説明

磁石組立体およびイメージング・ボリューム用の磁場を決定する方法

少なくとも2つの磁石であって、互いに一定間隔を置いて配置され、それら磁石の間にイメージング・ボリュームを取り囲む空間を形成する少なくとも2つの磁石を有する磁石組立体が開示される。これら磁石のそれぞれは、その磁石の、内側を向いた表面全域に様々な磁場強度を生成し、それら磁場強度が組み合わされて、前記イメージング・ボリューム内に許容できるほど均一な磁場を生成する。イメージング・ボリューム用の磁場を決定する方法も開示される。この方法は、磁石組立体の初期モデルを生成することと、そのモデルに基づいて、イメージング・ボリューム用の磁場を見積もることと、その見積もられた磁場とイメージング・ボリューム用の目標磁場との間の偏差を計算することと、組み合わされることで前記目標ボリューム内に前記目標磁場を実質的に生成する様々な磁場強度を生成するように、前記磁石組立体を修正することで前記偏差を小さくするように前記モデルをアップデートすることと、を含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、特別に所望された所定の特性を有する磁場に関し、特に磁石組立体およびイメージング・ボリューム用磁場を決定する方法に関する。
【0002】
本発明は、米国特許法第119条(e)項の下で、その内容が参照により全面的に本明細書に組み込まれる、2008年6月24日に出願された米国特許仮出願第61/129,412号の優先権を主張する。
【背景技術】
【0003】
磁気共鳴イメージング、すなわちMRIは、人間の患者などの物体をMRI機器の中に入れ、MRI機器内に収容された分極磁石によって発生した一様な磁場にさらす周知の画像技術である。MRI機器内に収容された無線周波数(RF)コイルによって発生したRFパルスを用いて、患者の標的組織が走査される。MRI信号が、連続したRFパルスとRFパルスとの間に、標的組織内の励起核によって放射され、RFコイルによって検知される。MRI信号が検知される間、細かく制御された傾斜磁場が素早く切り替えられて、局所領域における一様な磁場を変化させ、それによって標的組織の選択された複数のスライスによって放射されたMRI信号の空間的な位置特定を可能にする。次に、検知されたMRI信号は、多くの知られた技術の1つを用いて、デジタル化されて処理され、標的組織の複数のスライスからなる画像に再構成される。
【0004】
MRIを実行可能なシステムでは、特定のイメージング・ボリューム内の物体の複数の核スピンを一直線に揃えるために、強力で一様な静磁場が必要となる。この静磁場は通常、0.1から4.7テスラ程度の磁場強度を有する、永久磁石組立体またはコイル磁石組立体によって、画像ボリューム内に生成される。検知が行われている間、画像ボリューム内に付与された、細かく制御された傾斜磁場によって、異なる場所にある複数の核スピン間の識別が可能となる。しかしながら、イメージング・ボリューム内の静磁場の不均一性は、画像取得の間は傾斜磁場から切り離すことは不可能であり、得られる画像の幾何学的ひずみを直接引き起こす。これらのひずみは、MRIシステムが、取得された画像の幾何学的精度に依存する他の手法、例えば、これには限定されないが放射線治療などの他の手法と併用して用いられるときに、特に有害である。したがって、静磁場の不均一性を大幅に下げることは、高画質と高い幾何学的精度を有する画像を達成するために極めて重要である。例えば、許容できる画質は、不均一性の程度がイメージング・ボリューム内で10ppm程度である場合に得ることができる。
【0005】
受動シミング(passive shimming)のような技術を用いて、静磁場の軸対称および非軸対称の不均一性を減らすことが知られている。受動シミングは、磁石組立体が製造された後に実行され、追加の磁性材料片をイメージング・ボリューム内およびその周りに効果的に配置することを必要とする。追加の磁性材料片は通常、リング、リングセグメント、円筒、角柱を含む様々な形状を有している。シミングは、いくつかの用途では、イメージング・ボリューム内の不均一性を抑える上で有効であるが、その有効性は、製造後に最初の磁場不均一性が存在する範囲によって制限される。したがって、磁石組立体の構造には著しい制約があり、検査されている物体のために適切な大きさでアクセス可能な空間を磁石組立体内に維持するという要求によって著しい制約が生じる。
【0006】
内在する軸対称の磁場不均一性を減らすために、受動シミング技術の制限を回避する試みが、製造された磁石組立体の構造を改良することによって行われている。2面式磁石の技術の現状では、磁極片の互いに対向する表面は、各磁極片が、対向する磁極片の表面に向かって概ね延びる軸の周りに軸対称となるように、曲面状に形成されている。例えば、そのような磁極片の最も一般的な構造はローズリング構造として知られており、このローズリング構造では、イメージング・ボリュームに最も近い磁極片の表面が、磁極片の前記表面の周辺に沿って設置された、磁性材料からなるリングを除いて、完全に平坦である。より詳細には、軸からの半径方向距離に対する、磁極片表面の、軸に沿った軸方向距離のグラフが、ローズリングの半径方向位置に一つの垂直な段差を有する、傾きがゼロの直線となる。
【0007】
米国特許第5,539,366号明細書に開示された1つの磁石組立体構造は、軸対称に形成された複数の磁極片からなり、軸からの半径方向距離に対する、磁極片表面の、軸に沿った軸方向距離のグラフは、区分線形曲線であるか、少なくとも2回符号反転する、連続した勾配を有する非線形曲線である。このような構造は両方とも、軸から同じ半径方向距離に位置する、磁極片の表面領域上の複数の点も軸から共通の軸方向距離に位置し、したがって磁場の軸対称の不均一性だけしかシミングの前に減らすことができないという点で制約がある。さらに、これらのシステムは、磁極片サイズがやむを得ず非常に大きくなるにつれて、大規模になるとともに動かすことができなくなり、したがって検査されている被検者に対して動かすのに適していない。
【0008】
他の物体および/または装置がMRI装置の近傍に配置されることが多い。その内容が参照により全面的に本明細書に組み込まれる、例えば、Falloneらによる国際公開第2007/045076号には、外照射療法とMRIの一体型システムが記載されており、そのシステムでは、撮像と治療を同時に行うために、線形加速器(リニアック)がMRI装置に接続されている。残念なことに、磁石組立体構造の技術の現状は、許容できるほど均一なイメージング・ボリュームおよび特定の磁場特性を有する他のボリュームの少なくとも一方のボリュームを提供するとともに、磁石組立体のサイズが扱いやすいものになることを保証しつつも、物体や追加の治療装置または診断装置を磁石組立体内またはその近傍に組み入れることの影響に対処していない。そのような追加の装置の動作は、それらの設置場所での磁場の存在または特性、あるいはその両方によって影響されることがあり、またその動作自体が、イメージング・ボリューム内の磁場の特性を変化させることがある。さらに、そのような物体または装置を磁石組立体内またはその近傍にまとめるには、該物体または該装置を配置するため、あるいは該物体または該装置自体の性能に効果を与えるために、磁石組立体内に、例えば磁石構造を貫通する大きな穴などの、特定のボリュームの自由空間を空けることが必要となる。例えば、磁石組立体によって生成された複数の磁場を、特に患者の線量測定のその後の摂動(perturbation)を減らすために、画像誘導放射線治療用のリニアックの導波路内の電子(または陽子線治療用にリニアックで生成された陽子)の方向に揃えることが有利かもしれない。一般に、そのような空けられたボリュームは、磁石組立体によって生成された磁場に著しく影響し、イメージング・ボリューム内の非常に不均一な磁場の一因となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の目的は、従来技術の上記した欠点の少なくとも1つを軽減するか取り除く、イメージング・ボリューム用の磁場を形成する磁石組立体と方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様によれば、磁石組立体が提供され、その磁石組立体は、
少なくとも2つの磁石であって、互いに一定の間隔を置いて配置され、それにより磁石同士の間にイメージング・ボリュームを取り囲む空間を形成する少なくとも2つの磁石を有し、磁石のそれぞれは、その磁石の、内側を向いた表面全域に様々な磁場強度を生成し、それら磁場強度が組み合わされて、イメージング・ボリューム内に許容できるほど均一な磁場を生成する。
【0011】
磁石の、内側を向いた表面全域での様々な磁場によって、イメージング・ボリューム内での撮像にとって許容でき、かつ必ずしも非常に大きな磁石を使用することなく十分な大きさとなる、ほぼ均一な磁場を生成することが可能となる。したがって、磁石の、内側を向いた表面全域での様々な磁場の生成によって、所与のイメージング・ボリュームに対してより小型の磁石組立体を可能にする構成がもたらされる。
【0012】
本発明の他の態様によれば、磁気共鳴イメージング(MRI)装置が提供され、そのMRI装置は、
上記した磁石組立体と、
摂動の後でほぼ均一な磁場に再整列するときに、陽子によって放射された無線周波数信号をイメージング・ボリューム内で検出し、それらの無線周波数信号に基づいて撮像が行われる、検出器と、を有している。
【0013】
本発明の他の態様によれば、イメージング・ボリューム用の磁場を決定する方法が提供され、その方法は、
磁石組立体の初期モデルを生成することと、
そのモデルに基づいて、イメージング・ボリューム用の磁場を見積もることと、
その見積もられた磁場と、イメージング・ボリューム用の目標磁場との間の偏差を計算することと、
様々な磁場強度を生成し、それら磁場強度が組み合わされて、イメージング・ボリューム内に目標磁場を実質的に生成するように、磁石組立体を修正することで偏差を小さくするようにモデルをアップデートすることと、を含んでいる。
【0014】
一実施態様では、目標磁場が許容できるほど均一な磁場であり、前記初期モデルが、磁石組立体を特定する複数のパラメータに基づいており、修正することが、磁石組立体の2つの磁石の、内側を向いた表面の一方または両方の表面形状を表す1つ以上のパラメータを修正することを含んでいる。
【0015】
本発明の他の態様によれば、イメージング・ボリューム用の磁場を決定するための、コンピュータに読み込み可能なプログラムを備えたコンピュータに読み込み可能な媒体が提供され、コンピュータプログラムが、
磁石組立体の初期モデルを生成するコンピュータプログラムコードと、
そのモデルに基づいて、イメージング・ボリューム用の磁場を見積もるコンピュータプログラムコードと、
その見積もられた磁場とイメージング・ボリューム用の目標磁場との間の偏差を計算するコンピュータプログラムコードと、
様々な磁場強度を生成し、それら磁場強度が組み合わされて、イメージング・ボリューム内に目標磁場を実質的に生成するように、磁石組立体を修正することで偏差を小さくするようにモデルをアップデートするコンピュータプログラムコードと、
を有している。
【0016】
本発明の他の態様によれば、磁石組立体が提供され、その磁石組立体は、
少なくとも2つの磁石であって、互いに一定の間隔を置いて配置され、それにより磁石同士の間に空間を形成する少なくとも2つの磁石を有し、磁石のそれぞれは、その磁石の、内側を向いた表面全域に様々な磁場強度を生成し、それら磁場強度が組み合わされて、目標ボリューム内に目標磁場を生成する。
【0017】
本発明のさらに他の態様によれば、目標ボリューム用の磁場を決定する方法が提供され、その方法は、
磁石組立体の初期モデルを生成することと、
そのモデルに基づいて、目標ボリューム用の磁場を見積もることと、
その見積もられた磁場と目標ボリューム用の目標磁場との間の偏差を計算することと、
様々な磁場強度を生成し、それら磁場強度が組み合わされて、目標ボリューム内に目標磁場を実質的に生成するように、磁石組立体を修正することで偏差を小さくするようにモデルをアップデートすることと、
を含んでいる。
【0018】
本発明のさらに他の態様によれば、目標ボリューム用の磁場を決定するコンピュータプログラムを具体化する、コンピュータに読み込み可能な媒体が提供され、そのコンピュータプログラムは、
磁石組立体の初期モデルを生成するコンピュータプログラムコードと、
そのモデルに基づいて、目標ボリューム用の磁場を見積もるコンピュータプログラムコードと、
その見積もられた磁場と目標ボリューム用の目標磁場との間の偏差を計算するコンピュータプログラムコードと、
様々な磁場強度を生成し、それら磁場強度が組み合わされて、目標ボリューム内に目標磁場を実質的に生成するように、磁石組立体を修正することで偏差を小さくするようにモデルをアップデートするコンピュータプログラムコードと、
を有している。
【0019】
本明細書で述べる方法は、医学的応用、特に、2面式磁石構成(例えば、ヘルムホルツ型)が採用される磁気共鳴イメージング(MRI)を含む医学的応用で使用するための、磁石組立体のコンピュータベースの設計に適用することができる。そのような2面式磁石組立体は、概ね対向する第1および第2の磁極面を有し、間隔を置いて配置された第1および第2の磁極片を備えた磁石組立体、例えば、これらには限定されないが、C形状の磁石、2つの柱状磁石、4つの柱状磁石などを備えた磁石組立体を含んでいる。そのような応用では、本発明を使用して、軸対称および/または非軸対称の磁場不均一性を減らすことにより、特定のイメージング・ボリューム内にほぼ一様な磁場を生成する磁石組立体を製造することができる。より一般的には、本明細書に記載された本方法を用いて、磁場の存在または特性、あるいはそれらの両方によって動作が影響されうる追加の物体または装置が設置された、磁石組立体内または磁石組立体の近傍の特定の領域に、特別に所望された特性を有する磁場を生成することができる。そのような物体または装置は、X線管、医療用線形加速器導波管(リニアック)、フラットパネル撮像装置、核医学または超音波撮像装置、または他の装置であってよい。そのような装置は、2つの磁極間の空き空間の端部に配置されていてよい。本明細書に記載された本方法は、磁極の両方または一方の中央または任意の場所に、装置をその場所に位置決めするための開口を含む磁石組立体用のイメージング・ボリューム内に磁場を形成することにも適用することができる。そのような配置は、設計上または動作上の利点のため、例えば、サイズの縮小、撮像システムと一体化した処理システムにおける患者の線量測定の摂動の減少、および特定の磁場の生成の少なくとも1つのために行ってもよい。例えば、1つの特定の構成としては、導波路内の電子または電子によって生成された光子の方向が磁石によって生成された磁場と平行であり、したがって患者の線量測定のその後の摂動を減少させる磁石構造内の場所に、線形加速器(リニアック)を位置決めすることであろう。
【0020】
本明細書に開示された本方法の他の利点は、本方法が多くの用途に適用できることである。例えば、多くの用途ではイメージング・ボリューム内にはほぼ均一な磁場が存在することが望ましいが、ある用途では、イメージング・ボリューム内の磁場は、例えば、特別に所望の勾配を有する、所望ではあるがほぼ不均一の磁場であってもよい。より一般的には、本発明は、イメージング・ボリューム内の磁場を形成するために用いられるのであって、撮像を意図したものではない。例えば、本発明は、偏向磁石を用いて現在行われているような、電子ビームまたは陽子ビームの経路を方向付け/案内/変更するためにボリューム用の磁場を決定することが望まれることがある。
【0021】
本明細書に記載した磁石組立体および方法は、外照射療法システムとMRIシステムとを統合したシステムに適用可能であり、またその内容がいずれも参照により本明細書に全面的に組み込まれる、Falloneらによる国際公開第2007/045076号および国際公開第2007/045075号に記載されたシステムなどの、回転モードで使用するために構成されたシステムにも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】一実施形態おける、開放式の小型磁石組立体の斜視図である。
【図2】本発明の開放式の小型磁石組立体の断面図であって、磁極組立体表面と、この磁極組立体表面上の位置を表す可変設計パラメータの分布とを直接示す図である。
【図3】磁極組立体表面上の位置の可変設計パラメータ分布の、角度位置に対して半径方向位置をプロットしたグラフである。
【図4】一実施形態における、凹凸のある非軸対称な磁極組立体を分離して示す斜視図である。
【図5】特に、磁石組立体全体を貫通して空けられた2つの大きな穴を有する、代替の開放式の小型磁石組立体の斜視図である。
【図6】貫通して空けられた大きな穴を有する、磁石組立体の初期モデルにおける強磁性磁極片の斜視図であって、可変設計パラメータによって表される表面位置の分布を併せて示す図である。
【図7】図6の磁極片を組み込んだ磁石組立体に本方法を適用することによって得られた、軸対称の凹凸を有する強磁性磁極片の斜視図である。
【図8】一実施形態における、イメージング・ボリューム用の磁場を決定するステップを示すフローチャートである。
【図9】図8に示す磁石組立体の初期モデルを生成するステップを詳細に示すフローチャートである。
【図10】図8に示す、目的関数の形態としての目標磁場からの偏差を計算するステップを詳細に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、添付の図面を参照して、実施形態をより詳細に説明する。
【0024】
ここで、全図にわたって同じ番号が同じ要素を示す図面を参照すると、図1から図4は一実施形態の磁石組立体1を示している。本実施形態では、磁石組立体1は第1の強磁性磁極組立体2と第2の強磁性磁極組立体3とを含んでいる。第1および第2の強磁性磁極組立体2,3は、「2面式」磁石として互いに一定の間隔を置いて配置され、それによりイメージング・ボリューム17を取り囲むとともに、イメージング・ボリューム17において撮像される物体(図示せず)を受け入れるのに十分な空間をそれらの間に形成している。磁石組立体1は、撮像される物体が、磁極組立体2,3の間を移動してイメージング・ボリューム17に位置することができるので、「開放」されている。
【0025】
本実施形態では、第1および第2の強磁性磁極組立体2,3のそれぞれは、円柱状の永久磁石片6(7)と、ほぼ円柱状の強磁性体片8(9)との両方を有している。円柱状の永久磁石片6(7)と、ほぼ円柱状の強磁性体片8(9)とは、強磁性体片8(9)がイメージング・ボリューム17と永久磁石片6(7)との間に位置するように配置されている。内側を向いた表面、すなわち「磁極面」4,5が、第1の強磁性磁極組立体2と第2の強磁性磁極組立体3との間の空間に隣接している。ここでさらに詳しく述べるように、第1および第2の強磁性磁極組立体2,3のそれぞれは、その内側を向いた表面4,5全域に様々な磁場強度を生成して、イメージング・ボリューム内に、許容できるほど均一な磁場を生成する。本実施形態では、許容できるほど均一な磁場は、約10ppmまたはそれ以下の磁場不均一性を有する磁場である。このレベルの不均一性は、例えば、摂動の後でほぼ均一な磁場に再整列するときに、陽子によって放射され、イメージング・ボリューム17内の検出器50によって検出された高周波信号に基づく撮像を行うような、磁気共鳴イメージング(MRI)装置での使用には許容できると考えられる。
【0026】
強磁性体片8,9は、厳密な円柱状に対して「ほぼ」円柱状であると見なされているが、それは、図1において上(または下)から見たときに強磁性体片8,9は円形であるが、内側を向いた、すなわち「対向する」表面、つまり磁極面4,5が、本実施形態では厳密には平面状ではないからである。むしろ、各強磁性体片8,9は、(断面で見たときに)磁性材料が様々な厚さを有するように形成され、それにより内側を向いた表面4,5全域に様々な磁場強度を生成している。
【0027】
本実施形態では、磁石組立体1は、4本の柱13−16に接続された第1および第2のヨークプレート11,12を有するヨーク構造体10をさらに含んでいる。第1の磁極組立体2は、第1のヨークプレート11の、第2のヨークプレート12に最も近接した、内側を向いた表面に接続されている。同様に、第2の磁極組立体3は、第2のヨークプレート12の、内側を向いた表面に接続されている。
【0028】
当然のことながら、MRIなどの特定の磁石用途では、イメージング・ボリューム17内に大きな全磁場強度が要求される。本実施形態では、この大きな磁場強度を実現するために、永久磁石片6,7は、ネオジム−鉄−ボロン化合物から形成されている。他の実施形態では、永久に磁化され、大きな最大エネルギー積を有する1つまたは複数の他の材料を使用してもよい。さらに、強磁性体片8,9およびヨーク構造体10はそれぞれ、スチールなどの鉄含有材料から形成されている。上記したように、イメージング・ボリューム内に良好な磁場均一性を有することは、特にMRIの用途にとって有利である。しかしながら、従来の周知の磁石組立体、特に平面状の磁極面を有する磁石組立体では、その磁石組立体によって生成される磁場は、一般に均一性のレベルが低い。さらに、従来の周知の磁石組立体では、磁石組立体全体が非軸対称の形状であるため、特に、ヨーク構造体が非軸対称の形状であるため、それに応じて、イメージング・ボリューム内の磁場不均一性は軸対称にも非軸対称にもなる。その結果、そのような従来の周知の磁石組立体における、許容できるほど均一な(すなわち、撮像に適した)磁場を含む任意の空間ボリュームは、その磁気組立体全体の大きさに比べて非常に小さく、そのため、十分な大きさのイメージング・ボリュームを実現するには非常に大きな磁石が必要となる。
【0029】
ここで、図8を参照して、イメージング・ボリューム用の磁場を決定する方法を説明する。本方法では、磁石組立体1の初期モデルが生成され(ステップ100)、このモデルに基づいて、イメージング・ボリューム用の磁場が見積もられる(ステップ200)。この磁場と、イメージング・ボリューム用の目標磁場との間の偏差が計算され(ステップ300)、磁石組立体1を修正することでこの偏差を小さくするようにモデルがアップデートされて、様々な磁場強度が生成され、それら磁場強度が組み合わされてイメージング・ボリューム内に目標磁場が実質的に生成される(ステップ400)。
【0030】
もし、ステップ400でのアップデートの後に、再度の繰り返しが要求されていると判定されると(ステップ500)、見積もり、計算、およびアップデートの各ステップが再度行われる。
【0031】
本実施形態では、目標磁場は均一な磁場であって、イメージング・ボリューム内にその目標磁場をほぼ生成することで、ほぼ均一な磁場がイメージング・ボリューム内に生成されるような均一な磁場である。
【0032】
図9は、ステップ100に示すような、磁石組立体1の初期モデルを生成する上記ステップをさらに詳しく示している。まず、磁石および磁石組立体1の形状、寸法、および材料を表す複数のパラメータを定義する、磁石組立体1用の設計パラメータ化が選択される(ステップ110)。
【0033】
次に、それらのパラメータに初期値を与え、変数あるいは定数に指定するような制約条件が定義される(ステップ112)。設計パラメータの初期値を、それらが特定の制約条件を満たすならば、経験的に、任意に、あるいはランダムに行うことを含めて、何らかの方法で選択または予め定義することができる。例えば、本実施形態では、磁石組立体1の材料は、上記したスチールおよびネオジム−鉄−ボロン化合物の磁気特性を示すものとして最初に定義されるが、モデルのアップデート中に材料が変更されないように、定数に指定される。一方、本実施形態では、磁石の内側を向いた表面における表面形状を表すパラメータは、平面状の、すなわち「平坦」な、内側を向いた表面を表すものとして定義されるが、それらがアップデート中に修正されて形状が最適化され、図1に示す、非平面状の、内側を向いた表面が生成されるように、変数に指定される。
【0034】
パラメータ化、パラメータ初期値、および制約条件が定義され、それにより磁石組立体の初期モデルが生成されると(ステップ114)、次に、その最初の磁石組立体によって生成された磁場、特に対象となるイメージング・ボリューム用の磁場が、有限要素法(FEM)または境界要素法(BEM)を採用したシミュレーション技術を用いて見積もられる(ステップ300)。
【0035】
磁場が見積もられると、次に、目標磁場と、初期モデルによって表される磁石組立体で生成された磁場との間の偏差が計算される。小さくすべき、好ましくは最小にすべきこの偏差は、一群の設計パラメータによって明示的にまたは黙示的に定めることができる目的関数Ψとして定義される(ステップ310)。本実施形態では、目的関数Ψは、磁場が最適化される各領域に対して、少なくとも1つの項Ψ(i=1,2,…)を含んでいる。こうして、少なくとも1つの項Ψが存在し、これは、本実施形態では、以下の式(1)で示すように、イメージング・ボリューム17にわたって行われる、完全に均一な磁場からの実際の磁場の偏差の計算である。
【0036】
【数1】

【0037】
ここで、B(r)は位置rでの磁場強度であり、Bは所望の磁場強度である。
【0038】
本実施形態では、所望の磁場強度Bの位置は、磁石組立体のアイソセンターの点であるか、あるいはイメージング・ボリューム17の中心にある。本実施形態では、これらの点は一致している。式(1)の積分は、数学的にΩとして示されるイメージング・ボリューム17にわたって求められる。目的関数Ψは、磁場が決定される各領域に対して、少なくとも1つの項を含んでいる。本実施形態では、目的関数Ψの少なくとも1つの項は、イメージング・ボリュームにわたって計算された、完全に均一な磁場からの実際の磁場の偏差の大きさである。しかしながら、他の領域も最適化することが望まれる場合、各領域は関連する項を有しており、その項は、同様に、その領域の関連するボリュームにわたって計算された、その領域において望まれる磁場からの実際の磁場の偏差の大きさである。このような場合、Ωとして示される他の領域は偏差を小さくすることが求められ、目的関数Ψのi番目の項Ψは、以下の式(2)で示すように計算される。
【0039】
【数2】

【0040】
ここで、B(r)は位置rでの磁場強度であり、Bは所望の磁場強度である。
【0041】
この場合、磁石組立体1によって生成されると推定された磁場の、目標磁場からの偏差を表す、好適な全目的関数Ψは、以下の式(3)で示すように、各項の加重和として単純に計算される(ステップ312)。
【0042】
【数3】

【0043】
ここで、wは、i番目の項Ψに対するユーザ定義の重みである。
【0044】
重みwは、加重和における各項Ψを、ユーザによって決定された重要度に応じて増大させる役目を有している。例えば、干渉軽減よりもイメージング・ボリュームの均一性を優先させるために、(磁石組立体1に隣接したある点に設けられた検出器50またはリニア加速器などの)他の物体または装置と一致する点よりも大きい重みをイメージング・ボリューム17の中心点に与えてもよい。
【0045】
本発明の目的を満たす妥当な設計を得るために、目的関数やその各項の別の定義を用いることができることがわかるであろう。例えば、目的関数は、領域そのものにわたる積分よりもむしろ上記のΩとΩとで示される領域の境界にわたる積分の計算を含むことができる。
【0046】
目的関数が一群の入力パラメータに基づいて定義され(したがって、そのパラメータに依存するようにされ)ると、変数に指定された設計パラメータのN個の部分集合が後進され、全目的関数Ψを小さくする。アップデートされるこれらN個の変数は、最適化される形状を記述している。最適化プロセスのk番目の繰り返し時に、設計ベクトルzは、以下の式(4)で示すように、要素が個別の変数パラメータであるようなベクトルに定義される。
【0047】
【数4】

【0048】
ここで、zkjは、k番目の繰り返し時のj番目(j=1,…,N)の変数パラメータである。
【0049】
本実施形態では、内側を向いた表面(磁極面4,5)は、偏差を小さくし、それによって目標磁場を生成するために、外形が形作られる。用いられる変数は、図2に示すように、磁極面4,5上の一群の点18のそれぞれの軸方向位置を表している。図2において、各位置は、第1の磁極組立体2の中心から対向する第2の磁極組立体3の中心へ概ね延びる第1の軸に対して測定される。これらの点は、それらの半径方向位置の、角度位置に対するプロットが(これらの位置は両方とも第1の軸に対して測定したものであるが)図3に示す二次元格子を形成するように配置される。次に、実際の磁極面4,5が、磁極面4,5のそれぞれの上に位置する一群の変数パラメータ間の線形補間によって記述される。理解されるように、これらの変数パラメータが満足される制約条件は、物理的に妥当な設計を確保するために設けられている。したがって、そのような制約条件が、磁極面4,5上の上記の点の軸方向位置における許容値の範囲を含んでいることが好ましく、それにより、対向する2つの磁極組立体2,3の間の最小距離間隔だけでなく、磁極面2,3の最小軸方向幅も実現されている。
【0050】
上記のパラメータ化によって生じた磁極組立体2,3が必ずしも軸対称に限定されないことが有利である。よって、イメージング・ボリューム17内での軸対称および非軸対称の磁場不均一性の両方が有益に低減され、磁石組立体1の内部の、またはこれに隣接した任意の領域で生成された磁場の有益な調整によって、磁場に干渉したり、磁場によって干渉されたりしうる他の物体および/または装置を収容することが可能となる。
【0051】
本明細書に記載した設計パラメータ化は説明のために示されており、それは、どのパラメータを変数に指定するか、またこれらのパラメータが、記述しようとする実際の形状とどのように関係しているかについて、他の多くの変更例や選択肢が存在するためである。例えば、上記した一群の点は磁極面4,5の表面に必ずしも実際にある必要はないが、むしろ、実際の磁極面4,5を規定する他の補間法に用いられる加重制御点であればよい。制御点の個数および幾何分布は、設計者の要求に基づいて、他の何らかの方法で選択されてもよい。さらに、永久磁石片6,7の磁化分布などの特定の材料特性と同様に、追加の設計パラメータ、例えば、磁極組立体2,3の位置、向き、または他の様々な寸法などを変数に指定することができる。
【0052】
アップデート(ステップ400)中には、各繰り返し時に、可変設計パラメータのそれぞれを調整して目的関数Ψの値を小さくすることで偏差を小さくするために、非線形数理最適化アルゴリズムが用いられる。目的関数Ψは、設計パラメータに対して高度に非線形であることがわかっている。よって、妥当な繰り返し回数内で、目的関数Ψの極小値が適切に定められた許容範囲内に収束することを実現するために、ロバストな非線形最適化アルゴリズムが用いられる。本実施形態では、用いられる非線形最適化アルゴリズムは最急降下法である。一般に、(k+1)番目の繰り返し時の設計ベクトルは、以下の式(5)で示すように、k番目の繰り返し時の設計ベクトルから得られる。
【0053】
【数5】

【0054】
ここで、αは、探索方向ベクトルdのスカラステップサイズである。
【0055】
ステップサイズαは、k番目の繰り返し時の設計ベクトルを探索方向にアップデートさせる量を増加させる。ステップサイズαは、正確でない直線探索アルゴリズムを用いて求められる。最急降下法によれば、探索方向ベクトルdは、以下の式(6)で示すように定義される。
【0056】
【数6】

【0057】
ここで、∇は勾配演算子であり、∇Ψは、k番目の繰り返し時に求められた、可変設計パラメータに対する目的関数の勾配ベクトルである。
【0058】
∇Ψのj番目の要素は、以下の式(7)で示すように計算される。
【0059】
【数7】

【0060】
最急降下法によって要求される式(7)の一次導関数は、正確には求められないかもしれないが、近似値を求めることができる。一次導関数の近似値を求める幾つかの方法を用いることができるが、最も簡単な方法の1つは、有限差分近似に基づいて各一次導関数を計算することである。有限差分近似は、特定の繰り返し時の単一の変数パラメータzkjがその正常値から小さな有限量δzだけ摂動を受けるような設計のための目的関数Ψと、その特定の繰り返し時の非摂動な設計のための目的関数Ψとの間の差を、以下の式(8)で示すように計算することを含んでいる。
【0061】
【数8】

【0062】
図4は、図1の磁極組立体2だけを分離して示している。磁石組立体の一部として、完全に平坦な/平面状の表面を備えたほぼ円柱の形状が、初期モデル用に経験的に選択された。上記の最適化方法を実行した後、磁石組立体1用の単項の目的関数Ψの値が極小になるようにアップデートされ、イメージング・ボリューム17内に大きく均一な磁場が得られた。より詳細には、磁極組立体2の強磁性体片8の、内側を向いた表面4上での位置を表す変数パラメータが、凹凸のある、内側を向いた表面4を表すために、初期の平面状の形状からアップデート中に修正された。図4からわかるように、凹凸を設けることによって、強磁性体片8のボリューム全域で磁性材料の量が変化する。
【0063】
非軸対称のヨーク構造体10(図1参照)のために、結果として得られた強磁性体片8は非軸対称であった。そのボリューム全域で磁性材料の厚さにばらつきがあるため、磁極組立体2は、同様に構成された磁極組立体3と協働して、その内側を向いた表面4全域に様々な磁場強度を生成し、それら磁場強度が組み合わされて、イメージング・ボリューム17内にほぼ均一な磁場を生成する。
【0064】
例えば、磁石組立体に加えて、イメージング・ボリューム内の磁場を許容できないほど不均一にする方法でイメージング・ボリューム内の磁場を乱すことができる、1つまたは複数の物体および/または装置を組み込むようにモデルをアップデートするためなど、追加の目的を達成するために、上記した例で述べた原理を用いることができる。例えば、そのような物体として、治療室内の物理的障壁、線形加速器などの1つまたは複数の装置、画像検出器または他の物体などを挙げることができる。そのような場合、見積もり、計算、およびアップデートは、このアップデートされたモデルに基づいて行われるであろう。そのような1つまたは複数の装置は、その1つまたは複数の装置を許容できないように動作させる方法で、それら自体がイメージング・ボリューム内の磁場によって乱れることができる場合もある。本方法は、例えば、この1つまたは複数の装置と磁場との干渉を減らすように、アップデートされたモデルに基づいて目標磁場を修正することをさらに含んでいてよい。修正は、隣接した装置を収容するようにイメージング・ボリュームの形状を修正することを含んでいてよく、あるいは、隣接した装置を収容するように不均一性の許容閾値を修正することを含んでいてよい。そのような装置は、磁石によって規定された空間に挿入されていてよく、あるいは少なくとも一方の磁石に空けられた穴内に配置されていてよく、あるいはその両方であってよい。
【0065】
一実施形態によれば、追加の物体および/または装置を含むように、または少なくとも一方の磁石に空けられた穴を含むように磁場を決定する本方法は、多数の連続した段階で実行される。各段階では、上記した修正の1つまたは複数が、前段階での最適化から得られた磁石組立体の設計に組み込まれる。新たに組み込まれた修正に関連した、何らかの新たな関連制約条件と目的関数で望まれる追加項とも含められ、偏差低減方法が再度実行され、その結果、その段階の磁石組立体設計が得られる。全ての所望の修正がコンピュータモデルシミュレーションに組み込まれ、最終的な設計が得られるまで、多数の段階が実行される。これらの修正は、設計最適化方式全体の中では特定の順序で配置されていてよく、変数に指定された設計パラメータは、異なる段階の間で同じままである必要はない。
【0066】
図5から図7には、磁石組立体19全体を貫通して空けられた2つの大きな穴35,36を有する磁石組立体19の一実施形態が示されている。より詳細には、第1および第2の穴35,36は、ヨーク構造体28の第1および第2のヨークプレート29,30にだけでなく、第1および第2の磁極組立体20,21にもそれぞれ空けられている。磁場を決定するために、前述した実施形態のパラメータ化とは異なるパラメータ化が用いられ、磁極組立体表面22,23の放射状の直線に沿って設けられた一群の点37の軸方向位置となるように設計変数を選択することで、軸対称の磁極組立体が得られる。このことは、特に図6に示されている。隣接する点37同士の間の軸方向位置を直線補間した後、磁極組立体の中心からの半径方向距離が等しい表面22上の全ての点について、それらの軸方向位置を等しくさせることで、磁極組立体表面22は形成される。言い換えれば、点37は、磁極組立体表面22上における、環状で同心の、一連の円錐台状セグメントの高さを示している。理解されるように、本実施形態での設計パラメータ化は、どのパラメータを変数に指定するか、またそのようなパラメータが表面の実際の形状とどのように関係しているかに関して、他の変更例や選択肢に置き換えることができる。
【0067】
図7は、上記したアップデート中に図6の平面状の表面から図7に示した非平面状の/凹凸のある表面に修正された、強磁性の磁極片26一実施形態を示している。より詳細には、完全に平坦な表面を備えたほぼ円柱状の形状が磁極片の初期設計として経験的に選択され、最適化方法が実行されて、磁石組立体19の単項の目的関数Ψの値を局所的に最小化するようにモデルがアップデートされ、それにより、磁石組立体のアイソセンター(図面には図示せず)における球状のイメージング・ボリューム内に大きく均一な磁場が得られた。
【0068】
イメージング・ボリューム用の磁場と、初期モデルおよびアップデートされたモデルとを決定する、本明細書に記載した本方法は、サーバおよび他の装置によって実行される命令であって、コンピュータで実行可能な命令を含む1つ以上のアプリケーションで具体化されていてよい。このアプリケーションは、ルーチン、プログラム、オブジェクトコンポーネント、データ構造等を含むプログラムモジュールを有していてよく、コンピュータに読み込み可能な媒体上に格納された、コンピュータに読み込み可能なプログラムコードとして具体化されていてよい。コンピュータに読み込み可能な媒体は、データを格納することができるデータストレージであって、そのデータは、後でコンピュータによって読み取り可能である。コンピュータに読み込み可能な媒体の例としては、例えば、リードオンリーメモリ、ランダムアクセスメモリ、CD−ROM、磁気テープ、および光学データストレージデバイスが挙げられる。コンピュータに読み込み可能なプログラムコードは、互いに接続されたコンピュータシステムを含むネットワークを通じて配信することもでき、それにより、コンピュータに読み込み可能なプログラムコードを分散した状態で格納し実行することができる。
【0069】
本明細書に示した教示に基づいて他の実施形態が着想可能であることが理解されよう。例えば、上記した第1および第2の磁極組立体は、コイル磁石の形態で置き換えられてよく、あるいはコイル磁石の形態を伴っていてよい。そのような実施形態では、設計プロセスで変更されて様々な磁場強度を生成する最適化パラメータは、ここで既に述べた複数のパラメータだけでなく、コイルの巻き数、コイル電流、コイル線の太さ、コイルの形状、コイルの位置などの、コイル磁石設計に関係した多数のパラメータからなる組み合わせを含んでいてよい。
【0070】
上記した方法が行われている間の、見積もり、計算、およびアップデートは、閾値回数まで繰り返し実行されるが、他の方法も考えられる。例えば、目的関数Ψによって表される偏差の大きさが閾値レベルを下回るまで、あるいは目的関数Ψによって表される偏差の大きさが、連続した繰り返しの間の閾値量以上には変化しなくなるまで、見積もり、計算、およびアップデートを繰り返し実行することができる。
【0071】
上記した最急降下法が非線形最適化を実行するために用いられるが、その代わりに、文字通り利用可能な他の数理非線形最適化アルゴリズムが用いられていてよい。そのような代替のアルゴリズムとして、シンプレックス法、共役勾配法、または最急降下法とシンプレックス法と共役勾配法との組合せが挙げられる。
【0072】
式(7)の一次導関数を見積もるための有限差分法について上述したが、その代わりに、当業者には公知のより複雑な手法および近似式を用いて、一次導関数の近似値を求めることができる。そのような技術の1つが、設計感度解析として知られている。
【0073】
上記では主に、特定の実施形態ではほぼ均一な磁場である、イメージング・ボリューム用の目標磁場を決定するために説明がなされているが、他の応用も考えられる。例えば、イメージング・ボリューム用の目標磁場はほぼ均一な磁場でなくてよく、むしろ、特定の応用のために予め定められた、傾斜および方向を有する特定の勾配を備えた不均一な磁場であってよい。より一般的には、目標磁場が撮像で使用するためのものではなく、他の機能のためである応用が考えられる。そのような機能の1つは、放射線治療装置によって放射された、電子、陽子、光子などの粒子を方向付けする機能である。例えば、偏向磁石を用いて現在行われているような、電子ビーム、光子ビーム、または(陽子線治療のための)陽子ビームの経路をそのエネルギーに応じて方向付け/案内/変更するために、目標ボリューム用の磁場を決定することが望ましいことがある。上記した本方法によって、磁石組立体の2つ以上の磁石が同一あるか、あるいは互いに鏡像であるような様々な応用や、所望の結果、例えば上記したような偏向を実現するために、磁石組立体の2つ以上の磁石が異なっているような様々な応用を提供することができる。したがって、初期モデルでは、それらの磁石は、それぞれが平面状の内側を向いた表面を有しているという点だけでなく、それらが同一か互いに鏡像であるかという点でも同じであるが、制約条件および要求に応じてアップデートされたモデルでは、2つの磁石は、偏向または撮像用の勾配を実現するために、正確には同じではないという意味で異なる結果となってよい。事実、これら2つの磁石は、その制約条件および要求に応じて、アップデートされたモデルでは互いにかなり異なる形状と寸法とを有し、所望の結果を得るようになっていてよい。
【0074】
実施形態について述べてきたが、当業者には、添付の特許請求の範囲によって規定される目的および範囲から逸脱することなく変更および修正が可能であることが理解されるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの磁石であって、互いに一定の間隔を置いて配置され、それにより前記磁石同士の間にイメージング・ボリュームを取り囲む空間を形成する少なくとも2つの磁石を有し、前記磁石のそれぞれは、該磁石の、内側を向いた表面全域に様々な磁場強度を生成し、該磁場強度が組み合わされて、前記イメージング・ボリューム内に許容できるほど均一な磁場を生成する、
磁石組立体。
【請求項2】
前記許容できるほど均一な磁場が、約10ppm以下の磁場不均一性を有する、請求項1に記載の磁石組立体。
【請求項3】
請求項1に記載の前記磁石組立体と、
摂動の後でほぼ均一な磁場に再整列するときに、陽子によって放射された無線周波数信号を前記イメージング・ボリューム内で検出し、該無線周波数信号に基づいて撮像が行われる、検出器と、
を有する磁気共鳴イメージング(MRI)装置。
【請求項4】
前記各磁石は、磁性材料が様々な厚さを有するように形成され、それにより前記様々な磁場強度を生成する、請求項1に記載の磁石組立体。
【請求項5】
前記各磁石が複数のコイル磁石を含み、該各コイル磁石が、個別の特性を有し、それにより前記様々な磁場強度を生成する、請求項1に記載の磁石組立体。
【請求項6】
前記コイル磁石の特性は、コイルの巻き数、コイル線の太さ、コイルの形状、コイルの位置、およびコイル電流の少なくとも1つを含む、請求項5に記載の磁石組立体。
【請求項7】
イメージング・ボリューム用の磁場を決定する方法であって、
磁石組立体の初期モデルを生成することと、
前記モデルに基づいて、前記イメージング・ボリューム用の磁場を見積もることと、
前記見積もられた磁場と、前記イメージング・ボリューム用の目標磁場との間の偏差を計算することと、
様々な磁場強度を生成し、該磁場強度が組み合わされて、前記イメージング・ボリューム内に前記目標磁場を実質的に生成するように、前記磁石組立体を修正することで前記偏差を小さくするように前記モデルをアップデートすることと、
を含むイメージング・ボリューム用の磁場を決定する方法。
【請求項8】
前記目標磁場が均一な磁場である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記初期モデルが、前記磁石組立体を特定する複数のパラメータに基づいており、前記アップデートすることが、前記複数のパラメータの1つ以上を修正することを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記磁石組立体が、少なくとも2つの磁石であって、互いに一定の間隔を置いて配置され、それにより該少なくとも2つの磁石の間に前記目標ボリュームを取り囲む空間を形成する少なくとも2つの磁石を有する、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも2つの磁石が、前記初期モデルの一部であるヨーク組立体によって、前記一定の間隔に維持されている、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ヨーク組立体が、各磁石に対応する2つのヨークプレートと、該2つのヨークプレートを接続する柱と、を有する、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも2つの磁石のそれぞれが、前記2つの磁石の間の空間に隣接した、内側を向いた表面を有する、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記アップデートすることが、
前記内側を向いた表面の一方または両方の表面形状を表す1つ以上のパラメータを修正することを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記内側を向いた表面の一方または両方の表面形状を表す可変パラメータが、前記磁石組立体の長手方向軸に沿った、前記内側を向いた表面上の各点の位置を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記可変パラメータが修正され、前記表面形状が軸対称に修正される、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記可変パラメータが修正され、前記表面形状が非軸対称に修正される、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記磁石組立体を特定するパラメータが、磁石の形状、磁石の寸法、磁性材料、および様々な許容可能な磁石組立体サイズの少なくとも1つを特定するパラメータを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項19】
少なくとも前記磁石の形状と前記磁石の寸法とが、前記修正の間、修正可能である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
少なくとも前記様々な許容可能な磁石組立体サイズが、前記修正の間、一定のままである、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記初期モデルにおいて、前記パラメータは、前記磁石の前記内側を向いた表面が平面状であることを特定し、前記修正の間、前記パラメータは修正され、前記磁石の前記内側を向いた表面の少なくとも1つが平面状でないことを特定する、請求項13に記載の方法。
【請求項22】
前記磁石組立体に加えて、前記イメージング・ボリューム内の前記磁場を許容できないほど不均一にする方法で前記イメージング・ボリューム内の前記磁場を乱すことができる1つ以上の物体を組み込んだ、アップデートされたモデルを生成することと、
前記アップデートされたモデルに基づいて、前記見積もること、前記計算すること、および前記アップデートすることを実行することと、
をさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項23】
前記磁石組立体に加えて、1つ以上の装置を組み込んだ、アップデートされたモデルを生成することであって、前記1つの以上の装置が、前記1つ以上の装置を許容できないように動作させる方法と、前記イメージング・ボリューム内の前記磁場を許容できないほどに不均一にする方法との少なくとも一方の方法で、前記イメージング・ボリューム内の前記磁場を乱すことと、前記イメージング・ボリューム内の前記磁場によって乱れることとの少なくとも一方が可能である、アップデートされたモデルを生成することと、
前記1つ以上の装置と前記磁場との干渉を減らすように、前記アップデートされたモデルに基づいて前記目標磁場を修正することと、
前記アップデートされたモデルに基づいて、前記見積もること、前記計算すること、および前記アップデートすることを実行することと、
をさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項24】
前記イメージング・ボリュームを修正することが、前記イメージング・ボリュームの形状を修正することを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記目標磁場を修正することが、不均一性の許容閾値を修正することを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記1つ以上の物体が線形加速器を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
前記目標磁場が、不均一の閾値レベルにあるか、該閾値レベルを下回っている、請求項8に記載の方法。
【請求項28】
前記偏差が、前記決定された磁場と前記目標磁場との均一性のレベル内での偏差である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記偏差を小さくするように前記モデルをアップデートすることが、前記磁場の軸対称の不均一性を小さくするように前記モデルをアップデートすることを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記偏差を小さくするように前記モデルをアップデートすることが、前記磁場の非軸対称の不均一性を小さくするように前記モデルをアップデートすることを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記見積もること、前記計算すること、および前記アップデートすることが、繰り返し実行される、請求項8に記載の方法。
【請求項32】
前記見積もること、前記計算すること、および前記アップデートすることが、閾値回数まで繰り返し実行される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記推定すること、前記計算すること、および前記アップデートすることが、前記偏差の大きさが閾値レベルを下回るまで繰り返し実行される、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記推定すること、前記計算すること、および前記アップデートすることが、連続した繰り返しの間の閾値量以上には前記偏差の大きさが変化しなくなるまで繰り返し実行される、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
前記ほぼ均一な磁場が、約10ppm以下の磁場不均一性を有する、請求項8に記載の方法。
【請求項36】
前記1つ以上の物体の少なくとも1つが、前記磁石の1つ以上に空けられた穴内に位置するように、前記モデルに導入される、請求項22に記載の方法。
【請求項37】
前記1つ以上の装置の少なくとも1つが、前記磁石の1つ以上に空けられた穴内に位置するように、前記モデルに導入される、請求項23に記載の方法。
【請求項38】
イメージング・ボリューム用の磁場を決定するための、コンピュータに読み込み可能なプログラムを備えたコンピュータに読み込み可能な媒体であって、前記コンピュータプログラムが、
磁石組立体の初期モデルを生成するコンピュータプログラムコードと、
前記モデルに基づいて、前記イメージング・ボリューム用の磁場を見積もるコンピュータプログラムコードと、
前記見積もられた磁場と前記イメージング・ボリューム用の目標磁場との間の偏差を計算するコンピュータプログラムコードと、
様々な磁場強度を生成し、該磁場強度が組み合わされて、前記イメージング・ボリューム内に前記目標磁場を実質的に生成するように、前記磁石組立体を修正することで前記偏差を小さくするように前記モデルをアップデートするコンピュータプログラムコードと、
を有する、コンピュータに読み込み可能な媒体。
【請求項39】
前記目標磁場が所望の不均一磁場である、請求項7に記載の方法。
【請求項40】
前記所望の不均一磁場が、予め定められた傾斜および方向を備えた不均一な磁場を有する、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
少なくとも2つの磁石であって、互いに一定の間隔を置いて配置され、それにより前記磁石同士の間に空間を形成する少なくとも2つの磁石を有し、前記磁石のそれぞれは、該磁石の、内側を向いた表面全域に様々な磁場強度を生成し、該磁場強度が組み合わされて、目標ボリューム内に目標磁場を生成する、
磁石組立体。
【請求項42】
前記少なくとも2つの磁石が互いに異なっている、請求項41に記載の磁石組立体。
【請求項43】
前記目標磁場が、前記目標ボリュームを通過する粒子ビームを曲げる、請求項41に記載の磁石組立体。
【請求項44】
前記目標磁場が所望の不均一磁場である、請求項41に記載の磁石組立体。
【請求項45】
前記所望の不均一磁場が、予め定められた傾斜および方向を備えた傾斜磁場を有する、請求項44に記載の磁石組立体。
【請求項46】
前記目標ボリュームがイメージング・ボリュームである、請求項45に記載の磁石組立体。
【請求項47】
目標ボリューム用の磁場を決定する方法であって、
磁石組立体の初期モデルを生成することと、
前記モデルに基づいて、前記目標ボリューム用の磁場を見積もることと、
前記見積もられた磁場と前記目標ボリューム用の目標磁場との間の偏差を計算することと、
様々な磁場強度を生成し、該磁場強度が組み合わされて、前記目標ボリューム内に前記目標磁場を実質的に生成するように、前記磁石組立体を修正することで前記偏差を小さくするように前記モデルをアップデートすることと、
を含む、目標ボリューム用の磁場を決定する方法。
【請求項48】
前記磁石組立体が、少なくとも2つの磁石であって、互いに一定の間隔を置いて配置され、それにより該少なくとも2つの磁石の間に空間を形成する少なくとも2つの磁石を有する、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記目標ボリュームが、前記少なくとも2つの磁石の間の前記空間によって囲まれている、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記初期モデルにおける前記少なくとも2つの磁石が互いに同じである、請求項48に記載の方法。
【請求項51】
前記アップデートされたモデルにおける前記少なくとも2つの磁石が互いに異なっている、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記アップデートされたモデルにおける前記少なくとも2つの磁石が互いに同じである、請求項50に記載の方法。
【請求項53】
前記目標磁場が、前記目標ボリュームを通過する粒子ビームを曲げるように決定されている、請求項48に記載の磁石組立体。
【請求項54】
前記目標磁場が所望の不均一磁場である、請求項41に記載の磁石組立体。
【請求項55】
前記所望の不均一磁場が、予め定められた傾斜および方向を備えた傾斜磁場を有する、請求項44に記載の磁石組立体。
【請求項56】
前記目標ボリュームがイメージング・ボリュームである、請求項55に記載の磁石組立体。
【請求項57】
前記目標ボリュームがイメージング・ボリュームである、請求項47に記載の磁石組立体。
【請求項58】
目標ボリューム用の磁場を決定するコンピュータプログラムを具体化する、コンピュータに読み込み可能な媒体であって、前記コンピュータプログラムが、
磁石組立体の初期モデルを生成するコンピュータプログラムコードと、
前記モデルに基づいて、前記目標ボリューム用の磁場を見積もるコンピュータプログラムコードと、
前記見積もられた磁場と前記目標ボリューム用の目標磁場との間の偏差を計算するコンピュータプログラムコードと、
様々な磁場強度を生成し、該磁場強度が組み合わされて前記目標ボリューム内に前記目標磁場を実質的に生成するように、前記磁石組立体を修正することで前記偏差を小さくするように前記モデルをアップデートするコンピュータプログラムコードと、
を有する、コンピュータに読み込み可能な媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2011−525389(P2011−525389A)
【公表日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−515033(P2011−515033)
【出願日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際出願番号】PCT/CA2009/000860
【国際公開番号】WO2009/155691
【国際公開日】平成21年12月30日(2009.12.30)
【出願人】(508117547)アルバータ ヘルス サービシズ (3)
【氏名又は名称原語表記】ALBERTA HEALTH SERVICES
【Fターム(参考)】