説明

磁気記録装置におけるヘッド位置決め情報

【課題】Shingled記録を用いる磁気記録装置において、不感帯に起因する、磁気ヘッドの位置決めの困難性や、ハードディスクドライブでの偏心による位置決め誤差などの問題を回避したサーボバーストパターンを提供する。
【解決手段】磁気記憶媒体上に、Shingled記録方式によって、磁気ヘッドによりデータの記録および再生を行う場合の、磁気ヘッドの位置決めのためのサーボパターンを提供する。磁気ヘッドのライト幅をW、リード幅をRとしたときに、互いに位相が180度ずれたバースト信号のペアの数nが、n=(W−(W mod R))/R+1、ただしW mod RはWをRで割った余り、であり、それぞれのバースト信号のペアは、180/n度だけ互いに位相をずらして配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気記録媒体上の磁気ヘッド位置決めのためのサーボデータの記録方法に関し、より詳細には、Shingled記録を用いる磁気記録装置において、磁気ヘッド位置決めの不感帯を生じさせないサーボデータの記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なハードディスクドライブにおいては、磁気記録媒体の表面からヘッドを10nm程度浮上させて、データの記録再生を行う。磁気記録媒体上のビット情報は、同心円状に配置されているデータトラックに格納されている。データの記録・再生時において、磁気ヘッドは、データトラック上に位置決めされる。磁気記録媒体上には、ヘッド位置決めのためのサーボデータが記録されている。サーボデータにおいてバーストデータはヘッドの位置情報を得るために使われ、通常は、バーストパターンAとBとの位相が互いに180度ずれたバーストパターンA/Bの組と、A/Bの組と同様に、CとDの位相が互いに180度ずれたバーストパターンC/Dの組とが、互いに90度位相をずらして配置される。図1に、このバーストパターン、および各バーストの出力とヘッド位置の関係のグラフを示す。このような配置にすることで、図1の位置に対する出力のグラフのように、バーストAの出力とバーストBの出力の差A−Bと、バーストCの出力とバーストDの出力の差C−Dにおける、ヘッド位置に対してA−B、C−Dの値が線形に増加、および/あるいは減少する部分を取り出し、組み合わせることによって、サーボトラック内ヘッド位置情報のグラフが得られる。このグラフを用いて、サーボトラック内でのヘッドの位置を知ることが可能となる。具体的には、図1のサーボトラック内ヘッド位置情報のグラフを参照すると、1つのトラック内において、出力が−2Vから+2Vまで線形に変化する。図1の場合、出力が0Vであるときにはヘッドはトラックの中心に位置する。出力が−2Vまたは2Vのときにはヘッドはトラックの端に位置し、出力の符号により、どちら側の端にあるかを判別できる。出力をXとすると、X/2Vの値はヘッド位置のトラック中心からのずれの大きさを表し、X/2Vの符号によりヘッド位置がトラック中心からどちら側にずれているかを判定できる。
【0003】
サーボ情報は、一般的にはサーボライタと呼ばれる装置で書込まれる。サーボライタはプッシュピンでアクチュエータアームを制御して位置決めを行いながらサーボ信号を記録していく。しかしながら、この方法では、サーボ信号の位置精度が良くないこと、またハードディスクドライブの性能の進化の速度に対応させてサーボライタの性能を進化させる必要があり、サーボライタの性能を向上させるための開発コストが増大するというような問題があった。
【0004】
この問題を解決するため、オフラインサーボ記録方式とセルフサーボ記録方式が開発された。
【0005】
オフラインサーボ記録方式は、磁気記録媒体をハードディスクドライブに組み込む前にオフラインサーボ記録装置を用いてサーボ信号を記録する技術であり、プッシュピンを用いるようなサーボ書込み方式より精度が向上するが、オフラインサーボ記録装置でサーボ情報を記録した磁気記録媒体をハードディスクドライブに載せ換えるため、ハードディスクドライブでは偏心による誤差が発生してしまう欠点がある。
【0006】
セルフサーボ記録方式は、あらかじめリファレンスサーボ信号を書込んだ磁気記録媒体をハードディスクドライブに組み込み、組み込んだ後にハードディスクドライブ内でリファレンスサーボ信号を参照して磁気ヘッドの位置決めを行い、複数の磁気記録媒体に最終サーボ信号を書込んでいく方式である。リファレンスサーボ信号は、オフラインサーボ記録装置で記録される。この方式では、ハードディスクドライブにてサーボ情報を記録し直すため、偏心による誤差をキャンセルできる利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−184015号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年、特許文献1により、磁気ヘッドにおけるライト幅より狭いトラックピッチで記録できるよう、各トラックを片側から重ね書きする、Shingled記録方式が提案されている。図2に、Shingled記録方式によって重ね書きされた記録トラックを示す。この方式を用いると、ライト幅を狭めることなく狭トラックピッチにすることが可能であり、記録容量を増加させることが可能となる。この際、重ね書きされたトラックの狭い領域の信号を読み出す必要があり、リード幅は従来記録に比べて狭く設計する必要がある。ここで、リード幅をライト幅の1/2以下にすると、図3で示すように、A/B、およびC/Dのバーストパターンを用いるサーボ信号では、ヘッド位置が変化してもA−B、C−Dの両方の値が変化しない不感帯ができてしまう。セルフサーボ記録方式を用いた場合、磁気ヘッドの位置決めが困難になる。オフラインサーボ記録方式においては、サーボ記録に用いるヘッドとハードディスクで用いるヘッドを異なるものにできるため、上記問題の回避は可能であるが、偏心による位置決め誤差などの問題がある。
【0009】
そこで、本発明は、以上の課題に対し、Shingled記録を用いる磁気記録装置において、不感帯に起因する、磁気ヘッドの位置決めの困難性や、ハードディスクドライブでの偏心による位置決め誤差などの問題を回避したサーボバーストパターンを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、互いに180度位相のずれたバーストパターンの組A/B、C/Dに加え、E/F、G/H・・・のn組(n≧3)のバーストパターンを使用し、それぞれの組は、互いに180/n度だけ位相をずらして配置する。nの値は、磁気ヘッドのライト幅をW、リード幅をRとしたとき、n=(W−(W mod R))/R+1で定義する。ここで、W mod Rは、WをRで割った余りの値である。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明を用いることで、Shingled記録に用いられるような、ライト幅に対してリード幅が小さい磁気ヘッドにおけるサーボパターンにおいて、不感帯を無くすことが可能であり、したがって磁気ヘッドの位置決めの困難性や、ハードディスクドライブでの偏心による位置決め誤差などの問題を回避したヘッド位置検出を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】従来の磁気記録媒体上のサーボトラックにおけるバーストパターンの図および出力とヘッド位置の関係を示すグラフである。
【図2】従来のShingled記録方式によって重ね書きされた記録トラックを示す図である。
【図3】リード幅がライト幅の1/2以下になる場合の、従来の磁気記録媒体上のサーボトラックにおけるバーストパターンの図および出力とヘッド位置の関係を示すグラフである。
【図4】本発明の一実施形態にかかる磁気記録媒体の構成図である。
【図5】本発明により得られるShingled記録方式におけるサーボパターンを示す図である。
【図6】図5に示したShingled記録方式におけるバーストパターン、および各バーストの出力とヘッド位置の関係のグラフを示す図である。
【図7】本発明に対する比較例にかかるShingled記録方式におけるバーストパターン、および各バーストの出力とヘッド位置の関係のグラフを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳細に説明する。
(実施例)
図4に、本実施例で使用される磁気記録媒体の構成を示す。非磁性基板の上に、軟磁性裏打層と中間層と垂直磁気記録層と保護層とが順次積層され、保護層上には潤滑層が設けられている。
【0014】
また、本発明に用いる磁気ヘッドは、単磁極型のライト素子とトンネル磁気抵抗(TMR)センサを用いたリード素子を具備する。
【0015】
図5に本発明により得られるShingled記録方式におけるサーボパターンを示す。本実施例においては、n=3、すなわち互いに180度位相のずれたバーストパターンの組が3組であるとする。ライト幅は90nm、リード幅は40nm、データトラックピッチは60nm、サーボトラックピッチは90nmとする。サーボパターンはプリアンブル、Sector番号、サーボトラックNo、バーストパターンで構成され、
n=(W−(W mod R))/R+1=(90−10)/40+1=3
となり、バーストパターンは、互いに180度位相のずれた組3つを、それぞれ180/3=60度ずらして配置する。ここで、W mod Rは、WをRで割った余りの値である。
【0016】
図6に、図5に示した本発明により得られるShingled記録方式におけるバーストパターン、および各バーストの出力とヘッド位置の関係のグラフを示す。図6を用いて、本実施例によると不感帯が発生しないことを説明する。
【0017】
まず、バースト信号出力差A−BとC−Dについて考察する。図6中の直線PP’、QQ’がヘッド位置に対してそれぞれA−B、C−Dの値が線形に変化する領域である。距離SP1≧距離SQ1の場合、A−B値が一定値を取るヘッド位置領域では、ヘッド位置検出をC−D値に切り替えることによって、不感帯を無くすことができる。一方、距離SP1<距離SQ1の場合、P1Q1区間で不感帯が生じる。Rをリード幅、Wをライト幅とすると、距離SP1はR/2、距離SQ1はW/3−R/2である。本実施例の場合、R=40nm、W=90nmであるので、距離SP1=20nm、距離SQ=10nmとなり、SP1>SQ1であるので、A−B、およびC−Dを利用すると、P’1Q’1区間で不感帯は無く、P’1Q’1区間でヘッド位置検出が可能であるといえる。
【0018】
同様に、バースト信号出力差C−DとE−Fに関して検証する。図6中の距離SQ’1=W/3+R/2=50nm、距離ST1=2W/3−R/2=40nmでありSQ’1>ST1であるので、C−D、E−Fを利用すると、Q1T’1区間で不感帯は無く、Q1T’1区間でヘッド位置検出が可能であるといえる。
【0019】
さらに、上記と同様にバースト信号出力差E−FとA−Bに関して検証する。距離ST’1=2W/3−R/2=80nm、距離SU1=W−R/2=70nmでありST’1>SU1であるので、E−F、A−Bで不感帯はなく、E−F、A−Bを利用すると、T1U’1区間で不感帯は無く、T1U’1区間でヘッド位置検出が可能であるといえる。
【0020】
以上より、バースト信号出力差A−B、C−DおよびE−Fを利用すると、全ての区間でヘッド位置検出が可能となる。本実施例では、不感帯が無くヘッドの位置検出が可能である。
【0021】
(比較例)
図7に、本発明に対する比較例を示すhingled記録方式におけるサーボパターンを示しており、バーストパターン部を拡大した図、および各バーストの出力とヘッド位置の関係のグラフである。ライト幅90nm、リード幅40nm、データトラックピッチ60nm、サーボトラックピッチ90nmの設計値で、互いに180度位相のずれたバーストパターン、A/B、およびC/Dを用いた。ここで、不感帯の有無を検証する。実施例と同様の考え方で、本比較例図7にて、距離SP1≧距離SQ1であれば、不感帯は無いといえる。しかし、本比較例では、距離SP1=R/2=20nm、距離SQ1=W/2−R/2=25nmであり、SP1<SQ1であるので、P1Q1区間が不感帯となってしまい、ヘッド位置検出が不可能となる区間が存在する。
【0022】
上述の実施例では、n=3、すなわち互いに180度位相のずれたバーストパターンの組が3組であるとしたが、nが4以上である場合も同様の方法で不感帯が無くヘッドの位置検出を可能とすることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気記憶媒体上に、Shingled記録方式によって、磁気ヘッドによりデータの記録および再生を行う場合の、前記磁気ヘッドの位置決めのためのサーボパターンであって、前記磁気ヘッドのライト幅をW、リード幅をRとしたときに、互いに位相が180度ずれたバースト信号のペアの数nが、n=(W−(W mod R))/R+1、ただしW mod RはWをRで割った余り、であり、それぞれの前記バースト信号のペアは、180/n度だけ互いに位相をずらして配置することを特徴とするサーボパターン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−226818(P2012−226818A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−96474(P2011−96474)
【出願日】平成23年4月22日(2011.4.22)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】