説明

磁気記録媒体

【課題】
MRヘッドを用いた高密度磁気記録において主流となっている重層構成の磁気記録媒体では、磁性層と下塗層との界面における厚さ変動が再生出力変動に大きく影響するため、磁性層と下塗層との界面における厚さ変動を小さくする必要があった。
【解決手段】
非磁性支持体の主面にバックコート層を有し、他方の主面に非磁性粉末を含む下塗層、磁性粉末を含む磁性層との間に潤滑剤を含む中間層を設けた構成の磁気記録媒体において、該中間層形成用塗料に溶解性パラメータ値(SP値)が11以上または8以下である溶媒を用いると共に、下塗層、中間層、磁性層の各層を塗工、乾燥して順次形成することにより、磁性層の厚さ変動Δdave.が小さく、再生出力のC/Nが良好で、耐久性も優れた磁気記録媒体を提供できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
非磁性支持体の一方の主面上に非磁性粉末と結合剤とを含む少なくとも一層の下塗層と、該下塗層上に磁性粉末と結合剤とを含む磁性層とを設け、非磁性支持体の他方の主面上にバックコート層を有する磁気記録媒体に関し、更に詳しくは、特にデジタルビデオテープ、コンピュータ用のバックアップテープなどの超高密度記録に最適な塗布型の磁気記録媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、映像ビデオ、コンピュータなどの情報磁気記録媒体が使用される分野にあっては、映像分野では記録再生方式がアナログからデジタルへの移行が主流となり、コンピュータのデータバックアップ分野ではハードディスクの情報量増加の潮流がより顕著になって、記録再生システムにおいては、ドライブ側の再生ヘッドは誘導型ヘッドから、MR(磁気抵抗効果型)ヘッドが主流となってきている。MRヘッドの場合、誘導コイルを用いないためにインピーダンスノイズ等の機器ノイズが大幅に低下し、磁気記録媒体のノイズを下げることで大きなC/Nが得られるので、高密度記録化が可能であり、単位体積当りの高容量化が図れる。また、MRヘッドを用いた磁気記録媒体では非磁性支持体上に非磁性の下塗層と薄層の磁性層とを有する重層構造のものが主流となってきている。このような磁気記録媒体においては、再生出力の大きさではなく、再生出力が所定レベルで一定であり、再生出力変動が小さいことが要求されるため、磁性層の平滑性の向上、厚さの均一化が必須である。そのためには磁性層と下層との界面変動を改善することが重要である(例えば、特許文献1)。
【0003】
また、磁性層の厚さの均一化に関しては、支持体上に下層非磁性層(下塗層)を塗布した後、乾燥処理とカレンダ処理を行って表面を平滑化し、さらに電子線照射による硬化処理を施した後に、磁性層を形成するという方法が提案されている(例えば、特許文献2)。さらには、磁性層の磁性粉末の配向を向上させるために、下層非磁性層(下塗層)上に、溶剤を塗布して溶剤層を形成する工程を設け、前記溶剤層上に、磁性塗料を塗布して磁性層を形成することが提案されている(特許文献3)。
【0004】
【特許文献1】特許2666810号公報
【特許文献2】特開2000−207732号公報
【特許文献3】特開2006−209822号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、このような従来の方法では、例えば特許文献1の方法では湿潤状態の非磁性層(以下、下塗層ともいう)に磁性塗料を重ねて磁性層を形成する(同時重層塗布)ために磁性層と非磁性層との界面が変動しやすく、磁性層の厚さ変動を均一にするのは困難であった。また、特許文献2や特許文献3の方法では、非磁性塗料を塗布、乾燥して非磁性層を形成した上に、磁性塗料を塗布して磁性層を形成する(逐次重層塗布)ために、薄層の磁性層を形成する際に、磁性層の乾燥速度が速く磁性粉末の配向が十分できず、また、溶剤層を形成する際に下層非磁性層の表面が溶剤により一部溶解し界面が乱れ、電磁変換特性の良好な磁気記録媒体が得られないという問題点があった。さらには、別々に層を形成するために下塗層の潤滑剤が磁性層に供給されにくく、耐久性が悪くなる傾向があった。
【0006】
本発明は、上記従来技術の問題点を解決し、C/Nが良好で、耐久性も優れた磁気記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、非磁性支持体の一方の主面に非磁性粉末と結合剤とを含む下塗層、該下塗層上に磁性粉末と結合剤とを含む磁性層を有し、前記非磁性支持体の他方の主面に非磁性粉末と結合剤とを含むバックコート層を有する磁気記録媒体について鋭意検討した結果、前記磁気記録媒体を下記構成とすることにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を成すに至った。
【0008】
すなわち、非磁性支持体の一方の主面に非磁性粉末と結合剤とを含む下塗層、該下塗層上に磁性粉末と結合剤とを含む磁性層を有し、前記非磁性支持体の他方の主面に非磁性粉末と結合剤とを含むバックコート層を有する磁気記録媒体において、前記下塗層と前記磁性層の間に潤滑剤を含む中間層が設けられた構成とする。前記中間層は、前記下塗層が下塗層形成用塗料を前記非磁性支持体上に塗工し乾燥して形成された後に、中間層形成用塗料を前記下塗層上に塗工し乾燥して形成され、しかる後に潤滑剤と溶媒とを含む磁性層形成用塗料を前記中間層上に塗工し乾燥して磁性層が形成される。前記中間層を形成するための溶媒として、その溶解性パラメータ値(SP値)を11以上、または、8以下とすることで、前記下塗層の溶解による前記下塗層と前記中間層との界面の乱れを防止することを特徴とする。
【0009】
また、前記潤滑剤が脂肪酸を含むことで、良好な中間層が形成され、磁性層の形成時に下塗層表面の乱れを防止することを特徴とする。すなわち、脂肪酸エステルや脂肪酸アミドに比べ脂肪酸の方が結合剤樹脂との親和性が小さいため、中間層を形成する際に下塗層表面に良好な層形成が行われやすく、前記潤滑剤を脂肪酸とすることで下塗層と磁性層の界面変動をより少なく抑えられることを特徴とする。
【0010】
なお、本発明の上記磁気記録媒体においては以下の態様が好ましい。
1.前記磁性層の厚さは0.01μm〜0.15μmである磁気記録媒体。
2.前記中間層の厚さは0.2μm以下である磁気記録媒体。
3.前記下塗層の厚さは0.3〜2.0μmである磁気記録媒体。
4.前記非磁性支持体の厚さは2.5μmから7μm未満である磁気記録媒体。
【発明の効果】
【0011】
本発明の磁気記録媒体は、下塗層形成用塗料を前記非磁性支持体上に塗工し乾燥して下塗層が形成された後に、中間層形成用塗料を前記下塗層上に塗工し乾燥して中間層が形成され、しかる後に磁性層形成用塗料を前記中間層上に塗工し乾燥して磁性層が形成されるために平滑な下塗層表面が形成され、潤滑剤を含む中間層が形成される。さらに、磁性層を形成する際には、潤滑剤を含む中間層があるために下塗層の表面は乱れることがないので、厚さ変動の少ない磁性層を形成することでき、その結果、C/Nの良好な磁気記録媒体が得られ、また、磁性層に潤滑剤成分を供給できるので、耐久性も良好な磁気記録媒体を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の磁気記録媒体は以下のように製造されることが好ましい。
【0013】
非磁性支持体の一方の主面に非磁性粉末と結合剤を含む下塗層形成用塗料を塗工し、乾燥させて下塗層を形成する。下塗層の好ましい構成については後で詳述する。下塗層を形成した後に、加熱した鏡面ロールで加圧して平滑化するカレンダ処理を行うことが好ましい。
【0014】
その後、前記下塗層の上に潤滑剤を含む中間層形成用塗料を塗工し、乾燥させて中間層を形成する。中間層の好ましい構成については後で詳述する。中間層を形成した後に、前記カレンダ処理を行うことが好ましい。
【0015】
中間層を形成後、前記中間層の上に磁性粉末と結合剤とを含む磁性層用塗料を塗工し、乾燥させて磁性層を形成する。磁性層の好ましい構成については後で詳述する。磁性層を形成した後に、前記カレンダ処理を行うことが好ましい。
【0016】
中間層の厚さは磁気記録媒体を構成時に0.2μm以下の範囲に設定するのが好ましく、0.1μm以下の範囲がより好ましい。この範囲が好ましいのは0.2μm以上では磁性層と下塗層の接着性が悪化するからであり、前記下塗層に浸透し該下塗層表面に局所的に存在するため厚さとして検出出来ない場合も含まれるので下限は設けない。
【0017】
中間層には潤滑剤が含まれる。潤滑剤としては、脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪酸アミドが含まれる。
【0018】
中間層は中間層を構成する各成分を有機溶剤中に分散・溶解させて中間層形成用塗料を作製し、下塗層の上に該塗料を塗工し、乾燥することにより形成することができる。使用する有機溶剤としては、下塗層を溶解しないものが好ましく、溶解性パラメータ(SP値)が11以上のもの、例えば、エタノール、ブタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶剤や、SP値が8以下のもの、例えば、ヘキサン等のものが挙げられる。
【0019】
以下、本発明に係わる磁気記録媒体の他の構成要素にしたがって好適な実施の形態について説明する。
<磁性層>
高密度記録に対応した磁気記録媒体として、厚さ損失や、自己減磁を最小限に抑えるために、磁性層厚さを0.01〜0.15μmとすることが好ましい。さらに好ましいのは0.05〜0.10μmである。厚さが0.15μmを超えると、高密度記録のひとつの目安になる最短記録波長0.3μm以下では厚さ損失により再生出力が小さくなったり、使用される再生MRヘッドに対して、残留磁束密度と厚さの積が大きくなりすぎてヘッドの飽和による再生出力の歪みが起こりやすいからである。厚さが0.01μm未満では磁性層の磁化量が少なすぎてシステム全体のノイズに対して出力信号が検出困難になる。
【0020】
磁性層に用いる磁性粉末の形状は、針状以外の、粒状、板状、米粒状、サイコロ状のいずれでも使用できる。平均粒径としては10〜100nmが好ましく、さらに好ましくは10〜50nmである。高密度記録において平均粒子径は小さいほうがノイズを減少させるのに有利であるが、10nm以下にまで小さくなると熱ゆらぎが生じやすくなる。また、平均粒子径が小さくなりすぎると、磁性粒子の均一分散が困難となり、二次凝集による磁気クラスタサイズが大きくなり、逆にノイズが増大するので好ましくない。
【0021】
磁性粉末の抗磁力(Hc)は127kA/m〜320kA/mが好ましい。さらに好ましくは143〜300kA/mであり、もっとも好ましいのは170〜290kA/mである。Hcが320kA/mを超えると配向時の磁界強度や記録ヘッドの発生磁界を大きくしたりするためにコストが多大となり、産業的に不適である。飽和磁化量は50〜130A・m/kgが好ましい。さらに好ましいのは70〜110A・m/kgである。磁気特性と平均粒子径、軸比が上述の範囲であれば形状が針状以外の従来公知の略粒状磁性粉末が使用できる。
【0022】
本発明では上述した好ましい抗磁力を有する磁性体を用いて媒体幅方向に配向させた場合でも、角型比によって大きくC/Nが変わることを見出し、抗磁力と角型比のC/Nに与える関係を明らかにして好適な範囲を明確にしたものである。
【0023】
磁性層の表面粗さは中心線平均粗さ(Ra)で1〜7nmが好ましく、1〜5nmがより好ましい。さらに好ましくは1〜4nmである。この範囲が好ましいのは、1nm未満では摩擦係数が大きくなって走行が不安定になったり、7nmを越えると記録・再生時のスペーシングロスが大きくなって短波長出力が低下するからである。
【0024】
磁性層中には、磁性粉末と結合剤樹脂以外に、潤滑性付与のための潤滑剤、導電性を保持させるためのカーボンブラックや研磨性、走行耐久性を確保するための非磁性粉末などを添加することができる。すなわち、テープ表面のコンタミやいわゆる粉落ちなどによってヘッドが汚れた場合にヘッドを研磨したり、塗膜の補強材として、研磨機能を有するモース硬度5以上の非磁性粉末を磁性層に含有させることができる。磁性層の導電性保持のためのカーボンブラックや潤滑機能を有する潤滑剤は従来公知のものが適宜使用できる。
【0025】
カーボンブラック(CB)としては、アセチレンブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック等を使用できる。通常は粒子径が5〜200nmのカーボンブラックを使用するが、粒子径10〜100nmのものが好ましく、粒子径10〜50nmのものがさらに好ましい。この範囲が好ましいのは、粒子径が10nm未満になるとカーボンブラックの分散が難しく、100nmを超えると多量のカーボンブラックを添加することが必要になり、何れの場合も表面が粗くなり、出力低下の原因になるためである。カーボンブラックの添加量は磁性粉末100重量部に対して0.2〜5重量部が好ましく、より好ましくは0.5〜2重量部である。
【0026】
また、磁性層には磁性粉末の分散性を向上させる分散剤を添加してもよい。分散剤の添加時期は、磁性塗料作製工程における混練、分散、希釈のいずれの工程でもよいし、これらの分散剤であらかじめ磁性粉末の表面を処理しておいてもよい。従来公知の分散剤が適宜使用できる。
<中間層>
厚さは0.2μm以下に設定するのが好ましく、0.1μm以下がより好ましい。この範囲が好ましいのは0.2μm以上では磁性層の接着性が低下したり、かえって厚さの均一な磁性層が形成しにくくなるからであり、前記下塗層に浸透し該下塗層表面に局所的に存在するため厚さとして検出出来ない場合も含まれるので下限は設けていない。
【0027】
中間層は潤滑剤から構成される。潤滑剤を含む中間層を設けることにより、磁性塗料の塗工時に、磁性塗料に含まれる溶媒が下塗層へ浸透することを抑制することができ、下塗層の表面が乱れることがなくなる。該中間層は下塗層中の粉体100部に対して0.05〜10.0部が好ましく、0.1〜5.0部がより好ましい。なお、「部」と表示してあるのは「重量部」を意味する。この範囲が好ましいのは0.05部以下では前記下塗層と前記磁性層の厚さ変動を抑える効果が弱く、10.0部以上であると前記下塗層と前記磁性層間の接着性が悪化するためである。
【0028】
潤滑剤としては、脂肪酸が好ましい。脂肪酸としては、炭素数10以上の脂肪酸が好ましく、炭素数10以上の脂肪酸としては、直鎖、分岐、シス・トランスなどの異性体のいずれでもよいが、潤滑性能にすぐれる直鎖型が好ましい。このような脂肪酸としては、たとえば、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ベヘン酸、オレイン酸、リノール酸などが挙げられる。これらの中でも、ミリスチン酸、ステアリン酸、パルミチン酸などが好ましい。
【0029】
脂肪酸エステルとしては、上記脂肪酸のエステルを用いるのが好ましい。脂肪酸アミドとしては、上記脂肪酸のアミドを用いるのが好ましい。また、これらの潤滑剤を単独でもよいし、混合して用いてもよい。なお、脂肪酸は、脂肪酸エステルや脂肪酸アミドに比較して結合剤樹脂との親和性が小さいために、中間層を形成する際に下塗層への浸透が相対的に少なく、下塗層表面に良好な層形成が行われるので、潤滑剤には脂肪酸が含まれることが好ましい。
【0030】
中間層を形成するためには、後述する下塗層が下塗層形成用塗料を前記非磁性支持体上に塗工し乾燥して形成された後に、中間層形成用塗料を前記下塗層上に塗工し乾燥して形成される。中間層形成用塗料は上記潤滑剤を、有機溶媒に溶解させて作製し、従来公知の塗工手段を用いて下塗層の上に塗工して形成すればよい。
【0031】
有機溶媒としては、極力下塗層を溶解することなく中間層を形成するためには、溶解性パラメータ値(SP値)が11以上のものが好ましく、例えば、エタノール、ブタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶媒、または、溶解性パラメータ値(SP値)が8以下のものが好ましく、例えば、n−ヘキサン等のものが挙げられる。
<下塗層>
本発明における下塗層の構成成分には無機粉末、結合剤、潤滑剤、カーボンブラックなどが挙げられる。厚さは、0.3〜2.0μmの範囲に設定するのが好ましく、0.5〜1.5μmの範囲がより好ましい。この範囲が好ましいのは、0.3μm未満では、磁性層の厚さムラ低減効果が小さくなり、2.0μmを越えると磁気記録媒体の全厚が厚くなり過ぎてテープ1巻当りの記録容量が小さくなるためである。
【0032】
非磁性下塗層に使用する非磁性粉末としては、酸化チタン、酸化鉄、酸化アルミニウム等があるが、酸化チタン単独、酸化鉄単独またはこれらのいずれかと酸化アルミニウムの混合系を使用するのが好ましい。長軸長0.05〜0.2μm、短軸長5〜200nmの非磁性の酸化鉄を主に、必要に応じて粒子径0.01〜0.1μmのカーボンブラック、粒子径0.05〜0.2μmの酸化アルミニウムを含有させるこのが好ましい。下塗層を平滑に、かつ厚さムラを少なく塗布するためには、上記、非磁性粉末およびカーボンブラックは特に粒度分布がシャープなものを用いることが好ましい。
<結合剤樹脂>
本発明において、磁性層、下塗層およびバックコート層に用いる結合剤樹脂としては、次のような従来公知のものが使用できる。塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、塩化ビニル−ビニルアルコール共重合樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合樹脂、塩化ビニル−水酸基含有アルキルアクリレート共重合樹脂、ニトロセルロースなどの中から選ばれる少なくとも1種とポリウレタン樹脂とを組み合わせたものが挙げられる。中でも、塩化ビニル−水酸基含有アルキルアクリレート共重合樹脂とポリウレタン樹脂を併用するのが好ましい。ポリウレタン樹脂には、ポリエステルポリウレタン、ポリエーテルポリウレタン、ポリエーテルポリエステルポリウレタン、ポリカーボネートポリウレタン、ポリエステルポリカーボネートポリウレタンなどがある。
【0033】
また、官能基として−COOH,−SOM、−OSOM、−P=O(OM) 、−O−P=O(OM),[Mは水素原子、アルカリ金属塩基又はアミン塩]、−OH、−NR'R''、−(NR'''R''''R''''')[R'、R''、R'''、R''''、R'''''は水素または炭化水素基]、エポキシ基を有する高分子からなるウレタン樹脂等の結合剤樹脂を使用するのが好ましい。このような結合剤樹脂が好ましいのは、上述のように磁性粉等の分散性が向上するためである。2種以上の樹脂を併用する場合には、官能基の極性を一致させるのが好ましく、中でも−SOM基どうしの組み合わせが好ましい。
【0034】
これらの結合剤樹脂は、磁性層においては磁性粉末100重量部に対して、7〜50重量部、好ましくは10〜35重量部の範囲で用いられる。特に、結合剤樹脂として、塩化ビニル系樹脂5〜30重量部と、ポリウレタン樹脂2〜20重量部とを、複合して用いるのがもっとも好ましい。
【0035】
非磁性下層においては非磁性粉末およびカーボンブラックの総量100重量部に対して、7〜50重量部、好ましくは10〜35重量部の範囲で用いられる。特に、結合剤樹脂として、塩化ビニル系樹脂5〜30重量部と、ポリウレタン樹脂2〜20重量部とを、複合して用いるのがもっとも好ましい。
【0036】
これらの結合剤樹脂とともに、結合剤樹脂中に含まれる官能基などと結合させて架橋する熱硬化性の架橋剤を併用するのが望ましい。このような架橋剤としては、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどや、これらのイソシアネート類とトリメチロールプロパンなどの水酸基を複数個有するものとの反応生成物、上記イソシアネート類の縮合生成物などの各種のポリイソシアネートが好ましい。これらの架橋剤は、結合剤樹脂100重量部に対して、通常10〜50重量部の割合で用いられる。より好ましくは15〜35重量部である。
<潤滑剤>
磁性層および下塗層には、磁気記録媒体の摩擦係数を低下して走行耐久性を向上させる潤滑剤として従来公知のものが使用できる。添加量は、磁性層と下塗層とを合わせて、磁性層および中間層および下塗層に含まれる全粉体に対して0.1〜5.0重量%の高級脂肪酸を含有させ、0.1〜3.0重量%の高級脂肪酸のエステルを含有させると、ヘッドとの摩擦係数が小さくなるので好ましい。
【0037】
前記の添加量が好ましいのは、0.1重量%未満では、摩擦係数低減効果が小さく、5.0重量%を越えると塗膜が可塑化してしまい強靭性が失われるおそれがあるからである。また、この範囲の高級脂肪酸のエステル添加が好ましいのは、0.1重量%未満では、摩擦係数低減効果が小さく、3.0重量%を越えると磁性層表面への移動量が多すぎるため、テープとヘッドが貼り付く等の副作用を生じるおそれがあるからである。脂肪酸としては、炭素数10以上の脂肪酸を用いるのが好ましい。炭素数10以上の脂肪酸としては、直鎖、分岐、シス・トランスなどの異性体のいずれでもよいが、潤滑性能にすぐれる直鎖型が好ましい。このような脂肪酸としては、たとえば、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ベヘン酸、オレイン酸、リノール酸などが挙げられる。これらの中でも、ミリスチン酸、ステアリン酸、パルミチン酸などが好ましい。磁性層における脂肪酸(脂肪酸エステルについても同じ)の添加量としては、下塗層と上層磁性層の間で脂肪酸が転移するので、特に限定されるものではなく、上層磁性層と下塗層を合わせた脂肪酸の添加量を上記の量とすればよい。下塗層に脂肪酸を添加すれば、必ずしも磁性層に脂肪酸を添加しなくてもよい。
【0038】
上層磁性層には磁性粉末に対して0.5〜3.0重量%の脂肪酸アミドを含有させ、0.2〜3.0重量%の高級脂肪酸のエステルを含有させると、テープ走行時の摩擦係数が小さくなるので好ましい。この範囲の脂肪酸アミドが好ましいのは、0.5重量%未満ではヘッド/磁性層界面での直接接触が起りやすく焼付き防止効果が小さく、3.0重量%を越えるとブリードアウトしてしまいドロップアウトなどの欠陥が発生するおそれがあるからである。脂肪酸アミドとしてはパルミチン酸、ステアリン酸等の炭素数10以上の脂肪酸のアミドが使用可能である。また、上記範囲の高級脂肪酸のエステル添加が好ましいのは、0.2重量%未満では摩擦係数低減効果が小さく、3.0重量%を越えるとヘッドに貼り付く等の副作用があるためである。脂肪酸アミドの添加は上層磁性層の潤滑剤と下塗層の潤滑剤の相互移動を排除するものではない。
<バックコート層>
本発明の磁気記録媒体は、非磁性支持体上の磁性層が塗設されてなる面の反対側の面にバックコート層が塗設された構成であることが必要である。前記したように高密度記録に対応した磁性層表面の平滑性は、より好ましい範囲としてRaが2〜5nmと極めて平滑である。このため非磁性支持体より低い摩擦係数を有するバックコート層を塗設することで平滑な磁性層表面に負荷がかかるのを低減して良好な走行耐久性を確保する必要がある。
【0039】
バックコート層として使用されるバック塗料の材料は、結合剤樹脂、カーボンブラックを含む非磁性粉末は従来公知のものが使用可能である。バックコート層の厚さは0.3〜1.0μmが好ましくより好ましい範囲は0.3〜0.7μmである。0.3μmより薄いと均一な面が得られない場合があり、バックコートの機能が発揮されなくなる。1.0μmを超えると記録媒体としてのテープ全体の厚さが大きくなりテープ1巻当りの容量が減る。含有する非磁性粉末のうちモース硬度5以上の堅い非磁性粉末は、バックコート層の表面から飛び出した部分が、テープが巻回された際に上層磁性層に密着して、いわゆる裏写り現象を生じさせて上層磁性層表面にエンボス(凹み)をつくり平滑性を損なう。したがって、本発明ではバックコート層が含有するモース硬度5以上の非磁性粉末の平均粒子径は、バックコート層厚さの1/3より小さいことが好ましい。下塗層に含まれる非磁性粉末より、含まれる層の厚さとの比が大きいのは、下塗層の非磁性粉末が上層に与える影響より小さいことと、バックコート層に含有するモース硬度5以上の非磁性粉末は、下塗層に含まれる量に比べてバックコート層中の全非磁性粉末に占める割合がはるかに少量で、通常1〜5重量部しかないからである。モース硬度5以上の非磁性粉末としては、酸化鉄、アルミナ、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化クロムなどがあげられる。
<非磁性支持体>
本発明で使用される非磁性支持体の厚さは、用途によって異なるが、通常、2〜8μmのものが使用される。より好ましくは2.5〜7.0μmである。この範囲の厚さの非磁性支持体が使用されるのは、2μm未満では製膜が難しく、またテープ強度が小さくなり、7μmを越えるとテープ全厚が厚くなり、テープ1巻当りの記録容量が小さくなるためである。
【0040】
非磁性支持体の長手方向のヤング率は5.8GPa(590kg/mm)以上が好ましく、7.8GPa(800kg/mm)以上がより好ましい。非磁性支持体の長手方向のヤング率が5.8GPa(590kg/mm)以上がよいのは、長手方向のヤング率5.8GPa(590kg/mm)未満では、テープ走行が不安定になるためである。また、ヘリキャルスキャンタイプでは、長手方向のヤング率(MD)/幅方向のヤング率(TD)は、0.60〜0.80の特異的範囲が好ましい。長手方向のヤング率/幅方向のヤング率が、0.65〜0.75の範囲がより好ましい。長手方向のヤング率/幅方向のヤング率が、0.60〜0.80の特異的範囲がよいのは、0.60未満または0.80を越えると、メカニズムは現在のところ不明であるが、磁気ヘッドのトラックの入り側から出側間の出力のばらつき(フラットネス)が大きくなるためである。このばらつきは長手方向のヤング率/幅方向のヤング率が0.70付近で最小になる。さらに、リニアレコーディングタイプでは、長手方向のヤング率/幅方向のヤング率は、理由は明らかではないが、0.70〜1.30の範囲が好ましい。このような特性を満足する非磁性支持体には二軸延伸の芳香族ポリアミドベースフィルム、芳香族ポリイミドフィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等がある。
<磁性層、下塗層、バックコートに使用可能な有機溶剤>
磁性層塗料、下塗層塗料、バックコート塗料の製造において使用する有機溶剤としては、従来から使用されている有機溶剤を使用することができる。例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、アセトンなどのケトン系溶剤、トルエン、キシレン、ベンゼンなどの芳香族炭化水素系溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチルなどの酢酸エステル系溶剤、エタノール、ブタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶剤、ヘキサン、N,N−ジメチルホルムアミド等のものが挙げられる。
【0041】
これらの溶剤は、単独で又は混合して使用される。これらの有機溶剤は必ずしも100%純粋なものでなく、主成分以外の分解物、酸化物、水分等の不純物が含まれてもかまわない。これらの不純物の割合は20%以下が好ましい。各種溶剤の混合比率や添加量は各層の機能を考慮して適宜変更することはいうまでもない。
<磁気記録媒体の製造方法>
本発明の磁気記録媒体は、上層磁性層、中間層、下塗層、バックコート層の各層を形成するための塗料を塗布、乾燥することで製造することができる。
磁性塗料、中間層形成用塗料、下塗塗料、バックコート塗料の製造では、従来から公知の塗料製造工程を使用できる。混練工程や分散工程およびこれらの工程の前後に必要に応じて設けた混合工程を併用するのが好ましい。分散工程では、おもにメディア型分散機,高圧衝突型分散機,超音波型分散機を単独または併用すると、磁性粉末などの分散性の改善とともに、記録媒体の表面性状を制御できるので望ましい。
【0042】
非磁性支持体上に、磁性塗料、中間層形成用塗料、下塗塗料、バックコート塗料を塗布する方法としては、グラビア塗布、ロール塗布、ブレード塗布、エクストルージヨン塗布などの従来から公知の塗布方法が用いられる。本発明では、非磁性支持体上に下塗塗料を塗布し乾燥したのち、中間層形成用塗料を下塗層中の粉体100部に対し1部の割合に調節しながら塗布し、乾燥し、磁性塗料を塗布する逐次重層塗布方法が好ましい。
【0043】
表面平滑化処理(以下カレンダ処理という)は、従来公知の材質のカレンダ処理ロールを単独または組合せて使用できる。
【0044】
磁性層やバックコート層を設けたのちに塗膜表面の突起や不純物を除去するために行われる、いわゆる表面後処理工程は平滑化処理工程のあとでもテープ状に裁断した工程の後でもいずれでもよい。
【0045】
以下に、本発明においての下塗層が実質下塗層の場合について実施例を用いて詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、平均粒子径は数平均粒子径を示す。
【実施例1】
【0046】
非磁性下塗層塗料、中間層塗料および磁性塗料の組成、ならびに各塗料の調整方法を以下に示す。
<1.非磁性下塗層塗料組成>
(1.1)混練工程組成物
非磁性針状酸化鉄粉末(長軸平均粒子径:90nm,軸比:5) 68部
粒状アルミナ粉末(平均粒子径:90nm) 12部
カーボンブラック(平均粒子径:25nm) 20部
ステアリン酸 2.0部
塩化ビニルビニル系共重合体 8.8部
(ユニケミカル社製AMY−1M)
ポリエステルポリウレタン樹脂 4.4部
(Tg:40℃、含有−SONa基:1×10-4当量/g)
シクロヘキサノン 25部
メチルエチルケトン 40部
トルエン 10部
(1.2)希釈工程組成物
ステアリン酸 1部
ステアリン酸ブチル 1部
シクロヘキサノン 70部
メチルエチルケトン 50部
トルエン 20部
(1.3)配合工程組成物
ポリイソシアネート 1.4部
シクロヘキサノン 10部
メチルエチルケトン 15部
トルエン 10部
<2.中間層塗料組成>
ミリスチン酸 100部
n−ヘキサン(SP値 7.3) 20000部
<3.磁性塗料組成>
(3.1)混練工程組成物
磁性粉末 (Y−N−Fe) 100部
(Y/Fe:5.5at%)
(N/Fe:11.9at%)
(σs:103A・m2/kg(103emu/g))
(Hc:211.0kA/m(2650Oe))
(平均粒子径:17nm、軸比:1.1)
塩化ビニル系共重合体 13部
(日本ゼオン社製MR−110)
ポリエステルポリウレタン樹脂(PU) 4.5部
(含有−SONa基:1.0×10-4当量/g)
粒状アルミナ粉末(平均粒子径:80nm) 10部
メチルアシッドホスフェート(MAP) 2部
テトラヒドロフラン(THF) 20部
メチルエチルケトン/シクロヘキサノン(MEK/A) 9部
(3.2)希釈工程組成物
パルミチン酸アミド(PA) 1.5部
ステアリン酸n−ブチル(SB) 1部
メチルエチルケトン/シクロヘキサノン(MEK/A) 350部
(3.3)配合工程組成物
ポリイソシアネート 1.5部
メチルエチルケトン/シクロヘキサノン(MEK/A) 29部
上記の下塗層塗料において、(1.1)混練工程組成物を回分式ニーダで混練したのち、(1.2)希釈工程組成物を加えて攪拌の後サンドミルで滞留時間を60分として分散処理を行い、これに(1.3)配合工程組成物を加え攪拌・濾過した後、下塗塗料(非磁性下塗層用塗料)とした。
【0047】
これとは別に、上記の磁性塗料組成において、(3.1)混練工程組成物を予め高速混合しておき、その混合粉末を連続式2軸混練機で混練し、さらに(3.2)希釈工程組成物を加え連続式2軸混練機で少なくとも2段階以上に分けて希釈を行い、サンドミルで滞留時間を45分として分散し、これに(3.3)配合工程組成物を加え攪拌・ろ過後、磁性塗料とした。
【0048】
上記の下塗層塗料を、ポリエチレンナフタレート支持体(厚さ6.1μm、MD=8GPa、MD/TD=1.1、商品名:PEN、帝人社製)からなるベースフィルム上に、カレンダ後の厚さが1.2μmとなるようにエクストルージョン型コータにて塗布後、乾燥、カレンダ処理を行った。この下塗層上に、エクストルージョン型コータにてさらに上記の中間層塗料を下塗層中の粉体100部に対して1部の潤滑剤が着くように調整し塗布、乾燥する。その後、この中間層上に磁性塗料を塗布、乾燥、カレンダ処理後の磁性層の厚さが0.09μmとなるようにエクストルージョン型コータにて塗布し、ソレノイド磁石にて塗布走行方向に磁性体を配向させた。このときの支持体上に磁性塗料が塗布される場の磁界強度は400kA/mに調節した。その後乾燥、カレンダ処理行って磁気シートを得た。
<4.バックコート層用塗料組成>
カーボンブラック(平均粒子径:25nm) 87部
カーボンブラック(平均粒子径:350nm) 10部
粒状アルミナ粉末(平均粒子径:80nm) 3部
ニトロセルロース 45部
ポリウレタン樹脂(−SONa基含有) 30部
シクロヘキサノン 260部
トルエン 260部
メチルエチルケトン 525部
上記バックコート層用塗料成分をサンドミルで滞留時間45分として分散した後、ポリイソシアネート15部を加えてバックコート層用塗料を調整してろ過後、上記で作製した磁気シートの磁性層が形成された支持体の反対面に、乾燥、カレンダ後の厚さが0.5μmとなるように塗布し、乾燥した。
【0049】
このようにして得られた磁気シートを金属ロールからなる7段カレンダで、温度100℃、線圧196kN/mの条件で鏡面化処理し、磁気シートをコアに巻いた状態で70℃にて72時間エージングし、バックコート層付き磁気シートを得た。
【0050】
磁気シートをスリットマシンにより1/2インチ幅に裁断した。
【0051】
裁断して得たテープのパンケーキは、超鋼製のブレードおよびトレシーで磁性層表面処理をしてコンピュータ用テープを作製した。
【実施例2】
【0052】
n−ヘキサン(SP値:7.3)20000部をイソプロピルアルコール(SP値:11.5)20000部に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2のコンピュータ用テープを作製した。
【実施例3】
【0053】
脂肪酸のミリスチン酸を脂肪酸エステルであるステアリン酸ブチルに変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例3のコンピュータ用テープを作製した。
【実施例4】
【0054】
脂肪酸のミリスチン酸を脂肪酸アミドであるパルミチン酸アミドに変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例4のコンピュータ用テープを作製した。
(比較例1)
n−ヘキサン(SP値:7.3)20000部をメチルエチルケトン(SP値:9.3)10000部、シクロヘキサノン(SP値:9.9)10000部に変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例1のコンピュータ用テープを作製した。
(比較例2)
中間層を設けずにテープを作成した以外は、実施例1と同様にして、比較例2のコンピュータ用テープを作製した。
(比較例3)
エクストルージョン型コータのダイを同時重層タイプに交換し、下塗層と磁性層を同時重層塗布にて形成した以外は、比較例2と同様にして、比較例3のコンピュータ用テープを作製した。
<評価方法>
(1)磁性層厚さ変動の平均値(Δdave.
磁性層厚さ変動の平均値(Δdave.)は以下の方法によって求めた。磁気記録媒体を長手方向に沿って、フォーカストイオンビーム(FIB)で12μm断面加工し、走査型電子顕微鏡(SEM)を用い、倍率50,000で観察し、その写真撮影を行った。その後、磁性層と中間層の界面を目視判断して黒く縁取り、かつ磁性層表面も同様に目視判断して黒く縁取りし、縁取りに挟まれた磁性層の厚さdを50点測定する。50点の平均厚さをdave.としたときに、下式(1)で求められる値を厚さ変動の平均値とした。
【0055】
Δdave.=(Σ|d−dave.|)/dave./50 (1)
ここで、j=1、2、・・・、50である。
(2)データ信号の出力およびC/N
データ信号は、Bsが1.2T、ギャップ長が0.25μm、トラック幅が10μmのMIGヘッドを搭載した回転ドラムを用い、テープ/ヘッド相対速度10m/秒で記録波長0.4μmの信号をテープ長手方向と略直交する方向に記録した。データ信号の再生は素子厚が20nm、シールドギャップが0.3μm、トラック幅が12μmのシールド型MRヘッドを同様の回転ドラムに装着して行った。
【0056】
データ信号の出力及びノイズは、ファンクションジェネレータにより矩形波を記録電流電流発生器に入力制御して書き込み、MRヘッドの出力をプリアンプで増幅後、シバソク製スペクトラムアナライザーに読み込んだ。0.4μmのキャリア値を媒体出力Cとした。また0.4μmの矩形波を書き込んだときに、記録波長0.4μm以上に相当するスペクトルの成分から、出力及びシステムノイズを差し引いた値の積分値をノイズ値Nとして用いた。更に両者の比をとってC/Nとし、C、C/Nともに比較例3のテープの値を基準として、それとの相対値を求めた。
(3)磁性層とSUSとの摩擦係数の測定
外径5mmのSUSピン(SUS304)に磁気テープを角度90°、荷重0.64Nで掛け、磁気テープの同一箇所を送り速度20mm/秒で繰り返し11回摺動させた時の動摩擦係数を測定した。
(4)磁性層の表面粗さP−Vの評価
磁性層の表面粗さはZYGO社製汎用三次元表面構造解析装置NewView5000による走査型白色光干渉法によりScan Lengthを5μmで測定した。測定視野は、350μm×260μmである。磁性層の中心線平均表面粗さをRaとし、凹凸の最大値をP、凹凸の最小値をVとしその差をP−Vとした。
【0057】
【表1】

【0058】
*A・・・n−ヘキサン 20,000部
*B・・・イソプロピルアルコール 20,000部
*C・・・メチルエチルケトン 10,000部

シクロヘキサノン 10,000部
表1に試作した各テープの評価結果を示した。表から明らかなように、発明者らは、非磁性支持体上に非磁性粉末と結合剤とを含む少なくとも一層の下塗層を設け乾燥させ、該下塗層上に潤滑剤溶液を塗布乾燥させ、その上に強磁性粉末と結合剤とを含む磁性層を設けた三層以上の層を有し非磁性支持体の他方の面上に形成されたバックコート層を有する磁気記録媒体において、磁性層と下塗層との界面における厚さ変動の平均値(Δdave.)が0.14である実施例1の磁気記録媒体はC/Nが良好であることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非磁性支持体の一方の主面に非磁性粉末と結合剤とを含む下塗層、該下塗層上に磁性粉末と結合剤とを含む磁性層を有し、前記非磁性支持体の他方の主面に非磁性粉末と結合剤とを含むバックコート層を有する磁気記録媒体において、前記下塗層と前記磁性層の間に潤滑剤を含む中間層が設けられ、該中間層は、前記下塗層が下塗層形成用塗料を前記非磁性支持体上に塗工し乾燥して形成された後に、中間層形成用塗料を前記下塗層上に塗工し乾燥して形成され、しかる後に潤滑剤と溶媒とを含む磁性層形成用塗料を前記中間層上に塗工し乾燥して磁性層が形成され、前記中間層を形成するための溶媒の溶解性パラメータ値(SP値)が、11以上、または、8以下であることを特徴とする磁気記録媒体。
【請求項2】
前記潤滑剤が脂肪酸を含むことを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体。