説明

磁気記録媒体

【課題】 電磁変換特性に優れるとともに、磁性層表面上の突起を最小限に抑えるとともに、走行異常、ヘッド汚れによるドロップアウトを有効に低減することのできる磁気記録媒体を提供する。
【解決手段】 非磁性支持体の一方の面側に磁性層を有する磁気記録媒体であって、前記磁性層が、粒子直径5〜50nmで希土類−遷移金属−半金属の単結晶からなる磁性粒子と結合剤とを含有し、前記非磁性支持体と前記磁性層との間に平滑化層を少なくとも1層設けたことを特徴とする磁気記録媒体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも強磁性微粉末と結合剤とを分散させてなる磁性層を有する塗布型の磁気記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、磁気記録の分野では、従来のアナログ記録から記録の劣化の少ないデジタル記録の実用化が進展している。デジタル記録に使用される記録再生装置および磁気記録媒体は、高画質・高音質であることが要求されるとともに、小型化・省スペース化のニーズも高まっている。しかし、一般にデジタル記録ではアナログ記録よりも多くの信号記録が必要とされる。このため、デジタル記録に使用される磁気記録媒体には、より一層の高密度記録が要求される。
上記高密度記録を達成するためには、記録信号の短波長化や記録軌跡の狭トラック化が不可欠である。したがって、これまでに強磁性粉末の微粒子化、高充填化のための技術や磁気記録媒体表面の平滑化のための技術に加えて、体積密度を向上させる磁気記録媒体の薄層化のための技術も開発されている。
【0003】
上記磁気記録媒体の薄層化のための技術として、これまでに非磁性支持体を薄くする方法、または非磁性層を薄くする方法が知られている。しかしながら、非磁性支持体を薄くする方法では、所定の厚さ以下になると非磁性支持体の耐久性が低下してしまうという問題があった。一方、非磁性層を薄くする方法では、磁性層が非磁性支持体の表面状態の影響を受けやすくなってしまうため、出力の低下、エラーレートの上昇、ドロップアウトの増加等の問題があった。
上記磁気記録媒体の薄層化における問題を解決するためには、非磁性支持体の耐久性を確保した状態で、非磁性支持体の表面状態の影響を抑える必要があった。そのような観点から、これまで非磁性支持体に含まれるフィラーを変更する方法や非磁性支持体の表面を平滑化する方法が採られていた。しかしながら、いずれの方法も非磁性支持体の特性を大きく変化させてしまうため有効な方法とはいえなかった。
【0004】
これまでに非磁性支持体と磁性層または非磁性支持体と非磁性層の間に下塗層を設けた磁気記録媒体が開発されている(例えば、特許文献1〜3参照。)。また、下塗層に、重合性バインダーと微粒子とを含む磁気記録媒体も提案されている(例えば、特許文献4及び5参照。)。このような磁気記録媒体であれば非磁性支持体の特性を変化させずに磁気記録媒体の薄層化を図ることは可能である。
しかしながら、これらの下塗層では、使用されているポリエステル系樹脂や放射線硬化型化合物のオリゴマー成分が磁性層表面に経時的に析出(マイグレーション)し、記録再生時のエラーの原因となる等の問題が指摘されており、非磁性支持体表面の影響を受けず、かつ記録再生装置内での貼付き等による走行異常、ヘッド汚れ等による磁気記録時におけるドロップアウトの増加を有効に防止できる磁気記録媒体の開発が要望されていた。
【0005】
一方、磁気記録媒体において、磁性粒子の粒子サイズを小さくする事は磁気記録密度を高くする上で必要である。たとえば,ビデオテープ、コンピューターテープ、ディスク等として広く用いられている磁気記録媒体では,強磁性体の重量が同じ場合,粒子サイズを小さくしていった方がノイズは下がる。
【0006】
磁性粒子の粒子サイズを小さくしていくと熱揺らぎのため、超常磁性となってしまい、磁気記録媒体に用いることは出来ない。そこで、FePt等の結晶磁気異方性が高い材料の研究が行われている。しかし、これらの磁性体は原料にPtを含有しており、高価なものである。
【0007】
FePtに匹敵する結晶磁気異方性を有する磁性材料としてSmCo、NdFeB、SmFeN等が存在する。これらを得るには、一般に500℃以上の熱処理を必要とする。高温で熱処理を行うために、融着し多結晶になったり、粗大粒子になったりするため、磁気記録媒体に用いるのは適していなかった。
【0008】
NdFeBは溶融金属急冷法により、5〜50nmのNdFeB結晶を含んで成る急冷薄帯を得、該急冷薄帯を機械的に砕いて、ボンド磁石等に用いられている。当該機械粉砕された磁性粒子のサイズはミクロンオーダーであり、磁気記録媒体に用いるには適していなかった。また、これらは5〜50nmのNdFeB結晶の結晶粒界にNd−Fe相が偏析したものであり、腐食されやすいという欠点も有していた。
【0009】
また、液相中で合成した後に、水素気流中加熱することで還元する方法も開示されている(例えば、特許文献6〜8参照。)。これらの方法では、均一な組成の粒子を作ることが困難であり、ナノサイズの粒子を合成後、加熱することから粒子が融着しやすいという課題を有していた。
【特許文献1】特公昭57−42890号公報、
【特許文献2】特公昭60−38767号公報
【特許文献3】特公平5−57647号公報等
【特許文献4】特公平7−31808号公報
【特許文献5】特開平9−293234号公報
【特許文献6】特開2001−181754号公報
【特許文献7】特開2002−50509号公報
【特許文献8】特開2002−121027号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は以上の従来の問題点に鑑みなされたものであり、以下の目的を達成することを課題とする。
すなわち、本発明の目的は、電磁変換特性に優れるとともに、非磁性支持体上のフィッシュアイ、特にこれまで制御が困難とされていたH1フィッシュアイ(高さ0.273μm以下)が非磁性支持体上に存在していても磁性層表面上の突起を最小限に抑えるとともに、平滑化層中の未架橋化合物に起因すると思われる記録再生装置中での貼付き等の走行異常、ヘッド汚れによるドロップアウトを有効に低減することのできる、MRヘッドを用いる磁気記録再生システムに有利な磁気記録媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するための手段は以下の通りである。
<1> 非磁性支持体の一方の面側に磁性層を有する磁気記録媒体であって、前記磁性層が、粒子直径5〜50nmで希土類−遷移金属−半金属の単結晶からなる磁性粒子と結合剤とを含有し、前記非磁性支持体と前記磁性層との間に平滑化層を少なくとも1層設けたことを特徴とする磁気記録媒体である。
【0012】
<2> さらに、非磁性支持体の他方の面側にバックコート層を有し、前記非磁性支持体とバックコート層との間に平滑化層を少なくとも1層設けたことを特徴とする前記<1>に記載の磁気記録媒体である。
【0013】
<3> 前記平滑化層が、放射線硬化型化合物と、平均一次粒子径が5〜40nm、かつDBP吸油量が10〜60ml/100gであるカーボンブラックと、誘導体を有する有機色素化合物とを含むことを特徴とする前記<1>または<2>に記載の磁気記録媒体である。
【0014】
<4> 前記平滑化層の厚さが0.1〜3.0μmであることを特徴とする前記<1>から<3>のいずれかに記載の磁気記録媒体である。
【0015】
<5> 前記非磁性支持体の表面が、コロナ処理、プラズマ処理、フレーム処理、及び電子線照射処理からなる群より選択されるいずれかの処理により昜接着処理されている前記<1>から<4>のいずれかに記載の磁気記録媒体である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の磁気記録媒体によれば、電磁変換特性に優れるとともに、非磁性支持体上のフィッシュアイ、特にこれまで制御が困難とされていたH1フィッシュアイ(高さ0.273μm以下)が非磁性支持体上に存在していても磁性層表面上の突起を最小限に抑えるとともに、平滑化層中の未架橋化合物に起因すると思われる記録再生装置中での貼付き等の走行異常、ヘッド汚れによるドロップアウトを有効に低減することのできる、MRヘッドを用いる磁気記録再生システムに有利な磁気記録媒体を提供することができる。その結果、本発明の磁気記録媒体であれば、ノイズが低下し、S/Nが優れ、ひいては低いエラーレートの磁気記録媒体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の磁気記録媒体は、非磁性支持体の一方の面側に磁性層を有する磁気記録媒体であって、前記磁性層が、粒子直径5〜50nmで希土類−遷移金属−半金属の単結晶からなる磁性粒子と結合剤とを含有し、前記非磁性支持体と前記磁性層との間に平滑化層を少なくとも1層設けたことを特徴としている。
以下、各層について説明する。
【0018】
<平滑化層>
本発明の磁気記録媒体の平滑化層は、放射線硬化型化合物と、平均一次粒子径が5〜40nm、かつDBP吸油量が10〜60ml/100gであるカーボンブラックと、誘導体を有する有機色素化合物とを含むことが好ましい。放射線硬化型化合物100質量部に対してカーボンブラックの添加量の総量は0.5〜50質量部、好ましくは1〜35質量部、さらに好ましくは1〜20質量部である。
カーボンブラックを含まない樹脂のみの平滑化層は非常に平滑になるが、非常に平滑になるがゆえに製造工程ではパスロールへの貼り付きが発生し、巻取り時には同伴空気の抜けが悪くなり、ゆる巻きの原因となる。また、磁気記録媒体作製後にも磁性層表面が平滑になりすぎると、摩擦係数が上昇し、走行性や耐久性が低下することが分かった。
そこで、平滑化層の表面粗度を工程適性、走行耐久性、電磁変換特性のバランスが取れる範囲に設定する技術が重要となり、これは上記のように平滑化層に微粒子を添加することで解決することができる。
以下、平滑化層に含まれる各成分について説明する。
【0019】
−放射線硬化型化合物−
本発明における平滑化層に含まれる「放射線硬化型化合物」とは、紫外線または電子線などの放射線を照射すると重合または架橋を開始し、高分子化して硬化する性質を有する化合物をいう。放射線硬化型化合物は、外部からエネルギー(紫外線または電子線)を与えない限り反応が進行しない。このため、放射線硬化型化合物を含む塗布液は、紫外線または電子線を照射しない限り粘度が安定しており、高い塗膜平滑性を得ることができる。また、紫外線または電子線による高いエネルギーにより瞬時に反応が進むため、放射線硬化型化合物を含む塗布液では高い塗膜強度を得ることができる。
なお、本発明で用いられる放射線には、電子線(β線)、紫外線、X線、γ線、α線などの各種の放射線が含まれる。
【0020】
本発明で使用される放射線硬化型化合物の分子量は、200〜2,000の範囲であることが好ましい。分子量が上記範囲であると、塗液が流動しやすく平滑な塗膜を実現することができる。
【0021】
放射線硬化型化合物の具体例としては、例えば(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリルアミド類、(メタ)アクリル酸アミド類、アリル化合物、ビニルエーテル類、ビニルエステル類等を挙げることができる。なお、ここでいう「(メタ)アクリル」とは、アクリルとメタクリルの総称である。
【0022】
2官能の放射線硬化型化合物の具体例としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレートやポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリウレタン(メタ)アクリレート、ポリウレタン(メタ)アクリレート、ビスフェノールΑ、ビスフェノールF、水素化ビスフェノールΑ、水素化ビスフェノールFやこれらのアルキレンオキサイド付加物に(メタ)アクリル酸、を付加させたものや、イソシアヌル酸アルキレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート等の環状構造を有するものが挙げられる。
【0023】
3官能の放射線硬化型化合物の具体例としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンのアルキレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸アルキレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバルアルデヒド変性ジメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0024】
4官能以上の放射線硬化型化合物の具体例としては、例えば、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、プロピオン酸ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、フォスファゼンのアルキレンオキサイド変性ヘキサ(メタ)アクリレート等を用いることができる。
【0025】
上記の放射線硬化型化合物の中でも、具体例として好ましいものは、分子量200〜2,000の2官能の(メタ)アクリレート化合物であり、さらに好ましいものは、ジメチロールトリシクロデカン、水素化ビスフェノールΑ、水素化ビスフェノールF等の脂環族化合物、ビスフェノールΑ、ビスフェノールFやこれらのアルキレンオキサイド付加物に(メタ)アクリル酸を付加させたものである。
【0026】
上記放射線硬化型化合物を重合させるために紫外線を用いる場合、重合開始剤を併用することが好ましい。重合開始剤としては、光ラジカル重合開始剤、光カチオン重合開始剤および光アミン発生剤等を用いることができる。
【0027】
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンジル、ジアセチル等のα−ジケトン類;ベンゾイン等のアシロイン類;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のアシロインエーテル類;チオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、チオキサントン−4−スルホン酸等のチオキサントン類;ベンゾフェノン、4,4'−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4'−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;ミヒラーケトン類、アセトフェノン、2−(4−トルエンスルホニルオキシ)−2−フェニルアセトフェノン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、α, α'−ジメトキシアセトキシベンゾフェノン、2,2'−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、p−メトキシアセトフェノン、2−メチル[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−1−プロパノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン等のアセトフェノン類、アントラキノン、1,4−ナフトキノン等のキノン類、フェナシルクロライド、トリハロメチルフェニルスルホン、トリス(トリハロメチル)−s−トリアジン等のハロゲン化合物;アシルホスフィンオキシド類、ジ−t−ブチルパーオキサイド等の過酸化物などが挙げられる。
【0028】
また、光ラジカル重合開始剤の具体的な例としては、例えば、IRGΑCURE−184、同261、同369、同500、同651、同907(チバ−ガイギー社製)、Dαrocur−1173、同1116、同2959、同1664、同4043(メルクジャパン社製)、KΑYΑCURE−DETX、同MBP、同DMBI、同EPΑ、同OΑ(日本化薬(株)製)、VICURE−10、同55(STΑUFFER Co.LTD製)、TRIGONΑLP1(ΑKZOCo.LTD製)、SΑNDORΑY1000(SΑNDOZ Co.LTD製)、DEΑP(ΑPJOHN Co.LTD製)、QUΑNTΑCURE−PDO、同ITX、同EPD(WΑRD BLEKINSOP Co.LTD製)等の市販品を挙げることができる。
【0029】
光カチオン重合開始剤としては、例えば、ジアゾニウム塩類、トリフェニルスルホニウム塩類、メタロセン化合物類、ジアリールヨードニウム塩類、ニトロベンジルスルホナート類、α−スルホニロキシケトン類、ジフェニルジスルホン類、イミジルスルホナート類が挙げられる。
【0030】
光カチオン重合開始剤の具体的な例としては、アデカウルトラセットPP−33、OPTMER SP−150、同170(旭電化工業(株)製)(ジアゾニウム塩)、OPTOMER SP−150、170(旭電化工業(株)製)(スルホニウム塩)、IRGΑCURE261(チバ−ガイギー(株)製)(メタロセン化合物)等の市販品を挙げることができる。
【0031】
光アミン発生剤としては、例えば、ニトロベンジカーバミメート類、イミノスルホナート類が挙げられる。これらの光重合開始剤は、露光条件(たとえば酸素雰囲気下であるか、無酸素雰囲気下であるか)等によって適宜選択され用いられる。またこれらの光重合開始剤は、2種以上組み合わせて用いることもできる。
【0032】
上記放射線硬化型化合物を重合させるために電子線を用いる場合、電子線の加速器としてはバンデグラーフ型のスキャニング方式、ダブルスキャニング方式、またはカーテンビーム方式を採用できるが、好ましくは比較的安価で大出力が得られるカーテンビーム方式である。電子線特性としては、加速電圧が10〜1,000kV、好ましくは50〜300kVである。加速電圧が10kV以上であれば、エネルギーの透過量としては充分である。また加速電圧が1,000kV以下であれば、重合に使われるエネルギー効率が低下することもない。吸収線量は0.5〜20Mrad、好ましくは1〜10Mradである。
吸収線量が0.5Mrad以上であれば、硬化反応により充分な強度が得られ、また20Mrad以下であれば、硬化に使用されるエネルギー効率が低下することがなく、さらに被照射体が発熱することもないため、非磁性支持体の変形を防止できる。
【0033】
一方、上記放射線硬化型化合物を重合させるために紫外線を用いる場合、その量は10〜100mJ/cm2が好ましい。10mJ/cm2以上であれば、硬化反応により充分な強度が得られ、100mJ/cm2以下であれば硬化に使用されるエネルギー効率の低下、被照射体の発熱を防ぐことができるため、非磁性支持体が変形することはない。紫外線(UV)および電子線(EB)照射装置、照射条件などについては、「UV・EB硬化技術」((株)総合技術センター発行)や「低エネルギー電子線照射の応用技術」(2000(株)シーエムシー発行)などに記載されている公知のものを用いることができる。
【0034】
なお、本発明の平滑化層で用いられる放射線硬化型化合物は、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂などの有機溶剤可溶性の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、反応型樹脂やこれらの混合物と併用してもよい。
【0035】
併用される樹脂の分子量については、重量平均分子量1,000〜100,000の範囲内にあるものを用いることができるが、特に5,000〜50,000の範囲のものが好ましい。1,000以上であれば、端面でのブロッキング等を生じることもなく、また重量平均分子量が100,000以下であれば、有機溶剤への溶解性も良好であり、平滑化層を塗布することも充分可能である。
【0036】
放射線硬化型化合物と併用される樹脂を混合して使用する場合、例えば、放射線硬化型化合物100質量部に対して併用される樹脂を5〜200質量部、好ましくは10〜100質量部、さらに好ましくは20〜80質量部の範囲で添加する平滑化層に添加する。放射線硬化型化合物に対する併用される樹脂の混合量が上記範囲内であれば、平滑化に有利なレベリング性が確保できると共に、架橋による硬化収縮が抑えられるため好ましい。
【0037】
本発明の磁気記録媒体の平滑化層に含まれる放射線硬化型化合物、併用される樹脂および光重合開始剤からなる組成物は、それらを溶解できる溶媒で塗布液とされるが、その溶媒は従来公知の有機溶剤を使用でき、特に限定されるものではない。本発明の平滑化層の乾燥は、自然乾燥および加熱乾燥のいずれであってもよく、非磁性支持体上に上記の塗布液を塗布して乾燥した後に上記の放射線を塗布層に照射する。
【0038】
−カーボンブラック−
本発明の平滑化層に使用可能なカーボンブラックの比表面積は5〜500m2/g、好ましくは20〜300m2/g、さらに好ましくは30〜200m2/g、DBP吸油量は10〜60ml/100g、好ましくは20〜60ml/100gである。カーボンブラックの平均一次粒子径は5〜50nm、好ましく10〜45nm、さらに好ましくは15〜40nmである。カーボンブラックのpHは2〜10、含水率は0.1〜10%、タップ密度は0.1〜1g/mlが好ましい。
【0039】
特に種類や製造履歴に制約されることはなく、市販のオイルファーネスブラック、ガスファーネスブラック、チャンネルブラックなど各種のものを用いることができる。また、通常行われているオゾン処理、プラズマ処理、液相酸化処理されたカーボンブラックを用いてもよい。
微粒子のカーボンブラックの分散は非常に困難であるが、末端にアミノ基を有する化合物で処理すれば、平均一次粒子が5〜15nmの超微粒子カーボンブラックであっても、分散性を向上させることができる。平均一次粒子径が40nmを超えると平滑効果が大きくならない場合があり、またDBP吸油量が60ml/100gを超えると平滑効果が大きくならない場合がある。
【0040】
本発明の磁気記録媒体の平滑化層に使用可能なカーボンブラックの具体的な例としては、例えば、デグサ社製Nipex 35、Printex35、Nipex 55、Printex55、などが挙げることができる。
【0041】
また、カーボンブラックを分散剤などで表面処理したり、樹脂でグラフト化して使用したり、表面の一部をグラファイト化したものを使用してもかまわない。また、カーボンブラックを塗料に添加する前にあらかじめ結合剤で分散してもかまわない。これらのカーボンブラックは上記微粒子粉末に対して50質量%を越えない範囲で使用できる。これらのカーボンブラックは単独、または組み合せで使用することができる。本発明において平滑化層で使用できるカーボンブラックは例えば「カーボンブラック便覧」カーボンブラック協会編、を参考にすることができる。
【0042】
微粒子粉末およびカーボンブラックは、放射線硬化型化合物100質量部に対してカーボンブラックの添加量の総量が0.5〜50質量部、好ましくは1〜35質量部、さらに好ましくは1〜20質量部の範囲で添加することができる。
【0043】
−誘導体を有する有機色素化合物−
誘導体を有する有機色素化合物は、下記一般式(1)で示される化合物又は下記一般式(2)で示される化合物であることが好ましい。これらの化合物は分散剤として機能する。
以下に、まず一般式(1)で示される化合物から説明する。
【0044】
A−N=N−X−Y …一般式(1)
[一般式(1)中、AはX−Yとともにアゾ色素を形成し得る成分を表す。Xは下記構造式で表される二価の連結基から選択される基を表す。
【化1】

Yは下記一般式(A)で表される基を表す。]
【化2】

[一般式(A)中、Zは低級アルキレン基を表す。−NR2は低級アルキルアミノ基、又は窒素原子を含む5員又は6員飽和ヘテロ環を表す。aは1又は2を表す。]
【0045】
一般式(A)中、前述の通り、AはX−Yとともにアゾ色素を形成し得る成分を表す。前記Aは、ジアゾニウム化合物とカップリングしてアゾ色素を形成し得る化合物であれば任意に選択することができる。
以下に、前記Aの具体例を示すが、本発明は以下の具体例に何ら限定されるものではない。
【0046】
【化3】

【0047】
【化4】

【0048】
前述の通り、前記一般式(A)中のZは低級アルキレン基を表し、Zは−(CH2b−と表されるが、該bは1〜5の整数を表し、好ましくは2又は3を表す。
【0049】
一般式(A)中の−NR2が低級アルキルアミノ基を表す場合、該−NR2は−N(Cn2n+12と表され、nは1〜4の整数を表し、好ましくは1又は2を表す。一方、該−NR2が窒素原子を含む5員又は6員飽和ヘテロ環を表す場合、下記構造式で表されるヘテロ環が好ましい。
【化5】

【0050】
前記一般式(A)におけるZ及び−NR2は、それぞれ、低級アルキル基、アルコキシル基を置換基として有していてもよい。
前記一般式(A)中、aは、1又は2を表し、好ましくは2を表す。
【0051】
以下に、前記一般式(1)で示される化合物の例示化合物(A−1〜A−11)を示すが、本発明はこれらの具体例に何ら限定されるものではない。
【0052】
【化6】

【0053】
【化7】

【0054】
【化8】

【0055】
【化9】

【0056】
次いで、一般式(2)で示される化合物について説明する。まず、一般式(2)で示される化合物の構造式を以下に示す。
Q−(W−X−Y)m …一般式(2)
[一般式(2)中、Qは、アントラキノン系色素、フタロシアニン系色素、キナクリドン系色素、ジオキサジン系色素、アントラピリミジン系色素、アサンスロン系色素、インダスロン系色素、フラバンスロン系色素、ビランスロン系色素、ペリノン系色素、ペリレン系色素、及びチオインジゴ系色素、イソインドリノン色素、トリフェニルメタン系色素からなる群から選ばれる有機色素残基を示し、Wは、直接結合、−(CH2n−(nは1〜10の整数)、−NH−、−CONH−、又は−CH2NH−を示す。mは1〜10の整数を示す。Xは単結合又は下記構造式で表される二価の連結基から選択される基を示す。
【化10】

Yは下記一般式(A)で表される基を表す。]
【0057】
【化11】

[一般式(A)中、Zは低級アルキレン基を表す。−NR2は低級アルキルアミノ基、又は窒素原子を含む5員又は6員飽和ヘテロ環を表す。aは1又は2を表す。]
【0058】
一般式(2)中の一般式(A)は、一般式(1)中の一般式(A)と同義であり、置換基の例、及び好ましい例も同じである。
【0059】
以下に、前記一般式(1)で示される化合物の例示化合物(化F−1〜F−14)を示すが、本発明はこれらの具体例に何ら限定されるものではない。
【0060】
【化12】

【0061】
【化13】

【0062】
【化14】

【0063】
【化15】

【0064】
本発明の磁気記録媒体において、誘導体を有する有機色素化合物の添加量はカーボンブラックに対し、0.01〜10.0ミリモル/gであることが好ましい。当該添加量とすることにより十分な分散効果が得られる。本発明のカーボンブラック分散体の製造工程において用いる溶媒としては、水、有機溶媒およびそれらの混合液を指し、分散剤を溶解するものであれば特に制限はない。
【0065】
−平滑化層の厚さ−
本発明における平滑化層の厚さは0.1〜3.0μmの範囲であれば特に制限はないが、好ましくは0.15〜2.0μmの範囲であり、さらに好ましくは0.2〜1.5μmの範囲である。平滑化層の厚さは、平滑塗布層の構成成分等によるが、平滑塗布層の表面性、物理強度が確保されるのであれば、高容量化には薄い程好ましい。
【0066】
<磁性層>
次いで、磁性層について説明する。本発明の磁気記録媒体において、磁性層中には、粒子直径5〜50nmで希土類−遷移金属−半金属の単結晶からなる磁性粒子と結合剤とを含有する。ここで、該「粒子直径」とは、一次平均粒子径のことを示す。
ここで、一次平均粒子径とは、透過型顕微鏡で(5〜20万倍)観察し、画像解析装置を用いて計測する。監査粒子数約500個を観察し、画像解析装置でなぞり、円相当径を求めて得られる数値である。
以下、まず、希土類−遷移金属−半金属の単結晶からなる磁性粒子について説明する。
【0067】
−磁性粒子−
磁性粒子は、前述の通り、希土類−遷移金属−半金属の単結晶からなる。
希土類としてはY、Ce、Pr、Nd、Sm、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Lu等が用いられる。一軸磁気異方性を示すY、Ce、Pr、Nd、Gd、Tb、Dy、Hoが好ましく用いられ、結晶磁気異方性が高いPr、Nd、Tb、Dyが特に好ましく用いられる。この中では資源量が最も豊富なNdが工業的には好ましく用いることができる。異方性磁場を改善する目的でNdの一部をDy,Tbに置き換えることは好ましく行われる。
【0068】
遷移金属としてはFe、Ni、Coが強磁性体を形成するものとして好ましく用いられる。単独で用いる場合は、結晶磁気異方性、飽和磁化の最も大きくなるFeが好ましく用いることができる。
Feを単独で用いた場合にはキューリー点が310℃程度と低く、熱安定性の観点から、Co、NiでFeを一部置換することが好ましい。
【0069】
半金属としてはホウ素、炭素、リン、シリコン、アルミニウムが挙げられる。この中でホウ素、アルミニウムが好ましく用いられ、ホウ素が最も好ましい。
【0070】
希土類は10〜15at%であることが好ましく、遷移金属は70〜85であることが好ましく、半金属は5〜10at%であることが好ましい。異なる遷移金属たとえば、Fe、Co,Niを用いる場合、Fe(1-x-y)CoxNiyとあらわしたとき、保磁力が2000Oe〜6000Oeと磁気記録媒体に適している組成はx=0〜45at%、y=25〜30at% あるいはx=45〜50at%、y=0〜25at%であり本発明に好ましく用いられる。
腐食性が低いとの観点からはさらにx=0〜45at%、y=25〜30at% あるいはx=45〜50at%、y=10〜25at%が好ましく用いられる。
キュリー点が500℃以上で温度特性が優れるとの観点からはx=20〜45at%、y=25〜30at% あるいはx=45〜50at%、y=0〜25at%の領域が好ましく用いられる。
従って、保磁力、腐食性、温度特性の観点からはx=20〜45at%、y=25〜30at% あるいはx=45〜50at%、y=10〜25at%が好ましく用いられる。より好ましくはx=30〜45at%、y=28〜30at%である。
【0071】
希土類−遷移金属−半金属の単結晶からなる磁性粒子を得る方法としては原料金属を高周波溶融炉等で溶解した後、鋳造する方法があるが、当該方法では初晶として遷移金属が多く含まれるものであり、の遷移金属を消去するために融点直下での溶体化処理を必要とする。溶体化処理で粒子サイズが大きくなることから、当該方法では、本発明に必要な5〜50nmの粒子を得ることは困難である。
【0072】
溶融金属を回転ロール上に注ぐ急冷法(溶融金属急冷法)においては、初晶であるFeが発生しないばかりか5〜50nmの粒子サイズの希土類−遷移金属−ホウ素のナノ結晶が急冷薄帯中に得られ、本発明に好ましく用いられる。また、溶融金属を回転ロール上に注ぐ急冷法によりアモルファス合金を作製した後、400〜1000℃の熱処理でナノ結晶を析出させる方法においても5〜50nmの粒子サイズの希土類−遷移金属−ホウ素 ナノ結晶が得られる点で本発明に好ましく用いられる。
【0073】
本発明において、溶融金属急冷法を用いる場合は、酸化を防止するため、不活性ガス雰囲気中で行うことが好ましい。具体的にはHe,Ar,H2等が好ましく用いることができる。
【0074】
溶融金属急冷法においては、冷却速度はロールの回転速度と急冷薄帯の厚みによって決定される。本発明において、急冷直後に急冷薄帯中に希土類−遷移金属−半金属のナノ結晶を形成する際のロール回転速度は10〜25m/sが好ましく用いられる。また、急冷により一旦、アモルファス合金を得る場合には 25〜50m/sが好ましく用いられる。急冷薄帯の厚みは10〜100μmが好ましく用いられる。当該厚みをえることができるように溶融金属を注ぐ量はオリフィス等でコントロールすることが好ましい。
【0075】
NaCl水溶液、Na2SO4水溶液に急冷薄帯を浸漬することで希土類−遷移金属相を溶解除去することができ、希土類−遷移金属−半金属の単結晶を取り出すことができる。水溶液を作製する際の水は蒸留水を脱酸素したものが好ましく用いられる。予期せぬ酸化を防ぐためである。脱酸素はAr,N2等の不活性ガスをバブリングにより行う方法、蒸留水を凍結した後、溶解する方法によっても作製することができる。
NaCl等の濃度は0.01〜1Kmol/m3が好ましく、0.05〜0.5Kmol/m3がより好ましい。
【0076】
(不働体皮膜の形成)
空気中で加熱することで、表面に不働体皮膜である酸化皮膜を形成した。加熱温度としては、低すぎると処理時間が長くなり、工業的に不適当であり、高すぎると内部まで酸化し、磁性を損なうことから、好ましくは40℃〜80℃でありより好ましくは、50℃〜70℃である。処理時間は5時間〜10時間が好ましい。不働体化皮膜の厚みは1〜7nmが好ましく、さらに好ましくは1〜5nmでありさらに好ましくは1〜2.5nmである。
【0077】
(希土類−遷移金属−半金属の単結晶のサイズ)
磁性体の粒子サイズを小さくすることにより、SNRが向上することができることから、小さければ小さいほど好ましい。しかし、小さすぎると熱揺らぎの影響を受け、強磁性体でなくなることから、一定以上のサイズが必要である。そこで本発明においては、希土類−遷移金属−半金属の単結晶の粒子直径は5〜50nmとし、好ましくは7〜20nmであり、さらに好ましくは7〜15nmである。
【0078】
−結合剤−
本発明の磁気記録媒体の磁性層で用いられる結合剤としては、従来公知のポリウレタン樹脂および塩化ビニル、酢酸ビニル、ビニルアルコール、マレイン酸、アクリル酸、アクリル酸エステル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、スチレン、ブタジエン、エチレン、ビニルブチラール、ビニルアセタール、ビニルエーテル等を構成単位として含む重合体または共重合体等の熱可塑性樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン硬化型樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、アクリル系反応樹脂、ホルムアルデヒド樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ−ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂とイソシアネートプレポリマーの混合物、ポリエステルポリオールとポリイソシアネートの混合物、ポリウレタンとポリイソシアネートの混合物等熱硬化性樹脂、反応型樹脂やこれらの混合物を挙げることができる。
【0079】
中でもポリウレタン樹脂が好ましく、更には水素化ビスフェノールΑ、水素化ビスフェノールΑのポリプロピレンオキサイド付加物等の環状構造およびアルキレンオキサイド鎖を有する分子量500〜5,000のポリオールと鎖延長剤として環状構造を有する分子量200〜500のポリオールと有機ジイソシアネートを反応させ、かつ親水性極性基を有するポリウレタン樹脂もしくはコハク酸、アジピン酸、セバシン酸等の脂肪族二塩基酸と2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール等のアルキル分岐側鎖を有する環状構造を持たない脂肪族ジオールからなるポリエステルポリオールと鎖延長剤として、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール等の炭素数が3以上の分岐アルキル側鎖をもつ脂肪族ジオールと有機ジイソシアネート化合物を反応させかつ親水性極性基を有するポリウレタン樹脂もしくはダイマージオール等の環状構造および長鎖アルキル鎖を有するポリオール化合物と有機ジイソシアネートを反応させかつ親水性極性基を有するポリウレタン樹脂が好ましい。
【0080】
本発明で使用される極性基含有ポリウレタン系樹脂の平均分子量は、5,000〜100,000であることが好ましく、10,000〜50,000であることがさらに好ましい。平均分子量が5,000以上であれば、得られる磁性塗膜が脆くなるなど物理的強度が低下するという欠点もなく、磁気記録媒体の耐久性を維持できる。また平均分子量が100,000以下であれば、溶剤への溶解性と分散性を維持できる。また、平均分子量が上記範囲内であれば、適度の塗料粘度が得られ、作業性がよく、取扱いも容易である。
【0081】
上記ポリウレタン系樹脂に含まれる極性基としては、例えば、−COOM、−SO3M、−OSO3M、−P=O(OM)2、−O−P=O(OM)2(以上につき、Mは水素原子またはアルカリ金属塩基)、−OH、−NR2、−N+3(Rは炭化水素基)、エポキシ基、−SH、−CNなどが挙げられ、これらの極性基の少なくとも1つ以上を共重合または付加反応で導入したものを用いることができる。また、この極性基含有ポリウレタン系樹脂がOH基を有する場合、分岐OH基を有することが硬化性、耐久性の面から好ましく、1分子当たり2〜40個の分岐OH基を有することが好ましく、1分子当たり3〜20個有することがさらに好ましい。また、このような極性基の量は10-1〜10-8モル/gであり、好ましくは10-2〜10-6モル/gである。
【0082】
結合剤の具体例としては、例えば、ユニオンカーバイト社製VΑGH、VYHH、VMCH、VΑGF、VΑGD、VROH、VYES、VYNC、VMCC、XYHL、XYSG、PKHH、PKHJ、PKHC、PKFE、日信化学工業社製MPR−TΑ、MPR−TΑ5、MPR−TΑL、MPR−TSN、MPR−TMF、MPR−TS、MPR−TM、MPR−TΑO、電気化学社製1000W、DX80、DX81、DX82、DX83、100FD、日本ゼオン社製MR−104、MR−105、MR110、MR100、MR555、400X−110Α、日本ポリウレタン社製ニッポランN2301、N2302、N2304、大日本インキ社製パンデックスT−5105、T−R3080、T−5201、バーノックD−400、D−210−80、クリスボン6109、7209、東洋紡社製バイロンUR8200、UR8300、UR−8700、RV530、RV280、大日精化社製ダイフェラミン4020、5020、5100、5300、9020、9022、7020、三菱化成社製MX5004、三洋化成社製サンプレンSP−150、旭化成社製サランF310、F210などを挙げることができる。
【0083】
本発明の磁性層に用いられる結合剤の添加量は、六方晶フェライト強磁性粉末の質量に対して5〜50質量%の範囲、好ましくは10〜30質量%の範囲である。また、強磁性金属粉末の質量に対しては5〜50質量%であり、好ましくは10〜30質量%の範囲である。また、ポリウレタン樹脂合を用いる場合は2〜20質量%、ポリイソシアネートは2〜20質量%の範囲でこれらを組み合わせて用いることが好ましいが、例えば、微量の脱塩素によりヘッド腐食が起こる場合には、ポリウレタンのみまたはポリウレタンとイソシアネートのみを使用することも可能である。その他の樹脂として塩化ビニル系樹脂を用いる場合には5〜30質量%の範囲であることが好ましい。本発明において、ポリウレタンを用いる場合はガラス転移温度が−50〜150℃、好ましくは0〜100℃、破断伸びが100〜2000%、破断応力は0.49〜98MPa(0.05〜10kg/mm2)、降伏点は0.49〜98MPa(0.05〜10kg/mm2)が好ましい。
【0084】
本発明で用いられる結合剤は、添加量、結合剤中に占める塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイソシアネート、あるいはそれ以外の樹脂量、磁性層を形成する各樹脂の分子量、極性基量、あるいは含有する樹脂の物理特性などを必要に応じて、磁性層と後述する非磁性層の間で変更することはもちろん可能であり、むしろ各層で最適化すべきであり、多層磁性層に関する公知技術を適用できる。例えば、各層で結合剤量を変更する場合、磁性層表面の擦傷を減らすためには磁性層の結合剤量を増量することが有効であり、ヘッドに対するヘッドタッチを良好にするためには、非磁性層の結合剤量を多くして柔軟性を持たせることができる。
【0085】
本発明で使用可能なポリイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、4−4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、o−トルイジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート等のイソシアネート類、また、これらのイソシアネート類とポリアルコールとの生成物、また、イソシアネート類の縮合によって生成したポリイソシアネート等を挙げることができる。これらのイソシアネート類の市販されている商品名としては、日本ポリウレタン社製コロネートL、コロネートHL、コロネート2030、コロネート2031、ミリオネートMR、ミリオネートMTL、武田薬品社製タケネートD−102、タケネートD−110N、タケネートD−200、タケネートD−202、住友バイエル社製デスモジュールL,デスモジュールIL、デスモジュールNデスモジュールHL等がありこれらを単独または硬化反応性の差を利用して2つ若しくはそれ以上の組み合せで各層とも用いることができる。
【0086】
本発明における磁性層には、必要に応じて添加剤を加えることができる。添加剤としては、研磨剤、潤滑剤、分散剤・分散助剤、防黴剤、帯電防止剤、酸化防止剤、溶剤、カーボンブラックなどを挙げることができる。
これら添加剤としては、例えば、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、グラファイト、窒化ホウ素、フッ化黒鉛、シリコーンオイル、極性基を持つシリコーン、脂肪酸変性シリコーン、フッ素含有シリコーン、フッ素含有アルコール、フッ素含有エステル、ポリオレフィン、ポリグリコール、ポリフェニルエーテル、フェニルホスホン酸、ベンジルホスホン酸基、フェネチルホスホン酸、α−メチルベンジルホスホン酸、1−メチル−1−フェネチルホスホン酸、ジフェニルメチルホスホン酸、ビフェニルホスホン酸、ベンジルフェニルホスホン酸、α−クミルホスホン酸、トルイルホスホン酸、キシリルホスホン酸、エチルフェニルホスホン酸、クメニルホスホン酸、プロピルフェニルホスホン酸、ブチルフェニルホスホン酸、ヘプチルフェニルホスホン酸、オクチルフェニルホスホン酸、ノニルフェニルホスホン酸等の芳香族環含有有機ホスホン酸およびそのアルカリ金属塩、オクチルホスホン酸、2−エチルヘキシルホスホン酸、イソオクチルホスホン酸、イソノニルホスホン酸、イソデシルホスホン酸、イソウンデシルホスホン酸、イソドデシルホスホン酸、イソヘキサデシルホスホン酸、イソオクタデシルホスホン酸、イソエイコシルホスホン酸等のアルキルホスホン酸およびそのアルカリ金属塩、リン酸フェニル、リン酸ベンジル、リン酸フェネチル、リン酸α−メチルベンジル、リン酸1−メチル−1−フェネチル、リン酸ジフェニルメチル、リン酸ビフェニル、リン酸ベンジルフェニル、リン酸α−クミル、リン酸トルイル、リン酸キシリル、リン酸エチルフェニル、リン酸クメニル、リン酸プロピルフェニル、リン酸ブチルフェニル、リン酸ヘプチルフェニル、リン酸オクチルフェニル、リン酸ノニルフェニル等の芳香族リン酸エステルおよびそのアルカリ金属塩、リン酸オクチル、リン酸2−エチルヘキシル、リン酸イソオクチル、リン酸イソノニル、リン酸イソデシル、リン酸イソウンデシル、リン酸イソドデシル、リン酸イソヘキサデシル、リン酸イソオクタデシル、リン酸イソエイコシル等のリン酸アルキルエステルおよびそのアルカリ金属塩、アルキルスルホン酸エステルおよびそのアルカリ金属塩、フッ素含有アルキル硫酸エステルおよびそのアルカリ金属塩、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ステアリン酸ブチル、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エライジン酸、エルカ酸等の炭素数10〜24の不飽和結合を含んでも分岐していてもよい一塩基性脂肪酸およびこれらの金属塩、またはステアリン酸ブチル、ステアリン酸オクチル、ステアリン酸アミル、ステアリン酸イソオクチル、ミリスチン酸オクチル、ラウリル酸ブチル、ステアリン酸ブトキシエチル、アンヒドロソルビタンモノステアレート、アンヒドロソルビタンジステアレート、アンヒドロソルビタントリステアレート等の炭素数10〜24の不飽和結合を含んでも分岐していてもよい一塩基性脂肪酸と炭素数2〜22の不飽和結合を含んでも分岐していてもよい1〜6価アルコール、炭素数12〜22の不飽和結合を含んでも分岐していてもよいアルコキシアルコールまたはアルキレンオキサイド重合物のモノアルキルエーテルのいずれか一つとからなるモノ脂肪酸エステル、ジ脂肪酸エステルまたは多価脂肪酸エステル、炭素数2〜22の脂肪酸アミド、炭素数8〜22の脂肪族アミンなどが使用できる。また、上記炭化水素基以外にもニトロ基およびF、Cl、Br、CF3、CCl3、CBr3等の含ハロゲン炭化水素等炭化水素基以外の基が置換したアルキル基、アリール基、アラルキル基を持つものでもよい。
【0087】
また、アルキレンオキサイド系、グリセリン系、グリシドール系、アルキルフエノールエチレンオキサイド付加体等のノニオン界面活性剤、環状アミン、エステルアミド、第四級アンモニウム塩類、ヒダントイン誘導体、複素環類、ホスホニウムまたはスルホニウム類等のカチオン系界面活性剤、カルボン酸、スルホン酸、硫酸エステル基等の酸性基を含むアニオン界面活性剤、アミノ酸類、アミノスルホン酸類、アミノアルコールの硫酸またはリン酸エステル類、アルキルベタイン型等の両性界面活性剤等も使用できる。これらの界面活性剤については、「界面活性剤便覧」(産業図書株式会社発行)に詳細に記載されている。
【0088】
上記分散剤、潤滑剤等は必ずしも純粋ではなく主成分以外に異性体、未反応物、副反応物、分解物、酸化物等の不純分が含まれても構わない。これらの不純分は30質量%以下が好ましく、さらに好ましくは10質量%以下である。
これらの添加物の具体例としては、例えば、日本油脂社製:NΑΑ−102、ヒマシ油硬化脂肪酸、NΑΑ−42、カチオンSΑ、ナイミーンL−201、ノニオンE−208、アノンBF、アノンLG、竹本油脂社製:FΑL−205、FΑL−123、新日本理化社製:エヌジエルブOL、信越化学社製:TΑ−3、ライオンアーマー社製:アーマイドP、ライオン社製:デュオミンTDO、日清製油社製:BΑ−41G、三洋化成社製:プロフアン2012E、ニューポールPE61、イオネットMS−400等が挙げられる。
【0089】
本発明の磁気記録媒体の磁性層で用いられる有機溶剤は、公知のものが使用できる。有機溶剤は、任意の比率でアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、テトラヒドロフラン、等のケトン類、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソブチルアルコール、イソプロピルアルコール、メチルシクロヘキサノールなどのアルコール類、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、乳酸エチル、酢酸グリコール等のエステル類、グリコールジメチルエーテル、グリコールモノエチルエーテル、ジオキサンなどのグリコールエーテル系、ベンゼン、トルエン、キシレン、クレゾール、クロルベンゼンなどの芳香族炭化水素類、メチレンクロライド、エチレンクロライド、四塩化炭素、クロロホルム、エチレンクロルヒドリン、ジクロルベンゼン等の塩素化炭化水素類、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサン等を使用することができる。
【0090】
これら有機溶媒は必ずしも100%純粋ではなく、主成分以外に異性体、未反応物、副反応物、分解物、酸化物、水分等の不純分が含まれてもかまわない。これらの不純分は30%以下が好ましく、さらに好ましくは10%以下である。本発明で用いる有機溶媒は磁性層と非磁性層でその種類は同じであることが好ましい。その添加量は変えてもかまわない。非磁性層に表面張力の高い溶媒(シクロヘキサノン、ジオキサンなど)を用い塗布の安定性を上げる、具体的には上層溶剤組成の算術平均値が非磁性層溶剤組成の算術平均値を下回らないことが肝要である。分散性を向上させるためにはある程度極性が強い方が好ましく、溶剤組成の内、誘電率が15以上の溶剤が50%以上含まれることが好ましい。また、溶解パラメータは8〜11であることが好ましい。
【0091】
本発明の磁気記録媒体の磁性層で用いられるこれらの分散剤、潤滑剤、界面活性剤は磁性層および後述する非磁性層でその種類、量を必要に応じ使い分けることができる。例えば、無論ここに示した例のみに限られるものではないが、分散剤は極性基で吸着もしくは結合する性質を有しており、磁性層においては主に強磁性粉末の表面に、また後述する非磁性層においては主に非磁性粉末の表面に前記の極性基で吸着もしくは結合し、一度吸着した有機リン化合物は金属あるいは金属化合物等の表面から脱着しがたいと推察される。したがって、本発明の強磁性粉末表面あるいは後述する非磁性粉末表面は、アルキル基、芳香族基等で被覆されたような状態になるので、強磁性粉末あるいは非磁性粉末の結合剤樹脂成分に対する親和性が向上し、さらに強磁性粉末あるいは非磁性粉末の分散安定性も改善される。また、潤滑剤としては遊離の状態で存在するため非磁性層、磁性層で融点の異なる脂肪酸を用い表面へのにじみ出しを制御する、沸点や極性の異なるエステル類を用い表面へのにじみ出しを制御する、界面活性剤量を調節することで塗布の安定性を向上させる、潤滑剤の添加量を非磁性層で多くして潤滑効果を向上させるなどが考えられる。また本発明で用いられる添加剤のすべてまたはその一部は、磁性層あるいは非磁性層用塗布液の製造時のいずれの工程で添加してもよい。例えば、混練工程前に強磁性粉末と混合する場合、強磁性粉末と結合剤と溶剤による混練工程で添加する場合、分散工程で添加する場合、分散後に添加する場合、塗布直前に添加する場合などがある。
【0092】
また、本発明における磁性層には、必要に応じてカーボンブラックを添加することができる。
磁性層で使用されるカーボンブラックは平滑化層のそれが適用できる。それらのカーボンブラックは単独または組み合せで使用することができる。カーボンブラックを使用する場合、磁性体の質量に対して0.1〜30質量%で用いることが好ましい。カーボンブラックは磁性層の帯電防止、摩擦係数低減、遮光性付与、膜強度向上などの働きがあり、これらは用いるカーボンブラックにより異なる。したがって本発明で使用されるこれらのカーボンブラックは、磁性層でその種類、量、組み合せを変え、粒子サイズ、吸油量、電導度、pHなどの先に示した諸特性を基に目的に応じて使い分けることはもちろん可能であり、むしろ各層で最適化すべきものである。
【0093】
<非磁性層>
本発明の磁気記録媒体は、非磁性支持体上に結合剤および非磁性粉末を含む非磁性層を有していてもよい。非磁性層に使用できる非磁性粉末は、無機物質でも有機物質でもよい。また、非磁性層には非磁性粉末と共に、必要に応じてカーボンブラックを混合し表面電気抵抗を下げ、光透過率を小さくすると共に、所望のマイクロビッカース硬度を得ることができる。本発明の非磁性層の光透過率は一般に波長900nm程度の赤外線の透過が3%以下が好ましい。マイクロビッカース硬度は、通常25〜60kg/mm2、好ましくは
ヘッド当りを調整するために、30〜50kg/mm2であり、薄膜硬度計(日本電気製 HMΑ−400)を用いて、稜角80度、先端半径0.1μmのダイヤモンド製三角錐針を圧子先端に用いて測定することができる。
【0094】
非磁性層の非磁性粉末、カーボンブラックは平滑化層のそれが適用できる。それらのカーボンブラックは単独または組み合せで使用することができる。カーボンブラックを使用する場合、非磁性粉末の質量に対して0.1〜1000質量%で用いることが好ましい。カーボンブラックは非磁性層の帯電防止、摩擦係数低減、遮光性付与、膜強度向上などの働きがあり、これらは用いるカーボンブラックにより異なる。したがって本発明で使用されるこれらのカーボンブラックは、非磁性層でその種類、量、組み合せを変え、粒子サイズ、吸油量、電導度、PHなどの先に示した諸特性を基に目的に応じて使い分けることはもちろん可能であり、むしろ各層で最適化すべきものである。
非磁性層の結合剤樹脂、潤滑剤、分散剤、添加剤、溶剤、分散方法その他は、磁性層のそれが適用できる。特に、結合剤樹脂量、種類、添加剤、分散剤の添加量、種類に関しては磁性層に関する公知技術が適用できる。
【0095】
<バックコート層>
一般に、コンピュータデータ記録用の磁気テープは、ビデオテープ、オーディオテープに比較して繰り返し走行性が強く要求される。このような高い保存安定性を維持させるために、非磁性支持体の非磁性層および磁性層が設けられた面とは反対の面にバックコート層を設けることもできる。バックコート層用塗料は、研磨剤、帯電防止剤などの粒子成分と結合剤とを有機溶媒に分散させる。粒状成分として各種の無機顔料やカーボンブラックを使用することができる。また、結合剤としては、例えば、ニトロセルロース、フェノキシ樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン等の樹脂を単独またはこれらを混合して使用することができる。
【0096】
<非磁性支持体>
本発明に用いられる非磁性支持体としては、例えば、二軸延伸を行ったポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、芳香族ポリアミド、ポリベンズオキシダゾール等を挙げることができる。好ましくはポリエチレンナフタレート、芳香族ポリアミドなどが挙げられる。これらの非磁性支持体は、あらかじめコロナ放電、プラズマ処理、易接着処理、熱処理などを行ってもよい。また本発明に用いることのできる非磁性支持体は、中心線平均表面粗さがカットオフ値0.25mmにおいて0.1〜20nm、好ましくは1〜10nmの範囲という優れた平滑性を有する表面であることが好ましい。また、これらの非磁性支持体は中心線平均表面粗さが小さいだけでなく1μ以上の粗大突起がないことが好ましい。
【0097】
本発明における非磁性支持体は、表面を処理していないものを用いることができる。好ましくは、その表面がコロナ処理、プラズマ処理、フレーム処理および電子線照射処理からなる群から選ばれる昜接着処理されているものである。
上記処理方法のうち、例えばコロナ処理の場合、例えば、気体中で10〜40kV程度の高電圧で発生するコロナ放電による表面処理であることができる。金属ロール等の導電性ロール(アース側)に沿って非磁性支持体に連続的に走行させ、ロールと平行に対設された一本のコロナ電極とロールとの間にコロナ放電を生じさせてもよく、また2本の平行な電極をロールと平行に対設し、両電極間に高電圧を印加し、電極−ロール−電極間に生ずる放電を利用してもよい。いずれの場合もロールに支持されない側、すなわち電極に面している側の非磁性支持体の表面が処理される。また、プラズマ処理の場合、例えばDCプラズマ、RFプラズマ、ΑCプラズマ等のいずれも使用でき、またそれぞれマグネトロン方式であってもよい。また、電子線照射の場合には、スキャニング方式、ダブルスキャニング方式またはカーテンビーム方式等の加速器を用いて、加速電圧10〜300kV、吸収線量として10〜100kGy程度で電子線を非磁性支持体表面全体に照射する。
【0098】
<層構成>
本発明で用いられる磁気記録媒体の構成において、平滑化層の厚さは、上述のとおり0.1〜3.0μmの範囲であることが好ましい。また非磁性支持体の好ましい厚さは、3〜80μmであることが好ましい。また、非磁性支持体と非磁性層または磁性層の間に下塗層を設けた場合、下塗層の厚さは0.01〜0.8μm、好ましくは0.02〜0.6μmである。また、非磁性支持体の非磁性層および磁性層が設けられた面とは反対側の面に設けられたバックコート層の厚さは、0.1〜1.0μm、好ましくは0.2〜0.8μmである。
【0099】
磁性層の厚さは、用いる磁気ヘッドの飽和磁化量やヘッドギャップ長、記録信号の帯域により最適化されるものであるが、一般には0.01〜0.10μm以下であり、好ましくは0.02μm以上0.08μm以下であり、更に好ましくは0.03〜0.08μmである。また、磁性層の厚さ変動率は±50%以内が好ましく、さらに好ましくは±40%以内である。磁性層は少なくとも一層あればよく、磁性層を異なる磁気特性を有する2層以上に分離してもかまわず、公知の重層磁性層に関する構成が適用できる。
【0100】
本発明の非磁性層の厚さは、0.2〜3.0μmであり、0.3〜2.5μmであることが好ましく、0.4〜2.0μmであることがさらに好ましい。なお、本発明の磁気記録媒体の非磁性層は、実質的に非磁性であればその効果を発揮するものであり、例えば不純物として、あるいは意図的に少量の磁性体を含んでいても、本発明の効果を示すものであり、本発明の磁気記録媒体と実質的に同一の構成とみなすことができる。なお、実質的に同一とは、非磁性層の残留磁束密度が10mT(100G)以下または抗磁力が7.96kΑ/m(100 Oe)以下であることを示し、好ましくは残留磁束密度と抗磁力を持たないことを意味する。
【0101】
<磁気記録媒体の製造方法>
本発明で用いられる磁気記録媒体の磁性層塗布液を製造する工程は、少なくとも混練工程、分散工程、およびこれらの工程の前後に必要に応じて設けた混合工程からなる。個々の工程はそれぞれ2段階以上に分かれていてもかまわない。本発明で用いられる六方晶フェライト強磁性粉末または強磁性金属粉末、非磁性粉末、ベンゼンホスホン酸誘導体、π電子共役系の導電性高分子、結合剤、カーボンブラック、研磨材、帯電防止剤、潤滑剤、溶剤などすべての原料はどの工程の最初または途中で添加してもかまわない。また、個々の原料を2つ以上の工程で分割して添加してもかまわない。例えば、ポリウレタンを混練工程、分散工程、分散後の粘度調整のための混合工程で分割して投入してもよい。本発明の目的を達成するためには、従来の公知の製造技術を一部の工程として用いることができる。混練工程ではオープンニーダ、連続ニーダ、加圧ニーダ、エクストルーダなど強い混練力をもつものを使用することが好ましい。ニーダを用いる場合は磁性粉末または非磁性粉末と結合剤のすべてまたはその一部(但し、全結合剤の30%以上が好ましい)および磁性体100質量部に対し15〜500質量部の範囲で混練処理される。これらの混練処理の詳細については特開平1−106338号公報、特開平1−79274号公報に記載されている。また、磁性層用液および非磁性層用液を分散させるには、ガラスビーズを用いることができる。このようなガラスビーズは、高比重の分散メディアであるジルコニアビーズ、チタニアビーズ、スチールビーズが好適である。これら分散メディアの粒径と充填率は最適化して用いられる。分散機は公知のものを使用することができる。
【0102】
本発明の磁気記録媒体の製造方法は、例えば、走行下にある非磁性支持体の表面に磁性層用塗布液を所定の膜厚となるように塗布する。ここで複数の磁性層用塗布液を逐次あるいは同時に重層塗布してもよく、下層の磁性層用塗布液と上層の磁性層用塗布液とを逐次あるいは同時に重層塗布してもよい。上記磁性層用塗布液もしくは下層の磁性層用塗布液を塗布する塗布機としては、エアードクターコート、ブレードコート、ロッドコート、押出しコート、エアナイフコート、スクイズコート、含浸コート、リバースロールコート、トランスファーロールコート、グラビヤコート、キスコート、キャストコート、スプレイコート、スピンコート等が利用できる。これらについては例えば(株)総合技術センター発行の「最新コーティング技術」(昭和58年5月31日)を参考にすることができる。
【0103】
磁性層塗布液の塗布層は、磁気テープの場合、磁性層塗布液の塗布層中に含まれる強磁性粉末にコバルト磁石やソレノイドを用いて長手方向に磁場配向処理を施す。ディスクの場合、配向装置を用いず無配向でも十分に等方的な配向性が得られることもあるが、コバルト磁石を斜めに交互に配置すること、ソレノイドで交流磁場を印加するなど公知のランダム配向装置を用いることが好ましい。等方的な配向とは強磁性金属微粉末の場合、一般的には面内2次元ランダムが好ましいが、垂直成分をもたせて3次元ランダムとすることもできる。六方晶フェライトの場合は一般的に面内および垂直方向の3次元ランダムになりやすいが、面内2次元ランダムとすることも可能である。また異極対向磁石など公知の方法を用い、垂直配向とすることで円周方向に等方的な磁気特性を付与することもできる。特に高密度記録を行う場合は垂直配向が好ましい。また、スピンコートを用いて円周配向としてもよい。
乾燥風の温度、風量、塗布速度を制御することで塗膜の乾燥位置を制御できるようにすることが好ましく、塗布速度は20〜1000m/分、乾燥風の温度は60℃以上が好ましい。また磁石ゾーンに入る前に適度の予備乾燥を行うこともできる。
【0104】
乾燥された後、塗布層に表面平滑化処理を施す。表面平滑化処理には、例えばスーパーカレンダーロールなどが利用される。表面平滑化処理を行うことにより、乾燥時の溶剤の除去によって生じた空孔が消滅し磁性層中の強磁性粉末の充填率が向上するので、電磁変換特性の高い磁気記録媒体を得ることができる。
カレンダ処理ロールとしてはエポキシ、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド等の耐熱性プラスチックロールを使用する。また金属ロールで処理することもできる。本発明の磁気記録媒体は、表面の中心面平均粗さが、カットオフ値0.25mmにおいて0.1〜4.0nm、好ましくは0.5〜3.0nmの範囲という極めて優れた平滑性を有する表面であることが好ましい。その方法として、例えば上述したように特定の強磁性粉末と結合剤を選んで形成した磁性層を上記カレンダ処理を施すことにより行われる。カレンダ処理条件としては、カレンダーロールの温度を60〜100℃の範囲、好ましくは70〜100℃の範囲、特に好ましくは80〜100℃の範囲であり、圧力は100〜500kg/cmの範囲、好ましくは200〜450kg/cmの範囲であり、特に好ましくは300〜400kg/cmの範囲の条件で作動させることによって行われることが好ましい。
【0105】
熱収縮率低減手段として、低テンションでハンドリングしながらウエッブ状で熱処理する方法と、バルクまたはカセットに組み込んだ状態などテープが積層した形態で熱処理する方法(サーモ処理)があり、両者が利用できる。前者は、バックコート層表面の突起写りの影響が少ないが、熱収縮率を大きく下げることができない。一方、後者のサーモ処理は、熱収縮率を大幅に改善できるが、バックコート層表面の突起写りの影響を強く受けるため、磁性層が面荒れし、出力低下およびノイズ増加を引き起こす。特に、サーモ処理を伴う磁気記録媒体で、高出力、低ノイズの磁気記録媒体を供給することができる。得られた磁気記録媒体は、裁断機、打抜機などを使用して所望の大きさに裁断して使用することができる。
【0106】
<物理特性>
本発明に用いられる磁気記録媒体の磁性層の飽和磁束密度は、100〜300mT(1000〜3000G)である。また磁性層の抗磁力(Hr)は、143.3〜318.4kΑ/m(1800〜4000Oe)であるが、好ましくは159.2〜278.6kΑ/m(2000〜3500Oe)である。抗磁力の分布は狭い方が好ましく、SFDおよびSFDrは0.6以下、さらに好ましくは0.2以下である。
【0107】
本発明で用いられる磁気記録媒体のヘッドに対する摩擦係数は、温度−10〜40℃、湿度0〜95%の範囲において0.5以下であり、好ましくは0.3以下である。また、帯電位は−500V〜+500V以内が好ましい。磁性層の0.5%伸びでの弾性率は、面内各方向で好ましくは0.98〜19.6GPa(100〜2000kg/mm2)、破断強度は、好ましくは98〜686MPa(10〜70kg/mm2)、磁気記録媒体の弾性率は、面内各方向で好ましくは0.98〜14.7GPa(100〜1500kg/mm2)、残留のびは、好ましくは0.5%以下、100℃以下のあらゆる温度での熱収縮率は、好ましくは1%以下、さらに好ましくは0.5%以下、最も好ましくは0.1%以下である。
【0108】
磁性層のガラス転移温度(110Hzで測定した動的粘弾性測定の損失弾性率の極大点)は50〜180℃が好ましく、非磁性層のそれは0〜180℃が好ましい。損失弾性率は1×107〜8×108Pa(1×108〜8×109dyne/cm2)の範囲にあることが好ましく、損失正接は0.2以下であることが好ましい。損失正接が大きすぎると粘着故障が発生しやすい。これらの熱特性や機械特性は媒体の面内各方向において10%以内でほぼ等しいことが好ましい。
磁性層中に含まれる残留溶媒は好ましくは100mg/m2以下、さらに好ましくは10mg/m2以下である。塗布層が有する空隙率は非磁性層、磁性層とも好ましくは30容量%以下、さらに好ましくは20容量%以下である。空隙率は高出力を果たすためには小さい方が好ましいが、目的によってはある値を確保した方が良い場合がある。例えば、繰り返し用途が重視されるディスク媒体では空隙率が大きい方が保存安定性は好ましいことが多い。
【0109】
磁性層のTOPO−3Dのmirau法で測定した中心面表面粗さRaは、4.0nm以下であり、好ましくは3.0nm以下であり、さらに好ましくは2.0nm以下である。磁性層の最大高さSRmaxは、0.5μm以下、十点平均粗さSRzは0.3μm以下、中心面山高さSRpは0.3μm以下、中心面谷深さSRvは0.3μm以下、中心面面積率SSrは20〜80%、平均波長Sλaは5〜300μmが好ましい。磁性層の表面突起は0.01〜1μmの大きさのものを0〜2000個の範囲で任意に設定することが可能であり、これにより電磁変換特性、摩擦係数を最適化することが好ましい。これらは非磁性支持体のフィラーによる表面性のコントロールや磁性層に添加する粉末の粒径と量、カレンダ処理のロール表面形状などで容易にコントロールすることができる。カールは±3mm以内とすることが好ましい。
【0110】
本発明の磁気記録媒体における非磁性層と磁性層と間では、目的に応じ非磁性層と磁性層でこれらの物理特性を変えることができるのは容易に推定されることである。例えば、磁性層の弾性率を高くし保存安定性を向上させると同時に非磁性層の弾性率を磁性層より低くして磁気記録媒体のヘッドへの当りをよくするなどである。
本発明の磁気記録媒体は、磁気記録媒体に磁気記録された信号を再生するヘッドについては特に制限はないが、MRヘッドのために用いることが好ましい。本発明の磁気記録媒体の再生にMRヘッドを用いる場合、MRヘッドには特に制限はなく、例えばGMRヘッドやTMRヘッドを用いることもできる。また、磁気記録に用いるヘッドは特に制限されないが、飽和磁化量が1.0T以上であり、1.5T以上であることが好ましい。
【実施例】
【0111】
以下に本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。なお、ここに示す成分、割合、操作、順序等は本発明の範囲内で適宜変更し得るものであり、下記の実施例に制限されるべきものではない。また、実施例中の「部」特に示さない限り質量部を示す。
【0112】
(実施例1)
1.平滑化層用塗料液の調製
下記組成の平滑化層用塗料の組成物各成分をオープンニーダで60分間混練した後、サンドミルで120分間分散し、1μmの平均孔径を有するフィルターを用いて濾過し、平滑化層用塗料液を調製した。
−平滑化層用塗料液の組成−
微粒子粉末…16部
α−酸化鉄
表面処理剤:Αl23,SiO2長軸径:0.15μm
タップ密度:0.8g/ml
針状比:7
BET比表面積(SBET):52m2/g
pH:8
DBP吸油量:33ml/100g
カーボンブラック(デグサ社製、Nipex35)…4部
平均粒径:31nm
DBP吸油量:42ml/100g
pH:9.0
BET比表面積(SBET):65m2/g
揮発分:0.5%
アゾ化合物(誘導体を有する有機色素化合物、分散剤)…0.2部
前記例示化合物A−2
放射線硬化型樹脂(放射線硬化型化合物)…100部
アクリル酸2−(2−アクリロイルオキシ−1,1−ジメチルエチル)−5−エチル−[1,3]ジオキサン−5−イルメチルエステルシクロヘキサノン…320部
メチルエチルケトン…480部
【0113】
2.非磁性層用塗料液の調製
下記組成の非磁性層用塗料組成物について、各成分をオープンニーダで60分間混練した後、サンドミルで120分間分散した。得られた分散液に3官能性低分子量ポリイソシアネート化合物(日本ポリウレタン製コロネート3041)を6部加え、さらに20分間撹拌混合した後、1μmの平均孔径を有するフィルターを用いて濾過し、非磁性層用塗料液を調製した。
−非磁性層用塗料液組成−
非磁性無機質粉末…85部
α−酸化鉄
表面処理剤:Αl23,SiO2
長軸径:0.15μm
タップ密度:0.8g/ml
針状比:7
BET比表面積(SBET):52m2/g
pH:8
DBP吸油量:33ml/100g
カーボンブラック…20部
DBP吸油量:120ml/100g
pH:8
BET比表面積(SBET):250m2/g
揮発分:1.5%
ポリウレタン樹脂…12部
分岐側鎖含有ポリエステルポリオール/ジフェニルメタンジイソシアネート系、
親水性極性基:−SO3Na=70eq/ton含有
アクリル樹脂…6部
ベンジルメタクリレート/ダイアセトンアクリルアミド系、
親水性極性基:−SO3Na=60eq/ton含有
フェニルホスホン酸…3部
α−Αl23(平均粒径0.2μm)…1部
シクロヘキサノン…140部
メチルエチルケトン…170部
ブチルステアレート…2部
ステアリン酸…1部
【0114】
3.磁性体1の作製
(急冷薄帯の作製)
Ar雰囲気中で以下の作業を行った。表1記載の組成となるようアーク炉にて原料を溶解した溶融合金を冷却後、石英管に入れた。高周波で合金を溶解し、Arガスで圧力をかけ石英管から石英製のオリフィスを通して溶融金属を回転する銅ロール上に吹きつけた。ロールの回転数は20m/sであった。
これにより急冷薄帯を得ることができた。これを500℃で粒子直径が25nmになるまで加熱した。この結果、表1記載の希土類−遷移金属−半金属の単結晶からなるナノ結晶と、その結晶粒界に希土類−遷移金属相からなっていた。
【0115】
(急冷薄帯から希土類−遷移金属−半金属の単結晶ナノ粒子の取り出し)
2ガスのバブリングにより脱酸素した蒸留水を用いて作製した0.1kmol/m3のNaCl水溶液中に急冷薄帯を浸漬することで希土類−遷移金属相を溶解除去した。この後、脱酸素した蒸留水で洗浄することでNaClを除去した。
(不働体皮膜の形成)
空気中60℃で8時間加熱することで、表面に不働体皮膜である酸化皮膜を形成した。厚みは透過電子顕微鏡にて確認し5nmであった。
【0116】
以上のようにして得られた磁性体1の組成及び磁気特性は表1に示した。
磁気特性の評価(保磁力の測定)は、東英工業製の高感度磁化ベクトル測定機と同社製DATA処理装置を使用し、印加磁場790kA/m(10kOe)の条件で行った。
【0117】
【表1】

【0118】
4.磁性層用塗料液の調製
下記組成の上層用磁性液について、各成分をオープンニーダで60分間混練した後、サンドミルで120分間分散した。得られた分散液に3官能性低分子量ポリイソシアネート化合物(日本ポリウレタン製 コロネート3041)を6部加え、さらに20分間撹拌混合した後、1μmの平均孔径を有するフィルターを用いて濾過し、磁性層用塗料液を調製した。
−磁性層用塗料液組成−
前記磁性体1 100部
化合物 7.5部
塩化ビニル/酢酸ビニル/グリシジルメタクリレート/
2-ヒドロキシプロピルアリルエーテル=86/5/5/4の
共重合体にヒドロキシエチルスルフォネートナトリウム塩を付加した化合物
(SO3Na=6×10-5eq/g、エポキシ=10-3eq/g、
重量平均分子量(Mw)=30,000)
ポリウレタン樹脂 5部
(SO3Na=7×10-5eq/g、末端OH基含有、
Mw=40,000、Tg90℃のポリエステルポリウレタン)
シクロヘキサノン 60部
粒径0.1μmのアルミナ研磨剤 1.5部
カーボンブラック(粒子サイズ40nm) 2部
メチルエチルケトン 51部
トルエン 1200部
ポリイソシアネート(日本ポリウレタン製コロネート3041) 5部(固形分)
ブチルステアレート 5部
イソヘキサデシルステアレート 5部
ステアリン酸 1部
オレイン酸 1部
【0119】
予めコロナ処理を行った厚さ6μmのポリエチレンナフタレート非磁性支持体上に平滑化層用塗料液を乾燥後の厚さが0.5μmになるように塗布、乾燥した後、加速電圧160kVで吸収線量が5Mradとなるように電子線照射を行い、次いで上記非磁性塗料液を乾燥後の厚さが2μmになるように塗布し、さらにその直後に磁性層用塗料液を乾燥後の厚さが0.08μmになるように同時重層塗布した。磁性層および非磁性層が未乾燥の状態で300mT(3000ガウス)の磁石で磁場配向を行い、さらに乾燥後、金属ロールのみから構成される7段のカレンダで速度100m/min、線圧300kg/cm、温度90℃で表面平滑化処理を行った後、70℃で48時間加熱処理を行い、1/2インチ幅にスリットし磁気テープを作製した。
【0120】
(実施例2)
実施例1の平滑化層用塗料液の調製において、平滑化層用塗料液の組成中、カーボンブラックを以下に示すもの変更したこと以外は実施例1と同様にして磁気記録媒体を作製した。
カーボンブラック(デグサ社製、Printex55)…4部
平均粒径:25nm
DBP吸油量:45ml/100g
pH:9.5
BET比表面積(SBET):110m2/g
揮発分:1.2%
【0121】
(実施例3)
実施例1の平滑化層用塗料液の調製において、平滑化層用塗料液の組成中、アゾ化合物を、フタロシアニン化合物(前記例示化合物F−3)に変更したこと以外は実施例1と同様にして磁気記録媒体を作製した。
【0122】
【表2】

【0123】
(比較例1)
実施例1の磁性層用塗料液の調製において、磁性層用塗料液の組成中、磁性体1を下記の強磁性針状金属粉末に変更したこと以外は実施例1と同様にして磁気記録媒体を作製した。
組成:Fe/Co/Al/Y=67/20/8/5
表面処理剤:Al23,Y23抗磁力(Hc):183kA/m
結晶子サイズ:12.5nm
長軸径:46nm
針状比:6
BET比表面積(SBET):44m2/g
飽和磁化(σs):140A・m2/kg(140emu)
【0124】
(比較例2)
平滑化層を設けなかったこと以外は実施例1と同様にして磁気記録媒体を作製した。
【0125】
(比較例3)
平滑化層を設けなかったこと以外は比較例1と同様にして磁気記録媒体を作製した。
【0126】
[評価]
以上のようにして得られた実施例と比較例の磁気記録媒体に対して以下の評価を行った。
【0127】
1.磁性層の中心面平均粗さ
デジタルオプチカルメーター(WKYO製TOPO−3D)を用い、中心面平均粗さRa(nm)を測定した。
2.摩擦係数
23℃70%RH環境にて磁性層面をSUS420部材に接触させて荷重50gをかけ、14mm/secで1パス摺動させた摩擦係数を測定した。また、上記と同様の条件で、繰り返し100パス摺動させた摩擦係数を測定した。
3.出力
DDS4ドライブにて4.7MHzの単一周波数信号を最適記録電流で記録し、その再生出力を測定した。比較例1の再生出力を0dBとした相対値で示した。
4.C/N
C/Nの測定はドラムテスターを用いて行った。1.5TのMIGヘッドを用い、記録波長0.2μmの信号を書き込み、MRヘッドで再生し、スペクトラムアナライザーで得られた出力と、出力から±0.5MHz離れた位置での電圧をノイズとして測定しC/N値を求めた。テープとヘッドの相対速度は5m/s、比較例1のC/Nを0dBとして相対値で表した。
5.ドロップアウト
40℃80%RH環境下でDVC−PROドライブを用いてテープを走行させながらドロップアウトカウンタで1分間測定し、5sec以上初期出力に対して−5dB低下したものをドロップアウトとし、その個数を調べ、
「○」を20個以下とし、
「△」を50個以下とし、
「×」を50個を超える個数として評価した。
6.スチル耐久性
23℃10%の環境下で、D3VTR(松下電器製D350)を用いてスチル状態にし、出力が初期値から−6dBとなるまで時間を測定し、
「○」を8hrとし、
「△」を2hrとし、
「×」を2hr未満と評価した。
【0128】
以上の評価結果より、実施例1〜3の磁気記録媒体は、出力・C/Nが大きいことから、電磁変換特性に優れるとともに、ドロップアウト及びスチル耐久性の評価から、走行異常、ヘッド汚れによるドロップアウトを有効に低減することができたことが分かる。これに対して、比較例1〜3の磁気記録媒体は、以上の評価においてすべてを同時に満足することができなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非磁性支持体の一方の面側に磁性層を有する磁気記録媒体であって、
前記磁性層が、粒子直径5〜50nmで希土類−遷移金属−半金属の単結晶からなる磁性粒子と結合剤とを含有し、前記非磁性支持体と前記磁性層との間に平滑化層を少なくとも1層設けたことを特徴とする磁気記録媒体。
【請求項2】
さらに、非磁性支持体の他方の面側にバックコート層を有し、前記非磁性支持体とバックコート層との間に平滑化層を少なくとも1層設けたことを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体。
【請求項3】
前記平滑化層が、放射線硬化型化合物と、平均一次粒子径が5〜40nm、かつDBP吸油量が10〜60ml/100gであるカーボンブラックと、誘導体を有する有機色素化合物とを含むことを特徴とする請求項1または2に記載の磁気記録媒体。
【請求項4】
前記平滑化層の厚さが0.1〜3.0μmであることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の磁気記録媒体。
【請求項5】
前記非磁性支持体の表面が、コロナ処理、プラズマ処理、フレーム処理、及び電子線照射処理からなる群より選択されるいずれかの処理により昜接着処理されている請求項1から4のいずれか1項に記載の磁気記録媒体。

【公開番号】特開2006−344314(P2006−344314A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−169995(P2005−169995)
【出願日】平成17年6月9日(2005.6.9)
【出願人】(000005201)富士フイルムホールディングス株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】