説明

磁気記録装置

【課題】磁気記録装置において高い読み取り、書き込みのデータ信頼性を得るためには、サーボトラックの偏芯に対するR/Wオフセットの誤差は非常に大きなものとなっており、この偏芯を考慮しないで各サーボトラックに対して一定のR/Wオフセットでデーターの読み書きを実行してしまうとデーターの読み取り信頼性が低下してしまう。
【解決手段】ヘッド位置算出部は、書き込み時のリードヘッドの目標位置と、読み取り時のリードヘッドの目標位置のうち少なくとも一方を、その目標位置における前記磁気ディスクの半径位置と円周方向の位置より算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は磁気記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常の磁気記録装置ではスピンドルモータによって回転する磁気ディスクが存在し、
この磁気ディスク上に信号を記録するライトヘッドと、記録された信号を読み出すリードヘッドが一つのヘッドスライダー上に形成され、ヘッドスライダーを、磁気ディスク上の半径方向に移動させるアクチュエーターが存在する。
【0003】
またこのアクチュエーターを前記磁気ディスク上に記録されたサーボ信号から得られた位置情報を基に駆動し、リードヘッドまたはライトヘットを前記磁気ディスク上の目標トラックに位置決め制御するヘッド位置決め制御部と、前記ライトヘッドでの信号書き込み時および、前記リードヘッドでの信号読み取り時でのリードヘッドの目標位置を算出するヘッド位置算出部と、を備えている。
【0004】
アクチュエーターは一点を軸とした回転動作するため、ヘッドは磁気ディスクの内周と外周間を円弧の軌跡を描いて動作する。
【0005】
現在の磁気記録装置は、データの読み取りのヘッドと書き込みのヘッドが異なる専用ヘッドを用いてデータの記録再生を行っている。これら2つのヘッドは異なる位置に配置されていることと、前述のごとく、ヘッドを搭載したアクチュエータは回転動作するため、それに搭載されたヘッドは磁気ディスクの内周と外周間を円弧の軌跡を描いて動作する。このため、読み取りヘッドに対する書き込みヘッドの相対位置は、ヘッドが磁気ディスク上の半径方向のどの位置にいるかによって変化する。
【0006】
すなわち、書き込んだデータに対するこのデータ読み取り時のリードヘッドの相対的な位置は、磁気ディスクの半径方向によって変化するのである。
【0007】
前記ヘッド位置算出部は、読み取り時のリードヘッドの 書き込みデータに対する相対位置を、R/Wオフセットとして計算している。そのR/Wオフセット値は1つのトラックではすべて同じ値として計算している。
【0008】
そのR/Wオフセットは次のように測定または計算されている。
【0009】
磁気ディスクの外周から内周の間のトラックにおいて等間隔の数10トラックにおいてR/Wオフセットを測定し、その値から関係式を導き出し、各トラックのR/Wオフセットの値を計算で求めている。関係式とは 測定データから近似法を使用し2次または高次関数を求める方法をもちいている。または数10トラックで求めたトラックのR/Wオフセットの値をそのまま使用し、測定した隣同士のトラックの値から直線式を導き出し、その2つのトラック間のトラックのR/Wオフセットの値はその直線式から求めている。
【0010】
次に具体的な測定方法について説明する。まず目標トラックの書き込み位置近辺の数トラックをイレースする。これは信号があった場合、その信号がノイズとなり、正確な測定ができないためである。次に書き込み位置にヘッドを位置決めし、信号を書く。磁気記録装置では設計の段階であるトラックでのR/Wオフセットはある程度推定はできる。部品の寸法ばらつきがあるので断定はできない。つぎにその推定する読み取り時のヘッド位置近辺の信号を読み出しをおこなう。あるステップでヘッドを移動させるごとに読み出しを行い、その出力の高いまたは読み出しエラーの少ない読み出し位置を求め、その読み出し位置と書き込み位置の差をR/Wオフセットとしている。
【0011】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【特許文献1】特開2007−95168号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従来の技術では目標トラックにおける書き込み位置と読み取り位置はどのサーボセクターにおいても一定としていた。
【0013】
磁気ディスクにあらかじめサーボ信号を書き込んでおきそのディスクを磁気記録装置に組み込んでサーボ制御をするメディア サーボ トラック方式やディスクリート トラック方式ではサーボ信号と磁気ディスク回転軸間に偏芯が生じる。
【0014】
偏芯が生じた場合、ヘッドが一つのトラックに位置決めされた時そのヘッドの磁気ディスクの半径位置は磁気ディスクの回転一周期の周期で内周と外周に移動しながらサーボ信号に追従することになる。
目標トラックのR/Wオフセットはアクチュエーターが一点を軸とした回転運動しているため、磁気ディスクの半径によって変化する。
【0015】
したがってサーボ信号と磁気ディスク回転軸間で偏芯が生じた場合、1つのトラックにおいてそのR/Wオフセット量は変化することになる。
【0016】
1トラックのすべてのサーボセクターにおいて同一のR/Wオフセットだとリード時に書き込んだ信号のセンターにリードヘッドのセンターを位置決めできないことになり誤差が生じてしまうことになる。
【0017】
その誤差はTPIが増加すればそれに比例して増加することになる。TPIが250KTPI程度になるとその誤差は数%程度になり、読み取り性能を悪化させる可能性がきわめて高くなる。
【0018】
前記従来例における課題は、磁気記録装置のサーボトラックの偏芯によりヘッドのR/Wオフセットに誤差が生じ、読み取り、書き込み精度がこのR/Wオフセットに対して正確に処理できないことであった。すなわち磁気記録装置において高い読み取り、書き込みのデータ信頼性を得るためには、サーボトラックの偏芯に対するR/Wオフセットの誤差は非常に大きなものとなっており、この偏芯を考慮しないで各サーボトラックに対して一定のR/Wオフセットでデーターの読み書きを実行してしまうとデーターの読み取り信頼性が低下してしまう。
【0019】
そこで本発明は、サーボトラックの偏芯によるR/Wオフセットの誤差の影響を低減し、磁気記録装置のデーターの読み取り信頼性の向上を図ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
そしてこの目的を達成するために本発明は、
スピンドルモータによって回転する磁気ディスクと、
この磁気ディスク上に信号を記録するライトヘッドと、
記録された信号を読み出すリードヘッドと、
前記2つのヘッドを、前記磁気ディスク上の半径方向に移動させるアクチュエーターと、
このアクチュエーターを前記磁気ディスク上に記録されたサーボ信号から得られた位置情報を基に駆動し、
前記リードヘッドまたはライトヘットを前記磁気ディスク上の目標トラックに位置決め制御するヘッド位置決め制御部と、
前記ライトヘッドでの信号書き込み時および、前記リードヘッドでの信号読み取り時でのリードヘッドの目標位置を算出するヘッド位置算出部と、を備え、
前記ヘッド位置算出部は、書き込み時のリードヘッドの目標位置と、読み取り時のリードヘッドの目標位置のうち少なくとも一方を、その目標位置における前記磁気ディスクの半径位置と円周方向の位置より算出することすることとした。
【0021】
これにより初期の目的を達成するものである。
【発明の効果】
【0022】
以上のように本発明は、
スピンドルモータによって回転する磁気ディスクと、
この磁気ディスク上に信号を記録するライトヘッドと、
記録された信号を読み出すリードヘッドと、
前記2つのヘッドを、前記磁気ディスク上の半径方向に移動させるアクチュエーターと、
このアクチュエーターを前記磁気ディスク上に記録されたサーボ信号から得られた位置情報を基に駆動し、
前記リードヘッドまたはライトヘットを前記磁気ディスク上の目標トラックに位置決め制御するヘッド位置決め制御部と、
前記ライトヘッドでの信号書き込み時および、前記リードヘッドでの信号読み取り時でのリードヘッドの目標位置を算出するヘッド位置算出部と、を備え、
前記ヘッド位置算出部は、書き込み時のリードヘッドの目標位置と、読み取り時のリードヘッドの目標位置のうち少なくとも一方を、その目標位置における前記磁気ディスクの半径位置と円周方向の位置より算出することすることとしたものであるので、磁気記録装置におけるデーターの読み取り時と書き込み時のヘッドのオフセット値を細かく設定することが可能となる。
【0023】
すなわち本発明においては、
ヘッドが位置決めするサーボトラックの偏芯に対するヘッドのR/Wオフセットの誤差の影響を低減したものであるので、従来のごとく1つのサーボトラックに対して一定のR/Wオフセットでデーターを読み書きする磁気記録装置に比べると、磁気記録装置のデーターの読み取り信頼性の向上が図れるものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態の概要について、まず説明をする。
【0025】
先に述べたようにサーボ信号が偏芯するとR/Wオフセットの誤差は発生する。その量はTPIに比例し増加する。またメカの構造により通常 トラックの半径が小さくなるにつれその誤差の大きさはおおきくなる。
【0026】
本発明はサーボ信号の偏芯が発生した場合のヘッドの位置決めの補正を有する磁気記録装置に関するものである。サーボ信号が偏芯した場合ヘッドの軌跡は磁気ディスクの半径位置にたいして内外周に振れる。その振れは正弦カーブとなる。この正弦カーブと従来のR/Wオフセットカーブ(内周から外周までの曲線)からそのトラックの各セクターのR/Wオフセット誤差は計算で求まる。その誤差も正弦カーブとなり、そのカーブを持ってヘット位置決めの際に補正するものである。この発生する誤差はR/Wオフセットの誤差であるため書き込み時または読み出し時 どちらか一方で補正するものである。
誤差となる正弦カーブを求める方法としては、
1)各サーボセクターでR/Wオフセット測定し、その値から誤差カーブを求める方法。2)従来のR/Wオフセットカーブを求め、サーボ信号の偏芯量(モーターの回転軸に対しての偏芯)を求めそれらの値から誤差カーブを求める方法。
またサーボ信号の偏芯量を求める方法は、
2−1)ヘッドを物理的に固定(最内周のクラッシュストップにあてつけるなど)してからトラック番号を読み取り判断する方法。
2−2)各サーボ信号の間隔を読み取りその時間の違いによりサーボ信号の偏芯を読み取る方法。
2−3)アクチュエーターのVCMに流れる電流値から偏芯を読み取る方法。
【0027】
以下、それらの方法を説明していく。
【0028】
図1に本発明の機能ブロック図を示す。
【0029】
本発明を達成するための、基本的な機能ブロックとしては、
スピンドルモータ11で回転する磁気ディスク12と、
この磁気ディスク上に記録された信号を読み出す磁気ヘッド13と、
この磁気ヘッドを、前記磁気ディスク上の半径方向に移動させるアクチュエーター14と、このアクチュエーターを前記磁気ディスク上に記録されたサーボ信号から得られた位置情報を基に駆動し、
前記磁気ヘッドを前記磁気ディスク上の目標トラック15に位置決め制御するヘッド位置決め制御部と
書き込みヘッドと読み取りヘッドのオフセットを記録しているメモリから構成されている。
<1)各サーボセクターでR/Wオフセット測定し、その値から誤差カーブを求める方法>
図2にR/Wオフセットの測定と書き込み、読み出しフローチャートを示す。
【0030】
まずR/Wオフセットを測定するトラックにヘッドを移動させる。つぎにサーボセクターごとのR/Wオフセットを測定する。従来の方式では測定トラックにおいてはどのサーボセクターも同じR/Wオフセットだと判断し測定をおこなっていたため1トラックに対するR/Wオフセットの値は一定だったのに対して、本考案は各サーボセクターごとでおこなうので1トラックあたりサーボセクター数の複数のR/Wオフセットの値が得られることになる。ただし 後に述べるa*Sin(θ−b)を求めるのが目的であるため、すべてのサーボセクターの値が必ずしも必要というわけではない。
【0031】
次に求めた複数のサーボセクターのR/Wオフセット値から
R/Wオフセット値=a*Sin(θ−b)+cを求める。
θはサーボセクター番号を角度変換した値を表す。
aはサーボ信号の偏芯による誤差のピークを表す。
bはサーボ信号の偏芯による誤差の位相を表す。
cは従来のR/Wオフセットをあらわす。
【0032】
求める手法はいくつか考えられる。すべてのサーボセクターのR/Wオフセット値を得た場合はフーリエ変換し1次成分以外を削除し、逆変換すればa*Sin(θ−b)+cの各サーボセクターでの値が得られる。
【0033】
または単に近似式としてa*Sin(θ−b)+cを求めても良い。この近似式を求める作業を測定したトラック(ゾーン)のデータに対しておこなう。
【0034】
すべてのゾーンで測定と近似式が求まると定数 a、b、cに対して見直しをおこなう。
a、b、cの値は各ゾーンで緩やかに変化する値である。ある特定のゾーンで大きかったり、小さかったり、またはその変化量がゾーンにより大きく変化するものではない。しかし上記測定データから計算で求めたa,b,cの値は測定誤差が生じているので計算された値にも誤差が生じている。したがってそれぞれの定数をゾーンを変数とした時の高次関数(3次または5次程度が適当だと推測する)として近似し、ゾーンごとの値を求めなおす。これは測定誤差を少なくするための手法である。
【0035】
次に各ゾーンのa,b,cの値をテーブルとしてメモリまたはメディアのシステムゾーンに書き込む。この様にa,b,cの値のみを書き込んでもいいし、a*Sin(θ−b)の部分とcにわけa*Sin(θ−b)の部分を各サーボセクターごとに数値化してその数字をそのままテーブルとして記録しても良い。
【0036】
ここまでの作業は磁気記録装置の製造工程内である磁気記録装置の出荷テストでおこなわれる。
【0037】
磁気記録装置がデーターを書き込む場合は指定サーボトラックのセンターにリードヘッドを位置決めして(オフセットなし)書き込みをおこなう。
【0038】
磁気記録装置がデーターを読み出す場合はテーブルを参照し、指定サーボトラックをはさむ2つのゾーンのa,b,cの値からその指定サーボトラックの最適値であるa,b,cを計算でもとめ、
R/Wオフセット値=a*Sin(θ−b)+cから各サーボセクターのオフセット量がもとまり、それに応じてリードヘッドを各サーボセクターごとにオフトラック制御して(オフセットあり)データーの読み出しをおこなう。
【0039】
この結果、オフセットさせて読み取る方式の場合のヘッド位置算出部が算出する書き込み時のリードヘッドの目標位置は目標トラックそのままであり、読み取り時のリードヘッドの目標位置は、目標トラック+a*Sin(θ−b)+cで導かれる。
【0040】
またオフセットさせて書き込む方式の場合のヘッド位置算出部が算出する書き込み時のリードヘッドの目標位置は、目標トラック-a*Sin(θ−b)+cであり、読み取り時のリードヘッドの目標位置は、目標トラックにそのまま追従させる。ディスクリートトラックメディア(DTM)の場合は書き込みの場合にオフセットさせて書き込み、読み出しの場合にオフセットなしで読み出す必要がある。通常のメディアの場合はどちらを用いても、書き込み、読み出しは可能である。
【0041】
このように、書き込むまたは読み取るサーボセクタごとに、R/Wオフセットを補正しているので、ヘッドが位置決めするサーボトラックの偏芯に対するヘッドのR/Wオフセットの誤差の影響を低減することが可能になり、従来のごとく1つのサーボトラックに対して一定のR/Wオフセットでデーターを読み書きする磁気記録装置に比べると、磁気記録装置のデーターの読み取り信頼性の向上が図れるものとなる。
【0042】
(実施の形態2)
<2)従来のR/Wオフセットカーブを求め、サーボ信号の偏芯量(モーターの回転軸に対しての偏芯)を求めそれらの値から誤差カーブを求める方法>
次に実施の形態2としてサーボ信号の偏芯と従来の1トラックの平均R/Wオフセットを求めてその2つの値から偏芯による誤差を求める方法を説明する。
【0043】
従来のR/Wオフセット測定は図4のフローチャート図のようにおこなわれる。測定トラックにヘッドを移動させ、いくつかのサーボセクターで測定はおこなわれるが計算上それらの平均値をもって1トラック内では同じR/Wオフセットと判断している。
【0044】
そのR/Wオフセットの値を横軸を磁気ディスクの半径、縦軸をR/Wオフセット値としてあらわすと図5のようになる。
図5の拡大図をあらわしたのが図6である。
【0045】
サーボ信号が偏芯したトラックにヘッドがオントラックするとヘッドは磁気ディスクの1半径値に静止せず、内周と外周を移動することになる。磁気ディスク1周のサイクルでその移動の内周側と外周側の最大値はともにサーボ信号の偏芯の値となることは明確である。
【0046】
ヘッドは内外周に移動するとR/Wオフセットは磁気ディスクの半径に依存するのでそのオフセット量も変化する。その変化する量すなわち誤差を表したのが図6である。
【0047】
従来のR/Wオフセットカーブがデータとして存在し、サーボ信号の偏芯量がわかればその誤差は計算で求まる。具体的にその計算方法を述べる。
【0048】
トラックNにおいて偏芯量がsとする。まず寸法sをトラック数に置き換える。s/トラックピッチとなりこれをsnとする。トラック(N−sn)のR/Wオフセット値と、トラック(N+sn)のR/Wオフセット値の差を求めればその誤差が求まる。その値の1/2がa*Sin(θ−b)のaになる。
【0049】
bの値は偏芯の方向がサーボセクターの何番目かで判断できる。
この様に偏芯量を求めR/Wオフセットの誤差を求めることが可能である。
【0050】
この結果、オフセットさせて読み取る方式の場合のヘッド位置算出部が算出する書き込み時のリードヘッドの目標位置は目標トラックそのままであり、読み取り時のリードヘッドの目標位置は、目標トラック+a*Sin(θ−b)+cで導かれる。
またオフセットさせて書き込む方式の場合のヘッド位置算出部が算出する書き込み時のリードヘッドの目標位置は、目標トラック-a*Sin(θ−b)+cであり、読み取り時のリードヘッドの目標位置は、目標トラックにそのまま追従させる。
【0051】
このように、書き込むまたは読み取るサーボセクタごとに、R/Wオフセットを補正しているので、ヘッドが位置決めするサーボトラックの偏芯に対するヘッドのR/Wオフセットの誤差の影響を低減することが可能になり、従来のごとく1つのサーボトラックに対して一定のR/Wオフセットでデーターを読み書きする磁気記録装置に比べると、磁気記録装置のデーターの読み取り信頼性の向上が図れるものとなる。
【0052】
次に偏芯量を求める方法について述べる。
<2−1)ヘッドを物理的に固定(最内周のクラッシュストップにあてつけるなど)してからトラック番号を読み取り判断する方法>
磁気記録装置にはアクチュエーターの動作を止めるために最内周にクラッシュストップというストッパーが存在する。あらかじめそのクラッシュストップよりも内周にサーボ信号を書き込んだ磁気ディスクで磁気記録装置を組み立てる。磁気記録装置完成後アクチュエーターをサーボ制御しないでクラッシュストップにあてつけた状態でサーボ信号のトラックナンバーを読み取る。
【0053】
各サーボセクターごとのトラックナンバーにトラックピッチを掛け合わせればどのサーボセクター方向にどれだけずれているか判断可能である。ただしこの測定値には測定誤差またはサーボ信号のRROなど偏芯成分以外のノイズ成分が含まれる。したがって偏芯成分のみを正確に取り出すためには先に述べたように各サーボセクターごとのトラックナンバーの値をSinカーブに近似(1次成分のみをとりだし)し計算することが有効である。
<2−2)各サーボ信号の間隔を読み取りその時間の違いによりサーボ信号の偏芯を読み取る方法>
偏芯量を求める方法としてサーボ信号の間隔を測定してその時間の長短により偏芯を計算で求めることが可能である。
【0054】
図7を用いて説明する。磁気ディスク71上にサーボ信号72が存在する。サーボ信号の中心73とスピンドルモーターの回転中心74が偏芯量75で偏芯していることをあらわしている。このときトラック76について2箇所のサーボ信号間隔(角度)について考える。角度右77と角度左78とを見た場合角度右のほうが角度が広くなっている。磁気ディスクは等角速度で回転しているのでこのサーボ信号とサーボ信号の間隔を測定することでその偏芯量は推測可能である。
【0055】
また図7の角度右77に着目し、トラック76の半径が小さくなると角度77は大きくなることが推測できる。角度78は逆に小さくなる。したがってどのトラックでサーボ信号の間隔を測定したかが重要になってくる。
【0056】
実際にサーボ信号間隔を測定し偏芯を求める方式について説明する。
【0057】
まず測定トラックにヘッドを移動させる。磁気記録装置においてサーボ信号を検知するとSAM(Servo Address Mark)信号が立つ機能を有している。また磁気記録装置は内部クロックを持っているのでそのクロックをもとにSAMの立ち上がりからSAMの立ち上がりまでを測定する。これを全サーボ信号に関して行い。それぞれの値からそれらの値の平均値を引く。その値からa*Sin(θ−b)を求める。求める方法は近似式として求めてもいいし、フーリエ変換し、1次成分だけを残して逆変換して求めても良い。ただしaは誤差時間であるため偏芯距離とするためには定数を掛けてやる必要がある。
【0058】
aは1サーボ信号間隔の長さに関する誤差である。1サーボ時間は(60/rpm)/Wであらわされる。
rpmは磁気ディスクの回転速度
Wは1トラックに存在するサーボ信号数
その誤差率は a/((60/rpm)/W)となる。
【0059】
偏芯は磁気ディスクの変化により起こるものであるから、この誤差率を測定トラックの半径Rに掛けてやればその偏芯量が求まる。
【0060】
偏芯=R/((60/rpm)/W)*a*Sin(θ-b)
図7においてサーボ信号72を磁気ディスク内周から外周にかけて直線で表しているが実際はヘッドが移動する軌跡と同じ円弧となっているしたがって位相をあらわすbはトラックによって微小に変化する。
従来の方式にはトラックを変数とした1元近似式1つで全セクターのR/Wオフセットを表す方式とゾーンごとにおける特定トラックでR/Wオフセット1つを数値として決定させ、そのゾーンごとの数値を数値テーブルとして記憶させておく方式があります。
請求項11の1元近似式の場合は各サーボセクターごとに1元近似式を持つことにより各サーボセクターごとにR/Wオフセットを計算するようにする。
言い換えれば各サーボセクターごとにR/Wオフセットを測定し、各サーボセクターごとに従来のような1元近似式のR/Wオフセットをもつようにする方式です。
したがって サーボセクターとトラックによりR/Wオフセットが決定されることになり、
精度よい読み書きが可能となります。
数値テーブルとして記憶させておく方式ではゾーン間のトラックのR/Wオフセットを求める場合はそのトラックの前後のゾーンデーターであるR/Wオフセット値2つから直線近似し求める方式です。
請求項11の数値テーブルの場合はこのゾーンデーターをサーボセクターごとにもち、計算する方式です。
<2−3)アクチュエーターのVCMに流れる電流値から偏芯を読み取る方法>
次にアクチュエーターのVCM(Voice Coil Motor)に流れるを測定しその値から偏芯量を求める方法について説明する。
サーボ信号の偏芯が発生している場合、ヘッドはスピンドルモーター中心に対して遠くなったり、近いづいたりして磁気ディスク上を移動する。ヘッドが内外周に移動するということはVCMにはそれを制御する電流が流れているわけであるからその移動するに応じた電流が流れる。偏芯による移動量は磁気ディスクの内周、外周に関係なくおなじでるから、VCMの電流の変化量も内周、外周にかかわらず一定となる。ただしVCMの波形(Sinカーブ)は偏芯のSinカーブに対して位相が約90度異なる。したがってVCMのカーブを90度ずらすまたは微分して偏芯のカーブを求める。
次に移動絶対値を偏芯量に変換する方法であるがそれはあらかじめいくつかの磁気記録装置においてサーボ信号の偏芯量とVCMの電流値の関係のデーターをとり、関係式を導いておきその関係式に測定したVCMの値を入力し、偏芯の値を求める。
【0061】
図4は従来のR/Wオフセットの測定と信号の書き込み、読み出しについて書いたフローテャート図である。
【0062】
このように本発明によれば偏芯によるオフトラックの誤差を補正することが可能とし、精度よい書き込みまたは読み取りを有し、磁気記録装置の書き込み、読み取りのためのヘッド位置決め分野において有用である。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明にかかる、磁気記録装置、及びR/Wオフセット測定および誤差補正方法は、磁気記録装置の信号読み出し時において書き込んだ信号の位置にリードヘッドを正確に位置決めする効果を有し、磁気記録装置の位置決め制御分野において有用である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の機能ブロック図
【図2】R/Wオフセットの測定と書き込み、読み出しフローチャート
【図3】R/Wオフセットの測定と書き込み、読み出しフローチャート
【図4】従来のR/Wオフセットの測定と書き込み、読み出しフローチャート
【図5】磁気ディスクの半径とR/Wオフセット関係図
【図6】磁気ディスクの半径とR/Wオフセット詳細図
【図7】SAMとSAMの間隔から偏芯を求める説明図
【符号の説明】
【0065】
11 スピンドルモータ
12 磁気ディスク
13 磁気ヘッド
14 アクチュエーター
15 トラック
71 磁気ディスク
72 サーボ信号
73 サーボ信号の中心
74 スピンドルモーターの回転中心
75 偏芯量
76 トラック
77 角度右
78 角度左

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スピンドルモータによって回転する磁気ディスクと、
この磁気ディスク上に信号を記録するライトヘッドと、
記録された信号を読み出すリードヘッドと、
前記2つのヘッドを、前記磁気ディスク上の半径方向に移動させるアクチュエーターと、
このアクチュエーターを前記磁気ディスク上に記録されたサーボ信号から得られた位置情報を基に駆動し、
前記リードヘッドまたはライトヘットを前記磁気ディスク上の目標トラックに位置決め制御するヘッド位置決め制御部と、
前記ライトヘッドでの信号書き込み時および、前記リードヘッドでの信号読み取り時でのリードヘッドの目標位置を算出するヘッド位置算出部と、を備え、
前記ヘッド位置算出部は、書き込み時のリードヘッドの目標位置と、読み取り時のリードヘッドの目標位置のうち少なくとも一方を、前記目標トラックの書き込み位置における前記磁気ディスクの半径位置と円周方向の位置より算出することを特徴とする磁気記録装置。
【請求項2】
前記磁気ディスクの半径位置をサーボトラック番号とし、磁気ディスクの円周方向の位置をサーボセクター番号としてヘッドの位置制御をおこなうことを特徴とする請求項1に記載の磁気記録装置。
【請求項3】
同じトラックにおいて書き込み時のリードヘッドの位置と信号を読み取り時のリードヘッドの位置の差であるリードライトオフセットを決定するにあたり、前記サーボトラックにより、決定されるリードライトオフセット量を基本とし、前記サーボセクターによるリードライトオフセット量を補正値とし、基本値に補正値を加えた値を真のリードライトオフセット量としてヘッド位置決制御をすることを特徴とする請求項2の磁気記録装置。
【請求項4】
前記サーボトラックにより決定されるリードライトオフセット量は磁気ディスクの内周から外周の内、複数のトラックにおいて基本となるリードライトオフセット量を測定により求め、求めた複数のトラックのリードライトオフセット量からトラック番号を変数とした関数近似式により全トラックの基本リードライトオフセット量を求めることを可能にし、
リードライトオフセット量の補正値は複数のトラックにおいて複数のサーボセクターでリードライトオフセットを求め、その測定したトラックの基本となるリードライトオフセットとの差を求め、その値から少なくともサーボセクターを変数としたときのリードライトオフセットの補正値を正弦カーブまたは余弦カーブに近似する事ですべてのセクターにおけるリードライトオフセットの補正値を求めることを特徴とする請求項3の磁気記録装置。
【請求項5】
基本のリードライトオフセット量は磁気ディスクの内周から外周の内、複数のトラックにおいて基本となるリードライトオフセット量を測定により求め、求めた複数のトラックのリードライトオフセット量からトラック番号を変数とした1元近似式により全トラックの基本リードライトオフセット量を求めることを可能にし、
リードライトオフセット量の補正値は
サーボ信号のモーター回転軸からの偏芯量を求め、
その値からサーボセクターを変数としたときのリードライトオフセットの補正値が正弦カーブに近似する事を特徴とする請求項3の磁気記録装置。
【請求項6】
リードライトオフセットの補正値が正弦カーブで近似されており、トラックの変化により、その波高値が変化することを特徴とする請求項4または請求項5の磁気記録装置。
【請求項7】
リードライトオフセットの補正値が正弦カーブで近似されており、トラックの変化により、その位相が変化することを特徴とする請求項4または請求項5の磁気記録装置。
【請求項8】
アクチュエーターを最内周のクラッシュストップにあてつけ、そのときのサーボトラック番号を読み取ることで偏芯量を測定する事を特徴とする請求項5の磁気記録装置。
【請求項9】
アクチュエーターのコイルに流れる電流値を測定しその値により偏芯量を求める事を特徴とする請求項5の磁気記録装置。
【請求項10】
各サーボ信号間の時間を測定しその値により偏芯量を求める事を特徴とする請求項5の磁気記録装置。
【請求項11】
複数のトラックにおいて複数または全数のセクターにおけるリードライトオフセットを測定しその値により、トラックとセクターの変化に対するリードライトオフセット値をセクターごとにトラック番号を変数とした1元近似式、または数値テーブルを持つことにより、全トラックの全セクターのリードライトオフセットを設定する請求項2の磁気記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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