説明

磁気記録媒体

【課題】高記録密度を実現する塗布型の磁気記録媒体を提供する。
【解決手段】磁性層膜厚をtとして、磁性層の表面からt/5の範囲にある部分の磁性層のSFD値が、磁性層全体のSFD値の0.5〜0.8の範囲に含まれていることを特徴とする磁気記録媒体による。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可撓性支持体上に磁性層塗膜を形成することにより得られる塗布型の磁気記録媒体に関し、記録容量、アクセス速度、転送速度が高い磁気記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気記録媒体の一つである磁気テープは、オーディオテープ、ビデオテープ、コンピユーターテープなど種々の用途があるが、特にデータバックアップ用テープの分野ではバックアップ対象となるハードディスクの大容量化に伴い、1巻当たり300GB以上の記憶容量のものが商品化されており、今後ハードディスクのさらなる大容量化に対応するためバックアップテープの高容量化は不可欠である。
【0003】
高記録密度を実現するためには、記録波長を短くすることとトラック幅を小さくする必要がある。この両者が相まって高記録密度が実現できるのであるが、これらのことによって記録再生におけるSNRが低下し、十分な記録再生ができなくなってくる。このため短波長、狭トラック幅でもSNRが確保できるような磁気記録媒体、及び記録再生ヘッドが開発されてきた。特に磁気抵抗効果を利用したMRヘッドを実用化することで高い再生出力を得ることができ、SNRを高めることができる。
【0004】
MRヘッドを用いるとアンプなどの電気回路依存のノイズを上げることなく、再生出力を高めることができるので、SNRを高めることが出来る。しかし磁気記録媒体起因の磁化遷移幅を狭めることは出来ないので、記録分解能を改善することは出来ない。高いSNRと良好な分解能の両者が、高記録密度化には必要である。
【0005】
このように高記録密度化をはかるためにMRヘッドを用いたとき、磁気記録媒では高出力を実現することも重要であるが、上記したような磁化遷移幅を低減することも必要となってくる。磁気記録媒体の磁化遷移幅は、ヘッド−媒体間のスペーシング、磁気記録層膜厚、磁気記録媒体の残留磁化、保磁力、及びSFDで代表される保磁力のバラツキに依存する。特に磁化遷移幅を小さくするためにはSFDを小さくすることが有効である。
【0006】
蒸着やスパッタによって磁性層を形成する金属薄膜型の磁気記録媒体においては、材料や製造条件を最適化することで、SFD値を小さくしてきた。また主として強磁性磁性粉と結合材を含むいわゆる塗布型の磁気記録媒体においては、この強磁性磁性粉の粒径のバラツキを絞り込むことによって、SFDを小さくすることができる。
【0007】
通常塗布型磁気記録媒体に用いる強磁性磁性粉は、鉄−コバルト合金を主成分とした金属微粒子粉が用いられるが、保磁力を確保するため、その形状を針状やスピンドル状といった異方性が付与できる形状にする必要があった。このような強磁性磁性粉を用いた塗布型磁気記録媒体は、特開2004−319838、特開2005−025936、特開2005−026603、特開2005−032367等に記載され、粒径のバラツキを小さくした微粒子を使用した磁気記録媒体により高分解能の実現を図ろうとしているが、未だ十分とは言えなかった。
【0008】
【特許文献1】特開2004−319838号
【特許文献2】特開2005−025936号
【特許文献3】特開2005−026603号
【特許文献4】特開2005−032367号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
以上のように粒度分布の小さい微粒子を使用する場合でも、高分解能が実現できないひとつの理由として、磁気記録媒体構成上の問題点がある。磁気記録媒体における記録ヘッドに近い部分は、高い保磁力、低いSFD値である方が分解能を高めることが出来るが、ヘッドから離れている部分においては透磁率が高い方が分解能を高めるのに有利になる。単一の磁性層では、このような構成にすることは困難であった。
【0010】
本発明は、主として磁気記録媒体における上記のような問題に対処するもので、その目的は単一の磁性層を用いるにもかかわらず、磁性層の厚み方向で磁気特性に変化を付け、高容量化に対応した高分解能の確保を実現した磁気記録媒体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記の目的を達成するため鋭意検討した結果、磁性層のSFD値に注目し、表面に近い部分のSFDを、その他の部分のSFDに比べて相対的に小さくすることにより、高分解能を実現できることを見出した。
【0012】
本発明は、以上の知見をもとにして、完成されたものである。すなわち、本発明は可撓性支持体上に少なくとも磁性層を有する磁気記録媒体であって、かつ前記磁性層の膜厚をtとしたとき、前記磁性層の表面からt/5の範囲にある部分の磁性層のSFD値が、磁性層全体のSFD値の0.5〜0.8の範囲に含まれていることを特徴とする磁気記録媒体(請求項1)、及び磁性層断面をSEM観察した視野像から求められる前記磁性層に含まれる二次粒子を含む磁性粒子の長軸長と短軸長の軸長比において、視野像中の95%以上の磁性粒子の長軸長と短軸長の軸長比が、1.5以下であることを特徴とする請求項1記載の磁気記録媒体(請求項2)とに関わるものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明に記載する磁気記録媒体を用いることによって、記録再生において十分高い分解能を得ることができ、よって高記録密度において十分に低いエラーレートを実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の磁気記録媒体の好ましい実施形態を説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。磁気記録媒体はデジタル記録用であり、可撓性磁性支持体の少なくとも一面上に上層磁性層が設けられている。とくに高記録密度が必要である記録媒体では、該可撓性支持体と該上層磁性層の間に隣接して下層非磁性層を設けることができる。また特に走行高信頼性が必要であるテープ媒体では、支持体の前記下層非磁性層と上層磁性層からなる表層塗布層の他面上に、バックコート層を設けることができる。以下に本発明を実施するための、非磁性支持体、下層非磁性層、上層磁性層、バックコート層について詳述する。
【0015】
非磁性支持体の長手方向のヤング率が5.9GPa(600kg/mm)以上で、且つ幅方向のヤング率が3.9GPa(400kg/mm)以上であることが好ましく、さらに長手方向のヤング率が9.9GPa(1000kg/mm)以上、且つ幅方向のヤング率が7.9GPa(800kg/mm)以上がより好ましい。非磁性支持体の長手方向のヤング率が5.9GPa(600kg/mm)以上がよいのは、長手方向のヤング率が5.9GPa(600kg/mm)未満では、テープ走行が不安定になるためである。非磁性支持体の幅方向のヤング率が3.9GPa(400kg/mm)以上がよいのは、幅方向のヤング率が3.9GPa(400kg/mm)未満では、テープのエッジダメージが発生しやすくなるためである。
【0016】
このような特性を満足する非磁性支持体には、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、二軸延伸の芳香族ポリアミドベースフィルム、芳香族ポリイミドフィルム等がある。なお、非磁性支持体の厚さは、用途によって異なるが、通常1〜7μmのものが使用される。より好ましくは2.5〜4.5μmである。この範囲の厚さの非磁性支持体が使用されるのは、1μm未満では製膜が難しく、またテープ強度が小さくなり、7μmを越えるとテープ全厚が厚くなり、テープ1巻当りの記憶容量が小さくなるためである。また、非磁性支持体の磁性層形成面の表面中心線平均粗さ(Ra)は2.5nm以上20nm以下がより好ましい。20nm以下がより好ましいのは、20nm以下であれば、下層非磁性層を薄くしても下層非磁性層表面及び磁性層表面の凹凸が小さくなるためである。
【0017】
下層非磁性層には、強度を高める目的で非磁性の無機質粉体を含み、この無機質粉体としては、金属酸化物、アルカリ土類金属塩等であることが好ましい。更に下層非磁性層に添加する無機質粉体としては、酸化鉄が好ましく、その粒径は50〜400nmがより好ましく、添加量は、全無機質粉体の重量を基準にして35〜83重量%が好ましい。この範囲の粒径が好ましいのは、粒径50nm未満では均一分散が難しく、400nmを越えると下層非磁性層とその直上の層との界面の凹凸が増加するためである。また、この範囲の添加量が好ましいのは、35重量%未満では塗膜強度向上効果が小さく、83重量%を越えると反って塗膜強度が低下するためである。
【0018】
下層非磁性層にはアルミナを添加することが好ましい。アルミナの添加量は、全非磁性粉体の重量を基準にして2〜30重量%がより好ましく、8〜20重量%がさらに好ましく、11〜20重量%が一層好ましい。添加するアルミナの粒径は、100nm以下が好ましく、10〜100nmのアルミナ添加がより好ましく、30〜90nmがさらに好ましく、50〜90nmが一層好ましい。また、下層非磁性層のアルミナはコランダム相を主体とするアルミナが特に好ましい。上記範囲のアルミナ添加量が好ましいのは、2重量%未満では塗料流動性が不充分となり、30重量%を越えると下層非磁性層とその直上の層との凹凸が大きくなるためである。また、100nm以下のアルミナが良いのは、磁性層形成面の表面粗さが2.5nm以上の平滑度が低い非磁性支持体を使用し、下層非磁性層が1.5μm以下と薄い場合に、アルミナの粒径が100nmを越えると、下層非磁性層表面の平滑効果が不充分になるためである。コランダム相を主体とするアルミナ(α化率:30%以上)が特に良いのは、σ、θやγアルミナ等を使用した場合に比べて少量で下層非磁性層のヤング率が高くなり、テープ強度が増すためである。また、テープ強度も高くなることで、テープエッジの波打ち(エッジウイーブ)による出力のばらつきも改善される。
【0019】
なお、上記粒径のアルミナと共に、全無機質粉体の重量を基準にして3重量%未満の100〜800nmのαアルミナを添加することを排除するものではない。
【0020】
下層非磁性層には、導電性向上を目的にカーボンブラック(CB)を添加する。添加するCBとしては、アセチレンブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック等を使用できる。粒径が5nm〜200nmのものが使用されるが、粒径10〜100nmのものが好ましい。この範囲が好ましいのは、CBがストラクチャーを持っているため、粒径が10nm以下になるとCBの分散が難しく、100nm以上では平滑性が悪くなるためである。CB添加量は、CBの粒径によって異なるが、全非磁性粉体に対して15〜40重量%が好ましい。この範囲が好ましいのは、15重量%未満では導電性向上効果が乏しく、40重量%を越えると効果が飽和するためである。粒径15nm〜80nmのCBを15〜35重量%使用するのがより好ましく、粒径20nm〜50nmのCBを20〜30重量%用いるのがさらに好ましい。このような粒径・量のCBを添加することにより電気抵抗が低減され、静電ノイズの発生やテープ走行むらが小さくなる。
【0021】
上層磁性層に添加する磁性粉には、針状もしくは略球状強磁性磁性粉が使用される。何れにしろ保磁力は、135kA/m〜360kA/m(1700〜4500Oe)が好ましく、175kA/m〜290kA/m(2200〜3600Oe)が好ましい。飽和磁化量は、70〜200A・m/kg(70〜200emu/g)が好ましく、90〜180A・m/kg(90〜180emu/g)がより好ましい。なお、この磁性層の磁気特性と、強磁性磁性粉の磁気特性は、いずれも試料振動形磁束計で外部磁場1.28MA/m(16kOe)での測定値をいうものである。
【0022】
また、本発明の針状及び略球状強磁性磁性粉の最大粒子径としては、2〜50nmが好ましく、2〜25nmがより好ましく、3〜20nmが更に好ましい。この範囲が好ましいのは、50nmより大きいと粒子の大きさに基づく粒子ノイズが大きくなり、C/N特性を向上させることが困難になる。また、最大粒子径が2nm未満となると保磁力が低下し、同時に磁性粉の凝集力が増大するため塗料中への分散が困難になるためである。なお、上記の平均長軸長は、走査型電子顕微鏡(SEM)にて撮影した写真の粒子サイズを実測し、100個あたりの平均値により求めたものである。また、この針状または略球状強磁性磁性粉のBET比表面積は、35〜100m2/gが好ましく、40〜80m2/gがより好ましく、50〜70m2/gが最も好ましい。
【0023】
上層磁性層添加する研磨材としては、数平均粒径が5〜150nm、粒度分布が標準偏差で10nm以下であり、主としてモース硬度6以上のα−アルミナ、β−アルミナが単独または組み合わせで使用される。これらの中でもコランダム型のアルミナ(α化率:30%以上)が特に良いのは、σ、θやγアルミナ等を使用した場合に比べては高硬度で、少量の添加量でヘッドクリーニング効果に優れるため特に好ましい。さらにCVD法で作成した単結晶アルミナは粒度分布を狭くし、かつ焼結がないので特に好ましい。アルミナ研磨材の粒径としては、磁性層厚さにもよるが、通常平均粒径で20〜100nmとすることがより好ましく、粒径30〜90nmがさらに好ましい。添加量は強磁性鉄系金属粉に対して5〜20重量%が好ましい。より好ましくは8〜18重量%である。
【0024】
ここで粒径が150nm以下のアルミナがよいのは、粒径150nm以上のアルミナが磁性層に存在するとヘッド摩耗性が上がるためである。また粒径50nm以上のアルミナがよいのは、磁性層に存在するアルミナの粒径が50nm以下になると、耐久性・クリーニング性が悪くなるからである。更に粒度分布が標準偏差で10nm以下がよいのは、10nmより広い分布のアルミナを使用した場合、磁性層の大粒径アルミナが存在する部分的ではヘッド摩耗が高くなり、小粒径アルミナが存在する部分では耐久性・クリーニング性が悪くなってしまう。このように部分的な劣化が発生すると、特性にバラツキが生じ、最終的には十分な性能を出すことが出来なくなるためである。
【0025】
アルミナ添加量が5重量%以上が好ましいのは、5重量%に満たない場合、磁性層の塗膜強度が落ちて耐久性が劣化するためである。また塗膜によるヘッドのクリーニング性も極端に悪くなるので、ヘッドに付着した汚れをかき落とせなくなるからである。また15重量%以下がよいのは、15重量%を超えてしまうとC/N特性が下がるためである。
【0026】
さらに、本発明の上層磁性層には導電性向上と表面潤滑性向上を目的に従来公知のカーボンブラック(CB)を添加することができるが、これらのCBとしては、アセチレンブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック、等を使用できる。粒径が5nm〜200nmのものが使用されるが、粒径10nm〜100nmのものが好ましい。この範囲が好ましいのは、粒径が10nm以下になるとCBの分散が難しく、100nm以上では多量のCBを添加することが必要になり、何れの場合も表面が粗くなり、出力低下の原因になるためである。添加量は強磁性鉄系金属粉に対して0.2〜5重量%が好ましい。より好ましくは0.5〜4重量%である。
【0027】
下層非磁性層と上層磁性層に、役割の異なる潤滑剤を使用する。下層非磁性層には、全無機質粉体に対して0.5〜4.0重量%の高級脂肪酸を含有させ、0.2〜3.0重量%の高級脂肪酸のエステルを含有させると、テープと回転シリンダまたはヘッドアイランドとの摩擦係数が小さくなるので好ましい。この範囲の高級脂肪酸添加が好ましいのは、0.5重量%未満では、摩擦係数低減効果が小さく、4.0重量%を越えると下塗層が可塑化してしまい強靭性が失われる。また、この範囲の高級脂肪酸のエステル添加が好ましいのは、0.5重量%未満では、摩擦係数低減効果が小さく、3.0重量%を越えると磁性層への移入量が多すぎるため、テープと回転シリンダまたはヘッドアイランドが貼り付く等の副作用があるためである。
【0028】
上層磁性層には強磁性磁性粉に対して0.5〜3.0重量%の脂肪酸アミドを含有させ、0.2〜3.0重量%の高級脂肪酸のエステルを含有させると、テープと回転シリンダとの摩擦係数が小さくなるので好ましい。この範囲の脂肪酸アミドが好ましいのは、0.2重量%未満ではヘッド/磁性層界面での直接接触が起りやすく焼付き防止効果が小さく、3.0重量%を越えるとブリードアウトしてしまいドロップアウトなどの欠陥が発生する。脂肪酸アミドとしてはパルミチン酸、ステアリン酸等のアミドが使用可能である。また、上記範囲の高級脂肪酸のエステル添加が好ましいのは、0.2重量%未満では摩擦係数低減効果が小さく、3.0重量%を越えるとテープと回転シリンダが貼り付く等の副作用があるためである。なお、磁性層の潤滑剤と下層非磁性層の潤滑剤の相互移動を排除するものではない。
【0029】
下層非磁性層と上層磁性層に使用される結合剤は、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、塩化ビニル−ビニルアルコール共重合樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合樹脂、塩化ビニル−水酸基含有アルキルアクリレート共重合樹脂、ニトロセルロースなどの中から選ばれる少なくとも1種と、ポリウレタン樹脂との組み合わせがある。中でも、塩化ビニル−水酸基含有アルキルアクリレート共重合樹脂とポリウレタン樹脂を併用するのが好ましい。ポリウレタン樹脂には、ポリエステルポリウレタン、ポリエーテルポリウレタン、ポリエーテルポリエステルポリウレタン、ポリカーボネートポリウレタン、ポリエステルポリカーボネートポリウレタンなどがある。これらの結合剤は、磁性層では強磁性鉄系金属粉、下層非磁性層では全非磁性粉体に対して、7〜50重量%、好ましくは10〜35重量%の範囲で用いられる。特に、結合剤として、塩化ビニル系樹脂5〜30重量部と、ポリウレタン樹脂2〜20重量%とを、複合して用いるのが最も好ましい。
【0030】
官能基としてCOOH、SOM、OSOM、P=O(OM)、O−P=O(OM)、[Mは水素原子、アルカリ金属塩基又はアミン塩]、OH、NR、N[R、R、R、R、R は水素または炭化水素基]、エポキシ基を有する、高分子からなる結合剤が使用される。このような結合剤を使用するのは、上述のように磁性粉等の分散性が向上するためである。2種以上の樹脂を併用する場合には、官能基の極性を一致させるのが好ましく、中でも−SOM基同士の組み合わせが好ましい。
【0031】
これらの結合剤とともに、結合剤中に含まれる官能基などと結合させて架橋する熱硬化性の架橋剤を併用するのが望ましい。この架橋剤としては、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどや、これらのイソシアネート類とトリメチロールプロパンなどの水酸基を複数個有するものとの反応生成物、上記イソシアネート類の縮合生成物などの各種のポリイソシアネートが好ましい。これらの架橋剤は、結合剤に対して、通常10〜50重量%の割合で用いられる。より好ましくは15〜35重量%である。
【0032】
両層に用いられる有機溶媒は、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、テトラヒドロフラン等のケトン類、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソブチルアルコール、イソプロピルアルコール、メチルシクロヘキサノールなどのアルコール類、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、乳酸エチル、酢酸グリコール等のエステル類、グリコールジメチルエーテル、グリコールモノエチルエーテル、ジオキサンなどのグリコールエーテル系、ベンゼン、トルエン、キシレン、クレゾール、クロルベンゼン等の芳香族炭化水素類、メチレンクロライド、エチレンクロライド、四塩化炭素、クロロホルム、エチレンクロルヒドリン、ジクロルベンゼン等の塩素化炭化水素類、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサン等が単独、もしくは任意の比率で混合して使用できる。
【0033】
表層塗布層の裏面に設けたバックコート層は、従来公知のものであり、走行性向上を目的としている。バックコート層の厚さは、0.2〜0.8μmが好ましい。この範囲が良いのは、0.2μm未満では、走行性向上効果が不充分で、0.8μmを越えるとテープ全厚が厚くなり、1巻当たりの記憶容量が小さくなるためである。またバックコート層の塗布には、従来公知のグラビア塗布、ロール塗布、ブレード塗布、ダイ塗布装置などで行うことができる。
【0034】
バックコート層に用いられるカーボンブラック(CB)としては、アセチレンブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック、等を使用できる。通常、小粒径カーボンと大粒径カーボンを使用する。小粒径カーボンには、粒径が5nm〜200nmのものが使用されるが、粒径10nm〜100nmのものがより好ましい。この範囲がより好ましいのは、粒径が10nm以下になるとCBの分散が難しく、粒径が100nm以上では多量のCBを添加することが必要になり、何れの場合も表面が粗くなり、磁性層への裏移り(エンボス)原因になるためである。大粒径カーボンとして、小粒径カーボンの5〜15重量%、粒径300〜400nmの大粒径カーボンを使用すると、表面も粗くならず、走行性向上効果も大きくなる。小粒径カーボンと大粒径カーボン合計の添加量は無機粉体重量を基準にして60〜98重量%が好ましく、70〜95重量%がより好ましい。表面粗さRaは3〜8nmが好ましく、4〜7nmがより好ましい。
【0035】
また、バックコート層には、強度向上を目的に、粒径が100nm〜600nmの酸化鉄を添加するのが好ましく、200nm〜500nmがより好ましい。添加量は無機粉体重量を基準にして2〜40重量%が好ましく、5〜30重量%がより好ましい。
【0036】
磁性塗料の主な製造方法としては、次に示す方法が挙げられる。まずニーダー、二軸連続式混練装置(エクストルーダ)等のような強力な混練機を用いて、磁性粉と少量の結合剤樹脂とを混練し、更に溶剤を加えて固形分濃度35〜45%(重量基準、以下同じ)にて攪拌してペースト状のミルベースを得る。上記混練工程において使用される二軸連続式混練機は、その混練部(バレル)に加熱・冷却可能な装置を装備し、該混練部の温度を、20〜50℃、好ましくは25〜35℃に制御することにより調整される。ここで、上記混練部の温度が20℃未満であると、混練物へのぬれ性アップが図れず、分散性向上もねらうことができず、また50℃を越えると、混練物の粘性が低下し、所望の剪断力を作用させることができなくなる。また、上記混練工程において混練する際の混練条件は、混練時間が2〜5分であるのが好ましく、混練物の供給速度が5〜15kg/hであるのが好ましい。次いで、サンドミル等により分散操作を行って、固形分の分散状態を向上させる。
【0037】
最終的に良好な塗料の分散状態を得るためには、仕上げ分散を行うことが好ましい。仕上げ分散には3mm以下の微粒ビーズメディアを用いたサンドミルによる分散や、噴射衝突型分散機を用いる方法、超音波分散を用いる方法が特に好ましい。これらの分散は最終塗布塗料と同等の固形分濃度であることが好ましく、10〜30%であることが好ましい。特にビーズメディアによるサンドミル分散と噴射衝突型分散機を交互に設置し、さらにこれらを多段に組み合わせることでより優れた分算状態を実現することができる。
【0038】
上層磁性層の平均乾燥厚みを1nm〜100nmの任意の厚みで精度良く生産性良く塗布することは、前記上層磁性層の直下に下層非磁性層を、前記下層非磁性層が湿潤状態のうちに、前記上層磁性層を重畳して塗布する、ウェットオンウェット同時重層塗布方式を用いて設けることによって実現できる。塗布には塗布液通液スリットを二つ内蔵する一つのダイ塗布ヘッドにより、下層非磁性層と上層磁性層をほぼ同時に塗布する。塗布の安定性をあげるために、下層非磁性層に用いる溶媒の表面張力が、上層磁性層に用いる溶媒の表面張力より高いことが好ましい。表面張力の高い溶媒としてはシクロヘキサノン、ジオキサンなどがある。
【0039】
さらに表面平滑性を実現した磁気記録媒体を製造するために、上記の表層塗布工程を行った後に、磁場配向、溶剤乾燥工程を設ける。特に溶剤乾燥工程においては、通常一般的に行われている乾燥工程に加えて、液体窒素噴霧による一時冷却工程を乾燥工程の中に組み合わせることにより、より適切な磁気特性を得ることが出来る。
【0040】
表層塗布層を塗布した後に、金属ロール同士でカレンダー処理することで、本発明の効果を引き上げることができる。また、エポキシ、ポリイミド、ポリアミド、ポリイミドアミド等の耐熱性のあるプラスチックロールをカレンダーロールとして使用することもできる。処理温度は、好ましくは70℃以上、さらに好ましくは80℃以上である。線圧力は好ましくは200kg/cm、さらに好ましくは300kg/cm以上、その速度は20m/分〜700m/分の範囲である。本発明の効果は80℃以上の温度で300kg/cm以上の線圧でより一層効果を上げることができる。
【0041】
バックコート層は、表層塗布層の塗布とカレンダー処理の前後又は間のいずれかの工程で塗布する。また表層塗布層とバックコート層の塗布、及びカレンダー処理の後、表層塗布層、バックコート層の硬化を促進するために、40℃〜80℃のエージング処理を施してもかまわない。
【0042】
以上のようにして作成された磁気記録媒体の上層磁性層の厚みは、1nm以上200nm以下が好ましく、10nm以上90nm以下がより好ましい。この範囲が好ましいのは、磁性層が1nm未満では、これからの漏れ磁界が小さいためにヘッド出力が小さくなり、200nmを越えると、厚み損失によりヘッド出力が小さくなるためである。
【0043】
上層磁性層の磁気記録媒体としての保磁力は、ヘッド走行方向で135kA/m〜360kA/m(1700〜4500Oe)、残留磁束密度はヘッド走行方向で0.25T(2500G)以上が好ましい。この範囲が好ましいのは、保磁力が135kA/m未満では、反磁界によって出力が減少し、360kA/mを越えるとヘッドによる書き込みが困難になるためである。残留磁束密度が0.25T(2500G)以上が好ましいのは、0.35T未満では出力が低下するためである。保磁力が175kA/m〜290kA/m(2200〜3600Oe)、残留磁束密度が0.3T〜0.5T(3000〜5000G)のものはより好ましい。
【0044】
MRヘッドを再生ヘッドとして用いるシステムに供する場合、上層磁性層の長手方向の残留磁束密度と磁性層膜厚との積であるMrt値が72Tnm(6.0memu/cm)以下であることが好ましい。Mrtが72Tnm以下が好ましいのは、72Tnm以上ではほとんどのMRヘッドを飽和させてしまうからである。Mrtは2〜24Tnm(0.2〜2.00memu/cm)の範囲がより好ましい。
【0045】
上層磁性層のSFD値は0.05〜0.6の範囲が好ましく、0.05〜0.5の範囲がより好ましく、0.05〜0.4の範囲がさらに好ましい。この範囲が好ましいのは、SFDが0.05より小さくなると、磁気記録媒体を製造することが極端に困難になるからである。またSFDが0.6を超えると再生分解能が十分に取れなくなるからである。さらに磁性層の表面からt/5の範囲にある部分の磁性層のSFD値が、磁性層全体のSFD値の0.5〜0.8の範囲にあることが好ましい。これは記録ヘッドに近い、表面からt/5の範囲にある部分のSFDを0.5より小さくする方が、分解能を格段に高めることが出来るからである。しかしヘッドから離れている部分においては、透磁率が高い方が分解能を高めるのに有利になるので、長手方向の配向度合いを落とす必要がある。このとき記録ヘッドから離れた部分のSFDは大きくなるので、ヘッドの深さ方向にSFDの分布を生じることになる。なお記録ヘッドから離れた部分のSFDは磁気記録層全体のSFD値とほぼ一致する。
【0046】
このようなSFDの分布は前述の上層磁性層の仕上げ分散工程と乾燥工程を適宜組み合わせ、最適化することによって実現する。また仕上げ分散に用いるビーズミル分散、噴射衝突分散、超音波分散を3段階以上組み合わせるだけで、通常の乾燥条件で製造しても良いし、仕上げ分散が1段である場合は、乾燥時に40℃以上冷却する条件で製造しても良い。
【0047】
上層磁性層全体のSFDは前述したように振動型磁束計で測定するが、磁性層の表面からt/5の範囲にある部分の磁性層のSFD値は値が小さくなりすぎるので、この磁束計で測定するには感度が足りない。従ってこの部分の磁気測定はSQUID磁束計を用いて、最大外部印可磁場0.78MA/m(10kOe)で行った。
【0048】
以下のようにして求めた磁性層に含まれる二次粒子を含む磁性粒子の粒径は、磁性層断面をSEM観察した視野像中の95%の磁性粒子の最大粒子径(長軸長)は、その標準偏差が0.05nm〜3nmの範囲に含まれていることが好ましい。更にこの磁性粒子の長軸長と短軸長の軸長比に関しては、視野像中の95%の磁性粒子の長軸長と短軸長の軸長比が、1.1〜7であることが好ましく、1.5以下がさらに好ましい。
【0049】
まず走査型電子顕微鏡(SEM)により磁気記録媒体の記録面を観察し、その写真撮影を行った。その後画像処理を行い、各球状磁性粒子の長軸長と短軸長を同定、長軸長/短軸長の平均値を軸長比とした。また写真の視野を大きくして、この視野における粒径及び軸長比の統計分布を求めた。そして分布における平均粒径から+47.5%及び−47.5%に位置する粒子の粒径を、それぞれ便宜上最大粒径と最小粒径とした。
【0050】
表層塗布層の平均線中心粗さRaは0.2〜3.0nmの範囲に含まれることが好ましく、0.3〜2.0nmの範囲にあることがより好ましい。Raが3.0nm以下が好ましいのは、3.0nmを超えると出力の短波長成分が急激に低下し、再生分解能が劣化するからである。またRaが0.3nmを下回るとヘッドや走行ガイドとの摩擦が上昇し耐久性が劣化する上、この範囲のRaを得るには製造が困難で、工程コストがかかりすぎるためである。なおこの表面平滑性は原子間力顕微鏡(AFM)を用いて5μm×5μmの視野を512×512ピクセルで測定、各点の平均線からの絶対値の算術平均したときの値である。
【0051】
下層非磁性層の厚みは、通常0.5〜3μmのものが使用される。より好ましくは1〜2μmである。この範囲の厚さの下層非磁性層が使用されるのは、0.5μm未満では塗布が難しく、生産性が悪いためであり、3μmを越えるとテープ全厚が厚くなり、テープ1巻当りの記憶容量が小さくなるためである。また、非磁性支持体と下層非磁性層との間に密着性向上のために、公知の下塗り層を設けてもかまわない。この厚みは0.01〜2μm、好ましくは0.05〜0.5μmである。
【0052】
前記下層非磁性層と上層磁性層からなる表層塗布層のヤング率は、非磁性支持体の長手方向と幅方向のヤング率の平均値の40〜100%であることが好ましい。この範囲に塗布層のヤング率がすると、テープの耐久性が大きく、且つテープ‐ヘッド間の接触性(ヘッドタッチ)がよくなる。50〜100%の範囲がより好ましく、60〜90%の範囲がさらに好ましい。この範囲が好ましいのは40%未満では塗布膜の耐久性が小さくなり、100%を越えるとテープ‐ヘッド間のタッチが悪くなるためである。なお、本発明では下層非磁性層と上層磁性層からなる塗布層のヤング率を制御する方法の一つとしてカレンダー条件による制御法を用いた。
【0053】
さらに、下層非磁性層のヤング率は、上層磁性層のヤング率の80〜99%が好ましい。下層非磁性層のヤング率が磁性層のそれより低い方がよいのは、下層非磁性層が、カレンダー処理時に一種のクッションの作用をするためである。
【0054】
本発明の磁気記録媒体の表層塗布層面、及びその反対のバックコート層面のステンレス鋼に対する摩擦係数は、0.5以下、さらに0.3以下が好ましい。また表層塗布層の表面固有抵抗は10〜1011オーム/sq、バックコート層の表面電気抵抗は10〜109オーム/sqが好ましい。前記の要領で作成した媒体をテープに組み込んだカセットテープは、1巻当たりの容量が大きく、信頼性も高く、データバックアップ用テープとして、特に優れている。
【実施例】
【0055】
以下に実施例によって本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例、比較例の部は重量部を示す。
【0056】
(実施例1)
<<磁性層用塗料成分>>
(1)強磁性鉄系金属磁性粉 100部
(Co/Fe:30at%、Y/Fe:2at%、
Al/Fe:5wt%、σs:110A・m/kg、
Hc:280kA/m、pH:9.5、長軸長:45nm)
塩化ビニル−ヒドロキシプロピルアクリレート共重合体 10部
(含有−SONa基:0.7×10−4当量/g)
ポリエステルポリウレタン樹脂 4部
(含有−SONa基:1.0×10−4当量/g)
α−アルミナ 15部
(中心粒径 100nm)
カ−ボンブラック 2部
(平均粒径:75nm、DBP吸油量:72cc/100g)
メチルアシッドホスフェート 2部
パルミチン酸アミド 1.5部
テトラヒドロフラン 65部
メチルエチルケトン 245部
トルエン 85部
(2)ポリイソシアネート 4部
シクロヘキサノン 167部
<<下層非磁性層用塗料成分>>
(1)酸化鉄粉体(粒径:0.11×0.02μm) 68部
アルミナ(α化率:50%、粒径:70nm) 8部
カ−ボンブラック(粒径:25nm) 24部
ステアリン酸 2部
塩化ビニル共重合体 10部
(含有−SONa基:0.7×10−4当量/g)
ポリエステルポリウレタン樹脂 4.5部
(Tg:40℃、含有−SONa基:1×10−4当量/g)
シクロヘキサノン 25部
メチルエチルケトン 40部
トルエン 10部
(2)ステアリン酸ブチル 1部
シクロヘキサノン 70部
メチルエチルケトン 50部
トルエン 20部
(3)ポリイソシアネート 4.5部
シクロヘキサノン 10部
メチルエチルケトン 15部
トルエン 10部
上記の磁性層用塗料成分(1)をニーダーで混練したのち、サンドミルでビーズ径0.5mmのジルコニアビーズを用いて滞留時間を45分として分散し、これに磁性層用塗料成分(2)を加え攪拌・濾過後、磁性層用塗料とした。さらにビーズ径0.1mmのサンドミルと噴射衝突型分散機を交互に3段組み合わせて、各サンドミルの分散時間を50秒、各噴射衝突型分散機の衝突圧力を10GPaとして仕上げ分散を行った。これとは別に、上記の下層非磁性層用塗料成分において(1)をニーダーで混練したのち、(2)を加えて攪拌の後サンドミルで滞留時間を60分として分散処理を行い、これに(3)を加え攪拌・濾過した後、下層非磁性層用塗料とした。
【0057】
上記の下層非磁性層用塗料を、ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ6μm、MD=5.9GPa、TD=3.9GPa、東レ製)からなる支持体上に、磁場配向処理、乾燥・カレンダー後の上層磁性層の厚さが100nm、上層磁性層と下層非磁性層とを足し合わせた表層塗布層の厚さが1.1μmとなるように同時重層塗布し、磁場配向処理後、乾燥し、カレンダー処理することにより、一方の面に下層磁性層および上層磁性層を積層してなる磁気シートを得た。なお磁場配向処理は、ドライヤ前にN−N対抗磁石(0.5T)を設置し、ドライヤ内で塗膜の指蝕乾燥位置の手前側75cmからN−N対抗磁石(0.5T)を2基50cm間隔で設置して行った。乾燥条件としては、15mからなる乾燥ゾーンを4つ設け、それぞれの乾燥温度を40/100/40/100℃とした。また塗布速度は100m/分とした。
【0058】
<<バックコ−ト層用塗料成分>>
カ−ボンブラック(粒径:25nm) 80部
カ−ボンブラック(粒径:370nm) 10部
酸化鉄(粒径:400nm) 10部
ニトロセルロ−ス 45部
ポリウレタン樹脂(SONa基含有) 30部
シクロヘキサノン 260部
トルエン 260部
メチルエチルケトン 525部
上記バックコ−ト層用塗料成分をサンドミルで滞留時間45分として分散した後、ポリイソシアネート15部を加えてバックコ−ト層用塗料を調整し濾過後、上記で作製した磁気シ−トの磁性層の反対面に、乾燥、カレンダー後の厚みが0.5μmとなるように塗布し、乾燥した。このようにして得られた磁気シートを金属ロールからなる7段カレンダーで、温度100℃、線圧150kg/cmの条件でカレンダー処理し、磁気シ−トをコアに巻いた状態で70℃で72時間エージングしたのち、1/2インチ幅に裁断し、これを200m/分で走行させながら磁性層表面をラッピングテープ研磨、ブレード研磨そして表面拭き取りの後処理を行い、磁気テ−プを作製した。この時、ラッピングテープにはK10000、ブレードには超硬刃、表面拭き取りにはトレシーを用い、走行テンション30gで処理を行った。上記のようにして得られた磁気テープを、カートリッジに組み込み、コンピュータ用テープを作製した。
【0059】
(実施例2)
乾燥工程における乾燥温度を、40/60/40/100℃としたことを除き、実施例1と同様にしてコンピュータ用テープを作成した。
【0060】
(実施例3)
仕上げ分散工程におけるサンドミル-噴射衝突型分散機の組み合わせを1段に変更したことを除き、実施例1と同様にしてコンピュータ用テープを作成した。
【0061】
(実施例4)
使用した磁性粉をN/Fe:11at%、Y/Fe:2at%、Al/Fe:5wt%、σs:100A・m/kg、Hc:280kA/m、pH:9.5、粒子径:17nmの球状強磁性鉄系金属磁性粉に変更したことを除き、実施例1と同様にしてコンピュータ用テープを作成した。
【0062】
(実施例5)
仕上げ分散工程におけるサンドミル-噴射衝突型分散機の組み合わせを6段に変更したことを除き、実施例4と同様にしてコンピュータ用テープを作成した。
【0063】
(実施例6)
乾燥工程において、2番目と3番目のゾーンの間で液体窒素噴霧をしたことを除き、実施例1と同様にしてコンピュータ用テープを作成した。
【0064】
(比較例1)
乾燥工程における乾燥温度を、40/60/100/100℃としたことを除き、実施例1と同様にしてコンピュータ用テープを作成した。
【0065】
(比較例2)
乾燥工程における乾燥温度を、100/40/40/100℃としたことを除き、実施例1と同様にしてコンピュータ用テープを作成した。
【0066】
評価の方法は、以下のように行った。結果を表1に示した。
【0067】
磁性層厚さは、集束イオンビーム加工装置で厚さ方向の断面を切り出し、その断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で5万倍にて、10視野の写真撮影を行い、磁性層表面、磁性層−下塗層界面の境界を縁取りする。次に、写真1視野当り、非磁性粉末のかかっていない任意の5個所(計50個所)を選び、それぞれ縁取りした線間の距離を磁性層の厚さとして計測し、それらを平均して全磁性層厚さとした。
【0068】
全磁性層の磁気特性は試料振動形磁束計を用いて、最大外部印可磁場1.28MA/m(16kOe)で測定した。磁性層の表面からt/5の範囲にある部分の磁性層に関しては、以下のようにして行った。まずピーリングテープにより表層塗布層を支持体より剥離し、さらにこの試料をイオンエッジングにより所定の厚みまで切削する。その後1mm×1mmとした試料をSQUID磁束計(Quantum Design社製 MPMS−5)を用いて、最大外部印可磁場0.78MA/m(10kOe)で行った。
【0069】
磁性粉末粒子の粒径は、磁気記録媒体の記録面を走査型電子顕微鏡(SEM)により倍率50000倍で観察し、その写真撮影を行った。その後画像処理を行い、二次粒子を含む各球状粉末磁性粒子の長軸長と短軸長を同定した。この長軸長と短軸長の平均値をその球状磁性粉末粒子の平均粒径とし、長軸長/短軸長の値を軸長比とした。
【0070】
テープの電磁変換特性測定には、ドラムテスターを用いた。ドラムテスターには電磁誘導型ヘッド(トラック幅25μm、ギャップ0.2μm)とMRヘッド(トラック幅5.5μm、シールド間隔0.17μm)を装着し、誘導型ヘッドで記録、MRヘッドで再生を行った。両ヘッドは回転ドラムに対して異なる場所に設置されており、両ヘッドを上下方向に操作することで、トラッキングを合わせることができる。磁気テープはカートリッジに巻き込んだ状態から適切な量を引き出して廃棄し、更に60cmを切り出して回転ドラムの外周に巻き付けた。
【0071】
出力及びノイズは、ファンクションジェネレータにより矩形波を記録電流発生アンプに入力制御し、波長20μmの信号を書き込み、MRヘッドの出力をプリアンプで増幅後、デジタルオシロスコープに読み込んだ。観察される孤立波形を50波長分取り込み、それぞれの半値幅を算出して平均し、長さのディメンジョンに直したものをPW50値とした。

























【0072】
【表1】

【0073】
表1に示す結果から明らかなように、実施例の磁気テープ(本発明品)は、比較例の磁気テープに比べてPW50値が低く、良好な分解能を実現していることが分かる。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性支持体上に少なくとも磁性層を有する磁気記録媒体であって、かつ前記磁性層の膜厚をtとしたとき、前記磁性層の表面からt/5の範囲にある部分の磁性層のSFD値が、磁性層全体のSFD値の0.5〜0.8の範囲に含まれていることを特徴とする磁気記録媒体。
【請求項2】
磁性層断面をSEM観察した視野像から求められる前記磁性層に含まれる二次粒子を含む磁性粒子の長軸長と短軸長の軸長比において、視野像中の95%以上の磁性粒子の長軸長と短軸長の軸長比が、1.5以下であることを特徴とする請求項1記載の磁気記録媒体。