説明

磁気記録媒体

【課題】再生出力、及び分解能に優れた磁気記録媒体を提供する。
【解決手段】非磁性支持体と、前記非磁性支持体上に少なくとも軟磁性層と強磁性層とをこの順で有する磁気記録媒体であって、前記強磁性層の厚さは5〜150nmであり、前記強磁性層は粒状の強磁性粉末及び結合剤を含有し、且つ実質的に垂直方向に磁化容易軸を有し、前記軟磁性層は170〜220Am/kgの飽和磁化を有する粒状のFe−Co系軟磁性粉末及び結合剤を含有する磁気記録媒体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高密度記録特性に優れた磁気記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
磁性粉末が結合剤中に分散された磁性層を有する塗布型の磁気記録媒体は、アナログ方式からデジタル方式への記録再生方式の移行に伴い、記録密度の一層の向上が要求されている。特に、高密度デジタルビデオテープやコンピュータバックアップテープ等に用いられる磁気記録媒体においては、この要求が年々高まってきている。
【0003】
このような記録密度の向上にあたり、短波長記録に対応するため、年々磁性粉末の微粒子化が図られており、現在では0.1μm程度の長軸長を有する針状の鉄系金属磁性粉末が実用化に供されている。また、短波長記録時の減磁による出力低下を防止するため、年々磁性粉末の高保磁力化が図られてきている。例えば、鉄−コバルト合金化により、199.0kA/m程度の保磁力を有する鉄系金属磁性粉末が実現されている(特許文献1)。しかしながら、これらの針状粒子を用いる磁気記録媒体では保磁力が磁性粉末の形状に依存することから、上記長軸長からの大幅な微粒子化は困難になってきているのが現状である。
【0004】
また、高密度記録化を目的として記録波長を短縮化していった場合、短波長領域においては従来の磁性粉末の飽和磁化や保磁力のレベルでは出力が数分の1程度しか得られないという問題だけでなく、記録再生時の自己減磁損失や磁性層の厚さに起因する厚み損失の影響が大きくなり、十分な分解能が得られないという問題がある。このためコンピュータバックアップテープであるLTO(Linear Tape Open)やDLT(Digital Linear Tape)等では、磁性層の厚みを低減することを目的として、下層に非磁性層を設け、上層に0.2μm程度の磁性層を有する重層構成の磁気記録媒体が実用に供されている。
【0005】
一方、上記のような磁気記録媒体は長手方向に磁性粉末を配向させているが、再生出力を向上するため、従来から磁性層の残留磁化の垂直成分が面内成分より大きくなるように垂直方向に磁性粉末を配向させ、磁化容易軸を垂直方向に有する磁性層を設けた磁気記録媒体が提案されている(例えば、特許文献2〜4)。磁性粉末を垂直配向させた磁気記録媒体は、記録ビットの境界である磁化遷移領域付近の反磁界が小さく、また自己減磁も小さいため、高出力が得られるというメリットがある。しかしながら、従来の針状の磁性粉末は塗布時の機械配向によって長手方向に配向しやすいことから、磁性粉末を垂直配向させることは困難であり、また垂直配向によって磁性粉末が磁性層表面から突出し、磁性層の表面性が低下しやすい。従って、針状の磁性粉末の長軸長と磁性層の厚さとが同レベルとなるような磁性層厚さの領域では、針状の磁性粉末を垂直配向させることは本質的に適さない。このため、塗布型の磁気記録媒体においてはこれまで磁性粉末を垂直配向させた磁気記録媒体は商品化されていないのが実情である。
【0006】
そこで、本出願人は、低保磁力磁性粉末を含有する低保磁力層と、該低保磁力層上に粒状の窒化鉄系磁性粉末を垂直配向させた薄層の上層磁性層を有する磁気記録媒体を先に提案した(特許文献5)。この磁気記録媒体によれば、上層磁性層が高保磁力、高飽和磁化を有する粒状の窒化鉄系磁性粉末を含有するため、上層磁性層の厚みが薄い場合でも、表面平滑性に優れた上層磁性層を得ることができ、再生出力に優れた磁気記録媒体を得ることができる。
【特許文献1】特開平3−49026号公報
【特許文献2】特開昭57−183626号公報
【特許文献3】特開昭59−167854号公報
【特許文献4】特開平2−254621号公報
【特許文献5】特開2004−335019号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、現在コンピュータバックアップ用システムであるLTO等では0.15μm程度の最短記録波長が用いられているが、記録密度の向上のためにはさらに短波長の最短記録波長(例えば、0.1μm以下)を用いる必要がある。このため、上記のような粒状の磁性粉末を垂直配向させた磁気記録媒体においても、記録電流が逆転したときの磁化遷移幅を狭くして、磁化の変化をより急峻に記録することにより、再生出力と分解能とをさらに向上することが求められる。
【0008】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、高密度記録を達成するために極めて短い記録波長を用いて信号が記録される場合においても再生出力、及び分解能に優れた磁気記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、非磁性支持体と、前記非磁性支持体上に少なくとも軟磁性層と強磁性層とをこの順で有する磁気記録媒体であって、
前記強磁性層の厚さは5〜150nmであり、前記強磁性層は粒状の強磁性粉末及び結合剤を含有し、且つ実質的に垂直方向に磁化容易軸を有し、
前記軟磁性層は170〜220Am/kgの飽和磁化を有する粒状のFe−Co系軟磁性粉末及び結合剤を含有する磁気記録媒体である。
本発明者等は、窒化鉄系磁性粉末等の粒状の強磁性粉末を垂直配向させた強磁性層を上層に有する磁気記録媒体で、下層の軟磁性層の磁性粉末として高飽和磁化を有する粒状のFe−Co系軟磁性粉末を使用することにより、良好な短波長記録再生特性が得られることを見出し、この知見を基にさらに詳細に検討を進めた結果、170〜220Am/kgの高い飽和磁化を有する粒状のFe−Co系軟磁性粉末を用いたときに、再生出力と分解能とが顕著に改善されることが見出された。すなわち、高飽和磁化の粒状のFe−Co系軟磁性粉末が高密度に充填された軟磁性層を、強磁性粉末を垂直方向させる強磁性層の下層に設けることにより、垂直配向時の配向磁界が通りやすくなるとともに、Fe−Co系軟磁性粉末は低い保磁力を有するため、該軟磁性粉末を含有する下層の軟磁性層は配向性をほとんど有さないことから、強磁性粉末を垂直配向させる時に下層軟磁性層からの配向性を乱す磁気的な影響が抑えられ、優れた垂直配向性を有する強磁性層を得ることができる。また、下層に軟磁性層を設けることにより、上層の強磁性層に信号を記録した際に軟磁性層の内部磁化が強磁性層の磁化強度を高めることができる。このため、磁化遷移幅の狭い磁気記録媒体を得ることができ、良好な電磁変換特性が得られる。
【0010】
前記軟磁性層は、10以上の透磁率を有することが好ましい。高透磁率の軟磁性層を形成することにより、磁化の立ち上がりがシャープとなり、記録感度が向上するため、さらに分解能を向上することができる。
【0011】
前記Fe−Co系軟磁性粉末はAlを含有することが好ましく、特に、AlをAl/(Fe+Co)原子比で2〜35原子%含有することが好ましい。Alを含有するFe−Co系軟磁性粉末を用いることにより、高透磁率を有する軟磁性層を形成することができる。
【0012】
上記Fe−Co系軟磁性粉末は2〜30nmの粒径及び1〜2の軸比を有することが好ましい。上記磁気記録媒体によれば、微粒子で異方性の小さい粒状の軟磁性粉末を下層軟磁性層に含有するため、軟磁性粉末の含率を高くすることができるとともに、配向処理時の軟磁性粉末の回転運動による軟磁性層の表面性の低下を抑えることができる。
【0013】
また、上記Fe−Co系軟磁性粉末は2〜10kA/mの保磁力を有することが好ましい。上記磁気記録媒体によれば、低保磁力の軟磁性層が得られるため、上層の強磁性層の配向性をさらに向上することができる。
【0014】
上記軟磁性層は前記Fe−Co系軟磁性粉末を65〜90%含有することが好ましい。上記Fe−Co系軟磁性粉末は粒状の形状を有するため、高い磁性粉末含率を有する軟磁性層を形成することができる。
【0015】
上記強磁性層は垂直カー回転角を測定したときに0.70〜0.98の垂直方向の角型を有することが好ましい。上記磁気記録媒体によれば、上層の強磁性層は粒状の強磁性粉末を含有するため、配向時の回転運動が少ない。また、下層に粒状のFe−Co系軟磁性粉末を含有するため、配向時にFe−Co系軟磁性粉末の回転運動も少ない。さらに、下層の軟磁性層が高飽和磁化のFe−Co系軟磁性粉末を含有するため、配向磁界が通りやすくなる。このため、強磁性層と軟磁性層との界面でのFe−Co系軟磁性粉末の回転運動による強磁性粉末の動きを低減できるとともに、上層の粒状の強磁性粉末をより効率的に配向させることができる。これにより、表面性を低下させることなく、高い垂直方向の角型を有する強磁性層を得ることができる。
【0016】
上記強磁性層は、前記強磁性粉末として、窒化鉄系磁性粉末、Co系磁性粉末、またはバリウムフェライト系磁性粉末を含有することが好ましい。これらの磁性粉末は結晶磁気異方性を有するため、配向時に磁化容易軸が垂直方向に揃うだけで磁性粉末の回転運動が少ないことから、磁性層の表面平滑性が劣化せず、高密度記録に適した優れた表面平滑性を有する磁性層が得られる。また、これらの強強磁性粉末は高保磁力及び高飽和磁化を有するため高密度記録に適している。
【0017】
上記強磁性粉末は、5〜50nmの粒径及び1〜2の軸比を有することが好ましい。上記磁気記録媒体によれば、微粒子で異方性の小さい粒状の強磁性粉末を上層の強磁性層に含有するため、強磁性粉末の含率を高くすることができるとともに、配向処理時の強磁性粉末の回転運動による強磁性層の表面性の低下を抑えることができる。
【0018】
上記強磁性層は前記強磁性粉末を40〜90%含有することが好ましい。上記強磁性粉末は粒状の形状を有するため、高い磁性粉末含率を有する強磁性層を形成することができる。
【0019】
上記非磁性支持体と軟磁性層との間に非磁性粉末及び結合剤を含有する非磁性層がさらに形成されてもよい。上記磁気記録媒体によれば、表面平滑性に優れた下層軟磁性層を形成することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、短波長記録時の再生出力、及び分解能に優れた磁気記録媒体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本実施の形態の磁気記録媒体は、上層の強磁性層に垂直配向性に優れる粒状の強磁性粉末を含有するとともに、出力及び分解能を高めるために該強磁性層の下に170〜220Am/kgの飽和磁化を有する粒状のFe−Co系軟磁性粉末を含有する軟磁性層を有することを特徴とする。このような高飽和磁化を有する軟磁性粉末が高度に充填された軟磁性層を垂直配向させる強磁性層の下層に設けることにより、垂直配向時の配向磁界が通りやすくなるとともに、上層の強磁性層に信号を記録した際に、軟磁性層の内部磁化が強磁性層の磁化強度を高めることができる。また、Fe−Co系軟磁性粉末は低い保磁力を有するため、該軟磁性粉末を含有する下層の軟磁性層は配向性をほとんど有さないことから、上層の強磁性層の配向性の低下が抑えられ、優れた垂直配向性を有する強磁性層を形成することができる。なお、既述した特許文献5では、下層の軟磁性層にMn−Znフェライト磁性粉末やNi−Znフェライト磁性粉末等のフェライト系磁性粉末等が用いられているが、これらのフェライト系磁性粉末は酸化物磁性粉末であるため、その飽和磁化は高くても120Am/kg程度であることから、高飽和磁化のFe−Co系軟磁性粉末に比べて配向磁界が通り難く、また強磁性層の磁化強度を高める効果が小さいため、磁化遷移幅が広がりやすい。さらに、フェライト系磁性粉末を含有する軟磁性層を用いて高い垂直配向性を有する強磁性層を形成しようとすると、磁性塗料に強磁界を作用させる必要があるため、強磁性層の表面平滑性が低下しやすい。
【0022】
Fe−Co系軟磁性粉末の飽和磁化が170Am/kgより低いと、上層の強磁性層に及ぼす磁化の作用が不十分となるとともに、垂直配向性が低下する。このため、飽和磁化は可能な限り高い方が好ましい。一方、Fe−Co系軟磁性粉末は飽和磁化が高すぎると磁性粉末の安定性が低下し、発火等の別の問題が生じ取り扱いが困難となる傾向がある。このため、飽和磁化は220Am/kg以下が好ましい。なお、本明細書において、磁性粉末の保磁力及び飽和磁化は、試料振動型磁力計を使用して、25℃で印加磁界1273.3kA/mで測定したときの基準試料による補正後の値である。
【0023】
上記のような高飽和磁化を有するFe−Co系軟磁性粉末は、通常市販のFe−Co系軟磁性粉末の飽和磁化が160Am/kg程度であるため、これを再還元処理することにより製造することができる。再還元処理は気相還元処理、液相還元処理のいずれであってもよい。気相で還元処理を行う場合、水素ガス、一酸化炭素ガス等の還元性ガスを使用することができる。液相で還元処理を行う場合、水素化ホウ素ナトリウム、次亜リン酸ナトリウム等の汎用の還元剤を用いてもよく、ポリオール類等のアルコール系還元剤を用いてもよい。溶媒は水相、油相のいずれを使用してもよい。これらの還元処理方法は併用してもよく、例えば、液相還元処理を還元性ガス雰囲気中で行うこともできる。気相還元処理の場合、還元温度は420〜500℃が好ましい。還元温度が420℃より低くなると、還元反応が十分進まなくなる傾向がある。還元温度が500℃を超えると、焼結が起こりやすくなる傾向がある。液相還元処理の場合、還元温度は300〜550℃が好ましい。還元温度が300℃より低くなると還元反応が十分進みにくくなる傾向がある。還元温度が550℃を超えると、粒子サイズのコントロールが困難となる傾向がある。
【0024】
Fe−Co系軟磁性粉末の粒径は、2〜30nmが好ましい。粒径が2nm未満では軟磁性粉末の分散性が低下する傾向がある。粒径が30nmより大きいと、強磁性層と軟磁性層との界面の変動が大きくなる傾向がある。また、Fe−Co系軟磁性粉末の軸比は、1〜2が好ましい。このような異方性の小さい粒状の軟磁性粉末を使用することにより、配向処理を行った場合の軟磁性層の表面性の低下を抑えることができ、それによって優れた表面性を有する強磁性層を得ることができる。なお、Fe−Co系軟磁性粉末における粒状とは、略球状乃至略楕円体状の異方性の小さい形状を意味し、楕円体状の異方性を有する磁性粉末の場合、長軸径と短軸径との軸比が2以下の形状を意味する。本明細書において、磁性粉末の粒径及び軸比は、透過型電子顕微鏡(TEM)により倍率20万倍で撮影した磁性粉末100個の粒径及び軸比の平均値である。
【0025】
Fe−Co系軟磁性粉末の保磁力は2〜10kA/mが好ましい。上記範囲の保磁力を有するFe−Co系軟磁性粉末を使用することにより、強磁性粉末を垂直配向させる時に下層軟磁性層からの配向性を乱す磁気的な影響が抑えられ、優れた垂直配向性を有する強磁性層を得ることができる。また、磁化の立ち上がりをシャープにし、記録感度を向上するため、軟磁性層の透磁率は10以上が好ましく、100以上がより好ましい。なお、軟磁性層の透磁率は高い程好ましいが、Fe−Co系軟磁性粉末を含有する軟磁性層の透磁率は通常20,000程度までである。透磁率は、非磁性支持体上に軟磁性層単層を形成した測定試料、もしくは軟磁性層及び強磁性層を形成した後、強磁性層を剥離した測定試料を、試料振動型磁力計を使用して、25℃下、印加磁界1273.3kA/mでヒステリシス曲線を測定し、これを基準試料により補正した後の0磁場付近(−50Oe〜+50Oe)のヒステリシス曲線の傾きから求めた値である。
【0026】
軟磁性層中のFe−Co系軟磁性粉末の含率は65〜90%が好ましく、70〜85%がより好ましい。磁性粉末を結合剤中に分散させた塗布型磁気記録媒体は非磁性成分を多く含有するため、金属薄膜からなる磁気記録媒体に比べて、飽和磁束密度及び透磁率を高くすることが困難であるが、粒状のFe−Co系軟磁性粉末を使用することにより高い磁性粉末含率を有する軟磁性層を形成することができる。このため、垂直配向に適した軟磁性層を得ることができる。なお、本明細書において、磁性粉末の含率は、走査型電子顕微鏡で撮影した二次電子及び反射電子の磁性層断面の画像の差から、結合剤等の磁性粉末以外の非磁性成分及び磁性層内の空孔を特定し、これら磁性粉末以外の部分を磁性層断面の面積から除外することにより求めた値である。
【0027】
本実施の形態において、Fe−Co系軟磁性粉末は、飽和磁化を高めるためにFeに対してCoを20〜50原子%含有することが好ましい。また、Fe−Co系軟磁性粉末は他の構成元素として希土類元素、Al、Si等を含んでいてもよい。このような元素を含有することにより、飽和磁化及び耐食性を向上することができる。特に、Alを含有するFe−Co系軟磁性粉末は、高透磁率を有する軟磁性層を形成できるため、好ましい。Fe−Co系軟磁性粉末がAlを含有する場合、Alの含有量はAl/(Fe+Co)原子比で2〜35原子%が好ましく、2〜31原子%がより好ましく、2〜13原子%がさらに好ましい。Alの含有量が多すぎると、軟磁性層の透磁率が低下する傾向がある。
【0028】
軟磁性層の厚さは、特に限定されるものではないが、0.1〜3.5μmが好ましい。上記範囲の厚さであれば、下層の軟磁性層の磁化の作用を十分に確保することができるとともに、磁気記録媒体全体の厚みを抑えることができる。
【0029】
本実施の形態の磁気記録媒体において、上層の強磁性層は粒状の強磁性粉末を含有する。磁性層の垂直方向に磁化容易軸を有する塗布型の磁気記録媒体を得るためには、強磁性粉末として粒子形状に異方性のない球状のものを用いるのが理想的である。しかしながら、既述したように、従来の鉄系金属磁性粉末等の針状の強磁性粉末は、保磁力が形状磁気異方性に依存するため、本質的に軸比の小さい粒状の強磁性粉末とすることが困難である。
【0030】
このため、本実施の形態においては、上層の強磁性粉末として異方性の小さい粒状の強磁性粉末、例えば、窒化鉄系磁性粉末やCo系磁性粉末等の略球状乃至略楕円体状の強磁性粉末や、バリウムフェライト系磁性粉末等の板状の強磁性粉末が用いられる。これらの粒状の強磁性粉末を垂直配向することにより垂直方向に磁化容易軸を有する磁性層を得ることができる。これらの中でも窒化鉄系磁性粉末及びCo系磁性粉末は優れた結晶磁気異方性を有するため、異方性の小さい略球状乃至略楕円体状の粒子形状を有する強磁性粉末であっても、高保磁力を有している。また、結晶磁気異方性により、これらの強磁性粉末を垂直配向しても、磁化容易軸が垂直方向に揃うだけで、磁性層の表面平滑性が劣化せず、高密度記録に適した優れた表面平滑性を有する磁性層が得られる。このため、5〜150nmの薄層の強磁性層であっても、良好な表面平滑性を維持できる。なお、上記強磁性粉末における粒状とは、球状、楕円体状、板状等の異方性の小さい形状を意味するものであり、楕円体状、板状等の異方性を有する強磁性粉末の場合、軸比が2以下の形状を意味する。
【0031】
上記粒状の強磁性粉末は、5〜50nmの粒径及び1〜2の軸比を有することが好ましい。このような微粒子の強磁性粉末を用いることにより強磁性層の充填性を向上することができ、高出力化を図ることができる。粒径が5nm未満となると熱かく乱により磁気特性が低下する傾向がある。粒径が50nmを超えると充填性の低下及び強磁性層の表面性の低下を招く傾向がある。なお、粒径は、球状の強磁性粉末の場合は、直径を、楕円体状の強磁性粉末の場合、長軸径を、板状の強磁性粉末の場合、最も長い板径をそれぞれ意味し、軸比は、楕円体状の強磁性粉末の場合、長軸径/短軸径を、板状の強磁性粉末の場合、板径/板面の最も短い板径を意味する。
【0032】
強磁性粉末のBET比表面積は、40〜200m/gが好ましく、50〜200m/g以上がより好ましく、60〜200m/g以上がさらに好ましい。BET比表面積が40m/gより小さいと、保磁力が低下しやすい。BET比表面積が200m/gを超えると、塗料分散性が低下したり、化学的に不安定になったりする場合がある。
【0033】
強磁性粉末の保磁力は119.4〜318.5kA/mが好ましく、飽和磁化は70〜160Am/kgが好ましい。上記のような高保磁力、高飽和磁化の強磁性粉末を用いることにより、短波長記録において高い再生出力を得ることができる。
【0034】
本実施の形態において、強磁性粉末として窒化鉄系磁性粉末を用いる場合、Fe16相を主相として含有する窒化鉄系磁性粉末が好ましい。結晶性の高いFe16相を主相として含有させることにより、保磁力及び飽和磁化を向上することができる。このようなFe16相を主相として含有する粒状の窒化鉄系磁性粉末は、例えば特開2000−277311号公報に記載されている。また、このような窒化鉄系磁性粉末の中でも、鉄に対して窒素を1〜20原子%含有する窒化鉄系磁性粉末が好ましい。窒化鉄系磁性粉末は、鉄の一部が他の遷移金属元素で置換されていてもよい。このような他の遷移金属元素としては、具体的には、例えば、Mn、Zn、Ni、Cu、Co等が挙げられる。これらは単独または複数含有していてもよい。これらの中でも、Co、Niが好ましく、特にCoは飽和磁化を最も向上できるので、好ましい。ただし、Coの含有量は鉄に対して10原子%以下が好ましい。Coの含有量が多くなりすぎると、窒化に長時間を要する傾向がある。また、窒化鉄系磁性粉末は希土類元素を含有してもよい。特に、Fe16相を主相とする窒化鉄を主として含有する内層部分と上記希土類元素を主として含有する外層部分とを有する2層構成の窒化鉄系磁性粉末は、高保磁力でありながら、高い分散性や優れた形状維持性を示すため好ましい。このような希土類元素としては、具体的には、例えば、イットリウム、イッテルビウム、セシウム、プラセオジウム、ランタン、ユーロピウム、ネオジウム等が挙げられる。これらは単独または複数含有していてもよい。これらの中でも、イットリウム、サマリウム、及びネオジウムは還元時の粒子形状の維持効果が大きいため、好ましい。希土類元素の含有量は、鉄に対し総含有量で、0.05〜20原子%が好ましく、0.1〜15原子%がより好ましく、0.5〜10原子%が最も好ましい。希土類元素が少なすぎると、分散性の向上効果が少なくなり、また還元時の粒子形状維持効果が小さくなる。希土類元素が多すぎると、未反応の希土類元素部分が多くなり、分散、塗布工程での障害となったり、保磁力や飽和磁化の過度な低下を引き起こしやすい。また、窒化鉄系磁性粉末は、ホウ素、シリコン、アルミニウム、リンを含有してもよい。このような元素を含有することにより、高分散性の窒化鉄系磁性粉末が得られる。これらの元素は、希土類元素に比べて安価であるため、コスト的にも有利である。これらの元素の含有量は、鉄に対し、ホウ素、シリコン、アルミニウム及びリンの総含有量で0.1〜20原子%が好ましい。これらの元素が少なすぎると、形状維持効果が少ない。またこれらの元素が多すぎると、飽和磁化が低下しやすい。なお、窒化鉄系磁性粉末は、必要により、炭素、カルシウム、マグネシウム、ジルコニウム、バリウム、ストロンチウム等を含有してもよい。これら元素と希土類元素とを併用することにより、より高い形状維持性と分散性能を得ることができる。
【0035】
窒化鉄系磁性粉末の製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば特開2004−273094号公報等に記載の方法により製造することができる。具体的には、出発原料としては、鉄系酸化物または鉄系水酸化物が用いられる。鉄系酸化物、鉄系水酸化物としては、例えば、ヘマタイト、マグネタイト、ゲータイト等が挙げられる。出発原料の粒径は、特に限定されないが、5〜80nmが好ましく、5〜50nmがより好ましく、5〜30nmがさらに好ましい。粒径が小さすぎると、還元時に粒子間焼結が生じやすい。粒径が大きすぎると、還元処理が不均質となりやすく、得られる窒化鉄系磁性粉末の粒径や磁気特性の制御が困難となる。
【0036】
上記の出発原料には希土類元素を被着させてもよい。被着処理の方法としては、例えば、アルカリまたは酸の水溶液中に出発原料を分散させ、これに希土類元素の塩を溶解させた後、中和反応等により出発原料に希土類元素を含む水酸化物や水和物を沈殿析出させる方法が挙げられる。また、上記の出発原料にはホウ素、シリコン、アルミニウム、リン等の元素を被着させてもよい。これらの元素の被着処理の方法としては、例えば、上記元素を含有する化合物を溶解させた溶液を調製し、この溶液に出発原料を浸漬して、出発原料にホウ素、シリコン、アルミニウム、リン等を被着させる方法が挙げられる。これらの被着処理を効率良く行うために、溶液には還元剤、pH緩衝剤、粒径制御剤等の添加剤をさらに添加してもよい。さらに、被着処理において、希土類元素と、ホウ素、シリコン、アルミニウム、リン等の元素とを同時にあるいは交互に出発原料に被着させるようにしてもよい。
【0037】
次に、上記のような出発原料を水素気流中で加熱還元する。還元ガスはとくに限定されず、水素ガス以外に、一酸化炭素ガス等の還元性ガスを使用してもよい。還元温度は、300〜600℃が望ましい。還元温度が300℃より低いと、還元反応が十分進まなくなる。還元温度が600℃より高いと、焼結が起こりやすくなる。
【0038】
上記のような加熱還元後、窒化処理を施すことにより、鉄と窒素とを構成元素として有する窒化鉄系磁性粉末が得られる。窒化処理としては、アンモニアを含むガスを用いて行うのが望ましい。また、アンモニアガス単体のほかに、水素ガス、ヘリウムガス、窒素ガス、アルゴンガス等をキャリアーガスとした混合ガスを使用してもよい。窒素ガスは安価なため、特に好ましい。窒化処理温度は100〜300℃が好ましい。窒化処理温度が低すぎると窒化が十分進まず、保磁力増加の効果が少ない。窒化処理温度が高すぎると窒化が過剰に促進され、FeN相やFeN相等の割合が増加し、保磁力がむしろ低下し、さらに飽和磁化の過度な低下を引き起こしやすい。窒化処理に際しては、鉄に対する窒素の含有量が1〜20原子%となるように、窒化処理の条件を選択することが望ましい。窒素の量が少なすぎると、Fe16相の生成量が少なくなり、保磁力向上の効果が少なくなる。窒素の量が多すぎると、FeN相やFeN相等が形成されやすくなり、保磁力がむしろ低下し、さらに飽和磁化の過度な低下を引き起こしやすい。
【0039】
Co系磁性粉末の製造方法としては、特に限定されるものではないが、従来公知の無電解析出法が挙げられる。例えば、塩化コバルト等のコバルト化合物、次亜リン酸ナトリウム等の還元剤、クエン酸ナトリウム等の錯化剤、及びゼラチン等の粒径制御剤を含有する水溶液とアルカリ水溶液とを混合してpH調整し、これに塩化パラジウム等の反応開始剤を混合した後、これらを反応させることによりCo系磁性粉末を形成することができる。
バリウムフェライト系磁性粉末の製造方法としては、特に限定されるものではないが、従来公知のガラス結晶化法等を挙げることができる。例えば、酸化バリウム、酸化鉄、鉄を置換する金属酸化物、及びガラス形成物質として酸化ホウ素等を所望のフェライト組成になるように混合し、該混合物を溶融し、急冷して非晶質体とし、ついで再加熱処理した後、洗浄・粉砕することによりバリウムフェライト系磁性粉末を形成することができる。
【0040】
強磁性層中の粒状の強磁性粉末の含率は、40〜90%が好ましく、46〜81%がより好ましい。このような高充填の強磁性層とすることにより、強磁性層の磁束密度を向上することができる。
【0041】
本実施の形態の磁気記録媒体は、下層に低保磁力、高飽和磁化を有する粒状のFe−Co系軟磁性粉末を含有する軟磁性層を設け、該軟磁性層上に垂直配向に好適な粒状の強磁性粉末を含有する強磁性層が形成されるため、上層に塗布された強磁性層用塗料に含まれる粒状の強磁性粉末を効率的に磁場配向することができる。このため、0.70〜0.98の高い垂直配向性と、優れた表面平滑性を両立することができる。特に、本実施の形態によれば、0.88〜0.98の範囲の高い垂直配向性を有する強磁性層を形成することもできるため、短波長記録に適した磁気記録媒体を得ることができる。なお、垂直方向の角型は1、すなわち全ての強磁性粉末の磁化容易軸が垂直方向に向いていることが好ましいが、窒化鉄系磁性粉末やCo系磁性粉末等の粒状の強磁性粉末には楕円体状等のある程度の異方性を有する強磁性粉末も含まれるため、塗布時の機械配向により磁化容易軸が垂直方向から斜め方向に傾斜する場合がある。このため、本実施の形態の強磁性層は垂直方向の角型が0.70〜0.98の範囲にある実質的に垂直方向の磁化容易軸を有している。本明細書において、強磁性層の角型は、垂直カー回転角測定装置(外部磁場:127kA/m)用いて測定したときの値である。試料振動型磁力計により角型を測定した場合、薄層の上層磁性層を設けた磁気記録媒体では本来の角型よりも高い角型となる。このため、垂直カー回転を測定することにより垂直方向の角型を正確に測定することができる。
【0042】
強磁性層の垂直方向の保磁力は、80〜320kA/mが好ましい。保磁力が上記範囲より小さいと、短波長記録において高出力を得にくくなる傾向がある。保磁力が上記範囲より大きいと、磁気ヘッドで飽和記録するのが難しくなる傾向がある。
【0043】
強磁性層の厚さは、5〜150nmが好ましく、15〜150nmがより好ましい。上記範囲の厚みを有する強磁性層であれば、短波長記録時の再生出力を高くすることができる。強磁性層の厚さが5nm未満では、均一な塗布が行えなくなる。強磁性層の厚さが150nmより厚いと、短波長記録時の自己減磁損失や厚み損失が大きくなり、出力及び分解能が低下する。
【0044】
次に、非磁性支持体、及び強磁性層、軟磁性層に好適に用いられる磁性粉末以外の他の成分、並びに各塗料の調製方法と塗布方法を説明する。さらに、上記磁気記録媒体に好適に用いることができる非磁性支持体と軟磁性層との間に設けられる非磁性層、及びバックコート層の構成を説明する。
【0045】
(非磁性支持体)
非磁性支持体としては、従来から使用されている磁気記録媒体用の非磁性支持体を使用できる。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル類、ポリオレフィン類、セルローストリアセテート、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリスルフオン、アラミド、芳香族ポリアミド等からなる厚さが通常2〜15μm、特に2〜7μmのプラスチックフィルムが用いられる。
【0046】
(強磁性層)
強磁性層に使用する結合剤としては、例えば、塩化ビニル系樹脂、ニトロセルロース系樹脂、エポキシ系樹脂及びポリウレタン系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。塩化ビニル系樹脂としては、具体的には、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、塩化ビニル−ビニルアルコール共重合樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合樹脂、塩化ビニル−水酸基含有アルキルアクリレート共重合樹脂等を挙げることができる。これらの中でも、塩化ビニル系樹脂とポリウレタン系樹脂との併用が好ましく、塩化ビニル−水酸基含有アルキルアクリレート共重合樹脂とポリウレタン系樹脂との併用がより好ましい。また、これらの結合剤は、粉末の分散性を向上し、充填性を上げるために、官能基を有するものが好ましい。このような官能基としては、具体的には、例えば、COOM、SOM、OSOM、P=O(OM)、O−P=O(OM)(Mは水素原子、アルカリ金属塩またはアミン塩)、OH、NR、NR(R,R,R,R及びRは、水素または炭化水素基であり、通常その炭素数が1〜10である)、エポキシ基等を挙げることができる。2種以上の樹脂を併用する場合、官能基の極性が一致した樹脂を用いることが好ましく、中でも、−SOM基を有する樹脂の組み合わせが好ましい。これらの結合剤は、強磁性粉末100質量部に対して、7〜50質量部、好ましくは10〜35質量部の範囲で用いられる。特に、塩化ビニル系樹脂5〜30質量部と、ポリウレタン系樹脂2〜20質量部との併用が好ましい。
【0047】
また、上記の結合剤とともに、結合剤中に含まれる官能基等と結合し架橋構造を形成する熱硬化性の架橋剤を併用することが好ましい。架橋剤としては、具体的には、例えば、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等のイソシアネート化合物;イソシアネート化合物とトリメチロールプロパン等の水酸基を複数個有する化合物との反応生成物;イソシアネート化合物の縮合生成物等の各種のポリイソシアネートを挙げることができる。架橋剤は、結合剤100質量部に対して、通常10〜50質量部の範囲で用いられる。
【0048】
強磁性層は、導電性と表面潤滑性の向上を目的に、カーボンブラック及び潤滑剤を含有することが好ましい。カーボンブラックとしては、具体的には、例えば、アセチレンブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック等のカーボンブラックを使用できる。カーボンブラックの平均粒子径は5〜200nmが好ましく、10〜100nmがより好ましい。カーボンブラックの含有量は、強磁性粉末100質量部に対して、0.2〜5質量部が好ましく、0.5〜4質量部がより好ましい。潤滑剤としては、具体的には、例えば、10〜30の炭素数を有する脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド等の潤滑剤を使用することができる。これらは単独または複数含有していてもよい。潤滑剤の含有量は、強磁性粉末100質量部に対して、0.2〜3質量部が好ましい。
【0049】
また、強磁性層には、耐久性、走行性を改善するため、アルミナ、シリカ等の非磁性粉末を添加してもよい。非磁性粉末の含有量は、強磁性粉末100質量部に対して、1〜20質量部が好ましい。
【0050】
強磁性層の平均表面粗さ(Ra)は1.0〜3.2nmが好ましい。本実施の形態の磁気記録媒体は、下層に低保磁力、高飽和磁化の粒状のFe−Co系軟磁性粉末を含有し、上層に高保磁力、高飽和磁化の粒状の強磁性粉末を含有するため、垂直配向処理によっても上記のような非常に平滑な表面を有する強磁性層を得ることができる。このため、強磁性層と磁気ヘッドとのコンタクトが良くなり、高い再生出力が得られる。なお、平均表面粗さは、ZYGO社製の汎用三次元表面構造解析装置「NewView5000」で、走査型白色光干渉法によりScan Length5μm、測定視野350μm×260μmで強磁性層の表面を測定したときの値である。
【0051】
(軟磁性層)
軟磁性層に用いられる結合剤としては、強磁性層に用いられる結合剤と同様の結合剤を用いることができる。結合剤の含有量は、Fe−Co系軟磁性粉末100質量部に対して、7〜50質量部が好ましく、10〜35質量部がより好ましい。
【0052】
軟磁性層は、強磁性層に導電性及び表面潤滑性を付与するために、カーボンブラック及び潤滑剤を含有することが好ましい。このようなカーボンブラック及び潤滑剤としては、強磁性層と同様のものを使用することができる。カーボンブラックの含有量は、Fe−Co系軟磁性粉末100質量部に対して、15〜35質量部が好ましく、20〜30質量部がより好ましい。潤滑剤の含有量は、Fe−Co系軟磁性粉末100質量部に対して、0.7〜7質量部が好ましい。なお、潤滑剤は、脂肪酸と脂肪酸エステルとを併用することが好ましい。
【0053】
また、軟磁性層は、強磁性層と同様の非磁性粉末を含有してもよい。このような非磁性粉末を含有することにより、軟磁性層と強磁性層との密着性を向上することができる。
【0054】
(塗料の調製方法、及び塗布方法)
強磁性層用塗料及び軟磁性層用塗料の調製にあたっては、従来から磁気記録媒体の製造で使用されている塗料製造方法を使用できる。具体的には、ニーダ等による混練工程と、サンドミル、ピンミル等による一次分散工程との併用が好ましい。また、非磁性支持体上に、強磁性層用塗料及び軟磁性層用塗料を塗布するにあたっては、グラビア塗布、ロール塗布、ブレード塗布、エクストルージヨン塗布等の従来から磁気記録媒体の製造で使用されている塗布方法を使用できる。強磁性層用塗料及び軟磁性層用塗料の塗布は、逐次重層塗布方法、同時重層塗布方法(ウェットオンウェット法)のいずれを使用してもよい。
【0055】
また、本実施の形態では、塗布工程において、塗料が未乾燥の状態で垂直方向に磁界を印加して、強磁性層の磁化容易軸が実質的に垂直方向になるように配向処理を行う。この配向処理では、ソレノイド磁石、永久磁石等を使用することができる。磁界の強さは、強磁性層の表面粗さの劣化を抑えるため、0.05〜1Tが好ましい。
【0056】
(非磁性層)
本実施の形態の磁気記録媒体は、表面性の向上や、塗料粘度、テープ剛性等の制御を目的として、非磁性支持体と軟磁性層との間に、非磁性粉末及び結合剤を含有する非磁性層を設けてもよい。非磁性層の厚さは、0.1〜3.0μmが好ましく、0.15〜2.5μmがより好ましい。非磁性粉末としては、具体的には、例えば、酸化チタン、酸化鉄、酸化アルミニウム等の非磁性粉末を使用することができる。これらは単独または複数混合して用いてもよい。また、導電性を付与するため、アセチレンブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック等のカーボンブラックを用いてもよい。結合剤としては、強磁性層に用いられる結合剤と同様の結合剤を用いることができる。結合剤の含有量は、非磁性粉末100質量部に対して、7〜50質量部が好ましく、10〜35質量部がより好ましい。非磁性層は、軟磁性層及び強磁性層と同時に塗布してもよいし、非磁性層を形成した後に、軟磁性層及び強磁性層を非磁性層上に逐次または同時に塗布してもよい。
【0057】
(バックコート層)
本実施の形態の磁気記録媒体は、バックコート層を設けてもよい。バックコート層の厚さは、0.2〜0.8μmが好ましく、0.3〜0.8μmがより好ましい。バックコート層は、アセチレンブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック等のカーボンブラックを含有することが好ましい。バックコート層の結合剤としては、強磁性層の結合剤と同様の結合剤を用いることができる。中でも、摩擦係数を低減し走行性を向上するため、セルロース系樹脂とポリウレタン系樹脂とを併用することが好ましい。結合剤の含有量は、粉末100質量部に対して、40〜150質量部が好ましく、50〜120質量部がより好ましい。バックコート層は、軟磁性層及び強磁性層が形成される前に形成されてもよいし、軟磁性層及び強磁性層が形成された後に形成されてもよい。
【0058】
(表面処理)
上記のようにして製造される磁気記録媒体は、必要に応じてラッピング処理、ロータリー処理、ティッシュ処理等の表面処理を行ってもよい。このような表面処理を施すことにより、表面平滑性が向上し、またヘッドやシリンダとの摩擦係数が最適化される。その結果、走行性の向上、スペーシングロスの低減、再生出力の向上を図ることができる。
【0059】
以下に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものでない。なお、以下において、「部」とあるのは「質量部」を意味する。
【実施例】
【0060】
<Fe−Co系軟磁性粉末の作製>
出発原料として、Fe−Co系軟磁性粉末(a)〔Co/Fe:43原子%,添加元素:Al,Al/(Fe+Co):13原子%,飽和磁化:158Am/kg,保磁力:8kA/m,粒子形状:球状,粒径:12nm,軸比:1.1〕、Fe−Co系軟磁性粉末(b)〔Co/Fe:43原子%,添加元素:Al,Al/(Fe+Co):6原子%,飽和磁化:155Am/kg,保磁力:8kA/m,粒子形状:球状,粒径:12nm,軸比:1.1〕、Fe−Co系軟磁性粉末(c)〔Co/Fe:43原子%,添加元素:Al,Al/(Fe+Co):2原子%,飽和磁化:148Am/kg,保磁力:8kA/m,粒子形状:球状,粒径:12nm,軸比:1.1〕、及びFe−Co系軟磁性粉末(d)〔Co/Fe:43原子%,添加元素:Al,Al/(Fe+Co):31原子%,飽和磁化:158Am/kg,保磁力:8kA/m,粒子形状:球状,粒径:12nm,軸比:1.1〕を準備した。これらのFe−Co系軟磁性粉末を、下記表1に示す条件で水素ガス気流中、再還元処理し、各Fe−Co系軟磁性粉末を作製した。なお、Fe−Co系軟磁性粉末(a)を還元温度495℃、処理時間2.5時間で再還元処理を行い、飽和磁化が230Am/kgのFe−Co系軟磁性粉末を作製したが、発熱により空気中での取り扱いが困難であった。
【0061】
【表1】

【0062】
<窒化鉄系磁性粉末の作製>
116部の硫酸鉄(II)七水塩と547部の硝酸鉄(III)九水塩を1,500部の水に溶解した。上記とは別に、150部の水酸化ナトリウムを1,500部の水に溶解した。上記の2種類の鉄塩の水溶液に水酸化ナトリウムの水溶液を添加し、20分間撹拌して、マグネタイト粒子を生成させた。このマグネタイト粒子をオートクレーブに入れ、200℃で4時間加熱した。水熱処理後、水洗し、乾燥して、粒子サイズが25nmの略球状乃至略楕円体状のマグネタイト粒子を得た。
【0063】
上記のマグネタイト粒子10部を500部の水に、超音波分散機を用いて、30分間分散させた。この分散液に2.5部の硝酸イットリウムを加えて溶解し、30分間撹拌した。上記とは別に、0.8部の水酸化ナトリウムを100部の水に溶解した。この水酸化ナトリウム水溶液を上記の分散液に約30分間かけて滴下し、滴下終了後、さらに1時間撹拌した。この処理により、マグネタイト粒子表面にイットリウムの水酸化物を被着析出させた。これを水洗し、ろ過後、90℃で乾燥して、マグネタイト粒子の表面にイットリウムの水酸化物を被着形成した粉末を得た。
【0064】
上記のマグネタイト粒子の表面にイットリウムの水酸化物を被着形成した粉末を、水素気流中、450℃で2時間加熱還元して、イットリウムを含有する鉄系磁性粉末を得た。次に、水素ガスを流した状態で、約1時間かけて、150℃まで降温した。150℃に到達した状態で、ガスをアンモニアガスに切り替え、温度を150℃に保った状態で、30時間窒化処理を行った。その後、アンモニアガスを流した状態で、150℃から90℃まで降温し、90℃で、アンモニアガスから酸素と窒素の混合ガスに切り替え、2時間安定化処理を行った。ついで、混合ガスを流した状態で、90℃から40℃まで降温し、40℃で約10時間保持したのち、空気中に取り出し、窒化鉄系磁性粉末(N−1)を作製した。
【0065】
上記のようにして得られた窒化鉄系磁性粉末のイットリウムと窒素の鉄に対する含有量を蛍光X線により測定したところ、それぞれ5.3原子%と10.8原子%であった。また、X線回折パターンよりFe16相を示すプロファイルが得られた。さらに、高分解能分析透過型電子顕微鏡で粒子形状を観察したところ、窒化鉄系磁性粉末は略球状の粒子で粒径が20nm、軸比が1.1であることが確認された。また、BET法により求めた比表面積は、53.2m/gであった。この窒化鉄系磁性粉末の磁気特性を測定したところ、飽和磁化は135.2Am/kg、保磁力は226.9kA/mであった。
【0066】
<Co系磁性粉末の作製>
13部のCoCl・6HO、20部のNaPH・HO、30部のCNa・2HO、15部のHBO、及びゼラチン10部を1,000部の水に溶解した。この水溶液を10Nの水酸化ナトリウム水溶液でpH8.3に調整した後、85℃まで昇温した。昇温後、水溶液に1部のPdClを滴下し、45分間反応させた。反応後、水溶液中に形成されたCo系磁性粉末を磁石により回収し、水洗、乾燥して、Co系磁性粉末(C−1)を作製した。
【0067】
上記のようにして得られたCo系磁性粉末を高分解能分析透過型電子顕微鏡で粒子形状を観察したところ、略球状の粒子で粒径が20nm、軸比が1.1であることが確認された。さらに、BET法により求めた比表面積は、53.2m/gであった。このCo系磁性粉末の磁気特性を測定したところ、飽和磁化は110Am/kg、保磁力は127kA/mであった。
【0068】
<磁気記録媒体の作製>
[実施例1]
(非磁性層用塗料の調製)
下記表2の非磁性層用塗料成分をニーダで混練したのち、混練物をサンドミルで分散処理(滞留時間:60分)を行い、これにポリイソシアネート6部を加え、撹拌し、ろ過して、非磁性層用塗料を調製した。
【0069】
【表2】

【0070】
(軟磁性層用塗料の調製)
下記表3の軟磁性層用塗料成分をニーダで混練したのち、混練物をサンドミルで分散処理(滞留時間:60分)を行い、これにポリイソシアネート6部を加え、撹拌し、ろ過して、軟磁性層用塗料を調製した。
【0071】
【表3】

【0072】
(強磁性層用塗料成分の調製)
下記表4の強磁性層用塗料成分(1)をニーダで混練したのち、混練物をサンドミルで分散処理(滞留時間:60分)を行い、これに下記表5の強磁性層用塗料成分(2)を加え、撹拌し、ろ過して、強磁性層用塗料を調製した。
【0073】
【表4】

【0074】
【表5】

【0075】
(塗布及び配向処理)
まず、上記の非磁性層用塗料を、ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ:6μm)の非磁性支持体上に、乾燥及びカレンダ処理後の厚さが2μmとなるように塗布した。
【0076】
次に、形成された非磁性層上に、上記の軟磁性層用塗料及び強磁性層用塗料を、乾燥及びカレンダ処理後の軟磁性層及び強磁性層の厚さがそれぞれ、0.6μm及び150nmとなるように同時重層塗布した。なお、塗布時に、非磁性支持体の厚み方向でN極とS極とが対向するように配置した一対の永久磁石の間に非磁性支持体を搬送させることにより垂直配向処理を行った(磁界強度:0.8T)。
【0077】
(バックコート層の作製)
下記表6のバックコート層用塗料成分を、サンドミルで分散処理(滞留時間:45分)を行い、これにポリイソシアネート8.5部を加え、撹拌し、ろ過して、バックコート層用塗料を調製した。
【0078】
【表6】

【0079】
上記のバックコート層用塗料を、非磁性支持体の磁性層が形成された面の反対面に、乾燥及びカレンダ処理後の厚さが700nmとなるように塗布した。
【0080】
(カレンダ及び裁断処理)
上記のように非磁性支持体の片面に非磁性層、軟磁性層、及び強磁性層を、他面にバックコート層を形成した磁気シートを、5段カレンダ(温度:70℃、線圧:150kg/cm)で鏡面化処理し、これをシートコアに巻いた状態で、60℃,40%RH下、48時間エージングした。その後、磁気シートを1/2インチ幅に裁断し、磁気テープを作製した。
【0081】
[実施例2]
実施例1の軟磁性層用塗料の調製において、Fe−Co系軟磁性粉末(P−1)の代わりに、Fe−Co系軟磁性粉末(P−2)を用いた以外は、実施例1と同様にして磁気テープを作製した。
【0082】
[実施例3]
実施例1の軟磁性層用塗料の調製において、Fe−Co系軟磁性粉末(P−1)の代わりに、Fe−Co系軟磁性粉末(P−3)を用いた以外は、実施例1と同様にして磁気テープを作製した。
【0083】
[実施例4]
実施例1の軟磁性層用塗料の調製において、Fe−Co系軟磁性粉末(P−1)の量を、40部とした以外は、実施例1と同様にして磁気テープを作製した。
【0084】
[実施例5]
実施例1の軟磁性層用塗料の調製において、Fe−Co系軟磁性粉末(P−1)の量を、100部とした以外は、実施例1と同様にして磁気テープを作製した。
【0085】
[実施例6]
実施例1の強磁性層用塗料の調製において、窒化鉄系磁性粉末(N−1)の量を、30部とした以外は、実施例1と同様にして磁気テープを作製した。
【0086】
[実施例7]
実施例1の強磁性層用塗料の調製において、窒化鉄系磁性粉末(N−1)の量を、150部とした以外は、実施例1と同様にして磁気テープを作製した。
【0087】
[実施例8]
実施例1の塗布及び配向処理において、磁界強度を0.06Tとした以外は、実施例1と同様にして磁気テープを作製した。
【0088】
[実施例9]
実施例1の塗布及び配向処理において、磁界強度を1Tとした以外は、実施例1と同様にして磁気テープを作製した。
【0089】
[実施例10]
実施例1の塗布及び配向処理において、強磁性層の厚さを15nmとした以外は、実施例1と同様にして磁気テープを作製した。
【0090】
[実施例11]
実施例1の強磁性層用塗料の調製において、窒化鉄系磁性粉末(N−1)の代わりにCo系磁性粉末(C−1)を用いた以外は、実施例1と同様にして磁気テープを作製した。
【0091】
[実施例12]
実施例1の軟磁性層用塗料の調製において、Fe−Co系軟磁性粉末(P−1)の代わりに、Fe−Co系軟磁性粉末(P−5)を用いた以外は、実施例1と同様にして磁気テープを作製した。
【0092】
[実施例13]
実施例1の軟磁性層用塗料の調製において、Fe−Co系軟磁性粉末(P−1)の代わりに、Fe−Co系軟磁性粉末(P−6)を用いた以外は、実施例1と同様にして磁気テープを作製した。
【0093】
[実施例14]
実施例1の軟磁性層用塗料の調製において、Fe−Co系軟磁性粉末(P−1)の代わりに、Fe−Co系軟磁性粉末(P−7)を用いた以外は、実施例1と同様にして磁気テープを作製した。
【0094】
[実施例15]
実施例1の強磁性層用塗料の調製において、窒化鉄系磁性粉末(N−1)の代わりにバリウムフェライト系磁性粉末(B−1)〔添加元素:Co,飽和磁化:38.8Am/kg,保磁力:144.1kA/m,粒子形状:板状,粒径:22nm,軸比:1,板厚:7nm〕を用いた以外は、実施例1と同様にして磁気テープを作製した。
【0095】
[比較例1]
実施例1の軟磁性層用塗料の調製において、Fe−Co系軟磁性粉末(P−1)の代わりに、Fe−Co系軟磁性粉末(P−4)を用いた以外は、実施例1と同様にして磁気テープを作製した。
【0096】
[比較例2]
実施例1の軟磁性層用塗料の調製において、Fe−Co系軟磁性粉末(P−1)の代わりに、Mn−Znフェライト軟磁性粉末(F−1)〔飽和磁化:62Am/kg,保磁力:8kA/m,粒子形状:球状,粒径:40nm〕を用いた以外は、実施例1と同様にして磁気テープを作製した。
【0097】
[比較例3]
実施例1の強磁性層用塗料の調製において、窒化鉄系磁性粉末(N−1)の代わりにCo系磁性粉末(C−1)を用い、軟磁性層用塗料の調製において、Fe−Co系軟磁性粉末(P−1)の代わりに、Fe−Co系軟磁性粉末(P−4)を用いた以外は、実施例1と同様にして磁気テープを作製した。
【0098】
[比較例4]
実施例1の塗布及び配向処理において、強磁性層の厚さを200nmとした以外は、実施例1と同様にして磁気テープを作製した。
【0099】
以上のようにして作製した実施例及び比較例の各磁気テープについて、強磁性層の垂直方向の角型、軟磁性層の透磁率、強磁性層及び軟磁性層中の磁性粉末の含率、並びに強磁性層の表面粗さを測定した。また、各磁気テープについて、下記の方法により再生出力、及び分解能を評価した。表7及び8はこの結果を示す。
【0100】
<電磁変換特性>
電磁変換特性の評価には、電磁誘導型ヘッド(トラック幅:25μm、ギャップ長:0.23μm)とMRヘッド(ギャップ長:0.17μm)とを装着したドラムテスターを用いた。このドラムテスターの回転ドラムに、測定試料として約60cmの長さの磁気テープを巻きつけ、誘導型ヘッドで信号を記録し、MRヘッドで信号を再生した。この両ヘッドは回転ドラムに対し異なる場所に設置されており、両ヘッドを上下方向に操作することでトラッキングを合わせることができる。再生出力は、ファンクションジェネレータにより、短波長領域の再生出力の評価のため波長0.1μmの矩形波の信号を磁気テープに書き込み、MRヘッドで再生したときの出力をスペクトラムアナライザに読み込んで測定した。なお、比較例2の磁気テープの再生出力を100%とし、その相対値として各磁気テープの再生出力を評価した。分解能は、ファンクションジェネレータにより、波長10μmの矩形波の信号を磁気テープに書き込み、MRヘッドの出力をデジタルオシロスコープに読み込んで、孤立波形の半値幅(PW50)を長さに換算した値を測定した。なお、比較例2の磁気テープのPW50を100%とし、その相対値として各磁気テープの分解能を評価した。
【0101】
【表7】

【0102】
【表8】

【0103】
上記表7及び8に示すように、170〜220Am/kgの飽和磁化を有する粒状のFe−Co系軟磁性粉末を含有する軟磁性層を下層に設けた磁気テープは、垂直方向の角型及び表面平滑性に優れた強磁性層を有しており、また短波長記録における再生出力、及び分解能に優れていることが分かる。また、垂直方向の角型の高い強磁性層を有する磁気テープは、再生出力をさらに向上できることが分かる。さらに、同一の強磁性粉末を用いた場合でも、軟磁性層の透磁率が高くなるほど分解能が向上することが分かる。
【0104】
これに対して、低飽和磁化のFe−Co系軟磁性粉末を含有する軟磁性層を下層に設けた磁気テープの再生出力及び分解能は、Mn−Znフェライト軟磁性粉末を含有する軟磁性層を下層に設けた磁気テープのそれらと同程度であることが分かる。なお、強磁性層の厚さが厚い磁気記録媒体では、短波長記録における出力、及び分解能が低下する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非磁性支持体と、前記非磁性支持体上に少なくとも軟磁性層と強磁性層とをこの順で有する磁気記録媒体であって、
前記強磁性層の厚さは5〜150nmであり、前記強磁性層は粒状の強磁性粉末及び結合剤を含有し、且つ実質的に垂直方向に磁化容易軸を有し、
前記軟磁性層は170〜220Am/kgの飽和磁化を有する粒状のFe−Co系軟磁性粉末及び結合剤を含有する磁気記録媒体。
【請求項2】
前記軟磁性層は、10以上の透磁率を有する請求項1に記載の磁気記録媒体。
【請求項3】
前記Fe−Co系軟磁性粉末は、Alを含有する請求項1または2に記載の磁気記録媒体。
【請求項4】
前記Fe−Co系軟磁性粉末のAl含有量が、Al/(Fe+Co)原子比で2〜35原子%である請求項3に記載の磁気記録媒体。
【請求項5】
前記Fe−Co系軟磁性粉末は、2〜30nmの粒径及び1〜2の軸比を有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の磁気記録媒体。
【請求項6】
前記Fe−Co系軟磁性粉末は、2〜10kA/mの保磁力を有する請求項1〜5のいずれか1項に記載の磁気記録媒体。
【請求項7】
前記軟磁性層は、前記Fe−Co系軟磁性粉末を65〜90%含有する請求項1〜6のいずれか1項に記載の磁気記録媒体。
【請求項8】
前記強磁性層は、垂直カー回転角を測定したときに0.70〜0.98の垂直方向の角型を有する請求項1〜7のいずれか1項に記載の磁気記録媒体。
【請求項9】
前記強磁性層は、前記強磁性粉末として、窒化鉄系磁性粉末、Co系磁性粉末、またはバリウムフェライト系磁性粉末を含有する請求項1〜8のいずれか1項に記載の磁気記録媒体。
【請求項10】
前記強磁性粉末は、5〜50nmの粒径及び1〜2の軸比を有する請求項1〜9のいずれか1項に記載の磁気記録媒体。
【請求項11】
前記強磁性層は、前記強磁性粉末を40〜90%含有する請求項1〜10のいずれか1項に記載の磁気記録媒体。
【請求項12】
前記非磁性支持体と軟磁性層との間に非磁性粉末及び結合剤を含有する非磁性層をさらに有する請求項1〜11のいずれか1項に記載の磁気記録媒体。

【公開番号】特開2009−32385(P2009−32385A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−150390(P2008−150390)
【出願日】平成20年6月9日(2008.6.9)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】