説明

移動端末装置

【課題】GPS測位機能を搭載した従来の移動端末装置におけるよりも一層省電力化を図ることができる移動端末装置を実現する。
【解決手段】自律型GPS測位が失敗したと判定された場合(ステップS209:No)には、A−GPS測位部120による測位演算処理の実行を規制して無駄な電力消費を抑制する。この場合、更に、在圏セクタ履歴部131に残存している移動端末装置10の現在時点での在圏セクタIDに対応する位置データ、または、GPSアシスト情報履歴保持部141に保持されている既得の概略位置情報のデータを測位データに代替する(ステップS209〜ステップS212;ステップS213)。これにより、たとえGPS測位が出来ない環境下にあっても、代替の位置データによって、相応の精度ながらも可能な限り自装置の現在位置のデータが取得できるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、移動端末装置に関し、特に、省電力化を図ったGPS測位機能部を搭載した移動端末装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば携帯電話機に代表されるような移動端末装置に測位機能部を搭載する技術が普及しつつある。
上述のような移動端末装置における測位機能部では、状況に応じて異なる測位方式を選択的に適用する技術も採用されている。
現在、移動端末装置に適用されている測位方式として、ネットワーク側が保有する航法メッセージ(Almanac、Ephemerisなど)、GPS時間、および、当該移動端末装置の概略位置情報等を含むアシスト情報を利用して測位を行うA−GPS測位と、上述のようなアシスト情報を利用せずにGPS衛星からの測位情報を受信して全ての測位演算を移動端末装置側で行う自律型GPS測位がある。
【0003】
尚、A−GPS測位は、ネットワーク側からのアシスト情報を利用して測位を行うネットワーク支援型の測位であるが、これには、最終的な測位演算処理までをネットワーク側の測位サーバで行い、この測位演処理結果をネットワーク側から移動端末装置側に供給するUE−Assisted(或いはMS−Assisted)と称される方式と、ネットワーク側から得たアシスト情報を利用して移動端末装置側でGPS測位演算処理を行うUE−Based(或いはMS−Based)と称される方式がある。
【0004】
そして、上述のような複数の測位方式を適応的に切替えて実行することにより、例えば、通信コストを低減したり、或いは、種々の環境下での測位を可能にする等、特定の性能を向上させるための種々の技術提案も既になされている。
例えば、ネットワーク支援型の測位システムにおいては、移動端末装置は、測位を行う度に、ネットワークを介してアシスト情報を取得する必要があるが、この取得のためにトラフィックの増加を招き、通信コストの増加を生じるという課題に着目した技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
特許文献1では、通信コストの低減のためには、如何にしてアシスト情報取得のための通信頻度を減らすかが重要な課題であるとされている。そして、概略位置状態の取得についても極力ネットワークとの通信頻度を少なくしてネットワーク支援型GPS端末における通信コストを低減することが提案されている。
即ち、初回のGPS測位において通信部で受信した自装置の概略位置に関連する在圏セル情報を格納部に格納しておき、2回目以降のGPS測位でこの格納部に格納されている在圏セル情報が前回のGPS測位時と異なる場合のみ、ネットワークから概算位置情報を取得する。そして、該取得した概算位置情報を、GPS測位演算に用いると共に保持部に保持しておき、2回目以降のGPS測位で格納部に格納されている在圏セル情報が前回のGPS測位時と同じ場合は、保持部に保持されている概算位置をGPS測位演算に用いるようにして概算位置情報取得の頻度を下げ、この結果としてネットワークとの通信頻度を少なくして通信コストを低減するというものである。
【0006】
また、複数の測位方式を選択的に実行可能にして、一つの方式による測位に失敗した場合でも別の測位方式による測位を選択することによって、条件に応じて可能な方式で測位を行い、測位不能といった事態を回避できるようにした技術が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
特許文献2の移動端末装置では、ネットワーク支援型の測位に失敗した場合で、この測位過程で移動端末装置が在圏しているセルの位置情報を取得しているときには、この位置情報を利用する測位である補完セルID測位を実行することによって、測位不能といった事態を回避するようにしている。
【0007】
また、特許文献2には、ネットワーク支援型の測位では、測位時間が短いという利点はあるが、捕捉用情報を取得するためのデータ通信を行う必要があるため、利用者にとって通信料金の負担が大きいという課題があり、また、データ通信が不可能な地域ではGPS測位を行うことができないという課題があるが、補完セルID測位を行うことで双方の課題に相応に応え得る趣旨の開示がある。
【0008】
一方、近年、アシスト情報を利用した移動端末装置側でのGPS測位演算処理結果である測位データが、定期的且つ自動的にバックグラウンド処理によって取得され、該取得された測位データが通信事業者或いはコンテンツ配信事業者側に通知されるようにした移動通信システムが稼動している(例えば、非特許文献1参照)。
非特許文献1所載のような移動通信システムでは、通信事業者或いはコンテンツ配信事業者が、通知された測位データに基づいて移動端末装置の所在位置を把握し、現在時点での所在位置に見合った天気予報や街のイベント情報を配信するといった、所謂プッシュ型の情報配信サービスが実施されている。
【0009】
上述のような測位データを利用した情報配信サービスの対象となる移動端末装置においては、GPS測位機能を搭載しつつも、GPS測位を実行するに要する電力を極力低減することができるような工夫がなされている。
即ち、移動端末装置に加速度センサ(歩行検出部)や在圏エリアに対応する在圏セクタIDの検知機能部を設け、これらによって移動端末装置の移動状況や自装置の在圏履歴に関する情報を取得し、該取得された情報に基づいて、GPS測位の実行頻度を下げることによって省電力化を図っている。
【0010】
この省電力化の手法はより具体的には次の通りである。先ず、この手法を適用する前提として、基本的には定期的なGPS測位を継続して実行する。ここに、定期的なGPS測位の手順では、移動端末装置の計時手段によって規定される一定の周期で測位を繰り返し実行する。
この測位実行の開始時点において、移動端末装置におけるデータ処理エンジンが、既得のアシスト情報の有効性を判断する。この有効性の判断において、既得のアシスト情報が有効であると判断された場合には、改めてネットワーク側からアシスト情報を取得することはせず、その既得のアシスト情報を用いてGPS衛星から受信した測位情報に基づいて測位演算を行うAutonomous測位を実行する。
【0011】
一方、既得のアシスト情報が無効であると判断された場合には、A−GPS測位を実行する。ここにおけるA−GPS測位は次のような手順で実行される。即ち、先ず、ネットワーク側とセッションを確立し、該確立の後、ネットワーク側にアシスト情報を要求する。該要求への応答としてネットワーク側から現在時点で有効なアシスト情報を取得する。そして、該取得したアシスト情報を用い、GPS衛星から受信した測位情報に基づいて測位演算を実行する。
【0012】
このA−GPS測位の実行によって取得した測位結果のデータ、または、測位不能であった場合にはその旨の情報を、ネットワーク側に通知する。この通知の後セッションを開放する。
そして、上述のような定期的なGPS測位を継続して実行することを基本的なGPS測位手順としつつも、加速度センサによって連続歩行が検出されないときや、既得の在圏履歴が有効である領域に再度進入したときには、GPS測位を休止する。そして、既得の測位情報を以って現在の測位情報に替え、この測位休止に相応する電力消費を節減するというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特許第4312233号公報
【特許文献2】特許第4240216号公報
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】インタビュイー:前田義晃 (インタビュアー:神尾寿)“神尾寿のMobile+Views:オートGPS対応で「iコンシェル」は新たなフェーズへ” [online]、2009年11月16日15時44分更新[平成22年4月2日検索]、インターネット<URL:http://www.itmedia.co.jp/promobile/articles/0911/16/news052.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、上述の特許文献1および特許文献2所載の技術においては、移動端末装置における省電力化といった技術課題の認識が欠如しており、従って、当然ながら、この技術課題に焦点を当てた解決の方途は示されていない。
即ち、特許文献1における移動端末装置では、「アプリケーション」等の要求に応じて、測位方式を選択することができるとされるも、斯く言う「アプリケーション」の内容は一切明言されず、況して、省電力化との関連において測位を如何なる態様で実行するかについては一切示されていない。
【0016】
また、特許文献2の技術は、専ら、通信コストを低減するためにネットワークとの通信頻度を如何に少なくするかに焦点を絞ったものであり、この限りで、相応の効果を奏するものと目される。この文献に開示された移動端末装置では、2回目以降のGPS測位で改めて概算位置を取得する(アシスト状態の取得)動作は行わず前回のGPS測位時のデータを利用するからである。しかしながら、あくまでもA−GPS測位を周期的に繰り返して行うことに変わりは無く、従って、最も電力消費の著しい測位方式であるA−GPS測位動作を賄うための電力消費は測位動作を繰り返す度に毎回発生してしまうため、省電力化といった観点で見たときには甚だ不十分である。
【0017】
一方、非特許文献1所載の技術では、基本的には定期的なGPS測位を継続して実行する態様を採るものであるため、測位実行時点での移動端末装置の環境如何によっては、GPS測位が不能であるにもかかわらず、自装置の移動が検出され且つ測位結果の履歴がない位置にあるときには、必ず一定の周期でGPS測位が実行される。このような場合には、測位に失敗した旨の通知がネットワーク側に発せられが、移動端末装置における他のデータ処理等に比し格段に大きな電力を消費するGPS測位演算が実行されるため、演算結果が無効であるにもかかわらず電力消費が著しいといった望ましからざる状況を呈する。
本発明は上述のような状況に鑑みてなされたものであり、GPS測位機能を搭載した従来の移動端末装置におけるよりも一層省電力化を図ることができる移動端末装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上述の課題を解決するために、本願では次に列記するような技術を提案する。
(1)自装置の位置情報を得る異なる複数の方式の測位を選択的に繰り返し実行可能な移動端末装置であって、
繰り返し測位を行う場合の各測位の実行のタイミングを規定する基となる測位タイミングベース信号を発する測位タイミングベース部と、
前記各測位の結果に相当する測位データを少なくとも一時的に保持する測位結果保持部と、
基地局との交信を行う送受信部と、
前記送受信部が基地局との交信によって取得した情報のうちから自装置の概略位置情報を含むGPSアシスト情報を取得するアシスト情報取得処理と、該アシスト情報取得処理で取得したGPSアシスト情報を利用した測位演算処理とを含むA−GPS測位を前記測位タイミングベース信号に同期したタイミングで実行するA−GPS測位部と、
前記GPSアシスト情報を利用しない自律型GPS測位を前記測位タイミングベース信号に同期したタイミングで実行する自律型GPS測位部と、
前記A−GPS測位部が過去に実行したA−GPS測位に用いた当該概略位置情報を含むGPSアシスト情報の履歴を保持するGPSアシスト情報履歴保持部と、
自装置の現在位置が前記GPSアシスト情報履歴保持部に保持された当該概略位置情報に該当するか否かを判定する履歴判定部と、
前記自律型GPS測位部による自律型GPS測位が正規に実行されたか否かを判定するGPS測位結果判定部と、
前記GPS測位結果判定部で否定的判定が下された場合には、該判定後の時点で、前記測位開始タイミングベース部が測位タイミングベース信号を発したときに、前記A−GPS測位部による測位演算処理の実行を規制し、前記履歴判定部で肯定的判定結果を得ている場合には、前記GPSアシスト情報履歴保持部に保持されている該当する概略位置情報を前記測位データとして前記測位結果保持部に保持させ、前記履歴判定部で否定的判定結果を得ている場合には、前記アシスト情報取得処理によって取得した自装置の概略位置情報を前記測位データとして前記測位結果保持部に保持させる代替測位データ選択部と、
を備えたことを特徴とする移動端末装置。
【発明の効果】
【0019】
GPS測位機能を搭載した移動端末装置における一層の省電力化を図ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態としての移動端末装置を表す機能ブロック図である。
【図2】図1の移動端末装置の動作を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、図面を参照して本発明の実施の形態について詳述することにより本発明を明らかにする。
(本発明の実施の形態としての移動端末装置の構成)
図1は、本発明の実施の形態としての移動端末装置を表す機能ブロック図である。
この移動端末装置10は、移動体通信網20の該当する基地局21と通信を行う送受信部101、GPS衛星からの信号を受信する衛星電波受信部102を有する。尚、移動体通信網20はこれ自体も一つのネットワークであるが、周知の如く、例えばインターネットのような他のネットワーク30と結ばれている。
【0022】
移動端末装置10は、また、加速度センサ等によってこの移動端末装置10を持つユーザの歩行状況を検出する歩行検出部103、在圏セクタを監視し特定する在圏セクタ監視部104、歩行検出部103の検出結果および在圏セクタ監視部104が特定した在圏セクタの情報に依拠して移動端末装置10の移動静止の状態を判定する移動静止判定部105、および、後述する測位の結果によって得た移動端末装置10の位置情報を送受信部101を通して移動体通信網20側に通知する位置通知部106を有する。
【0023】
移動端末装置10は、更に、測位を実行する測位制御部110を有する。
この測位制御部110は、測位タイミングベース部111、自律型GPS測位部112、環境推定部113、GPSアシスト情報履歴保持部141、履歴判定部142、GPS測位結果判定部143、代替測位データ選択部144、A−GPS測位部120、および、測位履歴部130を含んで構成されている。
【0024】
A−GPS測位部120は、アシスト情報取得処理を行うアシスト情報取得処理部121と、アシスト情報取得処理部121が取得したGPSアシスト情報を利用した測位演算処理を行う測位演算処理部122とを含む。
測位履歴部130は、この移動端末装置10に関する在圏セクタ履歴を保持する在圏セクタ履歴部131、および、測位結果の履歴を保持する測位結果履歴部(即ち、測位結果保持部)132を有する。
【0025】
上述の移動端末装置10は、自装置の位置情報を得る異なる複数の方式の測位を選択的に繰り返し実行可能である。ここに、異なる複数の方式の測位とは、以下に示すA−GPS測位方式、および、自律型GPS測位方式であるが、特定の条件下ではGPS測位を行わず、アシスト情報から概略位置情報(セルないしセクタレベルでの概略的測位による位置情報)を抽出し該抽出によって得た情報をGPS測位結果として充当するようにして現実の測位に替えるといった簡易な測位方式を含む。
【0026】
測位タイミングベース部111では、上述のように繰り返し測位を行う場合の各測位の実行のタイミングを規定する基となる測位タイミングベース信号を発する。
また、測位履歴部130の測位結果保持部132で、上述の各測位の結果に相当する測位データ(即ち、現実の測位による測位データおよび現実の測位に替えた概略位置情報)を少なくとも一時的に保持する。
【0027】
A−GPS測位部120では、A−GPS測位を測位タイミングベース部111が発する測位タイミングベース信号に同期したタイミングで実行する。A−GPS測位には次のような処理が含まれる。即ち、アシスト情報取得処理部121で、自装置の概略位置情報を含むGPSアシスト情報を、送受信部101を通して基地局21と交信することによって取得するアシスト情報取得処理、および、測位演算処理部122で、該アシスト情報取得処理で取得したGPSアシスト情報を利用して行う測位演算処理である。
【0028】
また、環境推定部113では、自装置の現在位置が屋内環境に該当するか屋外環境に該当するかを推定する。
そして、環境推定部113が自装置の現在位置が屋内環境に該当すると推定した場合に、該推定後の時点で、測位開始タイミングベース部111が測位タイミングベース信号を発したときに、自律型GPS測位部112による自律型GPS測位の実行を規制してA−GPS測位部120にA−GPS測位(この場合には、A−GPS測位部120におけるアシスト情報取得処理部121によるアシスト情報取得処理)を実行させる。
【0029】
一方、GPSアシスト情報履歴保持部141は、A−GPS測位部120が過去に実行したA−GPS測位に用いた概略位置情報を含むGPSアシスト情報の履歴を保持する。
また、履歴判定部142は、自装置の現在位置がGPSアシスト情報履歴保持部141に保持された概略位置情報に該当するか否かを判定する。
更に、GPS測位結果判定部143は、自律型GPS測位部112による自律型GPS測位が正規に実行されたか否かを判定する。
【0030】
更にまた、代替測位データ選択部144は、GPS測位結果判定部143で否定的判定が下された場合(即ち、GPS測位が失敗に終わった場合)には、該判定後の時点で、測位開始タイミングベース部111が測位タイミングベース信号を発したときに、A−GPS測位部120による測位演算処理の実行を規制する。また、履歴判定部142で肯定的判定結果を得ている場合(即ち、自装置の現在位置がGPSアシスト情報履歴保持部141に保持された当該概略位置情報に該当すると判定された場合)には、GPSアシスト情報履歴保持部141に保持されている該当する概略位置情報を上述の測位データとして測位結果保持部132に保持させる。他方、履歴判定部142で否定的判定結果を得ている場合(即ち、自装置の現在位置がGPSアシスト情報履歴保持部141に保持された当該概略位置情報に該当しないと判定された場合)には、上述のアシスト情報取得処理によって取得した自装置の概略位置情報を測位データとして測位結果保持部132に保持させる。
【0031】
また、本実施の形態の一つの態様における環境推定部113は、測位結果保持部132に保持された測位データのうち過去の直近の時点で保持された既得測位データがA−GPS測位部120によるA−GPS測位および自律型GPS測位部112による自律型GPS測位の何れかによる測位データである場合、および、当該既得測位データよる位置の精度が既定の水準を満たしていない場合に自装置の現在位置が屋内環境に該当すると推定する。これらの推定結果に応じた測位方式の選択、および、測位実行の有無、ならびに、現実の測位演算結果データの代替としての現在位置を表すデータの取り扱い等については、以下に、図2を参照して詳述する。
【0032】
(本発明の実施の形態としての移動端末装置の動作)
次に図面を参照して、本発明の実施の形態としての移動端末装置の動作について説明する。
図2は、図1の移動端末装置の動作を表すフローチャートである。
動作が開始すると、図示されていないが、既述の測位タイミングベース信号を発するための計時動作がバックグラウンド処理として測位タイミングベース部111で進行する。
測位タイミングベース信号に基づいて測位を実行する際には、先ず、GPSアシスト情報履歴保持部141に保持されているアシスト情報(概略位置情報が含まれる)の履歴には現在時点で有効な情報が存在しているか否かが判定される(ステップS201)。
【0033】
ステップS201で、GPSアシスト情報履歴保持部141に保持されているアシスト情報の履歴には現在時点で有効な情報が存在していると判定されたときには(ステップS201:Yes)、次いで、前回の測位結果はGPS測位によるデータであるか、または、測位結果保持部132に保持されている既得の概略位置情報の精度はレベル2以下であるか、の何れかに該当するか否かが判定される(ステップS202)。
【0034】
ステップS202において、前回の測位結果はGPS測位によるデータに該当すると判定されるとは、即ち、前回はGPS測位が有効に行えた屋外環境に位置していたことを意味する。その測位が実行された時点から時間的に近接した現在時点では、未だ状況が変わっていない蓋然性が高く、従って、現在も屋外環境に位置しているとの推定結果を得る。
また、測位結果保持部132に保持されている既得の(直近の過去における)概略位置情報の精度はレベル2以下であるとは、即ち、屋内に比し基地局の配置密度が疎であるために概略位置情報が表す位置精度が相対的に低い屋外環境に位置している蓋然性が高く、従って、屋外環境であるとの推定結果を得る。
【0035】
尚、上記における概略位置情報の精度に関するレベルとは次のような指標である。即ち、上述の測位レベル2とは、誤差範囲が概ね300メートル未満の比較的正確な位置情報であるといえる水準の精度である。また、後述する測位レベル3とは、誤差範囲が概ね50メートル未満のほぼ正確な位置情報であるといえる水準の精度である。更に、測位レベル1は、誤差範囲が概ね300メートル以上のおおまかな水準の位置情報である。
【0036】
ステップS202における上述のような屋内か屋外かの推定処理では、現実に屋内に位置しているか屋外に位置しているかのみに拠らず、既述のような状況に着目して、実効的に屋内と見做すか屋外と見做すかが弁別されて上述のように推定結果を得る。
ステップS202におけるこの判定(推定)は、測位制御部110の環境推定部113によって実行される。
ステップS202において、移動端末装置10は屋内環境にあると判定されたときには(ステップS202:No)、次いで、A−GPS測位のうちの第1ステップの処理であるアシスト情報取得処理を実行する(ステップS203)。
ステップS203のアシスト情報取得処理で取得されたアシスト情報は、GPSアシスト情報履歴保持部141に保持される。
【0037】
ステップS202からステップS203に到る処理は、換言すれば、ステップS202において移動端末装置10は屋内環境にあると推定されたときに(ステップS202:No)、該推定後の時点で、測位開始タイミングベース部111が測位タイミングベース信号を発したときに、自律型GPS測位部による自律型GPS測位の実行を規制して、A−GPS測位のうちの第1ステップの処理であるアシスト情報取得処理を実行する(ステップS203)処理である。
次いで、GPSアシスト情報履歴保持部141に保持された該当するアシスト情報中の概略位置情報について、それによる位置の精度が既述のレベル3以上に該当するか否かが判定される(ステップS204)。
【0038】
ステップS204での判定結果が肯定的、即ち、GPSアシスト情報履歴保持部141に保持された該当するアシスト情報中の概略位置情報による位置の精度が既述のレベル3以上に該当するものと判定されたときには(ステップS204:Yes)、該判定後の時点で、測位タイミングベース部111が測位タイミングベース信号を発したときに、A−GPS測位部120(その測位演算処理部122)による測位演算処理の実行を規制すると共に、上述のように肯定的判定が下された当該概略位置情報を現在の測位データとして充当し(ステップS205)、このデータを測位結果保持部132に格納させる(ステップS213)。
【0039】
一方、ステップS204での判定結果が否定的、即ち、GPSアシスト情報履歴保持部141に保持された該当するアシスト情報中の概略位置情報による位置の精度が既述のレベル3以上には該当しないものと判定されたときには(ステップS204:No)、測位タイミングベース部111が測位タイミングベース信号を発したときに、A−GPS測位部120(その測位演算処理部122)による測位演算処理を実行する(ステップS206)。
次いで、ステップS206で実行した測位演算処理が、例えば10秒以内といった既定の時間内に成功したか否かを判定する(ステップS207)。
ステップS207で、ステップS206でのA−GPS測位が既定の時間内に成功したと判定したときには(ステップS207:Yes)、A−GPS測位による測位結果データを測位結果保持部132に格納させる(ステップS213)。
【0040】
一方、ステップS207で、ステップS206でのA−GPS測位が失敗したと判定したときには(ステップS207:No)、既述のステップS205に移行する。
他方、既述のステップS202で、前回の測位結果はGPS測位によるデータであるか、または、測位結果保持部132に保持されている既得の概略位置情報の精度が既述のレベル2以下であるか、の何れにも該当しないときには、移動端末装置10は、既述のように屋外環境に位置している蓋然性が高く、従って、屋外環境であると推定される(ステップS202:Yes)。
【0041】
ステップS202で屋外環境であると推定された場合には(ステップS202:Yes)、GPS測位が有効であり、従って、自律型GPS測位が実行される(ステップS208)。即ち、自律型GPS測位が有効である蓋然性の高い屋外環境であるときに限ってこの自律型GPS測位の実行が許容され、既述のように屋内環境であると判定されたときには(ステップS202:No)、この実行が規制されるため、電力消費の大きい自律型GPS測位が無駄に実行されてしまうことが抑制され、従って、移動端末装置10としての省電力化の効果が著しい。
【0042】
次いで、ステップS208で実行した自律型GPS測位が成功したか否かがGPS測位結果判定部143で判定される(ステップS209)。
GPS測位結果判定部143によるステップS209での判定結果が否定的である場合、即ち、自律型GPS測位が失敗したと判定されたときには(ステップS209:No)、該判定後の時点で、測位開始タイミングベース部111が測位タイミングベース信号を発したときに、A−GPS測位部120による測位演算処理の実行を規制すると共に、移動端末装置10の現在時点での在圏セクタIDのデータが測位履歴部130の在圏セクタ履歴部131に残存しているか否かが判定される(ステップS210)。
【0043】
ステップS210の判定で肯定的判定結果を得ている場合、即ち、移動端末装置10の現在時点での在圏セクタIDのデータが測位履歴部130の在圏セクタ履歴部131に残存している場合には(ステップS210:Yes)、在圏セクタ履歴部131に保持されている該当するセクタIDに対応する位置データを測位データとして充当し(ステップS211)、このデータを測位結果保持部132に格納させる(ステップS213)。
【0044】
また、ステップS210の判定で否定的判定結果を得ている場合、即ち、移動端末装置10の現在時点での在圏セクタIDのデータが測位履歴部130の在圏セクタ履歴部131に残存していない場合には(ステップS210:No)、A−GPS測位のうちの第1ステップの処理であるアシスト情報取得処理を実行する(ステップS221)。
ステップS221のアシスト情報取得処理で取得されたアシスト情報は、GPSアシスト情報履歴保持部141に保持される。
【0045】
次いで、GPSアシスト情報履歴保持部141に保持されたアシスト情報中の概略位置情報について、それによる位置の精度が既述のレベル3以上であって自装置の現在位置に該当するか否かが履歴判定部142で判定される(ステップS222)。
ステップS222での判定結果が肯定的、即ち、GPSアシスト情報履歴保持部141に保持されたアシスト情報中の概略位置情報による位置の精度が既述のレベル3以上に該当するものと判定されたときには(ステップS222:Yes)、該判定後の時点で、測位タイミングベース部111が測位タイミングベース信号を発したときに、A−GPS測位部120(その測位演算処理部122)による測位演算処理の実行を規制すると共に、履歴判定部142によって肯定的判定が下された当該概略位置情報を現在の測位データとして充当し(ステップS205)、このデータを測位結果保持部132に格納させる(ステップS213)。
【0046】
また、ステップS222での判定結果が否定的、即ち、GPSアシスト情報履歴保持部141に保持されたアシスト情報中の概略位置情報による位置の精度が既述のレベル3に満たないものと判定されたときには(ステップS222:No)、タイムアウトエラー処理を実行して(ステップS214)無駄な電力消費を抑制する。
一方、ステップS209での判定結果が肯定的である場合、即ち、自律型GPS測位が成功したと判定されたときには(ステップS209:Yes)、この自律型GPS測位によって得た測位データを測位結果保持部132に格納させる(ステップS213)。
【0047】
この実施の形態の移動端末装置10では、上述のように、自律型GPS測位が失敗したと判定された場合(ステップS209:No)においても、在圏セクタ履歴部131に残存している移動端末装置10の現在時点での在圏セクタIDに対応する位置データ、または、A−GPS測位のうちのアシスト情報時取得処理によって得たアシスト情報中の概略位置情報を以って、測位データに代替する(ステップS209;ステップS210;ステップS211;ステップS221;ステップS222;ステップS205;ステップS213)。
【0048】
これにより、たとえGPS測位が出来ない環境下にあっても、代替の位置データによって、相応の精度ながらも可能な限り自装置の現在位置のデータが取得できることになる。
そして、このステップS209からステップS213における処理は、上述の代替測位データ選択部144によって実行されるものであり、本移動端末装置10の構成に関連して既述の機能であるが、次のように要約される。
【0049】
即ち、GPS測位結果判定部143で否定的判定が下された場合(自律型GPS測位部112による自律型GPS測位が正規に実行されなかったと判定された場合)には、該判定後の時点で、測位開始タイミングベース部111が測位タイミングベース信号を発したときに、A−GPS測位部120による測位演算処理の実行を規制し、履歴判定部142で肯定的判定結果を得ている場合には、GPSアシスト情報履歴保持部141に保持されている該当する概略位置情報を測位データとして測位結果保持部132に保持させ、履歴判定部142で否定的判定結果を得ている場合には、アシスト情報取得処理によって取得した自装置の概略位置情報を測位データとして測位結果保持部132に保持させる。
【0050】
また、上述のステップS207で、ステップS206でのA−GPS測位が既定の時間内に測位結果が得られず失敗したと判定したときには(ステップS207:No)、タイムアウトエラー処理を実行して(ステップS214)無駄な電力消費を抑制する。
尚、上述の例では、ステップS207で、ステップS206でのA−GPS測位によって既定の時間内に測位結果が得られず失敗したと判定したときには(ステップS207:No)、タイムアウトエラー処理を実行していたが(ステップS214)、このステップS214に移行するに替えて、ステップS207(判定結果がNoの場合)から上述のステップS205に移行し、ステップS203において既得のアシスト情報中の概略位置データを測位データとして充当するようにしてもよい。
【0051】
また、上述の例では、ステップS210で現在の在圏セクタIDのデータが測位履歴部に残存していない場合には(ステップS210:No)、A−GPS測位のうちの第1ステップの処理であるアシスト情報取得処理を実行し(ステップS221)、次いでステップS221で取得したアシスト情報における概略位置情報の適否(精度)の判断をするようにしていたが(ステップS222)、このステップS222には移行せず、ステップS221にて取得した概略位置データを直ちに測位データとして充当するようにしてもよい。
【0052】
以上の説明から容易に理解されるとおり、本実施の形態の移動端末装置10では、この種の移動端末装置において電力消費の著しいA−GPS測位が無駄に実行されることが回避されるため、省電力化について優れた特性が実現される。また更に、本実施の形態における一つの態様では、自律型GPS測位やA−GPS測位(その2ステップの処理のうち測位演算処理)が無駄に実行されることが回避されるため、この点でも消費電力節減効果が著しい。
【符号の説明】
【0053】
10…………………移動端末装置
20…………………移動体通信網
21…………………基地局
30…………………ネットワーク
101………………送受信部
102………………衛星電波受信部
103………………歩行検出部
104………………在圏セクタ監視部
105………………無線通信部
106………………位置通知部
110………………測位制御部
111………………測位タイミングベース部
112………………自律型GPS測位部
113………………環境推定部
120………………A−GPS測位部
121………………アシスト情報取得処理部
122………………測位演算処理部
130………………測位履歴部
131………………在圏セクタ履歴部
132………………測位結果履歴部(測位結果保持部)
141………………GPSアシスト情報履歴保持部
142………………履歴判定部
143………………GPS測位結果判定部
144………………代替測位データ選択部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自装置の位置情報を得る異なる複数の方式の測位を選択的に繰り返し実行可能な移動端末装置であって、
繰り返し測位を行う場合の各測位の実行のタイミングを規定する基となる測位タイミングベース信号を発する測位タイミングベース部と、
前記各測位の結果に相当する測位データを少なくとも一時的に保持する測位結果保持部と、
基地局との交信を行う送受信部と、
前記送受信部が基地局との交信によって取得した情報のうちから自装置の概略位置情報を含むGPSアシスト情報を取得するアシスト情報取得処理と、該アシスト情報取得処理で取得したGPSアシスト情報を利用した測位演算処理とを含むA−GPS測位を前記測位タイミングベース信号に同期したタイミングで実行するA−GPS測位部と、
前記GPSアシスト情報を利用しない自律型GPS測位を前記測位タイミングベース信号に同期したタイミングで実行する自律型GPS測位部と、
前記A−GPS測位部が過去に実行したA−GPS測位に用いた当該概略位置情報を含むGPSアシスト情報の履歴を保持するGPSアシスト情報履歴保持部と、
自装置の現在位置が前記GPSアシスト情報履歴保持部に保持された当該概略位置情報に該当するか否かを判定する履歴判定部と、
前記自律型GPS測位部による自律型GPS測位が正規に実行されたか否かを判定するGPS測位結果判定部と、
前記GPS測位結果判定部で否定的判定を下した場合には、該判定後の時点で、前記測位開始タイミングベース部が測位タイミングベース信号を発したときに、前記A−GPS測位部による測位演算処理の実行を規制すると共に、前記履歴判定部で肯定的判定結果を得ている場合には、前記GPSアシスト情報履歴保持部に保持されている該当する概略位置情報を前記測位データとして前記測位結果保持部に保持させ、前記履歴判定部で否定的判定結果を得ている場合には、前記アシスト情報取得処理によって取得した自装置の概略位置情報を前記測位データとして前記測位結果保持部に保持させる代替測位データ選択部と、
を備えたことを特徴とする移動端末装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−223501(P2011−223501A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−93062(P2010−93062)
【出願日】平成22年4月14日(2010.4.14)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】