説明

神経学的障害を治療するための皮質全体に亘る高レベルの治療薬の分布方法

本発明は、神経学的障害の治療方法であって、対流強化送達により視床に治療薬を投与することを包含する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の引照)
本出願は、米国特許仮出願第61/148,302号(2009年1月29日出願)(この記載内容は参照により本明細書中に援用される)に対する優先権を主張する。
【0002】
(連邦政府の資金提供による研究開発の陳述)
本発明は、米国国立衛生研究所(NIH)により授与された助成金5R01NS56107−2下で政府援助でなされた。米国政府は、本発明に一定の権利を有する。
【0003】
本発明は、皮質に関与する神経学的障害の治療方法であって、皮質に治療薬を送達することを包含する方法に関する。
【背景技術】
【0004】
神経学的障害の有効な治療においては、罹患細胞集団への治療薬の送達に伴う問題が大きな妨げとなっていた。適切な送達は、皮質に関与する神経学的障害において特に問題をはらんでいる。
【0005】
例えば、皮質に関与する神経学的障害を治療するための遺伝子治療用ベクターの使用は、大部分が、罹患領域における十分数の皮質ニューロンにベクターを有効に送達することの物理的制約のために、依然として難題である。多重直接皮質注入が小動物脳においては有効であり得る(例えば、Vite et al.,Ann Neurol 57(3):355−364,2005;およびVite et al.,Gene Ther 10(22):1874−1881,2003)が、しかし脳組織の構造および容積は霊長類では増大するので、直接皮質注入により広範な皮質送達を達成することはほとんど不可能になる。特定の核の限局性標的化は定位的神経外科的注入により確実に達成され得るが、しかし霊長類大脳皮質の広範囲の渦巻き型配置はウイルスベクターの直接注入により容易に標的化されるわけではない。
【0006】
ウイルスベクターの軸索および経シナプス輸送、ならびに注入部位に対して遠位の部位でのベクターコード遺伝子の発現が報告されている。例えば、Aubourgら(米国特許2005/0032219)は、脳梁および脳橋への組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)の注入が、注入部位に連結される多数の部位、例えば前大脳皮質、嗅球、線条体、視床、視索核、下丘および脊髄での遺伝子発現を引き起こす、ということを開示している。さらに、Passiniら(米国特許2006/0171926)は、リソソーム蓄積症のマウスモデルにおける海馬への組換えAAVの注入が、対側性歯状回、CA3領域、内側中隔および内嗅皮質における遺伝子発現を引き起こす、ということを開示している。しかしながら、報告された齧歯類モデルの各々において、皮質のある領域における限定発現のみが認められ、霊長類の脳における意図された輸送経路と対応する経路との相関は依然として不明である。
【0007】
その結果として、ヒトの脳における広範な治療的分布を安全に達成するに際しての難しさが、大型皮質ドメインに衝撃を与える種々の神経学的障害、例えば外傷性脳損傷、卒中、酵素性機能不全障害および痴呆のための潜在的治療の開発を妨げてきた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
視床への治療薬の対流強化送達(CED)により、霊長類皮質内の治療薬の前例のない容積の分布が達成され得る、ということを本発明人らは見出した。本明細書中に開示される方法を用いて、治療薬の高レベルの且つ広範囲の皮質分布が、霊長類視床への1回投与の場合でさえ、達成され得る。その結果、神経学的障害、例えば外傷性脳損傷、卒中、酵素性機能不全障害、痴呆、および皮質の大きな領域に衝撃を与えるその他の神経学的障害は、CEDにより視床に治療的に接近可能である。CEDによる視床への送達は、皮質の多数の部位への直接且つ反復送達の必要をなくしたが、これは、多数の神経学的障害の治療を妨げていたものである。さらに、本発明の方法は、依然として機能的である順行性輸送を用いるが、一方、皮質ニューロンおよびそれにより助長される逆行輸送は多数の神経学的障害において危うくされ得る。さらに、治療薬は、視床送達により治療薬が供給される皮質ドメインと連結される第三の部位にさらに送達されて、従来の方法により治療され得る細胞集団および障害の範囲を増大し得る。
【0009】
本発明は軸索輸送に関するが、しかし本発明は、視床に適切な手段により送達される場合に、皮質に治療薬を運搬するための霊長類視床皮質投射の従来観察されていない並外れた能力に由来する。小実験室動物および非視床皮質経路における輸送現象の実証(例えば米国特許2006/0171926、米国特許2005/0032219)にもかかわらず、霊長類皮質の広範囲の領域に大量のウイルスベクターを順行送達し、大型皮質ドメイン中の配分の治療的関連容積を達成する霊長類視床皮質投射の本発明に開示される能力は、依然として不明である。さらに、本明細書中に詳述されるように、視床への治療用ベクターのCEDは、皮質における高レベルの発現および広範囲の分布を助長し、特定の神経学的障害を治療するための罹患皮質領域への直接的皮質送達の必要を無くす視床レベルを達成する必要があると思われる。
【0010】
したがって、一態様において、本発明は、「皮質性神経学的障害」と本明細書中で呼ばれる、皮質に関与する神経学的障害を治療するための方法を提供する。本方法は、CEDによる視床への治療薬の送達を包含する。
【0011】
選択される皮質性神経学的障害は、皮質の大領域、好ましくは、皮質の1つより多い機能領域、好ましくは皮質の1つより多い小葉、全皮質を含めて全皮質までを包含するものである。選択される皮質性神経学的障害としては、外傷性脳損傷;卒中;酵素性機能不全障害;精神疾患、例えば外傷後ストレス症候群;神経変性疾患、例えばハンチントン病、パーキンソン病およびアルツハイマー病;癲癇;ならびに認知障害、例えば痴呆、自閉症およびうつ病が挙げられるが、これらに限定されない。選択される酵素性機能不全障害としては、白質萎縮症、例えばカナバン病、ならびにリソソーム蓄積症(LSD)、例えばニーマン・ピック病、ゴーシェ病、バッテン病、ファブリー病およびポンペ病が挙げられるが、これらに限定されない。
【0012】
好ましい一実施形態では、皮質性神経学的障害は、それぞれ第一および第二視床核(この場合、視床核は異なる)から生じる視床皮質投射により神経支配される皮質ニューロンの少なくとも第一および第二の集団を伴う。
【0013】
好ましい一実施形態では、皮質性神経学的障害は、大脳皮質の1つより多い機能領域に関与する。
【0014】
好ましい一実施形態では、皮質性神経学的障害は、皮質の1つより多い小葉に関与する。
【0015】
一実施形態では、皮質性神経学的障害は、皮質に連結される第三のニューロン集団に関与する。
【0016】
好ましい一実施形態では、視床に送達される治療薬は、治療用核酸を含むウイルス粒子である。好ましい一実施形態では、ウイルス粒子は、AAV粒子である。好ましい一実施形態では、AAV粒子は、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8およびAAV9からなる群から選択される。
【0017】
好ましい一実施形態では、ウイルス粒子は、治療用タンパク質をコードする核酸を含む。一実施形態では、治療用タンパク質は酵素である。一実施形態では、治療用タンパク質は、増殖因子、例えばニューロトロフィン;ホルモン;免疫調節ペプチドおよびタンパク質、例えばサイトカイン;ならびに神経調節ペプチドからなる群から選択される。
【0018】
一実施形態では、皮質性神経学的障害は、A型ニーマン・ピック病であり、治療用タンパク質はヒト酸性スフィンゴミエリナーゼである。
【0019】
好ましい一実施形態では、コード化治療用タンパク質は、送達後少なくとも6ヶ月間、脳中で産生される。
【0020】
一実施形態では、視床に送達される治療薬は治療用タンパク質である。対象治療用タンパク質は、皮質への転位を可能にする。一実施形態では、治療用タンパク質は酵素である。一実施形態では、治療用タンパク質は、増殖因子、例えばニューロトロフィン;ホルモン;免疫調節ペプチドおよびタンパク質、例えばサイトカイン;ならびに神経調節ペプチドからなる群から選択される。
【0021】
一実施形態では、皮質性神経学的障害は、A型ニーマン・ピック病であり、治療用タンパク質はヒト酸性スフィンゴミエリナーゼである。
【0022】
一実施形態では、当該方法は、CEDによる視床への治療薬の1回注入を包含する。別の実施形態では、当該方法は、CEDによる視床への治療薬の1回より多い注入を包含する。
【0023】
好ましい一実施形態では、治療薬は、視床中の1つより多い位置に送達される。一実施形態では、治療薬は、1つより多いカニューレを用いて、1つより多い位置に送達される。
【0024】
好ましい一実施形態では、治療薬は、視床に両側的に送達される。
【0025】
好ましい一実施形態では、治療薬は対応する視床核に両側的に送達される。
【0026】
一実施形態では、当該方法はさらに、脳幹に治療薬を送達することを包含する。
【0027】
一実施形態では、CEDによる送達はステッピングを包含する。
【0028】
好ましい一実施形態では、トレーシング剤、好ましくはMRI造影増強剤が、治療薬注入液と同時送達されて、注入液の組織分布の実時間モニタリングを提供する。
【0029】
一態様では、本発明は、霊長類における皮質への治療薬の送達方法であって、CEDにより視床に治療薬を送達することを包含する方法を提供する。
【0030】
好ましい一実施形態では、治療薬は、視床中の1つより多い位置に送達される。一実施形態では、治療薬は、1つより多いカニューレを用いて、1つより多い位置に送達される。
【0031】
好ましい一実施形態では、治療薬は、それぞれ第一および第二視床核(この場合、視床核は異なる)から生じる視床皮質投射により神経支配される皮質ニューロンの少なくとも第一および第二の集団に送達される。
【0032】
好ましい一実施形態では、治療薬は、皮質の1つより多い機能領域に送達される。
【0033】
好ましい一実施形態では、治療薬は、皮質の1つより多い小葉に送達される。
【0034】
好ましい一実施形態では、治療薬は、治療用タンパク質をコードする核酸を含むウイルス粒子である。
【0035】
好ましい一実施形態では、ウイルス粒子はAAV粒子である。好ましい一実施形態では、AAV粒子は、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8およびAAV9からなる群から選択される。
【0036】
一実施形態では、治療薬はタンパク質である。
【0037】
好ましい一実施形態では、治療薬は、視床中の1つより多い位置に送達される。一実施形態では、治療薬は、1つより多いカニューレを用いて、1つより多い位置に送達される。
【0038】
好ましい一実施形態では、治療薬は、視床に両側的に送達される。
【0039】
好ましい一実施形態では、治療薬は対応する視床核に両側的に送達される。
【0040】
一実施形態では、当該方法はさらに、脳幹に治療薬を送達することを包含する。
【0041】
一実施形態では、CEDによる送達はステッピングを包含する。
【0042】
好ましい一実施形態では、トレーシング剤、好ましくはMRI造影増強剤が、治療薬注入液と同時送達されて、注入液の組織分布の実時間モニタリングを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】視床中へのAAV2−GDNF注入後のGDNFタンパク質の分布。(A)視床注入に対して同側の前頭前皮質においてIHC染色により検出されるGDNF発現。(B、C)多数の非錐体GDNF陽性ニューロンが皮質領域8の多重層全体で見出された。(D、G)帯状皮質、前運動皮質および側方前頭前皮質におけるGDNF IHC染色。(E、F、H、I)GDNFを発現する前運動皮質の第VおよびVI層(領域6)における錐体ニューロン。錐体ニューロン上の皮質層中で、強いGDNF免疫陽性染色が明白である。(J)注入視床における強GDNF陽性染色、ならびに体性感覚皮質(領域3)および運動皮質(領域4)における皮質性GDNF発現。(K、L)体性感覚皮質の第VおよびVI層におけるGDNF陽性ニューロン。AP:ブレグマからの前方/後方距離(mm)。尺度バー:500μm(B、E、H、K)、100μm(C、F、I、L)。
【図2】右視床中へのAAV2−GDNFの注入後のGDNF発現のレベル。(A〜F)視床および皮質の両方におけるGDNF分布の勾配を示すGDNF IHC染色切片の擬似カラー画像。青色は、DAB染色の最高強度を示し、赤色は最低強度を示す。パネルAおよびDの数字は、隣接組織ブロックから測定される脳の異なる領域におけるGDNFタンパク質(GDNF μg/総タンパク質1mg)のレベルを表す。(B、C、E、F)高倍率の皮質は、第III/IV層における高強度のGDNF染色、ならびに第V/VI層錐体ニューロンにおけるGDNFの高細胞質性存在を示す。AP:ブレグマからの前方/後方距離(mm)。尺度バー:10mm(A、D)、500μm(B、E)、100μm(C、F)。
【図3】左視床へのAAV2−GFPの注入後のGFPの皮質発現。個々のGFP免疫陽性ニューロンが、皮質の異なる領域内で見出された。(A、B)皮質錐体ニューロンは、優勢型のGFP陽性ニューロンであった。錐体形態を有さないニューロン、例えば(C)籠様ニューロンおよび(D)グリア様細胞も、皮質中に見出された。(E、F)広範囲のGFP陽性繊維網状構造も、前頭皮質中に見出された。尺度バー:500μm(A、E)、100μm(B、C)、50μm(D、F)。
【図4】図3に示した動物のAAV2−GFPのCED後の視床におけるGFP免疫染色。特定の視床核を形質導入し、これはGFPの対応する皮質送達を生じた。
【図5】CNS実質注入液送達のためのアレイCED構成成分。(A)頭蓋表面に配置された煙突式アレイ(B)を有するNHP脳を示すT2強調MR画像。これらの煙突式アレイは、CNS実質中への効率的注入液送達のための還流耐性ステップ式カニューレ(C)をしっかり挿入するために利用される。
【図6】NHP視床および脳幹における近実時間CEDの術中使用。MRI上の対比分界として可視化されるAAV2−hASM−HA/Gdの注入は、標的化領域におけるカニューレ先端配置を示す(A〜B;白色矢印)。逐次MR画像獲得で実証されるような時間の一関数としての注入液サイズの増大に留意。
【図7】視床(黒色記号)および脳幹(白色記号)におけるAAV2−hASM−HAとGdの同時注入。視床(黒丸、N=10;平均Vi:Vd比 3.86[SEM±0.25])および脳幹(白丸、N=6;平均Vi:Vd比 3.3[SEM±0.17])中への種々の量の注入液の1回送達。Vi対Vd間の線形関係(全体、N=16、R2=0.93)。視床と比較して、脳幹領域に送達されたViの方が高い。これら2つの領域における比の間に有意差は認められなかった(P>0.05)。
【図8】反復視床および脳幹注入のVi対Vd比較。Gdのみ注入中の初期Vi:Vd送達パラメーター(中黒四角、N=5;平均Vi:Vd比3.74[SEM±0.25]、R2=0.96)を、後に、AAV2−hASM−HA/Gdからなる注入(中白四角、N=5;平均Vi:Vd比3.72[SEM±0.24]、R2=0.98)で再現した。治療薬を用いた場合または用いなかった場合の連続注入で、一貫した分布パターンが観察されたことに留意(全体、N=10、R2=0.96)。一次および二次注入間に有意差は認められなかった(P>0.05)。
【図9】視床および脳幹におけるhASMおよびHA染色の同時局在性。視床(A〜C;左側、hASM[0.652cm2]およびHA[0.616cm2];右側、hASM[0.303cm2]およびHA[0.277cm2])ならびに脳幹(D〜F;hASM[0.817cm2]およびHA[0.790cm2])注入領域におけるhASMまたはHAエピトープに関して染色された類似の免疫反応性領域。黒線と白線の重なりは、各注入に関して測定された代表的な領域を表すことに留意(黒線=抗hASM;白線=抗HA)。
【図10】視床および脳幹におけるAAV注入および形質導入。視床および脳幹注入を表すDICOM MR画像(AおよびE)、ならびに対応するMRIと解剖学的に整合する免疫染色脳(BおよびF)。高倍率画像は、各標的化領域(C−DおよびG−H)における有意のニューロン形質導入(HA発現)を含有する注入中心点を実証する。
【図11】hASM−HAの皮質発現。(A)視床への直接注入液送達は、前頭前葉皮質領域中への治療薬の広範な分布を明示した。(B)高倍率画像は、皮質ニューロンのAAV形質導入を示す(HA陽性)。
【発明を実施するための形態】
【0044】
「皮質性神経学的障害」は、本明細書中で用いる場合、皮質に関与する神経学的障害を指す。皮質性神経学的障害は、(i)視床に直接、解剖学的に連結される皮質中の細胞の一集団に関与し、および/または(ii)(i)中の皮質細胞集団と直接、解剖学的に連結される細胞の一集団に関与する神経学的障害である。選択される皮質性神経学的障害は、皮質の大領域、好ましくは皮質の1つより多い機能的領域、好ましくは皮質の1つより多い小葉に、そして全皮質まで(全皮質を含む)に関与するものである。選択される皮質性神経学的障害としては、外傷性脳損傷;卒中;酵素性機能不全障害;精神医学的障害、例えば外傷後ストレス症候群;神経変性疾患、例えばハンチントン病、パーキンソン病およびアルツハイマー病;癲癇;ならびに認知障害、例えば痴呆、自閉症およびうつ病が挙げられるが、これらに限定されない。選択される酵素性機能不全障害としては、例えば白質萎縮症、例えばカナバン病、ならびにリソソーム蓄積症(LSD)、例えばニーマン・ピック病、ゴーシェ病、バッテン病、ファブリー病およびポンペ病が挙げられるが、これらに限定されない。障害のこの一覧は、例示的であって、限定的ではない。皮質性病態および神経解剖学的結合性に基づいた本発明による治療にどの神経学的障害が適しているかは、当業者には合理的に明らかになるであろう。
【0045】
「皮質」は、本明細書中で用いる場合、大脳皮質を指す。
【0046】
投与方法
本発明は、視床への治療薬の直接送達に関する。送達は、患者における治療薬の有効輸送を達成するために、対流強化送達(CED)により実行される。「患者」、「被験者」および「個体」という用語は、本明細書中では互換的に用いられ、そして大型哺乳類、好ましくは霊長類、最も好ましくはヒトを指す。「患者」は、齧歯類のような小型哺乳類を含まない。
【0047】
「CED」とは、0.5μL/分より大きい速度での注入を意味する。CEDは、好ましくは、適切なカテーテルまたはカニューレ、好ましくはステップ式無還流カニューレを用いて実行される。当該方法は、標的視床組織に少なくとも近接してカニューレの先端を配置することを包含し、好ましくは先端は、視床中に挿入される。カニューレが配置された後、それは、カニューレ先端を通して標的視床組織に治療薬を送達するポンプに連結される。カニューレの先端からの圧力勾配は、注入の間、維持される。術中MRI(iMRI)、ならびに注入をモニタリングするためのトレーシング剤の使用は、非常に好ましい。
【0048】
標的視床集団に「近位の」とは、標的集団の有効距離内を意味する。特に、標的視床組織に対応したカニューレの配置に関して、近位は、CEDにより送達した場合に、注入液が標的組織に到達するような距離を指す。
【0049】
好ましい一実施形態では、CEDは、0.5μL/分および10μL/分の間の注入速度を包含する。
【0050】
好ましい一実施形態では、CEDは、約0.5μL/分より大きい、さらに好ましくは約0.7μL/分より大きい、さらに好ましくは約1μL/分より大きい、さらに好ましくは約1.2μL/分より大きい、さらに好ましくは約1.5μL/分より大きい、さらに好ましくは約1.7μL/分より大きい、さらに好ましくは約2μL/分より大きい、さらに好ましくは約2.2μL/分より大きい、さらに好ましくは約2.5μL/分より大きい、さらに好ましくは約2.7μL/分より大きい、さらに好ましくは約3μL/分より大きい、ならびに好ましくは約25μL/分未満、さらに好ましくは20μL/分未満、さらに好ましくは約15μL/分未満、さらに好ましくは約12μL/分未満、さらに好ましくは約10μL/分未満の注入速度を包含する。
【0051】
好ましい一実施形態では、CEDは、送達中、「ステッピング」と呼ばれる流量の増分的増加を含む。好ましくはステッピングは、0.5μL/分〜10μL/分の注入速度を包含する。
【0052】
好ましい一実施形態では、ステッピングは、約0.5μL/分より大きい、さらに好ましくは約0.7μL/分より大きい、さらに好ましくは約1μL/分より大きい、さらに好ましくは約1.2μL/分より大きい、さらに好ましくは約1.5μL/分より大きい、さらに好ましくは約1.7μL/分より大きい、さらに好ましくは約2μL/分より大きい、さらに好ましくは約2.2μL/分より大きい、さらに好ましくは約2.5μL/分より大きい、さらに好ましくは約2.7μL/分より大きい、さらに好ましくは約3μL/分より大きい、ならびに好ましくは約25μL/分未満、さらに好ましくは20μL/分未満、さらに好ましくは約15μL/分未満、さらに好ましくは約12μL/分未満、さらに好ましくは約10μL/分未満の注入速度を包含する。
【0053】
好ましい一実施形態では、ステップ式無還流カニューレは、カニューレを通して標的組織に制御速度で注入液を流すのに十分な圧力を生じるポンプと接合される。頭蓋内圧が脳組織を損傷しないよう適切なレベルに保持されるよう、任意の適切な流量が用いられ得る。1つより多いカニューレが用いられ得るが、しかし単一カニューレが好ましい。
【0054】
送達は、治療されている皮質性神経学的障害にならびに患者応答に適している場合、1回以上実行され、これは当業者により容易に決定可能である。
【0055】
一実施形態では、浸透は、促進剤の使用によりさらに増大される。促進剤は、標的組織への注入液の送達をさらに促し得る。送達される治療薬が治療用タンパク質である場合、促進剤は特に好ましい。特に好ましいのは、低分子量ヘパリンである。例えば、USSN11/740,124(2007年4月25日出願)(この記載内容は参照により本明細書中に組み込まれる)を参照。
【0056】
非常に好ましい実施形態では、トレーシング剤、好ましくはMRI造影増強剤は、治療薬注入液と同時送達されて、注入液の組織分布の実時間モニタリングを提供する。例えば、Fiandaca et al.,NeuroImage,2008 Nov 27(印刷に先立ち電子出版)参照。例えば、USSN11/740,508(2007年4月26日出願)ならびにUSSN11/740,124(2007年4月25日出願)(これらの記載内容は参照により本明細書中に組み込まれる)参照。トレーシング剤の使用は、送達の休止を知らせ得る。当該技術分野で既知のその他のトレーシングおよび画像形成手段も、注入液分布を追跡調査するために用いられ得る。
【0057】
任意の適切な量の注入液が、このようにして投与され得る。適切な量は、過剰の望ましくない副作用を引き起こすことなく治療的に有効である量である。ウイルス粒子注入液に関しては、適切な量は、力価、感染力、標的組織の容積、活性作用物質の性質、ならびに当業者に認知されている付加的因子に依るであろう。Vi:Vd比は、好ましくは少なくとも1:1である。
【0058】
CEDの方法に関するさらなる教示に関しては、例えばSaito et al.,Exp.Neurol.,196:381−389,2005;Krauze et al.,Exp.Neurol.,196:104−111,2005;Krauze et al.,Brain Res.Protocol.,16:20−26,2005;米国特許出願公開番号2006/0073101;および米国特許第5,720,720号(これらの記載内容は各々、参照により本明細書中み組み込まれる)参照。Noble et al.,Cancer Res.Mar.1,2006;66(5):2801−6;Saito et al.,J Neurosci Methods.Jun.30,2006;154(1−2):225−32;Hadaczek et al.,Hum Gene Ther.March 2006;17(3):291−302;およびHadaczek et al.,Mol Ther.July 2006;14(1):69−78(これらの記載内容は各々、参照により本明細書中に組み込まれる)も参照されたい。
【0059】
USSN11/740,548(2007年4月26日出願)(この記載内容は参照により本明細書中に組み込まれる)も参照。米国特許第6,953,575号(この記載内容は参照により本明細書中に組み込まれる)も参照されたい。
【0060】
非常に好ましい一実施形態では、CEDの方法は、CED対応無還流ステップ式カニューレを用いて実行される。このような非常に好ましいカニューレは、Krauze et al.,J Neurosurg.November 2005;103(5):923−9(この記載内容は参照により本明細書中に組み込まれる)に、ならびに米国特許出願公開番号US2006/0135945 A1(この記載内容は参照により本明細書中に組み込まれる)および米国特許出願公開番号US2007/0088295 A1(この記載内容は参照により本明細書中に組み込まれる)に開示されている。さらに、本発明に用いるための好ましいカニューレに関しては、PCT/US08/64011を参照されたい。
【0061】
本発明に用いるためのポンプ系の例としては、米国特許第7,351,239号;第7,341,577号;第6,042,579号;第5,735,815号および第4,692,147号に記載された埋め込み可能な系が挙げられる。
【0062】
本発明の治療方法は、任意に、皮質性神経学的障害の存在の1つ以上の術前診断確定を包含する。実行される診断確定としては、好ましくは神経学画像診断が挙げられる。一実施形態では、診断確定は、遺伝子検査を包含する。当該方法は、好ましくは、標的化視床集団の位置を定位的に限定するための術前画像診断も包含する。
【0063】
好ましい一実施形態では、当該方法は、付加的に、カニューレ位置決めをモニタリングするために、投与中の画像診断を包含する。一実施形態では、当該方法は、神経ナビゲーション系の使用を包含する(例えば米国特許出願公開番号2002/0095081(この記載内容は参照により本明細書中に組み込まれる)参照)。
【0064】
一態様では、本発明は、CEDにより送達される場合、注入液分布の画像ベースのモニタリングから得られるデータの編集方法を提供する。データとしては、注入液の容積、分布の容積、神経解剖学的分布、遺伝子データ、注入パラメーター、カニューレパラメーターおよびカニューレ配置データが挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態では、本発明は、このようなデータを含むデータベースを提供する。一実施形態では、データベースは、皮質性神経学的障害を有する患者のCNSにおける注入液の分布を説明するアルゴリズムを引き出すために有用であり、治療的送達をモデル化するために用いられ得る。
【0065】
本発明の治療薬の組合せが本明細書中の方法に用いられ得る、と考えられる。例えば、1つより多い型のウイルス粒子が用いられ、ウイルス粒子注入液は有効量の第二治療薬とともに併用療法で投与され得る、と意図される。第二治療薬は、視床に送達されることもされないこともある。
【0066】
治療薬が送達される特定の視床核は、治療されている皮質性神経学的障害に依っている。皮質集団が任意の所定の皮質性神経学的障害において罹患し、当該技術分野における神経解剖学的知識に基づいて視床核が標的にされるべきである、ということは当業者には明らかである。例えば、McFarland et al.,J.Neurosci.,22:8117−8132,2002(この記載内容は参照により本明細書中に組み込まれる)参照。好ましい一実施形態では、治療薬は複数の視床核に送達される。このような送達は、1つ以上の注入カニューレを用いて実行され得る。相対的により多くの異なる皮質領域、および/またはこのような相対的に多くの異なる皮質範囲を神経支配する第三のCNS集団に関与する障害に関しては、特に治療薬が標的皮質範囲の外の皮質領域に望ましくない作用を及ぼし得る場合には、治療薬は標的皮質範囲を神経支配する1つ以上の選択視床核に送達され、それにより所望の皮質範囲への皮質分布を制限する。
【0067】
一実施形態では、当該方法は、単一視床位置への治療薬の投与を包含する。別の実施形態では、当該方法は、1つより多い視床位置への治療薬の投与を包含する。一実施形態では、当該方法は、両側的に治療薬を投与することを包含する。好ましい一実施形態では、当該方法は、対応する視床核に両側的に治療薬を投与することを包含する。
【0068】
皮質の罹患領域に突出する任意の視床核は、治療されている皮質性神経学的障害に適している場合、送達のために標的化され得る。好ましい一実施形態では、当該方法は、前核群、背内側、腹側、前腹側、腹外側、後外側腹側、後内側腹側、外側核群、正中核群、視床枕、外側または内側膝状核からなる群から選択される1つ以上の視床核への治療薬の送達を包含する。
【0069】
一実施形態では、当該方法はさらに、脳幹への治療薬の投与を包含する。この実施形態は、皮質の神経学的障害がさらに脳幹に関与する場合、特に好ましい。例えば、脳幹への治療薬の付加的投与は、多数の皮質性神経学的障害、例えばリソソーム蓄積症の呼吸局面の治療のために望ましい。
【0070】
視床送達のための治療用タンパク質
視床に送達され得る治療用タンパク質は、皮質への転位が可能である。一実施形態では、治療用タンパク質は酵素である。一実施形態では、治療用タンパク質は、増殖因子、例えばニューロトロフィン;ホルモン;免疫調節ペプチドおよびタンパク質、例えばサイトカイン;ならびに神経調節ペプチドからなる群から選択される。
【0071】
好ましい一実施形態では、本発明の治療用タンパク質は、NGF、BDNF、NT−3、NT−4/5、NT−6、GDNF、CNTF、LIF、IGF−1、b−FGF、ニュールツリン、ペルセフィン、アルテミン、TGFα、TGFβ、IGF−2、PDGF、EGF、カルジオトロピン、EGF、IGF、VEGF、ソニックヘッジホッグ(SHH)、BMP、FGF20、VIP、PDGF、プレイオトロフィン(PTN)およびHGFからなる群から選択される。
【0072】
治療用タンパク質誘導体、例えば増殖因子誘導体は、治療用タンパク質に含まれる。
【0073】
治療用タンパク質のさらなる考察に関しては、例えばUSSN11/740,124(2007年4月25日出願)(この記載内容は参照により本明細書中に組み込まれる)を参照。視床に送達される治療用タンパク質としては、下記のような治療用核酸によりコードされるタンパク質が挙げられるが、この場合、治療用タンパク質は皮質への転位を可能にする。
【0074】
ウイルス粒子および遺伝子導入
一実施形態では、本発明の方法は、治療用タンパク質をコードする核酸を含むウイルス粒子による視床ニューロンの形質導入、視床ニューロンにおける治療用タンパク質の発現、ならびに皮質への治療用タンパク質の順行性輸送を包含する。
【0075】
一実施形態では、本発明の方法は、皮質中のニューロンへ、治療用タンパク質をコードする核酸を含むウイルス粒子の順行性転位、皮質ニューロンの形質導入、ならびに皮質ニューロンにおける治療用タンパク質の発現を包含する。
【0076】
一実施形態では、本発明の方法は、治療用タンパク質をコードする核酸を含む第一ウイルス粒子による視床ニューロンの形質導入、視床ニューロンにおける治療用タンパク質の発現、および皮質への治療用タンパク質の順行性輸送、ならびに皮質中のニューロンへの治療用タンパク質をコードする核酸を含む第二ウイルス粒子の順行性転位、皮質ニューロンの形質導入、および皮質ニューロンにおける治療用タンパク質の発現を包含する。
【0077】
一実施形態では、当該方法はさらに、視床から治療薬を受容する皮質ニューロンが位置する皮質の領域と連結された第三のニューロン集団へのウイルス粒子および/または治療用タンパク質の転位を包含する。第三の部位は、対象視床核に直接連結されない終脳中の位置であり得る。特に好ましい実施形態では、第三部位は前脳基底核である。このような方法は、アルツハイマー病の治療のために非常に好ましい。
【0078】
治療用核酸を保有し、そして治療薬(例えばコード化治療用タンパク質)が産生されるよう視床および/または皮質ニューロンを形質導入し得る任意のウイルス粒子が、本発明に用いられ得る。ウイルスが、皮質ニューロン中で治療薬を産生し得るが視床ニューロン中では産生し得ない場合、ウイルスは転位が可能でなければならない。ウイルスが視床ニューロン中で治療薬を産生し得るが皮質ニューロン中では産生し得ない場合、治療薬は皮質への転位が可能でなければならない。
【0079】
本発明に用いるための好ましいウイルス粒子は、視床から皮質への転位が可能であるものである。
【0080】
アデノ随伴ウイルス(AAV)は、好ましいウイルス粒子に含まれる。AAV1〜11は、ハイブリッドとして含まれる(例えば、Choi et al.,“AAV Hybrid Serotypes:Improved Vectors for Gene Delivery”,Curr Gene Ther. 2005 June;5(3):299−310参照)。好ましいAAVとしては、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8およびAAV9が挙げられるが、これらに限定されない。特に好ましいのは、AAV2である。本明細書中で用いる場合、「AAV」は、組換えAAV(すなわち、治療用核酸を保有するよう工学処理されたもの)、ならびにネイティブAAVを指す。組換えAAVは、「rAAV」としても、本明細書中で言及される。
【0081】
「遺伝子導入」または「遺伝子送達」は、宿主細胞中に外来DNAを確実に挿入するための方法または系を指す。このような方法は、非組込み導入DNAの一過性発現、染色体外複製および導入レプリコン(例えばエピソーム)、または宿主細胞のゲノムDNA中への導入遺伝物質の組込みを生じ得る。哺乳類細胞中への遺伝子導入のために、多数の系が開発されてきた。例えば、米国特許第5,399,346号(この記載内容は参照により本明細書中に組み込まれる)参照。
【0082】
「ベクター」とは、適正な制御因子と関連する場合に複製可能である、そして細胞間で遺伝子配列を導入し得る、任意の遺伝因子、例えばプラスミド、ファージ、トランスポゾン、コスミド、染色体、ウイルス、ビリオン等を意味する。したがって、本用語は、クローニングおよび発現ビヒクル、ならびにウイルスベクターを包含する。
【0083】
「組換えウイルス」とは、例えば、当該粒子中への非相同核酸構築物の付加または挿入により、遺伝的に変更されたウイルスを意味する。
【0084】
「AAVビリオン」または「AAV粒子」とは、完全ウイルス粒子、例えば野生型(wt)AAVウイルス粒子(AAVキャプシドタンパク質外被と関連した線状一本鎖AAV核酸ゲノムを含む)、または組換えAAV粒子を意味する。この点で、相補的センス、例えば「センス」または「アンチセンス」鎖の一本鎖AAV核酸分子は、任意の一つのAAVビリオン中に包装され得るし、両方の鎖は等しく感染性である。
【0085】
時として「rAAVビリオン」または「rAAV粒子」として言及される「組換えAAVビリオン」は、好ましくは、AAV ITRが両側に隣接する当該非相同ヌクレオチド配列にキャプシド形成するAAVタンパク質殻からなる感染性複製欠陥ウイルスである。rAAVビリオンは、それに導入されたAAVベクター、AAVヘルパー機能および補助機能を有した適切な宿主細胞中で産生され得る。このように、宿主細胞は、その後の遺伝子送達のために感染性組換えビリオン粒子中にAAVベクター(当該組換えヌクレオチド配列を含有する)を包装する必要があるAAVポリペプチドをコードし得るようにされる。
【0086】
「トランスフェクション」または「形質導入」という用語は、細胞による外来DNAの取込みに言及するために用いられ、細胞は、外因性DNAが細胞膜の内側に導入された場合、「トランスフェクト」され、または「形質導入」された。多数のトランスフェクション技法は、一般的に、当該技術分野で既知である。例えば、Graham et al.(1973)Virology,52:456、Sambrook et al.(1989)Molecular Cloning,a laboratory manual,Cold Spring Harbor Laboratories,New York、Davis et al. (1986)Basic Methods in Molecular Biology,ElsevierおよびChu et al.(1981)Gene 13:197を参照。このような技法を用いて、1つ以上の外因性DNA分子、例えばヌクレオチド組込みベクターおよび他の核酸分子を、適切な宿主細胞中に導入し得る。
【0087】
「宿主細胞」という用語は、例えばAAVヘルパー構築物、AAVベクタープラスミド、補助機能ベクターまたは他の導入DNAの受容体として用いられ得るかまたは用いられてきた微生物、酵母細胞、昆虫細胞および哺乳類細胞を意味する。本用語は、トランスフェクトされた元の細胞の子孫を含む。したがって、「宿主細胞」は、本明細書中で用いる場合、一般的に、外因性DNA配列でトランスフェクトされた細胞を指す。天然の、偶発的または計画的な突然変異のため、単一親細胞の子孫は、形態が、あるいはゲノムまたは総DNA相補体が元の親と必ずしも完全に同一であるというわけではない、と理解される。
【0088】
本明細書中で用いる場合、「細胞株」という用語は、in vitroで連続または長期増殖および分裂が可能である細胞の集団を指す。しばしば、細胞株は、単一前駆細胞由来のクローン集団である。さらに、このようなクローン集団の保存または導入中に、核型において自発的なまたは誘導された変化が起こり得る、ということは当該技術分野で既知である。したがって、言及される細胞株に由来する細胞は、先祖細胞または培養と精確に同一であるというわけではなく、言及される細胞株は、このような変異体を含む。
【0089】
「非相同」という用語は、それが、コード配列および制御配列のような核酸配列に関する場合、常態では一緒に接合されない、および/または常態では特定細胞と関連しない配列を意味する。したがって、核酸構築物またはベクターの「非相同」領域は、事実上、他の分子と関連して見出されない別の核酸分子内またはそれと結合される核酸のセグメントである。例えば、核酸構築物の非相同領域は、事実上、コード配列と関連して見出されない配列が隣接するコード配列を含み得る。非相同コード配列の別の例は、コード配列それ自体が事実上見出されない構築物である(例えば、ネイティブ遺伝子と異なるコドンを有する合成配列)。同様に、細胞中に常態では存在しない構築物で形質転換された細胞は、本発明の目的のために非相同であると考えられる。対立遺伝子変異または天然突然変異事象は、本明細書中で用いられるような非相同DNAを生じない。
【0090】
「コード配列」または特定タンパク質を「コードする」配列は、適切な調節配列の制御下に置かれた場合、in vitroまたはin vivoでポリペプチドに転写され(DNAの場合)、翻訳される(mRNAの場合)核酸配列である。コード配列の境界は、5’(アミノ)末端の開始コドンならびに3’(カルボキシ)末端の翻訳停止コドンにより確定される。コード配列としては、原核生物または真核生物mRNAからのcDNA、原核生物または真核生物DNAからのゲノムDNA配列、ならびに合成DNA配列も挙げられるが、これらに限定されない。転写終止配列は、通常は、コード配列に対して3’に配置される。
【0091】
「核酸」配列は、DNAまたはRNA配列を指す。本用語は、DNAおよびRNAの既知の塩基類似体、例えば4−アセチルシトシン、8−ヒドロキシ−N6−メチルアデノシン、アジリジニルシトシン、シュードイソシトシン、5−(カルボキシヒドロキシルメチル)ウラシル、5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、5カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、イノシン、N6−イソペンテニルアデニン、1−メチルアデニン、1−メチルシュードウラシル、1−メチルグアニン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアニン、2−メチルアデニン、2−メチルグアニン、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、N6−メチルアデニン、7−メチルグアニン、5−メチルアミノメチルウラシル、5−メトキシアミノメチル−2−チオウラシル、ベータ−D−マンノシルクエオシン、5’−メトキシカルボニルメチルウラシル、5−メトキシウラシル、2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデニン、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸、オキシブトキソシン、シュードウラシル、クエオシン、2−チオシトシン、5−メチル−2−チオウラシル、2−チオウラシル、4−チオウラシル、5−メチルウラシル、N−ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸、シュードウラシル、クエオシン、2−チオシトシンおよび2,6−ジアミノプリン(これらに限定されない)のいずれかを含む配列を取り込む。
【0092】
DNA「制御配列」という用語は、プロモーター配列、ポリアデニル化シグナル、転写終止配列、上流調節ドメイン、複製の起点、配列内リボソーム進入部位(「IRES」)、エンハンサー等(これらに限定されない)を含み、これらは、受容体細胞中のコード配列の複製、転写および翻訳を集合的に提示する。選択コード配列が適切な宿主細胞中で複製され、転写され、翻訳され得る限り、これらの制御配列の全てが常に存在する必要はない。
【0093】
「プロモーター領域」という用語は、DNA調節配列を含むヌクレオチド領域を指すために本明細書中ではその普通の意味で用いられ、その場合、調節配列は、RNAポリメラーゼを結合し、下流(3’方向)コード配列の転写を開始し得る遺伝子に由来する。
【0094】
「操作可能的に連結される」とは、そのように記載される構成成分がそれらの通常の機能を実施するよう設定される因子の整列を指す。したがって、コード配列と操作可能的に連結される制御配列は、コード配列の発現を実行し得る。制御配列は、それらがその発現を指図するよう機能する限り、コード配列と連続している必要はない。したがって、例えば、介在する非翻訳化且つ転写化配列はプロモーター配列とコード配列間に存在し得るし、プロモーター配列は、依然として、コード配列と「操作可能的に連結される」と考えられ得る。
【0095】
「単離される」とは、ヌクレオチド配列に言及する場合、同一型の他の生物学的高分子の実質的非存在下で、指示された分子が存在する、ということを意味する。したがって、「特定ポリペプチドをコードする単離核酸分子」は、対象ポリペプチドをコードしない他の核酸分子を実質的に有さない核酸分子を指す;しかしながら、その分子は、組成物の塩基性特質に悪影響を及ぼさないいくつかの付加的塩基または部分を含み得る。
【0096】
本出願全体を通して特定の核酸分子中のヌクレオチド配列の相対的位置を記載する目的のために、例えば、特定のヌクレオチド配列が、別の配列に対比して「上流」、「下流」、「3’」または「5’」に置かれていると記載される場合、それは、当該技術分野で慣用的である、言及されているDNA分子の「センス」または「コード」鎖中の配列の位置である、と理解されるべきである。
【0097】
「遺伝子」は、転写または翻訳された後に特定のポリペプチドまたはタンパク質をコードし得る少なくとも1つのオープン・リーディング・フレームを含有するポリヌクレオチドを指す。本明細書中に記載されるポリヌクレオチド配列のいずれかを用いて、それらが関連する遺伝子のより大きな断片または全長コード配列を同定し得る。大型断片配列の単離方法は、当業者に既知である。
【0098】
2つの核酸断片は、本明細書中に記載されるように、「選択的にハイブリダイズする」と考えられる。2つの核酸分子間の配列同一性の程度は、このような分子間のハイブリダイゼーション事象の効率および強度に影響を及ぼす。部分的に同一である核酸配列は、完全に同一の配列が標的分子とハイブリダイズするのを少なくとも部分的に阻止する。完全同一配列のハイブリダイゼーションの阻止は、当該技術分野で周知のハイブリダイゼーション検定(例えばサザンブロット、ノーザンブロット、溶液ハイブリダイゼーション等、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Second Edition,(1989)Cold Spring Harbor N.Y.参照)を用いて査定され得る。このような検定は、種々の程度の選択度を用いて、例えば低緊縮から高緊縮まで変わる条件を用いて、実行され得る。低緊縮条件が用いられる場合、非特異的結合の非存在は、非特異的結合事象の非存在下で、二次プローブが標的とハイブリダイズしないよう、一部程度の配列同一性をさえ欠く二次プローブ(例えば、標的分子と約30%未満の配列同一性を有するプローブ)を用いて査定され得る。
【0099】
ハイブリダイゼーションを基礎にした検出系を利用する場合、標的核酸配列と相補的である核酸プローブが選択され、次いで、適切な条件の選択により、プローブおよび標的配列は「選択的にハイブリダイズする」か、または互いに結合して、ハイブリッド分子を形成する。「中等度の緊縮」条件下で標的配列と選択的にハイブリダイズし得る核酸分子は、典型的には、選択核酸プローブの配列と少なくとも約70%の配列同一性を有する少なくとも約10〜14ヌクレオチド長の標的核酸配列の検出を可能にする条件下でハイブリダイズする。緊縮ハイブリダイゼーション条件は、典型的には、選択核酸プローブの配列と約90〜95%より大きい配列同一性を有する少なくとも約10〜14ヌクレオチド長の標的核酸配列の検出を可能にする。プローブおよび標的が特定程度の配列同一性を有するプローブ/標的ハイブリダイゼーションのために有用なハイブリダイゼーション条件は、当該技術分野で既知であるように確定され得る(例えば、Nucleic Acid Hybridization:A Practical Approach,editors B.D.Hames and S.J.Higgins,(1985)Oxford;Washington,DC;IRL Press参照)。
【0100】
ハイブリダイゼーションのための緊縮条件に関しては、例えば以下の因子を変えることにより、特定の緊縮性を確立するために多数の等価の条件が用いられ得る、ということが当該技術分野で周知である:プローブおよび標的配列の長さおよび性質、種々の配列の塩基組成、塩および他のハイブリダイゼーション溶液構成成分の濃度、ハイブリダイゼーション溶液中の遮断薬(例えば、ホルムアミド、硫酸デキストランおよびポリエチレングリコール)の存在または非存在、ハイブリダイゼーション反応の温度および時間パラメーター、ならびに種々の洗浄条件。特定組のハイブリダイゼーション条件の選択は、当該技術分野における標準方法に従って選択される(例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning: A Laboratory Manual,Second Edition,(1989)Cold Spring Harbor N.Y.参照)。
【0101】
核酸およびアミノ酸の「配列同一性」または「相同性」を確定するための技法も、当該技術分野で既知である。典型的には、このような技法は、遺伝子に関するmRNAのヌクレオチド配列を決定すること、および/またはそれによりコードされるアミノ酸配列を決定すること、そしてこれらの配列を第二のヌクレオチドまたはアミノ酸配列と比較することを包含する。概して、「同一性」は、2つのポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列の、それぞれ、正確なヌクレオチド対ヌクレオチドまたはアミノ酸対アミノ酸対応を指す。それらの「同一性パーセント」を決定することにより、2つ以上の配列(ポリヌクレオチドまたはアミノ酸)が比較され得る。2つの配列の同一性パーセントは、核酸配列であれ、アミノ酸配列であれ、2つの整列された配列間の正確な整合数を短い方の配列の長さで割って、100を掛けた値である。核酸配列に関する近似のアラインメントは、Smith and Waterman, Advances in Applied Mathematics 2:482−489(1981)の局所的相同性アルゴリズムにより提供される。このアルゴリズムは、Dayhoff,Atlas of Protein Sequences and Structure,M.O.Dayhoff ed.,5 suppl.3:353−358,National Biomedical Research Foundation,Washington,D.C.,USAにより開発され、そしてGribskov,Nucl.Acids Res.14(6):6745−6763(1986)により正規化されたスコア行列を用いることにより、アミノ酸配列に適用され得る。配列の同一性パーセントを確定するためのこのアルゴリズムの実行例は、「BestFit」実用出願においてGenetics Computer Group (Madison,Wis.)により提供されている。この方法のためのデフォルトパラメーターは、Wisconsin Sequence Analysis Package Program Manual,Version 8 (1995)(Genetics Computer Group,Madison,Wis.から入手可能)に記載されている。本発明の状況において同一性パーセントを確立する好ましい方法は、University of Edinburghにより著作権取得され、John F. Collins and Shane S.Sturrokにより開発され、そしてIntelliGenetics, Inc.(Mountain View,Calif.)により配給されたプログラムのMPSRCHパッケージを用いることである。この一揃いのパッケージから、スミス・ウォーターマンアルゴリズムが用いられ得るが、この場合、スコア表のためにデフォルトパラメーターが用いられる(例えば、ギャップ開始ペナルティー12、ギャップ伸長ペナルティー1およびギャップ6)。得られたデータから、「整合」値は「配列同一性」を反映する。配列間の同一性または類似性パーセントを算定するための他の適切な方法は、一般的に当該技術分野で既知であり、例えば別のアラインメントプログラムは、デフォルトパラメーターとともに用いられるBLASTである。例えば、BLASTNおよびBLASTPは、以下のデフォルトパラメーターを用いて用いられ得る:遺伝暗号=標準;フィルター=なし;鎖=両方;カットオフ=60;期待値=10;マトリックス=BLOSUM62;Description=50配列;ソート=HIGH SCORE;データベース=非冗長、GenBank+EMBL+DDBJ+PDB+GenBank CDS translations+Swiss protein+Spupdate+PIR。これらのプログラムの詳細は、以下のインターネットアドレスで見出され得る:http://www.ncbi.nlm.gov/cgi-bin/BLAST。
【0102】
代替的には、相同性は、相同領域間に安定した二重鎖を形成する条件下でポリヌクレオチドをハイブリダイズし、その後、一本鎖特異的ヌクレアーゼ(単数または複数)で消化して、消化断片のサイズを決定することにより確定され得る。2つのDNAまたは2つのポリペプチド配列は、上記の方法を用いて確定した場合、分子の限定長に亘って、配列が少なくとも約80〜85%、好ましくは少なくとも約90%、最も好ましくは少なくとも約95〜98%の配列同一性を示す場合、互いに「実質的に相同」である。本明細書中で用いる場合、実質的に相同であるとは、特定のDNAまたはポリペプチド配列と完全に同一であることを示す配列も指す。実質的に相同であるDNA配列は、例えば、その特定の系に関して限定されるような緊縮条件下で、サザンハイブリダイゼーション実験で同定され得る。適切なハイブリダイゼーション条件を限定することは、当該技術分野の技術の範囲内である。例えば、Sambrook et al.、上記;DNA Cloning、上記;Nucleic Acid Hybridization、上記参照。
【0103】
ウイルスベクターの構築
本発明の実行に有用な遺伝子送達ビヒクルは、分子生物学の技術分野で周知の方法を利用して構築され得る(例えば、AusubelまたはManiatis、上記参照)。本明細書中の記述は、例として意図されるものであって、それらに限定されない。典型的には、導入遺伝子を保有するウイルスベクターは、導入遺伝子(単数または複数)をコードするかまたはそれに対応するポリヌクレオチド、適切な調節因子、ならびに細胞形質導入を媒介するウイルスタンパク質の産生のために必要な因子から組み立てられる。例えば、好ましい一実施形態では、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターが用いられる。
【0104】
一般的方法
ウイルスベクターのヌクレオチド構成成分を得るための好ましい方法は、PCRである。PCRのための一般的手法は、MacPherson et al.,PCR:A PRACTICAL APPROACH,(IRL Press at Oxford University Press,(1991))で教示されている。各適用反応のためのPCR条件は、経験的に決定され得る。多数のパラメーターが、反応の成功に影響を及ぼす。これらのパラメーターに含まれるのは、アニーリング温度および時間、延長時間、Mg2+およびATP濃度、pH、ならびにプライマー、鋳型およびデオキシリボヌクレオチドの相対濃度である。増幅後、その結果生じる断片は、アガロースゲル電気泳動により検出され、臭化エチジウム染色および紫外線照射により可視化され得る。
【0105】
ポリヌクレオチドを得るための別の方法は、酵素消化による。例えば、ヌクレオチド配列は、適切な認識制限酵素を用いた適切なベクターの消化により生成され得る。その結果生じる断片は、次に、適切な場合は一緒に結紮され得る。
【0106】
ポリヌクレオチドは、当該技術分野で周知の方法を用いて、ベクターゲノム中に挿入される。例えば、挿入およびベクターDNAは、適切な条件下で、制限酵素と接触されて、互いに対合し、リガーゼとつなぎ合わされ得る各分子上に相補的または平滑末端を作製し得る。代替的には、合成核酸リンカーが、ポリヌクレオチドの末端に結紮され得る。これらの合成リンカーは、ベクターDNA中の特定制限部位に対応する核酸配列を含有し得る。他の手段が、当該技術分野で既知であり、利用可能である。
【0107】
レトロウイルスおよびアデノウイルスベクター
多数のウイルスベースの系が、遺伝子送達のために用いられてきた。例えば米国特許第5,576,201号(この記載内容は参照により本明細書中に組み込まれる)参照。例えば、レトロウイルス系が知られており、一般的に、ウイルスの遺伝子の全てを発現するが、しかし、プサイ配列として既知のパッケージングシグナルの欠失のため、それ自体のゲノムをパッケージし得ない組込み欠陥プロウイルス(「ヘルパー」)を有するパッケージング株を用いる。したがって、当該細胞株は、空ウイルス殻を産生する。産生株はパッケージング株から得られ、これは、ヘルパーのほかに、長い末端反復(LTR)として知られているウイルスの複製およびパッケージングのためのcisで必要とされる配列を含むウイルスベクターを含有する。当該遺伝子は、ベクター中に挿入され、レトロウイルスヘルパーにより合成されるウイルス殻中にパッケージされ得る。組換えウイルスは、次に、単離され、被験者に送達される(例えば米国特許第5,219,740号参照)。代表的レトロウイルスベクターとしては、例えば米国特許第5,219,740号(この記載内容は参照により本明細書中に組み込まれる)に記載されるようなLHL、N2、LNSAL、LSHLおよびLHL2ベクターのようなベクター、ならびにこれらのベクターの誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。レトロウイルスベクターは、当該技術分野で周知の技法により構築され得る。例えば米国特許第5,219,740号;Mann et al.(1983)Cell 33:153−159参照。
【0108】
アデノウイルス・ベースの系が遺伝子送達のために開発されており、本明細書中に記載される方法による送達に適している。ヒトアデノウイルスは、受容体媒介性エンドサイトーシスにより細胞に進入する二本鎖DNAウイルスである。これらのウイルスは、育て、操作するのが容易であり、in vivoおよびin vitroで広範な宿主範囲を示すために、遺伝子導入に特に良好に適合される。
【0109】
アデノウイルスは、静止状態ならびに複製中の標的細胞に感染する。宿主ゲノム中に組込むレトロウイルスと違って、アデノウイルスは、染色体外に存続して、挿入性突然変異誘発と関連した危険を最小限にする。ウイルスは、高力価で容易に産生され、安定であり、したがってそれは精製され、保存され得る。複製適格形態でも、アデノウイルスは低レベルの罹患率のみを生じ、ヒト悪性疾患と関連しない。したがって、これらの利点を用いるアデノウイルスベクターが開発されてきた。アデノウイルスベクターおよびそれらの使用についての説明に関しては、例えば、Haj−Ahmad and Graham(1986)J.Virol.57:267−274;Bett et al.(1993)J.Virol.67:5911−5921;Mittereder et al.(1994) Human Gene Therapy 5:717−729;Seth et al.(1994)J.Virol.68:933−940;Barr et al.(1994)Gene Therapy 1:51−58;Berkner,K.L.(1988)BioTechniques 6:616−629;Rich et al.(1993)Human Gene Therapy 4:461−476を参照されたい。
【0110】
AAV発現ベクター
好ましい一実施形態では、本発明の方法に用いられるウイルスベクターは、AAVベクターである。「AAVベクター」とは、アデノ随伴ウイルス血清型に由来するベクターを意味し、例としてはAAV−1、AAV−2、AAV−3、AAV−4、AAV−5、AAV7等が挙げられるが、これらに限定されない。典型的AAVベクターは、全部または一部欠失されたAAV野生型遺伝子のうちの1つ以上、好ましくはrepおよび/またはcap遺伝子を有し得るが、しかし機能性フランキングITR配列を保持する。機能性ITR配列は、AAVビリオンの救出、複製およびパッケージングのために必要である。AAVベクターは、ウイルスの複製およびパッケージング(例えば、機能性ITR)のためにcisで必要とされる少なくともそれらの配列を含む。ITRは、野生型ヌクレオチド配列である必要はなく、配列が機能性救済、複製およびパッケージングを提供する限り、例えば、ヌクレオチドの挿入、欠失または置換により変更され得る。より多くのまたは種々のAAV血清型に関しては、例えば、Cearley et al.,Molecular Therapy,16:1710−1718,2008(この記載内容は参照により本明細書中に組み込まれる)を参照されたい。
【0111】
AAV発現ベクターは、転写の方向、転写開始領域を含む制御因子、当該DNAおよび転写終止領域において操作可能的に連結される構成成分として提供するために既知の技法を用いて構築され得る。制御因子は、視床および/または皮質ニューロンにおいて機能的であるよう選択される。付加的制御因子が含まれ得る。操作可能的に連結される構成成分を含有する結果的に生じる構築物は、機能性AAV ITR配列と結合される(5’および3’)。
【0112】
「アデノ随伴ウイルス逆位末端反復」または「AAV ITR」とは、DNA複製の起点として、ならびにウイルスに関するパッケージングシグナルとして、cisで一緒に機能するAAVゲノムの各末端で見出される当該技術分野で認知されている領域を意味する。AAV ITRは、AAV repコード領域と一緒になって、哺乳類細胞ゲノムからの効率的切出しおよび救出、ならびにそのゲノム中への、2つのフランキングITR間に置かれたヌクレオチド配列の組込みを提供する。
【0113】
AAV ITR領域のヌクレオチド配列が既知である。例えば、AAV−2配列に関しては、Kotin,R.M.(1994)Human Gene Therapy 5:793−801;Berns,K.I.“Parvoviridae and their Replication” in Fundamental Virology,2nd Edition,(B.N.Fields and D.M.Knipe, eds.)参照。本明細書中で用いる場合、「AAV ITR」は、表された野生型ヌクレオチド配列を有する必要はないが、しかし、例えば、ヌクレオチドの挿入、欠失または置換により変更され得る。付加的には、AAV ITRは、いくつかのAAV血清型のいずれかに由来し、例としてはAAV−1、AAV−2、AAV−3、AAV−4、AAV−5、AAV7等が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、AAVベクター中の選択ヌクレオチド配列と隣接する5’および3’ITRは、それらが意図されたように、すなわち、宿主細胞ゲノムまたはベクターからの当該配列の切出しおよび救出を可能にし、そしてAAV Rep遺伝子産物が細胞中に存在する場合、受容体細胞ゲノム中への非相同配列の組込みを可能にするよう機能する限り、必ずしも、同一AAV血清型または単離物と同一であるかまたはそれらに由来する必要はない。
【0114】
AAVベクターで用いるための適切なDNA分子は、例えば受容体被験体から欠けるかまたは失われているタンパク質をコードする遺伝子、あるいは所望の生物学的または治療的作用を有するタンパク質(例えば、酵素または神経栄養因子)をコードする遺伝子を包含する。当業者は、治療されている神経学的障害に基づいて因子が適切であるか否かを決定し得る。
【0115】
選択ヌクレオチド配列は、in vivoで被験者中でのその転写または発現を指図する制御因子と操作可能的に連結される。このような制御因子は、常態では選択遺伝子と関連する制御配列を含み得る。代替的には、非相同制御配列が用いられ得る。有用な非相同制御配列は、一般的に、哺乳類またはウイルス遺伝子をコードする配列に由来するものを包含する。例としては、SV40初期プロモーター、マウス乳癌ウイルスLTRプロモーター;アデノウイルス主要後期プロモーター(Ad MLP);単純ヘルペスウイルス(HSV)プロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、例えばCMV前初期プロモーター領域(CMVIE)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター、合成プロモーター、ハイブリッドプロモーター等が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、非ウイルス遺伝子、例えばネズミメタロチオネイン遺伝子由来の配列も、本明細書中での使用が見出される。このようなプロモーター配列は、例えばStratagene (San Diego, Calif.)から市販されている。
【0116】
一実施形態では、視床ニューロン中で操作可能であるプロモーターが用いられる。
【0117】
一実施形態では、皮質ニューロン中で操作可能であるプロモーターが用いられる。
【0118】
一実施形態では、視床および皮質ニューロンの両方で操作可能であるプロモーターが用いられる。
【0119】
本発明の目的のために、非相同プロモーター、ならびに他の制御因子、例えばCNS特異的および誘導性のプロモーター、エンハンサー等は、ともに、特別な用途を有する。非相同プロモーターの例としては、CMBプロモーターが挙げられる。CNS特異的プロモーターの例としては、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)、神経膠原繊維酸性タンパク質(GFAP)およびニューロン特異的エノラーゼ(NSE)が挙げられる。誘導性プロモーターの例は、エクジソン、テトラサイクリン、低酸素症およびアウフィンのためのDNA応答性因子を包含する。
【0120】
そこから切り出される主要AAVオープン・リーディング・フレーム(「ORF」)を有したAAVゲノム中に選択配列(単数または複数)を直接挿入することにより、AAV ITRにより結合される当該DNA分子を保有するAAV発現ベクターが構築され得る。複製およびパッケージング機能を可能にするのに十分なITR部分が残存する限り、AAVゲノムの他の部分も欠失され得る。このような構築物は、当該技術分野で周知の技法を用いて設計され得る。例えば、米国特許第5,173,414号および第5,139,941号; 国際公開WO 92/01070(1992年1月23日公開)およびWO93/03769(1993年3月4日公開);Lebkowski et al.(1988)Molec.Cell.Biol.8:3988−3996;Vincent et al.(1990)Vaccines 90(Cold Spring Harbor Laboratory Press);Carter,B.J.(1992) Current Opinion in Biotechnology 3:533−539;Muzyczka,N.(1992)Current Topics in Microbiol.and Immunol.158:97−129;Kotin,R.M.(1994)Human Gene Therapy 5:793−801;Shelling and Smith(1994)Gene Therapy 1:165−169;およびZhou et al.(1994)J.Exp.Med.179:1867−1875を参照されたい。
【0121】
代替的には、AAV ITRは、ウイルスゲノムから、またはそれを含有するAAVベクターから切り出され、そしてSambrook et al.(上記)に記載されているような標準結紮技法を用いて、別のベクター中に存在する選択核酸構築物の5’および3’で融合され得る。例えば、結紮は、20mMトリス−Cl、pH7.5、10mM MgCl2、10mM DTT、33μg/ml BSA、10mM〜50mM NaCl、そして40μM ATP、0.01〜0.02(Weiss)単位T4 DNAリガーゼ中で0°C(「粘着末端」結紮用)か、または1mM ATP、0.3〜0.6(Weiss)単位T4 DNAリガーゼ中で14°C(「平滑末端」結紮用)で成し遂げられ得る。分子間「粘着末端」結紮は、通常は、30〜100μg/mlの総DNA濃度(総最終濃度5〜100nM)で実施される。ITRを含有するAAVベクターは、例えば米国特許第5,139,941号に記載されている。特に、そこに記載されたいくつかのAAVベクターは、寄託番号53222、53223、53224、53225および53226で、アメリカ培養細胞系統保存機関(「ATCC」)から入手可能である。
【0122】
さらに、1つ以上の選択核酸配列の5’および3’に整列されるAAV ITR配列を含むよう、キメラ遺伝子が合成的に生産され得る。哺乳類CNS細胞中でのキメラ遺伝子配列の発現のための好ましいコドンが、用いられ得る。完全キメラ配列は、標準方法により調製される重複オリゴヌクレオチドから組み立てられる。例えば、Edge,Nature(1981)292:756;Nambair et al.Science(1984)223:1299;Jay et al.J.Biol.Chem.(1984)259:6311参照。
【0123】
rAAVビリオンを産生するために、既知の技法を用いて、例えばトランスフェクションにより、AAV発現ベクターが適切な宿主細胞中に導入される。多数のトランスフェクション技法が、一般的に当該技術分野で知られている。例えば、Graham et al.(1973)Virology,52:456、Sambrook et al.(1989)Molecular Cloning,a laboratory manual,Cold Spring Harbor Laboratories,New York、Davis et al.(1986)Basic Methods in Molecular Biology,ElsevierおよびChu et al.(1981)Gene 13:197参照。特に適切なトランスフェクション法としては、リン酸カルシウム共沈(Graham et al.(1973)Virol.52:456−467)、培養細胞中への直接マイクロインジェクション(Capecchi,M.R.(1980)Cell 22:479−488)、電気穿孔(Shigekawa et al.(1988)BioTechniques 6:742−751)、リポソーム媒介性遺伝子導入(Mannino et al.(1988)BioTechniques 6:682−690)、脂質媒介性形質導入(Felgner et al.(1987)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:7413−7417)、ならびに高速ミクロ射出粒子を用いた核酸送達(Klein et al.(1987)Nature 327:70−73)が挙げられる。
【0124】
本発明の目的のために、rAAVビリオンを産生するための適切な宿主細胞としては、非相同DNA分子の受容体として用いられ得るか、または用いられてきた微生物、酵母細胞、昆虫細胞および哺乳類細胞が挙げられる。当該用語は、トランスフェクトされた元の細胞の子孫を含む。したがって、「宿主細胞」は、本明細書中で用いる場合、一般的に、外因性DNA配列でトランスフェクトされた細胞を指す。安定ヒト細胞株293(例えば寄託番号ATCC CRL1573でアメリカ培養細胞系統保存機関から入手可能)からの細胞は、本発明の実行に好ましい。特に、ヒト細胞株293は、アデノウイルス5型DNA断片(Graham et al.(1977)J.Gen.Virol.36:59)で形質転換され、アデノウイルスE1aおよびE1b遺伝子(Aiello et al.(1979)Virology 94:460)を発現するヒト胚性腎臓細胞株である。293細胞株は、容易にトランスフェクトされ、rAAVビリオンを産生するために特に便利なプラットホームを提供する。
【0125】
AAVヘルパー機能
AAV ITRにより隣接されるヌクレオチド配列を複製し、キャプシド形成して、rAAVビリオンを産生するために、上記のAAV発現ベクターを含有する宿主細胞は、AAVヘルパー機能を提供し得るようにされなければならない。AAVヘルパー機能は、一般的に、発現されてAAV遺伝子産物を提供し、次いでこれが、増殖的AAV複製のためにトランスで機能し得るAAV由来コード配列である。AAVヘルパー機能は、AAV発現ベクターから失われている必要なAAV機能を補足するために本明細書中で用いられる。したがって、AAVヘルパー機能は、主要AAV ORFの一方または両方、すなわち,repおよびcapコード領域、またはその機能的相同体を包含する。
【0126】
Rep発現産物は、多数の機能、例えばとりわけ、DNA複製のAAV起点の認識、結合および切り込み;DNAヘリカーゼ活性;ならびにAAV(または他の非相同)プロモーターからの転写の調節を保有することが示されている。Cap発現産物は、必要なパッケージング機能を供給する。AAVヘルパー機能は、AAVベクターから失われているトランスのAAV機能を補足するために本明細書中で用いられる。
【0127】
「AAVヘルパー構築物」という用語は、一般的に、当該ヌクレオチド配列の送達のために形質導入ベクターを産生するために用いられるべきものであるAAVベクターから欠失されたAAV機能を提供するヌクレオチド配列を含む核酸分子を指す。AAVヘルパー構築物は、一般に、AAVrepおよび/またはcap遺伝子の一過性発現を提供して、溶解性AAV複製に必要である失ったAAV機能を補足するために用いられる;しかしながら、ヘルパー構築物は、AAV ITRを欠き、それ自体を複製もパッケージもし得ない。AAVヘルパー構築物は、プラスミド、ファージ、トランスポゾン、コスミド、ウイルスまたはビリオンの形態であり得る。多数のAAVヘルパー構築物、例えば、一般に用いられるプラスミドpAAV/AdおよびplM29+45(RepおよびCap発現産物の両方をコードする)が記載されている。例えば、Samulski et al.(1989)J.Virol.63:3822−3828;およびMcCarty et al.(1991)J.Virol.65:2936−2945参照。Repおよび/またはCap発現産物をコードする多数の他のベクターが記載されている。例えば米国特許第5,139,941号参照。
【0128】
「AAVrepコード領域」とは、複製タンパク質Rep78、Rep68、Rep52およびRep40をコードするAAVゲノムの当該技術分野で認識された領域を意味する。これらのRep発現産物は、多数の機能、例えばDNA複製のAAV起点の認識、結合および切り込み;DNAヘリカーゼ活性;ならびにAAV(または他の非相同)プロモーターからの転写の調節を保有することが示されている。Rep発現産物は、AAVゲノムを複製するために集合的に必要とされる。AAV repコード領域の説明に関しては、例えば、Muzyczka,N.(1992)Current Topics in Microbiol.and Immunol.158:97−129;およびKotin,R.M.(1994) Human Gene Therapy 5:793−801を参照されたい。AAV repコード領域の適切な相同体としては、これもAAV−2DNA複製を媒介することが知られているヒトヘルペスウイルス6(HHV−6)rep遺伝子が挙げられる(Thomson et al.(1994)Virology 204:304−311)。
【0129】
「AAV capコード領域」とは、キャプシドタンパク質VP1、VP2およびVP3をコードするAAVゲノムの当該技術分野で認識された領域、またはその機能的相同体を意味する。これらのCap発現産物は、ウイルスゲノムをパッケージするために集合的に必要とされるパッケージング機能を供給する。AAV capコード領域の説明に関しては、Muzyczka, N.and Kotin,R.M.(上記)を参照されたい。
【0130】
AAVヘルパー機能は、AAV発現ベクターのトランスフェクションの前またはそれと同時に、AAVヘルパー構築物で宿主細胞をトランスフェクトすることにより、宿主細胞中に導入される。したがってAAVヘルパー構築物は、AAV repおよび/またはcap遺伝子の少なくとも一過性の発現を提供して、増殖的AAV感染に必要であるAAV機能喪失を補足するために用いられる。AAVヘルパー構築物は、AAV ITRを欠き、そしてそれ自体を複製もパッケージもし得ない。これらの構築物は、プラスミド、ファージ、トランスポゾン、コスミド、ウイルスまたはビリオンの形態であり得る。多数のAAVヘルパー構築物、例えば、一般に用いられるプラスミドpAAV/AdおよびplM29+45(RepおよびCap発現産物の両方をコードする)が記載されている。例えば、Samulski et al.(1989)J.Virol.63:3822−3828;およびMcCarty et al.(1991)J.Virol. 65:2936−2945参照。Repおよび/またはCap発現産物をコードする多数の他のベクターが記載されている。例えば米国特許第5,139,941号参照。
【0131】
AAV発現ベクターおよびAAVヘルパー構築物はともに、1つ以上の任意の選択可能なマーカーを含有するよう構築され得る。適切なマーカーは、細胞が適切な選択培地中で増殖される場合、選択可能マーカーを含有する核酸構築物でトランスフェクトされた細胞に抗生物質耐性または感受性を付与し、それに色を与えるか、またはその抗原特性を変える遺伝子を包含する。本発明の実行に有用であるいくつかの選択可能マーカー遺伝子としては、G418(Sigma,St.Louis,MO.から入手可能)に対する耐性を付与することにより、哺乳類細胞における選択を可能にするハイグロマイシンB耐性遺伝子(アミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ(APH)をコードする)が挙げられる。他の適切なマーカーは、当業者に既知である。
【0132】
AAV補助機能
宿主細胞(またはパッケージング細胞)は、rAAVビリオンを産生するために、非AAV由来機能または「補助機能」を提供し得るようにもされなければならない。補助機能は、その複製のためにAAVが依存している非AAV由来ウイルスおよび/または細胞機能である。したがって、補助機能は、少なくとも、AAV複製に必要とされる非AAVタンパク質およびRNA、例えばAAV遺伝子転写の活性化、段階特異的AAVmRNAスプライシング、AAV DNA複製、Cap発現産物の合成、ならびにAAVキャプシドアセンブリーに関与するものを包含する。ウイルスベースの補助機能は、既知のヘルパーウイルスのいずれかに由来し得る。
【0133】
特に、補助機能は、当業者に既知の方法を用いて宿主細胞中に導入され、次いで宿主細胞中で発現され得る。一般に、補助機能は、非関連ヘルパーウイルスによる宿主細胞の感染によって提供される。多数の適切なヘルパーウイルス、例えばアデノウイルス;ヘルペスウイルス、例えば単純ヘルペスウイルス1および2型;ならびにワクシニアウイルスが既知である。非ウイルス性補助機能、例えば種々の既知の作因のいずれかを用いた細胞同期化により提供されるものも、本明細書中で用途を見出す。例えば、Buller et al.(1981)J.Virol 40:241−247;McPherson et al.(1985)Virology 147:217−222;Schlehofer et al.(1986) Virology 152:110−117を参照されたい。
【0134】
代替的には、補助機能は、補助機能ベクターを用いて提供され得る。補助機能ベクターは、1つ以上の補助機能を影響するヌクレオチド配列を包含する。補助機能ベクターは、宿主細胞中での効率的AAVビリオン産生を支持するために、適切な宿主細胞中に導入されることが可能である。補助機能ベクターは、プラスミド、ファージ、トランスポゾンまたはコスミドの形態であり得る。補助ベクターは、適切な制御因子および酵素と関連する場合、補助機能を提供するために宿主細胞中で転写されるかまたは発現され得る1つ以上の線状化DNAまたはRNA断片の形態でもあり得る。例えば、国際公開WO97/17548(1997年5月15日公開)参照。
【0135】
補助機能を提供する核酸配列は、天然供給源から、例えばアデノウイルス粒子のゲノムから獲得されるか、あるいは当該技術分野で既知の組換えまたは合成方法を用いて構築され得る。この点では、アデノウイルス由来補助機能が広範に研究されており、補助機能に関与する多数のアデノウイルス遺伝子が同定され、一部は特性化されている。例えば、Carter,B.J.(1990)“Adeno−Associated Virus Helper Functions”,in CRC Handbook of Parvoviruses,vol. I(P.Tijssen,ed.)、およびMuzyczka,N.(1992)Curr.Topics.Microbiol.and Immun.158:97−129を参照されたい。具体的には、初期アデノウイルス遺伝子領域E1a、E2a、E4、VAI RNA、そしておそらくはE1bが、補助プロセスに関与すると考えられる。Janik et al.(1981)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78:1925−1929。ヘルペスウイルス由来補助機能が記載されている。例えば、Young et al.(1979)Prog.Med.Virol.25:113。ワクシニアウイルス由来補助機能も記載されている。例えば、Carter,B.J.(1990)(上記)、Schlehofer et al.(1986)Virology 152:110−117参照。
【0136】
ヘルパーウイルスによる宿主細胞の感染の、あるいは補助機能ベクターによる宿主細胞のトランスフェクションの結果として、AAVヘルパー構築物をトランス活性化してAAV Repおよび/またはCapタンパク質を産生する補助機能が発現される。Rep発現産物は、AAV発現ベクターから組換えDNA(当該DNAを含む)を切り取る。Repタンパク質は、AAVゲノムを二倍にするのにも役立つ。発現されたCapタンパク質はキャプシドに組み立てられ、そして組換えAAVゲノムがキャプシド中にパッケージされる。したがって、増殖的AAV複製が続いて起こり、DNAがrAAVビリオン中にパッケージされる。
【0137】
組換えAAV複製後、種々の慣用的精製方法、例えばCsCl勾配を用いて、rAAVビリオンが宿主細胞から精製され得る。さらに、感染を用いて補助機能を発現する場合、既知の方法を用いて、残留ヘルパーウイルスが不活性化され得る。例えば、約60℃の温度に、例えば20分以上の間、加熱することにより、アデノウイルスは不活性化され得る。AAVは極度に熱安定性であるが、一方、ヘルパーアデノウイルスは熱不安定性であるため、この処理は、ヘルパーウイルスのみを有効に不活性化する。
【0138】
その結果生じるrAAVは、次に、CNSへのDNA送達に用いる準備ができる。
【0139】
in vivo送達のために、rAAVビリオンは製剤組成物に処方される。
【0140】
治療用核酸およびコード化タンパク質
【0141】
治療用核酸としては、直接的に治療的である核酸、ならびに治療薬、例えば治療用タンパク質を生じる核酸が挙げられる。
【0142】
治療用タンパク質は、生物学的に活性な変異体および断片を包含する。「変異体」という用語は、本明細書中で用いる場合、アミノ酸が欠失されたポリペプチド(「欠失変異体」)、挿入されたポリペプチド(「付加変異体」)または親タンパク質のアミノ酸配列内の残基と置換されたポリペプチド(「置換変異体」)が挙げられる。このような変異体は、ポリペプチドをコードするDNA中に適切なヌクレオチド変更を導入することにより調製される。欠失、挿入および置換の多数の組合せがなされ得るが、但し、最終的分子は生物学的に活性であると、当業者により理解されるであろう。
【0143】
治療用タンパク質としては、酵素;増殖因子、例えばニューロトロフィン;ホルモン;免疫調節ペプチドおよびタンパク質、例えばサイトカイン;ならびに神経調節性ペプチドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0144】
好ましい一実施形態では、本発明の治療用タンパク質は、NGF、BDNF、NT−3、NT−4/5、NT−6、GDNF、CNTF、LIF、IGF−1、b−FGF、ニュールツリン、ペルセフィン、アルテミン、TGFα、TGFβ、IGF−2、PDGF、EGF、カルジオトロピン、EGF、IGF、VEGF、ソニックヘッジホッグ(SHH)、BMP、FGF20、VIP、PDGF、プレイオトロフィン(PTN)およびHGFからなる群から選択される。
【0145】
一実施形態では、治療用タンパク質は、視床中で産生され、大脳皮質中で放出され得る。
【0146】
用いられる治療用核酸の型は、治療されている神経学的障害に依る。神経学的障害は、皮質性病態および神経解剖学的縦連合に基づいた本発明による処置に適している、と当業者は理解するであろう。
【0147】
例えば、遺伝子療法は、神経学的障害(例えばカナバン病)において欠乏する酵素の産生を提供するウイルス粒子を用いて実行され得る。代替的には、遺伝子療法は、神経学的障害において危うくされるニューロン、例えばアルツハイマー病において皮質を刺激する前脳基底核のニューロンの一集団を持続するために、ニューロトロフィン、例えばNGFの産生を提供するウイルス粒子を用いて実行され得る。
【0148】
代替的治療薬、例えばsiRNAおよび遺伝子サイレンシングのための他の手段が本発明で用いられ得るが、これらに限定されない。
【0149】
製剤組成物および投与
製剤組成物は、治療的有効量、すなわち問題の障害の症候を低減するかまたは改善するのに十分な量、あるいは所望の利益を付与するのに十分な量の当該治療薬を含む。製剤組成物は、製薬上許容可能な賦形剤も含有する。このような賦形剤は、組成物を受容している個体に有害な抗体の産生をそれ自体が誘導しない、そして過度の毒性を伴わずに投与され得る任意の薬学的作用物質を包含する。製薬上許容可能な賦形剤としては、ソルビトール、トゥイーン80、ならびに液体、例えば水、生理食塩水、グリセロールおよびエタノールが挙げられるが、これらに限定されない。人工CSFも、本発明の方法に用いられ得る。製薬上許容可能な塩、例えば無機酸塩、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、硫酸塩等;有機酸の塩、例えば酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩、安息香酸塩等がその中に含まれ得る。さらに、補助物質、例えば湿潤剤または乳化剤、pH緩衝物質等が、このようなビヒクル中に存在し得る。製薬上許容可能な賦形剤の徹底的考察は、REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES(Mack Pub.Co.,N.J.1991)で利用可能である。
【0150】
最適製剤処方物は、当業者により決定される。上記症状を治療するための方法に関与する最終投与レジメンは、薬剤の作用を修飾する種々の因子を考察している主治医により決定される。試験が実行されると、種々の神経学的障害の治療のための適切な投与量レベルに関して、さらなる情報が出てくるであろう。
【0151】
製剤組成物は、他の薬剤、薬学的作用物質、担体、アジュバント、希釈剤等を含み得る。「製薬上許容可能な」とは、生物学的にまたは別の状況で望ましくないことのない物質を意味し、すなわち、当該物質は、如何なる望ましくない生物学的作用も引き起こすことなく、またはそれが含有される製剤組成物の他の構成成分の何れとも有害に相互作用することなく、選択された作用物質と一緒に個体に投与され得る。
【0152】
好ましい一実施形態では、本発明の製剤組成物は、CEDにより被験者のCNSに局所的に送達される。
【0153】
一実施形態では、製剤組成物は、促進剤を含む。促進剤は、標的組織への注入液の送達をさらに促進し得る。促進剤は、治療薬が治療用タンパク質である場合、特に好ましい。
【0154】
一旦、製剤組成物が処方されると、それは、溶液、懸濁液、ゲル、乳濁液、固体、あるいは脱水または凍結乾燥粉末として滅菌バイアル中に保存され得る。このような処方物は、直ぐに使用できる形態で、または例えば凍結乾燥され、投与前に再構成を要する形態で、保存され得る。
【0155】
本明細書の教示にかんがみて当業者に明らかなように、付加されなければならない治療薬の有効量は、経験的に決定され得る。投与は、1回用量投与で、治療の経過中に連続的にまたは間欠的に実行され得る。「有効量」は、有益なまたは所望の結果をもたらすために十分な量である。有効量は、1回以上の投与、適用または投薬で投与され得る。
【0156】
視床に送達される治療薬が治療用タンパク質である実施形態では、1回より多い用量投与が好ましい。例えばUSSN11/740,124(2007年4月25日出願)(この記載内容は参照により本明細書中に組み込まれる)を参照されたい。
【0157】
「被験者」、「個体」または「患者」という用語は、本明細書中で互換的に用いられ、大型哺乳類、好ましくは霊長類、最も好ましくはヒトを指し、小型哺乳類、例えば齧歯類を含まない。
【0158】
併用療法が意図される。例えば、ウイルスベクターが関与する方法では、1つより多い導入遺伝子が送達ウイルスベクターにより発現され得る、と理解されるべきである。代替的には、各々が1つ以上の異なる導入遺伝子を発現する別個のベクターも、CNSに送達され得る。さらに、本発明の方法により送達される治療薬(ウイルスベクターを含めて)は、他の適切な組成物および治療薬と組合される、ということも意図される。
【0159】
送達装置
任意の対流強化送達装置が、治療薬の送達のために適切であり得る。好ましい一実施形態では、当該装置は、浸透ポンプまたは注入ポンプである。浸透および注入ポンプはともに、種々の供給元、例えばAlzet Corporation、Hamilton Corporation、Alza,Inc.、Palo Alto、Calif.から市販されている。典型的には、治療薬は、以下のようなCED装置を介して送達される。カテーテル、カニューレまたは他の注入装置が、選定被験者のCNS組織中に挿入される。本明細書中の教示にかんがみて、挿入のための適切な位置を当業者は容易に決定し得る。位置決定は、選定された標的に注入装置を導くのを手助けするために、被験者の脳のCTおよび/またはMRI画像処理により得られる解剖地図を用いて、実行され得る。代替的には、送達のiMRIおよび実時間画像処理が実行され得る。
【0160】
本発明に用いるためのポンプ系の例としては、米国特許第7,351,239号;第7,341,577号;第6,042,579号;第5,735,815号および第4,692,147号に記載された埋め込み可能な系が挙げられる。
【0161】
本発明に用いるためのカテーテルの例は、PCT/US08/64011に記載されている。他のカテーテルの例は、本明細書中に記載されている。
引用文献は全て、その記載内容が参照により本明細書中に組み込まれる。
【0162】
実験
視床内AAV2ベクター送達後の広範囲の導入遺伝子タンパク質発現−図1〜4
AAV2−GDNFは、免疫組織化学により視覚的に検出され、組織抽出物のELISAにより定量され得る形質導入ニューロンからの神経膠細胞株由来神経栄養因子(GDNF)の大量分泌を駆動する。対流強化送達による視床へのAAV2−GDNFの注入後、広範なGDNF免疫陽性染色が、注入部位と同側性の前頭皮質中で検出された。図1に示したように、GDNFの発現は、前頭前葉野関連皮質領域(皮質域9および10)から、前頭眼野(領域8)、前運動皮質(領域6)、一次体性感覚皮質野(領域3、1および2)を通って、一次運動皮質(領域4)に延び、帯状皮質(領域23、24、32)およびブローカ野(領域44、45)における発現を包含した。皮質におけるGDNF発現は灰白質に局在し、下層の白質路中ではGDNF陽性染色を明瞭に欠いている。類似のパターンは視床において見出されたが、ここでは、GDNF発現は、注入標的化視床核の灰白質境界内にも含有され、非標的化領域中へのAAV2−GDNFベクターの注入関連「漏出」または還流の証拠は認められなかった。GDNF染色は、分析された切片の何れの対側半球にも見出されなかった。個々のニューロン細胞体および細胞突起の強染色のほかに、GDNF染色は、前頭皮質の多重層を通して観察され、皮質層IIIおよびIVにおいて最高である強度勾配を有した(図2)。
【0163】
大きな皮質領域の肉眼的に明らかなGDNF染色は、GDNF陽性ニューロン繊維および細胞体の存在と相関した;しかしながら、免疫染色の全体的強度は、顕微鏡検査した場合、特定領域のGDNF陽性ニューロンの実数を反映せず、観察された広範な非細胞性染色は、分泌GDNFを示す。皮質内のほとんどのGDNF陽性ニューロンは、上にある層への軸索突起を伴う皮質層V/VI中に位置する錐体ニューロンとして形態学的に同定された(図1E、F)。GDNF陽性ニューロンの密度は、前皮質、例えば多数の非錐体ニューロンが層II〜IVで観察された前頭前皮質野8において、特に高かった(図1A〜C)。
【0164】
視床、線条体および種々の皮質野に存在するGDNFタンパク質のレベルを、AAV2−GDNF送達の6ヵ月後に定量した。ベクター注入視床中のGDNFは、12〜40ng/タンパク質1mg(対側半球<0.6ng)の範囲であり、同側前頭皮質では1〜7ngの範囲であった(GDNFは対側皮質中では検出されなかった)。図2における値は、隣接冠状組織ブロックからのGDNF定量とGDNF免疫染色とのおよその相関を示す。
【0165】
AAV2ベクターの視床皮質輸送ならびに皮質ニューロンの形質導入
AAV2−GFP送達後の形質導入細胞中の緑色蛍光タンパク質(GFP)の細胞質発現および蓄積を利用して、NHPにおける視床注入後の形質導入ニューロンの局在化を査定した。GFP発現を、視床および前頭皮質の両方で分析して、視床中のAAV2ベクターの分布とAAV2ベクターの視床皮質軸索輸送を示す皮質の特定領域におけるニューロンの形質導入との間の相関を調べた。
【0166】
視床内のAAV2−GFP注入の分布を、GFP免疫陽性ニューロンを含有する特定の視床核に関して、4つのNHP(ID番号V422、V632、V655およびV991)で査定した。カニューレ位置の差が小さいため、各動物は、GFP染色の視床分布において多少の相違を示した(図4)。要するに、視床内のAAV2−GFP形質導入はサルV422において最も広範囲に及び、前核中に嘴状に延びる外側腹側、前腹側および背側正中核全体を通したGFP発現を示した。サルV632は、前腹側から後腹側核に延びるGFP陽性ニューロンを有する、より後方の注入を示した。サルV655は、背側正中および外側腹側核内に主に含入されるGFP陽性ニューロンの限定分布を有した。サルV991は、AAV2−GFPのわずかに外側寄りの注入を施され、内包でも観察されたGFP発現を伴う外側腹側及び前腹側核の形質導入を生じた。側脳室中へのカニューレ路を止めるベクター漏出/還流の証拠は、V655及びV991では観察されたが、しかし他の2つの動物では観察されなかった。この還流は、視床における形質導入のより小さな領域を生じた。
【0167】
GFP陽性ニューロン細胞体および突起が明瞭に区別可能である前頭皮質の特定領域に関する前頭皮質の免疫組織化学的分析(図3A、B)。ほとんどのGFP陽性ニューロンが、層V/VI中に存在する錐体ニューロンとして同定された。しかしながら、他のGFP陽性細胞は、籠形ニューロンおよび神経膠の形態を有して少数見出された(図3E、F)。さらに、GFP染色が層IV中の繊維に局在する領域も観察した(図3C、D)。AAV2−GDNF処置サルに対比して、全トランスジェニックタンパク質(GFP)染色は、ニューロン構造に明らかに局在したが、これは、GDNFの分泌および細胞外拡散と比較して、特にニューロン内のGFPの細胞内蓄積を示す。
【0168】
4匹のサルからのGFP免疫染色冠状切片の系統的走査は、GFP陽性ニューロンを含有する前頭皮質の特定領域を同定した。視床ニューロンのAAV−GFP形質導入を用いた場合と同様に、皮質中のGFP陽性細胞の分布は、各サルに関してわずかに異なった(表1)。GFP−陽性ニューロンの大多数が一貫して見出された主な領域は、二次運動皮質(領域6)および前頭眼野(領域8)であった。前帯状皮質(領域24及び32)も、各動物において、GFP陽性ニューロンを含有した。さらに、GFP陽性ニューロンは、他の皮質領域、例えば一次運動皮質(領域4)、体性感覚皮質(領域3および2)、後帯状皮質(領域23および31)ならびにブローカ野(領域44および45)においても見出された。表1に要約したように、サルV422は、前頭眼野およびブローカ野においてGFP陽性ニューロンのかなりの分布を有した。サルV632は、一次体性感覚皮質中でのGFP発現を有する唯一の動物であったが、しかし、ブローカ野においては如何なる発現も欠いていた。サルV655は、分析された皮質領域のほとんど全体でGFP陽性皮質ニューロンの散在性分布を示した。サルV991は、前帯状皮質、二次運動皮質および前頭眼野において見出されるだけのGFP陽性ニューロンを伴う限定的発現を有した。GFP陽性細胞は、注入部位に対して対側の半球では観察さえされなかった。
【0169】
皮質から三次CNS部位へのGDNFの転位−前脳基底核
本明細書中に記載される方法を用いて、AAV2−GDNF送達の6ヵ月後に、前脳基底核中に存在するGDNFタンパク質のレベルを定量した。被験者は、図2に示したものであった。結果は:処置側=0.91ng GDNF/タンパク質1mg;対側=0.45ng GDNF/タンパク質1mg。この結果は、視床を介して皮質集団に送達された治療薬が、皮質に連結された三次ニューロン集団に輸送され得る、ということを確立した。
【0170】
アルツハイマー病の非ヒト霊長類モデルにおける視床皮質遺伝子送達後の皮質からの輸送による前脳基底核へのNGFの送達
【0171】
NGFをコードする治療用核酸を含むAAV2粒子を、調製する。アルツハイマー病の当該技術分野で認知されたモデルとして、老齢非ヒト霊長類の視床にAAV2粒子を送達する。例えば、Price et.al.,“Aged non−human primates:an animal model of age−associated neurodegenerative disease”,Brain Pathol.,1:287−296,1991参照。AAV2は、好ましくは、前核、背側正中核、前腹側核、外側腹側核および後腹側核のうちの1つ以上に送達され、腹側核が好ましい。AAV2粒子は視床ニューロンを形質導入し、NGFは皮質に転位される。AAV2粒子も皮質、例えば帯状皮質に転位され、その中でニューロンを形質導入し、皮質中でNGFを産生する。NGFおよび/またはAAV2粒子は、皮質から前脳基底核に転位され、その中のニューロン生存および/またはコリン作動性表現型を支持する。
【0172】
アルツハイマー病における視床皮質遺伝子送達後の皮質からの輸送による前脳基底核へのNGFの送達
NGFをコードする治療用核酸を含むAAV2粒子を、調製する。AAV2粒子は、アルツハイマー患者の視床への、好ましくは前核、背側正中核、前腹側核、外側腹側核および後腹側核のうちの1つ以上に送達され、腹側核が好ましい。AAV2粒子は視床ニューロンを形質導入し、NGFは皮質に転位される。AAV2粒子も皮質、例えば帯状皮質に転位され、その中でニューロンを形質導入し、皮質中でNGFを産生する。NGFおよび/またはAAV2粒子は、皮質から前脳基底核に転位され、その中のニューロン生存および/またはコリン作動性表現型を支持する。
【0173】
この方法により、NGFの形態の栄養支持は、その生理学的標的、すなわち皮質を介して前脳基底核に送達される。皮質へのネイティブ前脳基底核神経支配は、それが補助的非生理学的部位からのニュートロフィン供給によるものであり得るので、転用されるというよりむしろ強化され(例えば神経発芽が増大され得る)、そして生存および/またはコリン作動性表現型が支持される。
【0174】
考察
AAV2−GDNFを視床中に注入し、前頭皮質中で高濃度のGDNFを観察した。皮質中のGDNFは、大多数の視床皮質軸索が神経支配することが知られている薄層IIIおよびIVにほとんど局在すると考えられた(3、4)が、これは、視床終末からの分泌を示す。細胞外GDNF染色のほかに、同一皮質領域内の多数の薄層V/VI錐体ニューロンもGDNFを含有したが、これは、AAV2−GDNFによる皮質ニューロンの形質導入を示唆する。前頭皮質中のGDNF陽性ニューロンの多くは、AAV2−GDNF注入部位から20mmに亘って位置したが、この距離は単にベクター注入により説明可能であるより有意に大きい距離であった。皮質及び視床の外側で検出される有意のGDNF発現なしで、視床及び皮質間のこの特定の輸送は、GDNFタンパク質およびAAV2ベクターの両方の軸索媒介性輸送を示唆した。
【0175】
GDNFと違って、GFPは細胞質中に残存し、したがって直接的細胞性形質導入を示すため、AAV2の軸索輸送を、AAV2−GFPを用いてさらに調べた。GDNFに関する皮質ニューロンの細胞質染色は、理論的には、分泌GDNFの取込みに起因した可能性がある。各サルの前頭皮質中のGFP陽性ニューロンの局在化をマッピングし、各注入に関するAAV2−GFPベクターの観察された視床分布と関連する皮質細胞のこの形質導入を分析することにより、単一軸索突起に沿ったAAV2ベクターの能動輸送を示唆する視床皮質投射の既知の局所解剖学的組織化のうちのいくつかを推測し得た(5、6)。もっとも制限された視床注入では、GFPは、背側正中および外側腹側視床核のニューロン内に主に含有された。したがって、この制限された注入を出発参照として用いて、各被験者の二次運動皮質および前頭前皮質に在るGFP陽性ニューロンは、少なくとも一部は、内側視床核に連結している軸索突起および二次運動皮質に沿ったAAV2ベクター輸送に起因する、と推定された。内側核群のニューロンは、前頭皮質に遠心性投射を送ることが従来示されており、これは最新の観察と一致している(3、7)。前腹側および外側腹側視床核を形質導入するわずかに多くの前方注入は、二次運動皮質、帯状皮質および前頭眼野で観察されたGFP陽性細胞を伴う内側視床注入と非常によく似たパターンの皮質GFP発現を生じた。視床皮質投射は非常に局所解剖学的に組織化されるが、しかし特に隣接視床構造から皮質結合にかなりの重複が存在する。前視床核へのAAV2−GFP形質導入の広がりはブローカ野中のGFP陽性ニューロンを生じたが、一方、後腹側核へのより尾方への広がりは、一次体性感覚皮質および一次運動皮質中にGFP陽性ニューロンを生じた。
【0176】
視床皮質投射の位相的組織化と皮質形質導入の観察された領域との間の相関は、皮質へのAAV2の導入が順行性軸索輸送により媒介される、ということを示唆した。他のAAV血清型1および9の考え得る順行性輸送が、近年、マウス脳で観察された(12)。しかしながら、相互投射ならびにマウス脳のサイズの小さいことが輸送メカニズムの明確な決定を妨げた。
【0177】
方法および材料−図1〜4
外科的送達
ヒトGDNF cDNAを含有する組換えAAV2ベクター(AAV2−GDNF)またはGFP cDNAを含有するもの(AAV2−GFP)を、サイトメガロウイルスプロモーターの制御下で、われわれが以前記載した(13)対流強化送達(CED)プロトコールにより、6匹の成体アカゲザルの右視床中に注入した。実験はすべて、米国国立衛生研究所ガイドラインに、ならびにサンフランシスコのカリフォルニア大学の動物実験委員会により認可されたプロトコールに従って実施した。
【0178】
AAVの産生
三重トランスフェクション技法(14、15)により、組換えAAV2−GDNF(ヒト神経膠由来神経栄養因子)を構築した。組換えバキュロウイルスを用いて、AAV2−GFPを昆虫細胞で産生した(16)。両ベクターにCsCl勾配遠心分離を施して、空キャプシドを除去した。AAV2−GFPおよびAAV2−GDNFを、リン酸塩緩衝生理食塩水(pH7.4)およびプルロニックF−68(0.001%v/v)中で1.0×1013および1.1×1013ベクターゲノム/mlのストック濃度で得た。
【0179】
免疫組織化学
全前頭皮質にわたり、後方向で視床のレベルに延びるザンボニ固定40μm冠状切片で、GDNF(1:500、AF−212−NA、R&D Systems)およびGFP(1:500、AB3080、Chemicon)に対する抗体を用いた免疫染色を実施した。GDNFおよびGFP免疫陽性ニューロンの局在化を、The Rhesus Monkey Brain in Stereotactic Coordinates(17)を参照しながら分析して、皮質および視床における免疫染色の特定領域を同定した。
【0180】
GDNFタンパク質ELISA
新鮮な凍結組織の3mm冠状ブロックからの組織パンチを、図1に示した隣接組織ブロックからのGDNF免疫染色切片で示されるように、AAV2−GDNF注入サルの多数の皮質、視床および線条体領域から採取した。ヒトGDNFに特異的な市販のGDNF ELISAキット(Emax GDNF ELISA、Promega, WI)を用いるELISA検定により、発現されたGDNFタンパク質のレベルを定量した。
【0181】
【表1】

【0182】
視床注入と同側の皮質中のGFP陽性ニューロン分布の表示。GFP陽性皮質ニューロンの相対的分布:***大多数のニューロン;**少数のニューロン;*わずかな単離ニューロン。略号:AN 前核;MD 背側正中核;VA 前腹側核;VL 外側腹側核;VP 後腹側核。
【0183】
参考文献−図1〜4
1. Vite CH, et al. (2005) Effective gene therapy for an inherited CNS disease in a large animal model. Ann Neurol 57(3):355-364.
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17. Paxinos G, Huang XF, & Toga AW (2000) The rhesus monkey brain in stereotaxic coordinates (Academic Press, San Diego).
【0184】
実施例:視床内AAV2ベクター送達後の広範囲酵素発現
方法および材料−図5〜11
非ヒト霊長類(NHP)被験者
4匹のNHP(カニクイザル)をこの試験に用い、最終注入処置を受けた後の時間に基づいて、5週(n=2)または9週生存(n=2)群に無作為化した。体重、神経学的欠損または悪臨床症候における差は、試験経過中は観察されなかった。動物の取扱いおよび手順は全て、UCSF動物実験委員会に従って実行した。NHPに2つの処置(すなわち、一方はガドテリドールのみ(NHP=4、視床に3回、脳幹に2回注入)を使用、もう一方はAAV2−hASM−HA/ガドテリドール(NHP=4、視床に8回、脳幹に4回注入)を使用)を施した。
【0185】
アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター構築
NHP脳における導入遺伝子発現の免疫検出を促すために、ウイルスヘマグルチニン由来のC末端合成ヘマグルチニンエピトープを生じる配列のASM cDNAの3’末端に含入することにより、ヒト酸性スフィンゴミエリナーゼ(hASM)(前記[17])をコードするAAVシャトルプラスミドを修飾した。次に、このシャトルプラスミドを用いて、フィラデルフィア小児病院(CHOP)のVector Coreで、AAV2−hASM−HA(1.0×10e12vg/mL)を製造した[23]。
【0186】
AAV2−hASM−HA注入
外科手術前に全NHPに基線MRIを施して、解剖学的ランドマークを可視化し、予定注入標的部位の定位座標を作成した。視床および脳幹中へのCEDのために、MRI対応プラスチックガイドカニューレアレイ(直径12mm×高さ14mm、27個のアクセスホールあり)の定位的配置を、NHPに施した(図5)。各ガイドカニューレアレイをプラスチック製ネジおよび歯科用アクリル樹脂で頭蓋骨に固定した。ガイドカニューレアレイの配置後、注入手順開始前の少なくとも2週間、動物を回復させた。注入当日、動物をイソフルラン(エラン;Ohmeda Pharmaceutical Products Division,Liberty Corner,NJ)で麻酔した。次に、各動物の頭部をMRI対応定位フレームに入れて、基線MRIを実施した。バイタルサイン、例えば脈拍およびPO2を、手順全体を通してモニタリングした。要するに、注入系は、負荷ライン(注入液[すなわち、GdのみまたはAAV/Gd]を含有)、鉱油を充填された注入ライン、およびトリパンブルー溶液を有する別の注入ラインに連結された溶融シリカ還流耐性カニューレ[19、24]で構成された。胴部にトリパンブルー溶液を充填した1ml注射器をMRI対応注入ポンプ(Harvard Bioscience,Holliston,MA)上に載せて、送達カニューレを通る流体の流れを調節した。MRI座標に基づいて、予め設置したガイドカニューレアレイを通して脳の標的化領域にカニューレを挿入した。各注入カニューレの長さを測定して、遠位先端がカニューレステップを3mm越えて延びるのを保証した。これによりカニューレの先端に近位の階段状デザインが作製されて、カニューレ路に沿った還流を最小限にしながら、CED中の流体対流を最大にした。脳への挿入中は、注入カニューレの陽圧を保持した。注入カニューレの配置を固定した後、CED手順を開始して、ほぼ実時間のMRIデータを獲得した(実時間対流送達、RCD)。試験全体を通して注入される全てのNHPに関しては同一注入パラメーターを用いたが、但し、注入容量は33〜199μLの範囲であり、さらに具体的には、視床に関する注入容量は33〜169μL、脳幹に関しては125〜199μLの範囲であった。注入速度は以下のとおりであった:標的化領域にカニューレを下げる場合(組織が先端に進入するのを防ぐため)には、0.1μl/分を適用し、標的に到達したら、10分間隔で、0.2、0.5、0.8、1.0および2.0μl/分に増大させた。注入の約15分後、カニューレを脳から撤去した。AAV2−hASM−HA処置前にガドテリドール単独注入を動物に実行し、約4週間後に、AAVを注入した。AAV2−hASM−HAを送達する視床および脳幹注入は全て、同一手順中は同時に実行した。
【0187】
磁気共鳴画像診断(MRI)
ケタミン(ケタセット、7mg/kg、筋注)とキシラジン(ロンプン、3mg/kg、筋注)の混合物で、NHPを鎮静させた。鎮静後、各動物をMRI対応定位フレームに入れた。耳バーおよび眼バー測定値を記録し、静脈内ラインを確立した。次いで、MRIデータを得て、その後、動物を、そのホームケージ中で常態に戻り得るまで、閉鎖観察下で回復させた。ガドテリドール単独を送達するCED注入に関するMR画像(合計4)を、1.5T Siemens Magnetom Avanto(Siemens AG,Munich,Germany)で獲得した。三次元(3D)急勾配エコー(MP−RAGE)画像を、繰り返し時間(TR)=2110ms、エコー時間(TE)=3.6ms、ならびに15°のフリップ角、励起回数(NEX)=1(反復3回)、マトリックス=240×240、視野(FOV)=240×240×240および切片厚=1mmで得た。これらのパラメーターは、1mm3ボクセル体積を生じた。走査時間は約9分であった。
【0188】
AAV2−hASM−hA/Gdを送達するCED注入に関するMR画像(合計12)を、床に平行に被験者の頭部に5インチ表面コイルを用いて、1.5T Signa LXスキャナー(GE Medical Systems,Waukesha,WI)で獲得した。スポイルド勾配エコー(SPGR)画像をT1強調し、そしてスポイルドグラスシーケンス、TR=2170ms、TE=3.8ms、ならびに15°のフリップ角、NEX=4、マトリックス=256×192、FOV=16cm×12cm、切片厚=1mmで得た。これらのパラメーターは、0.391mm3ボクセル体積を生じた。走査時間は約11分であった。
【0189】
組織処理
PBSフラッシュと、その後、4%パラホルムアルデヒド(PFA)/PBSを用いて、NHPを経心臓還流して、脳を採取し、脳基質で6mm厚に冠状に薄片にした。脳薄片を4%PFA/PBS中で後固定して、30%スクロース中で凍結保護した。滑走式ミクロトーム(Thermo Science,HM 450)を用いて、脳薄片を40μm連続切片に切断し、これを次に組織学用に処理した。
【0190】
イムノペルオキシダーゼ染色
HAタグに対するモノクローナル抗体を用いて、全てのNHP処理組織を、ヒト導入遺伝子の発現に関して免疫染色した。要するに、連続脳切片を、ヘマグルチニンエピトープに関して免疫染色した(マウス抗HA、1:10,000;クローン16B12、Covance)。要約すると、切片をPBS(3×5分)で洗浄し、PBS中の1%H22における内因性ペルオキシダーゼ活性に関してクエンチして(20分)、前と同様にPBS中で再び洗浄した。切片をBackground Sniper(登録商標)(Biocare Medical,BS966G)中で30分間遮断して、Biocare Da Vinci緑色希釈液(Biocare Medical,PD900)中でHA一次抗体とともに一晩インキュベートした。翌日、PBS中で切片を洗浄後、切片をMach−2−マウス−HRPポリマー中で1時間インキュベートし(Biocare Medical,MHRP520)、PBS中で洗浄して、DABで6分間展開させた(DABペルオキシダーゼ基質キット、SK−4100、Vector Laboratories)。DAB処理切片をPBS中で洗浄し、艶消しスライドガラス上に載せて、クレシルバイオレットで対比染色した。
【0191】
免疫蛍光染色
抗HA(マウスモノクローナル、1:200、Covance)、ならびに抗lba1(ウサギポリクローナル、1:100、Biocare Medical)または抗NeuN(マウス、モノクローナル、1:500、Millipore)を含有する抗体のカクテルで、脳切片を免疫染色した。代替的には、抗HA(マウスモノクローナル、1:200、Covance)を、抗S100(ウサギポリクローナル、1:100、Biocare Medical)と組合せて用いた。要するに、切片を、0.1%トゥイーン20を含有するPBS(PBST、3×5分)で洗浄し、50%エタノール中の1%H22における内因性ペルオキシダーゼ活性に関してクエンチして(30分)、次いで、前と同様にPBS中で再び洗浄した。切片を20%正常ウマ血清(NHS、Jackson Immuno Research)中で60分間遮断して、Biocare Da Vinci(登録商標)緑色希釈液(Biocare Medical,PD900)中で一次抗体カクテルの各々とともに、4℃で少なくとも16時間、インキュベートした。一次抗体でインキュベート後、PBST中で切片を洗浄し、PBST中の二次抗体抗マウス−FITC(1:200、Jackson Immuno Research)および抗ウサギ−TRITC(1:200、Jackson Immuno Research)のカクテルとともに、室温で1時間インキュベートして、PBS中で洗浄して、艶消しスライドガラス上で湿潤封入した。これらの切片を、DAPI含有固定培地とともにカバーガラスで覆った。
【0192】
注入容積(Vi)対分布容積(Vd)比
各視床および脳幹注入に関するVdを、OsiriX(DICOM画像専用の画像診断ソフトウェア(v3.6))で測定した。要するに、各DICOM上の可視化Gdシグナルの領域として限定される当該領域(ROI)を、ROIツールで手動で描いた。併合注入液(Gdのみ、またはAAV−hASM−HA/Gd)分布(Vd)の結果的に生じた3D再構成の容積を得て、それをViで割ることにより、比を算定した。反復注入に関してVi対Vd比を比較するために、等価Viで、DICOMシリーズでVdを測定した。
【0193】
MR画像に転送されるHA免疫染色の領域
クレシルバイオレットで対比染色した全ての組織学処理スライドを先ず走査することにより(エプソン1660フォトスキャナー、300dpi)、HA免疫染色領域の転移を実行した。次いで、注入領域当たりの免疫活性の程度および境界に基づいて、切片を手動で描いた。その結果生じた輪郭を、次に、透明用紙にコピーして、個別に、対応する基線MR画像と整合させて、Osirix ROIツールで手動で描いた。ある場合には(NHP1260)、近実時間MR画像診断は右視床中の良好な分布を示したが、しかし導入遺伝子発現は検出されなかった、ということに留意されたい。したがって、この試験の組織学的態様からこの症例を除外した。この視床注入が如何なるニューロンも形質導入しなかった理由は不明であるが、しかしそれは手順[25]中のベクター凝集のためかもしれないと推測する。
【0194】
HA陽性ニューロン性形質導入のパーセンテージ
ニューロンマーカー(抗NeuN)またはHAタグ(抗HA)に対して免疫染色された隣接切片(40μm厚さに連続的に切りだした)において、全てNHP(N=4)全体を通して標的領域につき、無作為化20倍画像(697.68×522.72μm)を得た(2画像/注入部位)。これらの画像において、NeuNおよびHAに対して染色されたニューロン細胞体を手動で計数し、それらの数値を表にして、注入領域(すなわち、視床および脳幹)当たりで集合的に分析した。NeuNおよびHA染色細胞体間の比較を、注入領域辺りのHAタグに関してニューロン陽性のパーセンテージとして表した。
【0195】
結果−図6〜11
CEDの近実時間MR画像診断
カニューレ配置の術中MRI画像診断およびCEDのモニタリングの結果を、図6に示す。この場合、予定視床または脳幹構造中へのカニューレ先端の配置ならびに代用MRトレーサーのモニタリングを、全ての症例で観察した(図6A〜B)。これらの注入は、視床において同時に且つ両側的に実施し、その後、脳幹で1回注入した(図6A〜B、白色矢印)。送達注入液の放射状対流が認められたが、漏出の徴候はなかった。
【0196】
注入容積対分布容積
視床および脳幹注入の両方に関して、ViおよびVd間に直接的線形関係が見出された(R2=0.93;図7)。領域当たりで示した場合、全ての注入(合計16)に関する平均Vi対Vd比は以下の通りであった:視床(N=10)は3.86±0.25SEMであり、脳幹(N=6)に関する比は3.3±0.17SEMであって、これは、有意に異ならなかった(p=0.14)。さらに重要なのは、同一解剖学的領域中へのMRIトレーサーの反復注入が一貫した注入液分布を生じることを実証した点である(図8)。視床および脳幹注入の両方において類似の分布パターンおよびVi対Vd比を観察したが、一次または二次送達間に統計学的有意性は認められなかった(p=0.96)。視床に対する脳幹のサイズおよび容量のためにより多くの容積が脳幹領域に注入されたが、明らかな神経学的副作用は認められなかったということに留意されたい。
【0197】
HAタグおよびhASM発現の比較
発現hASMを内因性NHP ASMと区別するために、HAエピトープタグが必要とされ得る、と予測した。しかしながら、意外にも、抗HAおよび抗hASM染色は重なり合って、内因性ASMの明白な染色は認められないことが判明した(図9)。この結果は、AAV2−hASM−HAがASMの発現を、免疫染色により容易に検出され得る生理学的レベルを超えるレベルに容易に駆動して、HAタグを必要としない、ということを示す。MR画像に移されたこの比較略図(図9C、F)は、各免疫染色に関する形質導入領域を示す。
【0198】
AAV形質導入および分布
高倍率画像で実証されるように、これらの領域中への標的化注入後、視床および脳幹において非常に高レベルの形質導入が達成された(図10)。これらの画像は、ニューロンまたはニューロン様形態に類似する細胞プロフィールの形質導入を実証する。視床中へのCED送達は、注入により直接的に標的化されなかった皮質領域へのこの導入遺伝子の指向性形質導入および全体的分布を生じた(図11、表2)。これは、多数の皮質領域全体に分散されたHA陽性細胞の検出により明白であった。
【0199】
導入遺伝子発現の効率
上首尾の注入を確定するに際しての別の重要な因子は、MRIトレーサーの分布とその結果生じる導入遺伝子発現領域との間の予測性である(表3、4)。ニューロンマーカー(抗NeuN)またはHAエピトープタグ(抗HA)に対して免疫染色された免疫染色細胞体のニューロン計数は、視床では、68%までのニューロンがHAに対して陽性であり(SEM±11.3%)、脳幹では、82%のニューロンが陽性である(SEM±7.8%)ということを明示した。同様に、視床注入に関するGd分布の領域と導入遺伝子発現の領域、およびGd分布の領域との間の比較は82%(SEM±8.4%)重複を明示したが、一方、脳幹注入に関しては、その発現領域はMRトレーサー分布の領域をわずかに超える117%(SEM±7.2%)であることが判明した。形質導入領域についてのより厳密な試験は、ベクターが特異的にニューロンを形質導入し、星状細胞または小グリア細胞では細胞形質導入は検出されない(データは示されていない)、ということを示した。形質導入が主にニューロンで観察されたという知見は、ニューロンに関するAAV2向性のために意外ではない。小グリア細胞活性化における適度の増大が直接注入領域で明らかであるが、しかしながらこの細胞活性化は直接対流領域に限定されており、処置NHPの皮質領域に置いては有意の免疫活性化は検出されなかった(データは示されていない)。
【0200】
【表2】

【0201】
形質導入の分布:×××−陽性細胞50個以上;××−陽性細胞10〜49個;×−陽性細胞9個未満。
【0202】
【表3】

【0203】
【表4】

【0204】
AAV2−AADC注入
上記の方法を用いて、3匹のアカゲザル(霊長類)の視床に、AAV2−AADC(1×1012vg/ml)を注入した。AAV2−AADCは、細胞内分子である芳香族L−アミノ酸デカルボキシラーゼ(AADC)をコードする。視床AAV2−AADC注入後、穿刺経路から離れた異なる皮質領域で、AADC染色が観察された(データは示されていない)。
【0205】
参考文献−図5〜11
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全ての引用は、それら全体の内容が参照により明確に本明細書に組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療を必要とする患者における皮質性神経学的障害の治療方法であって、対流強化送達(CED)により視床に治療薬を送達することを含む治療方法。
【請求項2】
前記治療薬が治療用タンパク質をコードする核酸を含むウイルス粒子である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ウイルス粒子がAAV粒子である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記AAV粒子が、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8およびAAV9からなる群から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記治療薬がタンパク質である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記皮質性神経学的障害が、外傷性脳損傷、卒中、酵素性機能不全障害、精神医学的障害、神経変性疾患、癲癇および認知障害からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記皮質性神経学的障害が、それぞれ第一および第二視床核から生じる視床皮質投射により神経支配される皮質ニューロンの少なくとも第一および第二の集団に関与し、ここで、視床核は異なる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記皮質性神経学的障害が大脳皮質の1つより多い機能領域に関与する請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記皮質性神経学的障害が大脳皮質の1を超える小葉に関与する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記皮質性神経学的障害が皮質と連結される第三のニューロン集団に関与する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記治療薬が視床の1を超える位置に送達される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記治療薬を送達するために1を超えるカニューレが用いられる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記治療薬の反復送達を包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
視床に両側的に前記治療薬を送達することを包含する、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
対応する視床核に両側的に前記治療薬を送達することを包含する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記治療用タンパク質が送達後少なくとも6ヶ月の間、脳中で産生される、請求項2に記載の方法。
【請求項17】
前記CEDがステッピングを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
トレーシング剤のCEDをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記トレーシング剤がMRI造影増強剤である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
MRIによる前記MRI造影増強剤の組織分布の実時間モニタリングをさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
霊長類における皮質への治療薬の送達方法であって、CEDにより視床に治療薬を送達することを含む方法。
【請求項22】
前記治療薬が視床中の1を超える位置に送達される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記治療薬を送達するために1を超えるカニューレが用いられる、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記治療薬の反復送達を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記治療薬が大脳皮質の1を超える機能領域に送達される、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
前記治療薬が大脳皮質の1を超える小葉に送達される、請求項21に記載の方法。
【請求項27】
前記治療薬が治療用タンパク質をコードする核酸を含むウイルス粒子である、請求項21に記載の方法。
【請求項28】
前記ウイルス粒子がAAV粒子である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記AAV粒子が、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8およびAAV9からなる群から選択される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記治療薬がタンパク質である、請求項21に記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図2F】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2012−516357(P2012−516357A)
【公表日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−548357(P2011−548357)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【国際出願番号】PCT/US2010/022659
【国際公開番号】WO2010/088560
【国際公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【出願人】(592130699)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (364)
【氏名又は名称原語表記】The Regents of The University of California
【Fターム(参考)】