説明

磁石回収装置及びそれを用いた磁石回収方法

【課題】短時間で容易にロータコアから永久磁石を回収可能な磁石回収装置及びそれを用いた磁石回収方法を提供する。
【解決手段】複数のロータコアプレート11が積層して成り、ロータコアプレート11の積層方向に貫通する貫通孔12を有すると共に、内部に複数の永久磁石20が収容されたロータコア10から永久磁石20を回収する磁石回収装置1、及びそれを用いた磁石回収工程S1であって、磁石回収装置1は、水平に配置されたシャフト2と、シャフト2を鉛直方向に振動させる加振機3と、を具備し、シャフト2は、貫通孔12に通され、シャフト2の下方におけるシャフト2の外周面とロータコア10の内周面との間に充分な間隔を有した状態で、ロータコア10を支持し、加振機3によってシャフト2を鉛直方向に振動させることにより、ロータコア10に鉛直方向の振動を加えて、シャフト2の外周面とロータコア10の内周面とを連続的に衝突させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機の一部を成す回転子を構成するロータコアから磁石を回収する磁石回収装置及びそれを用いた磁石回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電動機の一部を成す回転子としては、複数の電磁鋼板が積層して成るロータコアと、当該ロータコアの内部に収容された複数の永久磁石とを具備するものが知られている。
【0003】
上記のような回転子に用いられる永久磁石には、ジスプロシウム等の希少金属が含まれているため、廃棄処分される回転子から永久磁石を回収して前記の希少金属を再利用することが求められている。
【0004】
特許文献1には、電動機の回転子を構成するロータコアに収容された永久磁石に対して脱磁を行った後に、前記電動機を粉砕し、当該粉砕物を磁力選別機を用いて鉄類と非鉄類とに選別する技術が開示されている。
しかし、ロータコアから永久磁石のみを回収することが困難であり、電動機を粉砕する装置、及び磁力選別機等が必要なため、設備の大型化、及びコストの増加等を招く点で不利である。
【0005】
以上のように、回転子を構成するロータコアに収容された永久磁石を容易に回収して上記の希少金属を再利用する方法がないため、前記永久磁石は溶融させた回転子から鉄を回収する際の残渣として廃棄されているのが実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−110636号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、短時間で容易にロータコアから永久磁石を回収可能な磁石回収装置及びそれを用いた磁石回収方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の磁石回収装置は、複数の電磁鋼板が積層して成り、当該電磁鋼板の積層方向に貫通する貫通孔を有すると共に、内部に複数の永久磁石が収容される、ロータコアを振動させて、当該ロータコアを成す複数の電磁鋼板の積層状態を解除することにより、前記ロータコアから前記複数の永久磁石を回収する磁石回収装置であって、水平に配置されたシャフトと、前記シャフトを鉛直方向に振動させる振動手段と、を具備し、前記シャフトは、前記ロータコアの貫通孔に通され、前記シャフトの下方における前記シャフトの外周面と前記ロータコアの内周面との間に充分な間隔を有した状態で、前記ロータコアを支持し、前記振動手段によって前記シャフトを鉛直方向に振動させることにより、前記ロータコアに鉛直方向の振動を加えて、前記シャフトの外周面と前記ロータコアの内周面とを連続的に衝突させる。
【0009】
本発明の磁石回収装置において、前記シャフトは、複数の突起部を有し、前記シャフトの複数の突起部は、前記シャフトにおける前記ロータコアの内周面と衝突する位置において前記シャフトの軸方向に沿って配置されることが好ましい。
【0010】
本発明の磁石回収装置において、前記振動手段による前記ロータコアの振動時に、前記ロータコアの外周面と衝突する衝突部材を更に具備することが好ましい。
【0011】
本発明の磁石回収装置において、前記衝突部材は、前記振動手段による前記ロータコアの振動時に、前記衝突部材が設けられていない場合における前記ロータコアの最高到達位置よりも若干下方の位置で前記ロータコアと衝突するように配置されることが好ましい。
【0012】
本発明の磁石回収装置において、前記衝突部材は、複数の突起部を有し、前記衝突部材の複数の突起部は、前記衝突部材における前記ロータコアの外周面と衝突する位置において前記シャフトの軸方向に沿って配置されることが好ましい。
【0013】
本発明の磁石回収方法は、請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の磁石回収装置を用いて、前記ロータコアから前記複数の永久磁石を回収する磁石回収方法であって、前記ロータコアに収容される複数の永久磁石の磁力を消失させる脱磁工程と、前記脱磁工程を経た前記ロータコアの貫通孔に前記シャフトを通し、前記振動手段によって前記シャフトを鉛直方向に振動させることにより、前記ロータコアに鉛直方向の振動を加える振動工程と、を具備する。
【0014】
本発明の磁石回収方法において、前記脱磁工程は、前記ロータコアに収容される複数の永久磁石に対して熱脱磁を行うことが好ましい。
【0015】
本発明の磁石回収方法において、前記振動工程を行う前に、前記脱磁工程を経たロータコアを急冷する急冷工程を更に具備することが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、短時間で容易にロータコアから永久磁石を回収でき、回収した永久磁石を再利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る磁石回収装置を示す概略正面図。
【図2】ロータコアを示す斜視図。
【図3】シャフト及び衝突板の突起部を示す断面図。
【図4】衝突板の位置を示す概略側面図。
【図5】本発明に係る磁石回収方法を示すフローチャート。
【図6】脱磁工程及び急冷工程を経たロータコアの変化を示す図。
【図7】振動工程を示す図。
【図8】ロータコアを成す複数のロータコアプレートが互いに剥離し、粉砕された永久磁石が回収容器に落下した様子を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下では、図1〜図4を参照して、本発明に係る磁石回収装置の一実施形態である磁石回収装置1について説明する。
磁石回収装置1は、ロータコア10の内部に収容された複数の永久磁石20・20・・・を回収する装置である。
【0019】
図2に示すように、ロータコア10は、複数の円盤状のロータコアプレート11・11・・・が積層されて成形された略円筒状の部材である。
ロータコアプレート11は、円盤状に形成された電磁鋼板である。
【0020】
ロータコア10には、貫通孔12、及び複数の磁石収容孔がロータコア10の軸心方向(ロータコアプレート11の積層方向)に貫通するように形成されており、貫通孔12に回転軸等の部材が固定され、前記複数の磁石収容孔にそれぞれ永久磁石20が収容されることにより回転子(ロータ)が構成される。つまり、ロータコア10は、前記回転子(ロータ)から前記回転軸等の部材を取り外したものである。
貫通孔12は、ロータコア10において軸心方向に貫通するように形成された孔であり、ロータコア10の軸心と同心的に配置されている。貫通孔12の直径は、ロータコア10の外径よりも若干小さく設定されている。
【0021】
永久磁石20は、フェライト等の磁性材料からなる永久磁石であり、直方体形状に形成されている。永久磁石20は、ロータコア10に形成された前記磁石収容孔に挿入され、適宜の接着剤により固定されている。
【0022】
図1に示すように、磁石回収装置1は、シャフト2と、加振機3と、回収容器4と、衝突板5と、保持バネ6・6とを具備する。
【0023】
シャフト2は、ロータコア10を設置するための棒材であり、水平(図1における左右方向)に配置される。シャフト2の外径は、貫通孔12の直径よりも小さく設定されており、シャフト2をロータコア10の貫通孔12に通すことで、シャフト2の下方(図1における下方)におけるシャフト2の外周面とロータコア10の内周面(貫通孔12の側面)との間に充分な間隔を有した状態で、ロータコア10がシャフト2に支持されることとなる。つまり、シャフト2の軸方向とロータコアプレート11の積層方向とが一致した状態で、シャフト2にロータコア10がぶら下がった状態となる。
なお、本実施形態においては、シャフト2に二つのロータコア10が設置されている。
【0024】
また、図3に示すように、シャフト2には、複数の突起部2a・2a・・・が設けられている。
突起部2aは、シャフト2の外周面に形成された突起であり、シャフト2の径方向外側に向かうに従ってシャフト2の軸方向における突起部2aの長さが小さく(先細に)なっている。
突起部2aは、シャフト2とロータコア10とが接触(衝突)する位置に形成されている。詳細には、突起部2aは、シャフト2の周方向における一定範囲において連続的に形成され、鉛直方向上側に配置されると共に、シャフト2の軸方向(ロータコアプレート11の積層方向)全域に亘って複数配置されている。つまり、シャフト2の鉛直方向上側には、シャフト2の軸方向に沿って凹凸面が形成されている。
【0025】
図1に示すように、加振機3は、シャフト2を鉛直方向に往復運動(振動)させる振動手段である。加振機3は、シャフト2の軸方向における中央部に固定されており、シャフト2を鉛直方向(図1における上下方向)に振動させる。
詳細には、加振機3は、鉛直方向上向きに延出された棒材を有し、当該棒材の延出端部にシャフト2が固定され、前記棒材が鉛直方向に振動することでシャフト2を鉛直方向に振動させる。
なお、加振機3として、既販の加振機を適用することが可能である。
これにより、磁石回収装置1のコストを低減することができる。
【0026】
加振機3によってシャフト2が鉛直方向に振動されるに伴って、シャフト2に設置されたロータコア10が鉛直方向に振動し、シャフト2の外周面とロータコア10の内周面(貫通孔12の側面)とが連続的に衝突し合う。この連続的な衝突によって、ロータコア10を成す複数のロータコアプレート11・11・・・が互いに剥離(積層状態が解除)されると共に、ロータコア10の内部(磁石収容孔)に収容された複数の永久磁石20・20・・・が粉砕されてロータコア10から脱離し、回収容器4内に落下する。
こうして、容易にロータコア10を成す複数のロータコアプレート11・11・・・を互いに剥離させることができ、短時間でロータコア10に収容された複数の永久磁石20・20・・・を回収することができる。
【0027】
なお、シャフト2にロータコア10を設置した(ぶら下げた)状態において、シャフト2の下方におけるシャフト2の外周面とロータコア10の内周面(貫通孔12の側面)との間の間隔は、加振機3によってロータコア10が鉛直方向に往復運動されて、シャフト2の外周面とロータコア10の内周面(貫通孔12の側面)とが連続的に衝突し合うことにより、ロータコアプレート11・11・・・が互いに剥離(積層状態が解除)されると共に、ロータコア10の内部(磁石収容孔)に収容された複数の永久磁石20・20・・・が粉砕される程度の衝撃がロータコア10に加わるように設定される。つまり、シャフト2の下方におけるシャフト2の外周面とロータコア10の内周面(貫通孔12の側面)との間の『充分な間隔』とは、加振機3によるロータコア10の振動によってロータコアプレート11・11・・・を互いに剥離(積層状態が解除)すると共に、ロータコア10の内部(磁石収容孔)に収容された複数の永久磁石20・20・・・を粉砕することが可能な間隔である。
また、加振機3によるシャフト2の振動は、加振機3によるロータコア10の振動によってロータコアプレート11・11・・・を互いに剥離(積層状態が解除)すると共に、ロータコア10の内部(磁石収容孔)に収容された複数の永久磁石20・20・・・を粉砕することが可能な振動数、振幅に設定されるものとする。
ただし、加振機3によるシャフト2の振動は、ロータコア10の質量、外径、及び内径(貫通孔12の直径)等に応じて、ロータコア10が共振し易い振動数、振幅に設定することが好ましい。
【0028】
また、前述のように、シャフト2の鉛直方向上側には複数の突起部2a・2a・・・が設けられている。そのため、加振機3によるロータコア10の振動時に、シャフト2に形成された複数の突起部2a・2a・・・とロータコア10の内周面(貫通孔12の側面)とが連続的に衝突し合い、ロータコア10に部分的に鉛直方向の力が加わって、ロータコア10を成す複数のロータコアプレート11・11・・・がそれぞれ相対的に鉛直方向へずれることとなる。
これにより、より容易に複数のロータコアプレート11・11・・・を互いに剥離させることができ、より短時間でロータコア10に収容された複数の永久磁石20・20・・・を回収することができる。
なお、突起部2aの数、大きさ等は、加振機3によるロータコア10の振動時に、ロータコア10を成す複数のロータコアプレート11・11・・・がそれぞれ相対的に鉛直方向へずれて容易に剥離されるように、ロータコアプレート11の厚み(図1における左右方向の長さ)等に応じて適切に設定されるものとする。
また、本実施形態においては、複数の突起部2a・2a・・・をシャフト2の外周面における鉛直方向上側に設けたが、シャフト2とロータコア10とが接触(衝突)する可能性がある位置に設ければよく、例えば、シャフト2の外周全周に設けることも可能である。
【0029】
回収容器4は、ロータコア10から脱離した永久磁石20を回収するための容器である。回収容器4は、上面(図1における上面)が開放しており、シャフト2に設置されたロータコア10の下方(図1における下側)に配置されている。
加振機3によるロータコア10の振動によって粉砕され、ロータコア10から脱離した複数の永久磁石20・20・・・は、回収容器4の開放された上面を通って回収容器4内に落下する。こうして、回収容器4によって複数の永久磁石20・20・・・が回収される。
【0030】
衝突板5は、板状に形成され、加振機3によるロータコア10の振動時に、ロータコア10の外周面と衝突する衝突部材である。衝突板5は、加振機3の振動に連動しないように、定位置に固定されており、本実施形態においては、回収容器4に固定されている。
図4に示すように、衝突板5は、加振機3によるロータコア10の振動時において、衝突板5が設けられていない場合におけるロータコア10の最高到達位置(図4における一点鎖線Hで示す位置)よりも若干下方の位置(図4における一点鎖線Cで示す位置)で衝突板5とロータコア10とが衝突するように配置される。つまり、衝突板5は、振動するロータコア10の振幅端よりも振幅中心側(振幅範囲の内側)に位置しており、例えばロータコア10の上方であって、比較的強くロータコア10と衝突するような位置に配置される。
これにより、加振機3によるロータコア10の振動時に、シャフト2の外周面とロータコア10の内周面(貫通孔12の側面)との衝突に加えて、衝突板5の下面(図1及び図4における下面)とロータコア10の外周面とが衝突し合い、ロータコア10に対してより多くの衝撃を与えることが可能となる。
したがって、ロータコア10を成すロータコアプレート11同士の剥離(積層状態の解除)を促進させて、より容易に複数のロータコアプレート11・11・・・を互いに剥離させることができ、より短時間でロータコア10に収容された複数の永久磁石20・20・・・を回収することができる。
なお、衝突板5の形状は限定するものではなく、シャフト2と同様の棒材を適用してもよい。
【0031】
また、図3に示すように、衝突板5には、複数の突起部5a・5a・・・が設けられている。
突起部5aは、衝突板5の表面に形成された突起であり、衝突板5の表面から外方に向かうに従ってシャフト2の軸方向に沿った突起部5aの長さが小さく(先細に)なっている。
突起部5aは、衝突板5とロータコア10とが接触(衝突)する位置に形成されている。詳細には、突起部5aは、衝突板5の下面(図3における下面)においてシャフト2の軸方向に水平に直交する方向(図4における左右方向)全域に亘って連続的に形成され、シャフト2の軸方向(ロータコアプレート11の積層方向)に沿う全域に亘って複数配置されている。つまり、衝突板5の下面には、シャフト2の軸方向に沿って凹凸面が形成されている。
そのため、加振機3によるロータコア10の振動時に、衝突板5に形成された複数の突起部5a・5a・・・とロータコア10の外周面とが連続的に衝突し合い、ロータコア10に部分的に鉛直方向の力が加わって、ロータコア10を成す複数のロータコアプレート11・11・・・がそれぞれ相対的に鉛直方向へずれることとなる。
これにより、より容易に複数のロータコアプレート11・11・・・を互いに剥離させることができ、より短時間でロータコア10に収容された複数の永久磁石20・20・・・を回収することができる。
なお、突起部5aの数、大きさ等は、加振機3によるロータコア10の振動時に、ロータコア10を成す複数のロータコアプレート11・11・・・がそれぞれ相対的に鉛直方向へずれて容易に剥離されるように、ロータコアプレート11の厚み(図1における左右方向の長さ)等に応じて適切に設定されるものとする。
【0032】
図1に示すように、保持バネ6・6は、加振機3の振動時にシャフト2が加振機3から脱離しないように、シャフト2を保持する弾性部材である。
一方の保持バネ6の一端部は、シャフト2の一端部に接続され、一方の保持バネ6の他端部は、回収容器4におけるシャフト2の一端部の下方部分に接続されている。
他方の保持バネ6の一端部は、シャフト2の他端部に接続され、他方の保持バネ6の他端部は、回収容器4におけるシャフト2の他端部の下方部分に接続されている。
つまり、保持バネ6・6を介してシャフト2と回収容器4とが接続されている。
こうして、保持バネ6・6は、加振機3の振動時にシャフト2が加振機3から上方(図1における上側)へ脱離しないようにシャフト2を保持する。
なお、保持バネ6の数は限定するものではなく、シャフト2の一端部、及び他端部にそれぞれ二つずつ、合計四つ設けてもよいし、保持バネ6を設けなくともよい。
【0033】
以上のように、磁石回収装置1は、シャフト2と、加振機3と、回収容器4と、衝突板5と、保持バネ6・6とを具備し、ロータコア10を粉砕する装置、及び磁力選別機等を必要としないため、小型かつ安価に構成することができる。
更に、磁石回収装置1は、複数のロータコア10を同時に設置することが可能であるため、短時間で効率よく多くの永久磁石20を回収することができる。
なお、本実施形態においては、シャフト2の軸方向における中央部に加振機3を設けたが、これに限定するものではない。例えば、シャフト2の両端部にそれぞれ加振機3を設け、当該二つの加振機3・3によりシャフト2を振動させる構成としてもよい。
また、ロータコア10に収容された永久磁石20が粉砕される際に生じる粉塵を除去するための集塵機を設けてもよい。
また、ロータコアの構成(永久磁石の配置場所等)は限定するものではなく、シャフト2を通すための貫通孔が設けられていれば本発明を適用可能である。
【0034】
以下では、図5〜図8を参照して、本発明に係る磁石回収方法の一実施形態である、磁石回収装置1を用いた磁石回収工程S1について説明する。
【0035】
図5に示すように、磁石回収工程S1は、脱磁工程S10、急冷工程S20、及び振動工程S30を具備する。
【0036】
脱磁工程S10は、ロータコア10の内部(磁石収容孔)に収容された複数の永久磁石20・20・・・の磁力を消失させる(脱磁を行う)工程である。
脱磁工程S10においては、複数の永久磁石20・20・・・が収容されたロータコア10を電気炉等で永久磁石20のキュリー温度を超えるように加熱することで、複数の永久磁石20・20・・・の磁力を消失させる、所謂、『熱脱磁』を行う。
【0037】
急冷工程S20は、脱磁工程S10で加熱されたロータコア10を急冷する工程である。
図6に示すように、急冷工程S20においては、ロータコア10の内部(磁石収容孔)に収容された複数の永久磁石20・20・・・の熱脱磁のために加熱されたロータコア10を水等で急冷することで、ロータコア10を成す複数のロータコアプレート11・11・・・を温度差によって変形させて、互いに隣接するロータコアプレート11の間に隙間を有するロータコア10(以下、『変形ロータコア10T』と記す。)を形成する。
なお、急冷工程S20でロータコア10が変形ロータコア10Tとなるように、脱磁工程S10でのロータコア10の加熱温度が設定されるものとする。
【0038】
振動工程S30は、急冷工程S20で形成された変形ロータコア10Tを磁石回収装置1を用いて振動させる工程である。
図7に示すように、振動工程S30においては、変形ロータコア10Tの貫通孔12(図2参照)にシャフト2を通し、変形ロータコア10Tをシャフト2に設置する。
なお、本実施形態においては、シャフト2における加振機3と固定されている部分(シャフト2の軸方向における中央部)から一端側、及び他端側にそれぞれ一つずつ、合計二つの変形ロータコア10Tをシャフト2に設置する。
ただし、シャフト2に設置する変形ロータコア10Tの数は限定するものではなく、シャフト2の軸方向の長さ、及び変形ロータコア10Tの重量等を考慮して適宜決定することが可能である。
【0039】
シャフト2に変形ロータコア10Tを設置した後は、加振機3によりシャフト2を鉛直方向(図7における上下方向)に往復運動(振動)させて、シャフト2に設置された変形ロータコア10Tを鉛直方向に往復運動(振動)させることで、変形ロータコア10Tの内周面(貫通孔12の側面)とシャフト2の外周面、及び変形ロータコア10Tの外周面と衝突板5を連続的に衝突させる。
【0040】
図8に示すように、上記のような衝突を繰り返すことで、その衝撃により変形ロータコア10T(ロータコア10)を成す複数のロータコアプレート11・11・・・が互いに剥離(積層状態が解除)されると共に、変形ロータコア10T(ロータコア10)の内部(磁石収容孔)に収容された複数の永久磁石20・20・・・が粉砕されて変形ロータコア10T(ロータコア10)から脱離し、回収容器4内に落下する。
この時、脱磁工程S10にて、変形ロータコア10Tに収容された複数の永久磁石20・20・・・の熱脱磁が行われているため、粉砕された永久磁石20がロータコア10(ロータコアプレート11)に吸着することなく、回収容器4へ落下する。
これにより、変形ロータコア10T(ロータコア10)から永久磁石20を効率よく回収することができ、永久磁石20の回収量を向上させることができる。
【0041】
また、急冷工程S20にて、脱磁工程S10で加熱されたロータコア10が急冷されることで、互いに隣接するロータコアプレート11の間に隙間を有する変形ロータコア10Tとなっている。
これにより、容易に変形ロータコア10T(ロータコア10)を成す複数のロータコアプレート11・11・・・を互いに剥離させることができ、短時間で変形ロータコア10T(ロータコア10)から永久磁石20を回収することができる。
【0042】
また、急冷工程S20にて、脱磁工程S10で加熱されたロータコア10を急冷することにより形成された変形ロータコア10Tにおいては、ロータコア10(ロータコアプレート11)と永久磁石20との熱膨張差により、永久磁石20と、当該永久磁石20が収容されている変形ロータコア10T(ロータコア10)の内部(磁石収容孔)との間に隙間が生じている。
これにより、加振機3による変形ロータコア10Tの振動時に変形ロータコア10T(ロータコア10)から永久磁石20が脱離し易くなり、永久磁石20の回収量を向上させることができると共に、より短時間で変形ロータコア10T(ロータコア10)から永久磁石20を回収することができる。
【0043】
粉砕され、変形ロータコア10T(ロータコア10)から脱離して回収容器4へ落下した永久磁石20は、適宜回収され、再利用される。
【0044】
なお、本実施形態においては、脱磁工程S10として、ロータコア10に収容された複数の永久磁石20・20・・・を加熱することによる脱磁、つまり熱脱磁を行ったが、ロータコア10に収容された複数の永久磁石20・20・・・の磁力を消失させることができれば、熱脱磁に限定しない。例えば、脱磁工程S10に交流脱磁を適用することも可能である。
ただし、脱磁工程S10の後工程として、急冷工程S20を行う場合には、ロータコア10を加熱する必要があるため、脱磁工程S10に熱脱磁を適用することが好ましい。
【0045】
また、本実施形態においては、振動工程S30の前工程として、脱磁工程S10及び急冷工程S20を行ったが、脱磁工程S10のみを行うこと、又は脱磁工程S10及び急冷工程S20の両方を行わないことも可能である。
【符号の説明】
【0046】
1 磁石回収装置
2 シャフト
2a 突起部
3 加振機
4 回収容器
5 衝突板
5a 突起部
6 保持バネ
10 ロータコア
10T 変形ロータコア
11 ロータコアプレート
12 貫通孔
20 永久磁石

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電磁鋼板が積層して成り、当該電磁鋼板の積層方向に貫通する貫通孔を有すると共に、内部に複数の永久磁石が収容される、ロータコアを振動させて、当該ロータコアを成す複数の電磁鋼板の積層状態を解除することにより、前記ロータコアから前記複数の永久磁石を回収する磁石回収装置であって、
水平に配置されたシャフトと、
前記シャフトを鉛直方向に振動させる振動手段と、を具備し、
前記シャフトは、前記ロータコアの貫通孔に通され、前記シャフトの下方における前記シャフトの外周面と前記ロータコアの内周面との間に充分な間隔を有した状態で、前記ロータコアを支持し、
前記振動手段によって前記シャフトを鉛直方向に振動させることにより、前記ロータコアに鉛直方向の振動を加えて、前記シャフトの外周面と前記ロータコアの内周面とを連続的に衝突させる磁石回収装置。
【請求項2】
前記シャフトは、複数の突起部を有し、
前記シャフトの複数の突起部は、前記シャフトにおける前記ロータコアの内周面と衝突する位置において前記シャフトの軸方向に沿って配置される請求項1に記載の磁石回収装置。
【請求項3】
前記振動手段による前記ロータコアの振動時に、前記ロータコアの外周面と衝突する衝突部材を更に具備する請求項1又は請求項2に記載の磁石回収装置。
【請求項4】
前記衝突部材は、前記振動手段による前記ロータコアの振動時に、前記衝突部材が設けられていない場合における前記ロータコアの最高到達位置よりも若干下方の位置で前記ロータコアと衝突するように配置される請求項3に記載の磁石回収装置。
【請求項5】
前記衝突部材は、複数の突起部を有し、
前記衝突部材の複数の突起部は、前記衝突部材における前記ロータコアの外周面と衝突する位置において前記シャフトの軸方向に沿って配置される請求項3又は請求項4に記載の磁石回収装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の磁石回収装置を用いて、
前記ロータコアから前記複数の永久磁石を回収する磁石回収方法であって、
前記ロータコアに収容される複数の永久磁石の磁力を消失させる脱磁工程と、
前記脱磁工程を経た前記ロータコアの貫通孔に前記シャフトを通し、前記振動手段によって前記シャフトを鉛直方向に振動させることにより、前記ロータコアに鉛直方向の振動を加える振動工程と、を具備する磁石回収方法。
【請求項7】
前記脱磁工程は、前記ロータコアに収容される複数の永久磁石に対して熱脱磁を行う請求項6に記載の磁石回収方法。
【請求項8】
前記振動工程を行う前に、前記脱磁工程を経たロータコアを急冷する急冷工程を更に具備する請求項7に記載の磁石回収方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−166966(P2011−166966A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−28031(P2010−28031)
【出願日】平成22年2月10日(2010.2.10)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】