説明

移動端末、並びにその測位制御方法及びプログラム

【課題】トラッキング測位に際しての消費電力を簡易に低減させる。
【解決手段】移動端末1を構成する測位部10は、例えばGPS衛星2から順次受信した測位用無線信号SGに基づき、自端末1の移動軌跡を測定する。制御部20は、測位部10による測定結果RSLTが、一定回数連続して測位用無線信号SGの受信不可を示す場合、測位部10の動作を停止させる。また、制御部20は、測位部10の動作停止時点から一定時間が経過した場合、測位部10の動作を再開させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動端末、並びにその測位制御方法及びプログラムに関し、特にトラッキング測位を行うのに好適な移動端末、並びにその測位制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
GPS(Grobal Positioning System)機能の利用例としては、移動端末のディプレイ画面上に地図と共に現在位置を表示する例(現在位置確認)、位置を連続的に測位して移動端末の移動軌跡を測定する例(トラッキング測位)、及び第三者からの問合せに対して移動端末の現在位置を応答する例(第三者検索)等が挙げられる。
【0003】
この内、トラッキング測位は、連続的な測位(移動軌跡の追跡)を主目的として行われる。このため、トラッキング測位は、移動端末を所持するユーザがトンネルや地下街等のGPS衛星を捕捉できない環境へ移動しても終了せず、ユーザが屋外等のGPS衛星を捕捉可能な環境へ再び移動した後も継続して行う必要がある。
【0004】
一方、トラッキング測位中は、ユーザ環境に関わらず(すなわち、GPS衛星を捕捉できるか否かに関わらず)GPS測位回路が常に動作するため、不要な消費電力が発生し、以て移動端末の使用可能時間を短くしてしまうという問題があった。
【0005】
この問題に対処する関連技術が、例えば特許文献1に記載されている。この特許文献1に記載されるGPS受信機は、アンテナの受信姿勢に基づき測位可否を判定し、測位不可と判定した場合に測位回路の動作を停止させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−325862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記の特許文献1には、アンテナ姿勢の検出回路を精度良く実現することが困難であり、当該検出回路の設置コストが増大してしまうという課題があった。また、アンテナ姿勢の検出精度が悪ければ、実際にはGPS衛星を捕捉可能であっても測位回路の動作が停止してしまう虞がある。
【0008】
従って、本発明は、トラッキング測位に際しての消費電力を簡易に低減させることが可能な移動端末、並びにその測位制御方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明の一態様に係る移動端末は、外部から順次受信した無線信号に基づき、自端末の移動軌跡を測定する測位部と、前記測位部による測定結果が、一定回数連続して前記無線信号の受信不可を示す場合、前記測位部の動作を停止させる制御部とを備える。
【0010】
また、本発明の一態様に係る測位制御方法は、移動端末における測位制御方法を提供する。この測位制御方法は、外部から順次受信した無線信号に基づき、前記移動端末の移動軌跡を測定し、前記測定の結果として、一定回数連続して前記無線信号の受信不可を得た場合、前記測位を停止する。
【0011】
さらに、本発明の一態様に係る測位制御プログラムは、移動端末に、外部から順次受信した無線信号に基づき、前記移動端末の移動軌跡を測定する処理と、前記測定の結果として、一定回数連続して前記無線信号の受信不可を得た場合、前記測位を停止する処理とを実行させる。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、トラッキング測位の結果自体を監視することにより、GPS衛星等を捕捉できない環境下での測位を停止する。このため、上述した特殊な検出回路を用いること無く簡易に消費電力を低減でき、以て移動端末の使用可能時間を延長することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る移動端末の実施の形態1の構成例を示したブロック図である。
【図2】本発明に係る移動端末の実施の形態1の動作例を示したシーケンス図である。
【図3】本発明に係る移動端末の実施の形態2の構成例を示したブロック図である。
【図4】本発明に係る移動端末の実施の形態2の動作例を示したシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る移動端末の実施の形態1及び2を、図1〜図4を参照して説明する。なお、各図面において、同一要素には同一の符号が付されており、説明の明確化のため、必要に応じて重複説明は省略される。
【0015】
[実施の形態1]
図1に示す本実施の形態に係る移動端末1は、移動端末1の移動軌跡を測定する測位部10と、この測位部10を制御する制御部20と、この制御部20を介して、測位部10による測位結果RSLTを利用する測位アプリケーション30とで構成されている。
【0016】
測位部10は、GPS衛星2から測位用無線信号SGを順次受信して復調するGPS回路11と、このGPS回路11からの出力信号(復調信号)に対して所定の測位演算を施すGPSエンジン12とを備える。なお、測位部10は、GPS回路11及びGPSエンジン12に限らず、種々の電波航法(例えば、基地局からの無線信号)を用いて移動端末1の移動軌跡を測定しても良い。また、図1及び図3においては、GPS衛星が1つのみ示されているが、移動端末1は、測位に成功するために4つ以上のGPS衛星を捕捉する必要がある。従って、図示のGPS衛星2は、4つ以上のGPS衛星をまとめて表しているものとする。
【0017】
また、制御部20は、測位部10−測位アプリケーション30間のインタフェースとして機能する測位制御部21と、トラッキング測位に際して、測位部10の動作一時停止及び再開に係る制御を行うトラッキング測位制御部22とを備える。
【0018】
この内、測位制御部21は、測位アプリケーション30からの測位要求RQ1、又はトラッキング測位制御部22からの再開指示INS1をトリガとして、GPSエンジン12に対する開始指示INS2を発生し、以て測位部10を動作させる。また、測位制御部21は、トラッキング測位制御部22からの一時停止指示INS3をトリガとして、GPSエンジン12に対する停止指示INS4を発生し、以て測位部10の動作を停止させる。また、測位制御部21は、GPSエンジン12から出力された測位結果RSLTの内、正常な測位結果RSLTnを測位アプリケーション30へ転送する。また、測位制御部21は、測位結果RSLTが測位用無線信号SGの受信不可を示す場合、トラッキング測位制御部22に対するカウント指示INS5を発生し、以てトラッキング測位制御部22に、当該受信不可の発生回数を計数させる。さらに、測位制御部21は、停止指示INS4と同時に、トラッキング測位制御部22に対する計時指示INS6を発生し、以てトラッキング測位制御部22に、測位部10の動作停止時間を計時させる。
【0019】
一方、トラッキング測位制御部22は、カウンタ221と、タイマ222と、一時停止/再開指示部223とを有する。カウンタ221は、カウント指示INS5を受信する度毎に、カウンタ値CNTを"1"だけインクリメントする。また、タイマ222は、計時指示INS6の受信から一定時間が経過した時、タイマアウト通知NTF1を発行する。さらに、一時停止/再開指示部223は、カウンタ221から出力されたカウンタ値CNTが一定値に到達した場合に、一時停止指示INS3を測位制御部21に与え、タイマ222からタイマアウト通知NTF1を受信した場合には、再開指示INS1を測位制御部21に与える。
【0020】
すなわち、制御部20は、測位結果RSLTが一定回数連続して測位用無線信号SGの受信不可を示す場合、移動端末1がGPS衛星2を捕捉できない環境に移動したと判断して、測位部10の動作を一時停止させる。一方、一時停止時点から一定時間が経過した場合、制御部20は、移動端末1がGPS衛星2を捕捉可能な環境に復帰したと見做して、測位部10の動作を再開させる。
【0021】
次に、本実施の形態の動作を、図2を参照して説明する。
【0022】
図2に示すように、初期状態においては、まずユーザ(図示せず)操作により起動した測位アプリケーション30が、測位要求RQ1を制御部20内の測位制御部21に与える(ステップS1)。要求RQ1を受けた測位制御部21は、開始指示INS2を測位部10内のGPSエンジン12に与える(ステップS2)。
【0023】
これにより、測位部10の動作が開始される(動作状態STSが"ON"となる)。具体的には、GPSエンジン12が、GPS回路11に測位用無線信号SGの受信を開始させると共に、GPS回路11からの出力を待機する。
【0024】
今、ユーザ環境(移動端末1が使用される環境)ENVが、図示の如くGPS衛星2を捕捉可能な環境(すなわち、GPS回路11が測位用無線信号SGを受信可能な環境)であるとする。この場合、GPSエンジン12は、GPS回路11からの出力信号に対して測位演算を施し、これにより得た測位結果RSLTを一定の時間間隔(例えば、1秒毎)で測位制御部21に与える(ステップS3)。但し、GPSエンジン12が測位に成功する迄の間、測位結果RSLTとして、GPS回路11の測位データがそのまま出力される。このため、測位制御部21は、当該測位データを廃棄する。
【0025】
一方、一度測位に成功すると、GPSエンジン12は、前回の測位結果を利用して、正常測位結果RSLTnを一定の時間間隔(例えば、1秒毎)で測位制御部21に与える。そして、測位制御部21は、この正常測位結果RSLTnを測位アプリケーション30へ転送する(ステップS4)。
【0026】
測位アプリケーション30は、例えば移動端末1のディスプレイ画面(図示せず)に地図を表示すると共に、正常測位結果RSLTnを用いて当該地図上にユーザの位置を一定時間間隔で更新表示し、以てユーザの移動軌跡をプロットする。
【0027】
この後、ユーザ環境ENVがGPS衛星2を捕捉できない環境に変化した(例えば、移動端末1がトンネルや地下街等に移動した)とする。この場合、GPSエンジン12は、GPS回路11による測位用無線信号SGの受信不可を示す測位結果RSLTを、測位制御部21に繰り返し与える(ステップS5)。この時、測位制御部21は、カウント指示INS5をトラッキング測位制御部22内のカウンタ221に繰り返し与える(ステップS6)。カウンタ221は、指示INS5を受ける度毎に、カウンタ値CNTを"1"だけインクリメントして一時停止/再開指示部223に与える(ステップS7)。
【0028】
この結果、カウンタ値CNTが閾値Th(例えば、10回)に到達すると(ステップS8)、一時停止/再開指示部223は、ユーザ環境ENVのGPS衛星2を捕捉できない環境への変化を検知して、一時停止指示INS3を測位制御部21に与える(ステップS9)。一時停止指示INS3を受けた測位制御部21は、停止指示INS4をGPSエンジン12に与える(ステップS10)。ここで、上記の閾値Thには、固定値を設定しても良いし、ユーザにより指定された値を設定しても良い。
【0029】
これにより、測位部10の動作が停止される(動作状態STSが"OFF"となる)。具体的には、GPSエンジン12が、GPS回路11に測位用無線信号SGの受信を停止させると共に、測位制御部21からの開始指示INS2の再受信を待機する。
【0030】
また、上記のステップS10と並行して、測位制御部21は、計時指示INS6をトラッキング測位制御部22内のタイマ222に与える(S11)。タイマ222は、指示INS6の受信から一定時間Tc(例えば、3分)が経過すると、タイマアウト通知NTF1を一時停止/再開指示部223に与える(ステップS12)。ここで、一定時間Tcには、固定時間値を設定しても良いし、ユーザにより指定された時間値を設定しても良い。
【0031】
タイマアウト通知NTF1を受けた一時停止/再開指示部223は、ユーザ環境ENVがGPS衛星2を捕捉可能な環境へ復帰したと見做して、再開指示INS1を測位制御部21に与える(ステップS13)。再開指示INS1を受けた測位制御部21は、開始指示INS2をGPSエンジン12に再び与える(ステップS14)。
【0032】
これにより、測位部10の動作が再開される(動作状態STSが再び"ON"となる)。この時、ユーザ環境ENVが実際にGPS衛星2を捕捉可能な環境へ復帰していれば、GPSエンジン12からの正常測位結果RSLTnが、測位制御部21を経由して測位アプリケーション30へ転送されることとなる。
【0033】
このように、本実施の形態においては、ユーザ環境ENVに応じて変化する測位結果RSLTをカウンタ221で監視する簡易な構成により、測位部10の動作を自動的に停止し、以てトラッキング測位に際しての不要な消費電力を削減することができる。また、測位部10の動作再開も自動的に行うため、トラッキング測位本来の機能性を維持することができる。
【0034】
[実施の形態2]
図3に示す本実施の形態に係る移動端末1aは、図1に示した移動端末1の構成に加えて、測位制御部21が測位アプリケーション30に対する測位一時停止通知NTF2を発行する点と、測位アプリケーション30が測位制御部21に対する測位再開要求RQ2を発生する点とが、上記の実施の形態1と異なる。
【0035】
次に、本実施の形態の動作を、図4を参照して説明する。同図においては、図2に示したステップS14の処理に代えて、ステップS15〜S17に示すユーザ要求に応じた測定部10の動作再開処理が実行される。
【0036】
より具体的には、測位制御部21が、上記のステップS10及びS11でそれぞれ示した停止指示INS4及び計時指示INS6の発生処理とさらに並行して、測位一時停止通知NTF2を測位アプリケーション30に与え、以て測位部10が一時停止状態に在る旨を通知する(ステップS15)。
【0037】
測位アプリケーション30は、例えば、移動端末1aのディスプレイ画面(図示せず)に、"GPS衛星捕捉不可のためトラッキング測位を一時停止中"等のメッセージと、ユーザ(図示せず)に測位部10の動作再開を選択させるための"再開ボタン"とを表示する。ユーザにより"再開ボタン"の押下操作が行われると、測位アプリケーション30は、測位再開要求RQ2を測位制御部21に与える(ステップS16)。
【0038】
測位再開要求RQ2を受けた測位制御部21は、上記のステップS2と同様、開始指示INS2を測位部10内のGPSエンジン12に与える(ステップS17)。
【0039】
これにより、一定時間Tcの経過を待たずに、測位部10の動作が再開される(動作状態STSが再び"ON"となる)。この時、ユーザ環境ENVが実際にGPS衛星2を捕捉可能な環境へ復帰していれば、GPSエンジン12からの正常測位結果RSLTnが、測位制御部21を経由して測位アプリケーション30へ転送されることとなる。従って、正常測位結果RSLTnの非取得時間を短縮でき、以てトラッキング測位の機能性をより向上させることができる。
【0040】
この後、測位制御部21は、一定時間Tcの経過に伴う一時停止/再開指示部223からの再開指示INS1を受信するが、既に測位部10の動作を再開済みであるため、何ら処理を実行しない。
【0041】
なお、上記の実施の形態によって本発明は限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づき、当業者によって種々の変更が可能なことは明らかである。例えば、上記の実施の形態に示した各処理を、移動端末に実行させるためのプログラム(例えば、既存のGPS制御回路に組み込まれたファームウェアへのプラグイン)として提供することもできる。
【符号の説明】
【0042】
1, 1a 移動端末
2 GPS衛星
10 測位部
11 GPS回路
12 GPSエンジン
20 制御部
21 測位制御部
22 トラッキング測位制御部
30 測位アプリケーション
221 カウンタ
222 タイマ
223 一時停止/再開指示部
CNT カウンタ値
ENV ユーザ環境
INS1 再開指示
INS2 開始指示
INS3 一時停止指示
INS4 停止指示
INS5 カウント指示
INS6 計時指示
NTF1 タイマアウト通知
NTF2 測位一時停止通知
RQ1 測位要求
RQ2 測位再開要求
RSLT 測位結果
RSLTn 正常測位結果
SG 測位用無線信号
STS 動作状態
Tc 一定時間
Th 閾値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から順次受信した無線信号に基づき、自端末の移動軌跡を測定する測位部と、
前記測位部による測定結果が、一定回数連続して前記無線信号の受信不可を示す場合、前記測位部の動作を停止させる制御部と、
を備えた移動端末。
【請求項2】
請求項1において、
前記制御部が、前記測位部の動作停止時点から一定時間が経過した場合、前記測位部の動作を再開させることを特徴とした移動端末。
【請求項3】
請求項2において、
前記制御部が、ユーザ要求に応じて、前記一定時間の経過前であっても前記測位部の動作を再開させることを特徴とした移動端末。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項において、
前記無線信号が、GPS(Global Positioning System)衛星から送信された測位用信号であることを特徴とした移動端末。
【請求項5】
移動端末における測位制御方法であって、
外部から順次受信した無線信号に基づき、前記移動端末の移動軌跡を測定し、
前記測定の結果として、一定回数連続して前記無線信号の受信不可を得た場合、前記測位を停止する測位制御方法。
【請求項6】
請求項5において、
前記測位の停止時点から一定時間が経過した場合、前記測位を再開することを特徴とした測位制御方法。
【請求項7】
請求項6において、
ユーザ要求に応じて、前記一定時間の経過前であっても前記測位を再開することを特徴とした測位制御方法。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれか一項において、
前記無線信号として、GPS(Global Positioning System)衛星から送信された測位用信号を用いることを特徴とした測位制御方法。
【請求項9】
移動端末に、
外部から順次受信した無線信号に基づき、前記移動端末の移動軌跡を測定する処理と、
前記測定の結果として、一定回数連続して前記無線信号の受信不可を得た場合、前記測位を停止する処理と、
を実行させるための測位制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−197188(P2010−197188A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−41901(P2009−41901)
【出願日】平成21年2月25日(2009.2.25)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】