積の割合:30%
【0077】
上記の条件によって磁気記録媒体用基板を作製することで、磁気記録媒体用基板の比重は、1.65になった。
【0078】
(評価)
実施例2に係る磁気記録媒体用基板を、中性の洗浄剤と純水に浸漬させて洗浄した。中性の洗浄剤は、実施例1と同じものを用いた。
【0079】
実施例2に係る磁気記録媒体用基板の比重は1.65であり、中性の洗浄剤の比重は0.99であるため、磁気記録媒体用基板は中性の洗浄剤に沈み、良好に磁気記録媒体用基板を洗浄することができた。これにより、表面が洗浄な状態の磁気記録媒体用基板が得られた。
【0080】
また、実施例2に係る磁気記録媒体用基板の比重は純水よりも大きいため、磁気記録媒体用基板は純水に沈み、良好に磁気記録媒体用基板を洗浄することができた。これにより、表面が洗浄な状態の磁気記録媒体用基板が得られた。
【0081】
(実施例3)
実施例3では、上記第1の形態による手法により、磁気記録媒体用基板の比重を洗浄剤の比重よりも大きくした。具体的には、実施例1と同様に、樹脂材料に無機材料のフィラー材を含有させることで、磁気記録媒体用基板の比重を大きくした。なお、この実施例3に係る樹脂製基板は、実施例1と同じ樹脂(ポリカーボネイト樹脂)を用い、寸法も、実施例1に係る樹脂製基板の寸法と同じにした。
【0082】
(フィラー材)
実施例3では、フィラー材の材料を変えた。実施例3で用いたフィラー材の条件を以下に示す。
フィラー材の材料:アルミナ粒子
フィラー材の粒径:平均粒径30μm
磁気記録媒体用基板の全体に占める体積の割合:25%
【0083】
上記の条件によって磁気記録媒体用基板を作製することで、磁気記録媒体用基板の比重は、1.45になった。
【0084】
(評価)
実施例3に係る磁気記録媒体用基板を、中性の洗浄剤と純水に浸漬させて洗浄した。
【0085】
中性の洗浄剤としては、クリンスルーKS7405(花王社製)を純水で希釈し、比重0.98として用いた。
【0086】
実施例3に係る磁気記録媒体用基板の比重は1.45であり、中性の洗浄剤の比重は0.98であるため、磁気記録媒体用基板は中性の洗浄剤に沈み、良好に磁気記録媒体用基板を洗浄することができた。これにより、表面が洗浄な状態の磁気記録媒体用基板が得られた。
【0087】
また、実施例3に係る磁気記録媒体用基板の比重は純水よりも大きいため、磁気記録媒体用基板は純水に沈み、良好に磁気記録媒体用基板を洗浄することができた。これにより、表面が洗浄な状態の磁気記録媒体用基板が得られた。
【0088】
(実施例4)
実施例4では、上記第1の形態による手法により、磁気記録媒体用基板の比重を洗浄剤の比重よりも大きくした。具体的には、実施例1と同様に、樹脂材料に無機材料のフィラー材を含有させることで、磁気記録媒体用基板の比重を大きくした。なお、この実施例4に係る樹脂製基板は、実施例1と同じ樹脂(ポリカーボネイト樹脂)を用い、寸法も、実施例1に係る樹脂製基板の寸法と同じにした。
【0089】
(フィラー材)
実施例4では、フィラー材の材料を変えた。実施例4で用いたフィラー材の条件を以下に示す。
フィラー材の材料:ZrO(酸化ジルコニウム)
フィラー材の粒径:平均粒径30μm
磁気記録媒体用基板の全体に占める体積の割合:18%
【0090】
上記の条件によって磁気記録媒体用基板を作製することで、磁気記録媒体用基板の比重は、1.78になった。
【0091】
(評価)
実施例4に係る磁気記録媒体用基板を、中性の洗浄剤と純水に浸漬させて洗浄した。
【0092】
中性の洗浄剤としては、直鎖アルキルベンゼン系界面活性剤を主成分としたアルワンコンク(アルタン社製)をイオン交換水で希釈し、比重1.00として用いた。
【0093】
実施例4に係る磁気記録媒体用基板の比重は1.78であり、中性の洗浄剤の比重は1.00であるため、磁気記録媒体用基板は中性の洗浄剤に沈み、良好に磁気記録媒体用基板を洗浄することができた。これにより、表面が洗浄な状態の磁気記録媒体用基板が得られた。
【0094】
また、実施例4に係る磁気記録媒体用基板の比重は純水よりも大きいため、磁気記録媒体用基板は純水に沈み、良好に磁気記録媒体用基板を洗浄することができた。これにより、表面が洗浄な状態の磁気記録媒体用基板が得られた。
【0095】
(実施例5)
実施例5では、上記第1の形態による手法により、磁気記録媒体用基板の比重を洗浄剤の比重よりも大きくした。具体的には、実施例1と同様に、樹脂材料に無機材料のフィラー材を含有させることで、磁気記録媒体用基板の比重を大きくした。なお、この実施例5に係る樹脂製基板は、実施例1と同じ樹脂(ポリカーボネイト樹脂)を用い、寸法も、実施例1に係る樹脂製基板の寸法と同じにした。
【0096】
(フィラー材)
実施例5では、フィラー材の材料を変えた。実施例5で用いたフィラー材の条件を以下に示す。
フィラーの材料:ガラスファイバー
フィラーの寸法:ファイバー径12μm、ファイバー長さ2mm
磁気記録媒体用基板の全体に占める体積の割合:45%
【0097】
上記の条件によって磁気記録媒体用基板を作製することで、磁気記録媒体用基板の比重は、1.62になった。
【0098】
(評価)
実施例5に係る磁気記録媒体用基板を、中性の洗浄剤と純水に浸漬させて洗浄した。中性の洗浄剤は、実施例1と同じものを用いた。
【0099】
実施例5に係る磁気記録媒体用基板の比重は1.62であり、中性の洗浄剤の比重は0.99であるため、磁気記録媒体用基板は中性の洗浄剤に沈み、良好に磁気記録媒体用基板を洗浄することができた。これにより、表面が洗浄な状態の磁気記録媒体用基板が得られた。
【0100】
また、実施例5に係る磁気記録媒体用基板の比重は純水よりも大きいため、磁気記録媒体用基板は純水に沈み、良好に磁気記録媒体用基板を洗浄することができた。これにより、表面が洗浄な状態の磁気記録媒体用基板が得られた。
【0101】
(実施例6)
実施例6では、上記第1の形態による手法により、磁気記録媒体用基板の比重を洗浄剤の比重よりも大きくした。具体的には、実施例1と同様に、樹脂材料に無機材料のフィラー材を含有させることで、磁気記録媒体用基板の比重を大きくした。なお、この実施例6に係る樹脂製基板は、実施例1と同じ樹脂(ポリカーボネイト樹脂)を用い、寸法も、実施例1に係る樹脂製基板の寸法と同じにした。
【0102】
(フィラー材)
実施例6では、フィラー材の材料を変えた。実施例6で用いたフィラー材の条件を以下に示す。
フィラーの材料:SiC
フィラーの粒径:2μm
磁気記録媒体用基板の全体に占める体積の割合:24%
【0103】
上記の条件によって磁気記録媒体用基板を作製することで、磁気記録媒体用基板の比重は、1.63になった。
【0104】
(評価)
実施例6に係る磁気記録媒体用基板を、中性の洗浄剤と純水に浸漬させて洗浄した。中性の洗浄剤は、実施例1と同じものを用いた。
【0105】
実施例6に係る磁気記録媒体用基板の比重は1.63であり、中性の洗浄剤の比重は0.99であるため、磁気記録媒体用基板は中性の洗浄剤に沈み、良好に磁気記録媒体用基板を洗浄することができた。これにより、表面が洗浄な状態の磁気記録媒体用基板が得られた。
【0106】
また、実施例6に係る磁気記録媒体用基板の比重は純水よりも大きいため、磁気記録媒体用基板は純水に沈み、良好に磁気記録媒体用基板を洗浄することができた。これにより、表面が洗浄な状態の磁気記録媒体用基板が得られた。
【0107】
以上のように、実施例1から実施例6によると、磁気記録媒体用基板の比重を洗浄剤の比重よりも大きくすることができるため、磁気記録媒体用基板を洗浄剤に沈めることができ、磁気記録媒体用基板を良好に洗浄することが可能となる。これにより、表面が洗浄な状態の磁気記録媒体用基板が得られる。
【0108】
なお、フィラー材の体積の割合を変えることにより、磁気記録媒体用基板の比重を変えることができるため、洗浄工程に用いる洗浄剤の比重に応じて、フィラーの占有体積の割合を変えればよい。
【0109】
また、上記実施例1から実施例6では、洗浄剤として中性の洗浄剤を用いたが、酸性の洗浄剤やアルカリ性の洗浄剤を用いた場合も、磁気記録媒体用基板を洗浄剤に沈ませることができ、良好に磁気記録媒体用基板を洗浄することができる。例えば、酸性の洗浄剤として、希塩酸溶液(比重1.01)、炭酸水溶液(比重1.01)を用い、アルカリ性の洗浄剤に、水酸化カルシウム水溶液(比重1.03)、水酸化カリウム水溶液(比重1.02)を用いることで、磁気記録媒体用基板を洗浄剤に沈ませることができる。
【0110】
また、上記実施例1から実施例6では、樹脂製基板の材料としてポリカーボネイト樹脂を用いたが、上記実施形態で挙げた他の樹脂を用いても同様の効果を奏することができる。
【0111】
(実施例7)
実施例7では、上記第2の形態による手法により、磁気記録媒体用基板の比重を洗浄剤の比重よりも大きくした。具体的には、樹脂製基板の表面に被覆層を形成することで、磁気記録媒体用基板の比重を大きくした。
【0112】
(樹脂製基板)
この実施例7では、基板の原料としてABS樹脂を用い、射出成形により磁気記録媒体用基板を作製した。ABS樹脂として、トヨラック(東レ社製)を用いた。また、寸法は、実施例1に係る磁気記録媒体用基板の寸法と同じにした。
【0113】
(被覆層)
実施例7では、被覆層として非磁性の金属層を樹脂製基板に形成した。実施例7では、無電解めっき法により、樹脂製基板の表面にNi−P合金層を形成した。
Ni−P合金層の厚さ:13μm
【0114】
上記の条件によって磁気記録媒体用基板を作製することで、磁気記録媒体用基板の比重は、1.35になった。
【0115】
(評価)
実施例7に係る磁気記録媒体用基板を、純水を用いた超音波洗浄プロセスに投入した。
【0116】
(超音波洗浄プロセス)
超音波洗浄プロセスの条件を以下に示す。
超音波洗浄装置:島田理化社製 SUC U−302
洗浄剤:純水
超音波洗浄の条件:周波数28kHz、出力200W
【0117】
実施例7に係る磁気記録媒体用基板の比重は純水よりも大きいため、磁気記録媒体用基板は純水に沈み、良好に磁気記録媒体用基板を洗浄することができた。また、磁気記録媒体用基板を超音波洗浄プロセスに投入しても、磁気記録媒体用基板は純水から浮き上がることなく、良好に洗浄することができた。これにより、表面が洗浄な状態の磁気記録媒体用基板が得られた。
【0118】
(実施例8)
実施例8では、上記第2の形態による手法により、磁気記録媒体用基板の比重を洗浄剤の比重よりも大きくした。具体的には、実施例7と同様に、樹脂製基板の表面に被覆層を形成することで、磁気記録媒体用基板の比重を大きくした。なお、この実施例8に係る樹脂製基板は、実施例7と同じ樹脂(ABS樹脂)を用いた。また、寸法は、実施例1に係る磁気記録媒体用基板の寸法と同じにした。
【0119】
(被覆層)
実施例8では、実施例7と同様に、無電解めっき法によって、樹脂製基板の表面にNi−P合金層を形成した。実施例8では、Ni−P合金層の厚さを変えた。
Ni−P合金層の厚さ:50μm
【0120】
上記の条件によって磁気記録媒体用基板を作製することで、磁気記録媒体用基板の比重は、2.20になった。
【0121】
(評価)
実施例8に係る磁気記録媒体用基板を、純水を用いた超音波洗浄プロセスに投入した。超音波洗浄のプロセスは実施例7と同じである。
【0122】
実施例8に係る磁気記録媒体用基板の比重は純水よりも大きいため、磁気記録媒体用基板は純水に沈み、良好に磁気記録媒体用基板を洗浄することができた。また、磁気記録媒体用基板を超音波洗浄プロセスに投入しても、磁気記録媒体用基板は純水から浮き上がることなく、良好に洗浄することができた。これにより、表面が洗浄な状態の磁気記録媒体用基板が得られた。
【0123】
(実施例9)
実施例9では、上記第2の形態による手法により、磁気記録媒体用基板の比重を洗浄剤の比重よりも大きくした。具体的には、実施例7と同様に、樹脂製基板の表面に被覆層を形成することで、磁気記録媒体用基板の比重を大きくした。なお、この実施例9に係る樹脂製基板は、実施例7と同じ樹脂(ABS樹脂)を用いた。また、寸法は、実施例1に係る磁気記録媒体用基板の寸法と同じにした。
【0124】
(被覆層)
実施例9では、実施例7と同様に、無電解めっき法によって、樹脂製基板の表面にNi−P合金層を形成した。実施例9では、Ni−P合金層の厚さを変えた。
Ni−P合金層の厚さ:80μm
【0125】
上記の条件によって磁気記録媒体用基板を作製することで、磁気記録媒体用基板の比重は、2.72になった。
【0126】
(評価)
実施例9に係る磁気記録媒体用基板を、純水を用いた超音波洗浄プロセスに投入した。超音波洗浄のプロセスは実施例7と同じである。
【0127】
実施例9に係る磁気記録媒体用基板の比重は純水よりも大きいため、磁気記録媒体用基板は純水に沈み、良好に磁気記録媒体用基板を洗浄することができた。また、磁気記録媒体用基板を超音波洗浄プロセスに投入しても、磁気記録媒体用基板は純水から浮き上がることなく、良好に洗浄することができた。これにより、表面が洗浄な状態の磁気記録媒体用基板が得られた。
【0128】
以上のように、実施例7から実施例9によると、磁気記録媒体用基板の比重を洗浄剤の比重よりも大きくすることができるため、磁気記録媒体用基板を洗浄剤に沈めることができ、磁気記録媒体用基板を良好に洗浄することが可能となる。
【0129】
なお、Ni−P合金層の厚さを変えることにより、磁気記録媒体用基板の比重を変えることができるため、洗浄工程に用いる洗浄剤の比重に応じて、Ni−P合金層の厚さを変えればよい。
【0130】
(実施例10)
実施例10では、上記第2の形態による手法により、磁気記録媒体用基板の比重を洗浄剤の比重よりも大きくした。具体的には、樹脂製基板の表面に被覆層を形成することで、磁気記録媒体用基板の比重を大きくした。なお、この実施例10に係る樹脂製基板は、実施例7と同じ樹脂(ABS樹脂)を用いた。また、寸法は、実施例1に係る磁気記録媒体用基板の寸法と同じにした。
【0131】
(被覆層)
実施例10では、樹脂製基板の表面に形成する被覆層を変えた。具体的には、無電解めっき法により、樹脂製基板の表面にNi層を形成した。
Ni層の厚さ:30μm
【0132】
上記の条件によって磁気記録媒体用基板を作製することで、磁気記録媒体用基板の比重は、2.05になった。
【0133】
(評価)
実施例10に係る磁気記録媒体用基板を、純水を用いた超音波洗浄プロセスに投入した。超音波洗浄のプロセスは実施例7と同じである。
【0134】
実施例10に係る磁気記録媒体用基板の比重は純水よりも大きいため、磁気記録媒体用基板は純水に沈み、良好に磁気記録媒体用基板を洗浄することができた。また、磁気記録媒体用基板を超音波洗浄プロセスに投入しても、磁気記録媒体用基板は純水から浮き上がることなく、良好に洗浄することができた。これにより、表面が洗浄な状態の磁気記録媒体用基板が得られた。
【0135】
なお、Ni層の厚さを変えることにより、磁気記録媒体用基板の比重を変えることができるため、洗浄工程に用いる洗浄剤の比重に応じて、Ni層の厚さを変えればよい。
【0136】
(実施例11)
実施例11では、上記第2の形態による手法により、磁気記録媒体用基板の比重を洗浄剤の比重よりも大きくした。具体的には、樹脂製基板の表面に被覆層を形成することで、磁気記録媒体用基板の比重を大きくした。なお、この実施例11に係る樹脂製基板は、実施例7と同じ樹脂(ABS樹脂)を用いた。また、寸法は、実施例1に係る磁気記録媒体用基板の寸法と同じにした。
【0137】
(被覆層)
実施例11では、樹脂製基板の表面に形成する被覆層を変えた。具体的には、無電解めっき法により、樹脂製基板の表面にCu層を形成した。
Cu合金層の厚さ:40μm
【0138】
上記の条件によって磁気記録媒体用基板を作製することで、磁気記録媒体用基板の比重は、2.25になった。
【0139】
(評価)
実施例11に係る磁気記録媒体用基板を、純水を用いた超音波洗浄プロセスに投入した。超音波洗浄のプロセスは実施例7と同じである。
【0140】
実施例11に係る磁気記録媒体用基板の比重は純水よりも大きいため、磁気記録媒体用基板は純水に沈み、良好に磁気記録媒体用基板を洗浄することができた。また、磁気記録媒体用基板を超音波洗浄プロセスに投入しても、磁気記録媒体用基板は純水から浮き上がることなく、良好に洗浄することができた。これにより、表面が洗浄な状態の磁気記録媒体用基板が得られた。
【0141】
なお、Cu層の厚さを変えることにより、磁気記録媒体用基板の比重を変えることができるため、洗浄工程に用いる洗浄剤の比重に応じて、Cu層の厚さを変えればよい。
【0142】
(実施例12)
実施例12では、上記第2の形態による手法により、磁気記録媒体用基板の比重を洗浄剤の比重よりも大きくした。具体的には、樹脂製基板の表面に被覆層を形成することで、磁気記録媒体用基板の比重を大きくした。なお、この実施例12に係る樹脂製基板は、実施例7と同じ樹脂(ABS樹脂)を用いた。また、寸法は、実施例1に係る磁気記録媒体用基板の寸法と同じにした。
【0143】
(被覆層)
実施例12では、樹脂製基板の表面に形成する被覆層を変えた。具体的には、無電解めっき法により、樹脂製基板の表面に亜鉛層を形成した。
亜鉛層の厚さ:10μm
【0144】
上記の条件によって磁気記録媒体用基板を作製することで、磁気記録媒体用基板の比重は、1.29になった。
【0145】
(評価)
実施例12に係る磁気記録媒体用基板を、純水を用いた超音波洗浄プロセスに投入した。超音波洗浄のプロセスは実施例7と同じである。
【0146】
実施例12に係る磁気記録媒体用基板の比重は純水よりも大きいため、磁気記録媒体用基板は純水に沈み、良好に磁気記録媒体用基板を洗浄することができた。また、磁気記録媒体用基板を超音波洗浄プロセスに投入しても、磁気記録媒体用基板は純水から浮き上がることなく、良好に洗浄することができた。これにより、表面が洗浄な状態の磁気記録媒体用基板が得られた。
【0147】
なお、亜鉛層の厚さを変えることにより、磁気記録媒体用基板の比重を変えることができるため、洗浄工程に用いる洗浄剤の比重に応じて、亜鉛層の厚さを変えればよい。
【0148】
また、上記実施例7から実施例12では、洗浄剤として純水を用いたが、洗浄剤に中性の洗浄剤、酸性の洗浄剤、又はアルカリ性の洗浄剤を用いた場合も、磁気記録媒体用基板を洗浄剤に沈ませることができ、良好に磁気記録媒体用基板を洗浄することができる。
【0149】
なお、上記実施例7から実施例12では、樹脂製基板の材料としてABS樹脂を用いたが、上記実施形態で挙げた他の樹脂を用いても同様の効果を奏することができる。
【0150】
(実施例13)
実施例13では、上記第3の形態による手法により、磁気記録媒体用基板の比重を洗浄剤の比重よりも大きくした。具体的には、比重が大きい樹脂を用いて磁気記録媒体用基板を作製することで、磁気記録媒体用基板の比重を洗浄剤の比重よりも大きくする。なお、寸法は、実施例1に係る磁気記録媒体用基板と同じにした。
【0151】
(樹脂製基板)
基板の原料として、比重が1.39のポリイミド樹脂を用い、射出成形により磁気記録媒体用基板を作製した。例えば、ポリイミド樹脂として、スーパーオーラム(三井化学社製)を用いた。
【0152】
上記の樹脂によって磁気記録媒体用基板を作製することで、磁気記録媒体用基板の比重は、1.40になった。
【0153】
(評価)
実施例13に係る磁気記録媒体用基板を、実施例1の洗浄剤と純水に浸漬させて洗浄した。
【0154】
実施例13に係る磁気記録媒体用基板の比重は1.40であり、中性の洗浄剤の比重は0.99であるため、磁気記録媒体用基板は中性の洗浄剤に沈み、良好に磁気記録媒体用基板を洗浄することができた。これにより、表面が洗浄な状態の磁気記録媒体用基板が得られた。
【0155】
また、実施例13に係る磁気記録媒体用基板の比重は純水よりも大きいため、磁気記録媒体用基板は純水に沈み、良好に磁気記録媒体用基板を洗浄することができた。これにより、表面が洗浄な状態の磁気記録媒体用基板が得られた。
【0156】
(実施例14)
実施例14では、上記第3の形態による手法により、磁気記録媒体用基板の比重を洗浄剤の比重よりも大きくした。具体的には、比重が大きい樹脂を用いて磁気記録媒体用基板を作製することで、磁気記録媒体用基板の比重を洗浄剤の比重より大きくする。なお、寸法は、実施例1に係る磁気記録媒体用基板と同じにした。
【0157】
(樹脂製基板)
基板の原料として、比重が1.42のポリブチレンテレフタレート樹脂を用い、射出成形により磁気記録媒体用基板を作製した。例えば、ポリブチレンテレフタレート樹脂としてノバデュラン5010N5(三菱エンジニアリングプラスチックス社製)を用いた。
【0158】
上記の樹脂によって磁気記録媒体用基板を作製することで、磁気記録媒体用基板の比重は、1.42になった。
【0159】
(評価)
実施例14に係る磁気記録媒体用基板を、実施例1の洗浄剤と純水に浸漬させて洗浄した。
【0160】
実施例14に係る磁気記録媒体用基板の比重は1.42であり、中性の洗浄剤の比重は0.99であるため、磁気記録媒体用基板は中性の洗浄剤に沈み、良好に磁気記録媒体用基板を洗浄することができた。これにより、表面が洗浄な状態の磁気記録媒体用基板が得られた。
【0161】
また、実施例14に係る磁気記録媒体用基板の比重は純水よりも大きいため、磁気記録媒体用基板は純水に沈み、良好に磁気記録媒体用基板を洗浄することができた。これにより、表面が洗浄な状態の磁気記録媒体用基板が得られた。
【0162】
(実施例15)
実施例15では、上記第3の形態による手法により、磁気記録媒体用基板の比重を洗浄剤の比重よりも大きくした。具体的には、比重が大きい樹脂を用いて磁気記録媒体用基板を作製することで、磁気記録媒体用基板の比重を洗浄剤の比重より大きくする。なお、寸法は、実施例1に係る磁気記録媒体用基板と同じにした。
【0163】
(樹脂製基板)
基板の原料として、比重が1.35の全芳香族ポリエステル樹脂を用い、射出成形により磁気記録媒体用基板を作製した。例えば、全芳香族ポリエステル樹脂として、スミカスーパーLCP(住友化学社製)を用いた。
【0164】
上記の樹脂によって磁気記録媒体用基板を作製することで、磁気記録媒体用基板の比重は、1.35になった。
【0165】
(評価)
実施例15に係る磁気記録媒体用基板を、実施例1の洗浄剤と純水に浸漬させて洗浄した。
【0166】
実施例15に係る磁気記録媒体用基板の比重は1.35であり、中性の洗浄剤の比重は0.99であるため、磁気記録媒体用基板は中性の洗浄剤に沈み、良好に磁気記録媒体用基板を洗浄することができた。これにより、表面が洗浄な状態の磁気記録媒体用基板が得られた。
【0167】
また、実施例15に係る磁気記録媒体用基板の比重は純水よりも大きいため、磁気記録媒体用基板は純水に沈み、良好に磁気記録媒体用基板を洗浄することができた。これにより、表面が洗浄な状態の磁気記録媒体用基板が得られた。
【0168】
以上のように、実施例13から実施例15によると、磁気記録媒体用基板の比重を洗浄剤の比重よりも大きくすることができるため、磁気記録媒体用基板を洗浄剤に沈めることができ、磁気記録媒体用基板を良好に洗浄することが可能となる。
【0169】
なお、この発明は、上記実施例13から実施例15に挙げた樹脂に限定されず、比重が洗浄剤よりも大きい樹脂を用いることで、この発明の効果を奏することができる。
【0170】
(比較例)
次に、上記実施例に対する比較例について説明する。この比較例に係る樹脂製基板では、実施例1と同じ樹脂(ポリカーボネイト樹脂)を用い、寸法も、実施例1に係る樹脂製基板の寸法と同じにした。
【0171】
(比重)
この比較例では、射出成形により製造された磁気記録媒体用基板における比重を測定した。この比較例では、比重は1.10になった。
【0172】
(評価)
比較例に係る磁気記録媒体用基板を、実施例1の洗浄剤と純水に浸漬させて洗浄した。比較例に係る磁気記録媒体用基板は、比重が1.10であるため、洗浄剤や純水の比重との差が小さくなる。その結果、洗浄工程において洗浄キャリアーから浮いてしまい、磁気記録媒体用基板を良好に洗浄することが困難になる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円板状の形状を有する樹脂製の母材を基板とし、前記基板の比重が、洗浄工程で用いられる洗浄剤の比重よりも大きいことを特徴とする磁気記録媒体用基板。
【請求項2】
前記基板の比重が1.2以上であることを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体用基板。
【請求項3】
前記基板に無機材料のフィラー材を含有させて、前記基板の比重を1.2以上としたことを特徴とする請求項2に記載の磁気記録媒体用基板。
【請求項4】
前記フィラー材は、酸化物、炭化物、窒化物の中から選ばれる一つ若しくは二つ以上の組み合わせであることを特徴とする請求項3に記載の磁気記録媒体用基板。
【請求項5】
前記フィラー材は、金属酸化物、金属炭化物、金属窒化物の中から選ばれる一つ若しくは二つ以上の組み合わせであることを特徴とする請求項3に記載の磁気記録媒体用基板。
【請求項6】
前記フィラー材は、単結晶体、多結晶体、鉱物、セラミックス、ガラスの中から選ばれる一つ若しくは二つ以上の組み合わせであることを特徴とする請求項3に記載の磁気記録媒体用基板。
【請求項7】
前記フィラー材が前記基板の全体に占める体積の割合が、5[%]以上であることを特徴とする請求項3から請求項6のいずれかに記載の磁気記録媒体用基板。
【請求項8】
前記基板の表面に被覆層を形成して、前記基板の比重を1.2以上としたことを特徴とする請求項2に記載の磁気記録媒体用基板。
【請求項9】
前記被覆層は非磁性の金属層、金属酸化物、金属炭化物、金属窒化物の中から選ばれる一つ若しくは二つ以上の組み合わせであることを特徴とする請求項8に記載の磁気記録媒体用基板。
【請求項10】
前記被覆層はNi合金層であることを特徴とする請求項8に記載の磁気記録媒体用基板。

【公開番号】特開2008−90988(P2008−90988A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−273895(P2006−273895)
【出願日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】