説明

移動無線端末装置

【課題】複数の基地局のカバーエリアが重なり合う場所に位置する場合でも、高い下り受信速度が得られる基地局をユーザが認識できる移動無線端末装置を提供する。
【解決手段】制御部100は、無線通信部10を制御して、接続可能な基地局装置について、受信電力レベルだけでなく、システム帯域幅FwやDL-MAPを受信して、これらに基づいて運用状況が判る混雑度Trを求めるとともに、CQIを測定して、これらの情報に基づいて接続した場合の予測レートErを求め、これらの情報をユーザに報知するようにしたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ネットワークに収容される無線基地局装置と無線通信する移動無線端末装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、無線LANと同様に、IEEE(米国電気電子学会)で承認されたモバイルWiMAX(IEEE 802.16e)のサービスが開始されつつある(例えば、非特許文献1、2参照)。モバイルWiMAX規格が無線LAN規格と大きく異なる点は、移動を伴う通信環境を想定してシステム設計された無線規格であり、セル半径は3km以内、移動速度120km/h以内に対応できる。
【0003】
サービス提供を開始した当初においては、ノートPC等で運用するために、PCカードタイプの無線機を提供し、徐々に、その他の小型端末に搭載可能な無線モジュールを提供する見込みである。
【0004】
またモバイルWiMAXの端末は、移動しながら運用できるようにした無線LANの端末の進化版という位置付けである。このため、現在の携帯電話機のように、契約している通信事業者網に自動的に接続されるのではなく、無線LANの端末と同様に、端末が初期サーチを行い、通信事業者(または基地局毎)の下り受信レベルを測定してこれをバー表示し、この表示を見たユーザが希望の通信事業者(または基地局)を選択して接続を行うという手順が想定されている。なお、このような接続処理は、端末上で実行されるコネクションマネージャにより行われている。
【0005】
また近年、移動通信の分野において、適応変調技術を利用した移動通信サービスが開始されつつある。このサービスは、基地局が、そのカバーエリア内の各移動局の受信品質測定結果に基づいて、各移動局に対する周波数リソース配分をベストエフォートに基づいて行うものである。
【0006】
具体的には、上記適応変調技術を採用した通信方式においては、移動局は現在の下り受信品質を測定し、その情報を基地局にフィードバックする。そして、基地局は各移動局から通知された受信品質を元にベストエフォート型のスケジューラを利用し、通信を行う移動局に対して、周波数リソースサイズ、変調方式および誤り訂正符号化率の組み合わせ(MCS)を決定する。
【0007】
そして、基地局は、報知チャネルを通じて、移動局の識別情報と、上記MCSと、周波数リソース位置とを対応づけて、移動局に通知する。これに対して、移動局は、上記報知チャネルを通じて、自己の識別情報を含む情報を受信することにより、自己宛てのリソースを通じて送信データを受信し、デコードを行う。このとき、1ユーザ(あるいは1サービス)に対して使用される周波数リソースの最小単位についても通知されることが一般的である。
【0008】
したがって、基地局は、カバーエリア内に存在する移動局(ユーザ)が多い場合には、各移動局に対して周波数リソースを少なく割り当てることで、数多くの移動局に対してサービスを提供する。反対に、カバーエリア内に存在する移動局が少ない場合には、各移動局に対して周波数リソースを多く割り当てることができる。このため、下り回線の受信品質が同じ場合でも、移動局の数が多くなるほど、下りの受信速度は低くなる。
【0009】
適応変調技術を採用したシステムの一例として、OFDMAシステムがある。近年、規格化が進められている、OFDMAシステムを利用した無線システムは、複数のシステム帯域に対応できる。このため、この無線システムでは、移動局は、まず基地局に対して周波数同期および時間同期をそれぞれ確立し、その後、基地局から報知情報を受信することでシステム帯域を把握し、通信を開始するのが一般的である。
【0010】
しかしながら、適応変調技術を利用した無線システムでは、例えばカバーエリア内のユーザ数によって、移動局に割り当てられる周波数リソースは大きく変動するため、下り回線の受信品質や受信レベルが良好であっても、必ずしも下り受信速度が高くなるとは限らない。
【0011】
このため、複数の基地局のカバーエリアが重なり合う場所に位置する移動局は、下り回線の受信品質や受信レベルに基づいて、基地局を選択しても、必ずしも下り受信速度が高くなるとは限らないという問題があった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】IEEE 802.16-2004
【非特許文献2】IEEE 802.16e-2005
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従来では、複数の基地局のカバーエリアが重なり合う場所に位置する移動局は、下り回線の受信品質や受信レベルに基づいて、基地局を選択しても、必ずしも下り受信速度が高くなるとは限らないという問題があった。
この発明は上記の問題を解決すべくなされたもので、例えば、複数の基地局のカバーエリアが重なり合う場所に位置する場合などでも、高い下り受信速度が得られる基地局をユーザが認識できる移動無線端末装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達成するために、この発明は、ネットワークに収容される無線基地局から無線リソースを割り当てられて無線通信を行う移動無線端末装置において、複数の無線基地局について、それぞれ他の移動無線端末装置に対して割り当てている無線リソースを検出する割当状況検出手段と、この割当状況検出手段の検出結果に基づいて、当該移動無線端末装置に対して割り当てられる無線リソース量を推定する割当推定手段と、この割当推定手段の推定結果を、無線基地局毎に表示する表示手段とを具備して構成するようにした。
【発明の効果】
【0015】
以上述べたように、この発明では、複数の無線基地局について、それぞれ他の移動無線端末装置に対して割り当てている無線リソースを検出し、これより当該移動無線端末装置に対して割り当てられる無線リソース量を推定し、この推定結果を無線基地局毎に表示するようにしている。
【0016】
したがって、この発明によれば、無線基地局毎に、割り当てられる無線リソースの推定量をユーザに示すことができるので、例えば複数の基地局装置のカバーエリアが重なり合う場所に位置する場合でも、高い下り受信速度が得られる基地局をユーザが認識できる移動無線端末装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】この発明に係わる移動無線端末装置の構成を示す回路ブロック図。
【図2】図1に示した移動無線端末装置と通信する基地局装置のカバーエリアの一例を示す図。
【図3】第1の実施形態に係わる移動無線端末装置の動作を説明するためのフローチャート。
【図4】第2の実施形態に係わる移動無線端末装置の動作を説明するためのフローチャート。
【図5】第2の実施形態に係わる移動無線端末装置が作成するヒストグラムの一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、この発明の一実施形態について説明する。
(第1の実施形態)
図1は、この発明の一実施形態に係わる移動無線端末装置UEの構成を示すブロック図である。この移動無線端末装置UEは、携帯電話機などのモバイル機器であって、図1に示すように、主な構成要素として、制御部100と、無線通信部10と、表示部20と、通話部30と、操作部40と、記憶部50とを備え、モバイルWiMAX(IEEE 802.16e)規格に準拠した通信方式により基地局装置BSと無線通信し、移動通信網NWを介して通信する通信機能を備える。
【0019】
無線通信部10は、制御部100の指示にしたがって、移動通信網NWに収容された基地局装置BSと無線通信を行うものであって、音声データや電子メールデータなどの送受信、Webデータやストリーミングデータなどの受信を行う。また無線通信部10は、制御部100から指定された周波数帯域の受信電力レベルを測定し、これを制御部100に通知する。
【0020】
表示部20は、制御部100の制御により、画像(静止画像および動画像)や文字情報などを表示して、視覚的にユーザに情報を伝達するものである。
【0021】
通話部30は、スピーカ31やマイクロホン32を備え、マイクロホン32を通じて入力されたユーザの音声を制御部100にて処理可能な音声データに変換して制御部100に出力したり、無線通信部10を介して通話相手などから受信した音声データを復号してスピーカ31から出力するものである。
操作部40は、複数のキースイッチなどを備え、これを通じてユーザから指示を受け付けるものである。
【0022】
記憶部50は、制御部100の制御プログラムや制御データ、アプリケーションソフトウェア、通信相手の名称や電話番号などを対応づけたアドレスデータ、送受信した電子メールのデータ、WebブラウジングによりダウンロードしたWebデータや、ダウンロードしたコンテンツデータを記憶し、またストリーミングデータなどを一時的に記憶するものである。なお、記憶部50は、HDD、RAM、ROM、ICメモリなどの1つまたは複数の記憶手段を含むものである。
【0023】
制御部100は、マイクロプロセッサを備え、記憶部50が記憶する制御プログラムや制御データにしたがって動作し、当該移動無線端末装置UEの各部を統括して制御するものであって、例えば音声通信やデータ通信を行うために、通信系の各部を制御する通信制御機能と、電子メールの作成や送受信を行うためのメールソフトウェアや、Webブラウジングを行うためのブラウザソフトウェア、ストリーミングデータのダウンロードや再生を行うためのメディア再生ソフトウェアなどを実行し、これらに係わる各部を制御するアプリケーション処理機能を備える。
【0024】
次に、第1の実施形態に係わる移動無線端末装置UEの動作について説明する。以下の説明では、基地局装置に接続した後の通信処理についての説明は省略し、通信を開始する前に実施されるアクセスポイント選択処理について説明する。このアクセスポイント選択処理、ユーザに対して、接続可能な基地局装置をリスト化して示し、このリストからユーザが接続する基地局装置を選択する処理である。
【0025】
また以下の説明では、図2に示すような環境に、当該移動無線端末装置UEが置かれている場合を例に挙げて説明する。すなわち、当該移動無線端末装置UEは、基地局装置BSaが形成するカバーエリアZaと、基地局装置BSbが形成するカバーエリアZbとが重なるエリアに位置し、どちらの基地局装置とも通信が可能な場所に位置する。なお、当該移動無線端末装置UEは、基地局装置BSbよりも基地局装置BSaの方が高い受信電力レベルが得られるものの、カバーエリアZa内には、カバーエリアZb内よりも、多くの移動無線端末装置が存在しているものとする。
【0026】
図3は、上記アクセスポイント選択処理を説明するためのフローチャートである。この処理は、制御部100が、記憶部50が記憶する制御プログラムや制御データにしたがって動作することにより実現する。すなわち、アクセスポイント選択処理の制御プログラムや制御データは、記憶部50に記憶されている。この処理は、電源が投入されたり、ユーザからの通信要求に応じて開始される。
【0027】
まず、ステップ3aにおいて制御部100は、無線通信部10を制御して、各基地局装置が定常的に送信している、時分割されたフレーム先頭の報知チャネルを受信して、このチャネルを通じて報知される情報から各基地局装置のシステム帯域幅Fwを検出するとともに、各基地局装置のシステム帯域について、受信電力レベルPを測定し、ステップ3bに移行する。
【0028】
すなわち、図2に示す例では、基地局装置BSaのシステム帯域幅Fw_aが5MHzであることを検出し、一方、基地局装置BSbのシステム帯域幅Fw_bが10MHzであることを検出する。また基地局装置BSaおよび基地局装置BSbのシステム帯域について、それぞれ受信電力レベルP_a、P_bを測定する。
【0029】
ステップ3bにおいて制御部100は、無線通信部10を制御して、各基地局が送信するDL-MAPを受信して、このDL-MAPに基づいて、各基地局装置のユーザ数Nを検出し、ステップ3cに移行する。すなわち、図2に示す例では、カバーエリアZa内に位置し、基地局装置BSaと通信する移動無線端末装置の数N_aと、カバーエリアZb内に位置し、基地局装置BSbと通信する移動無線端末装置の数N_bをそれぞれ検出する。
【0030】
ステップ3cにおいて制御部100は、無線通信部10を制御して、各基地局装置から報知チャネルを通じて送信される既知の信号を受信して、CQI(Channel Quality Indicator)の測定を行い、ステップ3dに移行する。すなわち、図2に示す例では、基地局装置BSaから送信される報知チャネルを受信して、基地局装置BSaについてのCQIであるCQI_aを測定するとともに、基地局装置BSbから送信される報知チャネルを受信して、基地局装置BSbについてのCQIであるCQI_bを測定する
ステップ3dにおいて制御部100は、ステップ3aで検出したシステム帯域幅と、ステップ3bで検出したユーザ数に基づいて、各基地局装置における通信の混雑度Trを求め、ステップ3eに移行する。すなわち、図2に示す例では、基地局装置BSaにおける通信の混雑度Tr_aをFw_a/N_aとして求め、同様に、基地局装置BSbにおける通信の混雑度Tr_bをFw_b/N_bとして求める。
【0031】
ステップ3eにおいて制御部100は、各基地局について、ステップ3cで求めたCQIと、ステップ3dで求めた混雑度Trに基づいて、当該移動無線端末装置に割り当てられる無線リソースで得られる通信レートを予測して予測レートErを得て、ステップ3fに移行する。すなわち、図2に示す例では、基地局装置BSaについての予測レートEr_aをCQI_a/Tr_aから求め、同様に、基地局装置BSbについての予測レートEr_bをCQI_b/Tr_bから求める。
【0032】
ステップ3fにおいて制御部100は、表示部20を制御して、通信可能な基地局装置の識別情報をリスト化して表示するとともに、この識別情報に対応づけて、それぞれ、受信電力レベルP、予測レートEr、混雑度Tr、システム帯域幅Fwなどの情報を表示し、ステップ3gに移行する。すなわち、図2に示す例では、基地局装置BSaと基地局装置BSbの識別情報をそれぞれ表示するとともに、この識別情報にそれぞれ対応づけて、ステップ3a〜3eで求めた情報を表示する。これによりユーザは、通信可能な基地局の受信電力レベルだけでなく、運用状況や、接続した場合の予測レートなどが把握できる。
【0033】
ステップ3gにおいて制御部100は、操作部40を通じて、ユーザから接続する基地局装置の指定を受け付け、ステップ3hに移行する。例えば、図2に示す例の場合、当該移動無線端末装置は、基地局装置BSbよりも基地局装置BSaの方が近いために、基地局装置BSaの受信電力レベルが高く検出されるが、ステップ3fにて表示される情報を参照することにより、ユーザは、基地局装置BSbよりも基地局装置BSaの方が必ずしも高速な通信ができるとは限らないことを理解する。
【0034】
ステップ3hにおいて制御部100は、無線通信部10を制御して、ステップ3gで指定された基地局装置に接続し、この基地局を通じた通信を開始する。ここで例えば、ユーザが基地局装置BSaの混雑状況を踏まえて、ステップ3gで基地局装置BSbを指定したとすると、制御部100は無線通信部10を制御し、基地局装置BSbに接続する。
【0035】
以上のように、上記構成の移動無線端末装置では、接続可能な基地局装置について、受信電力レベルだけでなく、システム帯域幅Fwや運用状況が判る混雑度Tr、接続した場合の予測レートErなどの情報をユーザに報知するようにしている。
したがって、上記構成の移動無線端末装置によれば、ユーザは、接続を行う前に、各基地局装置の運用状況などを知ることができるので、複数の基地局装置のカバーエリアが重なり合う場所に位置する場合でも、高い下り受信速度が得られる基地局を選択することができる。
【0036】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係わる移動無線端末装置UEについて説明する。なお、構成は、図1に示した第1の実施形態に係わる移動無線端末装置UEを見かけ上は同じであることより、図1を参照して説明する。また以下の説明では、基地局装置に接続した後の通信処理についての説明は省略し、通信を開始する前に実施されるアクセスポイント選択処理について説明する。このアクセスポイント選択処理、ユーザに対して、接続可能な基地局装置をリスト化して示し、このリストからユーザが接続する基地局装置を選択する処理である。また以下の説明では、第1の実施形態と同様に、図2に示すような環境に、当該移動無線端末装置UEが置かれている場合を例に挙げて説明する。
【0037】
図4は、上記アクセスポイント選択処理を説明するためのフローチャートである。この処理は、制御部100が、記憶部50が記憶する制御プログラムや制御データにしたがって動作することにより実現する。すなわち、アクセスポイント選択処理の制御プログラムや制御データは、記憶部50に記憶されている。この処理は、電源が投入されたり、ユーザからの通信要求に応じて開始される。
【0038】
まず、ステップ4aにおいて制御部100は、無線通信部10を制御して、各基地局装置が定常的に送信している報知チャネルを受信して、このチャネルを通じて報知される情報から各基地局装置のシステム帯域幅Fwを検出するとともに、各基地局装置のシステム帯域について、受信電力レベルPを測定し、ステップ4bに移行する。
【0039】
すなわち、図2に示す例では、基地局装置BSaのシステム帯域幅Fw_aが5MHzであることを検出し、一方、基地局装置BSbのシステム帯域幅Fw_bが10MHzであることを検出する。また基地局装置BSaおよび基地局装置BSbのシステム帯域について、それぞれ受信電力レベルP_a、P_bを測定する。
【0040】
ステップ4bにおいて制御部100は、無線通信部10を制御して、各基地局装置と通信する移動無線端末装置のMCS(Modulation and Coding set)を受信して、この受信したMCSに基づいて、各基地局装置のユーザ数Nを検出し、ステップ4cに移行する。すなわち、図2に示す例では、カバーエリアZa内に位置し、基地局装置BSaと通信する移動無線端末装置の数N_aと、カバーエリアZb内に位置し、基地局装置BSbと通信する移動無線端末装置の数N_bをそれぞれ検出する。
【0041】
ステップ4cにおいて制御部100は、無線通信部10を制御して、各基地局装置からPilot信号等の既知の信号を受信して、CQI(Channel Quality Indicator)の測定を行い、ステップ4dに移行する。すなわち、図2に示す例では、基地局装置BSaから送信される既知信号を受信して、基地局装置BSaについてのCQIであるCQI_aを測定するとともに、基地局装置BSbから送信される既知信号を受信して、基地局装置BSbについてのCQIであるCQI_bを測定する
ステップ4dにおいて制御部100は、ステップ4aで検出したシステム帯域幅と、ステップ4bで検出したユーザ数に基づいて、各基地局装置における通信の混雑度Trを求め、ステップ4eに移行する。すなわち、図2に示す例では、基地局装置BSaにおける通信の混雑度Tr_aをFw_a/N_aとして求め、同様に、基地局装置BSbにおける通信の混雑度Tr_bをFw_b/N_bとして求める。
【0042】
ステップ4eにおいて制御部100は、各基地局について、ステップ4cで求めたCQIと、ステップ4dで求めた混雑度Trに基づいて、当該移動無線端末装置に割り当てられる無線リソースで得られる通信レートを予測して初期予測レートEr0を得て、ステップ4fに移行する。すなわち、図2に示す例では、基地局装置BSaについての初期予測レートEr0_aをCQI_a/Tr_aから求め、同様に、基地局装置BSbについての初期予測レートEr0_bをCQI_b/Tr_bから求める。
【0043】
ステップ4fにおいて制御部100は、ステップ4bで得たMCSに基づいて、基地局装置毎に、MCSのヒストグラムhist(頻度分布)を作成し、ステップ4gに移行する。すなわち、図2に示す例では、基地局装置BSaと通信する移動無線端末装置のMCSのヒストグラムhist_aと、基地局装置BSbと通信する移動無線端末装置のMCSのヒストグラムhist_bをそれぞれ求める。ここで、図5に示すようなヒストグラムが作成されたものとする。
【0044】
ステップ4gにおいて制御部100は、基地局装置毎に、ステップ4fで求めたヒストグラムの中央値(あるいは平均値)CVを求めるとともに、この中央値CVと、ステップ4cで得たCQIとの差D=CQI*k-CV(kは、定数)を求め、ステップ4hに移行する。すなわち、図2に示す例では、基地局装置BSaについては、hist_aの中央値CV_aを求めるとともに、この中央値CV_aと、ステップ4cで得たCQI_aとの差D_a=CQI_a*k-CV_aを求める。同様にして、基地局装置BSbについては、hist_bの中央値CV_bを求めるとともに、この中央値CV_bと、ステップ4cで得たCQI_bとの差D_b=CQI_b*k-CV_bを求める。
【0045】
ステップ4hにおいて制御部100は、ステップ4gで求めた差Dに応じた補正係数wを、ステップ4eで求めた初期予測レートEr0に乗じて補正し、予測レートEr=Er0*wを得る。図2に示す例では、ステップ4gで求めた差D_aに応じた補正係数w_aを、ステップ4eで求めた初期予測レートEr0_aに乗じて補正し、予測レートEr_a=Er0_a*w_aを得る。同様にして、ステップ4gで求めた差D_aに応じた補正係数w_bを、ステップ4eで求めた初期予測レートEr0_bに乗じて補正し、予測レートEr_b=Er0_b*w_bを得る。
【0046】
なお、差Dが0の場合は、補正係数wは1とし、差Dが0より大きい場合は、差Dに応じた1よりも大きく2以下の補正係数wを設定し、差Dが0より小さい場合は、差Dに応じた0以上1未満の補正係数wを設定する。処理を簡単にするために、差Dが0の場合は、補正係数wは1とし、差Dが0より大きい場合は、補正係数wを1.5に設定し、差Dが0より小さい場合は、補正係数wを0.5に設定するようにしてもよい。
【0047】
図2に示す例では、ヒストグラムhist_aおよびhist_bが、CQI_aおよびCQI_bと図5に示すような位置関係にあることより、補正係数w_aは1未満の値が設定され、一方、補正係数w_bは1よりも大きな値が設定される。これにより、初期予測レートEr0_aは、小さな値に補正され、一方、初期予測レートEr0_bは大きな値に補正される。
【0048】
ステップ4iにおいて制御部100は、表示部20を制御して、通信可能な基地局装置の識別情報をリスト化して表示するとともに、この識別情報にそれぞれ対応づけて、受信電力レベルP、予測レートEr、混雑度Tr、システム帯域幅Fwなどの情報を表示し、ステップ4jに移行する。すなわち、図2に示す例では、基地局装置BSaと基地局装置BSbの識別情報をそれぞれ表示するとともに、これに対応づけて、ステップ4a〜4hで求めた情報を表示する。これによりユーザは、通信可能な基地局の受信電力レベルだけでなく、運用状況や、接続した場合の予測レートなどが把握できる。
【0049】
ステップ4jにおいて制御部100は、操作部40を通じて、ユーザから接続する基地局装置の指定を受け付け、ステップ4kに移行する。例えば、図2に示す例の場合、当該移動無線端末装置は、基地局装置BSbよりも基地局装置BSaの方が近いために、基地局装置BSaの受信電力レベルが高く検出されるが、ステップ4iにて表示される情報を参照することにより、ユーザは、基地局装置BSbよりも基地局装置BSaの方が必ずしも高速な通信ができるとは限らないことを理解する。
【0050】
ステップ4kにおいて制御部100は、無線通信部10を制御して、ステップ4jで指定された基地局装置に接続し、この基地局を通じた通信を開始する。ここで例えば、ユーザが基地局装置BSaの混雑状況を踏まえて、ステップ4jで基地局装置BSbを指定したとすると、制御部100は無線通信部10を制御し、基地局装置BSbに接続する。
【0051】
以上のように、上記構成の移動無線端末装置では、接続可能な基地局装置について、受信電力レベルだけでなく、システム帯域幅Fwや運用状況が判る混雑度Tr、各基地局装置と通信する移動無線端末装置のMCSのヒストグラム、およびこのヒストグラムとCQIに基づいて補正した予測レートErなどの情報をユーザに報知するようにしている。
【0052】
したがって、上記構成の移動無線端末装置によれば、ユーザは、接続を行う前に、各基地局装置の運用状況などを知ることができるので、複数の基地局装置のカバーエリアが重なり合う場所に位置する場合でも、高い下り受信速度が得られる基地局を選択することができる。
【0053】
なお、この発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また上記実施形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることによって種々の発明を形成できる。また例えば、実施形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除した構成も考えられる。さらに、異なる実施形態に記載した構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0054】
その一例として例えば、上記実施の形態では、ユーザ数のカウントやMCSの受信、CQI測定、混雑度や予測レートの算出、MCSヒストグラムの作成などを、一度だけ行うものとして説明したが、これに代わって例えば、これらをそれぞれ複数フレームに渡って実行して、それぞれ平均値を求めるようにしてもよい。
【0055】
また上記実施の形態では、当該移動無線端末装置において、ユーザ数のカウントや、MCSヒストグラムの中央値(または平均値)の算出を行うものとして説明した。これに代わって例えば、各基地局装置において、ユーザ数をカウントしたり、割り当て可能な残りリソース量を検出したり、MCSヒストグラムの中央値(または平均値)の算出したりするようにし、これらの情報を移動無線端末装置に通知して、移動無線端末装置は、通知された情報を用いるようにしてもよい。
その他、この発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形を施しても同様に実施可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0056】
10…無線通信部、20…表示部、30…通話部、31…スピーカ、32…マイクロホン、40…操作部、50…記憶部、100…制御部、BS…基地局装置、NW…移動通信網。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークに収容される無線基地局から無線リソースを割り当てられて無線通信を行う移動無線端末装置において、
複数の無線基地局について、それぞれ他の移動無線端末装置に対して割り当てている無線リソースを検出する割当状況検出手段と、
この割当状況検出手段の検出結果に基づいて、当該移動無線端末装置に対して割り当てられる無線リソース量を推定する割当推定手段と、
この割当推定手段の推定結果を、無線基地局毎に表示する表示手段とを具備したことを特徴とする移動無線端末装置。
【請求項2】
さらに、複数の無線基地局について、受信品質を検出する受信品質検出手段を備え、
前記割当推定手段は、前記受信品質検出手段の検出結果と、前記割当状況検出手段の検出結果とに基づいて、当該移動無線端末装置に対して割り当てられる無線リソース量を推定することを特徴とする請求項1に記載の移動無線端末装置。
【請求項3】
ネットワークに収容される無線基地局から無線リソースを割り当てられて無線通信を行う移動無線端末装置において、
複数の無線基地局について、それぞれ他の移動無線端末装置に対して割り当てている無線リソースを検出する割当状況検出手段と、
この割当状況検出手段の検出結果に基づいて、当該移動無線端末装置に対して割り当てられる無線リソース量を推定する割当推定手段と、
複数の無線基地局について、受信品質を検出する受信品質検出手段と、
前記無線基地局が他の移動無線端末装置に対して通知する受信品質を示す情報を受信する通知情報受信手段と、
この通知情報受信手段が受信した情報の分布と、前記受信品質検出手段が検出した受信品質とに基づいて、無線基地局毎に前記割当推定手段の推定結果を補正する補正手段と、
前記補正手段が補正した割当推定手段の推定結果を、無線基地局毎に表示する表示手段とを具備したことを特徴とする移動無線端末装置。
【請求項4】
前記通知情報受信手段は、前記受信品質を示す情報として、無線基地局が他の移動無線端末装置に対して指定する変調方式と符号化方式を示す情報を受信することを特徴とする請求項3に記載の移動無線端末装置。
【請求項5】
さらに、複数の無線基地局がそれぞれ有する無線リソースの量を検出する無線リソース量検出手段を備え、
前記割当推定手段は、前記無線リソース量検出手段の検出結果と、前記割当状況検出手段の検出結果とに基づいて、当該移動無線端末装置に対して割り当てられる無線リソース量を推定することを特徴とする請求項1または請求項3に記載の移動無線端末装置。
【請求項6】
さらに、ユーザから無線基地局を選択する指示を受け付ける受付手段と、
この受付手段が受け付けた無線基地局に無線接続する基地局接続手段とを備えることを特徴とする請求項1または請求項3に記載の移動無線端末装置。
【請求項7】
ネットワークに収容される無線基地局から無線リソースを割り当てられて無線通信を行う移動無線端末装置の無線通信方法において、
複数の無線基地局について、それぞれ他の移動無線端末装置に対して割り当てている無線リソースを検出する割当状況検出工程と、
この割当状況検出工程の検出結果に基づいて、当該移動無線端末装置に対して割り当てられる無線リソース量を推定する割当推定工程と、
この割当推定工程の推定結果を、無線基地局毎に表示する表示工程とを具備したことを特徴とする無線通信方法。
【請求項8】
複数の無線基地局について、それぞれ他の移動無線端末装置に対して割り当てている無線リソースを検出する割当状況検出工程と、
この割当状況検出工程の検出結果に基づいて、当該移動無線端末装置に対して割り当てられる無線リソース量を推定する割当推定工程と、
複数の無線基地局について、受信品質を検出する受信品質検出工程と、
前記無線基地局が他の移動無線端末装置に対して通知する受信品質を示す情報を受信する通知情報受信工程と、
この通知情報受信工程で受信した情報の分布と、前記受信品質検出工程で検出した受信品質とに基づいて、無線基地局毎に前記割当推定工程の推定結果を補正する補正工程と、
前記補正工程で補正した割当推定工程の推定結果を、無線基地局毎に表示する表示工程とを具備したことを特徴とする無線通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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