説明

磁気記録装置および磁気記録方法

【課題】パターンド媒体への磁気記録にあたり、精度の高い同期記録を行うことの可能な磁気記録装置および磁気記録方法を提供する。
【解決手段】媒体に対して磁気的に情報を記録する磁気記録装置であって、媒体に対して光を照射するレーザ160と、媒体からの反射光により媒体の特性を検知するための光センサ180と、光センサの検知信号に同期したクロックで媒体に対して磁気的に情報を記録する記録ヘッド150と、を備えたことを特徴とする。媒体は、第1の反射率の磁性体からなる記録領域と第2の反射率の非磁性体からなる非記録領域とが規則的に配置されたパターンド媒体であり、光センサは、磁性体と非磁性体とを検知することを特徴とする。
光センサの検知信号に同期したクロックを生成し、磁気記録に用いることができるので、パターンド媒体上の磁性体に同期した記録電流を供給することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は磁気記録装置および磁気記録方法に関する。本発明はハードディスクドライブ(Hard Disk Drive:HDD)をはじめとするパターンド媒体を用いた磁気記憶装置全般への適用を前提とするが、他の記録装置への適用も可能である。
【背景技術】
【0002】
コンピュータなどにおける情報記録再生装置として、ハードディスクドライブ(以下、「HDD」という。)が広く用いられている。HDDの記録方式として、従来の連続媒体に代わり、パターンド媒体が将来技術として注目されている(例えば、特許文献1参照。)。パターンド媒体は、磁性体の微小なドットを整然と等間隔にトラックに沿って並べた媒体を作っておき、1ドットごとに1ビットの情報を書き込んで記録する方式の媒体であり、連続媒体の記録密度の限界を超えて高密度記録が可能である。しかしながら、このようなパターンド媒体への記録には、媒体に同期した複雑な記録方法が必要となる。すなわち、記録時には個々の磁性体に個々のデータが安定して書かれるように、磁性体に同期して記録電流が発生されなければならず、制御が複雑となる。
【0003】
かかる制御の複雑さを解決する技術として、サーボ領域で同期し、データ領域でその同期を保持しながら、記録する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。しかし、媒体の隔心や回転変動を考慮した場合、精度的な問題が残る。一方、サーボ領域だけではなくデータ全体から連続的に磁界を検出する方法も考えられるが、記録中にはヘッドから強力な磁界が発せられている中から、媒体に同期した磁界を再生しなければならず、SN(Signal to Noise ratio)に問題がある。
【0004】
【特許文献1】特開2004−303302号公報
【特許文献2】特開2004−199806号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記背景従来が有する問題点に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、媒体(例えば、パターンド媒体)への磁気記録にあたり、精度の高い同期記録を行うことの可能な、新規かつ改良された磁気記録装置および磁気記録方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の第1の観点によれば、媒体に対して磁気的に情報を記録する磁気記録装置が提供される。本発明の磁気記録装置(100)は、前記媒体に対して光を照射する光照射手段(160)と、前記媒体からの反射光により前記媒体の特性を検知するための光センサ(180)と、前記光センサの検知信号に同期したクロックで前記媒体に対して磁気的に情報を記録する記録ヘッド(150)と、を備えたことを特徴とする(請求項1)。
【0007】
本発明の磁気記録装置において、前記媒体は、例えば、第1の反射率の磁性体からなる記録領域と第2の反射率の非磁性体からなる非記録領域とが規則的に配置されたパターンド媒体することができる。この場合、前記光センサは、前記磁性体と前記非磁性体とを検知することが可能である(請求項2)。
【0008】
かかる構成によれば、パターンド媒体の記録領域と非記録領域の反射率を異なるものとし、一方、ヘッド側には光センサ(180)を設けることで、パターンド媒体上に並んだ磁性体と非磁性体とを光(例えば、レーザ光)で検知することができる。そして、この検知信号に同期したクロックを生成し、磁気記録に用いることができる。このようにして、パターンド媒体上の磁性体に同期した記録電流を供給することができ、精度の高い同期記録を行うための記録方法を提供することが可能である。ただし本発明は、必ずしもパターンド媒体を用いるものに限定されるものではない。
【0009】
なお上記において、構成要素に付随して括弧書きで記した参照符号は、理解を容易にするため、後述の実施形態および図面における対応する構成要素を一例として記したに過ぎず、本発明がこれに限定されるものではない。以下も同様である。
【0010】
本発明では様々な応用が可能であるが、いくつかの応用例を挙げれば以下の通りである。
【0011】
前記第1の反射率(磁性体の反射率)は、前記第2の反射率(非磁性体の反射率)より低くするようにしてもよい(請求項3)。また逆に、前記第1の反射率は、前記第2の反射率より高くするようにしてもよい(請求項4)。磁性体の反射率と非磁性体の反射率とを変えることで、光センサにより光(例えば、レーザ光)を検出することが可能である。このように本発明では、磁性体の反射率と非磁性体の反射率とが異なっていればよく、いずれの反射率を必ず高くしなければならないなどの設計上の制限がない。
【0012】
前記光センサは、前記媒体のトラック方向に複数設けるようにしてもよい(請求項5)。光センサを複数設けることにより、光(例えば、レーザ光)の検知精度を上げることができる。
【0013】
さらに、前記記録領域および前記非記録領域の列となるトラックを所定の周期で蛇行させるようにしてもよい(請求項6)。特に、光センサを複数設けることと、トラックを所定の周期で蛇行させることとを組み合わせることにより、さらなる効果が得られる。すなわち、トラック方向に複数の光センサを設け、媒体で反射されて戻ってくる光量差を観察することで蛇行したトラックの信号周期や信号振幅を得ることができる。このことから、この信号を媒体の回転同期として利用が可能となる。
【0014】
さらに、蛇行させたトラックに所定の情報(例えば、アドレス情報や同期信号)を重畳することが可能である(請求項7)、そして、これら情報を復調しながら記録再生することで、安定した同期記録を行うことが可能である。さらに、後述するように、サーボ(servo)情報を削減できることから、その分の領域をデータ領域として利用できるので、データ容量を増やすことも可能となる。
【0015】
媒体に照射する光は任意のものを利用できるが、例えば、レーザ光とすることができる(請求項8)。
【0016】
上記課題を解決するため、本発明の第2の観点によれば、媒体に対して磁気的に情報を記録する磁気記録方法が提供される。本発明の磁気記録方法は、前記媒体に対して光を照射する光照射工程と、前記媒体からの反射光により前記媒体の特性を検知する媒体特性検知工程と、前記媒体の特性に応じたクロックで前記媒体に対して磁気的に情報を記録する情報記録工程と、を含むことを特徴とする(請求項9)。
【0017】
本発明の磁気記録方法において、前記媒体は、例えば、第1の反射率の磁性体からなる記録領域と第2の反射率の非磁性体からなる非記録領域とが規則的に配置されたパターンド媒体とすることができる。この場合、前記媒体特性検知工程において、前記磁性体と前記非磁性体とを検知することが可能である(請求項10)。
【0018】
かかる方法によれば、パターンド媒体の記録領域と非記録領域の反射率を異なるものとし、パターンド媒体に対して光を照射することで、パターンド媒体上に並んだ磁性体と非磁性体とを光(例えば、レーザ光)で検知することができる。そして、この検知信号に同期したクロックを生成し、磁気記録に用いることができる。このようにして、パターンド媒体上の磁性体に同期した記録電流を供給することができ、精度の高い同期記録を行うための記録方法を提供することが可能である。ただし本発明は、必ずしもパターンド媒体を用いるものに限定されるものではない。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明によれば、媒体(例えば、パターンド媒体)への磁気記録にあたり、精度の高い同期記録を行うための記録方法を提供することが可能である。なお、その他の本発明の優れた効果については、以下の発明を実施するための最良の形態の説明においても説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に添付図面を参照しながら、本発明にかかる磁気記録装置および磁気記録方法の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。本実施形態では、磁気記録装置の一例としてハードディスクドライブ(以下、「HDD」という。)について説明する。
【0021】
(第1の実施形態)
まず、本発明の第1の実施形態について説明する。
【0022】
(1)HDDの構成
図1は、本実施形態にかかるHDDの内部構造を示す説明図である。
本実施形態にかかるHDD10は、図1に示したように、ベース部材11上に設置されたスピンドルモータ30と、スピンドルモータ30に装着されたデータ保存用のディスク20と、データの再生および記録のための読み出し/書き込みヘッドをディスク20上の所定位置に移動させるためのアクチュエータ40とを備えている。なお一般には、図1のベース部材11に対応するカバー部材が存在し、ベース部材11がカバー部材で覆われて1つの筐体(ハウジング)を構成するが、カバー部材については図示および説明を省略する。
【0023】
アクチュエータ40は、ベース部材11に設置されたピボット42に回転自在に結合されたスイングアーム44と、スイングアーム44の一側端部に設置されて、ヘッドが搭載されたスライダー48を、ディスク20の表面方向に付勢されるように支持するサスペンション46と、スイングアーム44を回転させるためのボイスコイルモータ(以下、VCMという。)50と、を備えて構成されている。
【0024】
VCM50は、例えば、サーボ制御システムにより制御され、VCMコイルに入力される電流とマグネットにより形成された磁場との相互作用により、フレミングの左手の法則による方向にスイングアーム44を回転させる。すなわち、HDDの電源がオンとなってディスク20が回転し始めると、VCM50は、スイングアーム44を回転させて、読み出し/書き込みヘッドが搭載されたスライダー48をディスク20の記録面上に移動させる。一方、HDDの電源がオフとなってディスク20の回転が停止すると、VCM50は、スイングアーム44を回転させて、ヘッドがディスク20の記録面から外れるようにする。
【0025】
以上、本実施形態にかかるHDDの内部構成について説明した。以下に、本実施形態に特徴的な構成について説明する。
【0026】
(2)ディスクリート媒体とパターンド媒体(図2)
図2は、図1に示したデータ保存用のディスク20の具体例として、ディスクリート媒体(図2(a))とパターンド媒体(図2(b))を示す説明図である。
【0027】
ディスクリート媒体(discrete track media)は、図2(a)に示したように、トラック方向に一様な連続した磁性体の薄膜が離散的(discrete)に配置された媒体である。そして、この薄膜に磁気ヘッドで面内あるいは面に垂直に磁化した微小な領域を作り、0、1の情報ビットを書き込む。ディスクリート媒体では、記録時の記録データは媒体に非同期で記録される。図2(a)に示した一例では、磁性体のトラック間の間隔は50.8nm程度であり、トラック密度は500ktpi(tracks per inch)程度である。また、ビット方向の1ビットの間隔は12.7nm程度であり、ビット密度は200kbpi(bits per inch)程度である。またBAR(Bit Aspect Ratio)=4.0程度である。
【0028】
なお、連続媒体の場合もディスクリート媒体と同様に、記録時の記録データは媒体に非同期で記録される。連続媒体とは、一様な連続した磁性体の薄膜に磁気ヘッドで面内あるいは面に垂直に磁化した微小な領域を作り、0、1の情報ビットを書き込む方式の媒体をいう。
【0029】
一方、パターンド媒体(bit patterned media)は、図2(b)に示したように、磁性体の微小なドットを整然と等間隔にトラックに沿って並べた媒体を作っておき、1ドットごとに1ビットの情報を書き込んで記録する方式の媒体である。図2(b)に示した一例では、磁性体のトラック間の間隔は50.8nm程度であり、トラック密度は500ktpi(tracks per inch)程度である。また、ビット方向の1ビットの間隔は12.7nm程度であり、ビット密度は200kbpi(bits per inch)程度である。またBAR(Bit Aspect Ratio)=4.0程度である。
【0030】
このようなパターンド媒体への記録には、媒体に同期した記録方法が必要であるが、パターンド媒体は連続媒体の記録密度の限界を超えて、高密度記録が可能である。そこで本実施形態では、媒体の具体例として、パターンド媒体を取り上げて説明する。
【0031】
(3)HDDにおけるフォーマット(図3)
図3は、HDDにおけるフォーマットの一例を示す説明図である。
HDDのフォーマットは、例えば図3(a)に示したように、サーボ領域320−1(Servo1)、320−2(Sarvo2)と、データ領域310−1(Data1)、310−2(Data2)、・・・、310−N(DataN)と、サーボ領域とデータ領域間のギャップ部(Gap)とを含んで構成される。図3(a)の一例では、データ領域はN個あり、各データ領域は例えば512バイトのデータを保持する。この図3(a)に示されたフォーマットを一単位として繰り返し配列される。
【0032】
図3(b)は、図3(a)の各データ領域(Data1、2、・・・、N)の詳細を示す説明図である。データ領域(Data1、2、・・・、N)のフォーマットは、例えば図3(b)に示したように、データ読み出しの際に同期を取るためのプリアンブル部(Preamble)311と、データの先頭を示すデータ先頭部(Sync Mark)312と、例えば512バイトからなるデータ部(Data)313と、エラー検出のためのCRC314と、エラー訂正のためのECC315とを含んで構成される。
【0033】
図3(c)は、図3(a)の各サーボ領域(Servo1、2)の詳細を示す説明図である。サーボ領域(Servo1、2)のフォーマットは、例えば図3(c)に示したように、データ読み出しの際に同期を取るためのプリアンブル部(Preamble)321と、データの先頭を示すデータ先頭部(Sync Mark)322と、ヘッド情報やセクター情報等が含まれるグレーコード(Gray Code)323と、位置決めをするための情報等が含まれるバースト(Burst)324とを含んで構成される。
【0034】
例えば、図3(a)のData2(310−2)のセクターに記録する場合には、その先頭位置と計算される位置から、終了位置と計算される位置まで、図3(b)に示したフォーマットでデータが記録されるが、ディスクリート媒体または連続媒体では、このとき用いられるクロックは媒体に非同期となる。従って、回転変動などが発生した場合のデータ長の長短はギャップ部(Gap)で吸収される。また、再生時には図3(b)のプリアンブル部(Preamble)311でクロック引き込みがなされ、その後は再生データからクロックが抽出され、同期再生が行われる。
【0035】
一方、パターンド媒体の場合には、磁性体と非磁性体が交互に現れ、非磁性体領域のみで磁界を切り替えなければならず、同期記録方式が必要となる。これを実現する方法としてサーボ領域での同期が提案されている。これは図3(c)のプレアンブル部(Preamble)321でクロック抽出をして、その後はその周波数を保持する方法であるが、媒体の隔心や回転変動を考慮した場合、精度的な問題が残る。
【0036】
パターンド媒体の精度的な問題について説明する。例えば、1サーボフレーム辺りのデータセクター数Nを5とし、記録時の位相誤差の最大許容量を10%とした場合には、回転変動などによる周波数ずれは、(最大許容量10%=0.1ビット)/(512バイト≒4×10ビット)×(データセクター数5)=0.0005%以下にしなければならない。しかし、一般的な磁気記録装置では周波数ずれは0.01%程度であり、実際の周波数ずれに対応できない。なお、図3(b)の各データ領域内のプレアンブル部(Preamble)311においてもクロック抽出をする場合には、データセクター数を考慮しなくてよいが、その場合であっても、回転変動などによる周波数ずれは0.0025%以下にしなければならず、依然として実際に生じる周波数ずれに対応できない。
【0037】
また、サーボ部だけでなく、データ部の記録中にデータ部を連続的に再生しながら、クロックを抽出する方法なども提案されているが、記録磁界による干渉により、再生磁界のSN(Signal to Noise ratio)に問題が発生する。
【0038】
そこで、本実施形態では、上記問題を解決するために、熱アシストヘッドを応用した実施形態について説明する。
【0039】
(4)熱アシスト磁気記録用(HAMR)ヘッド(図4、図5)
パターンド媒体と同様に将来技術として、熱アシスト磁気記録用(Heat-Assisted Magnetic Recording:HAMR)ヘッド(以下、「熱アシストヘッド」という。)が注目されている。熱アシストヘッドは、記録時に磁界で記録し、再生時には磁界を検知する方法で、基本的には従来ヘッドと同様であるが、光等の熱(近接場照射や電子照射による加熱)により媒体の保持力を下げ、より書き込み易くする方法である。
【0040】
図4は、熱アシストヘッドの原理を概略的に示す説明図である。
熱アシストヘッド100は、図4に示したように、一般的なヘッドの構成であるシールド110、リード(MR)素子120、シールド130、リターンヨーク140およびライトポール150に加えて、さらにレーザ160を含んで構成されている。レーザ160は、ライトポール150および媒体200にレーザ光を照射する。図4中の参照符号170は、レーザ160から媒体200上に照射されたレーザスポットを示す。また図5は、熱アシストヘッド100を媒体200面から見た状態を示す説明図である。
【0041】
このような熱アシストヘッド100によれば、レーザ160の熱により媒体200の保持力を下げ、より書き込み易くすることが可能である。そこで本実施形態では、パターンド媒体200と熱アシストヘッド110とを組み合わせて実施する。
【0042】
(5)光センサを用いる場合のパターンド媒体(図6)
図6は、パターンド媒体の記録領域と非記録領域を示す説明図である。パターンド媒体200は、図6に示したように、凸部の記録領域210と凹部の非記録領域220からなる。本実施形態では、一例として、凸部の記録領域210は磁性体でしかも光の反射率を低くし、凹部の非記録領域220は非磁性体および高反射率の材料で埋め平坦化する。熱アシスト記録ヘッドとの組み合わせを考えた場合には、このように、記録領域(磁性体部)210の反射率を低く、非記憶領域220の反射率を高くするのが望ましいが、本発明はこれに限定されず、記録領域210の反射率を高くし、非記録領域220の反射率を低くする構成としても良い。
【0043】
(6)光センサを搭載した熱アシスト用ヘッド(図7、図8)
一方ヘッド側には、図7に示したように、光センサ180を設けることを特徴とする。図8は、ヘッド側に光センサ180を設けた場合の熱アシストヘッド100を、媒体200面から見た状態を示す説明図である。この光センサ180は、媒体200からの反射光により媒体200の特性を検知するために用いられる。すなわち、パターンド媒体200上に並んだ磁性体と非磁性体とを光センサ180で検知し、この検知信号に同期したクロックを生成する。そしてこのクロックを用いて、媒体200に対して情報を記録することが可能である。
【0044】
また、この非記録領域の面積及びパターンニングを最適化することで媒体への有効な熱アシストが可能となる。このため、これまでに、例えば特開2004−355739公報等で提案されているようなパルス変調を行わなくても、連続照射による熱アシスト記録が可能となる。
【0045】
(7)光センサ〜クロック生成〜磁気記録の制御系
図9は、磁気媒体へ記録する際の記録電流のタイミング制御の一例である。
光センサ180により検出された光信号は、位相比較器310を介した後、所定の位相オフセットで調整される。さらに、チャージポンプ320、ループフィルタ330、発振器340を介して、クロックとして記録電流ドライバ350に送られる。一方、記録データはデータフォーマッタ360を介して記録電流ドライバ350に送られる。このようにして、記録電流が熱アシストヘッド100へ送られる。
【0046】
図9に示した一例では一般的なアナログ回路でのPLL(Phase Locked Loop)を用いているが、デジタル回路を用いた場合にはチャージポンプやループフィルタは演算器で置き換えられる。また、記録ヘッドと光検出器とは物理的に離れているため、位相ズレを発生するので、位相オフセットが必要となる。このオフセット量はあらかじめ最適化しておく必要がある。この調整の簡単な方法としては、オフセット量を変えながら、信号のSN比(Signal to Noise ratio)あるいはエラーレートを観測し最適化することが考えられる。
【0047】
(第1の実施形態の効果)
以上説明したように、本実施形態によれば、パターンド媒体200の記録領域210と非記録領域220の反射率を異なるものとし、その一方、ヘッド側には光センサ180を設けることで、パターンド媒体200上に並んだ磁性体210と非磁性体220とをレーザ160および光センサ180で検知することができる。そして、この検知信号に同期したクロックを生成し、磁気記録に用いることができる。このようにして、パターンド媒体200上の磁性体210に同期した記録電流を供給することができ、精度の高い同期記録を行うための記録方法を提供することが可能である。
【0048】
(第2の実施形態)
次に、上記第1の実施形態の応用例として、本発明の第2の実施形態について説明する。
本実施形態では、媒体の記録領域及び非記録領域の列となるトラックを所定の周期で蛇行(ウォブリング)させることと、媒体のトラック方向に複数の光センサを設け、媒体から戻ってくる光量差を観察することを特徴とする。上記第1の実施形態と実質的に同様の部分については重複説明を省略し、以下、本実施形態に特徴的な部分について詳細に説明する。
【0049】
まず、ウォブリングについて説明する。ウォブリング(Wobbling)はもともと記録用DVD(Digital Versatile Disk)の記録面を正確に読み出すための技術である。記録用DVDは、記録面にあらかじめ蛇行する溝がつけられている。溝の凸部分をランド、凹部分をグルーブという。この蛇行の波をウォブル(「揺れ」、「震え」を意味)といい、ドライブ/レコーダ側で波の周期を検知してディスクの回転を制御する。一定の周期で設けられたウォブルをカウントすることで、ディスク上の位置を知ることができる。DVD−Rディスクの場合は、ランド(丘)部のプリピットとグルーブの両方をカウントして正確な位置を把握する。
【0050】
本実施形態では、このウォブリングをHDDの媒体に応用し、媒体の記録領域及び非記録領域の列となるトラックをある周期でウォブリングさせることによって、蛇行したトラックの信号周期や信号振幅を得ることができる。さらに、トラックをある周期でウォブリングさせることによって、トラックに所定の情報を重畳することができる。例えば、トラックにアドレス情報や同期信号を重畳することができる。
【0051】
さらに本実施形態では、図10に示したように、媒体200のトラック方向に複数の光センサ191、192を設け、媒体200から戻ってくる光量差を観察することを特徴とする。図11は、トラック方向に複数の光センサ191、192を設けた状態を、媒体200面から見た状態を示す説明図である。このように、媒体200のトラック方向に複数の光センサ191、192を設け、媒体200から戻ってくる光量差を観察することによって、上述した媒体200のウォブリング、すなわち、蛇行したトラックの信号周期や信号振幅を得ることができる。
【0052】
(第2の実施形態の効果)
以上説明したように、本実施形態によれば、蛇行したトラックの信号周期や信号振幅を得ることができる。このことから、この信号を媒体200の回転同期として利用が可能となる。
【0053】
さらに蛇行させたトラックにアドレス情報や同期信号を重畳し、これを復調しながら記録再生することで安定した同期記録が行えるとともに、サーボ(servo)情報を現行のサーボ領域から削減できることから、その分の領域をデータ領域として利用できるので、データ容量を増やすことも可能となる。
【0054】
以上、添付図面を参照しながら本発明にかかる磁気記録装置および磁気記録方法の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0055】
例えば、上記第2の実施形態では、光センサを2つ(191、192)設けた場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、光センサを3つ以上設けるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は磁気記録装置および磁気記録方法に利用可能である。本発明はハードディスクドライブ(Hard Disk Drive:HDD)をはじめとするパターンド媒体を用いた磁気記憶装置全般への適用を前提とするが、他の記録装置への適用も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】HDDの内部構成を概略的に示す説明図である。
【図2】ディスクリート媒体とパターンド媒体を示す説明図である。
【図3】HDDにおけるフォーマットを示す説明図である。
【図4】熱アシスト磁気記録用(HAMR)ヘッドを示す説明図である。
【図5】ヘッドを媒体面から見た状態を示す説明図である。
【図6】光センサを用いる場合のパターンド媒体を示す説明図である。
【図7】光センサを搭載した熱アシスト用ヘッドを示す説明図である。
【図8】図7のヘッドを媒体面から見た状態を示す説明図である。
【図9】光センサ〜クロック生成〜磁気記録の制御系を示す説明図である。
【図10】複数の光センサを搭載した熱アシスト用ヘッドを示す説明図である。
【図11】図10のヘッドを媒体面から見た状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0058】
10 HDD
20 ディスク
30 スピンドルモータ
40 アクチュエータ
42 ピボット
44 スイングアーム
46 サスペンション
48 スライダー
50 ボイスコイルモータ(VCM)
100 熱アシストヘッド
110 シールド
120 リード素子
130 シールド
140 リターンヨーク
150 ライトポール
160 レーザ
170 ヒートスポット
180 光センサ
191、192 光センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体に対して磁気的に情報を記録する磁気記録装置であって、
前記媒体に対して光を照射する光照射手段と、
前記媒体からの反射光により前記媒体の特性を検知するための光センサと、
前記光センサの検知信号に同期したクロックで前記媒体に対して磁気的に情報を記録する記録ヘッドと、
を備えたことを特徴とする、磁気記録装置。
【請求項2】
前記媒体は、第1の反射率の磁性体からなる記録領域と第2の反射率の非磁性体からなる非記録領域とが規則的に配置されたパターンド媒体であり、
前記光センサは、前記磁性体と前記非磁性体とを検知することを特徴とする、請求項1に記載の磁気記録装置。
【請求項3】
前記第1の反射率は、前記第2の反射率より低いことを特徴とする、請求項2に記載の磁気記録装置。
【請求項4】
前記第1の反射率は、前記第2の反射率より高いことを特徴とする、請求項2に記載の磁気記録装置。
【請求項5】
前記光センサは、前記媒体のトラック方向に複数設けられることを特徴とする、請求項2〜4のいずれかに記載の磁気記録装置。
【請求項6】
前記記録領域および前記非記録領域の列となるトラックを所定の周期で蛇行させることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の磁気記録装置。
【請求項7】
前記蛇行させたトラックに所定の情報が重畳されていることを特徴とする、請求項6に記載の磁気記録装置。
【請求項8】
前記光照射手段は、前記媒体に対してレーザ光を照射することを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の磁気記録装置。
【請求項9】
媒体に対して磁気的に情報を記録する磁気記録方法であって、
前記媒体に対して光を照射する光照射工程と、
前記媒体からの反射光により前記媒体の特性を検知する媒体特性検知工程と、
前記媒体の特性に応じたクロックで前記媒体に対して磁気的に情報を記録する情報記録工程と、
を含むことを特徴とする、磁気記録方法。
【請求項10】
前記媒体は、第1の反射率の磁性体からなる記録領域と第2の反射率の非磁性体からなる非記録領域とが規則的に配置されたパターンド媒体であり、
前記媒体特性検知工程において、前記磁性体と前記非磁性体とを検知することを特徴とする、請求項9に記載の磁気記録方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−130187(P2008−130187A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−316001(P2006−316001)
【出願日】平成18年11月22日(2006.11.22)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG ELECTRONICS CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】416,Maetan−dong,Yeongtong−gu,Suwon−si,Gyeonggi−do 442−742(KR)
【Fターム(参考)】