移植機
【課題】植付を終了する際に、常に一定の位置で左右の移植爪を停止させることができる移植機を提供する。
【解決手段】ミッションケース5に植付部へ動力を出力する植付出力軸65を備え、植付部へ動力を弾設する植付クラッチ201を植付クラッチ操作具225により断接操作できるように構成するとともに、植付出力軸65の所定の回転位置のみで植付クラッチ操作具225が植付クラッチ201を「断」とできる牽制装置202を備えた。また、前記牽制装置202は、植付出力軸65上に設けて切欠227aを有するカム227と、植付クラッチ操作具225と連繋される植付クラッチアーム223より構成した。
【解決手段】ミッションケース5に植付部へ動力を出力する植付出力軸65を備え、植付部へ動力を弾設する植付クラッチ201を植付クラッチ操作具225により断接操作できるように構成するとともに、植付出力軸65の所定の回転位置のみで植付クラッチ操作具225が植付クラッチ201を「断」とできる牽制装置202を備えた。また、前記牽制装置202は、植付出力軸65上に設けて切欠227aを有するカム227と、植付クラッチ操作具225と連繋される植付クラッチアーム223より構成した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、供給部から供給される苗を圃場面に植え付ける移植爪を駆動する移植機の駆動機構に関し、より詳細には、植付クラッチを「断」としたときに植付爪が所定位置で停止するようにするための駆動伝達部の駆動断接機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、機体左右方向に移植爪を一対備え、該移植爪内にその上方に配置した苗供給部から苗を供給して、圃場面に苗を植え付けるようにした移植機が公知となっている。このような移植機は、左右の各移植爪を昇降及び開閉するための駆動機構を設けるとともに、トランスミッションから突出する植付出力軸に左右一対のスプロケットを固設し、各スプロケットからチェーンを介して駆動機構に動力を伝達することにより左右の移植爪を駆動して、各移植爪による植付位置を走行機体の進行方向に対しずらさずに苗を左右同時に植える、いわゆる並木植えを行うように構成されていた(例えば、特許文献1参照。)。また、移植機は左右の移植爪の下部を前後にずらすことで一方の移植爪による苗植付位置に対して、他方の移植爪による苗植付位置を走行機体の進行方向に半ピッチずらして苗を植える、いわゆる千鳥植えを行うことができるように構成されることもあった(例えば、特許文献2参照)。また、移植機は左右の移植爪を独立して駆動することにより動力断接手段で植付出力軸から左右の各駆動機構への動力を適宜断接することによって、左右の移植爪による植付位置を走行機体の進行方向に適宜ずらして苗を植え付けるように構成された移植機が、同一出願人により既に出願されている(特願2006−006827号)。
【特許文献1】特開2003−230306号公報
【特許文献2】特開2005−245339号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の移植機は、植え付けを終了する際に、左右の移植爪を作業の終了した位置で停止させていた。しかし、移植爪が下死点付近で停止した場合には、移植機を移動・旋回させたときに地面と移植爪が接触し、破損や故障の原因となっていた。そこで、バネによって停止位置から上方へ引き上げる機構が存在したが、一定の位置で固定することは困難であり、次回開始時に苗供給部から苗をスムースに供給することができない場合があった。
そこで、本発明は斯かる課題に鑑み、植付を終了する際に、常に一定の位置で左右の移植爪を停止させることができる移植機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0005】
即ち、請求項1においては、ミッションケースに植付部へ動力を出力する植付出力軸を備え、植付部へ出力する動力を断接する植付クラッチを植付クラッチ操作具により断接操作できるように構成するとともに、植付出力軸の所定の回転位置のみで植付クラッチ操作具が植付クラッチを「断」とできる牽制装置を備えたものである。
【0006】
請求項2においては、前記牽制装置は、植付出力軸上に設けて切欠を有するカムと、植付クラッチ操作具と連繋される植付クラッチアームより構成したものである。
【0007】
請求項3においては、前記植付クラッチをホーク軸の摺動により断接可能に構成するとともに、植付出力軸上に前記カムを固定し、植付クラッチ操作具と連結した植付クラッチアームをホークと連結し、該植付クラッチアームの一端を前記カムに設けた切欠と嵌合可能に構成し、前記クラッチ操作具の「切」操作時に所定の回転位置で植付クラッチアームの先端が前記切欠に挿入して植付クラッチを「断」とする構成としたものである。
【0008】
請求項4においては、前記カムの切欠位置を植付爪が上昇した位置にあわせたものである。
【0009】
請求項5においては、前記カム及び植付クラッチアームをミッションケース外側の植付出力軸端およびホーク軸端に配置したものである。
【0010】
請求項6においては、前記植付クラッチアームの挿入部の先端を斜面に構成したものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0012】
請求項1においては、植付装置を所定の位置でのみ停止させることができる。例えば、植付爪を上昇位置で停止させたり、他の部材を移動可能とする場合に干渉しない位置で停止させることができる。
【0013】
請求項2においては、簡単な構成で牽制装置を構成でき、植付装置の駆動を停止するときに、植付爪(開口器・移植爪)の停止位置を、切欠位置を変更するだけで所望の位置に設定できる。
【0014】
請求項3においては、植付クラッチ操作具の「切」操作を行っても、所定の回転位置に切欠が移動してくるまで植付クラッチは「断」とならず、植付装置を所定の位置でのみ停止することができる。
【0015】
請求項4においては、植付爪が下降した位置で停止すると、機体を下げたときに植付爪が地面に当接して傷める可能性があったが、植付爪が上昇した位置で常に停止するので、植付爪を傷めることが無い。また、作業開始時や終了時にテーブル上の苗の受け渡しに失敗が無い。
【0016】
請求項5においては、カムの位置調整等、ミッションケース外側から容易に調整でき、メンテナンス等が容易に行える。
【0017】
請求項6においては、植付クラッチ「断」時にクラッチアームが切欠に噛み込むことがなく、確実にクラッチを断接できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
次に、発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明の一実施例に係る移植機の全体的な構成を示した側面図、図2は同じく平面図、図3は移植部の背面図である。図4は移植爪の側面図、図5は移植機の動力伝達機構を示すスケルトン図、図6は動力断接手段およびカム機構の一部断面平面図、図7は動力断接手段とカム機構と潅水機構の側面図、図8はカム機構の側面図、図9は植付用トランスミッションの平面断面図、図10は牽制装置の平面図、図11は牽制装置の側面図、図12はデテント機構の側面図である。
【実施例1】
【0019】
まず本発明の一実施例にかかる移植機の全体的な構成について説明する。図1、図2に示すように、移植機1においては、機体フレーム2の前部上にエンジン3が載置され、前後中途部上に走行用トランスミッション4Aと植付用トランスミッション4B(図5参照)とを備えるミッションケース5が配設されている。機体フレーム2の後部上にはハンドル部材となるハンドルフレーム6が連設され、これが機体フレーム2より後方へ略水平方向に延設されている。そして、該ハンドルフレーム6の前後中途部上に苗供給部7が備えられ、後部に運転操作部9が構成されている。
【0020】
前記機体フレーム2の前部には左右方向に延設された前輪支持軸10が左右中途部で支持されている。前輪支持軸10の左右両側には前輪支持フレーム11・11の一端が取り付けられ、該前輪支持フレーム11・11の他端に前輪12・12が回転自在に支持されている。
【0021】
また、前記機体フレーム2の前後中途部付近では、ミッションケース5の走行用トランスミッション4Aから後輪駆動軸13が左右方向に突出されている。後輪駆動軸13の左右両側には駆動ケース14の一端が連設され、該駆動ケース14の後端に後輪15が回転自在に支持されている。
【0022】
そして、前記前輪支持フレーム11と駆動ケース14とがリンク機構を介して連結されるとともに、機体フレーム2の下部に設けられた油圧シリンダ16と駆動ケース14とがリンク機構を介して連結されて、該油圧シリンダ16の伸縮動作により前輪支持フレーム11と駆動ケース14とがそれぞれ前輪支持軸10と後輪駆動軸13とを中心に回動可能とされている。これにより、走行機体が昇降可能とされている。
【0023】
また、前記ハンドルフレーム6上の苗供給部7では、複数の苗搬送ポット17が長円形状に連設され、水平面上を回転可能とされている。各苗搬送ポット17はその底部に開閉可能な蓋体を有し、移植部20上方の適宜位置まで搬送されると、蓋体を開いて底部を開口し、該苗搬送ポット17内に保持された苗を落下させて移植部20に供給するように構成されている。前記苗供給部7と移植部20は植付部を形成する。
【0024】
前記苗供給部7の左右側方および上方には苗載台18・18・19が配置されている。各苗載台18はハンドルフレーム6に取り付けられ、これに移植用の苗が載置されている。苗載台18上の苗は、移植作業時に作業者により苗載台18から順次空になった苗搬送ポット17に補給される。
【0025】
前記移植部20は苗供給部7の下方であって、ミッションケース5の後方に配置されている。移植部20には左右一対の移植爪21L・21Rが設けられ、各移植爪21L・21Rが駆動機構30・30により前後開閉かつ上下昇降可能とされている。移植爪21L・21Rは上昇されるときに閉じられて、上昇端で前記苗供給部の苗搬送ポットから落下する苗を保持し、その先端が下降され圃場面に突入されて下降端に達したときに開かれて、苗を圃場面に植え付けるように構成されている。
【0026】
そして、このように苗を苗供給部7の苗搬送ポット17から移植部20の左右の各移植爪21L・21Rに供給し、該移植爪21L・21Rで圃場面に植え付けたあとに、左右の移植爪21L・21Rの後方に配設された覆土輪23・23により苗の根部に土を寄せて覆土が行われる。こうして、移植機1による一つの苗の移植が完了となる。
【0027】
次に、前記移植部20の構成について詳細に説明する。図3、図4、図5に示すように、移植部20には、苗を苗供給部7から圃場面へ搬送する左右一対の移植爪21L・21Rや、移植爪21L・21Rをそれぞれ駆動させる駆動機構30・30が設けられている。駆動機構30・30は、移植爪21L・21Rの左右一側にそれぞれ配置されたロータリケース32・32、移植爪21L・21Rの左右他側に配置された昇降ガイド33・33、これらを連結するアームやリンクなどから構成されている。
【0028】
前記左右の各駆動機構30においては、機体フレーム2上のフレーム31に左右方向に突設された支点軸34の一端がロータリケース32内に突入されて、該支点軸34にロータリケース32が回転自在に支持されている。該ロータリケース32の外側側面の支点軸34外周部には従動スプロケット35が固設され、該スプロケット35を介してロータリケース32に植付用トランスミッション4Bからの動力が伝達されて、該ロータリケース32が支点軸34を中心として回転駆動するように構成されている。
【0029】
前記ロータリケース32内では支点軸34に外嵌された第一歯車と、ロータリケース32に回転可能に軸支された第二歯車と、スプロケット35と反対側に突出された出力軸36に外嵌された第三歯車とが直列的に配置され、これらの歯車が順に噛合されている。そして、ロータリケース32外で出力軸36にアーム37の一端が固設されている。
【0030】
ここで、前記第一歯車と第三歯車とは歯数が二対一となるように形成され、ロータリケース32が支点軸34に対して一回転すると、アーム37はロータリケース32とは逆方向に一回転する構成とされている。これにより、植付用トランスミッション4Bからの動力によりロータリケース32が回転駆動するとき、アーム37が機体に対して支点軸34を中心に回転揺動されるようになっている。
【0031】
そして、前記アーム37の他端に連結軸39の一端が固設され、該連結軸39上に条幅に合わせて移植爪支持体40の一側(前側)が軸受を介して回転自在に支持されている。移植爪支持体40は左右のプレートから構成されており、左右のプレート間の連結軸39上に開閉カム41が固設されている。
【0032】
前記移植爪支持体40の他側(後側)には苗供給部7からの苗を受ける漏斗状のカップ40aが形成され、該カップ40a下部には移植爪21が配置されている。カップ40aの前後中心から同距離だけ離れた前後位置には支点軸43・43が左右水平方向に設けられ、各支点軸43・43に移植爪21L(21R)の前後一端がそれぞれ支持されている。
【0033】
前記移植爪21L(21R)は前後略対称に形成したくちばし状の爪部21a・21aからなり、これらを前後に合わせることで閉じた状態となって苗を保持し、前後に離間させることで開いた状態となって苗を落下させることができるように構成されている。前後の爪部21a・21aは、その上部がカップ40aの前後中央で左右両側に設けられた枢支軸44・44で枢支されて、前後に連結されている。そして、枢支軸44・44とカップ40a上部との間にばね49・49がその付勢力で枢支軸44・44を持ち上げるように介装され、これにより移植爪21が前後に爪部21a・21aを合わせて閉じられている。
【0034】
また、前記移植爪21のうち開閉カム41側の爪部21aを支持する支点軸43上には当接アーム45の一端が枢支され、該当接アーム45の他端にローラ46が開閉カム41の外周に当接するように設けられている。こうして、爪部21aが開閉カム41の回転時にその外周形状に応じて回動する当接アーム45によって回動可能とされている。
【0035】
なお、当接アーム45と爪部21a上部との間には爪開閉量調節機構47が設けられており、該爪開閉量調節機構47は当接アーム45と爪部21aの両者間にボルト48を螺装し、該ボルト48を回動することにより両者の間隔を調節して、爪部21aの回動量を調節できるように構成されている。
【0036】
このようにして、爪部21aはばね49・49により移植爪21を閉じるように付勢されるとともに、その回動が当接アーム45にローラ46を介して当接する開閉カム41により規制されている。つまり、移植爪21は常に閉じ方向に付勢されるが、開閉カム41により当接アーム45を介して爪部21aが一時的に回動されることによって強制的に開くように開閉制御されている。
【0037】
また、前記移植爪支持体40の前部に上方に延出する延出部40bが形成され、該延出部40bに昇降ガイド33に向かって突出するように支持軸50が設けられている。支持軸50の突出端にはローラ51が設けられ、これが上下方向に延設された昇降ガイド33内に転動可能に嵌入されて、昇降時に移植爪21をガイドするように構成されている。
【0038】
このような構成において、移植部20では植付部トランスミッション4Bから駆動機構30に動力が伝達される際に、移植爪21L(21R)は上昇端で閉じられ、前後の爪部21a・21aの間に苗供給部からの苗が供給され保持される。この状態で移植爪21L(21R)がロータリケース32の回動に伴って昇降ガイド33に沿って下降され、下降端に至ると、圃場の土壌表面部に爪部21aが突入した状態で開閉カム41の回動により当接アーム45を介して爪部21aが支点軸43を中心として前後に回動されて、移植爪21L(21R)が開かれ、圃場面に苗が植え付けられる。植付後、更なるロータリケース32の回動によって移植爪21L(21R)は上昇され、上昇端に至るまでの過程で開閉カム41の回転により閉じられる。これが繰り返され、移植爪21L(21R)による苗の植付が行われる。
【0039】
また、図3および図12に示すように、ロータリケース32・32と、本機との間にはデテント機構100・100が設けられており、このデテント機構100・100により、支点軸34を中心として回動駆動するロータリケース32が上昇位置で保持されるように構成されている。
デテント機構100は当接手段であるデテントプレート101と、デテントアーム102と、デテントバネ103とを備えて構成されている。
【0040】
デテントプレート101は略「へ」字状に形成されている鉄板であって、デテントプレート101の中途部に略三角形状の凸部が形成されて当接部101aとし、両端がロータリケース32先端に固定されている。ここで、先端とは回動中心(支点軸34)に対して反対方向の端部を言う。具体的には、デテントプレート101の下側(図8において下側)はロータリケース32の外形に沿った形状に形成されており、機体左右方向の半割りケース(アルミニウムケース)としたロータリケース32を固定するボルト32a・32aにより、デテントプレート101の両端がロータリケース32と共締めされて強固に固定されている。なお、ロータリケース32にデテントプレート101を固定する方法はこれに限定するものではない。
【0041】
当接部101aはデテントプレート101の先端側(図8において上側)の外周縁の中途部から、略三角形状に延出されて形成されている。この当接部101aはデテントアーム102の先端に軸支されているローラ110に当接するように配設されており、当接部101aの当接面はローラ110の接線方向としている。つまり、支点軸34の軸心と出力軸36の軸心とを結ぶ線を中心線O1とすると、中心線O1と平行に当接部101aの当接面が形成されており、ロータリケース32の回転方向で中心線O1よりも前側に配置されている。こうして、当接部101a先端の半径ができるだけ短く、当接面が長くなるようにしている。
【0042】
デテントアーム102は板状部材であって、デテントアーム102の一端が、本機に溶接される等して固定されている取付部材106に回転自在に軸支されている。具体的には、取付部材106はプレートが平面視「コ」字状に折り曲げられて形成されており、後方を開放して本機に固定されている。そして、取付部材106の上下中央部には支点軸105が横架されており、この支点軸105にデテントアーム102の一端(上端)が回転自在に軸支されている。また、デテントアーム102の他端(下端)には係止軸109が側方に突設されており、この係止軸109上にローラ110が回転自在に軸支されている。そして、係止軸109にはデテントバネ103の一端が係止されており、デテントバネ103の他端が、本機にボルト止めされる等して固定されている取付部材108に係止されている。具体的には、取付部材108の側面の前端に係止軸107が突設されており、この係止軸107にデテントバネ103の他端が係止されている。これにより、デテントアーム102は支点軸105を中心として時計回り方向(前方)に回動するように付勢されており、デテントアーム102の上部前面が、取付部材106に設けられているストッパ104に当接して保持されている。こうして、デテントアーム102がストッパ104に当接して保持された状態において、ローラ110は、デテントプレート101の当接部101aが支点軸34を中心として回動した時の回動軌跡上に位置するように配設されている。
【0043】
ストッパ104はボルトで構成されて取付部材106の折り曲げ部の前下部に螺装固定されており、このストッパ104にデテントアーム102の上部前面が当接される。ストッパ104はボルトの突出長を調整することにより、ローラ110の位置(図8に示す両矢印方向)を調整できるとともに、ロックナットによりボルトがロックされてローラ110の位置が位置決めされる。
【0044】
また、デテント機構100のローラ110は、ロータリケース32が回動上死点Dを若干通り過ぎた位置に配置されている。つまり、側面視においてロータリケース32の中心線O1が鉛直線(ロータリケース32の回動上死点D)より時計回り方向に角度θ回動された位置で、デテントプレート101の当接部101aがローラ110に当接して、ロータリケース32が上昇位置で保持されるように構成されている。この時、デテントアーム102と中心線O1とは略平行となり、ローラ110および支点軸105は支点軸34の斜め上後方に配置されている。
【0045】
続いて、前記移植機の動力伝達機構について説明する。図5に示すように、駆動源となるエンジン3の動力は出力軸61から走行用トランスミッション4Aの入力軸62にプーリやベルトを介して伝達される。走行用トランスミッション4Aに入力された動力は、ギヤ機構などを介して変速されたあと、前記後輪駆動軸13に伝達され、さらに駆動ケース14に備えられたスプロケットやチェーンなどを介して後輪15に伝達される。
【0046】
また、走行用トランスミッション4Aで変速された動力はその出力軸63から植付用トランスミッション4Bの入力軸64にプーリやベルトを介して伝達される。植付用トランスミッション4Bに入力された動力はギヤ機構などで変速されたあと、植付出力軸(植付出力軸)65に伝達される。植付出力軸65はミッションケース5の後上部から左右方向に突出され、該植付出力軸65を介して植付用トランスミッション4Bから苗供給部7と移植部20とで構成される植付部に動力が伝達可能とされている。
【0047】
すなわち、植付用トランスミッション4Bからの動力は、植付出力軸65の一端に嵌設された出力スプロケット69からスプロケットやチェーンなどからなる減速機構66やギヤ機構67を介して苗供給部7の入力軸68に伝達され、該入力軸68から駆動スプロケットと従動スプロケットとを介してこれらに巻回された長円形状に連設された苗搬送ポット17・17・・・に伝達される。こうして、苗搬送ポット17・17・・・が長円軌跡を描くように搬送され、前述のように適宜位置で苗搬送ポット17から移植部20の移植爪21L・21Rに苗が供給可能とされている。
【0048】
このような動力伝達機構において、植付用トランスミッション4Bと左右の移植爪21L・21Rの駆動機構30・30との間に、駆動機構30・30への動力の断接を行う左右一対の動力断接手段72・72が設けられ、動力断接手段72・72により左右の移植爪21L・21Rの駆動時期を変更することができるように構成されている。
【0049】
次に、本発明の要部である植付クラッチ201および、植付出力軸65の所定の回転位置(植付爪が上昇した位置)のみで植付クラッチ操作具が植付クラッチ201を「断」とできる牽制装置202について説明する。
植付クラッチ操作具となる植付クラッチレバー225は植付クラッチ201の「接」「断」操作部材となるホーク軸222と連動連結され、この連動連結する部材途中経路に牽制装置202が配置されている。該牽制装置202は植付出力軸65の所定回転位置でのみ作用する構成としている。
具体的構成を説明すると、前記植付クラッチ201は、図9に示すように、爪クラッチで構成されており、ミッションケース5上部に左右方向に横架して回転自在に支持された植付出力軸65に回動自在に嵌設されたギヤ211と、前記植付出力軸65に長手方向に摺動可能で相対回転不能に嵌設されたスライダ212と、該スライダ212を「接」方向に付勢するためのバネ等により構成した弾性体213等から構成されている。
前記ギヤ211とスライダ212のそれぞれ対向する側面には爪部が形成され、噛合可能としている。また、前記スライダ212の外周には溝を設けており、該溝に植付出力軸65と平行に横架されたホーク軸222に固設されたホーク221の先端が係合されている。前記ホーク軸222の他端はミッションケース5外に突出され、該ホーク軸222の他端から後述する植付クラッチアーム223やワイヤまたはロッド等の伝動機構を介して前記運転操作部9のハンドルフレーム6に設けた植付クラッチレバー225と連結されている。そして、ミッションケース5内の前記入力軸64上にギヤ203が固設されており、該ギヤ203から伝達ギヤや伝達軸等を介して前記ギヤ211に動力が伝達されるようにしている。
このような構成において、植付クラッチレバー225を「入」側に操作すると、前記ホーク軸222が摺動されて、同時にスライダ212がギヤ211方向へ摺動して爪部分が噛合し、前記ギヤ211と植付出力軸65が一体となって回転して動力が伝達されるることになる。一方、植付クラッチレバー225を「切」側に操作して後述する牽制装置202により牽制されず、植付クラッチ201を「断」状態になると、前記スライダ212は逆方向に摺動されてギヤ211と噛合せず、ギヤ211は空転することになり、植付出力軸65は駆動されず回転を停止する。
【0050】
牽制装置202は、植付クラッチアーム223とカム227等から構成され、ミッションケース5の上外側部に配設され、簡単な構成で後付けが容易にできるようにするとともに、カム227の位置調整やメンテナンス等が容易に外側から行えるようにしている。
図10、図11に示すように、カム227は円板状に構成され、その中心が前記ミッションケース5から突出した植付出力軸65の先端に固設されている。本実施例では、植付出力軸65に設けられた出力スプロケット69のボス部分にカム227が一体的に固設され、組立工数を減少できるようにしている。該カム227の外円周上の一部に凹状の切欠部227aが設けられている。なお、本実施例では出力スプロケット69と一体的にカム227を設けているため、カム227は出力スプロケット69よりも大きく構成して、側面視で切欠227aが出力スプロケット69と干渉しないように配設している。
【0051】
前記植付クラッチアーム223は平面視略L字状に構成されて中途部の折れ曲がり部が支点軸223aにより回動自在に枢支され、一端に平面視「く」状の突出部223cが形成されている。該突出部223cは先細り形状として前記切欠部227aに容易に挿入し、かつ、抜け易くしている。そして更に、図10(b)に示すように、切欠部227aへの挿入側の外側面223d・223eは直角とならず鈍角となるように、突出部223cの切欠部227aと当接する面が斜めとなるように構成している。このように構成することで、植付クラッチ「断」動作と同時に突出部223cが切欠部227aに入ろうとする状態の場合には、突出部223cの外側面223dの傾斜により逃げて抜けるようになり、トルクの閉じ込みを防止している。つまり、突出部223cの当接面と切欠部227aが直角に当接するように構成すると、カム227が回転方向に力が掛かった状態で植付クラッチが切れて、次に、植付クラッチレバー225を「入」操作しても、突出部223cを切欠部227aから抜くことができず、植付クラッチ201を「接」とすることができなくなるので、容易に抜けて植付クラッチを「接」とできるように、先端の突出部223cの外側面223dを斜面に構成しているのである。但し、カム227の形状は円板に限定するものではなく、先細形状の凸部がカムに設けた凹部に入る構成であればよい。
また、前記支点軸223aと突出部223cの間の中途部には連結用の貫通孔223bが設けられており、前記ホーク軸222の端部に設けた孔222aと前記貫通孔223bとにピン224を挿入固定して、前記植付クラッチアーム223と前記ホーク軸222を連結している。一方、前記植付クラッチアーム223の他端には弾性体226やワイヤ等を介して植付クラッチの操作具である植付クラッチレバー225(図2参照)と連動連結されている。
このような構成において、植付クラッチレバー225を「入」として植付部が駆動されている状態では、前記弾性体226による引張り力が解かれ、前記弾性体213の付勢力によって前記スライダ212がギヤ211の方向に付勢されており、該スライダ212とギヤ211の爪部分が噛合し、前記ギヤ211と植付出力軸65が一体となって回転して植付部が駆動される。このとき、図10(a)に示すように、前記ホーク軸222は外方向に摺動されており、突出部223cは切欠部227aから抜けた位置にある。
【0052】
この駆動状態から、植付クラッチレバー225を「切」側に操作した場合には、弾性体226が引っ張られるため、図10において、植付クラッチアーム223は支点軸223aを中心に時計方向に回転されるが、突出部223cが前記カム227の切欠部227aに位置していないと入ることができず、ホーク軸222も摺動できないため植付クラッチ201は「接」の状態が続行されて、カム227は回転し、植付駆動され続ける。
そして、カム227が回転されて突出部223cが切欠部227aに位置すると、図10(b)に示すように、植付クラッチアーム223の突出部223cが前記切欠部227aに挿入されて植付クラッチアーム223が回動し、この回動によりホーク軸222が弾性体213の付勢力に抗して図9において左方向に摺動され、スライダ212とギヤ211の爪部の噛合が解除されて、植付クラッチ201が「断」となり、ギヤ211から植付出力軸65へ動力が伝えられなくなる。
【0053】
この植付クラッチ201が「断」となったとき、前記左右の移植爪21L・21R及びロータリケース32L・32Rがともにほぼ上死点に位置するように設定している。つまり、植付クラッチレバー225を「切」に操作した場合には、移植爪21L・21R及びロータリケース32L・32Rは回動上死点Dにある位置で必ず植付クラッチ201が切れるように構成している。言い換えれば、前記移植爪21L・21R及びロータリケース32L・32Rがともに回動上死点Dにある位置で、該切欠部227aが突出部223cの配設位置に来るように設けている。
【0054】
こうして、ロータリケース32L・32R(左右同時植えの場合両方、千鳥植えの場合左右いずれか一方)上が回動上死点Dに位置した時に、植付クラッチ201が切られると、動力切断状態になり、ロータリケース32L・32Rに植付用トランスミッション4Bからの駆動力が伝達されなくなるが、ロータリケース32L・32Rは慣性力にて回動し続けようとする。しかし、デテントプレート101の当接部101aがデテントアーム102のローラ110に当接し、ロータリケース32の回動が停止される。つまり、図12に示すようにロータリケース32の回動上死点Dより時計回り方向に傾斜角度θ回動された位置で、デテントプレート101の当接部101aがローラ110に当接して、ロータリケース32L・32Rが上昇位置で保持される。この上昇位置は苗供給部7から苗が供給される苗供給位置となり、その位置に維持される。
【0055】
そして、植付クラッチレバー225を「入」に操作すると、植付クラッチアーム223は前記と逆方向に回動され、スライダ212とギヤ211の爪部が噛合されて、植付出力軸65へ動力が伝えられ、図12において二点鎖線で図示する状態のように、ロータリケース32が時計回り方向に回動駆動されて、当接部101aがローラ110に当接しつつ、当接部101aによりローラ110がデテントバネ103の付勢力に抗して後方に押されて、デテントアーム102が支点軸105を中心として反時計回り方向に回動される。
【0056】
そして、ロータリケース32がさらに回動駆動されてローラ110が後方に押されると、デテントアーム102が回動されて後方に待避され、デテントプレート101がデテントアーム102(ローラ110)を乗り越えて、ロータリケース32が支点軸34を中心として時計回り方向に回動駆動される。このとき、ローラ110は係止軸109に軸支されて回転可能であるため、デテントプレート101の当接部101aに当接しつつ、ローラ110上を滑らかに転動することができる。
【0057】
このように構成することにより、植付クラッチレバー225を「切」にした場合、デテントで決定した上部停止位置直前で植付クラッチ201を「断」にすることが可能となり、植付クラッチ201を「断」にしたときは常に移植爪21L・21Rを上部で停止させることが可能となる。前記移植爪21L・21Rが下降した位置で停止すると、機体を下げたときに移植爪21L・21Rが地面に当接して傷める可能性があったが、移植爪21L・21Rが上昇した位置で常に停止するので、移植爪21L・21Rを傷めることが無い。また、作業開始時や終了時にテーブル上の苗の受け渡しに失敗が無い。
なお、前記切欠部227aは前述の位置以外に設けることも可能であり、その切欠部227aの位置には突出部223cが配置される。また、切欠部227cの植付出力軸65に対する位置も変更可能である。この場合、植付部の駆動を停止するときに、移植爪21L・21Rの停止位置を、切欠部227aに対する植付出力軸65の位置を変更するだけで所望の位置に設定できる。
【0058】
次に、苗を千鳥状に移植するための動力断接手段72・72について説明する。図6、図7に示すように、前記左右の動力断接手段72・72は前記植付出力軸65、本実施例では植付出力軸65に一体的に連結された延長軸65aに設けられている。延長軸65aは左右の駆動機構30・30の前方に配置され、該延長軸65aの左右両側に駆動機構30・30に動力を伝達するための伝導体として駆動スプロケット73・73が配置されている。駆動スプロケット73・73は延長軸65aに相対回転自在に遊嵌され、駆動機構30・30のロータリケース32・32に設けられた従動スプロケット35・35とチェーン74・74を介して連動連結されている。
【0059】
前記左右の各駆動スプロケット73の左右一側にはクラッチ体75が配置されている。クラッチ体75は延長軸65aに相対回転不能に嵌合され、軸方向に摺動可能とされている。クラッチ体75は円錐形上の当接部75aと、該当接部75aの頂部に中央が位置する円盤形状の係合部75bとを備えて構成されている。係合部75bは係合部75cを有して駆動スプロケット73側に配置され、該係合孔75cに駆動スプロケット73から突設される係合体となるクラッチピン73aがクラッチ体75の摺動位置に応じて係合可能とされている。
【0060】
前記クラッチ体75の駆動スプロケット73と反対側にはクラッチバネ76が配置されている。クラッチバネ76は延長軸65aに嵌合され、当接部75aに接して設けられている。該クラッチバネ76によりクラッチ体75は駆動スプロケット73側に付勢され、係合孔75cでクラッチピン73aと係合する係合位置まで摺動されるようになっている。すなわち、クラッチ体75は通常ではクラッチピン73aと係合しない空転位置ではなく、係合位置に保持されるようになっている。
【0061】
よって、クラッチ体75が係合孔75cでクラッチピン73aとが係合する場合には、クラッチ体75と駆動スプロケット73とが一体となり、延長軸65a(植付出力軸65)とともに一体的に回転する。この状態が動力接続状態であり、植付出力軸65から駆動機構30に動力が伝達されて、移植爪21L(21R)が駆動されることになる。一方、クラッチ体75が係合孔75cでクラッチピン73aと係合しない場合には、駆動スプロケット73は延長軸65a(植付出力軸65)に対し空転する。この状態が動力切断状態であり、植付出力軸65から駆動機構30に動力は伝達されず、移植爪21L(21R)は停止した状態に維持される。このようにして、左右の動力断接手段72・72が構成されている。
【0062】
以上のように、苗供給部7から供給される苗を圃場面に植え付ける左右一対の移植爪21L・21Rと、各移植爪21L・21Rを駆動する左右の駆動機構30・30とを備え、各駆動機構30に駆動源となるエンジン3からの動力を一本の植付出力軸65を介して伝達して、左右の移植爪21L・21Rを駆動する移植機において、前記植付出力軸65、ここでは延長軸65aの両側に、各移植爪21L・21Rの駆動機構30・30に対応する動力断接手段72・72を設けたことから、左右の移植爪21L・21Rを独立して駆動することが可能となり、動力断接手段72・72で植付出力軸65から左右の各駆動機構30・30への動力を適宜断接することによって、左右の移植爪21L・21Rによる植付位置を機体の進行方向に対し適宜ずらして苗を植え付けることができる。したがって、左右の移植爪21L・21Rによる植付後の苗と苗との間に十分な間隔を確保して苗を生育することが可能となり、苗の生育にばらつきが生じるのを防止することができる。
【0063】
また、前記動力断接手段72は植付出力軸65、ここでは延長軸65aに軸方向に相対回転不能且つ摺動可能に設けたクラッチ体75と、延長軸65a上に遊嵌した駆動スプロケット(伝動体)73に設けたクラッチピン(係合体)73aとを係合可能に備え、該駆動スプロケット(伝動体)73を駆動機構30と連動連結して構成したことから、クラッチ体75とクラッチピン(係合体)73aとを係合または係合解除することで、駆動スプロケット(伝動体)73と延長軸65aとを相対回転不能または相対回転可能として、延長軸65aから駆動機構30への動力を断接し、左右の各移植爪21L・21Rを駆動または停止させることが可能となる。
【0064】
また、前記動力断接手段72の駆動スプロケット73(伝動体)にその位置保持機構を設け、該駆動スプロケット73に設けたクラッチピン(係合体)73aとクラッチ体75とが係合解除状態のとき、該位置保持機構により、駆動スプロケット73(伝動体)の位置を保持し駆動機構30を介して前記移植爪21L・21Rをその上昇端となる苗供給位置に維持するように構成したことから、動力断接手段72により非駆動側とされる移植爪21L(21R)が圃場面に突き刺さるのを防止して、移植爪21L(21R)の損傷を回避することができる。また、苗供給部7から移植爪21L(21R)への苗の供給が良好となる。さらに、クラッチ体75とクラッチピン(係合体)73aとの係合状態の切替を確実に行うことができる。
【0065】
そして、前記左右の動力断接手段72・72のクラッチ体75とクラッチピン73aとの係合状態を切り替え、植付出力軸65から左右の各駆動機構30への動力を弾設するためのカム機構80が延長軸65aに設けられている。前記カム機構80は、前記延長軸65aと平衡に配置して駆動されるカム軸81と、該カム軸81上に左右のクラッチ体75・75と対向するように設けた左右のカム82L・82Rとを備え、該カム軸81に左右のカム82L・82Rを相対回転不能に取り付けて構成されている。
【0066】
前記カム82L・82Rは突出部82La、82Raと切欠部82Lb、82Rbとを備え、側面視で略半月上に形成されている。そして、該カム82L・82Rはカム軸81の回転に伴って一体的に回転される際に、突出部82La・82Raで係合位置にあるクラッチ体75・75の当接部75a・75aに当接し、さらなる回転によりクラッチ体75・75をクラッチバネ76・76の付勢力に抗して駆動スプロケット73と反対側に押しながら空転位置まで摺動させて、クラッチ体75とクラッチピン73との係合を解除させるようになっている。
【0067】
左右のカム82L・82Rはカム軸81周りの互いの位相を180度ずらしてカム軸81に固定され、カム軸81の回転によって一方のカム82L(82R)が突出部82La(82Ra)でクラッチ体75の当接部75aと当接し、クラッチ体75とクラッチピン73aとを係合解除状態とする回転位置となる場合に、他方のカム82R(82L)は切欠部82Rb(82Rb)のためにクラッチ体75に作用しないので、クラッチ体75がクラッチバネ76の付勢力により摺動されて当接部75aが移動し、クラッチ体75とクラッチピン73aとを係合状態とする回転位置となるように配置されている。
【0068】
ここで、左右のカム82L・82Rのうち、一方のカム82L(82R)はキー85を介してカム軸81に位相角度変更可能、かつ、着脱可能に取り付けられている。詳しくは、カム軸81上の左右一側にキー溝を穿設してキー85が嵌合され、該キー85に係合可能なキー溝81a・81bが左右一方のカムのボス部82dの内周に180度位置をずらして設けられて、該カム82L(82R)がキー85を介してカム軸81に着脱可能に取り付けられている。こうして、本実施例では左右のカム82L・82Rはカム軸周りに互いの位相を180度ずらして取り付けているが、カム軸周りに同位相にも取り付け可能とされている。但し、位相の変更機構はキーを用いる構成に限定するものではなく、カム82とカム軸81をスプライン嵌合、またはセレーション嵌合などで嵌合して、位相をずらせる構成とすることも可能である。
【0069】
そして、前記植付出力軸65の延長軸65aの左右中途部に第一ギヤ83が固設されるとともに、カム軸81の左右中途部に第二ギヤ84が固設され、該第一ギヤ83と第二ギヤ84とが噛合されている。第一ギヤ83と第二ギヤ84とはそのギヤ比が1対2となるように形成され、該第一ギヤ83と第二ギヤ84を介して延長軸65aからカム軸81に動力が伝達されるときに、カム軸81が延長軸65a(植付出力軸65)の半分の回転速度で回転するように構成されている。
【0070】
このような構成において、延長軸65aが一回転する場合、第一ギヤ83と第二ギヤ84を介してカム軸81が半回転し、図8(a)に示すように、左右一方のカム82L(82R)が突出部82Laでクラッチ体75の当接部75aに当接しつつ、クラッチ体75をクラッチバネ76に抗して軸方向に空転位置まで摺動させて、クラッチ体75とクラッチピン73aとの係合を解除させる。これにより、クラッチ体75と駆動スプロケット73との固定が解かれて、延長軸65aに対して駆動スプロケット73が空転状態となり、駆動機構30への動力が切断されて左右一方の移植爪21L(21R)が停止される。
【0071】
このとき、左右他方のカム82R(82L)は、図8(b)に示すように、切欠部82Rb(82Lb)にてクラッチ体75の当接部75aから離間する。同時に、クラッチ体75がクラッチバネ76の付勢力により空転位置から係合位置まで摺動され、該クラッチ体75とクラッチピン73aとが係合される。これにより、クラッチ体75と駆動スプロケット73とが嵌合固定されて、駆動スプロケット73が延長軸65aと一体的に回転されることになり、駆動機構30に動力が伝達されて他方の移植爪21R(21L)が駆動される。
【0072】
そして、延長軸65aがさらに一回転するうちに、カム軸81もさらに半回転され、該カム軸81上の左右のカム82L・82Rが前記と反対の回転位置まで回転され、左右一方のカム82L側でクラッチ体75とクラッチピン73aとが係合され、他方のカム82Rでクラッチ体75とクラッチピン73aとの係合が解除される。つまり、前記と反対に左右一方の移植爪21L(21R)が駆動され、他方の移植爪21L(21R)の駆動が停止される。
【0073】
このようにして、本実施例の移植機1では左右の移植爪が延長軸65aの回転に伴って、一方の移植爪21L(21R)が上下一往復した後に動力断接手段72により動力を絶たれて停止され、他方の移植爪21R(21L)が動力断接手段72により動力を伝達されて駆動されるように、左右の移植爪21L・21Rが交互に駆動され、一方の移植爪21L(21R)による苗移植位置に対して他方の21R(21L)による苗移植位置を走行機体の進行方向に半ピッチずらして苗を植える、いわゆる千鳥植えが行われるようになっている。なお、このように駆動される移植部20に対して、苗供給部7は前記減速機構66により同調して駆動するように構成されている。
【0074】
以上のように、前記移植機1において、前記植付出力軸65、ここでは延長軸65aに連動するカム機構80を設け、該カム機構80におり動力断接手段72のクラッチ体75を摺動させて、該クラッチ体75とクラッチピン(係合体)73aとの係合状態を切り替え、延長軸65aから左右の各駆動機構30への動力を断接するように構成したことから、カム機構80の形状に応じて、左右の移植爪21L・21Rの駆動時期を変更して、左右の各移植爪21L・21Rによる植付位置を走行機体の進行方向に任意のピッチ間隔だけずらして、苗を植え付けることができる。
【0075】
また、前記カム機構80は、前記延長軸65aと平行に配置して駆動されるカム軸81に、左右のクラッチ体75・75と対向するように左右のカム82L・82Rを設けて構成し、各カム82L・82Rは突出部82La・82Raと切欠部82Lb・82Rbとを備えて略半月状に形成して、該突出部82La・82Raでクラッチ体75に当接して当該クラッチ体75とクラッチピン(係合体)73aとの係合状態を切り替えるように構成したことから、カム機構80を簡単な構造で構成して、左右のカム82L・82Rにより動力の断接状態を切り替えることができる。また、カム機構80を従来の移植機にもトランスミッションを変更することなく設けることが可能となり、コストを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の一実施例に係る移植機の全体的な構成を示した側面図。
【図2】同じく平面図。
【図3】移植部の背面図。
【図4】移植爪の側面図。
【図5】移植機の動力伝達機構を示すスケルトン図。
【図6】動力断接手段およびカム機構の一部断面平面図。
【図7】動力断接手段とカム機構と潅水機構の側面図。
【図8】カム機構の側面図。(a)動力切断状態を示す図。(b)動力接続状態を示す図。
【図9】植付用トランスミッションの平面断面図。
【図10】牽制装置の平面図。(a)植付クラッチが「断」の状態を示す図。(b)植付クラッチが「接」の状態を示す図。
【図11】牽制装置の側面図。
【図12】デテント機構の側面図。
【符号の説明】
【0077】
1 移植機
21L・21R 移植爪
32 ロータリケース
100 デテント機構
201 植付クラッチ
202 牽制装置
221 ホーク
222 ホーク軸
223 植付クラッチアーム
225 植付クラッチレバー
227 カム
227a 切欠部
【技術分野】
【0001】
本発明は、供給部から供給される苗を圃場面に植え付ける移植爪を駆動する移植機の駆動機構に関し、より詳細には、植付クラッチを「断」としたときに植付爪が所定位置で停止するようにするための駆動伝達部の駆動断接機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、機体左右方向に移植爪を一対備え、該移植爪内にその上方に配置した苗供給部から苗を供給して、圃場面に苗を植え付けるようにした移植機が公知となっている。このような移植機は、左右の各移植爪を昇降及び開閉するための駆動機構を設けるとともに、トランスミッションから突出する植付出力軸に左右一対のスプロケットを固設し、各スプロケットからチェーンを介して駆動機構に動力を伝達することにより左右の移植爪を駆動して、各移植爪による植付位置を走行機体の進行方向に対しずらさずに苗を左右同時に植える、いわゆる並木植えを行うように構成されていた(例えば、特許文献1参照。)。また、移植機は左右の移植爪の下部を前後にずらすことで一方の移植爪による苗植付位置に対して、他方の移植爪による苗植付位置を走行機体の進行方向に半ピッチずらして苗を植える、いわゆる千鳥植えを行うことができるように構成されることもあった(例えば、特許文献2参照)。また、移植機は左右の移植爪を独立して駆動することにより動力断接手段で植付出力軸から左右の各駆動機構への動力を適宜断接することによって、左右の移植爪による植付位置を走行機体の進行方向に適宜ずらして苗を植え付けるように構成された移植機が、同一出願人により既に出願されている(特願2006−006827号)。
【特許文献1】特開2003−230306号公報
【特許文献2】特開2005−245339号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の移植機は、植え付けを終了する際に、左右の移植爪を作業の終了した位置で停止させていた。しかし、移植爪が下死点付近で停止した場合には、移植機を移動・旋回させたときに地面と移植爪が接触し、破損や故障の原因となっていた。そこで、バネによって停止位置から上方へ引き上げる機構が存在したが、一定の位置で固定することは困難であり、次回開始時に苗供給部から苗をスムースに供給することができない場合があった。
そこで、本発明は斯かる課題に鑑み、植付を終了する際に、常に一定の位置で左右の移植爪を停止させることができる移植機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0005】
即ち、請求項1においては、ミッションケースに植付部へ動力を出力する植付出力軸を備え、植付部へ出力する動力を断接する植付クラッチを植付クラッチ操作具により断接操作できるように構成するとともに、植付出力軸の所定の回転位置のみで植付クラッチ操作具が植付クラッチを「断」とできる牽制装置を備えたものである。
【0006】
請求項2においては、前記牽制装置は、植付出力軸上に設けて切欠を有するカムと、植付クラッチ操作具と連繋される植付クラッチアームより構成したものである。
【0007】
請求項3においては、前記植付クラッチをホーク軸の摺動により断接可能に構成するとともに、植付出力軸上に前記カムを固定し、植付クラッチ操作具と連結した植付クラッチアームをホークと連結し、該植付クラッチアームの一端を前記カムに設けた切欠と嵌合可能に構成し、前記クラッチ操作具の「切」操作時に所定の回転位置で植付クラッチアームの先端が前記切欠に挿入して植付クラッチを「断」とする構成としたものである。
【0008】
請求項4においては、前記カムの切欠位置を植付爪が上昇した位置にあわせたものである。
【0009】
請求項5においては、前記カム及び植付クラッチアームをミッションケース外側の植付出力軸端およびホーク軸端に配置したものである。
【0010】
請求項6においては、前記植付クラッチアームの挿入部の先端を斜面に構成したものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0012】
請求項1においては、植付装置を所定の位置でのみ停止させることができる。例えば、植付爪を上昇位置で停止させたり、他の部材を移動可能とする場合に干渉しない位置で停止させることができる。
【0013】
請求項2においては、簡単な構成で牽制装置を構成でき、植付装置の駆動を停止するときに、植付爪(開口器・移植爪)の停止位置を、切欠位置を変更するだけで所望の位置に設定できる。
【0014】
請求項3においては、植付クラッチ操作具の「切」操作を行っても、所定の回転位置に切欠が移動してくるまで植付クラッチは「断」とならず、植付装置を所定の位置でのみ停止することができる。
【0015】
請求項4においては、植付爪が下降した位置で停止すると、機体を下げたときに植付爪が地面に当接して傷める可能性があったが、植付爪が上昇した位置で常に停止するので、植付爪を傷めることが無い。また、作業開始時や終了時にテーブル上の苗の受け渡しに失敗が無い。
【0016】
請求項5においては、カムの位置調整等、ミッションケース外側から容易に調整でき、メンテナンス等が容易に行える。
【0017】
請求項6においては、植付クラッチ「断」時にクラッチアームが切欠に噛み込むことがなく、確実にクラッチを断接できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
次に、発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明の一実施例に係る移植機の全体的な構成を示した側面図、図2は同じく平面図、図3は移植部の背面図である。図4は移植爪の側面図、図5は移植機の動力伝達機構を示すスケルトン図、図6は動力断接手段およびカム機構の一部断面平面図、図7は動力断接手段とカム機構と潅水機構の側面図、図8はカム機構の側面図、図9は植付用トランスミッションの平面断面図、図10は牽制装置の平面図、図11は牽制装置の側面図、図12はデテント機構の側面図である。
【実施例1】
【0019】
まず本発明の一実施例にかかる移植機の全体的な構成について説明する。図1、図2に示すように、移植機1においては、機体フレーム2の前部上にエンジン3が載置され、前後中途部上に走行用トランスミッション4Aと植付用トランスミッション4B(図5参照)とを備えるミッションケース5が配設されている。機体フレーム2の後部上にはハンドル部材となるハンドルフレーム6が連設され、これが機体フレーム2より後方へ略水平方向に延設されている。そして、該ハンドルフレーム6の前後中途部上に苗供給部7が備えられ、後部に運転操作部9が構成されている。
【0020】
前記機体フレーム2の前部には左右方向に延設された前輪支持軸10が左右中途部で支持されている。前輪支持軸10の左右両側には前輪支持フレーム11・11の一端が取り付けられ、該前輪支持フレーム11・11の他端に前輪12・12が回転自在に支持されている。
【0021】
また、前記機体フレーム2の前後中途部付近では、ミッションケース5の走行用トランスミッション4Aから後輪駆動軸13が左右方向に突出されている。後輪駆動軸13の左右両側には駆動ケース14の一端が連設され、該駆動ケース14の後端に後輪15が回転自在に支持されている。
【0022】
そして、前記前輪支持フレーム11と駆動ケース14とがリンク機構を介して連結されるとともに、機体フレーム2の下部に設けられた油圧シリンダ16と駆動ケース14とがリンク機構を介して連結されて、該油圧シリンダ16の伸縮動作により前輪支持フレーム11と駆動ケース14とがそれぞれ前輪支持軸10と後輪駆動軸13とを中心に回動可能とされている。これにより、走行機体が昇降可能とされている。
【0023】
また、前記ハンドルフレーム6上の苗供給部7では、複数の苗搬送ポット17が長円形状に連設され、水平面上を回転可能とされている。各苗搬送ポット17はその底部に開閉可能な蓋体を有し、移植部20上方の適宜位置まで搬送されると、蓋体を開いて底部を開口し、該苗搬送ポット17内に保持された苗を落下させて移植部20に供給するように構成されている。前記苗供給部7と移植部20は植付部を形成する。
【0024】
前記苗供給部7の左右側方および上方には苗載台18・18・19が配置されている。各苗載台18はハンドルフレーム6に取り付けられ、これに移植用の苗が載置されている。苗載台18上の苗は、移植作業時に作業者により苗載台18から順次空になった苗搬送ポット17に補給される。
【0025】
前記移植部20は苗供給部7の下方であって、ミッションケース5の後方に配置されている。移植部20には左右一対の移植爪21L・21Rが設けられ、各移植爪21L・21Rが駆動機構30・30により前後開閉かつ上下昇降可能とされている。移植爪21L・21Rは上昇されるときに閉じられて、上昇端で前記苗供給部の苗搬送ポットから落下する苗を保持し、その先端が下降され圃場面に突入されて下降端に達したときに開かれて、苗を圃場面に植え付けるように構成されている。
【0026】
そして、このように苗を苗供給部7の苗搬送ポット17から移植部20の左右の各移植爪21L・21Rに供給し、該移植爪21L・21Rで圃場面に植え付けたあとに、左右の移植爪21L・21Rの後方に配設された覆土輪23・23により苗の根部に土を寄せて覆土が行われる。こうして、移植機1による一つの苗の移植が完了となる。
【0027】
次に、前記移植部20の構成について詳細に説明する。図3、図4、図5に示すように、移植部20には、苗を苗供給部7から圃場面へ搬送する左右一対の移植爪21L・21Rや、移植爪21L・21Rをそれぞれ駆動させる駆動機構30・30が設けられている。駆動機構30・30は、移植爪21L・21Rの左右一側にそれぞれ配置されたロータリケース32・32、移植爪21L・21Rの左右他側に配置された昇降ガイド33・33、これらを連結するアームやリンクなどから構成されている。
【0028】
前記左右の各駆動機構30においては、機体フレーム2上のフレーム31に左右方向に突設された支点軸34の一端がロータリケース32内に突入されて、該支点軸34にロータリケース32が回転自在に支持されている。該ロータリケース32の外側側面の支点軸34外周部には従動スプロケット35が固設され、該スプロケット35を介してロータリケース32に植付用トランスミッション4Bからの動力が伝達されて、該ロータリケース32が支点軸34を中心として回転駆動するように構成されている。
【0029】
前記ロータリケース32内では支点軸34に外嵌された第一歯車と、ロータリケース32に回転可能に軸支された第二歯車と、スプロケット35と反対側に突出された出力軸36に外嵌された第三歯車とが直列的に配置され、これらの歯車が順に噛合されている。そして、ロータリケース32外で出力軸36にアーム37の一端が固設されている。
【0030】
ここで、前記第一歯車と第三歯車とは歯数が二対一となるように形成され、ロータリケース32が支点軸34に対して一回転すると、アーム37はロータリケース32とは逆方向に一回転する構成とされている。これにより、植付用トランスミッション4Bからの動力によりロータリケース32が回転駆動するとき、アーム37が機体に対して支点軸34を中心に回転揺動されるようになっている。
【0031】
そして、前記アーム37の他端に連結軸39の一端が固設され、該連結軸39上に条幅に合わせて移植爪支持体40の一側(前側)が軸受を介して回転自在に支持されている。移植爪支持体40は左右のプレートから構成されており、左右のプレート間の連結軸39上に開閉カム41が固設されている。
【0032】
前記移植爪支持体40の他側(後側)には苗供給部7からの苗を受ける漏斗状のカップ40aが形成され、該カップ40a下部には移植爪21が配置されている。カップ40aの前後中心から同距離だけ離れた前後位置には支点軸43・43が左右水平方向に設けられ、各支点軸43・43に移植爪21L(21R)の前後一端がそれぞれ支持されている。
【0033】
前記移植爪21L(21R)は前後略対称に形成したくちばし状の爪部21a・21aからなり、これらを前後に合わせることで閉じた状態となって苗を保持し、前後に離間させることで開いた状態となって苗を落下させることができるように構成されている。前後の爪部21a・21aは、その上部がカップ40aの前後中央で左右両側に設けられた枢支軸44・44で枢支されて、前後に連結されている。そして、枢支軸44・44とカップ40a上部との間にばね49・49がその付勢力で枢支軸44・44を持ち上げるように介装され、これにより移植爪21が前後に爪部21a・21aを合わせて閉じられている。
【0034】
また、前記移植爪21のうち開閉カム41側の爪部21aを支持する支点軸43上には当接アーム45の一端が枢支され、該当接アーム45の他端にローラ46が開閉カム41の外周に当接するように設けられている。こうして、爪部21aが開閉カム41の回転時にその外周形状に応じて回動する当接アーム45によって回動可能とされている。
【0035】
なお、当接アーム45と爪部21a上部との間には爪開閉量調節機構47が設けられており、該爪開閉量調節機構47は当接アーム45と爪部21aの両者間にボルト48を螺装し、該ボルト48を回動することにより両者の間隔を調節して、爪部21aの回動量を調節できるように構成されている。
【0036】
このようにして、爪部21aはばね49・49により移植爪21を閉じるように付勢されるとともに、その回動が当接アーム45にローラ46を介して当接する開閉カム41により規制されている。つまり、移植爪21は常に閉じ方向に付勢されるが、開閉カム41により当接アーム45を介して爪部21aが一時的に回動されることによって強制的に開くように開閉制御されている。
【0037】
また、前記移植爪支持体40の前部に上方に延出する延出部40bが形成され、該延出部40bに昇降ガイド33に向かって突出するように支持軸50が設けられている。支持軸50の突出端にはローラ51が設けられ、これが上下方向に延設された昇降ガイド33内に転動可能に嵌入されて、昇降時に移植爪21をガイドするように構成されている。
【0038】
このような構成において、移植部20では植付部トランスミッション4Bから駆動機構30に動力が伝達される際に、移植爪21L(21R)は上昇端で閉じられ、前後の爪部21a・21aの間に苗供給部からの苗が供給され保持される。この状態で移植爪21L(21R)がロータリケース32の回動に伴って昇降ガイド33に沿って下降され、下降端に至ると、圃場の土壌表面部に爪部21aが突入した状態で開閉カム41の回動により当接アーム45を介して爪部21aが支点軸43を中心として前後に回動されて、移植爪21L(21R)が開かれ、圃場面に苗が植え付けられる。植付後、更なるロータリケース32の回動によって移植爪21L(21R)は上昇され、上昇端に至るまでの過程で開閉カム41の回転により閉じられる。これが繰り返され、移植爪21L(21R)による苗の植付が行われる。
【0039】
また、図3および図12に示すように、ロータリケース32・32と、本機との間にはデテント機構100・100が設けられており、このデテント機構100・100により、支点軸34を中心として回動駆動するロータリケース32が上昇位置で保持されるように構成されている。
デテント機構100は当接手段であるデテントプレート101と、デテントアーム102と、デテントバネ103とを備えて構成されている。
【0040】
デテントプレート101は略「へ」字状に形成されている鉄板であって、デテントプレート101の中途部に略三角形状の凸部が形成されて当接部101aとし、両端がロータリケース32先端に固定されている。ここで、先端とは回動中心(支点軸34)に対して反対方向の端部を言う。具体的には、デテントプレート101の下側(図8において下側)はロータリケース32の外形に沿った形状に形成されており、機体左右方向の半割りケース(アルミニウムケース)としたロータリケース32を固定するボルト32a・32aにより、デテントプレート101の両端がロータリケース32と共締めされて強固に固定されている。なお、ロータリケース32にデテントプレート101を固定する方法はこれに限定するものではない。
【0041】
当接部101aはデテントプレート101の先端側(図8において上側)の外周縁の中途部から、略三角形状に延出されて形成されている。この当接部101aはデテントアーム102の先端に軸支されているローラ110に当接するように配設されており、当接部101aの当接面はローラ110の接線方向としている。つまり、支点軸34の軸心と出力軸36の軸心とを結ぶ線を中心線O1とすると、中心線O1と平行に当接部101aの当接面が形成されており、ロータリケース32の回転方向で中心線O1よりも前側に配置されている。こうして、当接部101a先端の半径ができるだけ短く、当接面が長くなるようにしている。
【0042】
デテントアーム102は板状部材であって、デテントアーム102の一端が、本機に溶接される等して固定されている取付部材106に回転自在に軸支されている。具体的には、取付部材106はプレートが平面視「コ」字状に折り曲げられて形成されており、後方を開放して本機に固定されている。そして、取付部材106の上下中央部には支点軸105が横架されており、この支点軸105にデテントアーム102の一端(上端)が回転自在に軸支されている。また、デテントアーム102の他端(下端)には係止軸109が側方に突設されており、この係止軸109上にローラ110が回転自在に軸支されている。そして、係止軸109にはデテントバネ103の一端が係止されており、デテントバネ103の他端が、本機にボルト止めされる等して固定されている取付部材108に係止されている。具体的には、取付部材108の側面の前端に係止軸107が突設されており、この係止軸107にデテントバネ103の他端が係止されている。これにより、デテントアーム102は支点軸105を中心として時計回り方向(前方)に回動するように付勢されており、デテントアーム102の上部前面が、取付部材106に設けられているストッパ104に当接して保持されている。こうして、デテントアーム102がストッパ104に当接して保持された状態において、ローラ110は、デテントプレート101の当接部101aが支点軸34を中心として回動した時の回動軌跡上に位置するように配設されている。
【0043】
ストッパ104はボルトで構成されて取付部材106の折り曲げ部の前下部に螺装固定されており、このストッパ104にデテントアーム102の上部前面が当接される。ストッパ104はボルトの突出長を調整することにより、ローラ110の位置(図8に示す両矢印方向)を調整できるとともに、ロックナットによりボルトがロックされてローラ110の位置が位置決めされる。
【0044】
また、デテント機構100のローラ110は、ロータリケース32が回動上死点Dを若干通り過ぎた位置に配置されている。つまり、側面視においてロータリケース32の中心線O1が鉛直線(ロータリケース32の回動上死点D)より時計回り方向に角度θ回動された位置で、デテントプレート101の当接部101aがローラ110に当接して、ロータリケース32が上昇位置で保持されるように構成されている。この時、デテントアーム102と中心線O1とは略平行となり、ローラ110および支点軸105は支点軸34の斜め上後方に配置されている。
【0045】
続いて、前記移植機の動力伝達機構について説明する。図5に示すように、駆動源となるエンジン3の動力は出力軸61から走行用トランスミッション4Aの入力軸62にプーリやベルトを介して伝達される。走行用トランスミッション4Aに入力された動力は、ギヤ機構などを介して変速されたあと、前記後輪駆動軸13に伝達され、さらに駆動ケース14に備えられたスプロケットやチェーンなどを介して後輪15に伝達される。
【0046】
また、走行用トランスミッション4Aで変速された動力はその出力軸63から植付用トランスミッション4Bの入力軸64にプーリやベルトを介して伝達される。植付用トランスミッション4Bに入力された動力はギヤ機構などで変速されたあと、植付出力軸(植付出力軸)65に伝達される。植付出力軸65はミッションケース5の後上部から左右方向に突出され、該植付出力軸65を介して植付用トランスミッション4Bから苗供給部7と移植部20とで構成される植付部に動力が伝達可能とされている。
【0047】
すなわち、植付用トランスミッション4Bからの動力は、植付出力軸65の一端に嵌設された出力スプロケット69からスプロケットやチェーンなどからなる減速機構66やギヤ機構67を介して苗供給部7の入力軸68に伝達され、該入力軸68から駆動スプロケットと従動スプロケットとを介してこれらに巻回された長円形状に連設された苗搬送ポット17・17・・・に伝達される。こうして、苗搬送ポット17・17・・・が長円軌跡を描くように搬送され、前述のように適宜位置で苗搬送ポット17から移植部20の移植爪21L・21Rに苗が供給可能とされている。
【0048】
このような動力伝達機構において、植付用トランスミッション4Bと左右の移植爪21L・21Rの駆動機構30・30との間に、駆動機構30・30への動力の断接を行う左右一対の動力断接手段72・72が設けられ、動力断接手段72・72により左右の移植爪21L・21Rの駆動時期を変更することができるように構成されている。
【0049】
次に、本発明の要部である植付クラッチ201および、植付出力軸65の所定の回転位置(植付爪が上昇した位置)のみで植付クラッチ操作具が植付クラッチ201を「断」とできる牽制装置202について説明する。
植付クラッチ操作具となる植付クラッチレバー225は植付クラッチ201の「接」「断」操作部材となるホーク軸222と連動連結され、この連動連結する部材途中経路に牽制装置202が配置されている。該牽制装置202は植付出力軸65の所定回転位置でのみ作用する構成としている。
具体的構成を説明すると、前記植付クラッチ201は、図9に示すように、爪クラッチで構成されており、ミッションケース5上部に左右方向に横架して回転自在に支持された植付出力軸65に回動自在に嵌設されたギヤ211と、前記植付出力軸65に長手方向に摺動可能で相対回転不能に嵌設されたスライダ212と、該スライダ212を「接」方向に付勢するためのバネ等により構成した弾性体213等から構成されている。
前記ギヤ211とスライダ212のそれぞれ対向する側面には爪部が形成され、噛合可能としている。また、前記スライダ212の外周には溝を設けており、該溝に植付出力軸65と平行に横架されたホーク軸222に固設されたホーク221の先端が係合されている。前記ホーク軸222の他端はミッションケース5外に突出され、該ホーク軸222の他端から後述する植付クラッチアーム223やワイヤまたはロッド等の伝動機構を介して前記運転操作部9のハンドルフレーム6に設けた植付クラッチレバー225と連結されている。そして、ミッションケース5内の前記入力軸64上にギヤ203が固設されており、該ギヤ203から伝達ギヤや伝達軸等を介して前記ギヤ211に動力が伝達されるようにしている。
このような構成において、植付クラッチレバー225を「入」側に操作すると、前記ホーク軸222が摺動されて、同時にスライダ212がギヤ211方向へ摺動して爪部分が噛合し、前記ギヤ211と植付出力軸65が一体となって回転して動力が伝達されるることになる。一方、植付クラッチレバー225を「切」側に操作して後述する牽制装置202により牽制されず、植付クラッチ201を「断」状態になると、前記スライダ212は逆方向に摺動されてギヤ211と噛合せず、ギヤ211は空転することになり、植付出力軸65は駆動されず回転を停止する。
【0050】
牽制装置202は、植付クラッチアーム223とカム227等から構成され、ミッションケース5の上外側部に配設され、簡単な構成で後付けが容易にできるようにするとともに、カム227の位置調整やメンテナンス等が容易に外側から行えるようにしている。
図10、図11に示すように、カム227は円板状に構成され、その中心が前記ミッションケース5から突出した植付出力軸65の先端に固設されている。本実施例では、植付出力軸65に設けられた出力スプロケット69のボス部分にカム227が一体的に固設され、組立工数を減少できるようにしている。該カム227の外円周上の一部に凹状の切欠部227aが設けられている。なお、本実施例では出力スプロケット69と一体的にカム227を設けているため、カム227は出力スプロケット69よりも大きく構成して、側面視で切欠227aが出力スプロケット69と干渉しないように配設している。
【0051】
前記植付クラッチアーム223は平面視略L字状に構成されて中途部の折れ曲がり部が支点軸223aにより回動自在に枢支され、一端に平面視「く」状の突出部223cが形成されている。該突出部223cは先細り形状として前記切欠部227aに容易に挿入し、かつ、抜け易くしている。そして更に、図10(b)に示すように、切欠部227aへの挿入側の外側面223d・223eは直角とならず鈍角となるように、突出部223cの切欠部227aと当接する面が斜めとなるように構成している。このように構成することで、植付クラッチ「断」動作と同時に突出部223cが切欠部227aに入ろうとする状態の場合には、突出部223cの外側面223dの傾斜により逃げて抜けるようになり、トルクの閉じ込みを防止している。つまり、突出部223cの当接面と切欠部227aが直角に当接するように構成すると、カム227が回転方向に力が掛かった状態で植付クラッチが切れて、次に、植付クラッチレバー225を「入」操作しても、突出部223cを切欠部227aから抜くことができず、植付クラッチ201を「接」とすることができなくなるので、容易に抜けて植付クラッチを「接」とできるように、先端の突出部223cの外側面223dを斜面に構成しているのである。但し、カム227の形状は円板に限定するものではなく、先細形状の凸部がカムに設けた凹部に入る構成であればよい。
また、前記支点軸223aと突出部223cの間の中途部には連結用の貫通孔223bが設けられており、前記ホーク軸222の端部に設けた孔222aと前記貫通孔223bとにピン224を挿入固定して、前記植付クラッチアーム223と前記ホーク軸222を連結している。一方、前記植付クラッチアーム223の他端には弾性体226やワイヤ等を介して植付クラッチの操作具である植付クラッチレバー225(図2参照)と連動連結されている。
このような構成において、植付クラッチレバー225を「入」として植付部が駆動されている状態では、前記弾性体226による引張り力が解かれ、前記弾性体213の付勢力によって前記スライダ212がギヤ211の方向に付勢されており、該スライダ212とギヤ211の爪部分が噛合し、前記ギヤ211と植付出力軸65が一体となって回転して植付部が駆動される。このとき、図10(a)に示すように、前記ホーク軸222は外方向に摺動されており、突出部223cは切欠部227aから抜けた位置にある。
【0052】
この駆動状態から、植付クラッチレバー225を「切」側に操作した場合には、弾性体226が引っ張られるため、図10において、植付クラッチアーム223は支点軸223aを中心に時計方向に回転されるが、突出部223cが前記カム227の切欠部227aに位置していないと入ることができず、ホーク軸222も摺動できないため植付クラッチ201は「接」の状態が続行されて、カム227は回転し、植付駆動され続ける。
そして、カム227が回転されて突出部223cが切欠部227aに位置すると、図10(b)に示すように、植付クラッチアーム223の突出部223cが前記切欠部227aに挿入されて植付クラッチアーム223が回動し、この回動によりホーク軸222が弾性体213の付勢力に抗して図9において左方向に摺動され、スライダ212とギヤ211の爪部の噛合が解除されて、植付クラッチ201が「断」となり、ギヤ211から植付出力軸65へ動力が伝えられなくなる。
【0053】
この植付クラッチ201が「断」となったとき、前記左右の移植爪21L・21R及びロータリケース32L・32Rがともにほぼ上死点に位置するように設定している。つまり、植付クラッチレバー225を「切」に操作した場合には、移植爪21L・21R及びロータリケース32L・32Rは回動上死点Dにある位置で必ず植付クラッチ201が切れるように構成している。言い換えれば、前記移植爪21L・21R及びロータリケース32L・32Rがともに回動上死点Dにある位置で、該切欠部227aが突出部223cの配設位置に来るように設けている。
【0054】
こうして、ロータリケース32L・32R(左右同時植えの場合両方、千鳥植えの場合左右いずれか一方)上が回動上死点Dに位置した時に、植付クラッチ201が切られると、動力切断状態になり、ロータリケース32L・32Rに植付用トランスミッション4Bからの駆動力が伝達されなくなるが、ロータリケース32L・32Rは慣性力にて回動し続けようとする。しかし、デテントプレート101の当接部101aがデテントアーム102のローラ110に当接し、ロータリケース32の回動が停止される。つまり、図12に示すようにロータリケース32の回動上死点Dより時計回り方向に傾斜角度θ回動された位置で、デテントプレート101の当接部101aがローラ110に当接して、ロータリケース32L・32Rが上昇位置で保持される。この上昇位置は苗供給部7から苗が供給される苗供給位置となり、その位置に維持される。
【0055】
そして、植付クラッチレバー225を「入」に操作すると、植付クラッチアーム223は前記と逆方向に回動され、スライダ212とギヤ211の爪部が噛合されて、植付出力軸65へ動力が伝えられ、図12において二点鎖線で図示する状態のように、ロータリケース32が時計回り方向に回動駆動されて、当接部101aがローラ110に当接しつつ、当接部101aによりローラ110がデテントバネ103の付勢力に抗して後方に押されて、デテントアーム102が支点軸105を中心として反時計回り方向に回動される。
【0056】
そして、ロータリケース32がさらに回動駆動されてローラ110が後方に押されると、デテントアーム102が回動されて後方に待避され、デテントプレート101がデテントアーム102(ローラ110)を乗り越えて、ロータリケース32が支点軸34を中心として時計回り方向に回動駆動される。このとき、ローラ110は係止軸109に軸支されて回転可能であるため、デテントプレート101の当接部101aに当接しつつ、ローラ110上を滑らかに転動することができる。
【0057】
このように構成することにより、植付クラッチレバー225を「切」にした場合、デテントで決定した上部停止位置直前で植付クラッチ201を「断」にすることが可能となり、植付クラッチ201を「断」にしたときは常に移植爪21L・21Rを上部で停止させることが可能となる。前記移植爪21L・21Rが下降した位置で停止すると、機体を下げたときに移植爪21L・21Rが地面に当接して傷める可能性があったが、移植爪21L・21Rが上昇した位置で常に停止するので、移植爪21L・21Rを傷めることが無い。また、作業開始時や終了時にテーブル上の苗の受け渡しに失敗が無い。
なお、前記切欠部227aは前述の位置以外に設けることも可能であり、その切欠部227aの位置には突出部223cが配置される。また、切欠部227cの植付出力軸65に対する位置も変更可能である。この場合、植付部の駆動を停止するときに、移植爪21L・21Rの停止位置を、切欠部227aに対する植付出力軸65の位置を変更するだけで所望の位置に設定できる。
【0058】
次に、苗を千鳥状に移植するための動力断接手段72・72について説明する。図6、図7に示すように、前記左右の動力断接手段72・72は前記植付出力軸65、本実施例では植付出力軸65に一体的に連結された延長軸65aに設けられている。延長軸65aは左右の駆動機構30・30の前方に配置され、該延長軸65aの左右両側に駆動機構30・30に動力を伝達するための伝導体として駆動スプロケット73・73が配置されている。駆動スプロケット73・73は延長軸65aに相対回転自在に遊嵌され、駆動機構30・30のロータリケース32・32に設けられた従動スプロケット35・35とチェーン74・74を介して連動連結されている。
【0059】
前記左右の各駆動スプロケット73の左右一側にはクラッチ体75が配置されている。クラッチ体75は延長軸65aに相対回転不能に嵌合され、軸方向に摺動可能とされている。クラッチ体75は円錐形上の当接部75aと、該当接部75aの頂部に中央が位置する円盤形状の係合部75bとを備えて構成されている。係合部75bは係合部75cを有して駆動スプロケット73側に配置され、該係合孔75cに駆動スプロケット73から突設される係合体となるクラッチピン73aがクラッチ体75の摺動位置に応じて係合可能とされている。
【0060】
前記クラッチ体75の駆動スプロケット73と反対側にはクラッチバネ76が配置されている。クラッチバネ76は延長軸65aに嵌合され、当接部75aに接して設けられている。該クラッチバネ76によりクラッチ体75は駆動スプロケット73側に付勢され、係合孔75cでクラッチピン73aと係合する係合位置まで摺動されるようになっている。すなわち、クラッチ体75は通常ではクラッチピン73aと係合しない空転位置ではなく、係合位置に保持されるようになっている。
【0061】
よって、クラッチ体75が係合孔75cでクラッチピン73aとが係合する場合には、クラッチ体75と駆動スプロケット73とが一体となり、延長軸65a(植付出力軸65)とともに一体的に回転する。この状態が動力接続状態であり、植付出力軸65から駆動機構30に動力が伝達されて、移植爪21L(21R)が駆動されることになる。一方、クラッチ体75が係合孔75cでクラッチピン73aと係合しない場合には、駆動スプロケット73は延長軸65a(植付出力軸65)に対し空転する。この状態が動力切断状態であり、植付出力軸65から駆動機構30に動力は伝達されず、移植爪21L(21R)は停止した状態に維持される。このようにして、左右の動力断接手段72・72が構成されている。
【0062】
以上のように、苗供給部7から供給される苗を圃場面に植え付ける左右一対の移植爪21L・21Rと、各移植爪21L・21Rを駆動する左右の駆動機構30・30とを備え、各駆動機構30に駆動源となるエンジン3からの動力を一本の植付出力軸65を介して伝達して、左右の移植爪21L・21Rを駆動する移植機において、前記植付出力軸65、ここでは延長軸65aの両側に、各移植爪21L・21Rの駆動機構30・30に対応する動力断接手段72・72を設けたことから、左右の移植爪21L・21Rを独立して駆動することが可能となり、動力断接手段72・72で植付出力軸65から左右の各駆動機構30・30への動力を適宜断接することによって、左右の移植爪21L・21Rによる植付位置を機体の進行方向に対し適宜ずらして苗を植え付けることができる。したがって、左右の移植爪21L・21Rによる植付後の苗と苗との間に十分な間隔を確保して苗を生育することが可能となり、苗の生育にばらつきが生じるのを防止することができる。
【0063】
また、前記動力断接手段72は植付出力軸65、ここでは延長軸65aに軸方向に相対回転不能且つ摺動可能に設けたクラッチ体75と、延長軸65a上に遊嵌した駆動スプロケット(伝動体)73に設けたクラッチピン(係合体)73aとを係合可能に備え、該駆動スプロケット(伝動体)73を駆動機構30と連動連結して構成したことから、クラッチ体75とクラッチピン(係合体)73aとを係合または係合解除することで、駆動スプロケット(伝動体)73と延長軸65aとを相対回転不能または相対回転可能として、延長軸65aから駆動機構30への動力を断接し、左右の各移植爪21L・21Rを駆動または停止させることが可能となる。
【0064】
また、前記動力断接手段72の駆動スプロケット73(伝動体)にその位置保持機構を設け、該駆動スプロケット73に設けたクラッチピン(係合体)73aとクラッチ体75とが係合解除状態のとき、該位置保持機構により、駆動スプロケット73(伝動体)の位置を保持し駆動機構30を介して前記移植爪21L・21Rをその上昇端となる苗供給位置に維持するように構成したことから、動力断接手段72により非駆動側とされる移植爪21L(21R)が圃場面に突き刺さるのを防止して、移植爪21L(21R)の損傷を回避することができる。また、苗供給部7から移植爪21L(21R)への苗の供給が良好となる。さらに、クラッチ体75とクラッチピン(係合体)73aとの係合状態の切替を確実に行うことができる。
【0065】
そして、前記左右の動力断接手段72・72のクラッチ体75とクラッチピン73aとの係合状態を切り替え、植付出力軸65から左右の各駆動機構30への動力を弾設するためのカム機構80が延長軸65aに設けられている。前記カム機構80は、前記延長軸65aと平衡に配置して駆動されるカム軸81と、該カム軸81上に左右のクラッチ体75・75と対向するように設けた左右のカム82L・82Rとを備え、該カム軸81に左右のカム82L・82Rを相対回転不能に取り付けて構成されている。
【0066】
前記カム82L・82Rは突出部82La、82Raと切欠部82Lb、82Rbとを備え、側面視で略半月上に形成されている。そして、該カム82L・82Rはカム軸81の回転に伴って一体的に回転される際に、突出部82La・82Raで係合位置にあるクラッチ体75・75の当接部75a・75aに当接し、さらなる回転によりクラッチ体75・75をクラッチバネ76・76の付勢力に抗して駆動スプロケット73と反対側に押しながら空転位置まで摺動させて、クラッチ体75とクラッチピン73との係合を解除させるようになっている。
【0067】
左右のカム82L・82Rはカム軸81周りの互いの位相を180度ずらしてカム軸81に固定され、カム軸81の回転によって一方のカム82L(82R)が突出部82La(82Ra)でクラッチ体75の当接部75aと当接し、クラッチ体75とクラッチピン73aとを係合解除状態とする回転位置となる場合に、他方のカム82R(82L)は切欠部82Rb(82Rb)のためにクラッチ体75に作用しないので、クラッチ体75がクラッチバネ76の付勢力により摺動されて当接部75aが移動し、クラッチ体75とクラッチピン73aとを係合状態とする回転位置となるように配置されている。
【0068】
ここで、左右のカム82L・82Rのうち、一方のカム82L(82R)はキー85を介してカム軸81に位相角度変更可能、かつ、着脱可能に取り付けられている。詳しくは、カム軸81上の左右一側にキー溝を穿設してキー85が嵌合され、該キー85に係合可能なキー溝81a・81bが左右一方のカムのボス部82dの内周に180度位置をずらして設けられて、該カム82L(82R)がキー85を介してカム軸81に着脱可能に取り付けられている。こうして、本実施例では左右のカム82L・82Rはカム軸周りに互いの位相を180度ずらして取り付けているが、カム軸周りに同位相にも取り付け可能とされている。但し、位相の変更機構はキーを用いる構成に限定するものではなく、カム82とカム軸81をスプライン嵌合、またはセレーション嵌合などで嵌合して、位相をずらせる構成とすることも可能である。
【0069】
そして、前記植付出力軸65の延長軸65aの左右中途部に第一ギヤ83が固設されるとともに、カム軸81の左右中途部に第二ギヤ84が固設され、該第一ギヤ83と第二ギヤ84とが噛合されている。第一ギヤ83と第二ギヤ84とはそのギヤ比が1対2となるように形成され、該第一ギヤ83と第二ギヤ84を介して延長軸65aからカム軸81に動力が伝達されるときに、カム軸81が延長軸65a(植付出力軸65)の半分の回転速度で回転するように構成されている。
【0070】
このような構成において、延長軸65aが一回転する場合、第一ギヤ83と第二ギヤ84を介してカム軸81が半回転し、図8(a)に示すように、左右一方のカム82L(82R)が突出部82Laでクラッチ体75の当接部75aに当接しつつ、クラッチ体75をクラッチバネ76に抗して軸方向に空転位置まで摺動させて、クラッチ体75とクラッチピン73aとの係合を解除させる。これにより、クラッチ体75と駆動スプロケット73との固定が解かれて、延長軸65aに対して駆動スプロケット73が空転状態となり、駆動機構30への動力が切断されて左右一方の移植爪21L(21R)が停止される。
【0071】
このとき、左右他方のカム82R(82L)は、図8(b)に示すように、切欠部82Rb(82Lb)にてクラッチ体75の当接部75aから離間する。同時に、クラッチ体75がクラッチバネ76の付勢力により空転位置から係合位置まで摺動され、該クラッチ体75とクラッチピン73aとが係合される。これにより、クラッチ体75と駆動スプロケット73とが嵌合固定されて、駆動スプロケット73が延長軸65aと一体的に回転されることになり、駆動機構30に動力が伝達されて他方の移植爪21R(21L)が駆動される。
【0072】
そして、延長軸65aがさらに一回転するうちに、カム軸81もさらに半回転され、該カム軸81上の左右のカム82L・82Rが前記と反対の回転位置まで回転され、左右一方のカム82L側でクラッチ体75とクラッチピン73aとが係合され、他方のカム82Rでクラッチ体75とクラッチピン73aとの係合が解除される。つまり、前記と反対に左右一方の移植爪21L(21R)が駆動され、他方の移植爪21L(21R)の駆動が停止される。
【0073】
このようにして、本実施例の移植機1では左右の移植爪が延長軸65aの回転に伴って、一方の移植爪21L(21R)が上下一往復した後に動力断接手段72により動力を絶たれて停止され、他方の移植爪21R(21L)が動力断接手段72により動力を伝達されて駆動されるように、左右の移植爪21L・21Rが交互に駆動され、一方の移植爪21L(21R)による苗移植位置に対して他方の21R(21L)による苗移植位置を走行機体の進行方向に半ピッチずらして苗を植える、いわゆる千鳥植えが行われるようになっている。なお、このように駆動される移植部20に対して、苗供給部7は前記減速機構66により同調して駆動するように構成されている。
【0074】
以上のように、前記移植機1において、前記植付出力軸65、ここでは延長軸65aに連動するカム機構80を設け、該カム機構80におり動力断接手段72のクラッチ体75を摺動させて、該クラッチ体75とクラッチピン(係合体)73aとの係合状態を切り替え、延長軸65aから左右の各駆動機構30への動力を断接するように構成したことから、カム機構80の形状に応じて、左右の移植爪21L・21Rの駆動時期を変更して、左右の各移植爪21L・21Rによる植付位置を走行機体の進行方向に任意のピッチ間隔だけずらして、苗を植え付けることができる。
【0075】
また、前記カム機構80は、前記延長軸65aと平行に配置して駆動されるカム軸81に、左右のクラッチ体75・75と対向するように左右のカム82L・82Rを設けて構成し、各カム82L・82Rは突出部82La・82Raと切欠部82Lb・82Rbとを備えて略半月状に形成して、該突出部82La・82Raでクラッチ体75に当接して当該クラッチ体75とクラッチピン(係合体)73aとの係合状態を切り替えるように構成したことから、カム機構80を簡単な構造で構成して、左右のカム82L・82Rにより動力の断接状態を切り替えることができる。また、カム機構80を従来の移植機にもトランスミッションを変更することなく設けることが可能となり、コストを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の一実施例に係る移植機の全体的な構成を示した側面図。
【図2】同じく平面図。
【図3】移植部の背面図。
【図4】移植爪の側面図。
【図5】移植機の動力伝達機構を示すスケルトン図。
【図6】動力断接手段およびカム機構の一部断面平面図。
【図7】動力断接手段とカム機構と潅水機構の側面図。
【図8】カム機構の側面図。(a)動力切断状態を示す図。(b)動力接続状態を示す図。
【図9】植付用トランスミッションの平面断面図。
【図10】牽制装置の平面図。(a)植付クラッチが「断」の状態を示す図。(b)植付クラッチが「接」の状態を示す図。
【図11】牽制装置の側面図。
【図12】デテント機構の側面図。
【符号の説明】
【0077】
1 移植機
21L・21R 移植爪
32 ロータリケース
100 デテント機構
201 植付クラッチ
202 牽制装置
221 ホーク
222 ホーク軸
223 植付クラッチアーム
225 植付クラッチレバー
227 カム
227a 切欠部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミッションケースに植付部へ動力を出力する植付出力軸を備え、植付部へ出力する動力を断接する植付クラッチを植付クラッチ操作具により断接操作できるように構成するとともに、植付出力軸の所定の回転位置のみで植付クラッチ操作具が植付クラッチを「断」とできる牽制装置を備えたことを特徴とする移植機。
【請求項2】
前記牽制装置は、植付出力軸上に設けて切欠を有するカムと、植付クラッチ操作具と連繋される植付クラッチアームより構成したことを特徴とする請求項1に記載の移植機。
【請求項3】
前記植付クラッチをホーク軸の摺動により断接可能に構成するとともに、植付出力軸上に前記カムを固定し、植付クラッチ操作具と連結した植付クラッチアームをホークと連結し、該植付クラッチアームの一端を前記カムに設けた切欠と嵌合可能に構成し、前記クラッチ操作具の「切」操作時に所定の回転位置で植付クラッチアームの先端が前記切欠に挿入して植付クラッチを「断」とする構成としたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の移植機。
【請求項4】
前記カムの切欠位置を植付爪が上昇した位置にあわせたことを特徴とする請求項3に記載の移植機。
【請求項5】
前記カム及び植付クラッチアームをミッションケース外側の植付出力軸端およびホーク軸端に配置したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の移植機。
【請求項6】
前記植付クラッチアームの挿入部の先端を斜面に構成したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の移植機。
【請求項1】
ミッションケースに植付部へ動力を出力する植付出力軸を備え、植付部へ出力する動力を断接する植付クラッチを植付クラッチ操作具により断接操作できるように構成するとともに、植付出力軸の所定の回転位置のみで植付クラッチ操作具が植付クラッチを「断」とできる牽制装置を備えたことを特徴とする移植機。
【請求項2】
前記牽制装置は、植付出力軸上に設けて切欠を有するカムと、植付クラッチ操作具と連繋される植付クラッチアームより構成したことを特徴とする請求項1に記載の移植機。
【請求項3】
前記植付クラッチをホーク軸の摺動により断接可能に構成するとともに、植付出力軸上に前記カムを固定し、植付クラッチ操作具と連結した植付クラッチアームをホークと連結し、該植付クラッチアームの一端を前記カムに設けた切欠と嵌合可能に構成し、前記クラッチ操作具の「切」操作時に所定の回転位置で植付クラッチアームの先端が前記切欠に挿入して植付クラッチを「断」とする構成としたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の移植機。
【請求項4】
前記カムの切欠位置を植付爪が上昇した位置にあわせたことを特徴とする請求項3に記載の移植機。
【請求項5】
前記カム及び植付クラッチアームをミッションケース外側の植付出力軸端およびホーク軸端に配置したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の移植機。
【請求項6】
前記植付クラッチアームの挿入部の先端を斜面に構成したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の移植機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−312623(P2007−312623A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−143287(P2006−143287)
【出願日】平成18年5月23日(2006.5.23)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年5月23日(2006.5.23)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】
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