説明

磁気誘導台の結合構造及びこれを用いた遊戯具

【課題】閉磁路回路を形成することなく、磁気誘導台同士の結合を可能にできる磁気誘導台の結合構造を提供する。
【解決手段】磁石7に磁性金属板8を吸着させることにより磁気遮蔽回路が形成された少なくとも2つ以上の磁気誘導台2を結合するための構造であって、各磁気誘導台2,2を、前記各磁石7の磁極が同じ方向を向くように並列配置し、前記磁性金属板8同士を磁性体9を介在させて結合させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁石に磁性金属板を吸着させることにより磁気遮蔽回路が形成された磁気誘導台を少なくとも2つ以上互いに結合するための構造及び該磁気誘導台の結合構造を用いた遊戯具に関する。
【背景技術】
【0002】
本件出願人は、この種の磁気誘導台を用いた遊戯具として、複数の磁石を磁極が同じ方向を向くよう並列配置し、該各磁石に共通の磁性金属板を吸着させることにより、磁気誘導台のステージ面積を大きくして構築物の自由度を高めるようにしたものを提案している(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10−52577号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、前記従来の磁気誘導台を用いた遊戯具では、磁性金属板のステージ面積は大きくできるものの、用途に応じた大きさを有する複数種類の磁気誘導台を製造する必要があり、生産管理,在庫管理が煩雑となり、コスト的に不利となっている。本件出願人は、子どもの創造力や表現力の成長を図る観点から、より複雑で難易度の高い商品を提供することを検討している。そのためには、さらにサイズの大きい磁気誘導台を製造する必要があり、市販価格が高騰するという懸念がある。
【0004】
このような懸念を回避するには、同じ大きさ,寸法を有する磁気誘導台を互いに結合することにより、任意のステージ面積を作ることが有効である。
【0005】
この場合、図5に示すように、2つの磁気誘導台30,30を、各磁石31,31の磁極(N極,S極)が逆向きになるよう並列配置すると、互いの磁力により磁性金属板32,32同士は容易に吸着して結合する。しかしながら、このようにした場合は、例えば、各磁性金属板32に吸着させた1段目の磁性体チップ33,33同士を2段目の磁性体チップ34で吸着させると、磁力の閉磁路回路が形成され、2段目の磁性体チップ34には磁性体チップが吸着しなくなり、多段に積み上げることができなくなるという問題が生じる。
【0006】
一方、図6に示すように、各磁気誘導台30,30を、各磁石31,31の磁極(N極)が同じ方向を向くように並列配置すると、閉磁路回路は形成されることはないので、2段目の磁性体チップ34に磁性体チップ35,36を多段に積み上げることが可能である。ところが、各磁石31の磁極を同じ向きにすると、各磁石31,31同士が強く反発し合うことから、結合することができず、このままでは実用化が困難である。
【0007】
本発明は、前記従来の状況に鑑みてなされたもので、閉磁路回路を形成することなく、磁気誘導台同士の結合を可能にできる磁気誘導台の結合構造及びこれを用いた遊戯具を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、磁石に磁性金属板を吸着させることにより磁気遮蔽回路が形成された磁気誘導台を少なくとも2つ以上結合するための構造であって、各磁気誘導台を、前記各磁石の磁極が同じ方向を向くように並列配置し、前記磁性金属板同士が磁性体を介在させて結合されていることを特徴としている。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1に記載の磁気誘導台の結合構造を用いたことを特徴とする遊戯具である。
【0010】
請求項3の発明は、請求項2に記載の遊戯具において、前記磁性金属板には、多数の磁性体チップが積み上げるように吸着されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明に係る磁気誘導台の結合構造によれば、少なくとも2つの磁気誘導台の各磁石を磁極が同じ方向を向くように並列配置し、磁性金属板同士を磁性体を介在させて結合したので、該磁性体が各磁石の磁力を吸収して1つの磁石を形成することとなり、磁極を同じ方向に向けた状態で磁性金属板同士を吸着させることができる。その結果、閉磁路回路を形成することなく、磁気誘導台同士の結合が可能となる。これにより、同じ大きさ, 寸法を有する磁気誘導台を製造するだけで任意のステージ面積を形成することができ、大きさの異なる複数種類の磁気誘導台を製造する場合に比べて、生産管理,在庫管理が容易となり、ひいてはコストの低減が可能となる。
【0012】
請求項2の発明に係る遊戯具によれば、磁気誘導台同士を同極をなすよう結合させたので、ステージ面積を任意に設定することができ、ひいては子どもの成長に応じた複雑で高度な構築物の創作が可能となる。
また前記磁気誘導台の用途を広げることが可能であるから、例えば、趣味の工芸,立体模型,デコレーションボード等の大人向けの商品として発展させることも可能となる。
【0013】
請求項3の発明では、各磁性金属板に磁性体チップを積み上げるように吸着させたので、任意に設定したステージに磁性体チップを自由な形で多段に積み上げることができ、遊戯具としての需要の拡大を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
図1及び図2は、本発明の一実施形態による磁気誘導台の結合構造及びこれを用いた遊戯具を説明するための図であり、図1は遊戯具の一使用状態を示す図、図2は磁気誘導台の結合過程を模式的に示す図である。
【0015】
図において、1は遊戯具を示しており、これは互いに同一平面をなすよう結合された2つの磁気誘導台2,2上に多数の磁性体チップ3,4,5を自由に組み合わせて積み上げることにより、立体的な造形物を構築するようにしたものである。このようなパズル感覚の遊びを通して、子どもたちの想像力や表現力を伸ばすことで創作意欲を高めるとともに、潜在能力を引きだすことを可能にしている。
【0016】
前記各磁性体チップ3〜5は、人物,動物,各種の道具等を形作ったもので、これらの表面には外観を高めるための着色が施されている。
【0017】
前記各磁気誘導台2は、同じ大きさ,寸法及び形状を有し、円柱形状又は角柱形状等からなる磁石7,7の両極(N極,S極)にそれぞれ正方形をなす磁性金属板8,8を吸着させることにより、磁気遮蔽回路を形成している。ここで、磁性金属板8は磁石7のN極のみ配置してもよい。
【0018】
前記各磁石7は、例えば、1400G程度の磁力を有するものからなり、また前記各磁性金属板8は、鉄,ニッケル,コバルト,あるいはこれらの合金からなるものである。
【0019】
そして前記各磁気誘導台2は、各磁石7の磁極(N極)が同じ方向を向くように並列配置されており、該各磁気誘導台2の磁性金属板8同士は薄板状の磁性体9を介在させて互いに結合している。この磁性体9は、磁性金属板8と同様の金属材料からなり、磁気誘導台2の側端面を覆うように配置され、かつ各磁性金属板8と同一平面をなすよう形成されている。
【0020】
前記磁気誘導台2,2の結合過程について詳細に説明する。
まず、磁気誘導台2は、単体の状態では、上,下の磁性金属板8により磁気遮蔽回路が形成されている。例えば、図2(a)の右側の磁気誘導台2′に示すように、磁石7の磁力線aは上側の磁性金属板8内を通り、該磁性金属板8の各外縁8a,8aから下側の磁性金属板8内に流れる。このときの各外縁8a,8bから出る磁力線は同等である。
【0021】
一方(左側)の磁気誘導台2の上,下の磁性金属板8,8の側端面に磁性体9を当接させると、磁力線aの一部bは磁性体9内を通り、残りの磁力線cは磁性体9の外側を流れる。(図2(a)参照)。この外側を流れる磁力は略1/3程度である。
【0022】
この状態で、一方の磁気誘導台2に、他方(右側)の磁気誘導台2′を近づけると、該他方の磁気誘導台2′の磁力線aにより、磁性体9の外側を通る磁力線cが押され、互いに反発し合うとともに、両方の磁力線a,cの山が徐々に小さくなる(図2(b)参照)。
【0023】
他方の磁気誘導台2′をさらに近づけると、磁性体9の外側を通る磁力線cと、他方の磁気誘導台2′の磁力線aとが磁性体9に吸収されて徐々に減少し、反発し合ってたのが逆に互いに吸着し始める(図2(c)参照)。
【0024】
そして、他方の磁気誘導台2′の磁性金属板8を磁性体9に当接させると、両者2,2′の磁力線c,aが磁性体9内に閉じ込められ、該磁性体9が1つの磁石となる(図2(d)参照)。このようにして隣り合う上,下の磁性金属板8,8同士が磁性体9の磁力により吸着され、結合することとなる。なお、図2(a)〜(d)において、○印内の数字は、上側の磁性金属板8の左,右外縁8a,8bから出る磁力線の数を表している。
【0025】
このように本実施形態によれば、一対の磁気誘導台2の各磁石7を磁極が同じ方向を向くように並列配置し、隣り合う上,下の磁性金属板8同士を磁性体9を介在させて結合したので、該磁性体9が1つの磁石となり、磁極を同じ方向に向けた状態で磁性金属板8同士が吸着することとなる。その結果、閉磁路回路を形成することなく、各磁気誘導台2同士の結合が可能となる。これにより、同じ大きさ, 寸法及び形状を有する標準サイズの磁気誘導台2を製造するだけで任意のステージ面積を形成することができ、大きさの異なる複数種類の磁気誘導台を多数製造する場合に比べて、生産管理,在庫管理が容易となり、ひいてはコストを低減できる。
【0026】
本実施形態では、前記磁気誘導台2同士を同極をなすよう結合することができるので、ステージ面積を任意に設定することができ、子どもの成長に応じた複雑で難易度の高い構築物の創作が可能となる。
【0027】
本実施形態では、各磁性金属板8に多数の磁性体チップ3〜5を積み上げるように吸着させることができるので、磁性体チップ3〜5を自由な形で多段に積み上げることができ、遊戯具としての需要の拡大を図ることができる。
【0028】
このように磁気誘導台2の用途を広げることができるので、例えば、趣味の工芸,立体模型,デコレーションボード等の大人向けの商品として発展させることも可能となる。
【0029】
なお、本実施形態では、2つの磁気誘導台2を結合させた場合を説明したが、本発明では、磁気誘導台の結合数は自由に設定できる。例えば、図3に示すように、各磁気誘導体2を一列に結合したり、図4に示すように、磁気誘導台2を格子状に結合させることもできる。この何れの場合も、各磁気誘導台2同士を磁性体9を介在させて結合することにより、簡単に組み合わせることができる。このようにすることにより、例えば将棋盤,囲碁盤として利用することも可能となる。
【0030】
また、前記実施形態では、遊戯具を例に説明したが、本発明の磁気誘導台の用途はこれに限られるものではなく、例えば学習用教材として、あるいは各種の実験用具としても利用でき、この場合にも前記実施形態と同様の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施形態による磁気誘導台の結合構造を用いた遊戯具の図である。
【図2】前記磁気誘導台の結合過程を模式的に示す図である。
【図3】前記実施形態の磁気誘導台の他の使用例を示す斜視図である。
【図4】前記実施形態の磁気誘導台のその他の使用例を示す斜視図である。
【図5】本発明の成立過程を説明するための図である。
【図6】本発明の成立過程を説明するための図である。
【符号の説明】
【0032】
1 遊戯具
2 磁気誘導台
3〜5 磁性体チップ
7 磁石
8 磁性金属板
9 磁性体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁石に磁性金属板を吸着させることにより磁気遮蔽回路が形成された磁気誘導台を少なくとも2つ以上結合するための構造であって、各磁気誘導台を、前記各磁石の磁極が同じ方向を向くように並列配置し、前記磁性金属板同士が磁性体を介在させて結合されていることを特徴とする磁気誘導台の結合構造。
【請求項2】
請求項1に記載の磁気誘導台の結合構造を用いたことを特徴とする遊戯具。
【請求項3】
請求項2に記載の遊戯具において、前記磁性金属板には、多数の磁性体チップが積み上げるように吸着されていることを特徴とする遊戯具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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