説明

移動体における受信方法及び受信装置

【課題】移動体用受信装置において、ドップラーシフトを補償すること。
【解決手段】ガード相関演算器112で、1シンボル長の複素信号列のうち、ガードインターバルと、複写元であるはずの有効シンボルの所定長の末尾とによる複素相関、ガード相関値を求める。ガードインターバルと、複写元であるはずの有効シンボルの所定長の末尾が、複素信号列として完全に一致していない場合、ガード相関値は複素数となり、偏角を有する。複素重み演算器113において、ガード相関演算器112から出力される複素数の偏角が0となるか、又は最小となるように複素回転角θは更新される。こうして、当該複素回転角θに相当する複素数exp(−jθ)が複素重みとして複素乗算器114に出力される。ドップラーシフト補償及びガード相関改善部110に入力される前に付加された望まない位相差が、疑似固定アンテナ形成部111に入力される前に除去される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は移動体における受信方法及び受信装置に関する。原理的には、2個のアンテナの受信信号からドップラーシフトの補償を行うものである。本発明は直接波の他に1個以上の遅延波を受信する受信環境での移動体での受信方法及び受信装置として有効である。
【背景技術】
【0002】
本発明者らは、車両等で例えば地上デジタル放送を受信する際の受信装置における技術を開発している。例えば特許文献1は、直接波の他に1個以上の遅延波を受信する受信環境で、異なるドップラーシフト(ドップラー周波数偏移)の生じた複数の受信波を、ダイバーシチ受信するための技術を提案したものである。
【特許文献1】特開2006−261813号公報
【0003】
特許文献1の技術の要点は、次の通りである。
2つのアンテナが、それらを結ぶ直線が移動体の移動方向に平行に移動体に固定されている。それらのアンテナの受信波から、仮想的に空間に固定された疑似固定アンテナで受信されるべき信号を合成により算出することが可能である。これにより、移動体の速度により生ずる受信信号のドップラーシフト(ドップラー周波数偏移)を補償した信号を得るものである。
受信波の到来方向が移動体の移動方向と異なる場合であっても、疑似固定アンテナで受信されるべき信号を合成により算出することが可能であること、受信信号のドップラーシフトを補償した信号を得られることにかわりはない。
【0004】
特許文献1に基づき、詳細を説明する。図6.Aは、特許文献1に記載された移動体用受信装置910の構成を示すブロック図である。移動体用受信装置910は、2つのアンテナAF及びABと、それらに対応して設けられた、乗算器(ダウンコンバータ)20F及び20B、可変アナログ増幅器30F及び30B、アナログ/デジタル変換器(A/D)40F及び40Bと、局部発振器10、オートゲインコントローラ(AGC)30、疑似固定アンテナ形成部91、並びに直交復調部51、及び図略の後段の信号処理部とから成る。2つのアンテナAF及びABは間隔がdであって、それらを結ぶ直線が移動体の移動方向に平行となるように配置される。移動体の前側にアンテナAFを、アンテナAFの後ろ側にアンテナABを配置する。
【0005】
移動体用受信装置910における信号処理は以下の通りである。アンテナAFで受信された例えば500MHz帯域の高周波は、乗算器(ダウンコンバータ)20Fにおいて局部発振器10の発する正弦波と乗ぜられて4MHz帯域に変換される。これをAGC30により制御された可変アナログ増幅器30Fにより増幅してA/D40Fでデジタル信号とし、疑似固定アンテナ形成部91に入力される。全く同様にアンテナABの受信信号も、疑似固定アンテナ形成部91に入力される。
【0006】
疑似固定アンテナ形成部91では、次のように疑似固定アンテナにおける受信信号が生成される。シンボルタイミングから、1シンボル長の間の疑似固定アンテナの受信信号を生成する。この際、アンテナAFの位置を0、アンテナABの位置をdとおき、t=0において、アンテナAF及びAB間の予め設定された位置である、アンテナAFから距離x0の位置に疑似固定アンテナを形成するとすると、速度v(t)に対し、疑似固定アンテナの移動体に対する相対位置I(t)はx0+∫v(t)dtとなる。積分はt=0からt=tまでである。こうして、相対位置I(t)の疑似固定アンテナにおける受信信号SSを、位置0のアンテナAFの受信信号SFと位置dのアンテナABの受信信号SBとから、SS=〔{d−I(t)}SF+I(t)SB〕/dにより求める。この信号を直交復調部51に出力し、デジタル複素信号を得て後段の信号処理、例えば高速フーリエ変換と等化処理、誤り訂正及び復号等を行う。
【0007】
上記の疑似固定アンテナ形成部91は、t=0において、アンテナAF及びAB間の予め設定された位置x0から1シンボル長の間、疑似固定アンテナを形成し、次のシンボルタイミングで同様に更新された位置で疑似固定アンテナを形成する。
【0008】
図6.Bは、特許文献1に記載された他の移動体用受信装置920の構成を示すブロック図である。移動体用受信装置920は、2つのアンテナAF及びABと、それらに対応して設けられた、乗算器(ダウンコンバータ)20F及び20B、可変アナログ増幅器30F及び30B、アナログ/デジタル変換器(A/D)40F及び40Bと、局部発振器10、オートゲインコントローラ(AGC)30、疑似固定アンテナ形成部92、並びに直交復調部52、ダイーバーシチ合成部700、及び図略の後段の信号処理部とから成る。2つのアンテナAF及びABは間隔がdであって、それらを結ぶ直線が移動体の移動方向に平行となるように配置される。移動体の前側にアンテナAFを、アンテナAFの後ろ側にアンテナABを配置する。
【0009】
図6.Bの移動体用受信装置920の疑似固定アンテナ形成部92は、2つの疑似固定アンテナを形成する他は、図6.Aの移動体用受信装置910の疑似固定アンテナ形成部91と本質的に全く同等の機能を有する。2つの疑似固定アンテナは、常に異なる位置となるように、アンテナAF及びAB間に形成される。図6.Bの移動体用受信装置920においては、2つの疑似固定アンテナにおける受信信号を出力するので、直交復調部52において2つのデジタル複素信号を得て、ダイバーシチ合成を行う。ダイバーシチ合成部700の構成は、選択ダイバーシチ、等利得合成、最大比合成いずれも選択可能である。合成信号との複素相関演算を行って、信号の位相を揃えると尚好適である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明者らが特許文献1の技術を実機で実験したところ、アンテナAF及びABでの受信波を乗算器(ダウンコンバータ)20F及び20Bで4MHz帯域に変換した後に、各信号の位相が揃えられないことが判明した。即ち、特許文献1の技術のみでは、疑似固定アンテナ形成部91及び92の入力が、希望しない位相が追加されたものを用いることとなり、誤り率が大きくなることが分かった。この位相が追加される理由は、乗算器(ダウンコンバータ)20F及び20Bに入力される高周波の位相のずれ、AGCでの位相のずれ、更には、疑似固定アンテナ形成部91及び92までの伝送経路の差によるものと考えられる。
【0011】
そこで本発明の目的は、例えば特許文献1の技術が十分に効果を上げるように、500MHz帯域の受信波の4MHz帯域への変換時と、ドップラーシフト補償部までの伝送時に加わる各系列の信号の位相差を補正することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の特徴は、本来同じ複素信号から成るべき2つの系列で、複素平面内の一定の回転が生じている場合に当該回転を補償するものであり、その手法として、ガードインターバルとその複写元である有効シンボル区間中の該当部分との複素相関を用いることである。
即ち、請求項1に係る発明は、移動体に設けられた複数個のアンテナで、ガードインターバルを有する信号を受信し、移動体の速度に基づくドップラーシフトの補償された合成信号を生成して後続の信号処理を行う受信方法において、合成信号の、ガードインターバル部分と、その複写元である有効シンボル区間中の該当部分との複素相関をガード相関値として求め、複素数である当該ガード相関値の偏角を0又は極小値とするように、合成信号を生成するための入力信号である複素信号に、複素平面内で回転を生ずる複素重みを乗ずることを特徴とする受信方法である。
【0013】
請求項2に係る発明は、方法発明である請求項1に係る発明を装置発明としたものである。
即ち、請求項2に係る発明は、移動体に設けられた複数個のアンテナで、ガードインターバルを有する信号を受信し、移動体の速度に基づくドップラーシフトの補償された合成信号を生成するドップラーシフト補償部を有する受信装置において、ドップラーシフト補償部の出力である合成信号の、ガードインターバル部分と、その複写元である有効シンボル区間中の該当部分との複素相関をガード相関値として求めるガード相関演算器と、ガード相関演算器の出力する、複素数である当該ガード相関値の偏角を0又は極小値とするように、ドップラーシフト補償部の入力信号である複素信号に複素平面内で回転を生ずる複素重みを乗ずるための、複素重み算出器と複素乗算器を有することを特徴とする受信装置である。
請求項3に係る発明は、ドップラーシフト補償部は、複数個のアンテナの受信信号を用いて、擬似的に固定されたアンテナでの受信信号を算出するものであることを特徴とする。
請求項4に係る発明は、ドップラーシフト補償部の入力は、複数個のアンテナで受信された信号から、周波数が1/10以下の帯域の信号に変換する周波数変換器の出力であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
ドップラーシフト補償部に入力される2つの複素信号系列に、複素平面内の一定の回転の差が生じている場合には当該回転を補償すれば良い。実際、受信装置が起動した後は、周波数変換器で付加される位相(偏角)、AGCで付加される位相(偏角)、伝送経路差に基づき付加される位相(偏角)を、ドップラーシフト補償部の入力前に補償する。
この際、ガードインターバルとその複写元である有効シンボル区間中の該当部分との複素相関を用いれば、的確に補償が可能となる。位相(偏角)の補償は、1シンボルごとに補償量を更新することが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、特許文献1で記載された、疑似固定アンテナの受信信号を生成することでドップラーシフト補償を実行する例を示すが、本発明は、他の任意のドップラーシフト補償部を用いる場合に適用可能である。
また、具体例として、地上デジタル放送を想定し、OFDM復調を想定しているが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例1】
【0016】
図1.Aは、本発明の具体的な一実施例である移動体用受信装置100の構成を示すブロック図、図1.Bは、その構成の一部であるドップラーシフト補償及びガード相関改善部110の構成の詳細を示すブロック図である。図1.Aの移動体用受信装置100の構成は、図6.Aの移動体用受信装置910の構成の疑似固定アンテナ形成部91と直交復調部51を、直交復調部50とドップラーシフト補償及びガード相関改善部110の構成に置き換えたものである。
【0017】
図1.Aの移動体用受信装置100は、アナログ/デジタル変換器(A/D)40F及び40Bからの出力、及びそれらに基づきオートゲインコントローラ(AGC)30が作用する部分までは、図6.Aの移動体用受信装置910の構成及び作用と全く同等である。
図1.Aの移動体用受信装置100のアナログ/デジタル変換器(A/D)40F及び40Bからの出力は、オートゲインコントローラ(AGC)30に入力される他に、直交復調部50に入力される。こうして、アナログ/デジタル変換器(A/D)40Fの出力である中間周波数信号(IF信号)と、アナログ/デジタル変換器(A/D)40Bの出力であるIF信号とが、各々、直交復調部50にて直交復調され、2系列の複素ベースバンド信号としてドップラーシフト補償及びガード相関改善部110に入力される。以下、図1.Bで説明する。
【0018】
図1.Bに示す通り、ドップラーシフト補償及びガード相関改善部110は、疑似固定アンテナ形成部111、ガード相関演算器112、複素重み算出器113及び複素乗算器114とから成る。
直交復調部50の2系列の複素ベースバンド信号の出力のうち、アナログ/デジタル変換器(A/D)40Fの出力であるIF信号を直交復調した複素ベースバンド信号の系列は、直接疑似固定アンテナ形成部111に入力される。一方、直交復調部50の2系列の複素ベースバンド信号の出力のうち、アナログ/デジタル変換器(A/D)40Bの出力であるIF信号を直交復調した複素ベースバンド信号の系列は、複素乗算器114に入力され、複素重み算出器113の出力する複素重みと乗ぜられた後、疑似固定アンテナ形成部111に入力される。疑似固定アンテナ形成部111には、別途シンボルタイミングと移動体の速度v(t)が入力され、これを元に、特許文献1の技術に従い、ドップラーシフトの補償された合成信号が生成され、1シンボル長毎に後段の信号処理が行われる。
【0019】
複素乗算器114に入力される複素重み算出器113の出力は、次のように決定される。
疑似固定アンテナ形成部111の出力は、1シンボル長毎にガード相関演算器112にも入力される。1シンボル長は、ガードインターバルと、それに続く有効シンボルとから成る。ここで、ガードインターバルは、送信側において、有効シンボルの所定長の末尾をそのまま付加したものである。そこで、ガード相関演算器112においては、1シンボル長の複素ベースバンド信号列のうち、ガードインターバルと、複写元であるはずの有効シンボルの所定長の末尾とによる複素相関を求める。これをガード相関値と呼ぶ。例えば、ガードインターバルと、複写元であるはずの有効シンボルの所定長の末尾が、複素ベースバンド信号列として完全に一致しているならば、それらの複素相関であるガード相関値は正の実数となる。しかし、ガードインターバルと、複写元であるはずの有効シンボルの所定長の末尾が、複素ベースバンド信号列として完全に一致していない場合、それらの複素相関であるガード相関値は複素数となり、偏角(位相)を有する。
【0020】
そこで、複素重み演算器113においては、ガード相関演算器112から複素数としてガード相関値が入力され、偏角が算出される。当該偏角に基づいて、例えば逐次更新によより複素回転角θが算出される。複素回転角θは、ガード相関演算器112から出力される複素数の偏角が0となるか、又は偏角の絶対値が最小となるように更新されるものとする。こうして、当該複素回転角θに相当する複素数exp(−jθ)が複素重みとして複素乗算器114に出力される。尚、ここでjは虚数単位である。
こうして、アンテナAF及びABで受信された高周波が、4MHz帯域に変換されてドップラーシフトを補償される際、ドップラーシフト補償及びガード相関改善部110に入力される前に付加された望まない位相差が、疑似固定アンテナ形成部111に入力される前に除去されることとなる。
【0021】
上記構成の移動体用受信装置100の、ドップラーシフト補償及びガード相関改善部110の効果を確かめるため、以下のようなシミュレーションを順次行った。
シミュレーションで使用した伝送パラメータは、地上デジタル放送ISDB-T(Integrated Services Digital Broadcasting-Terrestrial)のMode3とした。伝搬路モデルは、ランダムな方向より等電力で2波が到来する2波等電力・高速レイリーフェージングとし、シンボル長で正規化したドップラー周波数fdtsは0.1とした。このとき、2波の遅延時間差は2μ秒とした。また、受信するアレーアンテナの素子数は2とし、アンテナ素子間間隔は0.1波長とした。遅延波はサンプリングレートで16サンプル遅れとし、サブキャリアは5617本とした。尚、ドップラー補償処理の過程において、車速情報は既知であるとし、周波数オフセットはいずれのアンテナにおいても存在しないものとした。
【0022】
〔シミュレーション−アンテナ間の位相差とガード相関値の位相(偏角)との関係〕
まず、本発明を適用しない場合を想定した。一方のアンテナの受信信号に対して一定の位相誤差をアンテナ間の位相差として付加し、その後ドップラー補償処理を適用したときの誤り率を評価した。これは、図1.Bの構成で、複素重み演算器113をガード相関演算器112から切り離し、複素重み演算器113の作用を望まない位相差を付加させるように構成したものである。
本シミュレーションの結果を図2に示す。位相差0の理想的な条件に対して、位相差が大きくなるほど特性が悪化することがわかった。位相差が10度を超えたところから受信特性が大きく劣化し始め、位相誤差が15度以上になると、信号対雑音電力比(SNR)が改善されてもビット誤り率(BER)が良くならないことがわかる。このシミュレーション結果から、実際のハードウェア上でシミュレーションと同等の特性を実現するためには、アンテナ間位相誤差を10度以下に押さえる必要があることが明らかになった。
【0023】
次に、上記シミュレーション−1と同様に複素重み演算器113をガード相関演算器112から切り離し、複素重み演算器113で発生させた望まない位相差と、ガード相関演算器112の出力から得られるガード相関値の位相を関係付けた。結果を図3と図4に示す。
図3のグラフの横軸は、複素重み演算器113で発生させた望まない位相差であり、縦軸は500シンボル分のガード相関値の位相(偏角)の平均をそれぞれ示している。望まない位相差とガード相関値の位相が線形であり、両者の絶対値はほぼ等しくなることが分かった。また、図3では劣悪な条件であるSNRが0dBの場合と、比較的良好な条件であるSNRが30dBの場合とを示しているが、いずれの結果もほぼ同様であることが分かる。即ち、望まない位相差とガード相関値の位相の関係は、SNRに依存していないことが明らかになった。
図4は、500シンボルのガード相関値の位相の分散を、複素重み演算器113で発生させた望まない位相差ごとにまとめたものである。望まない位相差が40度以下では、ドップラー補償後のガード相関値の位相(偏角)変動はほとんどないが、アンテナ間位相誤差が60度以上になるとガード相関値の位相(偏角)の分散値が若干大きくなる傾向がある。
【0024】
〔シミュレーション−本発明〕
上記結果より、ガード相関演算器112の出力するガード相関値の位相を0又は極小となるように、複素重み演算器113にて回転角θを算出及び更新し、当該回転角θに対応する複素重みexp(−jθ)を複素乗算器114に出力すれば良いことが分かる。
本発明のシミュレーション結果を図5に示す。図5の結果は、ガード相関演算器112を複素重み演算器113と接続して本来の移動体用受信装置100とした上、別途直交復調部50の出力のうち、アナログ/デジタル変換器(A/D)40Bの出力であるIF信号を直交復調した複素ベースバンド信号の系列に位相差に対応した複素平面内での回転を生じさせたものである。
図5に示す通り、アンテナ間の位相差の大きさに関わらず、同じBER特性が得られていることがわかる。図4の結果からはアンテナ間の位相差が大きい場合におけるガード相関値の位相(偏角)変動が悪影響を及ぼす可能性が考えられたが、アンテナ間の位相差が小さい場合と同様に良好な結果となった。
【0025】
〔変形例〕
上記各実施例においては、疑似固定アンテナの開始位置を、2つのアンテナ間の予め設定された位置とし、シンボルごとに更新するものとしたが、2つのアンテナ間で疑似固定アンテナの開始位置候補を複数設定し、当該各位置における合成信号の振幅に基づき選択する構成としても良い。この場合、当該選択のための演算時間が必要となるので、ガードインターバルを有するOFDM方式の受信装置に適用すると好適である。
その他特許文献1に記載の、2本の受信アンテナの受信信号から、2本の疑似固定アンテナでの受信信号を算出することによるダイバーシチ合成、4本の受信アンテナの受信信号から、4本の疑似固定アンテナによるダイバーシチ合成を行う受信装置としても良い。
或いは特開2004−221808に示すような帯域分割ダイバーシチ合成を用いても良い。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は地上波デジタルテレビ放送を受信するために移動体に設けられる受信装置に適用すると好適である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】1.Aは、本発明の具体的な一実施例である移動体用受信装置100の構成を示すブロック図、1.Bは、ドップラーシフト補償及びガード相関改善部110の構成の詳細を示すブロック図。
【図2】実施例の効果を説明するための第1のシミュレーション結果を示すグラフ図。
【図3】実施例の効果を説明するための第2のシミュレーション結果を示すグラフ図。
【図4】実施例の効果を説明するための第3のシミュレーション結果を示すグラフ図。
【図5】実施例の効果を説明するための第4のシミュレーション結果を示すグラフ図。
【図6】特許文献1に記載された2つの移動体用受信装置910及び920の構成を示すブロック図。
【符号の説明】
【0028】
100:移動体用受信装置
F、AB:アンテナ
10:局部発振器
20F、20B:乗算器
30:オートゲインコントローラ(AGC)
30F、30B:可変アナログ増幅器
40F、40B:アナログ/デジタル変換器(A/D)
50:直交復調部
110:ドップラーシフト補償及びガード相関改善部
111:疑似固定アンテナ形成部
112:ガード相関演算器
113:複素重み算出器
114:複素乗算器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に設けられた複数個のアンテナで、ガードインターバルを有する信号を受信し、移動体の速度に基づくドップラーシフトの補償された合成信号を生成して後続の信号処理を行う受信方法において、
前記合成信号の、ガードインターバル部分と、その複写元である有効シンボル区間中の該当部分との複素相関をガード相関値として求め、
複素数である当該ガード相関値の偏角を0又は極小値とするように、前記合成信号を生成するための入力信号である複素信号に、複素平面内で回転を生ずる複素重みを乗ずることを特徴とする受信方法。
【請求項2】
移動体に設けられた複数個のアンテナで、ガードインターバルを有する信号を受信し、移動体の速度に基づくドップラーシフトの補償された合成信号を生成するドップラーシフト補償部を有する受信装置において、
前記ドップラーシフト補償部の出力である合成信号の、ガードインターバル部分と、その複写元である有効シンボル区間中の該当部分との複素相関をガード相関値として求めるガード相関演算器と、
ガード相関演算器の出力する、複素数である当該ガード相関値の偏角を0又は極小値とするように、前記ドップラーシフト補償部の入力信号である複素信号に複素平面内で回転を生ずる複素重みを乗ずるための、複素重み算出器と複素乗算器を有することを特徴とする受信装置。
【請求項3】
前記ドップラーシフト補償部は、前記複数個のアンテナの受信信号を用いて、擬似的に固定されたアンテナでの受信信号を算出するものであることを特徴とする請求項2に記載の受信装置。
【請求項4】
前記ドップラーシフト補償部の入力は、前記複数個のアンテナで受信された信号から、周波数が1/10以下の帯域の信号に変換する周波数変換器の出力であることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の受信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−109956(P2010−109956A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−282644(P2008−282644)
【出願日】平成20年11月3日(2008.11.3)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【出願人】(504143441)国立大学法人 奈良先端科学技術大学院大学 (226)
【Fターム(参考)】