説明

磁気記録媒体

【課題】ガラス基板を用いた磁気記録媒体において、高い異方性を有して、優れた電磁変換特性を有し、パーティクルの少ない磁気記録媒体を提供することを目的とする。
【解決手段】ガラス基板、シード層および磁性層を備えた磁気記録媒体において、ガラス基板にテクスチャ加工を施し、シード層は、CrとTiからなる第1シード層、NiとCrからなる第2シード層、NiとNbからなる第3シード層を順次積層したことを特徴とする。
テクスチャ加工は、1μm平方あたり25本以上、60本以下の略同心円状の溝であることが好ましく、溝の深さは、3nm以上、5nm以下であることが好ましい。
第1シード層はTiを30原子%以上、60原子%以下含有し、第2シード層はCrを30原子%以上、60原子%以下含有し、第3シード層はNbを30原子%以上、60原子%以下含有することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定磁気記録装置(HDD)に搭載される磁気記録媒体およびその製造方法に関する。より詳細には、ガラス系材料の基板を用いる異方性磁気記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
基板面内に平行に磁化を記録する、いわゆる長手磁気記録媒体では、磁性層の磁化容易軸を記録を行う円周方向に配向させて用いることが一般的である。円周方向の残留磁化(Mrc)と半径方向の残留磁化(Mrr)が異なる磁気記録媒体は異方性磁気記録媒体と呼ばれ、一般的には両者の比であるMrc/Mrrが大きくなるほど磁気記録媒体の性能は向上する。以下、Mrc/MrrをOR−Mrtと表記する。
アルミニウム系材料を基板として用いた磁気記録媒体では、基板表面にテクスチャと呼ばれる円周方向の溝を形成して異方性を得ている。一般的には、アルミニウム基板上にNiPメッキを施し、その表面にテクスチャ加工を行うことにより、円周状の溝を形成し、その溝により磁性層の円周方向と半径方向の残留磁化の差を発生させている。テクスチャ加工は、磁気記録媒体上を磁気ヘッドが浮上しシークする時に、磁気記録媒体と磁気ヘッドが接触し磨耗することを防止する役割も併せ持っている。
【0003】
一方、従来のガラス系材料の基板を用いた磁気記録媒体は、基板材料そのものの硬度が高く、熱膨張が小さく、テクスチャ加工を行っても円周方向と半径方向の残留磁化の差を得ることが困難であることから、いわゆる等方性磁気記録媒体が一般的であった。
近年、磁気記録媒体の高密度化が進み、磁気記録媒体に書き込まれるデータの最小単位であるビットサイズはますます小さくなってきている。ガラス系基板を用いた等方性媒体ではビットサイズが小さくなると、アルミニウム系基板のような異方性磁気記録媒体と比較し、分解能が低く信号対雑音比(SNR)が悪くなるという特性が顕著になってきている。これは等方性磁気記録媒体で異方性磁気記録媒体と同等な特性を得ようとすると円周方向の残留磁化と膜厚の積(Mr・t)を高くする必要があり、磁性層が厚くなる結果、磁性層に起因するノイズが増大するためである。このため、ガラス基板を用いた磁気記録媒体において、磁性層の配向性を向上するための各種の工夫が提案されてきている。例えば、基板上に形成した下地層の表面を酸化処理することにより、磁性層の磁化容易軸の面内配向を向上することが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。この方法は特定の下地層材料に対しては効果を有するものの、他の材料においては却って特性を劣化させる結果をもたらす。また、磁性層を構成する結晶粒を基板面に対して傾け、円周方向に向かせることにより、円周方向の保磁力を増大させる方法が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。この方法においては特殊な成膜装置が必要とされ、またスパッタ成膜時の原材料の使用効率が低下する欠点を有している。
【0004】
この点を改良するために我々は、これまでに、テクスチャ加工したガラス基板にCrシード層やNiNbシード層の成膜時に窒素ガスを添加し、CrやNiNbを非晶質化することで磁気記録媒体の電磁変換特性を向上させてきたが、Arガスに窒素(N)を添加して成膜するとスパッタパーティクルが発生し、製品の歩留まりが低下してしまうという問題があった。
【特許文献1】特開平10−143865号公報
【特許文献2】特開2002−260208号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上のような問題点に鑑みなされたもので、ガラス基板を用いた磁気記録媒体において、高い異方性を有して、優れた電磁変換特性を有し、パーティクルの少ない磁気記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ガラス基板、シード層および磁性層を備えた磁気記録媒体において、前記ガラス基板は、テクスチャ加工が施され、前記シード層は、CrとTiからなる第1シード層、NiとCrからなる第2シード層、NiとNbからなる第3シード層を順次積層したことを特徴とする。
前記テクスチャ加工は、1μm平方あたり25本以上、60本以下の略同心円状の溝であることが好ましい。
また、前記略同心円状の溝の深さは、3nm以上、5nm以下であることが好ましい。
また、前記第1シード層はTiを30原子%以上、60原子%以下含有し、前記第2シード層はCrを30原子%以上、60原子%以下含有し、前記第3シード層はNbを30原子%以上、60原子%以下含有することが好ましい。
【0007】
また、前期第3シード層成膜後に酸素暴露することが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
磁気記録媒体を上述のように構成することにより、ガラス基板を用いた磁気記録媒体においても、高い異方性を有する異方性磁気記録媒体とすることができ、優れた磁気特性と電磁変換特性を実現することが可能となる。またスパッタガスにNを添加せず、Arのみで行うことにより、スパッタパーティクルを低減させ、歩留まりの向上が図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】

以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。 図1は、本発明の磁気記録媒体の構成例を説明するための図で、磁気記録媒体は、ガラス基板1上に、シード層2、下地層3、磁性層4および保護層5が順次積層され、更に、保護層5の上には潤滑層6が形成されて構成されている。シード層2は第1シード層21、第2シード層22、第3シード層23を積層して構成されている。
ガラス基板1に用いる材料は、化学強化ガラス、結晶化ガラス等、磁気記録媒体用に用いられる通常のガラス系材料を用いることができる。中心部に円形孔を有する円板状が好ましく、中心部の円形孔の径、基板の外径および基板の板厚等は、所望の用途に応じて適宜設定される。
【0010】
ガラス基板1には、テクスチャ加工を施す。テクスチャ加工に先立ち、ガラス基板に通常の方法でポリッシュ加工を施して表面を平滑化しておくことが好ましい。ポリッシュ加工後のRa(中心線平均粗さ)は好ましくは0.15〜0.3nmである。表面を平滑化した基板に対してテクスチャ加工を施して、円周方向に略同心円状の溝を形成する。テクスチャ加工法としては遊離砥粒法が好ましい。具体的には、研磨砥粒を含まない加工布(ウレタン、ポリエステル、ナイロン等)を基板表面に押圧し、加工布に研磨用スラリー(ダイヤモンド、酸化アルミニウム、酸化セリウム、コロイダルシリカ、シリコンカーバイト等)を含ませて基板を回転させながら実施する。上記テクスチャ加工を施した基板には1μm平方あたり25〜60本の円周方向の略同心円状の溝が形成されることが好ましい。25本未満では所望の残留磁化異方性を得られない。基板表面粗さを小さくするに従い、溝の数は多くすることが好ましい。しかしながら、溝の数を多くするに従って所望の深さを得ることが困難になることから溝の数は60本以下が好ましい。
【0011】
基板に形成される溝は3〜5nmの深さが好ましい。3nm未満の場合は所望の残留磁化異方性が得られず、溝の深さが5nmより深くなる場合は、磁気記録媒体のエラーが増大して信号品質を劣化させ、実用に耐えなくなる。
このようにテクスチャ加工されたガラス基板はよく洗浄し、表面の異物を取り除いたのち、成膜を行う。
シード層2は第1シード層21、第2シード層22、第3シード層23を積層して構成され、その上に形成される層の結晶配向および結晶粒径等を制御して磁気記録媒体の所望の特性を得るために設ける層である。第1シード層21としてCrTi合金を用い、第2シード層22としてNiCr合金を用い、第3シード層23にNiNb合金を用いることにより、半径方向残留磁化に対して円周方向残留磁化を著しく増加することが可能であり、OR−Mrtを1.7以上とすることができる。これら3つのシード層はスパッタ法にて成膜することが好ましい。第1シード層は5〜10nmの厚さ、第2シード層は5〜10nmの厚さ、第3シード層は10〜12nmの厚さとすることが好ましい。
【0012】
磁性層、保護層の成膜でバイアス印加成膜を行うため、第3シード層成膜後に高真空を維持したまま基板を持ち替える。ガラス基板は絶縁性であるため、バイアスを印加するためには第3シード層にバイアスを印加する電極(バイアス電極)を接触することとなるが、基板を保持する基板ホルダがバイアス電極を兼ねることとし、第3シード層成膜後に基板の保持位置を変更することにより、バイアス印加が可能となる。保持位置の変更は、基板ホルダに位置変更の機能を付加する方法で良い。このようにすることで、以降の各層の成膜でもバイアス印加が可能となる。
CrTi合金からなる第1シード層21はTiを30原子%以上、60原子%以下含有することが好ましい。Tiが30原子%未満、およびTiが60原子%を超えるとOR−Mrtが低下する傾向がある。
【0013】
NiCr合金からなる第2シード層22はCrを30原子%以上、60原子%以下含有することが好ましい。Crが30原子%未満、およびCrが60原子%を超えるとOR−Mrtが低下する傾向がある。
NiNb合金からなる第3シード層23はNbを30原子%以上、60原子%以下含有することが好ましい。Nbが30原子%未満、およびNbが60原子%を超えるとOR−Mrtが低下する傾向がある。
下地層3は、その上に形成される磁性層の結晶配向および結晶粒径を制御して所望の特性を有する磁気記録媒体を得るために用いられる。下地層の材料としてはCr、CrMo系合金を用いることができる。下地層もスパッタ法により成膜することが好ましく、その厚さは10nm以下が好ましい。
【0014】
また、下地層3は2層以上の複層の構成にすることができる。この場合、たとえば第1の下地層をCr、第2の下地層をCrMo等とするとOR−Mrtを大きくし、さらに下地層上に形成される磁性層をエピタキシャル成長させやすくするという効果がある。下地層を複層とする場合の膜厚は、下地層全体の膜厚を10nm以下とすることが好ましい。
磁性層4は、Coを主とする磁性材料により形成される。例えば、CoCr合金、CoCrTa合金、CoCrPt合金、CoCrPtB合金、CoCrPtBCu合金等を用いることができる。磁性層の成膜方法は、スパッタ法が好ましく、その膜厚は5〜20nmが好ましい。
また、磁性層4は2層以上の複層の構成にすることができる。例えば第1の磁性層をCoCrTa合金、第2の磁性層をCoCrPtB合金、第3の磁性層をCoCrPtBCu合金等とすると記録密度の向上に効果がある。磁性層を複層とする場合の膜厚は、磁性層全体の膜厚を20nm以下にすることが好ましい。
【0015】
保護層5は、磁性層以下の層を磁気ヘッドとの接触による破壊から防止するために形成される。従って硬度が高い材料を使用することが好ましく、C、CN(窒化炭素)、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)等を用いることができる。保護層はスパッタ法またはCVD法等により形成される。保護層は磁気記録媒体の特性を向上させるためには薄いほうが好ましく、2〜4nmの厚さが好ましい。
以上の下地層3、磁性層4、保護層5の成膜においては、基板に対して直流またはRFのバイアスを印加することが好ましい。
潤滑層6は、磁気記録媒体と磁気ヘッドが接触した場合の摩擦の低減等を目的として形成されるもので、通常の磁気記録媒体で使用されるパーフロロポリエーテル等の液体潤滑剤を用いることができる。潤滑層は液体潤滑剤をスピンコート、浸漬塗布等の方法で形成することができ、その厚さは1〜2nmが好ましい。
【0016】
以下、実施例を用いてさらに詳細に説明する。
【実施例1】
【0017】
ガラス基板1として、直径21.6mm、板厚0.381mmの化学強化ガラス基板(旭硝子社製ガラス基板)を用い、これにポリッシュ加工を施して表面粗さRaを0.2nmとした。引続き、不織布、ダイヤモンドスラリーを用いて、浮遊砥粒法によりテクスチャ加工を施し、1μm平方あたり平均60本の円周方向の略同心円状の溝を形成した。溝の深さは平均3nmであった。
引続き、ガラス基板を良く洗浄した後、成膜装置に導入した。始めに、ガラス基板上に第1シード層21であるCrTi膜をDCマグネトロンスパッタ法により形成した。Cr50Ti(ここで、数字は引続く元素の原子%を表し、Tiが50原子%、残余がCrであることを表す。以下同様である。)のスパッタターゲットを用い、スパッタガスとしてArガス、ガス圧力は1Paにて、膜厚5nmの第1シード層を形成した。続いて、第2シード層22であるNiCr膜をDCマグネトロンスパッタ法により形成した。Ni50Crのスパッタターゲットを用い、スパッタガスはArガスを用いて、ガス圧力は1Paにて、膜厚8nmの第2シード層を形成した。第2シード層上に第3シード層23であるNiNb膜をDCマグネトロンスパッタ法により形成した。Ni50Nbのスパッタターゲットを用い、スパッタガスとしてArガス、ガス圧力は1Paにて、膜厚10nmの第3シード層を形成した。なお、第3シード層成膜後に高真空を維持したスパッタ装置内で基板を基板ホルダから一度はずし、基板を保持している位置を変更して再度基板ホルダに取り付け、基板と基板ホルダの間に導電性を確保して、以降の成膜にバイアス印加可能とした。バイアス印加可能とすることで磁気記録媒体の大幅な特性向上と保護膜の成膜にCVD法を用いることができるようになる。このように3層積層されたシード層2を成膜した基板は、下地層3を成膜する前に1Paのガス圧下で30重量%のOを添加したArガス(以下、Ar+30重量%Oガスとも表す。)に暴露し、第3シード層であるNiNbの表面に酸素を吸着させる工程を行った。次にヒータにより約270℃に基板を加熱し、下地層3を成膜した。下地層3は3層構成とし、Cr膜、CrMoB膜、CrMo膜の順に形成した。各膜のいずれもスパッタガスとしてArガスを用い、ガス圧力は1Paにて、DCマグネトロンスパッタ法を用いて形成した。Cr膜はCrからなるスパッタターゲットを用いて膜厚3nmにて形成した。CrMoB膜はCr15Mo7Bのターゲットを用いて、膜厚1nmにて形成した。CrMo膜はCr30Moのターゲットを用いて、膜厚2nmにて形成した。
【0018】
引続いて磁性層4を形成した。磁性層4は4層構成とし、CoCrTa膜、Ru膜、CoCrPtBCu膜、組成の異なるCoCrPtBCu膜の順に形成した。各膜のいずれもスパッタガスとしてArガスを用い、ガス圧力は1Paにて、DCマグネトロンスパッタ法を用いて形成した。CoCrTa膜はCo17Cr5Taのスパッタターゲットを用いて、膜厚3nmにて形成した。Ru膜は、Ruのスパッタターゲットを用いて、膜厚0.8nmにて形成した。次に、ヒータにより基板を270℃に再度加熱した後、CoCrPtBCu膜を形成した。Co24Cr14Pt8B4Cu膜のターゲットを用いて、基板にDCバイアスを−350V印加しながら、膜厚10nmにて形成した。続いて、組成の異なるCoCrPtBCu膜を形成した。Co13Cr11Pt10B4Cu膜のターゲットを用いて基板にDCバイアスを−350V印加しながら、膜厚8nmにて形成した。
【0019】
引続いてカーボンからなる保護層5をRF−CVD法で形成した。Cガスを導入し−220VのRFバイアスを基板に印加しながら、2.5nmの膜厚にて形成した。
引続き、パーフロロポリエーテルからなる潤滑剤を1.6nm塗布して磁気記録媒体を得て、実施例1とした。
(比較例1)
第1シード層を形成しないこと以外は実施例1と同様にして磁気記録媒体を作製し、比較例1とした。
(比較例2)
第2シード層2を形成しないこと以外は実施例1と同様にして磁気記録媒体を作製し、比較例2とした。
(比較例3)
第1シード層のスパッタターゲットをCr、第2シード層のスパッタターゲットをNiNbとして、両層ともスパッタガスとしてAr+20重量%Nを用いて成膜し、第3シード層を形成せずに下地層以降を成膜したこと以外は実施例1と同様にして磁気記録媒体を作製し、比較例3とした。スパッタガスがNガスを含有することから、成膜した層内にはNを含有し、第1シード層の組成はCrN、第2シード層の組成はNiNbNとなっている。
【0020】
表1に実施例1および比較例1ないし3のOR−Mrtを示す。
【0021】
【表1】

第1シード層としてCrTiを用い、第2シード層としてNiCrを用い、第3シード層としてNiNbを用いた場合にガラス基板を用いてもOR−Mrtが1.7以上と高い値が得られている。このように本発明のような構成にするとArガスでスパッタしても高いOR−Mrtが得られる。比較例1のように第1のシード層を形成しない場合や比較例2のように第2のシード層を形成しない場合はOR−Mrtは低下する。また、比較例3のように、第1のシード層にCrN、第2のシード層にNiNbNを用いた場合に比較して、実施例1の方が格段にOR−Mrtを大きくすることができる。
また、スパッタガスとして純Arガスを用いることによりスパッタ成膜時のパーティクル発生を抑制することが可能である。スパッタガス以外の条件を同じにし、CrターゲットをArおよびAr+20重量%Nガスでスパッタした場合のスパッタ室中でのパーティクルを測定した結果、Arでは1回の成膜で1〜2個のパーティクルの発生量であるが、Ar+20重量%Nガスの場合は7〜8個のパーティクルの発生量であった。相当数の測定を行ったが、明らかにAr+20重量%Nガスの場合がパーティクルの発生量が多いことが確認された。従って、純Arでスパッタすることにより、製品の良品率を向上させることができる。不良項目として、データの読み書きに関する不良(R/Wエラー)、磁気ヘッドの浮上高さ不良(GHTエラー)を実施例1と比較例3で比較した結果、実施例1の良品率はR/Wエラーで約8%程度の改善、GHTエラーで約6%の改善が見られた。
【0022】
表2に実施例1と比較例1ないし3の磁気記録媒体の保磁力(Hcr)、信号対雑音比(SNR)を示す。
実施例1は、比較例1ないし3に比べて高いHcr、優れたSNRが得られることがわかる。
【0023】
【表2】

このように第1シード層としてCrTiを用い、第2シード層としてNiCrを用い、第3シード層としてNiNbを用いることにより、スパッタガスとして純Arを用いても、高い保磁力、優れた電磁変換特性を得ることができ、また、スパッタパーティクルが少なく高い良品率で磁気記録媒体を安定的に生産することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の磁気記録媒体の構成例を説明するための断面模式図である。
【符号の説明】
【0025】
1 ガラス基板
2 シード層
21 第1シード層
22 第2シード層
23 第3シード層
3 下地層
4 磁性層
5 保護層
6 潤滑層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基板、シード層および磁性層を備えた磁気記録媒体において、
前記ガラス基板は、テクスチャ加工が施され、
前記シード層は、CrとTiからなる第1シード層、NiとCrからなる第2シード層、NiとNbからなる第3シード層を順次積層したことを特徴とする磁気記録媒体。
【請求項2】
前記テクスチャ加工は、1μm平方あたり25本以上、60本以下の略同心円状の溝であることを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体。
【請求項3】
前記略同心円状の溝の深さは、3nm以上、5nm以下であることを特徴とする請求項2に記載の磁気記録媒体。
【請求項4】
前記第1シード層はTiを30原子%以上、60原子%以下含有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の磁気記録媒体。
【請求項5】
前記第2シード層はCrを30原子%以上、60原子%以下含有することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の磁気記録媒体。
【請求項6】
前記第3シード層はNbを30原子%以上、60原子%以下含有することを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の磁気記録媒体。
【請求項7】
前期第3シード層成膜後に酸素暴露したことを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の磁気記録媒体。



【図1】
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