説明

磁気記録媒体

【課題】 磁性粒子の分散性、充填性、耐摩耗性、耐熱性等が良好な結合剤を使用することにより走行耐久性、電磁変換特性などが優れた磁気記録媒体を提供する。
【解決手段】 磁性粒子と結合剤からなる磁性層を有する磁気記録媒体において、結合剤として不飽和結合基を有するハイパーブランチポリマーを用いたことを特徴とする磁気記録媒体に関する。好ましくは該不飽和結合基がハイパーブランチポリマーの末端に導入されていることを特徴とする磁気記録媒体に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は優れた特性を有する結合剤を用いることにより得られる磁気テープ、磁気ディスク等の磁気記録媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
汎用的磁気記録材料である磁気テープ、フレキシブルディスクは、長軸1μm以下の針状磁性粒子を分散剤、潤滑剤、帯電防止剤等の添加剤とともに結合剤溶液に分散させて磁性塗料をつくり、これをポリエチレンテレフタレートフィルムに塗布して作られている。
【0003】
磁性層の結合剤に要求される特性としては、磁性粒子の分散性、充填性、配向性、磁性層の耐久性、耐摩耗性、耐熱性、非磁性支持体との接着性等が挙げられ、結合剤は非常に重要な役割を果たしている。磁性層の結合剤としては従来アジペートタイプあるいはポリカプロラクトンタイプのポリウレタン樹脂とニトロセルロースあるいは塩化ビニル系共重合体との混合系が主に用いられている。
【0004】
塗布型磁気記録媒体における非磁性支持体上に設けた磁性層では耐摩耗性の向上、耐熱性の改良、接着性の改良、耐溶剤性の付与等の目的のために、現在多くの場合硬化剤を併用する二液タイプが用いられている。硬化剤としてはポリイソシアネート、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂等が知られている。特に反応性、作業性、性能面からポリイソシアネートが汎用的に使用されている。ポリイソシアネートを硬化剤として用いた反応は100℃以下の比較的マイルドな温度条件でも進行し、形成された磁性層や非磁性支持体がダメージを受けにくいという利点がある。硬化反応は通常50〜70℃で処理することにより行われる。しかしながら、反応の進行には比較的長時間が必要で、塗工された磁性層を硬化するためには上記温度条件下で1日以上エージングされるのが一般的である。
【0005】
一方、塗布型磁気記録媒体磁性層の別の硬化反応処理方法も知られており、従来から電子線、紫外線等の活性エネルギー線を照射する方法が採られている。こちらの方法はポリイソシアネート系硬化剤を配合するいわゆる熱硬化反応方式に比較し、短時間で、しかもより架橋密度の高い耐久性に優れた磁性層を形成させ易いという利点があり、従来から活性エネルギー線により硬化する性能を有する結合剤樹脂が種々提案されてきた。
【0006】
しかしこの様な電子線に代表される活性エネルギー線を照射する事で磁性層を硬化させる方法、いわゆるEB硬化方式にも設備面においては、EB硬化システムそのものの設備費が高価であるという欠点があった。また優れた硬化塗膜物性を得ようと、結合剤樹脂においては直鎖状の分子末端及び/または側鎖を変性し、不飽和結合を多量に導入する試みがなされてきた(例えば特許文献1、2参照)が、近年の磁気記録媒体における問題への対応が困難となってきた。
【0007】
一般に、磁気記録媒体では、S/N比(シグナル/ノイズ比)の向上、高記録密度化のために、磁性層の表面を平滑にすることや、より微粒子化した磁性粒子を磁性層中に高充填し、高配向することが必要とされ、これらのために磁性粒子の分散が良好な結合剤が求められている。磁性層の表面が平滑になればなる程、摩擦係数が高くなり、磁気テープの走行性、走行耐久性は悪くなる。そのため耐久性、耐摩耗性、耐熱性、非磁性支持体との接着性の良好な結合剤が求められている。
【0008】
最近では特に、より微粒子化した磁性粉、メタル磁性粉のような高抗磁力(Hc)の磁性粉を磁性層中に高充填し高配向することがなされているが、これらの磁性粉を従来知られた結合剤で分散することは困難になっている。分散不良は電磁変換特性の低下だけではなく、磁性層の空隙率の増加を伴い、空隙率の増加は磁性層の走行耐久性を悪化させる。
【0009】
EB硬化により磁性層を形成する方式を採用する磁気記録媒体においてもこの傾向は顕著であり、例えば上述の特許文献1や2に記載された樹脂を結合剤として、微粒子化した磁性粉を分散しようとしても、磁性塗料の溶液粘度が上昇してしまう。特に記録密度を高めるために用いられる最新の磁性粒子である微粒子メタルに対しては、上記結合剤では分散性能が低下するため、平滑な塗工面が形成しにくい等の問題が生じ、目的とする高記録密度の磁気記録媒体を得ることが困難であった。
【0010】
【特許文献1】特開昭59−84337(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開昭59−8126(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、磁性粒子の分散性、充填性、耐摩耗性、耐熱性等が良好な結合剤を使用することにより走行耐久性、電磁変換特性などが優れた磁気記録媒体を提供することにある。特に従来型EB硬化方式の結合剤樹脂の問題点であった、磁性塗料粘度上昇による塗工作業性の低下や微粒子メタル磁性粒子分散性不足が原因による、塗膜平滑性の悪化や電磁変換特性の不良を改良することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者等は上記課題について鋭意検討した結果、本発明に到達した。すなわち本発明は磁性粒子と結合剤からなる磁性層を有する磁気記録媒体において、結合剤として不飽和結合基を有するハイパーブランチポリマーを用いたことを特徴とする磁気記録媒体に関する。
また、本発明は支持体上に、磁性粒子と不飽和結合基を有するハイパーブランチポリマーを用いた結合剤からなる磁性塗料を塗布し、さらに活性エネルギー線を照射することにより磁性層を硬化する工程を有する磁気記録媒体の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の磁気記録媒体には,非磁性支持体上に設けられた磁性層の結合剤成分として末端基として不飽和結合基を有するハイパーブランチポリマーを用いる。ハイパーブランチポリマーは優れた磁性粉分散性を有し、かつ架橋密度の高い硬化塗膜が得られる。加えて磁性塗料粘度が低くなり、薄膜で平滑な塗工膜を形成させやすい。その結果、磁性層の結合剤としたとき磁性層の充填度が高く、耐摩耗性が良好でかつ表面平滑性の高い磁性塗膜が得られる。また、ハイパーブランチ骨格に脂肪族原料を用いる事で、更には末端基の一部に炭素数が10以上の炭化水素基を有する有機基を導入する事により、末端不飽和基が反応する際に生じる硬化収縮歪みを緩和させ、活性エネルギー線照射においてもカールの無い磁性層を形成させる事が出来る。また、分子末端に炭素数10以上の炭化水素基を有する有機基を導入する事で、同時に磁性塗料の分散安定性を更に向上させる事も可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は磁性粒子と結合剤からなる磁気記録媒体において、結合剤として不飽和結合基を有するハイパーブランチポリマーを用いたことを特徴とする。
【0015】
本来ハイパーブランチポリマーという用語はKimとWebsterが、繰り返し単位の規則性を有する多分岐ポリマーに対して名付けた言葉であり(Polym.Prepr.,29(1988)310参照)、1分子中に互いに反応出来る2種類の置換基を合計3個以上持つ化合物の自己縮合により合成される多分基高分子と定義される。本発明において述べるハイパーブランチポリマーは、上記KimとWebsterが提唱した用語に当てはまるものである。この様な多分岐ポリマーとしては従来、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリウレタン系、ポリエーテル系、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート系など、種々のタイプが合成されている。
【0016】
これらハイパーブランチポリマーの樹状に伸びた分子末端には多量の官能基が密集して存在している構造を採っており、これら反応性官能基を利用して種々の機能性官能基を多量にかつ密に導入する事が可能である。
【0017】
本発明に用いるハイパーブランチポリマーの場合、分子末端基に不飽和結合基を導入することが好ましい。分子末端に導入することにより活性エネルギー線硬化機能を高めることが出来る。ハイパーブランチ構造により形成される高架橋構造は耐久性に優れた硬化磁性塗膜を形成させる。電子線に代表される活性エネルギー線硬化方式の場合、瞬時にして高効率に硬化反応が進行し、架橋密度の高い硬化反応塗膜が形成される。
【0018】
本発明に用いるハイパーブランチポリマーは炭素数10以上の炭化水素基を有する有機基が付加していることが好ましい。電子線に代表される活性エネルギー線硬化方式の場合、一般的に引き起こされる硬化反応収縮現象が効果的に解消されるからである。
【0019】
同時に分子末端に無機粒子表面に対して吸着性を有する極性基を多量に導入する事により、従来直鎖状高分子の側鎖或いは末端に極性基を導入した構造の従来型結合剤樹脂に比較し、微粒子メタル磁性粉の優れた分散性が発現する。加えて磁気塗料粘度が低く、取扱い作業性に優れると共に、薄膜で表面平滑性に優れ塗工膜を形成させるために適したレオロジー特性を備える事となる。
【0020】
上記無機粒子表面に対して吸着性を有する極性基としては、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、スルホン酸金属塩基、ホスホン酸金属塩基、ホスフィン酸金属塩基等、種々極性基が挙げられ、これらの極性基の2種以上を同時に分子末端に共存させても良い。これらの内、水酸基単独或いは水酸基と少量の水酸基以外の上記極性基の組み合わせが好ましい。
【0021】
本発明で言うハイパーブランチポリマーはその構造において特に限定されないがABX型化合物の重縮合反応或いは重付加反応により得られるものが好ましい。ここでAとBは異なる官能基を有する有機基を示し、ABX型化合物とは一分子中に2種の異なる官能基a、bを併せ持った化合物を意味するものである。これら化合物は分子内縮合、分子内付加はしないが官能基aと官能基bは互いに化学的に縮合反応、付加反応を起こさせる事が可能な官能基である。これら官能基a、bの組み合わせとしては水酸基とカルボキシル基又はカルボキシレート基、アミノ基とカルボキシル基、ハロゲン化アルキル基とフェノール性水酸基、アセトキシ基とカルボキシル基、アセチル基と水酸基、イソシアネート基と水酸基等が挙げられ、反応工程の簡便さ、反応制御の面からカルボキシル基或いはその誘導体と水酸基或いはその誘導体の組み合わせが好ましい。
【0022】
ABX型化合物の具体的な例としては2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、ジフェノール酸、5−(2−ヒドロキシエトキシ)イソフタル酸、5−アセトキシイソフタル酸、3,5−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)安息香酸、3,5−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)安息香酸メチルエステル、4,4−(4’−ヒドロキシフェニル)ペンタン酸、5−ヒドロキシシクロヘキサン−1,3−ジカルボン酸、1,3−ジヒドロキシ−5−カルボキシシクロヘキサン、5−(2−ヒドロキシエトキシ)シクロヘキサン−1,3−ジカルボン酸、1,3−(2−ヒドロキシエトキシ)−5−カルボキシシクロヘキサン、5−(ブロモメチル)−1,3−ジヒドロキシベンゼン、3,5−ジアミノ安息香酸、フェノール−3,5−ジグリシジルエーテル、イソホロンジイソシアネートとジイソプロパノールアミンとの1対1反応生成物、イソホロンジイソシアネートとジエタノールアミンの1対1反応生成物、3,5−ビス(4−アミノフェノキシ)安息香酸等が挙げられる。
【0023】
これらの内、反応によりエステル結合が生成するタイプは得られたハイパーブランチポリマーの耐熱性、他樹脂成分や添加物成分との相溶性の観点から特に好ましく、それら化合物の構造を表す一般式は化学式1で表される。
化学式1) KR’[(R)mL]n
R:炭素数20未満の2価の有機基
R’:炭素数20未満の(b+1)価の有機基、或いはR”N(R”:炭素数20未満の2価の有機基)で示される基
K、L:互いに異なるエステル結合形成性官能基
m:0又は1
n:2以上の整数
【0024】
上記化学式1で示される化合物としては2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、ジフェノール酸、5−(2ヒドロキシエトキシ)イソフタル酸、5−アセトキシイソフタル酸、3,5−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)安息香酸、3,5−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)安息香酸メチルエステル、4,4−(4’−ヒドロキシフェニル)ペンタン酸、5−ヒドロキシシクロヘキサン−1,3−ジカルボン酸、1,3−ジヒドロキシ−5−カルボキシシクロヘキサン、5−(2−ヒドロキシエトキシ)シクロヘキサン−1,3−ジカルボン酸、1,3−(2−ヒドロキシエトキシ)−5−カルボキシシクロヘキサン、5−(ブロモメチル)−1,3−ジヒドロキシベンゼン、N,N−ビス(メチルプロピオネート)モノエタノールアミン、N−(メチルプロピオネート)ジエタノールアミン、N,N−ビス(メチルプロピオネート)−2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルアミン等が挙げられるが、これら原料化合物としての汎用性及び重合反応工程の簡便さからは、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸が好ましい。これら脂肪族系原料から得られるハイパーブランチポリマー骨格は、柔軟性に富み、活性エネルギー線照射により硬化網目構造が形成される際、不飽和結合基の反応に伴う硬化収縮による塗膜歪みを緩和してくれる。
【0025】
本発明の結合剤樹脂として用いられるハイパーブランチポリマーの合成方法は、例えば第1段階で上記KR’[(R)mL]n型化合物を縮合させ、末端に多量の水酸基或いはカルボンキシル基、或いはこれらの誘導体官能基を有するハイパーブランチポリマーを形成した後、第2段階でこれら分子末端の官能基に不飽和結合基、炭素数10以上の炭化水素基または極性基を有した置換基を付加させて得られる。
【0026】
上記第1段階の反応は上記KR’[(R)mL]n型化合物を単独で縮合反応触媒の存在下に反応させても良いし、多価ヒドロキシ化合物や多価カルボン酸化合物、或いはそれらを合わせ持つ化合物をハイパーブランチポリマー分子の分岐点として用いても良い。上記多価ヒドロキシ化合物としてはポリエステル樹脂原料として汎用の種々グリコール化合物やトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等の3官能以上の水酸基含有化合物が挙げられる。また、多価カルボン酸化合物としては同様にポリエステル樹脂原料として汎用の種々二塩基酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸等の3官能以上のカルボン酸化合物が挙げられる。更には水酸基とカルボキシル基を合わせ持った化合物例として、グリコール酸、ヒドロキシピバリン酸、3−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸、乳酸、グリセリン酸、リンゴ酸、クエン酸等が挙げられる。
【0027】
本発明の結合剤樹脂として用いられるハイパーブランチポリマー分子の分岐点となる化合物としては上記以外に、二塩基酸成分とグリコール成分の縮合反応で得られる線状のポリエステルオリゴマーやこれらに3官能以上の多価カルボン酸や多価ヒドロキシ化合物を共重合した分岐型ポリエステルオリゴマーを用いても良い。
【0028】
上記分岐点となりうる線状、或いは分岐型ポリエステルオリゴマーの構成原料としては汎用の種々二塩基酸やグリコール化合物、或いは3官能以上の多価カルボン酸や多価アルコール化合物を用いる事ができる。二塩基酸化合物としては、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン酸等の脂肪族系二塩基酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、1,2−ナフタレンカルボン酸、1,6−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族系ニ塩基酸、或いは1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、4−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族二塩基酸が挙げられる。また上記以外の二塩基酸として5−スルホイソフタル酸ナトリウムの様なスルホン酸金属塩を有した二塩基酸を挙げることができる。
【0029】
また、グリコール成分としてはエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、2−メチル−1,3−プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピル−2’,2’−ジメチル−3−ヒドロキシプロパネート、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、3−エチル−1,5−ペンタンジオール、3−プロピル−1,5−ペンタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、3−オクチル−1,5−ペンタンジオール等の脂肪族系ジオール類や1,3−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(ヒドロキシエチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(ヒドロキシプロピル)シクロヘキサン、1,4−ビス(ヒドロキシメトキシ)シクロヘキサン、1,4−ビス(ヒドロキシエトキシ)シクロヘキサン、2,2ビス(4−ヒドロキシメトキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4ヒドロキシエトキシシクロヘキシル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、3(4),8(9)−トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノール等の脂環族系グリコール類、或いはビスフェノールAのエチレンオキサイドやプロピレンオキサイド付加物等の芳香族系グリコール類が挙げられる。
【0030】
更に上記3官能以上の多価カルボン酸や多価アルコール化合物としては、トリメリット酸やピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0031】
上記第1段階の反応は縮合反応で生成する縮合水をトルエンやキシレンにより共沸脱水させる事で、或いは反応系内に不活性ガスを吹き込み不活性ガスと共に縮合反応で生成した水やモノアルコールを反応系外に吹き出す又は減圧下に溜去することで進められる。反応に用いられる触媒としては通常のポリエステル樹脂重合触媒同様、チタン系、錫系、アンチモン系、亜鉛系、ゲルマニウム系等の種々金属化合物やp−トルエンスルホン酸や硫酸等の強酸化合物を用いることが出来る。
【0032】
次いで第2段階の反応で不飽和基を有した有機基を付加させるための方法としてはアクリル酸、メタクリル酸又はそれらのメチルエステル誘導体等を上記第一段階反応で得られたハイパーブランチポリマー末端の水酸基に対して縮合付加させる方法、或いは無水マレイン酸の様な不飽和結合を有する無水酸化合物を塩基性触媒の存在下に開環付加させる方法、更には2−イソシアネートエチルアクリレートの様な1分子中にイソシアネート基と不飽和結合基を各々1個づつ有する化合物をウレタン反応により導入する事が出来る。
また、第一段階反応で得られたカルボキシル基或いはアミノ基末端のハイパーブランチポリマーに対しては、グリシジルメタクリレート等の1分子中にグリシジル基と不飽和基を各々1個ずつ有する化合物を触媒の存在下に付加させる事でも可能である。
【0033】
ハイパーブランチポリマーの分子末端に炭素数10以上の炭化水素基を導入する方法としては炭素数10以上の炭化水素基を有した有機基を付加させるための方法としてはデシルアルコール、ウンデシルアルコール、ドデシルアルコール等の長鎖アルキル基を有するモノアルコ−ル類や、ドデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、不飽和基を有するオレイン酸等の長鎖アルキル、アルケニル基を有するモノカルボン酸類又はそれらのメチルエステル誘導体を第1段階の反応で得られたハイパーブランチポリマーの末端に存在するカルボキシル基や水酸基に縮合付加させる方法が挙げられる。
【0034】
或いは、ハイパーブランチポリマーの末端水酸基に対し、長鎖炭化水素基を有するカルボン酸無水物化合物を塩基性触媒存在下に開環付加させる、更にはハイパーブランチポリマーの末端カルボキシル基に対しグリシジル基を有する化合物をトリフェニルホスフィン等の適当な触媒の存在下に反応付加させる事も出来る。これら化合物の具体例として、長鎖炭化水素基を有する無水酸化合物としては、ドデセニル琥珀酸無水物やオクテニル琥珀酸無水物等の無水酸化合物が挙げられ、グリシジル基を有する化合物としては、フェニルグリシジルエーテル等の種々アリールグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールモノグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールモノグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールモノグリシジルエーテル、その他種々アルキル、アルケニル、アルキニルグリシジルエーテル等のモノグリシジルエーテル類を挙げる事が出来る。
【0035】
上記ハイパーブランチポリマーの末端基に導入される有機基は炭素数が10以上の立体構造的にバルキーな炭化水素基を有している事で、同時に末端基に存在する不飽和結合基が反応した際の架橋密度を適度なレベルに調整し、硬化収縮を抑制させる事が出来る。同時に微粒子メタル磁性粉分散塗料の分散状態の安定化がより向上する効果が得られる。炭素数10未満の炭化水素基では十分な効果が発現されないことがある。この効果はハイパーブランチポリマー末端に存在するバルキーな置換基が立体障害となり、分散したメタル磁性粉粒子が再凝集しょうとする現象を抑制しているものと考えられる。炭素数が10以上の炭化水素基は直鎖状であっても分岐状であっても良い。また、一部に不飽和結合を有するもの、環状になっているもの、芳香環となっているものでも、もちろん差し支えない。
【0036】
ハイパーブランチポリマー分子末端へ、水酸基以外の極性基を導入する方法としては例えばオルソ、メタ、パラ−スルホニル安息香酸ナトリウムを上記第1段階の反応で得られた水酸基末端を有するハイパーブランチポリマーに脱水縮合させる事で、スルホン酸金属塩基を分子末端に導入する事が可能である。また、上述した炭素数10以上の炭化水素基を有する酸無水物化合物をハイパーブランチポリマーの末端水酸基に付加させると、反応した酸無水物化合物と等モル量のカルボキシル基が形成される。或いはモノエタノールアミンやアミノ安息香酸等を同様の水酸基に脱水縮合させるとアミノ基を分子末端に導入する事が出来る。
【0037】
ハイパーブランチポリマーの数平均分子量は500〜40,000が望ましい。好ましくは1,000〜40,000であり、より好ましくは2,000〜20,000であり、最も好ましくは2,000〜10,000である。数平均分子量500未満では硬化剤と未反応の残留オリゴマーの影響で塗膜耐久性が不足することがあり、一方、40,000を越えると、塗料粘度が著しく増大するか或いは汎用溶剤への溶解性が低下し、平滑な塗膜表面を得る事が困難となるおそれがある。
【0038】
本発明においては、ハイパーブランチポリマーに可撓性の調節、耐寒性・耐熱性の向上等の目的のために他の樹脂を添加するか、および/または架橋剤を混合することが望ましい。他の樹脂としては、セルロース系樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリビニルブチラール、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体、塩化ビニル等やこれら樹脂への不飽和結合導入変性体が挙げられる。一方、架橋剤としてはポリイソシアネート化合物、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、酸無水物、多価アクリレート、多価メタクリレート化合物等があり、特にこれらの中では活性エネルギー線により本発明の結合剤樹脂と架橋反応を起こす多価アクリレート、多価メタクリレート化合物が好ましい。これら化合物の具体例としてはペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート等が挙げられる。
【0039】
本発明の磁気記録媒体の形状はテープ、ディスク、シート、カードなどが挙げられる。
【0040】
本発明の磁気記録媒体の層構成は、磁性層または磁性層と下層塗布層を支持体上に、支持体下にバックコート層を設けた物であることが好ましい。支持体上部の層構造としては磁性層単層、磁性層重層、磁性層と非磁性層との重層が挙げられる。本発明の磁気記録媒体は磁性粒子の分散性、表面平滑性、耐摩耗性などが優れるため、高記録密度化に適した磁性層と非磁性層との重層構造を有する磁気記録媒体に適する。本発明におけるハイパーブランチポリマーは磁性層の結合剤以外にも非磁性層、バックコート層の結合剤にも適している。
【0041】
本発明の磁気記録媒体の磁性層に使用される磁性粒子としては、γ−Fe23、γ−Fe23とFe34の混晶、コバルトを被着したγ−Fe23 またはFe24、バリウムフェライト等の強磁性酸化物、Fe−Co,Fe−Co−Ni等の強磁性合金粉末等を挙げることができる。なお、非磁性層に使用される粒子としては酸化鉄および酸化鉄とカーボンブラック、バックコート層に使用される粒子としてはカーボンブラックを挙げることができる。
【0042】
磁性粒子としては高記録密度化の点でメタル粉であることが好ましい。メタル粉の長軸長は200nm以下であることが好ましい。下限は1nm以上であることが好ましい。1nm未満であるとメタル粉が極めて微細となるため、本発明のポリエステル樹脂では分散性が不足するおそれがあり、200nmを超えると磁気記録媒体の記録密度の点で性能不十分となる場合があるからである。なお、ここで言う長軸長は楕円上の磁性粒子の長い部分をさすものであり、これを顕微鏡観察し、その任意の測定結果100サンプルを平均化して求めたものである。
【0043】
本発明の磁気記録媒体の磁性層にはその他必要に応じてジブチルフタレート、トリフェニルホスフェートのような可塑剤、ジオクチルナトリウムスルホサクシネート、t−ブチルフェノールポリエチレンエーテル、エチルナフタレンスルホン酸ソーダ、ジラウリルサクシネート、ステアリン酸亜鉛、大豆油レシチン、シリコーンオイルのような潤滑剤や種々の帯電防止剤を添加することもできる。
【実施例】
【0044】
以下実施例により本発明を具体的に例示する。実施例中に単に部とあるのは重量部を示す。樹脂の分析、評価は次の方法により実施した。
【0045】
(分子量および分子量分布)
テトラヒドロフランを溶離液としたウォーターズ社製ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)150cを用いて、カラム温度30℃、流量1ml/分にてGPC測定を行なった結果から計算して、ポリスチレン換算の数平均分子量を得た。ただしカラムは昭和電工(株)shodex KF−802、804、806を用いた。
【0046】
(組成分析)
重クロロホルム溶媒中でヴァリアン社製核磁気共鳴分析計(NMR)ジェミニ−200を用いて、1H−NMR分析を行なってその積分比より決定した。
【0047】
(ガラス転移温度)
サンプル5mgをアルミニウム製サンプルパンに入れて密封し、セイコーインスツルメンツ(株)製示差走査熱量分析計DSC−220を用いて、200℃まで、昇温速度20℃/分にて測定し、ガラス転移温度以下のベースラインの延長線と遷移部における最大傾斜を示す接線との交点の温度で求めた。
【0048】
(酸価)
測定用サンプルとして、樹脂固形分重量約0.5g分を採取し、20mlのクロロホルムに溶解させた。次いでフェノールフタレインを反応指示薬として、0.1N−KOHのエタノール溶液を用いて滴定した。
【0049】
以下、表中及び本文中で用いる略号を示す。
PETH:ペンタエリスリトール
TMP:トリメチロールプロパン
MAN:無水マレイン酸
DMBA:ジメチロールブタン酸
DMPA:ジメチロールプロピオン酸
HEA:2−ヒドロキシエチルアクリレート
PETA:ペンタエリスリトールとアクリル酸の縮合物
MDI:4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート
HBAG:4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル
2IEA:2−イソシアネートエチルアクリレート
T:テレフタル酸
I:イソフタル酸
O:オルソフタル酸
SIPA:5−ナトリウムスルホイソフタル酸
IA:イタコン酸
EG:エチレングリコール
NPG:ネオペンチルグリコール
CHDM:シクロヘキサンジメタノール
PGE:フェニルグリシジルエーテル
DDSA:ドデセニルコハク酸
VC:塩化ビニル系共重合体
共重合組成:塩化ビニル55モル%、酢酸ビニル39モル%、スルホニルスチレン
のナトリウム塩1モル%、ヒドロキシエチルアクリレート5モル%
MOI:2−イソシアネートエチルメタクリレート(昭和電工製)
MEK:メチルエチルケトン
【0050】
結合剤樹脂(A)の合成
温度計、攪拌機、リービッヒ冷却管、窒素ガス吹き込み管を具備した反応容器に、ペンタエリスリトール7部及びジメチロールブタン酸207部を投入し、触媒としてp−トルエンスルホン酸0.4部を添加した。反応容器に窒素ガスを注入しつつ常圧下140℃で約4時間反応させ、生成する縮合水を系外に溜去した。ついでトルエン400部、ドデセニル琥珀酸420部、及び反応触媒としてトリエチルアミン2部を反応容器に追加投入し、N2雰囲気下80℃で4時間 反応させた。この時、得られた生成物固形分の酸価は2600eq/tonであった。引き続き、4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル310部を追加投入し、110℃で8時間反応させた。得られた生成物固形分の酸価が66eq/tonに低下している事を確認し、メチルエチルケトンを用いて希釈し、固形分濃度30wt%の溶液とした。得られた結合剤樹脂(A)の分子量、酸価、ガラス転移温度を測定し表1に示した。
【0051】
結合剤樹脂(B)の合成
温度計、攪拌機、リービッヒ冷却管、窒素ガス吹き込み管を具備した反応容器に、トリメチロールプロパン7部及びジメチロールプロピオン酸63部を投入し、触媒としてp−トルエンスルホン酸0.3部を添加した。反応容器に窒素ガスを注入しつつ常圧下140℃で約4時間反応させ、生成する縮合水を系外に溜去した。ついでトルエン200部、及びドデセニル琥珀酸80部及び無水フマル酸30部、反応触媒としてトリエチルアミン1部を反応容器に追加投入し、N2雰囲気下80℃で4時間反応させた。この時、生成物固形分の酸価は3450eq/tonであった。引き続きフェニルグリシジルエーテル84部を添加し、同温度で更に6時間反応させ、メチルエチルケトンを用いて希釈し、固形分濃度30wt%の溶液とした。得られた結合剤樹脂(B)の分子量、酸価、ガラス転移温度を測定し表1に示した。
【0052】
結合剤樹脂(C)の合成
温度計、攪拌機、リービッヒ冷却管、窒素ガス吹き込み管を具備した反応容器に、トリメチロールプロパン7部及びジメチロールプロピオン酸147部を投入し、触媒としてp−トルエンスルホン酸0.3部を添加した。反応容器に窒素ガスを注入しつつ常圧下140℃で約4時間反応させ、生成する縮合水を系外に溜去した。ついでトルエン200部、及びドデセニル琥珀酸166部及び反応触媒としてトリエチルアミン2部を反応容器に追加投入し、N2雰囲気下80℃で4時間 反応させた。得られた生成物固形分の酸価は2020eq/tonであった。引き続きフェニルグリシジルエーテル90部を添加し、110度で更に8時間反応させた。この時得られた生成物固形分の酸価は32eq/tonであった。次いで2−イソシアネートエチルアクリレート120部を添加し、80℃で6時間反応させた後、メチルエチルケトンを用いて希釈し、固形分濃度30wt%の溶液とした。得られた結合剤樹脂(C)の分子量、酸価、ガラス転移温度を測定し表1に示した。
【0053】
結合剤樹脂(D)の合成
温度計、攪拌機、リービッヒ冷却管、窒素ガス吹き込み管を具備した反応容器に、トリメチロールプロパン7部及びジメチロールプロピオン酸63部を投入し、触媒としてp−トルエンスルホン酸0.3部を添加した。反応容器に窒素ガスを注入しつつ常圧下140℃で約4時間反応させ、生成する縮合水を系外に溜去した。ついでトルエン200部、及び2−イソシアネートエチルアクリレート44部及び反応触媒としてジブチル錫ラウレート0.1部を反応容器に追加投入し、N2雰囲気下80℃で6時間反応させた後、メチルエチルケトンを用いて希釈し、固形分濃度30wt%の溶液とした。得られた結合剤樹脂(D)の分子量、酸価、ガラス転移温度を測定し表1に示した。
【0054】
結合剤樹脂(E)の合成
温度計、攪拌機、リービッヒ冷却管、窒素ガス吹き込み管を具備した反応容器に、ジメチロールブタン酸86部を投入し、触媒としてp−トルエンスルホン酸0.3部を添加した。反応容器に窒素ガスを注入しつつ常圧下140℃で約4時間反応させ、生成する縮合水を系外に溜去した。ついでトルエン200部、及び2−イソシアネートエチルアクリレート94部及び反応触媒としてジブチル錫ラウレート0.1部を反応容器に追加投入し、N2雰囲気下80℃で6時間反応させた後、メチルエチルケトンを用いて希釈し、固形分濃度30wt%の溶液とした。得られた結合剤樹脂(D)の分子量、酸価、ガラス転移温度を測定し表1に示した。
【0055】
結合剤樹脂(F)の合成
温度計、攪拌機、リービッヒ冷却管を具備した反応容器にオルソフタル酸44部、イソフタル酸111部、5−ナトリウムスルホイソフタル酸9部、シクロヘキサンジメタノール38部、ネオペンチルグリコール140部、エチレングリコール15部、及び反応触媒としてテトラブチルチタネート0.1部を仕込み、170℃〜230℃で4時間反応させ、生成する縮合水を系外に溜去した。ついで240℃に昇温し、減圧下に20分同温度で重合反応を行い、反応を終了させた。得られたスルホン酸ナトリウム基含有ポリエステルジオールの数平均分子量は2400、酸価は8eq/tonであった。
温度計、攪拌機、コンデンサーを具備した反応容器に、上記ポリエステルジオール100部、トルエン60部、メチルエチルケトン60部を投入し、均一溶解した。次いで2−ヒドロキシエチルアクリレート2.5部、反応触媒としてジブチル錫ラウレート0.02 部を添加し、80℃で3時間反応させた。引き続き、MDI7.5部添加し、同温度で5時間反応させ、メチルエチルケトンを用いて希釈し、固形分濃度30wt%の溶液とした。得られた結合剤樹脂(F)の分子量、酸価、ガラス転移温度を測定し表1に示した。
【0056】
結合剤樹脂(G)の合成
温度計、攪拌機、リービッヒ冷却管を具備した反応容器にテレフタル酸73部、イソフタル酸71部、イタコン酸13部、5スルホイソフタル酸9部、ネオペンチルグリコール72部、エチレングリコール81部、及び反応触媒としてテトラブチルチタネート0.1部、安定剤としてフェノチアジン0.04部を仕込み、170℃〜250℃で4時間反応させ、生成する縮合水を系外に溜去した。ついで250℃、減圧下に20分間重合反応を行い、反応を終了させた。得られたスルホン酸ナトリウム基含有不飽和ポリエステルジオールの数平均分子量は2200、酸価は5eq/tonであった。
温度計、攪拌機、コンデンサーを具備した反応容器に、上記ポリエステルジオール100部、トルエン60部、メチルエチルケトン60部を投入し、均一溶解した。次いで2−ヒドロキシエチルアクリレート2.6部、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート14部、及び反応触媒としてジブチル錫ラウレート0.01部添加し、60℃で6時間反応させ、メチルエチルケトンを用いて希釈し、固形分濃度30wt%の溶液とした。得られた結合剤樹脂(G)の分子量、酸価、ガラス転移温度を測定し表1に示した。
【0057】
結合剤樹脂(H)の合成
温度計、攪拌機、コンデンサーを具備した反応容器に塩化ビニル系共重合体(VC)100部をメチルエチルケトン245部に溶解させ、ついでフェノチアジン、ハイドロキノンをそれぞれ、下記アクリル化合物に対して200ppm混合した。その後、2−イソシアネートエチルメタクリレート(MOI)5部、ウレタン化触媒のジ−n−ブチルチンジラウレートを上記イソシアネート化合物に対して1000ppm混合し、反応温度60℃で8時間攪拌を行った。得られた結合剤樹脂(H)の分子量、酸価、ガラス転移温度を測定し表1に示した。
【0058】
【表1】

【0059】
【表2】

【0060】
上記に記載したポリエステル樹脂を用いて磁気塗料を作成し、その塗料安定性を確認した。塗料安定性の評価は調製した磁気塗料を10時間静置させた後、ポリエチレンテレフタラートフィルム上に塗布し、静置前に塗布して得られた磁性塗膜と比較して性能変化の少ない場合、塗料安定性が良好であると判断した。
【0061】
また、下記の手順で磁性塗膜を作成し、特性評価を行った。結合剤樹脂の磁性粒子分散性能は作製した磁性塗膜の表面光沢、及び表面粗さを触針接触表面粗さ計を用いて測定し評価した。電磁変換特性については角形比を調べることによって判断した。電子線硬化性能に関しては、塗布乾燥した磁性塗膜を電子線照射し、得られた硬化磁性塗膜の耐溶剤性能を比較評価した。以下具体例について説明する。
【0062】
実施例1〜7
下記の配合割合の組成物をボールミルにいれて24時間分散して磁性塗料を得た。次いで磁気塗料を厚み15μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に、乾燥後の厚みが4μmになるように塗布し5000ガウスの磁場をかけながら乾燥した。得られた磁気塗膜を電子線照射装置で5Mrad照射し、表面光沢、表面粗さ、及び角形比を測定した。表面光沢はグロスメーターを用い、表面粗さは触針接触表面粗さ計を用いて測定し評価した。角形比は振動試料型磁力計を使用し、垂直方向の角形比を測定した。電子線硬化性能に関しては、塗布乾燥した磁性塗膜を電子線照射装置により、5Mrad照射し、得られた硬化磁性塗膜の耐溶剤性能を比較評価した。耐溶剤性能はシクロヘキサノンで湿らせた綿棒を用いて硬化磁性塗膜表面を擦り、基材PETフィルムが現れるまでの擦り回数で評価した。また、硬化収縮の程度を電子線照射処理後磁性塗膜のカール状態(磁性層塗布した基材フィルムが下向きに凸の状態に湾曲する)を目視で観察し、以下のような判定で評価した。
カールが殆ど起こっていない状態・・・・・・・・・○
カールがやや起こっている状態・・・・・・・・・・×
【0063】
更に上記評価に供した磁気塗料を密閉状態で10時間静置した後、同上の方法によりポリエチレンテレフタラートフィルム上に塗布し、電子線照射する事で得られた磁性塗膜の表面光沢、表面粗さ、角形比を静置する前の結果と比較した。結果を表3に示す。
【0064】
配合
合成例で得られた結合剤樹脂各(A)〜(H)の溶液 (30%溶液) 8部
メタル粉
(長軸長0.07μm、BET51m2/g、抗磁力(Hc)2400Oe) 12部
シクロヘキサノン 5部
トルエン 9部
メチルエチルケトン 14部
【0065】
比較例1〜2
実施例1〜7と同様の方法で、結合剤樹脂として各々(F)、(G)のみを用いた。結果を表3に示す。
【0066】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0067】
不飽和結合を有するハイパーブランチポリマーを磁性粒子の結合剤として用いることにより、本発明の磁気記録媒体は電磁変換特性に優れると共に、活性エネルギー線照射により、耐久性に優れた磁性硬化塗膜を形成するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性粒子と結合剤からなる磁性層および非磁性粒子と結合剤からなる非磁性層の重層構造を有する磁気記録媒体において、非磁性層の結合剤として不飽和結合基を有するハイパーブランチポリマーを用いたことを特徴とする磁気記録媒体。
【請求項2】
不飽和結合基がハイパーブランチポリマーの末端に導入されていることを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体。
【請求項3】
ハイパーブランチポリマーが、ABX型の分子の重縮合物により形成された請求項1または2に記載の磁気記録媒体(ただしA、Bは互いに異なる官能基a、bを有する有機基であり、官能基a、bは互いに化学的に縮合反応、付加反応を起こす事が可能である、Xは2以上の整数を示す)。
【請求項4】
ハイパーブランチポリマーが、1分子中に2個の水酸基と1個のカルボキシル基を有する化合物を縮合したポリエステル樹脂である請求項1または2に記載の磁気記録媒体。
【請求項5】
ハイパーブランチポリマーが、下記化学式1)で表される分子の重縮合物により形成された請求項1または2に記載の磁気記録媒体。
化学式1) KR’[(R)mL]n
R:炭素数20未満の2価の有機基
R’:炭素数20未満の(n+1)価の有機基、或いはR”N(R”:炭素数20未満の2価の有機基)で示される基
K、L:互いに異なるエステル結合形成性官能基
m:0又は1
n:2以上の整数
【請求項6】
ハイパーブランチポリマーの末端基の一部に、炭素数10以上の炭化水素基を有する有機基が付加している事を特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の磁気記録媒体。
【請求項7】
磁性粒子がメタル粉である請求項1〜6のいずれかに記載の磁気記録媒体。
【請求項8】
メタル粉の長軸長が200nm以下である請求項7に記載の磁気記録媒体。
【請求項9】
支持体上に、磁性粒子と不飽和結合基を有するハイパーブランチポリマーを用いた結合剤からなる磁性塗料を塗布し、さらに活性エネルギー線を照射することにより磁性層を硬化する工程を有する磁気記録媒体の製造方法。

【公開番号】特開2006−172682(P2006−172682A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−149498(P2005−149498)
【出願日】平成17年5月23日(2005.5.23)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】